JP2022131169A - 固体電解コンデンサおよびその製造方法 - Google Patents

固体電解コンデンサおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】固体電解コンデンサの初期のESRを低く抑える。【解決手段】固体電解コンデンサは、陽極体と、前記陽極体の表面に形成された誘電体層と、前記誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部と、を含む少なくとも1つの固体電解コンデンサ素子を含む。前記陰極部は、前記誘電体層の少なくとも一部を覆う固体電解質層を含むとともに、前記陰極部の少なくとも一部に、銀含有粒子と樹脂相とを含む銀含有層を含む。前記銀含有粒子は、粒子径が1μmを超える第1銀含有粒子と粒子径が50nm以下の第2銀含有粒子とを含む。前記銀含有層の固形分中の銀の含有率は、60体積%以上90体積%以下である。【選択図】図1

Description

本開示は、固体電解コンデンサおよびその製造方法に関する。
固体電解コンデンサは、固体電解コンデンサ素子と、固体電解コンデンサ素子を封止する樹脂外装体またはケースと、固体電解コンデンサ素子に電気的に接続される外部電極とを備える。固体電解コンデンサ素子は、陽極体と、陽極体の表面に形成された誘電体層と、誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部とを備える。陰極部は、例えば、誘電体層の少なくとも一部を覆う導電性高分子を含む固体電解質層と、固体電解質層の少なくとも一部を覆う陰極引出層とを備える。陰極引出層は、例えば、固体電解質層の少なくとも一部を覆うカーボン層と、カーボン層の少なくとも一部を覆う金属含有層とを含む。陰極引出層は、陰極リードを介して、陰極側の外部電極と電気的に接続される。
例えば、特許文献1は、弁作用金属粉末を成形、焼結した焼結体の表面に形成した誘電体皮膜上に、固体電解質層、カーボン層および導電体層を順次形成したコンデンサ素子に、導電性接着剤を介して陰極端子を接続する固体電解コンデンサにおいて、前記固体電解質層と前記カーボン層との界面部、前記カーボン層と前記導電体層との界面部および前記導電体層と前記導電性接着剤との界面部の少なくとも1つの界面部に、導電性ナノ粒子のみで形成されたナノ導電体層を有することを特徴とする固体電解コンデンサを提案している。
固体電解コンデンサでは、例えば、陰極引出層を構成する金属含有層、または陰極引出層と陰極リードとを接続する導電性接着剤層が、銀粒子を含む銀含有ペーストを用いて形成されることがある。また、固体電解コンデンサが複数の固体電解コンデンサ素子の積層体を含む場合には、隣接する固体電解コンデンサ素子間の固定に銀含有ペーストが用いられることがある。銀含有層の高い密着性を確保する観点から、銀粒子に加え、有機バインダを含む銀含有ペーストを用いることがある。
特開2009-252881号公報
銀含有ペーストを用いて形成される銀含有層には、低抵抗であることに加え、銀含有層と接触する層(またはリードなどの部材)に対する高い密着性が求められる。高い密着性を確保する観点からは、銀粒子の含有率を低減して、有機バインダの含有率を高めることが有利である。しかし、銀粒子の含有率が低い場合には、銀含有層の抵抗が高くなる。銀粒子の含有率が高い場合には、銀含有層の十分な密着性を確保することが難しく、銀含有層が剥離し易い。銀含有層の抵抗または銀含有層と当該銀含有層と接触する層との層間の界面抵抗が高くなると、等価直列抵抗(ESR)が増加する。
本開示の第1側面は、陽極体と、前記陽極体の表面に形成された誘電体層と、前記誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部と、を含む少なくとも1つの固体電解コンデンサ素子を含み、
前記陰極部は、前記誘電体層の少なくとも一部を覆う固体電解質層を含むとともに、前記陰極部の少なくとも一部に、銀含有粒子と、樹脂相と、を含む銀含有層を含み、
前記銀含有粒子は、粒子径が1μmを超える第1銀含有粒子と粒子径が50nm以下の第2銀含有粒子とを含み、
前記銀含有層の固形分中の銀の含有率は、60体積%以上90体積%以下である、固体電解コンデンサに関する。
本開示の第2側面は、陽極体と、前記陽極体の表面に形成された誘電体層と、前記誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部と、を含む少なくとも1つの固体電解コンデンサ素子を含む固体電解コンデンサの製造方法であって、
前記誘電体層の少なくとも一部を覆うように前記陰極部を形成する工程を含み、
前記陰極部は、前記誘電体層の少なくとも一部を覆う固体電解質層を含むとともに、前記陰極部の少なくとも一部に、銀含有粒子と、樹脂相と、を含む銀含有層を含み、
前記陰極部を形成する工程は、粒子径が1μmを超える第1銀含有粒子と、粒子径が50nm以下の第2銀含有粒子と、有機バインダと、を含む銀含有ペーストを、前記陰極部を構成する少なくとも1つの層の少なくとも一部を覆うように付与することによって、前記銀含有層を形成する工程を含み、
前記銀含有ペースト中の銀および前記有機バインダの総量に占める銀の体積比率は、60体積%以上90体積%以下である、固体電解コンデンサの製造方法に関する。
固体電解コンデンサの初期のESRを低く抑えることができる。
本開示の一実施形態に係る固体電解コンデンサの断面模式図である。 本開示の他の実施形態に係る固体電解コンデンサに含まれるコンデンサ素子を模式的に示す断面図である
一般的な銀含有ペーストで形成される銀含有層は、粒子径がマイクロメートルオーダーの銀粒子と樹脂相とを含む。このような銀含有層では、固形分中の銀粒子の含有率は60体積%未満と少なく、多くの樹脂相を含むことで比較的高い密着性が得られる。しかし、絶縁性である樹脂相の含有率が多いことに加え、銀粒子同士の接点が少ないため、銀含有層の抵抗が大きくなる傾向がある。また、銀含有層と接触する層と、銀粒子との接点も少ないため、層間の界面抵抗が大きくなる。銀含有層の抵抗または層間の界面抵抗が大きくなると、固体電解コンデンサのESRが増加する。
特許文献1では、カーボン層と導電体層との間の界面部などに、導電性ナノ粒子のみを用いたナノ導電体層を形成している。このようなナノ導電体層では、ナノ粒子同士の接点が多いため、導電性は高くなるかもしれないが、密着性が低い。ナノ導電体層の低い密着性によって、ナノ導電体層がカーボン層から剥離したり、ナノ導電体層にクラックが形成されたりする。特に、固体電解コンデンサが高温に晒された場合には、膨張等による応力がナノ導電体層に加わり易くなるため、剥離またはクラック形成が生じ易い。剥離またはクラックが生じると、抵抗が大きくなるため、ESRが増加する。
固体電解コンデンサは、用途によって、高温環境下で用いられることがある。また、固体電解コンデンサは、一般に、高温に晒されるリフロー工程を経て基板に半田接合される。そのため、固体電解コンデンサには、高い耐熱性が求められる。
本開示の固体電解コンデンサでは、陰極部の少なくとも一部を構成する銀含有層が、銀含有粒子と、樹脂相とを含む。ここで、銀含有粒子は、粒子径が1μmを超える第1銀含有粒子と、粒子径が50nm以下の第2銀含有粒子とを含む。銀含有層の固形分中の銀の含有率は、60体積%以上90体積%以下である。このような銀含有層を、本明細書中、第1銀含有層と称する場合がある。
本開示では、第1銀含有層において、粒子径が大きな第1銀含有粒子に加えて、粒子径が50nm以下の小さな第2銀含有粒子を用いることで、固形分中の銀の含有率が60体積%以上90体積%以下と従来に比べて多くても、高い密着性を確保することができる。第1銀含有層の固形分中の銀の含有率が多いことに加え、第1銀含有粒子の高いバルク導電性が得られるとともに、第2銀含有粒子によって、第2銀含有粒子間、および第1銀含有粒子と第2銀含有粒子との間の接点が増加する。これらによって、第1銀含有層の抵抗を低く抑えることができる。第1銀含有層が第2銀含有粒子を含むことによって、第2銀含有粒子と第1銀含有層と接触する層との接点を多く確保することができるため、層間の界面抵抗を低く抑えることができる。従って、固体電解コンデンサの初期のESRを低く抑えることができる。よって、コンデンサ性能に優れる固体電解コンデンサが得られる。
また、本開示の固体電解コンデンサでは、銀の含有率が上記の範囲であることで、第1銀含有層がある程度の樹脂相を含むため、第1銀含有層の適度な柔軟性を確保することができる。よって、固体電解コンデンサが高温に晒された場合でも、膨張等による応力を緩和することができ、第1銀含有層の剥離および第1銀含有層におけるクラックの発生を抑制でき、ESRの増加を抑制できる。このように、本開示の固体電解コンデンサでは高い耐熱性を確保することもできる。よって、固体電解コンデンサの高い信頼性が得られる。
第1銀含有層は、銀含有粒子と、有機バインダと、を含む銀含有ペーストを用いて形成できる。ここで、銀含有粒子は、粒子径が1μmを超える第1銀含有粒子と、粒子径が50nm以下の第2銀含有粒子とを含む。銀含有ペースト中の銀および有機バインダの総量に占める銀の体積比率は、60体積%以上90体積%以下である。第1銀含有層を形成するためのこのような銀含有ペーストを第1銀含有ペーストと称することがある。
以下、必要に応じて図面を参照しながら、本開示の固体電解コンデンサおよびその製造方法についてより具体的に説明する。
[固体電解コンデンサ]
固体電解コンデンサは、1つまたは2つ以上の固体電解コンデンサ素子を備える。以下、固体電解コンデンサ素子を、単にコンデンサ素子と称することがある。
(コンデンサ素子)
(陽極体)
コンデンサ素子に含まれる陽極体は、弁作用金属、弁作用金属を含む合金、および弁作用金属を含む化合物などを含むことができる。陽極体は、これらの材料を一種含んでもよく、二種以上を組み合わせて含んでもよい。弁作用金属としては、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタンが好ましく使用される。表面が多孔質である陽極体は、例えば、エッチングなどにより弁作用金属を含む基材(シート状(例えば、箔状、板状)の基材など)の表面を粗面化することで得られる。粗面化は、例えば、エッチング処理などにより行うことができる。また、陽極体は、弁作用金属を含む粒子の成形体またはその焼結体でもよい。なお、成形体および焼結体のそれぞれは、多孔質構造を有する。成形体および焼結体のそれぞれは、シート状の形状であってもよく、直方体、立方体またはこれらに類似の形状などであってもよい。
陽極体は、通常、陽極引出部および陰極形成部を有する。陰極部は、陽極体の陰極形成部に、通常、誘電体層を介して形成される。陽極引出部には、陽極リードが接続される。
(誘電体層)
誘電体層は、陽極体の少なくとも一部の表面を覆うように形成された誘電体として機能する絶縁性の層である。誘電体層は、陽極体の表面の弁作用金属を、化成処理などにより陽極酸化することで形成される。誘電体層は、陽極体の少なくとも一部を覆うように形成されていればよい。誘電体層は、通常、陽極体の表面に形成される。誘電体層は、陽極体の多孔質の表面に形成されるため、誘電体層の表面は、上述のように微細な凹凸形状を有する。
誘電体層は弁作用金属の酸化物を含む。例えば、弁作用金属としてタンタルを用いた場合の誘電体層はTa25を含み、弁作用金属としてアルミニウムを用いた場合の誘電体層はAl23を含む。尚、誘電体層はこれに限らず、誘電体として機能すればよい。
(陰極部)
陰極部は、陽極体の表面に形成された誘電体層の少なくとも一部を覆うように形成される。陰極部を構成する各層は、陰極部の層構成に応じて、公知の方法で形成できる。
陰極部は、誘電体層の少なくとも一部を覆う固体電解質層を含む。陰極部は、さらに固体電解質層の少なくとも一部を覆う陰極引出層を含んでもよい。陰極引出層と陰極リードとが導電性接着剤により接続される場合、本明細書では、陰極引出層と陰極リードとの間に介在する導電性接着剤層(以下、第1導電性接着剤層と称することがある)も陰極部に包含される。複数のコンデンサ素子を含む固体電解コンデンサにおいて、複数のコンデンサ素子が導電性接着剤により固定される場合、本明細書では、隣接するコンデンサ素子間を固定する導電性接着剤層(以下、第2導電性接着剤層と称することがある)も陰極部(より具体的には、いずれか一方のコンデンサ素子の陰極部)に包含される。
本開示の固体電解コンデンサにおいて、陰極部は、陰極部の少なくとも一部に第1銀含有層を含む。陰極部は、例えば、陰極引出層、第1導電性接着剤層、および第2導電性接着剤層からなる群より選択される少なくとも1つの少なくとも一部に第1銀含有層を含んでもよい。陰極部は、第1銀含有層以外の銀含有層(以下、第2銀含有層または第3銀含有層と称することがある)を含んでもよい。例えば、陰極引出層が、導電性カーボンを含むとともに固体電解質層の少なくとも一部を覆う第1層と、第1層の少なくとも一部を覆う第2層としての第2銀含有層を含み、第2銀含有層と陰極リードとの間に介在する第1導電性接着剤層として第1銀含有層を含んでもよい。また、固体電解コンデンサは、第1層と、第1層の少なくとも一部を覆う第2層としての第2銀含有層を含む陰極引出層を含む複数のコンデンサ素子が、第2導電性接着剤層としての第1銀含有層を介して積層された積層体を含んでもよい。このような積層体において、各コンデンサ素子の陰極引出層と陰極リードとは、第1導電性接着剤層としての第3銀含有層または第1銀含有層を介して接続されていてもよい。
以下、陰極部の構成要素について説明する。
(固体電解質層)
固体電解質層は、陽極体の表面に、誘電体層を介して、誘電体層を覆うように形成される。固体電解質層は、必ずしも誘電体層の全体(表面全体)を覆う必要はなく、誘電体層の少なくとも一部を覆うように形成されていればよい。固体電解質層は、固体電解コンデンサにおける陰極部の少なくとも一部を構成する。
固体電解質層は、導電性高分子を含む。導電性高分子は、例えば、共役系高分子およびドーパントを含んでいる。固体電解質層は、必要に応じて、さらに、添加剤を含んでもよい。
共役系高分子としては、固体電解コンデンサに使用される公知の共役系高分子、例えば、π共役系高分子が挙げられる。共役系高分子としては、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフラン、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、およびポリチオフェンビニレンを基本骨格とする高分子が挙げられる。これらのうち、ポリピロール、ポリチオフェン、またはポリアニリンを基本骨格とする高分子が好ましい。上記の高分子は、基本骨格を構成する少なくとも一種のモノマー単位を含んでいればよい。モノマー単位には、置換基を有するモノマー単位も含まれる。上記の高分子には、単独重合体、二種以上のモノマーの共重合体も含まれる。例えば、ポリチオフェンには、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)などが含まれる。
固体電解質層は、共役系高分子を、一種含んでもよく、二種以上組み合わせて含んでもよい。
共役系高分子の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、例えば1,000以上1,000,000以下である。
なお、本明細書中、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の値である。なお、GPCは、通常は、ポリスチレンゲルカラムと、移動相としての水/メタノール(体積比8/2)とを用いて測定される。
ドーパントとしては、例えば、アニオンおよびポリアニオンからなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。
アニオンとしては、例えば、硫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、硼酸イオン、有機スルホン酸イオン、カルボン酸イオンなどが挙げられるが、特に制限されない。スルホン酸イオンを生成するドーパントとしては、例えば、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、およびナフタレンスルホン酸などが挙げられる。
ポリアニオンとしては、ポリマーアニオンなどが挙げられる。固体電解質層は、例えば、チオフェン化合物に対応するモノマー単位を含む共役系高分子と、ポリマーアニオンとを含んでもよい。
ポリマーアニオンとしては、例えば、複数のアニオン性基を有するポリマーが挙げられる。このようなポリマーとしては、アニオン性基を有するモノマー単位を含むポリマーが挙げられる。アニオン性基としては、スルホン酸基、カルボキシ基などが挙げられる。
固体電解質層において、ドーパントのアニオン性基は、遊離の形態、アニオンの形態、または塩の形態で含まれていてもよく、共役系高分子と結合または相互作用した形態で含まれていてもよい。本明細書中、これらの全ての形態を含めて、単に「アニオン性基」、「スルホン酸基」、または「カルボキシ基」などと称することがある。
カルボキシ基を有するポリマーアニオンとしては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸およびメタクリル酸の少なくとも一方を用いた共重合体が挙げられるが、これらに限定されない。
スルホン酸基を有するポリマーアニオンの具体例としては、例えば高分子タイプのポリスルホン酸としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸(共重合体および置換基を有する置換体なども含む)、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリエステルスルホン酸(芳香族ポリエステルスルホン酸など)、フェノールスルホン酸ノボラック樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。
固体電解質層に含まれるドーパントの量は、共役系高分子100質量部に対して、例えば、10~1000質量部であり、20~500質量部または50~200質量部であってもよい。
固体電解質層は、必要に応じて、さらに、公知の添加剤、および導電性高分子以外の公知の導電性材料からなる群より選択される少なくとも一種を含んでもよい。導電性材料としては、例えば、二酸化マンガンなどの導電性無機材料、およびTCNQ錯塩からなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。
なお、誘電体層と固体電解質層との間には、密着性を高める層などを介在させてもよい。
固体電解質層は、単層であってもよく、複数の層で構成してもよい。例えば、固体電解質層を、誘電体層の少なくとも一部を覆う第1固体電解質層と、第1固体電解質層の少なくとも一部を覆う第2固体電解質層とを含むように構成してもよい。各層に含まれる共役系高分子、ドーパント、添加剤などの種類、組成、含有量などは各層で異なっていてもよく、同じであってもよい。
固体電解質層は、例えば、共役系高分子の前駆体およびドーパントを含む処理液を用いて、前駆体を誘電体層上で重合させることにより形成される。重合は、化学重合、および電解重合の少なくともいずれかにより行うことができる。共役系高分子の前駆体としては、モノマー、オリゴマーまたはプレポリマーなどが挙げられる。固体電解質層は、誘電体層に、導電性高分子を含む処理液(例えば、分散液または溶液)を付着させた後、乾燥させることにより形成してもよい。分散媒(または溶媒)としては、例えば、水および有機溶媒からなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。処理液は、さらに、他の成分(ドーパント、および添加剤からなる群より選択される少なくとも一種など)を含んでもよい。
共役系高分子の前駆体を含む処理液を用いる場合、前駆体を重合させるために酸化剤が使用される。酸化剤は、添加剤として処理液に含まれていてもよい。また、酸化剤は、誘電体層が形成された陽極体に処理液を接触させる前または後に、陽極体に塗布してもよい。このような酸化剤としては、Fe3+を生成可能な化合物(硫酸第二鉄など)、過硫酸塩(過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなど)、過酸化水素が例示できる。酸化剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
処理液への浸漬と重合(または乾燥)とにより固体電解質層を形成する工程は、1回行なってもよいが、複数回繰り返してもよい。各回において、処理液の組成および粘度などの条件を同じにしてもよく、少なくとも1つの条件を変化させてもよい。
(陰極引出層)
陰極引出層は、固体電解質層と接触するとともに固体電解質層の少なくとも一部を覆う第1層を少なくとも備えていればよく、第1層と第1層の少なくとも一部を覆う第2層とを備えていてもよい。
第1層としては、例えば、導電性粒子を含む層、金属箔などが挙げられる。導電性粒子としては、例えば、導電性カーボンおよび金属粉から選択される少なくとも一種が挙げられる。例えば、第1層としての導電性カーボンを含む層(カーボン層とも称する)と、第2層としての金属粉を含む層または金属箔とで陰極引出層を構成してもよい。第1層として金属箔を用いる場合には、この金属箔で陰極引出層を構成してもよい。
導電性カーボンとしては、例えば、黒鉛(人造黒鉛、天然黒鉛など)が挙げられる。
第2層としての金属粉を含む層は、例えば、金属粉を含む組成物を第1層の表面に積層することにより形成できる。このような第2層としては、例えば、金属粉と樹脂(バインダ樹脂)とを含むペーストを用いて形成される金属ペースト層が挙げられる。バインダ樹脂としては、熱可塑性樹脂を用いることもできるが、イミド系樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。第2層の高い導電性が得られる易い観点からは、金属粉としては、銀含有粒子が好ましい。銀含有粒子としては、銀粒子、銀合金粒子などが挙げられる。第2層は、銀粒子と銀合金粒子とを含んでもよい。第2層のより高い導電性を確保し観点からは、銀含有粒子としては銀粒子が好ましい。銀粒子は、少量の不純物を含み得る。銀含有粒子を含む第2層は、第1銀含有層であってもよく、第2銀含有層であってもよい。
第1層として金属箔を用いる場合、金属の種類は特に限定されない。金属箔には、弁作用金属(アルミニウム、タンタル、ニオブなど)または弁作用金属を含む合金を用いることが好ましい。必要に応じて、金属箔の表面を粗面化してもよい。金属箔の表面には、化成皮膜が設けられていてもよく、金属箔を構成する金属とは異なる金属(異種金属)や非金属の被膜が設けられていてもよい。異種金属や非金属としては、例えば、チタンのような金属またはカーボン(導電性カーボンなど)のような非金属などを挙げることができる。
上記の異種金属または非金属(例えば、導電性カーボン)の被膜を第1層として、上記の金属箔を第2層としてもよい。
陰極引出層が第1銀含有層を含む場合、陰極引出層全体を第1銀含有層で構成してもよく、第1層を第1銀含有層で構成してもよく、第2層を第1銀含有層で構成してもよい。例えば、陰極引出層は、導電性カーボンを含む第1層と、第1層の少なくとも一部を覆う第1銀含有層を含む第2層とを含んでもよい。
陰極引出層は、その層構成に応じて、公知の方法により形成される。例えば、陰極引出層が第1層または第2層として金属箔を含む場合には、固体電解質層または第1層の少なくとも一部を覆うように金属箔を積層することによって、第1層または第2層が形成される。導電性粒子を含む第1層は、例えば、導電性粒子と必要に応じて樹脂バインダ(水溶性樹脂、硬化性樹脂など)とを含む導電性ペーストまたは液状分散体を、固体電解質層の表面に付与することによって形成される。金属粉を含む第2層は、例えば、金属粉と樹脂バインダとを含むペーストを第1層の表面に付与することによって形成される。陰極引出層の形成過程では、必要に応じて、乾燥処理、加熱処理などを行ってもよい。
(第1導電性接着剤層)
固体電解コンデンサは、陰極リードを含む。固体電解コンデンサにおいて、陰極リードは、第1導電性接着層を介して、陰極引出層と接続されている。固体電解コンデンサが複数のコンデンサ素子を含む場合、一部のコンデンサ素子の陰極引出層と陰極リードとが第1導電性接着剤層を介して接続されていてもよい。第1導電性接着剤層によって、コンデンサ素子の陰極引出層と陰極リードとが電気的に接続される。
第1導電性接着剤層は、公知の導電性接着剤を用いて形成してもよい。公知の導電性接着剤としては、例えば、導電性粒子と樹脂バインダ(硬化性樹脂など)とを含むペーストが挙げられる。公知の導電性接着剤を用いて形成される第1導電性接着剤層は、公知の銀含有接着剤(例えば、銀含有ペースト)を用いて形成される第2銀含有層であってもよい。このような第1導電性接着剤層は、例えば、上記のペースト(銀含有ペーストを含む)を、陰極引出層と陰極リードとの間に挟持されるように配置することによって形成される。例えば、上記のペーストを陰極引出層の表面の一部に塗布または転写し、形成されたペーストの塗膜に陰極リードの一端部側の部分を重ねてもよい。第1導電性接着剤層の形成過程では、必要に応じて、乾燥処理、加熱処理などを行ってもよい。
第1導電性接着剤層は、第1銀含有層であってもよい。この場合、陰極部は、陰極引出層と陰極リードとの間に介在する第1銀含有層を含む。
(第2導電性接着剤層)
固体電解コンデンサが複数のコンデンサ素子を含む場合、複数のコンデンサ素子は、第2導電性接着剤層を介して固定されていてもよい。例えば、固体電解コンデンサが、複数のコンデンサ素子の積層体を含む場合、複数のコンデンサ素子は、第2導電性接着剤層を介して積層されていてもよい。第2導電性接着剤層は各コンデンサ素子の陰極引出層と接触していてもよい。第2導電性接着剤層によって、複数のコンデンサ素子が電気的に接続される。
第2導電性接着剤層は、公知の導電性接着剤を用いて形成してもよい。公知の導電性接着剤としては、例えば、導電性粒子と樹脂バインダ(硬化性樹脂など)とを含むペーストが挙げられる。公知の導電性接着剤を用いて形成される第2導電性接着剤層は、公知の銀含有接着剤(例えば、銀含有ペースト)を用いて形成される第3銀含有層であってもよい。このような第2導電性接着剤層は、例えば、上記のペースト(銀含有ペーストを含む)を、隣接するコンデンサ素子間に挟持されるように配置することによって形成される。例えば、上記のペーストをコンデンサ素子の陰極引出層の表面の一部に塗布または転写し、形成されたペーストの塗膜に別のコンデンサ素子を重ねてもよい。第2導電性接着剤層の形成過程では、必要に応じて、乾燥処理、加熱処理などを行ってもよい。
第2導電性接着剤層は、第1銀含有層であってもよい。この場合、隣接する固体電解コンデンサ素子は、第1銀含有層を介して固定されている。
陰極部に含まれる第1銀含有層について、以下により詳細に説明する。
(第1銀含有層)
第1銀含有層は、銀含有粒子を含む。銀含有粒子は、粒子径が1μmを超える第1銀含有粒子と粒子径が50nm以下の第2銀含有粒子とを少なくとも含む。銀含有粒子は、必要に応じて、さらに、粒子径が50nmより大きく1μm以下である第3銀含有粒子を含んでもよい。
第1銀含有層が上記のような粒子径の第1銀含有粒子と第2銀含有粒子とを含むことで、第1銀含有粒子間に第2銀含有粒子が入り込んで、銀含有粒子間の距離を短縮する効果が高まる。加えて、銀含有粒子間の接点が増加するため、第1銀含有層における抵抗をさらに低減することができる。
第1銀含有層は、銀含有粒子と有機バインダとを含む第1銀含有ペーストを用いて形成される。銀含有粒子は、第1銀含有粒子と第2銀含有粒子とを少なくとも含み、必要に応じて、第3銀含有粒子を含んでもよい。第1銀含有ペーストが、粒子径が50nm以下の第2銀含有粒子を含むことで、固体電解コンデンサの製造過程において、加熱処理を行った場合に、比較的低温で、小さな粒子径の第2銀含有粒子を、隣接する銀含有粒子と融着させることができる。よって、形成される第1銀含有層において、導電性パスを広げることができ、導電性をさらに高めることができる。そのため、第1銀含有層では、銀含有粒子は、一次粒子径が50nm以下の銀含有粒子が隣接する銀含有粒子と融着した粒子(凝集粒子と称することがある)を含んでもよい。凝集粒子は二次粒子と呼ばれることもある。このような凝集粒子は、例えば、第1銀含有ペーストに含まれる少なくとも一部の第2銀含有粒子が、隣接する銀含有粒子(例えば、第1銀含有粒子および第2銀含有粒子の少なくとも一方)と融着することによって形成される。凝集粒子は、第1銀含有ペーストに含まれる少なくとも一部の第2銀含有粒子が、第3銀含有粒子と融着することによって形成されてもよい。第1銀含有層において、凝集粒子は、粒子径に応じて、第1銀含有粒子、第2銀含有粒子、および第3銀含有粒子のいずれであってもよい。
第1銀含有層において、各銀含有粒子の粒子径は、第1銀含有層の断面画像から求められる銀含有粒子の最大径である。例えば、断面画像において観察される銀含有粒子の形状が楕円形である場合、楕円の長軸が最大径となる。断面画像において、銀含有粒子は任意の形状を取り得る。上記の凝集粒子の粒子径は、第1銀含有層の断面画像から求められる凝集粒子の最大径である。断面画像において、銀含有粒子の内部にはボイドが形成されていてもよい。断面画像から求められる銀含有粒子の粒子径(つまり、最大径)によって、銀含有粒子(上記の凝集粒子も含む)は、第1銀含有粒子、第2銀含有粒子および第3銀含有粒子に区分される。
銀含有粒子の粒子径の測定には、例えば、コンデンサ素子の第1銀含有層を含む部分の走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)による断面画像が用いられる。撮影用のサンプルは、例えば、次の手順で作製できる。まず、固体電解コンデンサを、硬化性樹脂に埋め込んで硬化性樹脂を硬化させる。硬化物を湿式研磨または乾式研磨して、陰極部の厚み方向に平行な断面(陰極部の各層の積層状態を確認可能な断面)を露出させる。露出した断面を、イオンミリングで平滑化することによって、撮影用のサンプルが得られる。
なお、第1銀含有層は、SEMによる断面画像において、銀含有粒子の粒子径および銀含有粒子の含有率などから特定される。
各銀含有粒子としては、銀粒子、銀合金粒子などが挙げられる。第1銀含有層は、銀粒子および銀合金粒子を含んでもよい。第1銀含有層のより高い導電性を確保し観点からは、銀含有粒子としては銀粒子が好ましい。銀粒子は、少量の不純物を含み得る。
第1銀含有層の固形分中の銀の含有率は、60体積%以上であり、65体積%以上であってもよい。銀の含有率が、このような範囲である場合、第1銀含有層のより高い導電性を確保する上で有利である。銀の含有率は、90体積%以下であることが好ましく、85体積%以下であってもよい。銀の含有率がこのような範囲である場合、樹脂相の含有率を相対的に大きくすることができるため、第1銀含有層のより高い密着性を確保することができる。より高い耐熱性および信頼性を確保する観点からは、銀の含有率は、74体積%以下または70体積%以下が好ましい。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。なお、第1銀含有層の固形分中の銀の含有率は、第1銀含有層中に含まれるボイド(銀含有粒子内に含まれるボイドも含む)を除く固形分全体を100体積%としたときの銀の体積比率(体積%)である。
第1銀含有層に含まれる樹脂相を構成する樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂(またはその組成物)が挙げられる。より高い密着性を確保する観点からは、硬化性樹脂(熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂など)またはその組成物が好ましい。硬化性樹脂またはその組成物は、第1銀含有層において、硬化していてもよい。高い密着性および高い耐熱性を確保しやすい観点からは、硬化性樹脂のうち、エポキシ樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂などが好ましい。第1銀含有層の樹脂相は、一種の樹脂を含んでもよく、二種以上の樹脂を組み合わせて含んでもよい。
第1銀含有層中の樹脂相の含有率は、例えば、9.5体積%以上であり、14体積%以上が好ましく、15体積%以上がより好ましい。樹脂相の含有率がこのような範囲であることによって、第1銀含有層の高い密着性および高い柔軟性を確保することができ、第1銀含有層におけるクラックの発生および第1銀含有層の剥離を抑制することができる。より高い耐熱性および信頼性を確保する観点からは、第1銀含有層中の樹脂相の含有率は、26体積%以上が好ましい。第1銀含有層中の樹脂相の含有率は、例えば、40体積%以下であり、38体積%以下が好ましく、35体積%以下であってもよい。樹脂相の含有率がこのような範囲である場合、第1銀含有層の抵抗を低く抑えることができる。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。
第1銀含有層は、ボイドを含んでもよい。ボイドは、例えば、第1銀含有層の形成過程で、液状媒体または添加剤などの揮発成分の揮発によって形成される。第1銀含有層がボイドを含む場合、第1銀含有層の柔軟性が高まり、クラックの発生を低減する上で有利である。第1銀含有層における空隙率は、例えば、5体積%以下である。
第1銀含有層の固形分中の銀の含有率、樹脂相の含有率、および空隙率は、コンデンサ素子の第1銀含有層を含む部分のSEMによる断面画像から求められる。より具体的には、SEMによる断面画像において、第1銀含有層の部分の所定の領域(例えば、5μm×5μmの領域)について、エネルギー分散型X線分析(EDX:Energy dispersive X-ray spectroscopy)による元素マッピングを行い、銀、樹脂相、および空隙のそれぞれの領域を区別して、各領域の面積比を求める。所定の領域の面積全体に占める空隙の面積の比率(面積%)を空隙率とし、銀および樹脂相の面積の合計に占める銀および樹脂相のそれぞれの比率(面積%)を、固形分に占める銀の含有率(面積%)および樹脂成分の含有率(面積%)とする。複数の視野(例えば、5視野)について、同様の分析を行い、平均化する。得られた平均値を、第1銀含有層中の空隙率(体積%)、第1銀含有層の固形分中の銀の含有率(体積%)および樹脂の含有率(体積%)とする。SEMによる断面画像は、粒子径の測定の場合と同様の手順で得られる。SEMによる断面画像の倍率は、1000倍以上50000倍以下とする。
第1銀含有層の断面の5μm×5μmの領域Rにおいて、粒子径が1μmより大きい第1銀含有粒子が占める面積S1と、それ以外の銀含有粒子(第2銀含有粒子および第3銀含有粒子)が占める面積S2との比(=S1/S2)は、例えば、10/90~90/10であり、20/80~90/10であってもよく、40/60~90/10であってもよく、20/80~85/15であってもよい。領域Rにおいて、面積S2に対応する部分には、少なくとも5個の第2銀含有粒子が確認できることが好ましい。このような場合、第1銀含有層では、抵抗を低く抑えることができ、より密着性を確保することができる。面積S1と面積S2との合計は、上述の第1銀含有層の固形分中の銀の含有率の場合に準じて求められる。面積S1は、上述のSEMによる断面図から、画像解析によって求められる。面積S1は、複数の視野(例えば5視野)について求めた平均値である。面積S1および面積S2との合計から、面積S1を差し引くことによって面積S2が求められる。
第1銀含有層の厚さは、例えば、0.5μm以上100μm以下であり、1μm以上50μm以下であってもよい。第1銀含有層のより高い密着性を確保できるとともに、抵抗をより低く保ち易い観点からは、第1銀含有層の厚さは、1μm以上20μm以下であってもよい。
第1銀含有層の厚さは、上述のSEMによる断面画像において、第1銀含有層の厚さを、複数箇所(例えば、10箇所)について計測し、平均化することによって求められる。
第1銀含有層は、第1銀含有ペーストを、陰極部を構成する少なくとも1つの層の少なくとも一部を覆うように付与することによって形成することができる。そのため、固体電解コンデンサの製造方法において、陰極部を形成する工程は、このような第1銀含有層を形成する工程を含む。陰極部を構成する少なくとも1つの層としては、陰極部において第1銀含有層と接触する層、例えば、固体電解質層、陰極引出層、陰極引出層を構成する第1層または第2層、および陰極リードが挙げられる。陰極部を構成する少なくとも1つの層の少なくとも一部を覆うように付与された第1銀含有ペーストの塗膜には、必要に応じて、乾燥処理および加熱処理の少なくとも一方を行ってもよい。
第1銀含有ペーストは、銀含有粒子および有機バインダを含み、必要に応じて、液状媒体を含んでもよい。なお、液状媒体は、第1銀含有ペーストを付与する温度において液状の媒体であればよく、室温(例えば、20℃~35℃)で液状の媒体であってもよい。液状媒体としては、例えば、有機溶媒が用いられる。液状媒体として、有機溶媒と水とを併用してもよい。第1銀含有ペーストは、必要に応じて、他の添加剤を含んでもよい。第1銀含有ペーストが液状媒体を含む場合には、上記の乾燥処理を行うことで、塗膜中に含まれる液状媒体を除去することができる。
銀含有粒子は、第1銀含有粒子および第2銀含有粒子を含む。銀含有粒子は、第3銀含有粒子を含んでもよい。これらの銀含有粒子については、第1銀含有層について記載した第1銀含有粒子、第2銀含有粒子、および第3銀含有粒子についての説明を参照できる。
第1銀含有ペースト中の銀および有機バインダの総量に占める銀の体積比率は、例えば、第1銀含有層の固形分中の銀の含有率について記載した範囲から選択できる。
第1銀含有ペースト中の第1銀含有粒子と第2銀含有粒子との体積比(=第1銀含有粒子/第2銀含有粒子)は、例えば、10/90~90/10であり、20/80~90/10であってもよく、40/60~90/10であってもよく、20/80~85/15であってもよく、20/80~83/17であってもよい。体積比がこのような範囲である場合、低抵抗かつ、密着性がより高い第1銀含有層を形成できる。
第1銀含有ペーストにおける各銀含有粒子の粒子径は、第1銀含有ペーストから分離した銀含有粒子の体積基準の粒度分布から決定される。銀含有粒子の体積基準の粒度分布は、動的光散乱法の粒度分布測定装置を用いて測定される。動的光散乱法による粒度分布測定装置としては、例えば、大塚電子社製の光散乱光度計DLS-8000が用いられる。
なお、第1銀含有ペーストに含まれる銀含有粒子の体積基準の粒度分布の測定には、第1銀含有ペーストから分離した銀含有粒子を含む分散液が用いられる。分散液は、例えば、次の手順で準備される。まず、所定量の第1銀含有ペーストを採取し、有機バインダを溶解する有機溶剤を添加して希釈する。希釈物を遠心分離することにより、固体(試料A)と液体(液体I)とに分離する。固体の試料Aを、有機バインダを溶解する有機溶剤で洗浄し、乾燥させることによって、銀含有粒子(試料B)が得られる。このとき、有機溶剤での洗浄により得られる液体(液体II)は別途回収する。試料Bを、分散剤を用いて、液状の分散媒に分散させることにより粒度分布測定用の分散液が調製される。分散媒としては、例えば、室温(例えば、20℃~35℃)で液状の有機媒体が用いられる。分散剤の種類および濃度、分散媒の種類、ならびに分散液中の試料Bの濃度のそれぞれは、粒度分布の測定に適した分散液を調製できる範囲で選択すればよい。
第1銀含有粒子と第2銀含有粒子との体積比は、上記の動的光散乱法によって測定した粒度分布から求められる。上記の第1銀含有粒子の体積比率および第2銀含有粒子の体積比率の合計は、上記の動的光散乱法によって測定した粒度分布から求められる所定量の第1銀含有ペーストに含まれる双方の銀含有粒子の体積と、所定量の第1銀含有ペーストに含まれる有機バインダの体積とから算出される。上記の液体Iおよび液体IIを混合し、濃縮して、液状媒体を除去し、得られる残渣の体積が有機バインダの体積に相当する。
第1銀含有ペーストに含まれる有機バインダとしては、第1銀含有層の樹脂相を構成する樹脂について記載した熱可塑性樹脂、硬化性樹脂またはその組成物が挙げられる。なお、第1銀含有ペーストに含まれる有機バインダは硬化性樹脂を含み、さらに、硬化性樹脂の組成物を構成し得る添加剤(硬化剤、硬化促進剤、触媒など)を含んでもよい。第1銀含有ペーストが熱硬化性樹脂またはその組成物を含む場合には、上記の加熱工程を行うことで、熱硬化性樹脂を硬化させることができる。加熱温度は、有機バインダの組成に応じて決定すればよい。
形成された第1銀含有層は、必要に応じて、150℃以上260℃以下の温度で加熱してもよい。第1銀含有ペーストは粒子径が小さな第2銀含有粒子を含むため、このような温度での加熱処理を行った場合に、第2銀含有粒子を隣接する銀含有粒子と融着させることができる。よって、第1銀含有層の抵抗をさらに低減できる。加熱温度は、150℃以上230℃以下であってもよい。このような加熱処理は、第1銀含有層を形成した後の適当な段階で行うことができる。例えば、加熱処理は、第1銀含有層を形成した後、かつ樹脂外装体またはケースを用いて封止する前に行ってもよく、封止後に行ってもよい。有機バインダが熱硬化性樹脂またはその組成物を含む場合には、熱硬化性樹脂またはその組成物の硬化をこのような加熱処理によって行ってもよい。加熱処理の時間は、例えば、10秒分以上2時間以下であり、1分以上1時間以下であってもよい。
(その他)
固体電解コンデンサは、巻回型であってもよく、チップ型または積層型のいずれであってもよい。例えば、固体電解コンデンサは、2つ以上のコンデンサ素子の積層体を備えていてもよい。固体電解コンデンサが複数のコンデンサ素子を含む場合、各コンデンサ素子は、例えば、巻回型であってもよく、積層型であってもよい。コンデンサ素子の構成は、固体電解コンデンサのタイプに応じて、選択すればよい。
金属箔を陰極引出層に用いる場合、金属箔と陽極体との間にはセパレータを配置してもよい。セパレータとしては、特に制限されず、例えば、セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ビニロン、ポリアミド(例えば、脂肪族ポリアミド、アラミドなどの芳香族ポリアミド)の繊維を含む不織布などを用いてもよい。
コンデンサ素子において、陰極引出層には、陰極リードの一端部が電気的に接続される。陽極体には、陽極リードの一端部が電気的に接続される。陽極リードの他端部および陰極リードの他端部は、それぞれ樹脂外装体またはケースから引き出される。樹脂外装体またはケースから露出した各リードの他端部は、固体電解コンデンサを搭載すべき基板との半田接続などに用いられる。各リードとしては、リード線を用いてもよく、リードフレームを用いてもよい。
コンデンサ素子は、樹脂外装体またはケースを用いて封止される。例えば、コンデンサ素子および外装体の材料樹脂(例えば、未硬化の熱硬化性樹脂およびフィラー)を金型に収容し、トランスファー成型法、圧縮成型法等により、コンデンサ素子を樹脂外装体で封止してもよい。このとき、コンデンサ素子から引き出された、陽極リードの他端部側の部分および陰極リードの他端部側の部分を、それぞれ金型から露出させる。また、コンデンサ素子を、陽極リードの他端部側の部分および陰極リードの他端部側の部分が有底ケースの開口側に位置するように有底ケースに収納し、封止体で有底ケースの開口を封口することにより固体電解コンデンサを形成してもよい。
図1は、本開示の一実施形態に係る固体電解コンデンサの構造を概略的に示す断面図である。図1に示すように、固体電解コンデンサ1は、コンデンサ素子2と、コンデンサ素子2を封止する樹脂外装体3と、樹脂外装体3の外部にそれぞれ少なくともその一部が露出する陽極リード4および陰極リード5と、を備えている。陽極リード4および陰極リード5は、例えば銅または銅合金などの金属で構成することができる。樹脂外装体3は、ほぼ直方体の外形を有しており、固体電解コンデンサ1もほぼ直方体の外形を有している。
コンデンサ素子2は、陽極体6と、陽極体6を覆う誘電体層7と、誘電体層7を覆う陰極部8とを備える。陰極部8は、誘電体層7を覆う固体電解質層9と、固体電解質層9を覆う陰極引出層10と、導電性接着剤により形成される第1導電性接着剤層14Aとを備えている。陰極引出層10と陰極リード5とは第1導電性接着剤層14Aを介して電気的に接続している。陰極引出層10は、固体電解質層9を覆う第1層11と、第1層を覆う第2層12とを備える。例えば、第2層12および第1導電性接着剤層14Aの少なくとも一方を上記の第1銀含有層で構成してもよい。
陽極体6は、陰極部8と対向する領域と、対向しない領域とを含む。陽極体6の陰極部8と対向しない領域のうち、陰極部8に隣接する部分には、陽極体6の表面を帯状に覆うように絶縁性の分離部13が形成され、陰極部8と陽極体6との接触が規制されている。陽極体6の陰極部8と対向しない領域のうち、他の一部は、陽極リード4と、溶接により電気的に接続されている。
図2は、他の実施形態に係る固体電解コンデンサに含まれるコンデンサ素子を模式的に示す断面図である。図2では、3つのコンデンサ素子102A、102Bおよび102Cが第2導電性接着剤層14Bを介して積層されている。図2では、便宜的に、これらのコンデンサ素子の積層体部分のみを記載しており、誘電体層は省略されている。図2では、3つのコンデンサ素子が積層されており、第2導電性接着剤層14Bが設けられている点で、図1とは異なるものの、これら以外の構成は、図1についての説明を参照できる。
図2では、コンデンサ素子102A、102Bおよび102Cのそれぞれは、図1の場合と同様に、陽極体6と、陽極体6を覆う誘電体層と、誘電体層を覆う陰極部108とを備えている。陰極部108は、誘電体層を覆う固体電解質層9と、固体電解質層9を覆う陰極引出層10とを備えている。隣接するコンデンサ素子102Aとコンデンサ素子102Bとは、導電性接着剤により形成される第2導電性接着剤層14Bを介して固定されている。同様に、コンデンサ素子102Bとコンデンサ素子102Cとは、第2導電性接着剤層14Bを介して固定されている。第2導電性接着剤層14Bも陰極部108に含まれる。陰極部108は、陰極引出層10の少なくとも一部、および第2導電性接着剤層14Bの少なくともいずれかを上記の第1銀含有層で構成してもよい。コンデンサ素子102A、102Bおよび102Cの積層体では、一部のコンデンサ素子に陰極リードが接続されていてもよい。陰極リードが接続されるコンデンサ素子の陰極引出層10と陰極リードとの間に、第1導電性接着剤層が形成される。このような第1導電性接着剤層を上記の第1銀含有層で構成してもよい。
[実施例]
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
《実施例1~3および比較例1~2》
下記の要領で、コンデンサ素子を作製し、その特性を評価した。
(1)陽極体の準備
基材としてのアルミニウム箔(厚み:100μm)の両方の表面をエッチングにより粗面化することで、陽極体を作製した。
(2)誘電体層の形成
陽極体の他端部側の部分を、化成液に浸漬し、10Vの直流電圧を、20分間印加して、酸化アルミニウムを含む誘電体層を形成した。
(3)固体電解質層の形成
ピロールモノマーとp-トルエンスルホン酸とを含む水溶液を調製した。この水溶液中のモノマー濃度は、0.5mol/Lであり、p-トルエンスルホン酸の濃度は0.3mol/Lとした。
得られた水溶液に、上記(2)で誘電体層が形成された陽極体と、対電極とを浸漬し、25℃で、重合電圧3V(銀参照電極に対する重合電位)で電解重合を行うことにより、固体電解質層を形成した。
(4)陰極部の形成
上記(3)で得られた陽極体を、黒鉛粒子を水に分散した分散液に浸漬し、分散液から取り出し後、乾燥することにより、少なくとも固体電解質層の表面に第1層(カーボン層)を形成した。乾燥は、150℃で30分間行った。
次いで、第1層の表面に、第1銀含有粒子および第2銀含有粒子の少なくとも一方と、有機バインダとしてのエポキシ樹脂とを含む銀含有ペーストを塗布し、210℃で10分間加熱することによって銀含有層である第2層を形成した。加熱によってエポキシ樹脂は硬化物に変換される。このようして、第1層と第2層とで構成される陰極引出層を形成した。第1銀含有粒子および第2銀含有粒子としては、銀粒子を用いた。第2層の厚さは、約10μmであった。
銀含有ペーストは、銀含有粒子、必要に応じて有機バインダおよび液状媒体(または有機バインダを含む分散液または溶液)を混合することにより調製した。このとき、いずれも第1銀含有ペーストについて既述の手順で求められる、銀含有ペースト中の銀および有機バインダの総量に占める銀の体積比率(体積%)、第1銀含有粒子および第2銀含有粒子の体積比が、表1に示す値となるように、銀含有ペーストを調製する際の各成分の配合量を調節した。なお、銀粒子として第2銀含有粒子のみを含む銀含有ペーストとしては、第2銀含有粒子と揮発性の分散剤と揮発性の液状媒体とを含む銀含有ペーストを用いた。
上記のようにして、コンデンサ素子を作製した。同様にして、合計20個のコンデンサ素子を作製した。得られたコンデンサ素子を後述の評価に用いた。
得られた実施例において、第2層(第1銀含有層)の断面をSEM画像によって観察したところ、一次粒子径が50nm以下の銀含有粒子が周囲の銀含有粒子と溶着した凝集粒子が確認された。また、比較例2のコンデンサ素子の第2層の断面をSEM画像によって観察したところ、第2層全体で一次粒子径が50nm以下の銀含有粒子が周囲の銀含有粒子と溶着していた。
(5)固体電解コンデンサの組み立て
上記(4)で得られたコンデンサ素子の陰極引出層と、陰極リードの一端部とを導電性接着剤を用いて接合する。また、陽極体の、固体電解質層および陰極引出層に覆われていない部分の一端部と、陽極リードの一端部とをレーザー溶接により接合する。そして、コンデンサ素子の周囲に、モールド成形によって、絶縁性樹脂で形成された樹脂外装体を形成する。このとき、陽極リードの他端部と、陰極リードの他端部とは、樹脂外装体から引き出した状態とする。固体電解コンデンサは、このようにして組み立てられる。
《実施例4~6および比較例3~4》
比較例1と同様にして2つのコンデンサ素子を作製した。一方のコンデンサ素子の陰極引出層の表面に、銀含有ペーストを塗布し、他方のコンデンサ素子の陰極引出層が銀含有ペーストの塗膜に接触するように、2つのコンデンサ素子を重ね合わせた。また、この状態で、210℃で10分加熱することによって、陰極引出層間に介在する第2導電性接着剤層を形成した。このようにしてコンデンサ素子の積層体を合計20個作製した。得られた積層体を後述の評価に用いた。
銀含有ペーストは、銀含有粒子、必要に応じて有機バインダおよび液状媒体(または有機バインダを含む分散液または溶液)を混合することにより調製した。このとき、いずれも第1銀含有ペーストについて既述の手順で求められる、銀含有ペースト中の銀およびバインダの総量に占める銀の体積比率(体積%)、第1銀含有粒子および第2銀含有粒子の体積比が、表2に示す値となるように、銀含有ペーストを調製する際の各成分の配合量を調節した。なお、銀粒子として第2銀含有粒子のみを含む銀含有ペーストとしては、第2銀含有粒子と揮発性の分散剤と揮発性の液状媒体とを含む銀含有ペーストを用いた。
《実施例7~9および比較例5~6》
実施例4~6および比較例3~4と同様にして、コンデンサ素子の積層体をそれぞれ合計20個作製した。各積層体においてコンデンサ素子の陰極引出層の表面が露出した部分に、銀含有ペーストを塗布し、リードフレームを重ねて、210℃で10分加熱した。このようにして、陰極引出層とリードフレームとの間に介在する第1導電性接着剤層を形成した。このようにして得られたリードフレームが接合されたコンデンサ素子の積層体を後述の評価に用いた。銀含有ペーストとしては、それぞれ、実施例4~6および比較例3~4で第2導電性接着剤層の形成に用いた銀含有ペーストを用いた。
《実施例10~12および比較例7》
陰極引出層の第2層において、いずれも第1銀含有ペーストについて既述の手順で求められる、銀含有ペースト中の銀および有機バインダの総量に占める銀の体積比率(体積%)、第1銀含有粒子および第2銀含有粒子の体積比が、表3に示す値となるように、銀含有ペーストを調製する際の各成分の配合量を調節した。このような銀含有ペーストを用いて表3に示す厚さの第2層を形成したこと以外は、実施例1と同様にしてコンデンサ素子を合計20個作製した。得られたコンデンサ素子を後述の評価に用いた。
[評価]
コンデンサ素子またはコンデンサ素子の積層体を用いて、下記の評価を行った。
(a)初期のESR
実施例1~9および比較例1~6について、20℃の環境下で、4端子測定用のLCRメータを用いて、各コンデンサ素子またはコンデンサ素子の積層体の周波数100kHzにおける初期のESR(mΩ)を測定した。そして、初期のESRについて20個のコンデンサ素子またはコンデンサ素子の積層体における平均値を求めた。実施例1~3および比較例2の初期のESRは、比較例1の初期のESRを100%としたときの比率で表した。実施例4~6および比較例4の初期のESRは、比較例3の初期のESRを100%としたときの比率で表した。実施例7~9および比較例6の初期のESRは、比較例5の初期のESRを100%としたときの比率で表した。
(b)加速試験後のESR
実施例10~12および比較例7について、コンデンサ素子を、145℃環境下で500時間、無負荷で静置することにより加速試験を行った。加速試験後のESRを、上記(a)の初期のESRの場合と同様の手順で、20℃環境下で測定し、20個のコンデンサ素子のESRの中央値を求めた。各コンデンサ素子の加速試験におけるESRは、比較例7のESRの中央値を100%としたときの比率で表した。
評価結果を表1~表3に示す。E1~E12は実施例1~12であり、C1~C7は比較例1~7である。実施例のコンデンサ素子において、既述の手順で求められる第1銀含有層における空隙率は、5体積%以下であった。また、比較例1のコンデンサ素子では、第2層にはボイドはほとんど確認されなかった。比較例2のコンデンサ素子において、第1銀含有層の場合と同様の手順で求められる第2層における空隙率は、約40%であった。
Figure 2022131169000002
表1に示されるように、銀含有粒子として第2銀含有粒子のみを用いて陰極引出層の第2層を形成すると、銀含有粒子として第1銀含有粒子のみを用いた場合に比べて、第2層中の銀含有粒子の含有率は高いにも拘わらず、初期のESRは30%も増加した(C1とC2との比較)。C2では、第2層全体において、第2銀含有粒子が周囲の第2銀含有粒子と融着した状態であったため、第2層ではある程度高い導電性が得られていると考えられる。それにも拘わらず、C2において初期のESRがC1に比べて30%も高くなったのは、樹脂相を含まないことで、第1層と第2層との間の密着性が低下し、剥離が発生したことによると考えられる。
C1およびC2の結果からは、第2層が第1銀含有粒子と第2銀含有粒子との双方を含む場合にも、ESRが低下するとは予想できない。ところが、実際に、第2層において、第1銀含有粒子と第2銀含有粒子とを併用すると、初期のESRを低く抑えることができる(E1~E3)。これは、樹脂相によって第1層と第2層との密着性が向上することで、第1層と第2層との間の剥離による層間の界面抵抗の増加が抑えられるとともに、第1銀含有粒子の高いバルク導電性、銀含有粒子同士の接点の増加などによって、第2層においても高い導電性が得られたためと考えられる。
Figure 2022131169000003
表2に示されるように、第1導電性接着剤層または第2導電性接着剤層を第1銀含有層としても、初期のESRを低減する効果が得られる
Figure 2022131169000004
表3に示されるように、実施例では、145℃で500時間の加速試験後でも、ESRの増加が抑制されている。このように、実施例では、高い耐熱性が得られ、優れた信頼性を確保できる。
本開示の固体電解コンデンサは、初期のESRが低く抑えられており、優れたコンデンサ性能を有する。また、固体電解コンデンサは、高い耐熱性および高い信頼性を有している。そのため、固体電解コンデンサは、様々な用途に用いることができる。
1:固体電解コンデンサ、2、102A、102B、102C:コンデンサ素子、3:樹脂外装体、4:陽極リード、5:陰極リード、6:陽極体、7:誘電体層、8、108:陰極部、9:固体電解質層、10:陰極引出層、11:第1層、12:第2層、13:分離部、14A:第1導電性接着剤層、14B:第2導電性接着剤層

Claims (11)

  1. 陽極体と、前記陽極体の表面に形成された誘電体層と、前記誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部と、を含む少なくとも1つの固体電解コンデンサ素子を含み、
    前記陰極部は、前記誘電体層の少なくとも一部を覆う固体電解質層を含むとともに、前記陰極部の少なくとも一部に、銀含有粒子と、樹脂相と、を含む銀含有層を含み、
    前記銀含有粒子は、粒子径が1μmを超える第1銀含有粒子と粒子径が50nm以下の第2銀含有粒子とを含み、
    前記銀含有層の固形分中の銀の含有率は、60体積%以上90体積%以下である、固体電解コンデンサ。
  2. 前記銀含有層の固形分中の銀の含有率は、85体積%以下である、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
  3. 前記銀含有層は、ボイドを含む、請求項1または2に記載の固体電解コンデンサ。
  4. 前記銀含有粒子は、一次粒子径が50nm以下の銀含有粒子が隣接する銀含有粒子と融着した凝集粒子を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
  5. 前記陰極部は、前記固体電解質層の少なくとも一部を覆う陰極引出層を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
  6. 前記陰極引出層は、導電性カーボンを含むとともに前記固体電解質層の少なくとも一部を覆う第1層と、前記第1層の少なくとも一部を覆う第2層とを含み、
    前記第2層は、前記第1層の少なくとも一部を覆う前記銀含有層を含む、請求項5に記載の固体電解コンデンサ。
  7. さらに陰極リードを含み、
    前記陰極引出層と前記陰極リードとの間に介在する前記銀含有層を含む、請求項5または6に記載の固体電解コンデンサ。
  8. 複数の前記固体電解コンデンサ素子を含み、
    隣接する前記固体電解コンデンサ素子が、前記銀含有層を介して固定されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
  9. 前記銀含有層の厚さは、1μm以上20μm以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
  10. 陽極体と、前記陽極体の表面に形成された誘電体層と、前記誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部と、を含む少なくとも1つの固体電解コンデンサ素子を含む固体電解コンデンサの製造方法であって、
    前記誘電体層の少なくとも一部を覆うように前記陰極部を形成する工程を含み、
    前記陰極部は、前記誘電体層の少なくとも一部を覆う固体電解質層を含むとともに、前記陰極部の少なくとも一部に、銀含有粒子と、樹脂相と、を含む銀含有層を含み、
    前記陰極部を形成する工程は、粒子径が1μmを超える第1銀含有粒子と、粒子径が50nm以下の第2銀含有粒子と、有機バインダと、を含む銀含有ペーストを、前記陰極部を構成する少なくとも1つの層の少なくとも一部を覆うように付与することによって、前記銀含有層を形成する工程を含み、
    前記銀含有ペースト中の銀および前記有機バインダの総量に占める銀の体積比率は、60体積%以上90体積%以下である、固体電解コンデンサの製造方法。
  11. 前記銀含有層を形成する工程は、前記陰極部を構成する少なくとも1つの層の少なくとも一部を覆うよう形成された前記銀含有ペーストの塗膜を、前記150℃以上260℃以下の温度で加熱する工程を含む、請求項10に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
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