JP5195639B2 - 内燃機関の点火時期制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関の点火時期制御装置に関するものである。
駆動源として内燃機関が搭載された車両では、内燃機関の運転状態に応じて点火時期を制御する、いわゆる点火時期制御が実行される(例えば特許文献1参照)。
点火時期制御では、基本的に、内燃機関の運転状態に基づいて点火時期についての制御目標値が設定される。この制御目標値は、ノッキング発生の有無に応じて更新されるフィードバック補正項によって補正される。フィードバック補正項は、ノッキングの発生時には予め定められた遅角更新量分だけ変更されて点火時期を遅角補正し、ノッキングが発生していないときには予め定められた進角更新量分だけ変更されて点火時期を進角補正する。また上記制御目標値は、フィードバック補正項に基づき更新される学習値によっても補正される。この学習値は内燃機関の経時変化や個体差に起因して生じるフィードバック補正項とその基準値(例えば「0」)との差分(同フィードバック補正項による補正分)を補償するための値であり、同学習値としては、例えばフィードバック補正項に徐変処理を施した値が算出される。なお、学習値が更新されることによってフィードバック補正項とその基準値との差分が学習値に移行されるために同フィードバック補正項が基準値に近い値になる。
ここで、上記学習値の学習を実行しないと仮定した場合、上記差分は内燃機関の運転領域によって異なる。そのため学習値の学習を実行する装置では、上記差分を補償することの可能な学習値が機関運転領域によって異なる値になる。そこで従来、機関運転状態によって区画された複数の学習領域を設定するとともに各学習領域についてそれぞれ学習値を定め、それら学習値の学習を各別に実行する装置が提案されている。こうした装置によれば、学習値として、上記差分を適切に抑えることの可能な値を同差分の異なる複数の学習領域について各別に学習することができるようになる。
また、ノッキングが発生していることは通常、ノックセンサなどによって検出した内燃機関の振動の強度が大きいことをもって判定される。内燃機関の振動の強度はノッキングの発生によって大きくなることに加えて、例えば冷間始動時などといった内燃機関の温度が低いときにおいても大きくなる。こうした事象は、内燃機関の温度が低いときにはその各構成部材の熱膨張の影響(具体的には、ピストンとボア内壁との隙間が小さいこと)などによってノッキング以外の要因による内燃機関の振動の強度(いわゆるバックグラウンドレベル)が大きくなることによって生じる。このことから機関温度が低いときにおいて検出した内燃機関の振動の強度をもとに更新されるフィードバック補正項に基づいて学習値を学習すると、その学習精度の低下を招くおそれがある。そのため従来、内燃機関の温度が所定温度以上であることを条件に学習値の更新を許可する装置が提案されている。こうした装置によれば、バックグラウンドレベルの大きい状況においては学習値が更新されなくなり、その学習精度の低下が抑えられるようになる。
さらに近年、車両駆動源として内燃機関と電動機とを備えたハイブリッド車両や交差点等での車両停止時において内燃機関の運転を一時的に停止させる車両など、車両の運転に際して内燃機関の運転を間欠的に停止させる制御(間欠停止制御)を実行する装置が提案され、実用されている。
特開2007−198318号公報
ところで、上記間欠停止制御が実行される車両では内燃機関の運転が間欠的に停止されたときに、同内燃機関の内部において燃焼熱が発生しなくなることにより、自然放熱によって内燃機関の温度が低下することがある。そして、これに伴って内燃機関の温度が前記所定温度より低くなるようなことがあると、前記学習値を更新することができなくなってしまう。
学習値の学習が実行される装置では、学習値が更新されていれば、フィードバック補正項と基準値との差分が学習値に移行されて同フィードバック補正項が基準値に近い値になる。ただし、上述した内燃機関の温度の低下によって学習値の更新が許可されなくなると、上記差分が学習値に移行されずにフィードバック補正項に含まれたままになって同フィードバック補正項と基準値との差が大きくなる。そのため、そうした状況においてフィードバック補正項が特定の学習領域に見合う値になっている状態で機関運転状態が他の学習領域に変化したとすると、このときフィードバック補正項が変化後の学習領域に見合う値にならなくなって点火時期の不要な変化を招くおそれがある。具体的には、点火時期が過度に進角側の値になってノッキングが発生したり、点火時期が過度に遅角側の値になって燃焼状態の悪化を招いたりするおそれがある。
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、内燃機関の運転の間欠停止が実行される装置にあって機関点火時期を好適に調節することのできる内燃機関の点火時期制御装置を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、車両駆動源としての内燃機関の運転を間欠的に停止させる間欠停止制御が実行される車両に適用されて、前記内燃機関の運転状態に基づき設定した基本値をノッキング発生の有無に応じて更新されるフィードバック補正項と同フィードバック補正項に基づき更新される学習値とにより補正して点火時期の制御目標値を設定し、前記内燃機関の運転状態により区画される複数の学習領域を設定するとともにそれら学習領域について各別に前記学習値を定め、前記内燃機関の温度を検出するとともに該検出した温度が第1の所定温度以上であることを条件に前記学習値の更新開始を許可する内燃機関の点火時期制御装置において、前記更新開始を許可した後に、前記内燃機関の温度が前記第1の所定温度より低い第2の所定温度以上であることを条件に前記学習値の更新継続を許可することをその要旨とする。
検出される機関温度が同一の状況であっても、内燃機関の温度が一旦十分に高くなった後に同内燃機関の間欠停止によって機関温度が低下するときには、内燃機関の暖機完了前における機関温度の上昇過程であるときと比較して、内燃機関の内部の温度が高い温度に保たれていることが多い。そのため、このとき前記バックグラウンドレベルが比較的小さい状況、言い換えればフィードバック補正項に基づいて学習値を精度よく更新することのできる状況であると云える。
上記構成によれば、内燃機関の運転の間欠停止が実行されるために機関温度が低くなり易い装置において、検出される機関温度が低いときであっても、機関温度が一旦十分に高くなった後において低下している途中であれば、このとき機関内部の温度が高い温度で維持されている可能性が高く学習値の学習を精度良く実行することの可能な状況であるとして、学習値の学習を停止させずに継続させることができる。そして、これにより学習値の学習精度の低下を抑えつつ同学習値の更新が停止される期間を短縮することができ、フィードバック補正項の基準値からのずれが大きくなることを抑えることができる。そのため、機関運転領域の変化に際して上記ずれの増大に起因して生じる内燃機関の点火時期の不要な変化を抑えることができ、同点火時期を好適に調節することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の点火時期制御装置において、前記内燃機関の振動の強度を検出するノックセンサが設けられてなるとともに、同ノックセンサにより検出される振動の強度とノック判定値との比較に基づいてノッキングの有無を判定するものであり、前記ノックセンサにより検出される振動の強度に基づいて前記ノック判定値を変更する変更手段と、前記検出する内燃機関の温度が前記第1の所定温度以上であることを条件に前記ノック判定値の変更開始を許可するとともに、前記検出する内燃機関の温度が前記第1の所定温度以下の温度である第3の所定温度より低いときに前記ノック判定値の変更を禁止する禁止手段とを備えることをその要旨とする。
機関温度が一旦十分に高くなった後に低下している途中におけるバックグラウンドレベルは内燃機関の暖機完了前と比べて小さいものの、同バックグラウンドレベルは、検出される機関温度が十分に高いときと比較すると若干大きい。そのため、このとき検出される内燃機関の振動の強度に基づいてノック判定値を変更すると、同ノック判定値が適切な値からずれてノッキング発生の判定精度の低下を招くおそれがある。
上記構成によれば、そのようにしてノック判定値が誤って変更されることを回避することができ、同ノック判定値に基づくノッキング発生の判定における判定精度の低下を抑えることができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の内燃機関の点火時期制御装置において、前記複数の学習領域として前記内燃機関の経時変化による点火時期への影響のばらつきが大きい第1の学習領域と前記影響のばらつきが小さい第2の学習領域とを含む領域が定められてなり、前記第1の学習領域は機関運転状態に応じて区画された複数の多点学習領域からなるとともにそれら多点学習領域毎に前記第1の学習値が設定されてなり、前記第1の学習領域では前記複数の多点学習領域のうちの現在の機関運転状態が含まれる領域についての前記第1の学習値を更新し、前記第2の学習領域では第2の学習値を更新し、前記第1の学習領域では前記第1の学習値および前記第2の学習値によって前記基本値を補正して前記制御目標値を設定し、前記第2の学習領域では前記第2の学習値のみによって前記基本値を補正して前記制御目標値を設定することをその要旨とする。
上記構成によれば、内燃機関の経時変化(例えば機関燃焼室内へのデポジットの付着)による点火時期への影響のばらつきが大きい第1の学習領域では、同経時変化による点火時期の変化分を補償することの可能な値を第1の学習値として学習することができる。また、上記影響のばらつきが小さい第2の学習領域では、内燃機関の経時変化以外の要因(例えば燃料性状の変化)による点火時期の変化分を補償することの可能な値を第2の学習値として学習することができる。そして、そのようしてノッキングの発生要因に応じたかたちで各別に学習された第1の学習値および第2の学習値に基づいて点火時期の制御目標値を設定することにより、点火時期を適正に制御することができるようになる。しかも、そうした装置において、フィードバック補正項の基準値からのずれの増大に起因して生じる内燃機関の点火時期の不要な変化を抑えることができるようになる。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の内燃機関の点火時期制御装置において、前記第1の学習値および前記第2の学習値は共に、所定周期毎に実行される学習処理を通じて更新される値であり、前記学習処理は、前記第1の学習領域において前記第1の学習値の更新を禁止するとともに前記フィードバック補正項に基づく前記第2の学習値の更新を実行するとの処理を、前記内燃機関の運転を開始するべく運転スイッチが操作されてから前記第2の学習値が所定回数だけ更新されるまでの所定期間にわたって実行することをその要旨とする。
例えばレギュラー燃料が備蓄されていた燃料タンクにハイオク燃料が補給されるなど、それまで備蓄されていた燃料と異なる性状の燃料が燃料タンクに補給されると、その後において内燃機関に供給される燃料の性状が変化してノッキングの発生状況が変化するために、フィードバック補正項が大きく変化するようになる。
上記構成によれば、運転スイッチの操作を通じて燃料補給が行われた可能性があると判断し、その後の所定期間(言い換えれば、内燃機関に供給される燃料の性状変化によってフィードバック補正項が大きく変化する可能性のある期間)にわたって第1の学習値の更新を禁止することができる。そのため、燃料性状の変化に伴う点火時期の変化分が第1の学習値に反映されることを抑えることができる。また、このとき第2の学習値の更新が許容されるために、燃料性状の変化に伴う点火時期の変化分を第2の学習値に反映させることができる。そのため、この第2の学習値によって、燃料性状の変化に起因する点火時期の変化分を第1の学習領域および第2の学習領域ともに補償することができる。しかも、所定期間が経過した後、第1の学習領域において第1の学習値が学習されるようになるために、内燃機関の経時変化によって点火時期が変化すると、その変化分が第1の学習値に反映される。そのため、この第1の学習値によって、内燃機関の経時変化による点火時期の変化分が補償されるようになる。このように上記構成によれば、燃料補給時における機関点火時期の学習を適切に行うことができるようになる。
また上記構成では、運転スイッチが操作されてから第2の学習値が所定回数だけ更新されるまでの所定期間において第1の学習値が更新されない状況になるために、内燃機関の間欠停止に伴う機関温度の低下によって第2の学習値の更新が禁止されてしまうと、その分だけ上記所定期間が長くなり、第1の学習値の更新開始が遅れてしまう。この点、上記構成によれば、第2の学習値の所定回数の更新を早期に完了させて第1の学習値の学習を早期に開始することができるようになる。
なお、内燃機関の温度としては同内燃機関に取り付けた温度センサによって機関温度そのものを検出して用いることの他、請求項5によるように、内燃機関の温度の指標値である機関冷却水の温度を検出してこれを内燃機関の温度として用いることができる。
本発明を具体化した一実施の形態にかかる内燃機関の点火時期制御装置が適用される車両の概略構成を示す略図。 点火時期指令値の算出手順の概要を示す説明図。 基本学習領域および多点学習領域を示す説明図。 内燃機関の経時変化の有無による点火時期指令値の変化態様の一例を示すグラフ。 内燃機関の経時変化の有無による点火時期指令値の変化態様の一例を示すグラフ。 ノック判定処理において推定される正規分布の一例を示すグラフ。 ノック判定処理の実行手順を示すフローチャート。 自動停止処理の実行手順を示すフローチャート。 再始動処理の実行手順を示すフローチャート。 [a]〜[e]フィードバック補正項と合計学習値との関係を示す説明図。 更新許可処理の実行手順を示すフローチャート。 更新許可処理の実行態様の一例を示すタイミングチャート。
以下、本発明にかかる内燃機関の点火時期制御装置を具体化した一実施の形態について説明する。
図1に、本実施の形態にかかる内燃機関の点火時期制御装置が適用される車両の概略構成を示す。
図1に示されるように、車両10には、その駆動源としての内燃機関11が搭載されている。内燃機関11の出力軸であるクランクシャフト12にはトルクコンバータや自動変速機を介して車輪(いずれも図示略)が接続されている。そして、内燃機関11が発生する動力は、それらトルクコンバータや自動変速機を介して車輪に伝達される。
一方、上記クランクシャフト12にはモータ13が接続されている。このモータ13は、後述のように内燃機関11を自動始動する際に電動機として機能する。詳しくは、モータ13の駆動によって内燃機関11のクランクシャフト12が強制的に回転駆動(クランキング)されて、同クランクシャフト12に内燃機関11の始動のための補助トルクが付与される。
上記内燃機関11の燃焼室14には吸気通路15を通じて空気が吸入されるとともに、燃料噴射弁16から噴射された燃料が供給される。燃料噴射弁16には、燃料タンク17内に備蓄された燃料が燃料ポンプ18によって圧送されている。そして、そうした吸入空気と噴射燃料とからなる混合気に対して点火プラグ19による点火が行われると、その混合気が燃焼してピストン20が往復移動し、内燃機関11のクランクシャフト12が回転する。燃焼後の混合気は排気として内燃機関11の燃焼室14から排気通路21に送り出される。
本実施の形態にかかる点火時期制御装置は、車両10の運転のための各種制御を実行する電子制御装置30を備えている。この電子制御装置30は、各種制御に関係する各種の演算処理を実行する中央処理装置(CPU)、その演算に必要なプログラムやデータが記憶された不揮発性メモリ(ROM)、CPUの演算結果が一時的に記憶される揮発性メモリ(RAM)、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等を備えている。
電子制御装置30の入力ポートには各種のセンサ類が接続されている。そうしたセンサ類としては、例えば車両10の走行速度SPDを検出するための速度センサ31や、アクセルペダル(図示略)の踏み込み量(アクセル踏み込み量AC)を検出するためのアクセルセンサ32、同アクセルペダルの踏み込みの有無を検出するためのアイドルスイッチ33が設けられている。また、ブレーキペダル(図示略)の踏み込みの有無を検出するためのブレーキスイッチ34や、内燃機関11の運転開始や運転停止に際して乗員によって操作される運転スイッチ35が設けられている。さらに、吸気通路15に設けられたスロットルバルブ22の開度(スロットル開度TA)を検出するためのスロットルセンサ36や、内燃機関11の振動の強度を検出するためのノックセンサ37、吸気通路15を通過する空気の量(通路空気量GA)を検出するための空気量センサ38が設けられている。その他、クランクシャフト12の回転速度(機関回転速度NE)および回転角(クランク角「°CA」)を検出するためのクランクセンサ39や、内燃機関11の冷却水の温度THWを検出するための水温センサ40等も設けられている。
電子制御装置30は、各種センサ類の出力信号に基づき、機関回転速度NEや機関負荷KLなどといった内燃機関11の運転状態を把握する。なお機関負荷KLは、アクセル踏み込み量AC、スロットル開度TAおよび通路空気量GAに基づいて求められる内燃機関11の吸入空気量と機関回転速度NEとに基づき算出される。電子制御装置30は、そのようにして把握した内燃機関11の運転状態に応じて、出力ポートに接続された各種の駆動回路に指令信号を出力する。このようにして、電子制御装置30によって内燃機関11の点火時期制御などといった各種制御が実行される。
次に、内燃機関11の点火時期制御について、図2を参照しつつ説明する。
本実施の形態の点火時期制御では、内燃機関11の運転状態等から求められる制御目標値(具体的には、点火時期指令値ST)に基づいて内燃機関11の点火時期が制御され、同点火時期指令値STが小さい値であるときほど内燃機関11の点火時期が遅角側の時期に制御される。
図2に示すように、点火時期指令値STは基本的に、内燃機関11の運転状態に基づき算出されるノック限界点火時期(BT−R)に対して、ノッキングの発生の有無に応じて増減するフィードバック補正項Fによる補正と同フィードバック補正項Fに基づき更新される基本学習値AG[i]による補正とを加えることによって算出される。
ノック限界点火時期(BT−R)としては、ベース点火時期BT(実線L1)からノック余裕代Rを減算した値が算出される。なおベース点火時期BTは、標準的な環境条件下においてノッキングを生じさせない最も進角側の点火時期に相当する値であり、機関負荷KLおよび機関回転速度NEに基づき算出される。また、ノック余裕代Rは、実験等により予め定められた固定値である。
このように算出されるノック限界点火時期(BT−R)は、ベース点火時期BTからノック余裕代Rだけ遅角させた値(破線L2)、言い換えれば、最もノッキングが発生しやすい環境条件下においてノッキングを生じさせない点火時期の範囲における最も進角側の点火時期を表す値となる。なお、上記環境条件としては気温、湿度、大気圧、および機関冷却水温等が挙げることができ、これらの条件に応じて内燃機関11におけるノッキングの発生しやすさが変化する。本実施の形態では、このノック限界点火時期(BT−R)が基本値として機能する。
フィードバック補正項Fは、ノックセンサ37の出力信号に基づきノッキングが発生していると判断されたときには予め定められた遅角更新量a分だけ減量されて点火時期を遅角させる一方、ノッキングが発生していないと判断されたときには予め定められた進角更新量b分だけ増量されて点火時期を進角させるといったように機能する値である。このフィードバック補正項Fにより、ノッキング発生時においては点火時期を直ちに遅角させてその発生の抑制が図られ、ノッキングが発生していないときには点火時期を進角させて機関出力の増大が図られる。
基本学習値AG[i]は、機関運転状態(詳しくは、機関負荷KLおよび機関回転速度NE)により区画された複数(本実施の形態では三つ)の基本学習領域i(i=1,2,3)毎に用意されている。図3は、上記基本学習領域iを示したものであり、同図に示す例では機関回転速度NEに応じて三つに区画された基本学習領域i(i=1,2,3)が設定されている。そして点火時期指令値STを算出する際には、基本学習値AG[i]として、そのときどきの機関回転速度NEに対応する基本学習領域iの値が用いられる。この基本学習値AG[i]は、フィードバック補正項Fの変化傾向に基づいて学習更新される。具体的には、上記フィードバック補正項Fに徐変処理を施した値が、そのときどきの機関回転速度NEにより定まる基本学習領域iに対応する新たな基本学習値AG[i]として記憶される。こうした基本学習値AG[i]により、ノッキングの発生を抑制するべく点火時期(具体的には、点火時期指令値ST)が定常的に補正される。なお上記徐変処理は例えば、直前の算出周期において更新された基本学習値AG[i]を「前回学習値」とし、1.0以上の正の数を「n」とすると、関係式[AG[i]={「前回学習値」×(n−1)+「フィードバック補正項F」}/n]を通じて基本学習値AG[i]を算出するといったように実行される。
図2に示すように、点火時期指令値STは、ノック限界点火時期(BT−R)に対して基本学習値AG[i]による補正を加えることにより、通常はノック限界点火時期(BT−R)よりも進角側の時期に相当する値になる。この状態にあって、ノッキング発生の有無に応じてフィードバック補正項Fが増減されると、フィードバック補正項Fの増減分だけ点火時期指令値STが図中に矢印Y1または矢印Y2で示すように増減する。そして、このように増減するフィードバック補正項Fを徐変処理した値が新たな基本学習値AG[i]として記憶されることによって同基本学習値AG[i]の更新が行われる。
ところで、内燃機関11の燃焼室14内にデポジットが付着するなどといった内燃機関11の経時変化が生じた場合に、同内燃機関11においてノッキングが発生しやすくなることがあり、そうした場合には基本学習値AG[i]が減少側の値に更新されるようになる。この場合の基本学習値AG[i]の更新量は、内燃機関11の経時変化に起因して点火時期のノック限界が遅角側の時期に移行する移行量に対応した値となる。したがって、更新後の基本学習値AG[i]を用いて点火時期(直接的にはノック限界点火時期(BT−R))を補正することにより、内燃機関11の経時変化に伴ってノッキングが発生しやすくなるといった不都合の発生が抑えられる。
ただし、内燃機関11の経時変化によるノッキング発生への影響は、同一の基本学習領域i内であっても、その領域i内における更に細かな機関運転領域毎に大きく異なったものとなる可能性がある。そして、そうした場合には、基本学習領域i毎に設定された基本学習値AG[i]のみを用いて点火時期の補正を行うと、同基本学習領域i内における機関運転状態によっては上記基本学習値AG[i]が内燃機関11の経時変化に起因するノッキングの発生を抑制するうえで不適切な値となるおそれがある。詳しくは、ノッキングの発生を抑制するうえで上記基本学習値AG[i]が大きすぎる値となってノッキング発生を効果的に抑制することができなくなったり、上記基本学習値AG[i]が小さすぎる値となって点火時期が過度に遅角側に補正されて内燃機関11の出力低下を招いたりするおそれがある。
本実施の形態では、点火時期指令値STが、ノック限界点火時期(BT−R)、フィードバック補正項F、および合計学習値AGTに基づいて以下の関係式(1)から求められる。

ST=(BT−R)+F+AGT …(1)

なお、関係式(1)における合計学習値AGTは、基本学習値AG[i]と多点学習値AGdp[n]とに基づいて、以下の関係式(2)から求められる値である。

AGT=AG[i]+AGdp[n] …(2)

関係式(2)における多点学習値AGdp[n]は、内燃機関11の燃焼室14内にデポジットが付着するなどといった内燃機関11の経時変化が生じたときに、ノッキング発生に対する同経時変化の影響のばらつきに応じたかたちで点火時期(具体的には、点火時期指令値ST)を補正するための補正項である。
本実施の形態では、基本学習領域i内の中でもノッキング発生に対する内燃機関11の経時変化による影響のばらつきが大きい領域に、内燃機関11の運転状態(詳しくは、機関負荷KLおよび機関回転速度NE)に応じて区画された同基本学習領域iよりも更に細かい複数の多点学習領域nが設定されている。そして、上記多点学習値AGdp[n]は、それら多点学習領域n毎に設定されている。
この多点学習値AGdp[n]は、そのときどきの内燃機関11の運転状態が含まれる多点学習領域nに対応する値がフィードバック補正項Fに基づき更新される。詳しくは、前述した基本学習値AG[i]の更新と同様に、フィードバック補正項Fに徐変処理を施した値を新たな多点学習値AGdp[n]として記憶することにより、同多点学習値AGdp[n]の更新が行われる。
このように多点学習値AGdp[n]を更新することにより、ノッキング発生に対する内燃機関11の経時変化による影響のばらつきが大きい領域において、そのばらつきに応じて同領域を細分化した多点学習領域n毎の多点学習値AGdp[n]をそれぞれノッキングの発生を抑制するうえで適切な値とすることができる。
なお本実施の形態では、基本的に、そのときどきの内燃機関11の運転状態が多点学習領域n内にあるときには、その多点学習領域nの存在する基本学習領域iの基本学習値AG[i]の更新は行わず、多点学習値AGdp[n]の更新のみが行われる。すなわち、機関運転状態が多点学習領域nのいずれかに含まれる場合には多点学習値AGdp[n]のみが学習され、機関運転状態が多点学習領域n以外の領域に含まれる場合には、基本学習値AG[i]のみが学習される。また本実施の形態では、内燃機関11の暖機が完了していること、具体的には冷却水温度THWが開始温度T1(例えば83℃)以上であることを条件に、基本学習値AG[i]および多点学習値AGdp[n]の更新開始が許可される。これにより、ノッキング以外の要因による機関振動の強度(バックグラウンドレベル)が大きい内燃機関11の暖機完了前における基本学習値AG[i]および多点学習値AGdp[n]の更新が抑えられて、それら基本学習値AG[i]および多点学習値AGdp[n]が精度よく学習されるようになる。
そして点火時期指令値STを求める際に、そのときどきの内燃機関11の運転状態が複数の多点学習領域n内のいずれかに含まれるときには、多点学習値AGdp[n]として、同運転状態が含まれる多点学習領域nに対応する値が用いられる。一方、そのときどきの内燃機関11の運転状態が複数の多点学習領域nのうちのいずれにも含まれないときには、多点学習値AGdp[n]として「0」が設定される。すなわち、現在の機関運転状態が複数の多点学習領域nのうちのいずれにも含まれないときには、多点学習値AGdp[n]を用いることなく点火時期指令値STが算出されて、多点学習値AGdp[n]による点火時期の補正が行われない。
このようにして点火時期指令値STを求めることにより、基本学習領域i内にあってノッキング発生に対する内燃機関11の経時変化による影響のばらつきが大きい領域(多点学習領域n)では、ノック限界点火時期(BT−R)に対して基本学習値AG[i]と多点学習値AGdp[n]との双方によって補正が加えられるようになる。
これにより、基本学習領域i内であって内燃機関11の経時変化によるノッキング発生への影響のばらつきが大きい領域においても、その経時変化等に起因する内燃機関11での定常的なノッキングの発生を的確に抑制することができるようになる。言い換えれば、基本学習領域i内であって内燃機関11の経時変化によるノッキング発生への影響のばらつきが大きい領域において、点火時期が適正な時期より進角側に補正されてノッキングの発生を効果的に抑制できなくなったり点火時期が適正な時期より遅角側に補正されて内燃機関11の出力低下を招いたりするといった不具合の発生を抑えることができるようになる。
図3に、上記多点学習領域nの設定態様を示す。
図3に示すように、複数の多点学習領域nは、複数の基本学習領域iのうちの機関回転速度NEの変化方向について最も低回転側に存在する基本学習領域i[i=1]内において、機関負荷KLの変化方向について低負荷側の領域に設定されている。これは、こうした領域において、ノッキング発生に対する内燃機関11の経時変化に起因する影響の度合いのばらつきが大きくなるためである。そして、この領域が機関回転速度NEの変化方向において4つに区画されるとともに機関負荷KLの変化方向において6つに区画されることにより、同領域には合計で24の多点学習領域n(n=1〜24)が設定されている。なお本実施の形態では、多点学習領域nが第1の学習領域として機能し、多点学習値AGdp[n]が第1の学習値として機能し、基本学習領域i[i=1]の上記多点学習領域nを除く領域が第2の学習領域として機能し、基本学習領域i[i=1]に対応する基本学習値AG[i]が第2の学習値として機能する。
ここで、内燃機関11の経時変化の有無による点火時期指令値STの変化について、最も低回転側の基本学習領域i[i=1]内における多点学習領域nとそれ以外の領域との違いを説明する。
図4は、上記基本学習領域i[i=1]内における多点学習領域n以外の領域において、内燃機関11の経時変化の有無による点火時期指令値STの変化態様の一例を示したものである。なお、同図における実線および二点差線は共に機関回転速度NEが一定の条件のもとでの機関負荷KLの変化に対する点火時期指令値STの推移の一例を示しており、実線は内燃機関11の経時変化なしの条件下での推移の一例を、二点差線は同経時変化ありの条件下での推移の一例をそれぞれ示している。
図4に示すように、基本学習領域i[i=1]内における多点学習領域n以外の領域では、内燃機関11の経時変化が生じてノッキングが発生しやすくなると、点火時期指令値STが実線で示す状態から二点差線で示す状態へと機関負荷KLの変化方向について一律の幅をもって遅角側に変化する。この点火時期指令値STの遅角側への変化量は、内燃機関11の経時変化の発生に起因するノッキングの発生を抑えるために上記基本学習領域iの基本学習値AG[i]が遅角側に変化した変化分に対応している。そうした基本学習値AG[i]による点火時期の補正を通じて、上記基本学習領域i[i=1]内における多点学習領域n以外の領域においては、内燃機関11の経時変化によってノッキングが発生しやすくなることを抑制することが可能である。これは、上記領域内においては、ノッキングの発生に対する内燃機関11の経時変化による影響がほぼ一律となるためである。
一方、図5は、上記基本学習領域i[i=1]内における各多点学習領域nの設定された領域(ここでは例えばn=1〜6の多点学習領域nに対応する領域)において、内燃機関11の経時変化の有無による点火時期指令値STの変化を示したものである。なお同図における実線及び破線は共に機関回転速度NE一定の条件のもとでの機関負荷KLの変化に対する点火時期指令値STの推移の一例を示しており、実線は内燃機関11の経時変化なしの条件下での推移の一例を、破線は同経時変化ありの条件下での推移の一例をそれぞれ示している。
図5に示すように、基本学習領域i[i=1]内における多点学習領域nでは、内燃機関11の経時変化が生じてノッキングが発生しやすくなると、点火時期指令値STが実線で示される状態から破線で示される状態へと機関負荷KL毎に異なる幅をもって遅角側に変化する。この点火時期指令値STの遅角側への変化量には、上記基本学習値AG[i]の遅角側への変化分に加えて、内燃機関11の経時変化の発生に伴うノッキング発生を抑制するために各多点学習領域nの多点学習値AGdp[n]が遅角側に変化した分も含まれている。
本実施の形態では、そうした基本学習領域i[i=1]内にあって各多点学習領域nの設定された領域において、内燃機関11の経時変化によってノッキングが発生しやすくなることを、多点学習値AGdp[n]による点火時期の補正を通じて抑制可能である。これは、ノッキングの発生に対する内燃機関11の経時変化による影響の度合いが多点学習領域n毎に大きくばらつくとしても、そのばらつきを考慮して細分化した多点学習領域n毎の多点学習値AGdp[n]がそれぞれノック発生を抑制するうえで適切な値に更新され、それら多点学習値AGdp[n]を用いて点火時期の補正が行われるためである。
ちなみに、複数の多点学習領域nにおけるノッキングの発生に対する内燃機関11の経時変化による影響は、それら多点学習領域n(図3参照)のうちの機関回転速度NEが低い速度側に設定される領域ほど大きくなる。また、上記影響は、複数の多点学習領域nのうちの特定の機関負荷KL(例えば全ての多点学習領域nを含む機関負荷KLの幅における中央値)を含む領域において最も大きくなり、同領域から遠い領域ほど小さくなる。したがって、各多点学習値AGdp[n]は、内燃機関11の低回転側に位置する多点学習領域nに対応するものほど小さい値になるとともに、特定の機関負荷KLを含む多点学習領域nに近い領域に対応するものほど小さい値になる傾向がある。
ここで、例えばレギュラー燃料が備蓄されていた燃料タンク17にハイオク燃料が補給されるなど、それまで備蓄されていた燃料と異なる性状の燃料が燃料タンク17に補給されると、その後において内燃機関11に供給される燃料の性状が変化してノッキングの発生状況が変化するために、フィードバック補正項Fが大きく変化するようになる。
そのため、単に内燃機関11の運転状態に応じて多点学習値AGdp[n]が学習される状態と同学習が禁止される状態(基本学習値AG[i]が学習される状態)とを切り替えるようにすると、上述したように燃料タンク17内に燃料が補給される際に、以下のような不都合が生じる。すなわち、燃料補給直後における多点学習領域nでの内燃機関11の運転に際して、燃料性状の変化によって点火時期(詳しくは、フィードバック補正項F)が大きく変化するのにもかかわらず、これが内燃機関11の経時変化による点火時期の変化分(具体的には、経時変化による点火時期への影響の度合いのばらつき)を補償するための多点学習値AGdp[n]に反映されてしまう。これは基本学習値AG[i]と多点学習値AGdp[n]とを共にその補償対象に見合う値に精度良く学習する上で、それを妨げる一因となるために好ましくない。
そのため本実施の形態では、燃料タンク17への燃料補給が行われた可能性の有無を判定するとともに、その可能性が有ると判定したときに、その後の所定期間にわたって多点学習値AGdp[n]の学習が禁止される。
こうした多点学習値AGdp[n]の学習を禁止する処理(禁止処理)は、具体的には以下のように実行される。なお、この禁止処理は、所定のクランク角毎の割り込み処理として電子制御装置30により実行される。
この処理では、機関運転状態が複数の多点学習領域nのうちのいずれにも含まれない場合には、基本学習値AG[i]が学習される。これに対して、機関運転状態が複数の多点学習領域nのいずれかに含まれる場合には、内燃機関11の運転を開始するべく運転スイッチ35が操作された後に所定期間が経過したか否かが判断される。ここでは、基本学習値AG[i]の更新が所定回数(例えば20回)以上実行されたことをもって、所定期間が経過したと判断される。そして、上記所定期間が経過していないときには、このときの機関運転状態が多点学習領域nに含まれるとはいえ、同多点学習領域nが含まれる基本学習領域i[i=1]に対応する基本学習値AG[i]が学習される。一方、所定期間が経過している場合には、このときの機関運転状態が含まれる多点学習領域nに対応する多点学習値AGdp[n]が学習される。
こうした禁止処理を実行することにより以下のような作用効果が得られる。
通常、燃料タンク17への燃料補給は内燃機関11の運転を停止させた状態で行われるために、運転スイッチ35の操作による内燃機関11の運転開始時においては、その直前において燃料タンク17への燃料補給が行われた可能性があると云える。
本実施の形態では、内燃機関11の運転を開始するべく運転スイッチ35が操作された後において所定期間が経過していない場合に、機関運転状態が多点学習領域nであっても、同多点学習領域nが含まれる基本学習領域i[i=1]に対応する基本学習値AG[i]の学習が実行される。この場合には、内燃機関11の運転を開始するべく運転スイッチ35が操作されたために燃料タンク17への燃料補給が行われた可能性があり、内燃機関11に供給される燃料の性状が大きく変化する可能性があるとして、所定期間にわたって多点学習値AGdp[n]の学習が禁止されて、基本学習値AG[i]の学習が優先的に実行される。
これにより、異なる性状の燃料が燃料タンク17に補給されたときに、その後の所定期間(言い換えれば、内燃機関11に供給される燃料の性状変化によってフィードバック補正項Fが大きく変化する期間)にわたって多点学習値AGdp[n]の学習を禁止することができる。そのため、燃料性状の変化に伴う点火時期の変化分が多点学習値AGdp[n]に反映されることを抑えることができる。また、このとき基本学習値AG[i]の学習が許容されるために、燃料性状の変化に伴う点火時期の変化分が同基本学習値AG[i]に反映される。そのため、基本学習値AG[i]により、燃料性状の変化に起因する点火時期の変化分が多点学習領域nおよびそれ以外の領域ともに補償されるようになる。さらに、本実施の形態では、多点学習値AGdp[n]の学習禁止時に、多点学習領域nにおけるフィードバック補正項Fに基づく基本学習値AG[i]の学習が実行される。そのため、多点学習値AGdp[n]の更新が禁止される期間(具体的には、所定期間に相当する期間)において基本学習値AG[i]の学習が実行されない比較例の装置と比較して、内燃機関11に供給される燃料の性状変化に伴う点火時期の変化分を基本学習値AG[i]に早期に反映させることができる。
しかも、所定期間が経過した後、すなわちそのようにして基本学習値AG[i]が学習された後においては、多点学習領域nにおける多点学習値AGdp[n]の学習が実行されるようになるために、内燃機関11の経時変化によって点火時期が変化すると、その変化分が多点学習値AGdp[n]に反映されるようになる。そのため、この多点学習値AGdp[n]によって、内燃機関11の経時変化による点火時期の変化分が補償されるようになる。
このように本実施の形態では、燃料補給時において基本学習値AG[i]と多点学習値AGdp[n]とを共にその補償対象の変化に見合う値に適切に学習することができ、点火時期の学習を適切に行うことができる。
本実施の形態では、上述した点火時期制御におけるノッキング発生の有無の判定(ノック判定)が以下のように実行される。
本実施の形態では、ノック判定期間におけるノックセンサ37の出力信号のピークホールド値VKPEAKの対数変換値LVPKが正規分布(図6に一例を示す)を示すとの前提に基づき、今回サンプリングされた対数変換値LVPKのその分布内での位置によりノッキング発生の有無の判定を行うノック判定方式が採用されている。なお、ノック判定期間としては、内燃機関11の気筒の圧縮上死点後の10°CAから90°CAの期間が設定されている。
図7に、上記ノック判定にかかる処理の実行手順を示す。同図に示される一連の処理は、所定周期毎の割り込み処理として電子制御装置30により実行される。
同図7に示すように、この処理の実行が開始されると先ず、ノック判定期間であるか否かが判断される(ステップS101)。そして、ノック判定期間である場合には(ステップS101:YES)、ノックセンサ37の出力信号のピークホールドが開始される(ステップS102)。すなわち、ノック判定期間におけるノックセンサ37の出力信号の最大値であるピークホールド値VKPEAKが求められる。
その後においてノック判定期間でなくなると(ステップS103:NO)、その時点でのピークホールド値VKPEAKが読み込まれるとともに(ステップS104)、同ピークホールド値VKPEAKの対数変換値LVPKに基づいてノック判定値が変更更新される(ステップS105)。詳しくは、上記対数変換値LVPKの分布傾向を示す分布パラメータ(具体的には、図6に示す分布中央値VMEDおよび標準偏差値SGM)の変更更新が行われる。
ここでは、その更新が以下の(イ)〜(ニ)に記載する各更新態様により行われる。詳しくは、分布中央値VMEDおよび標準偏差値SGMの更新前の値を今回サンプリングされたピークホールド値VKPEAKの対数変換値LVPKとの対比に基づき増減することにより、分布中央値VMEDおよび標準偏差値SGMが概算により求められる。
(イ)対数変換値LVPKが分布中央値VMEDより大きいときには(LVPK>VMED)、分布中央値VMEDに所定量ΔMを加算した値が新たな分布中央値VMEDとして算出される(VMED←VMED+ΔM)。
(ロ)対数変換値LVPKが分布中央値VMED以下であるときには(LVPK≦VMED)、分布中央値VMEDから所定量ΔMを減算した値が新たな分布中央値VMEDとして算出される(VMED←VMED−ΔM)。
(ハ)対数変換値LVPKが分布中央値VMEDから標準偏差値SGMを減算した値より大きく且つ分布中央値VMEDより小さいときには(VMED−SGM<LVPK<VMED)、標準偏差値SGMから所定量ΔSを二倍した値を減算した値が新たな標準偏差値SGMとして算出される(SGM←SGM−2×ΔS)。
(二)対数変換値LVPKが分布中央値VMEDから標準偏差値SGMを減算した値以下であるとき、または対数変換値LVPKが分布中央値VMED以上であるときには(LVPK≦VMED−SGM、またはLVPK≧VMED)、標準偏差値SGMに所定量ΔSを加算した値が新たな標準偏差値SGMとして算出される(SGM←SGM+ΔS)。
なお、上記(イ)および(ロ)における分布中央値VMEDの更新量(所定量ΔM)としては、今回サンプリングされた対数変換値LVPKと更新前の分布中央値VMEDとの差を所定値n1(例えば「4」)で除算した値が用いられる。また、上記(ハ)および(ニ)における標準偏差値SGMの更新量(所定量ΔS)としては、上記所定量ΔMを所定値n2(例えば「8」)で除算した値が用いられる。
また上記ステップS105の処理においては、内燃機関11の暖機が完了していること(具体的には、冷却水温度THWが前記開始温度T1以上であること)を条件に、ノック判定値(分布中央値VMEDおよび標準偏差値SGM)の変更開始が許可される。これにより、バックグラウンドレベルが小さい状況になった後においてのみノック判定値の変更開始が許可されるようになり、同ノック判定値が実情に見合う適正な値に更新されるようになる。本実施の形態では、ステップS105の処理が変更手段および禁止手段として機能する。
そして、こうして更新された分布パラメータに基づいて、以下の関係式(3)から、ノック判定値が設定される。なお、関係式(3)における「u」は、u値と呼ばれる係数であり、機関回転速度NEに基づき算出される。

ノック判定値←VMED+u×SGM …(3)

そして、このようにして求められたノック判定値と今回サンプリングされた対数変換値LVPKとの対比に基づいて、ノック判定が行われる(図7のステップS106)。具体的には、今回サンプリングされた対数変換値LVPKがノック判定値以下である場合にはノッキングが発生していないと判定される一方、今回サンプリングされた対数変換値LVPKがノック判定値より大きい場合にはノッキングが発生していると判定される。
本実施の形態にかかる車両10は、その燃費改善やエミッション低減を図るべく交差点等で車両10が停止したときに内燃機関11を自動停止させるとともに同自動停止中における任意のタイミングで内燃機関11を自動始動して車両10を発進可能とさせる自動停止始動機能を備えている。
以下、そのようにして内燃機関11を自動停止させる処理(自動停止処理)および同内燃機関11を自動始動させる処理(再始動処理)について、図8および図9を参照して説明する。なお、図8は自動停止処理の処理手順を示すフローチャートであり、図9は再始動処理の処理手順を示すフローチャートである。また、これらフローチャートに示される一連の処理は、それぞれ所定周期毎の割り込み処理として、電子制御装置30により実行される。
ここでは先ず、図8を参照して、自動停止処理の処理手順を説明する。
同図8に示されるように、この処理では先ず、上記各種のセンサ類の出力信号を通じて車両10や内燃機関11の運転状態が読み込まれるとともに(ステップS201)、それらの運転状態から自動停止条件が成立したか否かが判断される(ステップS202)。具体的には、例えば以下の各条件[条件1]〜[条件5]が全て満たされたことをもって、自動停止条件が成立したと判断される。
[条件1]内燃機関11の暖機が終了していること(冷却水温度THWが水温下限値より高いこと)。
[条件2]アクセルペダルが踏まれていないこと(アイドルスイッチが「オン」されていること)。
[条件3]ブレーキペダルが踏み込まれていること(ブレーキスイッチが「オン」されていること)。
[条件4]車両10が停止していること。
[条件5]上記[条件1]〜[条件4]の全てが満たされた後において、内燃機関11の自動停止が実行された履歴がないこと。
そして、上記[条件1]〜[条件5]のいずれか一つでも満足されていない場合には(ステップS202:NO)、自動停止条件が成立しておらず、内燃機関11の自動停止を実行する条件下にないとして、本処理は一旦終了される。その後、交差点にて車両10が停止する等して、上記自動停止条件が成立したと判断されるようになると(ステップS202:YES)、例えば内燃機関11への燃料供給が停止される等して、内燃機関11の運転が停止される(S203)。そしてその後、本処理は一旦終了される。
次に、図9を参照して、再始動処理の処理手順を説明する。
同図9に示されるように、この処理では先ず、上記各種のセンサ類の出力信号を通じて車両10や内燃機関11の運転状態が読み込まれるとともに(ステップS301)、それらの運転状態から再始動条件が成立したか否かが判断される(ステップS302)。具体的には、上述した自動停止処理を通じて内燃機関11が停止状態にあるとの条件下において、上記[条件1]〜[条件4]のうちの1つでも満足されなくなった場合に再始動条件が成立したと判断される。
そして、内燃機関11が自動停止されていない場合、あるいは内燃機関11が自動停止されている場合であっても上記[条件1]〜[条件4]の全てが満足されている場合には(ステップS302:NO)、再始動条件が成立しておらず、内燃機関11の再始動を実行する条件下にないとして、本処理は一旦終了される。その後、内燃機関11の自動停止状態において上記[条件1]〜[条件4]の一つでも満足されなくなると(ステップS302:YES)、再始動条件が成立したとして、内燃機関11を再始動させる処理が実行される(ステップS303)。具体的には、前記モータ13が駆動されて前記クランキング動作の実行が開始される。また、これに併せて周知の燃料噴射制御や点火時期制御が実行されて、内燃機関11が再始動される。そしてその後、本処理は一旦終了される。
ところで、上記車両10では、内燃機関11の運転が間欠的に停止されたときに、同内燃機関11の内部において燃焼熱が発生しなくなることにより、自然放熱による機関温度の低下を招くことがある。そして、これに伴って冷却水温度THWが開始温度T1より低くなるようなことがあると、単に冷却水温度THWが開始温度T1より低くなった場合に基本学習値AG[i]および多点学習値AGdp[n]の更新を禁止する比較例の装置では、それら基本学習値AG[i]および多点学習値AGdp[n]を更新することができなくなってしまう。
本実施の形態にかかる装置では、図10[a]に示すようにフィードバック補正項Fが変化した場合であっても、前記合計学習値AGT(詳しくは、基本学習値AG[i]や多点学習値AGdp[n])の更新が継続されていれば、フィードバック補正項Fとその基準値(具体的には「0」)との差分が同合計学習値AGTに移行される。これにより、同図[b]に示すようにフィードバック補正項Fが基準値に近い値になり、機関運転状態が他の学習領域に移行したとしても(同図[b]→同図[c])、移行前の学習領域におけるフィードバック補正項Fの変化分が移行後の学習領域に反映され難くなる。そのため、フィードバック補正項Fの変化に起因する点火時期(詳しくは、点火時期指令値ST)の不要な変化は小さく抑えられる。
ただし、上記比較例の装置のように内燃機関11の温度の低下によって合計学習値AGTの更新が許可されなくなると、同図[d]に示すように上記差分が合計学習値AGTに移行されずにフィードバック補正項Fに含まれたままになって同フィードバック補正項Fと基準値との差(同図中に「A」で示す量)が大きくなる。そのため、仮にフィードバック補正項Fが特定の学習領域に見合う値(上記差A)になっている状態(同図[d]に示す状態)で機関運転状態が他の学習領域に変化したとすると(同図[d]→同図[e])、移行前の学習領域におけるフィードバック補正項Fの変化分が移行後の学習領域に反映されてしまう。したがって、この場合には上記差Aに起因してフィードバック補正項Fが移行後の学習領域に見合う値にならなくなって点火時期の不要な変化を招くおそれがある。具体的には、点火時期が過度に進角側の値になってノッキングが発生したり、過度に遅角側の値になって燃焼状態の悪化を招いたりするおそれがある。
この点をふまえて本実施の形態では、基本学習値AG[i]および多点学習値AGdp[n]の更新開始が一旦許可された後において、冷却水温度THWが前記開始温度T1を下回った場合であっても、同冷却水温度THWが上記開始温度T1より低い停止温度T2(例えば70℃)以上で維持されている限り、それら基本学習値AG[i]および多点学習値AGdp[n]の更新継続を許可するようにしている。
ここで水温センサ40を通じて検出される冷却水温度THWが同一の状況であっても、内燃機関11の温度が一旦十分に高くなった後に同内燃機関11の間欠停止によって機関温度が低下するときには、内燃機関11の暖機完了前における機関温度の上昇過程であるときと比較して、内燃機関11の内部の温度が高い温度に保たれていることが多い。そのため、このとき前記バックグラウンドレベルが比較的小さい状況、言い換えればフィードバック補正項Fに基づいて基本学習値AG[i]および多点学習値AGdp[n]を精度よく学習することのできる状況であると云える。
本実施の形態では、冷却水温度THWが低いときであっても、機関温度が一旦十分に高くなった後において低下している途中であれば、機関内部の温度が高い温度で維持されている可能性が高く基本学習値AG[i]および多点学習値AGdp[n]の学習を精度良く実行することの可能な状況であるとして、その学習が停止されずに継続される。これにより、基本学習値AG[i]および多点学習値AGdp[n]の学習精度の低下を抑えつつそれら基本学習値AG[i]および多点学習値AGdp[n]の更新が停止される期間を短縮することができ、フィードバック補正項Fの基準値からのずれが大きくなることを抑えることができる。そのため、学習領域の変化に際して上記ずれの増大に起因して生じる内燃機関11の点火時期の不要な変化を抑えることができるようになり、同点火時期を好適に調節することができるようになる。
以下、そのようにして基本学習値AG[i]および多点学習値AGdp[n]の更新を許可する処理(更新許可処理)について図11および図12を参照しつつ説明する。
なお図11は上記更新許可処理の具体的な実行手順を示すフローチャートであり、このフローチャートに示される一連の処理は、所定周期毎の割り込み処理として電子制御装置30により実行される。また図12は上記更新許可処理の実行態様の一例を示すタイミングチャートである。
この処理では先ず、冷却水温度THWが前記開始温度T1以上であるか否かが判断される(図11のステップS401)。そして、冷却水温度THWが開始温度T1未満であり(ステップS401:NO、図12の時刻t1以前)、開始フラグがオフ操作されている場合には(図11のステップS402:NO)、以下の処理が実行されることなく(以下の処理をジャンプして)、本処理は一旦終了される。すなわち、このとき未だ内燃機関11の暖機が完了しておらず、バックグラウンドレベルが大きい状態であるとして、基本学習値AG[i]や多点学習値AGdp[n]、ノック判定値の更新が許可されない。なお上記開始フラグは、車両10の運転を開始するべく運転スイッチ35が操作されたときには「オフ」状態であり、本処理において基本学習値AG[i]および多点学習値AGdp[n]の更新が許可されるとオン操作されるフラグである。
その後において本処理が繰り返し実行されて、冷却水温度THWが開始温度T1以上になると(図11のステップS401:YES)、開始フラグがオン操作される(ステップS403、図12の時刻t1)。そして、このとき内燃機関11の温度が十分に高くなってバックグラウンドレベルが小さくなったとして、ノック判定値の更新が許可されるとともに(図11のステップS404)、基本学習値AG[i]および多点学習値AGdp[n]の更新が許可された後(ステップS405)、本処理は一旦終了される。そして、冷却水温度THWが開始温度T1以上で維持される期間においては(ステップS401:YES)、基本学習値AG[i]や多点学習値AGdp[n]、ノック判定値の更新が許可され続ける(図12における時刻t1〜t2,t3〜t4)。
冷却水温度THWが一旦開始温度T1以上になった後に、内燃機関11の運転が間欠的に停止されて冷却水温度THWが開始温度T1未満になると(図11のステップS401:NO且つステップS402:YES、図12の時刻t2〜t3,t4以降)、冷却水温度THWが停止温度T2以上であるか否かが判断される(図11のステップS406)。この停止温度T2としては、基本学習値AG[i]および多点学習値AGdp[n]の学習精度の低下抑制と学習領域の変化時における点火時期の不要な変化の抑制とを両立させることのできる温度が実験やシミュレーションの結果をもとに予め求められて電子制御装置30に記憶されている。
そして、冷却水温度THWが停止温度T2以上である場合には(ステップS406:YES)、ノック判定値の更新を禁止した後(ステップS407)、本処理は一旦終了される。この場合には冷却水温度THWが低いとはいえ、機関温度が一旦十分に高くなった後において低下している途中であり、基本学習値AG[i]および多点学習値AGdp[n]の学習を比較的精度良く実行することの可能な状況であるとして、その学習が停止されずに継続される。これにより、フィードバック補正項Fの基準値からのずれが大きくなることが抑えられ、学習領域の変化に際して同ずれの増大に起因して生じる内燃機関11の点火時期の不要な変化が抑えられて、該点火時期が好適に調節されるようになる。
また本実施の形態では、内燃機関11の運転を開始するべく運転スイッチ35が操作されてから基本学習値AG[i]が所定回数だけ更新されるまでの所定期間において多点学習値AGdp[n]が更新されない状況になる。そのため内燃機関11の間欠停止に伴う機関温度の低下によって基本学習値AG[i]の更新が禁止されてしまうと、その分だけ上記所定期間が長くなって、多点学習値AGdp[n]の更新開始が遅れてしまう。この点、本実施の形態では、基本学習値AG[i]の更新が禁止される期間の短縮を図ることができ、同基本学習値AG[i]の所定回数の更新が早期に完了するようになるために、多点学習値AGdp[n]の学習を早期に開始することができるようになる。
なお、内燃機関11の温度が一旦十分に高くなった後に低下している途中においては上記バックグラウンドレベルが小さいものの、同バックグラウンドレベルは内燃機関11の温度が十分に高いときと比べると若干大きい。そのため、このときノックセンサ37により検出される内燃機関11の振動の強度に基づいてノック判定値を変更すると、同ノック判定値が適切な値からずれてノッキング発生の判定精度の低下を招くおそれがある。本実施の形態では、そうした状況において、基本学習値AG[i]および多点学習値AGdp[n]の更新は許可されるものの、ノック判定値の更新が禁止される。そのため、ノック判定値が誤って変更されることを回避することができ、同ノック判定値に基づくノッキング発生の判定における判定精度の低下を抑えることができる。
このように内燃機関11の間欠停止による機関温度の低下時においてノック判定値の更新が禁止された後、内燃機関11の運転再開に伴って一旦低下した冷却水温度THWが開始温度より高くなると(ステップS401:YES、図12の時刻t3)、ノック判定値の更新も再開されるようになる(図11のステップS404)。
なお、図12に示す例のように、冷却水温度THWが停止温度T2を下回らない場合には、基本学習値AG[i]および多点学習値AGdp[n]の更新が中断されないために、上記フィードバック補正項Fと基準値とのずれによる点火時期の不安定化が的確に抑えられるようになる。
これに対して、同図中に一点鎖線で併せ示すように、内燃機関11の運転の間欠停止による温度低下によって冷却水温度THWが停止温度T2を下回ると(図11のステップS406:NO、図12の時刻t5)、開始フラグがオフ操作されるとともに(図11のステップS408)、基本学習値AG[i]および多点学習値AGdp[n]の更新が禁止された後(図11のステップS409)、本処理は一旦終了される。この場合には、一旦内燃機関11の暖機が完了した後における機関温度の低下途中であるとはいえ、機関温度がごく低くなってバックグラウンドレベルが大きくなっており、基本学習値AG[i]および多点学習値AGdp[n]として適切な値を学習することができなくなるおそれがあるとして、その更新が禁止される。これにより、基本学習値AG[i]および多点学習値AGdp[n]の学習精度の低下による点火時期の不安定化が抑えられるようになる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、以下に記載する効果が得られるようになる。
(1)基本学習値AG[i]および多点学習値AGdp[n]の更新開始が一旦許可された後に冷却水温度THWが開始温度T1を下回った場合であっても、同冷却水温度THWが開始温度T1より低い停止温度T2以上で維持されている限り、それら基本学習値AG[i]および多点学習値AGdp[n]の更新継続を許可するようにした。そのため、学習領域の変化に際してフィードバック補正項Fの基準値からのずれの増大に起因して生じる内燃機関11の点火時期の不要な変化を抑えることができ、同点火時期を好適に調節することができる。
(2)冷却水温度THWが一旦開始温度T1以上になった後に同開始温度T1より低くなったときに、基本学習値AG[i]および多点学習値AGdp[n]の更新を許可する一方、ノック判定値の更新を禁止するようにした。そのため、ノック判定値が誤って変更されることを回避することができ、同ノック判定値に基づくノッキング発生の判定における判定精度の低下を抑えることができる。
(3)内燃機関11の経時変化によるノッキング発生への影響のばらつきが大きい多点学習領域nでは、同経時変化による点火時期の変化分を補償することの可能な値を各多点学習値AGdp[n]として学習することができる。また、上記影響のばらつきが小さい基本学習領域iでは、内燃機関11の経時変化以外の要因による点火時期の変化分を補償することの可能な値を基本学習値AG[i]として学習することができる。そして、そのようしてノッキングの発生要因に応じたかたちで各別に学習された多点学習値AGdp[n]および基本学習値AG[i]に基づいて点火時期指令値STを設定することにより、点火時期を適正に制御することができるようになる。しかも、そうした装置において、フィードバック補正項Fの基準値からのずれの増大に起因して生じる内燃機関11の点火時期の不要な変化を抑えることができるようになる。
(4)内燃機関11の運転を開始するべく運転スイッチ35が操作された後において所定期間が経過していない場合に、機関運転状態が多点学習領域nであっても、同多点学習領域nが含まれる基本学習領域i[i=1]に対応する基本学習値AG[i]の学習を実行するようにした。そのため、燃料補給時において基本学習値AG[i]と多点学習値AGdp[n]とを共にその補償対象の変化に見合う値に適切に学習することができ、点火時期の学習を適切に行うことができる。
なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記実施の形態では、更新許可処理(図11)のステップS401の処理やステップS406の処理において冷却水温度THWを内燃機関11の温度の指標値として用いるようにした。これに代えて、内燃機関11の温度についての他の指標値であるオイル温度や同内燃機関11の温度そのものを新たに設けた温度センサによって検出して用いることができる。
・停止温度T2を可変設定してもよい。停止温度T2の設定に用いる設定パラメータとしては、例えば冷却水温度THWの低下速度や、内燃機関11の間欠停止の実行状況、冷却水温度THWが開始温度T1未満になった後の経過時間などを採用することができる。要は、上記設定パラメータに基づき推定される機関内部の温度に応じたかたちで停止温度T2を設定すればよい。これにより、バックグラウンドノイズが大きくなったときにおいて的確に基本学習値AG[i]および多点学習値AGdp[n]の更新を禁止することができるようになる。
・基本学習値AG[i]および多点学習値AGdp[n]の更新開始を許可するための温度判定値とノック判定値の更新を禁止する温度判定値として、同一の温度(上記実施の形態では、開始温度T1)を設定することに限らず、異なる温度を設定するようにしてもよい。こうした構成によれば、基本学習値AG[i]および多点学習値AGdp[n]の更新開始の許可とノック判定値の更新禁止とをそれぞれ適切なタイミングで行うことが可能になる。
・上記実施の形態にかかる点火時期制御装置は、所定期間にわたって多点学習値AGdp[n]の学習を禁止して基本学習値AG[i]の学習を優先的に実行する処理が実行されない装置にも、その構成を適宜変更した上で適用することができる。
・内燃機関11の点火時期制御の実行態様は任意に変更することができる。上記実施の形態にかかる点火時期制御装置は、所定期間にわたって多点学習値AGdp[n]の学習を禁止して基本学習値AG[i]の学習を優先的に実行する処理が実行されない装置や、多点学習領域nが設定されない装置、ノック判定値として予め定められた所定値が用いられる装置等にも、その構成を適宜変更した上で適用可能である。
・本発明は、車両駆動源としての内燃機関の運転を間欠的に停止させる間欠停止制御が実行される車両であれば、自動停止始動機能を備える車両に限らず、車両駆動源として内燃機関と電動機とを備えたハイブリッド車両などにも適用することができる。
10…車両、11…内燃機関、12…クランクシャフト、13…モータ、14…燃焼室、15…吸気通路、16…燃料噴射弁、17…燃料タンク、18…燃料ポンプ、19…点火プラグ、20…ピストン、21…排気通路、22…スロットルバルブ、30…電子制御装置、31…速度センサ、32…アクセルセンサ、33…アイドルスイッチ、34…ブレーキスイッチ、35…運転スイッチ、36…スロットルセンサ、37…ノックセンサ、38…空気量センサ、39…クランクセンサ、40…水温センサ。

Claims (5)

  1. 車両駆動源としての内燃機関の運転を間欠的に停止させる間欠停止制御が実行される車両に適用されて、前記内燃機関の運転状態に基づき設定した基本値をノッキング発生の有無に応じて更新されるフィードバック補正項と同フィードバック補正項に基づき更新される学習値とにより補正して点火時期の制御目標値を設定し、前記内燃機関の運転状態により区画される複数の学習領域を設定するとともにそれら学習領域について各別に前記学習値を定め、前記内燃機関の温度を検出して該検出した温度が第1の所定温度以上であることを条件に前記学習値の更新開始を許可する内燃機関の点火時期制御装置において、
    前記更新開始を許可した後に、前記内燃機関の温度が前記第1の所定温度より低い第2の所定温度以上であることを条件に前記学習値の更新継続を許可する
    ことを特徴とする内燃機関の点火時期制御装置。
  2. 請求項1に記載の内燃機関の点火時期制御装置において、
    前記内燃機関の振動の強度を検出するノックセンサが設けられてなるとともに、同ノックセンサにより検出される振動の強度とノック判定値との比較に基づいてノッキングの有無を判定するものであり、
    前記ノックセンサにより検出される振動の強度に基づいて前記ノック判定値を変更する変更手段と、前記検出する内燃機関の温度が前記第1の所定温度以上であることを条件に前記ノック判定値の変更開始を許可するとともに、前記検出する内燃機関の温度が前記第1の所定温度以下の温度である第3の所定温度より低いときに前記ノック判定値の変更を禁止する禁止手段とを備える
    ことを特徴とする内燃機関の点火時期制御装置。
  3. 請求項1または2に記載の内燃機関の点火時期制御装置において、
    前記複数の学習領域として前記内燃機関の経時変化による点火時期への影響のばらつきが大きい第1の学習領域と前記影響のばらつきが小さい第2の学習領域とを含む領域が定められてなり、前記第1の学習領域は機関運転状態に応じて区画された複数の多点学習領域からなるとともにそれら多点学習領域毎に前記第1の学習値が設定されてなり、
    前記第1の学習領域では前記複数の多点学習領域のうちの現在の機関運転状態が含まれる領域についての前記第1の学習値を更新し、前記第2の学習領域では第2の学習値を更新し、
    前記第1の学習領域では前記第1の学習値および前記第2の学習値によって前記基本値を補正して前記制御目標値を設定し、前記第2の学習領域では前記第2の学習値のみによって前記基本値を補正して前記制御目標値を設定する
    ことを特徴とする内燃機関の点火時期制御装置。
  4. 請求項3に記載の内燃機関の点火時期制御装置において、
    前記第1の学習値および前記第2の学習値は共に、所定周期毎に実行される学習処理を通じて更新される値であり、
    前記学習処理は、前記第1の学習領域において前記第1の学習値の更新を禁止するとともに前記フィードバック補正項に基づく前記第2の学習値の更新を実行するとの処理を、前記内燃機関の運転を開始するべく運転スイッチが操作されてから前記第2の学習値が所定回数だけ更新されるまでの所定期間にわたって実行する
    ことを特徴とする内燃機関の点火時期制御装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関の点火時期制御装置において、
    前記内燃機関の温度として、その指標値である機関冷却水の温度を検出する
    ことを特徴とする内燃機関の点火時期制御装置。
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