JP2022086105A - 偏光板およびそれを用いた画像表示装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】低抵抗粘着剤層を有するにもかかわらず、高温高湿環境下における耐久性に優れた偏光板を提供すること。【解決手段】本発明の実施形態による偏光板は、偏光子と、偏光子の一方の側に設けられた保護層と、偏光子のもう一方の側に設けられた樹脂層と、樹脂層の偏光子と反対側に設けられた粘着剤層と、を有する。保護層はトリアセチルセルロースフィルムで構成されている。粘着剤層は導電成分を含み、その表面抵抗値は1.0×108Ω/□~1.0×1012Ω/□である。樹脂層は樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物または熱硬化物であり、その厚みは2μm以下である。偏光子と保護層との間には、導電成分透過抑制層が設けられている。【選択図】図1

Description

本発明は、偏光板およびそれを用いた画像表示装置に関する。
液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置、無機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置においては、代表的には、偏光板が粘着剤層を介して表示パネルに貼り合わされている。近年、画像表示装置の狭額縁化、表示パネル内にタッチパネル用導電層を組み込んだいわゆるインセル型画像表示装置の発展等に伴い、画像表示装置の帯電防止性能の改善が求められている。その結果、導電性に優れた粘着剤層(低抵抗粘着剤層)が求められている。しかし、低抵抗粘着剤層を含む偏光板は、高温高湿環境下において耐久性が不十分であるという問題がある。より詳細には、低抵抗粘着剤層を含む偏光板は、高温高湿環境下において、保護層における粒状突起または水ぶくれの発生、端部の色抜けまたはレッドライン(Red line)等の脱色、クラックといった外観不良;偏光板(実質的には、偏光子)の単体透過率の低下;等の問題がある。
特開2020-50879号公報
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、低抵抗粘着剤層を有するにもかかわらず、高温高湿環境下における耐久性に優れた偏光板を提供することにある。
本発明の実施形態による偏光板は、偏光子と、該偏光子の一方の側に設けられた保護層と、該偏光子のもう一方の側に設けられた樹脂層と、該樹脂層の該偏光子と反対側に設けられた粘着剤層と、を有する。該保護層はトリアセチルセルロースフィルムで構成されている。該粘着剤層は導電成分を含み、その表面抵抗値は1.0×10Ω/□~1.0×1012Ω/□である。該樹脂層は樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物または熱硬化物であり、その厚みは2μm以下である。該偏光子と該保護層との間には、導電成分透過抑制層が設けられている。
1つの実施形態においては、上記保護層は上記偏光子の一方の側のみに設けられており、上記樹脂層は該偏光子のもう一方の側で該偏光子に直接設けられている。
1つの実施形態においては、上記偏光板は、上記保護層の上記偏光子と反対側にハードコート層をさらに有する。
1つの実施形態においては、上記樹脂層を構成する樹脂のガラス転移温度は85℃以上であり、重量平均分子量Mwは25000以上である。
1つの実施形態においては、上記導電成分透過抑制層は別のハードコート層である。別の実施形態においては、上記導電成分透過抑制層は別の樹脂層であり、該別の樹脂層は樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物または熱硬化物であり、該別の樹脂層を構成する樹脂のガラス転移温度は85℃以上であり、重量平均分子量Mwは25000以上である。
1つの実施形態においては、上記偏光子の厚みは10μm以下である。
本発明の別の局面によれば、画像表示装置が提供される。この画像表示装置は、上記の偏光板を備える。
本発明の実施形態によれば、低抵抗粘着剤層とトリアセチルセルロース(TAC)フィルムで構成された保護層とを有する偏光板において、偏光子と保護層との間に所定の導電成分透過抑制層を設けることにより、高温高湿環境下における耐久性に優れた偏光板を実現することができる。より詳細には、高温高湿環境下において、保護層における粒状突起または水ぶくれの発生を抑制し、かつ、偏光板の端部の色抜けまたはレッドライン(Red line)等の脱色、およびクラックを抑制し、さらに、偏光板(実質的には、偏光子)の単体透過率を許容範囲内に維持することができる。
本発明の1つの実施形態による偏光板の概略断面図である。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
A.偏光板の全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による偏光板の概略断面図である。図示例の偏光板100は、偏光子10と、偏光子10の一方の側に設けられた保護層20と、偏光子10のもう一方の側に設けられた樹脂層40と、樹脂層40の偏光子10と反対側に設けられた粘着剤層30と、を有する。樹脂層40は、樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物または熱硬化物であり、その厚みは2μm以下である。保護層20はTACフィルムで構成されている。偏光板においては、好ましくは図示例のように、偏光子10の一方の側のみに保護層20が設けられている。この場合、樹脂層40は偏光子10のもう一方の側で偏光子10に直接設けられている。本明細書において「偏光子に直接設けられている」とは、接着層(代表的には、接着剤層、粘着剤層)を介在させることなく偏光子表面に直接形成されていることを意味する。必要に応じて、保護層20の偏光子10と反対側(すなわち、偏光板の視認側)にハードコート層60が設けられてもよい。粘着剤層30は最外層として設けられ、偏光板は画像表示装置(実質的には、画像表示パネル)に貼り付け可能とされている。粘着剤層(実質的には、粘着剤層を構成する粘着剤組成物)は導電成分を含み、その表面抵抗値は代表的には1.0×10Ω/□~1.0×1012Ω/□である。実用的には、粘着剤層30の表面には、偏光板が使用に供されるまで、剥離フィルムが仮着されていることが好ましい。剥離フィルムを仮着することにより、粘着剤層を保護するとともに、偏光板のロール形成が可能となる。
本発明の実施形態においては、偏光子10と保護層20との間に導電成分透過抑制層50が設けられている。導電成分透過抑制層50は、1つの実施形態においてはハードコート層であり;別の実施形態においては、樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物または熱硬化物である樹脂層である。導電成分透過抑制層50としてのハードコート層とハードコート層60とは、同一の構成であってもよく異なる構成であってもよい。同様に、導電成分透過抑制層50としての樹脂層と樹脂層40とは、同一の構成であってもよく異なる構成であってもよい。本明細書においては、導電成分透過抑制層50としてのハードコート層を、ハードコート層60と区別するために「別のハードコート層」と称する場合があり;導電成分透過抑制層50としての樹脂層を、樹脂層40と区別するために「別の樹脂層」と称する場合がある。このような導電成分透過抑制層を設けることにより(好ましくは、導電成分透過抑制層50と樹脂層40とを組み合わせて設けることにより)、高温高湿環境下における耐久性に優れた偏光板を実現することができる。より詳細には、高温高湿環境下において、保護層における粒状突起または水ぶくれの発生を抑制し、かつ、偏光板の端部の色抜けまたはレッドライン(Red line)等の脱色、およびクラックを抑制し、さらに、偏光板(実質的には、偏光子)の単体透過率を許容範囲内に維持することができる。
本発明の実施形態による偏光板は、樹脂層および導電成分透過抑制層以外の機能層をさらに含んでいてもよい。このような機能層の代表例としては、位相差層が挙げられる。位相差層の光学的特性(例えば、屈折率特性、面内位相差、Nz係数、光弾性係数)、厚み、配置位置等は、目的に応じて適切に設定され得る。
本発明の実施形態による偏光板は、枚葉状であってもよく長尺状であってもよい。本明細書において「長尺状」とは、幅に対して長さが十分に長い細長形状を意味し、例えば、幅に対して長さが10倍以上、好ましくは20倍以上の細長形状を含む。長尺状の偏光板は、ロール状に巻回可能である。
偏光板の総厚みは、好ましくは60μm以下であり、より好ましくは55μm以下であり、さらに好ましくは50μm以下であり、特に好ましくは40μm以下である。総厚みの下限は、例えば28μmであり得る。本発明の実施形態によれば、低抵抗粘着剤層を有し、かつ、偏光子の一方の側のみに保護層を有する構成において、偏光子の両側に保護層を有する構成と同等の効果を得ることができる。その結果、一方の保護層を省略できるので、顕著な薄型化を実現することができる。なお、偏光板の総厚みとは、偏光子、保護層、透過抑制層、樹脂層およびこれらを積層するための接着剤層または粘着剤層の厚みの合計をいう(すなわち、偏光板の総厚みは、粘着剤層30およびその表面に仮着され得る剥離フィルムの厚みを含まない)。
以下、偏光板の構成要素について、より詳細に説明する。
B.偏光子
偏光子は、代表的には、二色性物質(代表的には、ヨウ素)を含む樹脂フィルムで構成される。樹脂フィルムとしては、偏光子として用いられ得る任意の適切な樹脂フィルムを採用することができる。樹脂フィルムは、代表的には、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」と称する)フィルムである。樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の積層体であってもよい。
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、PVA系樹脂フィルムにヨウ素による染色処理および延伸処理(代表的には、一軸延伸)が施されたものが挙げられる。上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系樹脂フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系樹脂フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系樹脂フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる偏光子の光学特性を向上し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離し、当該剥離面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
偏光子の厚みは、好ましくは1μm~10μmであり、より好ましくは1μm~8μmであり、さらに好ましくは2μm~5μmである。偏光子の厚みがこのような範囲であれば、偏光板の薄型化に大きく貢献し得る。
偏光子のホウ酸含有量は、好ましくは10重量%以上であり、より好ましくは13重量%~25重量%である。偏光子のホウ酸含有量がこのような範囲であれば、貼り合わせ時のカール調整の容易性を良好に維持し、かつ、加熱時のカールを良好に抑制しつつ、加熱時の外観耐久性を改善することができる。ホウ酸含有量は、例えば、中和法から下記式を用いて、単位重量当たりの偏光子に含まれるホウ酸量として算出することができる。
Figure 2022086105000002
偏光子のヨウ素含有量は、好ましくは2重量%以上であり、より好ましくは2重量%~11重量%であり、さらに好ましくは5重量%~9重量%である。偏光子のヨウ素含有量がこのような範囲であれば、貼り合わせ時のカール調整の容易性を良好に維持し、かつ、加熱時のカールを良好に抑制しつつ、加熱時の外観耐久性を改善することができる。本明細書において「ヨウ素含有量」とは、偏光子(PVA系樹脂フィルム)中に含まれるすべてのヨウ素の量を意味する。より具体的には、偏光子中においてヨウ素はヨウ素イオン(I)、ヨウ素分子(I)、ポリヨウ素イオン(I 、I )等の形態で存在するところ、本明細書におけるヨウ素含有量は、これらの形態をすべて包含したヨウ素の量を意味する。ヨウ素含有量は、例えば、蛍光X線分析の検量線法により算出することができる。なお、ポリヨウ素イオンは、偏光子中でPVA-ヨウ素錯体を形成した状態で存在している。このような錯体が形成されることにより、可視光の波長範囲において吸収二色性が発現し得る。具体的には、PVAと三ヨウ化物イオンとの錯体(PVA・I )は470nm付近に吸光ピークを有し、PVAと五ヨウ化物イオンとの錯体(PVA・I )は600nm付近に吸光ピークを有する。結果として、ポリヨウ素イオンは、その形態に応じて可視光の幅広い範囲で光を吸収し得る。一方、ヨウ素イオン(I)は230nm付近に吸光ピークを有し、可視光の吸収には実質的には関与しない。したがって、PVAとの錯体の状態で存在するポリヨウ素イオンが、主として偏光子の吸収性能に関与し得る。
偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率は、好ましくは41.5%~46.0%であり、より好ましくは43.0%~46.0%であり、さらに好ましくは44.5%~46.0%である。偏光子の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。
C.保護層
保護層20は、上記のとおり、TACフィルムで構成されている。このような構成であれば、本発明の実施形態による効果が顕著である。より詳細には、低抵抗粘着剤層を含む偏光板においては、保護層にTACフィルムを用いると、粘着剤層の導電成分の影響により、保護層に粒状の突起および/または水ぶくれが発生する場合がある。本発明の実施形態によれば、保護層と偏光子との間に所定の導電成分透過抑制層を設けることにより、上記のような保護層の外観不良を防止することができる。
偏光板が画像表示装置の視認側に配置される場合には、保護層20は、代表的にはその視認側に配置される。この場合、保護層20には、ハードコート層を形成する以外に、必要に応じて、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等の表面処理が施されていてもよい。
保護層の厚みは、好ましくは10μm~50μm、より好ましくは15μm~35μmである。なお、表面処理が施されている場合、保護層の厚みは、表面処理層の厚みを含めた厚みである。
D.ハードコート層
ハードコート層60は、本発明の実施形態による効果が得られる限りにおいて任意の適切な構成が採用され得る。例えば、ハードコート層は、任意の適切なバインダー樹脂を含み得る。バインダー樹脂としては、熱硬化性樹脂、活性エネルギー線(例えば、紫外線、可視光線、電子線)硬化性樹脂が挙げられる。このような硬化性樹脂としては、例えば、熱、光(紫外線等)または電子線等により硬化するアクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する硬化型化合物が使用できる。具体例としては、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物のアクリレートやメタクリレートのオリゴマーまたはプレポリマーが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。硬化性樹脂として市販品を用いてもよい。
ハードコート層は、例えば(メタ)アクリル系樹脂を含んでいてもよく、また例えばウレタン(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。ハードコート層は、また例えば、官能基を有するオリゴマーとモノマーとの共重合体を含んでいてもよい。官能基を有するモノマーとしては、例えば、多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。(メタ)アクリレートは、好ましくは2官能以上であり、より好ましくは3官能以上である。官能基を有するオリゴマーとしては、例えば、硬化型ウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。1つの実施形態においては、ハードコート層(実質的には、ハードコート層を形成する組成物)は、全バインダー樹脂100重量部に対して、硬化型ウレタン(メタ)アクリレートおよび3官能以上の(メタ)アクリレートを合計で60重量部以上含む。当該合計量は、好ましくは70重量部以上であり、より好ましくは80重量部以上であり、さらに好ましくは90重量部以上であり、特に好ましくは95重量部以上である。当該合計量は100重量部であってもよい。すなわち、バインダー樹脂がすべて、硬化型ウレタン(メタ)アクリレートおよび/または3官能以上の(メタ)アクリレートで構成されていてもよい。硬化型ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、三菱ケミカル株式会社製の商品名「UV-1700TL」、三菱ケミカル株式会社製の商品名「UT-7314」が挙げられる。多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、DIC社製の商品名「ユニディック17-807」、東亜合成株式会社製の商品名「M-920」等が挙げられる。なお、本明細書において(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
ハードコート層は、元素としてのケイ素を含んでいてもよい。ケイ素は、ハードコート層に含まれる表面調整剤の構成元素であってもよい。したがって、ハードコート層は表面調整剤(代表的には、レベリング剤)を含み、当該表面調整剤は、例えばジメチルシロキサン骨格を有するケイ素化合物を含んでいてもよい。ケイ素化合物は、ジメチルシロキサン変性メタクリル酸エステル、ポリジメチルシロキサン環状物等であってもよい。表面調整剤は市販品を用いてもよい。市販品の具体例としては、例えば、共栄社化学(株)製の商品名「LE-303」、DIC(株)製の商品名「PC4100」が挙げられる。
ハードコート層(実質的には、ハードコート層を形成する組成物)は、アクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する反応性希釈剤を含んでいてもよい。反応性希釈剤としては、例えば、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。好ましくは、3官能以上の(メタ)アクリレートである。具体例としては、ブタンジオールグリセリンエーテルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸の(メタ)アクリレートが挙げられる。このような構成であれば、優れた硬度を有するハードコート層が形成され得る。反応性希釈剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。反応性希釈剤は、例えば、特開2008-88309号公報に記載されており、当該公報の記載は本明細書に参考として援用される。
ハードコート層は、チキソトロピー付与剤を含んでいてもよい。チキソトロピー付与剤としては、例えば、有機粘土、酸化ポリオレフィン、変性ウレアが挙げられる。チキソトロピー付与剤は、例えば、増粘剤であってもよい。チキソトロピー付与剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
ハードコート層は、フィラーを含んでいてもよい。フィラーとしては、例えば、有機粒子、無機粒子が挙げられる。また、上記のチキソトロピー付与剤がフィラーとして機能し得る。フィラーを含有することにより、得られるハードコート層の少なくとも一方の表面に凹凸構造が形成され、当該凹凸構造に起因して所望のヘイズ値が得られ得る。ハードコート層のヘイズ値は、例えば5%以上であり、また例えば10%以上であり、また例えば15%以上であり、また例えば20%以上であり得る。一方、ハードコート層のヘイズ値は、例えば50%以下であり、また例えば45%以下であり、また例えば40%以下であり、また例えば35%以下であり得る。ヘイズ値がこのような範囲であれば、濃淡の発生および外部からの映り込みが抑制され、かつ、画像表示装置の表示特性(例えば、鮮明さ、暗所でのコントラスト)の低下を抑制することができる。ヘイズ値は、代表的には、JIS K 7136に準拠して測定され得る。
ハードコート層の鉛筆硬度は、好ましくはF以上であり、より好ましくはH以上であり、さらに好ましくは3H以上である。ハードコート層の鉛筆硬度がこのような範囲であれば、視認側最外層として十分な保護機能が実現され得る。さらに、後述するようにハードコート層を導電成分透過抑制層として用いた場合に、良好な透過抑制性能が実現され得る。
ハードコート層の厚みは、好ましくは1μm~10μmであり、より好ましくは2μm~8μmである。ハードコート層の厚みがこのような範囲であれば、偏光板の薄型化に貢献し、かつ、所望の保護機能および/または透過抑制機能を実現することができる。
E.樹脂層
樹脂層は、上記のとおり、樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物または熱硬化物である。このような構成であれば、厚みを非常に薄く(例えば、10μm以下に)することができる。樹脂層の厚みは、好ましくは0.05μm~3μmであり、より好ましくは0.08μm~2μmであり、さらに好ましくは0.1μm~1μmであり、特に好ましくは0.2μm~0.7μmである。さらに、このような構成であれば、樹脂層を偏光子に直接(すなわち、接着剤層または粘着剤層を介することなく)形成することができる。本発明の実施形態によれば、上記のとおり偏光子および樹脂層が非常に薄く、かつ、樹脂層を積層するための接着剤層または粘着剤層を省略することができるので、偏光板の総厚みをきわめて薄くすることができる。さらに、このような樹脂層は、水溶液または水分散体のような水系の塗布膜の固化物に比べて吸湿性および透湿性が小さいので加湿耐久性に優れるという利点を有する。その結果、高温高湿環境下においても光学特性を維持し得る、耐久性に優れた偏光板を実現することができる。また、このような樹脂層は、例えば紫外線硬化性樹脂の硬化物に比べて紫外線照射による偏光板(偏光子)に対する悪影響を抑制することができる。樹脂層は、好ましくは、樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物である。固化物は、硬化物に比べてフィルム成形時の収縮が小さい、および、残存モノマー等が含まれないのでフィルム自体の劣化が抑制され、かつ、残存モノマー等に起因する偏光板(偏光子)に対する悪影響を抑制することができる。
樹脂層を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)は、代表的には85℃以上であり、好ましくは90℃以上であり、より好ましくは100℃以上であり、さらに好ましくは110℃以上であり、特に好ましくは120℃以上である。Tgの上限は、例えば200℃であり得る。当該樹脂の重量平均分子量Mwは、代表的には25000以上であり、好ましくは30000以上であり、より好ましくは35000以上であり、さらに好ましくは40000以上である。Mwの上限は、例えば150000であり得る。当該樹脂のTgおよびMwがこのような範囲であれば、樹脂層を樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物または熱硬化物で構成することによる効果との相乗的な効果により、非常に薄いにもかかわらず、偏光子中のヨウ素の画像表示パネルへの移行を顕著に抑制することができる。結果として、偏光板を画像表示装置に適用した場合に画像表示装置の金属部材の腐食を顕著に抑制することができる。また、このような構成であれば、樹脂層を導電成分透過抑制層として用いた場合に、その効果が顕著なものとなる。
樹脂層を構成する樹脂としては、任意の適切な熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を用いることができる。好ましくは、熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂が挙げられる。アクリル系樹脂とエポキシ系樹脂とを組み合わせて用いてもよい。以下、樹脂層に用いられ得るアクリル系樹脂およびエポキシ系樹脂の代表例を説明する。
アクリル系樹脂は、代表的には、直鎖または分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体由来の繰り返し単位を主成分として含有する。本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルをいう。アクリル系樹脂は、目的に応じた任意の適切な共重合単量体由来の繰り返し単位を含有し得る。共重合単量体(共重合モノマー)としては、例えば、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、芳香環含有(メタ)アクリレート、複素環含有ビニル系モノマーが挙げられる。モノマー単位の種類、数、組み合わせおよび共重合比等を適切に設定することにより、上記所定のMwを有するアクリル系樹脂が得られ得る。
<ホウ素含有アクリル系樹脂>
アクリル系樹脂は、1つの実施形態においては、50重量部を超える(メタ)アクリル系単量体と0重量部を超えて50重量部未満の式(1)で表される単量体(以下、共重合単量体と称する場合がある)とを含むモノマー混合物を重合することにより得られる共重合体(以下、ホウ素含有アクリル系樹脂と称する場合がある)を含む:
Figure 2022086105000003
(式中、Xはビニル基、(メタ)アクリル基、スチリル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタン基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルデヒド基、および、カルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性基を含む官能基を表し、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよいアリール基、または、置換基を有していてもよいヘテロ環基を表し、RおよびRは互いに連結して環を形成してもよい)。
ホウ素含有アクリル系樹脂は、代表的には下記式で表される繰り返し単位を有する。式(1)で表される共重合単量体と(メタ)アクリル系単量体とを含むモノマー混合物を重合することにより、ホウ素含有アクリル系樹脂は側鎖にホウ素を含む置換基(例えば、下記式中kの繰り返し単位)を有する。これにより、樹脂層を偏光子に隣接して配置した場合に偏光子との密着性が向上し得る。このホウ素を含む置換基は、ホウ素含有アクリル系樹脂に連続して(すなわち、ブロック状に)含まれていてもよく、ランダムに含まれていてもよい。
Figure 2022086105000004
(式中、Rは任意の官能基を表し、jおよびkは1以上の整数を表す)。
<(メタ)アクリル系単量体>
(メタ)アクリル系単量体としては任意の適切な(メタ)アクリル系単量体を用いることができる。例えば、直鎖または分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体、および、環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体が挙げられる。
直鎖または分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸メチル2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル等が挙げられる。好ましくは、(メタ)アクリル酸メチルが用いられる。(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、ビフェニル(メタ)アクリレート、o-ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、o-ビフェニルオキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、m-ビフェニルオキシエチルアクリレート、p-ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、o-ビフェニルオキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、p-ビフェニルオキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、m-ビフェニルオキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-ビフェニル=カルバマート、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-p-ビフェニル=カルバマート、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-m-ビフェニル=カルバマート、o-フェニルフェノールグリシジルエーテルアクリレート等のビフェニル基含有モノマー、ターフェニル(メタ)アクリレート、o-ターフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。好ましくは、(メタ)アクリル酸1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルが用いられる。これらの単量体を用いることにより、ガラス転移温度の高い重合体が得られる。これらの単量体は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記(メタ)アクリル酸エステル系単量体に代えて、(メタ)アクリロイル基を有するシルセスキオキサン化合物を用いてもよい。シルセスキオキサン化合物を用いることにより、ガラス転移温度が高いアクリル系重合体が得られる。シルセスキオキサン化合物は、種々の骨格構造、例えば、カゴ型構造、ハシゴ型構造、ランダム構造などの骨格を持つものが知られている。シルセスキオキサン化合物は、これらの構造を1種のみを有するものでもよく、2種以上を有するものでもよい。シルセスキオキサン化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリロイル基を含有するシルセスキオキサン化合物として、例えば、東亜合成株式会社SQシリーズのMACグレード、および、ACグレードを用いることができる。MACグレードは、メタクリロイル基を含有するシルセスキオキサン化合物であり、具体的には、例えば、MAC-SQ TM-100、MAC-SQ SI-20、MAC-SQ HDM等が挙げられる。ACグレードは、アクリロイル基を含有するシルセスキオキサン化合物であり、具体的には、例えば、AC-SQ TA-100、AC-SQ SI-20等が挙げられる。
(メタ)アクリル系単量体は、モノマー混合物100重量部に対して、50重量部を超えて用いられる。
<共重合単量体>
共重合単量体としては、上記式(1)で表される単量体が用いられる。このような共重合単量体を用いることにより、得られる重合体の側鎖にホウ素を含む置換基が導入される。共重合単量体は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記式(1)における脂肪族炭化水素基としては、置換基を有していてもよい炭素数1~20の直鎖または分岐のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数3~20の環状アルキル基、炭素数2~20のアルケニル基が挙げられる。上記アリール基としては、置換基を有していてもよい炭素数6~20のフェニル基、置換基を有していてもよい炭素数10~20のナフチル基等が挙げられる。ヘテロ環基としては、置換基を有していてもよい少なくとも1つのヘテロ原子を含む5員環基または6員環基が挙げられる。なお、RおよびRは互いに連結して環を形成してもよい。RおよびRは、好ましくは水素原子、もしくは、炭素数1~3の直鎖または分岐のアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
Xで表される官能基が含む反応性基は、ビニル基、(メタ)アクリル基、スチリル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタン基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルデヒド基、および、カルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種である。好ましくは、反応性基は(メタ)アクリル基および/または(メタ)アクリルアミド基である。これらの反応性基を有することにより、樹脂層を偏光子に隣接して配置した場合に偏光子との密着性がさらに向上し得る。
1つの実施形態においては、Xで表される官能基は、Z-Y-で表される官能基であることが好ましい。ここで、Zはビニル基、(メタ)アクリル基、スチリル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタン基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルデヒド基、および、カルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性基を含む官能基を表し、Yはフェニレン基またはアルキレン基を表す。
共重合単量体としては、具体的には以下の化合物を用いることができる。
Figure 2022086105000005
Figure 2022086105000006
共重合単量体は、モノマー混合物100重量部に対して、0重量部を超えて50重量部未満の含有量で用いられる。好ましくは0.01重量部以上50重量部未満であり、より好ましくは0.05重量部~20重量部であり、さらに好ましくは0.1重量部~10重量部であり、特に好ましくは0.5重量部~5重量部である。
<ラクトン環等含有アクリル系樹脂>
アクリル系樹脂は、別の実施形態においては、ラクトン環単位、無水グルタル酸単位、グルタルイミド単位、無水マレイン酸単位およびマレイミド(N-置換マレイミド)単位から選択される環構造を含む繰り返し単位を有していてもよい。環構造を含む繰り返し単位は、1種類のみがアクリル系樹脂の繰り返し単位に含まれていてもよく、2種類以上が含まれていてもよい。アクリル系樹脂における環構造を含む繰り返し単位の含有割合は、好ましくは1モル%~50モル%、より好ましくは10モル%~40モル%、さらに好ましくは20モル%~30モル%である。なお、アクリル系樹脂は、主たる繰り返し単位として、上記の(メタ)アクリル系単量体由来の繰り返し単位を含む。
<エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂としては、好ましくは芳香族環を有するエポキシ樹脂が用いられる。芳香族環を有するエポキシ樹脂をエポキシ樹脂として用いることにより、樹脂層を偏光子に隣接して配置した場合に偏光子との密着性が向上し得る。さらに、樹脂層に隣接して粘着剤層を配置した場合に、粘着剤層の投錨力が向上し得る。芳香族環を有するエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラックエポキシ樹脂などのノボラック型のエポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルメタンのグリシジルエーテル、テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル、エポキシ化ポリビニルフェノールなどの多官能型のエポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などが挙げられる。好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が用いられる。エポキシ樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂層は、上記のような樹脂の有機溶媒溶液を塗布して塗布膜を形成し、当該塗布膜を固化または熱硬化させることにより形成され得る。塗布方法、固化または硬化条件としては、任意の適切な方法および条件が採用され得る。
樹脂層(実質的には、上記樹脂の有機溶媒溶液)は、目的に応じて任意の適切な添加剤を含んでいてもよい。添加剤の種類、数、組み合わせ、添加量等は、目的に応じて適切に設定され得る。
F.粘着剤層
粘着剤層30の表面抵抗値は、代表的には上記のとおり1.0×10Ω/□~1.0×1012Ω/□であり、好ましくは1.0×10Ω/□~1.0×1011Ω/□であり、より好ましくは1.0×10Ω/□~1.0×1010Ω/□であり、さらに好ましくは1.0×10Ω/□~1.0×10Ω/□である。粘着剤層の表面抵抗値がこのような範囲であれば、偏光板を画像表示装置に適用した場合に所望の帯電防止性能を実現することができる。その結果、偏光板は、狭額縁(好ましくは、ベゼルレス)の画像表示装置、表示パネル内にタッチパネル用導電層を組み込んだいわゆるインセル型画像表示装置等にも好適に適用され得る。
粘着剤層のガラスに対する粘着力は、好ましくは1.5N/25mm以上5.5N/25mm未満であり、より好ましくは2.5N/25mm以上4.5N/25mm以下であり、さらに好ましくは3.0N/25mm以上4.0N/25mm以下である。粘着力がこのような範囲であれば、画像表示パネルに対する密着性に優れ、かつ、リワーク性に優れる。
粘着剤層は、25℃における貯蔵弾性率が、好ましくは1.0×10Pa~1.0×10Paであり、より好ましくは1.0×10Pa~1.0×10Paである。粘着剤層の貯蔵弾性率がこのような範囲であれば、高温高湿環境下における偏光板の外観不良を抑制することができる。なお、貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定により得られ得る。
粘着剤層は、70℃におけるクリープ量ΔCrが、例えば65μm以下であり、50μm以下、45μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、さらには15μm以下であってもよい。クリープ量ΔCrの下限は、例えば0.5μmである。クリープ量がこのような範囲であれば、貯蔵弾性率の場合と同様に、高温高湿環境下における偏光板の外観不良を抑制することができる。なお、クリープ値は、例えば以下の手順で測定され得る:縦20mm×横20mmの接合面にてステンレス製試験板に貼り付けた粘着剤層に対して、試験板を固定した状態で500gfの荷重を鉛直下方に加える。荷重を加え始めてから100秒後及び3600秒後の各時点における試験板に対する粘着剤層のクリープ量(ずれ量)を測定し、それぞれCr100及びCr3600とする。測定したCr100及びCr3600から、式ΔCr=Cr3600-Cr100によりクリープ量ΔCrが求められ得る。
粘着剤層の厚みは、好ましくは2μm~55μmであり、より好ましくは2μm~30μmであり、さらに好ましくは5μm~25μmであり、特に好ましくは10μm~20μmである。
粘着剤層を構成する粘着剤組成物は、代表的には、ベースポリマーと導電成分とを含む。
ベースポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ゴム系ポリマー挙げられる。好ましくは、(メタ)アクリル系ポリマーである。本明細書においては、ベースポリマーとしての(メタ)アクリル系ポリマーを、(メタ)アクリル系ベースポリマーと称する場合がある。
(メタ)アクリル系ベースポリマーは、代表的には、モノマー成分としてアルキル(メタ)アクリレートを主成分として含有する。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基としては、例えば、1個~18個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。当該アルキル基の平均炭素数は、好ましくは3個~9個であり、より好ましくは3個~6個である。好ましいアルキル(メタ)アクリレートは、ブチルアクリレートである。ベースポリマーにおけるアルコキシ基含有モノマーの含有量は、全モノマー成分100重量部に対して、好ましくは50重量部以上、より好ましくは60重量部以上、さらに好ましくは70重量部以上、特に好ましくは80重量部以上である。アルキル(メタ)アクリレートは、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル系ベースポリマーは、代表的には、アルキル(メタ)アクリレートと共重合し得るモノマー成分(共重合モノマー成分)を含有する。共重合モノマー成分としては、例えば、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アルコキシ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、芳香環含有(メタ)アクリレート、複素環含有ビニル系モノマーが挙げられる。共重合モノマーの種類、数、組み合わせ、配合量(含有量)等を適切に調整することにより、所望の特性を有するベースポリマー(結果として、粘着剤層)が得られ得る。
(メタ)アクリル系ベースポリマーの重量平均分子量Mwは、好ましくは100万~300万であり、より好ましくは200万~300万であり、さらに好ましくは200万~280万である。重量平均分子量Mwが100万未満であれば、クラックの抑制が不十分となる場合がある。重量平均分子量Mwが300万を超えると、粘度の上昇および/またはポリマー重合中におけるゲル化が生じる場合がある。
導電成分としては、代表的には、無機カチオン塩、有機カチオン塩が挙げられる。
無機カチオン塩は、具体的には、無機カチオン-アニオン塩である。無機カチオン塩のカチオン部を構成するカチオンとしては、代表的には、アルカリ金属イオンが挙げられる。具体例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンが挙げられる。好ましくは、リチウムイオンである。したがって、好ましい無機カチオン塩は、リチウム塩である。
無機カチオン塩のアニオン部を構成するアニオンとしては、例えば、Cl、Br、I、AlCl 、AlCl 、BF 、PF 、ClO 、NO 、CHCOO、CFCOO、CHSO 、CFSO 、(CFSO、AsF 、SbF 、NbF 、TaF 、(CN)、CSO 、CCOO、(CFSO)(CFCO)NS(CFSO 、および、下記一般式(1)~(4)
(1):(C2n+1SO (nは1~10の整数)、
(2):CF(C2mSO (mは1~10の整数)、
(3):S(CFSO (lは1~10の整数)、
(4):(C2p+1SO)N(C2q+1SO)、(p、qは1~10の整数)、
で表わされるアニオンが挙げられる。フッ素含有アニオンが好ましく、フッ素含有イミドアニオンがより好ましい。
フッ素含有イミドアニオンとしては、例えば、ペルフルオロアルキル基を有するイミドアニオンが挙げられる。具体例としては、上記の(CFSO)(CFCO)N、ならびに、一般式(1)、(2)および(4)
(1):(C2n+1SO (nは1~10の整数)、
(2):CF(C2mSO (mは1~10の整数)、
(4):(C2p+1SO)N(C2q+1SO)、(p、qは1~10の整数)、
で表わされるアニオンが挙げられる。好ましくは、(CFSO、(CSO等の一般式(1)で表わされる(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドであり、より好ましくは、(CFSOで表わされるビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドである。したがって、本発明の実施形態において用いられ得る好ましい無機カチオン塩は、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドである。
有機カチオン塩は、具体的には、有機カチオン-アニオン塩である。有機カチオン塩のカチオン部を構成するカチオンとしては、代表的には、有機基による置換によってオニウムイオンを形成した有機オニウムが挙げられる。有機オニウムにおけるオニウムとしては、例えば、含窒素オニウム、含硫黄オニウム、含リンオニウムが挙げられる。好ましくは、含窒素オニウム、含硫黄オニウムである。含窒素オニウムとしては、アンモニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオン、イミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピラゾリニウムカチオンが挙げられる。含硫黄オニウムとしては、例えばスルホニウムカチオンが挙げられる。含リンオニウムとしては、例えばホスホニウムカチオンが挙げられる。有機オニウムにおける有機基としては、例えば、アルキル基、アルコキシル基、アルケニル基が挙げられる。好ましい有機オニウムの具体例としては、テトラアルキルアンモニウムカチオン(例えば、トリメチルブチルアンモニウムカチオン)、アルキルピペリジニウムカチオン、アルキルピロリジニウムカチオンが挙げられる。有機カチオン塩のアニオン部を構成するアニオンは、無機カチオンのアニオン部を構成するアニオンに関して説明したとおりである。本発明の実施形態において用いられ得る好ましい有機カチオン塩は、メチルプロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、トリメチルブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドである。
無機カチオン塩と有機カチオン塩とを組み合わせて用いてもよい。
導電成分は、固体であってもよく液体(すなわち、イオン性液体)であってもよい。
粘着剤組成物における導電成分の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは5重量部~15重量部であり、より好ましくは8重量部~12重量部である。導電成分の含有量がこのような範囲であれば、他の特性に悪影響を与えることなく、所望の帯電防止性能が得られ得る。
粘着剤組成物は、代表的には、シランカップリング剤および/または架橋剤を含有する。シランカップリング剤としては、代表的には、官能基含有シランカップリング剤が挙げられる。官能基としては、例えば、エポキシ基、メルカプト基、アミノ基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、スチリル基、アセトアセチル基、ウレイド基、チオウレア基、(メタ)アクリル基、複素環基、酸無水物基およびこれらの組み合わせが挙げられる。官能基含有シランカップリング剤は単独でまたは組み合わせて使用できる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤が挙げられる。架橋剤もまた、単独でまたは組み合わせて使用できる。
粘着剤組成物は、添加剤を含有していてもよい。添加剤の具体例としては、着色剤、顔料などの粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物が挙げられる。また、制御できる範囲内で、還元剤を加えてのレドックス系を採用してもよい。添加剤の種類、数、組み合わせ、含有量等は、目的に応じて適切に設定され得る。
G.導電成分透過抑制層
本発明の実施形態においては、上記のとおり、偏光子と保護層との間に導電成分透過抑制層が設けられている。導電成分透過抑制層を設けることにより、高温高湿環境下における耐久性に優れた偏光板を実現することができる。より詳細には、高温高湿環境下において、保護層における粒状突起または水ぶくれの発生を抑制し、かつ、偏光板の端部の色抜けまたはレッドライン(Red line)等の脱色、およびクラックを抑制し、さらに、偏光板(実質的には、偏光子)の単体透過率を許容範囲内に維持することができる。好ましくは、導電成分透過抑制層を樹脂層と組み合わせて設けることにより、このような効果がさらに顕著となる。
導電成分透過抑制層は、1つの実施形態においてはハードコート層であり得る。ハードコート層の詳細な構成については、上記D項で説明したとおりである。導電成分透過抑制層は、別の実施形態においては、樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物または熱硬化物として構成された樹脂層であり得る。樹脂層の詳細な構成については、上記E項で説明したとおりである。
導電成分透過抑制層の厚みは、好ましくは0.2μm~10μmであり、より好ましくは0.3μm~7μmであり、さらに好ましくは0.5μm~5μmである。厚みが小さすぎると、導電成分透過抑制効果および透湿抑制効果が不十分であり、高温高湿環境下における偏光板の単体透過率を許容範囲内に保つことが困難となる場合がある。厚みが大きすぎると、クラックが発生する場合がある。
H.画像表示装置
上記A項からG項に記載の偏光板は、画像表示装置に適用され得る。したがって、本発明の実施形態は、そのような偏光板を用いた画像表示装置を包含する。画像表示装置の代表例としては、液晶表示装置、エレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置、無機EL表示装置)が挙げられる。1つの実施形態においては、画像表示装置は、狭額縁(好ましくは、ベゼルレス)の画像表示装置またはインセル型画像表示装置である。このような画像表示装置において、本発明の実施形態による効果が顕著である。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。各特性の測定方法は以下の通りである。なお、特に明記しない限り、実施例および比較例における「部」および「%」は重量基準である。
(1)厚み
10μm以下の厚みは、干渉膜厚計(大塚電子社製、製品名「MCPD-3000」)を用いて測定した。10μmを超える厚みは、デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC-351C」)を用いて測定した。
(2)表面抵抗値
実施例および比較例で得られた偏光板(粘着剤層付偏光板)の粘着剤層表面の抵抗値を、三菱化学アナリテック社製MCP-HT450を用いて測定した。
(3)外観
実施例および比較例で得られた偏光板を信頼性試験(65℃・90%RHの環境下に72時間)に供した後、保護層の粒状突起または水ぶくれの有無を目視により観察し、以下の基準で評価した。
○:粒状突起および水ぶくれのいずれも認められなかった
×:粒状突起または水ぶくれの少なくとも1つが認められた
(4)色抜け
実施例および比較例で得られた偏光板から、吸収軸方向および吸収軸方向に直交する方向をそれぞれ対向する二辺とする試験片(50mm×50mm)を切り出した。粘着剤層を介して試験片をガラス板に貼り合わせ、これを65℃および90%RHのオーブン内で120時間放置して加湿し、標準偏光板とクロスニコルの状態に配置した時の、加湿後の偏光板(実質的には、偏光子)の端部の色抜け状態を顕微鏡により調べた。具体的には、偏光子端部からの色抜けの大きさ(色抜け量:μm)を測定した。顕微鏡としてOlympus社製、MX61Lを用い、倍率10倍で撮影した画像から角部の色抜け量を測定し、以下の基準で評価した。
○:色抜け量が300μm以下
×:色抜け量が300μmを超える
[製造例1:粘着剤層A1の作製]
(アクリル系ベースポリマーの調製)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート80.3部、フェノキシエチルアクリレート16部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)3部、アクリル酸0.3部、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.4部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、前記モノマー混合物(固形分)100部に対して、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル100部と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行って、重量平均分子量(Mw)150万のアクリル系ポリマーの溶液を調製した。
(粘着剤組成物の調製)
上記で得られたアクリル系ベースポリマーの溶液の固形分100部に対して、導電剤(帯電防止剤)として、イオン液体であるMPP-TFSI(三菱マテリアル電子化成社製のメチルプロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)10部を配合し、さらにイソシアネート架橋剤(D160N:三井化学社製のタケネートD-160N、トリメチロールプロパンヘキサメチレンジイソシアネート)0.1部、ベンゾイルパーオキサイド(BPO:日本油脂社製のナイパーBMT)0.3部およびシランカップリング剤(信越化学工業社製:X-41-1810)0.1部を配合して、アクリル系粘着剤組成物溶液を調製した。得られた粘着剤組成物溶液を離型シートに塗布および乾燥して、厚み15μmの粘着剤層A1を形成した。粘着剤層A1の表面抵抗値は1.0×10Ω/□であった。
[製造例2:粘着剤層A2の作製]
導電剤の配合量を1部としたこと以外は製造例1と同様にしてアクリル系粘着剤組成物溶液を調製した。以下の手順は製造例1と同様にして、厚み15μmの粘着剤層A2を形成した。粘着剤層A2の表面抵抗値は1.0×1013Ω/□であった。
[実施例1]
1.偏光子の作製
熱可塑性樹脂基材として、長尺状で、吸水率0.75%、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm)を用いた。樹脂基材の片面に、コロナ処理を施した。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ410」)を9:1で混合したPVA系樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加したものを水に溶かし、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
樹脂基材のコロナ処理面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.4倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる偏光子の単体透過率(Ts)が所定の値となるように濃度を調整しながら60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4.0重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、90℃に保たれたオーブン中で乾燥しながら、表面温度が75℃に保たれたSUS製の加熱ロールに約2秒接触させた(乾燥収縮処理)。乾燥収縮処理による積層体の幅方向の収縮率は5.2%であった。
このようにして、樹脂基材上に厚み5μmの偏光子を形成した。
2.偏光板の作製
トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚み25μm)の一方の面にハードコート(HC)層(厚み7μm)を形成した。具体的には以下のとおりであった。紫外線硬化型アクリレート樹脂(東亜合成(株)製、商品名「M-920」、固形分100%)40重量部、紫外線硬化型アクリレート樹脂(三菱ケミカル(株)製、商品名「UV-1700TL」、固形分80%)60重量部を準備した。樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、光重合開始剤(BASF社製、商品名「OMNIRAD907」)を3重量部、レベリング剤(共栄社化学(株)製、商品名「LE-303」、固形分40%)を0.12重量部混合した。この混合物を固形分濃度が30%となるように、MIBK/シクロペンタノン混合溶媒(重量比70/30)で希釈して、ハードコート層形成用塗工液を調製した。このハードコート層形成用塗工液を、バーコータを用いてTACフィルムに塗工し、塗工層を形成した。塗工層が形成されたTACフィルムを80℃で1分間加熱することにより、塗工層を乾燥させて塗膜を形成した。得られた塗膜に高圧水銀ランプにて積算光量240mJ/cmの紫外線を照射して塗膜を硬化させ、厚み7μmのHC層を形成した。
TACフィルムのもう一方の面に、上記と同様にしてHC層(厚み7μm)を形成した。このHC層を導電成分透過抑制層とした。
上記1.で得られた偏光子の表面(樹脂基材とは反対側の面)に、HC層/TACフィルム/導電成分透過抑制層の積層体を、紫外線硬化型接着剤を介して貼り合せた。具体的には、硬化型接着剤の総厚みが1.0μmになるように塗工し、ロール機を使用して貼り合わせた。その後、UV光線を保護層側から照射して接着剤を硬化させた。なお、積層体は、導電成分透過抑制層が偏光子側となるようにして貼り合わせた。
次いで、樹脂基材を剥離し、当該剥離面に樹脂層(厚み0.3μm)を形成した。なお、樹脂層は以下のようにして形成した。メタクリル酸メチル(MMA、富士フイルム和光純薬社製、商品名「メタクリル酸メチルモノマー」)97.0部、上記一般式(1e)で表される共重合単量体3.0部、重合開始剤(富士フイルム和光純薬社製、商品名「2,2´-アゾビス(イソブチロニトリル)」)0.2部をトルエン200部に溶解した。次いで、窒素雰囲気下で70℃に加熱しながら5.5時間重合反応を行い、ホウ素含有アクリル系樹脂溶液(固形分濃度:33%)を得た。得られたホウ素含有アクリル系重合体のTgは110℃、Mwは80000であった。このホウ素含有アクリル系重合体20部をメチルエチルケトン80部に溶解し、樹脂溶液(20%)を得た。この樹脂溶液を、上記の樹脂基材剥離面にワイヤーバーを用いて塗布し、塗布膜を60℃で5分間乾燥して、樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物として構成される樹脂層を形成した。
最後に、樹脂層の表面に製造例1で得られた粘着剤層A1を転写した。このようにして、HC層/保護層(TACフィルム)/導電成分透過抑制層/接着剤層/偏光子/樹脂層/粘着剤層の構成を有する偏光板(粘着剤層付偏光板)を得た。得られた偏光板を上記(3)~(6)の評価に供した。結果を表1に示す。
[実施例2]
導電成分透過抑制層(HC層)の厚みを2μmとしたこと以外は実施例1と同様にして偏光板(粘着剤層付偏光板)を得た。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[実施例3]
視認側の(最外の)HC層および導電成分透過抑制層(HC層)の厚みをそれぞれ2μmとしたこと以外は実施例1と同様にして偏光板(粘着剤層付偏光板)を得た。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[実施例4]
視認側の(最外の)HC層を形成しなかったこと、および、導電成分透過抑制層(HC層)の厚みを2μmとしたこと以外は実施例1と同様にして偏光板(粘着剤層付偏光板)を得た。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[実施例5]
視認側の(最外の)HC層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして偏光板(粘着剤層付偏光板)を得た。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[実施例6]
導電成分透過抑制層としてHC層の代わりに樹脂層を用いたこと以外は実施例1と同様にして偏光板(粘着剤層付偏光板)を得た。なお、樹脂層は、厚みを0.5μmとしたこと以外は実施例1と同様にして形成した。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[比較例1]
導電成分透過抑制層および樹脂層をいずれも形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして偏光板(粘着剤層付偏光板)を得た。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[比較例2]
導電成分透過抑制層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして偏光板(粘着剤層付偏光板)を得た。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[比較例3]
導電成分透過抑制層を形成しなかったこと、および、樹脂層の厚みを5μmとしたこと以外は実施例1と同様にして偏光板(粘着剤層付偏光板)を得た。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[参考例1]
保護層としてTACフィルムの代わりにアクリルフィルム(厚み40μm)を用いたこと、および、導電成分透過抑制層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして偏光板(粘着剤層付偏光板)を得た。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[参考例2]
粘着剤層A1の代わりに粘着剤層A2を用いたこと以外は実施例1と同様にして偏光板(粘着剤層付偏光板)を得た。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
Figure 2022086105000007
[評価]
表1から明らかなように、本発明の実施例の偏光板は、高温高湿環境下において優れた耐久性を示すことがわかる。より詳細には、本発明の実施例の偏光板は、各種信頼性試験後の保護層の外観不良が抑制され、かつ、偏光板の色抜けが抑制されている。なお、本発明の実施例の偏光板は、偏光板のクラックが抑制され、さらに、単体透過率が許容範囲内に維持されていることも確認した。さらに、参考例から明らかなように、保護層の外観不良ならびに偏光板の色抜けという耐久性の課題は、低抵抗粘着剤層とTACフィルムで構成された保護層とを有する偏光板に特有の課題であることがわかる。
本発明の偏光板は、液晶表示装置、有機EL表示装置および無機EL表示装置等の画像表示装置に好適に用いられる。
10 偏光子
20 保護層
30 粘着剤層
40 樹脂層
50 導電成分透過抑制層
60 ハードコート層
100 偏光板

Claims (8)

  1. 偏光子と、該偏光子の一方の側に設けられた保護層と、該偏光子のもう一方の側に設けられた樹脂層と、該樹脂層の該偏光子と反対側に設けられた粘着剤層と、を有し、
    該保護層がトリアセチルセルロースフィルムで構成されており、
    該粘着剤層が導電成分を含み、その表面抵抗値が1.0×10Ω/□~1.0×1012Ω/□であり、
    該樹脂層が樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物または熱硬化物であり、その厚みが2μm以下であり、
    該偏光子と該保護層との間に導電成分透過抑制層が設けられている、
    偏光板。
  2. 前記保護層が前記偏光子の一方の側のみに設けられており、前記樹脂層が該偏光子のもう一方の側で該偏光子に直接設けられている、請求項1に記載の偏光板。
  3. 前記保護層の前記偏光子と反対側にハードコート層をさらに有する、請求項1または2に記載の偏光板。
  4. 前記樹脂層を構成する樹脂のガラス転移温度が85℃以上であり、重量平均分子量Mwが25000以上である、請求項1から3のいずれかに記載の偏光板。
  5. 前記導電成分透過抑制層が別のハードコート層である、請求項1から4のいずれかに記載の偏光板。
  6. 前記導電成分透過抑制層が別の樹脂層であり、該別の樹脂層が樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物または熱硬化物であり、該別の樹脂層を構成する樹脂のガラス転移温度が85℃以上であり、重量平均分子量Mwが25000以上である、請求項1から4のいずれかに記載の偏光板。
  7. 前記偏光子の厚みが10μm以下である、請求項1から6のいずれかに記載の偏光板。
  8. 請求項1から7のいずれかに記載の偏光板を備える、画像表示装置。
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