JP2022094799A - チタン酸リチウム粉末、それを用いた電極シート、及び蓄電デバイス - Google Patents

チタン酸リチウム粉末、それを用いた電極シート、及び蓄電デバイス Download PDF

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和幸 川辺
Kazuyuki Kawabe
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順次 田渕
Junji Tabuchi
輝昭 藤井
Teruaki Fujii
一崇 田中
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Abstract

【課題】蓄電デバイスの電極材料として用いられ、初期放電容量、レート特性、電極密度、及び体積エネルギー密度に優れ、さらに、高温動作時のガス発生量や抵抗値増加を抑制することができるチタン酸リチウム粉末、それを用いた電極シート、及び蓄電デバイスを提供する。【解決手段】Li4Ti5O12を主成分とするチタン酸リチウム粉末であって、前記チタン酸リチウム粉末が、チタン酸リチウムの一次粒子と二次粒子を含み、1-メチル-2-ピロリドン吸油量が71mL/100g以下であり、前記一次粒子の表面にモリブデン(Mo)およびアルミニウム(Al)が存在することを特徴とするチタン酸リチウム粉末。【選択図】図1

Description

本発明は、蓄電デバイスの電極材料等として好適なチタン酸リチウム粉末、それを用いた電極シート、及び蓄電デバイスに関する。
近年、蓄電デバイスの電極材料として種々の材料が研究されている。その中でもチタン酸リチウムは、活物質材料として用いた場合に入出力特性に優れる点から、HEV、PHEV、BEVといった電気自動車用の蓄電デバイスの活物質材料として注目されている。
電気自動車用の蓄電デバイスには、燃費または電費向上の観点から高いエネルギー密度が求められる。加えて、広い温度領域での安定性も重要である。例えば、夏場において自動車の車内温度が60℃以上になることは珍しくない。そのため、電気自動車用の蓄電デバイスは、高温下でも安全性に問題がないことや性能が低下しないことが求められる。しかし、チタン酸リチウムを含む蓄電デバイスが、60℃以上の高温で長期間使用されると、保存安定性やサイクル安定性を保つことがより難しく、電池の抵抗増加を引き起こすことが知られている。加えて、充電と放電を繰り返すと、チタン酸リチウムが電気化学的な副反応を起こすことにより、電解液に含まれる有機溶媒が分解し、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、水素等のガス(以下分解ガスと記すことがある)を発生させることがある。したがって、蓄電デバイスのエネルギー密度を高めながら、高温動作時の電池特性を維持しつつ、ガス発生や抵抗増加を抑制するチタン酸リチウムの開発が望まれている。
特許文献1には、比表面積が4m/g以上であり、ホウ素(B)、Ln(Lnは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Hb、Er、Tm、Yb、Lu、Y、及びScから選ばれる少なくとも一種の金属元素である)、及び、M1(M1は、W及びMoから選ばれる少なくとも一種の金属元素である)から選ばれる少なくとも一種の局在化元素を含有し、前記局在化元素としてのホウ素(B)、前記Ln、及び前記M1が、前記チタン酸リチウム粉末を構成するチタン酸リチウム粒子の表面近傍に局在化して存在していることを特徴とするチタン酸リチウム粉末が開示されている。特許文献1によれば、蓄電デバイスの電極材料として適用した場合に、充放電容量が大きく、高温動作時のガス発生量を抑制できるチタン酸リチウム粉末が開示されている。
特許文献2には、平均直径が5~40nmで、平均アスペクト比が10~1000である繊維状炭素を含む球状二次粒子体であり、平均円形度が90%以上の繊維状炭素を含有し、球状二次粒子の平均圧縮強度や1-メチル-2-ピロリドン吸油量が規定されたチタン酸リチウム粉末が開示されている。特許文献2によれば、高温環境下での充放電サイクル特性に優れ、充放電サイクル後のガス発生量が少ない蓄電デバイスが開示されている。
特許文献3には、一次粒子が集合した球状二次粒子を形成し、その二次粒子の粒子投影像の円形度や吸油量が特定の範囲からなり、主成分がLi4/3Ti5/3からなることを特徴とするリチウムチタン複合酸化物が開示されている。特許文献3によれば、電極作製時におけるハンドリング並びに集電体上への塗工性が良好で、使用した電極の膨張が少なく、かつ優れた特性を有するリチウム二次電池が開示されている。
特許文献4には、オリビン構造を有する正極活物質の一次粒子の間に前記炭素が介在した二次粒子からなる球状造粒体と、前記一次粒子の間に前記炭素が介在した非球状凝集体とからなり、被覆する炭素の質量と粒子径とN-メチル-2-ピロリドン吸油量を規定したリチウムイオン二次電池用正極材料が開示されている。特許文献4によれば、入出力特性に優れ、かつ電極密度が高いリチウムイオン二次電池用正極材料が得られると開示されている。
国際公開2018/110708号公報 国際公開2017/047755号公報 特開2001-192208号公報 特開2020-140827号公報
しかしながら、特許文献1のチタン酸リチウムを負極材料として適用した蓄電デバイスでは、充放電容量が大きい電池で高温動作時のガス発生量を抑制できるが、塗工電極を作成した際に、電極密度が上がりにくく、電池としてのエネルギー密度が低下するという課題があった。なお、電極密度を上げるメリットとして、電池自体をより軽くし、より小さくできるため、電子機器や車載の中で電池が占める割合が低下し電子機器の設計自由度が大幅に向上する点や大型電池用途の場合は電池スペース確保が不要となり、単位体積あたりのエネルギー密度向上に繋がるので電気自動車の走行距離延長や蓄電池の設置スペース確保に繋がる点、また電池内部における電極の接触抵抗低減に繋がる点、などが挙げられる。
繊維状炭素を含有し球状二次粒子の平均圧縮強度が規定された特許文献2のチタン酸リチウム粉末では、非水電解液の浸透性確保の効果によってサイクル特性の改善を確認されているものの長期充電保存時の抵抗増加に関する記載はなく、体積エネルギー密度との両立に課題があることが分かった。
さらに、特許文献3には、長期充電保存時の抵抗増加に関する記載はなく、電極密度の向上との両立に関する知見は示されていない。また、特許文献4は、正極活物質に関する記載であり、長期サイクルガスや充電保存における抵抗増加に関する知見は全く示されていない。
以上の点から、特許文献1から特許文献4の負極活物質や電極を使用した蓄電デバイスでは、エネルギー密度に直結する負極の電極密度向上と高温動作時のガス発生や抵抗増加の抑制を両立することはできない。
そこで本発明では、蓄電デバイスの電極材料として用いられ、初期放電容量、レート特性、電極密度、及び体積エネルギー密度に優れ、さらに、高温動作時のガス発生量や抵抗値増加を抑制することができるチタン酸リチウム粉末、それを用いた電極シート、及び蓄電デバイスを提供することを目的とする。
本発明者らは、前記の目的を達成すべく種々検討した結果、チタン酸リチウム粉末製造時の原料調製工程での原料混合比、焼成工程での焼成温度、表面処理工程での添加量や熱処理温度などを制御することで、チタン酸リチウム粒子内における、特定の金属元素の粒子表面における濃度及び粒子内部の濃度が特定の範囲にあり、特定の1-メチル-2-ピロリドン吸油量範囲を示すチタン酸リチウム粉末を見出した。そのチタン酸リチウム粉末が電極材料として適用された蓄電デバイスが、初期放電容量、レート特性、電極密度、及び体積エネルギー密度に優れ、さらに、高温動作時のガス発生量や抵抗値増加を抑制できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は以下の事項に関する。
(1)LiTi12を主成分とするチタン酸リチウム粉末であって、前記チタン酸リチウム粉末が、チタン酸リチウムの一次粒子と二次粒子を含み、1-メチル-2-ピロリドン吸油量が71mL/100g以下であり、前記一次粒子の表面にモリブデン(Mo)およびアルミニウム(Al)が存在することを特徴とするチタン酸リチウム粉末。
(2)前記チタン酸リチウム粉末の比表面積が6.1m/g以下であることを特徴とする(1)に記載のチタン酸リチウム粉末。
(3)レーザー回折散乱法による体積基準粒度分布において体積累積が50%に相当する一次粒子の粒径D50が0.7μm以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載のチタン酸リチウム粉末。
(4)レーザー回折散乱法による体積基準粒度分布において体積累積が50%に相当する二次粒子の粒径D50が11μm以上であることを特徴とする(1)~(3)のいずれか一項に記載のチタン酸リチウム粉末。
(5)(1)~(4)のいずれか一項に記載のチタン酸リチウム粉末を含むことを特徴とする電極シート。
(6)(5)に記載の電極シートを含むことを特徴とする蓄電デバイス。
本発明によると、初期放電容量、レート特性、電極密度、及び体積エネルギー密度、さらに高温動作時のガス発生量や抵抗値増加が抑制された蓄電デバイスの電極材料として好適なチタン酸リチウム粉末、それを用いた電極シート、及び蓄電デバイスを提供することができる。
図1は、LiTi12を主成分とするチタン酸リチウム粉末に含まれるMoの価数分布を測定したXPSスペクトルである。
[本発明のチタン酸リチウム粉末]
本発明のチタン酸リチウム粉末は、LiTi12を主成分とするチタン酸リチウム粉末であって、前記チタン酸リチウム粉末が、チタン酸リチウムの一次粒子と二次粒子を含み、1-メチル-2-ピロリドン吸油量が71mL/100g以下であり、前記一次粒子の表面にMoおよびAlが存在するものをいう。
<LiTi12を主成分とするチタン酸リチウム粉末>
本発明のチタン酸リチウム粉末はLiTi12を主成分とし、本発明の効果が得られる範囲で、LiTi12以外の結晶質成分及び/または非晶質成分を含むことができる。主成分とは、X線回折法によって測定される回折ピークのうち、LiTi12のメインピークの強度の割合が90%以上であることを言う。本発明のチタン酸リチウム粉末は、X線回折法によって測定される回折ピークのうち、LiTi12のメインピークの強度の割合は92%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。LiTi12以外の成分としては、結晶質成分に起因するメインピークの強度と、非晶質成分に起因するハローパターンの最高強度との総和である。特に本発明のチタン酸リチウム粉末は、その合成時の原料や合成条件に起因して、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、及び化学式が異なるチタン酸リチウムであるLiTiO3、Li0.6Ti3.48、等を前記結晶質成分として含むことがある。本発明のチタン酸リチウム粉末は、これらのLiTi12以外の結晶質成分、特にLi0.6Ti3.4の発生割合が少ないほど、蓄電デバイスの充電特性及び充放電容量を向上させることができる。X線回折法によって測定される回折ピークのうち、LiTi12のメインピークの強度を100としたときに、アナターゼ型二酸化チタンのメインピークの強度と、ルチル型二酸化チタンのメインピーク強度と、LiTiOの(-133)面相当のピーク強度に100/80を乗じて算出したLiTiOのメインピークに相当する強度との総和が5以下であることが特に好ましい。ここで、LiTi12のメインピークとは、ICDD(PDF2010)のPDFカード00-049-0207におけるLiTi12の(111)面(2θ=18.33)に帰属する回折ピークに相当するピークである。アナターゼ型二酸化チタンのメインピークとは、PDFカード01-070-6826における(101)面(2θ=25.42)に帰属する回折ピークに相当するピークである。ルチル型二酸化チタンのメインピークとは、PDFカード01-070-7347における(110)面(2θ=27.44)に帰属する回折ピークに相当するピークである。LiTiOの(-133)面に相当するピークとは、PDFカード00-033-0831におけるLiTiOの(-133)面(2θ=43.58)に帰属する回折ピークに相当するピークである。Li0.6Ti3.4のメインピークとは、PDFカード01-070-2732における(101)面(2θ=19.98)に帰属する回折ピークに相当するピークである。なお、「ICDD」は、International Centre for Diffraction Data(国際回折データセンター)の略であり、「PDF」は、Powder Diffraction File(粉末回折ファイル)の略である。
<モリブデン(Mo)およびアルミニウム(Al)の含有>
本発明のチタン酸リチウム粉末は一次粒子の表面にMoおよびAlを含有する。それぞれ前記金属元素を含有するとは、本発明のチタン酸リチウム粉末の誘導結合プラズマ発光分析(ICP-AES)において、MoおよびAlが検出されることをいう。なお、誘導結合プラズマ発光分析による検出量の下限は、通常、0.001質量%である。
<モリブデン(Mo)およびアルミニウム(Al)の含有率>
蛍光X線分析(XRF)から求めた本発明のチタン酸リチウム粉末のMoおよびAlの含有率(質量%)は、それぞれが0.01以上0.8以下である。それぞれの前記金属元素の含有率がこの範囲であれば、初期放電容量、レート特性、電極密度、及び体積エネルギー密度に優れ、さらに高温動作時のガス発生量や抵抗値増加を抑制した蓄電デバイスが得られる。より好ましくは0.1以上0.6以下であり、さらに好ましくは0.1以上0.4以下である。なお、含有率とはチタン酸リチウム粉末全体の質量に占めるMoおよびAlがそれぞれ含有する質量の割合を表す。
<モリブデン(Mo)とアルミニウム(Al)の質量比(Mo(質量%)/Al(質量%))>
本発明のチタン酸リチウム粉末は、一次粒子の表面にMoおよびAlを含有し、それぞれの質量比(Mo(質量%)/Al(質量%))は0.01以上80以下である。質量比がこの範囲であれば、初期放電容量、レート特性、電極密度、及び体積エネルギー密度に優れ、さらに高温動作時のガス発生量や抵抗値増加を抑制した蓄電デバイスが得られる。より好ましくは0.2以上6以下であり、さらに好ましくは0.3以上4以下である。
また、本発明のチタン酸リチウム粉末では、粉末に含まれるチタン酸リチウムの一次粒子の内部よりも、表面にMoおよびAlが多く含有される。走査透過型電子顕微鏡を用いた、チタン酸リチウムの一次粒子の断面分析において、エネルギー分散型X線分光法により測定される、前記チタン酸リチウムの一次粒子の表面から5nm程度の深さまでのいわゆる表面近傍の領域においてMoが多く含有されればよく、表面から20nm程度の深さまでのいわゆる表面近傍の領域においてAlが多く含有されればよく、100nm程度の深さ位置において、MoおよびAlが検出されないことが好ましい。MoおよびAlは一次粒子表面に化学的に結合した状態で定着していることが好ましい。MoおよびAlがこのような状態で存在する場合、初期放電容量、レート特性、電極密度、及び体積エネルギー密度に優れ、さらに高温動作時のガス発生量や抵抗値増加を抑制した蓄電デバイスが得られる。エネルギー分散型X線分光法による測定における検出量の下限は、測定する元素や状態によって値が前後するが、通常、0.5atm%である。よって、100nm程度の深さ位置において、MoおよびAlがそれぞれ0.5atm%以下の範囲で検出されてもよい。
<異種元素M1の含有>
本発明のチタン酸リチウム粉末は、さらなる異種元素(以下、元素M1と表記)として、B、Mg、Zn、Ga、W、S、またはInから選ばれる少なくとも1種の元素を含有してもよい。本発明のチタン酸リチウム粉末は、これらの元素M1をMoおよびAlと共に含有することで、高温充放電での効率やレート特性がさらに高まるからである。元素M1は硫黄(S)であることが好ましい。本発明のチタン酸リチウム粉末は、元素SをMoおよびAlと共に含有することで、チタン酸リチウム粉末の一次粒子の表面の電子伝導性が調製され、電気抵抗を抑制できるためだと推測される。
蛍光X線分析(XRF)から求めた元素M1の含有率(質量%)としては、0.01~1.0である。蓄電デバイスの高温充放電での効率やレート特性を高める観点からは、含有率は0.03~0.8が好ましく、0.1~0.6がより好ましい。元素M1がSである場合、0.1~0.5が好ましく、0.15~0.48がより好ましい。
<1-メチル-2-ピロリドン吸油量>
本発明のチタン酸リチウム粉末の1-メチル-2-ピロリドン(以下NMPと記すことがある)吸油量が71ml/100g以下である。NMP吸油量がこの範囲であれば、電極密度、初期放電容量、体積エネルギー密度、レート特性を向上させ、高温動作時のガス発生量や抵抗値増加を抑制した蓄電デバイスを得ることができる。好ましくは70ml/100g、より好ましいのは69ml/100gである。ここで、ml/100gという単位は本発明のチタン酸リチウム粉末100gあたりのNMPの吸収量(単位は、ml)を表す。上記効果を得ることができる原因は必ずしも明らかではないが、NMPは電極作成に使用される溶剤であり、チタン酸リチウム粉末のNMP吸油量を適切に制御することで、負極活物質、導電助剤、結着剤との効率的な密着性に寄与し、高密度な電極加工性が実現できたためと推定される。
<比表面積>
本発明のチタン酸リチウム粉末の比表面積とは、窒素を吸着ガスとして用いたときの、単位質量当たりの吸着面積のことである。測定方法については、後述する実施例にて説明する。
本発明のチタン酸リチウム粉末を構成するチタン酸リチウムにおいては、比表面積が6.1m/g以下であれば、初期放電容量、レート特性、電極密度、及び体積エネルギー密度に優れ、さらに高温動作時のガス発生量や抵抗値増加を抑制した蓄電デバイスを得ることができる。チタン酸リチウム粉末の比表面積は6.0m/g以下がより好ましく、5.7m/g以下がさらに好ましい。
<D50>
本発明のチタン酸リチウム粉末のD50とは体積中位粒径の指標である。レーザー回折・散乱型粒度分布測定によって求めた体積分率で計算した累積体積頻度が、粒径の小さい方から積算して50%になる粒径を意味する。測定方法については、後述する実施例にて説明する。
<一次粒子と二次粒子>
本発明のチタン酸リチウム粉末は、チタン酸リチウムの一次粒子と前記一次粒子が凝集した二次粒子を含む。一次粒子とは、チタン酸リチウム粉末を構成する、解砕処理によってそれ以上分割できない個々の粒子を表す。
本発明のチタン酸リチウム粉末の二次粒子のD50は、電極密度、体積エネルギー密度およびレート特性の向上の観点から、D50は、11μm以上であり、12μm以上が好ましく、12.4μm以上がより好ましい。また、20μm以下であり、18μm以下が好ましく、14μm以下がより好ましい。なお、二次粒子のD50は、解砕処理(超音波照射器で超音波をかける)前のD50を表す。
本発明のチタン酸リチウム粉末の一次粒子のD50は、電極密度、体積エネルギー密度、およびレート特性の向上の観点から、D50は、0.7μm以上であり、0.73μm以上が好ましく、0.75μm以上がより好ましい。また、3μm以下であり、2μm以下が好ましく、1.5μm以下がより好ましい。なお、一次粒子のD50は、超音波照射器による解砕処理を行った後のD50を表す。また、該チタン酸リチウム粉末は一次粒子径0.7μm未満の一次粒子の累積体積頻度を10%~50%の範囲で含んでいてもよく、0.73μm未満の一次粒子の累積体積頻度を15%~55%の範囲で含んでいてもよく、0.75μm未満の一次粒子の累積体積頻度を10%~60%の範囲で含んでいてもよい。さらに、3μmを超える一次粒子の累積体積頻度を50%~90%の範囲で含んでいてもよく、2μmを超える一次粒子の累積体積頻度を45%~85%の範囲で含んでいてもよく、1.5μmを超える一次粒子の累積体積頻度を40%~80%の範囲で含んでいてもよい。
<pH>
本発明のチタン酸リチウム粉末においては、pHが10.0以上11.5以下であることが好ましく、10.5以上11.4以下がより好ましく、さらに好ましいのは10.7以上11.3以下である。この範囲であれば、蓄電デバイスの電極密度、レート特性を損なうことなく、高温動作時のガス発生量や抵抗値増加が抑制された蓄電デバイスが得られる。なお、推測の域を出ないが、本発明のチタン酸リチウム粉末のpHは、表面状態、特にモリブデンの価数による影響を受けていると想定される。本発明におけるpHは、チタン酸リチウム粉末を水に溶解して測定する値を言う。
<モリブデン(Mo)の価数>
特許文献1の明細書記載の製造方法では、Moの価数について指定されていない。本発明のチタン酸リチウム粉末に含まれるチタン酸リチウム一次粒子のX線光電子分光分析(XPS)により、Mo(6価、5価および4価)由来のピーク面積の総和に占めるMo(5価および4価)のピーク面積の割合が30%以下であることが好ましく、20%以下がより好ましい。Mo(5価および4価)のピーク面積の割合が30%以下であれば、初回充放電時にMoの副反応が抑制され、初期放電容量、レート特性、電極密度、及び体積エネルギー密度に優れ、さらに高温動作時のガス発生量や抵抗値増加が抑制された蓄電デバイスが得られる。
ガス発生量や抵抗値増加が抑制される理由としては、定かではないが、チタン酸リチウム粒子表面と非水電解質(固体電解質を含む)との界面にMoが存在することで、Moが粒子表面で発生した分解物を効率的に他の物質に変換させ、全体のガス発生量や抵抗成分の増加を抑制できると考えられる。加えて、チタン酸リチウム粒子表面に存在するMo拡散層が形成されることにより、電解液の分解に起因する、LiTi12の活性点を保護するため、電解液の分解によるガス発生量をさらに抑制できると考えられる。
<周期律表>
本発明の周期律表とは、IUPAC(国際純正応用化学連合)の規定に基づく長周期型の元素の周期律表をいう。
[本発明のチタン酸リチウム粉末の製造方法]
以下に、本発明のチタン酸リチウム粉末の製造方法の一例を、原料の調製工程、焼成工程、及び表面処理工程に分けて説明するが、本発明のチタン酸リチウム粉末の製造方法はこれに限定されない。
<原料の調製工程>
本発明のチタン酸リチウム粉末の原料は、チタン原料及びリチウム原料からなる。チタン原料としては、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン等のチタン化合物が用いられる。短時間でリチウム原料と反応し易いことが好ましく、その観点で、アナターゼ型二酸化チタンが好ましい。短時間の焼成で原料を十分に反応させるためには、チタン原料のD50は5μm以下が好ましい。
リチウム原料としては、水酸化リチウム一水和物、酸化リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸リチウム等のリチウム化合物が用いられる。
なお、チタン原料及びリチウム原料の仕込み比率としては、Tiに対するLiの原子比Li/Tiが0.81以上であることが好ましく、0.83以上がより好ましい。仕込み比率が少ないと、焼成後に得られるチタン酸リチウム粉末において特定の不純物相の発生を促し、電池特性への悪影響が懸念されるためである。
本発明においては、以上の原料からなる混合物を短時間で焼成する場合は、焼成前に混合物を構成する混合粉末を、レーザー回折・散乱型粒度分布測定機にて測定される粒度分布曲線におけるD95が5μm以下になるように調製することが好ましい。ここで、D95とは、体積分率で計算した累積体積頻度が、粒径の小さい方から積算して95%になる粒径のことである。
混合物の調製方法としては、次に挙げる方法を採用することができる。第一の方法は、原料を調合後、混合と同時に粉砕を行う方法である。第二の方法は、各原料を混合後のD95が5μm以下になるまで粉砕した後、これらを混合、あるいは軽く粉砕しながら混合する方法である。第三の方法は、各原料を晶析などの方法によって微粒子からなる粉末を製造し、必要に応じて分級して、これらを混合、あるいは軽く粉砕しながら混合する方法である。なかでも、第一の方法において、原料の混合と同時に粉砕を行う方法は、工程が少ない方法なので工業的に有利な方法である。また、同時に導電剤を添加しても良い。
第一から第三のいずれの方法においても、原料の混合方法に特に制限はなく、湿式混合または乾式混合のいずれの方法でも良い。例えば、ヘンシェルミキサー、超音波分散装置、ホモミキサー、乳鉢、ボールミル、遠心式ボールミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、アトライター式の高速ボールミル、ビーズミル、ロールミル等を用いることができる。
前記第一から第三のいずれの方法で得られた混合物が混合粉末である場合は、そのまま次の焼成工程に供することができる。混合粉末からなる混合スラリーである場合は、混合スラリーをロータリーエバポレーターなどによって乾燥した後に次の焼成工程に供することができる。焼成がロータリーキルン炉を用いて行われる場合は、混合スラリーのまま炉内に供することができる。
<焼成工程>
次いで、得られた混合物を焼成する。焼成により得られる粉末の比表面積を大きく、かつ結晶子径や粉末の一次粒子径を大きくする、炉心管由来の不純物量を少なくする観点からは、高温かつ短時間で焼成することが好ましい。このような観点から、焼成時の最高温度は、好ましくは1100℃以下であり、より好ましくは1000℃以下であり、更に好ましくは960℃以下である。特定の不純物相の割合を少なく、かつチタン酸リチウムの結晶性を高くする観点から、焼成時の最高温度は、好ましくは800℃以上であり、より好ましくは810℃以上である。同様に前記観点から、焼成時の最高温度での保持時間は、好ましくは2分~60分であり、より好ましくは5分~45分であり、更に好ましくは5分~30分である。焼成時の最高温度が高い時には、より短い保持時間を選択することが好ましい。同様に、焼成により得られる結晶子径を大きくする観点から、焼成時の昇温過程においては、700℃~800℃の滞留時間を特に短くすることが好ましく、例えば15分以内が好ましい。
前記条件で焼成できる方法であれば、焼成方法は特に限定されるものではない。利用できる焼成方法としては、固定床式焼成炉、ローラーハース式焼成炉、メッシュベルト式焼成炉、流動床式焼成炉、ロータリーキルン式焼成炉が挙げられる。ただし、短時間で効率的な焼成をする場合は、ローラーハース式焼成炉、メッシュベルト式焼成炉、ロータリーキルン式焼成炉が好ましい。匣鉢に混合物を収容して焼成するローラーハース式焼成炉、またはメッシュベルト式焼成炉を用いる場合は、焼成時の混合物の温度分布の均一性を確保して得られるチタン酸リチウムの品質を一定にするためには、匣鉢への混合物の収容量を少量にすることが好ましい。
ロータリーキルン式焼成炉は、混合物を収容する容器が不要で、連続的に混合物を投入しながら焼成ができる点、被焼成物への熱履歴が均一で、均質なチタン酸リチウムを得ることができる点から、本発明のチタン酸リチウム粉末を製造するには特に好ましい焼成炉である。
焼成時の雰囲気は、脱離した水分や炭酸ガスが排除できる雰囲気であれば、焼成炉に関わらず特に限定されるものではない。通常は、圧縮空気を用いた空気雰囲気とするが、酸素、窒素、または水素雰囲気などでも良い。
焼成後のチタン酸リチウム粉末は、軽度の凝集はあるものの、粒子を破壊するような粉砕を行わなくても良く、そのため、焼成後には、必要に応じて凝集を解す程度の解砕や分級を行えば良い。粉砕を行わず、凝集を解す程度の解砕を行うだけであれば、その後でも、焼成後のチタン酸リチウム粉末の高い結晶性が維持される。
<表面処理工程>
本発明のチタン酸リチウム粉末は、モリブデンおよびアルミニウムを含有するチタン酸リチウム粉末であり、蓄電デバイスの電極材料として適用した場合に高温動作時のガス発生や抵抗値増加の抑制効果を付与することができる。前記焼成工程で、モリブデンおよびアルミニウムを含有する化合物(以下、処理剤と記すことがある)を加えて、本発明のチタン酸リチウム粉末を製造することができるが、より好ましくは、次のような表面処理工程などで、本発明のチタン酸リチウム粉末を製造することができる。
以上の工程により得られた、表面処理前のチタン酸リチウム粉末(以下、基材のチタン酸リチウム粉末と記すことがある。また、以下、基材のチタン酸リチウム粉末を構成するチタン酸リチウム粒子を基材のチタン酸リチウム粒子と記すことがある)を、処理剤1および処理剤2と混合して、好ましくは熱処理する。
モリブデンを含有する化合物(処理剤1)としては、特に限定されないが、例えば、モリブデンの酸化物、水酸化物、硫酸化合物、硝酸化合物、フッ化物、有機化合物、及びモリブデンを含有する金属塩化合物が挙げられる。具体的には、酸化モリブデン、三酸化モリブデン、三酸化モリブデン水和物、ほう化モリブデン、りんモリブデン酸、二けい化モリブデン、塩化モリブデン、硫化モリブデン、けいモリブデン酸水和物、酸化ナトリウムモリブデン、炭化モリブデン、酢酸モリブデン二量体、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸マグネシウム、モリブデン酸マンガン、モリブデン酸アンモニウム、などが挙げられる。モリブデンをチタン酸リチウム粉末の粒子表面に均一に拡散させるためには、後述の湿式法を用いるのが適しており、その場合は、溶媒に可溶な、モリブデンを含有する化合物を、その溶媒に溶解させて、基材のチタン酸リチウム粉末と混合することが好ましい。ガス発生量を抑制する点で、モリブデンを含有するモリブデン酸リチウムが好ましい。なお、モリブデンの価数について、原料として6価の状態で加えても、LTO表面または結晶内部で化学的に結合を形成する際に、ダングリングボンドが存在し部分的に4~5価をとるものと想定される。
モリブデンを含有する化合物(処理剤1)の添加量は、チタン酸リチウム粉末中のモリブデンの含有率が本発明の範囲内に収まれば、どのような添加量でも良いが、例えば処理剤1にモリブデン酸リチウム(LiMoO)を用いた場合、蓄電デバイスの初期放電容量、レート特性、電極密度、及び体積エネルギー密度に優れ、さらに、高温動作時のガス発生量や抵抗値増加を抑制する観点からは、基材のチタン酸リチウム粉末に対して処理剤1を0.12mmol/LTO100g以上28.8mmol/LTO100g以下の割合で添加すればよく、より好ましくは0.5mmol/LTO100g以上15.5mmol/LTO100g以下の割合であり、特に好ましいのは1.0mmol/LTO100g以上10.0mmol/LTO100g以下の割合である。
アルミニウムを含有する化合物(処理剤2)としては、特に限定されないが、例えば、モリブデンの酸化物、水酸化物、硫酸化合物、硝酸化合物、フッ化物、有機化合物、及びモリブデンを含有する金属塩化合物が挙げられる。具体的にはAlを含有する化合物として、例えば、酢酸アルミニウム、フッ化アルミニウムあるいは硫酸アルミニウムなどが挙げられる。なかでも、硫酸アルミニウム、その水和物、及びフッ化アルミニウムが好ましい。
アルミニウムを含有する化合物(処理剤2)の添加量は、チタン酸リチウム粉末中のモリブデンの含有率が本発明の範囲内に収まれば、どのような添加量でも良いが、例えば硫酸アルミニウム・14~18水和物(Al(SO・14~18HO)を用いた場合は、蓄電デバイスの初期放電容量、レート特性、電極密度、及び体積エネルギー密度に優れ、さらに、高温動作時のガス発生量や抵抗値増加を抑制する観点からは、基材のチタン酸リチウム粉末に対して処理剤2を0.16mmol/LTO100g以上63.5mmol/LTO100g以下の割合で添加すればよく、より好ましくは3.2mmol/LTO100g以上31.7mmol/LTO100g以下の割合であり、特に好ましいのは4.0mmol/LTO100g以上15.9mmol/LTO100g以下の割合である。
基材のチタン酸リチウム粉末とモリブデンを含有する化合物(処理剤1)、アルミニウムを含有する化合物(処理剤2)、さらには元素Mを含有する化合物(処理剤3)との混合方法に特に制限はなく、湿式混合または乾式混合のいずれの方法も採用することができるが、基材のチタン酸リチウム粒子の表面にモリブデンを含有する化合物(処理剤1)、あるいはアルミニウムを含有する化合物(処理剤2)を均一に分散させることが好ましく、その点においては湿式混合が好ましい。
乾式混合としては、例えば、ペイントミキサー、ヘンシェルミキサー、超音波分散装置、ホモミキサー、乳鉢、ボールミル、遠心式ボールミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、アトライター式の高速ボールミル、ビーズミル、ロールミル等を用いることができる。
湿式混合としては、水またはアルコール溶媒中に処理剤1と、さらに処理剤2と基材のチタン酸リチウム粉末を投入し、スラリー状態で混合させる。アルコール溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなど沸点が100℃以下のものが溶媒除去しやすい点で好ましい。また、回収、廃棄のしやすさから、工業的には水溶媒が好ましい。
溶媒量としては、処理剤1と、さらに処理剤2と基材のチタン酸リチウム粒子が十分に濡れた状態になる量ならば問題はないが、処理剤1と、あるいはさらに処理剤2と基材のチタン酸リチウム粒子は、溶媒中で均一に分散していることが好ましく、そのためには、溶媒中に溶解する、処理剤1、あるいはさらに処理剤2の溶解量が処理剤1、あるいはさらに処理剤2の溶媒への全投入量の50%以上になる溶媒量が好ましい。処理剤1や処理剤2の、溶媒への溶解量は温度が高いほど多くなることから、基材のチタン酸リチウム粉末と処理剤1、あるいはさらに処理剤2との溶媒中での混合は、加温しながら行うことが好ましく、また加温することで溶媒量も減量できるので、加温しながら混合する方法は、工業的に適した方法である。混合時の温度としては、40℃~100℃が好ましく、60℃~100℃がより好ましい。
湿式混合の場合は、熱処理方法にもよるが、混合工程の後に行う熱処理の前に溶媒を除去することが好ましい。溶媒の除去は、単純に溶媒を蒸発乾固させるだけでは特定の比表面積と一次粒子、二次粒子のD50を制御することは困難である。溶媒を蒸発乾固させる方法としては、スラリーを撹拌羽で撹拌しながら加熱し蒸発させる方法、コニカルドライヤーなど撹拌させながら乾燥が可能な乾燥装置を用いる方法及びスプレードライヤーを用いる方法が挙げられるが、スプレードライヤーを用いる方法が好ましい。理由として、従来の蒸発乾固とは異なり、スプレードライヤーの条件が二次粒子形態や表面処理工程に大きく影響するためである。スプレードライヤーの乾燥温度は180℃~300℃が好ましく、より好ましくは200℃~270℃、さらに好ましくは215℃~270℃である。乾燥温度という特定条件により、二次粒子の粉体物性範囲が異なるため、結果、初期放電容量、レート特性、電極密度、及び体積エネルギー密度を高めることが可能となる。
基材のチタン酸リチウム粉末と処理剤1と、さらに処理剤2と混合後には熱処理を行うことが好ましい。熱処理温度としては、モリブデンあるいはさらに元素Mが、基材のチタン酸リチウム粒子の、少なくとも表面領域に拡散する温度であって、基材のチタン酸リチウムが焼結することによる、比表面積の大幅な減少が発生しない温度が良い。熱処理温度の上限値としては700℃以下が好ましく、より好ましくは600℃以下である。熱処理温度の下限値としては、300℃以上が好ましく、より好ましくは400℃以上である。熱処理時間としては、好ましくは0.1時間~8時間であり、より好ましくは1時間~5時間である。元素Mが、基材のチタン酸リチウム粒子の、少なくとも表面領域に拡散する温度及び時間は、元素Mを含有する化合物によって反応性が異なるため、適宜設定するのが良い。
熱処理における加熱方法は特に限定されるものではない。利用できる熱処理炉としては、固定床式焼成炉、ローラーハース式焼成炉、メッシュベルト式焼成炉、流動床式焼成炉、ロータリーキルン式焼成炉などが挙げられる。熱処理時の雰囲気としては、大気雰囲気でも、窒素雰囲気などの不活性雰囲気のどちらでも良い。モリブデンあるいは元素Mを含有する化合物(処理剤2)としてモリブデンあるいは元素Mを含有する金属塩化合物を用いた場合は、粒子表面からアニオン種が除去されやすい大気雰囲気が好ましい。
以上のようにして得られた熱処理後のチタン酸リチウム粉末は、軽度の凝集はあるものの、粒子を破壊するような粉砕を行わなくても良く、そのため、熱処理後には、必要に応じて凝集を解す程度の解砕や分級を行えば良い。
本発明のチタン酸リチウム粉末は、表面処理工程で処理剤と混合した後に造粒して熱処理を行い、一次粒子が凝集した二次粒子を含む粉末にしても良い。造粒は二次粒子ができるのであれば、どのような方法でも良いが、スプレードライヤーが大量に処理できるため好ましい。
本発明のチタン酸リチウム粉末に含まれる水分量を低減させるために、熱処理工程で露点管理を行っても良い。熱処理後の粉末は、そのまま大気に晒すと粉末に含まれる水分量が増加するため、熱処理炉内での冷却時と熱処理後は、露点管理された環境下で粉末を扱うことが好ましい。熱処理後の粉末は、粒子を所望の最大粒径の範囲にするために必要に応じて分級を行っても良い。熱処理工程で露点管理をする場合は、発明のチタン酸リチウム粉末をアルミラミネート袋などで密閉した後に露点管理外の環境下に出すことが好ましい。露点管理下においても、熱処理後のチタン酸リチウム粉末の粉砕を行うと破砕面から水分を取り込みやすくなり、粉末に含まれる水分量が増加するため、熱処理を行った場合には粉砕を行わないことが好ましい。熱処理条件としては、温度と保持時間が特定の範囲にあることで二次粒子形態や表面処理工程に大きく影響する。熱処理温度としては、450℃以上が好ましく、550℃未満が好ましい。熱処理温度が550℃を超えると比表面積が大きく低下し、電池性能、特にレート特性が大幅に低下するためである。また保持時間は11時間以上が好ましい、熱時間が短い場合、粉末に含まれる水分量が増加に加え、粒子表面状態にも影響を与えると推測されるためである。
[活物質材料]
本発明の電極シートに用いる活物質材料は、本発明のチタン酸リチウム粉末を含むものである。本発明のチタン酸リチウム粉末以外の物質を1種又は2種以上含んでいてもよい。他の物質としては、例えば、炭素材料〔熱分解炭素類、コークス類、グラファイト類(人造黒鉛、天然黒鉛等)、有機高分子化合物燃焼体、炭素繊維〕、スズやスズ化合物、ケイ素やケイ素化合物が使用される。
[蓄電デバイス]
本発明の蓄電デバイスは、本発明の活物質材料を含む電極を備え、このような電極へのリチウムイオンのインターカレーション、脱インターカレーションを利用してエネルギーを貯蔵、放出するデバイスであって、例えば、ハイブリッドキャパシタやリチウム電池などが挙げられる。
[ハイブリッドキャパシタ]
前記ハイブリッドキャパシタとしては、正極に、活性炭など電気二重層キャパシタの電極材料と同様の物理的な吸着によって容量が形成される活物質や、グラファイトなど物理的な吸着とインターカレーション、脱インターカレーションによって容量が形成される活物質や、導電性高分子などレドックスにより容量が形成される活物質を使用し、負極に本発明の活物質材料を使用するデバイスである。本発明の活物質材料は、通常、前記ハイブリッドキャパシタの電極シートの形態にて用いられる。
[リチウム電池]
本発明のリチウム電池は、リチウム一次電池及びリチウム二次電池を総称する。また、本明細書において、リチウム二次電池という用語は、いわゆるリチウムイオン二次電池や全固体型リチウム二次電池も含む概念として用いる。
前記リチウム電池は、正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液、または固体電解質等により構成されているが、本発明の活物質材料は電極材料として用いることができる。本発明の活物質材料は、通常、前記リチウム電池の電極シートの形態にて用いられる。この活物質材料は、正極活物質及び負極活物質のいずれとして用いてもよいが、以下には負極活物質として用いた場合を説明する。
<負極>
負極は、負極集電体の片面または両面に、負極活物質(本発明の活物質材料)、導電剤及び結着剤を含む合剤層を有する。この合剤層は、通常、電極シートの形態とされる。多孔質体などで空孔を有する負極集電体の場合は、空孔中に負極活物質(本発明の活物質材料)、導電剤、結着剤を含む合剤層を有する。この合剤層が全固体電池に用いられる場合は、合剤層中にさらに固体電解質材料を含んでいてもよい。
前記負極用の導電剤としては、化学変化を起こさない電子伝導材料であれば特に制限はない。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛等)、人造黒鉛等のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チェンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、単相カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ(グラファイト層が多層同心円筒状)(非魚骨状)、カップ積層型カーボンナノチューブ(魚骨状(フィッシュボーン))、節型カーボンナノファイバー(非魚骨構造)、プレートレット型カーボンナノファイバー(トランプ状)等のカーボンナノチューブ類等が挙げられる。また、グラファイト類とカーボンブラック類とカーボンナノチューブ類を適宜混合して用いてもよい。特に限定されることはないが、カーボンブラック類の比表面積は好ましくは30m/g~3000m/gであり、さらに好ましくは50m/g~2000m/gである。また、グラファイト類の比表面積は、好ましくは30m/g~600m/gであり、さらに好ましくは50m/g~500m/gである。また、カーボンナノチューブ類のアスペクト比は、2~150であり、好ましくは2~100、より好ましくは2~50である。
導電剤の添加量は、活物質の比表面積や導電剤の種類や組合せにより異なるため、最適化を行うべきであるが、合剤層中に、好ましくは0.1質量%~10質量%であり、さらに好ましくは0.5質量%~5質量%である。0.1質量%未満では、合剤層の導電性が確保できなくなり、10質量%超では、活物質比率が減少し、合剤層の単位質量及び単位体積あたりの蓄電デバイスの放電容量が不十分になるため高容量化に適さない。
前記負極用の結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルピロリドン(PVP)、スチレンとブタジエンの共重合体(SBR)、アクリロニトリルとブタジエンの共重合体(NBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。特に限定されることはないが、ポリフッ化ビニリデンの分子量は、好ましくは2万~100万である。合剤層の結着性を確保する観点から、2.5万以上であることが好ましく、3万以上であることがより好ましく、5万以上であることがさらに好ましい。活物質と導電剤との接触を妨げずに導電性が確保する観点から、50万以下であることが好ましい。特に活物質の比表面積が10m/g以上の場合には、分子量は10万以上であることが好ましい。
前記結着剤の添加量は、活物質の比表面積や導電剤の種類や組合せにより異なるため、最適化を行うべきであるが、合剤層中に、好ましくは0.2質量%~15質量%である。結着性を高め合剤層の強度を確保する観点から、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることがさらに好ましい。活物質比率が減少し、合剤層の単位質量及び単位体積あたりの蓄電デバイスの放電容量を低減させない観点から、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
前記負極集電体としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、銅、チタン、焼成炭素、あるいはそれらの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀を被覆させたもの等が挙げられる。また、これらの材料の表面を酸化してもよく、表面処理により負極集電体表面に凹凸を付けてもよい。また、前記負極集電体の形態としては、例えば、シート、ネット、フォイル、フィルム、パンチングされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群、不織布の成形体などが挙げられる。前記負極集電体の形態として、多孔質アルミニウムが好ましい。前記多孔質アルミニウムの空孔率は80%以上、95%以下であり、好ましくは85%以上である。
前記負極の作製方法としては、負極活物質(本発明の活物質材料を含む)、導電剤及び結着剤を溶剤中に均一に混合し塗料化した後、前記負極集電体上に塗布し、乾燥、圧縮することによって得ることができる。多孔質体などで空孔を有する負極集電体の場合は、負極活物質(本発明の活物質材料)、導電剤及び結着剤を溶剤中に均一に混合した塗料を集電体の空孔に圧入して充填、または前記塗料中に空孔を有する集電体を浸潰し空孔中に拡散した後に、乾燥、圧縮することによって得ることができる。
負極活物質(本発明の活物質材料)、導電剤及び結着剤を溶剤中に均一に混合し塗料化する方法としては、例えば、プラネタリーミキサーなどの混練容器内で攪拌棒が自転しながら公転するタイプの混練機、二軸押し出し型混練機、遊星式撹拌脱泡装置、ビーズミル、高速旋回型ミキサ、粉体吸引連続溶解分散装置などを用いることができる。また、製造工程として、固形分濃度によって工程を分け、これらの装置を使い分けてもよい。
負極活物質(本発明の活物質材料)、導電剤及び結着剤を溶剤中に均一に混合するには、活物質の比表面積、導電剤の種類、結着剤の種類やこれらの組合せにより異なるため、最適化を行うべきであるが、プラネタリーミキサーなどの混練容器内で攪拌棒が自転しながら公転するタイプの混練機、二軸押し出し型混練機、遊星式撹拌脱泡装置などを用いる場合には、製造工程として固形分濃度によって工程を分け、固形分濃度が高い状態で混練した後、徐々に固形分濃度を下げ塗料の粘度を調製するのが好ましい。固形分濃度が高い状態としては、好ましくは60質量%~90質量%、さらに好ましくは60質量%~80質量%である。60質量%以上であればせん断力が得られるので好ましく、90質量%以下であれば装置の負荷が軽減されるので好ましく、80質量%以下であればより好ましい。
混合手順としては、特に限定されることはないが、負極活物質と導電剤と結着剤を同時に溶剤中で混合する方法、導電剤と結着剤をあらかじめ溶剤中で混合した後に負極活物質を追加混合する方法、負極活物質スラリーと導電剤スラリーと結着剤溶液をあらかじめ作製し、それぞれを混合する方法などが挙げられる。これらの中でも均一に分散させるには、導電剤と結着剤をあらかじめ溶剤中で混合した後に負極活物質を追加混合する方法及び負極活物質スラリーと導電剤スラリーと結着剤溶液をあらかじめ作製し、それぞれを混合する方法が好ましい。
溶剤としては、有機溶媒を用いることができる。有機溶剤としては、1-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなど非プロトン性有機溶媒を単独、または2種類以上混合したものが挙げられ、好ましくは1-メチル-2-ピロリドンである。
溶剤に有機溶剤を用いる場合には、結着剤をあらかじめ有機溶剤に溶解させて使用するのが好ましい。
<正極>
正極は、正極集電体の片面または両面に、正極活物質、導電剤及び結着剤を含む合剤層を有する。
前記正極活物質としては、リチウムを吸蔵及び放出可能な材料が使用され、例えば、活物質としては、コバルト、マンガン、ニッケルを含有するリチウムとの複合金属酸化物やリチウム含有オリビン型リン酸塩などが挙げられ、これらの正極活物質は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。このような複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO、LiMn、LiNiO、LiCo1-xNi(0.01<x<1)、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiNi1/2Mn3/2等が挙げられ、これらのリチウム複合酸化物の一部は他元素で置換してもよく、コバルト、マンガン、ニッケルの一部をB、Nb、Sn、Mg、Fe、Ti、Al、Zr、Cr、V、Ga、Zn、Cu、Bi、Mo、La等の少なくとも1種以上の元素で置換したり、Oの一部をSやFで置換したり、あるいは、これらの他元素を含有する化合物を被覆することができる。リチウム含有オリビン型リン酸塩としては、例えば、LiFePO、LiCoPO、LiNiPO、LiMnPO、LiFe1-xMxPO(MはCo、Ni、Mn、Cu、Zn、及びCdから選ばれる少なくとも1種であり、xは、0≦x≦0.5である。)等が挙げられる。
前記正極用の導電剤及び結着剤としては、負極と同様のものが挙げられる。前記正極集電体としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、焼成炭素、アルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀を表面処理させたもの等が挙げられる。これらの材料の表面を酸化してもよく、表面処理により正極集電体表面に凹凸を付けてもよい。また、集電体の形態としては、例えば、シート、ネット、フォイル、フィルム、パンチングされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群、不織布の成形体などが挙げられる。
<非水電解液>
非水電解液は、非水溶媒中に電解質塩を溶解させたものである。この非水電解液には特に制限は無く、種々のものを用いることができる。
前記電解質塩としては、非水電解質に溶解するものが用いられ、例えば、LiPF、LiBF、LiPO、LiN(SOF)、LiClO等の無機リチウム塩、LiN(SOCF、LiN(SO、LiCFSO、LiC(SOCF、LiPF(CF、LiPF(C、LiPF(CF、LiPF(iso-C、LiPF(iso-C)等の鎖状のフッ化アルキル基を含有するリチウム塩や、(CF(SONLi、(CF(SONLi等の環状のフッ化アルキレン鎖を含有するリチウム塩、ビス[オキサレート-O,O’]ホウ酸リチウムやジフルオロ[オキサレート-O,O’]ホウ酸リチウム等のオキサレート錯体をアニオンとするリチウム塩が挙げられる。これらの中でも、特に好ましい電解質塩は、LiPF、LiBF、LiPO、及びLiN(SOF)であり、最も好ましい電解質塩はLiPFである。これらの電解質塩は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、これらの電解質塩の好適な組み合わせとしては、LiPFを含み、更にLiBF、LiPO、及びLiN(SOF)から選ばれる少なくとも1種のリチウム塩が非水電解液中に含まれている場合が好ましい。
これら全電解質塩が溶解されて使用される濃度は、前記の非水溶媒に対して、通常0.3M以上が好ましく、0.5M以上がより好ましく、0.7M以上が更に好ましい。またその上限は、2.5M以下が好ましく、2.0M以下がより好ましく、1.5M以下が更に好ましい。
一方、前記非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状カーボネート、鎖状エステル、エーテル、アミド、リン酸エステル、スルホン、ラクトン、ニトリル、S=O結合含有化合物等が挙げられ、環状カーボネートを含むことが好ましい。なお、「鎖状エステル」なる用語は、鎖状カーボネート及び鎖状カルボン酸エステルを含む概念として用いる。
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(FEC)、トランスもしくはシス-4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(以下、両者を総称して「DFEC」という)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、及び4-エチニル-1,3-ジオキソラン-2-オン(EEC)から選ばれる一種又は二種以上が挙げられ、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン及び4-エチニル-1,3-ジオキソラン-2-オン(EEC)から選ばれる一種以上が、蓄電デバイスの充電レート特性の向上や高温動作時のガス発生量を抑制する観点からより好適であり、プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート及び2,3-ブチレンカーボネートから選ばれるアルキレン鎖を有する環状カーボネートの一種以上が更に好適である。全環状カーボネート中のアルキレン鎖を有する環状カーボネートの割合が55体積%~100体積%であることが好ましく、60体積%~90体積%であることが更に好ましい。
したがって、前記非水電解液としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン及び4-エチニル-1,3-ジオキソラン-2-オンから選ばれる一種以上の環状カーボネートを含む非水溶媒に、LiPF、LiBF、LiPO、及びLiN(SOF)から選ばれる少なくとも一種のリチウム塩を含む電解質塩を溶解させた非水電解液を用いることが好ましく、前記環状カーボネートとしては、プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート及び2,3-ブチレンカーボネートから選ばれるアルキレン鎖を有する環状カーボネートの一種以上が更に好ましい。
また、特に、全電解質塩の濃度が0.5M~2.0Mであり、前記電解質塩として、少なくともLiPFを含み、更に0.001M~1MのLiBF、LiPO、及びLiN(SOF)から選ばれる少なくとも一種のリチウム塩が含まれる非水電解液を用いることが好ましい。LiPF以外のリチウム塩が非水溶媒中に占める割合が0.001M以上であると、蓄電デバイスの充電レート特性の向上や高温動作時のガス発生量の抑制効果が発揮されやすく、1.0M以下であると蓄電デバイスの充電レート特性の向上や高温動作時のガス発生量の抑制効果が低下する懸念が少ないので好ましい。LiPF以外のリチウム塩が非水溶媒中に占める割合は、好ましくは0.01M以上、特に好ましくは0.03M以上、最も好ましくは0.04M以上である。その上限は、好ましくは0.8M以下、さらに好ましくは0.6M以下、特に好ましくは0.4M以下である。
また、前記非水溶媒は、適切な物性を達成するために、混合して使用されることが好ましい。その組合せは、例えば、環状カーボネートと鎖状カーボネートの組合せ、環状カーボネートと鎖状カーボネートとラクトンとの組合せ、環状カーボネートと鎖状カーボネートとエーテルの組合せ、環状カーボネートと鎖状カーボネートと鎖状エステルとの組合せ、環状カーボネートと鎖状カーボネートとニトリルとの組合せ、環状カーボネート類と鎖状カーボネートとS=O結合含有化合物との組合せ等が挙げられる。
鎖状エステルとしては、メチルエチルカーボネート(MEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、メチルイソプロピルカーボネート(MIPC)、メチルブチルカーボネート、及びエチルプロピルカーボネートから選ばれる1種又は2種以上の非対称鎖状カーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート、及びジブチルカーボネートから選ばれる1種又は2種以上の対称鎖状カーボネート、ピバリン酸メチル、ピバリン酸エチル、ピバリン酸プロピル等のピバリン酸エステル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酢酸メチル、及び酢酸エチル(EA)から選ばれる1種又は2種以上の鎖状カルボン酸エステルが好適に挙げられる。
前記鎖状エステルの中でも、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、プロピオン酸メチル、酢酸メチル及び酢酸エチル(EA)から選ばれるメチル基を有する鎖状エステルが好ましく、特にメチル基を有する鎖状カーボネートが好ましい。
また、鎖状カーボネートを用いる場合には、2種以上を用いることが好ましい。さらに対称鎖状カーボネートと非対称鎖状カーボネートの両方が含まれるとより好ましく、対称鎖状カーボネートの含有率が非対称鎖状カーボネートより多く含まれると更に好ましい。
鎖状エステルの含有率は、特に制限されないが、非水溶媒の総体積に対して、60体積%~90体積%の範囲で用いるのが好ましい。該含有率が60体積%以上であれば非水電解液の粘度が高くなりすぎず、90体積%以下であれば非水電解液の電気伝導度が低下して蓄電デバイスの充電レート特性の向上や高温動作時のガス発生量の抑制効果が低下するおそれが少ないので上記範囲であることが好ましい。
鎖状カーボネート中に対称鎖状カーボネートが占める体積の割合は、51体積%以上が好ましく、55体積%以上がより好ましい。その上限としては、95体積%以下がより好ましく、85体積%以下であると更に好ましい。対称鎖状カーボネートにジメチルカーボネートが含まれると特に好ましい。また、非対称鎖状カーボネートはメチル基を有するとより好ましく、メチルエチルカーボネートが特に好ましい。上記の場合に蓄電デバイスの充電レート特性の向上や高温動作時のガス発生量の抑制効果が向上するので好ましい。
環状カーボネートと鎖状エステルの割合は、蓄電デバイスの充電レート特性の向上や高温動作時のガス発生量の抑制効果を高める観点から、環状カーボネート:鎖状エステル(体積比)が10:90~45:55が好ましく、15:85~40:60がより好ましく、20:80~35:65が特に好ましい。
<リチウム電池の構造>
本発明のリチウム電池の構造は特に限定されるものではなく、正極、負極及び単層又は複層のセパレータを有するコイン電池、さらに、正極、負極及びロール状のセパレータを有する円筒型電池や角型電池等が一例として挙げられる。
前記セパレータとしては、大きなイオン透過度を持ち、所定の機械的強度を持った絶縁性の薄膜が用いられる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース紙、ガラス繊維紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド微多孔膜などが挙げられ、2種以上を組み合わせて構成された多層膜としたものも用いることができる。またこれらのセパレータ表面にPVDF、シリコン樹脂、ゴム系樹脂などの樹脂や、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化マグネシウムなどの金属酸化物の粒子などをコーティングすることもできる。前記セパレータの孔径としては、一般的に電池用として有用な範囲であればよく、例えば、0.01μm~10μmである。前記セパレータの厚みとしては、一般的な電池用の範囲であればよく、例えば5μm~300μmである。
<固体電解質>
固体電解質とは、その内部においてイオンを移動させることができる固体状の電解質のことである。特に、無機固体電解質は定常状態では固体であるため、通常カチオンおよびアニオンに解離または遊離していない。無機固体電解質は周期律表第1族に属する金属イオンの伝導性を有するものであれば特に限定されず電子伝導性をほとんど有さないものが一般的である。無機固体電解質は硫化物無機固体電解質と酸化物無機固体電解質が代表例として挙げられる。特に、高いイオン電導性を有し、室温での加圧のみで、粒界の少ない緻密な成形体が形成できる点で、硫化物固体電解質が好ましく用いられる。
硫化物無機固体電解質は非晶質ガラスであっても良く、結晶化ガラスであっても良く、結晶性材料であっても良い。硫化物無機固体電解質として、具体的に以下の組み合わせが好適に挙げられるが特に限定されない。
LiS-P、LiS-P-Al、LiS-GeS、LiS-Ga、LiS-GeS-Ga、LiS-GeS-P、LiS-GeS-Sb、LiS-GeS-Al、LiS-SiS、LiS-Al、LiS-SiS-Al、LiS-SiS-P、Li10GeP12
前記組み合わせの中でも、LiS-Pを組み合わせて製造されるLPSガラ
スおよびLPSガラスセラミックスが好ましい。また上記以外の硫化物無機固体電解質として、LiPSClやLiPSBrなどのアルジェロダイト型固体電解質も好適に挙げられる。
酸化物系無機固体電解質は、酸素原子を含有し、かつ、周期律表第1族に属する金属イ
オン電導性を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。
酸化物無機固体電解質としては、例えば、LISICON(Lithium super ionic conductor)型結晶構造を有するLi3.5Zn0.25GeO、ペロブスカイト型結晶構造を有するLa0.55Li0.35TiO、NASICON(Natrium super ionic conductor)型結晶構造を有するLiTi12、ガーネット型結晶構造を有するLiLaZr12(LLZ)、リン酸リチウム(LiPO)、リン酸リチウムの酸素の一部を窒素で置換したLiPON、LiBO-LiSO、LiO-B-P、LiO-SiO、またはLiBaLaTa12等が好適に挙げられる。
無機固体電解質の体積平均粒径は特に限定されないが、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。上限としては、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。
次に、実施例及び比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から容易に類推可能な様々な組み合わせを包含する。
[実施例1-1]
<原料調製工程>
Tiに対するLiの原子比Li/Tiが0.83になるように、LiCO(平均粒径 4.6μm)とアナターゼ型TiO(比表面積10m/g)を秤量して得た原料粉末に、スラリーの固形分濃度が41質量%となるようにイオン交換水を加えて撹拌し原料混合スラリーを作製した。この原料混合スラリーを、ビーズミル(ウィリー・エ・バッコーフェン社製、形式:ダイノーミル KD-20BC型、アジテーター材質:ポリウレタン、ベッセル内面材質:ジルコニア)を使用して、ジルコニア製のビーズ(外径:0.65mm)をベッセルに80体積%充填し、アジテーター周速13m/s、スラリーフィード速度55kg/hrで、ベッセル内圧が0.02~0.03MPaになるように制御しながら処理して、原料粉末を湿式混合・粉砕した。
<焼成工程>
得られた混合スラリーを、付着防止機構を備えたロータリーキルン式焼成炉(炉芯管長さ:4m、炉芯管直径:30cm、外部加熱式)を用い、焼成炉の原料供給側から炉心管内に導入し、窒素雰囲気中で乾燥し、焼成した。このときの、炉心管の水平方向からの傾斜角度を2.5度、炉心管の回転速度を20rpm、焼成物回収側から炉心管内に導入する窒素の流速を20L/分として、炉心管の加熱温度を、原料供給側:600℃、中央部:880℃、焼成物回収側:880℃とし、焼成物の880℃での保持時間を30分とした。
<後処理工程>
炉心管の焼成物回収側から回収した焼成物を、ハンマーミル(ダルトン製、AIIW-5型)を使用して、スクリーン目開き:0.5mm、回転数:8,000rpm、粉体フィード速度:25kg/hrの条件で解砕した。
<表面処理工程>
解砕した焼成粉末に、スラリーの固形分濃度が40質量%となるようにイオン交換水を加え撹拌し、解砕した焼成粉末100gに対して、処理剤1としてモリブデン酸リチウム(LiMoO)2.75mmolと処理剤2として硫酸アルミニウム16水和物(Al(SO・16HO)5.08mmolを加え、混合スラリーを作製した。この混合スラリーを、スプレードライヤー(大河原化工機株式会社製L-8i)を使用して、アトマイザ回転数25000rpm、乾燥温度235℃で、噴霧・乾燥し、造粒した。次に篩を通過した粉末をアルミナ製の匣鉢に入れ、温度25℃で露点が-20℃以下に管理された回収ボックスを出口側に備えたメッシュベルト搬送式連続炉で、500℃で1時間熱処理した。回収ボックス内で熱処理後の粉末を冷却して、篩で分級(スクリーン目開き:53μm)し、篩を通過した粉末をアルミラミネート袋に収集して密閉した後、回収ボックスから取り出し、チタン酸リチウム粉末を製造した。
[比較例1-1]
焼成工程において、炉心管の加熱温度を、中央部:840℃、焼成物回収側:840℃とし、焼成物の840℃での保持時間を30分とし、表面処理工程において、処理剤1を添加せず、処理剤2として硫酸アルミニウム16水和物(Al(SO・16HO)を表1に示すように添加したこと以外は実施例1と同様にチタン酸リチウム粉末を製造した。
[比較例1-2]
焼成工程において、炉心管の加熱温度を、中央部:840℃、焼成物回収側:840℃とし、焼成物の840℃での保持時間を30分とし、硫酸アルミニウム16水和物(Al(SO・16HO)を表1に示すように添加した以外は、実施例1-1と同様にチタン酸リチウム粉末を製造した。
[比較例1-3]
表面処理工程において、処理剤1および処理剤2を添加しなかったこと以外は、比較例1-2と同様にチタン酸リチウム粉末を製造した。
[金属元素の含有率の測定]
実施例1-1、2-1~2-5、比較例1-1~1-3、2-1~2-3のチタン酸リチウム粉末(以下、各実施例、比較例のチタン酸リチウム粉末と記すことがある)に含まれる金属元素の含有率を以下のようにして測定した。
<蛍光X線分析(XRF):モリブデン、アルミニウム、不純物含有率の同定>
蛍光X線誘分析装置(エスアイアイ・テクノロジー株式会社製、商品名「SPS5100」)を用いて、各実施例、比較例のチタン酸リチウム粉末に含まれる元素を定量分析した。測定サンプルは、精秤した試料を硝酸とフッ化水素酸を入れて密栓し、マイクロ波を照射して加熱分解後、超純水で定容して検液として用いた。ICP-AESから求めた元素の含有率の質量割合から算出した。なお、金属不純物量は、鉄(Fe)、クロム(Cr),ニッケル(Ni)の含有量の合計とする。
[粉末物性の測定]
各実施例、比較例のチタン酸リチウム粉末の各種物性を以下のようにして測定した。
<比表面積の測定>
各実施例、比較例のチタン酸リチウム粉末の比表面積(m/g)は、全自動
BET比表面積測定装置(株式会社マウンテック製、商品名「Macsorb HM model-1208」)を使用して、吸着ガスは窒素ガスを使用した。測定サンプル粉末を0.5g秤量し、φ12標準セル(HM1201-031)に入れ、100℃真空下で0.5時間脱気した後、BET一点法で測定した。
<一次粒子及び二次粒子のD50の算出:乾式レーザー回折散乱法>
各実施例、比較例のチタン酸リチウム粉末のD50は、レーザー回折・散乱型粒度分布測定機(日機装株式会社製、マイクロトラックMT3300EXII)を使用して測定した粒度分布曲線より算出した。50mlのイオン交換水を測定溶媒として収容した容器に50mgの試料を投入し、目視で粉が測定溶媒中に均一に分散したと分かるくらいまで容器を手で振り、容器を測定セルに収容して測定した。解砕処理は、装置内の超音波器で超音波(30W、3s)をかけた。さらに測定溶媒をスラリーの透過率が適正範囲(装置の緑のバーで表示される範囲)になるまで加えて粒度分布測定を行った。得られた粒度分布曲線から、解砕前後の混合粉末のD50を算出した。なお、解砕前D50が二次粒子のD50、解砕後D50が一次粒子のD50に相当する。
<1-メチル-2-ピロリドン吸油量の測定>
各実施例、比較例のチタン酸リチウム粉末の1-メチル-2-ピロリドン吸油量は、Absorptometer C(Brabender社製)を使用して測定した。チタン酸リチウム粉末を20g計量し装置ケーシングに投入後、撹拌羽を回転させ均一にした後、回転数125rpmの状態で1-メチル-2-ピロリドンを滴下速度4.0ml/minで加えたのち、自動運転をスタートさせた。トルク上昇後に降下し、トルク値が0mNmになった時点で測定を終了した。得られたグラフから最大トルク値に相当する吸油量を読み取ることで測定した。
<pHの測定>
各実施例、比較例のチタン酸リチウム粉末のpHは、pHメーター D-51(堀場製作所製)を使用して測定した。窒素雰囲気中でチタン酸リチウム粉末を5.0g、純水45.0gを投入した混合液を作製し、液温25℃で5分間撹拌後に、本混合液のpHを測定した。
<X線回折測定>
各実施例、比較例のチタン酸リチウム粉末のX線回折測定を行った。測定装置として、CuKα線を用いたX線回折装置(株式会社リガク製、MiniFlex600型)を用いた。X線回折測定の測定条件は、測定角度範囲(2θ):10°~90°、ステップ間隔:0.01°、測定時間:0.25秒/ステップ、線源:CuKα線、管球の電圧:40V、電流:15mAとした。リートベルト解析法にて構造精密化を行い、LiTi12以外の結晶質成分として、Li0.6Ti3.4の有無を確認した。
[電池特性の評価]
各実施例、比較例のチタン酸リチウム粉末を用いてコイン型電池を作製し、それらの電池特性を評価した。評価結果を表1、3に示す。
<負極シートの作製>
負極シートは、室温25℃、露点-20℃以下に管理された部屋で次のようにして作製した。各実施例のチタン酸リチウム粉末を、温度25℃、露点-20℃以下に管理された部屋でアルミラミネート袋から取り出した。取り出した各実施例のチタン酸リチウム粉末を活物質として90質量%、アセチレンブラックを導電剤として5質量%、ポリフッ化ビニリデンを結着剤として5質量%の割合で、次のように混合して塗料を作製した。あらかじめ1-メチル-2-ピロリドンに溶解させたポリフッ化ビニリデンとアセチレンブラックと1-メチル-2-ピロリドンを遊星式撹拌脱泡装置にて混合した後、チタン酸リチウム粉末を加え、全固形分濃度が64質量%となるように調製して、遊星式撹拌脱泡装置にて混合した。その後、1-メチル-2-ピロリドンを加え全固形分濃度が50質量%となるように調製し遊星式撹拌脱泡装置にて混合して塗料を調製した。得られた塗料をアルミニウム箔上に塗布し乾燥させて、後述のコイン電池に用いる負極片面シート、及び後述のラミネート電池に用いる負極両面シートを作製した。なお、塗工時の目標目付けは7.5mg/cmとした。
<電極密度の測定>
上記の要領で塗工した負極片面シートをロールプレス機(ロールφ60×150mm、プレス圧40MPa相当)でプレスした後、活物質層の密度を“電極密度”とし測定した。評価結果を表1に示す。電極密度が高いと、一定体積当たりに、より多くの活物質を詰めることができ、結果、電池として利用できる容量が増えるため好ましい。
<正極シートの作製>
活物質としてニッケルコバルトマンガン酸リチウム粉末を用いたこと以外は、活物質、導電剤及び結着剤の比率を含めて、前述の<負極シートの作製>にて説明した方法と同じ方法で、正極片面シートを作製した。
<電解液の調製>
特性評価用の電池に用いる電解液は、次のように調製した。温度25℃で露点-70℃以下に管理されたアルゴングローブボックス内で、エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC)=1:2(体積比)の非水溶媒を調製し、これに電解質塩としてLiPFを1Mの濃度になるように溶解して後述のコイン電池用電解液を調製した。同様にプロピレンカーボネート(PC):ジエチルカーボネート(DEC)=1:2(体積比)の非水溶媒を調製し、これに電解質塩としてLiPFを1.3Mの濃度になるように溶解して後述のラミネート電池用電解液を調製した。
<コイン電池の作製>
前述の方法で作製した負極片面シートを直径14mmの円形に打ち抜き、2t/cmの圧力でプレス加工した後、120℃で5時間真空乾燥することによって評価電極を作製した。作製した評価電極と金属リチウム(厚み0.5mm、直径16mmの円形に成形したもの)をグラスフィルター(ADVANTEC製GA-100とワットマン製GF/Cを各1枚ずつ)を介して対向させ、前述の<電解液の調製>にて説明した方法で調製した非水電解液を加えて封止することによって、2032型コイン型電池を作製した。
<ラミネート電池の作製>
ラミネート電池は、室温25℃、露点-40℃以下に管理された部屋で次のようにして作製した。前記負極両面シートを2t/cmの圧力でプレス加工した後、リード線接続部分を有する負極を作製した。前記正極両面シートを2t/cmの圧力でプレス加工した後、リード線接続部分を有する正極を作製した。作製した負極と正極は、150℃で12時間真空乾燥した。真空乾燥後の正極と負極を、セパレータ(宇部興産製、UPZ210)を介して対向させ、積層し、アルミ箔のリード線を正極、負極それぞれに接続し、前述の<電解液の調製>にて説明した方法で調製した、ラミネート電池用電解液を加えてアルミラミネートで真空封止することで、評価用のラミネート電池を作製した。このとき電池の容量は350mAhで負極と正極の容量の比(負極容量/正極容量)は1.2であった。
<初期放電容量、体積エネルギー密度、レート特性の測定>
25℃の恒温槽内にて、上述の<コイン電池の作製>で説明した方法で作製したコイン型電池に、評価電極にLiが吸蔵される方向を充電として、0.2mA/cmの電流密度で1Vまで充電を行い、さらに1Vで充電電流が0.05mA/cmの電流密度になるまで充電させる定電流定電圧充電を行った後、0.2mA/cmの電流密度で2Vまで放電させる定電流放電を3サイクル行った。3サイクル目の放電容量(mAh)をチタン酸リチウムの重量で割ることで、初期放電容量(mAh/g)として求めた。この初期放電容量に、前記で求めた電極密度をかけて、体積エネルギー密度を求めた。体積エネルギー密度が高いと、電池として一定体積あたりに利用できる容量が増えるため、電池の小型化に繋がり好ましい。次に、初期放電容量の1Cに相当する電流で1Vまで充電した後、5Cの電流で2Vまで放電させて、5C放電容量を求めた。その5C放電容量を初期放電容量で除することでレート特性(%)を算出した。チタン酸リチウム粉末の5Cレート容量率が高いと、蓄電デバイスの電極材料として適用した場合に、蓄電デバイスの充電レート特性の向上が期待できる。評価結果を表1に示す。1CのCとは充放電するときの電流値を表す。例えば、1Cは理論容量を1/1時間で完全放電(もしくは完全充電)できる電流値を指し、0.1Cなら理論容量を1/0.1時間で完全放電(もしくは完全充電)できる電流値を指す。
<60℃ 50サイクル後のガス発生量の測定>
25℃の恒温槽内にて、前述の<ラミネート電池の作製>で説明した方法で作製したラミネート電池に、0.2Cの電流で2.75Vまで充電させ、さらに2.75Vで充電電流が0.05Cの電流になるまで充電させる定電流定電圧充電を行った後、0.2Cの電流で1.4Vまで放電させる定電流放電を3サイクル繰り返した。その後、ラミネート電池の体積をアルキメデス法によって測定し、ラミネート電池の初期体積(以下、初期体積と記すことがある)とした。
次に、60℃の恒温槽内にて、1Cの電流で2.75Vまで充電させ、さらに2.75Vで充電電流が0.05Cの電流になるまで充電させる定電流定電圧充電を行った後、1Cの電流で1.4Vまで放電させる定電流放電を、50サイクル繰り返すサイクル試験を行った。
50サイクルのサイクル試験後、ラミネート電池の体積をアルキメデス法によって測定し、ラミネート電池のサイクル試験後体積(以下、サイクル試験後体積と記すことがある)とした。サイクル試験後体積から初期体積を差し引いて、ガス発生量(ml)を求め、電池容量1000mAhあたりに換算して、50サイクル試験後のガス発生量(ml/Ah)とした。比較例1-2でのガス発生量を100%とした際の相対値を表1に示す。(本明細書では、60℃サイクルガス発生量(%)と記すことがある)
<60℃ 長期保存後の電池抵抗値の測定>
25℃の恒温槽内にて、前述の<ラミネート電池の作製>で説明した方法で作製したラミネート電池に、0.2Cの電流で2.75Vまで充電させた状態で、60℃の恒温槽にて30日間の保存試験を行った。保存試験が終了した後、電池を取り出し、25℃の恒温槽内にて、交流インピーダンス測定を行った。周波数1kHzに相当する抵抗値(Ω)を読み取った。比較例1-2での保存後抵抗値を100%とした際の相対値を表1に示す。(本明細書では、60℃充電保存後抵抗値%と記すことがある)
Figure 2022094799000002
<評価結果>
実施例1-1のチタン酸リチウム粉末を用いた電極は、初期放電容量、レート特性、電極密度、及び体積エネルギー密度に優れ、さらに、高温動作時のガス発生量や抵抗値増加を顕著に抑制することができる結果となった。一方、実施例1-1と同様の製法で合成したが表面にモリブデンやアルミニウムを両方含まないチタン酸リチウム粉末を用いた場合(比較例1-1、1-3)には、高温作動時のガス発生量や抵抗値が増える結果となった。また、表面にモリブデンおよびアルミニウムを含むが実施例1-1と異なる製法で合成した1-メチル-2-ピロリドン吸油量が71mL/100gより大きいチタン酸リチウム粉末を用いた場合(比較例1-2)には、電極密度が小さくなり、体積エネルギー密度が低くなる結果となった。この結果から、モリブデンおよびアルミニウムを含有し、特定の1-メチル-2-ピロリドン吸油量を示すチタン酸リチウムにおいて、特に良好な電池特性を示すことが分かった。一次粒子のD50や二次粒子のD50のみに依存しておらず、表面状態の変化を反映した吸油量が変化することで、性能が大きく改善したと推測される。
<X線光電子分光(XPS)分析の結果>
実施例1-1、比較例1-2のチタン酸リチウム粉末に関して、アルバック・ファイ製PHI5000 走査型X線光電子分光装置を用いて、一次粒子表面に存在するMoの価数分布を測定した。各試料をAl板にサンプリングした後、X線源AlKα(モノクロ, 1486.6eV,50W)、分析領域200μmφ、帯電中和機構利用(電子銃+Arイオン)で測定を実施した。得られたMo3dスペクトルについて、ピーク分離計算(MATLAB(登録商標)上のピーク分離プログラムを利用)を行った結果を以下に示す。
Figure 2022094799000003
実施例1-1と比較例1-2のチタン酸リチウム粉末に関しては、Mo6+、Mo5+、Mo4+の価数分布割合に差があることを確認した。Moの価数分布に関するピーク分離の一例を図1に示す。
[チタン酸リチウム粉末の製造プロセス条件の影響]
[実施例2-1~2-5、比較例2-1~2-3]
原料調製と表面処理工程ならびに二次粒子工程を表3に記載の条件で示すようにしたこと以外は実施例1-1と同様にチタン酸リチウム粉末を製造した。
Figure 2022094799000004
<評価結果>
実施例2-1~2-5のチタン酸リチウム粉末を用いた電極は、表面にモリブデンおよびアルミニウムを含有し、1-メチル-2-ピロリドン吸油量を特定の範囲に制御することで、電極密度、初期放電容量、体積エネルギー密度、レート特性を向上させ、電池特性を維持できる傾向が分かった。一方、比較例2-1~2-3のチタン酸リチウム粉末は、電極密度が低い特性を示し、体積エネルギー密度の向上には至らなかった。特に、比表面積が6.1m/g以下、一次粒子のD50が0.7μm以上、二次粒子のD50が11μm以上の場合に、高い電極密度を示すことが分かった。なお、実施例2-1~2-5の電池の長期特性は、実施例1-1と同様の傾向を示した。
本発明で得られるチタン酸リチウム粉末は、電極密度や体積エネルギー密度を向上させ、高温動作時のガス発生量と抵抗値増加を抑制できるので、リチウムイオン二次電池の電極活物質として有用であり、また、このチタン酸リチウムを電極活物質として用いるリチウムイオン二次電池は、安定した高速充放電ができるため、自動車や電子機器等、各種機器の駆動用またはバックアップ用、家庭や事務所等での夜間電力貯蔵用の二次電池などの蓄電デバイスとして有用である。

Claims (6)

  1. LiTi12を主成分とするチタン酸リチウム粉末であって、前記チタン酸リチウム粉末が、チタン酸リチウムの一次粒子と二次粒子を含み、1-メチル-2-ピロリドン吸油量が71mL/100g以下であり、前記一次粒子の表面にモリブデン(Mo)およびアルミニウム(Al)が存在することを特徴とするチタン酸リチウム粉末。
  2. 前記チタン酸リチウム粉末の比表面積が6.1m/g以下であることを特徴とする請求項1に記載のチタン酸リチウム粉末。
  3. レーザー回折散乱法による体積基準粒度分布において体積累積が50%に相当する一次粒子の粒径D50が0.7μm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のチタン酸リチウム粉末。
  4. レーザー回折散乱法による体積基準粒度分布において体積累積が50%に相当する二次粒子の粒径D50が11μm以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のチタン酸リチウム粉末。
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載のチタン酸リチウム粉末を含むことを特徴とする電極シート。
  6. 請求項5に記載の電極シートを含むことを特徴とする蓄電デバイス。
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