以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は、本発明の実施形態に係る車椅子1を前方斜め上から見た斜視図である。図2に示すように、この車椅子1は、工具を用意することなく、車椅子本体2とシート3とに分割可能に構成された車椅子である。シート3を図3に示している。図4は、シート3が取り付けられた状態の車椅子1の左側面図である。また、シート3を取り外した状態の車椅子本体2は、図5や図6に示すように折り畳み可能に構成されており、従って本実施形態に係る車椅子1は折り畳み式の車椅子である。
尚、図2では、シート3が備えているシートクッション部4とバッククッション部5と示しているが、図1や図4ではシートクッション部4及びバッククッション部5を示していない。また、図3では、シートクッション部4及びバッククッション部5の外形状のみ仮想線で示している。シート3の具体的な構成については後述する。
また、この実施形態の説明では、車椅子1の前進時の進行方向を単に前といい、車椅子1の前は、車椅子1に着座した車椅子利用者(図示せず)の前に相当する。また、車椅子1の後退時の進行方向を単に後といい、車椅子1の後は、車椅子1に着座した車椅子利用者の後に相当する。車椅子1の前後方向は車体の長手方向でもある。また、車椅子1に着座した車椅子利用者の左側は、車椅子1の車体左側であり、単に左という。さらに、車椅子1に着座した車椅子利用者の右側は、車椅子1の車体右側であり、単に右という。車椅子1の左右方向は車体の幅方向でもある。また、車椅子1の「上側」とは、着座可能な状態で水平面に置いた時に上となる側であり、車椅子1の「下側」とは、着座可能な状態で水平面に置いた時に下となる側である。
(車椅子本体の構成)
図1や図4等に示すように、車椅子本体2は、左側及び右側の駆動輪10、11と、左側及び右側のキャスタ12、13と、左側及び右側サイドフレーム20、30とを備えている。駆動輪10、11は、車椅子利用者が手で持って前または後へ回転させるための大径な車輪であり、車椅子本体2の後側に設けられていることから駆動用後輪とも呼ぶことができる。駆動輪10、11の構造は特に限定されるものではないが、この実施形態では炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)で成形されたホイール10a、11aにゴム製のタイヤ10b、11bが取り付けられた構造である。ホイール10a、11aの車幅方向外側には、車椅子利用者が駆動時に手で持つためのハンドリム10c、11cが設けられている。尚、図1、図2及び図4中、符号Bはブレーキである。ブレーキBは、手動で制動状態と解除状態とに切り替えられるように構成された従来から周知のものである。
キャスタ12、13は、車椅子1の進行方向を変換するための車輪であり、駆動輪10、11よりも小径とされている。キャスタ12、13は、車椅子本体2の前側に設けられていることから進行方向変換用前輪とも呼ぶことができる。
図7にも示すように、左側サイドフレーム20は、前後方向に延びる上部フレーム部21と、キャスタ支持部22とを備えている。図7は、車椅子1を水平面に置いた時の左側サイドフレーム20を示しており、この図に示すように上部フレーム部21は前へ行くほど上に位置するように緩やかに傾斜している。上部フレーム部21の傾斜角度は図示した角度でなくてもよく、水平であってもよい。上部フレーム部21とキャスタ支持部22とは上記CFRPにより一体成形されており、従って左側サイドフレーム20は単一の部品で構成されている。尚、左側サイドフレーム20は、金属材で構成されていてもよいし、複数の部品を結合することによって構成されていてもよい。
上部フレーム部21の後端部には、左側の駆動輪10が有する車軸10dの右側が挿入された状態で固定される車軸挿入孔21aが形成されている。左側の駆動輪10は、車軸10dの右側が上部フレーム部21の後端部に固定された状態で、左側サイドフレーム20に対して左右方向に延びる軸線周りに回転可能に軸支される。
上部フレーム部21の前端部には、前方へ向けて突出する前側突出部21bが設けられている。着座した状態の車椅子利用者が前側突出部21bを手で持つことができるようになっている。上部フレーム部21の前後方向中間部には、左右方向に貫通する貫通孔21cが形成されており、これにより、左側サイドフレーム20の軽量化が図られている。貫通孔21cは前後方向に長い形状とすることができる。
上部フレーム部21の後端部には、前方へ向けて窪むように形成された後側凹部21dが設けられている。後側凹部21dは、後述するが、シート3の一部が係合する部分である。
上部フレーム部21の右側面には、シート3が有する左側の着座フレーム90(後述する)が収容される収容凹部23が形成されている。収容凹部23は、上方に開放しており、着座フレーム90を上方から収容凹部23に収容することが可能になっている。また、収容凹部23は、右側、即ち車体の幅方向内側にも開放しており、収容凹部23の内面を右から見ることが可能になっている。
収容凹部23は3つの部分で構成されている。すなわち、収容凹部23の前側部分は前側収容凹部(左側係合凹部)24であり、また、収容凹部23の後側部分は、後側収容凹部(左側係合凹部)25である。さらに、収容凹部23の前側収容凹部24と後側収容凹部25との間の部分は、中間収容凹部26である。前側収容凹部24と後側収容凹部25との間に貫通孔21cが位置している。また、中間収容凹部26の下に貫通孔21cが位置している。
前側収容凹部24及び後側収容凹部25の深さ方向(上下方向)の寸法は、中間収容凹部26の同方向の寸法よりも長く設定されており、従って、前側収容凹部24及び後側収容凹部25は中間収容凹部26よりも深く形成されている。また、前側収容凹部24及び後側収容凹部25の前後方向の寸法は同程度である。中間収容凹部26の前後方向の寸法は、前側収容凹部24及び後側収容凹部25の前後方向の寸法よりも長く設定されており、従って、中間収容凹部26は前後方向に長い形状となっている。
前側収容凹部24の内面における前側及び後側にそれぞれ位置する面は、前側係合面24a及び後側係合面24bとされている。前側係合面24aの上下方向の寸法は左右方向の寸法よりも長く設定されている。同様に、後側係合面24bの上下方向の寸法も左右方向の寸法よりも長く設定されている。前側係合面24a及び後側係合面24bは、上下方向に延びるとともに、下へ行くほど互いに接近するように形成されている。すなわち、前側係合面24aは下へ行くほど後に位置する傾斜面で構成され、また後側係合面24bは下へ行くほど前に位置する傾斜面で構成されている。このため、前側係合面24a及び後側係合面24bの間隔は下へ行くほど狭くなる。前側係合面24a及び後側係合面24bの下端部同士は前後方向に離れている。
また、図8に示すように、前側係合面24a及び後側係合面24bは、右側、即ち車体の幅方向内側へ行くほど互いに接近するように形成されている。すなわち、前側係合面24aは、右側へ行くほど後に位置するように延びており、また、後側係合面24bは、右側へ行くほど前に位置するように延びている。前側係合面24aの右縁部と後側係合面24bの右縁部とは、前後方向に互いに間隔をあけて配置されており、この部分が前側収容凹部24を右側に開放する部分となる。
前側収容凹部24の底面24cは、前側係合面24aの下端部から後側係合面24bの下端部まで延びている。また、図7に示すように、前側収容凹部24の内面における左側面24dは、前側係合面24aの左縁部から後側係合面24bの左縁部まで延びている。左側面24dには、後述する被係止部としての窪み部24eが左へ窪むように形成されている。窪み部24eは、左側面24dの上下方向中央部よりも上において前後方向の略中央部に位置している。窪み部24eの形状は特に限定されるものではないが、この実施形態では右側面視で前後方向の寸法が上下方向の寸法よりも長く設定されている。また、窪み部24eの深さ(左右方向の寸法)は、上下方向中央部が最も深くなるように設定されている。
後側収容凹部25は、前側収容凹部24と同様に構成されている。後側収容凹部25の前側係合面25a及び後側係合面25bは、前側収容凹部24の前側係合面24a及び後側係合面24bと同様に、上下方向に延びるとともに、下へ行くほど互いに接近するように形成されている。さらに図8に示すように右側へ行くほど互いに接近するように形成されている。また、図7に示すように、車軸挿入孔21aの真上に後側収容凹部25の底面25cが位置している。また、後側収容凹部25の内面における左側面25dには、被係止部としての窪み部25eが左へ窪むように形成されている。前側の窪み部24eと後側の窪み部25eとは同じ形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。
図7に示すように、キャスタ支持部22は、上部フレーム部21の前後方向中間部から前方へ向かって斜め下へ延びている。図8に示すように、キャスタ支持部22は、その下側へ行くほど左側、即ち車体の幅方向外側に位置するように湾曲している。図4に示すように、キャスタ支持部22の下端部は、左側の駆動輪10から前側に所定距離以上、離れており、この下端部には、左側のキャスタ12が上下方向に延びる中心線周りに旋回動作可能に取り付けられている。キャスタ12は、上部フレーム部21の前側突出部21bの真下に位置している。
図2等に示すように、右側サイドフレーム30は、左側サイドフレーム20と左右対称な構造であり、上部フレーム部31と、キャスタ支持部32とを備えている。図9に示すように、上部フレーム部31には、右側の駆動輪11が有する車軸11d(図14に示す)の左側が挿入された状態で固定される車軸挿入孔31aが形成されている。右側の駆動輪11は、車軸の左側が上部フレーム部31の後端部に固定された状態で、右側サイドフレーム30に対して左右方向に延びる軸線周りに回転可能に軸支される。
図10に示すように、上部フレーム部31の前端部には前側突出部31bが設けられ、また、上部フレーム部31の前後方向中間部には貫通孔31cが形成されている。上部フレーム部31の後端部には、前方へ向けて窪むように形成された後側凹部31d(図9に示す)が設けられている。尚、図9では、シート3の一部を構成している部材である右側角度変更部84の一部も一緒に示しており、この右側角度変更部84によって上部フレーム部31の後端部の一部が隠れている。
図2に示すように、上部フレーム部31の左側面には、シート3が有する右側の着座フレーム91(後述する)が収容される収容凹部33が形成されている。収容凹部33は、上方及び左側に開放しており、収容凹部33の内面を左から見ることが可能になっている。
図9及び図10に示すように、収容凹部33は、前側収容凹部(右側係合凹部)34、後側収容凹部(右側係合凹部)35及び中間収容凹部36を有している。図10に示すように、前側収容凹部34の前側係合面34a及び後側係合面34bは、上下方向に延びるとともに、下へ行くほど互いに接近し、かつ左側へ行くほど互いに接近するように形成されている。前側収容凹部34の内面には、底面34cと右側面34dが形成されている。右側面34dには、被係止部としての窪み部34eが右へ窪むように形成されている。
図9に示すように、後側収容凹部35は、前側収容凹部34と同様に構成されており、前側係合面35a及び後側係合面35bは、上下方向に延びるとともに、下へ行くほど互いに接近し、かつ右側へ行くほど互いに接近するように形成されている。また、車軸挿入孔31aの真上に後側収容凹部35の底面35cが位置している。また、後側収容凹部35の右側面35dには、被係止部としての窪み部35eが右へ窪むように形成されている。
図1等に示すように、キャスタ支持部32は、上部フレーム部31の前後方向中間部から前方へ向かって斜め下へ延びるとともに、下側へ行くほど右側に位置するように湾曲している。キャスタ支持部32の下端部には、右側のキャスタ13が上下方向に延びる中心線周りに旋回動作可能に取り付けられている。
(足載置部の構成)
図1に示すように、車椅子本体2の前部には、着座した車椅子利用者が足を置くための足載置部40が設けられている。足載置部40は、左側サイドフレーム20のキャスタ支持部22の下端部に対して上下方向に回動可能に連結される左側載置アーム41と、右側サイドフレーム30のキャスタ支持部32の下端部に対して上下方向に回動可能に連結される右側載置アーム42と、左側載置アーム41の右端部及び右側載置アーム42の左端部を互いに回動可能に連結する連結板43とを備えている。この回動中心線は前後方向に延びている。また、左側載置アーム41には、左足を置くための左板41aが設けられており、また、右側載置アーム42には、右足を置くための右板42aが設けられている。
図1及び図2に示すように、車椅子本体2が展開状態にあるときには、左側載置アーム41及び右側載置アーム42が水平に延びる姿勢となる。一方、図5に示すように、車椅子本体2が折り畳み状態にあるときには、左側載置アーム41及び右側載置アーム42が左右方向に折り畳まれて略上下方向に延びる姿勢となり、連結板43が上に配置される。つまり、車椅子本体2の折り畳み動作を阻害しないように、左側載置アーム41及び右側載置アーム42が相対的に回動可能になっている。
(車椅子本体の展開及び折り畳み)
車椅子本体2は、工具等を使用することなく、図1及び図2に示す展開状態から図5及び図6に示す折り畳み状態にすることができるとともに、折り畳み状態から展開状態にすることができるように構成されている。展開状態では、左側サイドフレーム20と右側サイドフレーム30との間隔が拡大し、シート3の取り付けが可能になる。一方、折り畳み状態では、左側サイドフレーム20と右側サイドフレーム30との間隔が狭まり、シート3の取り付けは不可能になる。本実施形態では、シート3が車椅子本体2に着脱可能に構成されているので、車椅子1の不使用時にはシート3を車椅子本体2から取り外すことで、車椅子本体2とシート3とを別々にし、軽くして運ぶことができるとともに、コンパクトにすることができる。また、車椅子本体2を折り畳み可能にしているので、車椅子本体2がコンパクトになる。以下、車椅子本体2を折り畳み可能にしている構造について詳細に説明する。
(支持アーム)
車椅子本体2を折り畳み可能にしている構造の一例として、本実施形態では、複数の支持アーム51、52、61、62を用いる構造を採用している。具体的には、車椅子本体2は、左側サイドフレーム20に回動可能に連結される第1左側支持アーム51及び第2左側支持アーム52と、右側サイドフレーム30に回動可能に連結される第1右側支持アーム61及び第2右側支持アーム62とを備えている。第1左側支持アーム51と第1右側支持アーム61とは同じ長さであり、左右対称形状である。また、第2左側支持アーム52と第2右側支持アーム62とは同じ長さであり、左右対称形状である。さらに、車椅子本体2は、手で操作可能な折り畳み機構70も備えている。尚、第1左側支持アーム51と第1右側支持アーム61は左右非対称であってもよく、第2左側支持アーム52と第2右側支持アーム62も左右非対称であってもよい。
図11に示すように、第1左側支持アーム51の基端部(一端部)は、左側サイドフレーム20の上部フレーム部21の前後方向中央部よりも前側部分の下部に対して、上下方向に延びる連結軸51aを介して前後方向に回動可能に連結されている。また、第2左側支持アーム52の基端部(一端部)は、左側サイドフレーム20の上部フレーム部21の前後方向中央部よりも後側部分の下部に対して、上下方向に延びる連結軸52aを介して前後方向に回動可能に連結されている。従って、第2左側支持アーム52は第1左側支持アーム51よりも後側に設けられることになる。
右側支持アーム61、62も左側支持アーム51、52と同様であり、第1右側支持アーム61の基端部(一端部)は、右側サイドフレーム30の上部フレーム部31の前後方向中央部よりも前側部分の下部に対して、上下方向に延びる連結軸61aを介して前後方向に回動可能に連結されている。また、第2右側支持アーム62の基端部(一端部)は、右側サイドフレーム30の上部フレーム部31の前後方向中央部よりも後側部分の下部に対して、上下方向に延びる連結軸62aを介して前後方向に回動可能に連結されている。4本の連結軸51a、52a、61a、62aの中心線は、互いに平行である。また、4本の連結軸51a、52a、61a、62aは、鉛直であってもよいし、鉛直線に対して傾斜していてもよく、上下方向に延びていればよい。4本の連結軸51a、52a、61a、62aが例えば前や後に若干傾いていても折り畳み動作は可能である。
例えば図4に示すように、車椅子1を水平面に置いた状態で左側面から見ると、上述したように、左側サイドフレーム20の上部フレーム部21は前側へ行くほど上に位置するように傾斜している。左側サイドフレーム30の上部フレーム部31も同様に傾斜している。よって、第2左側支持アーム52及び第2右側支持アーム62よりも前に位置する第1左側支持アーム51及び第1右側支持アーム61は、第2左側支持アーム52及び第2右側支持アーム62よりも上に位置付けられることになる。
図1、図2及び図11に示すように、車椅子本体2が展開状態にあるときには、左側サイドフレーム20と右側サイドフレーム30との間隔を広げるべく、左側支持アーム51、52及び右側支持アーム61、62は全て左右方向に延びる姿勢となる。この状態では、第1左側支持アーム51と第1右側支持アーム61とが左右方向に延びる直線を形成するように並ぶとともに、第2左側支持アーム52と第2右側支持アーム62とが左右方向に延びる直線を形成するように並ぶ。また、第1左側支持アーム51の右端部である先端部は、左側サイドフレーム20と右側サイドフレーム30との間の左右方向中央部まで延び、また、第1右側支持アーム61の左端部である先端部も、左側サイドフレーム20と右側サイドフレーム30との間の左右方向中央部まで延びている。
一方、図5及び図6に示すように、第1左側支持アーム51を連結軸51a周りに先端部(他端部)が後へ移動するように回動させるとともに、第1右側支持アーム61を連結軸61a周りに先端部(他端部)が後へ移動するように回動させ、さらに、第2左側支持アーム52を連結軸52a周りに先端部(他端部)が後へ移動するように回動させるとともに、第2右側支持アーム62を連結軸62a周りに先端部(他端部)が後へ移動するように回動させると、左側サイドフレーム20と右側サイドフレーム30との間隔を狭めることができ、車椅子本体2を折り畳むことができる。この折り畳み状態では、第1左側支持アーム51と第1右側支持アーム61とが前後方向に延びる姿勢となり、また、第2左側支持アーム52と第2右側支持アーム62とが前後方向に延びる姿勢となる。本実施形態では、第1左側支持アーム51と第1右側支持アーム61が左右方向に並び、互いに平行となっているが、これに限らず、第1左側支持アーム51と第1右側支持アーム61が平行でなく、支持アーム51、61の基端側へ行くほど互いの間隔が広くなるように配置されていてもよい。第2左側支持アーム52と第2右側支持アーム62も同様である。尚、折り畳み時には、足載置部40の左側載置アーム41及び右側載置アーム42が上方へ回動しており、足載置部40の折り畳み動作も同時に行われる。
尚、左側支持アーム51、52及び右側支持アーム61、62は、展開状態から前側へは回動しないようになっている。すなわち、図11に示すように、第1左側支持アーム51が展開状態から前側へ向けて回動しようとすると、第1左側支持アーム51の基端側の縁部51bが上部フレーム部21に当接して前側への回動が阻止される。第2左側支持アーム52も縁部52bによって前側への回動が阻止され、また、第1右側支持アーム61も縁部61bによって前側への回動が阻止され、さらに、第2右側支持アーム62も縁部62bによって前側への回動が阻止される。前側へ向けての回動を阻止する構成は、上述した構成に限られるものではなく、他の構成、例えばストッパ等を設ける構成であってもよい。
(折り畳み機構)
次に、図11及び図12等に示す折り畳み機構70の構成について説明する。折り畳み機構70は、左側サイドフレーム20と右側サイドフレーム30との間に設けられており、第1左側支持アーム51及び第1右側支持アーム61を左右方向に折り畳み可能に連結するとともに、第2左側支持アーム52及び第2右側支持アーム62を左右方向に折り畳み可能に連結する。具体的には、折り畳み機構70は、前側連結部材71と、後側連結部材72と、連動部材73と、操作部74と、把持部75と、左側従動歯車部(第1歯車部)76と、右側従動歯車部(第1歯車部)77と、駆動歯車部(第2歯車部)78とを備えている。左側従動歯車部76と右側従動歯車部77とのうち、一方のみが設けられていてもよい。以下、折り畳み機構70を構成している各部材について詳細に説明する。
(従動歯車部)
図13に示すように、左側従動歯車部76は、第1左側支持アーム51の先端部に一体に設けられており、第1左側支持アーム51と左側従動歯車部76とが相対回動しないようになっている。第1左側支持アーム51の先端部には上下方向に延びる支軸51cが挿通された状態で設けられている。支軸51cは、第1左側支持アーム51の先端部から抜けないようになっている。左側従動歯車部76を構成している複数の歯は、第1左側支持アーム51の先端部において支軸51cを中心とした円弧状の軌跡を描くように並んでいる。よって、左側従動歯車部76の回転中心線は上下方向に延びることになる。
同様に、図11に示すように、右側従動歯車部77を構成している複数の歯は、第1右側支持アーム61の先端部に挿通されて抜け止めされている支軸61cを中心とした円弧状の軌跡を描くように並んでいる。よって、右側従動歯車部77の回転中心線も上下方向に延びることになる。左側従動歯車部76及び右側従動歯車部77の回転中心線は、連結軸51aと平行である。
左側従動歯車部76と右側従動歯車部77とは、左右方向に所定の間隔をあけて配置されている。左側従動歯車部76の歯数と右側従動歯車部77の歯数とは同じである。
(連結部材)
図12に示すように、前側連結部材71は左右方向に延びる板材からなるものであり、同じ前側連結部材71を上下に間隔をあけて2枚設けている。前側連結部材71、71の間隔の大きさは、第1左側支持アーム51及び第1右側支持アーム61の先端側が入るように設定されている。前側連結部材71の前部には、把持部75が連結されている。一方、図11に示すように、前側連結部材71の後部の左側には、支軸51cによって第1左側支持アーム51の先端部が連結され、また、前側連結部材71の後部の右側には、支軸61cによって第1右側支持アーム61の先端部が連結されている。第1左側支持アーム51は支軸51c周りに回動可能になっており、また、第1右側支持アーム61は支軸61c周りに回動可能になっている。したがって、第1左側支持アーム51の先端部及び第1右側支持アーム61の先端部が前側連結部材71によって回動可能に連結されるとともに、把持部75の後端部(基端部)が前側連結部材71によって第1左側支持アーム51の先端部及び第1右側支持アーム61の先端部に連結される。支軸61cは、連結軸61aと平行である。
後側連結部材72は、前側連結部材71から後側へ離れて配置されている。後側連結部材72は、前後方向に延びる厚肉な板状をなしており、第2左側支持アーム52の先端部に対して上下方向に延びる支軸72aによって連結されるとともに、第2右側支持アーム62の先端部に対して上下方向に延びる支軸72bによって連結される。第2左側支持アーム52は支軸72a周りに回動可能になっており、また、第2右側支持アーム62は支軸72b周りに回動可能になっている。後側連結部材72には、第2左側支持アーム52の先端側及び第2右側支持アーム62の先端側が入る空洞部72cが設けられている。支軸72a、72bは、連結軸52aと平行である。
後側連結部材72の後部には、輪状に形成された輪状部72dが設けられている。輪状部72dは、第2左側支持アーム52及び第2右側支持アーム62から後側へ突出している。この輪状部72dは、必要に応じて設ければよく、省略してもよいし、他の形状としてもよい。
(連動部材)
連動部材73は、前側連結部材71と後側連結部材72とを連結する部材であり、前後方向に延びる棒状に形成されている。連動部材73の後端部は、後側連結部材72の前部における左右方向中央部に固定されている。一方、連動部材73の前端部は、第1左側支持アーム51の先端部の支軸51c及び第1右側支持アーム61の先端部の支軸61cに対して回動可能に連結されている。第1左側支持アーム51の先端部及び第1右側支持アーム61の先端部は、連動部材73の前端部に対して支軸51c及び支軸61c周りに回動可能になっている。したがって、第1左側支持アーム51及び第1右側支持アーム61と、第2左側支持アーム52及び第2右側支持アーム62とを連動部材73によって連結して連動させることができる。
(操作部及び駆動歯車部)
操作部74は、例えば車椅子利用者や介助者等の折り畳み操作を行う者(操作者)が折り畳み機構70を手で操作するための部材であり、左側サイドフレーム20と右側サイドフレーム30との間の左右方向中央部に配置されている。この操作部74の操作方向は上下方向とされている。すなわち、図14及び図15に示すように、操作部74の基端部には左右方向に延びる支軸(支持部材)74aが挿通しており、この支軸74aによって操作部74が回動可能に支持されている。支軸74aの左端部は、左側軸受部74bによって支持され、また、支軸74aの左端部は右側軸受部74cによって支持されている。左側軸受部74bは、前側連結部材71の上面の左側に配置されており、支軸51cの上端部と一体化されている。右側軸受部74cは、前側連結部材71の上面の右側に配置されており、支軸61cの上端部と一体化されている。
操作部74における支軸74aから径方向に離れた部分は、輪状に形成されている。これにより、操作者が手を操作部74に差し込んで握ったり、操作部74を持ったりすることが可能になる。操作部74の大きさは任意の大きさにすることができ、少なくとも指を差し込むことができる大きさとするのが好ましい。操作部74は、輪状に形成することなく、棒状に形成したものであってもよい。棒状の操作部74とする場合には、支軸74aから径方向に延びる部分と、支軸74aと平行に延びる部分とを有する構造とするのが好ましい。
図14に示すように、操作部74の基端部には、駆動歯車部78が一体に設けられており、駆動歯車部78と操作部74の基端部とが相対回動しないようになっている。駆動歯車部78を構成している複数の歯は、操作部74の基端部において支軸74aを中心とした円弧状の軌跡を描くように並んでいる。よって、駆動歯車部78の回転中心線は左右方向に延びることになる。操作部74と駆動歯車部78とが一体化されているので、操作部74を支軸74a周りに回動操作することで、駆動歯車部78を支軸74a周りに駆動することができ、このときの操作部74は、駆動歯車部78の回転中心線と同一中心線周りに回動することになる。つまり、支軸74aは、操作部74を駆動歯車部78の回転中心線と同一中心線周りに回動操作可能となるように支持する部材である。
支軸74aは、第1左側支持アーム51及び第1右側支持アーム61よりも上に配置されている。これにより、駆動歯車部78の回転中心線及び操作部74は、第1左側支持アーム51及び第1右側支持アーム61よりも上に配置されることになる。操作部74を操作する際には、上から手で持って操作することになるが、操作部74が第1左側支持アーム51及び第1右側支持アーム61の上に位置していることで、操作部74を手で持つときに第1左側支持アーム51及び第1右側支持アーム61が邪魔になることはなく、操作性が良好になる。
駆動歯車部78の歯の幅(左右方向の寸法)は、左側従動歯車部76から右側従動歯車部77に達するように設定されている。これにより、駆動歯車部78の歯を左側従動歯車部76の歯と右側従動歯車部77の歯の両方に噛み合わせることができる。つまり、1つの駆動歯車部78で2つの従動歯車部76、77を駆動することができるので、部品点数を少なくすることができる。また、従動歯車部76、77の回動開始のタイミング及び回動速度は同じにすることができる。
また、駆動歯車部78の回転中心線は左右方向に延びる一方、左側従動歯車部76及び右側従動歯車部77の回転中心線は上下方向に延びている。このように回転中心線が直交する位置関係にあっても、駆動歯車部78の回転中心線を左側従動歯車部76及び右側従動歯車部77よりも上に配置することで、力のスムーズな伝達が可能になる。
(操作部による折り畳み及び展開操作)
折り畳み機構70は、操作部74の操作によって第1左側支持アーム51と第1右側支持アーム61、第2左側支持アーム52と第2右側支持アーム62を折り畳み状態から展開状態へ、展開状態から折り畳み状態へ変更するように構成されている。具体的には、操作部74は、支軸74a周りに回動させることが可能になっているが、支軸74aによって回動可能に支持されていることで、図5及び図6に示すように当該操作部74を上方へ起立させた起立状態(第1操作状態)と、図11、図12及び図14に示すように当該操作部74を倒した非起立状態(第2操作状態)とに切替可能である。この実施形態では、起立状態にある操作部74を車体後側へ倒すことによって操作部74が非起立状態へ切り替えられ、一方、非起立状態にある操作部74を車体前側へ向けて引き起こすことによって操作部74が起立状態へ切り替えられる。操作部74を車体後側へ倒す操作は下方へ向けての操作であり、操作部74を車体前側へ向けて引き起こす操作は上方へ向けての操作である。尚、図示しないが、操作部74を車体前側へ倒すことが可能に構成されていてもよい。
そして、操作部74の非起立状態から起立状態への切り替え操作によって第1左側支持アーム51と第1右側支持アーム61、第2左側支持アーム52と第2右側支持アーム62を展開状態から折り畳み状態に変更する。また、操作部74の起立状態から非起立状態への切り替え操作によって第1左側支持アーム51と第1右側支持アーム61、第2左側支持アーム52と第2右側支持アーム62を折り畳み状態から展開状態に変更する。
より詳細に説明すると、非起立状態にある操作部74を起立状態へ切り替える際には、操作部74を上方へ向けて起こすことになる。この操作が所定方向へ向けての操作である。操作部74には駆動歯車部78が一体に設けられているので、操作部74の所定方向へ向けての操作によって駆動歯車部78が支軸74a周りに前へ回転する。駆動歯車部78が回転すると、駆動歯車部78に噛み合っている左側従動歯車部76及び右側従動歯車部77に回転力が伝達され、左側従動歯車部76及び右側従動歯車部77は上下方向の中心線周りに回転しようとする。このとき、左側従動歯車部76が一体に設けられている第1左側支持アーム51の基端部は、左側サイドフレーム20に対して支軸51aによって回動可能であり、また、右側従動歯車部77が一体に設けられている第1右側支持アーム61の基端部は、右側サイドフレーム30に対して支軸61aによって回動可能になっている。さらに、第1左側支持アーム51の先端部及び第1右側支持アーム61の先端部は、前側連結部材71に対して共に回動可能になっている。したがって、左側従動歯車部76及び右側従動歯車部77に伝達された回転力により、第1左側支持アーム51が支軸51a周りに後へ回動するとともに、第1右側支持アーム61が支軸61a周りに後へ回動する。これにより、第1左側支持アーム51と第1右側支持アーム61が展開状態から折り畳み状態に変更される。
第1左側支持アーム51及び第1右側支持アーム61と、第2左側支持アーム52及び第2右側支持アーム62とが連動部材73によって連結されているので、第1左側支持アーム51及び第1右側支持アーム61の回動に連動して、第2左側支持アーム52及び第2右側支持アーム62も同様に支軸52a、62a周りに回動する。これにより、第2左側支持アーム52と第2右側支持アーム62も同時に展開状態から折り畳み状態に変更される。
(操作部の配置)
ここで、車椅子本体2を折り畳んだ後に片手で車椅子本体2を持ち上げて移動させる場合について説明する。片手で車椅子本体2を持ち上げる場合、一般的な車椅子では、そもそも片手で持ち上げることを想定すらしていないので、どの部分を持てば良いか分かりにくく、仮に片手で持ったとしても、片手で持ち上げることを想定していない車椅子は不安定になり、その結果、車椅子の前部が後部よりも下に位置するように傾いてしまうことがあった。従来の一般的な車椅子の前部には、本実施形態と同様なキャスタが旋回自在に取り付けられているので、車椅子の前部が下がるとキャスタが垂れ下がって地面に接触してしまうため、より高い位置まで持ち上げる必要があった。特に、車椅子利用者が1人で自動車を運転する場合を想定した場合、車椅子利用者が車椅子から自動車の運転席に乗り移った後、車外の車椅子を車内まで移動させる必要があるが、このとき両手で車椅子を持ち上げることは困難であり、片手で車椅子を持ち上げざるを得ず、そうするとキャスタが垂れ下がってドアの開口の下縁部に接触して収まらなくなるので、より高い位置まで持ち上げなければならず、車椅子利用者によって大きな負担であった。
このことに対し、本実施形態では操作部74の位置に工夫を凝らしている。すなわち、図4に破線で示すように、操作部74は、車体の側面視で駆動輪10、11の車軸10d、11dとキャスタ12、13の回転中心線との間に配置されている。シート3が取り外された状態の車椅子本体2の重心は、側面視で駆動輪10、11の車軸10d、11d近傍に位置している。従って、折り畳んだ後、側面視で駆動輪10、11とキャスタ12、13との間に配置されている操作部74を持つことで、車椅子本体2の後部が前部よりも下に位置するように自然に傾く。これにより、キャスタ12、13の垂れ下がりが抑制される。
(把持部)
図11及び図12に示すように、折り畳み機構70の一部を構成している把持部75は、折り畳んだ状態の車椅子本体2を移動させる際に把持することが可能な部分である。上述したように、操作部74を手で持って車椅子本体2を持ち上げることができるが、折り畳み時の操作部74は起立状態であるため、人によっては持ちにくいことがある。また、輪状となっている操作部74が持ちにくいことも考えられるし、操作部74は折り畳み機構70を操作するための部材であり、車椅子本体2を持ち上げるための専用の部材ではない。このことに対し、本実施形態では操作部74とは別に把持部75を設けることで、車椅子本体2を持ち上げやすくしている。尚、把持部75を省略して操作部74によって車椅子本体2を持ち上げるようにしてもよい。
把持部75は、前側連結部材71の前部に取り付けられており、この前側連結部材71を介して第1左側支持アーム51及び第1右側支持アーム61に連結されている。把持部75は、前側連結部材71の前部から前方向へ向かって延びている。すなわち、図5及び図6に示すように、第1左側支持アーム51及び第1右側支持アーム61が折り畳み状態にあるときには、該支持アーム51、61の先端部が基端部よりも後に位置しており、この折り畳み状態の第1左側支持アーム51及び第1右側支持アーム61を展開状態に切り替える際には、操作部74の操作によって第1左側支持アーム51及び第1右側支持アーム61を支軸51a、61a周りに前方向へ回動させる。つまり、前方向は、折り畳み状態から展開状態へ切り替えられるときの第1左側支持アーム51及び第1右側支持アーム61の回動方向である。
把持部75は、車椅子本体2を折り畳み状態から展開状態にする際に使用することができる。車椅子利用者が把持部75を掴んで車椅子本体2を持ち上げるようにすると、第1左側支持アーム51及び第1右側支持アーム61が左側サイドフレーム20及び右側サイドフレーム30に対して回動可能に連結されている一方、左側サイドフレーム20及び右側サイドフレーム30には重力の影響で下向きの力が常時作用しているので、両支持アーム51、61に連結されている把持部75は上へ相対移動していく。この把持部75の相対移動によって第1左側支持アーム51及び第1右側支持アーム61が折り畳み状態から展開状態となるまで前方向へ回動する。把持部75が折り畳み状態から展開状態へ切り替えられるときの両支持アーム51、61の回動方向である前方向へ向かって延びているので、その把持部75を片手で掴んで持ち上げる動作を行うだけで、車椅子本体2の自重を利用して車椅子本体2を展開させることができる。把持部75を持って展開させる際には、操作部74を操作する必要はない。
把持部75の形状や構造は特に限定されるものではないが、この実施形態では、把持部75が互いに異なる方向に延びる複数の部分で構成されている。具体的には、把持部75は、第1左側支持アーム51及び第1右側支持アーム61に連結される基端部(後端部)から第1左側支持アーム51及び第1右側支持アーム61の回動方向へ向かって直線状に延びる第1把持部75aと、第1把持部75aの先端部から車体の左右方向に延出する第2把持部75bとを有している。第2把持部75bは、左右両方向に延出していてもよいし、一方にのみ延出していてもよい。第1把持部75aと第2把持部75bとの延びる方向が互いに異なっているので、車椅子利用者が持ちやすい方を選択して持つことができる。
(シートの構成)
図2に示すように、シート3は、車椅子利用者が着座するシートクッション部4と、バッククッション部5と、シートフレーム7とを備えている。図1に示すように、シートフレーム7が車椅子本体2の左側サイドフレーム20及び右側サイドフレーム30に着脱可能に構成されている。図3に示すように、シートフレーム7は、左側着座フレーム90及び右側着座フレーム91と、シートバックフレーム92とを備えている。図1に示すように、左側着座フレーム90は、シート3の下部の左側において前後方向に延びており、車椅子本体2の左側サイドフレーム20の上部フレーム部21に沿っている。右側着座フレーム91は、シート3の下部の右側において前後方向に延びており、車椅子本体2の右側サイドフレーム30の上部フレーム部31に沿っている。尚、折り畳み機構70の操作部74及び把持部75は、平面視で左側着座フレーム90と右側着座フレーム91との間に配置されることになる。
図3に仮想線で示すように、シートクッション部4は、左側着座フレーム90から右側着座フレーム91まで延びるとともに前後方向にも延びており、車椅子利用者が着座するための座面を構成する部分である。シートクッション部4の左側が左側着座フレーム90によって支持され、シートクッション部4の右側が右側着座フレーム91によって支持されている。シートクッション部4を構成する部材としては、例えば板材、布材、網状の部材、各種弾性材、発泡材等を挙げることができ、車椅子利用者が着座すると下方へ弾性変形するように構成された部材とすることができる。
シート3が車椅子本体2に取り付けられた状態で、シートクッション部4は、折り畳み機構70の操作部74の上方に配置される。言い換えると、操作部74は、シートクッション部4の真下に配置される。例えば、図14に仮想線で示すシートクッション部4と操作部74とは互いに上下方向に離れていて、両者の間にスペースが形成されている。このようなシートクッション部4と操作部74との相対的な位置関係は、シートフレーム7の構造及び形状によって成立させることができる。
具体的には、側面視で非起立状態にある操作部74の上端部と、着座フレーム90、91の上端部との距離が所定距離以上となるように、着座フレーム90、91の上端部の高さ及び着座フレーム90、91の上下方向の寸法が設定されている。これにより、側面視で非起立状態にある操作部74は、着座フレーム90、91の上端部から下に所定距離以上離れることになり、その結果、シートクッション部4と操作部74との間に上記スペースが形成される。
ここで、車椅子利用者がシートクッション部4に着座すると、シートクッション部4が車椅子利用者の体重によって沈み込む。側面視でシートクッション部4を支持する着座フレーム90、91の上端部よりも下に所定距離以上離れて操作部74が配置されているので、沈み込んだシートクッション部4に操作部74が接触しなくなる。これにより、シートクッション部4における車椅子利用者の脚や臀部に対応する部分に操作部74が接触しないので、車椅子利用者に違和感を与えることはなく、乗り心地が良好になる。
尚、車椅子利用者が着座したシートクッション部4の沈み込み量は車椅子利用者の体重が重ければ重いほど多くなるが、側面視で着座フレーム90、91の上端部を基準として操作部74を所定距離以上、下に離して配置しているので、体重が重い車椅子利用者の着座によってシートクッション部4が沈み込んだとしても、操作部74へのシートクッション部4の接触が回避される。つまり、上記所定距離は、車椅子が想定している最大荷重がシートクッション部4に作用したとしても、シートクッション部4と操作部74との接触を回避可能な大きさである。車椅子が想定している最大荷重は、任意に設定することができるが、例えば体重が100kgの車椅子利用者や、体重が120kgの車椅子利用者が着座した時の荷重である。この時のシートクッション部4の沈み込み量を最大沈み込み量と呼ぶことができる。シートクッション部4の沈み込み量が最大沈み込み量となった状態でも、シートクッション部4の下面が操作部74に接触しない。シートクッション部4の材質や構造等によっても沈み込み量が異なる場合があるので、シートクッション部4の材質や構造等に応じて上記所定距離を変更してもよい。
図14に仮想線で示すように、操作部74を起立状態にすると、操作部74の上端部は、着座フレーム90、91の上端部よりも上に位置付けられるように、操作部74の寸法や支軸74aの高さが設定されている。
また、シート3を車椅子本体2に取り付けた状態で、把持部75がシートクッション部4の下方に位置付けられる。これにより、把持部75がシートクッション部4によって隠れた状態になるので、車椅子利用者や介助者が把持部75を誤って掴み難くなる。一方、車椅子本体2を折り畳んで持つ場合には、シート3が取り外されているので把持部75が上方から見え、把持部75を容易に掴むことができる。
(シートフレームと車椅子本体との嵌合構造)
この実施形態では、シート3を車椅子本体2に取り付ける際、シートフレーム7の左右両側を車椅子本体2の左側サイドフレーム20及び右側サイドフレーム20に置くことによって左側サイドフレーム20及び右側サイドフレーム20に嵌合させることができる。この嵌合構造によってシート3のがたつきを抑制している。以下、シートフレーム7の車椅子本体2への嵌合構造について具体的に説明する。
図3に示すように、左側着座フレーム90の前側には、下方へ突出する第1左側係合突出部93が設けられている。左側着座フレーム90の後側には、第2左側係合突出部94が設けられている。第1左側係合突出部93と第2左側係合突出部94の前後方向の間隔は、左側サイドフレーム20に形成されている前側収容凹部24と後側収容凹部25(図7に示す)の前後方向の間隔と一致している。シート3を取り付ける際には、第1左側係合突出部93及び第2左側係合突出部94を前側収容凹部24及び後側収容凹部25の上方に配置した後、下方へ移動させることにより、前側収容凹部24及び後側収容凹部25に上方から挿入する。したがって、第1左側係合突出部93及び第2左側係合突出部94は前側収容凹部24及び後側収容凹部25に上方から挿入されて係合する部分である。また、左側着座フレーム90における第1左側係合突出部93と第2左側係合突出部94との間の部分は、左側サイドフレーム20に形成されている中間収容凹部26に収容される。
第1左側係合突出部93は中空状に形成されており、その中空部分は左に開放されている。第1左側係合突出部93の外面における前側及び後側にそれぞれ位置する前面93a及び後面93bは、前側収容凹部24の前側係合面24a及び後側係合面24bに沿うように形成されている。これにより、第1左側係合突出部93の前後方向の寸法は、下へ行くほど短くなる。また、第1左側係合突出部93の下面は、前側収容凹部24の底面24cに沿うように形成されている。
第2左側係合突出部94も左に開放された中空状をなしている。第2左側係合突出部94の前面94a及び後面94bは、後側収容凹部25の前側係合面25a及び後側係合面25bに沿うように形成されている。これにより、第2左側係合突出部94の前後方向の寸法は、下へ行くほど短くなる。また、第2左側係合突出部94の下面は、後側収容凹部25の底面25cに沿うように形成されている。
右側着座フレーム91にも左側着座フレーム90と同様に、下方へ突出する第1右側係合突出部95及び第2右側係合突出部96が設けられている。第1右側係合突出部95と第2右側係合突出部96の前後方向の間隔は、右側サイドフレーム30に形成されている前側収容凹部34と後側収容凹部35の前後方向の間隔と一致している。シート3を取り付ける際には、第1右側係合突出部95及び第2右側係合突出部96を前側収容凹部34及び後側収容凹部35に上方から挿入して係合させる。また、右側着座フレーム91における第1右側係合突出部95と第2右側係合突出部96との間の部分は、右側サイドフレーム30に形成されている中間収容凹部36に収容される。
第1右側係合突出部95は右に開放された中空状をなしている。第1右側係合突出部95の前面95a及び後面95bは、前側収容凹部34の前側係合面34a及び後側係合面34bに沿うように形成されている。これにより、第1右側係合突出部95の前後方向の寸法は、下へ行くほど短くなる。また、第1右側係合突出部95の下面は、前側収容凹部34の底面34cに沿うように形成されている。
第2右側係合突出部96も右に開放された中空状をなしている。第2右側係合突出部96の前面96a及び後面96bは、前側収容凹部35の前側係合面35a及び後側係合面35bに沿うように形成されている。これにより、第2右側係合突出部96の前後方向の寸法は、下へ行くほど短くなる。また、第2右側係合突出部96の下面は、前側収容凹部35の底面35cに沿うように形成されている。
以上のように構成されているので、シート3を車椅子本体2に取り付ける際には、シートフレーム7を下へ移動させて左側係合突出部93、94及び右側係合突出部95、96を左側収容凹部24、25及び右側収容凹部34、35に上方から挿入すればよく、取り付け操作は容易である。取り付けの際、左側係合突出部93、94の下面の前後方向の寸法が左側収容凹部24、25の上端部の前後方向の寸法よりも短いので、左側係合突出部93、94と左側収容凹部24、25との位置合わせが容易に行える。右側係合突出部95、96も同様である。
左側係合突出部93、94及び右側係合突出部95、96を左側収容凹部24、25及び右側収容凹部34、35に挿入して互いに係合させることでシートフレーム7を左側サイドフレーム20及び右側サイドフレーム20に嵌合させることができる。このとき、左側収容凹部24、25の前側係合面24a、25a及び後側係合面24b、25b、右側収容凹部34、35の前側係合面34a、35a及び後側係合面34b、35bが、それぞれ、下へ行くほど互いに接近するように形成されているので、係合突出部93~96や収容凹部24、25、34、35を目視しなくても、取付時のシートフレーム7の位置合わせが容易に行える。尚、シートフレーム7を取り外す際には持ち上げればよいので、取り外しも容易に行える。
さらに、シートクッション部4に車椅子利用者が着座すると、車椅子利用者の体重によってシートフレーム7の左側係合突出部93、94及び右側係合突出部95、96が下に押される。これにより、左側係合突出部93、94が左側収容凹部24、25の前側係合面24a、25a及び後側係合面24b、25bに強く接触して左側収容凹部24、25にしっかりと嵌まり、また、右側係合突出部95、96が右側収容凹部34、35の前側係合面34a、35a及び後側係合面34b、35bに強く接触して右側収容凹部34、35にしっかりと嵌まる。
シートフレーム7は、シートクッション部4の下で左右方向に延びる前側クロスビーム97及び後側クロスビーム98を備えている。前側クロスビーム97は、第1左側係合突出部93の右側面から第1右側係合突出部95の左側面まで延びており、第1左側係合突出部93と第1右側係合突出部95とを連結する部分である。また、後側クロスビーム98は、第2左側係合突出部94の右側面から第2右側係合突出部96の左側面まで延びており、第2左側係合突出部94と第2右側係合突出部96とを連結する部分である。この実施形態では、左側着座フレーム90、右側着座フレーム91、前側クロスビーム97及び後側クロスビーム98を上記CFRP等によって一体成形しているが、これに限らず、別部材で形成した後、結合して一体化してもよい。
前側クロスビーム97及び後側クロスビーム98を備えていることでシートフレーム7の剛性を向上させることができるだけでなく、車椅子本体2の左側サイドフレーム20と右側サイドフレーム30とがシートフレーム7のクロスビーム97、98によって間接的に連結されることになり、車椅子本体2の剛性も向上させることができる。特に、左側サイドフレーム20に嵌合する左側係合突出部93、94を、右側サイドフレーム30に嵌合する右側係合突出部95、96にそれぞれ連結して一体化することで、車椅子本体2の剛性向上効果がより一層顕著なものになる。
(シートの折り畳み構造)
シート3は背もたれとなる部分を倒して折り畳むことが可能に構成されている。すなわち、シートバックフレーム92は、左側着座フレーム90及び右側着座フレーム91の後端部に対して左右方向に延びる中心線周りに回動可能に取り付けられており、起立状態で車椅子利用者の背部を支持することが可能な部材である。
具体的には、シートバックフレーム92は、起立状態で上下方向に延びるように配置される左側棒材80及び右側棒材81と、左側棒材80及び右側棒材81の中間部同士を連結する連結棒材82とを備えている。左側棒材80及び右側棒材81には、シートクッション部4と同様な材料で構成されたバッククッション部5が取り付けられている。シートバックフレーム92を折り畳んだ状態では、左側棒材80及び右側棒材81は前側へ向けて延びる姿勢となり、シートクッション部4の上に配置される。これにより、シート3をコンパクトにすることができる。
シートバックフレーム92の折り畳み構造としては、従来から周知の構造を適用することができ、この実施形態では、左側棒材80が左側角度変更部83を有している。左側角度変更部83は左側棒材80の下端部に設けられるとともに、左側着座フレーム90の後端部に連結されている。さらに、右側棒材81が右側角度変更部84を有している。右側角度変更部84は右側棒材81の下端部に設けられるとともに、右側着座フレーム91の後端部に連結されている。
右側角度変更部84は、右側着座フレーム91の後端部に固定された固定部材84aと、右側棒材81の下端部に固定され、固定部材84aに対して左右方向に延びる中心線周りに回動可能に取り付けられた回動部材84bと、ロックピン84cとを備えている。ロックピン84cは、固定部材84aに設けられたロック孔(図示せず)と、回動部材84bに設けられた第1貫通孔または第2貫通孔(共に図示せず)のいずれか一方とに挿入される。回動部材84bの第1貫通孔及び第2貫通孔は、シートバックフレーム92の回動中心線の周方向に互いに間隔をあけて配置されている。例えば回動部材84bの第1貫通孔と、固定部材84aのロック孔とにロックピン84cを挿入すると、シートバックフレーム92を起立状態で保持することができる一方、回動部材84bの第2貫通孔と、固定部材84aのロック孔とにロックピン84cを挿入すると、シートバックフレーム92を折り畳んだ状態で保持することができるように、第1貫通孔及び第2貫通孔の形成位置が設定されている。
左側角度変更部83も右側角度変更部84と同様に固定部材83a、回動部材83b及びロックピン(図示せず)を備えている。さらに、右側角度変更部84のロックピン84cと、左側角度変更部83のロックピンとは、ロックピン連結材85によって連結されている。例えば、ロックピン連結材85を引っ張ることで、右側角度変更部84のロックピン84cと、左側角度変更部83のロックピンをロック孔から抜いてロック状態を解除することができる。
左側角度変更部83の回動部材83bには、シートバックフレーム92が起立状態とされたときに左側サイドフレーム20の後側凹部21dに嵌入した状態で係止する左側係止部83dが設けられている。同様に、右側角度変更部84の回動部材84bには、シートバックフレーム92が起立状態とされたときに右側サイドフレーム30の後側凹部31dに嵌入した状態で係止する右側係止部84dが設けられている。シートバックフレーム92が折り畳まれた状態では、左側係止部83d及び右側係止部84dがそれぞれ上方へ移動して左側サイドフレーム20の後側凹部21d及び右側サイドフレーム30の後側凹部31dから抜けた状態になる。
また、左側角度変更部83の回動部材83bには、シートバックフレーム92が起立状態とされたときに後述する左側スライド部材113をロック位置まで押す左側押圧部83eが設けられている。左側押圧部83eと左側係止部83dとは一体化されている。また、右側角度変更部84の回動部材84bには、シートバックフレーム92が起立状態とされたときに後述する右側スライド部材103(図17等に示す)をロック位置まで押す右側押圧部84eが設けられている。右側押圧部84eと右側係止部84dとは一体化されている。シートバックフレーム92が折り畳まれた状態では、左側押圧部83e及び右側押圧部84eがそれぞれ上方へ移動し、左側スライド部材113及び右側スライド部材103から上方へ離れる一方、シートバックフレーム92が起立状態になると、左側押圧部83e及び右側押圧部84eがそれぞれ左側スライド部材113及び右側スライド部材103を前へ向けて所定以上の力で押すように構成されている。
(シートの車椅子本体へのロック構造)
シート3には、車椅子本体2へ取り付けられた状態で当該車椅子本体2から容易に離脱しないようにするためのロック構造が設けられている。図17に示すように、右側着座フレーム91には、第1右側ロック部材101と、第2右側ロック部材102と、1つの右側スライド部材103と、右側コイルバネ(付勢部材)104とが設けられている。第1右側ロック部材101及び第2右側ロック部材102は同じものであり、例えば弾性を有する金属製の板材や樹脂材等で構成されている。
第1右側ロック部材101は、右側着座フレーム91の右側面において前側に設けられており、側面視で、右側サイドフレーム30の前側収容凹部34内に形成されている窪み部34e(図10に示す)と重複するように位置付けられている。側面視では、第1右側ロック部材101と、前側クロスビーム97とが重複するようになっている。
また、第2右側ロック部材102は、右側着座フレーム91の右側面において後側に設けられており、側面視で、右側サイドフレーム30の後側収容凹部35内に形成されている窪み部35e(図9に示す)と重複するように位置付けられている。側面視では、第2右側ロック部材102と、後側クロスビーム98とが重複するようになっている。
第1右側ロック部材101の下部は、右側着座フレーム91の右側面に固定されて固定端となっている一方、上部は自由端となっており、従って、第1右側ロック部材101は左右方向に撓み変形可能になっている。第1右側ロック部材101の上下方向中央部は、上部および下部に比べて右へ突出するように形成されており、窪み部34eに入る部分とされている。第1右側ロック部材101を右へ向けて所定以上の力で押圧した状態にすることで、第1右側ロック部材101の中央部が右側着座フレーム91の右側面から当該右側着座フレーム91の右側方へ突出した状態が保持されて窪み部34eに入る。このように第1右側ロック部材101が形成されている。第1右側ロック部材101の中央部が窪み部34eに入ることで、当該窪み部34eの内面に接触して係止し、抜け止めになるので、この突出した状態がロック状態である。このように、右側サイドフレーム30における第1右側ロック部材101に対応する部分に、被係止部としての窪み部34eを設けているので、第1右側ロック部材101を上記のような形状に成形するだけでロック状態が可能になる。
一方、第1右側ロック部材101の右側着座フレーム91の内方へ向けての移動を許容する状態が非ロック状態である。非ロック状態では、第1右側ロック部材101が左側へ向けて弾性変形になる。例えば、例えば車椅子本体2を置いたままにし、シートフレーム7を上方へ持ち上げるようにすることで、第1右側ロック部材101が窪み部34eの内面に摺接して左側へ押されて左側へ向けて弾性変形し、これにより、第1右側ロック部材101が窪み部34e内から出る。第1右側ロック部材101が窪み部34e内から出ると、第1右側ロック部材101の形状が復元する。
第2右側ロック部材102は、第1右側ロック部材101と同様に下部が固定端、上部が自由端となっている。第2右側ロック部材102の中央部が窪み部35eに入って係止する。一方、第2右側ロック部材102が非ロック状態になると、第2右側ロック部材102の中央部が窪み部35eから出ることが可能になる。
図17に示すように、右側スライド部材103及び右側コイルバネ104は右側着座フレーム91内に収容されている。右側スライド部材103は、前後方向に長い棒状に形成されており、右側着座フレーム91内において第1右側ロック部材101及び第2右側ロック部材102の左側方に配置され、前後方向にスライド可能に右側着座フレーム91に保持されている。右側スライド部材103は、右側着座フレーム91によって前後方向へのみ移動可能に案内される。そして、右側スライド部材103は、第1右側ロック部材101及び第2右側ロック部材102をロック状態で保持するロック位置と、第1右側ロック部材101及び第2右側ロック部材102を非ロック状態とする非ロック位置との間でスライド可能になっている。これにより、単一の右側スライド部材103によって第1右側ロック部材101及び第2右側ロック部材102がロック状態と非ロック状態とに切り替えられる。
すなわち、右側スライド部材103の長さは、右側着座フレーム91の前後方向の寸法よりも長く設定されている。右側スライド部材103の後寄りの部分には、右側コイルバネ104の後端部が当接するバネ当接部103aが形成されている。右側コイルバネ104の前端部は、右側着座フレーム91の内面に当接しており、この右側コイルバネ104の付勢力は右側スライド部材103を後方へ向けて常時付勢する力として当該右側スライド部材103に作用する。この実施形態では、右側スライド部材103が右側コイルバネ104の付勢力によって後にスライドした状態で保持されるが、後述するようにシート3の車椅子本体2への取り付け動作に連動し、右側スライド部材103が右側コイルバネ104の付勢力に抗して前にスライドする。後にスライドした状態が右側スライド部材103の非ロック位置であり、前にスライドした状態が右側スライド部材103のロック位置である。
右側スライド部材103の前寄りの部分には、前側規制部103bが設けられている。前側規制部103bは、右側スライド部材103が後にスライドして非ロック位置にあるときには、第1右側ロック部材101よりも後に位置する一方、右側スライド部材103が前にスライドしてロック位置にあるときには、第1右側ロック部材101の左側面に当接するように配置される。この前側規制部103bは、第1右側ロック部材101の左側面を右側方へ向けて所定以上の力で押して進出させ、第1右側ロック部材101をロック状態にするように構成されている。つまり、前側規制部103bは、第1右側ロック部材101をロック状態にするとともに、ロック状態にある第1右側ロック部材101に当接して当該第1右側ロック部材101の後退を規制する部分である。
右側スライド部材103のバネ当接部103aよりも後の部分には、後側規制部103cが設けられている。後側規制部103cは、右側スライド部材103が後にスライドして非ロック位置にあるときには、第2右側ロック部材102よりも後に位置する一方、右側スライド部材103が前にスライドしてロック位置にあるときには、第2右側ロック部材102の左側面に当接するように配置される。この後側規制部103cは、前側規制部103bと同様に構成されており、第2右側ロック部材102をロック状態にするとともに、ロック状態にある第2右側ロック部材102に当接して当該第2右側ロック部材102の後退を規制する部分である。
図16にも示すように、後にスライドして非ロック位置にある右側スライド部材103の後端部は、右側着座フレーム91の後端面から後方へ突出している。一方、非ロック位置にある右側スライド部材103の前端部は、右側着座フレーム91内に位置している。そして、図19に示すように、右側スライド部材103が前にスライドしてロック位置になると、右側スライド部材103の前端部は、右側着座フレーム91の前端面から前方へ突出する。
右側スライド部材103の前端部は、右側サイドフレーム30に係止されるようになっている。図10に示すように、右側サイドフレーム30の上部フレーム部31の前側には、係止孔としての右側挿入孔(挿入部)34fが形成されている。この右側挿入孔34fは、上部フレーム部31における右側スライド部材103の前端部に対応する部分に形成されており、前側収容凹部34の前側係合面34aに開口している。したがって、ロック位置にある右側スライド部材103の前端部が前側係合面34aの開口から右側挿入孔34fに挿入される。
非ロック位置にある右側スライド部材103は、シート3の車椅子本体2への取り付け動作に連動してロック位置に切り替えられるようになっている。具体的に説明すると、図16に示すように、シート3を車椅子本体2への取り付ける前の段階では、シートバックフレーム92を折り畳んでおく。その後、図18に示すように、シートフレーム7を車椅子本体2の左側サイドフレーム20及び右側サイドフレーム30に置いて嵌合させる。次いで、図19に示すように、シートバックフレーム92を回動させて起立状態にすると、右側押圧部84eが右側スライド部材103の後端部に当接し、右側スライド部材103を前へ向けて所定以上の力で押す。これにより、シートバックフレーム92を起立状態とする動作に連動して右側スライド部材103が非ロック位置からロック位置に切り替えられ、第1右側ロック部材101及び第2右側ロック部材102がロック状態になって窪み部34e、35eに係止する。これと同時に、右側スライド部材103の前端部が前側係合面34aの開口から右側挿入孔34fに挿入されて係止されるので、車椅子利用者が着座した際に、右側着座フレーム91の前端部の浮き上がりを防止できる。
また、図3に示すように、左側着座フレーム90にも、右側着座フレーム91と同様に、第1左側ロック部材111と、第2左側ロック部材112と、1つの左側スライド部材113と、左側コイルバネ(付勢部材)114とが設けられている。
第1左側ロック部材111は、左側着座フレーム90の左側面において前側に設けられており、側面視で、左側サイドフレーム20の前側収容凹部24内に形成されている窪み部24e(図7に示す)と重複するように位置付けられている。側面視では、第1左側ロック部材111と、前側クロスビーム97とが重複するようになっている。
また、図3に示す第2左側ロック部材112は、左側着座フレーム90の左側面において後側に設けられており、側面視で、左側サイドフレーム20の後側収容凹部25内に形成されている窪み部25e(図7に示す)と重複するように位置付けられている。側面視では、第2左側ロック部材112と、後側クロスビーム98とが重複するようになっている。
第1左側ロック部材111の上下方向中央部が左側着座フレーム90の左側面から当該左側着座フレーム90の左側方へ突出して窪み部24eに入るようになっている。第1左側ロック部材111の中央部が窪み部24eに入ることで、当該窪み部24eの内面に接触して係止する。また、第2左側ロック部材112の上下方向中央部が窪み部25eに入って係止する。
左側スライド部材113及び左側コイルバネ114は左側着座フレーム90内に収容されている。右側スライド部材103は、第1左側ロック部材111及び第2左側ロック部材112の右側方に配置され、前後方向にスライド可能に左側着座フレーム90に保持されている。左側スライド部材113は、第1左側ロック部材111及び第2左側ロック部材112をロック状態とするロック位置と、第1左側ロック部材111及び第2左側ロック部材112を非ロック状態とする非ロック位置との間でスライド可能になっている。
左側スライド部材113の後寄りの部分には、左側コイルバネ114の後端部が当接するバネ当接部113aが形成されている。また、左側スライド部材113の前寄りの部分には、第1左側ロック部材111に当接する前側規制部113bが設けられ、左側スライド部材113のバネ当接部113aよりも後の部分には、第2左側ロック部材112に当接する後側規制部113cが設けられている。
非ロック位置にある左側スライド部材113の後端部は、左側着座フレーム90の後端面から後方へ突出している。一方、非ロック位置にある左側スライド部材113の前端部は、左側着座フレーム90内に位置している。そして、左側スライド部材113が前にスライドしてロック位置になると、左側スライド部材113の前端部は、左側着座フレーム90の前端面から前方へ突出する。
左側スライド部材113の前端部は、左側サイドフレーム20に係止されるようになっている。図示しないが、左側サイドフレーム20の上部フレーム部21の前側には、左側挿入孔(挿入部)が形成されている。この左側挿入孔は、上部フレーム部21における左側スライド部材113の前端部に対応する部分に形成されており、前側収容凹部24の前側係合面24aに開口している。したがって、ロック位置にある左側スライド部材113の前端部が前側係合面24aの開口から左側挿入孔に挿入される。
非ロック位置にある左側スライド部材113もシート3の車椅子本体2への取り付け動作に連動してロック位置に切り替えられるようになっており、シートバックフレーム92を起立状態にすると、左側押圧部83eが左側スライド部材113の後端部に当接し、左側スライド部材113を前へ向けて所定以上の力で押す。これにより、第1左側ロック部材111及び第2左側ロック部材112がロック状態になって窪み部24e、25eに係止する。これと同時に、左側スライド部材113の前端部が左側挿入孔に挿入されて係止されるので、車椅子利用者が着座した際に、左側着座フレーム90の前端部の浮き上がりを防止できる。
(変形例1)
図20~図22は、実施形態の変形例1に係るものである。この変形例1では、非ロック位置にある右側スライド部材103をロック位置に切り替える際に昇降部材120を利用している点で上記実施形態とは異なっている。すなわち、右側スライド部材103の後端部には、右側着座フレーム91内に収容される摺動面103eが設けられる一方、右側着座フレーム91には、摺動面103eに摺接する昇降部材120が昇降可能に保持されている。摺動面103eは、後側へ行くほど上に位置するように傾斜している。また、昇降部材120の上面は、摺動面103eに摺接する面であり、後側へ行くほど上に位置するように傾斜している。昇降部材120の下側には、右側着座フレーム91を貫通して下方へ突出するピン部120aが形成されている。また、右側着座フレーム91には、昇降部材120を下方へ常時付勢するバネ121が収容されている。
この変形例1では、図20に示すように、シート3を車椅子本体2から取り外すと、バネ121の付勢力によって昇降部材120が下降端位置に位置付けられるとともに、右側スライド部材103が非ロック位置まで後退する。この状態からシート3を車椅子本体2に取り付けると、図21に示すように、昇降部材120のピン部120aが上部フレーム部31の後側収容凹部35の内面によって上方へ押される。これにより、昇降部材120がバネ121の付勢力に抗して上昇する。昇降部材120が上昇すると、昇降部材120の上面が右側スライド部材103の摺動面103eに摺接し、このとき、摺動面103eが後側へ行くほど上に位置するように傾斜しているので、右側スライド部材103に対して前方へ向かう力が作用し、右側スライド部材103がロック位置に切り替えられる。つまり、非ロック位置にある右側スライド部材103が、シートフレーム7の車椅子本体2への取り付け動作に連動してロック位置に切り替えられる。また、右側スライド部材103がロック位置に切り替えられることにより、第1右側ロック部材101と第2右側ロック部材102もロック状態になる。尚、左側も同様に構成することができる。
(変形例2)
図23~図25は、実施形態の変形例2に係るものである。この変形例2では、非ロック位置にある右側スライド部材103をロック位置に切り替える際にカム130を利用している点で上記実施形態とは異なっている。すなわち、右側スライド部材103の後端部は右側着座フレーム91内に収容されており、この後端部に対して当接するカム130が右側着座フレーム91の後側に設けられている。カム130は左右方向に延びる軸130a周りに回動可能に右側着座フレーム91に設けられている。カム130の後片130bは右側着座フレーム91から後へ突出している。一方、カム130の前片130cは、軸130aよりも上へ延びるとともに、右側スライド部材103の後端部に当接するように配置されている。
この変形例2では、図23に示すように、シート3を車椅子本体2から取り外すと、右側コイルバネ104の付勢力によって右側スライド部材103が非ロック位置で保持されるとともに、カム130の前片130cが右側スライド部材103の後端部によって後へ押され、カム130が同図に示す位置で保持される。この状態からシート3を車椅子本体2に取り付けると、カム130の後片130bが上部フレーム部31の後側収容凹部35の内面によって前へ向けて押されてカム130が前へ回動しようとする。このカム130の回動力は、前片130cから右側スライド部材103の後端部に伝達されるので、図24に示すように、右側スライド部材103がロック位置に切り替えられる。つまり、非ロック位置にある右側スライド部材103が、シートフレーム7の車椅子本体2への取り付け動作に連動してロック位置に切り替えられる。また、右側スライド部材103がロック位置に切り替えられることにより、第1右側ロック部材101と第2右側ロック部材102もロック状態になる。尚、左側も同様に構成することができる。
(変形例3)
図26~図28は、実施形態の変形例3に係るものである。この変形例3では、非ロック位置にある右側スライド部材103をロック位置に切り替える際に上部フレーム部31の後側収容凹部35の内面を利用している点で上記実施形態とは異なっている。すなわち、図27に示すように、シート3を車椅子本体2に取り付けると、右側スライド部材103の後端部が上部フレーム部31の後側収容凹部35の後側係合面35bに当接する。これにより、右側スライド部材103が後側係合面35bによって前方へ押されてロック位置に切り替えられる。つまり、非ロック位置にある右側スライド部材103が、シートフレーム7の車椅子本体2への取り付け動作に連動してロック位置に切り替えられる。
変形例3では、右側スライド部材103を手動操作するための操作レバー150が設けられている。操作レバー150は、右側スライド部材103の後側に設けることができる。操作レバー150の下端部には、左右方向に延びる軸150aが設けられており、この軸150aによって操作レバー150が右側スライド部材103に対して回動自在となる。上述したように、右側スライド部材103がロック位置にある時には、第1右側ロック部材101と第2右側ロック部材102もロック状態であり、シートフレーム7の取り外しができなくなっている。本変形例では、操作レバー150を後側へ回動させることで、ロック位置にある右側スライド部材103を更に前へ向けてスライドさせることができる。これにより、前側規制部103b及び後側規制部103cがそれぞれ第1右側ロック部材101と第2右側ロック部材102よりも前へ移動するので、第1右側ロック部材101と第2右側ロック部材102が非ロック状態に切り替えられる。この状態でシートフレーム7を斜め後へ持ち上げることで、右側スライド部材103を右側挿入孔34fから抜くことができ、シートフレーム7の取り外しが可能になる。
また、変形例3において操作レバー150を設けることなく、右側スライド部材103の後端部を前後方向中間部に上に比べて上に位置付けるようにしてもよい。これにより、右側スライド部材103の後端部を手動で操作することができる。
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、折り畳み機構70の操作部74を上下方向に操作することによって車椅子本体2を折り畳むことができるので、車椅子本体2の一部や駆動輪等を持って引き寄せる動作を行うことなく、片手で折り畳み操作を行うことができ、利便性を高めることができる。
また、折り畳み機構70の操作部74が左側着座フレーム90及び右側着座フレーム91の上端部よりも下側に所定のスペースを空けて配置されているので、着座した車椅子利用者に操作部74が違和感を与えないようにして乗り心地を良好にすることができる。
また、折り畳み機構70の操作部74を車体の側面視で駆動輪10、11とキャスタ12、13との間に配置したので、操作部74を持って車椅子1を持ち上げた時にキャスタ12、13の垂れ下がりを抑制することができる。これにより、車椅子1を持ち上げた状態で容易に移動させることができる。
また、折り畳み状態から展開状態へ切り替えるときの支持アーム51、61の回動方向へ向かって延びる把持部75を備えているので、車椅子本体2の展開時に当該車椅子本体2の自重を利用して片手で展開することができる。
また、車椅子本体2のサイドフレーム20、30に設けた収容凹部24、25、34、35の前側係合面24a、25a、34a、35a及び後側係合面24b、25b、34b、35bが下へ行くほど互いに接近するように形成されているので、車椅子本体2の上からシートフレーム7を容易に着脱することができ、取付時にはシートフレーム7を車椅子本体2に対してしっかりと固定できる。
また、シートフレーム7の車椅子本体2への取り付け動作に連動してシートフレーム7のロック部材101、102、111、112を車椅子本体2の窪み部24e、25e、34e、35eに係止させることができるので、簡単な操作によりシートフレーム7を車椅子本体2に強固に取り付けることができる。
また、シートフレーム7の車椅子本体2への取り付け動作に連動してシートフレーム7を車椅子本体2に固定できるので、簡単な操作を実現できる。
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。