JP2022119505A - 歯周病の原因菌を判別する試薬、菌種判別方法、口臭リスク判定方法および蛍光測定装置 - Google Patents

歯周病の原因菌を判別する試薬、菌種判別方法、口臭リスク判定方法および蛍光測定装置 Download PDF

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Abstract

【課題】歯周病の原因菌であるポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)や、口臭が発現するリスクを、迅速且つ簡便に検出することができる試薬、菌種判別方法、口臭リスク判定方法および蛍光測定装置を提供する。【解決手段】歯周病の原因菌を判別するため、または、口臭のリスクを判定するために使用される試薬であって、次の式(1)で表される。iBoc-Gly-Gly-Arg-MCA(1)[但し、式(1)中、iBocは、イソブチルオキシカルボニル基、Glyは、グリシン残基、Argは、アルギニン残基、MCAは、4-メチルクマリル-7-アミド基を表す。]歯周病の原因菌を判別する菌種判別方法は、口腔内細菌の菌体または菌体抽出物と、上記試薬とを酵素反応させた液体試料に励起光を照射し、液体試料から放出された蛍光の強度に基づいて、口腔内細菌としてPg菌が含まれるか否か、または、Pg菌の量を判別するものである。【選択図】図6

Description

本発明は、歯周病の原因菌であるポルフィロモナス・ジンジバリスを判別する試薬、これを用いた菌種判別方法、口臭リスク判定方法および蛍光測定装置に関する。
ヒトの口腔内には、数百種類の口腔内細菌が存在している。これらの口腔内細菌のうち、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、トレポネマ・デンティコラ(Treponema denticola)、タネレラ・フォーサイシア(Tannerella forsythia)の3種は、歯周病との関連性が高いレッドコンプレックス(Red complex)として分類されている。
歯周病は、口腔内細菌によって引き起こされる炎症性疾患であり、歯周組織への影響だけでなく、心筋梗塞、糖尿病等の他、動脈硬化等の全身性疾患との関連も指摘されている。従来、歯周病の診断には、プローブを用いて歯周ポケットの深さや出血の有無を調べるプロービング検査や、歯槽骨等を観察するためのX線検査等が用いられている。
細菌学や臨床の分野では、レッドコンプレックスに分類される3種の細菌のうち、歯周病の重症化、すなわち歯槽骨吸収の進行に重大な影響を与えているのは、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)であると考えられている。近年提唱されているキーストーン説では、Pg菌が口腔内の免疫に影響を与え、細菌叢のバランスが変化する結果、歯肉等の炎症が進行するとされている。
また、口腔内細菌は、口臭の発現にも深く関わっている。口臭の原因物質としては、硫化水素(HS)、メチルメルカプタン(CHSH)、ジメチルサルファイド((CHS)等の揮発性硫黄化合物(Volatile Sulfur Compounds:VSC)が知られている。これらのVSCは、食物の残りかす、口腔内に剥離した上皮細胞、白血球の死骸、老廃物等に由来する口腔内のアミノ酸等が口腔内細菌に分解されて生じる。
VSCを生成する口腔内細菌としては、現在、二十種類程度が確認されている。VSCを生成する口腔内細菌は、歯周病の原因菌と重複しており、レッドコンプレックスに分類されるPg菌もVSCの生成量が多いことが知られている。Pg菌は、歯周病に伴う口臭に特徴的であるメチルメルカプタンの生成量が多いことが報告されている。
口臭は、自己診断や客観的評価が難しく、一般には、揮発性成分のガス分析によって検査されている。ガス分析には、ガスクロマトグラフ、半導体センサ等が用いられている。また、口腔内細菌の酵素活性を測定する検査法も開発されている。特許文献1には、唾液中のアルカリフォスファターゼ活性や、乳酸脱水素酵素活性を指標とする口臭検査方法や口臭検査キットが記載されている。
また、歯周病の診断を行うために酵素活性を測定する技術も開発されている。特許文献2には、検体中のアミノペプチターゼ様酵素活性を測定することにより、歯周疾患の罹患や進行を診断あるいは予測するための検査剤が記載されている。この検査剤は、酵素の基質として、次の式:X-T-Arg(NO)-Yで示される化合物を含んでいる。式中、Arg(NO)はニトロアルギニン残基、Xは水素またはアミノ基保護基、TはそのC末端がニトロアルギニン残基のN末端と結合する0~2個のアミノ酸残基、Yはアルギニン残基のC末端に結合し、酸素の存在下に酸化酵素によって色源体の酸化反応の反応速度を増加させる化合物の残基を意味する。
特開2008-043220号公報 特開平5-317095号公報
ポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)は、キーストーン説で提唱されているとおり、歯周病を引き起こす主要な原因菌であると考えられている。歯周病は、口腔内への影響だけでなく、全身性疾患との関連も指摘されている。そのため、被験者の口腔内から採取された試料等を対象として、口腔内細菌のうちでPg菌が含まれていることを判別するための手段が求められている。
従来、細菌等の菌種を判別する方法としては、PCRを利用した分子生物学的手法が広く用いられている。しかし、ゲノム中の特異的配列をPCRで検出する手法では、操作に手間がかかり、定量的な分析を簡便に行うことが難しい。そのため、被験者の口腔内から採取された試料等を対象として、Pg菌を迅速且つ簡便に検出するための手段が求められている。
また、口臭のリスクを客観的に判定するための手段が求められている。従来のガスクロマトグラフを用いた検査法では、口臭の原因物質自体を測定することができるが、装置が大型になる。また、測定試料の調製や測定時の操作にある程度の技術を要する。また、従来の半導体センサを用いた検査法では、口臭の原因物質以外の揮発性成分を誤検出する問題がある。
このように、口臭の原因物質自体の測定には種々の課題がある。これに対し、口臭が発現するリスクについては、口臭の原因物質自体を測定しなくとも、口腔内でVSCが生成される可能性から判定することが可能である。Pg菌は、口臭の原因物質であるVSCを多量に生成するため、Pg菌の検出によって口臭が発現するリスクを評価できる。しかし、従来、Pg菌を選択的、迅速且つ簡便に検出することができる手法は知られていない。
そこで、本発明は、歯周病の原因菌であるポルフィロモナス・ジンジバリスや口臭が発現するリスクを迅速且つ簡便に検出することができる試薬、菌種判別方法、口臭リスク判定方法および蛍光測定装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために本発明に係る試薬は、歯周病の原因菌を判別するために使用される試薬であって、前記原因菌は、ポルフィロモナス・ジンジバリスであり、次の式(1)で表される。iBoc-Gly-Gly-Arg-MCA・・・(1)[但し、式(1)中、iBocは、イソブチルオキシカルボニル基、Glyは、グリシン残基、Argは、アルギニン残基、MCAは、4-メチルクマリル-7-アミド基を表す。]また、口臭のリスクを判定するために使用される試薬であって、前記の式(1)で表される。
また、本発明に係る菌種判別方法は、歯周病の原因菌を判別する菌種判別方法であって、口腔内細菌の菌体または菌体抽出物と、前記の式(1)で表される試薬と、を酵素反応させた液体試料に励起光を照射し、前記液体試料から放出された蛍光の強度に基づいて、前記口腔内細菌としてポルフィロモナス・ジンジバリスが含まれるか否か、または、前記口腔内細菌として含まれるポルフィロモナス・ジンジバリスの量を判別する。
また、本発明に係る蛍光測定装置は、歯周病の原因菌を判別する蛍光測定装置であって、口腔内細菌の菌体または菌体抽出物と、前記の式(1)で表される試薬と、を酵素反応させた液体試料に励起光を照射する照射手段と、前記液体試料から放出される蛍光を検出する検出手段と、検出された蛍光の強度に基づいて、前記口腔内細菌としてポルフィロモナス・ジンジバリスが含まれるか否か、または、前記口腔内細菌として含まれるポルフィロモナス・ジンジバリスの量を判別する判別手段と、を備える。
また、本発明に係る口臭リスク判定方法は、口臭のリスクを判定する口臭リスク判定方法であって、歯垢、歯肉浸出液、唾液、または、これらに含まれる菌体の菌体抽出物と、前記の式(1)で表される試薬と、を反応させた液体試料に励起光を照射し、前記液体試料から放出された蛍光の強度に基づいて、口臭が発現するリスクの高さを判定する。
また、本発明に係る蛍光測定装置は、口臭のリスクを判定する蛍光測定装置であって、歯垢、歯肉浸出液、唾液、または、これらに含まれる菌体の菌体抽出物と、前記の式(1)で表される試薬と、を反応させた液体試料に励起光を照射する照射手段と、前記液体試料から放出される蛍光を検出する検出手段と、検出された蛍光の強度に基づいて、口臭が発現するリスクの高さを判定する判定手段と、を備える。
本発明によると、歯周病の原因菌であるポルフィロモナス・ジンジバリスや口臭が発現するリスクを迅速且つ簡便に検出することができる試薬、菌種判別方法、口臭リスク判定方法および蛍光測定装置を提供することができる。
歯周病の原因菌が産生するプロテアーゼの酵素活性を蛍光強度で比較した結果を示す図である。 歯周病の原因菌が産生するプロテアーゼの酵素活性を蛍光強度の時間的変化量で比較した結果を示す図である。 歯周病の原因菌が生成する揮発性硫黄化合物の定量結果を示す図である。 歯周病の原因菌が生成する揮発性硫黄化合物の量を菌量で比較した結果を示す図である。 歯周病の原因菌を判別する原理について説明する図である。 本発明の実施形態に係る菌種判別方法の流れを示すフロー図である。 本発明の実施形態に係る口臭リスク判定方法の流れを示すフロー図である。 本発明の実施形態に係る蛍光測定装置の構成を示す図である。 蛍光測定装置が備える制御装置の概略構成を示す図である。 蛍光測定装置による判別・判定の処理の流れを示すフロー図である。
以下、本発明の一実施形態に係る試薬、これを用いた菌種判別方法、これを用いた口臭リスク判定方法、および、菌種判別や口臭リスク判定に用いる蛍光測定装置について、図を参照しながら説明する。
<試薬>
本実施形態に係る試薬は、アルギニン残基を認識するプロテアーゼの酵素活性を測定することができる蛍光測定用試薬であり、次の式(1)で表される。
iBoc-Gly-Gly-Arg-MCA・・・(1)
[但し、式(1)中、iBocは、イソブチルオキシカルボニル基、Glyは、グリシン残基、Argは、アルギニン残基、MCAは、4-メチルクマリル-7-アミド基を表す。]
式(1)で表される試薬は、アルギニン残基を認識するプロテアーゼが選択的に消化する基質となる。この試薬は、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)、トレポネマ・デンティコラ(Td菌)、タネレラ・フォーサイシア(Tf菌)等の口腔内細菌が産生するプロテアーゼのうち、Pg菌が産生するジンジパインによって顕著に高い消化活性で消化されるため、酵素活性に基づく判別・判定に用いることができる。
ジンジパインは、Pg菌が産生するプロテアーゼの一種であり、細胞外分泌型や細胞膜結合型の酵素として産生される。ジンジパインには、タンパクやペプチドをアルギニン残基のC末端側で切断するArg-ジンジパインと、リジン残基のC末端側で切断するLys-ジンジパインとがある。式(1)で表される試薬は、タンパクやペプチド中のアルギニン残基を認識するArg-ジンジパインの基質として用いられる。
式(1)で表される試薬は、Gly-Gly-Argで表されるアミノ酸配列のペプチドに、所定の保護基と所定の蛍光発色団が結合した分子構造を有している。Gly-Gly-Argで表されるアミノ酸配列は、アルギニン残基を認識するプロテアーゼが選択的に消化するアミノ酸配列である。ペプチドのC末端側のアルギニン残基の側鎖は、保護基が結合していてもよいし、保護基が結合していなくてもよいが、高い消化活性を得る観点からは、脱保護されていることが好ましい。
式(1)で表される試薬において、ペプチドのN末端側には、イソブチルオキシカルボニル基(iBoc)が結合している。iBocは、ペプチド合成時に用いられるアミノ基の保護基である。また、ペプチドのC末端側には、4-メチルクマリル-7-アミド基(MCA)が結合している。MCAは、蛍光測定に用いられる蛍光標識である。
式(1)で表される試薬は、液相合成法によって合成することができる。例えば、iBoc-Gly-Gly-OHとH-Arg(Pmc)-MCAとのアミノ酸カップリング反応を用いて合成することができる。iBoc-Gly-Gly-OHは、ペプチドのN末端の保護基としてクロロギ酸ブチルを用いて、一般的なペプチド合成法等によって得ることができる。H-Arg(Pmc)-MCAは、Fmoc-Arg(Pmc)-OHとACMとを反応させた後、二級アミン等で脱保護すると得られる。
アルギニン残基の側鎖に結合させる保護基としては、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル基(Pmc)の他に、p-トルエンスルホニル基(Tos)、2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル基(Pbf)等を用いることができる。
式(1)で表される試薬は、Arg-ジンジパイン等のアルギニン残基を認識するプロテアーゼが作用すると、アルギニン残基のC末端側で切断され、蛍光発色団である7-アミノ-4-メチルクマリン(AMC)を解離する。解離した蛍光発色団は、励起光を照射すると蛍光を発する。そのため、酵素活性が未知である液体試料に式(1)で表される試薬を添加して蛍光測定を行うと、液体試料から放出される蛍光の強度に基づいて酵素活性を評価することができる。
図1は、歯周病の原因菌が産生するプロテアーゼの酵素活性を蛍光強度で比較した結果を示す図である。
図1では、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)が産生するArg-ジンジパインの酵素活性と、トレポネマ・デンティコラ(Td菌)が産生するプロテアーゼの酵素活性と、タネレラ・フォーサイシア(Tf菌)が産生するプロテアーゼの酵素活性とを比較している。式(1)で表される試薬を基質として酵素反応を行い、所定の反応時間後の蛍光強度を測定した結果である。図中の縦軸は、酵素反応を開始して3分後に測定された蛍光強度、横軸は、酵素反応のpHを示す。
蛍光測定には、各菌体を含む細胞懸濁液を用いている。各種毎の培養液を用意し、遠心分離とPBSの添加による洗浄操作を2回繰り返し、菌体を含む細胞懸濁液である希釈液を調製した。その希釈液を、式(1)で表される試薬を含むTris緩衝液(pH8.0)に100倍希釈となるように加え、37.5℃で酵素反応させて蛍光強度を測定した。希釈液は、波長660nmにおける光学濃度(OD660)が0.8となるように調製した。菌株毎且つpH毎のサンプル数は3である。
図1に示すように、pH7.0~8.5の範囲において、Td菌が産生するプロテアーゼを反応させた場合や、Tf菌が産生するプロテアーゼを反応させた場合、酵素活性を示す蛍光強度は、殆ど検出されなかった。これに対し、Pg菌が産生するArg-ジンジパインを反応させた場合の蛍光強度は、Td菌の場合と比較して顕著に高い値を示した。Arg-ジンジパインを反応させた場合のpH毎の蛍光強度は、pH7.0~8.5の範囲で略同等であった。
この結果から、Pg菌が産生するArg-ジンジパインと、Td菌やTf菌が産生するアルギニン残基を認識するプロテアーゼとでは、式(1)で表される試薬に対する消化活性が顕著に異なることが分かる。式(1)で表される試薬を基質として酵素反応を行うと、所定の反応時間後の蛍光強度に基づいて、Td菌やTf菌が混在している可能性がある試料につき、Pg菌の有無を判別できることが分かる。
図2は、歯周病の原因菌が産生するプロテアーゼの酵素活性を蛍光強度の時間的変化量で比較した結果を示す図である。
図2では、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)が産生するArg-ジンジパインの酵素活性と、トレポネマ・デンティコラ(Td菌)が産生するプロテアーゼの酵素活性と、トレポネマ・デンティコラ(Td菌)が産生するプロテアーゼの酵素活性とを比較している。図1の測定と同様に、式(1)で表される試薬を基質として酵素反応を行い、所定の反応時間後の蛍光強度を測定して、反応初期の蛍光強度の時間的変化量を求めた結果である。図中の縦軸は、酵素反応を開始して2分後から3分後までの蛍光強度の時間的変化量を示す。
Pg菌が産生するArg-ジンジパインとしては、fimA遺伝子の遺伝子型がI型である33277株由来と、II型であるTDC60株由来と、IV型であるW83株由来とを比較した。fimA遺伝子は、Pg菌の線毛タンパクのサブユニットをコードする遺伝子である。fimA遺伝子は、遺伝子多型を示すことが確認されており、I~V型(1~5型)の5種類に分類されている。
従来、Pg菌の口腔内への付着能・定着能や病原性が、fimA遺伝子の遺伝子型毎に異なる可能性が報告されている。健康な歯周組織を持つ成人は、fimA遺伝子のI型(1型)の保有率が高く、II型(2型)やIV型(4型)の保有率が低いのに対し、成人の歯周炎患者は、II型(2型)の保有率が最も高く、次いでIV型(4型)の保有率が高く、I型(1型)の保有率が低いことが報告されている。
図2に示すように、Td菌やTf菌が産生するプロテアーゼを反応させた場合の蛍光強度の時間変化量は、0に近い低い値となった。一方、Pg菌が産生するArg-ジンジパインを反応させた場合の蛍光強度の時間的変化量は、Td菌やTf菌の場合と比較して、大幅に高い値を示した。Pg菌の中では、IV型がI型と比較して2倍程度に高く、II型がIV型と比較して3倍程度に高かった。
この結果から、Pg菌が産生するArg-ジンジパインと、Td菌やTf菌が産生するアルギニン残基を認識するプロテアーゼとでは、式(1)で表される試薬に対する消化活性が異なることが分かる。また、式(1)で表される試薬に対する消化活性は、Pg菌の菌株毎に異なることが分かる。式(1)で表される試薬を基質として酵素反応を行うと、蛍光強度の時間的変化量に基づいて、Td菌やTf菌が混在している可能性がある試料につき、Pg菌の有無を判別できることが分かる。また、Pg菌の中でも歯周炎に特徴的なIV型やII型の有無を判別できることが分かる。
図1および図2の結果のとおり、式(1)で表される試薬は、Gly-Gly-Argで表されるアミノ酸配列のペプチドが化学修飾された特定の分子構造を有するため、Arg-ジンジパインによる消化活性が顕著に高いと考えられる。式(1)で表される試薬を基質として用いると、Pg菌、Td菌、Tf菌等の口腔内細菌が産生するプロテアーゼのうち、Pg菌が産生するArg-ジンジパインの酵素活性を選択的に評価できることが分かる。
図3は、歯周病の原因菌が生成する揮発性硫黄化合物の定量結果を示す図である。
図3には、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)を3日間にわたって培養したときに生成した揮発性硫黄化合物(VSC)の量を、Pg菌の菌株毎に測定した結果を示す。培養器の気相部のガスをシリンジで吸引して測定試料とし、ガスクロマトグラフ「OralChroma」(abimedical社製)で測定した結果である。図中の縦軸は、VSCの濃度[ppb]を示す。
図3に示すように、Pg菌を培養した結果、VSCとして硫化水素とメチルメルカプタンが生成することが確認された。fimA遺伝子の遺伝子型がI型である33277株では、低濃度の硫化水素と、その10倍程度の高濃度のメチルメルカプタンが検出された。II型であるTDC60株や、IV型であるW83株では、I型の場合と同程度の高濃度のメチルメルカプタンが検出されたが、硫化水素は検出されなかった。
図4は、歯周病の原因菌が生成する揮発性硫黄化合物の量を菌量で比較した結果を示す図である。
図4には、fimA遺伝子の遺伝子型がII型であるTDC60株を培養し、波長660nmにおける光学濃度(OD660)が0.1、0.2および0.6のそれぞれに達したときに培養器中の揮発性硫黄化合物(VSC)の量を測定した結果を示す。培養器の気相部のガスをシリンジで吸引して測定試料とし、ガスクロマトグラフ「OralChroma」(abimedical社製)で測定した結果である。図中の縦軸は、VSCの濃度[ppb]を示す。
表1には、歯周病の原因菌が生成する揮発性硫黄化合物の量とプロテアーゼの酵素活性との関係を示す。揮発性硫黄化合物(VSC)の量は、ガスクロマトグラフを用いて測定された結果である(図3参照)。プロテアーゼの酵素活性は、菌量が各光学濃度に達したPg菌と、式(1)で表される試薬とを用いて、蛍光測定用の液体試料を調製し、その液体試料で測定開始2分後から3分後までに測定された蛍光強度の時間変化量である。
Figure 2022119505000002
図4に示すように、Pgの菌量と、Pg菌が生成するVSCの量とは、高い相関を示すことが分かる。また、表1に示すように、Pgの菌量やPg菌が生成するVSCの量は、Pg菌が産生したArg-ジンジパインによる液体試料当たりの酵素活性に対しても、高い相関を示すことが確認された。
図3、図4および表1の結果によると、Pg菌はfimA遺伝子の遺伝子型にかかわらずメチルメルカプタンを生成し、Pg菌によるメチルメルカプタンの生成量はArg-ジンジパインによる酵素活性と高い相関を持つことが分かる。メチルメルカプタンは、口臭の原因物質の一種であり、歯周病に伴う口臭に特徴的な成分である。Arg-ジンジパインによる液体試料当たりの酵素活性を測定すると、酵素活性とメチルメルカプタンの生成量との相関関係から、歯周病に特徴的な口臭が発現するリスクを判定できるといえる。
よって、式(1)で表される試薬は、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)、トレポネマ・デンティコラ(Td菌)、タネレラ・フォーサイシア(Tf菌)等の口腔内細菌のうち、歯周病の原因菌であるポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)を判別する用途や、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)によるメチルメルカプタンの生成に起因する口臭が発現するリスクを判定する用途に使用することができる。
また、式(1)で表される試薬は、歯周病の進行のリスクを簡易的に判定する用途や、歯周病と関連がある全身性疾患のリスクを簡易的に判定する用途にも使用し得る。Pg菌は、キーストーン説によると、歯周病を引き起こす主要な原因菌であるためである。歯周病と関連がある全身性疾患としては、糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞、動脈硬化、メタボリックシンドローム等が挙げられる。
<菌種判別方法>
本実施形態に係る菌種判別方法は、式(1)で表される試薬を用いて歯周病の原因菌を判別する方法である。この菌種判別方法では、判別対象の供試物中の酵素を産生した口腔内細菌としてポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)が含まれるか否か、または、判別対象の供試物中の酵素を産生した口腔内細菌として含まれるポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)の量を判別する。判別は、式(1)で表される試薬を基質としたプロテアーゼの酵素活性に基づいて行い、Pg菌の量の判別では、比較対象に対してPg菌が多いか少ないかを判別する。酵素活性は、式(1)で表される試薬を添加した液体試料を用いて蛍光測定法によって評価する。
供試物としては、菌種や菌量が未知である口腔内細菌の菌体、または、その菌体抽出物を用いることができる。供試物としては、例えば、被験者の口腔から採取した歯垢、歯肉浸出液、唾液等を、そのまま、ないし、pH緩衝液等の分散媒に懸濁させた懸濁液や、懸濁液の上清として用いることができる。なお、菌体抽出物には、菌体を細胞破壊処理等して残渣から分離した抽出物、および、菌体によって細胞外に分泌・産生された物質のいずれも含まれる。
供試物としては、単離された一つの菌種に由来する菌体を用いてもよいし、単離された一つの菌種に由来する菌体抽出物を用いてもよい。また、複数の菌種に由来する細菌群の菌体を用いてもよいし、複数の菌種に由来する細菌群の菌体抽出物を用いてもよい。複数の菌種に由来する供試物は、被験者の口腔から採取した試料から、菌体の単離操作を経ることなく得ることができる。一方、一つの菌種に由来する供試物は、被験者の口腔から採取した試料から、菌体の単離操作を経て、必要に応じて培養を行って得ることができる。
図5は、歯周病の原因菌を判別する原理について説明する図である。
図5には、種々の供試物と、式(1)で表される試薬と、を添加した液体試料を蛍光測定した場合に得られる複数の蛍光測定結果を示している。図中の横軸は、酵素反応の開始時から起算される時間、縦軸は、蛍光強度を示す。
図中の細実線の曲線は、菌種が既知である比較対象の供試物の蛍光測定結果であり、供試物が単離されたPg菌に由来する場合を示す。図中の破線の曲線は、菌種が既知である比較対照の供試物の蛍光測定結果であり、供試物が単離されたTd菌やTf菌に由来する場合を示す。図中の鎖線の曲線は、菌種や菌量が既知である比較対照の供試物の蛍光測定結果であり、供試物がPg菌とTd菌やTf菌が混在した細菌群に由来する場合を示す。
図中の細実線、破線および鎖線は、それぞれ、蛍光測定結果の一例であり、液体試料について測定した一つの蛍光測定結果に相当する。実際の蛍光測定結果は、菌量、酵素量、反応時間、測定誤差等によるバラつきを生じるため、比較対照の供試物について多数の蛍光測定を行うと、図中の網掛け領域(ドット、密斜線、斑)で示すように、或る範囲に分布する多数の蛍光測定結果が得られる。歯周病の原因菌の判別の際には、このような蛍光測定結果を比較対象として用いる。
また、図中の太実線は、菌種や菌量が未知である判別対象の供試物の蛍光測定結果を示す。図中の太実線は、蛍光測定結果の一例であり、液体試料について測定した一つの蛍光測定結果に相当する。歯周病の原因菌の判別の際には、このような判別対象の蛍光測定結果を、比較対象の蛍光測定結果と比較する。各蛍光測定結果は、互いに同量の式(1)で表される試薬と、互いに同量の供試物と、を添加した液体試料を用いて、同様の酵素反応条件・測定条件で得るものとする。
図5に示すように、各供試物と、式(1)で表される試薬と、を添加した液体試料を蛍光測定すると、供試物にアルギニン残基を認識するプロテアーゼが含まれている場合、液体試料当たりの酵素活性に応じて蛍光強度が検出される。液体試料当たりの酵素活性は、プロテアーゼ自体の活性や、基質と反応する酵素量に依存する。蛍光強度は、式(1)で表される試薬が完全に分解・解離するまで、増大する方向の時間変化を示す。蛍光強度の時間変化量は、単位時間当たりの蛍光強度の時間変化、すなわち、曲線の接線の傾きに相当する。
図中に細実線の曲線で示すように、供試物が単離されたPg菌に由来する場合、Pg菌が産生したArg-ジンジパインによって式(1)で表される試薬に対する高い消化活性が得られるため、酵素反応の開始後の蛍光強度値や、酵素反応の初期における蛍光強度の時間変化量として、比較的大きい値が得られる。
また、図中に破線の曲線で示すように、供試物が単離されたTd菌やTf菌に由来する場合、Td菌やTf菌が産生したプロテアーゼによる消化活性がArg-ジンジパインの場合よりも低いため、酵素反応の開始後の蛍光強度値や、酵素反応の初期における蛍光強度の時間変化量として、単離されたPg菌に由来する場合よりも顕著に小さい値が得られる。
また、図中に鎖線の曲線で示すように、供試物がPg菌とTd菌やTf菌が混在した細菌群に由来する場合、酵素反応の開始後の蛍光強度値や、酵素反応の初期における蛍光強度の時間変化量として、単離されたPg菌に由来する場合(図中の斑の網掛け領域)と同等以上か、それよりも小さく、単離されたTd菌やTf菌に由来する場合(図中のドットの網掛け領域)よりも大きい値が得られる。
なお、図中の密斜線の網掛け領域は、Pg菌とTd菌やTf菌が混在した細菌群に由来するが、Pg菌が少ない場合を例示している。図中の疎斜線の網掛け領域は、Pg菌とTd菌やTf菌が混在した細菌群に由来する場合にとりうる範囲を例示している。供試物が細菌群に由来する場合には、細菌群の組成、すなわち、細菌群を構成する菌種や菌種毎の菌量に応じて、図中の疎斜線の網掛け領域のような範囲で、密斜線の網掛け領域とは異なる蛍光測定結果が得られる。また、供試物が細菌群に由来する場合、相乗的な作用等が原因で、単離されたPg菌に由来する場合(図中の斑の網掛け領域)を超える蛍光強度が測定されること等もある。
そのため、図5に示すように、酵素反応の開始後に所定の反応時間が経過したとき(例えば、時間t)に、液体試料の蛍光強度を測定し、菌種や菌量が未知である判別対象の供試物の蛍光強度値(例えば、蛍光強度i)と、菌種や菌量が既知である供試物の蛍光強度値(例えば、蛍光強度i)とを、同じ反応時間あたりで比較すると、供試物中の酵素を産生した口腔内細菌としてPg菌が含まれるか否かや、比較対象に対してPg菌が多いか少ないかを判別することができる。
このような判別法の場合、菌種や菌量が未知である判別対象の蛍光測定結果と、菌種や菌量が既知である比較対象の蛍光測定結果との比較を行う際に、酵素反応の反応条件や蛍光測定の測定系を一致させる必要があるが、単純な蛍光強度値の比較によって、供試物中の酵素を産生した口腔内細菌としてPg菌が含まれるか否かや、比較対象に対してPg菌が多いか少ないかを判別することができる。
或いは、酵素反応の開始後に所定の時間間隔毎に経時的(例えば、時間t付近の微小区間)に液体試料の蛍光強度を測定し、時間微分である蛍光強度の時間的変化量を求め、菌種や菌量が未知である判別対象の供試物の蛍光強度の時間的変化量(例えば、t-iの交点における接線の傾き)と、菌種や菌量が既知である比較対象の供試物の蛍光強度の時間的変化量(例えば、t-iの交点における接線の傾き)とを比較すると、供試物中の酵素を産生した口腔内細菌としてPg菌が含まれるか否かや、比較対象に対してPg菌が多いか少ないかを判別することができる。
このような判別法の場合、時間変化量(傾き)の計算が必要になるが、酵素反応の反応時間を必ずしも一致させる必要がなく、また、蛍光測定結果が測定系統誤差を生じ難くなるため、正確な比較に基づいて口腔内細菌としてPg菌が含まれるか否かや、比較対象に対してPg菌が多いか少ないかを判別することができる。なお、蛍光強度の時間変化量は、同じ反応時間あたりで比較することもできるし、酵素反応中の最大値同士等で比較することもできる。
図6は、本発明の実施形態に係る菌種判別方法の流れを示すフロー図である。
図6に示すように、本実施形態に係る菌種判別方法は、酵素反応工程S10と、蛍光測定工程S20と、判別工程S30と、を含む。酵素反応工程S10と蛍光測定工程S20は、判別対象の供試物を含む液体試料および比較対象の供試物を含む液体試料のそれぞれについて行う。
酵素反応工程S10では、口腔内細菌の菌体や、その菌体抽出物である供試物と、式(1)で表される試薬と、pH緩衝液と、を含む液体試料を調製し、式(1)で表される試薬に対する酵素反応を開始させる。酵素反応は、判別対象および比較対象のそれぞれについて、互いに同量の式(1)で表される試薬と、互いに同量の供試物と、を添加した液体試料を用いて、同様の酵素反応条件で行う。
供試物中にアルギニン残基を認識するプロテアーゼが含まれている場合、式(1)で表される試薬を入れたpH緩衝液に供試物を添加するか、または、供試物を入れたpH緩衝液に式(1)で表される試薬を添加すると、式(1)で表される試薬を基質としたプロテアーゼによる消化反応を開始させることができる。各液体試料は、酵素反応に適した一定のpH条件および温度条件に調整して酵素反応させる。
酵素反応のpH条件は、pH7.5を超えpH8.5以下に調整することが好ましい。酵素反応のpH条件は、好ましくはpH7.8以上である。また、好ましくはpH8.4以下、より好ましくはpH8.3以下、更に好ましくはpH8.2以下、更に好ましくはpH8.1以下である。
このようなpHであると、アルギニン残基を認識するArg-ジンジパイン等のプロテアーゼの消化活性が適切に得られる。特に、供試物として菌体を用いる場合、このようなpHであると、II型やIV型のPg菌が産生するArg-ジンジパインによる高い消化活性が得られる。そのため、Pg菌、Td菌、Tf菌等の口腔内細菌のうち、歯周炎に特徴的なII型やIV型のPg菌を判別することができる。
pH緩衝液としては、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(Tris)、ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)、および、2-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)のいずれかを主成分とするものが好ましい。このようなpH緩衝液であると、酵素反応に適したpHに維持することができるため、酵素活性に基づく判別を正確に行うことができる。
pH緩衝液としては、特に、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(Tris)を主成分とするものが好ましい。Trisを主成分とするpH緩衝液の具体例としては、Tris-塩酸緩衝液、Tris-酢酸緩衝液、Tris-ホウ酸緩衝液、Tris-リン酸緩衝液等が挙げられる。Trisを主成分とするpH緩衝液によると、酵素活性に基づく判別を、より正確に行うことができる。
酵素反応の温度条件は、4℃以上45℃以下に調整することが好ましい。酵素反応の温度条件は、供試物として菌体抽出物を用いる場合、好ましくは25℃以上、より好ましくは30℃以上、更に好ましくは34℃以上、更に好ましくは36℃以上である。また、好ましくは40℃以下、より好ましくは39℃以下、更に好ましくは38℃以下である。一方、供試物として菌体を用いる場合、好ましくは4℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上、更に好ましくは18℃以上、更に好ましくは21℃以上である。また、好ましくは37℃以下、より好ましくは30℃以下、更に好ましくは26℃以下、更に好ましくは23℃以下である。
このような温度であると、アルギニン残基を認識するArg-ジンジパイン等のプロテアーゼの消化活性が適切に得られる。特に、供試物として菌体抽出物を用いる場合、37℃付近に調整すると、I型のPg菌が産生するArg-ジンジパインによる高い消化活性が得られる。そのため、Pg菌、Td菌、Tf菌等の口腔内細菌のうち、I型のPg菌を判別することができる。また、供試物として菌体を用いる場合、22℃付近に調整すると、II型やIV型のPg菌が産生するArg-ジンジパインによる高い消化活性が得られる。そのため、Pg菌、Td菌、Tf菌等の口腔内細菌のうち、歯周炎に特徴的なII型やIV型のPg菌を判別することができる。菌体内で酵素等を内包しているベジクルの菌体からの遊離性や菌体による保持力は、遺伝子型毎に異なることが実験上で確認されているためである。
蛍光測定工程S20では、口腔内細菌の菌体、または、その菌体抽出物である供試物と、式(1)で表される試薬と、pH緩衝液と、を用いて調製した液体試料に励起光を照射し、液体試料から放出される蛍光の強度を測定する。蛍光測定は、判別対象および比較対象のそれぞれについて、同様の蛍光測定装置を用いて、同様の測定条件で行うことが好ましい。
供試物中にアルギニン残基を認識するプロテアーゼが含まれている場合、式(1)で表される試薬は、酵素反応によって蛍光発色団を解離するため、所定の波長域の励起光を照射すると蛍光を発する。そのため、蛍光測定を行うと、プロテアーゼ自体の活性や酵素量に依存する液体試料当たりの酵素活性に応じて蛍光強度を検出することができる。
液体試料に照射する励起光の波長は、好ましくは350nm以上380nm以下、より好ましくは355nm以上375nm以下、更に好ましくは360nm以上370nm以下である。このような波長であると、蛍光発色団であるAMCに照射した場合に、検出に適した高い蛍光強度を得ることができる。
蛍光強度を測定する蛍光の波長は、好ましくは410nm以上475nm以下、より好ましくは425nm以上465nm以下、更に好ましくは430nm以上455nm以下、特に好ましくは435nm以上450nm以下である。このような波長であると、蛍光発色団であるAMCによる蛍光を高感度に検出することができる。
なお、液体試料についての蛍光の検出は、式(1)で表される試薬に対する酵素反応を開始させた後、式(1)で表される試薬が酵素反応によって完全に分解・解離する前に行うことが好ましい。また、蛍光の検出は、蛍光寿命によって蛍光が減衰する前に行うことが好ましい。具体的には、蛍光の検出は、酵素反応の開始時から10分以内に行うことが好ましく、5分以内に行うことがより好ましい。このような時期であると、酵素活性に応じた蛍光強度の違いを高感度に検出することができる。
判別工程S30では、励起光を照射した液体試料から放出される蛍光の強度に基づいて、判別対象の供試物中の酵素を産生した口腔内細菌としてポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)が含まれるか否か、または、判別対象の供試物中の酵素を産生した口腔内細菌として含まれるポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)の量を判別する。判別の際には、菌種や菌量が未知である判別対象の供試物についての蛍光測定結果と、菌種や菌量が既知である比較対象の供試物についての蛍光測定結果とを比較する。
蛍光測定結果の比較は、菌種や菌量が未知である判別対象の供試物を含む液体試料について測定された所定の反応時間後の蛍光強度値、または、所定の時期の蛍光強度の時間的変化量と、菌種や菌量が既知である比較対象の供試物を含む液体試料について測定された所定の反応時間後の蛍光強度値、または、所定の時期の蛍光強度の時間的変化量とを比較することによって行う。比較に際しては、蛍光強度値同士または蛍光強度の時間的変化量同士を比較する。
液体試料について測定される蛍光強度値や蛍光強度の時間的変化量は、液体試料当たりの酵素活性を間接的に表している。そのため、判別対象の供試物についての蛍光測定結果と、比較対象の供試物についての蛍光測定結果とを比較すると、判別対象の供試物中の酵素を産生した口腔内細菌としてPg菌が含まれるか否か、ないし、判別対象の供試物中の酵素を産生した口腔内細菌として含まれるPg菌の量、すなわち、比較対象に対してPg菌が多いか少ないかを判別することができる。
比較対象の供試物は、菌種を予め判別した菌体や、分譲等で一般的に入手可能な寄託株・単離株の菌体や、これらの菌体抽出物等を用いて用意することができる。比較対象の供試物の菌種を判別する方法としては、従来用いられているPCRを利用した分子生物学的手法、蛍光測定法等の各種の方法を用いることができる。比較対象の供試物の菌量は、酵素活性、鋳型DNA量等として求めてもよい。
Pg菌の寄託株・単離株の具体例としては、fimA遺伝子がI型であるATCC_33277株、ATCC_BAA-1703(FDC381)株、II型であるJCM_19600(TDC60)株、275株(HG184株)、268株、III型であるATCC_49417(RB22D-1)株、IV型であるATCC_BAA-308(W83)株、ATCC_53978(W50)株、V型であるHNA99株等が挙げられる。
Td菌の寄託株・単離株の具体例としては、ATCC_35404株、ATCC_35405株、ATCC_33520株、ATCC_33521株等が挙げられる。Tf菌の寄託株・単離株の具体例としては、ATCC_43037株、ATCC_700198株等が挙げられる。
判別工程S30において、単離された口腔内細菌に由来することが分かっている供試物を判別しようとする場合、比較対象の供試物としては、菌種や菌量が既知であり、単離されたPg菌に由来する供試物や、単離されたTd菌に由来する供試物や、単離されたTf菌に由来する供試物を用いることができる。
このような比較対象の供試物を含む液体試料を用いて蛍光測定を行い、菌種や菌量に応じてとり得る蛍光強度値の範囲や、蛍光強度の時間的変化量の範囲を求める。比較対象についての蛍光測定は、判別対象についての蛍光測定と同時に行ってもよいし、判別対象についての蛍光測定よりも前に予め行っておいてもよい。
蛍光測定結果を比較した結果、単離された判別対象の供試物について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量が、単離されたPg菌に由来する比較対象の供試物について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量に対して、互いに同一であるか、または、近似しているとき、単離された判別対象の供試物中の酵素を産生した口腔内細菌がPg菌である、と判定することができる。一方、互いに同一でなく、且つ、近似していないとき、Pg菌でない、と判定することができる。
また、蛍光測定結果を比較した結果、単離された判別対象の供試物について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量が、単離されたTd菌やTf菌に由来する比較対象の供試物について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量に対して、有意に大きい値であるとき、単離された判別対象の供試物中の酵素を産生した口腔内細菌がPg菌である、と判定することができる。一方、有意に小さい値であるとき、Pg菌でない、と判定することができる。
すなわち、単離されたPg菌の場合にとり得る蛍光測定結果と、単離されたTd菌やTf菌の場合にとり得る蛍光測定結果との、境界となる閾値を設定した場合、単離された判別対象の供試物について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量が、予め設定された閾値以上であるとき、単離された判別対象の供試物中の酵素を産生した口腔内細菌がPg菌である、と判定することができる。一方、予め設定された閾値未満であるとき、Pg菌でない、と判定することができる。
特に、判別対象の供試物を含む液体試料が、単離されたPg菌の菌体または菌体抽出物、単離されたTd菌の菌体または菌体抽出物、または、単離されたTf菌の菌体または菌体抽出物のいずれかのみを含む場合には、判別対象の供試物について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量が、予め設定された閾値以上であるとき、判別対象の供試物中の酵素を産生した口腔内細菌がPg菌である、と判定し、予め設定された閾値未満であるとき、Td菌またはTf菌である、と判定することができる。
或いは、判別工程S30において、単離されていない口腔内細菌の細菌群に由来することが分かっている供試物を判別しようとする場合、比較対象の供試物としては、菌種や菌量が既知であり、単離されていない口腔内細菌の細菌群に由来する供試物や、単離されたPg菌に由来する供試物や、単離されたTd菌に由来する供試物や、単離されたTf菌に由来する供試物を用いることができる。細菌群に由来する供試物としては、Pg菌、Td菌およびTf菌の菌量が種々の比率で異なる複数種を用いることができる。
このような比較対象の供試物を用いて蛍光測定を行い、菌種や菌量に応じてとり得る蛍光強度値の範囲や、蛍光強度の時間的変化量の範囲を求める。比較対象についての蛍光測定は、判別対象についての蛍光測定と同時に行ってもよいし、判別対象についての蛍光測定よりも前に予め行っておいてもよい。
蛍光測定結果を比較した結果、単離されていない判別対象の供試物について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量が、単離されていない細菌群に由来する比較対象の供試物について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量に対して、有意に大きい値であるとき、単離されていない判別対象の供試物中の酵素を産生した口腔内細菌として含まれるPg菌の量が比較対象の供試物よりも多い、と判定することができる。一方、有意に小さい値であるとき、Pg菌の量が比較対象の供試物よりも少ない、と判定することができる。
すなわち、単離されていない細菌群の場合にとり得る蛍光測定結果の上限値または下限値に相当する閾値を設定した場合、単離されていない判別対象の供試物について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量が、予め設定された上限値に基づく閾値以上であるとき、Pg菌の量が比較対象の供試物よりも多い、と判定することができる。一方、予め設定された下限値に基づく閾値未満であるとき、Pg菌の量が比較対象の供試物よりも少ない、と判定することができる。
また、蛍光測定結果を比較した結果、単離されていない判別対象の供試物について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量が、単離されたPg菌に由来する比較対象の供試物について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量に対して、互いに同一であるか、または、近似しているとき、単離されていない判別対象の供試物中の酵素を産生した口腔内細菌として含まれるPg菌の量が比較対象の供試物と同程度に多い、と判定することができる。一方、互いに同一でなく、且つ、近似していないとき、Pg菌の量が比較対象の供試物よりも少ない、と判定することができる。
すなわち、単離されたPg菌の場合にとり得る蛍光測定結果の下限値となる閾値を設定した場合、単離されていない判別対象の供試物について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量が、予め設定された下限値に基づく閾値以上であるとき、Pg菌の量が比較対象の供試物と同程度に多い、と判定することができる。一方、予め設定された閾値未満であるとき、Pg菌の量が比較対象の供試物よりも少ない、と判定することができる。
また、蛍光測定結果を比較した結果、単離されていない判別対象の供試物について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量が、単離されたTd菌やTf菌に由来するか、または、単離されていないTd菌およびTf菌のみを含む細菌群に由来する比較対象の供試物について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量に対して、有意に大きい値であるとき、単離されていない判別対象の供試物中の酵素を産生した口腔内細菌としてPg菌が含まれる、ないし、Pg菌の量が比較対象の供試物よりも多い、と判定することができる。一方、有意に小さい値であるとき、Pg菌が含まれない、ないし、Pg菌の量が比較対象の供試物と同程度に少ない、と判定することができる。
すなわち、単離されたTd菌やTf菌の場合にとり得る蛍光測定結果の上限値となる閾値を設定した場合、単離されていない判別対象の供試物について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量が、予め設定された上限値に基づく閾値以上であるとき、Pg菌の量が比較対象の供試物よりも多い、と判定することができる。一方、予め設定された閾値未満であるとき、Pg菌の量が比較対象の供試物と同程度に少ない、と判定することができる。
以上の本実施形態に係る菌種判別方法によると、式(1)で表される試薬に対する特異的な酵素活性に基づいて、判別対象の供試物中の酵素を産生した口腔内細菌としてPg菌が含まれるか否かや、判別対象の供試物中の酵素を産生した口腔内細菌として含まれるPg菌の量、すなわち、比較対象に対してPg菌が多いか少ないかを判別することができる。従来一般的な分子生物学的手法とは異なり、細胞外プロテアーゼの活性を蛍光測定法で評価するため、非精製の供試物や粗精製した供試物を用いることが可能であり、測定試料の調製を簡便に行うことができる。また、蛍光強度値や蛍光強度の時間変化量を比較するため、或る程度の精度が確保された定量的な判別を速やかに行うことができる。よって、被験者の口腔内から採取された試料等を対象として、歯周病の原因菌であるPg菌を迅速且つ簡便に検出することができる。
<口臭リスク判定方法>
本実施形態に係る口臭リスク判定方法は、式(1)で表される試薬を用いて口臭のリスクを判定する方法である。この口臭リスク判定方法では、被験者の口腔から得られる供試物を判定対象として被験者毎の口臭が発現するリスクの高さを判定する。口臭のリスクの判定は、式(1)で表される試薬を基質としたプロテアーゼの酵素活性に基づいて行う。酵素活性は、式(1)で表される試薬を添加した液体試料を用いて蛍光測定法によって評価する。
供試物としては、被験者の口腔から採取した歯垢、歯肉浸出液、唾液、または、これらに含まれる菌体の菌体抽出物を用いることができる。供試物としては、例えば、被験者の口腔から採取した歯垢、歯肉浸出液、唾液等を、そのまま、ないし、pH緩衝液等の分散媒に懸濁させた懸濁液や、懸濁液の上清として用いることができる。なお、菌体抽出物には、菌体を細胞破壊処理等して残渣から分離した抽出物、および、菌体によって細胞外に分泌・産生された物質のいずれも含まれる。歯垢、歯肉浸出液、唾液に含まれる菌体の菌体抽出物は、菌体を細胞破壊処理した後の上清や、菌体を培養した後の上清として得ることができる。
判定対象の供試物と、式(1)で表される試薬と、を添加した液体試料を蛍光測定すると、供試物にアルギニン残基を認識するプロテアーゼが含まれている場合、図5に示す場合と同様に、液体試料当たりの酵素活性に応じて蛍光強度が検出される。被験者の口腔から採取した歯垢、歯肉浸出液、唾液等は、Pg菌とTd菌やTf菌が混在している可能性があるため、図5に鎖線の曲線で示すように、酵素反応の開始後の蛍光強度値や、酵素反応の初期における蛍光強度の時間変化量として、同じ菌量の単離されたPg菌に由来する場合と同等か、それよりも小さい値が得られる。供試物が細菌群に由来する場合には、細菌群の組成、すなわち、細菌群を構成する菌種や菌種毎の菌量に応じて、図5の網掛け領域とは異なる蛍光測定結果が得られる。
そのため、酵素反応の開始後に所定の反応時間が経過したとき(例えば、時間t)に、液体試料の蛍光強度を測定し、判定対象の供試物の蛍光強度値(例えば、蛍光強度i)と、Arg-ジンジパインによる酵素活性が既知である標準物の蛍光強度値(例えば、蛍光強度i)とを、同じ反応時間あたりで比較すると、供試物中のArg-ジンジパインによる液体試料当たりの酵素活性を判別することができる。
或いは、酵素反応の開始後に所定の時間間隔毎に経時的(例えば、時間t付近の微小区間)に液体試料の蛍光強度を測定し、時間微分である蛍光強度の時間的変化量を求め、判定対象の供試物の蛍光強度の時間的変化量(例えば、t-iの交点における接線の傾き)と、Arg-ジンジパインによる酵素活性が既知である標準物の蛍光強度の時間的変化量(例えば、t-iの交点における接線の傾き)とを比較すると、供試物中のArg-ジンジパインによる液体試料当たりの酵素活性を判別することができる。
このような比較によって、供試物中のArg-ジンジパインによる液体試料当たりの酵素活性を判別すると、酵素活性とメチルメルカプタンの生成量との相関関係から、歯周病に特徴的な口臭が発現するリスクを判定することができる。判定対象の供試物中のArg-ジンジパインによる酵素活性は、被験者の口腔内におけるメチルメルカプタンの生成量と高い相関を持つためである。
図7は、本発明の実施形態に係る口臭リスク判定方法の流れを示すフロー図である。
図7に示すように、本実施形態に係る口臭リスク判定方法は、酵素反応工程S11と、蛍光測定工程S21と、判定工程S31と、を含む。酵素反応工程S11と蛍光測定工程S21は、判定対象の供試物を含む液体試料および比較対象の標準物を含む液体試料のそれぞれについて行う。
酵素反応工程S11では、被験者の口腔から採取した歯垢、歯肉浸出液、唾液、または、これらに含まれる菌体の菌体抽出物である供試物と、式(1)で表される試薬と、pH緩衝液と、を含む液体試料を調製し、式(1)で表される試薬に対する酵素反応を開始させる。酵素反応は、判定対象および比較対象のそれぞれについて、互いに同量の式(1)で表される試薬を添加した液体試料を用いて、同様の酵素反応条件で行う。
比較対象として用いる標準物としては、メチルメルカプタンの生成量ないし口臭の強さとの相関関係が確認されている精製されたArg-ジンジパインや、メチルメルカプタンの生成量ないし口臭の強さとの相関関係が確認されているArg-ジンジパインを含む組成物を用いることができる。Arg-ジンジパインを含む組成物としては、Pg菌の菌体、Pg菌の菌体抽出物等が挙げられる。標準物を含む液体試料は、このような標準物と、式(1)で表される試薬と、pH緩衝液と、を用いて調製することができる。標準物を含む液体試料は、液体試料当たりの酵素活性と、メチルメルカプタンの生成量ないし口臭の強さとの相関関係を予め求めておく。
酵素反応工程S11において、酵素反応のpH条件や温度条件としては、前記の菌種判別方法と同様の条件を用いることができる。また、pH緩衝液としては、前記の菌種判別方法と同様の緩衝液を用いることができる。
蛍光測定工程S21では、被験者の口腔から採取した歯垢、歯肉浸出液、唾液、または、これらに含まれる菌体の菌体抽出物である判定対象の供試物と、式(1)で表される試薬と、pH緩衝液と、を用いて調製した液体試料に励起光を照射し、液体試料から放出される蛍光の強度を測定する。また、比較対象の標準物を含む液体試料についても、同様に蛍光の強度を測定する。蛍光測定は、判定対象および比較対象のそれぞれについて、同様の蛍光測定装置を用いて、同様の測定条件で行うことが好ましい。
蛍光測定工程S21において、液体試料に照射する励起光の波長や、蛍光強度を測定する蛍光の波長としては、前記の菌種判別方法と同様の条件を用いることができる。また、蛍光の検出の時期としては、前記の菌種判別方法と同様の条件を用いることができる。
判定工程S31では、励起光を照射した液体試料から放出される蛍光の強度に基づいて、被験者に口臭が発現するリスクの高さを判定する。口臭のリスクの判定の際には、被験者の口腔から採取した判定対象の供試物を含む液体試料についての蛍光測定結果と、Arg-ジンジパインによる酵素活性が既知である比較対象の標準物を含む液体試料についての蛍光測定結果とを比較する。
蛍光測定結果の比較は、被験者の口腔から採取した判定対象の供試物を含む液体試料について測定された所定の反応時間後の蛍光強度値、または、所定の時期の蛍光強度の時間的変化量と、Arg-ジンジパインによる酵素活性が既知である比較対象の標準物を含む液体試料について測定された所定の反応時間後の蛍光強度値、または、所定の時期の蛍光強度の時間的変化量とを比較することによって行う。比較に際しては、蛍光強度値同士または蛍光強度の時間的変化量同士を比較する。
判定工程S31において、比較対象の標準物を含む液体試料としては、Arg-ジンジパインによる液体試料当たりの酵素活性が既知である一種の液体試料を用いてもよいし、Arg-ジンジパインによる液体試料当たりの酵素活性が互いに異なる複数種の液体試料を用いてもよい。比較対象の標準物を含む液体試料としては、Arg-ジンジパインによる液体試料当たりの酵素活性と、メチルメルカプタンの生成量ないし口臭の強さとの相関関係が確認されているものを用いる。例えば、Pg菌を所定時間にわたって培養して、メチルメルカプタンの生成量が、判定基準となる強い臭気を生じる生成量に達する培養時間を求める。このような培養時間において、Arg-ジンジパインによる液体試料当たりの酵素活性を測定すると、口臭の判定基準となる液体試料の酵素活性を設定することができる。
このような比較対象の標準物を含む液体試料を用いて蛍光測定を行い、メチルメルカプタンの生成量に応じてとり得る蛍光強度値の範囲や、蛍光強度の時間的変化量の範囲を求める。比較対象についての蛍光測定は、判別対象についての蛍光測定と同時に行ってもよいし、判別対象についての蛍光測定よりも前に予め行っておいてもよい。
判定基準となる強い臭気を生じるメチルメルカプタンの生成量に対応した比較対象の標準物を用いた場合、蛍光測定結果を比較した結果、被験者の口腔から採取した判定対象の供試物について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量が、比較対象の標準物について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量に対して、有意に大きい値であるとき、口臭が発現するリスクが高い、と判定することができる。一方、有意に小さい値であるとき、口臭が発現するリスクが低い、と判定することができる。
すなわち、強い臭気を生じるメチルメルカプタンの生成量に対応した比較対象の標準物についての蛍光測定結果に基づいて判定基準となる閾値を設定した場合、被験者の口腔から採取した判定対象の供試物について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量が、予め設定された閾値以上であるとき、口臭が発現するリスクが高い、と判定することができる。一方、予め設定された閾値未満であるとき、口臭が発現するリスクが低い、と判定することができる。
以上の本実施形態に係る口臭リスク判定方法によると、式(1)で表される試薬に対する特異的な酵素活性に基づいて、被験者の口臭が発現するリスクを判定することができる。従来のガスクロマトグラフを用いた検査法とは異なり、比較的小型の装置を用いることができるし、測定の操作を容易に行うことができる。また、ガスクロマトグラフを用いた検査法や、半導体センサを用いた検査法とは異なり、細胞外プロテアーゼの活性を蛍光測定法で評価するため、固体状や液体状の判定対象を用いることが可能であり、測定試料の調製を簡便に行うことができる。また、蛍光強度値や蛍光強度の時間変化量を比較するため、或る程度の精度が確保された定量的な判定を速やかに行うことができる。よって、被験者の口腔内から採取された試料等を対象として、口臭のリスクを迅速且つ簡便に検出することができる。
特に、以上の本実施形態に係る口臭リスク判定方法によると、Pg菌が産生するArg-ジンジパインが特異的に作用する式(1)で表される試薬を用いるため、被験者に生じる口臭のリスクとして、Pg菌によるメチルメルカプタンの生成に起因するリスクを判定することができる。メチルメルカプタンは、口臭の原因物質の一種であり、歯周病に伴う口臭に特徴的な成分であるため、歯周病に特徴的な口臭のリスクを選択的、迅速且つ簡便に検出することができる。
<蛍光測定装置>
次に、本発明の一実施形態に係る蛍光測定装置について、図を参照しながら説明する。
図8は、本発明の実施形態に係る蛍光測定装置の構成を示す図である。
図8に示すように、本実施形態に係る蛍光測定装置100は、光源(照射手段)1と、試料ホルダ2と、光学レンズ3a,3bと、フィルタ4と、検出素子(検出手段)5と、増幅器6と、アナログ処理器7と、A/D変換器8と、制御装置(判別手段)9と、試料容器10と、入力手段11と、表示手段12と、pH測定手段13と、温度測定手段14と、温調装置15と、を備えている。
本実施形態に係る蛍光測定装置100は、被験者の口腔内から採取された試料等を対象として、歯周病の原因菌を判別する用途、または、口臭のリスクを判定する用途に使用することができる。歯周病の原因菌の判別および口臭のリスクの判定は、式(1)で表される試薬を基質としたプロテアーゼの酵素活性に基づいて行う。酵素活性は、式(1)で表される試薬を添加した液体試料Saを用いて蛍光測定法によって評価する。
この蛍光測定装置100では、歯周病の原因菌を判別する用途の場合、判別対象の供試物中の酵素を産生した口腔内細菌としてポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)が含まれるか否か、または、酵素を産生した口腔内細菌として含まれるポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)の量、すなわち、比較対象に対してPg菌が多いか少ないかを判別する。一方、口臭のリスクを判定する用途の場合、被験者の口腔から得られる供試物を判定対象として被験者毎の口臭が発現するリスクの高さを判定する。
光源1は、励起光を発生させるための装置である。液体試料Sa中において、式(1)で表される試薬にアルギニン残基を認識するプロテアーゼが作用すると、式(1)で表される試薬から蛍光発色団が解離する。光源1によって発生させた励起光を液体試料Saに照射すると、蛍光発色団が発した蛍光が、液体試料Saから放出される。
光源1としては、特定の励起波長が単色化された単色化光源、例えば、発光ダイオード(light emitting diode:LED)、レーザー光源等が好ましく用いられる。但し、光源1としては、キセノンランプ、水銀ランプ、ハロゲンランプ等のその他の光源を、分光器等の光学系と共に備えてもよい。
光源1が発生する励起光は、350nm以上380nm以下の波長に最大ピークを持つことが好ましく、355nm以上375nm以下の波長に最大ピークを持つことがより好ましく、360nm以上370nm以下の波長に最大ピークを持つことが更に好ましい。このようなスペクトルであると、蛍光発色団であるAMCに照射した場合に、検出に適した高い蛍光強度を得ることができる。
試料ホルダ2は、不図示の測定室内に設置されており、試料容器10を、励起光の照射および蛍光の出射が可能な状態に支持している。図8では、試料ホルダ2に液体試料Saを入れた試料容器10が固定されている。試料ホルダ2に支持された試料容器10には、側方から励起光が照射される。試料ホルダ2が設置される測定室は、温度が一定に保たれる恒温室として設けることもできる。
検出素子5は、液体試料Saが放出した蛍光を検出するための装置である。液体試料Saから放出された蛍光は、試料容器10から出射し、光学レンズ3aを通ってフィルタ4に達する。フィルタ4は、ノイズや低感度の波長域を除き、特定の波長域の蛍光のみを透過する。フィルタ4を透過した蛍光は、光学レンズ3bを通って検出素子5に入射して、電気信号に変換される。
検出素子5としては、フォトダイオード、光電管、光電子増倍管等の各種の検出素子を用いることができる。フィルタ4としては、光学フィルタ、ダイクロイックミラー等を用いることができる。フィルタ4としては、410nm以上475nm以下の波長を透過し、それ以外の波長を遮断するものが好ましい。このような特性であると、AMCによる蛍光を高感度に検出することができる。
検出素子5で変換された蛍光の電気信号は、増幅器6によって増幅された後、ローパスフィルタ等を備えるアナログ処理器7によってノイズ除去処理等を施される。その後、蛍光の電気信号は、A/D変換器8によってデジタル信号に変換されて、制御装置9に入力される。
液体試料SaのpHは、pH測定手段13によって測定することができる。pH測定手段13としては、例えば、ガラス電極式、膜電極式等のpH計を試料容器10に挿入して用いることができる。pH測定手段13によると、酵素活性がpHの影響を受け易い場合、pHが所定の範囲を逸脱したときに蛍光測定を中止したり不正確な蛍光測定結果を破棄したりする対応が可能になる。但し、pH測定手段13の設置は省略されてもよい。
液体試料Saの温度は、温度測定手段14によって測定することができる。温度測定手段14としては、例えば、サーミスタ、熱電対、測温抵抗体等を試料容器10に挿入して用いることができる。温度測定手段14によると、蛍光測定時に液体試料Saの温度をオンラインで監視して、調温装置15をフィードバック制御することができる。但し、試料ホルダ2を恒温室に配置する場合、温度測定手段14は、恒温室に設置してもよい。
温調装置15は、液体試料Saを調温するための装置である。温調装置15としては、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ、ペルチェ素子、恒温媒体循環系等を試料容器10の周囲、例えば、下方や側方の試料ホルダ2に備えることができる。温調装置15によると、液体試料Saを酵素反応に適した一定の温度に調温して、酵素活性を正確に評価することができる。温調装置15は、恒温室等に設置してもよい。
なお、図8では、セル状の試料容器10を用いているが、試料容器10として、マイクロチューブを用いることもできる。マイクロチューブとしては、反応、抽出、培養、遠心分離等の各種の操作に用いることが可能であり、容積1~2mL程度のプラスチック製、ガラス製等の容器が挙げられる。
試料容器10として、マイクロチューブを用いる場合、試料ホルダ2には、液体試料Saを入れた脱蓋状態のマイクロチューブを取り付けることができる。このようなマイクロチューブには、側壁面から励起光を入射させることができる。液体試料Saから放出される蛍光は、試料ホルダ2の側方ではなく、脱蓋状態のマイクロチューブの上方に出射させて検出することができる。
このような形態によると、マイクロチューブの側壁が励起光の光導波路となり、脱蓋状態のマイクロチューブの上方に蛍光が出射するため、光学系を簡素化することができる。また、各種の操作に用いたマイクロチューブを、そのまま蛍光測定に供することができる。そのため、少量の液体試料Saを測定対象とし、簡単な構造の蛍光測定装置を使用して、安価且つ簡便に蛍光測定を行うことができる。
図9は、蛍光測定装置が備える制御装置の概略構成を示す図である。
図9に示すように、蛍光測定装置100が備える制御装置9は、測定結果データ取得部90と、測定結果データ処理部91と、測定結果データ比較部92と、測定条件データ取得部93と、制御部94と、記憶部95と、表示制御部96と、温度制御部97と、を備えている。
制御装置9は、蛍光測定装置100の運転を制御すると共に、液体試料Sa中の酵素を産生した歯周病の原因菌を判別する処理、または、液体試料Sa中の被験者からの採取試料についての口臭のリスクを判定する処理を行う。制御装置9は、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置や、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク等の記憶装置等によって構成することができる。
制御装置9には、不図示の入力インターフェイスを介して、入力手段11や、検出素子5を備えている蛍光測定部や、pH測定手段14や、温度測定手段15が接続される。また、制御装置9には、不図示の出力インターフェイスを介して、表示手段12や、温調装置15が接続される。制御装置9が備える各デバイスは、不図示のバスを介して互いに接続される。
入力手段11は、蛍光測定装置100を操作するための装置である。入力手段11は、例えば、キーボード、マウス、タッチパッド等の各種の装置によって構成することができる。表示手段12は、遺伝子型の判別の結果を表示する装置である。表示手段12は、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等の各種の装置によって構成することができる。
蛍光測定装置100では、歯周病の原因菌を判別する用途の場合、液体試料Sa中の酵素を産生した口腔内細菌としてPg菌が含まれるか否かを判別する処理や、液体試料Sa中の酵素を産生した口腔内細菌として含まれるPg菌の量を判別する処理を、菌種や菌量が未知である判別対象の供試物を含む液体試料について測定された所定の反応時間後の蛍光強度値、または、所定の時期の蛍光強度の時間的変化量と、予め設定されている閾値と、を比較する方法によって行うことができる。
歯周病の原因菌を判別するための閾値は、菌種や菌量が既知である比較対象の供試物を含む液体試料について測定された所定の反応時間後の蛍光強度値、または、所定の時期の蛍光強度の時間的変化量に基づいて予め設定される。比較に際しては、蛍光強度値と蛍光強度値に対応した閾値、または、蛍光強度の時間的変化量と蛍光強度の時間的変化量に対応した閾値を比較する。
一方、口臭のリスクを判定する用途の場合、液体試料Sa中の被験者からの採取試料についての口臭のリスクを判定する処理を、被験者の口腔から採取した判定対象の供試物を含む液体試料について測定された所定の反応時間後の蛍光強度値、または、所定の時期の蛍光強度の時間的変化量と、予め設定されている閾値と、を比較する方法によって行うことができる。
口臭のリスクを判定するための閾値は、強い臭気を生じるメチルメルカプタンの生成量に対応した比較対象の標準物についてについて測定された所定の反応時間後の蛍光強度値、または、所定の時期の蛍光強度の時間的変化量に基づいて予め設定される。比較に際しては、蛍光強度値と蛍光強度値に対応した閾値、または、蛍光強度の時間的変化量と蛍光強度の時間的変化量に対応した閾値を比較する。
測定結果データ取得部90は、検出素子5を備えている蛍光測定部側から入力される測定結果データを取得する。測定結果データは、液体試料Saについて検出された蛍光の蛍光強度、酵素反応の開始時から起算される検出時間等のデータである。測定結果データは、測定結果データ処理部91や記憶部95に出力される。
測定結果データ処理部91は、測定結果データに基づいて判別に用いる蛍光強度データを算出する。蛍光強度データは、所定の検出時間における蛍光強度値、所定の検出時間における蛍光強度の時間的変化量等のデータである。蛍光強度データは、所定の検出時間範囲における蛍光強度値の平均値、所定の検出時間範囲における蛍光強度の時間的変化量の平均値または最大値等であってもよい。蛍光強度データは、測定結果データ比較部92や記憶部95に出力される。
測定結果データ比較部92は、測定結果データに基づく蛍光強度データを、記憶部95に記憶されている閾値と比較する。測定結果データ比較部92は、液体試料Saについて生成された蛍光強度データが、閾値を超えるか否かを判定して、歯周病の原因菌の判別、または、口臭のリスクの判定を行う。判別・判定の結果を示すデータは、表示制御部97に出力される。
測定条件データ取得部93は、pH測定手段13や、温度測定手段14から入力される測定条件データを取得する。測定条件データは、pH測定手段13によって所定の時間間隔で測定された液体試料SaのpHや、温度測定手段14によって所定の時間間隔で測定された液体試料Saの温度のデータである。測定条件データは、制御部95や温度制御部97に出力される。
制御部94は、蛍光測定装置100が備える各デバイスの動作や、歯周病の原因菌を判別する処理、または、口臭のリスクを判定する処理や、判別の結果を表示する処理等を、所定のプログラムや、入力手段11を介したユーザからの入力に基づいて制御する。
記憶部95は、蛍光測定装置100が備える各デバイスの動作や、判別・判定の処理、判別の結果を表示する処理等を実行するためのプログラムや、判別・判定に用いる閾値等のデータを、蛍光測定装置100の用途に応じて記憶する。
例えば、歯周病の原因菌を判別する用途の場合、菌種や菌量が既知である供試物を用いて予め蛍光測定を行い、得られた測定結果データから蛍光強度データを求め、予め記憶部95に記憶させておくことができる。また、多数の蛍光強度データに基づいて歯周病の原因菌の判別に用いる閾値を設定し、予め記憶部95に記憶させておくことができる。
また、口臭のリスクを判定する用途の場合、Arg-ジンジパインによる液体試料当たりの酵素活性が既知である標準物を用いて予め蛍光測定を行い、得られた測定結果データから蛍光強度データを求め、予め記憶部95に記憶させておくことができる。また、多数の蛍光強度データに基づいて口臭のリスクの判定に用いる閾値を設定し、予め記憶部95に記憶させておくことができる。
表示制御部96は、表示手段12に表示する画像の生成や表示の制御を行う。表示制御部96は、蛍光測定装置100の運転状態や、蛍光測定の結果や、判別・判定の結果についての画像を生成して表示手段12に出力する。
温度制御部97は、温調装置15の温度制御を行う。温度制御部97は、温度測定手段15によって測定された液体試料Saの温度に基づいて温調装置15をフィードバック制御し、液体試料Saの温度を酵素反応に適した一定の温度に維持する。
図10は、蛍光測定装置による判別・判定の処理の流れを示すフロー図である。
図10に示すように、蛍光測定装置100では、歯周病の原因菌を判別する用途の場合、菌種や菌量が未知である判別対象の供試物を含む液体試料を測定対象として蛍光測定を行い、測定データに基づく歯周病の原因菌の判別の結果をユーザに対して表示させることができる。一方、口臭のリスクを判定する用途の場合、被験者の口腔から採取した判定対象の供試物を含む液体試料を測定対象として蛍光測定を行い、測定データに基づく口臭のリスクの判定の結果をユーザに対して表示させることができる。
図10に示すように、蛍光測定装置100の運転時には、はじめに、制御装置9に蛍光測定の測定条件を入力する(ステップS300)。測定条件としては、液体試料の調製に用いた供試物の種別、蛍光測定に使用する蛍光波長、待機時間・検出時間、判別・判定に用いる蛍光強度データの種別、例えば、所定の検出時間における蛍光強度値、所定の検出時間における蛍光強度の時間的変化量等の種別等が挙げられる。
続いて、判別・判定対象の供試物と、式(1)で表される試薬と、を含む液体試料Saの蛍光測定を開始して、励起光の照射と蛍光の検出を行う(ステップS310)。歯周病の原因菌を判別する用途の場合、菌種や菌量が未知である判別対象の供試物を含む液体試料Saの蛍光測定を行う。一方、口臭のリスクを判定する用途の場合、被験者の口腔から採取した判定対象の供試物を含む液体試料の蛍光測定を行う。そして、検出素子5によって検出された蛍光についての測定結果データを取得する(ステップS320)。
ステップS320では、判別・判定に所定の検出時間における蛍光強度値を用いる場合、測定結果データとして、その時間の蛍光強度値を、測定結果データ取得部90に収集する。また、判別・判定に蛍光強度の時間的変化量を用いる場合、測定結果データとして、所定の時間間隔で経時的に測定された蛍光強度値を、測定結果データ取得部90に収集する。また、平均値や最大値を用いる場合、所定の時間範囲の蛍光強度値を収集する。
続いて、判別・判定に用いる蛍光強度データを測定結果データに基づいて算出する(ステップS330)。蛍光強度データは、所定の検出時間における蛍光強度値、所定の検出時間範囲における蛍光強度値の平均値、所定の検出時間における蛍光強度の時間的変化量、所定の検出時間範囲における蛍光強度の時間的変化量の平均値または最大値等として、測定結果データ処理部91に収集する。
続いて、蛍光強度データに基づく判別・判定の処理を行う(ステップS340)。歯周病の原因菌を判別する用途の場合、菌種や菌量が未知である判別対象の供試物中の酵素を産生した口腔内細菌としてPg菌が含まれるか否か、または、口腔内細菌として含まれるPg菌の量、すなわち、比較対象に対してPg菌が多いか少ないかを判別する処理を行う。一方、口臭のリスクを判定する用途の場合、被験者の口腔から得られた供試物を判定対象として被験者毎の口臭が発現するリスクの高さを判定する処理を行う。判別・判定の処理は、蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量のデータである蛍光強度データを、測定結果データ比較部92において、記憶部95に記憶されている閾値と比較することによって行う。
歯周病の原因菌を判別する用途の場合、測定結果データ比較部92には、菌種や菌量が未知である判別対象の供試物を含む液体試料について得られた蛍光強度データが入力される。測定結果データ比較部92は、菌種や菌量が未知である判別対象の供試物を含む液体試料の蛍光強度データ、すなわち、蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量と、予め設定された閾値とを比較する。
歯周病の原因菌を判別するための閾値としては、単離された口腔内細菌に由来する供試物を判別しようとする場合、単離されたPg菌の場合にとり得る蛍光測定結果と、単離されたTd菌やTf菌の場合にとり得る光測定結果との境界となる閾値を設定することができる。例えば、供試物の量、式(1)で表される試薬の濃度、pH、温度等が判別対象の液体試料Saと同等である液体試料について、事前に多数の蛍光測定結果を取得する。それらの蛍光測定結果に基づいて、単離されたPg菌についての蛍光測定結果の最小値以下、且つ、単離されたTd菌やTf菌についての蛍光測定結果の最大値以上となる境界値等を設定することができる。
単離されたPg菌の場合にとり得る蛍光測定結果と単離されたTd菌やTf菌の場合にとり得る蛍光測定結果との境界となる閾値を設定した場合、単離された判別対象の供試物について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量が、予め設定された閾値以上であるとき、単離された判別対象の供試物中の酵素を産生した口腔内細菌がPg菌である、と判定することができる。一方、予め設定された閾値未満であるとき、Pg菌でない、と判定することができる。
特に、判別対象の供試物を含む液体試料が、単離されたPg菌、単離されたTd菌、または、単離されたTf菌の菌体または菌体抽出物のいずれかのみを含む場合には、判別対象の供試物について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量が、予め設定された閾値以上であるとき、判別対象の供試物中の酵素を産生した口腔内細菌がPg菌である、と判定し、予め設定された閾値未満であるとき、Td菌またはTf菌である、と判定することができる。
このような判別によると、単離された口腔内細菌に由来する供試物を判別対象として、Pg菌、Td菌、Tf菌等の口腔内細菌のうち、歯周病を引き起こす主要な原因菌であるPg菌を高精度に検出することができる。
また、歯周病の原因菌を判別するための閾値としては、単離されていない口腔内細菌の細菌群に由来する供試物を判別しようとする場合、単離されていない細菌群の場合にとり得る蛍光測定結果の上限値または下限値となる閾値や、単離されたPg菌の場合にとり得る蛍光測定結果の下限値となる閾値や、単離されたTd菌やTf菌の場合にとり得る蛍光測定結果の上限値となる閾値を設定することができる。例えば、供試物の量、式(1)で表される試薬の濃度、pH、温度等が判別対象の液体試料Saと同等である液体試料について、事前に多数の蛍光測定結果を取得する。それらの蛍光測定結果に基づいて、単離されたPg菌についての蛍光測定結果の最小値以下、且つ、単離されていない細菌群についての蛍光測定結果の最大値以上となる境界値や、単離されていない細菌群についての蛍光測定結果の最小値以下、且つ、単離されたTd菌やTf菌についての蛍光測定結果の最大値以上となる境界値等を設定することができる。
単離されていない細菌群の場合にとり得る蛍光測定結果の上限値または下限値となる閾値を設定した場合、単離されていない判別対象の供試物について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量が、予め設定された上限値に基づく閾値以上であるとき、Pg菌の量が比較対象の供試物よりも多い、と判定することができる。一方、予め設定された下限値に基づく閾値未満であるとき、Pg菌の量が比較対象の供試物よりも少ない、と判定することができる。
また、単離されたPg菌の場合にとり得る蛍光測定結果の下限値となる閾値を設定した場合、単離されていない判別対象の供試物について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量が、予め設定された下限値に基づく閾値以上であるとき、Pg菌の量が比較対象の供試物と同程度に多い、と判定することができる。一方、予め設定された閾値未満であるとき、Pg菌の量が比較対象の供試物よりも少ない、と判定することができる。
また、単離されたTd菌やTf菌か、または、単離されていないTd菌およびTf菌のみを含む細菌群の場合にとり得る蛍光測定結果の上限値となる閾値を設定した場合、単離されていない判別対象の供試物について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量が、予め設定された上限値に基づく閾値以上であるとき、Pg菌が含まれる、ないし、Pg菌の量が比較対象の供試物よりも多い、と判定することができる。一方、予め設定された閾値未満であるとき、Pg菌が含まれない、ないし、Pg菌の量が比較対象の供試物と同程度に少ない、と判定することができる。
このような判別によると、単離されていない歯周病の原因菌の細菌群に由来する供試物を判別対象として、細菌群を構成するPg菌のおよその量を簡便に検出することができる。
一方、口臭のリスクを判定する用途の場合、測定結果データ比較部92には、被験者の口腔から採取した判定対象の供試物を含む液体試料について得られた蛍光強度データが入力される。測定結果データ比較部92は、被験者の口腔から採取した判定対象の供試物を含む液体試料の蛍光強度データ、すなわち、蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量と、予め設定された閾値とを比較する。
口臭のリスクを判定するための閾値としては、判定基準となる強い臭気を生じるメチルメルカプタンの生成量に対応した閾値を設定することができる。例えば、式(1)で表される試薬の濃度、pH、温度等が判別対象の液体試料Saと同等であり、所定の標準物を含む液体試料について、事前に多数の蛍光測定結果を取得する。それらの蛍光測定結果に基づいて、判定基準となるメチルメルカプタンの生成量を区別できるような境界値を設定することができる。
判定基準となる強い臭気を生じるメチルメルカプタンの生成量に対応した閾値を設定した場合、被験者の口腔から採取した判定対象の供試物について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量が、予め設定された閾値以上であるとき、口臭が発現するリスクが高い、と判定することができる。一方、予め設定された閾値未満であるとき、口臭が発現するリスクが低い、と判定することができる。また、互いに異なるメチルメルカプタンの生成量に対応した複数の閾値と比較することにより、口臭が発現するリスクの高さを定量的に判定することができる。
続いて、判別・判定の結果を示す画像を、表示制御部96によって表示手段12に表示する(ステップS350)。その後、蛍光測定装置100の運転を終了する。判別・判定の結果は、言語、記号、色等を用いて表示手段12に表示させることができる。
歯周病の原因菌の判別の結果としては、判別対象の供試物に含まれる酵素を産生した口腔内細菌がPg菌である旨やPg菌でない旨、判別対象の供試物に含まれる酵素を産生した口腔内細菌としてPg菌が含まれる旨やPg菌が含まれない旨、どの程度のPg菌が含まれるか等が挙げられる。口臭のリスクの判定の結果としては、口臭が発現するリスクが高い旨や低い旨、どの程度の口臭が発現するリスクがあるか等が挙げられる。
以上の本実施形態に係る蛍光測定装置によると、式(1)で表される試薬に対する特異的な酵素活性に基づいて、判別対象の供試物中の酵素を産生した口腔内細菌としてPg菌が含まれるか否かや、酵素を産生した口腔内細菌として含まれるPg菌の量、すなわち、比較対象に対してPg菌が多いか少ないかを判別することができる。また、式(1)で表される試薬に対する特異的な酵素活性に基づいて、被験者毎の口臭が発現するリスクの高さを判定することができる。従来一般的な手法とは異なり、細胞外プロテアーゼの活性を蛍光測定法で評価するため、非精製の供試物、粗精製した供試物、各種の操作に用いたマイクロチューブ等を用いることが可能であり、測定試料の調製を簡便に行うことができる。また、蛍光強度値や蛍光強度の時間変化量を比較するため、或る程度の精度が確保された定量的な判別・判定を速やかに行うことができる。よって、被験者の口腔内から採取された試料等を対象として、歯周病の原因菌であるPg菌や口臭が発現するリスクを迅速且つ簡便に検出することができる。
以上、本発明について説明したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、本発明は、必ずしも前記の実施形態が備える全ての構成を備えるものに限定されない。或る実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えたり、或る実施形態の構成の一部を他の形態に追加したり、或る実施形態の構成の一部を省略したりすることができる。
例えば、前記の蛍光測定装置100は、液体試料Saの蛍光強度を測定できる限り、適宜の光学系や信号処理系を備えることができる。また、前記の蛍光測定装置100は、歯周病の原因菌を判別する用途に使用する専用の装置、または、口臭のリスクを判定する用途に使用する専用の装置として構成してもよいし、両方の用途に使用する兼用の装置として構成してもよい。
1 光源(照射手段)
2 試料ホルダ
3a 光学レンズ
3b 光学レンズ
4 フィルタ
5 検出素子(検出手段)
6 増幅器
7 アナログ処理器
8 A/D変換器
9 制御装置(判別手段)
10 試料容器
11 入力手段
12 表示手段
13 pH測定手段
14 温度測定手段
15 温調装置
90 測定結果データ取得部
91 測定結果データ処理部
92 測定結果データ比較部
93 測定条件データ取得部
94 制御部
95 記憶部
96 表示制御部
97 温度制御部
100 蛍光測定装置

Claims (25)

  1. 歯周病の原因菌を判別するために使用される試薬であって、
    前記原因菌は、ポルフィロモナス・ジンジバリスであり、
    次の式(1)で表される試薬。
    iBoc-Gly-Gly-Arg-MCA・・・(1)
    [但し、式(1)中、iBocは、イソブチルオキシカルボニル基、Glyは、グリシン残基、Argは、アルギニン残基、MCAは、4-メチルクマリル-7-アミド基を表す。]
  2. 請求項1に記載の試薬であって、
    ポルフィロモナス・ジンジバリス、トレポネマ・デンティコラ、および、タネレラ・フォーサイシアのうちの一種以上の菌体または菌体抽出物を含む液体試料に添加されている試薬。
  3. 口臭のリスクを判定するために使用される試薬であって、
    次の式(1)で表される試薬。
    iBoc-Gly-Gly-Arg-MCA・・・(1)
    [但し、式(1)中、iBocは、イソブチルオキシカルボニル基、Glyは、グリシン残基、Argは、アルギニン残基、MCAは、4-メチルクマリル-7-アミド基を表す。]
  4. 歯周病の原因菌を判別する菌種判別方法であって、
    口腔内細菌の菌体または菌体抽出物と、次の式(1)で表される試薬と、を酵素反応させた液体試料に励起光を照射し、
    前記液体試料から放出された蛍光の強度に基づいて、前記口腔内細菌としてポルフィロモナス・ジンジバリスが含まれるか否か、または、前記口腔内細菌として含まれるポルフィロモナス・ジンジバリスの量を判別する菌種判別方法。
    iBoc-Gly-Gly-Arg-MCA・・・(1)
    [但し、式(1)中、iBocは、イソブチルオキシカルボニル基、Glyは、グリシン残基、Argは、アルギニン残基、MCAは、4-メチルクマリル-7-アミド基を表す。]
  5. 請求項4に記載の菌種判別方法であって、
    前記液体試料は、単離された前記口腔内細菌の菌体または菌体抽出物を含み、
    前記液体試料について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量が、予め設定された閾値以上であるとき、前記口腔内細菌がポルフィロモナス・ジンジバリスであると判定する菌種判別方法。
  6. 請求項4に記載の菌種判別方法であって、
    前記液体試料は、単離されたポルフィロモナス・ジンジバリス、単離されたトレポネマ・デンティコラ、または、単離されたタネレラ・フォーサイシアの菌体または菌体抽出物を含み、
    前記液体試料について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量が、予め設定された閾値以上であるとき、前記口腔内細菌がポルフィロモナス・ジンジバリスであると判定し、
    前記液体試料について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量が、予め設定された閾値未満であるとき、前記口腔内細菌がトレポネマ・デンティコラまたはタネレラ・フォーサイシアであると判定する菌種判別方法。
  7. 請求項4に記載の菌種判別方法であって、
    前記液体試料は、単離されていない前記口腔内細菌の細菌群の菌体または菌体抽出物を含み、
    前記液体試料について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量が、予め設定された閾値以上であるとき、前記口腔内細菌として含まれるポルフィロモナス・ジンジバリスの量が多いと判定する菌種判別方法。
  8. 請求項4から請求項7のいずれか一項に記載の菌種判別方法であって、
    前記励起光の波長は、355nm以上375nm以下である菌種判別方法。
  9. 請求項4から請求項8のいずれか一項に記載の菌種判別方法であって、
    前記蛍光の波長は、430nm以上455nm以下である菌種判別方法。
  10. 歯周病の原因菌を判別する蛍光測定装置であって、
    口腔内細菌の菌体または菌体抽出物と、次の式(1)で表される試薬と、を酵素反応させた液体試料に励起光を照射する照射手段と、
    前記液体試料から放出される蛍光を検出する検出手段と、
    検出された蛍光の強度に基づいて、前記口腔内細菌としてポルフィロモナス・ジンジバリスが含まれるか否か、または、前記口腔内細菌として含まれるポルフィロモナス・ジンジバリスの量を判別する判別手段と、を備える蛍光測定装置。
    iBoc-Gly-Gly-Arg-MCA・・・(1)
    [但し、式(1)中、iBocは、イソブチルオキシカルボニル基、Glyは、グリシン残基、Argは、アルギニン残基、MCAは、4-メチルクマリル-7-アミド基を表す。]
  11. 請求項10に記載の蛍光測定装置であって、
    前記液体試料は、単離された前記口腔内細菌の菌体または菌体抽出物を含み、
    前記液体試料について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量が、予め設定された閾値以上であるとき、前記口腔内細菌がポルフィロモナス・ジンジバリスであると判定する蛍光測定装置。
  12. 請求項10に記載の蛍光測定装置であって、
    前記液体試料は、ポルフィロモナス・ジンジバリス、トレポネマ・デンティコラ、および、タネレラ・フォーサイシアのうちの一種以上の菌体または菌体抽出物を含み、
    前記液体試料について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量が、予め設定された閾値以上であるとき、前記口腔内細菌ポルフィロモナス・ジンジバリスであると判定し、
    前記液体試料について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量が、予め設定された閾値未満であるとき、前記口腔内細菌がトレポネマ・デンティコラまたはタネレラ・フォーサイシアであると判定する蛍光測定装置。
  13. 請求項10に記載の蛍光測定装置であって、
    前記液体試料は、単離されていない前記口腔内細菌の細菌群の菌体または菌体抽出物を含み、
    前記液体試料について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量が、予め設定された閾値以上であるとき、前記口腔内細菌として含まれるポルフィロモナス・ジンジバリスの量が多いと判定する蛍光測定装置。
  14. 請求項10から請求項13のいずれか一項に記載の蛍光測定装置であって、
    前記励起光の波長は、355nm以上375nm以下である蛍光測定装置。
  15. 請求項10から請求項14のいずれか一項に記載の蛍光測定装置であって、
    前記蛍光の波長は、430nm以上455nm以下である蛍光測定装置。
  16. 口臭のリスクを判定する口臭リスク判定方法であって、
    歯垢、歯肉浸出液、唾液、または、これらに含まれる菌体の菌体抽出物と、次の式(1)で表される試薬と、を反応させた液体試料に励起光を照射し、
    前記液体試料から放出された蛍光の強度に基づいて、口臭が発現するリスクの高さを判定する口臭リスク判定方法。
    iBoc-Gly-Gly-Arg-MCA・・・(1)
    [但し、式(1)中、iBocは、イソブチルオキシカルボニル基、Glyは、グリシン残基、Argは、アルギニン残基、MCAは、4-メチルクマリル-7-アミド基を表す。]
  17. 請求項16に記載の口臭リスク判定方法であって、
    前記液体試料について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量が、予め設定された閾値以上であるとき、口臭が発現するリスクが高いと判定する口臭リスク判定方法。
  18. 請求項16または請求項17に記載の口臭リスク判定方法であって、
    前記口臭のリスクは、ポルフィロモナス・ジンジバリスによるメチルメルカプタンの生成に起因するリスクである口臭リスク判定方法。
  19. 請求項16から請求項18のいずれか一項に記載の口臭リスク判定方法であって、
    前記励起光の波長は、355nm以上375nm以下である口臭リスク判定方法。
  20. 請求項16から請求項19のいずれか一項に記載の口臭リスク判定方法であって、
    前記蛍光の波長は、430nm以上455nm以下である口臭リスク判定方法。
  21. 口臭のリスクを判定する蛍光測定装置であって、
    歯垢、歯肉浸出液、唾液、または、これらに含まれる菌体の菌体抽出物と、次の式(1)で表される試薬と、を反応させた液体試料に励起光を照射する照射手段と、
    前記液体試料から放出される蛍光を検出する検出手段と、
    検出された蛍光の強度に基づいて、口臭が発現するリスクの高さを判定する判定手段と、を備える蛍光測定装置。
    iBoc-Gly-Gly-Arg-MCA・・・(1)
    [但し、式(1)中、iBocは、イソブチルオキシカルボニル基、Glyは、グリシン残基、Argは、アルギニン残基、MCAは、4-メチルクマリル-7-アミド基を表す。]
  22. 請求項21に記載の蛍光測定装置であって、
    前記液体試料について測定された蛍光強度値または蛍光強度の時間的変化量が、予め設定された閾値以上であるとき、口臭が発現するリスクが高いと判定する蛍光測定装置。
  23. 請求項21または請求項22に記載の蛍光測定装置であって、
    前記口臭のリスクは、ポルフィロモナス・ジンジバリスによるメチルメルカプタンの生成に起因するリスクである蛍光測定装置。
  24. 請求項21から請求項23のいずれか一項に記載の口臭リスク判定装置であって、
    前記励起光の波長は、355nm以上375nm以下である口臭リスク判定装置。
  25. 請求項21から請求項24のいずれか一項に記載の口臭リスク判定装置であって、
    前記蛍光の波長は、430nm以上455nm以下である口臭リスク判定装置。
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