JP2022053257A - ドライフィルムおよび積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】平坦性や高級感といった質感を維持しつつ、湾曲(反り)が無く、ガラス基板と樹脂層との密着性に優れ、且つ表面硬度や耐衝撃性にも優れる積層体が得られるドライフィルムを提供する。【解決手段】基材と、前記基材上に剥離可能に設けられた樹脂層とを備えるドライフィルムであって、前記樹脂層は、フッ素含有量が25質量%以下であるポリイミドと、エポキシ当量が1000g/eq以下であり、かつ分子量が10,000以下であるエポキシ化合物と、を含むことを特徴とする、ドライフィルムとする。【選択図】図1

Description

本発明は、ドライフィルムに関し、より詳細には、フレキシブル表示素子のカバーウィンドウとして、ガラス基板/樹脂層の積層体等の製造に好適に使用できるドライフィルムに関する。
液晶ディスプレイ(LCD)や有機ELディスプレイ(OLED)等の表示素子や電子ペーパー等の電子デバイスの分野では、従来のフラットパネルに加えて屈曲性を有するフレキシブルパネルが採用され始めている。特に近年では、折り曲げ可能なディスプレイを備えた電子デバイスの開発が進められている。
上記したようなフレキシブルデバイスのカバーウィンドウには、従来のガラス基板に代えて、ポリイミド等の有機高分子材料を使用することが提案され、一部では実用化されている。しかしながら、これら高分子材料はガラス基板と比較すると剛性や硬度が劣るため、フレキシブルパネルに使用した場合に屈曲が繰り返されるとシワやヨレが生じたり、表面に傷が付きやすいといった問題がある。
また、従来のガラス基板を数十ミクロン程度の極薄ガラスにすることで、表示パネルとしての平坦性や高級感といった質感は維持しながら、屈曲性を持たせることも提案されている。極薄ガラスはある程度の屈曲半径を有するものの、ガラス特有の性質である圧縮強度や耐衝撃性が低いといった問題がある。そこで、近年では、化学強化した極薄ガラスを使用することが試みられている。
しかしながら、化学強化極薄ガラスは、通常の極薄ガラスと比べて、圧縮強度、曲げ強度、耐衝撃性等には優れているものの、耐穿刺性(先の尖ったようなもので押圧した際の耐破損性)に劣ることから、実際は、柔軟性のある接着剤を介してポリエステルフィルム等の保護フィルムで化学強化極薄ガラスを挟持した構造のものが提案されている。
ところで、ディスプレイ用基板の技術分野においても、水蒸気バリア特性と可撓性とを両立する材料として、ガラス基板にポリイミド樹脂層を積層した複合基板を使用することが提案されている(例えば、特許文献1~3)。
特表2002-534305号公報 特表2015-533685号公報 特開2019-214159号公報
フレキシブルデバイスに使用されるディスプレイのカバーウィンドウ等の用途において、折り曲げ可能な極薄ガラスに樹脂フィルムを積層した積層体が提案されているものの、上記したように、樹脂フィルムないしは接着剤には、極薄ガラスとの密着性と衝撃吸収性の観点から柔らかい材料が使用されている。そのため、カバーウィンドウとして使用した場合に表面硬度が不足してディスプレイ表面に傷や凹みが付いたり、極薄ガラスを使用する利点である平坦性や高級感といった質感が損なわれるといった問題もある。また、極薄フィルムと樹脂フィルムとを接着剤を介して貼り合わせる工程が必要なことや、接着剤に衝撃吸収性を持たせるためにはある程度の厚さが必要になるため、カバーウィンドウの総厚みを薄くできないといった問題もある。
本発明者らは、上記課題に対して鋭意研究する中、透明性に優れるポリイミドに着目し、ポリイミドワニスをガラス基板に塗布して乾燥させ、ガラス基板/ポリイミド層の積層体を作製したところ、この積層体が、表面硬度と耐衝撃性とを高次元で両立できることがわかった。しかし、同様に極薄ガラス基板/ポリイミド層の積層体を作製しようとしたところ、ポリイミドワニスの塗布膜を乾燥させる際の乾燥収縮により、得られた積層体が湾曲するという新たな問題があることに、発明者らは気付いた。
そこで、積層体の湾曲を抑制するために、ポリイミドワニスをドライフィルム化し、ドライフィルムを用いてポリイミド層を極薄ガラス基板上にラミネートする方法を試みたところ、ポリイミド層と極薄ガラス基板との十分な密着性が得られないという別の新たな問題があることに、発明者らは気付いた。特に、透明性に優れるフッ素化ポリイミド等において密着性が不十分であった。
本発明は、このような課題のもとになされたものであり、その目的は、接着剤を使用しなくともガラス基板/樹脂層の積層体を簡易かつ簡便に製造できるドライフィルムであって、平坦性や高級感といった質感を維持しつつ、湾曲(反り)が無く、ガラス基板と樹脂層との密着性に優れ、且つ表面硬度や耐衝撃性にも優れる積層体が得られるドライフィルムを提供することである。
本発明者らは、上述した全ての課題を解消し得るドライフィルムを提供すべく、さらに鋭意検討を行った結果、フッ素が一定量以下のポリイミドに特定のエポキシ化合物を組み合せて樹脂層を形成したドライフィルムとすることにより、得られるガラス基板/樹脂層の積層体は、平坦性や高級感といった質感を維持しつつ、ガラス基板と樹脂層との密着性に優れ、表面硬度や耐衝撃性にも優れる、との知見を得た。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。即ち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] 基材と、前記基材上に剥離可能に設けられた樹脂層とを備えるドライフィルムであって、
前記樹脂層は、フッ素含有量が25質量%以下であるポリイミドと、エポキシ当量が1000g/eq以下であり、かつ分子量が10,000以下であるエポキシ化合物と、を含むことを特徴とする、ドライフィルム。
[2] 前記ポリイミドは、厚さ50μmの単層膜とした場合に、該単層膜のYI値が5.0以下である、[1]に記載のドライフィルム。
[3] 前記ポリイミドは、厚さ50μmの単層膜とした場合に、該単層膜のヘイズが2.0以下である、[1]または[2]に記載のドライフィルム。
[4] 前記エポキシ化合物は、150℃以下の軟化点を有する、[1]~[3]のいずれかに記載のドライフィルム。
[5] 前記エポキシ化合物が、前記樹脂層における固形分合計量に対して1~50質量%含まれる、[1]~[4]のいずれかに記載のドライフィルム。
[6] 前記樹脂層は、ブルーイング剤をさらに含む、[1]~[5]のいずれかに記載のドライフィルム。
[7] ガラス基板と、前記ガラス基板の主面の一方に面に接するように設けられてなる樹脂層とを備えた積層体であって、
前記樹脂層は、[1]~[6]のいずれかに記載のドライフィルムの樹脂層からなる、積層体。
[8] 前記ガラス基板が化学強化ガラスである、[7]に記載の積層体。
[9] フレキシブル表示素子のカバーウィンドウとして使用される、[7]または[8]に記載の積層体。
[10] ガラス基板と、前記ガラス基板の主面の一方に面に接するように設けられてなる樹脂層とを備えた積層体を製造する方法であって、
[1]~[6]のいずれかに記載のドライフィルムを、ガラス基板の主面の一方に面に、ドライフィルムの樹脂層とガラス基板の主面とが接するように貼り合わせ、
前記ドライフィルムから前記基材を剥離して、前記ガラス基板上に樹脂層を形成し、
前記樹脂層を、前記エポキシ化合物の軟化点温度以上の温度に加熱する、
ことを含む、積層体の製造方法。
本発明によれば、フッ素が一定量以下のポリイミドに特定のエポキシ化合物を組み合せて樹脂層を形成したドライフィルムとすることにより、ガラス基板/樹脂層の積層体とした場合であっても、平坦性や高級感といった質感を維持しつつ、湾曲(反り)が無く、ガラス基板と樹脂層との密着性に優れ、且つ表面硬度や耐衝撃性にも優れる積層体が得られるドライフィルムを実現することができる。
本発明によるドライフィルムの一実施形態を模式的に示した概略断面図。 本発明によるドライフィルムの他の実施形態を模式的に示した概略断面図。 本発明による積層体の一実施形態を模式的に示した概略断面図。 本発明による積層体の他の実施形態を模式的に示した概略断面図。 本発明による積層体の他の実施形態を模式的に示した概略断面図。
[ドライフィルム]
本発明によるドライフィルムについて、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明によるドライフィルムの一実施形態を示した概略断面図である。本発明によるドライフィルム1は、基材10と基材10上に設けられた樹脂層20とを備えている。また、本発明においては、ドライフィルムとした際に樹脂層20の表面に塵等が付着するのを防止するとともに、ドライフィルム1の取扱性を考慮して、図2に示すように、樹脂層20の、基材10と接する面とは反対の面側に、更に保護フィルム30が設けられていてもよい。以下、本発明によるドライフィルムを構成する各構成要素について説明する。
<基材>
基材としては、後記する樹脂層を形成する際に樹脂塗膜を支持できるものであれば特に制限なく使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等の熱可塑性樹脂からなるフィルムを好適に使用することができる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度、取扱性等の観点から、ポリエステルフィルムが好ましい。また、これらフィルムの積層体を基材として使用することもできる。
また、上記したような熱可塑性樹脂フィルムは、機械的強度向上の観点から、一軸方向または二軸方向に延伸されたフィルムであることが好ましい。
基材の樹脂層を設ける面には、ドライフィルムの使用時に樹脂層が基材から剥離し易いように、離型処理が施されていてもよい。例えば、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン系樹脂等の離型剤を適当な溶剤に溶解または分散して調製した塗工液を、ロールコート法、スプレーコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の公知の手段により、基材表面に塗布、乾燥することにより、離型処理を施すことができる。
基材の厚さは、特に制限されるものではないが概ね10~150μmの範囲で用途に応じて適宜選択される。
<樹脂層>
上記した基材上に剥離可能に設けられる樹脂層について説明する。樹脂層は、ポリイミドとエポキシ化合物とを必須成分として含む。本発明のドライフィルムは、後述するようにポリイミドとエポキシ化合物とを含む樹脂組成物を基材に塗布、乾燥して塗布膜としたものであるが、ドライフィルムの実用性を考慮すると、塗布膜に粘着性がない程度、即ちタックがなくなる程度まで塗布膜を乾燥させなければならない。しかしながら、乾燥した塗布膜(即ち、樹脂層)はタックがほとんどなく、ドライフィルムをガラス基板に貼り合せる(ラミネートする)ときに樹脂層と被着体であるガラス基板との密着性が乏しくなる。特に、表示素子等の光学用途に好適に使用される透明性の高いポリイミドとしてフッ素化ポリイミドが知られているが、フッ素化ポリイミドをドライフィルム化すると被着体との密着性が著しく低下する。本発明においては、フッ素含有量を一定値以下としたポリイミドを用い、特定のエポキシ化合物を併用することにより、ドライフィルムとした場合であっても、被着体であるガラス基板との密着性を向上することができる。以下、本発明による樹脂組成物を構成する成分について説明する。
<ポリイミド>
ポリイミドは、カルボン酸無水物とジアミンとの反応物であるポリアミック酸をイミド化した下記式(1)で表される構造を有するものである。式(1)で表される構成単位は、テトラカルボン酸化合物とジアミン化合物とが反応して形成される構成単位である。
Figure 2022053257000002
上記式(1)中、Xは、互いに独立して2価の有機基を表し、好ましくは炭素数4~40の2価の有機基、より好ましくは環状構造を有する炭素数4~40の2価の有機基を表す。環状構造としては、脂環、芳香環、ヘテロ環構造が挙げられる。
有機基は、有機基中の水素原子が炭化水素基またはフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよく、その場合、炭化水素基およびフッ素置換された炭化水素基の炭素数は好ましくは1~8である。但し、フッ素置換されている場合であっても、ポリイミドのフッ素含有量は25質量%以下とする必要がある。フッ素含有量が増加するとポリイミドの光学特性(光線透過率、YI値、ヘイズ)は向上するものの、ガラス基板との密着性を維持することができなくなる。
本発明の実施態様においては、ポリイミドは、複数種のXを含んでよく、複数種のXは、互いに同一でよく、異なっていてもよい。
Xとしては、下記式で表される基を例示でき、各々の基において水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基またはトリフルオロメチル基で置換された基、炭素数6以下の鎖式炭化水素基を例示できる。
Figure 2022053257000003
上記式中、*は結合手を表し、A、A、Aは、互いに独立して、単結合、-O-、-S-、-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-SO-、-CO-またはN(Q)-を表す。ここで、Qはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表す。
一例として、AおよびAが単結合、-O-または-S-であり、かつ、Aが-CH-、-C(CH-、-C(CF-またはSO-である。AとAとの各環に対する結合位置、および、AとAとの各環に対する結合位置は、互いに独立して、好ましくは各環に対してメタ位またはパラ位であり、より好ましくはパラ位である。
上記の基のなかでも、積層体の表面硬度や耐屈曲性の観点から、下記式:
Figure 2022053257000004
で表される基がより好ましい。
また、A、AおよびAは、積層体の表面硬度および柔軟性を高めやすい観点から、互いに独立して、単結合、-O-またはS-であることが好ましく、単結合またはO-であることがより好ましい。
本発明の好ましい実施態様においては、上記式(1)の複数のXの少なくとも一部は、式(2)で表される構成単位である。
Figure 2022053257000005
式(2)中、*は結合手を表し、R~Rは、互いに独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基または炭素数6~12のアリール基を表し、R~Rに含まれる水素原子は、互いに独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
~Rは、互いに独立して、好ましくは水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、ここで、R~Rに含まれる水素原子は、互いに独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。R~Rは、互いに独立して、積層体の表面硬度、透明性および耐屈曲性の観点から、さらに好ましくは水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基またはトリフルオロメチル基であり、とりわけ好ましくはR、R、R、R、R、Rが水素原子、RおよびRが水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基またはトリフルオロメチル基であり、特に好ましくはRおよびRがメチル基またはトリフルオロメチル基である。但し、ポリイミド全体としてフッ素含有量は25質量%以下とする必要がある。
本発明の好ましい実施態様においては、上記式(2)で表される構成単位は式(3)で表される構成単位である。すなわち、複数のXの少なくとも一部は、式(3)で表される構成単位である。この場合、フッ素元素を含有する骨格によりポリイミドの溶媒への溶解性を高め、ポリイミドを含有するワニスの保管安定性を向上しやすいと共に、ワニスの粘度を低減しやすく、ドライフィルムとする際の塗布性を向上しやすい。また、フッ素元素を含有する骨格により、ポリイミドの光学特性(全光線透過率、YI値、ヘイズ等)が向上する。しかしながら、ガラス基板との密着性の観点から、ポリイミド全体としてフッ素含有量は25質量%以下とする必要がある。
Figure 2022053257000006
本発明の一実施態様において、上記ポリイミド中のXは30モル%以上であることが好ましく、より好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上が式(2)、特に式(3)で表される。ポリイミドにおける上記範囲内のXが式(2)、特に式(3)で表されると、フッ素元素を含有する骨格により溶媒への溶解性が向上されやすく、当該ポリイミドを含有するワニスの保管安定性を向上しやすいと共に、ワニスの粘度を低減しやすく塗布性が向上する。また、フッ素元素を含有する骨格により、全光線透過率、YI値、ヘイズ等の光学特性も向上する。なお、ポリイミド中のXの式(2)または(3)で表される構成単位の割合は、例えばH-NMRを用いて測定することができるが、むろん原料の仕込み比からも算出することもできる。
上記式(1)において、Yは4価の有機基を表し、好ましくは炭素数4~40の4価の有機基を表し、より好ましくは環状構造を有する炭素数4~40の4価の有機基を表す。環状構造としては、脂環、芳香環、ヘテロ環構造が挙げられる。有機基は、有機基中の水素原子が炭化水素基またはフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基であり、その場合、炭化水素基およびフッ素置換された炭化水素基の炭素数は好ましくは1~8である。
本発明の一実施態様において、ポリイミドは、複数種のYを含んでもよく、複数種のYは、互いに同一であっても異なっていてもよい。Yとしては、下記式で表される基が好ましい。これらの例示した基においては、水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基またはトリフルオロメチル基で置換された基;並びに4価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。
Figure 2022053257000007
上記式中、*は結合手を表し、Bは、単結合、-O-、-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-Ar-、-SO-、-CO-、-O-Ar-O-、-Ar-O-Ar-、-Ar-CH-Ar-、-Ar-C(CH-Ar-またはAr-SO-Ar-を表す。Arは、水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数6~20のアリーレン基を表し、具体例としてはフェニレン基が挙げられる。
上記基のなかでも、積層体の表面硬度および耐屈曲性の観点から、下記式で表される基が好ましい。積層体の表面硬度および耐屈曲性を高めやすく、黄色度を低減しやすい観点から、互いに独立して、単結合、-O-、-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-またはC(CF-であることが好ましく、単結合、-O-、-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-またはC(CF-であることがより好ましく、単結合、-C(CH-またはC(CF-であることがさらに好ましい。
Figure 2022053257000008
本発明の一実施形態において、式(1)中の複数のYの少なくとも一部は、下記式(4)で表される構成単位である。式(1)中の複数のYの少なくとも一部が式(4)で表される基であると、ポリイミドの溶媒への溶解性を高め、ポリイミドを含有するワニスの粘度を低減しやすく、塗布性が向上する。また、積層体の光学特性が向上する。
Figure 2022053257000009
式(5)中、*は結合手を表し、R~R16は、互いに独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基または炭素数6~12のアリール基を表し、R~R16に含まれる水素原子は、互いに独立してハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。
積層体の表面硬度、耐屈曲性および光学特性を向上しやすい観点から、R~R16は、互いに独立して、さらに好ましくは水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基またはトリフルオロメチル基であり、特に好ましくはR、R10、R11、R14、R15およびR16が水素原子、R12およびR13が水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基またはトリフルオロメチル基であり、とりわけ好ましくはR12およびR13がメチル基またはトリフルオロメチル基である。
本発明の一実施態様においては、上記した式(4)で表される構成単位は、下記式(5)で表される基であることが好ましい。フッ素元素を含有する骨格によりポリイミドの溶媒への溶解性を高め、ポリイミドを含有するワニスの保管安定性を向上しやすいと共に、ワニスの粘度を低減しやすく、塗布性が向上する。また、フッ素元素を含有する骨格により、積層体の光学特性が向上する。
Figure 2022053257000010
本発明の一実施形態において、ポリイミド中のYの、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上が、式(4)、特に式(5)で表される。ポリイミドにおける上記範囲内のYが式(4)、特に式(5)で表されると、フッ素元素を含有する骨格によりポリイミドの溶媒への溶解性を高め、樹脂を含有するワニスの粘度を低減しやすく、樹脂層の加工性を向上しやすい。また、フッ素元素を含有する骨格により、積層体の光学特性を向上させやすい。なお、好ましくは、上記ポリイミド中のYの100モル%以下が式(4)、特に式(5)で表される。ポリイミド中のYは式(4)、特に式(5)であってもよい。ポリイミド中のYの式(4)で表される構成単位の割合は、例えばH-NMRを用いて測定することができるが、むろん原料の仕込み比からも算出することもできる。
上記したポリイミドは、式(1)で表される構成単位の他に、式(30)で表される構成単位および/または式(31)で表される構成単位を含むことができる。
Figure 2022053257000011
式(30)において、Y1は4価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基またはフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。Yとしては、上記したYの好ましい基を例示できる。本発明の一実施形態において、ポリイミドは、複数種のYを含んでもよく、複数種のYは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
式(31)において、Yは3価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基またはフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。Yとしては、上記したYの好ましい基の結合手のいずれか1つが水素原子に置き換わった基、および3価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。本発明の一実施形態において、ポリイミドは、複数種のYを含んでもよく、複数種のYは、互いに同一あっても異なっていてもよい。
式(30)および式(31)において、XおよびXは、互いに独立に、2価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基またはフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。XおよびXとしては、上記したXの好ましい基を例示できる。
本発明の一実施態様において、ポリイミドは、式(1)で表される構成単位、および場合により式(30)および/または式(31)で表される構成単位からなる。また、積層体の光学特性、表面硬度および耐屈曲性の観点から、上記ポリイミドにおいて、式(1)で表される構成単位は、式(1)、および場合により式(30)および式(31)で表される全構成単位に基づいて、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。なお、ポリイミドにおいて、式(1)で表される構成単位は、式(1)、および場合により式(30)および/または式(31)で表される全構成単位に基づいて、通常100%以下である。なお、上記割合は、例えば、H-NMRを用いて測定することができ、または原料の仕込み比から算出することもできる。
また、本発明の一実施態様において、樹脂層とガラス基板との密着性および積層体の質感の観点から、ポリイミドは、式(1)で表される構成単位、および場合により式(30)および/または式(31)で表される構成単位に加え、下記式(40)で表される構造単位を含んでいてもよい。
Figure 2022053257000012
上記式(40)中、*は結合手を表し、R17およびR18は、それぞれ独立して単一結合、炭素数1~5のアルキレン基、または炭素数6以上の2価芳香族基であり、R19およびR20は、それぞれ独立して炭素数1~5のアルキル基であり、R21およびR22は、それぞれ独立して炭素数4~10のアリール基であり、R23およびR24のうち少なくとも一つは、炭素数2~10のアルケニル基であり、m1、m2およびm3は、それぞれ独立して1以上の整数である。
上記式(40)の構造を有する繰り返し単位は、アルキル基に置換された繰り返し単位、アリール基に置換されたシロキサン繰り返し単位、およびアルケニル基に置換されたシロキサン繰り返し単位を共に含むことで、樹脂層の引張弾性率が向上するとともに、樹脂層とガラス基板との密着性が向上し、積層体とした場合の質感も向上する。
なお、アルキル基に置換された繰り返し単位、アリール基に置換されたシロキサン繰り返し単位、およびアルケニル基に置換されたシロキサン繰り返し単位の順序は、任意に変更可能であり、交互に位置してもよい。
本発明の一実施態様において、上記式(40)で表される構造単位中、R17およびR18は、それぞれ独立して単一結合、炭素数1~5のアルキレン基、または炭素数6以上の2価芳香族基であり、好ましくは、炭素数3以上のアルキレン基である。また、R3およびR4は、それぞれ独立して炭素数1~5のアルキル基であり、好ましくは、メチルまたはエチル基である。
また、R19およびR20は、それぞれ独立して炭素数4~10のアリール基であり、好ましくは、フェニル基である。
また、R21およびR22のうち少なくとも一つは、炭素数2~10のアルケニル基であり、好ましくは、エテニルまたはプロペニル基である。なお、アルケニル基でないもう一つは、炭素数1~5のアルキル基である。
また、本発明の一実施態様において、上記式(40)で表される構造単位中、m1、m2およびm3は、それぞれ独立して1~10の整数であり、具体的には、m1は3~9、m2は2~9、m3は1~5の整数である。
本発明の一実施態様において、上記式(40)で表される構造単位は、耐熱性と密着性とのバランスの観点から、全体の単位に対して5mol%以上または50mol%以下、好ましくは、5~40mol%である。
ポリイミドは、例えば上記の含フッ素置換基等によって導入することができる、フッ素原子等のハロゲン原子を含んでよいが、ポリイミドのフッ素含有量は25質量%以下とする必要がある。ポリイミドがフッ素原子を含む場合、樹脂層の光学特性(光線透過率、YI値、ヘイズ)は向上するものの、ガラス基板との密着性が低下する。ポリイミドにおけるフッ素原子の含有量は、好ましくは0~23質量%、より好ましくは0~20質量%である。
ポリイミドのイミド化率は、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは96%以上である。積層体の光学的均質性を高めやすい観点から、イミド化率が上記の下限以上であることが好ましい。また、イミド化率の上限は100%以下である。イミド化率は、ポリイミド中のテトラカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量の2倍の値に対する、ポリイミドのイミド結合のモル量の割合を示す。なお、ポリイミドがトリカルボン酸化合物を含む場合には、ポリイミド中のテトラカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量の2倍の値と、トリカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量との合計に対する、ポリイミド中のイミド結合のモル量の割合を示す。また、イミド化率は、IR法、NMR法などにより求めることができる。
ポリイミドは、例えば、テトラカルボン酸化合物およびジアミン化合物を主な原料として製造できる。なお、ジアミン化合物に代えて、ジイソシアネート化合物を用いてもよい。
ポリイミドの製造に使用されるジアミン化合物としては、例えば、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノシロキサン、およびこれらの混合物が挙げられる。なお、本実施形態において「芳香族ジアミン」とは、アミノ基が芳香環に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に脂肪族基またはその他の置換基を含んでいてもよい。この芳香環は単環でも縮合環でもよく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環およびフルオレン環等が例示されるが、これらに限定されるわけではない。これらのなかでも、好ましくはベンゼン環である。また「脂肪族ジアミン」とは、アミノ基が脂肪族基に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に芳香環やその他の置換基を含んでいてもよい。さらに、「ジアミノシロキサン」とは、シロキサン骨格の末端にアミノ基を有する化合物を表し、その構造の一部が炭化水素基によって置換されていてもよい。
脂肪族ジアミンとしては、例えば、ヘキサメチレンジアミン等の非環式脂肪族ジアミン、並びに1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジアミンおよび4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン等の環式脂肪族ジアミン等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
芳香族ジアミンとしては、例えばp-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-トルエンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン等の、芳香環を1つ有する芳香族ジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’DDSと略すことがある)、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-Rと略すことがある)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB-Nと略すことがある)、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ジメチルベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニル(TFMBと記載することがある)、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-クロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-フルオロフェニル)フルオレン等の、芳香環を2つ以上有する芳香族ジアミンが挙げられる。これらは単独または2種以上を組合せて使用できる。
芳香族ジアミンは、好ましくは4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’DDS)、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB-N)、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ジメチルベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニル(TFMB)、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニルである。これらは単独または2種以上を組合せて使用できる。
ジアミノシロキサンは、例えば、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(4-アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω-ビス(2-アミノエチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス(4-アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス(5-アミノペンチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス[3-(2-アミノフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス[3-(4-アミノフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサンが挙げられる。これらは単独または2種以上を組合せて使用できる。
上記ジアミン化合物のなかでも、積層体の表面硬度、柔軟性、および着色度合い(YI値)の観点からは、ビフェニル構造を有する芳香族ジアミンからなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましく、これらのなかでも、2,2’-ジメチルベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニルおよび4,4’-ジアミノジフェニルエーテルからなる群から選ばれる1種以上を用いることがより好ましく、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニル(TFMB)を用いることがよりさらに好ましい。
また、積層体の柔軟性の観点からは、エーテル結合を有する芳香族ジアミンからなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましく、これらのなかでも、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB-N)からなる群から選ばれる1種以上を用いることがより好ましく、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB-N)を用いることがよりさらに好ましい。
また、積層体の透明性の観点からは、スルホン結合を有する芳香族ジアミンからなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましく、これらのなかでも、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’DDS)、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホンからなる群から選ばれる1種以上を用いることがより好ましく、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’DDS)を用いることがよりさらに好ましい。
ポリイミドの製造に用いられるテトラカルボン酸化合物としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸化合物、および脂肪族テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸化合物等が挙げられる。テトラカルボン酸化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。テトラカルボン酸化合物は、二無水物の他、酸クロリド化合物等のテトラカルボン酸化合物類縁体であってもよい。
芳香族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、非縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物、単環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物および縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。非縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば4,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシフェニル)]プロパン二無水物(BisDAと略すことがある。)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDAと略すことがある。)、1,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’-(p-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4’-(m-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられる。また、単環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物が挙げられ、縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
上記したなかでも、好ましくは4,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシフェニル)]プロパン二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、1,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’-(p-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物および4,4’-(m-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられ、より好ましくは4,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物および4,4’-(p-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられる。これらは単独または2種以上を組合せて使用できる。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、環式または非環式の脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物とは、脂環式炭化水素構造を有するテトラカルボン酸二無水物であり、その具体例としては、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等のシクロアルカンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物およびこれらの位置異性体が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、および1,2,3,4-ペンタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。また、環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物および非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物を組合せて用いてもよい。
上記テトラカルボン酸二無水物のなかでも、積層体の高表面硬度、高透明性、高柔軟性、高屈曲耐性、および低着色性の観点から、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシフェニル)]プロパン二無水物、3,3’,4,4’-ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、並びにこれらの混合物が好ましい。
ポリイミドの製造に用いられるジカルボン酸化合物としては、好ましくはテレフタル酸、4,4’-オキシビス安息香酸またはそれらの酸クロリド化合物が用いられる。テレフタル酸や4,4’-オキシビス安息香酸またはそれらの酸クロリド化合物に加えて、他のジカルボン酸化合物が用いられてもよい。他のジカルボン酸化合物としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸およびそれらの類縁の酸クロリド化合物、酸無水物等が挙げられ、2種以上を組合せて用いてもよい。
具体例としては、イソフタル酸;ナフタレンジカルボン酸;4,4’-ビフェニルジカルボン酸;3,3’-ビフェニルジカルボン酸;炭素数8以下である鎖式炭化水素、のジカルボン酸化合物および2つの安息香酸が単結合、-CH-、-C(CH-、-SO-もしくはフェニレン基で連結された化合物、並びに、それらの酸クロリド化合物が挙げられる。具体例としては、4,4’-オキシビス(ベンゾイルクロリド)、テレフタロイルクロリドが好ましく、4,4’-オキシビス(ベンゾイルクロリド)とテレフタロイルクロリドとを組合せて用いることがさらに好ましい。
上記ポリイミドは、積層体の各種物性を損なわない範囲で、上記テトラカルボン酸化合物に加えて、テトラカルボン酸およびトリカルボン酸並びにそれらの無水物および誘導体をさらに反応させたものであってもよい。テトラカルボン酸としては、上記テトラカルボン酸化合物の無水物の水付加体が挙げられる。また、トリカルボン酸化合物としては、芳香族トリカルボン酸、脂肪族トリカルボン酸およびそれらの類縁の酸クロリド化合物、酸無水物等が挙げられ、2種以上を組合せて用いてもよい。具体例としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸の無水物;2,3,6-ナフタレントリカルボン酸-2,3-無水物;フタル酸無水物と安息香酸とが単結合、-O-、-CH-、-C(CH-、-SO-もしくはフェニレン基で連結された化合物が挙げられる。
ポリイミドの製造において、ジアミン化合物、テトラカルボン酸化合物および/またはジカルボン酸化合物の使用量は、所望とするポリイミドの各構成単位の比率に応じて適宜選択できる。
ポリイミドの製造において、ジアミン化合物、テトラカルボン酸化合物およびジカルボン酸化合物の反応温度は、特に限定されないが、例えば5~350℃、好ましくは20~200℃、より好ましくは25~100℃である。反応時間も特に限定されないが、例えば30分~10時間程度である。必要に応じて、不活性雰囲気または減圧の条件下において反応を行ってよい。好ましい態様では、反応は、常圧および/または不活性ガス雰囲気下、撹拌しながら行う。また、反応は、反応に不活性な溶媒中で行うことが好ましい。
溶媒としては、反応に影響を与えない限り特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、2-ブトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、N-メチル-2-ピロリドン等のケトン系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;テトラヒドロフランおよびジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;クロロホルムおよびクロロベンゼン等の塩素含有溶媒;N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;およびそれらの組合せ(混合溶媒)などが挙げられる。これらのなかでも、溶解性の観点から、アミド系溶媒を好適に使用できる。
ポリイミドの製造におけるイミド化工程では、イミド化触媒の存在下で、イミド化することができる。イミド化触媒としては、例えばトリプロピルアミン、ジブチルプロピルアミン、エチルジブチルアミン等の脂肪族アミン;N-エチルピペリジン、N-プロピルピペリジン、N-ブチルピロリジン、N-ブチルピペリジン、およびN-プロピルヘキサヒドロアゼピン等の脂環式アミン(単環式);アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、アザビシクロ[3.2.1]オクタン、アザビシクロ[2.2.2]オクタン、およびアザビシクロ[3.2.2]ノナン等の脂環式アミン(多環式);並びにピリジン、2-メチルピリジン(2-ピコリン)、3-メチルピリジン(3-ピコリン)、4-メチルピリジン(4-ピコリン)、2-エチルピリジン、3-エチルピリジン、4-エチルピリジン、2,4-ジメチルピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、3,4-シクロペンテノピリジン、5,6,7,8-テトラヒドロイソキノリン、およびイソキノリン等の芳香族アミンが挙げられる。
また、イミド化反応を促進しやすい観点から、イミド化触媒とともに、酸無水物を用いることが好ましい。酸無水物は、イミド化反応に用いられる慣用の酸無水物等が挙げられ、その具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等の脂肪族酸無水物、フタル酸等の芳香族酸無水物などが挙げられる。
ポリイミドは、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組合せた分離手段により単離(分離精製)してもよく、好ましい態様では、透明ポリアミドイミド樹脂を含む反応液に、多量のメタノール等のアルコールを加え、樹脂を析出させ、濃縮、濾過、乾燥等を行うことにより単離することができる。
上記のようにして得られるポリイミドの重量平均分子量(Mw)は、ドライフィルムを作製する際の溶媒に対する溶解性、光学用途にドライフィルムを使用する際の樹脂層の表面硬度や耐屈曲性の観点から、30,000~1,000,000であることが好ましく、70,000~700,000であることがより好ましく、100,000~500,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、標準ポリスチレン換算により算出された値をいう。
本発明において使用するポリイミドは、厚さ50μmの単層膜とした場合に、該単層膜のYI値が5.0以下であることが好ましい。YI値が小さいポリイミドを使用することにより、ドライフィルムを用いて作製した積層体をフレキシブルデバイス用ディスプレイのカバーウィンドウとして、より好適に使用することができる。YI値は2.0以下であることがより好ましい。なお、本明細書において、YI値(黄色度)は、JIS K 7373:2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計を用いて300~800nmの光に対する透過率測定を行い、3刺激値(X、Y、Z)を求め、YI=100×(1.2769X-1.0592Z)/Yの式に基づいて算出した値を意味するものとする。
また、ポリイミドは、厚さ50μmの単層膜とした場合に、該単層膜のヘイズが2.0以下であることが好ましい。YI値に加え、ヘイズの小さいポリイミドを使用することにより、ドライフィルムを用いて作製した積層体をフレキシブルデバイス用ディスプレイのカバーウィンドウとして、より一層好適に使用することができる。ヘイズは1.0以下であることがより好ましい。なお、本明細書において、ヘイズはJIS K 7136:2000に準拠して、公知の濁度計により測定した値を意味するものとする。
<エポキシ化合物>
樹脂層は、上記したようなフッ素含有量を一定値以下としたポリイミドに加えて特定のエポキシ化合物を含む。ポリイミドと併用して用いるエポキシ化合物としては、エポキシ当量が1000g/eq以下であり、かつ分子量が10,000以下であるエポキシ化合物である。ドライフィルムの樹脂層が、ポリイミドに加えて上記のような特定のエポキシ化合物を含有することにより、ドライフィルムの樹脂層の室温でのタックを抑制して取扱性を向上させながら、ガラス基板等の被着体への密着性を向上させることができる。この理由は明らかではないが、エポキシ化合物とポリイミドとの相溶性が良好であること、さらには、エポキシ化合物がポリイミドの原料であるアミンや酸無水物の一部と反応して粘着性を示すことなどが考えられる。
なお、エポキシ当量とは、エポキシ化合物中にあるエポキシ基の総数を意味し、エポキシ当量は、JIS K7236に記載されている方法により求めることができる。
本発明において好ましく使用できるエポキシ化合物としては、エポキシ当量が1000g/eq以下であり、かつ分子量が10,000以下であれば特に制限なく使用することができ、例えば、ビフェニル型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ジシクロペンタジエン型、ナフタレン型、トリアジン環を有するエポキシ化合物を好ましく使用できる。具体的には、三菱ケミカル株式会社製のjER828、jER834、jER1001、jER1004、DIC株式会社製のEPICLON840、EPICLON850、EPICRON860、EPICLON1050、新日鐵住友化学株式会社製のエポトートYD-011、YD-127、YD-128、旭化成株式会社製のA.E.R.330、A.E.R.331、A.E.R.661、A.E.R.664等(いずれも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;DIC株式会社製のEPICLON152、EPICLON165、新日鐵住友化学株式会社製のエポトートYDB-400、YDB-500、住友化学株式会社製のスミ-エポキシESB-400、ESB-700のブロム化エポキシ樹脂;三菱ケミカル株式会社製のjER152、jER154、DIC株式会社製のEPICLONN-730、EPICLONN-770、EPICLONN-865、新日鐵住友化学株式会社製のYDCN-704、日本化薬株式会社製のEPPN-201、EOCN-1025、EOCN-1020、EOCN-104S、NC-3000、のノボラック型エポキシ樹脂;DIC株式会社製のEPICLON830、三菱ケミカル株式会社製jER807、新日鐵住友化学株式会社製のエポトートYDF-170等(いずれも商品名)のビスフェノールF型エポキシ樹脂;新日鐵住友化学株式会社製のエポトートST-2004、ST-2007、ST-3000(商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱ケミカル株式会社製のjER604、新日鐵住友化学株式会社製のエポトートYH-434等(いずれも商品名)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;株式会社ダイセル製のセロキサイド2021P等(商品名)の脂環式エポキシ樹脂;三菱ケミカル株式会社製のYL-933、ダウケミカル社製のT.E.N.、EPPN-501、EPPN-502等(いずれも商品名)のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;三菱ケミカル株式会社製のYX-4000(いずれも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物;日本化薬株式会社製EBPS-200、DIC株式会社製のEXA-1514(商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;三菱ケミカル株式会社製のjER157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;三菱ケミカル株式会社製のjERYL-931等(商品名)のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;日産化学株式会社製のTEPIC等(いずれも商品名)の複素環式エポキシ樹脂;新日鐵住友化学社製ZX-1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鐵化学株式会社製ESN-190、ESN-360、DIC株式会社製HP-4032D、EXA-4710等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;DIC株式会社製HP-7200、HP-7200H、日本化薬株式会社製XD-1000等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂等が挙げられるが、もちろんこれらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、1種または2種以上を組合せて用いることができる。
上記したエポキシ化合物のなかでも150℃以下の軟化点を有するものを好ましく使用することができる。後記するように、本発明のドライフィルムを用いて積層体を製造する際に、ガラス基板上に樹脂層を形成した後に、ガラス基板と樹脂層との密着性を向上させるために、所定温度で加熱することが好ましいが、このときの加熱温度はエポキシ化合物の軟化点温度以上とすることが好ましい。そのため、エポキシ化合物の軟化点温度が高すぎると、積層体の製造の際に樹脂層中の成分を熱劣化させてしまうことがある。
エポキシ化合物の配合量は、樹脂層の透明性と被着体との密着性の観点から、樹脂層を形成するための樹脂組成物中の不揮発成分に対して1~50質量%であることが好ましく、3~40質量%であることがより好ましい。
<溶剤>
樹脂組成物は、樹脂層の形成性を考慮すると溶媒が含まれていることが好ましい。溶剤としては、ポリイミドとエポキシ化合物を溶解し得るものであれば特に制限なく使用することができるが、ワニスの塗布性や得られる樹脂層の透明性等の観点から、エステル基、エーテル基、ケトン基、水酸基、スルホン基及びスルフィニル基から成る群から選択される少なくとも1種を含む溶媒が好ましい。
エステル基を有する溶媒としては、エステル系溶媒、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、炭酸ジメチルなどが挙げられる。
環状エステル基を有する溶媒としては、ラクトン系溶媒、例えば、γ-ブチロラクトン(GBL)、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、γ-クロトノラクトン、γ-ヘキサノラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、δ-ヘキサノラクトンなどが挙げられる。
エーテル基を有する溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジブチルエーテル、などが挙げられる。
ケトン基を有する溶媒としては、ケトン系溶媒、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。
水酸基を有する溶媒としては、フェノール系溶媒、例えば、m-クレゾールなどが挙げられる。
スルホン基を有する溶媒としては、メチルスルホン、エチルフェニルスルホン、ジエチルスルホン、ジフェニルスルホン、スルホラン、ビスフェノールS、ソラプソン、ダプソン、ビスフェノールAポリスルホン、スルホランなどが挙げられる。
スルフィニル基を有する溶媒としては、スルホキシド系溶媒、例えば、N,N-ジメチルスルホキシド(DMSO)などが挙げられる。
上記で列挙された溶媒以外に、アミド系溶媒、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)などを使用することができる。
<その他の成分>
樹脂組成物には、上記した以外の任意の成分が含まれていてもよく、例えば、ドライフィルムを作製する際のワニスの塗工性を改善する為のレベリング剤、分散剤、界面活性剤、レタデーション調整剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、可塑剤、ワックス類、充填剤、顔料、染料、発泡剤、消泡剤、脱水剤、帯電防止剤、抗菌剤、防カビ剤等が挙げられる。本発明の樹脂組成物は、上記した着色剤のなかでも、ポリイミド由来の黄色味を改善するためにブルーイング剤を含むことが好ましい。
ブルーイング剤は、可視光領域のうち、例えば、橙色から黄色などの波長領域の光を吸収し、色相を調整する添加剤(染料、顔料)であって、例えば、群青、紺青、コバルトブルーなどの無機系の染料や顔料、例えば、フタロシアニン系ブルーイング剤、縮合多環系ブルーイング剤などの有機系の染料や顔料などが挙げられる。ブルーイング剤は、特に限定されないが、耐熱性、耐光性、溶解性の観点からは、縮合多環系ブルーイング剤が好ましく、アントラキノン系ブルーイング剤がより好ましい。ブルーイング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
縮合多環系ブルーイング剤としては、例えばアントラキノン系ブルーイング剤、インジゴ系ブルーイング剤、フタロシアニン系ブルーイング剤が挙げられる。これらのなかでも、耐熱性、耐光性、溶解性の観点から、アントラキノン系ブルーイング剤を含有することが好ましい。
樹脂組成物から樹脂層を形成した際の樹脂層の全光線透過率を高く維持する観点からは、ブルーイング剤の総使用量(配合量)は相対的に少なくする方が好ましく、使用するブルーイング剤の種類も少ない方が好ましい。ブルーイング剤の含有量は、YI値を低減しながら全光線透過率を維持する観点から、樹脂組成物の固形分量に対して、好ましくは5~100ppm、より好ましくは10~70ppmである。
<樹脂層>
樹脂層は、上記したポリイミド、エポキシ化合物および必要に応じて任意の成分を、溶剤に溶解ないし分散させてワニスを調製し、基材上にワニスを塗布して塗布膜を形成した後、塗布膜を乾燥して溶媒を除去することにより形成することができる。塗工工程は、各種の塗工装置を用いて行われることができ、例えば、スピンコート、スリットコート、スロットダイコート及びブレードコートなどの公知の塗工方法を用いてよい。
塗布膜の乾燥工程は、溶剤が揮発する温度であれば特に制限はないが、透明性の高い樹脂層を得る観点からは、60~140℃で30秒~30分間程度であることが好ましい。
樹脂層の厚みは、基材上に塗布するワニスの塗布量によって調整することができるが、本発明においては、ガラス基板との密着性と、積層体とした場合の表面硬度とを両立できる観点からは、5~25μmであることが好ましく、10~20μmであることが好ましい。また、ガラス基板と樹脂層との厚さの総和は、30~135μmであることが好ましく、30~100μmであることがより好ましい。
また、樹脂層は、厚さ50μmの単層膜とした場合に、該単層膜の全光線透過率が88%以上であることが好ましい。全光線透過率が88%以上であることにより、積層体をフレキシブルデバイス用ディスプレイのカバーウィンドウとして好適に使用することができる。全光線透過率は90%以上であることがより好ましい。なお、本明細書において、全光線透過率は、JIS K 7375:2008に準拠して公知の濁度計により測定した値を意味するものとする。
<保護フィルム>
本発明のドライフィルムは、樹脂層の表面に塵等が付着するのを防止するとともに取扱性を向上させる目的で、図2に示すように樹脂層20の、基材10と接する面とは反対の面側に、更に保護フィルム30が設けられていてもよい。
保護フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができるが、保護フィルムと樹脂層との接着力が、基材と樹脂層との接着力よりも小さくなるような材料を選定することが好ましい。また、ドライフィルムの使用時に、保護フィルムを剥離し易くするため、保護フィルムの樹脂層と接する面には上記したような離型処理が施されていてもよい。
保護フィルムの厚さは、特に制限されるものではないが概ね10~150μmの範囲で用途に応じて適宜選択される。
[積層体]
本発明による積層体を、図面を参照しながら説明する。図3~5は、本発明の積層体の一実施形態を模式的に示した概略断面図である。本発明による積層体2は、図3に示すように、ガラス基板40と、ガラス基板40の主面の一方に面40Aに接するように設けられてなる樹脂層20とを備えている。本発明の積層体の一実施形態によれば、積層体2は、図4に示すように、樹脂層の最表面20Aに機能層50を備えていてもよい。また、本発明の積層体の一実施形態によれば、積層体2は、図5に示すように、ガラス基板の他方の主面40B側に支持体60を備えていてもよい。なお、図示はしないが、図5に示す実施形態において、ガラス基板40と支持体60とは、接着剤を介して積層されていてもよい。以下、本発明の積層体を構成する各層について詳述する。
<ガラス基板>
本発明の積層体を構成するガラス基板は、厚さが25~100μmである。25~100μmの厚さを有するガラス基板であれば、耐屈曲性や耐衝撃性を有する積層体とすることができる。ガラス基板の厚さは、製造コストと耐屈曲性や耐衝撃性とを両立できる観点から30~70μmであることが好ましい。
ガラス基板は、上記厚さを有するものであれば特に制限なく使用することができるが、ケイ酸塩ガラスやシリカガラスが好ましく、より好ましくはホウ珪酸ガラス、ソーダライムガラス、アルミノ珪酸塩ガラスである。特に好ましくは、これらガラスの化学強化ガラスまたは無アルカリガラスである。なお、化学強化ガラスは、上記したガラス材料を化学強化処理したものである。化学強化処理は、従来公知の方法によって行うことができる。例えば、大きなイオン半径の金属イオンを含む金属塩(例えば、硝酸カリウム)の融液に、ガラス基板を浸漬することにより、ガラス基板中の小さなイオン半径の金属イオン(典型的には、NaイオンまたはLiイオン)が大きなイオン半径の金属イオンと置換され、その結果、ガラス基板表面に残留圧縮応力を発生させることができる。化学強化ガラスは、非化学強化ガラスと比べて圧縮強度、曲げ強度、耐衝撃性が優れる。また、無アルカリガラスとは、アルカリ成分(アルカリ金属酸化物)が実質的に含まれていないガラスのことであって、具体的には、アルカリ成分の重量比が3000ppm以下のガラスをいう。アルカリ成分の重量比は、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは500ppm以下であり、最も好ましくは300ppm以下である。
ガラス基板の曲げ弾性率は、50~150GPaであることが好ましく、より好ましくは70~100GPaである。なお、本明細書において曲げ弾性率とは、JIS R 1602:1995に準拠して、25℃にて測定した値を意味するものとする。
上記したようなガラス基板は市販のものを使用してもよく、例えば、Dragontrail(登録商標)(AGC株式会社製:材質=アルミノシリケート、シリコン含有、厚さ=70μm)、SCHOTT AS 87 eco(SCHOTT社製:材質=アルミノシリケート、厚さ=25μm、50μm、70μm)、SCHOTT Xensation(登録商標)Up(SCHOTT社製:材質=アルミノシリケート、厚さ=30μm、50μm、70μm)、D263(登録商標)Teco(SCHOTT社製:材質=ホウ珪酸、厚さ=30μm、70μm)、G-Leaf(登録商標)日本電気硝子株式会社製:材質=無アルカリガラス、厚さ=50μm、100μm)等が挙げられる。
<樹脂層>
樹脂層は、上記したドライフィルムを使用することにより形成することできる。以下、本発明のドライフィルムを用いた樹脂層の形成方法を説明する。先ず、ドライフィルムの樹脂層と接するように、ガラス基板の主面の一方に面にドライフィルムを貼り合わせる。ドライフィルムが保護フィルムを備えている場合は、保護フィルムをドライフィルムから剥離し、樹脂層の表面を露出させてからガラス基板にドライフィルムを貼り合わせる。
ガラス基板とドライフィルムとの貼合は、真空ラミネーター等を用いて、加圧および加熱下で貼合することが好ましい。このような真空ラミネーターを使用することにより、ドライフィルムの樹脂層とガラス基板との間に気泡が混入せずに両者を密着させることができる。加圧条件は、0.1~2.0MPa程度であることが好ましく、また、加熱条件は、40~120℃であることが好ましい。
ドライフィルムをガラス基板に貼合した後、ドライフィルムから基材を剥離して、ガラス基板上に樹脂層を形成する。続いて、樹脂層を、エポキシ化合物の軟化点温度以上の温度に加熱することにより、樹脂層とガラス基板との密着性を向上することができる。
<機能層>
上記した樹脂層上に所望により設けられる機能層について説明する。機能層が有する機能は特に限定されず、ハードコート機能、帯電防止機能、防眩機能、低反射機能、反射防止機能、防汚機能、ガスバリア機能、プライマー機能、電磁波遮蔽機能、下塗り機能、紫外線吸収機能、粘着機能、色相調整機能等、フレキシブル表示素子のカバーウィンドウに採用される一般的な機能であってよい。機能層は1種類の機能を有する層であってもよいし、2種以上の機能を兼ね備えた層であってもよい。カバーウィンドウとして使用しやすい観点から、該機能層の少なくとも1つは、ハードコート機能、帯電防止機能、防眩機能、低反射機能、反射防止機能および防汚機能からなる群から選択される少なくとも1つの機能を有する層であることが好ましい。機能層は、1層で複数の機能を有していてもよいし、各機能を有する層を2層以上積層してもよい。2層以上積層する場合、積層する順番はその機能に応じて適宜設定される。
機能層の厚さは、目的とする機能に応じて適宜設定してよいが、積層体の軽量化および光学的均質性を高めやすい観点からは、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。
(ハードコート機能)
ハードコート機能は、光学フィルムの表面に耐傷性、耐薬品性などを付与して光学フィルムを保護する機能である。本発明の光学積層体において、機能層はハードコート機能を有する層(ハードコート層)であってよい。ハードコート層としては、公知のものを適宜採用してよく、例えばアクリル系、エポキシ系、ウレタン系、ベンジルクロライド系、ビニル系等の公知のハードコート層が挙げられる。これらのなかでも光学積層体の広角方向の視認性の低下を抑制し、かつ耐屈曲性を向上させる観点から、アクリル系、ウレタン系、およびそれらの組合せのハードコート層が好ましい。例えば、ハードコート層は、活性エネルギー線硬化性化合物を含有する組成物の硬化物であってよい。活性エネルギー線硬化性化合物は、電子線、紫外線などの活性エネルギー線を照射することにより硬化する性質を有する化合物である。このような活性エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、電子線を照射することにより硬化する電子線硬化性化合物や、紫外線を照射することにより硬化する紫外線硬化性化合物などが挙げられる。これらの化合物は、通常のハードコート層の形成に用いられるハードコート剤の主成分と同様の化合物であり、例えば(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。特に、(メタ)アクリル系樹脂のうち、多官能(メタ)アクリレート系化合物を主成分とするものが好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
多官能(メタ)アクリレート系化合物とは、分子中に少なくとも2個のアクリロイルオキシ基および/またはメタクリロイルオキシ基を有する化合物であり、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ホスファゼン化合物のホスファゼン環に(メタ)アクリロイルオキシ基が導入されたホスファゼン系アクリレート化合物またはホスファゼン系メタクリレート化合物、分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基および水酸基を有するポリオール化合物との反応により得られるウレタン(メタ)アクリレート化合物、分子中に少なくとも2個のカルボン酸ハロゲン化物と少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基および水酸基を有するポリオール化合物との反応により得られるポリエステル(メタ)アクリレート化合物、並びに上記各化合物の2量体、3量体などのようなオリゴマーなどが挙げられる。
これらの化合物は、それぞれ単独または2種以上を混合して用いてよい。なお、上記の多官能(メタ)アクリレート系化合物の他に、少なくとも1種の単官能(メタ)アクリレートを使用してもよい。単官能(メタ)アクリレートとしては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの化合物は単独または2種類以上を混合して用いられる。単官能(メタ)アクリレート系化合物の含有量は、機能層形成用組成物(ハードコート層用塗料)に含まれる化合物の固形分に対して、好ましくは10質量%以下の量である。なお、本明細書において、固形分とは、硬化性組成物に含まれる溶媒を除く、全ての成分を意味する。
機能層には、例えば硬度を調整する目的で、重合性オリゴマーを添加してもよい。このようなオリゴマーとしては、末端(メタ)アクリレートポリメチルメタクリレート、末端スチリルポリ(メタ)アクリレート、末端(メタ)アクリレートポリスチレン、末端(メタ)アクリレートポリエチレングリコール、末端(メタ)アクリレートアクリロニトリル-スチレン共重合体、末端(メタ)アクリレートスチレン-メチル(メタ)アクリレート共重合体などのマクロモノマーが挙げられる。重合性オリゴマーを添加する場合、その含有量は、機能層形成用組成物の固形分に対して、好ましくは5~50質量%である。
活性エネルギー線硬化性化合物は、溶剤と混合された溶液の状態で用いてもよい。活性エネルギー線硬化性化合物やその溶液は、ハードコート剤として市販されているものであってもよい。市販のハードコート剤としては、具体的には、NKハードM101(ウレタンアクリレート化合物、新中村化学株式会社)、NKエステルA-TMM-3L(テトラメチロールメタントリアクリレート、新中村化学株式会社)、NKエステルA-9530(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、新中村化学株式会社)、KAYARAD(登録商標)DPCAシリーズ(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート化合物の誘導体、日本化薬株式会社)、アロニックス(登録商標)M-8560(ポリエステルアクリレート化合物、東亜合成株式会社)、ニューフロンティア(登録商標)TEICA(トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、第一工業製薬株式会社)、PPZ(ホスファゼン系メタクリレート化合物、共栄社化学株式会社)等が例示される。
活性エネルギー線として紫外線や可視光線を用いる場合には、通常、重合開始剤として光重合開始剤が用いられる。光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン、アセトフエノンベンジルケタール、アントラキノン、1-(4-イソプロピルフェニル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、カルバゾール、キサントン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、1,1-ジメトキシデオキシベンゾイン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、チオキサントン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフオリノプロパン-1-オン、トリフェニルアミン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、フルオレノン、フルオレン、ベンズアルデヒド、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、3-メチルアセトフェノン、3,3’,4,4’-テトラtert-ブチルパーオキシカルボニルベンゾフエノン(BTTB)、2-(ジメチルアミノ)-1-〔4-(モルフォリニル)フェニル〕-2-フェニルメチル)-1-ブタノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、ベンジルなどが挙げられる。
また、光重合開始剤は色素増感剤と組合せて用いられてもよい。色素増感剤としては、例えばキサンテン、チオキサンテン、クマリン、ケトクマリンなどが挙げられる。光重合開始剤と色素増感剤との組合せとしては、例えばBTTBとキサンテンとの組合せ、BTTBとチオキサンテンとの組合せ、BTTBとクマリンとの組合せ、BTTBとケトクマリンとの組合せなどが挙げられる。
光重合開始剤を用いる場合、その使用量は、活性エネルギー線硬化性化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上である。使用量が上記範囲にあると十分な硬化速度を得やすい傾向にある。なお、光重合開始剤の使用量は、活性エネルギー線硬化性化合物100質量部あたり、好ましくは10質量部以下である。
ハードコート層の厚さは、適宜設定することができるが、積層体の耐屈曲性、表面硬度および光学的均質性の観点から、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。
ハードコート層を樹脂層の表面に形成する方法としては、例えば活性エネルギー線硬化性化合物(活性エネルギー線硬化性樹脂)を含有するハードコート層形成用組成物を樹脂層の表面に塗布し、活性エネルギー線を照射すればよい。このような組成物は、活性エネルギー線硬化性化合物を必要に応じて添加剤等と混合することにより得ることができる。ハードコート層形成用組成物の硬化物がハードコート層を構成する。
ハードコート層形成用組成物は、溶剤を含むことが好ましく、ハードコート層形成用組成物において、活性エネルギー線硬化性化合物が溶剤で希釈されていることが好ましい。この場合、該組成物は、活性エネルギー線硬化性化合物と表面平滑性等を付与するための各種添加剤(例えばシリコーンオイル等)とを混合後に、得られた混合物を溶剤で希釈して製造してもよいし、活性エネルギー線硬化性化合物を溶剤で希釈後、添加剤を混合して製造してもよいし、活性エネルギー線硬化性化合物と予め溶剤で希釈された添加剤とを混合して製造してもよいし、予め溶剤で希釈された活性エネルギー線硬化性化合物と予め溶剤で希釈された添加剤とを混合して製造してもよい。混合後の組成物はさらに攪拌されてもよい。
塗布を容易にする観点からも、ハードコート層形成用組成物が、適当な溶剤を含有することが好ましい。溶剤としては、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、セロソルブ類などから適宜選択して用いることができる。これらの有機溶剤は、必要に応じて数種類を混合して用いてもよい。ハードコート層形成用組成物を塗工後に加熱して、有機溶剤を蒸発させやすい観点から、溶剤の沸点は好ましくは70℃~200℃の範囲である。溶剤の種類や使用量は、用いる活性エネルギー線硬化性化合物の種類や量、樹脂層の材質、形状、塗布方法、目的とするハードコート層の厚さみなどに応じて適宜選択される。
(帯電防止機能)
帯電防止機能は、積層体の表面の帯電を防止する機能である。本発明の積層体において、機能層は帯電防止機能を有する層(帯電防止層)であってよい。帯電防止層を形成する方法としては、上記ハードコート層形成用組成物に帯電防止剤を添加してハードコート層に帯電防止機能を付与する方法以外に、帯電防止剤を溶剤等で希釈して得た帯電防止層形成用組成物を、樹脂層表面に形成されたハードコート層上に塗布し、必要に応じて乾燥して、単独の膜として形成させる方法が挙げられる。帯電防止剤は、機能層を構成する樹脂(例えば前述した活性エネルギー線硬化性化合物の硬化物)の一部に、帯電防止機能を有する構成単位として含まれていてもよいし、機能層を形成する樹脂中に、添加剤として添加されていてもよい。帯電防止剤を添加剤として添加する場合には、その添加量は、機能層形成用組成物の固形分に対して、好ましくは0.01~20質量%、より好ましくは0.05~10質量%、さらに好ましくは0.1~10質量%である。
(防眩機能)
防眩機能は、光を散乱して反射させることで、外光の映り込みを防止する機能である。本発明の積層体において、機能層は防眩機能を有する層(防眩層)であってよい。防眩層としては、公知の物を適宜採用することができる。例えば、透光性樹脂中に1種類以上の透光性微粒子を含む樹脂組成物を用いて、表面に微細な凹凸形状を有する層を形成させることにより、防眩機能を付与してよい。より具体的には、このような防眩層は、例えば、フィラーとしての透光性微粒子を分散させた透光性樹脂溶液を樹脂層表面に塗布し、透光性微粒子が防眩層の表面における凸形状部分となるように塗布の厚さを調整することで形成できる。なお、本明細書において、「透光性」とは、物質内部での散乱の有無を問わず、光がほぼ透過できることを意味する。
(反射防止機能および低反射機能)
反射防止機能および低反射機能は、外光の反射を防止または低減する機能である。本発明の積層体において、機能層は外光の反射を防止する機能を有する層(反射防止層)であってよいし、外光の反射を低減する機能を有する層(低反射層)であってもよい。反射防止層および低反射層は、単層であっても多層であってもよい。
反射防止層は、低屈折率層を備えていてよい。また、反射防止層は、低屈折率層と、低屈折率層と樹脂層との間に積層された高屈折率層および/または中屈折率層をさらに備える多層構造を有する層であってもよい。反射防止層と樹脂層との間に、上述のハードコート層を設けてもよい。
反射防止層の厚さは、好ましくは0.01~1μm、より好ましくは0.02~0.5μmである。反射防止層としては、反射防止層を設ける樹脂層または他の機能層の屈折率よりも小さい屈折率(例えば1.3~1.45の屈折率)を有する低屈折率層や、無機化合物からなる薄膜の低屈折率層と無機化合物からなる薄膜の高屈折率層とを交互に複数積層した層などが挙げられる。ここで、高屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率よりも大きければよいが、1.60以上であることが好ましい。
低屈折率層を形成する材料は、屈折率の低い材料であれば特に制限されない。例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂(例えば紫外線硬化型アクリル樹脂)等の樹脂材料、樹脂中にコロイダルシリカ等の無機微粒子を分散させたハイブリッド材料、テトラエトキシシラン等の金属アルコキシドを用いたゾル-ゲル材料等が挙げられる。これらの低屈折率層を形成する材料は、重合済みのポリマーであってもよいし、前駆体となるモノマーやオリゴマーであってもよい。また、反射防止層を構成する材料は、反射防止層に防汚機能を付与することができるため、フッ素を含有する化合物を含むことが好ましい。
高屈折率層は、上述の活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物や金属アルコキシド系ポリマー等の透光性樹脂と無機微粒子および/または有機微粒子とを含有する塗工液を塗布した後、塗布膜を必要に応じて硬化させることによって形成することができる。無機微粒子としては、たとえば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化シラン、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化インジウム錫(ITO)などが挙げられる。これらの無機微粒子を含む高屈折率層は、帯電防止機能も兼ね備え得る。
低反射層は、樹脂層または所望により設けられる他の機能層よりも屈折率の低い低屈折率材料で形成された層である。低屈折率層は、上述の活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物や金属アルコキシド系ポリマー等の透光性樹脂および無機微粒子を含有する塗工液を塗布した後、塗布膜を必要に応じて硬化させることよって形成することができる。そのような低屈折率材料として、具体的には、フッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化アルミニウム(AlF)、氷晶石(3NaF・AlFまたはNaAlF)等の無機材料微粒子を、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂等に含有させた無機系低反射材料;フッ素系またはシリコーン系の有機化合物、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等の有機系低反射材料が挙げられる。
<タッチセンサ機能>
樹脂層の表面に透明電極層を形成することにより積層体にタッチセンサ機能を付与することができる。樹脂層または所望により設けられる他の機能層の表面上に、例えば透明電極層をスパッタリング装置で成膜することにより得ることができる。これにより、本発明の積層体をカバーウィンドウに使用した場合に透明電極のようなタッチパネルとすることができる。
<支持体>
本発明の積層体は、ガラス基板の樹脂層を形成する面の反対となる面に支持体を設けることにより、積層体の機械的強度を向上させることができる。光透過性と機械的強度、屈曲性を有する材料であれば特に制限なく使用でき、例えばポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフッ化ビニル、ポリアクリレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、非晶質ポリオレフィン、フッ素系樹脂等の透明樹脂シートを好適に使用することができる。
支持体の厚さは、積層体の用途によって適宜決定してよく、例えば、フレキシブル表示素子のカバーウィンドウとして積層体を使用する場合には、40~200μmであることが好ましく、より好ましくは50~100μmである。
<積層体の用途>
本発明の積層体を用いてフレキシブル表示素子を製造することができる。フレキシブル表示素子としては、有機ELディスプレイ、例えば、ボトムエミッション型フレキシブル有機ELディスプレイ、トップエミッション型フレキシブル有機ELディスプレイなど;またはフレキシブル液晶ディスプレイが挙げられる。本実施形態の積層体をフレキシブル表示素子のカバーウィンドウとして用いる場合、フレキシブル表示素子は光源を備え、この光源の光が本実施形態の積層体を通過してフレキシブル表示素子の外部に出力されるように構成されることが好ましい。本実施形態の積層体をフレキシブル表示素子のカバーウィンドウとして用いる場合、ガラス基板が樹脂層よりも光源側に配置されるように積層体を配置する。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
<ポリイミドの準備>
以下のポリイミド1~6を準備した。
ポリイミド1:
窒素導入管、撹拌装置を備えた500mlセパラブルフラスコに、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB-N)2.0g(0.007モル)1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)3.3g(0.01モル)1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(PAM-E)2.8g(0.01モル)、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシフェニル)]プロパン二無水物(BisDA)15.9g(0.03モル)、安息香酸エチル56g、ピリジン0.47g(0.006モル)、トルエン10gを投入し、窒素雰囲気下、180℃で、途中トルエンを系外に除きながら4時間反応させることにより、30重量%のポリイミド溶液を得た。
得られたポリイミド溶液にDMAC59.5mL、メタノール59.5mL加え、均一になるまで攪拌した。得られた溶液を、イオン交換水300mL中に滴下し、再沈殿を行い、固形のポリイミド1を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーによる重量平均分子量(Mw)は300,000であり、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)で表される多分散度は4.2であった。また、ポリイミド中のフッ素含有量は0%であった。
ポリイミド2:
200mLのガラス製のバイアル瓶に、溶剤N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)60gと2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(TFMB)3.8g(0.012モル)を入れて攪拌し、TFMBをDMAC中に溶解させた。続いて、バイアル瓶内を攪拌しながら、窒素気流下で、3,3’,4,4’-ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物(HBPDA)3.7g(0.012モル)を5分程度かけて投入し、そのまま温度が20~40℃の温度範囲となるように調整しながら6時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリアミド酸溶液を得た。使用したテトラカルボン酸二無水物/芳香族ジアミン化合物のモル比率は1.00であり、ポリアミド酸溶液の濃度は13.0重量%であった。
次いで、ポリアミド酸溶液にイミド化促進剤としてピリジン5.9gを加えて、攪拌しながら30~40℃の温度範囲に保ち、そこにイミド化剤として、無水酢酸7.1g(0.07モル)を約10分間かけてゆっくりと滴下しながら投入し、その後更に液温を30~40℃に保って12時間攪拌を続けて化学イミド化反応を行って、ポリイミド溶液を得た。
得られたイミド化剤およびイミド化促進剤を含むポリイミド溶液にDMAC59.5mL、メタノール59.5mL加え、均一になるまで攪拌した。得られた溶液を、イオン交換水300mL中に滴下し、再沈殿を行い、固形のポリイミド2を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーによる重量平均分子量(Mw)は300,000であり、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)で表される多分散度は4.0であった。また、ポリイミド中のフッ素含有量は21%であった。
ポリイミド3:
200mLのガラス製のバイアル瓶に、溶剤N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)60gと2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(TFMB)3.8g(0.012モル)を入れて攪拌し、TFMBをDMAC中に溶解させた。続いて、バイアル瓶内を攪拌しながら、窒素気流下で、ジフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物(s-ODPA)3.7g(0.012モル)を5分程度かけて投入し、そのまま温度が20~40℃の温度範囲となるように調整しながら6時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリアミド酸溶液を得た。使用したテトラカルボン酸二無水物/芳香族ジアミン化合物のモル比率は1.00であり、ポリアミド酸溶液の濃度は10.0重量%であった。
次いで、ポリアミド酸溶液にイミド化促進剤としてピリジン5.9gを加えて、攪拌しながら30~40℃の温度範囲に保ち、そこにイミド化剤として、無水酢酸7.1g(0.07モル)を約10分間かけてゆっくりと滴下しながら投入し、その後更に液温を30~40℃に保って12時間攪拌を続けて化学イミド化反応を行って、ポリイミド溶液を得た。
得られたイミド化剤およびイミド化促進剤を含むポリイミド溶液にDMAC59.5mL、メタノール59.5mL加え、均一になるまで攪拌した。得られた溶液を、イオン交換水300mL中に滴下し、再沈殿を行い固形のポリイミド3を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーによる重量平均分子量(Mw)は250,000であり、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)で表される多分散度は4.3であった。また、ポリイミド中のフッ素含有量は20%であった。
ポリイミド4:
200mLのガラス製のバイアル瓶に、溶剤N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)59.5gと3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3, 3’-DDS)4.7g(0.188モル)を入れて攪拌し、33’-DDSをDMAC中に溶解させた。続いて、バイアル瓶内を攪拌しながら、窒素気流下で、テトラカルボン酸二無水物であるジフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物(s-ODPA)5.8g(0.188モル)を5分程度かけて投入し、そのまま温度が20~40℃の温度範囲となるように調整しながら6時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリアミド酸溶液を得た。使用したテトラカルボン酸二無水物/芳香族ジアミン化合物のモル比率は1.00であり、ポリアミド酸溶液の濃度は14.9重量%であった。
次いで、ポリアミド酸溶液にイミド化促進剤としてピリジン5.9gを加えて、攪拌しながら30~40℃の温度範囲に保ち、そこにイミド化剤として、無水酢酸7.1g(0.07モル)を約10分間かけてゆっくりと滴下しながら投入し、その後更に液温を30~40℃に保って12時間攪拌を続けて化学イミド化反応を行って、ポリイミド溶液を得た。
得られたイミド化剤およびイミド化促進剤を含むポリイミド溶液にDMAC59.5mL、メタノール59.5mL加え、均一になるまで攪拌した。得られた溶液を、イオン交換水300mL中に滴下し、再沈殿を行い固形のポリイミド4を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーによる重量平均分子量(Mw)は210,000であり、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)で表される多分散度は4.5であった。また、ポリイミド中のフッ素含有量は0%であった。
ポリイミド5:
200mLのガラス製のバイアル瓶に、溶剤N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)60gと2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(TFMB)3.8g(0.012モル)を入れて攪拌し、TFMBをDMAC中に溶解させた。続いて、バイアル瓶内を攪拌しながら、窒素気流下で、4,4’-(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2,2-ジイル)ジフタル酸二無水物(6FDA)5.3g(0.012モル)を5分程度かけて投入し、そのまま温度が20~40℃の温度範囲となるように調整しながら6時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリアミド酸溶液を得た。使用したテトラカルボン酸二無水物/芳香族ジアミン化合物のモル比率は1.00であり、ポリアミド酸溶液の濃度は10.0重量%であった。
次いで、ポリアミド酸溶液にイミド化促進剤としてピリジン5.9gを加えて、攪拌しながら30~40℃の温度範囲に保ち、そこにイミド化剤として、無水酢酸7.1g(0.07モル)を約10分間かけてゆっくりと滴下しながら投入し、その後更に液温を30~40℃に保って12時間攪拌を続けて化学イミド化反応を行って、ポリイミド溶液を得た。
得られたイミド化剤およびイミド化促進剤を含むポリイミド溶液にDMAC59.5mL、メタノール59.5mL加え、均一になるまで攪拌した。得られた溶液を、イオン交換水300mL中に滴下し、再沈殿を行い固形のポリイミド5を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーによる重量平均分子量(Mw)は210,000であり、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)で表される多分散度は4.2であった。また、ポリイミド中のフッ素含有量は33%であった。
ポリイミド6:
ガラス製の200 mLのバイアル瓶に、溶剤N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)59.5gとフルオロ基を有する芳香族ジアミン化合物である2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(TFMB)3.819g(0.012モル)とシリコーン変性ジアミンであるX-22-1660B-3(信越シリコーン製)1.105g(0.0003モル)を入れて攪拌し、TFMBをDMAC中に溶解させた。続いて、バイアル瓶内を攪拌しながら、窒素気流下で、テトラカルボン酸二無水物である4,4’-(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2,2-ジイル)ジフタル酸二無水物(6FDA)5.576g(0.013モル)を投入し、そのまま温度が20~40℃の温度範囲となるように調整しながら6時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリアミド酸溶液を得た。使用したテトラカルボン酸二無水物/芳香族ジアミン化合物のモル比率は1.03であり、ポリアミド酸溶液の濃度は15重量%であった。
次いで、ポリアミド酸溶液にイミド化促進剤としてピリジン3.9gを加えて、攪拌しながら30~40℃の温度範囲に保ち、そこにイミド化剤として、無水酢酸5.1g(0.05モル)をゆっくりと滴下しながら投入し、その後更に液温を30~40℃に保って12時間攪拌を続けて化学イミド化反応を行って、ポリイミド溶液を得た。
得られたイミド化剤およびイミド化促進剤を含むポリイミド溶液にDMAC59.5mL、メタノール59.5mL加え、均一になるまで攪拌した。得られた溶液を、イオン交換水300mL中に滴下し、再沈殿を行い固形のポリイミド6を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーによる重量平均分子量(Mw)は300,000であり、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)で表される多分散度は4.2であった。また、ポリイミド中のフッ素含有量は28%であった。
<エポキシ化合物>
以下のエポキシ化合物1~4を準備した。
エポキシ1:jER1001(三菱ケミカル株式会社製、エポキシ当量400~500g/eq、分子量900、軟化温度64℃)
エポキシ2:XD1000(日本化薬株式会社製、エポキシ当量245~260g/eq、分子量990~1500、軟化温度68~78℃)
エポキシ3:TEPIC-S(日産化学株式会社製、エポキシ当量100g/eq以下、分子量297、軟化温度100~120℃)
エポキシ4:エポフレンドAT501(株式会社ダイセル製、エポキシ当量850~1250g/eq以下、分子量180,000、軟化温度100℃以上)
<その他の樹脂>
エポキシ化合物との比較のため、下記の3種の化合物を準備した。
スチレン-アクリル系共重合体:ARUFON UC3900(東亜合成株式会社製)
ポリビニルブチラール化合物:エスレックBL-1(積水化学工業株式会社製)
ポリエステル化合物:バイロン220(東洋紡株式会社製)
[実施例1~8、比較例1~9]
<ドライフィルムの作製>
下記表1に示した組成にしたがって各成分を溶剤(ジメチルアセトアミド)に混合することにより各ワニスを調製した。溶剤は、ポリイミド100部に対して溶剤が333質量部となるよう調製した。次いで、得られたワニスを、表面が離型処理されているポリエステルフィルム(TN-200、東洋紡株式会社製)に、乾燥後の厚みが15μmとなるように塗布し、80℃で30分間の乾燥を行うことにより樹脂層を形成し、各ドライフィルムを作製した。
なお、表1中の青色染料は、Plast Blue 8514(有本化学工業株式会社製)である。
各ドライフィルムの樹脂層面を、縦15cm×横11cm×厚み70μmのガラス基板(DragonTrail(登録商標)、AGC株式会社製)の表面にラミネートにより貼り合わせ、ドライフィルムからポリエステルフィルムを剥離した後、150℃で30分間の加熱処理を行うことにより、積層体を得た。
なお、実施例4~6のドライフィルムについては、ドライフィルムの樹脂層面をガラス基板に、真空加圧式ラミネーター(MVLP-500、株式会社名機製作所社製)を用いて上下熱板温度90℃、圧力0.5MPaにてラミネートし、ドライフィルムからポリエステルフィルムを剥離した後、200℃で30分間の加熱処理を行うことにより、積層体を得た。
[比較例10および11]
下記表1に示した組成にしたがって各成分を溶剤(ジメチルアセトアミド)に混合することにより各ワニスを調製した。溶剤は、ポリイミド100部に対して溶剤が333質量部となるよう調製した。次いで、得られたワニスを、縦15cm×横11cm×厚み70μmのガラス基板(DragonTrail(登録商標)、AGC株式会社製)に、乾燥後の厚みが15μmとなるように塗布し、150℃で30分間の乾燥を行うことにより樹脂層を形成することにより、積層体を得た。
<密着性の評価>
得られた各積層体の表面を、デジタルマイクロスコープ(VHX-5000、株式会社キーエンス製)を用いて、ガラス基板側から観察した。無作為に選んだ積層体の任意箇所1cm角において、確認された気泡の直径を評価した。評価基準は以下のとおりとした。
◎:気泡直径0mm
○:気泡直径0mm~2mm
×:気泡直径2mm以上
評価結果は下記表1および2に示されるとおりであった。なお、表1において「-」の表記は、評価を行わなかったことを意味する。
<クロスカット剥離試験評価>
得られた各積層体について、ASTM D 3559-Bに準拠したクロスカット剥離試験評価を行った。評価結果は下記表1および2に示されるとおりであった。
<積層体の反り評価>
加熱乾燥して得られた各積層体を1時間室温で放冷し、その後、積層板をガラス基板側が下面となるように平坦な机の上に置き、積層体の4隅の反りあがり値(机からガラス基板までの距離)を定規で測定し、その平均を反り値とした。評価基準は以下のとおりとした。
◎:8mm未満
○:8mm以上10mm未満
×:10mm以上
××:評価不可
評価結果は下記表1および2に示されるとおりであった。
<ヘイズの評価>
得られた各積層体について、JIS K 7136:2000に準拠して、ヘーズメーター(NDH 7000 II、日本電色工業株式会社製)を用いてヘーズ(%)を測定した。評価基準は以下のとおりとした。
〇:ヘイズが2.0%以下
×:ヘイズが2.0%超
評価結果は下記表1および2に示されるとおりであった。なお、積層体に使用したガラス基板自体のヘイズ値は0.35%であった。
<耐衝撃性評価>
加熱乾燥して得られた各積層体を1時間室温で放冷し、その後、積層板をガラス基板側が下面となるように平坦な机の上に置き、積層体に、直径30mm、重さ110gの鉄球を落下させた。鉄球落下後のガラスを目視で確認し、ひび割れが確認された時の落下高さを評価した。評価基準は以下のとおりとした。
◎:50cm以上
○:40cm以上50cm未満
△:30cm以上40cm未満
×:30cm未満
なお、積層体に使用したガラス基板の耐衝撃性を評価したところ×であった。
<表面硬度評価>
積層体の樹脂層側の鉛筆硬度をJIS-K5600-5-4:1999に準拠して測定し、塗膜に傷痕が生じなかった最も高い鉛筆の硬度を鉛筆硬度とした。評価結果は表1および2に示されるとおりであった。なお、積層体に使用したガラス基板の鉛筆硬度は9Hであった。
Figure 2022053257000013
Figure 2022053257000014
1 :ドライフィルム
2 :積層体
10:基材
20:樹脂層
30:保護フィルム
40:ガラス基板
50:機能層
60:支持体

Claims (10)

  1. 基材と、前記基材上に剥離可能に設けられた樹脂層とを備えるドライフィルムであって、
    前記樹脂層は、フッ素含有量が25質量%以下であるポリイミドと、エポキシ当量が1000g/eq以下であり、かつ分子量が10,000以下であるエポキシ化合物と、を含むことを特徴とする、ドライフィルム。
  2. 前記ポリイミドは、厚さ50μmの単層膜とした場合に、該単層膜のYI値が5.0以下である、請求項1に記載のドライフィルム。
  3. 前記ポリイミドは、厚さ50μmの単層膜とした場合に、該単層膜のヘイズが2.0以下である、請求項1または2に記載のドライフィルム。
  4. 前記エポキシ化合物は、150℃以下の軟化点を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のドライフィルム。
  5. 前記エポキシ化合物が、前記樹脂層における固形分合計量に対して1~50質量%含まれる、請求項1~4のいずれか一項に記載のドライフィルム。
  6. 前記樹脂層は、ブルーイング剤をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のドライフィルム。
  7. ガラス基板と、前記ガラス基板の主面の一方に面に接するように設けられてなる樹脂層とを備えた積層体であって、
    前記樹脂層は、請求項1~6のいずれか一項に記載のドライフィルムの樹脂層からなる、積層体。
  8. 前記ガラス基板が化学強化ガラスである、請求項7に記載の積層体。
  9. フレキシブル表示素子のカバーウィンドウとして使用される、請求項7または8に記載の積層体。
  10. ガラス基板と、前記ガラス基板の主面の一方に面に接するように設けられてなる樹脂層とを備えた積層体を製造する方法であって、
    請求項1~6のいずれか一項に記載のドライフィルムを、ガラス基板の主面の一方に面に、ドライフィルムの樹脂層とガラス基板の主面とが接するように貼り合わせ、
    前記ドライフィルムから前記基材を剥離して、前記ガラス基板上に樹脂層を形成し、
    前記樹脂層を、前記エポキシ化合物の軟化点温度以上の温度に加熱する、
    ことを含む、積層体の製造方法。
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