JP2022127114A - 電力変換装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】半導体素子の劣化を検知可能な電力変換装置を提供すること。【解決手段】第1主電極と第2主電極とを有するパワー半導体素子と、前記第1主電極に電気的に接続された第1端子と、前記第2主電極に電気的に接続された第2端子と、前記第1端子及び前記第2端子の両端子間の電圧を検出する電圧検出部と、前記パワー半導体素子の温度を検出する温度検出部と、前記両端子間が導通状態で検出された前記電圧を、前記両端子間が導通状態で検出された前記温度に応じて変化する閾値電圧と比較することで、前記パワー半導体素子の劣化を判定する制御部とを備える、電力変換装置。【選択図】図2
Description
本開示は、電力変換装置に関する。
近年、電力変換装置は、高信頼化が求められる用途(電力系統や移動体など)に拡大し、それに伴い、電力変換装置の高信頼化の要求が高まっている。この要求に対して、故障を予知して事前に対策を講ずる予知保全の実現への期待が高まっている。
一方、電力変換装置の主な故障要因の一つとしてパワー半導体モジュールが挙げられる。パワー半導体モジュールの主な故障は、電流導通やスイッチング動作によって繰り返し発生する熱応力ストレスがボンディングワイヤ及びはんだを劣化させることで生ずることが知られている。ボンディングワイヤ及びはんだの劣化が進むと、パワー半導体モジュールがオン状態(導通状態)にあるときの主端子間の導通抵抗は増加するので、パワー半導体モジュールが導通状態にあるときの主端子間の電圧Vonは上昇する。したがって、理論上は、電圧Vonの上昇を検出することで、パワー半導体モジュールの劣化を検出できるとされている。
しかしながら、実際には、劣化に伴う電圧Vonの上昇は、主端子間に流れる電流の変化やパワー半導体モジュールの温度の変化に伴う電圧Vonの上昇よりも小さいため、劣化に伴う電圧Vonの上昇を検出することは容易ではない。
そこで、電圧Vonの温度依存性が最も小さくなる電流値IXで電圧Vonを検出することで、電圧Vonの電流依存性及び温度依存性を最小限に抑制する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
ところが、電流値IXにおける電圧Vonは、パワー半導体素子の種類によって異なり、電流値IXは、パワー半導体素子の定格電流付近である場合が多い。この場合、定格電流付近の電流値IXで電圧Vonを検出するため、中軽負荷での運転がメインの用途では、電圧Vonを必要な頻度で検出できない可能性がある。その結果、例えば、半導体素子の劣化が進行するおそれがある。
本開示は、半導体素子の劣化を検知可能な電力変換装置を提供する。
本開示の一態様では、
第1主電極と第2主電極とを有するパワー半導体素子と、
前記第1主電極に電気的に接続された第1端子と、
前記第2主電極に電気的に接続された第2端子と、
前記第1端子及び前記第2端子の両端子間の電圧を検出する電圧検出部と、
前記パワー半導体素子の温度を検出する温度検出部と、
前記両端子間が導通状態で検出された前記電圧を、前記両端子間が導通状態で検出された前記温度に応じて変化する閾値電圧と比較することで、前記パワー半導体素子の劣化を判定する制御部とを備える、電力変換装置が提供される。
第1主電極と第2主電極とを有するパワー半導体素子と、
前記第1主電極に電気的に接続された第1端子と、
前記第2主電極に電気的に接続された第2端子と、
前記第1端子及び前記第2端子の両端子間の電圧を検出する電圧検出部と、
前記パワー半導体素子の温度を検出する温度検出部と、
前記両端子間が導通状態で検出された前記電圧を、前記両端子間が導通状態で検出された前記温度に応じて変化する閾値電圧と比較することで、前記パワー半導体素子の劣化を判定する制御部とを備える、電力変換装置が提供される。
本開示の一態様によれば、半導体素子の劣化を検知できる。
以下、本開示に係る複数の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、第1実施形態に係る電力変換装置の全体構成例を示す図である。図1に示す電力変換装置101は、直流電源部3から供給される直流電力を、負荷4に供給する交流電力に変換する主回路部1と、主回路部1の電力変換動作を制御する制御部2とを備える。図1は、主回路部1が直流電力を三相の交流電力に変換する形態を例示する。
主回路部1は、図1に示す例では、複数のパワー半導体モジュール11~16、複数のゲート駆動部21~26及び電流検出部30を備える。
なお、図1には、パワー半導体モジュールとして、インバータの1アーム分のIGBTチップ及びそれと逆並列に接続されたダイオードチップ(FWDチップ)が組み込まれた1in1パッケージのIGBTモジュールが例示されている。IGBTは、Insulated Gate Bipolar Transistorの略語であり、IGBTチップは、パワー半導体素子の一例であり、FWDチップは、整流素子の一例である。しかしながら、パワー半導体モジュールのパッケージ構成は、6in1などの他の種類のパッケージ構成でもよいし、パワー半導体モジュールに構成されるパワー半導体素子は、MOSFETなどの他の種類のパワー半導体素子でもよい。MOSFETは、Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略語である。さらに、複数のパワー半導体モジュール11~16は、それぞれ同じ構成であり、複数のゲート駆動部21~26は、それぞれ同じ構成である。そのため、以下では、便宜上、u相の上アームを例に挙げて説明する。
図1に示す例では、u相の上アームのパワー半導体モジュール11は、IGBTチップQ1、FWDチップD1及び温度検出用のダイオード11dを有する。また、パワー半導体モジュール11は、第1主端子C1、第2主端子E1、ゲート端子SG1、エミッタ端子SE1、センスアノード端子SA1及びセンスカソード端子SK1を有する。第1主端子C1は、第1端子の一例であり、第2主端子E1は、第2端子の一例であり、ゲート端子SG1は、制御端子の一例である。
IGBTチップQ1は、コレクタ電極11c、エミッタ電極11e及びゲート電極11gを有するスイッチング素子(半導体素子)の一例である。コレクタ電極11cは、第1主電極の一例であり、エミッタ電極11eは、第2主電極の一例であり、ゲート電極11gは、制御電極の一例である。
FWDチップD1は、アノード電極11a及びカソード電極11kを有する整流素子(半導体素子)の一例である。
第1主端子C1は、少なくとも一つの接続部材(例えば、ボンディングワイヤ、はんだなど)を介して、コレクタ電極11c及びカソード電極11kが電気的に接続されている。第2主端部E1は、少なくとも一つの接続部材を介して、エミッタ電極11e及びアノード電極11aに電気的に接続される。ゲート端子SG1は、少なくとも一つの接続部材を介して、ゲート電極11gに電気的に接続されている。エミッタ端子SE1は、少なくとも一つの接続部材を介して、エミッタ電極11e及びアノード電極11aに電気的に接続されている。センスアノード端子SA1は、少なくとも一つの接続部材を介して、温度検出用のダイオード11dのアノードに電気的に接続されている。センスカソード端子SK1は、少なくとも一つの接続部材を介して、温度検出用のダイオード11dのカソードに電気的に接続されている。
ゲート駆動部21は、プリドライバーPD1、温度検出回路Temp1及び電圧検出回路Vce1を備える駆動回路である。
プリドライバーPD1は、制御部2から供給されるオン又はオフのスイッチング指令S1に応じて、IGBTチップQ1のゲート電極11gを駆動する回路である。
温度検出回路Temp1は、パワー半導体モジュール11内のIGBTチップQ1およびFWDチップD1のそれぞれに組み込まれた温度検出用のダイオード11dにそれぞれ定電流を供給する温度検出部(特許請求の範囲の「温度検出部」)の一例である。温度検出回路Temp1は、ダイオード11dの電圧降下をモニタすることで、IGBTチップ温度Tj,igbt1及びFWDチップ温度Tj,fwd1を検出して制御部2へ送信する。
電圧検出回路Vce1は、パワー半導体モジュール11のIGBTチップQ1側またはFWDチップD1側がオン状態のときの主端子間の電圧Vce_on1を検出し、制御部2へ送信する。主端子間とは、第1主端子C1と第2主端子C2との間である。
電流検出部30は、パワー半導体モジュール11~16と負荷4との間に流れる三相の交流電流iu,iv,iwを検出して制御部2へ送信する電流センサである。
制御部2は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ及びメモリを備える制御装置である。制御部2の機能は、メモリに記憶されたプログラムによって、プロセッサが動作することにより実現される。制御部2の機能は、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)によって実現されてもよい。
図2は、IGBTチップ側の劣化を検知する機能ブロックの第1構成例を示す図である。図3は、IGBTチップ側の劣化を検知する機能ブロックの第1構成例の各部の波形を例示する図である。第1実施形態に係る電力変換装置101の制御部2は、図2に示す劣化検知機能を備えてもよい。
制御部2は、IGBTチップ側のオン電圧データを格納する格納部41と、判定レベルを調整する調整部42と、IGBTチップ側の故障予兆を判定する判定部43と、u相の交流電流iu(負荷電流Iu)の下限を制限する制限部44とを有する。
制限部44は、電流検出部30により検出された負荷電流Iuがゼロ以下の値のときゼロを出力し、ゼロを超える値のとき負荷電流Iuの値をそのまま出力し、その出力値をIu_pとする。
格納部41には、電力変換装置101の出荷時もしくは初期運転時における、スイッチング指令S1がオンの期間に第1主端子C1から第2主端子E1に電流が導通しているときの主端子間の電圧Vce_ini1が格納されている。主端子間とは、第1主端子C1と第2主端子E1との間である。電圧Vce_ini1は、主端子間を流れる電流(出力値Iu_p)およびIGBTチップ温度Tj,igbt1に対する依存データとして格納部41に保存されている。
格納部41には、電力変換装置101の運転時における、IGBTチップ温度Tj,igbt1および出力値Iu_pが入力され、これらの値が前記依存データと照合され、これらの値に対応する電圧Vce_ini1が出力される。
調整部42は、あらかじめ設定した倍率を電圧Vce_ini1に乗算することで得られる閾値Vce_th1を出力する。図2に示す例では、その倍率を1.05倍としている。
判定部43は、電力変換装置101の運転時において、スイッチング指令S1がオンの期間で第1主端子C1から第2主端子E2に電流が導通しているときの主端子間の電圧Vce_on1を閾値Vce_th1と比較する。判定部43は、電圧Vce_on1が閾値Vce_th1を超えた時点で、IBGTチップ側の劣化がある(故障予兆がある)ことを表す判定値を出力する。
制御部2は、故障予兆があることを表す判定値が判定部43から出力されると、IGBTチップQ1の故障予兆があることを、電力変換装置101の外部機器やユーザへ通知する。制御部2は、IGBTチップQ1を搭載するパワー半導体モジュール11の故障予兆があることを通知しても、パワー半導体モジュール11を搭載する主回路部1の故障予兆があることを通知しても、主回路部1を搭載する電力変換装置101の故障予兆があることを通知してもよい。故障予兆があることが通知されることで、IGBTチップQ1側の故障が発生する前に、保全対応を行うことが可能となる。
なお、図3は、便宜上、連続波形を示しているが、実際には、制御部2は、マイコン等によって構成されることが想定されるため、制御部2内部での演算処理は、離散値を扱う。また、電圧Vce_on1は、電力変換装置101の運転中に検出されるため、ノイズの影響を受けやすく、故障予兆の判定の誤動作につながりかねない。これを防止するためには、例えば、判定部43は、故障予兆があると判定した回数が、所定の期間内で複数回ある場合、故障予兆があることを表す判定値を出力してもよい。
このように、図2に示す制御部2は、主端子間が導通状態で電圧検出回路Vce1により検出された電圧Vce_on1を、主端子間が導通状態で温度検出回路Temp1により検出されたIGBTチップ温度Tj,igbt1に応じて変化する電圧Vce_ini1(閾値Vce_th1)と比較することで、IGBTチップQ1の劣化を判定できる。電圧Vce_ini1(閾値Vce_th1)は、主端子間が導通状態で検出されたIGBTチップ温度Tj,igbt1および出力値Iu_pに応じて変化する値である。図2に示す例では、制御部2は、第1主端子C1から第2主端子E1に電流が流れている状態で検出された電圧Vce_on1を、第1主端子C1から第2主端子E1に電流が流れている状態で検出されたIGBTチップ温度Tj,igbt1に応じて変化する電圧Vce_ini1(閾値Vce_th1)と比較する。
また、制御部2は、図2と同様の構成を備えることで、他のIGBTチップQ2~Q6の劣化を判定できる。
なお、IGBTチップ等のパワー半導体素子の劣化には、パワー半導体素子自体の劣化だけでなく、パワー半導体素子に接続される接続部材(ボンディングワイヤやはんだなど)の劣化も含まれてよい。
図4は、FWDチップ側の劣化を検知する機能ブロックの第1構成例を示す図である。図5は、FWDチップ側の劣化を検知する機能ブロックの第1構成例の各部の波形を例示する図である。第1実施形態に係る電力変換装置101の制御部2は、図4に示す劣化検知機能を備えてもよい。
制御部2は、FWDチップ側のオン電圧データを格納する格納部51と、判定レベルを調整する調整部52と、FWDチップ側の故障予兆を判定する判定部53と、u相の交流電流iu(負荷電流Iu)を制限する制限部54と、電圧Vce_on1の極性を反転する反転部55とを有する。
制限部54は、電流検出部30により検出された負荷電流Iuがゼロ以上の値のときゼロを出力し、ゼロを未満のとき極性を反転した負荷電流Iuの値を出力し、その出力値をIu_nとする。
格納部51には、電力変換装置101の出荷時もしくは初期運転時において、第2主端子E1から第1主端子C1に電流が導通いているときの主端子間の電圧Vce_ini1が格納されている。電圧Vce_ini1は、主端子間を流れる電流(出力値Iu_n)およびFWDチップ温度Tj,fwd1に対する依存データとして格納部51に保存されている。
格納部51には、電力変換装置101の運転時における、FWDチップ温度Tj,fwd1および出力値Iu_nが入力され、これらの値と、前記依存データを照合の上、電圧Vce_ini1が出力される。
調整部52は、あらかじめ設定した倍率を電圧Vce_ini1に乗算することで得られる閾値Vce_th1を出力する。図4に示す例では、その倍率を1.05倍としている。
判定部53は、電力変換装置101の運転時における主端子間の電圧Vce_on1'(電圧Vce_on1の極性が反転部55により反転した電圧)を閾値Vce_th1と比較する。判定部53は、電圧Vce_on1'が閾値Vce_th1を超えた時点で、FWDチップ側の劣化がある(故障予兆がある)ことを表す判定値を出力する。
制御部2は、故障予兆があることを表す判定値が判定部43から出力されると、FWDチップD1の故障予兆があることを、電力変換装置101の外部機器やユーザへ通知する。制御部2は、FWDチップD1を搭載するパワー半導体モジュール11の故障予兆があることを通知しても、パワー半導体モジュール11を搭載する主回路部1の故障予兆があることを通知しても、主回路部1を搭載する電力変換装置101の故障予兆があることを通知してもよい。故障予兆があることが通知されることで、FWDチップD1側の故障が発生する前に、保全対応を行うことが可能となる。
なお、図5は、便宜上、連続波形を示しているが、実際には、制御部2は、マイコン等によって構成されることが想定されるため、制御部2内部での演算処理は、離散値を扱う。また、電圧Vce_on1は、電力変換装置101の運転中に検出されるため、ノイズの影響を受けやすく、故障予兆の判定の誤動作につながりかねない。これを防止するためには、例えば、判定部53は、故障予兆があると判定した回数が、所定の期間内で複数回ある場合、故障予兆があることを表す判定値を出力してもよい。
このように、図4に示す制御部2は、主端子間が導通状態で電圧検出回路Vce1により検出された電圧Vce_on1を、主端子間が導通状態で温度検出回路Temp1により検出されたFWDチップ温度Tj,fwd1に応じて変化する電圧Vce_ini1(閾値Vce_th1)と比較することで、FWDチップD1の劣化を判定できる。電圧Vce_ini1(閾値Vce_th1)は、主端子間が導通状態で検出されたFWDチップ温度Tj,fwd1および出力値Iu_nに応じて変化する値である。図4に示す例では、制御部2は、第2主端子E1から第1主端子C1に電流が流れている状態で検出された電圧Vce_on1を、第2主端子E1から第1主端子C1に電流が流れている状態で検出されたFWDチップ温度Tj,fwd1に応じて変化する電圧Vce_ini1(閾値Vce_th1)と比較する。
また、制御部2は、図4と同様の構成を備えることで、他のFWDチップD2~D6の劣化を判定できる。
なお、FWDチップ等の整流素子の劣化には、整流素子自体の劣化だけでなく、整流素子に接続される接続部材(ボンディングワイヤやはんだなど)の劣化も含まれてよい。
図6は、IGBTチップ側の劣化を検知する機能ブロックの第2構成例を示す図である。図7は、IGBTチップ側の劣化を検知する機能ブロックの第2構成例の各部の波形を例示する図である。第1実施形態に係る電力変換装置101の制御部2は、図6に示す劣化検知機能を備えてもよい。
制御部2は、IGBTチップ側のオン電圧データを格納する格納部61と、判定レベルを調整する調整部62と、IGBTチップ側の故障予兆を判定する判定部63と、電流を選択する選択部66と、u相の交流電流iu(負荷電流Iu)の下限を制限する制限部64とを有する。
制限部64は、電流検出部30により検出された負荷電流Iu がゼロ以下の値のときゼロを出力し、ゼロを超える値のとき負荷電流Iuの値をそのまま出力し、その出力値をIu_pとする。
選択部66は、出力値Iu_pが所定の電流レベルIrを超えたタイミングで、IGBTチップ温度Tj,igbt1および電圧Vce_on1をサンプルホールドし、それぞれのサンプルホールド値をTj_sh1およびVce_on_sh1として出力する。
格納部61には、電力変換装置101の出荷時もしくは初期運転時における、スイッチング指令S1がオンの期間に第1主端子C1から第2主端子E1に電流が導通しているときの主端子間の電圧Vce_ini1が格納されている。電圧Vce_ini1は、主端子間を流れる所定の電流値IrにおけるIGBTチップ温度Tj,igbt1に対する依存データとして格納部61に保存されている。
格納部61には、電力変換装置101の運転時における、IGBTチップ温度のサンプルホールド値Tj_sh1が入力され、サンプルホールド値Tj_sh1値が前記依存データと照合され、サンプルホールド値Tj_sh1値に対応する電圧Vce_ini1が出力される。
調整部62は、あらかじめ設定した倍率を電圧Vce_ini1に乗算することで得られる閾値Vce_th1を出力する。図6に示す例では、その倍率を1.05としている。
判定部63は、電力変換装置101の運転時において、オン電圧のサンプルホールド値Vce_on_sh1を閾値Vce_th1と比較する。判定部63は、サンプルホールド値Vce_on_sh1 が閾値Vce_th1を超えた時点で、IBGTチップ側の劣化がある(故障予兆がある)ことを表す判定値を出力する。
制御部2は、故障予兆があることを表す判定値が判定部63から出力されると、IGBTチップQ1の故障予兆があることを、電力変換装置101の外部機器やユーザへ通知する。制御部2は、IGBTチップQ1を搭載するパワー半導体モジュール11の故障予兆があることを通知しても、パワー半導体モジュール11を搭載する主回路部1の故障予兆があることを通知しても、主回路部1を搭載する電力変換装置101の故障予兆があることを通知してもよい。故障予兆があることが通知されることで、IGBTチップQ1側の故障が発生する前に、保全対応を行うことが可能となる。
なお、図7は、便宜上、連続波形を示しているが、実際には、制御部2は、マイコン等によって構成されることが想定されるため、制御部2内部での演算処理は、離散値を扱う。また、電圧Vce_on1は、電力変換装置101の運転中に検出されるため、ノイズの影響を受けやすく、故障予兆の判定の誤動作につながりかねない。これを防止するためには、例えば、判定部63は、故障予兆があると判定した回数が、所定の期間内で複数回ある場合、故障予兆があることを表す判定値を出力してもよい。
また、図6に示す第2構成例では、格納部61に格納される電圧Vce_ini1は電流依存性を含まないので、データ量を削減できる利点がある。
このように、図6に示す制御部2は、電流Iu_pが所定の電流値Ir以上の状態で検出された電圧Vce_on1(Tj_sh1)を、電流Iu_pが所定の電流値Ir以上の状態で検出されたIGBTチップ温度Tj,igbt1に応じて変化する電圧Vce_ini1(閾値Vce_th1)と比較することで、IGBTチップQ1の劣化を判定できる。また、制御部2は、図6と同様の構成を備えることで、他のIGBTチップQ2~Q6の劣化を判定できる。
また、図6に示す機能ブロックを、FWDチップ側の劣化を検知する機能ブロックに変形することも可能である。具体的には、選択部66は、出力値Iu_n(図4参照)が所定の電流レベルIrを超えたタイミングで、FWDチップ温度Tj,fwd1および電圧Vce_on1をサンプルホールドし、それぞれのサンプルホールド値をTj_sh1およびVce_on_sh1として出力する。電圧Vce_ini1は、主端子間を流れる所定の電流値IrにおけるFWDチップ温度Tj,fwd1に対する依存データとして格納部61に保存されている。格納部61には、電力変換装置101の運転時における、FWDチップ温度のサンプルホールド値Tj,sh1が入力され、サンプルホールド値Tj,sh1値が前記依存データと照合され、サンプルホールド値Tj,sh1値に対応する電圧Vce_ini1が出力される。判定部63は、電力変換装置101の運転時における主端子間の電圧Vce_on1'(電圧Vce_on1の極性が反転部55(図4参照)により反転した電圧)を閾値Vce_th1と比較する。判定部63は、電圧Vce_on1'が閾値Vce_th1を超えた時点で、FWDチップ側の劣化がある(故障予兆がある)ことを表す判定値を出力する。
したがって、このような機能ブロックの変形によれば、制御部2は、電流Iu_pが所定の電流値Ir以上の状態で検出された電圧Vce_on1(Tj_sh1)を、電流Iu_pが所定の電流値Ir以上の状態で検出されたFWDチップ温度Tj,fwd1に応じて変化する電圧Vce_ini1(閾値Vce_th1)と比較することで、FWDチップD1の劣化を判定できる。また、制御部2は、このような機能ブロックの変形によれば、他のFWDチップQ2~Q6の劣化を判定できる。
図8は、第2実施形態に係る電力変換装置の全体構成例を示す図である。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成についての説明は、上述の説明を援用することで、省略又は簡略する。図8に示す電力変換装置102は、直流電源部3から供給される直流電力を、負荷4に供給する交流電力に変換する主回路部1と、主回路部1の電力変換動作を制御する制御部2とを備える。
主回路部1は、図8に示す例では、複数のパワー半導体モジュール11~16、複数のゲート駆動部21~26、電流検出部30及びヒートシンク温度検出部80を備える。第1実施形態と同様の理由により、以下では、便宜上、u相の上アームを例に挙げて説明する。
ゲート駆動部21は、プリドライバーPD1及び電圧検出回路Vce1を備える駆動回路である。
プリドライバーPD1は、制御部2から供給されるオン又はオフのスイッチング指令S1に応じて、IGBTチップQ1のゲート電極11gを駆動する回路である。
電圧検出回路Vce1は、パワー半導体モジュール11のIGBTチップQ1側またはFWDチップD1側がオン状態のときの主端子間の電圧Vce_on1を検出し、制御部2へ送信する。
電流検出部30は、パワー半導体モジュール11~16と負荷4との間に流れる三相の交流電流iu,iv,iwを検出して制御部2へ送信する電流センサである。
ヒートシンク温度検出部80は、パワー半導体モジュールを冷却するヒートシンクの温度検出値Thを制御部2に送信する温度センサである。
直流電圧検出部70は、主回路部1の直流電源部3側の直流電圧値Vinを検出して制御部2へ送信する回路である。
図9は、IGBTチップ側の劣化を検知する機能ブロックの第3構成例を示す図である。図10は、IGBTチップ側の劣化を検知する機能ブロックの第3構成例の各部の波形を例示する図である。第2実施形態に係る電力変換装置102の制御部2は、図9に示す劣化検知機能を備えてもよい。
制御部2は、IGBTチップ側のオン電圧データを格納する格納部91と、判定レベルを調整する調整部92と、IGBTチップ側の故障予兆を判定する判定部93と、u相の交流電流iu(負荷電流Iu)の下限を制限する制限部94と、IGBT チップ温度を推定する推定部97とを有する。
推定部97は、ヒートシンク温度検出部80により得られたヒートシンクの温度検出値Thと直流電圧検出部70により得られた直流電圧値Vinと制御部2で生成される出力電圧指令vu_refと電流指令値Iu_refとキャリア周波数fcとに基づいて、IGBTチップでの発生損失およびIGBTチップ温度Tj_est,igbt1を計算する。具体的な計算方法は、公知の方法でよい。また、推定部97は、特許請求の範囲の「温度検出部」の一例である。
制限部94は、電流検出部30により検出された負荷電流Iuがゼロ以下の値のときゼロを出力し、ゼロを超える値のとき負荷電流Iuの値をそのまま出力し、その出力値をIu_pとする。
格納部91には、電力変換装置101の出荷時もしくは初期運転時における、スイッチング指令S1がオンの期間に第1主端子C1から第2主端子E1に電流が導通しているときの主端子間の電圧Vce_ini1が格納されている。電圧Vce_ini1は、主端子間を流れる電流(出力値Iu_p)およびIGBTチップ温度Tj_est,igbt1に対する依存データとして格納部91に保存されている。
格納部91には、電力変換装置101の運転時における、IGBTチップ温度Tj_est,igbt1および出力値Iu_pが入力され、これらの値が前記依存データと照合され、これらの値に対応する電圧Vce_ini1が出力される。
調整部92は、あらかじめ設定した倍率を電圧Vce_ini1に乗算することで得られる閾値Vce_th1を出力する。図2に示す例では、その倍率を1.05倍としている。
判定部93は、電力変換装置101の運転時において、スイッチング指令S1がオンの期間で第1主端子C1から第2主端子E2に電流が導通しているときの主端子間の電圧Vce_on1を閾値Vce_th1と比較する。判定部93は、電圧Vce_on1が閾値Vce_th1を超えた時点で、IGBTチップ側の劣化がある(故障予兆がある)ことを表す判定値を出力する。
制御部2は、故障予兆があることを表す判定値が判定部93から出力されると、IGBTチップQ1の故障予兆があることを、電力変換装置101の外部機器やユーザへ通知する。制御部2は、IGBTチップQ1を搭載するパワー半導体モジュール11の故障予兆があることを通知しても、パワー半導体モジュール11を搭載する主回路部1の故障予兆があることを通知しても、主回路部1を搭載する電力変換装置101の故障予兆があることを通知してもよい。故障予兆があることが通知されることで、IGBTチップQ1側の故障が発生する前に、保全対応を行うことが可能となる。
なお、図10は、便宜上、連続波形を示しているが、実際には、制御部2は、マイコン等によって構成されることが想定されるため、制御部2内部での演算処理は、離散値を扱う。また、電圧Vce_on1は、電力変換装置101の運転中に検出されるため、ノイズの影響を受けやすく、故障予兆の判定の誤動作につながりかねない。これを防止するためには、例えば、判定部93は、故障予兆があると判定した回数が、所定の期間内で複数回ある場合、故障予兆があることを表す判定値を出力してもよい。
また、図9に示す機能ブロックに、図6に示した上述の選択部66を追加することで、格納部91に格納される電圧Vce_ini1に電流依存性を含めなくてよくなるので、データ量を削減できる利点がある。また、図9に示す機能ブロックを、上述と同様に、FWDチップ側の劣化を検知する機能ブロックに変形することも可能である。
以上、実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が可能である。
例えば、パワー半導体素子は、IGBT等のパワートランジスタに限られず、ダイオード、サイリスタ、ゲートターンオフサイリスタ、トライアックなどでもよい。
1 主回路部
2 制御部
11~16 パワー半導体モジュール
21~26 ゲート駆動部
30 電流検出部
70 直流電圧検出部
80 ヒートシンク温度検出部
101,102 電力変換装置
2 制御部
11~16 パワー半導体モジュール
21~26 ゲート駆動部
30 電流検出部
70 直流電圧検出部
80 ヒートシンク温度検出部
101,102 電力変換装置
Claims (6)
- 第1主電極と第2主電極とを有するパワー半導体素子と、
前記第1主電極に電気的に接続された第1端子と、
前記第2主電極に電気的に接続された第2端子と、
前記第1端子及び前記第2端子の両端子間の電圧を検出する電圧検出部と、
前記パワー半導体素子の温度を検出する温度検出部と、
前記両端子間が導通状態で検出された前記電圧を、前記両端子間が導通状態で検出された前記温度に応じて変化する閾値電圧と比較することで、前記パワー半導体素子の劣化を判定する制御部とを備える、電力変換装置。 - 前記両端子間に流れる電流を検出する電流検出部を備え、
前記閾値電圧は、前記両端子間が導通状態で検出された前記温度及び前記電流に応じて変化する、請求項1に記載の電力変換装置。 - 前記制御部は、前記電流が所定の電流値以上の状態で検出された前記電圧を、前記電流が前記所定の電流値以上の状態で検出された前記温度に応じて変化する前記閾値電圧と比較することで、前記パワー半導体素子の劣化を判定する、請求項2に記載の電力変換装置。
- 第1主電極と第2主電極とを有するパワー半導体素子と、
カソードとアノードとを有する整流素子と、
前記第1主電極と前記カソードとに電気的に接続された第1端子と、
前記第2主電極と前記アノードとに電気的に接続された第2端子と、
前記第1端子及び前記第2端子の両端子間の電圧を検出する電圧検出部と、
前記パワー半導体素子の温度を検出する温度検出部と、
前記両端子間が導通状態で検出された前記電圧を、前記両端子間が導通状態で検出された前記温度に応じて変化する閾値電圧と比較することで、前記パワー半導体素子又は前記整流素子の劣化を判定する制御部とを備える、電力変換装置。 - 前記制御部は、前記第1端子から前記第2端子に電流が流れている状態で検出された前記電圧を、前記第1端子から前記第2端子に電流が流れている状態で検出された前記温度に応じて変化する前記閾値電圧と比較することで、前記パワー半導体素子の劣化を判定する、請求項4に記載の電力変換装置。
- 前記制御部は、前記第2端子から前記第1端子に電流が流れている状態で検出された前記電圧を、前記第2端子から前記第1端子に電流が流れている状態で検出された前記温度に応じて変化する前記閾値電圧と比較することで、前記整流素子の劣化を判定する、請求項4又は5に記載の電力変換装置。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2021025069A JP2022127114A (ja) | 2021-02-19 | 2021-02-19 | 電力変換装置 |
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JP2021025069A Pending JP2022127114A (ja) | 2021-02-19 | 2021-02-19 | 電力変換装置 |
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2021
- 2021-02-19 JP JP2021025069A patent/JP2022127114A/ja active Pending
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