以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
[水蒸気改質触媒]
先ず、本発明の水蒸気改質触媒について説明する。本発明の水蒸気改質触媒は、アルミナ、セリア及びジルコニアを含有する複合酸化物担体と、該複合酸化物担体に担持された白金族金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属元素と、を備えており、前記複合酸化物担体のX線光電子分光(XPS)により測定されるアルミニウムの表面組成(at%)が、前記複合酸化物担体全体のアルミニウムの組成(at%)の1.5倍以上であり、大気中、600℃で5時間焼成した後の前記複合酸化物担体のX線回折により測定される蛍石型結晶構造を有する結晶の粒子径が3.0〜6.5nmである、炭化水素類からなる燃料を水蒸気により改質するための触媒である。
(複合酸化物担体)
本発明の水蒸気改質触媒における複合酸化物担体としては、アルミナ(Al2O3)、セリア(CeO2)及びジルコニア(ZrO2)と、を含有し、かつ、複合酸化物担体のX線光電子分光(XPS)により測定されるアルミニウムの表面組成(at%)が、複合酸化物担体全体のアルミニウムの組成(at%)の1.5倍以上であることが必要である。
このような複合酸化物担体のX線光電子分光(XPS)測定によるアルミニウムの表面組成(at%)が、前記複合酸化物担体全体のアルミニウムの組成(at%)の1.5倍未満では、セリアとジルコニアとを含む複合酸化物の高温時における粒成長の抑制が困難となり、また、前記担体に担持される白金族金属が触媒活性を示すメタル状態を形成しにくく、触媒活性が発現しにくくなり、さらに、前記複合酸化物から酸素が放出されにくく、コーキングや炭化水素の重合物質による触媒被毒の抑制が困難となる。このような複合酸化物担体のX線光電子分光(XPS)測定によるアルミニウムの表面組成(at%)としては、粒成長抑制効果、触媒活性を示すメタル状態の形成、及び酸素放出性の観点から、複合酸化物担体全体のアルミニウムの組成(at%)の1.55倍以上であることが更に好ましい。
ここで、「アルミニウムの表面」とは、複合酸化物担体の最表面から5nm以内の範囲内の表面層をいう。
また、このような複合酸化物担体のアルミニウムの表面組成(at%)の測定方法としては、XPS(光電子分光分析装置)を用いたX線光電子分光法(XPS:X−ray Photoelectron Spectroscopy)により複合酸化物担体の表面を測定する方法によって求めることができる。本発明において、複合酸化物担体のX線光電子分光(XPS)測定によるアルミニウムの表面組成(at%、原子%)の測定条件としては、X線源にAlのKα(モノクロ)を使用し、分析領域を800μm×500μmとした。
更に、複合酸化物担体全体のアルミニウムの組成(at%)の測定方法としては、特に制限されないが、例えば、複合酸化物担体の製造時のアルミニウムの使用量(仕込み量、at%)を複合酸化物担体全体のアルミニウムの組成(at%)とする方法が挙げられる。また、複合酸化物担体の各金属の組成比を使用して組成(at%)を算出こともできる。更に、ICP(高周波プラズマ発光分析装置:ICP:Inductively Coupled Plasma)等で組成分析して複合酸化物担体全体の平均値としてのアルミニウム元素の組成(at%)を算出こともできる。また、蛍光X線分析装置(XRF:X−ray Fluorescence Analysis)、EDX(エネルギー分散型X線検出装置)、HR−TEM(高分解能透過型電子顕微鏡)、FE−STEM(フィールドエミッション−走査透過電子顕微鏡)等、又はそれらを適宜組み合わせた組成分析により測定することができる。
また、前記複合酸化物担体のX線光電子分光(XPS)測定によるアルミニウムの表面組成(at%)の、前記複合酸化物担体全体のアルミニウムの組成(at%)に対する比[(複合酸化物担体のX線光電子分光(XPS)測定によるアルミニウムの表面組成(at%))/(複合酸化物担体全体のアルミニウムの組成(at%))]としては、前記により得られる「複合酸化物担体全体のアルミニウムの組成(at%)」(例えば、アルミニウムの使用量(仕込み量、at%))に対する「複合酸化物担体表面のXPS測定値(at%)」の比を求めることによって得ることができる。
また、本発明の水蒸気改質触媒にかかる複合酸化物担体においては、大気中、600℃で5時間焼成した後の複合酸化物担体のX線回折により測定される蛍石型結晶構造を有する結晶の粒子径が3.0〜6.5nmであることが必要である。このような大気中、600℃で5時間焼成した後の複合酸化物担体中の蛍石型結晶構造を有する結晶の粒子径が3.0nm未満になると、結晶の熱安定性が低下するため、結晶粒子間の固相反応による粒成長が起こりやすくなり、他方、6.5nmを超えると、複合酸化物担体に担持された白金族金属の結晶粒子の粒子径が大きくなるため、複合酸化物担体上の活性サイトが少なくなり、触媒活性が低下したり、また、複合酸化物担体が酸素を吸蔵しにくくなるため、白金族金属が触媒活性を示すメタル状態に戻りにくくなったり、さらに、複合酸化物担体から酸素が放出されにくくなるため、炭素質物質の酸化除去が進行しにくく、コーキングや炭化水素の重合物質による触媒被毒を十分に抑制することが困難となる。このような、大気中、600℃で5時間焼成した後の複合酸化物担体のX線回折により測定される蛍石型結晶構造を有する結晶の粒子径としては、活性サイトの増加、触媒活性を示すメタル状態への再生、酸素放出性の観点から、4.0〜6.0nmが更に好ましい。
このような大気中、600℃で5時間焼成した後の複合酸化物担体中の蛍石型結晶構造を有する結晶の粒子径の測定方法としては、大気中、600℃で5時間焼成した後の複合酸化物担体について、粉末X線回折装置を用い、CuKαをX線源としたX線回折法によりX線回折(XRD)パターンを測定し、得られたXRDパターンにおける蛍石型結晶構造に由来するピーク(2θ=28.7〜28.9deg)に基づいて求めることができる。
また、本発明の水蒸気改質触媒にかかる複合酸化物担体においては、大気中、600℃で5時間焼成した後の複合酸化物担体の窒素吸着法により測定される1.5〜100nmの範囲内の細孔直径を有する細孔の積算細孔容積に対する1.5〜5nmの範囲内の細孔直径を有するミクロ細孔の積算細孔容積の割合が40%以上であることが好ましい。ミクロ細孔の積算細孔容積の割合が40%未満になると、5nmを超える細孔直径を有するメソ細孔の割合が相対的に多くなり、このメソ細孔で進行すると考えられるコーキングによる触媒の劣化が大きくなる傾向にある。また、ミクロ細孔の積算細孔容積の割合としては、水蒸気改質反応活性及び耐コーキング性の観点から、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましい。なお、ミクロ細孔の積算細孔容積の割合としては特に制限はないが、90%以下が好ましい。
このようなミクロ細孔の積算細孔容積の割合の測定方法としては、大気中、600℃で5時間焼成した後の複合酸化物担体について、細孔分布測定装置を用いて窒素吸着法により細孔直径が1.5〜100nmの範囲についての積算細孔容積分布曲線を求め、得られた積算細孔容積分布曲線に基づいて、細孔直径が1.5〜100nmの範囲の積算細孔容積と細孔直径が1.5〜5nmの範囲の積算細孔容積とを算出して、ミクロ細孔(細孔直径1.5〜5nm)の積算細孔容積の割合[(細孔直径が1.5〜5nmの範囲の積算細孔容積)/(細孔直径が1.5〜100nmの範囲の積算細孔容積)×100]を求める。
また、本発明の水蒸気改質触媒にかかる複合酸化物担体においては、大気中、600℃で5時間焼成した後の複合酸化物担体の水銀圧入法により測定される5nm〜200μmの範囲内の細孔直径を有する細孔の積算細孔容積に対する200nm〜200μmの範囲内の細孔直径を有するマクロ細孔の積算細孔容積の割合が40%以上であることが好ましい。マクロ細孔の積算細孔容積の割合が40%未満になると、5nm以上200nm未満の範囲内の細孔直径を有するメソ細孔の割合が相対的に多くなり、このメソ細孔で進行すると考えられるコーキングが起こりやすくなり、メソ細孔が閉塞することによってミクロ細孔内の活性サイトへの炭化水素の拡散も起こりにくくなるため、水蒸気による改質が進行しにくくなる傾向にある。また、マクロ細孔の積算細孔容積の割合としては、コーキング抑制の観点から、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましい。なお、マクロ細孔の積算細孔容積の割合としては特に制限はないが、90%以下が好ましい。
このようなマクロ細孔の積算細孔容積の割合の測定方法としては、大気中、600℃で5時間焼成した後の複合酸化物担体について、水銀ポロシメータを用いて水銀圧入法により細孔直径が5nm〜200μmの範囲についての積算細孔容積分布曲線を求め、得られた積算細孔容積分布曲線に基づいて、細孔直径が5nm〜200μmの範囲の積算細孔容積と細孔直径が200nm〜200μmの範囲の積算細孔容積とを算出して、マクロ細孔(細孔直径200nm〜200μm)の積算細孔容積の割合[(細孔直径が200nm〜200μmの範囲の積算細孔容積)/(細孔直径が5nm〜200μmの範囲の積算細孔容積)×100]を求める。
このような本発明の水蒸気改質触媒にかかる複合酸化物担体において、前記複合酸化物担体中のセリア(CeO2)の含有量が50〜95質量%であることが好ましく、60〜90質量%であることがより好ましい。このような複合酸化物担体におけるセリアの含有量が前記下限未満では、白金族金属が触媒活性を示すメタル状態になりにくくなり、触媒活性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、セリアとジルコニアとを含む複合酸化物が粒成長しやすくなり、耐熱性が低下する傾向にある。
また、このような本発明の水蒸気改質触媒にかかる複合酸化物担体において、前記複合酸化物担体中のアルミナ(Al2O3)の含有量が2〜45質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。このような複合酸化物担体におけるアルミナの含有量が前記下限未満では、セリアとジルコニアとを含む複合酸化物が粒成長しやすくなり、耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、白金族金属が触媒活性を示すメタル状態になりにくくなり、触媒活性が低下する傾向にある。
さらに、このような本発明の水蒸気改質触媒にかかる複合酸化物担体において、前記複合酸化物担体中のジルコニア(ZrO2)の含有量が1〜30質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましい。このような複合酸化物担体におけるジルコニアの含有量が前記下限未満では、セリアとジルコニアとを含む複合酸化物が粒成長しやすくなり、耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると白金族金属が触媒活性を示すメタル状態になりにくくなり、触媒活性が低下する傾向にある。
また、本発明の水蒸気改質触媒にかかる複合酸化物担体においては、セリア以外の他の希土類酸化物(以下、単に「他の希土類酸化物」ともいう。)を更に含有することが好ましい。このような他の希土類酸化物としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等のセリウム(Ce)以外の希土類元素の酸化物が挙げられ、中でも、炭化水素類からなる燃料の水蒸気改質反応においてより高い触媒活性及び触媒劣化防止という観点から、酸化プラセオジム、酸化ネオジム、酸化サマリウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロシウム、酸化イッテルビウムが好ましく、酸化プラセオジム、酸化テルビウム、酸化イッテルビウムがより好ましく、酸化プラセオジムが特に好ましい。これらの他の希土類酸化物は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。このような他の希土類酸化物の含有量は、炭化水素類からなる燃料の水蒸気改質反応において高い触媒活性及び触媒劣化防止という観点から、前記複合酸化物担体全量(100質量%)に対して1〜40質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましい。
このような本発明の水蒸気改質触媒にかかる複合酸化物担体において、「アルミナ、セリア及びジルコニアを含有する」並びに「アルミナ、セリア及びジルコニアと、セリア以外の希土類酸化物と、を含有する」とは、前記複合酸化物担体が前記「アルミナ、セリア及びジルコニア」のみ或いは前記「アルミナ、セリア及びジルコニアと、セリア以外の希土類酸化物」のみから構成されるもの、或いは、主として前記「アルミナ、セリア及びジルコニア」或いは前記「アルミナ、セリア及びジルコニアと、セリア以外の希土類酸化物」から構成されており、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を含むものであることを意味する。このような他の成分としては、この種の用途の担体として用いられる他の金属酸化物や添加剤等を用いることができる。後者の場合、担体における「アルミナ、セリア及びジルコニア」或いは「アルミナ、セリア及びジルコニアと、セリア以外の希土類酸化物」の含有量は、担体の全質量100質量%に対して10〜100質量%であることが好ましく、50〜100質量%であることがより好ましい。このような担体における「アルミナ、セリア及びジルコニア」或いは「アルミナ、セリア及びジルコニアと、セリア以外の希土類酸化物」の含有量が前記下限未満では、本発明の効果が十分に得られない傾向にある。
また、このような担体に本発明の効果を損なわない範囲で含有することが可能な他の成分として用いる金属酸化物としては、水蒸気改質触媒の担体に用いることが可能な金属酸化物であればよく、特に制限されず、例えば、担体の熱安定性や触媒活性の観点から、例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、スカンジウム(Sc)、バナジウム(V)等のアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等の金属の酸化物、これらの金属の酸化物の混合物、これらの金属の酸化物の固溶体、これらの金属の複合酸化物を適宜用いることができる。
さらに、このような本発明の水蒸気改質触媒にかかる複合酸化物担体においては、前記複合酸化物担体中のセリアと、ジルコニア及び他の希土類酸化物(より好ましくは、酸化プラセオジム、酸化テルビウム、及び酸化イッテルビウム)のうちの少なくとも1種とが、少なくとも一部が互いに固溶した固溶体(以下、単に「セリアを含む固溶体」と称す場合がある。)を形成していることが好ましい。このようなセリアを含む固溶体は、白金族金属を酸化物の状態から触媒活性を示すメタル状態に還元する作用をより効果的に発現させることが可能となり、酸素ガスが存在しない環境や水蒸気と炭素とのモル比(S/C)が低い条件においてもコーキングが十分に起こりにくく、高温下に曝されても高い活性を保持し、炭化水素類からなる燃料を水蒸気により効率的に改質することが可能な水蒸気改質触媒を得ることができる。なお、このようなセリアを含む固溶体としては、セリア−ジルコニア固溶体、セリア−他の希土類酸化物固溶体、セリア−ジルコニア−他の希土類酸化物固溶体が挙げられ、中でも、炭化水素類からなる燃料の水蒸気改質反応において高い触媒活性及び触媒劣化防止という観点から、セリア−ジルコニア固溶体、セリア−酸化プラセオジム固溶体、セリア−酸化ネオジム固溶体、セリア−酸化サマリウム固溶体、セリア−酸化ガドリニウム固溶体、セリア−酸化テルビウム固溶体、セリア−酸化ジスプロシウム固溶体、セリア−酸化イッテルビウム、セリア−ジルコニア−酸化プラセオジム固溶体、セリア−ジルコニア−酸化ネオジム固溶体、セリア−ジルコニア−酸化サマリウム固溶体、セリア−ジルコニア−酸化ガドリニウム固溶体、セリア−ジルコニア−酸化テルビウム固溶体、セリア−ジルコニア−酸化ジスプロシウム固溶体、セリア−ジルコニア−酸化イッテルビウムが好ましく、セリア−ジルコニア固溶体、セリア−酸化プラセオジム固溶体、セリア−酸化テルビウム固溶体、セリア−酸化イッテルビウム固溶体、セリア−ジルコニア−酸化プラセオジム固溶体、セリア−ジルコニア−酸化テルビウム固溶体、セリア−ジルコニア−酸化イッテルビウム固溶体がより好ましく、セリア−ジルコニア−酸化プラセオジム固溶体、セリア−ジルコニア−酸化テルビウム固溶体、セリア−ジルコニア−酸化イッテルビウム固溶体が更に好ましく、セリア−ジルコニア−酸化プラセオジム固溶体が特に好ましい。これらのセリアを含む固溶体は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
本発明の水蒸気改質触媒において、セリアと、ジルコニア及び他の希土類酸化物(より好ましくは、酸化プラセオジム、酸化テルビウム、及び酸化イッテルビウム)のうちの少なくとも1種とが、少なくとも一部が互いに固溶した固溶体を形成している複合酸化物担体を用いることにより、このような複合酸化物担体を備える水蒸気改質触媒は、高温での炭化水素類からなる燃料の水蒸気改質反応においてもより高い触媒活性を示す傾向にある。この理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、このような複合酸化物には、白金族金属との固相反応性が低いセリア又はセリアを含む固溶体(セリアと、ジルコニア及び他の希土類酸化物(より好ましくは、酸化プラセオジム、酸化テルビウム、及び酸化イッテルビウム)のうちの少なくとも1種とが互いに固溶した固溶体)が含まれており、前記白金族金属が酸化されかつ600℃以上の高温に曝されたとしても、前記複合酸化物との固相反応が進行しにくく、酸化物の状態で安定化せずに高い触媒活性を示すメタル状態に還元されるため、前記触媒活性が高くなるものと推察される。また、前記複合酸化物と前記白金族金属は強い相互作用を示し、600℃以上の高温においても前記複合酸化物担体上の前記白金族金属の粒成長が抑制されるため、前記触媒活性が高くなるものと推察される。更に、セリアやセリアを含む固溶体は通常、水蒸気改質反応のような還元性雰囲気においては酸化性雰囲気に比べて粒成長しやすいが、互いに固溶しないセリアとアルミナ又はセリアを含む固溶体とアルミナが互いに障壁として作用して高温時における複合酸化物の粒成長が抑制され、これに担持された前記白金族金属の粒成長も抑制されるため、前記触媒活性が高くなるものと推察される。また、前記白金族金属を酸化物の状態から触媒活性を示すメタル状態に還元する作用はセリアでも発現するが、セリアがジルコニア及び他の希土類酸化物(より好ましくは、酸化プラセオジム、酸化テルビウム、及び酸化イッテルビウム)のうちの少なくとも1種と互いに固溶した固溶体を形成している場合に、より効果的に発現する。したがって、本発明に用いられる複合酸化物においては、セリアとジルコニア及び他の希土類酸化物(より好ましくは、酸化プラセオジム、酸化テルビウム、及び酸化イッテルビウム)のうちの少なくとも1種とが、少なくとも一部が互いに固溶した固溶体を形成していることが好ましい。
このような複合酸化物担体を使用することによって、本発明の水蒸気改質触媒は、炭化水素類からなる燃料の水蒸気改質反応においてより高い触媒活性を示すものとなる。
(水蒸気改質触媒)
本発明の水蒸気改質触媒は、このような複合酸化物担体と、これに担持された白金族金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属元素とを備えるものである。
このような水蒸気改質触媒においては、該担体に担持された白金族金属(ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)及び白金(Pt))からなる群から選択される少なくとも1種の金属元素を含有することが必要である。
前記白金族金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属元素のうち、炭化水素類からなる燃料の水蒸気改質反応において高い触媒活性を示すという観点から、ロジウム(Rh)が好ましい。また、前記白金族に属する金属元素は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
このような白金族金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属元素の担持量は、特に制限されず、目的とする設計等に応じて適宜必要量担持させればよい。なお、前記金属元素の担持量としては、金属換算で、前記複合酸化物担体100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましい。このような金属元素の担持量が前記下限未満では、炭化水素類からなる燃料の水蒸気改質反応において十分な触媒活性が得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、前記金属元素が粒成長して前記触媒活性が向上しない傾向にある。また、このような金属元素の担持量としては、触媒性能とコストの観点から、前記複合酸化物担体100質量部に対して0.5〜10質量部であることがより好ましい。なお、このように担体に担持されている前記金属元素の粒子径(平均粒子径)としては、1〜100nm(より好ましくは2〜50nm)であることが好ましい。このような金属元素の粒子径が、前記下限未満では、触媒活性を示さない酸化物状態になりやすい傾向にあり、他方、前記上限を超えると、活性サイトの量が著しく減少する傾向にある。
本発明の水蒸気改質触媒の形態としては、特に制限されないが、例えば、ハニカム形状のモノリス触媒、ペレット形状のペレット触媒等の形態にすることができ、さらに、粉末状のものをそのまま所望の箇所に配置する形態とすることもできる。このような形態の水蒸気改質触媒を製造する方法としては、特に制限されないが、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、触媒をペレット状に成形してペレット形状の水蒸気改質触媒を得る方法や、触媒を触媒基材にコートすることにより、触媒基材にコート(固定)した形態の水蒸気改質触媒を得る方法等を適宜採用してもよい。なお、このような触媒基材としては、特に制限されないが、例えば、得られる水蒸気改質触媒の用途等に応じて適宜選択されるが、ハニカムモノリス状基材、ペレット状基材、プレート状基材等が好適に採用される。また、このような触媒基材の材質も、特に制限されないが、例えば、コーディエライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材が好適に採用される。
また、本発明の水蒸気改質触媒を用いて改質することが可能な炭化水素類からなる燃料としては特に制限はないが、アルカン類、アルケン類、アルキン類、芳香族化合物、アルコール類、アルデヒド類等の炭化水素類が含まれるものが挙げられ、具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の直鎖状又は分岐状の飽和脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環式飽和炭化水素、単環又は多環芳香族炭化水素等のガス状又は液状の炭化水素類が含まれるものが挙げられる。このような炭化水素類からなる燃料としては、具体的には、メタン、エタン、エチレン、プロパン、ブタン等の炭化水素類、これらの二種以上の混合ガス、都市ガス、天然ガス、石油ガス、石炭ガス、発生炉ガス、水性ガス、高炉ガス、石油分解ガス等の気体燃料、ガソリン、軽油、灯油、ディーゼル油、メタノール、エタノール等の液体燃料、それら気体燃料及び液体燃料の二種以上の混合燃料(二種以上の気体燃料の混合燃料、二種以上の液体燃料の混合燃料、少なくとも1種の気体燃料と少なくとも1種の液体燃料の混合燃料)が挙げられる。また、炭化水素類からなる燃料としては、エタノール、ガソリン、ディーゼル燃料、天然ガス、炭化水素ガス、バイオディーゼル等の炭化水素類からなるバイオマス燃料を用いることができる。更に、自動車等の内燃機関において炭化水素類からなる燃料として使用する場合には、例えば、エタノールとガソリンとの混合燃料を用いることができる。このような混合燃料としては、エタノールはオクタン価が高いので、オクタン価が低いガソリン(例えば、30〜85の範囲)とエタノールを混合することにより、通常のガソリン燃料と同等の80〜100の範囲のオクタン価に調整した混合燃料を得ることができ、自動車等の内燃機関の燃料として好適に用いることができる。
これらの炭化水素類からなる燃料のうち、常温で液体であるため取り扱いやすく、安全性が高く、水(水蒸気)との親和性が高く、入手がしやすいという観点から、天然ガス、メタノール、エタノール及びエタノールとガソリンとの混合燃料が好ましく、エタノール及びエタノールとガソリンとの混合燃料がより好ましい。
[水蒸気改質触媒の製造方法]
次に、本発明の水蒸気改質触媒の製造方法について説明する。本発明の水蒸気改質触媒の製造方法は、アルミニウムイオン、セリウムイオン及びジルコニウムイオンを含有する原料溶液を調製する工程と、アルカリ性溶液を調製する工程と、前記原料溶液と前記アルカリ性溶液とを剪断速度が30000sec−1以上となっている領域に独立に直接導入して均質混合し、金属化合物のコロイド溶液を得る工程と、前記コロイド溶液を加熱して該コロイド溶液中の金属化合物を熟成させる工程と、前記熟成された金属化合物を焼成して複合酸化物担体を調製する工程と、前記複合酸化物担体に白金族金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属元素を担持せしめる工程と、を含む方法である。この方法により、微細な結晶粒子からなる(好ましくは、ミクロ細孔及びマクロ細孔の割合が多い)複合酸化物担体を含有する前記本発明の水蒸気改質触媒を得ることが可能となる。
(原料溶液調製工程)
前記アルミニウムイオン、セリウムイオン及びジルコニウムイオンを含有する原料溶液(好ましくは、セリウムイオン以外の希土類イオンを更に含有する原料溶液)は、アルミニウム化合物、セリウム化合物及びジルコニウム化合物と、必要に応じてセリウム化合物以外の希土類化合物とを、溶媒に溶解することによって調製することができる。
前記セリウム化合物以外の希土類化合物(以下、単に「他の希土類化合物」ともいう。)としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等のセリウム(Ce)以外の希土類元素の化合物が挙げられ、中でも、炭化水素類からなる燃料の水蒸気改質反応においてより高い触媒活性及び触媒劣化防止性能を有する水蒸気改質触媒が得られるという観点から、プラセオジム化合物、ネオジム化合物、サマリウム化合物、ガドリニウム化合物、テルビウム化合物、ジスプロシウム化合物、イッテルビウム化合物が好ましく、プラセオジム化合物、テルビウム化合物、イッテルビウム化合物がより好ましく、プラセオジム化合物が特に好ましい。これらの他の希土類化合物は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
このようなアルミニウム化合物、セリウム化合物、ジルコニウム化合物、他の希土類化合物としては、それらの金属の塩(硫酸塩、硝酸塩、塩化物、酢酸塩等)が用いられる。また、塩を溶解する溶媒としては水及びアルコール類が挙げられる。更に、例えば、硝酸アルミニウムを含む水溶液として水酸化アルミニウムと硝酸と水とを混合したものを使用することもできる。
前記原料溶液におけるアルミニウム化合物、セリウム化合物、ジルコニウム化合物、他の希土類化合物の各濃度は、得られる複合酸化物担体中のアルミナ、セリア、ジルコニア、他の希土類酸化物の含有率に応じて適宜設定することができる。
(アルカリ性溶液調製工程)
前記アルカリ性溶液は、塩基性化合物を溶媒に溶解することによって調製することができる。前記塩基性化合物としては、アンモニア水、炭酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。中でも、金属化合物を熟成させる際や複合酸化物を焼成する際に揮発することから、前記塩基性化合物としては、アンモニア水、炭酸アンモニウムが好ましい。また、前記溶媒としては、水、アルコール等が挙げられる。アルカリ性溶液における前記塩基性化合物の濃度としては、前記原料溶液と同じ容量で中和反応を完了させるのに十分な濃度であれば特に制限はないが、例えば、0.005〜0.5mol/L程度が好ましい。
(コロイド溶液調製工程)
金属化合物のコロイド溶液を得る工程においては、剪断速度が30000sec−1となっている領域(以下、「高剪断速度領域」という)に、前記原料溶液と前記アルカリ性溶液とを独立に直接導入して均質に混合する。このような均質混合によって、金属化合物結晶の粒子径が小さく、均一でかつ適度な空隙を有する凝集体の状態で(好ましくは、アルミナ超微粒子及びセリアとジルコニアとを含む複合酸化物の超微粒子とが相互に良好に)溶媒中に分散した金属化合物のコロイド溶液を調製することができる。
このような混合方法に用いられる装置としては、例えば、図1〜図3に示すコロイド溶液の製造装置(アウターノズル型スーパーアジテーションリアクター)が挙げられるが、本発明の水蒸気改質触媒の製造方法は、図1〜図3に示すコロイド溶液の製造装置を用いた方法に限定されるものではない。以下、図面を参照しながら、本発明に好適な装置ついて詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図1に示すコロイド溶液の製造装置は、高速撹拌装置としてアウターノズル型ホモジナイザー10を備えており、アウターノズル型ホモジナイザー10の先端部(攪拌部)が反応容器20内に配置されている。アウターノズル型ホモジナイザー10の先端部は、図2に示すように、ローター11と、ローター11の外周との間に所定のギャップの領域が形成されるように配置された外側ステータ12とを備えているが、ローター11の内側には、ローター11の内周との間に所定のギャップの領域を形成することにより液体の流れを阻害する部材(例えば、ステータ)は存在しない。さらに、ローター11は、回転シャフト13を介してモーター14に接続されており、高速回転することが可能となっている。
そして、図1に示すコロイド溶液の製造装置においては、図2及び図3に示すように、原料溶液Aを導入するための分岐のないノズル15Aと原料溶液Bを導入するための分岐のないノズル15Bと原料溶液Cを導入するための分岐のないノズル15Cとがそれぞれ外側ステータ12におけるローター11に対向する面に設けられている。ここで、「分岐のないノズル」とは、1つの入口と1つの出口を有し、後述するように分岐のない流路を介して原料溶液の供給装置に接続され、この供給装置により前記分岐のない流路を通して前記入口から供給される原料溶液を、途中で分岐させることなく、前記出口から吐出させることが可能なノズルのことをいう。また、図3に示すように、ローター11及び外側ステータ12には、スリット11a及び12aが設けられている。ただし、外側ステータ12のノズル15Aとノズル15Bとの間及びノズル15Aとノズル15Cとの間にはスリットは設けられていない。
図1〜図3に示すコロイド溶液の製造装置においては、ノズル15Aには分岐のない流路16Aを介して原料溶液Aの供給装置(図示せず)が、ノズル15Bには分岐のない流路16Bを介して原料溶液Bの供給装置(図示せず)が、ノズル15Cには分岐のない流路16Cを介して原料溶液Cの供給装置(図示せず)が、それぞれ独立に接続されており、ローター11と外側ステータ12との間の領域に原料溶液Aと原料溶液Bと原料溶液Cとをそれぞれ独立して直接的に導入することが可能となっている。ここで、「分岐のない流路」とは、1つの原料溶液供給装置と1つのノズルとを接続している1本の流路であって、1つの原料溶液供給装置から送り出される原料溶液を、途中で分岐させることなく、1つのノズルに供給することが可能な流路のことをいう。また、図1〜図3に示すコロイド溶液の製造装置は、流路16A、流路16B及び流路16Cに、それぞれ原料溶液A、原料溶液B及び原料溶液Cが滞留する空間を持っていないことが好ましい。
また、図1に示すコロイド溶液の製造装置において、各ノズルは外側ステータ12におけるローター11に対向する面において、ローター11の回転軸に対して直交する同一の面内に配置されていなくてもよいが、微小時間での急速な原料溶液の混合をより確実に行うためには、図2及び図3に示すように、ノズル15A、ノズル15B及びノズル15Cが、ローター11の回転軸Xに対して直交する同一の面Y内に配置されていることが好ましい。なお、図3は、図2中の面Yにおけるアウターノズル型ホモジナイザー10の先端部(攪拌部)の横断面である。また、各ノズルは外側ステータ12におけるローター11に対向する面において、ローター11の回転軸に対して直交する複数の面の外側ステータ12の内周に沿った方向に複数列で配置されていてもよいが、微小時間での急速な原料溶液の混合をより確実に行うためには、図2及び図3に示すように、ノズル15A、ノズル15B及びノズル15Cからなる少なくとも1組のノズルセットが、ローター11の回転軸Xに対して直交する同一の面Yの外側ステータ12の内周に沿った方向に一列に配置されていることが好ましい。
なお、図1〜図3に示すコロイド溶液の製造装置においては、3個のノズルからなる2組のノズルセットが設けられているが、ノズルの数は原料溶液の数に応じて適宜設定することができ、少なくとも、原料溶液の数と同数の分岐のないノズルを設置すればよい。また、前記ノズルセットは少なくとも1組設けられていればよいが、外側ステータのサイズ(径)が十分に大きい場合には、2組以上のノズルセットを設けることも可能である。これにより、装置の処理能力を向上させることができる。さらに、ノズルセットの数を増加させるために、ローターと外側ステータのサイズ(径)を大きくすることも可能である。
このようなノズルの開口部の大きさ(円形の場合には直径、楕円形の場合には短軸の長さ)は、特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、ノズルの詰まりをより確実に防止するという観点から、0.4〜2mmであることが好ましい。また、隣接するノズルとの間隔は、特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、微小時間での急速な原料溶液の混合をより確実に行うためには、隣接するノズル孔同士の間の距離で0〜10mmであることが好ましく、前記範囲の中でもより小さい値が特に好ましい。
本発明の水蒸気改質触媒の製造方法(本発明にかかる複合酸化物担体の製造方法)においては、図1〜図3に示すコロイド溶液の製造装置のノズル15Aとノズル15Bとノズル15Bのうちの2箇所から前記原料溶液及び前記アルカリ性溶液がそれぞれ導入される領域、すなわち、図1〜図3に示すコロイド溶液の製造装置のローター11の外周と外側ステータ12の内周との間の領域において、剪断速度が30000sec−1以上となっていることが必要であり、35000sec−1以上となっていることが特に好ましい。このような領域の剪断速度が前記下限未満になると、前記原料溶液と前記アルカリ性溶液とを微小時間で急速に混合することが困難であり、十分に微細で且つ均一性の高いコロイド粒子又はコロイド粒子の凝集体を含有するコロイド溶液を得ることが困難となる。なお、前記剪断速度は、所定のギャップの領域内の流れが層流であると仮定して算出される値である。
このような高剪断速度領域を形成するための条件としては、ローターの回転速度及びローターと外側ステータとの間のギャップの大きさが影響するため、前記領域の剪断速度が前記条件を満たすようにそれらを設定する必要がある。具体的なローター11の回転速度は特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくる。したがって、ローター11の回転速度の周速の下限も特に制限されないが、一般的には3m/sec以上であることが好ましい。また、上限も特に制限はなく、大きいほど好ましいが、気泡の巻き込み、モーターの過負荷、溶液の過熱による沸騰が起こらない範囲がより好ましい。
また、ローター11と外側ステータ12との間のギャップの大きさも特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、0.25〜0.5mmであることが好ましい。なお、アウターノズル型ホモジナイザーを相似形で大きくする場合には、このキャップのサイズも、その比率で大きくすることが好ましい。
さらに、図1〜図3に示すコロイド溶液の製造装置においては、ノズル15Aとノズル15Bとノズル15Cのうちの2箇所からそれぞれ供給された前記原料溶液と前記アルカリ性溶液とが、前記高剪断速度領域に導入されてから1msec以内(特に好ましくは、0.3msec以内)に均質混合されるようにノズル15Aとノズル15Bとノズル15Cとが配置されていることが好ましい。なお、ここでいう前記原料溶液及び前記アルカリ性溶液が前記高剪断速度領域に導入されてから均質混合されるまでの時間とは、例えば、図3においては、ノズル15Aから導入された前記原料溶液が隣接するノズル15Bの位置に到達し、ノズル15Bから導入された前記アルカリ性溶液と混合されるまでの時間をいう。
また、図1〜図3に示すコロイド溶液の製造装置においては、ローター11の内側に、ローター11の内周との間に所定のギャップの領域を形成することにより液体の流れを阻害する部材が存在しない。すなわち、ローター11の内側に部材(例えば、ステータ)が存在する場合、装置の大きさによっても変わってくるが、この部材とローター11の内周との間のギャップの大きさが通常2.5mm以下であると、液体の流れが阻害されやすい。したがって、図1〜図3に示すコロイド溶液の製造装置においては、ローター11の内側に部材が存在していない(例えば、ローター11の内側が空洞である)ことが好ましいが、ローター11の内側に部材が存在する場合には、前記部材とローター11の内周との間のギャップの大きさが2.5mmを超えていれば、液体の流れは阻害されにくい。
以上説明した図1〜図3に示すコロイド溶液の製造装置においては、ローター11を高速回転させることによって、ローター11と外側ステータ12との間に高剪断速度領域が形成され、このような高剪断速度領域に、前記原料溶液及び前記アルカリ性溶液をそれぞれノズル15A、ノズル15B及びノズル15Cのうちの2箇所から独立して直接導入する。これにより、前記高剪断速度領域において、前記原料溶液及び前記アルカリ性溶液は、微小時間で急速に均質混合されて反応が進行し、前記原料溶液中の原料に由来するコロイド粒子又はコロイド粒子の凝集体を含有するコロイド溶液を製造することが可能となる。
なお、前記原料溶液及び前記アルカリ性溶液の各供給速度としては特に制限はなく、装置の大きさによっても適宜設定することができる。例えば、ローター11と外側ステータ12との間のギャップの大きさが0.5mmである場合には、50〜300ml/minが好ましい。前記原料溶液及び前記アルカリ性溶液の供給速度が前記下限未満になると、金属化合物コロイド粒子の製造効率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、金属化合物コロイド粒子の粒子径が大きくなる傾向にある。なお、アウターノズル型ホモジナイザーの大きさをn倍に変更する場合(例えば、相似形のスケールアップにより前記ギャップの大きさがn倍になる場合)には、原料溶液の供給速度をn3倍に設定することが好ましい。
以上、本発明の水蒸気改質触媒の製造方法における複合酸化物担体の製造方法について説明したが、本発明の水蒸気改質触媒の製造方法は、図1〜図3に示すコロイド溶液の製造装置を用いた方法に限定されるものではない。本発明にかかる複合酸化物担体は、例えば、特開2014−24058号公報に記載のコロイド溶液の製造装置(インナーノズル型スーパーアジテーションリアクター)を用いて製造することも可能である。
(熟成工程)
熟成工程においては、このようにして得られた金属化合物のコロイド溶液を加熱して、前記金属化合物を熟成させる。前記金属化合物を熟成させると、熱によって前記金属化合物の溶解、再析出が促進されるとともに得られる複合酸化物粒子を成長させることができ、比較的結晶性が高く、所定の粒子径を有する結晶粒子からなる複合酸化物担体を得ることができる。熟成温度としては、室温以上が好ましく、80℃〜250℃の温度がより好ましく、100〜200℃が更により好ましく、100〜150℃が特に好ましい。熟成温度が前記下限未満になると、熟成による促進効果が小さく、熟成に要する時間が長くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、水蒸気圧が極めて高くなるため、より高価な耐圧容器が必要となり製造コストが高くなる傾向にある。なお、100℃以上の温度で加熱熟成する場合には、オートクレーブのような耐圧密封容器の中で、100℃以上の高温加圧下の水熱状態のもとで熟成することが好ましい。
(焼成工程)
焼成工程においては、熟成された前記金属化合物を焼成して複合酸化物担体を得る。焼成は大気中で行うことができる。焼成温度としては300〜800℃が好ましい。焼成温度が前記下限未満になると、得られる複合酸化物が担体としての安定性に欠ける傾向にあり、他方、前記上限を超えると、複合酸化物担体の比表面積が低下する傾向にある。
(担持工程)
担持工程においては、このようにして得られた複合酸化物担体に白金族金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属元素を担持させる。前記金属元素の担持方法としては特に制限はないが、例えば、白金族金属化合物を所定の濃度で含有する溶液に前記複合酸化物担体(又は前記複合酸化物担体をコージェライト製ハニカム等の基材にコートした触媒担体担持基材)を浸漬して所定量の白金族金属を含む溶液を前記複合酸化物担体に含浸させ、これを焼成する方法等が挙げられる。
白金族金属化合物を含有する溶液としては、特に制限されないが、白金族金属塩の溶液を用いることができ、例えば、白金族金属塩として白金塩を用いる場合は、白金(Pt)の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、アンモニウム塩、クエン酸塩、ジニトロジアンミン塩等又はそれらの錯体が挙げられ、中でも、担持されやすさと高分散性の観点から、ジニトロジアンミン塩が好ましい。また、白金族金属塩としてロジウム塩を用いる場合は、例えば、ロジウム(Rh)の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、アンモニウム塩、クエン酸塩、ジニトロジアンミン塩等又はそれらの錯体の溶液が挙げられ、中でも、担持されやすさと高分散性の観点から、硝酸塩が好ましい。また、溶媒としては、特に制限されないが、例えば、水(好ましくはイオン交換水及び蒸留水等の純水)等の白金族金属塩をイオン状に溶解せしめることが可能な溶媒が挙げられる。なお、このような白金族金属塩の溶液の濃度としては、特に制限されないが、白金族金属塩のイオンとして0.001〜0.5mol/Lであることが好ましい。また、このような前記担体に白金族金属塩の溶液を用いて白金族金属を担持せしめる方法としては、特に制限されないが、例えば、白金族金属塩の溶液に前記担体を含浸せしめる方法、白金族金属塩の溶液を前記担体に吸着担持せしめる方法等、公知の方法を適宜採用できる。
このとき、前記複合酸化物担体はペレット等の粉末状で使用してもよいし、予め、コーティング等により前記複合酸化物担体をコージェライト製ハニカム基材等の公知の基材に固定化して使用してもよい。
このような担持方法における焼成は大気中で実施することができる。焼成温度としては200〜600℃が好ましい。焼成温度が前記下限未満になると、白金族金属化合物が十分に熱分解せず、触媒活性を示すメタル状態になりにくくなるため、活性が低くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、担持させた白金族金属が粒成長して炭化水素類からなる燃料の水蒸気改質反応における触媒活性が低下する傾向にある。また、焼成時間としては0.1〜100時間が好ましい。焼成時間が前記下限未満になると、白金族金属化合物が十分に熱分解せず、触媒活性を示すメタル状態になりにくくなるため、活性が低くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えてもそれ以上の効果は得られず、触媒を調製するためのコストの増大に繋がる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、複合酸化物の物性は以下の方法により測定した。
<比表面積>
全自動比表面積測定装置を用いて、液体窒素温度(−196℃)におけるN2吸着を利用したBET一点法により算出した。
(実施例1)
硝酸アルミニウム9水和物0.31モル(117.7g)、硝酸セリウム6水和物0.44モル(190.3g)及び硝酸ジルコニル2水和物0.070モル(18.6g)を300mlのイオン交換水に溶解し、さらにイオン交換水で希釈して1100mlの原料溶液を調製した。また、25%のアンモニア水210gを450mlのイオン交換水に溶解し、さらにイオン交換水で希釈して1100mlのアルカリ性溶液を調製した。
図1〜図3に示す製造装置(アウターノズル型スーパーアジテーター)を用いて金属化合物のナノコロイド溶液を作製した。なお、ローター11として、外径42mmのものを使用し、ローター11と外側ステータ12との間のギャップを0.5mmとした。また、外側ステータ12として、ノズル15A、ノズル15B及びノズル15Cがそれぞれ2個ずつ設けられているものを使用した。
先ず、ローター11の回転方向の上流側のノズルから、前記原料溶液及び前記アルカリ性溶液が順に吐出されるように、前記原料溶液の送液ホース(図示なし)をノズル15Aに接続されている流路16Aに、前記アルカリ性溶液の送液ホース(図示なし)をノズル15Bに接続されている流路16Bに、それぞれ接続した(ノズル15C及び流路16Cは未使用)。また、各送液ホースには独立した送液ポンプを接続した。
次に、200mlのビーカー20にスタートアップ液としてイオン交換水200mlを入れ、アウターノズル型ホモジナイザー10の先端を前記スタートアップ液に浸るようにセットした。アウターノズル型ホモジナイザー10におけるローター11を8000rpmで回転させながら前記原料溶液と前記アルカリ性溶液とをそれぞれ50ml/minの供給速度で送液ポンプを用いてノズル15A及びノズル15Bからローター11と外側ステータ12との間の領域に送液した。なお、ローター11と外側ステータ12との間の領域における流れが層流であると仮定して算出した剪断速度は、35186sec−1であった。
ビーカー20からあふれ出てくる金属化合物のナノコロイドをビーカー20の下にセットした5Lのビーカー(図示せず)で捕集した。得られたナノコロイドを、2気圧の加圧下、120℃で2時間加熱して、沈殿物を熟成させた。その後、熟成された沈殿物を含む水溶液を100℃/時間の昇温速度で400℃まで加熱し、次いで400℃で5時間仮焼成した後、600℃で5時間焼成して複合酸化物粉末Aを調製した。得られた複合酸化物粉末Aは、16.0質量%のアルミナ、75.4質量%のセリア及び8.6質量%のジルコニアによって構成されており、その比表面積は88m2/gであった。
次いで、得られた複合酸化物粉末A90g当たり、セリアゾルバインダ(多木化学社製、「U−15」、固形分濃度15質量%)66.7gを添加し、湿式アトライタで20分間混合してスラリーを得た。このスラリーを直径23mm×長さ25mm、体積10.4mlのコージェライト製ハニカムモノリス基材(400セル/平方インチ)に、基材1L当り前記複合酸化物粉末Aが240gとなるように塗布(コート)した後、500℃で3時間焼成せしめることにより、セリア−ジルコニア−アルミナ複合酸化物からなる担体が担持された触媒担体担持基材Aを得た。
次に、触媒担体担持基材Aに担持されているセリア−ジルコニア−アルミナ複合酸化物担体に、ロジウムが溶解している硝酸ロジウム水溶液を所定量含浸させ、選択吸着法によりロジウムを担持させた後、大気中、500℃で3時間焼成することにより前記担体にロジウムを担持して、モノリス基材に担持された形態の水蒸気改質触媒(ロジウム/セリア−ジルコニア−アルミナ複合酸化物担体)を得た。なお、モノリス基材1L当たりのロジウムの担持量は4.8g(/L)であった。得られたモノリス基材に担持された形態の水蒸気改質触媒をモノリス触媒試料とした。
(実施例2)
硝酸アルミニウム9水和物0.31モル(117.7g)、硝酸プラセオジム6水和物0.045モル(19.5g)、硝酸セリウム6水和物0.44モル(190.3g)及び硝酸ジルコニル2水和物0.070モル(18.6g)を300mlのイオン交換水に溶解し、さらにイオン交換水で希釈して1100mlの原料溶液を調製した。また、25%のアンモニア水206gを450mlのイオン交換水に溶解し、さらにイオン交換水で希釈して1100mlのアルカリ性溶液を調製した。
前記原料溶液及び前記アルカリ性溶液を用いた以外は実施例1と同様にして複合酸化物粉末Bを調製した。得られた複合酸化物粉末Bは、15.0質量%のアルミナ、69.5質量%のセリア、7.9質量%のジルコニア及び7.6質量%の酸化プラセオジムによって構成されており、その比表面積は87m2/gであった。
次に、複合酸化物粉末Aの代わりに前記複合酸化物粉末Bを用いた以外は実施例1と同様にしてセリア−ジルコニア−アルミナ−酸化プラセオジム複合酸化物からなる担体が担持された触媒担体担持基材Bを調製し、さらに、モノリス基材に担持された形態の水蒸気改質触媒(ロジウム/セリア−ジルコニア−アルミナ−酸化プラセオジム複合酸化物担体)を得た。なお、モノリス基材1L当たりのロジウムの担持量は4.8g(/L)であった。得られたモノリス基材に担持された形態の水蒸気改質触媒をモノリス触媒試料とした。
(比較例1)
硝酸アルミニウム9水和物0.2モル(75.1g)を2000mlのイオン交換水に添加し、プロペラ撹拌器で5分間撹拌して溶解した。この溶液に硝酸セリウム6水和物0.43モル(185.1g)を添加して5分間撹拌した。次いで、この混合水溶液に、硝酸ジルコニル2水和物0.068モル(18.1g)をイオン交換水30gに溶解した水溶液を添加して5分間撹拌した。得られた混合水溶液に25質量%のアンモニア水177gを添加して10分間撹拌し、沈殿物を含む水溶液を得た。この水溶液を2気圧の加圧下、120℃で2時間加熱し、沈殿物を熟成させた。
その後、熟成された沈殿物を含む水溶液を100℃/時間の昇温速度で400℃まで加熱し、次いで400℃で5時間仮焼成した後、600℃で5時間焼成して比較用の複合酸化物粉末Cを調製した。得られた複合酸化物粉末Cは、11.1質量%のアルミナ、79.8質量%のセリア及び9.1質量%のジルコニアによって構成されており、その比表面積は82m2/gであった。
次に、複合酸化物粉末Aの代わりに前記複合酸化物粉末Cを用いた以外は実施例1と同様にしてセリア−ジルコニア−アルミナ複合酸化物からなる担体が担持された比較用の触媒担体担持基材Cを調製し、さらに、モノリス基材に担持された形態の比較用水蒸気改質触媒(ロジウム/セリア−ジルコニア−アルミナ複合酸化物担体)を得た。なお、モノリス基材1L当たりのロジウムの担持量は4.8g(/L)であった。得られたモノリス基材に担持された形態の比較用水蒸気改質触媒を比較用モノリス触媒試料とした。
(比較例2)
硝酸アルミニウム9水和物0.2モル(75.1g)、硝酸セリウム6水和物0.43モル(185.1g)及び硝酸ジルコニル2水和物0.068モル(18.1g)を2000mlのイオン交換水に溶解した。得られた混合水溶液に共沈剤としてアンモニア水189gを滴下して複合水酸化物を沈殿させた。この沈殿物を含む水溶液を遠心分離して沈殿物を取り出し、沈殿物を150℃の温度雰囲気下で16時間乾燥させた後、600℃で5時間焼成することにより比較用の複合酸化物粉末Dを調製した。得られた複合酸化物粉末Dは、11.1質量%のアルミナ、79.8質量%のセリア及び9.1質量%のジルコニアによって構成されており、その比表面積は約150m2/gであった。
次に、複合酸化物粉末Aの代わりに前記複合酸化物粉末Dを用いた以外は実施例1と同様にしてセリア−ジルコニア−アルミナ複合酸化物からなる担体が担持された比較用の触媒担体担持基材Dを調製し、さらに、モノリス基材に担持された形態の比較用水蒸気改質触媒(ロジウム/セリア−ジルコニア−アルミナ複合酸化物担体)を得た。なお、モノリス基材1L当たりのロジウムの担持量は4.8g(/L)であった。得られたモノリス基材に担持された形態の比較用水蒸気改質触媒を比較用モノリス触媒試料とした。
(比較例3)
硝酸アルミニウム9水和物0.31モル(117.7g)を2000mlのイオン交換水に添加し、プロペラ撹拌器で5分間撹拌して溶解した。この溶液に硝酸セリウム6水和物0.44モル(190.3g)を添加して5分間撹拌した。次いで、この混合水溶液に、硝酸ジルコニル2水和物0.070モル(18.6g)をイオン交換水30gに溶解した水溶液を添加して5分間撹拌した。得られた混合水溶液に25質量%のアンモニア水210gを添加して10分間撹拌し、沈殿物を含む水溶液を得た。この水溶液を2気圧の加圧下、120℃で2時間加熱し、沈殿物を熟成させた。
その後、熟成された沈殿物を含む水溶液を100℃/時間の昇温速度で400℃まで加熱し、次いで400℃で5時間仮焼成した後、600℃で5時間焼成して比較用の複合酸化物粉末Eを調製した。得られた複合酸化物粉末Eは、16.0質量%のアルミナ、75.4質量%のセリア及び8.6質量%のジルコニアによって構成されており、その比表面積は97m2/gであった。
次に、複合酸化物粉末Aの代わりに前記複合酸化物粉末Eを用いた以外は実施例1と同様にしてセリア−ジルコニア−アルミナ複合酸化物からなる担体が担持された比較用の触媒担体担持基材Eを調製し、さらに、モノリス基材に担持された形態の比較用水蒸気改質触媒(ロジウム/セリア−ジルコニア−アルミナ複合酸化物担体)を得た。なお、モノリス基材1L当たりのロジウムの担持量は4.8g(/L)であった。得られたモノリス基材に担持された形態の比較用水蒸気改質触媒を比較用モノリス触媒試料とした。
(比較例4)
硝酸アルミニウム9水和物0.29モル(110.4g)及び硝酸プラセオジム6水和物0.045モル(19.5g)を2000mlのイオン交換水に添加し、プロペラ撹拌器で5分間撹拌して溶解した。この溶液に硝酸セリウム6水和物0.40モル(175.2g)を添加して5分間撹拌した。次いで、この混合水溶液に、硝酸ジルコニル2水和物0.064モル(17.1g)をイオン交換水30gに溶解した水溶液を添加して5分間撹拌した。得られた混合水溶液に25質量%のアンモニア水206gを添加して10分間撹拌し、沈殿物を含む水溶液を得た。この水溶液を2気圧の加圧下、120℃で2時間加熱し、沈殿物を熟成させた。
その後、熟成された沈殿物を含む水溶液を100℃/時間の昇温速度で400℃まで加熱し、次いで400℃で5時間仮焼成した後、600℃で5時間焼成して比較用の複合酸化物粉末Fを調製した。得られた複合酸化物粉末Fは、15.0質量%のアルミナ、69.5質量%のセリア、7.9質量%のジルコニア及び7.6質量%の酸化プラセオジムによって構成されており、その比表面積は97m2/gであった。
次に、複合酸化物粉末Aの代わりに前記複合酸化物粉末Fを用いた以外は実施例1と同様にしてセリア−ジルコニア−アルミナ−酸化プラセオジム複合酸化物からなる担体が担持された比較用の触媒担体担持基材Fを調製し、さらに、モノリス基材に担持された形態の比較用水蒸気改質触媒(ロジウム/セリア−ジルコニア−アルミナ−酸化プラセオジム複合酸化物担体)を得た。なお、モノリス基材1L当たりのロジウムの担持量は4.8g(/L)であった。得られたモノリス基材に担持された形態の比較用水蒸気改質触媒を比較用モノリス触媒試料とした。
[エタノールとガソリンとの混合燃料の水蒸気改質反応活性試験及び耐久試験]
実施例において得られたモノリス触媒試料及び比較例において得られた比較用モノリス触媒試料について、水蒸気改質反応活性試験及び耐久試験を行った。
先ず、エタノール(無水)と市販ガソリンを体積比20:80で混合することにより、エタノールを20体積%配合したE20燃料を調合した。次いで、ガス流量9.2L/分のCO2(14%)/N2混合ガスに対して、E20燃料及びイオン交換水をそれぞれ液体ポンプを用いて1.35mL/分及び1.09mL/分の流量で添加して気化させることにより、活性試験及び耐久試験で使用するモデルガスを調製した。このときの水蒸気/カーボン比(S/C)は0.80であり、ガス流量は10.8L/分となった。
次に、実施例において得られたモノリス触媒試料及び比較例において得られた比較用モノリス触媒試料を、それぞれ内径23.5mmのステンレス製反応管に充填し、この反応管を固定床流通式反応装置に装着した。次いで、前処理として、上記モデルガスをモノリス触媒に空間速度約60000hr−1で供給し、触媒床温度400℃、500℃及び600℃の順序でそれぞれ約1時間保持した。その後、活性試験及び耐久試験として、触媒床温度を500℃に設定して120分間保持した。そのときの水素(H2)及び一酸化炭素(CO)の発生濃度をガスクロマトグラフ法により測定して燃料改質率を算出し、その経時変化を調べた。
実施例1〜2及び比較例1〜4で得たモノリス触媒についての炭化水素類からなる燃料(E20燃料)の水蒸気改質反応活性を示すグラフを図4に示す。図4に示した実施例1〜2の結果と比較例1〜4の結果との比較から明らかなように、ほぼ初期状態である反応時間が10分の時点では、実施例1〜2のモノリス触媒は、比較例1〜3の比較用モノリス触媒に比べて高い水蒸気改質反応活性を示し、比較例4の比較用モノリス触媒とほぼ同等の水蒸気改質反応活性を示すことがわかった。
また、反応時間の経過とともに、実施例1〜2及び比較例1〜4のいずれのモノリス触媒も活性が低下したが、比較例2の比較用モノリス触媒は活性の低下が最も顕著であり、続いて比較例1及び比較例4の比較用モノリス触媒の活性の低下が顕著であった。これに対して、比較例3の比較用モノリス触媒は、燃料改質率が実施例1〜2のモノリス触媒と同じように経時変化しているように見えるが、初期状態(反応時間10分)の燃料改質率に対する反応時間120分での燃料改質率の割合を算出すると、実施例1〜2のモノリス触媒では57〜58%、比較例3の比較用モノリス触媒では49%であり、実施例1〜2のモノリス触媒は比較例3の比較用モノリス触媒に比べて燃料改質率の低下率が小さいことがわかった。
これらの結果から、実施例1〜2のモノリス触媒は、比較例1〜4の比較用モノリス触媒に比べて、初期状態のE20燃料水蒸気改質反応活性が同等以上であり、かつ耐久性に優れていることが確認された。
[複合酸化物担体の表面分析]
実施例1〜2及び比較例1〜4で得られた複合酸化物担体の表面分析を、X線光電子分光法(XPS:X−ray Photoelectron Spectroscopy)により行った。XPS装置として走査型X線光電子分光分析装置(アルバック・ファイ社製、「Quantum−2000」)を使用し、X線源にAlKαを適用し、光電子取出角:45°、分析領域:800μm×500μm、パスエネルギー:26eV、エネルギーステップ:0.1eVの条件でX線光電子スペクトル(XPS)を測定した。表面組成はAl2p、Ce3d、Zr3d、Ce以外の希土類元素の3dのピークを用いて算出した。その結果を表1に示す。なお、参考として表1には担体全体の組成(仕込値)を併記した。
表1に示した実施例1〜2の結果と比較例1〜4の結果との比較から明らかなように、実施例1〜2のモノリス触媒の複合酸化物担体及び比較例1、3〜4の比較用モノリス触媒の複合酸化物担体は、表面のAl組成が試料全体よりも著しく高くなっていること、具体的には1.5倍以上になっていることが確認された。一方、比較例2の比較用モノリス触媒の複合酸化物担体は、表面のAl組成が試料全体とほぼ同等(1.12倍)であった。
これらの結果から、実施例1〜2の複合酸化物担体及び比較例1、3〜4の比較用複合酸化物担体では、セリアとジルコニアとからなる複合酸化物又はセリアとジルコニアと酸化プラセオジムとからなる複合酸化物(以下、これらをまとめて「セリアとジルコニアとを含む複合酸化物」という)の結晶粒子の周りに、アルミナの微細な粒子が配置していると考えられる。一方、比較例2の比較用複合酸化物担体では、セリアとジルコニアとを含む複合酸化物の結晶粒子とアルミナの微細な粒子とが均一に分散していると考えられる。 セリアとジルコニアとを含む複合酸化物の結晶粒子の周りにアルミナの微細な粒子が配置している複合酸化物担体上に担持された白金族金属(実施例1〜2及び比較例1、3〜4)は、セリアとジルコニアとを含む複合酸化物とアルミナの微細な粒子とが均一に分散している複合酸化物担体上に担持された白金族金属(比較例2)に比べて、触媒活性を発現するメタル状態を形成しやすいと考えられ、このことが高い水蒸気改質反応活性を示した原因の一つであると考えられる。
また、一般に、セリアとジルコニアとを含む複合酸化物は、還元雰囲気では粒成長しやすく、活性試験時(500℃)に粒成長しやすいと考えられる。比較例2のモノリス触媒では、セリアとジルコニアとを含む複合酸化物の結晶粒子とアルミナの微細な粒子とが均一に分散しているため、アルミナによる障壁効果が小さく、活性試験時にセリアとジルコニアとを含む複合酸化物が粒成長し、その結果、担持された白金族金属粒子も粒成長し、耐久性が低下したと考えられる。一方、実施例1〜2及び比較例1、3〜4のモノリス触媒では、セリアとジルコニアとを含む複合酸化物の結晶粒子の周りにアルミナの微細な粒子が配置しているため、活性試験時のセリアとジルコニアとを含む複合酸化物の粒成長がアルミナの障壁効果により抑制され、それによって、担持された白金族金属粒子の粒成長も抑制されたと考えられ、このことが、表面のAl組成が試料全体より著しく高いモノリス触媒(実施例1〜2及び比較例1、3〜4)が、表面のAl組成が試料全体とほぼ同等であるモノリス触媒(比較例2)に比べて、優れた耐久性を示した原因の一つであると考えられる。
さらに、セリアとジルコニアとを含む複合酸化物の結晶粒子とアルミナの微細な粒子とが均一に分散している複合酸化物担体(比較例2)では、水蒸気と炭素とのモル比(S/C)が低い条件においてコーキングや炭化水素の重合物質により触媒被毒が起こり、モノリス触媒の耐久性が低下したと考えられる。一方、セリアとジルコニアとを含む複合酸化物の結晶粒子の周りにアルミナの微細な粒子が配置している複合酸化物担体(実施例1〜2及び比較例1、3〜4)は、高温に曝されることによって複合酸化物の結晶格子内から酸素を放出する特性があるため、その酸素によって炭素質物質が酸化除去され、水蒸気と炭素とのモル比(S/C)が低い条件であっても、コーキングや炭化水素の重合物質による触媒被毒が起こりにくくなったと考えられ、このことも、表面のAl組成が試料全体より著しく高いモノリス触媒(実施例1〜2及び比較例1、3〜4)が、表面のAl組成が試料全体とほぼ同等であるモノリス触媒(比較例2)に比べて、優れた耐久性を示した原因の一つであると考えられる。
[複合酸化物担体の結晶粒子の粒径測定]
実施例1〜2及び比較例1〜4で得られた複合酸化物担体のX線回折(XRD)パターンを、粉末X線回折装置(株式会社リガク製の全自動水平型多目的X線回折装置「SmartLab」)を使用し、X線源としてCuKαを使用して測定した。蛍石型結晶構造を有する結晶の粒子径は、XRDパターンにおける2θ=28.7〜28.9degのピークを用いて求めた。その結果を図5に示す。
図5に示した結果から明らかなように、実施例1〜2のモノリス触媒の複合酸化物担体における蛍石型結晶構造を有する結晶の粒子径は、3.0〜6.5nmの範囲内にあり、比較例1、3〜4の比較用モノリス触媒の複合酸化物担体における蛍石型結晶構造を有する結晶の粒子径(7nm以上)に比べて小さいことが確認された。一方、比較例2の比較用モノリス触媒の複合酸化物担体における蛍石型結晶構造を有する結晶の粒子径は、実施例1〜2のモノリス触媒の複合酸化物担体における蛍石型結晶構造を有する結晶の粒子径とほぼ同等であった。
蛍石型結晶構造を有する結晶の粒子径が小さくなると、複合酸化物担体に担持された白金族金属の結晶粒子の粒子径も小さくなり、活性サイトが多くなると考えられ、このことが、結晶粒子径が小さいモノリス触媒(実施例1〜2)が、結晶粒子径が大きいモノリス触媒(比較例1、3〜4)に比べて、高い水蒸気改質反応活性を示した原因の一つであると考えられる。
また、蛍石型結晶構造を有する結晶の粒子径が小さくなると、複合酸化物担体が白金族金属表面の酸素を吸蔵しやすいため、担持された白金族金属が酸化状態から触媒活性を示すメタル状態に戻りやすくなると考えられ、このことが、結晶粒子径が小さいモノリス触媒(実施例1〜2)が、結晶粒子径が大きいモノリス触媒(比較例1、3〜4)に比べて、優れた耐久性を示した原因の一つであると考えられる。
さらに、蛍石型結晶構造を有する結晶の粒子径が小さくなると、複合酸化物担体から酸素が放出されやすいため、この酸素によって炭素質物質が酸化除去されやすく、水蒸気と炭素とのモル比(S/C)が低い条件であっても、コーキングや炭化水素の重合物質による触媒被毒が起こりにくくなったと考えられ、結晶粒子径が小さいモノリス触媒(実施例1〜2)が、結晶粒子径が大きいモノリス触媒(比較例1、3〜4)に比べて、優れた耐久性を示した原因の一つであると考えられる。
以上の結果から、本発明の水蒸気改質触媒においては、セリアとジルコニアとを含む複合酸化物の結晶粒子の周りにアルミナの微細な粒子が配置した構造を有しているため、セリアとジルコニアとアルミナとを含有する複合酸化物担体に担持された白金族金属は触媒活性を示すメタル状態になりやすく、また、前記結晶粒子の粒子径が6.5nm以下と非常に小さいため、活性サイトが多くなり、その結果、高いE20燃料水蒸気改質反応活性が発現したと考えられる。
また、本発明の水蒸気改質触媒においては、セリアとジルコニアとを含む複合酸化物の結晶粒子の周りにアルミナの微細な粒子が配置した構造を有しているため、セリアとジルコニアとを含む複合酸化物の粒成長がアルミナの障壁効果により抑制され、また、水蒸気と炭素とのモル比(S/C)が低い条件であっても、複合酸化物の結晶格子内から放出された酸素により炭素質物質が酸化除去されてコーキングが抑制され、さらに、複合酸化物担体の酸素吸蔵作用により白金族金属が酸化状態から触媒活性を示すメタル状態に還元され、その結果、優れた耐久性が得られたと考えられる。
[複合酸化物担体の細孔分布測定]
細孔分布測定装置(カンタクローム・インスツルメンツ・ジャパン合同会社製「Autosorb−iQ」)を用いて窒素吸着法により、実施例1〜2及び比較例1、3〜4で得られた複合酸化物担体の細孔分布を測定した。また、水銀ポロシメータ(カンタクローム株式会社製「PoreMaster60GT」)を用いて水銀圧入法により実施例1〜2及び比較例1、3〜4で得られた複合酸化物担体の細孔分布を測定した。
図6Aには窒素吸着法により測定した積算細孔容積分布を、図6Bには窒素吸着法により測定した対数微分細孔容積分布を、図7Aには水銀圧入法により測定した積算細孔容積分布を、図7Bには水銀圧入法により測定した対数微分細孔容積分布を、それぞれ示す。
図6A及び図6Bに示した結果から明らかなように、実施例1〜2の複合酸化物担体は、比較例1、3〜4の比較用複合酸化物担体に比べて、大気中、600℃で5時間焼成した後において、1.5〜5nmの範囲内の細孔直径を有するミクロ細孔が多いことがわかった。そこで、実施例1〜2及び比較例1、3〜4の複合酸化物担体について、1.5〜100nmの範囲内の細孔直径を有する細孔の積算細孔容積に対する前記ミクロ細孔の積算細孔容積の割合を算出した。その結果を図6Cに示す。図6Cに示したように、実施例1〜2の複合酸化物担体では、ミクロ細孔の積算細孔容積の割合が40%以上であるのに対して、比較例1、3〜4の比較用複合酸化物担体では40%未満であった。
また、図7A及び図7Bに示した結果から明らかなように、実施例1〜2の複合酸化物担体は、比較例1、3〜4の比較用複合酸化物担体に比べて、大気中、600℃で5時間焼成した後において、200nm〜200μmの範囲内の細孔直径を有するマクロ細孔が多いことがわかった。そこで、実施例1〜2及び比較例1、3〜4の複合酸化物担体について、5nm〜200μmの範囲内の細孔直径を有する細孔の積算細孔容積に対する前記マクロ細孔の積算細孔容積の割合を算出した。その結果を図7Cに示す。図7Cに示したように、実施例1〜2の複合酸化物担体では、マクロ細孔の積算細孔容積の割合が40%以上であるのに対して、比較例1、3〜4の比較用複合酸化物担体では40%未満であった。また、実施例1〜2の複合酸化物担体では、メソ細孔(細孔直径5〜200nm)の割合が少ないのに対して、比較例1、3〜4の比較用複合酸化物担体ではメソ細孔の割合が多いことがわかった・
一般に、活性サイトの多くはミクロ細孔内に存在するため、ミクロ細孔の割合が多いほど、触媒活性の発現に有利である。また、炭化水素の水蒸気改質反応においてコーキングが進行すると、炭素質成分が重合反応により徐々に大きくなることが知られており、細孔直径が5〜200nmのメソ細孔は容易に閉塞し、ミクロ細孔内の活性サイトへの炭化水素の拡散が阻害されると考えられる。したがって、メソ細孔が少なく、マクロ細孔が多いモノリス触媒(実施例1〜2)においては、メソ細孔が多いモノリス触媒(比較例1、3〜4)に比べて、コーキングによる細孔の閉塞が起こりにくく、ミクロ細孔内の活性サイトへの燃料成分の拡散が阻害されにくいと考えられ、このことも、実施例1〜2のモノリス触媒が、比較例1、3〜4のモノリス触媒に比べて、優れた耐久性を示した原因の一つであると考えられる。