JP2022051070A - コアシェル型酸素吸放出材料、その製造方法、それを用いた排ガス浄化用触媒及び排ガス浄化方法 - Google Patents

コアシェル型酸素吸放出材料、その製造方法、それを用いた排ガス浄化用触媒及び排ガス浄化方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2022051070A
JP2022051070A JP2020157338A JP2020157338A JP2022051070A JP 2022051070 A JP2022051070 A JP 2022051070A JP 2020157338 A JP2020157338 A JP 2020157338A JP 2020157338 A JP2020157338 A JP 2020157338A JP 2022051070 A JP2022051070 A JP 2022051070A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
core
alumina
ceria
zirconia
solid solution
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2020157338A
Other languages
English (en)
Other versions
JP7307710B2 (ja
Inventor
直樹 熊谷
Naoki Kumagai
彰 森川
Akira Morikawa
真秀 三浦
Masahide Miura
英理子 吉本
Eriko Yoshimoto
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Toyota Central R&D Labs Inc
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Toyota Central R&D Labs Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp, Toyota Central R&D Labs Inc filed Critical Toyota Motor Corp
Priority to JP2020157338A priority Critical patent/JP7307710B2/ja
Publication of JP2022051070A publication Critical patent/JP2022051070A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7307710B2 publication Critical patent/JP7307710B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Abstract

【課題】触媒に流入する排ガスがリーンガスからリッチガスに切り替わった場合でも、優れたNOx浄化性能を発現するコアシェル型酸素吸放出材料を提供する。【解決手段】コアシェル型酸素吸放出材料は、パイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末からなるコアと該コアの表面に配置されているアルミナ系酸化物からなるシェルとを備えており、アルミナ系酸化物の被覆率=CAl/(CAl+CCe+CZr+CM)×100により求められるアルミナ系酸化物の被覆率が80%以上であり、シェルの平均厚さが2~75nmであり、CuKαを用いたX線回折測定により得られるX線回折パターンから求められる2θ=14.5°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比が2%以上であり、2θ=35.2°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比が0.2%以下である。【選択図】図9

Description

本発明は、表面がアルミナ系酸化物で被覆されたセリア-ジルコニア系複合酸化物を含有するコアシェル型酸素吸放出材料、その製造方法、それを用いた排ガス浄化用触媒及び排ガス浄化方法に関する。
従来から、様々な金属酸化物を含有する複合酸化物が排ガス浄化用触媒用の担体や助触媒等として利用されてきた。このような複合酸化物中の金属酸化物としては、雰囲気中の酸素分圧に応じて酸素の吸放出が可能である(酸素吸放出能を持つ)ことから、セリアが好適に用いられてきた。そして、近年では、セリアを含有する様々な種類の複合酸化物が研究されており、種々のセリア-ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法が開示されている。
また、前記セリア-ジルコニア系複合酸化物は高温(例えば、1000℃以上)では熱劣化し易いといった問題があることから、主に耐熱性を更に向上させることを目的として、前記セリア-ジルコニア系複合酸化物からなるコアと、その表面の少なくとも一部を覆うシェルとからなるコアシェル型の複合酸化物も研究されている。
例えば、特開2017-186225号公報(特許文献1)には、パイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末からなるコアと、該コアの少なくとも一部の表面に配置されているアルミナ系酸化物からなるシェルとを備えるコアシェル型酸化物材料が開示されている。また、特開2018-150207号公報(特許文献2)には、パイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末からなるコアと、該コアの少なくとも一部の表面に配置されているアルミナ系酸化物からなるシェルとを備え、前記セリア-ジルコニア系固溶体粉末の体積基準の粒度分布における累積体積が50%となる二次粒子径D50が0.2~8.0μmであり、X線光電子分光分析により測定される、前記シェルの表面から深さ3nmの領域におけるAl元素の平均濃度が25~75at%であるコアシェル型酸化物材料が開示されている。さらに、特開2019-217464号公報(特許文献3)には、パイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末からなるコアと、該コアの少なくとも一部の表面に配置されている、αアルミナを含有するアルミナ系酸化物からなるシェルとを備えており、大気中、1100℃で5時間加熱した後の、CuKαを用いたX線回折測定により得られるX線回折パターンから求められる2θ=14.5°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比〔I(14/29)値〕が2%以上であり、2θ=35.2°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比〔I(35/29)値〕が0.03~1.2%であるコアシェル型酸素吸放出材料が開示されている。そして、特許文献1~3には、このようなコアシェル型酸化物材料やコアシェル型酸素吸放出材料によって、高温に曝された場合であっても、優れた酸素吸放出能を有し、かつ、優れたNOx浄化性能を発現する排ガス浄化用触媒が得られることも記載されている。
特開2017-186225号公報 特開2018-150207号公報 特開2019-217464号公報
しかしながら、特許文献1~3に記載のコアシェル型酸化物材料やコアシェル型酸素吸放出材料に貴金属を接触させた排ガス浄化用触媒においては、触媒に流入する排ガスがリーンガスからリッチガスに切り替わった場合に、NOx浄化性能が低下するという問題があることを本発明者らは見出した。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、触媒に流入する排ガスがリーンガスからリッチガスに切り替わった場合でも、優れたNOx浄化性能を発現する排ガス浄化用触媒を得ることが可能なコアシェル型酸素吸放出材料、その製造方法、それを用いた排ガス浄化用触媒及び排ガス浄化方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、パイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末からなるコアの表面を、回転CVD法を適用してアルミナ系酸化物で被覆することによって、得られたコアシェル型酸素吸放出材料に貴金属が接触している触媒が、これに流入する排ガスがリーンガスからリッチガスに切り替わった場合でも、優れたNOx浄化性能を発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料は、パイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末からなるコアと該コアの表面に配置されているアルミナ系酸化物からなるシェルとを備えており、
下記式:
アルミナ系酸化物の被覆率=CAl/(CAl+CCe+CZr+C)×100
(式中、CAl、CCe、CZr及びCは粒子表面のX線光電子分光分析により求められる金属元素の濃度を表し、CAlはAl濃度、CCeはCe濃度、CZrはZr濃度、CはAl、Ce及びZr以外の添加金属元素Mの濃度を表す)
により求められるアルミナ系酸化物の被覆率が80%以上であり、
前記シェルの平均厚さが2~75nmであり、
CuKαを用いたX線回折測定により得られるX線回折パターンから求められる2θ=14.5°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比〔I(14/29)値〕が2%以上であり、
CuKαを用いたX線回折測定により得られるX線回折パターンから求められる2θ=35.2°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比〔I(35/29)値〕が0.2%以下である、
ことを特徴とするものである。
このような本発明のコアシェル型酸素吸放出材料においては、前記セリア-ジルコニア系固溶体粉末の比表面積が1.0m/g以下であることが好ましい。また、前記アルミナ系酸化物がθアルミナを含むものであることが好ましい。
本発明のコアシェル型酸素吸放出材料の製造方法は、セリア-ジルコニア系固溶体を加圧成形して得られる成型体に1500℃以上の温度で還元処理を施した後、粉砕処理を施して、パイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末を得る工程と、
前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末を投入した反応炉を水平方向を回転軸として回転させることによって前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末を攪拌しながら、前記反応炉内で、前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末と気化したアルミナ前駆体とを酸化性雰囲気下で接触せしめて前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末の表面にアルミナ系酸化物を付着させる工程と、
表面に前記アルミナ系酸化物が付着しているセリア-ジルコニア系固溶体粉末を焼成して、前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末からなるコアと該コアの表面に配置されているアルミナ系酸化物からなるシェルとを備えているコアシェル型酸素吸放出材料を得る工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
また、本発明の排ガス浄化用触媒は、このような本発明のコアシェル型酸素吸放出材料と、該コアシェル型酸素吸放出材料に接触している貴金属とを備えていることを特徴とするものである。さらに、本発明の排ガス浄化方法は、このような本発明の排ガス浄化用触媒に、窒素酸化物を含有する排ガスを接触せしめることを特徴とする方法である。
ここで、本発明における回折線の強度比〔I(14/29)値〕及び〔I(35/29)値〕とは、それぞれ、測定対象のコアシェル型酸素吸放出材料について、CuKαを用いたX線回折測定により得られるX線回折パターンから求められる、2θ=29°の回折線のピーク強度I(29)に対する2θ=14.5°の回折線のピーク強度I(14)の割合〔I(14/29)値:I(14)/I(29)×100[%]〕、並びに、2θ=29°の回折線のピーク強度I(29)に対する2θ=35.2°の回折線のピーク強度I(35)の割合〔I(35/29)値:I(35)/I(29)×100[%]〕である。前記X線回折測定の方法としては、X線回折装置(例えば、株式会社リガク製「UltimaIV」)を用いて、CuKα線をX線源とし、管電圧:40V、管電流:30A、走査速度:10°/分の条件で測定する方法を採用する。なお、回折線の強度(ピーク強度)を求める際には、各回折線の強度の値から、バックグラウンド値として2θ=10°~12°の平均回折線強度を差し引いて計算する。
また、2θ=14.5°の回折線は規則相(κ相)の(111)面に帰属する回折線であり、2θ=29°の回折線は規則相の(222)面に帰属する回折線とセリア-ジルコニア系固溶体(CZ固溶体)の立方晶相(111)面に帰属する回折線とが重なったものである。したがって、両者の回折線の強度比として算出されるI(14/29)値は、規則相の維持率(存在率)を示す指標として規定される。また、完全な規則相には、酸素が完全充填されたκ相(CeZr)と、酸素が完全に抜けたパイロクロア相(CeZr)とがあり、それぞれのPDFカード(κ相はPDF2:01-070-4048、パイロクロア相はPDF2:01-075-2694)から計算したκ相のI(14/29)値は4%、パイロクロア相のI(14/29)値は5%である。
さらに、規則相、すなわち、セリウムイオンとジルコニウムイオンとにより形成される規則配列構造を有する結晶相は、CuKαを用いた前記X線回折測定により得られるX線回折パターンの2θ角が14.5°、28°、37°、44.5°及び51°の位置にそれぞれピークを有する結晶の配列構造(φ’相(κ相と同一の相)型の規則配列相:蛍石構造の中に生ずる超格子構造)である。なお、ここにいう「ピーク」とは、ベースラインからピークトップまでの高さが30cps以上のものをいう。
また、2θ=35.2°の回折線はαアルミナ(Al)相(α相)の(104)面に帰属する回折線である。したがって、上記の2θ=29°の回折線との強度比として算出されるI(35/29)値は、測定対象のコアシェル型酸素吸放出材料におけるα相の維持率(存在率)を示す指標として規定される。さらに、α相、すなわち、αアルミナの結晶相は、CuKαを用いた前記X線回折測定により得られるX線回折パターンの2θ角が35.2°、43.3°及び25.6°の位置にそれぞれピークを有する結晶の配列構造である。また、ここにいう「ピーク」とは、ベースラインからピークトップまでの高さが30cps以上のものをいう。
なお、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料に貴金属を接触させた排ガス浄化用触媒が、これに流入する排ガスがリーンガスからリッチガスに切り替わった場合でも、優れたNOx浄化性能を発現する理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、従来のセリア-ジルコニア系固溶体粉末からなる酸素吸放出材料に貴金属を接触させた排ガス浄化用触媒においては、貴金属がセリア-ジルコニア系固溶体粉末に接触しているため、これらの相互作用により、触媒に流入する排ガスがリーンガスからリッチガスに切り替わった場合におけるNOx浄化性能(リッチNOx過渡浄化性能)が低下する。
一方、特許文献1~3に記載のコアシェル型酸化物材料やコアシェル型酸素吸放出材料においては、セリア-ジルコニア系固溶体粉末からなるコアの少なくとも一部の表面にアルミナ系酸化物からなるシェルが形成されているため、このようなコアシェル型酸化物材料やコアシェル型酸素吸放出材料に貴金属を接触させた排ガス浄化用触媒においては、貴金属がアルミナ系酸化物からなるシェルに接触しているため、貴金属(特に、ロジウム)とセリア-ジルコニア系固溶体粉末(特に、セリア)との接触による相互作用が抑制され、リッチNOx過渡浄化性能の低下が抑制される。しかしながら、特許文献1~3に記載のコアシェル型酸化物材料やコアシェル型酸素吸放出材料は、蒸発乾固法により、アルミナ系酸化物からなるシェルを形成しているため、溶媒乾燥時にアルミナ系酸化物の前駆体が偏析・凝集し、セリア-ジルコニア系固溶体粉末からなるコアの表面をアルミナ系酸化物からなる薄膜状のシェルによって完全に被覆することが困難であり、アルミナ系酸化物からなるシェルの被覆率が必ずしも十分に高いものではなかった。このため、貴金属(特に、ロジウム)とセリア-ジルコニア系固溶体粉末(特に、セリア)との接触を十分に防ぐことができず、貴金属(特に、ロジウム)とセリア-ジルコニア系固溶体粉末(特に、セリア)とが接触した部分において、リッチNOx過渡浄化性能の低下が起こると推察される。
他方、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料は、回転CVD法により、アルミナ系酸化物からなるシェルを形成しているため、セリア-ジルコニア系固溶体粉末からなるコアの表面をアルミナ系酸化物からなる薄膜状のシェルによって高い被覆率で被覆することができる。このため、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料に貴金属を接触させた排ガス浄化用触媒においては、貴金属(特に、ロジウム)とセリア-ジルコニア系固溶体粉末(特に、セリア)との接触を十分に防ぐことができ、貴金属(特に、ロジウム)とセリア-ジルコニア系固溶体粉末(特に、セリア)との接触による相互作用が十分に抑制され、優れたリッチNOx過渡浄化性能が発現すると推察される。
本発明によれば、触媒に流入する排ガスがリーンガスからリッチガスに切り替わった場合でも、優れたNOx浄化性能を発現する排ガス浄化用触媒を得ることが可能となる。
回転式CVD装置を示す概略図である。 実施例1~2及び比較例1~5で得られたコアシェル型酸素吸放出材料粉末のアルミナの被覆率を示すグラフである。 実施例1~2及び比較例1~5で得られたコアシェル型酸素吸放出材料粉末のアルミナ薄膜の平均厚さを示すグラフである。 実施例1で得られたコアシェル型酸素吸放出材料粉末を示す透過型電子顕微鏡写真である。 実施例2で得られたコアシェル型酸素吸放出材料粉末を示す透過型電子顕微鏡写真である。 実施例1で得られたコアシェル型酸素吸放出材料粉末の電子線回折パターンを示す図である。 実施例2で得られたコアシェル型酸素吸放出材料粉末の電子線回折パターンを示す図である。 比較例1で得られたコアシェル型酸素吸放出材料粉末の電子線回折パターンを示す図である。 実施例1~2及び比較例1~5で得られた触媒のリッチNOx過渡浄化率を示すグラフである。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
先ず、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料について説明する。本発明のコアシェル型酸素吸放出材料は、パイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末からなるコアと該コアの表面に配置されているアルミナ系酸化物からなるシェルとを備えており、
下記式:
アルミナ系酸化物の被覆率=CAl/(CAl+CCe+CZr+C)×100
(式中、CAl、CCe、CZr及びCは粒子表面のX線光電子分光分析により求められる金属元素の濃度を表し、CAlはAl濃度、CCeはCe濃度、CZrはZr濃度、CはAl、Ce及びZr以外の添加金属元素Mの濃度を表す)
により求められるアルミナ系酸化物の被覆率が80%以上であり、
前記シェルの平均厚さが2~75nmであり、
CuKαを用いたX線回折測定により得られるX線回折パターンから求められる2θ=14.5°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比〔I(14/29)値〕が2%以上であり、
CuKαを用いたX線回折測定により得られるX線回折パターンから求められる2θ=35.2°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比〔I(35/29)値〕が0.2%以下のものである。
本発明のコアシェル型酸素吸放出材料は、CeとZrとが規則的に配列しているパイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末からなるコアを備えるものである。このような規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末からなるコアを備えるコアシェル型酸素吸放出材料は、蛍石構造を有するセリア-ジルコニア系固溶体よりもバルク内の酸素拡散速度が大きいため、酸素吸放出能(酸素吸放出速度(OSC-r))に優れている。なお、本発明にかかるセリア-ジルコニア系固溶体がパイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有することは、上記のCuKαを用いたX線回折測定により上記の規則相に特有のピークが認められることで確認することができる。
本発明のコアシェル型酸素吸放出材料においては、前記規則相の維持率(存在率)、すなわち前述のI(14/29)値が、2%以上であることが必要であり、3%以上であることがより好ましく、3.3%以上であることが更に好ましい。I(14/29)値が前記下限未満になると、規則相の維持率が低いため、高温に曝された場合に酸素吸蔵放出能が低下する。なお、I(14/29)値の上限として特に制限はないが、PDFカード(01-075-2694)から計算したパイロクロア相のI(14/29)値が上限となるという観点から、5%以下であることが好ましい。
また、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料においては、大気中、1100℃で5時間加熱した後の、CuKαを用いたX線回折測定により得られるX線回折パターンから求められる2θ=28.5°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比〔I(28/29)値〕が、8%以下であることが好ましく、6%以下であることがより好ましく、4%以下であることが更に好ましい。I(28/29)値が前記上限を超えると、高温に曝された場合に酸素吸放出能が低下する傾向にある。なお、I(28/29)値の下限としては特に制限はなく、より小さい値となることが好ましい。
ここで、2θ=28.5°の回折線はCeO単体の(111)面に帰属する回折線であり、2θ=29°の回折線のピーク強度(I29)に対する2θ=28.5°の回折線のピーク強度(I28)の割合〔I(28/29)値:I28/I29×100[%]〕を算出することにより、これを複合酸化物からCeOが分相している程度を示す指標として規定することができる。前記X線回折測定の方法としては、上述のとおりである。
また、このような規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末におけるCeとZrとの含有比率としては、モル比(Ce:Zr)で、35:65~65:35であることが好ましく、45:55~55:45であることがより好ましい。前記モル比(Ce:Zr)が前記範囲から逸脱すると、高温に曝された際、規則相が再配列によって蛍石構造に変化し、酸素吸放出能が低下する傾向にある。
このような規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末からなるコアには、Ce以外の希土類元素やTi等の添加元素が更に含有されていてもよい。このような添加元素が含有されると、高温に曝された場合の酸素吸放出能の低下がより抑制される傾向にある。前記添加元素としては、Sc、Y、La、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Yb、Lu、及びTi等が挙げられ、中でも、高温に曝された場合の酸素吸放出能の低下が更に抑制されるという観点から、Y、La、Pr、Ndが好ましく、Prがより好ましい。なお、これらの添加元素は1種が単独で含有されていても2種以上が含有されていてもよい。また、前記添加元素が含有される場合、該元素は、通常、酸化物として前記コアに含有されており、さらに、前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末に、固溶、分散等した状態で存在していることが好ましく、前記添加元素による効果を確実に得るためには、固溶していることがより好ましい。
本発明にかかるコアにおいて、前記添加元素が含有される場合、その含有量としては、セリア元素、ジルコニア元素及び該添加元素の合計に対する該添加元素の割合(元素換算)で、20mol%以下であることが好ましく、10mol%以下であることがより好ましく、5mol%以下であることが更に好ましい。前記添加元素の含有量が前記上限を超えると、規則相の耐熱性が低下し、高温に曝された場合に酸素吸放出能が低下する傾向にある。なお、前記添加元素の含有量の下限としては特に制限がないが、前記添加元素による効果を確実に得るためには、0.1mol%以上であることが好ましい。
本発明にかかるコアを形成する前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末においては、体積基準の粒度分布における累積体積が50%となる二次粒子径D50が0.1~30μmであることが好ましい。前記二次粒子径D50が前記下限未満になると、パイロクロア相構造及びκ相構造が熱劣化により蛍石構造に変化してCeOの酸素利用効率が減少するため、酸素吸放出能が低下する傾向にある。他方、前記二次粒子径D50が前記上限を超えると、相対的に比表面積が低下する上に、粒子内部からの酸素の拡散距離が長くなるため、酸素吸放出能、特に、酸素吸放出速度(OSC-r)が低下する傾向にある。このような前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末の前記二次粒子径D50としては、より高い酸素吸放出能が発現するという観点から、1~15μmであることがより好ましく、3~10μmであることが更に好ましい。なお、前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末の前記二次粒子径D50は、例えば、粒度分布測定装置を用いて動的光散乱法により、前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末の体積基準の粒度分布曲線を求め、この粒度分布曲線における累積体積が50%となる粒子径として求めることができる。
また、前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末の比表面積としては、特に制限がないが、1.0m/g以下であることが好ましく、0.1~0.9m/gであることがより好ましく、0.3~0.8m/gであることが更に好ましくい。前記比表面積が前記下限未満になると、酸素吸放出能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粒子径が小さな粒子が増加し、高温耐久性が低下する傾向にある。なお、このような比表面積は吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。
本発明のコアシェル型酸素吸放出材料は、このような前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末からなるコアと、このコアの表面に配置されているアルミナ系酸化物からなるシェルとを備えるものである。
本発明のコアシェル型酸素吸放出材料においては、前記α相の維持率(存在率)、すなわち、前述のI(35/29)値が、0.2%以下であることが必要であり、0.1%以下であることがより好ましく、0.05%以下であることが更に好ましく、0.03%以下であることが特に好ましく、0.02%以下であることが最も好ましい。I(35/29)値が前記上限を超えると、αアルミナによって酸素吸放出能が低下する。なお、I(35/29)値の下限としては特に制限はなく、より小さい値となることが好ましく、0%が最も好ましい。
また、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料においては、下記式:
アルミナ系酸化物の被覆率=CAl/(CAl+CCe+CZr+C)×100
(式中、CAl、CCe、CZr及びCは粒子表面のX線光電子分光分析により求められる金属元素の濃度を表し、CAlはAl濃度、CCeはCe濃度、CZrはZr濃度、CはAl、Ce及びZr以外の添加金属元素Mの濃度を表す)
により求められるアルミナ系酸化物の被覆率が80%以上であることが必要であり、82%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、88%以上であることが更に好ましい。前記アルミナ系酸化物の被覆率が前記下限未満になると、コアシェル型酸素吸放出材料に貴金属が接触している触媒において、貴金属(特に、ロジウム)がコア中のセリアと接触しやすく、貴金属(特に、ロジウム)とセリアとの相互作用により、触媒に流入する排ガスがリーンガスからリッチガスに切り替わった場合におけるNOx浄化性能(以下、「リッチNOx過渡浄化性能」という)が低下する。なお、アルミナ系酸化物の被覆率の上限としては100%以下が好ましい。なお、本発明において、前記Al濃度CAl、前記Ce濃度CCe、前記Zr濃度CZr、Al、Ce及びZr以外の添加金属元素Mの濃度Cは、コアシェル型酸素吸放出材料のX線光電子分光(XPS)スペクトルを、例えば、X線光電子分光分析装置を用い、単色化されたAlKα(1486.6eV)をX線源とし、光電子取出角:45°、分析領域:200μmφ、チャージアップ補正:Zr3d 182.2eV(ZrO)の条件で測定し、得られたXPSスペクトルに基づいて、コアシェル型酸素吸放出材料の表面(シェルの表面)から深さ3nmの領域(約200μmφ)に存在する元素を定量することにより求めることができる。
さらに、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料において、シェルの平均厚さとしては2~75nmであることが必要であり、2~50nmであることが好ましく、3~30nmであることがより好ましく、3~20nmであることが更に好ましい。シェルの平均厚さが前記下限未満になると、コアシェル型酸素吸放出材料に貴金属が接触している触媒において、貴金属(特に、ロジウム)がコア中のセリアと接触しやすく、貴金属(特に、ロジウム)とセリアとの相互作用により、リッチNOx過渡浄化性能が低下する。他方、前記上限を超えると、シェルによって酸素の拡散が阻害され、酸素吸放出能が低下する傾向にある。なお、本発明において、シェルの平均厚さは以下の方法により求めることができる。すなわち、先ず、常温硬化性エポキシ樹脂を用いてコアシェル型酸素吸放出材料をエポキシ樹脂硬化物に包埋させた試料を作製し、この試料を集束イオンビーム(FIB)加工又はミクロトーム加工により薄片化する。得られた薄片の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型透過電子顕微鏡(STEM)により観察し、TEM像又はSTEM像を得るとともに、元素分布解析を行う。次に、得られた元素分布解析結果に基づいて、TEM像又はSTEM像においてアルミナ系酸化物が存在する領域を特定し、この領域をシェルとする。このシェルの厚さの測定点を、複数のTEM像又はSTEM像において、無作為に合計10点~20点抽出し、各測定点のシェルの厚さを測定して、それらの平均値を求め、これをシェルの平均厚さとする。
本発明のコアシェル型酸素吸放出材料において、前記アルミナ系酸化物からなるシェルの含有量(好ましくはアルミナの含有量)としては、コア100質量部に対して0.1~20質量部であることが好ましく、0.5~15質量部であることがより好ましい。前記シェルの含有量が前記下限未満になると、コアシェル型酸素吸放出材料に貴金属が接触している触媒において、貴金属(特に、ロジウム)がコア中のセリアと接触しやすく、貴金属(特に、ロジウム)とセリアとの相互作用により、リッチNOx過渡浄化性能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、アルミナ系酸化物が凝集しやすくなり、これによって酸素の拡散が阻害され、酸素吸放出能が低下する傾向にある。
本発明にかかるアルミナ系酸化物としては、θアルミナが好ましい。θアルミナを含有することによって、酸素吸放出能が向上する。なお、θアルミナが含有されることは、透過型電子顕微鏡を用いた電子線回折測定において、θアルミナに由来する得られる電子線回折パターンが認められることで確認することができる。
また、このようなアルミナ系酸化物からなるシェルには、希土類元素(好ましくはCe以外の希土類元素)が更に含有されていてもよい。このような希土類元素がシェルに含有されると、シェルの高温耐久性がより向上する傾向にある。また、前記希土類元素としては、Sc、Y、La、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Yb、及びLu等が挙げられ、中でも、シェルの高温耐久性が更に向上するという観点から、Laが好ましい。なお、これらの希土類元素は1種が単独で含有されていても2種以上が含有されていてもよい。また、前記希土類元素が含有される場合、該元素は、通常、酸化物としてシェルに含有されている。
本発明にかかるシェルにおいて、前記希土類元素が含有される場合、その含有量としては、Al元素及び該希土類元素の合計に対する該希土類元素の割合(元素換算)で、10mol%以下であることが好ましく、5mol%以下であることがより好ましく、2mol%以下であることが更に好ましい。前記希土類元素の含有量が前記上限を超えると、アルミネート相が形成され、シェルの比表面積の低下等、高温耐久性が低下する傾向にある。なお、前記希土類元素の含有量の下限としては特に制限がないが、前記希土類元素による効果を確実に得るためには、0.1mol%以上であることが好ましい。
また、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料の比表面積としては特に制限はないが、1.0m/g以下であることが好ましく、0.1~0.9m/gであることがより好ましく、0.3~0.8m/gであることが更に好ましくい。前記比表面積が前記下限未満になると、酸素吸放出能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粒子径が小さな粒子が増加し、高温耐久性が低下する傾向にある。なお、このような比表面積は吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。
次に、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料の製造方法について説明する。本発明のコアシェル型酸素吸放出材料は、例えば、以下の本発明のコアシェル型酸素吸放出材料の製造方法、すなわち、
セリア-ジルコニア系固溶体を加圧成形して得られる成型体に1500℃以上の温度で還元処理を施した後、粉砕処理を施して、パイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末を得る工程(還元処理工程)と、
前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末を投入した反応炉を水平方向を回転軸として回転させることによって前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末を攪拌しながら、前記反応炉内で、前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末と気化したアルミナ前駆体とを酸化性雰囲気下で接触せしめて前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末の表面にアルミナ系酸化物を付着させる工程(回転CVD工程)と、
前記アルミナ系酸化物が表面に付着しているセリア-ジルコニア系固溶体粉末を焼成して、前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末からなるコアと該コアの表面に配置されているアルミナ系酸化物からなるシェルとを備えているコアシェル型酸素吸放出材料を得る工程(焼成工程)と、
を含む製造方法により製造することができる。
本発明のコアシェル型酸素吸放出材料を製造する際に用いられるセリア-ジルコニア系固溶体としては、CeとZrとの含有比率がモル比(Ce:Zr)で35:65~65:35であるものが好ましく、45:55~55:45であるものがより好ましい。モル比(Ce:Zr)が前記範囲から逸脱するセリア-ジルコニア系固溶体を用いると、得られるコアシェル型酸素吸放出材料が高温に曝された場合に規則相が再配列により蛍石構造に変化し、酸素吸放出能が低下する傾向にある。
このようなセリア-ジルコニア系固溶体には、Ce以外の希土類元素やTi等の添加元素が更に含有されていてもよい。このような添加元素が含有されると、得られるコアシェル型酸素吸放出材料が高温に曝された場合の酸素吸放出能の低下がより抑制される傾向にある。また、このような添加元素としては、コアシェル型酸素吸放出材料のコアに含有されていてもよいものとして例示した前記添加元素が挙げられ、中でも、得られるコアシェル型酸素吸放出材料が高温に曝された場合の酸素吸放出能の低下が更に抑制されるという観点から、Y、La、Pr、Ndが好ましく、Prがより好ましい。なお、これらの添加元素は1種が単独で含有されていても2種以上が含有されていてもよい。また、前記添加元素が含有される場合、該元素は、通常、酸化物としてコアに含有されており、さらに、前記セリア-ジルコニア系固溶体に、固溶、分散等した状態で存在していることが好ましく、前記添加元素による効果を確実に得るためには、固溶していることがより好ましい。
このようなセリア-ジルコニア系固溶体には、Ce以外の希土類元素やTi等の添加元素が更に含有されていてもよい。このような添加元素が含有されると、得られるコアシェル型酸素吸放出材料が高温に曝された場合の酸素吸放出能の低下がより抑制される傾向にある。また、このような添加元素としては、コアシェル型酸素吸放出材料のコアに含有されていてもよいものとして例示した前記添加元素が挙げられ、中でも、得られるコアシェル型酸素吸放出材料が高温に曝された場合の酸素吸放出能の低下が更に抑制されるという観点から、Y、La、Pr、Ndが好ましく、Prがより好ましい。なお、これらの添加元素は1種が単独で含有されていても2種以上が含有されていてもよい。また、前記添加元素が含有される場合、該元素は、通常、酸化物としてコアに含有されており、さらに、前記セリア-ジルコニア系固溶体に、固溶、分散等した状態で存在していることが好ましく、前記添加元素による効果を確実に得るためには、固溶していることがより好ましい。
前記セリア-ジルコニア系固溶体において、前記添加元素が含有される場合、その含有量としては、セリア元素、ジルコニア元素及び該添加元素の合計に対する該添加元素の割合(元素換算)で、20mol%以下が好ましく、10mol%以下がより好ましく、5mol%以下が更に好ましい。前記添加元素の含有量が前記上限を超えると、規則相の耐熱性が低下し、高温に曝された場合に酸素吸放出能が低下する傾向にある。なお、前記添加元素の含有量の下限として特に制限はないが、前記添加元素による効果を確実に得るためには、0.1mol%以上が好ましい。
このようなセリア-ジルコニア系固溶体は、例えば、以下の共沈法により製造することができる。すなわち、セリウムの塩(例えば、硝酸塩)及びジルコニウムの塩(例えば、硝酸塩)、必要に応じて前記添加元素の塩(例えば、硝酸塩)及び界面活性剤等を含有する水溶液を用い、アンモニアの存在下で共沈殿物を生成させ、得られた共沈殿物を分離回収して洗浄した後、乾燥処理、焼成処理、粉砕処理を施すことによって、粉末状のセリア-ジルコニア系固溶体を得ることができる。なお、前記水溶液中の各原料の含有量は、得られるセリア-ジルコニア系固溶体中の各成分の含有量が所定量となるように適宜調整する。
本発明のコアシェル型酸素吸放出材料を製造する場合には、先ず、このようなセリア-ジルコニア系固溶体を加圧成形する。加圧成形時の圧力としては400~3500kgf/cm(39~343MPa)が好ましく、500~3000kgf/cm(49~294MPa)がより好ましい。成形圧力が前記範囲から逸脱すると、得られるコアシェル型酸素吸放出材料が高温に曝された場合に酸素吸放出能が低下する傾向にある。なお、このような加圧成形の方法としては特に制限はなく、静水圧プレス等の公知の加圧成形方法を適宜採用できる。
次に、得られた加圧成型体に1500℃以上の温度で還元処理を施す(還元処理工程)。これにより、本発明にかかるパイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体が形成される。このような規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体は、表面の熱安定性に優れており、緻密で固相反応が進行しにくい構造を有している。還元処理温度が前記下限未満になると、規則相の安定性が低く、得られるコアシェル型酸素吸放出材料が高温に曝された場合に酸素吸放出能が低下する。また、規則相の安定性が向上し、得られるコアシェル型酸素吸放出材料が高温に曝された場合の酸素吸放出能の低下が確実に抑制されるという観点から、還元処理温度としては1600℃以上が好ましい。また、還元処理時間としては0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。還元処理時間が前記下限未満になると、規則相の安定性が低く、得られるコアシェル型酸素吸放出材料が高温に曝された場合に酸素吸放出能が低下する傾向にある。なお、還元処理温度及び還元処理時間の上限としては特に制限はないが、エネルギー効率や副生成物の低減の観点から、それぞれ、2000℃以下(より好ましくは1900℃以下)、24時間以下(より好ましくは10時間以下)が好ましい。
還元処理の方法としては、還元雰囲気下で前記加圧成型体に所定の温度で還元処理を施すことができる方法であれば特に制限はなく、例えば、(i)真空加熱炉内に前記加圧成型体を設置して真空引きした後に、炉内に還元性ガスを流入させて炉内の雰囲気を還元雰囲気とし、所定の温度で加熱して還元処理を施す方法、(ii)黒鉛製の炉を用いて炉内に前記加圧成型体を設置して真空引きした後、所定の温度で加熱して炉体や加熱燃料等から発生するCOやHC等の還元性ガスにより炉内の雰囲気を還元雰囲気として還元処理を施す方法や、(iii)活性炭を充填したルツボ内に前記加圧成型体を設置し、所定の温度で加熱して活性炭等から発生するCOやHC等の還元性ガスによりルツボ内の雰囲気を還元雰囲気として還元処理を施す方法等が挙げられる。
このような還元雰囲気を達成するために用いる還元性ガスとしては特に制限はなく、CO、HC、H、その他の炭化水素ガス等の還元性ガスが挙げられる。また、このような還元性ガスの中でも、より高温で還元処理を実施した場合に炭化ジルコニウム(ZrC)等の複生成物が生成されることを防止するという観点から、炭素(C)を含まないものが好ましい。このような炭素(C)を含まない還元性ガスを用いると、ジルコニウム等の融点に近いより高い温度での還元処理が可能となるため、規則相の安定性をより十分に向上させることが可能となる。
本発明のコアシェル型酸素吸放出材料の製造方法においては、前記還元処理の後に、前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体に酸化処理を更に施すことが好ましい。これにより、還元処理中に失われた酸素が補填され、酸化物材料としての安定性が向上する傾向にある。このような酸化処理の方法としては特に制限はなく、例えば、酸化雰囲気下(例えば、大気中)において前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体を加熱処理する方法を好適に採用することができる。また、このような酸化処理の際の加熱温度としては特に制限はないが、300~800℃程度が好ましい。さらに、前記酸化処理の際の加熱時間も特に制限はないが、0.5~5時間程度が好ましい。
次に、このようにして得られた前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体に粉砕処理を施し、前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末を得る。粉砕処理の方法としては特に制限はなく、例えば、湿式粉砕法、乾式粉砕法、凍結粉砕法等が挙げられる。前記粉砕の条件としては、体積基準の粒度分布における累積体積が50%となる二次粒子径D50が所定の範囲内となるように粉砕することが好ましい。
次に、回転CVD法により、上記のようにして得られた前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末とアルミナ前駆体とを酸化性雰囲気下で接触せしめて前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末の表面にアルミナ系酸化物を付着させる(回転CVD工程)。
図1には、前記回転CVD工程で用いられる回転CVD装置1の概略図を示す。前記回転CVD装置1は、水平方向(重力方向に対して垂直な方向)を回転軸として回転可能な回転式成膜室11と、前駆体気化部12と、前記前駆体気化部12内に設置された前駆体ホルダー13と、加熱炉14とを備えるものである。前記前記回転式成膜室11には前駆体供給管15及び酸素含有ガス供給管16が接続されている。また、前記回転式成膜室11の内部には、ブレード17が設置されており、前記回転式成膜室11が回転することによって、前記回転式成膜室11内の粉末が攪拌される。
具体的には、先ず、前記回転式CVD装置1の回転式成膜室11内に前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末を投入する。また、前記前駆体ホルダー13にアルミナ前駆体Aを投入する。ここで用いられるアルミナ前駆体としては、CVD法(化学気相成長法)によるアルミナ系酸化物薄膜の形成に用いることが可能なものであれば特に制限はなく、例えば、有機アルミニウム錯体(トリス(ジピバロイルメタナト)アルミニウム(Al(DPM))、トリス(2,4-ペンタンジオナト)アルミニウム(アルミニウムアセチルアセトナト、Al(acac))、トリメチルアルミニウム(TMA)等)が挙げられる。これらのアルミナ前駆体は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらのアルミナ前駆体の中でも、入手しやすく、大気中での安定性が高く、取扱いやすく、気化分解温度が低いという観点から、Al(DPM)、Al(acac)が好ましく、Al(DPM)がより好ましい。
アルミナ前駆体の投入量としては、前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末100質量部に対して0.1~20質量部であることが好ましく、0.5~15質量部であることがより好ましい。アルミナ前駆体の投入量が前記下限未満になると、コアシェル型酸素吸放出材料におけるシェルの含有量が不足し、コアシェル型酸素吸放出材料に貴金属が接触している触媒において、貴金属(特に、ロジウム)がコア中のセリアと接触しやすく、貴金属(特に、ロジウム)とセリアとの相互作用により、リッチNOx過渡浄化性能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、コアシェル型酸素吸放出材料におけるシェルの含有量が過剰となり、アルミナ系酸化物が凝集しやすく、これによって酸素の拡散が阻害され、酸素吸放出能が低下する傾向にある。
次に、前記前駆体気化部12にキャリアガスを供給しながら前記前駆体ホルダー13内のアルミナ前駆体を加熱して気化させる。アルミナ前駆体の加熱温度としては、160~220℃が好ましく、170~200℃がより好ましく、180~195℃が更に好ましい。アルミナ前駆体の加熱温度が前記下限未満になると、アルミナ前駆体の気化速度が遅くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、アルミナ前駆体の気化速度が速くなりすぎてコーティングムラが多くなる傾向にある。また、前記キャリアガスとしては、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスが挙げられる。キャリアガスの流量としては、5~100sccmが好ましく、5~60sccmがより好ましく、6~50sccmが更に好ましい。
次に、このようにして気化したアルミナ前駆体を前記キャリアガスとともに、前記前駆体供給管15を通して前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末が投入された前記回転式成膜室11に供給し、また、酸素含有ガス(酸素ガス又は酸素と不活性ガスの混合ガス)を、前記気化したアルミナ前駆体とは独立に、前記酸素含有ガス供給管16を通して前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末が投入された前記回転式成膜室11に供給する。このとき、前記回転式成膜室11を水平方向を回転軸として回転させながら、前記気化したアルミナ前駆体と前記酸素含有ガスとを前記回転式成膜室11に供給することによって、前記回転式成膜室11内の前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末を攪拌しながら、前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末と前記気化したアルミナ前駆体とを酸化性雰囲気下で接触させることができる。これにより、前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末の表面に前記アルミナ前駆体を付着させながら、前記アルミナ前駆体をアルミナ系酸化物に変換することができ、前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末の表面に前記アルミナ系酸化物を付着させることができる。なお、前記アルミナ前駆体は、前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末の表面に付着する直前に前記アルミナ系酸化物に変換されてもよいし、付着と同時に変換されてもよいし、付着した後(好ましくは直後)に変換されてもよい。
前記酸素含有ガス中の酸素濃度は、100%であっても100%未満であってもよいが、前記回転式成膜室11内の酸素と不活性ガスとの体積比(酸素/不活性ガス)が好ましくは1/10~5/1、より好ましくは1/5~5/1、更に好ましくは1/2~5/1、特に好ましくは1/1~5/1となるように、前記キャリアガス及び後述する酸素含有ガスの流量を考慮して設定する。前記回転式成膜室11内の酸素と不活性ガスとの体積比が前記下限未満になると、アルミナ前駆体の酸化反応が阻害され、十分なアルミナ系酸化物からなるシェルが形成されにくい傾向にあり、他方、前記上限を超えると、前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末の表面にアルミナ前駆体が到達する前に、アルミナ前駆体が酸化され、アルミナ系酸化物からなる均一なシェルが形成されにくい傾向にある。また、不活性ガスとしては、アルゴンガス、窒素ガス等が挙げられる。
また、前記酸素含有ガスの流量は、前記回転式成膜室11内の酸素と不活性ガスとの体積比が前記範囲内となるように、前記キャリアガスの流量及び前記酸素含有ガス中の酸素濃度を考慮して設定されるが、1~300sccmであることが好ましく、20~250sccmであることがより好ましく、24~200sccmであることが更に好ましい。酸素含有ガスの流量が前記下限未満になると、前記回転式成膜室11内において成膜に適した酸素濃度を達成できず、十分なアルミナ系酸化物からなるシェルが形成されにくい傾向にあり、他方、前記上限を超えると、前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末の表面にアルミナ前駆体が到達する前に、アルミナ前駆体が酸化され、アルミナ系酸化物からなる均一なシェルが形成されにくい傾向にある。
前記回転式成膜室の回転数としては、10~60rpmが好ましく、20~45rpmがより好ましく、25~30rpmが更に好ましい。成膜室の回転数が前記下限未満になると、前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末の浮遊時間が短くなり、アルミナ系酸化物からなるシェルの厚さが薄くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末が凝集しやすくなり、アルミナ系酸化物からなる均一なシェルを形成することが困難となる傾向にある。
このようにして、表面に前記アルミナ前駆体が付着した前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末を酸化性雰囲気下で加熱することによって、前記アルミナ前駆体をアルミナ系酸化物に変換し、表面に前記アルミナ系酸化物が付着した前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末が得られる。
前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末の加熱温度(成膜温度)としては、400~1100℃が好ましく、600~1000℃がより好ましく、800~1000℃が更に好ましい。成膜温度が前記下限未満になると、アルミナ系酸化物からなるシェルを安定して形成できない場合があり、他方、前記上限を超えると、アルミナの結晶化が進行し、多孔性を損なう傾向にある。
また、前記回転式成膜室内の圧力(成膜時の全圧)としては、50~2000Paが好ましく、100~1000Paがより好ましく、500~1000Paが更に好ましい。前記成膜時の全圧が前記下限未満になると、前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉の表面に供給される酸素及びアルミナ前駆体の濃度が低下し、アルミナ系酸化物からなるシェルの形成速度が遅くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、アルミナ前駆体の配管詰まりが起こりやすくなる傾向にある。
成膜時間としては、30~240分間が好ましく、60~180分間がより好ましく、60~120分間が更に好ましい。成膜時間が前記下限未満になると、アルミナ系酸化物からなるシェルの厚さが薄くなりすぎる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、シェルを構成するアルミナ系酸化物が凝集しやすくなる傾向にある。
次に、このようにして、得られた表面に前記アルミナ系酸化物が付着した前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末を焼成する(焼成工程)。これにより、前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末からなるコアと、このコアの表面に配置されているアルミナ系酸化物からなるシェルとを備えている本発明のコアシェル型酸素吸放出材料が得られる。
焼成温度としては、300~1100℃が好ましく、500~900℃がより好ましい。焼成温度が前記下限未満になると、安定したシェルが形成しにくい傾向にあり、他方、前記上限を超えると、αアルミナが形成され、酸素吸放出能が低下する傾向にある。また、焼成時間は特に制限はないが、2~10時間であることが好ましい。
次に、本発明の排ガス浄化用触媒について説明する。本発明の排ガス浄化用触媒は、前記本発明のコアシェル型酸素吸放出材料と、このコアシェル型酸素吸放出材料に接触している貴金属とを備えるものである。このような本発明の排ガス浄化用触媒は、触媒に流入する排ガスがリーンガスからリッチガスに切り替わった場合でも、優れたNOx浄化性能(リッチNOx過渡浄化性能)を発現するものである。
本発明の排ガス浄化用触媒において、前記貴金属としては、優れたNOx浄化性能が得られるという観点から、Rh、Pd、Ptが好ましく、Rh、Pdがより好ましく、Rhが特に好ましい。本発明の排ガス浄化用触媒において、このような貴金属は、前記コアシェル型酸素吸放出材料と接触していれば、その形態は特に制限されず、前記コアシェル型酸素吸放出材料の表面に直接貴金属を担持して接触させてもよいが、操作が簡便であるという観点から、前記コアシェル型酸素吸放出材料と、貴金属を担持した他の酸化物材料とを混合して接触させてもよい。
本発明の排ガス浄化用触媒は、ペレット状のものを反応管等に充填して使用してもよいが、実用性の観点から、ハニカム基材の細孔の内壁に、本発明の排ガス浄化用触媒からなる層とアルミナを含有する触媒層とを形成したハニカム触媒として使用することが好ましい。また、このようなハニカム触媒のうち、高温や高流速ガスに曝された場合であっても優れた酸素吸放出能を有し、かつ、優れたNOx浄化性能を発現するという観点から、ハニカム基材の細孔の内壁に形成された貴金属及びアルミナを含有する触媒下層と、この触媒下層の上に形成された本発明の排ガス浄化用触媒からなる触媒上層とを備えるものが好ましく、前記触媒上層が本発明のコアシェル型酸素吸放出材料と貴金属を担持したジルコニアとの混合物からなるものがより好ましい。
次に、本発明の排ガス浄化方法について説明する。本発明の排ガス浄化方法は、前記本発明の排ガス浄化用触媒に、窒素酸化物を含有する排ガスを接触せしめるものである。本発明の排ガス浄化用触媒に前記排ガスを接触させる方法としては、特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、内燃機関から排出されるガスが流通する排ガス管内に上記本発明の排ガス浄化用触媒を配置することにより、排ガス浄化用触媒に対して内燃機関からの排ガスを接触させる方法を採用してもよい。
本発明の排ガス浄化方法において用いられる上記本発明の排ガス浄化用触媒は、優れたリッチNOx過渡浄化性能を有するものであるため、触媒に流入する排ガスがリーンガスからリッチガスに切り替わった場合でも、優れたNOx浄化性能を発揮させることが可能であり、例えば、前記本発明の排ガス浄化用触媒を用いて自動車等の内燃機関からの排ガスを浄化する場合において、排ガスがリーンガスからリッチガスに切り替わっても、前記排ガス中に含まれるNOx等の有害ガスを十分に浄化することが可能となる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で使用したセリア-ジルコニア-プラセオジム複合酸化物粉末は以下の方法により調製した。
(調製例1)
セリウムとジルコニウムとプラセオジムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム]:[プラセオジム])で45:54:1であるセリア-ジルコニア系固溶体粉末を以下のようにして調製した。すなわち、先ず、CeO換算で28質量%の硝酸セリウム水溶液442gと、ZrO換算で18質量%のオキシ硝酸ジルコニウム水溶液590gと、Pr11換算で1.2gとなる量の硝酸プラセオジムを含む水溶液100gと、含有されるセリウムの1.1倍モル量の過酸化水素を含む過酸化水素水197gとを、中和当量に対して1.2倍当量のアンモニアを含有する水溶液1217gに添加して共沈物を生成させ、得られた共沈物に遠心分離を施し、イオン交換水で洗浄した。次に、得られた共沈物を110℃で10時間以上乾燥した後、大気中、400℃で5時間焼成してセリウムとジルコニウムとプラセオジムとの固溶体(CeO-ZrO-Pr11固溶体)を得た。その後、前記固溶体を、篩分けにより粒径が75μm以下となるように粉砕機(アズワン株式会社製「ワンダーブレンダー」)を用いて粉砕し、前記セリア-ジルコニア-プラセオジム固溶体粉末を得た。
次に、このセリア-ジルコニア-プラセオジム固溶体粉末20gを、ポリエチレン製のバッグ(容量:0.05L)に詰め、内部を脱気した後、前記バッグの口を加熱してシールした。続いて、静水圧プレス装置(日機装株式会社製「CK4-22-60」)を用いて、前記バッグに対して2000kgf/cm(196MPa)の圧力(成型圧力)で1分間、静水圧プレス(CIP)成形を行い、セリア-ジルコニア-プラセオジム固溶体粉末の成型体を得た。成型体のサイズは、縦4cm、横4cm、平均厚み7mm、質量約20gとした。
次いで、得られた成型体(2枚)を、活性炭70gを充填したルツボ(内容積:直径8cm、高さ7cm)内に配置し、蓋をした後、高速昇温電気炉に入れ、1000℃まで1時間かけて昇温し、さらに、1700℃まで4時間かけて昇温した後、1700℃(還元処理温度)で5時間加熱した。その後、1000℃まで4時間かけて冷却した後、自然放冷により室温まで冷却して還元焼成物を得た。
次に、この還元焼成物を大気中、500℃の温度条件で5時間加熱して酸化し、複合酸化物におけるセリウムとジルコニウムとプラセオジムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム]:[プラセオジム])で45:54:1であるセリア-ジルコニア-プラセオジム複合酸化物を得た。このセリア-ジルコニア-プラセオジム複合酸化物を、体積基準の粒度分布における累積体積50%となる二次粒子径D50が10μm以下となるように、粉砕機(アズワン株式会社製「ワンダーブレンダー」)を用いて粉砕し、セリア-ジルコニア-プラセオジム複合酸化物粉末(以下、「CZP粉末」と略す。)を得た。このCZP粉末の比表面積は0.6m/gであった。なお、前記体積基準の粒度分布は、粒度分布測定装置(日機装株式会社製「レーザー回折・散乱粒度分布測定装置MT3300EX」)を用いて動的光散乱法により測定した。また、前記CZP粉末の比表面積は、全自動比表面積測定装置(マイクロデータ社製「MicroSorp4232システム3 SSA分析計」を用いて、前処理温度250℃で窒素吸脱着等温線を測定し、得られた窒素吸脱着等温線に基づいてBET法により求めた。
(比較調製例1)
セリウムとジルコニウムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム])で45.5:54.5であるセリア-ジルコニア固溶体粉末を以下のようにして調製した。すなわち、先ず、CeO換算で28質量%の硝酸セリウム水溶液442gと、ZrO換算で18質量%のオキシ硝酸ジルコニウム水溶液590gと、含有されるセリウムの1.1倍モル量の過酸化水素を含む過酸化水素水197gとを、中和当量に対して1.2倍当量のアンモニアを含有する水溶液1217gに添加して共沈物を生成させ、得られた共沈物に遠心分離を施し、イオン交換水で洗浄した。次に、得られた共沈物を110℃で10時間以上乾燥した後、大気中、400℃で5時間焼成してセリウムとジルコニウムとの固溶体(CeO-ZrO固溶体)を得た。その後、前記固溶体を、篩分けにより粒径が75μm以下となるように粉砕機(アズワン(株)製「ワンダーブレンダー」)を用いて粉砕し、さらに、体積基準の粒度分布における累積体積50%となる二次粒子径D50が10μmとなるように前記粉砕機で粉砕してセリア-ジルコニア複合酸化物粉末(以下、「CZ粉末」と略す。)を得た。なお、前記体積基準の粒度分布は、粒度分布測定装置(日機装株式会社製「レーザー回折・散乱粒度分布測定装置MT3300EX」)を用いて動的光散乱法により測定した。
(実施例1)
図1に示した回転式CVD装置(株式会社東栄科学産業製)を用いて、調製例1で得られたCZP粉末の表面にアルミナを付着させた。具体的には、先ず、前記回転式CVD装置1の回転式成膜室11内に前記CZP粉末5.00gを投入した。また、前記回転式CVD装置1の前駆体気化部12の前駆体ホルダー13にアルミナ前駆体Aとしてトリス(ジピバロイルメタナト)アルミニウム(Al(DPM)、株式会社豊島製作所製)5.20gを投入した。前記前駆体気化部12にキャリアガスとしてアルゴンガスを流量6sccmで供給しながら前記前駆体ホルダー13内のAl(DPM)を195℃に加熱してAl(DPM)を気化させ、気化したAl(DPM)を前記アルゴンガスとともに、前駆体供給管15を通して、内部が700℃に加熱され、圧力が500Paに制御され、かつ、水平方向を回転軸として回転数25rpmで回転している前記回転式成膜室11に供給した。また、この回転式成膜室11には、成膜室内の酸素とアルゴンとの体積比(酸素/アルゴン)が4/1となるように、酸素ガス(酸素濃度100%)も同時に酸素含有ガス供給管16を通して流量24sccmで供給した。これらにより、前記CZP粉末と気化したAl(DPM)とが酸化性雰囲気下で接触し、前記Al(DPM)は前記CZP粉末の表面に付着するとともに、アルミナに変換された。この操作を120分間継続して、アルミナ薄膜が表面に付着したCZP粉末を得た。その後、このアルミナ薄膜が表面に付着したCZP粉末を大気中、500℃で5時間焼成して、前記CZP粉末からなるコアの表面にアルミナ薄膜からなるシェルが形成されたコアシェル型酸素吸放出材料粉末を得た。このコアシェル型酸素吸放出材料粉末におけるアルミナの担持量は、前記CZP粉末100質量部に対して13質量部であった。
(実施例2)
Al(DPM)の量を0.60gに、酸素ガスの流量を200sccmに、アルゴンガスの流量を50sccmに、前記前駆体ホルダー13内のAl(DPM)の加熱温度を200℃に、前記回転式成膜室11内の温度を880℃に、それぞれ変更した以外は実施例1と同様にして、前記CZP粉末からなるコアの表面にアルミナ薄膜からなるシェルが形成されたコアシェル型酸素吸放出材料粉末を調製した。このコアシェル型酸素吸放出材料粉末におけるアルミナの担持量は、前記CZP粉末100質量部に対して0.5質量部であった。
(比較例1)
硝酸アルミニウム3.66gとカルボン酸キレート剤3.76gとを含有する水溶液50mlに4級アミン9.6gを含有する水溶液150mlを添加してアルミナ前駆体水溶液を調製した。このアルミナ前駆体水溶液に、調製例1で得られたCZP粉末100gを投入し、これを攪拌しながら加熱して蒸発乾固させた。得られた乾燥物を大気中、500℃で5時間焼成して、前記CZP粉末からなるコアの表面にアルミナ薄膜からなるシェルが形成されたコアシェル型酸素吸放出材料粉末を得た。このコアシェル型酸素吸放出材料粉末におけるアルミナの担持量は、前記CZP粉末100質量部に対して0.5質量部であった。
(比較例2)
硝酸アルミニウムの量を7.32gに、カルボン酸キレート剤の量を7.52gに、4級アミンの量を19.2gに、それぞれ変更した以外は比較例1と同様にして、前記CZP粉末からなるコアの表面にアルミナ薄膜からなるシェルが形成されたコアシェル型酸素吸放出材料粉末を得た。このコアシェル型酸素吸放出材料粉末におけるアルミナの担持量は、前記CZP粉末100質量部に対して1.0質量部であった。
(比較例3)
硝酸アルミニウム9水和物29.4gをイオン交換水100gに溶解させ、さらに、25%アンモニア水20gを添加して水酸化アルミニウムゲルを調製した。この水酸化アルミニウムゲルに遠心分離とイオン交換水による洗浄を2回施した後、イオン交換水50gと88質量%濃度のメタン酸水溶液14.8gとを添加して攪拌し、水酸化メタン酸アルミニウム錯体(Al(HCOO)(OH))水溶液を得た。この水酸化メタン酸アルミニウム錯体水溶液に、調製例1で得られたCZP粉末100gを投入し、これを攪拌しながら加熱して蒸発乾固させた。得られた乾燥物を大気中、500℃で5時間焼成して、前記CZP粉末からなるコアの表面にアルミナ薄膜からなるシェルが形成されたコアシェル型酸素吸放出材料粉末を得た。このコアシェル型酸素吸放出材料粉末におけるアルミナの担持量は、前記CZP粉末100質量部に対して8質量部であった。
(比較例4)
硝酸アルミニウム9水和物の量を58.9gに、25%アンモニア水の量を40gに、メタン酸水溶液の量を29.6gに、それぞれ変更した以外は比較例3と同様にして、前記CZP粉末からなるコアの表面にアルミナ薄膜からなるシェルが形成されたコアシェル型酸素吸放出材料粉末を得た。このコアシェル型酸素吸放出材料粉末におけるアルミナの担持量は、前記CZP粉末100質量部に対して16質量部であった。
(比較例5)
硝酸アルミニウム9.5mmolと硝酸ランタン0.096mmolとをイオン交換水200mlに溶解し、La含有アルミナ前駆体水溶液を調製した。このLa含有アルミナ前駆体水溶液に、比較調製例1で得られたCZ粉末100gを投入して15分間攪拌し、さらに、攪拌しながら加熱して蒸発乾固させた。得られた乾燥物を900℃で5時間焼成した。得られた粉末を、再度、前記La含有アルミナ前駆体水溶液に投入して15分間攪拌し、さらに、攪拌しながら加熱して蒸発乾固させた。得られた乾燥物を900℃で5時間焼成して、前記CZ粉末からなるコアの表面にアルミナ薄膜からなるシェルが形成されたコアシェル型酸素吸放出材料粉末を得た。このコアシェル型酸素吸放出材料粉末におけるアルミナの担持量は、前記CZ粉末100質量部に対して1.0質量部であった。
<X線光電子分光(XPS)分析>
実施例及び比較例で得られた各コアシェル型酸素吸放出材料粉末のX線光電子分光(XPS)スペクトルを、X線光電子分光分析装置(ULVAC-PHI社製「Quantera SXM」)を用い、単色化されたAlKα(1486.6eV)をX線源とし、光電子取出角:45°、分析領域:約200μmφ、チャージアップ補正:Zr3d 182.2eV(ZrO)の条件で測定した。得られたXPSスペクトルに基づいて、コアシェル型酸素吸放出材料粉末の表面(シェルの表面)から深さ3nmの領域(約200μmφ)に存在する元素を定量し、下記式:
アルミナ系酸化物の被覆率=CAl/(CAl+CCe+CZr+C)×100
(式中、CAlはAl濃度、CCeはCe濃度、CZrはZr濃度、CはAl、Ce及びZr以外の添加金属元素M(実施例及び比較例ではPr)の濃度を表す)
により、アルミナ系酸化物の被覆率を求めた。その結果を表1及び図2に示す。
<アルミナ系酸化物薄膜(シェル)の平均厚さ測定>
先ず、常温硬化性エポキシ樹脂を用いて、実施例及び比較例で得られた各コアシェル型酸素吸放出材料粉末をエポキシ樹脂硬化物に包埋させた試料を作製し、この試料を集束イオンビーム(FIB)加工又はミクロトーム加工により薄片化した。得られた薄片の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型透過電子顕微鏡(STEM)により観察し、TEM像又はSTEM像を得るとともに、元素分布解析を行った。次に、得られた元素分布解析結果に基づいて、TEM像又はSTEM像においてアルミナ系酸化物が存在する領域を特定し、この領域をアルミナ系酸化物薄膜とした。このアルミナ系酸化物薄膜の厚さの測定点を、複数のTEM像又はSTEM像において、無作為に合計10点~20点抽出し、各測定点のアルミナ系酸化物薄膜の厚さを測定して、それらの平均値を求め、これをアルミナ系酸化物薄膜(シェル)の平均厚さとした。その結果を表1及び図3に示す。
<X線回折(XRD)測定>
実施例及び比較例で得られた各コアシェル型酸素吸放出材料粉末の規則相(コアの規則相)及びα相(シェルのα相)のX線回折パターンを、X線回折装置(株式会社リガク製「UltimaIV」)を用い、CuKαをX線源として、2θ=10~60°、走査速度:10°/分、管電圧:40V、管電流:30Aの条件でX線回折法により測定した。得られたX線回折パターンにおいて、2θ=14.5°の回折線のピーク強度I(14)、2θ=29°の回折線のピーク強度I(29)、及び2θ=35.2°の回折線のピーク強度I(35)を求め、下記式:
I(14/29)=I(14)/I(29)×100
I(35/29)=I(35)/I(29)×100
により、2θ=14.5°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比〔I(14/29)値〕及び2θ=35.2°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比〔I(35/29)値〕を求めた。その結果を表1に示す。
<透過型電子顕微鏡観察>
実施例及び比較例で得られた各コアシェル型酸素吸放出材料粉末を、透過型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製「HF-2100 Cold-FE-TEM」又は日本電子株式会社製「JEM-ARM200F」)を用いて、加速電圧:200kVの条件でTEM観察及び電子線回折分析を行った。図4~5には、実施例1~2で得られたコアシェル型酸素吸放出材料粉末の透過型電子顕微鏡写真を示す。また、図6~8には、実施例1~2及び比較例1で得られたコアシェル型酸素吸放出材料粉末の電子線回折パターンを示す。
<触媒調製>
実施例及び比較例で得られた各コアシェル型酸素吸放出材料粉末とRh担持Al-ZrO-La-Nd複合酸化物粉末(Rh担持量:0.2質量%、Al:ZrO:La:Nd=30質量%:64質量%:4質量%:2質量%、平均粒径:20μm)とを質量比1:1で乳鉢を用いて混合し、得られた混合物を1tの静水圧で加圧成形し、得られた成型体を、粒径が0.5~1mmとなるように粉砕・分級して、ペレット触媒を得た。
<高温耐久試験>
得られたペレット触媒1.5gを直径10mmの円筒状の反応管に充填し、このペレット触媒に、1050℃の温度条件下、ガス流量10L/分で、リッチガス〔H(2%)+CO(10%)+N(88%)〕とリーンガス〔O(1%)+CO(10%)+N(89%)〕とを5分間ずつ交互に切り替えながら25時間流通させた。
<リッチNOx過渡浄化率測定>
高温耐久試験後のペレット触媒0.5gを直径10mmの反応管に充填し、固定床流通式触媒活性評価装置(ベスト測器株式会社製「CATA-5000-7SP」)に装着した。この触媒に、ストイキモデルガス〔NO(1500体積ppm)+CO(10体積%)+O(0.7体積%)+CO(0.65体積%)+C(3000体積ppmC)+HO(5体積%)+N(残部)〕をガス流量10L/分、触媒入りガス温度600℃で流通させて前処理を施した後、リーンガス〔NO(1500体積ppm)+CO(10体積%)+O(0.8体積%)+CO(0.65体積%)+C(3000体積ppmC)+HO(5体積%)+N(残部)〕をガス流量10L/分、触媒入りガス温度500℃で240秒間流通させた後、流通ガスをリッチガス〔NO(1500体積ppm)+CO(10体積%)+CO(0.65体積%)+C(3000体積ppmC)+HO(5体積%)+N(残部)〕に切り替えて240秒間流通させた。前記リッチガス流通時の触媒入りガス中及び触媒出ガス中の平均NO濃度を測定し、リッチNOx過渡浄化率を求めた。その結果を表1及び図9に示す。
Figure 2022051070000002
図4~5に示したように、実施例1~2で得られたコアシェル型酸素吸放出材料粉末は、前記CZP粉末の表面がアルミナ薄膜で被覆されていることが確認された。また、図6~7に示したように、実施例1~2で得られたコアシェル型酸素吸放出材料粉末のアルミナ薄膜はθアルミナを含有するものであることが確認された。一方、図8に示したように、比較例1で得られたコアシェル型酸素吸放出材料粉末のアルミナ薄膜はアモルファス-アルミナからなるものであることがわかった。
表1、図2~3及び図9に示したように、回転CVD法により、前記CZP粉末の表面にアルミナ薄膜を形成したコアシェル型酸素吸放出材料粉末(実施例1~2)は、アルミナ被覆率、アルミナ薄膜の平均厚さ、I(14/29)値及びI(35/29)値が所定の範囲内にあり、リッチNOx過渡浄化性能に優れていることが確認された。
一方、硝酸アルミニウムとカルボン酸キレート剤とを含有するアルミナ前駆体水溶液を用いて蒸発乾固法により、前記CZP粉末の表面にアルミナ薄膜を形成したコアシェル型酸素吸放出材料粉末(比較例1~2)は、アルミナ被覆率が小さく、リッチNOx過渡浄化性能に劣るものであることがわかった。
また、水酸化メタン酸アルミニウム錯体水溶液を用いて蒸発乾固法により、前記CZP粉末の表面にアルミナ薄膜を形成したコアシェル型酸素吸放出材料粉末(比較例3~4)は、アルミナ薄膜の平均厚さが厚く、I(35/29)値が所定の範囲より大きく(アルミナ薄膜にαアルミナが含まれており)、リッチNOx過渡浄化性能に劣るものであることがわかった。
さらに、硝酸アルミニウムと硝酸ランタンとを含有するLa含有アルミナ前駆体水溶液を用いて蒸発乾固法により、前記CZ粉末の表面にアルミナ薄膜を形成したコアシェル型酸素吸放出材料粉末(比較例5)は、アルミナ被覆率が小さく、I(14/29)値が所定の範囲より小さく(前記規則相が不十分であり)、リッチNOx過渡浄化性能に劣るものであることがわかった。
以上説明したように、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料を用いることによって、触媒に流入する排ガスがリーンガスからリッチガスに切り替わった場合でも、優れたNOx浄化性能を発現する排ガス浄化用触媒を得ることが可能となる。
したがって、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料は、自動車等の内燃機関から排出される、窒素酸化物を含有する排ガスを浄化するための排ガス浄化用触媒の担体や助触媒等として有用である。
1:回転CVD装置
11:回転式成膜室
12:前駆体気化部
13:前駆体ホルダー
14:加熱炉
15:前駆体供給管
16:酸素含有ガス供給管
17:ブレード

Claims (6)

  1. パイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末からなるコアと該コアの表面に配置されているアルミナ系酸化物からなるシェルとを備えており、
    下記式:
    アルミナ系酸化物の被覆率=CAl/(CAl+CCe+CZr+C)×100
    (式中、CAl、CCe、CZr及びCは粒子表面のX線光電子分光分析により求められる金属元素の濃度を表し、CAlはAl濃度、CCeはCe濃度、CZrはZr濃度、CはAl、Ce及びZr以外の添加金属元素Mの濃度を表す)
    により求められるアルミナ系酸化物の被覆率が80%以上であり、
    前記シェルの平均厚さが2~75nmであり、
    CuKαを用いたX線回折測定により得られるX線回折パターンから求められる2θ=14.5°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比〔I(14/29)値〕が2%以上であり、
    CuKαを用いたX線回折測定により得られるX線回折パターンから求められる2θ=35.2°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比〔I(35/29)値〕が0.2%以下である、
    ことを特徴とするコアシェル型酸素吸放出材料。
  2. 前記セリア-ジルコニア系固溶体粉末の比表面積が1.0m/g以下であることを特徴とする請求項1に記載のコアシェル型酸素吸放出材料。
  3. 前記アルミナ系酸化物がθアルミナを含むものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のコアシェル型酸素吸放出材料。
  4. セリア-ジルコニア系固溶体を加圧成形して得られる成型体に1500℃以上の温度で還元処理を施した後、粉砕処理を施して、パイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末を得る工程と、
    前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末を投入した反応炉を水平方向を回転軸として回転させることによって前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末を攪拌しながら、前記反応炉内で、前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末と気化したアルミナ前駆体とを酸化性雰囲気下で接触せしめて前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末の表面にアルミナ系酸化物を付着させる工程と、
    表面に前記アルミナ系酸化物が付着しているセリア-ジルコニア系固溶体粉末を焼成して、前記規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末からなるコアと該コアの表面に配置されているアルミナ系酸化物からなるシェルとを備えているコアシェル型酸素吸放出材料を得る工程と、
    を含むことを特徴とするコアシェル型酸素吸放出材料の製造方法。
  5. 請求項1~3のうちのいずれか一項に記載のコアシェル型酸素吸放出材料と、該コアシェル型酸素吸放出材料に接触している貴金属とを備えていることを特徴とする排ガス浄化用触媒。
  6. 請求項5に記載の排ガス浄化用触媒に、窒素酸化物を含有する排ガスを接触せしめることを特徴とする排ガス浄化方法。
JP2020157338A 2020-09-18 2020-09-18 コアシェル型酸素吸放出材料、その製造方法、それを用いた排ガス浄化用触媒及び排ガス浄化方法 Active JP7307710B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020157338A JP7307710B2 (ja) 2020-09-18 2020-09-18 コアシェル型酸素吸放出材料、その製造方法、それを用いた排ガス浄化用触媒及び排ガス浄化方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020157338A JP7307710B2 (ja) 2020-09-18 2020-09-18 コアシェル型酸素吸放出材料、その製造方法、それを用いた排ガス浄化用触媒及び排ガス浄化方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2022051070A true JP2022051070A (ja) 2022-03-31
JP7307710B2 JP7307710B2 (ja) 2023-07-12

Family

ID=80854804

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020157338A Active JP7307710B2 (ja) 2020-09-18 2020-09-18 コアシェル型酸素吸放出材料、その製造方法、それを用いた排ガス浄化用触媒及び排ガス浄化方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7307710B2 (ja)

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005000829A (ja) * 2003-06-12 2005-01-06 Toyota Motor Corp 排ガス浄化用触媒とその製造方法
JP2008279319A (ja) * 2007-05-08 2008-11-20 Toyota Motor Corp 排ガス浄化用触媒及びそれに用いられる酸性酸化物担持アルミナの製造方法
JP2017186225A (ja) * 2016-03-31 2017-10-12 株式会社豊田中央研究所 コアシェル型酸化物材料、その製造方法、それを用いた排ガス浄化用触媒、及び排ガス浄化方法
JP2019523699A (ja) * 2016-05-26 2019-08-29 ビーエーエスエフ コーポレーション コア/シェル触媒粒子および製作方法
JP2019217464A (ja) * 2018-06-20 2019-12-26 株式会社豊田中央研究所 コアシェル型酸素吸放出材料、その製造方法、それを用いた排ガス浄化用触媒、及び排ガス浄化方法

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005000829A (ja) * 2003-06-12 2005-01-06 Toyota Motor Corp 排ガス浄化用触媒とその製造方法
JP2008279319A (ja) * 2007-05-08 2008-11-20 Toyota Motor Corp 排ガス浄化用触媒及びそれに用いられる酸性酸化物担持アルミナの製造方法
JP2017186225A (ja) * 2016-03-31 2017-10-12 株式会社豊田中央研究所 コアシェル型酸化物材料、その製造方法、それを用いた排ガス浄化用触媒、及び排ガス浄化方法
JP2019523699A (ja) * 2016-05-26 2019-08-29 ビーエーエスエフ コーポレーション コア/シェル触媒粒子および製作方法
JP2019217464A (ja) * 2018-06-20 2019-12-26 株式会社豊田中央研究所 コアシェル型酸素吸放出材料、その製造方法、それを用いた排ガス浄化用触媒、及び排ガス浄化方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP7307710B2 (ja) 2023-07-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5127380B2 (ja) セリア−ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法、並びにそのセリア−ジルコニア系複合酸化物を用いた排ガス浄化用触媒
JP5883425B2 (ja) セリア−ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法、並びにそのセリア−ジルコニア系複合酸化物を用いた排ガス浄化用触媒
EP2558414B1 (en) Ceria-zirconia base composite oxide, method for producing the same, and catalyst for purification of exhaust gas using the ceria-zirconia base composite oxide
JP4035654B2 (ja) 触媒粒子およびその製造方法
JP5763722B2 (ja) セリア−ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法、並びにそのセリア−ジルコニア系複合酸化物を用いた排ガス浄化用触媒
US20160121302A1 (en) Ceria-zirconia-based composite oxide and method for producing same, and catalyst for exhaust gas purification including ceria-zirconia-based composite oxide
JP5565569B2 (ja) 排ガス浄化用触媒
JP6725994B2 (ja) 水蒸気改質触媒、それを用いた水蒸気改質方法、及び水蒸気改質反応装置
JP6499683B2 (ja) コアシェル型酸化物材料、その製造方法、それを用いた排ガス浄化用触媒、及び排ガス浄化方法
JP2016168586A (ja) コアシェル担体及びその製造方法、そのコアシェル担体を用いた排ガス浄化用触媒及びその製造方法、並びに、その排ガス浄化用触媒を用いた排ガス浄化方法
JP2009107901A (ja) 無機混合酸化物及びそれを用いた排ガス浄化用触媒
US9868087B2 (en) Core-shell oxide material, method for producing the same, and catalyst and method for purification of exhaust gas using the core-shell oxide material
WO2016158656A1 (ja) 排気ガス浄化用触媒
JP7045942B2 (ja) コアシェル型酸素吸放出材料、その製造方法、それを用いた排ガス浄化用触媒、及び排ガス浄化方法
JP6759298B2 (ja) 酸素貯蔵材料及びその製造方法
JP5574222B2 (ja) Co酸化触媒及びそれを用いた排ガス浄化方法
JP6630305B2 (ja) コアシェル型酸化物材料、それを用いた排ガス浄化用触媒、及び排ガス浄化方法
JP7401392B2 (ja) コアシェル型酸素吸放出材料
JP5690372B2 (ja) 酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物およびその製造方法
JP2022051070A (ja) コアシェル型酸素吸放出材料、その製造方法、それを用いた排ガス浄化用触媒及び排ガス浄化方法
JP6700637B2 (ja) 水蒸気改質触媒及びその製造方法
WO2016139936A1 (ja) 水蒸気改質触媒、それを用いた水蒸気改質方法、及び水蒸気改質反応装置
JP2023165563A (ja) 酸素吸放出材及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220308

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20221228

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230110

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230222

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20230222

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230606

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230630

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7307710

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150