JP2022113253A - 防護工 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来よりも衝突エネルギーを吸収しつつも支柱や基礎の大型化を抑制できる防護工の技術を提供すること。【解決手段】橋桁防護工10は、左右の支柱12の間に架け渡された主梁14と、主梁14から衝突想定方向の上流側へ延設された左右の接続梁16と、左右の接続梁16の間に架け渡された付加梁18と、を備える。接続梁16と付加梁18との接合は「剛接合」であり、接続梁16と主梁14との接合は半剛接合又はピン接合の「回転許容接合」である。主梁14と付加梁18との上面視離間距離Dは、付加梁18が衝突による変形によって所定の低耐力状態に至ったときの変形量(上面視距離D’)以上となるように定められている。【選択図】図3

Description

本発明は防護工に関する。
通行限界高さを超える車両の衝突から橋桁を防護する設備として橋桁防護工がある(例えば、特許文献1を参照)。橋桁防護工は、車両等の衝突が想定される部位である鋼梁(防護桁)を備える。鋼梁は、例えば中空の鋼管を支柱間に架け渡して固定されている。車両の衝突を受けると、先ず衝突箇所に塑性化と局部座屈が発生し、次に塑性化と局部座屈が進展しつつ鋼梁全体が支柱との固定部を支点にして曲がり、その変形量を増大させながら衝突エネルギーを吸収する。
車両や道路事情の変化により、橋桁防護工に衝突する車両の重量や速度が従来よりも増加する傾向にあることから橋桁防護工の強化が望まれており、鋼梁のエネルギー吸収量を向上させる技術も考案されている(特許文献2,特許文献3を参照)。
特開2007-205046号公報 特開2020-147970号公報 特開2020-147971号公報
特許文献2及び特許文献3の技術によれば、1本の鋼梁が吸収できるエネルギー量を増加させることができるが、吸収できるエネルギー量を一層増加させるには、鋼梁の断面積を大きくするという考え方になる。
そこで、断面積を大きくして鋼梁が吸収できるエネルギー量を増加させると、鋼梁の抵抗力が増加して支柱や基礎に作用する衝突推定方向の力が増加することとなる。増加した衝突推定方向の力に耐えるように、今度は支柱や基礎の寸法を大幅に増加させる必要が出てくる。
支柱や基礎の寸法増加は、橋桁防護工の設置コスト増を招くばかりでなく、設置空間の制約から設置自体が困難であるといった問題が起きる。
なお、こうした課題は、橋桁防護工に関わらず、通行限界高さを超える車両の衝突が想定される防護桁を備えた防護工では、同様に存在する。
本発明が解決しようとする課題は、従来よりも衝突エネルギーを吸収しつつも支柱や基礎の大型化を抑制できる防護工の技術を提供すること、である。
上述した課題を解決するための第1の発明は、左右の支柱と、前記左右の支柱の間に架け渡された主梁と、前記支柱又は前記主梁を接合元として当該接合元から衝突想定方向の上流側へ延設された左右の接続梁と、前記左右の接続梁の間に架け渡された付加梁と、を備え、前記左右の接続梁の両方について、当該接続梁と前記付加梁との接合は、剛接合であり、前記左右の接続梁の少なくとも一方について、当該接続梁と前記接合元との接合は、半剛接合又はピン接合(以下「回転許容接合」と総称する)である、防護工である。
第1の発明の防護工は、衝突に対して、最初に付加梁で衝突を受けて、その変形・破壊によって運動エネルギーを吸収し、付加梁での吸収では不足する場合には、更に主梁の変形によって残った運動エネルギーを吸収することができる。
加えて、第1の発明の防護工は、接続梁と付加梁との接合を剛接合としつつ、接続梁と主梁との接合を回転許容接合とすることで、付加梁を軸方向に拘束しない構造としているので、支柱への応力増加を抑制できる。
仮に、接続梁と付加梁との接合、及び、接続梁と主梁との接合、の両方を剛接合とした場合、つまり付加梁を軸方向に拘束した構造の場合は、付加梁の変形が進むにつれて付加梁の抵抗力が増加し、支柱に作用する応力も増加してゆく。これは、付加梁が運動エネルギーを吸収し変形して行く過程を通して、衝突荷重が、常に接合梁・主梁を介して支柱へ伝わるからである。結果、鋼梁を多重にすることにより吸収できるエネルギー量を増加できたとしても、衝突荷重に起因して支柱に作用する衝突推定方向の力は増大し、この増大に耐えるために支柱や基礎の寸法を大きくせざるを得ない。
しかし、接続梁と主梁との接合を回転許容接合とすることで、付加梁の変形は進むが、付加梁の抵抗力の増加は抑制され、支柱の応力増加も抑制される。これは、付加梁が運動エネルギーを吸収し変形・屈曲して行く過程で、左右の接続梁が道路中央側へ傾くことで付加梁に対する軸方向を拘束しなくなることから、付加梁の変形が進むにつれて抵抗力が増加する現象が現れなくなるからである。
よって、第1の発明の防護工は、多重梁により吸収できるエネルギー量を増加しつつも、支柱や基礎の寸法を抑制して、設置費用の増加を抑制し、設置場所の空間的制約を小さくできる。
第2の発明は、前記接続梁の長さが、前記付加梁から前記接合元までの離隔距離が、前記付加梁が前記衝突想定方向への衝突による変形によって所定の低耐力状態に至ったときの変形量以上となるように定められている、第1の発明の防護工である、
付加梁が衝突想定方向へ変形してゆくと、変形量が増加し、やがて低耐力状態に至ってエネルギーを吸収できなくなる。仮に、付加梁が低耐力状態になる前にその変形によって主梁に当接すると、付加梁はエネルギーの吸収余地を残したまま、主梁でのエネルギー吸収が始まってしまうことになる。支柱に作用する衝突推定方向への力の観点から言えば、付加梁の変形に抗する第1の反力と、主梁の変形に抗する第2の反力とが、多重的に支柱に作用することになる。そしてこれらの反力の合計に耐えるために、支柱や基礎の寸法を大きくせざるを得ない。
しかし、第2の発明の防護工では、付加梁がエネルギーを吸収しきるまで主梁と当接しないように離隔させることで、付加梁でのエネルギー吸収と、主梁でのエネルギー吸収との同時発生を回避できる。従って、支柱に作用する反力の増加を抑制し、支柱や基礎の寸法増加を抑制できる。
第3の発明は、前記左右の接続梁の両方について、当該接続梁と前記接合元との接合は、前記回転許容接合である、第1又は第2の発明の防護工である。
第3の発明の防護工は、回転許容接合が一方のみである構成よりも、衝突荷重に起因する支柱の応力増加を抑制できる。
回転許容接合の実現方法は、適宜選択できる。
例えば、第4の発明として、回転許容接合が、左右方向への回転を許容する半剛接合又はピン接合である、第1~第3の何れかの発明の防護工を構成してもよい。
また、第5の発明として、回転許容接合が、アングル材或いはスプリットティを用いた接合、又は、ピン支持構造による接合、である、第1~第4の何れかの発明の防護工を構成してもよい。
橋桁防護工の構成例を示す斜視外観図。 橋桁防護工の上面図。 付加梁に移動体が衝突して「低耐力状態」に至ったときの状態の例を示す図。 支柱に作用する想定衝突方向(水平方向)の反力に着目した比較グラフ。 橋桁防護工の変形例を示す図(その1)。 橋桁防護工の変形例を示す図(その2)。 橋桁防護工の変形例を示す図(その3)。
以下、所定の衝突想定方向からの通行限界高さを超える車両の衝突が想定される鋼梁を備えた防護工として橋桁防護工の実施形態を説明するが、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限られないことは勿論である。
図1は、本実施形態の橋桁防護工10の構成例を示す斜視外観図である。
図2は、橋桁防護工10の上面図である。
橋桁防護工10は、道路4を走行する車両(移動体)が、高架橋6(保護対象構造体)に衝突するのを防ぐ防護工である。橋桁防護工10は、(1)道路4の左右両サイドに打設された基礎11と、(2)基礎11それぞれに立設された左右の支柱12と、(3)道路4の上方を左右に跨ぐ様にして左右の支柱12の間に架け渡された鋼梁である主梁14と、(4)主梁14を接合元として当該接合元から衝突想定方向の上流側へ延設された左右の接続梁16と、(5)左右の接続梁16の間に架け渡された鋼梁である付加梁18と、を有する。橋桁防護工10への衝突想定方向は、道路4の道なりに沿った水平方向(図中の太矢印)とする。
各梁同士の接合に着目すると、左右の接続梁16の両方について、当該接続梁と付加梁18との接合は「剛接合」である。すなわち、溶接や高力ボルトなどにより回転非許容に接続されている。
また、左右の接続梁16の両方について、当該接続梁と接合元(主梁14)との接合は、左右方向への回転を許容する「回転許容接合」である。図1及び図2の例では、回転許容接合を、半剛接合として実現している。具体的には、L字アングル材17によって、主梁14の衝突想定方向側の縦面と、接続梁16の道路中央側を向いた縦面とを接合している。L字アングル材17と主梁14との接合、及び、L字アングル材17と接続梁16との接合は、溶接や高力ボルトでの締結、リベット接合などにより実現される。
主梁14と付加梁18の相対位置関係に着目すると、未変形状態である付加梁18の衝突想定方向下流側の縦面から、主梁14の衝突想定方向上流側の縦面まで上面視離隔距離D(図2参照)は、付加梁18が衝突想定方向への衝突による変形によって所定の低耐力状態に至ったときの変形量以上となるように定められている。言い換えると、接続梁16の長さは、当該変形量を少なくとも確保できる長さに定められている、とも言える。
図3は、付加梁18に移動体5が衝突して「低耐力状態」に至ったときの状態の例を示す図である。「低耐力状態」とは、衝突のエネルギー吸収ができない状態や、実質的にエネルギーの吸収がほとんどできていない状態である。具体的な例を挙げれば、最大引っ張り応力を越えた状態がこれに該当する。亀裂が生じた時点の状態、破断発生時点の状態、とも言える。よって、ここで言う「低耐力状態に至ったときの変形量」は、未変形状態である付加梁18の衝突想定方向下流側の縦面から、低耐力状態に至ったときの(変形状態)にある付加梁18の衝突想定方向下流側の縦面までの、上面視距離D’(≦D)である。
図4は、支柱12に作用する想定衝突方向(水平方向)の反力に着目した比較グラフであって、移動体5を見立てた重錘による衝突試験又は解析の結果を示している。
グラフL1(細破線)は、付加梁18及び接続梁16を有せず、主梁14のみで防護工を構成したいわば従来の防護工と言える第1比較対象の衝突試験による反力変化を示す。グラフL2(太実線)は、接続梁16と付加梁18との第1の接合と、接続梁16と主梁14との第2の接合との、両方を剛接合とした第2比較対象の衝突試験による反力変化を示す。グラフL3(中実線)は、本実施形態の橋桁防護工10の構成による解析結果の反力変化を示す。衝突試験では、同じ重錘を同じ高さから落下させた結果である。解析は、有限要素法によるもので、荷重条件は衝突試験に合わせてある。
各グラフのピーク値に着目すると、第1比較例のグラフL1のピーク値P1が最も高く、次に第2比較例のグラフL2のピーク値P2が高い。本実施形態のグラフL3のピーク値P3が最も低くなっている。
本実施形態の橋桁防護工10は、第1比較例の単梁(主梁14)構成よりも、付加梁18を追加した2重梁の構成としたことで、基本的に吸収できるエネルギー量は増加している。にもかかわらず、支柱12に作用する衝突想定方向の反力のピーク値P3は、第1比較例のピーク値P1よりも小さく、支柱12や基礎11を大型化する必要性はない。加えて、本実施形態の橋桁防護工10のピーク値P3は、第2比較例のピーク値P2よりも低い。よって、衝突エネルギーの吸収量を大きくすることが可能でありながらも、支柱や基礎の大型化を抑制できる橋桁防護工を実現することができる。
〔変形例〕
なお、本発明を適用可能な形態は、上記の実施形態に限らず、適宜、構成要素の変更・追加・削除をすることができる。
例えば、上記実施形態では、付加梁18と左右の接続梁16との接合を、付加梁18の左右端が、左右それぞれの接続梁16の道路中央側の縦面に接合するように設定したが、これに限らない。例えば、図5に示す橋桁防護工10Bのように、付加梁18の左右端が、左右それぞれの接続梁16の衝突想定方向上流側の面で接合するように設定してもよい。また例えば、上記実施形態では、接続梁16と主梁14との接合の左右両方を回転許容接合として説明したが、図5に示す橋桁防護工10Bのように、何れか一方(図5の例では、衝突想定方向から見て左側;図5の上側の接合)を剛接合とし、他方を回転許容接合としてもよい。
また例えば、回転許容接合は、L字アングル材17に限らずその他の要素で実現してもよい。図6に示す橋桁防護工10Cのように、ピン接合20や、パドルボルト24を用いて接合することで、回転許容接合を実現してもよい。ピン接合20は、ピン21が上下方向に向くように取り付けられているピン支持構造である。パドルボルト24は、接続梁16の道路中央側の端部に取り付けられており、当該接続梁が左右に振れようとした場合、道路中央側に倒れ易くしている。その他、パドルボルト24と同様の使い方をする要素として、スプリットティを用いて回転許容接合を実現してもよい。パドルボルト24やスプリットティを用いた接合は、半剛接合である。
また、図7に示す橋桁防護工10Eのように、接続梁16の接合元を主梁14ではなく支柱12としてもよい。
また、上記実施形態では、付加梁18を1本追加した2重梁構造を例に挙げたが、付加梁18を2本以上とする多重梁構造であってもよい。その場合、1本目の付加梁18を、2本目の付加梁18用の接続梁16の接続元にする、…を繰り返して構成すればよい。
10…橋桁防護工
12…支柱
14…主梁
16…接続梁
17…L字アングル材
18…付加梁
D…上面視離隔距離
D’…上面視距離

Claims (5)

  1. 左右の支柱と、
    前記左右の支柱の間に架け渡された主梁と、
    前記支柱又は前記主梁を接合元として当該接合元から衝突想定方向の上流側へ延設された左右の接続梁と、
    前記左右の接続梁の間に架け渡された付加梁と、
    を備え、
    前記左右の接続梁の両方について、当該接続梁と前記付加梁との接合は、剛接合であり、
    前記左右の接続梁の少なくとも一方について、当該接続梁と前記接合元との接合は、半剛接合又はピン接合(以下「回転許容接合」と総称する)である、
    防護工。
  2. 前記接続梁の長さは、前記付加梁から前記接合元までの離隔距離が、前記付加梁が前記衝突想定方向への衝突による変形によって所定の低耐力状態に至ったときの変形量以上となるように定められている、
    請求項1に記載の防護工。
  3. 前記左右の接続梁の両方について、当該接続梁と前記接合元との接合は、前記回転許容接合である、
    請求項1又は2に記載の防護工。
  4. 前記回転許容接合は、左右方向への回転を許容する半剛接合又はピン接合である、
    請求項1~3の何れか一項に記載の防護工。
  5. 前記回転許容接合は、アングル材或いはスプリットティを用いた接合、又は、ピン支持構造による接合、である、
    請求項1~4の何れか一項に記載の防護工。
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