JP2022064308A - 溶融流動性および耐衝撃性に優れたポリプロピレン樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】溶融流動性および耐衝撃性に優れたポリプロピレン樹脂組成物を提供する。【解決手段】エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂を含むポリプロピレン樹脂組成物であって、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂は、プロピレン単独重合体成分とエチレン-プロピレンゴム共重合体成分(溶剤抽出物)とを含み、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂中のエチレン-プロピレンゴム共重合体成分の含有量が25重量%~40重量%であり、重量%基準でエチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂中のエチレン含有量に対する溶剤抽出物含有量の割合が0.25~0.45であり、2.16kg荷重で230℃にて測定する際にエチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂の溶融指数が20g/10分~45g/10分であるポリプロピレン樹脂組成物とする。【選択図】なし
Description
本発明は、ポリプロピレン樹脂組成物およびそれにより製造される成形品に関するものである。詳細には、本発明は、溶融流動性および耐衝撃性に優れたポリプロピレン樹脂組成物および該ポリプロピレン樹脂組成物から製造され、耐衝撃性に優れたポリプロピレン樹脂成形品に関するものである。
汎用樹脂の一種であるポリプロピレン樹脂は、経済性はもちろんのこと、機械的特性、成形性および耐薬品性などに優れ、フィルム、パイプ、自動車の内・外装部品、電気および家電製品の部品、建築用および産業用資材などの素材として多様に使用されている。
中でも、プロピレン-エチレンブロック共重合体樹脂は、剛性、耐薬品性、成形加工性などに優れ、低価であるという利点があって、射出、押出などにより様々な用途に適用されている。特に、自動車の内・外装材や幼児用カーシートなどの安全のために非常に高い耐衝撃性が必須条件として求められる分野に、プロピレン-エチレンブロック共重合体およびこれを用いた複合樹脂組成物が広く適用されている。
一方、高い耐衝撃性が求められる用途に適用するために、複合樹脂組成物にオレフィン系ゴム(polyolefin elastomer;POE)成分を添加しようとする試みがなされてきた。この場合、POE導入によって生産コストが増加するという問題があり、プロピレン-エチレンブロック共重合体自体の耐衝撃性を高めたハイインパクトポリプロピレン樹脂であるRTPO(reactor-made thermoplastic olefin)が開発された。
RTPOは、POEのようなゴム成分の機械的な追加なく、プロピレン-エチレンブロック共重合体の重合段階において、ゴム成分であるプロピレン-エチレンゴム共重合体(溶剤抽出物)を多量重合した樹脂である。RTPOは高価なPOE成分の機械的混合作業が含まれないため生産コストが低く、常温(23℃)で測定する際のIzod衝撃強度が50kgf・cm/cm以上であり、Izod試験片が衝撃試験後も完全に破壊されない非破壊(non-break;NB)特性を示す程度に非常に優れた耐衝撃性を有する。
ところで、自動車用バンパー、インスツルメントパネルのような大型射出物を成形するためには、通常、高い溶融指数(melt index)が必要であるが、通常のRTPO樹脂中で常温耐衝撃性がNB特性を満足する場合、溶融指数は20g/10分以下の場合がほとんどである。一方、RTPO樹脂の溶融指数がそれよりも高い場合は、常温におけるIzod衝撃強度が50kgf・cm/cmよりも低くなり、NB特性を満足しない。
したがって、本発明の目的は、溶融流動性および耐衝撃性に優れたポリプロピレン樹脂組成物を提供するものである。
本発明の他の目的は、前記ポリプロピレン樹脂組成物から製造される成形品を提供するものである。
前記目的を達成するための本発明の一実施例により、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂を含むポリプロピレン樹脂組成物であって、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂は、プロピレン単独重合体成分とエチレン-プロピレンゴム共重合体成分(溶剤抽出物)とを含み、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂中のエチレン-プロピレンゴム共重合体成分の含有量が25重量%~40重量%であり、重量%基準でエチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂中のエチレン含有量に対する溶剤抽出物含有量の割合が0.25~0.45であり、2.16kg荷重で230℃にて測定する際にエチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂の溶融指数が20g/10分~45g/10分であるポリプロピレン樹脂組成物が提供される。
本発明の実施例において、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂中のエチレン-プロピレンゴム共重合体成分は、1.5dl/g~7dl/gの固有粘度を有し得る。
本発明の実施例において、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂は、プロピレン単独重合体成分とエチレン-プロピレンゴム共重合体成分とが反応器内で段階的に重合されたものであり得る。
本発明の実施例において、ポリプロピレン樹脂組成物は、組成物の総重量を基準に、50重量%以下の含有量で無機フィラーをさらに含み得る。
なお、無機フィラーは、タルク、マイカ(雲母)、炭酸カルシウム、珪灰石、硫酸バリウム、クレー、硫酸マグネシウム、およびウィスカーからなる群より選択される少なくとも1種を含み得る。好ましくは、無機フィラーがタルクであり得る。
本発明の実施例において、ポリプロピレン樹脂組成物は、組成物の総重量を基準に、50重量%以下の含有量でエチレン-αオレフィンゴムをさらに含み得る。
なお、エチレン-αオレフィンゴムは、エチレン-1-ブテンゴム、エチレン-ブチレンゴム、エチレン-1-ペンテンゴム、エチレン-1-ヘキセンゴム、エチレン-1-ヘプテンゴム、エチレン-1-オクテンゴム、およびエチレン-4-メチル-1-ペンテンゴムからなる群より選択される少なくとも1種を含み得る。
本発明の実施例によるポリプロピレン樹脂組成物は、酸化防止剤、中和剤、ブロッキング防止剤、補強材、充填材、耐候安定剤、帯電防止剤、滑剤、スリップ剤、核剤、難燃剤、顔料、および染料からなる群より選択される1つ以上の添加剤をさらに含み得る。
本発明の実施例において、ポリプロピレン樹脂組成物は、該組成物100重量部に対して、テトラキス(メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシリレート)、1,3,5トリメチル-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、およびトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトからなる群より選択される1つ以上の酸化防止剤を0.05重量部~0.2重量部の含有量でさらに含み得る。
本発明の実施例において、ポリプロピレン樹脂組成物は、該組成物100重量部に対して、ハイドロタルサイトおよびステアリン酸カルシウムからなる群より選択される1つ以上の中和剤を0.01重量部~0.2重量部の含有量でさらに含み得る。
本発明の他の実施例により、前記ポリプロピレン樹脂組成物を成形して製造されるポリプロピレン樹脂成形品が提供される。
本発明の実施例において、ポリプロピレン樹脂成形品は、常温(23℃)で測定する際のIzod衝撃強度が50kgf・cm/cm以上でかつNB(non-break)特性を有し、曲げ弾性率が8000kgf/cm2以上であり得る。
本発明の実施例において、ポリプロピレン樹脂成形品は、自動車の内・外装用部品、家電・電子製品の部品、および建築・産業用資材からなる群より選択され得る。
本発明の実施例によるポリプロピレン樹脂組成物は、溶融流動性および耐衝撃性に優れる。したがって、本発明の実施例によるポリプロピレン樹脂成形品は、自動車の内・外装用部品、家電・電子製品の部品、および建築・産業用資材などとして効果的に使用され得る。
以下、本発明についてより詳細に説明する。
本発明の一実施例によるポリプロピレン樹脂組成物は、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂を含む。この際、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂は、プロピレン単独重合体成分とエチレン-プロピレンゴム共重合体成分とを含む。具体的に、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂は、プロピレン単独重合体成分のマトリックス(matrix)にエチレン-プロピレンゴム共重合体成分が分散している形態を有し得る。
本発明の一実施例によるポリプロピレン樹脂組成物は、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂を含む。この際、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂は、プロピレン単独重合体成分とエチレン-プロピレンゴム共重合体成分とを含む。具体的に、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂は、プロピレン単独重合体成分のマトリックス(matrix)にエチレン-プロピレンゴム共重合体成分が分散している形態を有し得る。
本発明の実施例において、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂中のエチレン-プロピレンゴム共重合体成分(溶剤抽出物またはキシレン可溶物)の含有量が25重量%~40重量%である。エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂中のエチレン-プロピレンゴム共重合体成分(溶剤抽出物)の含有量は、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂をキシレン(xylene)に1重量%の濃度で140℃にて1時間溶解した後、常温にて2時間経過した後に抽出された重量から測定され得る。溶剤抽出物の含有量が25重量%未満の場合、樹脂組成物の常温におけるIzod衝撃強度が50kgf・cm/cmに至らなくなり得る。一方、この含有量が40重量%を超えると、樹脂組成物の曲げ弾性率が低下する反面、耐衝撃性がそれ以上改善されないおそれがある。
本発明の実施例において、重量%基準でエチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂中のエチレン含有量に対する溶剤抽出物の含有量の割合が0.25~0.45である。エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂中のエチレン含有量は、赤外線吸収スペクトルを使用して720cm-1および730cm-1の特性ピークを利用して測定され得る。エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂中のエチレン含有量(重量%)に対する溶剤抽出含有量(重量%)の割合が0.25未満の場合、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂中のエチレン-プロピレンゴム共重合体成分のガラス転移温度が高いため、樹脂組成物が衝撃補強剤としての役割を満足に果たせなくなり得る。一方、この割合が0.45を超えると、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂中にエチレン-プロピレンゴム共重合体成分が均一に分散されないため、樹脂組成物の常温におけるIzod衝撃強度が低下し得る。
本発明の実施例において、2.16kg荷重で230℃にて測定する際、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂の溶融指数が20g/10分~45g/10分である。好ましくは、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂の溶融指数が20g/10分~40g/10分、25g/10分~35g/10分または25g/10分~30g/10分であり得る。該溶融指数が20g/10分未満であると、樹脂組成物の射出成形の際に流動性が低下して、大型射出物を成形する際、樹脂組成物がモールドキャビティ(mold cavity)を十分に満たすことができず、成形不良が発生するおそれがある。一方、該溶融指数が45g/10分を超えると、常温におけるIzod衝撃強度が50kgf・cm/cmに至らなくなり得る。
本発明の実施例において、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂中のエチレン-プロピレンゴム共重合体成分が1.5dl/g~7dl/gの固有粘度を有し得る。エチレン-プロピレンゴム共重合体成分の固有粘度が1.5dl/g未満であると、樹脂組成物の耐衝撃性が低下するおそれがあり、該固有粘度が7dl/gを超えると、樹脂組成物の射出成形の際にゴム成分の分散が均一にできず、射出成形物の表面にゲルによる外観不良が発生するおそれがある。
本発明の実施例によるエチレン-プロピレンブロック共重合体を調製する方法に特に制限はなく、本発明が属する技術分野に公知のエチレン-プロピレンブロック共重合体の調製方法をそのまま、または適宜変形して使用し得る。
本発明の実施例において、エチレン-プロピレンブロック共重合体は、2つ以上の連続する反応器においてプロピレン単独重合体を重合する第1重合段階と、重合されたプロピレン単独重合体の存在下でエチレンとプロピレンとを投入してエチレン-プロピレンゴム共重合体成分を共重合することにより、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂を得る第2重合段階とを含む調製方法によって調製され得る。
この際、それぞれの重合は、スラリー(slurry)重合法、バルク(bulk)重合法、溶液重合法、気相重合法などのように、本発明の技術分野に公知の方法および反応条件を利用し得る。
本発明の実施例において、前記各々の重合は、チーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)またはメタロセン(metallocene)触媒の存在下で行われ得る。樹脂組成物の剛性と耐衝撃性とのバランスを最大化するために、立体規則度指数を高め得る触媒を用いることが好ましい。
本発明の実施例において、チーグラー・ナッタ触媒は、当業界に公知の触媒を制限なく使用し得るが、具体的に塩化マグネシウム(MgCl2)担体に塩化チタン(TiCl3またはTiCl4)のようなチタン化合物を担持させて得られ得る。これに、助触媒と外部電子供与体とを一緒に用いることが好ましい。
助触媒としては、アルキルアルミニウム化合物が用いられ得る。アルキルアルミニウム化合物の例としては、トリエチルアルミニウム、ジエチルクロロアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリスイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
また、外部電子供与体としては、有機シラン化合物が好ましい。有機シラン化合物の例としては、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルエチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、メトキシトリメチルシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ-t-ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシランなどが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の実施例において、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂の調製方法において、前記第1重合段階および第2重合段階が同じ重合反応器または異なる重合反応器にて行われ得る。
好ましくは、第1重合段階が2つ以上のバルクまたはスラリー重合反応器においてチーグラー・ナッタ触媒の存在下でプロピレン単独重合体を重合する段階であり、第2重合段階が気相重合反応器において第1重合段階で重合されたプロピレン単独重合体とチーグラー・ナッタ触媒との存在下でエチレンとプロピレンとを供給して、ゴム成分のエチレン-プロピレン共重合体を共重合することにより、エチレン-プロピレンブロック共重合体を得る段階である。
この際、第1重合段階の最終重合反応器にて得られるプロピレン単独重合体の溶融指数が徐々に減少するようにそれぞれの反応器を運転しても良く、またはそれぞれの反応器における重合されるプロピレン単独重合体の溶融指数が同一となるようにそれぞれの反応器を運転しても良い。それぞれの重合反応器にて生成される重合体の溶融指数は、各重合反応器に投入される水素の含有量で調節され得る。
次いで、第1重合段階で得られたプロピレン単独重合体をエチレン-プロピレン共重合が行われる気相反応器に移送させ、エチレンとプロピレンとを同時に投入することにより、固体状のプロピレン単独重合体と新たに投入されたエチレンおよびプロピレンとが、エチレン-プロピレンゴム共重合体成分として継続的に共重合され、エチレン-プロピレンブロック共重合体を調製し得る。この際、投入されるエチレンとプロピレンとの含有量比を調節することにより、得られるエチレン-プロピレンブロック共重合体のエチレン含有量に対する溶剤抽出物含有量の割合を調節し得る。
したがって、本発明の実施例において、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂は、プロピレン単独重合体成分とエチレン-プロピレンゴム共重合体成分とが、反応器内で段階的に重合されたものであり得る。
本発明の実施例によるポリプロピレン樹脂組成物は、組成物の総重量を基準に、50重量%以下の含有量で無機フィラーをさらに含み得る。ポリプロピレン樹脂組成物が無機フィラーを含むと成形品の剛性が向上し得るが、無機フィラーの含有量が50重量%を超えると、成形品の耐衝撃性などの物性が低下し得る。
本発明の実施例において、無機フィラーは、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、珪灰石、硫酸バリウム、クレー、硫酸マグネシウム、ウィスカーからなる群より選択される少なくとも1種を含み得るが、これらに特に限定されるものではない。好ましくは、無機フィラーがタルクであり得る。
本発明の実施例によるポリプロピレン樹脂組成物は、組成物の総重量を基準に、50重量%以下の含有量でエチレン-αオレフィンゴムをさらに含み得る。ポリプロピレン樹脂組成物が、エチレン-αオレフィンゴムを含むと成形品の耐衝撃性が向上し得るが、エチレン-αオレフィンゴムの含有量が50重量%を超えると、成形品の剛性などの物性が低下し得る。
本発明の実施例において、エチレン-αオレフィンゴムは、エチレン-1-ブテンゴム、エチレン-ブチレンゴム、エチレン-1-ペンテンゴム、エチレン-1-ヘキセンゴム、エチレン-1-ヘプテンゴム、エチレン-1-オクテンゴムおよびエチレン-4-メチル-1-ペンテンゴムからなる群より選択される少なくとも1種を含み得るが、これらに特に限定されるものではない。
本発明の実施例によるポリプロピレン樹脂組成物は、本発明の範囲から外れない範囲内で、通常の添加剤をさらに含み得る。例えば、酸化防止剤、中和剤、ブロッキング防止剤、補強材、充填材、耐候安定剤、帯電防止剤、滑剤、スリップ剤、核剤、難燃剤、顔料、および染料などを含み得るが、これらに限定されるものではない。
本発明の実施例において、ポリプロピレン樹脂組成物は、その耐熱安定性を増加させるために酸化防止剤をさらに含み得る。この際、酸化防止剤は、ポリプロピレン樹脂組成物100重量部に対して0.05重量部~0.2重量部、好ましくは0.05重量部~0.1重量部の含有量で追加され得る。酸化防止剤の含有量が0.05重量部未満であると、耐熱安定性を確保するのが難しい。一方、酸化防止剤の含有量が0.2重量部を超えても耐熱安定性がさらに改善することはなく、製品の経済性が低下し得るため、好ましくない。
前記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤などが用いられ、具体的にテトラキス(メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシリレート)、1,3,5-トリメチル-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、およびトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトからなる群より選択される1つを含み得るが、これらに限定されるものではない。
本発明の実施例において、ポリプロピレン樹脂組成物は、触媒残渣を除去するための中和剤を含み得る。この際、中和剤は、ポリプロピレン樹脂組成物100重量部に対して0.01重量部~0.2重量部、好ましくは0.05重量部~0.1重量部の含有量で追加され得る。中和剤の含有量が0.01重量部未満であると、樹脂の触媒残渣を除去する効果を確保するのが難しい。一方、中和剤の含有量が0.2重量部を超えても触媒残渣の除去効果の増加は微々たるものであり、樹脂組成物の価格経済性が低下し得るため、好ましくない。
前記中和剤は、ハイドロタルサイトおよびステアリン酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1つを含み得るが、これらに限定されるものではない。
本発明の実施例によるポリプロピレン樹脂組成物を調製する方法に特に制限はなく、本発明が属する技術分野に公知のポリプロピレン樹脂組成物の調製方法をそのまま、または適宜変形して使用してよく、前記で述べた樹脂成分と化合物とを特定の順序に制限されることなく、所望の順序により自由選択して混合し得る。
具体的に例えると、前記各樹脂と添加剤などとを必要な量だけヘンシェルミキサー、ニーダー(kneader)、ロール(roll)、バンバリーミキサー(Banbury mixer)などの混練機で1時間~2時間混合し、1軸/2軸押出機を用いて160℃~230℃の温度にて溶融および混練して、ペレット状のポリプロピレン樹脂組成物を調製し得る。
本発明の他の実施例により、前記ポリプロピレン樹脂組成物を成形して製造されるポリプロピレン樹脂成形品が提供される。
本発明の実施例によるポリプロピレン樹脂組成物から成形品を製造する方法に特に制限はなく、本発明が属する技術分野に公知の方法を使用し得る。例えば、本発明の実施例によるポリプロピレン樹脂組成物を射出成形、押出成形、キャスティング成形などと、通常の方法により成形してポリプロピレン樹脂成形品を製造し得る。
本発明の実施例において、ポリプロピレン樹脂成形品は常温(23℃)で測定する際にIzod衝撃強度が50kgf・cm/cm以上でかつNB特性を有し得る。好ましくは、ポリプロピレン樹脂成形品が、常温(23℃)で測定する際にIzod衝撃強度が60kgf・cm/cm以上でかつNB特性を有し得る。
本発明の実施例において、ポリプロピレン樹脂成形品は、曲げ弾性率が8000kgf/cm2以上であり得る。好ましくは、ポリプロピレン樹脂成形品が8500kgf/cm2以上の曲げ弾性率を有し得る。
本発明の好ましい実施例において、ポリプロピレン樹脂成形品は、常温(23℃)で測定する際にIzod衝撃強度が50kgf・cm/cm以上でかつNB特性を有し、曲げ弾性率が8000kgf/cm2以上であり得る。
本発明の実施例によるポリプロピレン樹脂成形品は、剛性および耐衝撃性に優れるので、自動車の内・外装用部品、家電・電子製品の部品、および建築・産業用資材などとして効果的に使用され得る。
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、以下の実施例は本発明を例示するためだけのものであり、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
[ポリプロピレン樹脂組成物の調製]
塩化マグネシウム(MgCl2)担体に塩化チタン(TiCl4)を担持させた後、外部電子供与体としてジシクロペンチルジメトキシシランと、触媒の活性化のための助触媒としてトリエチルアルミニウムとを添加してチーグラー・ナッタ触媒を得た。
塩化マグネシウム(MgCl2)担体に塩化チタン(TiCl4)を担持させた後、外部電子供与体としてジシクロペンチルジメトキシシランと、触媒の活性化のための助触媒としてトリエチルアルミニウムとを添加してチーグラー・ナッタ触媒を得た。
エチレン-プロピレンブロック共重合体の重合は、スラリー反応器2台と気相反応器2台とが直列に連結され連続的に重合し得る三井(Mitsui)社のハイポール(登録商標)プロセス(Hypol process)を用いた。第1段~第3段反応器の運転温度と圧力はそれぞれ、60℃~80℃、15bar~40barであった。第4段反応器の運転温度と圧力は、67℃~72℃、8bar~12barであった。
第1段~第3段反応器において、前記チーグラー・ナッタ触媒の存在下でプロピレンを注入してプロピレン単独重合体を調製した。次いで、生成されたプロピレン単独重合体を第4段反応器に移送し、前記チーグラー・ナッタ触媒の存在下でエチレンとプロピレンとを投入して気相重合を行うことにより、エチレン-プロピレンブロック共重合体を調製した。この際、それぞれの重合槽で生成される重合体の溶融指数は、各重合槽に投入される水素の含有量で調節した。
調製されたエチレン-プロピレンブロック共重合体に、フェノール系酸化防止剤としてIrganox(登録商標)1010、ホスフェート系酸化防止剤としてIrgafos168、触媒中和剤としてステアリン酸カルシウムを、それぞれ500ppm追加し、2軸混練押出機(SM Platek TEK-30、L/D36、スクリュー径30mm)を用いて、ポリプロピレン樹脂組成物を調製した。その後、ウジンプライム(Woojin Plaimm)社の射出機(SELEX-TE 150、150トン、スクリュー径36mm)を利用して、ASTM 4号射出試験片およびスパイラルフロー(spiral flow)試験片を作製した。
(試験例)
各実施例および比較例において得られたポリプロピレン樹脂組成物およびこれにより作製された試験片を下記の方法により試験を行った。
各実施例および比較例において得られたポリプロピレン樹脂組成物およびこれにより作製された試験片を下記の方法により試験を行った。
(1)溶融指数
ASTM D1238に基づいて、230℃にて2.16kg荷重で測定した。
ASTM D1238に基づいて、230℃にて2.16kg荷重で測定した。
(2)エチレン-プロピレンブロック共重合体中のエチレン含有量
ASTM D3900に基づいて、赤外線吸収スペクトル(FT-IR)を用いて、720cm-1と730cm-1との特性ピークを利用してエチレン含有量を測定した。
ASTM D3900に基づいて、赤外線吸収スペクトル(FT-IR)を用いて、720cm-1と730cm-1との特性ピークを利用してエチレン含有量を測定した。
(3)エチレン-プロピレンゴム共重合体成分(溶剤抽出物)
ASTM D5492に基づいて、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂をキシレン(xylene)に1重量%の濃度で140℃にて1時間溶解した後、常温にて2時間経過した後、抽出された重量から測定した。
ASTM D5492に基づいて、エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂をキシレン(xylene)に1重量%の濃度で140℃にて1時間溶解した後、常温にて2時間経過した後、抽出された重量から測定した。
(4)エチレン-プロピレンゴム共重合体成分の固有粘度
前記(3)で抽出されたエチレン-プロピレンゴム共重合体成分について、ASTM D1601に基づいて固有粘度を測定した。
前記(3)で抽出されたエチレン-プロピレンゴム共重合体成分について、ASTM D1601に基づいて固有粘度を測定した。
(5)曲げ弾性率
ASTM D770に基づいて23℃にて測定した。
ASTM D770に基づいて23℃にて測定した。
(6)Izod衝撃強度
ASTM D256に基づいて、23℃にて厚さ3.2mmの目盛(notched)試験片でIzod衝撃強度を測定した。
ASTM D256に基づいて、23℃にて厚さ3.2mmの目盛(notched)試験片でIzod衝撃強度を測定した。
(7)スパイラルフロー(spiral flow)の流れ長さ
自社保有のスパイラルフローモールドにより、同一射出加工条件で射出成形して流れ長さを相対比較した。
自社保有のスパイラルフローモールドにより、同一射出加工条件で射出成形して流れ長さを相対比較した。
(8)ゲル発生(外観不良)の有無
厚さ2mmのシート状試験片を射出成形して、ゲルによる外観不良が発生したかどうかを目視で確認した。
厚さ2mmのシート状試験片を射出成形して、ゲルによる外観不良が発生したかどうかを目視で確認した。
表1および2から分かるように、本発明の範囲に属する実施例1の場合、曲げ弾性率と23℃Izod衝撃強度などの機械的物性に優れている。
一方、エチレン-プロピレンブロック共重合体の溶融指数の低い比較例1の場合、機械的物性には優れているが、スパイラルフローの流れ長さが短く溶融流動性が良くなかった。エチレン-プロピレンブロック共重合体の溶融指数の高い比較例2の場合は、23℃Izod衝撃強度が低かった。
エチレン-プロピレンブロック共重合体中の溶剤抽出物含有量の低い比較例3の場合は、23℃Izod衝撃強度が低かった。エチレン-プロピレンブロック共重合体中の溶剤抽出物含有量の高い比較例4の場合は、曲げ弾性率が低かった。
エチレン-プロピレンブロック共重合体のエチレン含有量に対する溶剤抽出物の割合の低い比較例5の場合、曲げ弾性率は優れているが23℃Izod衝撃強度が低かった。エチレン-プロピレンブロック共重合体のエチレン含有量に対する溶剤抽出物の割合の高い比較例6の場合は、23℃Izod衝撃強度と曲げ弾性率とのいずれも低かった。
エチレン-プロピレンブロック共重合体中の溶剤抽出物の固有粘度の低い比較例7の場合は、23℃Izod衝撃強度が低かった。エチレン-プロピレンブロック共重合体中の溶剤抽出物の固有粘度の高い比較例8の場合、機械的物性は良好であったが、ゴム相の不均一な分散により、成形品の外観にゲルが発生した。
したがって、本発明の範囲に属する実施例によるポリプロピレン樹脂組成物は、流動性が高いので成形性に優れるだけでなく、これにより製造される成形品は、剛性と耐衝撃性とのバランスに優れる。よって、本発明の実施例による成形品は、自動車の内・外装用部品、家電・電子製品の部品、および建築・産業用資材などとして効果的に使用され得る。
Claims (13)
- エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂を含むポリプロピレン樹脂組成物であって、
前記エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂が、プロピレン単独重合体成分とエチレン-プロピレンゴム共重合体成分(溶剤抽出物)とを含み、
前記エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂中の前記エチレン-プロピレンゴム共重合体成分の含有量が25重量%~40重量%であり、
重量%基準で前記エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂中のエチレン含有量に対する前記溶剤抽出物の含有量の割合が0.25~0.45であり、
2.16kg荷重で230℃にて測定する際、前記エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂の溶融指数が20g/10分~45g/10分である、ポリプロピレン樹脂組成物。 - 前記エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂中の前記エチレン-プロピレンゴム共重合体成分が1.5dl/g~7dl/gの固有粘度を有する、請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
- 前記エチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂は、前記プロピレン単独重合体成分と前記エチレン-プロピレンゴム共重合体成分とが反応器内で段階的に重合されたものである、請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
- 前記ポリプロピレン樹脂組成物の総重量を基準に、50重量%以下の含有量で無機フィラーをさらに含む、請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
- 前記無機フィラーが、タルク、マイカ(雲母)、炭酸カルシウム、珪灰石、硫酸バリウム、クレー、硫酸マグネシウム、およびウィスカーからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項4に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
- 前記ポリプロピレン樹脂組成物の総重量を基準に、50重量%以下の含有量でエチレン-αオレフィンゴムをさらに含む、請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
- 前記エチレン-αオレフィンゴムが、エチレン-1-ブテンゴム、エチレン-ブチレンゴム、エチレン-1-ペンテンゴム、エチレン-1-ヘキセンゴム、エチレン-1-ヘプテンゴム、エチレン-1-オクテンゴム、およびエチレン-4-メチル-1-ペンテンゴムからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項6に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
- 酸化防止剤、中和剤、ブロッキング防止剤、補強材、充填材、耐候安定剤、帯電防止剤、滑剤、スリップ剤、核剤、難燃剤、顔料、および染料からなる群より選択される1つ以上の添加剤をさらに含む、請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
- 前記ポリプロピレン樹脂組成物100重量部に対して、テトラキス(メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシリレート)、1,3,5-トリメチル-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、およびトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトからなる群より選択される1つ以上の酸化防止剤を0.05重量部~0.2重量部の含有量でさらに含む、請求項8に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
- 前記ポリプロピレン樹脂組成物100重量部に対して、ハイドロタルサイト、およびステアリン酸カルシウムからなる群より選択される1つ以上の中和剤を0.01重量部~0.2重量部の含有量でさらに含む、請求項8に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
- 請求項1~10のいずれか一項に記載のポリプロピレン樹脂組成物を成形して製造されるポリプロピレン樹脂成形品。
- 常温(23℃)で測定する際、Izod衝撃強度が50kgf・cm/cm以上でかつNB(non-break)特性を有し、曲げ弾性率が8000kgf/cm2以上である、請求項11に記載のポリプロピレン樹脂成形品。
- 自動車の内・外装用部品、家電・電子製品の部品、および建築・産業用資材からなる群より選択される、請求項11に記載のポリプロピレン樹脂成形品。
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