JP2022092135A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】低周波異音の発生を抑制する内燃機関の制御装置を提供することを課題とする。【解決手段】内燃機関に設けられたノックセンサの検出結果に基づいて算出された点火時期の遅角量が所定値よりも大きいか否かを判定する遅角量判定部と、点火プラグへのデポジットの付着度合いを示す比率学習値が所定値よりも大きいか否かを判定する比率学習値判定部と、吸気温度が所定値よりも大きいか否かを判定する吸気温度判定部と、前記遅角量判定部、前記比率学習値判定部、及び吸気温度判定部により肯定判定がなされた場合、前記内燃機関の燃焼室の温度を低下させるための温度低下処理を実行する実行部と、を備えた内燃機関の制御装置。【選択図】図3
Description
本発明は、内燃機関の制御装置に関する。
ノックセンサの検出結果に基づいて点火時期を遅角する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
点火時期がTDC(Top Dead Center)近傍であり、内燃機関の圧縮比が高い状態にあり、吸気温度が高い場合には、ノックセンサでは検出しにくい低周波の異音が発生するおそれがある。
そこで本発明は、低周波異音の発生を抑制する内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
上記目的は、内燃機関に設けられたノックセンサの検出結果に基づいて算出された点火時期の遅角量が所定値よりも大きいか否かを判定する遅角量判定部と、点火プラグへのデポジットの付着度合いを示す比率学習値が所定値よりも大きいか否かを判定する比率学習値判定部と、吸気温度が所定値よりも大きいか否かを判定する吸気温度判定部と、前記遅角量判定部、前記比率学習値判定部、及び吸気温度判定部により肯定判定がなされた場合、前記内燃機関の燃焼室の温度を低下させるための温度低下処理を実行する実行部と、を備えた内燃機関の制御装置によって達成できる。
本発明によれば、低周波異音の発生を抑制する内燃機関の制御装置を提供できる。
図1は、内燃機関10の概略構成を示した模式図である。図1に示すように、内燃機関10の燃焼室11には、吸気通路12を通じて空気が吸入されるとともに、燃料噴射弁13から噴射された燃料が供給される。そして、吸入空気と噴射燃料とからなる混合気に対して点火プラグ14による点火が行われると、その混合気が燃焼してピストン15が往復運動し、内燃機関10のクランクシャフト16が回転する。燃焼後の混合気は排気として内燃機関10の燃焼室11から排気通路17に送り出される。
内燃機関10のシリンダブロックには、オイルジェット21が設けられている。オイルジェット21はオイルポンプ20によって不図示のオイルパンから汲み上げられた潤滑油の一部をピストン15の裏面に向かって噴射する。これによりピストン15を冷却することができる。なお、オイルポンプ20は、吐出量を変更することのできる可変容量型のオイルポンプであり、オイルジェット21には潤滑油の噴射を停止させる制御弁が設けられている。
ECU(Electronic Control Unit)30は、内燃機関10の運転のための各種制御を実行する。このECU30は、各種制御に関係する各種の演算処理を実行する中央処理装置、その演算に必要なプログラムやデータが記憶された不揮発性メモリ、中央処理装置の演算結果が一時的に記憶される揮発性メモリ、外部との間で信号を入力及び出力するための入力ポート及び出力ポート等を備えている。
ECU30の入力ポートには各種のセンサ類が接続されている。そうしたセンサ類としては、例えば、アクセルペダル18の踏み込み量(以下、「アクセル踏み込み量AC」)を検出するアクセルセンサ31や、吸気通路12に設けられたスロットルバルブ19の開度(以下、「スロットル開度TA」)を検出するスロットルセンサ32、及び内燃機関10におけるノッキングの発生を検出するノックセンサ33が設けられている。その他、吸気通路12を通過する空気の量(以下、「通路空気量GA」)を検出する空気量センサ34、クランクシャフト16の回転速度(以下、「機関回転速度NE」)及び回転角度を検出するクランクセンサ35、内燃機関10の運転開始や運転停止に際して操作されるイグニッションスイッチ36、内燃機関10に取り込まれる吸気の温度(以下、「吸気温度TIN」)を検出する吸気温度センサ37等も設けられている。
ECU30は、各種センサ類の出力信号に基づき、機関回転速度NEや機関負荷KL等の運転状態を把握する。なお、機関負荷KLは、アクセル踏み込み量AC、スロットル開度TA及び通路空気量GAに基づいて求められる吸入空気量と機関回転速度NEとに基づき算出される。ECU30は、そのようにして把握した運転状態に応じて、出力ポートに接続された各種の駆動回路に指令信号を出力する。このようにしてECU30により行われる制御としては、スロットルバルブ19の開度を調整するスロットル制御、燃料噴射弁13の噴射量を調整する燃料噴射制御、点火プラグ14の点火時期を調整する点火時期制御、オイルジェット21の制御弁やオイルポンプ20の油圧を制御するオイルジェット制御等が挙げられる。尚、ECU30は、詳しくは後述するが、遅角量判定部、比率学習値判定部、吸気温度判定部、及び実行部を機能的に実現する。ECU30は、内燃機関の制御装置の一例である。
以上のように構成される内燃機関10において、ECU30は、上記ノックセンサ33によって検出されるノッキングの発生状況に応じて点火時期を調整するノッキング制御を実行する。
[ノッキング制御]
本実施形態でのノッキング制御は、点火時期の制御指令値である要求点火時期afinを設定することで行われる。なお、ここでは点火時期を、点火対象となる気筒の圧縮上死点に対するクランク角の進角量[°CA]として表すようにしている。図2は、ノッキング制御における要求点火時期afinを設定する手順の説明図である。
本実施形態でのノッキング制御は、点火時期の制御指令値である要求点火時期afinを設定することで行われる。なお、ここでは点火時期を、点火対象となる気筒の圧縮上死点に対するクランク角の進角量[°CA]として表すようにしている。図2は、ノッキング制御における要求点火時期afinを設定する手順の説明図である。
要求点火時期afinの設定に際しては、まずはノッキング制御における要求点火時期afinの設定範囲の進角側の限界値である最進角点火時期absef、及びその遅角側の限界値である最遅角点火時期akmfが算出される。そして、それらに基づき、ノッキング制御中の最進角点火時期absefに対する要求点火時期afinの最大遅角量akmaxが算出される。
上記最進角点火時期absefは、MBT点ambt、及び第1ノック限界点aknok1に基づき算出される。具体的には、次式(1)に示すように、それらMBT点ambt、及び第1ノック限界点aknok1のうちで、より遅角側の値が、最進角点火時期absefとして設定される。
absef=min(ambt、aknok1)…(1)
ここでのMBT点ambtは、現状の機関運転条件において、最大トルクの得られる点火時期(最大トルク点火時期)を示している。また第1ノック限界点aknok1は、ノック限界の高い高オクタン価燃料の使用時に、想定される最良の条件下で、ノッキングを許容できるレベル以内に収めることのできる点火時期の進角限界値(ノック限界点火時期)を示している。それらMBT点ambt、及び第1ノック限界点aknok1は、現状の機関回転速度NEや機関負荷KL等に基づき、ECU30のメモリに記憶された設定マップを参照して設定される。
ここでのMBT点ambtは、現状の機関運転条件において、最大トルクの得られる点火時期(最大トルク点火時期)を示している。また第1ノック限界点aknok1は、ノック限界の高い高オクタン価燃料の使用時に、想定される最良の条件下で、ノッキングを許容できるレベル以内に収めることのできる点火時期の進角限界値(ノック限界点火時期)を示している。それらMBT点ambt、及び第1ノック限界点aknok1は、現状の機関回転速度NEや機関負荷KL等に基づき、ECU30のメモリに記憶された設定マップを参照して設定される。
最遅角点火時期akmfは、想定される最悪の条件下でも、十分にノッキングを許容できるレベル以内に収めることのできる点火時期の指標値としてその値が設定される。具体的には、次式(2)に示すように、第2ノック限界点aknok2に対して、デポジット学習値adepの分だけ遅角させた値が、最遅角点火時期akmfとして設定される。
akmf=aknok2-adep …(2)
第2ノック限界点aknok2は、ノック限界の低い低オクタン価燃料の使用時に、想定される最良の条件下で、例えば上述したデポジット付着が全く無いときにあって、ノッキングを許容できるレベル以内に収めることのできる点火時期の進角限界(ノック限界点火時期)を示している。なお、この第2ノック限界点aknok2についても、現状の機関回転速度NEや機関負荷KL等に基づき、ECU30のメモリに記憶された設定マップを参照して設定される。また、同第2ノック限界点aknok2は、上記第1最遅角点火時期に対応する。
第2ノック限界点aknok2は、ノック限界の低い低オクタン価燃料の使用時に、想定される最良の条件下で、例えば上述したデポジット付着が全く無いときにあって、ノッキングを許容できるレベル以内に収めることのできる点火時期の進角限界(ノック限界点火時期)を示している。なお、この第2ノック限界点aknok2についても、現状の機関回転速度NEや機関負荷KL等に基づき、ECU30のメモリに記憶された設定マップを参照して設定される。また、同第2ノック限界点aknok2は、上記第1最遅角点火時期に対応する。
また、デポジット学習値adepは、現状の内燃機関10のデポジットの付着度合に応じた点火時期の遅角量を示す指標値となっている。具体的には、次式(3)に示すように、遅角幅DLAKNOKに比率学習値rgknkを乗算させた値が、デポジット学習値adepとして設定される。
adep=DLAKNOK×rgknk …(3)
遅角幅DLAKNOKは、デポジット付着の影響が最も顕著に現れる所定の機関運転条件において、想定される最大量のデポジットが付着した状態でのデポジット付着の影響による要求点火時期afinの遅角量を示す値であり、より詳細には、デポジット付着の影響による最遅角点火時期akmfの遅角量を示す値である。そして、この遅角幅DLAKNOKは、次式(4)に示すように、上記第2ノック限界点aknok2から第3ノック限界点aknok3を減算することで算出される。
遅角幅DLAKNOKは、デポジット付着の影響が最も顕著に現れる所定の機関運転条件において、想定される最大量のデポジットが付着した状態でのデポジット付着の影響による要求点火時期afinの遅角量を示す値であり、より詳細には、デポジット付着の影響による最遅角点火時期akmfの遅角量を示す値である。そして、この遅角幅DLAKNOKは、次式(4)に示すように、上記第2ノック限界点aknok2から第3ノック限界点aknok3を減算することで算出される。
DLAKNOK=aknok2-aknok3 …(4)
第3ノック限界点aknok3は、ノック限界の低い低オクタン価燃料の使用時に、想定される最悪の条件下で、例えば上述したデポジット付着が想定される最大量に達しているときにあって、ノッキングを許容できるレベル以内に収めることのできる点火時期の進角限界(ノック限界点火時期)を示している。なお、この第3ノック限界点aknok3についても、現状の機関回転速度NEや機関負荷KL等を考慮してその値が設定される。また、同第3ノック限界点aknok3は、上記第2最遅角点火時期に対応する。
第3ノック限界点aknok3は、ノック限界の低い低オクタン価燃料の使用時に、想定される最悪の条件下で、例えば上述したデポジット付着が想定される最大量に達しているときにあって、ノッキングを許容できるレベル以内に収めることのできる点火時期の進角限界(ノック限界点火時期)を示している。なお、この第3ノック限界点aknok3についても、現状の機関回転速度NEや機関負荷KL等を考慮してその値が設定される。また、同第3ノック限界点aknok3は、上記第2最遅角点火時期に対応する。
また、上記比率学習値rgknkは、内燃機関10へのデポジットの付着度合いを示す指標値としてその値が設定されている。ここでは、デポジットの付着が完全に無い状態を値「0」とし、デポジットの付着量が想定される最大値となった状態を値「1」として、デポジットの付着度合いを比率学習値rgknkの値で表すようにしている。
この比率学習値rgknkは、デポジットの付着が無い工場出荷時に、初期値としてその値が「0」に設定されている。その後、比率学習値rgknkの値は、「0」以上、「1」以下の範囲内で、ノックセンサ33により検出されるノッキングの発生頻度に応じて徐々に増減される。具体的には、ノッキングの発生頻度が増大すれば比率学習値rgknkの値は徐々に増大され、ノッキングの発生頻度が低下すればその値は徐々に減少される。
そして、更新された比率学習値rgknkの値は、ECU30のバックアップメモリに記憶され、機関停止中もその値が保持される。なお、この比率学習値rgknkは、デポジットの付着度合に応じて変化するノッキングの発生頻度に対応して更新される上記比率に対応する。
また、この比率学習値rgknkはノッキングの発生頻度に応じて更新されることにより、同比率学習値rgknkと上記遅角幅DLAKNOKとを乗算して得られる上記ノッキング学習値も、デポジットの付着度合に応じて更新されることになる。
そして以上のように算出された最進角点火時期absef、及び最遅角点火時期akmfから、次式(5)に基づいて、上記最大遅角量akmaxが算出される。
akmax=absef-akmf …(5)
akmax=absef-akmf …(5)
要求点火時期afinの算出は、上記最進角点火時期absefに対する要求点火時期afinの遅角量である点火時期遅角量aknkを求めることで行われる。点火時期遅角量aknkは、次式(6)に示すように、上記最大遅角量akmax、KCS学習値agknk、及びKCSフィードバック補正値akcsに基づきその値が設定される。
aknk=akmax-agknk+akcs …(6)
そして、次式(7)や図2に示すように、最進角点火時期absefから上記求められた点火時期遅角量aknkを減算して要求点火時期afinが設定される。すなわち、要求点火時期afinは、次式(8)や先の図2に示すように、第2ノック限界点aknok2がデポジット学習値adepの分だけ遅角されることで設定される最遅角点火時期akmfに対して、KCS学習値agknkの分だけ進角され、KCSフィードバック補正値akcsの分だけ遅角された値となる。なお、算出される要求点火時期afinが最進角点火時期absefよりも進角側の時期にならないように、点火時期遅角量aknkの値には制限がかけられる。例えば、式(7)に基づいて要求点火時期afinを算出する場合、点火時期遅角量aknkは、「0」以上の値となるように制限される。従って、式(6)に基づいて算出された点火時期遅角量aknkが負の値となったときには、その値が「0」に設定される。
そして、次式(7)や図2に示すように、最進角点火時期absefから上記求められた点火時期遅角量aknkを減算して要求点火時期afinが設定される。すなわち、要求点火時期afinは、次式(8)や先の図2に示すように、第2ノック限界点aknok2がデポジット学習値adepの分だけ遅角されることで設定される最遅角点火時期akmfに対して、KCS学習値agknkの分だけ進角され、KCSフィードバック補正値akcsの分だけ遅角された値となる。なお、算出される要求点火時期afinが最進角点火時期absefよりも進角側の時期にならないように、点火時期遅角量aknkの値には制限がかけられる。例えば、式(7)に基づいて要求点火時期afinを算出する場合、点火時期遅角量aknkは、「0」以上の値となるように制限される。従って、式(6)に基づいて算出された点火時期遅角量aknkが負の値となったときには、その値が「0」に設定される。
afin=absef-aknk…(7)
afin=akmf+agknk-akcs…(8)
上記KCSフィードバック補正値akcsは、上記ノックセンサ33により検出されるノッキングの発生状況に応じてその値が設定される。具体的には、検出されたノッキングのレベルが所定の判定値未満で、ノッキングが十分許容できるレベル以下に収まっていると判断されたときには、KCSフィードバック補正値akcsの値は徐々に減少される。また検出されたノッキングのレベルが上記判定値以上であるときには、KCSフィードバック補正値akcsの値は所定値だけ増加される。なお、このKCSフィードバック補正値akcsは、上記ノッキング補正値に相当する。
afin=akmf+agknk-akcs…(8)
上記KCSフィードバック補正値akcsは、上記ノックセンサ33により検出されるノッキングの発生状況に応じてその値が設定される。具体的には、検出されたノッキングのレベルが所定の判定値未満で、ノッキングが十分許容できるレベル以下に収まっていると判断されたときには、KCSフィードバック補正値akcsの値は徐々に減少される。また検出されたノッキングのレベルが上記判定値以上であるときには、KCSフィードバック補正値akcsの値は所定値だけ増加される。なお、このKCSフィードバック補正値akcsは、上記ノッキング補正値に相当する。
一方、上記KCS学習値agknkは、KCSフィードバック補正値akcsの絶対値が所定値よりも大きい状態(|akcs|>A)が所定時間以上継続したときに、該KCSフィードバック補正値akcsの絶対値を徐々に縮小するようにその値が更新される。すなわち、KCSフィードバック補正値akcsが正の値[A]よりも大きい状態(akcs>A)が継続したときには、KCS学習値agknkの値から所定値Bが減算される。また、これとともにKCSフィードバック補正値akcsの値からも同じく所定値Bが減算される。一方、KCSフィードバック補正値akcsが負の値[-A]よりも小さい状態(akcs<-A)が継続したときには、KCS学習値agknkの値、及びKCSフィードバック補正値akcsの値にそれぞれ所定値Bが加算される。
そして、更新されたKCS学習値agknkの値も、ECU30のバックアップメモリに記憶され、機関停止中もその値は保持される。なお、このKCS学習値agknkは、上記ノッキング学習値に相当する。
以上のようなノッキング制御により、要求点火時期afinは、許容されるレベル以上のノッキングが発生されない範囲内において、より大きいトルクが得られる、より進角側の値に設定される。
[低周波異音抑制制御]
以上のようにしてノッキングの発生が抑制されるように点火時期が調整されるが、点火時期がTDC近傍であり、内燃機関10の圧縮比が高い状態にあり、吸気温度TINが高い場合には、ノックセンサ33では検出しにくい低い周波数の異音(以下、低周波異音と称する)が発生する場合がある。低周波異音は、ノッキングと同じ原理で発生しているものと考えられ、即ち、点火プラグ14による着火後の火炎伝播の途中で燃焼室11内の圧力が高くなって火炎伝播の終了前に混合気の未燃焼部分が自己着火することにより発生するものと考えられる。従って、ノッキング発生時は低周波異音も併せて発生していると考えられる。ここで、上述したノックセンサ33の検出結果に基づく点火遅角により、ノッキングの発生は抑制できるが、ノックセンサ33では検出し難い低周波異音についてはその発生を抑制できないおそれがある。従って本実施例では、ECU30はこのような低周波異音の発生を抑制する低周波異音制御を実行する。
以上のようにしてノッキングの発生が抑制されるように点火時期が調整されるが、点火時期がTDC近傍であり、内燃機関10の圧縮比が高い状態にあり、吸気温度TINが高い場合には、ノックセンサ33では検出しにくい低い周波数の異音(以下、低周波異音と称する)が発生する場合がある。低周波異音は、ノッキングと同じ原理で発生しているものと考えられ、即ち、点火プラグ14による着火後の火炎伝播の途中で燃焼室11内の圧力が高くなって火炎伝播の終了前に混合気の未燃焼部分が自己着火することにより発生するものと考えられる。従って、ノッキング発生時は低周波異音も併せて発生していると考えられる。ここで、上述したノックセンサ33の検出結果に基づく点火遅角により、ノッキングの発生は抑制できるが、ノックセンサ33では検出し難い低周波異音についてはその発生を抑制できないおそれがある。従って本実施例では、ECU30はこのような低周波異音の発生を抑制する低周波異音制御を実行する。
図3は、ECU30が実行する低周波異音抑制制御の一例を示したフローチャートである。この制御は内燃機関10の駆動中は繰り返し実行される。ECU30は、ノックセンサ33の検出結果に基づいた点火時期の遅角量が所定値よりも大きいか否かを判定する(ステップS1)。遅角量は、例えば、最進角点火時期absefから要求点火時期afinまでに相当するクランク角度であるが、これに限定されず、例えば、内燃機関10のトルク発生効率が最大となるMBT点ambtから、ノックセンサ33によるノッキングの検出結果に基づいて補正された点火時期までの遅角量であってもよい。いずれにしても、遅角量は、所定時期を基準として、所定時期よりも遅角側であってノックセンサ33によるノッキングの検出結果に基づいて補正された点火時期までの間のクランク角度である。また、上記の所定値は、点火時期がTDC近傍であることを示す値に設定されており、具体的には、後述するステップS2及びS3の判定処理において肯定判定がなされた場合に低周波異音が発生し得る値である。この所定値は、予め実験により取得されECU30の記憶装置に記憶されている。ステップS1の処理は、遅角量判定部が実行する処理の一例である。
ステップS1でNoの場合、低周波異音が発生する可能性は低いものと考えられ、ECU30は通常制御を実行する(ステップS4)。
ステップS1でYesの場合、ECU30は上述した比率学習値rgknkが所定値よりも大きいか否かを判定する(ステップS2)。この所定値は、デポジット堆積量が多いことを示す値に設定されており、具体的には、上述したステップS1と後述するステップS3の判定処理において肯定判定がなされた場合に低周波異音が発生し得る値である。未燃燃料や潤滑油などに由来するデポジットの堆積が進行すると、燃焼室11の実質的な容積が減少して圧縮比が大きくなり、低周波異音が生じやすくなるからである。この所定値は、予め実験により取得されECU30の記憶装置に記憶されている。ステップS2の処理は、比率学習値判定部が実行する処理の一例である。
ステップS2でNoの場合、低周波異音が発生する可能性は低いものと考えられ、ECU30は通常制御を実行する(ステップS4)。
ステップS2でYesの場合、ECU30は吸気温度TINが所定値よりも大きいか否かを判定する(ステップS3)。この所定値は、吸気温度TINが高いことを示す値に設定されており、例えば、外気温が高い真夏日に想定される吸気温度TINに設定されている。具体的には、上述したステップS1及びS2の判定処理において肯定判定がなされた場合に低周波異音が発生し得る値である。この所定値は、予め実験により取得されECU30の記憶装置に記憶されている。ステップS3の処理は、吸気温度判定部が実行する処理の一例である。尚、吸気温度TINは、吸気温度センサ37からの検出値に基づいてECU30が取得するが、これに限定されず、例えば外気温センサの検出値に基づいて推定してもよいし、その他の公知の手段により推定又は算出してもよい。
ステップS3でNoの場合、低周波異音が発生する可能性は低いものと考えられ、ECU30は通常制御を実行する(ステップS4)。
ステップS3でYesの場合、ECU30はオイルポンプ20の回転速度を通常時よりも増大させて、オイルジェット21から噴射される潤滑油の圧力を増大させる油圧増大処理を実行する(ステップS5)。これにより、オイルジェット21からの潤滑油の吐出量が増大し、ピストン15の冷却がより促進され、燃焼室11の温度が低下する。これにより、低周波異音の強度が低下してその発生が抑制される。ステップS5の処理は、内燃機関10の燃焼室11の温度を低下させるための温度低下処理の一例であって、実行部が実行する処理の一例である。
尚、ECU30は、オイルジェット21の油圧増大処理の実行中にステップS1~S3の何れかでNoと判定された場合には、通常制御を実行して(ステップS4)、オイルポンプ20の回転速度を通常時に戻す。
ステップS5による油圧の増大量は、一定の固定値であってもよいし、上述した遅角量、比率学習値rgknk、及び吸気温度TINの少なくとも一つが大きいほど増大するように設定される変動値であってもよい。また、ステップS1~S3の順序は問わない。
[低周波異音抑制制御の第1変形例]
次に、低周波異音抑制制御の第1変形例について説明する。第1変形例では、詳しくは後述するが、内燃機関10に冷却水を循環させる電動ウォータポンプ55の回転速度を増大させることにより、低周波異音の発生を抑制する。具体的な制御内容を説明する前に、内燃機関10を冷却する冷却機構50の概略構成について説明する。
次に、低周波異音抑制制御の第1変形例について説明する。第1変形例では、詳しくは後述するが、内燃機関10に冷却水を循環させる電動ウォータポンプ55の回転速度を増大させることにより、低周波異音の発生を抑制する。具体的な制御内容を説明する前に、内燃機関10を冷却する冷却機構50の概略構成について説明する。
図4は、内燃機関10を冷却する冷却機構50の概略説明図である。内燃機関10は、シリンダブロック及びシリンダヘッドから構成される内燃機関本体10Aを備え、内燃機関本体10Aには冷却水が流れるウォータジャケット10Wが設けられている。冷却機構50は、ウォータジャケット10Wに冷却水を供給することにより内燃機関10を冷却する。冷却機構50は、具体的には、冷却水排出管51a、冷却水供給管51b、バイパス管51c、ラジエータ53、サーモスタット54、電動ウォータポンプ55、電動ファン56を含んで構成されている。
冷却水排出管51aは、ウォータジャケット10Wとラジエータ53とを連通しており、ウォータジャケット10Wから排出された冷却水が流れる。冷却水供給管51bは、ラジエータ53とウォータジャケット10Wとを連通している。バイパス管51cは、冷却水排出管51a及び冷却水供給管51bに連通してラジエータ53を迂回する。バイパス管51cにおける冷却水の流れ方向の下流端部にサーモスタット54が設けられている。そして、冷却水供給管51bにおけるサーモスタット54が設けられている部分とウォータジャケット10Wとの間に電動ウォータポンプ55が設けられている。冷却機構50では、この電動ウォータポンプ55が、図4に矢印で示すようにウォータジャケット10Wを経由して冷却水を循環させる。
電動ウォータポンプ55は、ECU30により駆動が制御される電動式のウォータポンプである。サーモスタット54は、内部に設けられた弁体の位置がサーモスタット54に流れ込む冷却水の温度に応じて変化する感温式のものであり、冷却水供給管51bにおいてラジエータ53を流通する冷却水の流量を調整する。
即ち、サーモスタット54に流れ込む冷却水の温度が低いときには、ラジエータ53からウォータジャケット10Wへの冷却水の流入が禁止され、バイパス管51cからウォータジャケット10Wへの冷却水の流入が許容される。これにより、ラジエータ53を介さずに冷却水が循環することになり、内燃機関10の暖機が促進される。
一方、サーモスタット54に流れ込む冷却水の温度が高いときには、ラジエータ53からウォータジャケット10Wへの冷却水の流入が許容されることにより、電動ウォータポンプ55からウォータジャケット10Wに吐出された冷却水が、ラジエータ53を介して再びウォータジャケット10Wに戻されるようになる。その結果、ラジエータ53において放熱した後の冷却水が、ウォータジャケット10Wに流入するようになる。
電動ファン56はECU30により駆動が制御され、電動ファン56が作動することにより、空気がラジエータ53を通過し、空気と冷却水との熱交換が促進される。冷却水排出管51aには、ウォータジャケット10Wから排出されラジエータ53に供給される前の冷却水の温度を検出する冷却水温度センサ38が設けられている。
図5は、ECU30が実行する低周波異音抑制制御の第1変形例を示したフローチャートである。ステップS1~S3でYesの場合、ECU30は電動ウォータポンプ55の回転速度を増大補正するポンプ回転速度増大処理を実行する(ステップS5a)。具体的には、吸気温度TIN、機関回転速度NE、及び機関負荷KLに基づいて規定された、電動ウォータポンプ55の駆動デューティ比の増大補正分のマップを参照して、電動ウォータポンプ55の回転速度を増大させる。これにより、ウォータジャケット10W内を流れる冷却水の流量が増大し、内燃機関本体10Aの冷却がより促進され、燃料室11の温度が低下する。これにより、低周波異音の強度が低下してその発生が抑制される。ステップS5aの処理は、温度低下処理の一例である。
また、ポンプ回転速度増大処理の実行中においては、ECU30は上述したKCS学習を一時的に停止する(ステップS6)。ポンプ回転速度増大処理は、ステップS1~S3でYesと判定される場合にのみ実行される一時的な処理であり、この処理により通常時より内燃機関本体10Aの温度が一時的に低下するものである。従って、例えばポンプ回転速度増大処理の実行中にKCS学習を行うと、ポンプ回転速度増大処理の実行中で適切な点火時期に制御され得るが、ポンプ回転速度増大処理が停止した通常制御への復帰時には、再び点火時期を最適な時期に制御する必要があり、この期間にノッキングが発生する可能性があるからである。従って、ポンプ回転速度増大処理の実行中での点火時期は、ポンプ回転速度増大処理の実行直前での点火時期に維持される。
[低周波異音抑制制御の第2変形例]
図6は、ECU30が実行する低周波異音抑制制御の第2変形例を示したフローチャートである。ステップS1~S3でYesの場合、ECU30は目標冷却水の温度を低下補正する水温低下処理を実行する(ステップS5b)。具体的には、目標冷却水の温度が低下側に補正されると、ECU30は電動ファン56の回転速度を通常時よりも増大させる。これにより、冷却水の温度を通常時よりも低下させることができ、燃焼室11の温度を低下させることができ、低周波異音の発生を抑制することができる。ステップS5bの処理は、温度低下処理の一例である。尚、この場合もECU30はKCS学習を一時的に停止する(ステップS6)。
図6は、ECU30が実行する低周波異音抑制制御の第2変形例を示したフローチャートである。ステップS1~S3でYesの場合、ECU30は目標冷却水の温度を低下補正する水温低下処理を実行する(ステップS5b)。具体的には、目標冷却水の温度が低下側に補正されると、ECU30は電動ファン56の回転速度を通常時よりも増大させる。これにより、冷却水の温度を通常時よりも低下させることができ、燃焼室11の温度を低下させることができ、低周波異音の発生を抑制することができる。ステップS5bの処理は、温度低下処理の一例である。尚、この場合もECU30はKCS学習を一時的に停止する(ステップS6)。
第2変形例は、例えば上述した電動ウォータポンプ55が設けられておらずに、内燃機関10の回転に連動して駆動する機械式ウォータポンプが設けられており上述した第1変形例を実行できない場合に有効である。
以上のように、本実施例の低周波異音抑制制御とその第1及び第2変形例について説明したが、これらのステップS5、S5a、及びS5bのうち、少なくとも2つを同時に実行してもよい。これにより、より早期に内燃機関本体10Aを冷却することができ、低周波異音の発生をより早期に抑制できる。
上記の実施の形態の内燃機関の制御装置は、車両用内燃機関に適用した例について説明したが、動力源として内燃機関を用いるものであれば適用可能であり、例えば、所謂ハイブリッド車や自動二輪車等に搭載される内燃機関はもとより、船舶や建設機械等のように車両以外のものに搭載される内燃機関にも適用可能である。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
10…内燃機関、11…燃焼室、12…吸気通路、13…燃料噴射弁、14…点火プラグ、15…ピストン、16…クランクシャフト、17…排気通路、18…アクセルペダル、19…スロットルバルブ、30…ECU(内燃機関の制御装置)、31…アクセルセンサ、32…スロットルセンサ、33…ノックセンサ、34…空気量センサ、35…クランクセンサ、36…イグニッションスイッチ、37…吸気温度センサ、38…冷却水温度センサ、50…冷却機構、53…ラジエータ、55…電動ウォータポンプ、56…電動ファン
Claims (1)
- 内燃機関に設けられたノックセンサの検出結果に基づいて算出された点火時期の遅角量が所定値よりも大きいか否かを判定する遅角量判定部と、
点火プラグへのデポジットの付着度合いを示す比率学習値が所定値よりも大きいか否かを判定する比率学習値判定部と、
吸気温度が所定値よりも大きいか否かを判定する吸気温度判定部と、
前記遅角量判定部、前記比率学習値判定部、及び吸気温度判定部により肯定判定がなされた場合、前記内燃機関の燃焼室の温度を低下させるための温度低下処理を実行する実行部と、
を備えた内燃機関の制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020204727A JP2022092135A (ja) | 2020-12-10 | 2020-12-10 | 内燃機関の制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2020204727A JP2022092135A (ja) | 2020-12-10 | 2020-12-10 | 内燃機関の制御装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2022092135A true JP2022092135A (ja) | 2022-06-22 |
Family
ID=82068103
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2020204727A Pending JP2022092135A (ja) | 2020-12-10 | 2020-12-10 | 内燃機関の制御装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2022092135A (ja) |
-
2020
- 2020-12-10 JP JP2020204727A patent/JP2022092135A/ja active Pending
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