JP2022088915A - ゴム組成物及びタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた低転がり抵抗性と、高温時の耐カットチップ性を両立するタイヤを製造することができるゴム組成物、及び優れた低転がり抵抗性と、高温時の耐カットチップ性を両立するタイヤを提供する。【解決手段】イソプレン系ゴム及び変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを含むゴム成分と、前記ゴム成分100質量部に対して10質量部以上55質量部未満のシリカを含む充填剤と、加硫剤と、グアニジン系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤及びスルフェンアミド系加硫促進剤を含む加硫促進剤とを含有し、前記充填剤中の前記シリカの含有量が70質量%以上であり、前記グアニジン系加硫促進剤と前記チアゾール系加硫促進剤との合計質量(gt)と、前記スルフェンアミド系加硫促進剤と前記加硫剤との合計質量(ss)との比gt/ssが2.7以上であるゴム組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、ゴム組成物及びタイヤに関する。
従来、タイヤの転がり抵抗を改善するため、ゴム組成物に含める加硫促進剤の種類、配合量等を調整することが行われてきた。
例えば、特許文献1では、未加硫ゴム組成物の粘度を高くさせることなく、シランカップリング剤のカップリング機能の活性をさらに高めて、未加硫ゴム組成物の作業性を低下させることなく、好適に低発熱となるゴム組成物を得るために、100℃におけるムーニー緩和率(MSR)が0.40~0.70の共役ジエン系重合体ゴムを含むゴム成分(A)、無機充填剤(B)を含む充填剤、シランカップリング剤(C)、及びジアルキルジチオリン酸亜鉛、グアニジン類、スルフェンアミド類、チアゾール類、チウラム類、チオウレア類、ジチオカルバミン酸類及びキサントゲン酸類から選択される少なくとも一種の促進剤(D)を配合してなるゴム組成物の製造方法であって、該ゴム組成物を複数段階で混練し、混練の第一段階で該ゴム成分(A)、該無機充填材(B)の全部又は一部、該シランカップリング剤(C)の全部又は一部、及び該促進剤(D)を加えて混練している。
特開2016-108516号公報
しかし、特許文献1に示されるゴム組成物では、低転がり抵抗性と、高温時の耐カットチップ性を両立するタイヤを製造するには、検討の余地があった。
本発明は、優れた低転がり抵抗性と、高温時の耐カットチップ性を両立するタイヤを製造することができるゴム組成物、及び優れた低転がり抵抗性と、高温時の耐カットチップ性を両立するタイヤを提供することを目的とし、該目的を解決することを課題とする。
<1> イソプレン系ゴム及び変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを含むゴム成分と、
前記ゴム成分100質量部に対して10質量部以上55質量部未満のシリカを含む充填剤と、
加硫剤と、
グアニジン系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤及びスルフェンアミド系加硫促進剤を含む加硫促進剤と
を含有し、
前記充填剤中の前記シリカの含有量が70質量%以上であり、
前記グアニジン系加硫促進剤と前記チアゾール系加硫促進剤との合計質量(gt)と、前記スルフェンアミド系加硫促進剤と前記加硫剤との合計質量(ss)との比gt/ssが2.7以上であるゴム組成物。
<2> 更に、前記ゴム成分100質量部に対し0質量部を超え11質量部以下の軟化剤を含有する<1>に記載のゴム組成物。
<3> 前記加硫剤が硫黄である<1>又は<2>に記載のゴム組成物。
<4> 更に、前記シリカ100質量部に対して10質量部より多いシランカップリング剤を含有する<1>~<3>のいずれか1つに記載のゴム組成物。
<5> 前記変性スチレン-ブタジエン共重合体の結合スチレン量が25%以上である<1>~<4>のいずれか1つに記載のゴム組成物。
<6> 前記ゴム成分中の前記変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの含有量が、10~45質量%である<1>~<5>のいずれか1つに記載のゴム組成物。
<7> 前記充填剤は、更に、カーボンブラックを含む<1>~<6>のいずれか1つに記載のゴム組成物。
<8> 前記変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、重量平均分子量が20×10以上300×10以下であって、前記変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの総量に対して、分子量が200×10以上500×10以下である変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを0.25質量%以上30質量%以下含み、収縮因子(g’)が0.64未満である<1>~<7>のいずれか1つに記載のゴム組成物。
<9> 前記変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、分岐を有し、分岐度が5以上である<1>~<8>のいずれか1つに記載のゴム組成物。
<10> 前記変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、1以上のカップリング残基と、該カップリング残基に対して結合するスチレン-ブタジエン共重合体ゴム鎖と、を有し、
前記分岐は、1の前記カップリング残基に対して5以上の前記スチレン-ブタジエン共重合体ゴム鎖が結合している分岐を含む<9>に記載のゴム組成物。
<11> 前記変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムが、下記式(I)で表される<1>~<10>のいずれか1つに記載のゴム組成物。
Figure 2022088915000001
式(I)中、Dは、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム鎖を示す。R、R及びRは、それぞれ独立して単結合又は炭素数1~20のアルキレン基を示す。R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキル基を示す。R、R、及びRは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を示す。R及びR10は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキレン基を示す。R11は、水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を示す。m及びxは、それぞれ独立して1~3の整数を示し、x≦mである。pは、1又は2を示す。yは、1~3の整数を示し、y≦(p+1)である。zは、1又は2の整数を示す。iは、0~6の整数を示し、jは、0~6の整数を示し、kは、0~6の整数を示し、(i+j+k)は、3~10の整数である。((x×i)+(y×j)+(z×k))は、5~30の整数である。Aは、炭素数1~20の、炭化水素基、又は、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子及びリン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を有し、かつ、活性水素を有しない有機基を示す。
<12> 前記式(I)において、Aは、下記式(II)、下記式(III)、下記式(IV)、又は下記式(V)で表される<11>に記載のゴム組成物。
Figure 2022088915000002
Figure 2022088915000003
Figure 2022088915000004
Figure 2022088915000005
式(II)中、Bは、単結合又は炭素数1~20の炭化水素基を示す。aは、1~10の整数を示す。
式(III)中、Bは、単結合又は炭素数1~20の炭化水素基を示し、Bは、炭素数1~20のアルキル基を示す。aは、1~10の整数を示す。
式(IV)中、Bは、単結合又は炭素数1~20の炭化水素基を示す。aは、1~10の整数を示す。
式(V)中、Bは、単結合又は炭素数1~20の炭化水素基を示す。aは、1~10の整数を示す。
<13> 前記変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを、下記式(VI)で表されるカップリング剤と反応させてなる<1>~<12>のいずれか1つに記載のゴム組成物。
Figure 2022088915000006
式(VI)中、R12、R13及びR14は、それぞれ独立して単結合又は炭素数1~20のアルキレン基を示す。R15、R16、R17、R18及びR20は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキル基を示す。R19及びR22は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキレン基を示す。R21は、炭素数1~20の、アルキル基又はトリアルキルシリル基を示し、mは、1~3の整数を示す。pは、1又は2を示す。i、j及びkは、それぞれ独立して0~6の整数を示す。但し、(i+j+k)は、3~10の整数である。Aは、炭素数1~20の、炭化水素基、又は、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子及びリン原子からなる群から選択される少なくとも一種の原子を有し、活性水素を有しない有機基を示す。
<14> 前記式(VI)で表されるカップリング剤が、テトラキス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、及びテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも一種である<13>に記載のゴム組成物。
<15> <1>~<14>のいずれか1つに記載のゴム組成物を用いたタイヤ。
本発明によれば、優れた低転がり抵抗性と、高温時の耐カットチップ性を両立するタイヤを製造することができるゴム組成物、及び優れた低転がり抵抗性と、高温時の耐カットチップ性を両立するタイヤを提供することができる。
以下に、本発明をその実施形態に基づき詳細に例示説明する。
なお、以下の説明において、数値範囲を示す「A~B」の記載は、端点であるA及びBを含む数値範囲を表し、「A以上B以下」(A<Bの場合)、又は「A以下B以上」(B<Aの場合)を表す。
また、質量部及び質量%は、それぞれ、重量部及び重量%と同義である。
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、イソプレン系ゴム及び変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを含むゴム成分と、ゴム成分100質量部に対して10質量部以上55質量部未満のシリカを含む充填剤と、加硫剤と、グアニジン系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤及びスルフェンアミド系加硫促進剤を含む加硫促進剤とを含有し、充填剤中のシリカの含有量が70質量%以上であり、グアニジン系加硫促進剤とチアゾール系加硫促進剤との合計質量(gt)と、スルフェンアミド系加硫促進剤と加硫剤との合計質量(ss)との比gt/ssが2.7以上である。
近年は、低燃費性の需要が高まっている。ゴム組成物中の充填剤の量が多いと、低燃費性が低下する傾向にあるため、ゴム組成物中の充填剤の含有量を低減することが求められている。しがし、一般に、シリカのような充填剤は、加硫ゴムの剛性を高めるために、ゴム組成物に含められ、ゴム組成物中の充填剤の含有量が多いほど加硫ゴムが硬くなり、少ないと柔らかくなる傾向にある。ゴム組成物中の充填剤の含有量が少なくなると、加硫ゴムの剛性が低下する可能性があり、特に高温時の耐カットチップ性が低下することがあった。ゴム組成物を加硫するとき、加硫温度は最高で190℃になることがある。ゴム組成物を、金型を用いて加硫し、成形するとき、ゴム組成物中の充填剤の含有量が少ないと、加硫ゴムの一部が離型せずにもげてしまうことがあった。
これに対し、本発明のゴム組成物は、ゴム組成物中の充填剤の含有量が、ゴム成分100質量部に対して55質量部未満となる少ない量でありながら、高温時の耐カットチップ性を実現することができる。かかる理由は定かではない。
本発明のゴム組成物は、充填剤としてシリカを用い、かつその含有量を少なく抑制することで、充填剤同士の擦れを抑制し、低転がり抵抗性を有すると考えられる。更に、ゴム成分としてソプレン系ゴム及び変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを含むことで、加硫ゴムの剛性を高め、低転がり抵抗性をすることができると考えられる。更に、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムが変性されていることで、充填剤との親和性が高まり、ゴム組成物中のシリカの分散性を高めることができると考えられる。結果として、加硫ゴム中の充填剤同士の擦れをより抑制し、低転がり抵抗性を有すると考えられる。
以上から、本発明のゴム組成物をタイヤに適用すれば、優れた低転がり抵抗性と、高温時の耐カットチップ性を両立することができる。
なお、本発明において、高温時の耐カットチップ性における高温とは、100℃以上を意味する。本発明のゴム組成物から得られる加硫ゴム及びタイヤは、一般的な加硫の最高温度と同等の温度において、加硫ゴムが優れた耐カットチップ性を有する。
以下、ゴム組成物に含まれる各成分について、詳細に説明する。
〔ゴム成分〕
ゴム成分は、イソプレン系ゴム及び変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを含む。
以下、「変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴム」を、単に、「変性SBR」と称することがある。
ゴム成分がイソプレン系ゴム及び変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを含むことで、タイヤは低転がり抵抗性に優れる。
イソプレン系ゴムは、合成イソプレン系ゴム(IR)であってもよいし、天然ゴムであってもよい。
(変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴム)
変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム鎖が変性基を有する構造であれば、特に制限されない。
例えば、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム鎖の少なくとも1つの末端が、窒素原子及びケイ素原子を含む変性基を有する構造が挙げられる。
変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムが、窒素原子及びケイ素原子を含むことで、シリカとの親和性をより向上することができ、転がり抵抗をより低くし、また、高温時の耐カットチップ性をより向上することができる。なお、変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴム体が窒素原子を有することは、後述する実施例記載の方法で、特定のカラムへの吸着の有無によって確認することができる。また、変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムがケイ素原子を有することは、後述する実施例に記載の方法で金属分析によって確認することができる。
スチレン-ブタジエン共重合体ゴム鎖の少なくとも1つの末端が、窒素原子及びケイ素原子を含む変性基を有する構造の変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、例えば、窒素原子及びケイ素原子を含むカップリング剤と、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムとを反応させることで得ることができる。
スチレン-ブタジエン共重合体ゴム鎖は、少なくともその1つの末端が、それぞれカップリング残基が有するケイ素原子と結合していることが好ましい。この場合、複数のスチレン-ブタジエン共重合体ゴムの末端が、1のケイ素原子と結合していてもよい。また、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム鎖の末端と炭素数1~20のアルコキシ基又は水酸基とが、一つのケイ素原子に結合し、その結果として、その1つのケイ素原子が炭素数1~20のアルコキシシリル基又はシラノール基を構成していてもよい。
変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、結合スチレン量が25%以上である変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを含むことが好ましい。
以下、「結合スチレン量が25%以上である変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴム」を、「本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴム」又は「本発明における変性SBR」と称することがある。
変性SBRの結合スチレン量が25%以上であることで、加硫ゴムの剛性を高めることができ、タイヤの高温時の耐カットチップ性をより向上することができる。
本発明における変性SBRの結合スチレン量は、27~50%であることがより好ましく、29~45%であることが更に好ましく、31~40%であることがより更に好ましい。
変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの結合スチレン量は、分光光度計を用い、スチレンのフェニル基による紫外線吸収波長(254nm付近)の吸収量により求めることができる。
本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、分岐を有する構造であることが好ましい。
一般に、分岐を有する重合体は、同一の絶対分子量である直鎖状の重合体と比較した場合に、分子の大きさが小さくなる傾向にあり、収縮因子(g’)は、想定上同一の絶対分子量である直鎖状重合体に対する、分子の占める大きさの比率の指標である。即ち、重合体の分岐度が大きくなれば、収縮因子(g’)は小さくなる傾向にある。本実施形態では、分子の大きさの指標として固有粘度を用い、直鎖状の重合体は、固有粘度[η]=-3.883M0.771の関係式に従うものとする。変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの各絶対分子量のときの収縮因子(g’)を算出し、絶対分子量が100×10~200×10のときの収縮因子(g’)の平均値を、その変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの収縮因子(g’)とする。
ここで、「分岐」とは、1つの重合体に対して、他の重合体が直接的又は間接的に結合することにより形成される構造である。
また、「分岐度」は、1の分岐に対して、直接的又は間接的に互いに結合している重合体の数である。例えば、後述するカップリング残基を介して間接的に、後述の5つのスチレン-ブタジエン共重合体ゴム鎖が互いに結合している場合には、分岐度は5である。
なお、カップリング残基とは、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム鎖に結合される、変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの構成単位であり、例えば、後述するスチレン-ブタジエン共重合体ゴムとカップリング剤とを反応させることによって生じる、カップリング剤由来の構造単位である。
また、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム鎖は、変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの構成単位であり、例えば、後述するスチレン-ブタジエン共重合体ゴムとカップリング剤とを反応させることによって生じる、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム由来の構造単位である。
本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、重量平均分子量(Mw)が、20×10以上300×10以下であることが好ましい。
重量平均分子量が20×10以上であることで、加硫ゴムの剛性を高めることができ、高温時の耐カットチップ性をより向上し、また転がり抵抗をより低くすることができる。また、重量平均分子量が300×10以下であることで、ゴム組成物の作業性を良好にすることができる。
本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの重量平均分子量は、50×10以上であることがより好ましく、64×10以上であることが更に好ましく、80×10以上であることがより更に好ましい。また、変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの重量平均分子量は、250×10以下であることがより好ましく、180×10以下であることが更に好ましく、150×10以下であることがより更に好ましい。
なお、本明細書において「分子量」とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって得られる、標準ポリスチレン換算分子量である。
変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴム体及び後述するスチレン-ブタジエン共重合体ゴムの重量平均分子量は、後述する実施例に記載の方法により測定する。
本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの総量(100質量%)に対して、分子量が200×10以上500×10以下である変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを、0.25質量%以上30質量%以下含むことが好ましい。以下、分子量が200×10以上500×10以下である変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを「特定の高分子量成分」ともいう。
本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの総量中の特定の高分子量成分の含有量が上記範囲であることで、タイヤの低転がり抵抗性及び高温時の耐カットチップ性を向上することができる。
本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの総量中の特定の高分子量成分の含有量は、1.0質量%以上であることがより好ましく、1.4質量%以上であることが更に好ましく、1.75質量%以上であることがより更に好ましく、2.0質量%以上であることがより更に好ましく、2.15質量%以上であることがより更に好ましく、2.5質量%以上であることがより更に好ましい。
また、本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの総量中の特定の高分子量成分の含有量は、28質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることが更に好ましく、20質量%以下であることがより更に好ましく、18質量%以下であることがより更に好ましい。
特定の高分子量成分の含有量が上記範囲の変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、後述する製造方法において、重合工程と反応工程とにおける反応条件を制御することで得られやすい。
例えば、重合工程においては、後述する有機モノリチウム化合物の重合開始剤としての使用量を調整すればよい。また、重合工程では、連続式、及び回分式のいずれの重合様式においても、滞留時間分布を有する方法を用いることができる。すなわち、成長反応の時間分布を広げるとよい。
本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムにおいては、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、1.6以上3.0以下であることが好ましい。変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの分子量分布がこの範囲であると、ゴム組成物の作業性を良好にすることができる。
なお、変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴム及び後述するスチレン-ブタジエン共重合体ゴムに対する、数平均分子量、重量平均分子量、分子量分布、特定の高分子量成分の含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定する。
本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、収縮因子(g’)が、0.64未満であることが好ましい。収縮因子(g’)が0.64未満の変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを使用することで、ゴム組成物の作業性を向上することができる。
本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの収縮因子(g’)は、0.62以下であることがより好ましく、0.62以下であることが更に好ましく、0.60以下であることがより更に好ましい。
本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの収縮因子(g’)の下限は特に限定されず、検出限界値以下であってもよい。変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの収縮因子(g’)は、好ましくは0.30以上であり、より好ましくは0.33以上であり、さらに好ましくは0.35以上であり、より一層好ましくは0.45以上である。
収縮因子(g’)は分岐度に依存する傾向にあるため、例えば、分岐度を指標として収縮因子(g’)を制御することができる。具体的には、例えば、分岐度が6である変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの収縮因子(g’)は、0.59以上0.63以下となる傾向にある。また、分岐度が8である変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの収縮因子(g’)は、0.45以上0.59以下となる傾向にある。
収縮因子(g’)は、後述する実施例に記載の方法により測定する。
本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、分岐を有し、分岐度が5以上であることが好ましい。また、本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、1以上のカップリング残基と、該カップリング残基に対して結合するスチレン-ブタジエン共重合体ゴムとを有し、さらに、上記分岐が、1の当該カップリング残基に対して5以上の当該スチレン-ブタジエン共重合体ゴム鎖が結合している分岐を含むことがより好ましい。分岐度が5以上であること、及び、分岐が、1のカップリング残基に対して5以上のスチレン-ブタジエン共重合体ゴム鎖が結合している分岐を含むよう、変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの構造を特定することにより、より確実に収縮因子(g’)を0.64未満にすることができる。なお、1のカップリング残基に対して結合しているスチレン-ブタジエン共重合体ゴム鎖の数は、収縮因子(g’)の値から確認することができる。
また、本発明における前記変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、分岐を有し、分岐度が6以上であることがより好ましい。また、本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、1以上のカップリング残基と、該カップリング残基に対して結合するスチレン-ブタジエン共重合体ゴム鎖とを有し、さらに、上記分岐が、1の当該カップリング残基に対して6以上の当該スチレン-ブタジエン共重合体ゴム鎖が結合している分岐を含むことが、さらに好ましい。分岐度が6以上であること、及び、分岐が、1のカップリング残基に対して6以上のスチレン-ブタジエン共重合体ゴム鎖が結合している分岐を含むよう、変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの構造を特定することにより、収縮因子(g’)を0.63以下にすることができる。
さらに、本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、分岐を有し、分岐度が7以上であることがさらに好ましく、分岐度が8以上であることがより一層好ましい。分岐度の上限は特に限定されないが、18以下であることが好ましい。また、本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、1以上のカップリング残基と、該カップリング残基に対して結合するスチレン-ブタジエン共重合体ゴム鎖とを有し、さらに、上記分岐が、1の当該カップリング残基に対して7以上の当該スチレン-ブタジエン共重合体ゴム鎖が結合している分岐を含むことが、より一層好ましく、1の当該カップリング残基に対して8以上の当該スチレン-ブタジエン共重合体ゴム鎖が結合している分岐を含むことが、特に好ましい。分岐度が8以上であること、及び、分岐が、1のカップリング残基に対して8以上のスチレン-ブタジエン共重合体ゴム鎖が結合している分岐を含むよう、変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの構造を特定することにより、収縮因子(g’)を0.59以下にすることができる。
分岐を有し、分岐度が5以上であり、収縮因子(g’)が0.64未満である変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、分子鎖の絡まり合いが抑制され易いため、当該変性SBRを含むゴム組成物の作業性を高めることができる。また、変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムが、分岐度が5以上であり、収縮因子(g’)が0.64未満である分子構造を有することで、分子鎖の絡まり合いが抑制され易いため、線状の分子鎖を有する加硫ゴムに比べ、弾性率の低い柔らかな加硫ゴムになり易い。
本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、ガラス転移温度(Tg)が、-35℃以上-15℃以下であるが好ましく、-31℃以上-18℃以下であることがより好ましく、-28℃以上-20℃以下であることがさらに好ましい。変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムのガラス転移温度(Tg)が-35℃以上-15℃以下の範囲にあると、タイヤのウェットグリップ性能をより向上することができる。
なお、ガラス転移温度については、ISO 22768:2006に従い、所定の温度範囲で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とする。
本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、伸展油を加えた油展重合体とすることができる。
変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、非油展であっても、油展であってもよいが、タイヤの耐摩耗性の観点から、100℃で測定されるムーニー粘度が、20以上100以下であることが好ましく、30以上80以下であることがより好ましい。なお、ムーニー粘度は、後述する実施例に記載の方法により測定する。
本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、タイヤの低下転がり抵抗性と高温時の耐カットチップ性をより向上する観点から、下記式(I)で表されることが好ましい。
Figure 2022088915000007
式(I)中、Dは、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム鎖を示す。R、R及びRは、それぞれ独立して単結合又は炭素数1~20のアルキレン基を示す。R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキル基を示す。R、R、及びRは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を示す。R及びR10は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキレン基を示す。R11は、水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を示す。m及びxは、それぞれ独立して1~3の整数を示し、x≦mである。pは、1又は2を示す。yは、1~3の整数を示し、y≦(p+1)である。zは、1又は2の整数を示す。iは、0~6の整数を示し、jは、0~6の整数を示し、kは、0~6の整数を示し、(i+j+k)は、3~10の整数である。((x×i)+(y×j)+(z×k))は、5~30の整数である。Aは、炭素数1~20の、炭化水素基、又は、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子及びリン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を有し、かつ、活性水素を有しない有機基を示す。
Dで表されるスチレン-ブタジエン共重合体ゴム鎖の重量平均分子量は、10×10~100×10であることが好ましい。スチレン-ブタジエン共重合体ゴム鎖は、変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの構成単位であり、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムとカップリング剤とを反応させることによって生じる、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム由来の構造単位である。
式(I)において、D、R、R、及びR~Rが、それぞれ複数存在するとき、複D、R、R、及びR~Rは、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。
また、i、j及びkが2以上であることにより、式(I)中の下記部分構造(I-i)、(I-j)及び(I-k)が複数存在する場合、部分構造(I-i)、(I-j)及び(I-k)は、それぞれ同じ構造であってもよいし、ことなる構造であってもよい。
Figure 2022088915000008
Figure 2022088915000009
Figure 2022088915000010
Aが示す炭化水素基は、飽和、不飽和、脂肪族、及び芳香族の炭化水素基を包含する。
活性水素を有しない有機基としては、例えば、水酸基(-OH)、第2級アミノ基(>NH)、第1級アミノ基(-NH)、スルフヒドリル基(-SH)等の活性水素を有する官能基、を有しない有機基が挙げられる。
上記式(I)において、Aは、下記式(II)~(V)のいずれかで表されることが好ましい。Aが式(II)~(V)のいずれかで表されることにより、タイヤのウェットグリップ性能をより向上することができる。
Figure 2022088915000011
式(II)中、Bは、単結合又は炭素数1~20の炭化水素基を示す。aは、1~10の整数を示す。aが2以上であることによりBが複数存在する場合、複数のBは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
Figure 2022088915000012
式(III)中、Bは、単結合又は炭素数1~20の炭化水素基を示し、Bは、炭素数1~20のアルキル基を示す。aは、1~10の整数を示す。aが2以上であることによりB及びBが複数存在する場合、複数のB及びBはそれぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。
Figure 2022088915000013
式(IV)中、Bは、単結合又は炭素数1~20の炭化水素基を示し、aは、1~10の整数を示す。aが2以上であることによりBが複数存在する場合、複数のBは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
Figure 2022088915000014
式(V)中、Bは、単結合又は炭素数1~20の炭化水素基を示し、aは、1~10の整数を示す。aが2以上であることによりBが複数存在する場合、複数のBは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
式(II)~(V)中のB、B、B及びBに関して、炭素数1~20の炭化水素基としては、炭素数1~20のアルキレン基等が挙げられる。
式(I)は、Aが式(II)又は(III)で表され、kが0であることが好ましく、Aが式(II)又は(III)で表され、kが0であり、式(II)又は(III)において、aが2~10の整数であることがより好ましい。
式(I)において、Aが式(II)で表され、kが0であり、式(II)において、aが2~10の整数である構造がより一層好ましい。
式(I)で表される変性SBRは、ゴム分子鎖の絡み合い、絡まり合いが少なく、加硫ゴムとなったときに、加硫ゴムが硬くなりにくい性質を有する。そのため、ゴム組成物中のオイル成分等の軟化剤の含有量が少なくても、加硫ゴムの柔らかさを維持し易い。
(本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの製造方法)
本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの製造方法は、特に限定されないが、既述の分岐構造の形成し易さの観点から、次の工程を有することが好ましい。すなわち、有機モノリチウム化合物を重合開始剤として用い、スチレン及びブタジエンを重合し、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを得る重合工程と、該スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの活性末端に対して、5官能以上の反応性化合物(以下、「特定カップリング剤」ともいう。)を反応させる反応工程と、を有することが好ましい。特定カップリング剤としては、窒素原子とケイ素原子とを有する5官能以上の反応性化合物を反応させるのが好ましい。
反応性化合物(カップリング剤)は、窒素原子とケイ素原子とを有する5官能以上の反応性化合物であることが好ましく、少なくとも3個のケイ素含有官能基を有していることが好ましい。特定カップリング剤は、少なくとも1のケイ素原子が、炭素数1~20のアルコキシシリル基又はシラノール基を構成することが更に好ましい。
特定カップリング剤が有するアルコキシシリル基は、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムが有する活性末端と反応して、アルコキシリチウムが解離し、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム鎖の末端とカップリング残基のケイ素との結合を形成する傾向にある。カップリング剤1分子が有するSiORの総数から、反応により減じたSiOR数を差し引いた値が、カップリング残基が有するアルコキシシリル基の数となる。また、カップリング剤が有するアザシラサイクル基は、>N-Li結合及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴム末端とカップリング残基のケイ素との結合を形成する。なお、>N-Li結合は、仕上げ時の水等により容易に>NH及びLiOHとなる傾向にある。また、カップリング剤において、未反応で残存したアルコキシシリル基は、仕上げ時の水等により容易にシラノール(Si-OH基)となり得る傾向にある。
特定カップリング剤は、式(VI)で表されることが好ましい。つまり、変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを、式(VI)で表されるカップリング剤と反応させてなることが好ましい。該カップリング剤と反応させてなる変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを含むゴム組成物を得ることで、当該ゴム組成物から、転がり抵抗が低く、高温時の耐カットチップ性に優れたタイヤを製造することができる。
Figure 2022088915000015
式(VI)中、R12、R13及びR14は、それぞれ独立して単結合又は炭素数1~20のアルキレン基を示す。R15、R16、R17、R18及びR20は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキル基を示す。R19及びR22は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキレン基を示す。R21は、炭素数1~20の、アルキル基又はトリアルキルシリル基を示し、mは、1~3の整数を示す。pは、1又は2を示す。i、j及びkは、それぞれ独立して0~6の整数を示す。但し、(i+j+k)は、3~10の整数である。Aは、炭素数1~20の、炭化水素基、又は、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子及びリン原子からなる群から選択される少なくとも一種の原子を有し、活性水素を有しない有機基を示す。
ここで、式(VI)中、Aが示す炭化水素基は、飽和、不飽和、脂肪族、及び芳香族の炭化水素基を包含する。活性水素を有しない有機基としては、例えば、水酸基(-OH)、第2級アミノ基(>NH)、第1級アミノ基(-NH)、スルフヒドリル基(-SH)等の活性水素を有する官能基、を有しない有機基が挙げられる。
式(VI)において、Aは、既述の式(II)~(V)のいずれかで表されることが好ましい。Aが式(II)~(V)のいずれかで表される構造であることにより、より優れた性能を有する変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを得ることができる。
特定カップリング剤は、式(VI)において、Aが式(II)又は(III)で表され、kが0である構造であることが好ましい。
式(VI)は、Aが式(II)又は(III)で表され、kが0であり、式(II)又は(III)において、aが2~10の整数であることがより好ましく、Aが式(II)で表され、kが0であり、式(II)において、aが2~10の整数であることがより一層好ましい。
かかるカップリング剤としては、例えば、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]アミン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)-[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、テトラキス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)-メチル-1,3-プロパンジアミン、ビス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-(3-トリスメトキシシリルプロピル)-メチル-1,3-プロパンジアミン等が挙げられる。
上記カップリング剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせ用いてもよい。
これらの中でも、式(VI)で表されるカップリング剤は、テトラキス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、及びテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサンが特に好ましい。
前記カップリング剤としての式(VI)で表される化合物の添加量は、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムのモル数対カップリング剤のモル数が、所望の化学量論的比率で反応させるよう調整することができ、そのことにより所望の分岐度が達成される傾向にある。具体的な重合開始剤のモル数は、カップリング剤のモル数に対して、好ましくは5.0倍モル以上、より好ましくは6.0倍モル以上であることが好ましい。この場合、式(VI)において、カップリング剤の官能基数((m-1)×i+p×j+k)は、5~10の整数であることが好ましく、6~10の整数であることがより好ましい。
本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの製造方法において、重合工程は、リビングアニオン重合反応による成長反応による重合が好ましい。これにより、活性末端を有するスチレン-ブタジエン共重合体ゴムを得ることができ、高変性率の変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを得ることができる。
スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、少なくともスチレン及びブタジエンスチレン-ブタジエン共重合体ゴムを共重合して得られる。
有機モノリチウム化合物の重合開始剤としての使用量は、目標とするスチレン-ブタジエン共重合体ゴム又は変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの分子量によって決めることが好ましい。重合開始剤の使用量に対する、共役ジエン化合物等の単量体の使用量が重合度に関係し、すなわち、数平均分子量及び/又は重量平均分子量に関係する。従って、分子量を増大させるためには、重合開始剤を減らす方向に調整するとよく、分子量を低下させるためには、重合開始剤量を増やす方向に調整するとよい。
有機モノリチウム化合物は、工業的入手の容易さ及び重合反応のコントロールの容易さの観点から、好ましくは、アルキルリチウム化合物である。この場合、重合開始末端にアルキル基を有する、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムが得られる。アルキルリチウム化合物としては、例えば、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、及びスチルベンリチウムが挙げられる。アルキルリチウム化合物としては、工業的入手の容易さ及び重合反応のコントロールの容易さの観点から、n-ブチルリチウム、及びsec-ブチルリチウムが好ましい。これらの有機モノリチウム化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
重合工程において、重合反応様式としては、例えば、回分式、連続式の重合反応様式が挙げられる。連続式においては、1個又は2個以上の連結された反応器を用いることができる。連続式の反応器は、例えば、撹拌機付きの槽型、管型のものが用いられる。連続式においては、好ましくは、連続的に単量体、不活性溶媒、及び重合開始剤が反応器にフィードされ、該反応器内で重合体を含む重合体溶液が得られ、連続的に重合体溶液が排出される。回分式の反応器は、例えば、攪拌機付の槽型のものが用いられる。回分式においては、好ましくは、単量体、不活性溶媒、及び重合開始剤がフィードされ、必要により単量体が重合中に連続的又は断続的に追加され、該反応器内で重合体を含む重合体溶液が得られ、重合終了後に重合体溶液が排出される。本実施形態において、高い割合で活性末端を有するスチレン-ブタジエン共重合体ゴムを得るには、重合体を連続的に排出し、短時間で次の反応に供することが可能な、連続式が好ましい。
重合工程は、不活性溶媒中で重合することが好ましい。
溶媒としては、例えば、飽和炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素系溶媒が挙げられる。具体的な炭化水素系溶媒としては、以下のものに限定されないが、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素及びそれらの混合物からなる炭化水素が挙げられる。重合反応に供する前に、不純物であるアレン類、及びアセチレン類を有機金属化合物で処理することで、高濃度の活性末端を有するスチレン-ブタジエン共重合体ゴムが得られる傾向にあり、高い変性率の変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムが得られる傾向にあるため好ましい。
重合工程においては、極性化合物を添加してもよい。極性化合物を添加することで、芳香族ビニル化合物を共役ジエン化合物とランダムに共重合させることができ、また、極性化合物は、共役ジエン部のミクロ構造を制御するためのビニル化剤としても用いることができる傾向にある。
極性化合物としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメトキシベンゼン、2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパン等のエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジン等の第3級アミン化合物;カリウム-tert-アミラート、カリウム-tert-ブチラート、ナトリウム-tert-ブチラート、ナトリウムアミラート等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物等を用いることができる。これらの極性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
重合工程において、重合温度は、生産性の観点から、0℃以上であることが好ましく、120℃以下であることがさらに好ましく、50℃以上100℃以下であることが特に好ましい。このような範囲にあることで、重合終了後の活性末端に対するカップリング剤の反応量を充分に確保することができる傾向にある。
スチレン-ブタジエン共重合体ゴム又は変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴム中の結合共役ジエン量は、特に限定されないが、40質量%以上100質量%以下であることが好ましく、55質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
また、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム又は変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴム中の結合芳香族ビニル量は、特に限定されないが、0質量%以上60質量%以下であることが好ましく、20質量%以上45質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上45質量%以下であることがさらに好ましく、35質量%以上45質量%以下であることが特に好ましく、39質量%以上45質量%以下であることが極めて好ましく、40質量%以上45質量%以下であることが最も好ましい。
結合共役ジエン量及び結合芳香族ビニル量が上記範囲であると、タイヤのウェットグリップ性能と耐摩耗性とを向上することができる。
なお、結合芳香族ビニル量は、フェニル基の紫外吸光によって測定でき、ここから結合共役ジエン量も求めることができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法に準じて測定する。
反応工程における反応温度は、好ましくはスチレン-ブタジエン共重合体ゴムの重合温度と同様の温度であり、より好ましくは0℃以上120℃以下であり、さらに好ましくは50℃以上100℃以下である。また、重合工程後からカップリング剤が添加されるまでの温度変化は、好ましくは10℃以下であり、より好ましくは5℃以下である。
反応工程における反応時間は、好ましくは10秒以上であり、より好ましくは30秒以上である。重合工程の終了時から反応工程の開始時までの時間は、カップリング率の観点から、より短い方が好ましいが、より好ましくは5分以内である。
反応工程における混合は、機械的な攪拌、スタティックミキサーによる攪拌等のいずれでもよい。重合工程が連続式である場合は、反応工程も連続式であることが好ましい。反応工程における反応器は、例えば、撹拌機付きの槽型、管型のものが用いられる。カップリング剤は、不活性溶媒により希釈して反応器に連続的に供給してもよい。重合工程が回分式の場合は、重合反応器にカップリング剤を投入する方法でも、別の反応器に移送して反応工程を行ってもよい。
特定の高分子量成分を有する変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを得るためには、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの分子量分布(Mw/Mn)を、好ましくは1.5以上2.5以下、より好ましくは1.8以上2.2以下とするとよい。また、得られる変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(A2)は、GPCによる分子量曲線が一山のピークが検出されるものであることが好ましい。
本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムのGPCによるピーク分子量をMp、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムのピーク分子量をMpとした場合、以下の式が成り立つことが好ましい。
(Mp/Mp)<1.8×10-12×(Mp-120×10+2
Mpは、20×10以上80×10以下、Mpは30×10以上150×10以下がより好ましい。Mp及びMpは、後述する実施例に記載の方法により求める。
本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの変性率は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。変性率が30質量%以上であることで、シリカとの親和性がより向上し、転がり抵抗をより低くすることができる。なお、変性率は、後述する実施例に記載の方法により測定する。
反応工程の後、共重合体溶液に、必要に応じて、失活剤、中和剤等を添加してもよい。失活剤としては、以下のものに限定されないが、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール等が挙げられる。中和剤としては、以下のものに限定されないが、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、バーサチック酸(炭素数9~11個で、10個を中心とする、分岐の多いカルボン酸混合物)等のカルボン酸;無機酸の水溶液、炭酸ガス等が挙げられる。
また、本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、重合後のゲル生成を防止する観点及び加工時の安定性を向上させる観点から、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェノール)プロピネート、2-メチル-4,6-ビス[(オクチルチオ)メチル]フェノール等の酸化防止剤を添加することが好ましい。
本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの作業性をより改善するために、必要に応じて、伸展油を変性共役ジエン系共重合体に添加することができる。伸展油を変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムに添加する方法としては、以下のものに限定されないが、伸展油を該重合体溶液に加え、混合して、油展共重合体溶液としたものを脱溶媒する方法が好ましい。伸展油としては、例えば、アロマ油、ナフテン油、パラフィン油等が挙げられる。これらの中でも、環境安全上の観点、並びにオイルブリード防止及びウェット性能の観点から、IP346法による多環芳香族(PCA)成分が3質量%以下であるアロマ代替油が好ましい。アロマ代替油としては、Kautschuk Gummi Kunststoffe52(12)799(1999)に示されるTDAE(Treated Distillate Aromatic Extracts)、MES(Mild Extraction Solvate)等の他、RAE(Residual Aromatic Extracts)が挙げられる。
伸展油の添加量は、特に限定されないが、ゴム組成物中のオイル成分量が、ゴム成分100質量部に対し10質量部以下となる範囲で伸展油を添加することができる。
ゴム成分として本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを100質量%用いる場合は、伸展油の添加量は、本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴム100質量部に対し、10質量部以下で用いればよい。
また、本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを天然ゴム等の他のジエン系ゴムと共に用いる場合は、ゴム組成物中のオイル成分量が、ゴム成分100質量部に対し10質量部以下となる範囲で伸展油の添加量を増加してもよい。この場合、本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴム100質量部に対し、3~30質量部が好ましく、5~20質量部がより好ましい。
変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを、重合体溶液から取得する方法としては、公知の方法を用いることができる。その方法として、例えば、スチームストリッピング等で溶媒を分離した後、重合体を濾別し、さらにそれを脱水及び乾燥して重合体を取得する方法、フラッシングタンクで濃縮し、さらにベント押出し機等で脱揮する方法、ドラムドライヤー等で直接脱揮する方法が挙げられる。
ゴム成分中の、本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの含有率は、10~45質量%であることが好ましく、12~40質量%であることがより好ましい。なお、当該含有率は、本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムが伸展油を含む場合、油展量を除く変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムそれ自身の含有率である。
ゴム成分中の本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの含有率が10~45質量%であることで、タイヤの転がり抵抗をより低くし、高温時の耐カットチップ性をより向上することができる。
変性SBRは1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
タイヤの転がり抵抗をより低くし、高温時の耐カットチップ性をより向上する観点から、ゴム成分は、上記の本発明における変性SBR及び本発明における変性SBR以外の変性SBRを含むことが好ましい。
ここで、「本発明における変性SBR以外の変性SBR」とは、結合スチレン量が25%未満である変性SBRを指し、結合スチレン量が25%未満かつガラス転移温度が-35℃未満である変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムであることが好ましい。
本発明における変性SBR以外の変性SBRは、結合スチレン量が5~20%かつガラス転移温度が-80~-40℃であることがより好ましく、結合スチレン量が5~15%かつガラス転移温度が-75~-50℃であることが更に好ましい。
ゴム組成物のゴム成分は、イソプレン系ゴム及び変性SBR以外のゴム成分(他のゴム成分)を更に含んでいてもよい。
他のゴム成分として、変性もしくは未変性のブタジエンゴム、未変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴム等が挙げられる。
タイヤの転がり抵抗をより低くし、高温時の耐カットチップ性をより向上する観点から、ゴム成分は、イソプレン系ゴム、本発明における変性SBR及び、本発明における変性SBR以外の変性SBRを含むことが好ましく、天然ゴム、本発明における変性SBR、及び結合スチレン量が25%未満かつガラス転移温度が-35℃未満である変性SBRを含むことがより好ましく、天然ゴム及び本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、及び結合スチレン量が5~20%かつガラス転移温度が-80~-40℃である変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを含むことが更に好ましい。
ゴム成分は、他のゴム成分を含まず、イソプレン系ゴム、本発明における変性SBR及び、本発明における変性SBR以外の変性SBRからなることが好ましい。
〔充填剤〕
ゴム組成物は、充填剤としてシリカを含む。ゴム組成物中のシリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して10質量部以上55質量部未満であり、充填剤中のシリカの含有量が70質量%以上である。
ゴム組成物中のシリカの含有量が、ゴム成分100質量部に対して10質量部未満では、加硫ゴムの剛性が得られず、高温時の耐カットチップ性を得ることができず、55質量部以上では転がり抵抗を低くすることができない。
また、充填剤は、シリカ以外の充填剤を含むことができる。例えば、カーボンブラックを含むことができるが、充填剤中のシリカの含有量が70質量%未満では、転がり抵抗を低くすることができない。
転がり抵抗をより低くし、高温時の耐カットチップ性をより向上する観点から、ゴム組成物中のシリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、20~54質量部であることが好ましく、25~51質量部であることがより好ましい。
充填剤中のシリカの含有量(シリカ比率という)は、ゴム組成物の作業性を良好にする観点から、99質量%以下であることが好ましい。
タイヤの低転がり抵抗性及び耐摩耗性を向上しつつ、ゴム組成物の作業性を良好にする観点から、シリカ比率は、74~98質量%であることがより好ましく、76~97質量%であることが更に好ましく、79~96質量%であることがより更に好ましい。
シリカとしては、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらの中でも、湿式シリカが好ましい。これらシリカは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、湿式シリカは、沈降シリカを用いることができる。なお、沈降シリカとは、製造初期に、反応溶液を比較的高温、中性~アルカリ性のpH領域で反応を進めてシリカ一次粒子を成長させ、その後酸性側へ制御することで、一次粒子を凝集させる結果得られるシリカのことである。
また、シリカは、セチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積(CTAB)が、100~250m/gであることが好ましい。
CTABは250m/g以下であれば、転がり抵抗を低減し、ゴム組成物の作業性を低下しにくい。
シリカのCTABは120m/g以上であることがより好ましく、140m/g以上であることが更に好ましく、160m/g以上であることがより更に好ましく、230m/g以上がより更に好ましい。またシリカのCTABは220m/g以下であることがより好ましく、210m/gであることが更に好ましい。
セチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積(CTAB)(m/g)は、ASTM D3765-92に準拠して測定された値を意味する。ただし、ASTM D3765-92はカーボンブラックのCTABを測定する方法であるため、本発明では、標準品であるIRB#3(83.0m/g)の代わりに、別途セチルトリメチルアンモニウムブロミド(以下、CE-TRABと略記する)標準液を調製し、これによってシリカOT(ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム)溶液の標定を行い、上記シリカ表面に対するCE-TRAB1分子当たりの吸着断面積を0.35nmとして、CE-TRABの吸着量から算出される比表面積(m/g)をCTABの値とする。これは、カーボンブラックとシリカとでは表面が異なるので、同一表面積でもCE-TRABの吸着量に違いがあると考えられるためである。
既述のように、充填剤は、シリカ以外の補強性充填剤を更に含んでいてもよく、例えば、カーボンブラックの他、シリカ以外の金属酸化物等が挙げられる。
カーボンブラックとしては、特に限定されるものではなく、例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFグレードのカーボンブラックが挙げられる。これらの中でも、タイヤの耐摩耗性を向上する観点から、ISAF、SAFグレードのカーボンブラックが好ましい。これらカーボンブラックは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ゴム組成物中のカーボンブラックの含有量は、特に限定はされないが、ゴム成分100質量部に対して1~15質量部の範囲が好ましく、3~10質量部の範囲がより好ましい。カーボンブラックの含有量をゴム成分100質量部に対し1質量部以上とすることで、タイヤの耐摩耗性をより向上し、15質量部以下とすることで、タイヤの転がり抵抗が大きくなりにくい。
(シランカップリング剤)
ゴム組成物は、シランカップリング剤を含むことが好ましい。
ゴム組成物が、シランカップリング剤を含むことで、ゴム組成物中のシリカの分散性を向上することができ、タイヤの転がり抵抗をより低くすることができる。また、ゴム組成物中のシリカの分散性を向上することで、加硫ゴムの補強性も向上し、高温時の耐カットチップ性を向上することができる。
シランカップリング剤のゴム組成物中の含有量は、シリカ100質量部に対して10質量部より多いことが好ましい。かかる範囲とすることで、転がり抵抗を更に低くすることができ、また高温時の耐カットチップ性を更に向上することができる。
なお、シリカ100質量部に対するシランカップリング剤の質量部数を「シラン量」と称することがある。
シランカップリング剤のゴム組成物中の含有量は、シリカ100質量部に対して11質~20質量部であることが好ましく、12質~17質量部であることがより好ましい。
シランカップリング剤としては、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
また、シランカップリング剤は、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、Evonik社製シランカップリング剤、商品名「Si69」(登録商標)〔ビス(3-トリエトシキシリルプロピル)〕;Evonik社製シランカップリング剤、商品名「Si363」(登録商標)〔3-[エトキシビス(3,6,9,12,15-ペンタオキサオクタコサン-1-イルオキシ)シリル]-1-プロパンチオール〕等が挙げられる。
これらシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
〔軟化剤〕
ゴム組成物は、軟化剤を含有することが好ましい。
ゴム組成物が軟化剤を含有することによって、加硫ゴムを軟化することができるため、ゴム組成物の作業性を良好にし易い。
軟化剤は、オイル成分、樹脂等が挙げられ、特に、ゴム成分100質量部に対し0質量部を超え11質量部以下の範囲で軟化剤を含むことが好ましい。
ゴム組成物中の軟化剤含有量が、ゴム成分100質量部に対し0質量部を超え11質量部以下であることで、ゴム組成物の作業性を良好にすることができる。
(オイル成分)
オイル成分としては、鉱物由来のミネラルオイル、石油由来のアロマチックオイル、パラフィンオイル、ナフテンオイル、天然物由来のパームオイル、オレイン酸オクチル等が挙げられる。
(樹脂)
樹脂としては、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
ゴム組成物が軟化剤として熱可塑性樹脂を含有することで、タイヤのウェットグリップ性能を向上することができる。
樹脂としては、C系樹脂、C-C系樹脂、C系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂、ロジン樹脂、及びアルキルフェノール樹脂等が挙げられる。
中でも、C系樹脂、C-C系樹脂、C系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、ロジン樹脂、及びアルキルフェノール樹脂から選択される少なくとも一種が好ましい。
樹脂として、C系樹脂、C-C系樹脂、C系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂、ロジン樹脂、及びアルキルフェノール樹脂の少なくとも一種を含む場合、タイヤのウェットグリップ性能を更に向上させることができる。
樹脂の中でも、C系樹脂、C-C系樹脂及びC系樹脂が特に好ましい。C-C系樹脂及びC系樹脂は、天然ゴムとの相溶性が高く、ゴム組成物の低歪領域での弾性率を高くする効果、並びに加硫ゴムの高歪領域での弾性率を低下させる効果が更に大きくなり、タイヤのウェットグリップ性能を更に向上させることができる。
樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
系樹脂とは、C系合成石油樹脂を指し、該C系樹脂としては、例えば、石油化学工業のナフサの熱分解によって得られるC留分を、AlCl、BF等のフリーデルクラフツ型触媒を用いて重合して得られる脂肪族系石油樹脂が挙げられる。前記C留分には、通常、1-ペンテン、2-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、3-メチル-1-ブテン等のオレフィン系炭化水素、2-メチル-1,3-ブタジエン、1,2-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,2-ブタジエン等のジオレフィン系炭化水素等が含まれる。なお、前記C系樹脂としては、市販品を利用することができ、例えば、エクソンモービルケミカル社製脂肪族系石油樹脂である「エスコレッツ(登録商標)1000シリーズ」、日本ゼオン株式会社製脂肪族系石油樹脂である「クイントン(登録商標)100シリーズ」の内「A100、B170、M100、R100」、東燃化学社製「T-REZ RA100」等が挙げられる。
-C系樹脂とは、C-C系合成石油樹脂を指し、C-C系樹脂としては、例えば、石油由来のC留分とC留分とを、AlCl、BF等のフリーデルクラフツ型触媒を用いて重合して得られる固体重合体が挙げられ、より具体的には、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、インデン等を主成分とする共重合体等が挙げられる。該C-C系樹脂としては、C以上の成分の少ない樹脂が、ゴム成分との相溶性の観点から好ましい。ここで、「C以上の成分が少ない」とは、樹脂全量中のC以上の成分が50質量%未満、好ましくは40質量%以下であることを言うものとする。前記C-C系樹脂としては、市販品を利用することができ、例えば、商品名「クイントン(登録商標)G100B」(日本ゼオン株式会社製)、商品名「ECR213」(エクソンモービルケミカル社製)、商品名「T-REZ RD104」(東燃化学社製)等が挙げられる。
系樹脂は、例えば、石油化学工業のナフサの熱分解により、エチレン、プロピレン等の石油化学基礎原料と共に副生するC留分である、ビニルトルエン、アルキルスチレン、インデンを主要なモノマーとする炭素数9の芳香族を重合した樹脂である。ここで、ナフサの熱分解によって得られるC留分の具体例としては、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、γ-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、インデン等が挙げられる。該C系樹脂は、C留分と共に、C留分であるスチレン等、C10留分であるメチルインデン、1,3-ジメチルスチレン等、更にはナフタレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、p-tert-ブチルスチレン等をも原料として用い、これらのC~C10留分等を混合物のまま、例えばフリーデルクラフツ型触媒により共重合して得ることができる。また、前記C系樹脂は、水酸基を有する化合物、不飽和カルボン酸化合物等で変性された変性石油樹脂であってもよい。なお、前記C系樹脂としては、市販品を利用することができ、例えば、未変性C系石油樹脂としては、商品名「日石ネオポリマー(登録商標)L-90」、「日石ネオポリマー(登録商標)120」、「日石ネオポリマー(登録商標)130」、「日石ネオポリマー(登録商標)140」(JX日鉱日石エネルギー株式会社製)等が挙げられる。
ジシクロペンタジエン樹脂は、シクロペンタジエンを二量体化して得られるジシクロペンタジエンを主原料に製造された石油樹脂である。前記ジシクロペンタジエン樹脂としては、市販品を利用することができ、例えば、日本ゼオン株式会社製脂環式系石油樹脂である商品名「クイントン(登録商標)1000シリーズ」の内「1105、1325、1340」等が挙げられる。
テルペンフェノール樹脂は、例えば、テルペン類と種々のフェノール類とを、フリーデルクラフツ型触媒を用いて反応させたり、又はさらにホルマリンで縮合する方法で得ることができる。原料のテルペン類としては特に制限はなく、α-ピネンやリモネン等のモノテルペン炭化水素が好ましく、α-ピネンを含むものがより好ましく、特にα-ピネンであることが好ましい。該テルペンフェノール樹脂としては、市販品を利用することができ、例えば、商品名「タマノル803L」、「タマノル901」(荒川化学工業株式会社製)、商品名「YSポリスター(登録商標)U」シリーズ、「YSポリスター(登録商標)T」シリーズ、「YSポリスター(登録商標)S」シリーズ、「YSポリスター(登録商標)G」シリーズ、「YSポリスター(登録商標)N」シリーズ、「YSポリスター(登録商標)K」シリーズ、「YSポリスター(登録商標)TH」シリーズ(ヤスハラケミカル株式会社製)等が挙げられる。
テルペン樹脂は、マツ属の木からロジンを得る際に同時に得られるテレピン油、或いは、これから分離した重合成分を配合し、フリーデルクラフツ型触媒を用いて重合して得られる固体状の樹脂であり、β-ピネン樹脂、α-ピネン樹脂等が挙げられる。該テルペン樹脂としては、市販品を利用することができ、例えば、ヤスハラケミカル株式会社製の商品名「YSレジン」シリーズ(PX-1250、TR-105等)、ハーキュリーズ社製の商品名「ピコライト」シリーズ(A115、S115等)等が挙げられる。
ロジン樹脂は、マツ科の植物の樹液である松脂(松ヤニ)等のバルサム類を集めてテレピン精油を蒸留した後に残る残留物で、ロジン酸(アビエチン酸、パラストリン酸、イソピマール酸等)を主成分とする天然樹脂、及びそれらを変性、水素添加等で加工した変性樹脂、水添樹脂である。例えば、天然樹脂ロジン、その重合ロジンや部分水添ロジン;グリセリンエステルロジン、その部分水添ロジンや完全水添ロジンや重合ロジン;ペンタエリスリトールエステルロジン、その部分水添ロジンや重合ロジン等が挙げられる。天然樹脂ロジンとして、生松ヤニやトール油に含まれるガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン等がある。前記ロジン樹脂としては、市販品を利用することができ、例えば、商品名「ネオトール105」(ハリマ化成株式会社製)、商品名「SNタック754」(サンノプコ株式会社製)、商品名「ライムレジンNo.1」、「ペンセルA」及び「ペンセルAD」(荒川化学工業株式会社製)、商品名「ポリペール」及び「ペンタリンC」(イーストマンケミカル株式会社製)、商品名「ハイロジン(登録商標)S」(大社松精油株式会社製)等が挙げられる。
アルキルフェノール樹脂は、例えば、アルキルフェノールとホルムアルデヒドとの触媒下における縮合反応によって得られる。該アルキルフェノール樹脂としては、市販品を利用することができ、例えば、商品名「ヒタノール1502P」(アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、日立化成株式会社製)、商品名「タッキロール201」(アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業株式会社製)、商品名「タッキロール250-I」(臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業株式会社製)、商品名「タッキロール250-III」(臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業株式会社製)、商品名「R7521P」、「SP1068」、「R7510PJ」、「R7572P」及び「R7578P」(SI GROUP INC.製)等が挙げられる。
ゴム組成物中の軟化剤の総含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0質量部を超え40質量部以下であることが好ましく、5~30質量部であることがより好ましい。
ゴム組成物中の軟化剤としてのオイル成分の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0~20質量部であることがより好ましく、0~15質量部であることが更に好ましく、0~10質量部であることがより更に好ましい。ゴム組成物は、軟化剤としてのオイル成分を含んでいなくてもよい、すなわち、ゴム組成物中の軟化剤としてのオイル成分の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0質量部であってもよい。
ゴム組成物中の樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、3~20質量部であることが好ましく、5~15質量部であることがより好ましい。
(ゴム組成物中のオイル成分量)
ゴム組成物中のオイル成分量は、ゴム成分100質量部に対し、0質量部を超え、15質量部以下であることが好ましい。
ここでいう「ゴム組成物中のオイル成分量」とは、ゴム組成物に含まれる全オイル成分の含有量を意味し、軟化剤として添加されるオイル成分の含有量の他、ゴム成分が伸展油として内包する油展量を含む。
本発明では、ゴム成分として、変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを含むため、ゴム組成物中のシリカの分散性を向上することができるため、加硫ゴムを柔らかくすることができると考えられる。更に、シリカ100質量部に対して10質量部より多い量となるシランカップリング剤を含んだり、変性SBRとして、式(I)で表される変性SBRを用いたりすることで、加硫ゴムをより柔らかくすることができる。その結果、ゴム組成物中のオイル成分量が少なくても、ゴム組成物の作業性に優れ、また、ウェットグリップ性能を発現するのに必要な、-5℃~-10℃でのヒステリシスロスを上げることができる。
以上の観点から、ゴム組成物中のオイル成分量は、ゴム成分100質量部に対し、2~18質量部であることがより好ましく、5~17質量部であることがより更に好ましく、8~16質量部であることがより更に好ましい。
〔加硫剤、加硫促進剤〕
ゴム組成物は、加硫剤と、グアニジン系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤及びスルフェンアミド系加硫促進剤を含む加硫促進剤とを含有する。また、本発明では、グアニジン系加硫促進剤とチアゾール系加硫促進剤との合計質量(gt)と、スルフェンアミド系加硫促進剤と加硫剤との合計質量(ss)との比gt/ssが2.7以上である。
加硫促進剤及び加硫剤が上記成分を含まないと、加硫ゴムは高温時の耐カットチップ性を実現することができず、また、上記成分を含んでいても、量関係が2.7≦gt/ssの関係を満たさないと加硫ゴムは高温時の耐カットチップ性を実現することができない。
グアニジン系加硫促進剤とチアゾール系加硫促進剤との合計質量(gt)と、スルフェンアミド系加硫促進剤と加硫剤との合計質量(ss)との比gt/ssは、2.7~6.0であることが好ましく、2.7~4.5であることがより好ましく、2.8~4.0であることが更に好ましく、2.9~3.5であることがより更に好ましい。
グアニジン系加硫促進剤とチアゾール系加硫促進剤との合計質量(gt)は、高温時の耐カットチップ性をより向上する観点から、ゴム成分100質量部に対して、0.1~7質量部であることが好ましく、0.3~5質量部であることがより好ましく、0.5~4質量部であることが更に好ましい。
同様の観点から、スルフェンアミド系加硫促進剤と加硫剤との合計質量(ss)は、ゴム成分100質量部に対して、1~10質量部であることが好ましく、1.5~8質量部であることがより好ましく、2~5質量部であることが更に好ましい。
(加硫剤)
加硫剤は、特に制限はなく、通常、硫黄を用い、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等を挙げることができる。
(加硫促進剤)
ゴム組成物は、グアニジン系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤及びスルフェンアミド系加硫促進剤を含む加硫促進剤を含有し、グアニジン系加硫促進剤とチアゾール系加硫促進剤との合計質量(gt)と、スルフェンアミド系加硫促進剤と加硫剤との合計質量(ss)との比gt/ssが2.7以上である。
グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩、1,3-ジ-o-クメニルグアニジン、1,3-ジ-o-ビフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-クメニル-2-プロピオニルグアニジン等が挙げられる。
グアニジン系加硫促進剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、ジベンゾチアジルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,6-ジエチル-4-モルホリノチオ)ベンゾチアゾール等が挙げられる。
チアゾール系加硫促進剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-メチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-エチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-プロピル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ペンチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ヘプチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オクチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-2-エチルヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-デシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ドデシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ステアリル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジメチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジエチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジプロピル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジペンチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジヘプチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジオクチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジ-2-エチルヘキシルベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジデシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジドデシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジステアリル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等が挙げられる。
スルフェンアミド系加硫促進剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
加硫促進剤は、アニジン系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤及びスルフェンアミド系加硫促進剤以外の他の加硫促進剤を更に含んでいてもよい。
他の加硫促進剤としては、チウラム系、アルデヒドアミン系、チオカルバミン酸塩系等の各種加硫促進剤が挙げられる。
加硫剤及び加硫促進剤は、ゴム組成物の調製の際に、加硫パッケージとして、まとめて添加してもよいし、時間差で別々に添加してもよい。
ゴム組成物には、上述した、ゴム成分、充填剤、軟化剤、シランカップリング剤、加硫剤、及び加硫促進剤に加えて、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、ステアリン酸、酸化亜鉛(亜鉛華)、老化防止剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して含むことができる。
<ゴム組成物の調製>
本発明のゴム組成物は、上述した各成分を配合して、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサー等の混練り機を使用して混練りすることによって製造することができる。
ここで、ゴム成分、シリカ、シランカップリング剤、加硫剤、加硫促進剤等の配合量は、ゴム組成物中の含有量として既述した量と同じである。
各成分の混練は、全一段階で行ってもよく、二段階以上に分けて行ってもよい。二段階で成分を混練する方法としては、例えば、第一段階において、ゴム成分、充填剤等の成分を混練し、第二段階において、加硫パッケージを混練する方法が挙げられる。
混練の第一段階の最高温度は、130~170℃とすることが好ましく、第二段階の最高温度は、90~120℃とすることが好ましい。
<タイヤ>
本発明のタイヤは、本発明のゴム組成物を用いてなる。
本発明のゴム組成物は、種々の加硫ゴム製品に使用され、タイヤ(空気入りタイヤ)のケース、トレッド部材等として好適である。
タイヤに充填する気体としては、通常の、又は酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスが例示される。
なお、本発明のゴム組成物をタイヤに使用する場合、タイヤのトレッド部材に限定されるものではなく、ベーストレッド、サイドウォール、サイド補強ゴム、ビードフィラー等に用いてもよい。
また、タイヤ用途以外にも、防振ゴム、免震ゴム、ベルト(コンベアベルト)、ゴムクローラ、各種ホース、モランなどに本発明のゴム組成物を使用することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。本発明は、下記の実施例に限定されない。まず、実施例に係るタイヤの評価方法について説明する。
<ゴム組成物の調製>
表1に示す配合組成で各成分を混練し、ゴム組成物を調製した。なお、表中、空欄は配合量が0質量部であることを意味する。
表1に示す成分の詳細は次のとおりである。
・NR:天然ゴム、インドネシア製「SIR20」
・変性SBR 1:変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、溶液重合SBR、JSR社製、商品名「HPR540」、結合スチレン量10%、ガラス転移温度-62℃
・変性SBR 2:本発明における変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、下記方法で合成した変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、変性SBR100質量部に対してオイル分10.0質量部を含む、重量平均分子量(Mw)=85.2×10、分子量200×10以上500×10以下の割合=4.6%、収縮因子(g’)=0.59、ガラス転移温度(Tg)=-24℃
・カーボンブラック:旭カーボン社製、ISAF-HS、商品名「旭#78」
・シリカ:東ソーシリカ社製、商品名「ニップシールHQ-N」、CTAB=191m/g
・ステアリン酸:新日本理化社製「ステアリン酸50S」
・亜鉛華:ハクスイテック社製「3号亜鉛華」
・老化防止剤:N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック 6C」を少なくとも含む。
・樹脂:C-C系樹脂、日本ゼオン社製、商品名「クイントン(登録商標)G100B」
・シランカップリング剤:ビス(3-トリエトシキシリルプロピル)テトラスルフィド(平均硫黄鎖長:3.7)、Evonik社製シランカップリング剤、商品名「Si69」(登録商標)
・加硫パッケージ:グアニジン系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤及び硫黄を含む。
なお、加硫パッケージ中のグアニジン系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤及び硫黄は、グアニジン系加硫促進剤とチアゾール系加硫促進剤との合計質量(gt)と、スルフェンアミド系加硫促進剤と硫黄との合計質量(ss)との比gt/ssが、表1中の「gt/ss」欄に示す質量比である。
<変性SBR 2の製造方法>
内容積が10Lで、内部の高さ(L)と直径(D)との比(L/D)が4.0であり、底部に入口、頂部に出口を有し、攪拌機付槽型反応器である攪拌機及び温度制御用のジャケットを有する槽型圧力容器を重合反応器とした。予め水分除去した、1,3-ブタジエンを17.2g/分、スチレンを10.5g/分、n-ヘキサンを145.3g/分の条件で混合した。この混合溶液を反応基の入口に供給する配管の途中に設けたスタティックミキサーにおいて、残存不純物不活性処理用のn-ブチルリチウムを0.117mmol/分で添加、混合した後、反応基の底部に連続的に供給した。更に、極性物質として2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを0.019g/分の速度で、重合開始剤としてn-ブチルリチウムを0.242mmol/分の速度で、攪拌機で激しく混合する重合反応器の底部へ供給し、連続的に重合反応を継続させた。反応器頂部出口における重合溶液の温度が75℃となるように温度を制御した。重合が十分に安定したところで、反応器頂部出口より、カップリング剤添加前の重合体溶液を少量抜出し、酸化防止剤(BHT)を重合体100gあたり0.2gとなるように添加した後に溶媒を除去し、110℃のムーニー粘度及び各種の分子量を測定した。
次に、反応器の出口より流出した重合体溶液に、カップリング剤として2.74mmol/Lに希釈したテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミンを0.0302mmol/分(水分5.2ppm含有n-ヘキサン溶液)の速度で連続的に添加し、カップリング剤を添加された重合体溶液はスタティックミキサーを通ることで混合されカップリング反応した。このとき、反応器の出口より流出した重合溶液にカップリング剤が添加されるまでの時間は4.8分、温度は68℃であり、重合工程における温度と、変性剤を添加するまでの温度との差は7℃であった。カップリング反応した重合体溶液に、酸化防止剤(BHT)を重合体100gあたり0.2gとなるように0.055g/分(n-ヘキサン溶液)で連続的に添加し、カップリング反応を終了した。酸化防止剤と同時に、重合体100gに対してオイル(JX日鉱日石エネルギー社製 JOMOプロセスNC140)が10.0gとなるように連続的に添加し、スタティックミキサーで混合した。スチームストリッピングにより溶媒を除去して、変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(変性SBR 2)を得た。
合成した変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの、結合スチレン量、ブタジエン部分のミクロ構造、分子量、収縮因子(g’)、ムーニー粘度、ガラス転移温度(Tg)、変性率、窒素原子の有無、ケイ素原子の有無を、以下の方法で分析した。
(1)結合スチレン量
変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを試料として、試料100mgを、クロロホルムで100mLにメスアップし、溶解して測定サンプルとした。スチレンのフェニル基による紫外線吸収波長(254nm付近)の吸収量により、試料100質量%に対しての結合スチレン量(質量%)を測定した(島津製作所社製の分光光度計「UV-2450」)。
(2)ブタジエン部分のミクロ構造(1,2-ビニル結合量)
変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを試料として、試料50mgを、10mLの二硫化炭素に溶解して測定サンプルとした。
溶液セルを用いて、赤外線スペクトルを600~1000cm-1の範囲で測定して、所定の波数における吸光度によりハンプトンの方法(R.R.Hampton,Analytical Chemistry 21,923(1949)に記載の方法)の計算式に従い、ブタジエン部分のミクロ構造、すなわち、1,2-ビニル結合量(mol%)を求めた(日本分光社製のフーリエ変換赤外分光光度計「FT-IR230」)。
(3)分子量
変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを試料として、ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結したGPC測定装置(東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」)を使用して、RI検出器(東ソー社製の商品名「HLC8020」)を用いてクロマトグラムを測定した。標準ポリスチレンを使用して得られる検量線に基づいて、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)と分子量分布(Mw/Mn)と、変性共役ジエン系重合体のピークトップ分子量(Mp)と共役ジエン系重合体のピークトップ分子量(Mp)とその比率(Mp/Mp)と、分子量200×10以上500×10以下の割合と、を求めた。溶離液は5mmol/Lのトリエチルアミン入りTHF(テトラヒドロフラン)を使用した。カラムは、東ソー社製の商品名「TSKgel SuperMultiporeHZ-H」を3本接続し、その前段にガードカラムとして東ソー社製の商品名「TSKguardcolumn SuperMP(HZ)-H」を接続して使用した。測定用の試料10mgを10mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液10μLをGPC測定装置に注入して、オーブン温度40℃、THF流量0.35mL/分の条件で測定した。
上記のピークトップ分子量(Mp及びMp)は、次のようにして求めた。
測定して得られるGPC曲線において、最も高分子量の成分として検出されるピークを選択した。その選択したピークについて、そのピークの極大値に相当する分子量を算出し、ピークトップ分子量とした。
また、上記の分子量200×10以上500×10以下の割合は、積分分子量分布曲線から分子量500×10以下が全体に占める割合から分子量200×10未満が占める割合を差し引くことで算出した。
(4)収縮因子(g’)
変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを試料として、ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結したGPC測定装置(Malvern社製の商品名「GPCmax VE-2001」)を使用して、光散乱検出器、RI検出器、粘度検出器(Malvern社製の商品名「TDA305」)の順番に接続されている3つの検出器を用いて測定した。標準ポリスチレンに基づいて、光散乱検出器とRI検出器結果から絶対分子量を、RI検出器と粘度検出器の結果から固有粘度を求めた。直鎖ポリマーは、固有粘度[η]=-3.883M0.771に従うものとして用い、各分子量に対応する固有粘度の比としての収縮因子(g’)を算出した。溶離液は5mmol/Lのトリエチルアミン入りTHFを使用した。カラムは、東ソー社製の商品名「TSKgel G4000HXL」、「TSKgel G5000HXL」、及び「TSKgel G6000HXL」を接続して使用した。測定用の試料20mgを10mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液100μLをGPC測定装置に注入して、オーブン温度40℃、THF流量1mL/分の条件で測定した。
(5)ムーニー粘度
変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを試料として、ムーニー粘度計(上島製作所社製の商品名「VR1132」)を用い、JIS K6300に準拠し、L形ローターを用いてムーニー粘度を測定した。測定温度は、100℃とした。まず、試料を1分間試験温度で予熱した後、ローターを2rpmで回転させ、4分後のトルクを測定してムーニー粘度(ML(1+4))とした。
(6)ガラス転移温度(Tg)
変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを試料として、ISO 22768:2006に準拠して、マックサイエンス社製の示差走査熱量計「DSC3200S」を用い、ヘリウム50mL/分の流通下、-100℃から20℃/分で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とした。
(7)変性率
変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを試料として、シリカ系ゲルを充填剤としたGPCカラムに、変性した塩基性重合体成分が吸着する特性を応用することにより、測定した。試料及び低分子量内部標準ポリスチレンを含む試料溶液を、ポリスチレン系カラムで測定したクロマトグラムと、シリカ系カラムで測定したクロマトグラムと、の差分よりシリカ系カラムへの吸着量を測定し、変性率を求めた。具体的には、以下に示すとおりである。
試料溶液の調製:試料10mg及び標準ポリスチレン5mgを20mLのTHFに溶解させて、試料溶液とした。
ポリスチレン系カラムを用いたGPC測定条件:東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」を使用して、5mmol/Lのトリエチルアミン入りTHFを溶離液として用い、試料溶液10μLを装置に注入し、カラムオーブン温度40℃、THF流量0.35mL/分の条件で、RI検出器を用いてクロマトグラムを得た。カラムは、東ソー社製の商品名「TSKgel SuperMultiporeHZ-H」を3本接続し、その前段にガードカラムとして東ソー社製の商品名「TSKguardcolumn SuperMP(HZ)-H」を接続して使用した。
シリカ系カラムを用いたGPC測定条件:東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」を使用して、THFを溶離液として用い、試料溶液50μLを装置に注入し、カラムオーブン温度40℃、THF流量0.5ml/分の条件で、RI検出器を用いてクロマトグラムを得た。カラムは、商品名「Zorbax PSM-1000S」、「PSM-300S」、「PSM-60S」を接続して使用し、その前段にガードカラムとして商品名「DIOL 4.6×12.5mm 5micron」を接続して使用した。
変性率の計算方法:ポリスチレン系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積をP1、標準ポリスチレンのピーク面積をP2、シリカ系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積をP3、標準ポリスチレンのピーク面積をP4として、下記式より変性率(%)を求めた。
変性率(%)=[1-(P2×P3)/(P1×P4)]×100
(ただし、P1+P2=P3+P4=100)
(8)窒素原子の有無
前記(7)と同様の測定を行い、算出された変性率が10%以上であった場合、窒素原子を有していると判断した。
(9)ケイ素原子の有無
変性共役ジエン系重合体0.5gを試料として、JIS K 0101 44.3.1に準拠して、紫外可視分光光度計(島津製作所社製の商品名「UV-1800」)を用いて測定し、モリブデン青吸光光度法により定量した。これにより、ケイ素原子が検出された場合(検出下限10質量ppm)、ケイ素原子を有していると判断した。
得られた変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(変性SBR 2)を上記の方法で分析したところ、結合スチレン量が35質量%であり、ビニル結合量(1,2-結合量)が42mol%であり、重量平均分子量(Mw)が85.2×10g/molであり、数平均分子量(Mn)が38.2×10g/molであり、分子量分布(Mw/Mn)が2.23であり、ピークトップ分子量(Mp)が96.8×10g/molであり、ピークトップ分子量の比率(Mp/Mp)が3.13であり、分子量200×10以上500×10以下の割合が4.6%であり、収縮因子(g’)が0.59であり、ムーニー粘度(100℃)が65であり、ガラス転移温度(Tg)が-24℃であり、変性率が80%であることが分かった。また、得られた変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムが窒素原子を有すること、ケイ素原子を有することも確認した。
なお、変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(変性SBR 2)は、カップリング剤の官能基数と添加量から想定される分岐数に相当する「分岐度」は8であり(収縮因子の値からも確認できる)、カップリング剤1分子が有するSiORの総数から反応により減じたSiOR数を引いた値に相当する「SiOR残基数」は4である。
表中の「シリカ比率」は、ゴム組成物に含まれる充填剤中のシリカの割合を意味し、カーボンブラックの含有量(b)とシリカの含有量(s)とから、100×s/(s+b)として算出した。
表中の「シラン量」は、シリカ100質量部に対するシランカップリング剤の質量部数を表し、シリカの配合量(s)とシランカップリング剤の配合量(c)とから、100×c/sとして算出した。
表中の「オイル成分量」は、ゴム成分に含まれる伸展油の油展量と、軟化剤として配合されたオイルとの合計量を表す。
<タイヤの評価>
得られたゴム組成物を加硫して加硫ゴムを得た。得られた加硫ゴムを用いて、高温時の耐カットチップ性と低転がり抵抗性を評価した。高温時の耐カットチップ性は、破断伸び(EB;Elongation at break)、及び引張強さTB(Tensile Strength at break)により評価した。また、低転がり抵抗性は、加硫ゴムのtanδにより評価した。
評価方法は次のとおりである。
1.高温時の耐カットチップ性
JIS K 6251(2017年)に準じて加硫ゴムを試験片に加工した。ギヤーオーブン試験機を用いて、試験片をそれぞれ100℃にて1日間、空気熱で老化させた後に、JIS K 6251(2017年)に準じて引張試験を行い、試験片の破断強度(TB)及び破断時伸び(EB)を測定した。得られた破断強度及び破断時伸びの積(TB×EB)の数値を算出し、該積をそれぞれ指数表示して耐チップカット性を評価した。指数が高いほど良好であり、許容範囲は100以上である。
2.低転がり抵抗性
各ゴム組成物を145℃で33分間加硫して得られた加硫ゴムについて、損失正接(tanδ)を、上島製作所製スペクトロメーター、温度50℃、初期歪2%、動歪1%、周波数52Hzの条件で測定する。
実施例1のtanδを100として、下記式により、各比較例のtanδを指数化し、低転がり抵抗性指数とした。
低転がり抵抗性指数=100×(実施例1のtanδ)/(実施例1以外の実施例又は比較例のtanδ)
許容範囲は、90以上である。指数が大きいほど、50℃でのヒステリシスロスが小さいことを意味し、タイヤを製造した場合、タイヤが低転がり抵抗性に優れることを意味する。
Figure 2022088915000016
表1からわかるように、比較例のゴム組成物は、シリカの含有量がゴム成分100質量部に対して55質量部以上であったり、加硫促進剤の比gt/ssが2.7未満であったりする結果、加硫ゴムの耐カットチップ性指数が100以上、かつ、低転がり抵抗性指数が90以上とならなかった。
一方、ゴム成分100質量部に対して10質量部以上55質量部未満のシリカを含み、加硫促進剤の比gt/ssが2.7以上である実施例のゴム組成物は、加硫ゴムの耐カットチップ性指数が100以上、かつ、低転がり抵抗性指数が90以上となった。よって、実施例のゴム組成物から得られる加硫ゴムを含むタイヤは、優れた低転がり抵抗性と、高温時の耐カットチップ性を両立すると考えられる。

Claims (15)

  1. イソプレン系ゴム及び変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを含むゴム成分と、
    前記ゴム成分100質量部に対して10質量部以上55質量部未満のシリカを含む充填剤と、
    加硫剤と、
    グアニジン系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤及びスルフェンアミド系加硫促進剤を含む加硫促進剤と
    を含有し、
    前記充填剤中の前記シリカの含有量が70質量%以上であり、
    前記グアニジン系加硫促進剤と前記チアゾール系加硫促進剤との合計質量(gt)と、前記スルフェンアミド系加硫促進剤と前記加硫剤との合計質量(ss)との比gt/ssが2.7以上であるゴム組成物。
  2. 更に、前記ゴム成分100質量部に対し0質量部を超え11質量部以下の軟化剤を含有する請求項1に記載のゴム組成物。
  3. 前記加硫剤が硫黄である請求項1又は2に記載のゴム組成物。
  4. 更に、前記シリカ100質量部に対して10質量部より多いシランカップリング剤を含有する請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  5. 前記変性スチレン-ブタジエン共重合体の結合スチレン量が25%以上である請求項1~4のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  6. 前記ゴム成分中の前記変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの含有量が、10~45質量%である請求項1~5のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  7. 前記充填剤は、更に、カーボンブラックを含む請求項1~6のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  8. 前記変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、重量平均分子量が20×10以上300×10以下であって、前記変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの総量に対して、分子量が200×10以上500×10以下である変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを0.25質量%以上30質量%以下含み、収縮因子(g’)が0.64未満である請求項1~7のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  9. 前記変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、分岐を有し、分岐度が5以上である請求項1~8のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  10. 前記変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、1以上のカップリング残基と、該カップリング残基に対して結合するスチレン-ブタジエン共重合体ゴム鎖と、を有し、
    前記分岐は、1の前記カップリング残基に対して5以上の前記スチレン-ブタジエン共重合体ゴム鎖が結合している分岐を含む請求項9に記載のゴム組成物。
  11. 前記変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムが、下記式(I)で表される請求項1~10のいずれか1項に記載のゴム組成物。
    Figure 2022088915000017

    [式(I)中、Dは、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム鎖を示す。R、R及びRは、それぞれ独立して単結合又は炭素数1~20のアルキレン基を示す。R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキル基を示す。R、R、及びRは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を示す。R及びR10は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキレン基を示す。R11は、水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を示す。m及びxは、それぞれ独立して1~3の整数を示し、x≦mである。pは、1又は2を示す。yは、1~3の整数を示し、y≦(p+1)である。zは、1又は2の整数を示す。iは、0~6の整数を示し、jは、0~6の整数を示し、kは、0~6の整数を示し、(i+j+k)は、3~10の整数である。((x×i)+(y×j)+(z×k))は、5~30の整数である。Aは、炭素数1~20の、炭化水素基、又は、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子及びリン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を有し、かつ、活性水素を有しない有機基を示す。〕
  12. 前記式(I)において、Aは、下記式(II)、下記式(III)、下記式(IV)、又は下記式(V)で表される請求項11に記載のゴム組成物。
    Figure 2022088915000018

    Figure 2022088915000019

    Figure 2022088915000020

    Figure 2022088915000021

    〔式(II)中、Bは、単結合又は炭素数1~20の炭化水素基を示す。aは、1~10の整数を示す。
    式(III)中、Bは、単結合又は炭素数1~20の炭化水素基を示し、Bは、炭素数1~20のアルキル基を示す。aは、1~10の整数を示す。
    式(IV)中、Bは、単結合又は炭素数1~20の炭化水素基を示す。aは、1~10の整数を示す。
    式(V)中、Bは、単結合又は炭素数1~20の炭化水素基を示す。aは、1~10の整数を示す。〕
  13. 前記変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムは、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを、下記式(VI)で表されるカップリング剤と反応させてなる請求項1~12のいずれか1項に記載のゴム組成物。
    Figure 2022088915000022

    〔式(VI)中、R12、R13及びR14は、それぞれ独立して単結合又は炭素数1~20のアルキレン基を示す。R15、R16、R17、R18及びR20は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキル基を示す。R19及びR22は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキレン基を示す。R21は、炭素数1~20の、アルキル基又はトリアルキルシリル基を示し、mは、1~3の整数を示す。pは、1又は2を示す。i、j及びkは、それぞれ独立して0~6の整数を示す。但し、(i+j+k)は、3~10の整数である。Aは、炭素数1~20の、炭化水素基、又は、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子及びリン原子からなる群から選択される少なくとも一種の原子を有し、活性水素を有しない有機基を示す。〕
  14. 前記式(VI)で表されるカップリング剤が、テトラキス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、及びテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも一種である請求項13に記載のゴム組成物。
  15. 請求項1~14のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いたタイヤ。
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