JP7401392B2 - コアシェル型酸素吸放出材料 - Google Patents

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Description

本発明は、コアシェル型酸素吸放出材料に関する。
従来から、様々な金属酸化物を含有する複合酸化物が排ガス浄化用触媒用の担体や助触媒等として利用されてきた。このような複合酸化物中の金属酸化物としては、雰囲気中の酸素分圧に応じて酸素の吸放出が可能である(酸素吸放出能を持つ)ことから、セリアが好適に用いられてきた。そして、近年では、セリアを含有する様々な種類の複合酸化物の研究がなされており、種々のセリア-ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法が開示されている。
また、前記セリア-ジルコニア系複合酸化物は高温(例えば、1000℃以上)では熱劣化し易いといった問題を有することから、主に耐熱性をさらに向上させることを目的として、前記セリア-ジルコニア系複合酸化物からなるコアと、その表面の少なくとも一部を覆うシェルとからなるコアシェル型の複合酸化物の研究もなされている。
例えば、特許文献1には、優れた酸素吸放出能及び優れたNOx浄化性能を共に発現させることを目的とした複合酸化物として、セリア-ジルコニア系固溶体及び/又はアルミナ添加セリア-ジルコニア系固溶体からなるコアと、パイロクロア構造を有する結晶粒子を含む希土類-ジルコニア系複合酸化物からなり、前記コアの外側を被覆しているシェルと、を備えるコアシェル担体が開示されており、前記希土類としては、La、Nb、Pr、及びYが挙げられている。
さらに、特許文献2には、パイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末からなるコアと、該コアの少なくとも一部の表面に配置されているアルミナ系酸化物からなるシェルとを備えるコアシェル型酸化物材料が開示されている。
また、特許文献3には、パイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有するセリア-ジルコニア系固溶体粉末からなるコアと、該コアの少なくとも一部の表面に配置されている、αアルミナを含有するアルミナ系酸化物からなるシェルとを備えており、大気中、1100℃で5時間加熱した後の、CuKαを用いたX線回折測定により得られるX線回折パターンから求められる2θ=14.5°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比[I(14/29)値]が2%以上であり、2θ=35.2°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比[I(35/29)値]が0.03~1.2%である、ことを特徴とするコアシェル型酸素吸放出材料が開示されている。
特開2016-168586号公報 特開2017-186225号公報 特開2019-217464号公報
排ガス規制が厳しくなる一方で、資源リスクの観点から排ガス触媒に用いられる貴金属量は低減させることが求められる。排ガス浄化機能を担う貴金属は、酸素吸放出材と接触することで活性が低下する。そのため、通常は貴金属活性と酸素吸放出性能は背反となるが、酸素吸放出材をアルミナで被覆することにより、酸素吸放出材上に移動してきた貴金属の失活を抑制し、酸素吸放出性能と貴金属活性の両立が可能となる。
しかしながら、これまでのアルミナ被覆酸素吸放出材は、アルミナ被膜の耐熱性が低く、高温に曝される実際の排ガス環境下ではその効果が小さいのが現状である。
これは、従来のアルミナ被覆酸素吸放出材は、(1)アルミナ被膜が偏析しており、酸素吸放出材の露出面が多いこと、(2)アルミナ被膜の結晶安定性が低く、熱により収縮するため、高温である実際の排ガス環境下に長時間曝されると、アルミナ被膜の凝集が起きて、酸素吸放出材の露出面がさらに増加したり、アルミナ被膜が剥離したり、アルミナ被膜が貴金属を巻き込んで貴金属を失活させたりすること、に原因がある。
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、高温に曝された場合であっても、優れた酸素吸放出能を有し、かつ、優れたNOx浄化性能を発現する排ガス浄化用触媒を得ることが可能なコアシェル型酸素吸放出材料を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した結果、コアとしてのセリア-ジルコニア系複合酸化物の粒子の表面上にシェルとしてのアルミナ系酸化物が被覆されているコアシェル型酸素吸放出材料において、セリア-ジルコニア系複合酸化物にプラセオジムを含有させ、アルミナ系酸化物にθ-アルミナを含有させ、アルミナ系酸化物の被覆量を調整し、XPS測定により算出されるアルミナ被覆率を50%以上にすることによって、高温に曝された場合であっても、優れた酸素吸放出能を有し、かつ、優れたNOx浄化性能を発現することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)コアとしてのセリア-ジルコニア系複合酸化物の粒子の表面上にシェルとしてのアルミナ系酸化物が被覆されているコアシェル型酸素吸放出材料であって、
セリア-ジルコニア系複合酸化物がプラセオジムを含み、
アルミナ系酸化物がθ-アルミナを含み、
アルミナ系酸化物の含有量がセリア-ジルコニア系複合酸化物の全重量に基づいて0.05重量%~0.95重量%であり、
XPS測定により算出されるアルミナ被覆率が50%以上である、
コアシェル型酸素吸放出材料。
本発明によれば、高温に曝された場合であっても、優れた酸素吸放出能を有し、かつ、優れたNOx浄化性能を発現する排ガス浄化用触媒を得ることが可能なコアシェル型酸素吸放出材料が提供される。
実施例における性能評価に用いる排ガス浄化用触媒を模式的に示す図である。 実施例1のTEM-EDXマッピングとアルミナ被膜の回折子解析の結果を示す図である。 比較例2及び3のTEM-EDXマッピングとアルミナ被膜の回折子解析の結果を示す図である。 実施例1又は比較例1~4を含む排ガス浄化用触媒のNOx-T50を示すグラフである。 実施例1~3又は比較例1、3若しくは5~8を含む排ガス浄化用触媒のアルミナの含有量とNOx-T50の関係を示すグラフである。 実施例1~3又は比較例1若しくは8を含む排ガス浄化用触媒のアルミナの含有量と酸素吸放出性能の関係を示すグラフである。 実施例1~3並びに比較例1、3、5及び6のSSAの結果を示すグラフである。 実施例1及び比較例3のアルミナ被覆率の結果を示すグラフである。
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
本明細書では、適宜図面を参照して本発明の特徴を説明する。図面では、明確化のために各部の寸法及び形状を誇張しており、実際の寸法及び形状を正確に描写してはいない。それ故、本発明の技術的範囲は、これら図面に表された各部の寸法及び形状に限定されるものではない。なお、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料は、下記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
本発明は、コアとしてのセリア-ジルコニア系複合酸化物の粒子の表面上にシェルとしてのアルミナ系酸化物が被覆されているコアシェル型酸素吸放出材料であって、セリア-ジルコニア系複合酸化物がプラセオジムを含み、アルミナ系酸化物がθ-アルミナを含み、アルミナ系酸化物の被覆量が一定量であり、XPS測定により算出されるアルミナ被覆率が一定値以上である、コアシェル型酸素吸放出材料に関する。
ここで、セリア-ジルコニア系複合酸化物(固溶体)は、コアシェル型酸素吸放出材料のコアであり、排ガス浄化用触媒の技術分野において一般に知られるものであり、リーン雰囲気で酸素を吸蔵し、リッチ雰囲気で酸素を放出するOSC(Oxygen Storage Capacity)特性を有する、酸素貯蔵放出能に優れた材料である。
セリア-ジルコニア系複合酸化物は、CeとZrとが規則的に配列しているパイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有することが好ましい。このような規則相を有するセリア-ジルコニア系複合酸化物は、蛍石構造を有するセリア-ジルコニア系複合酸化物よりもバルク内の酸素拡散速度が大きいため、酸素吸放出能(酸素吸放出速度(OSC-r))に優れている。なお、本発明に係るセリア-ジルコニア系複合酸化物がパイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有することは、CuKαを用いたX線回折測定により前記の規則相に特有のピークが認められることで確認することができる。
本発明に係るセリア-ジルコニア系複合酸化物におけるCeとZrの含有比は、モル比(Ce:Zr)で、通常35:65~65:35であり、好ましくは45:55~55:45である。前記モル比(Ce:Zr)が前記範囲であることで、高温に曝されても、規則相が再配列によって蛍石構造に変化することがなく、酸素吸放出能を高いまま維持することができる。
このような規則相を有するセリア-ジルコニア系複合酸化物は、プラセオジムを含む。セリア-ジルコニア系複合酸化物がプラセオジムを含むことにより、高温に曝された場合の酸素吸放出能の低下をさらに抑制することができる。
本発明に係るセリア-ジルコニア系複合酸化物におけるCe及びZrに対するPrの含有比は、モル比(Ce+Zr:Pr)で、通常99.5:0.5~80:20、好ましくは99.5:0.5~90:10、より好ましくは99.5:0.5~95:5、さらに好ましくは99:1~96:4である。前記モル比(Ce+Zr:Pr)が前記範囲であることで、高温に曝された場合の酸素吸放出能の低下を効率よく抑制することができる。なお、プラセオジムは、通常、酸化物としてセリア-ジルコニア系複合酸化物に含有されており、さらに、前記規則相を有するセリア-ジルコニア系複合酸化物に、固溶、分散等した状態で存在していることが好ましく、プラセオジムによる効果を確実に得るためには、固溶していることがより好ましい。
なお、本発明に係るセリア-ジルコニア系複合酸化物は、Ce以外の希土類元素やTi等の添加元素をさらに含んでいてもよい。前記添加元素としては、Sc、Y、La、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Yb、Lu、及びTi等が挙げられる。前記添加元素としては、中でも、高温に曝された場合の酸素吸放出能の低下がさらに抑制されるという観点から、Y、La、Ndが好ましい。なお、これらの添加元素は1種が単独で含有されていても2種以上が含有されていてもよい。また、前記添加元素が含有される場合、該元素は、通常、酸化物として前記コアに含有されており、さらに、前記規則相を有するセリア-ジルコニア系複合酸化物に、固溶、分散等した状態で存在していることが好ましく、前記添加元素による効果を確実に得るためには、固溶していることがより好ましい。
本発明に係るセリア-ジルコニア系複合酸化物が前記添加元素を含む場合、その含有量としては、セリア元素、ジルコニア元素、プラセオジム元素及び該添加元素の合計に対する該添加元素の割合(元素換算)で、通常20mol%以下であり、好ましくは10mol%以下であり、より好ましくは5mol%以下である。前記添加元素の量が前記範囲であることにより、規則相の耐熱性及び高温に曝された場合での酸素吸放出能を高いまま維持することができる。なお、前記添加元素の含有量の下限としては特に制限がないが、前記添加元素による効果を確実に得るためには、通常0.1mol%以上である。
本発明に係るコアを形成するセリア-ジルコニア系複合酸化物では、その粉末において、体積基準の粒度分布における累積体積が50%となる二次粒子径D50が通常0.2μm~8.0μm、好ましくは1.0μm~7.5μm、より好ましくは3.0μm~7.0μmである。前記二次粒子径D50が前記範囲であることで、粒子が小さくなることにより起こり得るパイロクロア相構造及びκ相構造の熱劣化による蛍石構造への変化を抑制し、CeOの酸素利用効率の減少を抑制し、酸素吸放出能の低下を防ぐことができる。さらに、粒子が大きくなることにより起こり得る比表面積の低下が抑えられ、粒子内部からの酸素の拡散距離が長くなるのを抑え、酸素吸放出能、特に、酸素吸放出速度(OSC-r)の低下を抑制することができる。なお、セリア-ジルコニア系複合酸化物の粉末における前記二次粒子径D50は、例えば、粒度分布測定装置を用いて動的光散乱法により、前記セリア-ジルコニア系複合酸化物の粉末の体積基準の粒度分布曲線を求め、この粒度分布曲線における累積体積が50%となる粒子径として求めることができる。
また、セリア-ジルコニア系複合酸化物の粉末のBET法による比表面積としては、通常0.1m/g~20m/gであり、好ましくは0.5m/g~10m/gである。前記比表面積が前記範囲であることで、比表面積が小さくなることで起こり得る酸素の吸放出を行うサイトの減少による酸素吸放出能の低下を抑制し、比表面積が大きくなることで起こり得る粒子径の小さな粒子の増加による高温耐久性の低下を防ぐことができる。なお、このような比表面積は吸着等温線からBET等温吸着式を用いて算出することができる。
本発明のコアシェル型酸素吸放出材料は、前記で説明したコアとしてのセリア-ジルコニア系複合酸化物の粒子の表面に被覆されているシェルとしてのアルミナ系酸化物を含む。
本発明に係るアルミナ系酸化物は、熱に安定な結晶相であるθ-アルミナを含み、当該アルミナ系酸化物がθ-アルミナを含むことは、CuKαを用いたX線回折測定によってθ-アルミナに特有のピークが認められることで確認することができる。本発明に係るアルミナ系酸化物がθ-アルミナを含むことによって、アルミナ被覆がアモルファスを含む場合に起こり得る熱収縮を低減し、耐熱性を向上させることができる。
本発明に係るアルミナ系酸化物は、θ-アルミナ以外のアルミナを含んでいてもよい。このようなアルミナとしては、αアルミナが挙げられる。θ-アルミナ以外のアルミナが含有されることは、CuKαを用いたX線回折測定によりθ-アルミナに由来するピーク以外のピークが認められること、あるいはAl量が少量のためXRDで検出されない場合は、TEMによるDiffraction解析で確認することができる。
本発明に係るアルミナ系酸化物におけるθ-アルミナの含有量は、アルミナ系酸化物全重量に基づいて、通常50重量%~100重量%、好ましくは90重量%~100重量%である。ここで、アルミナ系酸化物におけるθ-アルミナの含有量は、(1)XRDの強度比、(2)TEMの電子線回折分析のN増しによるθ-アルミナと同定されるスポットの割合(頻度)を算出して比較、(3)HgポロシメーターやN吸着による細孔分布分析における特定の領域の細孔容量についての、100%θ-アルミナと0%θ-アルミナの間の検量線における、分析サンプルの位置からの算出等により求めることができる。
また、このようなアルミナ系酸化物は、希土類元素(好ましくはCe以外の希土類元素)をさらに含んでいてもよい。このような希土類元素を含むことで、シェルの高温耐久性をより向上することができる。また、前記希土類元素としては、Sc、Y、La、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Yb、及びLu等が挙げられ、中でも、シェルの高温耐久性がさらに向上するという観点から、Laが好ましい。なお、これらの希土類元素は1種が単独で含有されていても2種以上が含有されていてもよい。また、前記希土類元素が含有される場合、該元素は、通常、酸化物としてアルミナ系酸化物に含有されている。
本発明に係るアルミナ系酸化物が前記希土類元素を含む場合、その含有量としては、Al元素及び該希土類元素の合計に対する該希土類元素の割合(元素換算)で、通常10mol%以下であり、好ましくは5mol%以下であり、より好ましくは2mol%以下である。前記希土類元素の含有量が前記範囲であることにより、アルミネート相の形成を抑制し、シェルの比表面積の低下や高温耐久性の低下を防止することができる。なお、前記希土類元素の含有量の下限としては特に制限がないが、前記希土類元素による効果を確実に得るためには、通常0.1mol%以上である。
本発明のコアシェル型酸素吸放出材料においては、セリア-ジルコニア系複合酸化物の粒子の少なくとも一部の表面にアルミナ系酸化物が被覆されている。アルミナ系酸化物はセリア-ジルコニア系複合酸化物の粒子の表面の全面を覆っていてもよい。このようなアルミナ系酸化物のセリア-ジルコニア系複合酸化物に対する被覆率は、アルミナ系酸化物の表面から深さ3nmの領域(以下、「最表面層」ともいう。)におけるAl元素の平均濃度で、50%以上であり、好ましくは52%以上である。アルミナ系酸化物のセリア-ジルコニア系複合酸化物に対する被覆率の上限としては特に制限がないが、通常100%以下である。なお、本発明において、最表面層のAl元素の被覆率は、コアシェル型酸素吸放出材料のX線光電子分光(XPS)スペクトルを、例えば、X線光電子分光分析装置を用い、単色化されたAlKα(1486.6eV)をX線源とし、光電子取出角:45°、分析領域:200μmφ、チャージアップ補正:Zr3d 182.2eV(ZrO)の条件で測定し、得られたXPSスペクトルに基づいて最表面層に存在する元素を定量し、全金属元素(コアシェル型酸素吸放出材料に含有されるカチオン元素(Al元素を含む))に対するAl元素の割合(Al元素量/全金属元素量×100)として求めることができる。例えば、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料が、コアとしてのセリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物及びシェルとしてのアルミナを含む場合、最表面層のAl元素の被覆率は、{(Al[at%]/(Al+Ce+Zr+Pr[at%]))×100}として求めることができる。
本発明のコアシェル型酸素吸放出材料において、アルミナ系酸化物の含有量(好ましくはアルミナの含有量)としては、プラセオジムを含むセリア-ジルコニア系複合酸化物全重量に基づいて、0.05重量%~0.95重量%、好ましくは0.20重量%~0.80重量%、より好ましくは0.25重量%~0.75重量%である。
また、アルミナ系酸化物の厚みとしては、通常20nm以下、好ましくは15nm以下、より好ましくは10nm以下である。あるいは、アルミナ系酸化物の厚みとしては、通常1nm~10nm、例えば1nm~5nm、好ましくは2nm~10nm、より好ましくは5nm~8nmである。なお、本発明においては、アルミナ系酸化物の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察することで算出することができ、通常5箇所~100箇所、例えば5箇所~10箇所の厚みの平均値とすることができる。
アルミナ系酸化物の被覆率、含有量及び厚みが前記範囲であることにより、コアシェル型酸素吸放出材料におけるコアとしての酸素吸放出材料の露出面が低減し、高温に曝された場合であっても、貴金属と酸素吸放出材料の接触を抑制することが可能となり、さらにアルミナ同士の凝集も抑制することが可能となり、貴金属の浄化性能を向上することができる。より具体的には、コアシェル型酸素吸放出材料に貴金属が接触している触媒において、貴金属(特に、ロジウム)がセリア-ジルコニア系複合酸化物中のセリアと接触して、貴金属(特に、ロジウム)とセリアとの相互作用による貴金属の還元の阻害を抑制し、NOx浄化性能の低下を防ぐことができる。
本発明に係るコアシェル型酸素吸放出材料では、その粉末において、体積基準の粒度分布における累積体積が50%となる二次粒子径D50が通常0.2μm~8.0μm、好ましくは1.0μm~7.5μm、より好ましくは3.0μm~7.0μmである。前記二次粒子径D50が前記範囲であることで、粒子が小さくなることにより起こり得るセリア-ジルコニア系複合酸化物のパイロクロア相構造及びκ相構造の熱劣化による蛍石構造への変化を抑制し、CeOの酸素利用効率の減少を抑制し、酸素吸放出能の低下を防ぐことができる。さらに、粒子が大きくなることにより起こり得る比表面積の低下が抑えられ、粒子内部からの酸素の拡散距離が長くなるのを抑え、酸素吸放出能、特に、酸素吸放出速度(OSC-r)の低下を抑制することができる。なお、コアシェル型酸素吸放出材料の粉末における前記二次粒子径D50は、例えば、粒度分布測定装置を用いて動的光散乱法により、コアシェル型酸素吸放出材料の粉末の体積基準の粒度分布曲線を求め、この粒度分布曲線における累積体積が50%となる粒子径として求めることができる。
また、コアシェル型酸素吸放出材料の粉末のBET法による比表面積としては、通常0.1m/g~20m/gであり、好ましくは0.5m/g~10m/gである。比表面積が前記範囲であることで、比表面積が小さくなることで起こり得る酸素の吸放出を行うサイトの減少による酸素吸放出能の低下を抑制し、比表面積が大きくなることで起こり得る粒子径の小さな粒子の増加による高温耐久性の低下を防ぐことができる。なお、このような比表面積は吸着等温線からBET等温吸着式を用いて算出することができる。
次いで、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料の製造方法について説明する。本発明のコアシェル型酸素吸放出材料は、例えば、以下の本発明のコアシェル型酸素吸放出材料の製造方法、すなわち、
プラセオジムを含むセリア-ジルコニア系複合酸化物を加圧成形して得られる成形体に1500℃以上の温度で還元処理を施した後、粉砕処理を施して、パイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有するプラセオジムを含むセリア-ジルコニア系複合酸化物の粉末を得る工程(還元処理工程)と、
当該プラセオジムを含むセリア-ジルコニア系複合酸化物の粉末の粒子表面に、CVD又はスパッタ蒸着等の均一薄膜成形手法を用いて、アルミナ系酸化物を被覆する工程(アルミナ系酸化物被覆工程)と、
当該アルミナ系酸化物が被覆されたプラセオジムを含むセリア-ジルコニア系複合酸化物の粉末を800℃~1050℃の温度に加熱して、アルミナ系酸化物に含まれるアルミナの一部又は全部をθ-アルミナにする工程(焼成工程)と
を含む製造方法により製造することができる。
(還元処理工程)
プラセオジムを含むセリア-ジルコニア系複合酸化物は、例えば以下の共沈法により調製することができる。まず、セリウムの塩(例えば、硝酸塩)、ジルコニウムの塩(例えば、硝酸塩)、プラセオジムの塩(例えば、硝酸塩)、必要に応じて添加元素の塩(例えば、硝酸塩)及び界面活性剤等を含有する水溶液を準備する。続いて、当該溶液と、塩基、例えばアンモニアとを混合することで共沈殿物を生成させ、得られた共沈殿物を分離回収して洗浄した後、乾燥処理、焼成処理、粉砕処理を施すことによって、粉末状のプラセオジムを含むセリア-ジルコニア系複合酸化物を得ることができる。なお、前記水溶液中の各原料の含有量は、得られるプラセオジムを含むセリア-ジルコニア系複合酸化物中の各成分の含有量が前記の範囲になるように適宜調整する。
本発明のコアシェル型酸素吸放出材料を製造する場合には、まず、このようなプラセオジムを含むセリア-ジルコニア系複合酸化物を加圧成形する。加圧成形時の圧力としては通常400kgf/cm~3500kgf/cm(39MPa~343MPa)であり、好ましくは500kgf/cm~3000kgf/cm(49MPa~294MPa)である。成形圧力が前記範囲であることで、得られるコアシェル型酸素吸放出材料が高温に曝された場合の酸素吸放出能を維持することができる。なお、このような加圧成形の方法としては特に制限はなく、静水圧プレス等の公知の加圧成形方法を適宜採用できる。
次に、得られた加圧成形体に1500℃以上の温度で還元処理を施す。これにより、本発明に係るプラセオジムを含むセリア-ジルコニア系複合酸化物に、パイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を形成することができる。このような規則相を有するプラセオジムを含むセリア-ジルコニア系複合酸化物は、表面の熱安定性に優れており、緻密で固相反応が進行しにくい構造を有している。還元処理温度が前記温度範囲であることで、規則相の安定性を高くして、得られるコアシェル型酸素吸放出材料が高温に曝された場合での酸素吸放出能を維持することができる。また、規則相の安定性が向上し、得られるコアシェル型酸素吸放出材料が高温に曝された場合の酸素吸放出能の低下が確実に抑制されるという観点から、還元処理温度としては1600℃以上が好ましい。また、還元処理時間としては通常0.5時間以上であり、好ましくは1時間以上である。還元処理時間が前記温度範囲であることで、規則相の安定性を高くして、得られるコアシェル型酸素吸放出材料が高温に曝された場合での酸素吸放出能を維持することができる。なお、還元処理温度及び還元処理時間の上限としては特に制限はないが、エネルギー効率や副生成物の低減の観点から、それぞれ、通常2000℃以下(好ましくは1900℃以下)で、通常24時間以下(好ましくは10時間以下)である。
還元処理の方法としては、還元雰囲気下で前記加圧成形体に所定の温度で還元処理を施すことができる方法であれば特に制限はなく、例えば、(i)真空加熱炉内に前記加圧成形体を設置して真空引きした後に、炉内に還元性ガスを流入させて炉内の雰囲気を還元雰囲気とし、所定の温度で加熱して還元処理を施す方法、(ii)黒鉛製の炉を用いて炉内に前記加圧成形体を設置して真空引きした後、所定の温度で加熱して炉体や加熱燃料等から発生するCOやHC等の還元性ガスにより炉内の雰囲気を還元雰囲気として還元処理を施す方法や、(iii)活性炭を充填したルツボ内に前記加圧成形体を設置し、所定の温度で加熱して活性炭等から発生するCOやHC等の還元性ガスによりルツボ内の雰囲気を還元雰囲気として還元処理を施す方法等が挙げられる。
このような還元雰囲気を達成するために用いる還元性ガスとしては特に制限はなく、CO、HC、H、その他の炭化水素ガス等の還元性ガスが挙げられる。また、このような還元性ガスの中でも、より高温で還元処理を実施した場合に炭化ジルコニウム(ZrC)等の複生成物が生成されることを防止するという観点から、炭素(C)を含まないものが好ましい。このような炭素(C)を含まない還元性ガスを用いると、ジルコニウム等の融点に近いより高い温度での還元処理が可能となるため、規則相の安定性をより十分に向上させることが可能となる。
本発明のコアシェル型酸素吸放出材料の製造方法においては、前記還元処理の後にプラセオジムを含むセリア-ジルコニア系複合酸化物に酸化処理をさらに施すことが好ましい。これにより、還元処理中に失われた酸素が補填され、酸化物材料としての安定性を向上することができる。このような酸化処理の方法としては特に制限はなく、例えば、酸化雰囲気下(例えば、大気中)においてプラセオジムを含むセリア-ジルコニア系複合酸化物を加熱処理する方法を採用することができる。また、このような酸化処理の際の加熱温度としては特に制限はないが、通常300℃~800℃である。さらに、前記酸化処理の際の加熱時間も特に制限はないが、通常0.5時間~5時間である。
次に、このようにして得られたプラセオジムを含むセリア-ジルコニア系複合酸化物に粉砕処理を施し、プラセオジムを含むセリア-ジルコニア系複合酸化物の粉末を得る。粉砕処理の方法としては特に制限はなく、例えば、湿式粉砕法、乾式粉砕法、凍結粉砕法等が挙げられる。粉砕の条件としては、体積基準の粒度分布における累積体積が50%となる二次粒子径D50が前記の範囲内となるように粉砕することが好ましい。
(アルミナ系酸化物被覆工程)
続いて、得られたプラセオジムを含むセリア-ジルコニア系複合酸化物の粉末の粒子表面に、アルミナ系酸化物を被覆する。
アルミナ系酸化物の被覆方法は、当該技術分野で公知であるCVD(例えば有機金属錯体の加熱による蒸気を使用)又はスパッタ蒸着(アルミナターゲットを使用)等の均一薄膜成形手法を用いることができる。アルミナ系酸化物の被覆方法では、回転式成膜炉を備えた粉末表面成膜装置を用いて成膜を行うことができる。
例えば、アルミナ系酸化物をスパッタ蒸着により被覆する場合、Alターゲットを用いて、300℃~500℃、例えば400℃の熱を掛けながら、プラセオジムを含むセリア-ジルコニア系複合酸化物の粉末の粒子表面にスパッタリングでAlをコーティングする。
アルミナ系酸化物被覆工程においてCVD又はスパッタ蒸着を使用することによって、シェルとなるアルミナ系酸化物をコアとなるプラセオジムを含むセリア-ジルコニア系複合酸化物に緻密かつ均一に被覆することができる。
(焼成工程)
最後に、当該アルミナ系酸化物が被覆されたプラセオジムを含むセリア-ジルコニア系複合酸化物の粉末を加熱処理して、アルミナ系酸化物に含まれるアルミナの一部又は全部をθ-アルミナにする。
加熱処理の温度としては、通常800℃~1050℃、好ましくは900℃~1050℃、より好ましくは900℃~1000℃である。加熱処理温度が前記範囲であることで、θ-アルミナを形成させ、十分なシェルの安定性を確保、さらには、得られるコアシェル型酸素吸放出材料の熱劣化による酸素吸放出能の低下を抑制することができる。また、加熱時間は特に制限はないが、通常2時間~10時間である。
本発明のコアシェル型酸素吸放出材料では、緻密なθ-アルミナがプラセオジムを含むセリア-ジルコニア系複合酸化物に被覆されていることを比表面積により確認することができる。アルミナの比表面積は、結晶相により異なり、その大きさは
(より粗い)アモルファス-アルミナ≧γ-アルミナ>θ-アルミナ>α-アルミナ(より緻密)
であるため、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料では、θ-アルミナにより増加した比表面積をアルミナの被覆量により除した値{(コアシェル型酸素吸放出材料の粉末のBET法による比表面積-セリア-ジルコニア系複合酸化物の粉末のBET法による比表面積)÷(プラセオジムを含むセリア-ジルコニア系複合酸化物全重量に基づくアルミナ系酸化物の含有量)}が、通常0.20~0.50、好ましくは0.30~0.40になる。
本発明のコアシェル型酸素吸放出材料は、排ガス浄化用触媒に用いることができる。本発明のコアシェル型酸素吸放出材料を用いた排ガス浄化用触媒は、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料と、このコアシェル型酸素吸放出材料に接触している貴金属とを備えるものである。このような排ガス浄化用触媒は、高温に曝された場合であっても、特に優れた酸素吸放出能(酸素吸放出速度(OSC-r))を有し、かつ、特に優れたNOx浄化性能を発現するものである。
本発明のコアシェル型酸素吸放出材料を用いた排ガス浄化用触媒において、前記貴金属としては、優れたNOx浄化性能が得られるという観点から、Rh、Pd、Ptが好ましく、Rh、Pdがより好ましく、Rhが特に好ましい。当該排ガス浄化用触媒において、このような貴金属は、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料と接触していれば、その形態は特に制限されず、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料の表面に直接貴金属を担持して接触させてもよいが、操作が簡便であるという観点から、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料と、貴金属を担持した他の酸化物材料とを混合して接触させてもよい。
本発明のコアシェル型酸素吸放出材料を用いた排ガス浄化用触媒は、ペレット状のものを反応管等に充填して使用してもよいが、実用性の観点から、ハニカム基材の細孔の内壁に、当該排ガス浄化用触媒からなる層とアルミナを含有する触媒層とを形成したハニカム触媒として使用することが好ましい。また、このようなハニカム触媒のうち、高温や高流速ガスに曝された場合であっても優れた酸素吸放出能を有し、かつ、優れたNOx浄化性能を発現するという観点から、ハニカム基材の細孔の内壁に形成された貴金属及びアルミナを含有する触媒下層と、この触媒下層の上に形成された当該排ガス浄化用触媒からなる触媒上層とを備えるものが好ましく、前記触媒上層が本発明のコアシェル型酸素吸放出材料と貴金属を担持したジルコニアとの混合物からなるものがより好ましい。
さらに、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料を用いた排ガス浄化用触媒による排ガス浄化方法について説明する。当該排ガス浄化方法は、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料を用いた排ガス浄化用触媒に、窒素酸化物を含有する排ガスを接触せしめるものである。当該排ガス浄化用触媒に排ガスを接触させる方法としては、特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、内燃機関から排出されるガスが流通する排ガス管内に前記本発明の排ガス浄化用触媒を配置することにより、排ガス浄化用触媒に対して内燃機関からの排ガスを接触させる方法を採用してもよい。
本発明のコアシェル型酸素吸放出材料を用いた排ガス浄化用触媒は、優れた酸素吸放出性能及び十分に優れたNOx浄化活性を共に有するものであるため、十分に優れた酸素吸放出能及び十分に優れたNOx浄化活性能を共に発揮させることが可能であり、例えば、当該排ガス浄化用触媒に、自動車等の内燃機関からの排ガスを接触させることで、前記排ガス中に含まれるNOx等の有害ガスを十分に浄化することが可能となる。
以下、本発明に関するいくつかの実施例につき説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
1.試料調製
(実施例1)
(セリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物の生成工程)
セリウムとジルコニウムとプラセオジムとの含有比がモル比([セリウム]:[ジルコニウム]:[プラセオジム])で43.5:54:2.5であるセリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物を以下のようにして調製した。すなわち、まず、調製するセリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物の全重量に基づいて、CeO換算で51.5重量%の硝酸二アンモニウムセリウム水溶液と、ZrO換算で45.7重量%のオキシ硝酸ジルコニウム水溶液と、Pr11換算で2.8重量%の硝酸プラセオジム水溶液とを、中和当量に対して1.2倍当量のアンモニアを含有する水溶液に添加して共沈物を生成させ、得られた共沈物を、イオン交換水を用いて遠心分離することにより洗浄した。次に、得られた共沈物を110℃で10時間以上乾燥した後、大気中、600℃で5時間焼成してセリウムとジルコニウムとプラセオジムとの複合酸化物前駆体(CeO-ZrO-Pr11複合酸化物前駆体)を得た。
次に、得られたセリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物前駆体の粉末20gを、ポリエチレン製のバッグ(容量:0.05L)に詰め、内部を脱気した後、前記バッグの口を加熱してシールした。続いて、静水圧プレス装置(日機装株式会社製「CK4-22-60」)を用いて、前記バッグに対して3000kgf/cmの圧力(成形圧力)で2分間、静水圧プレス(CIP)成形を行い、セリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物前駆体の粉末の成形体を得た。成形体のサイズは、縦4cm、横4cm、平均厚み7mm、質量約20gとした。
次いで、得られた成形体を、活性炭70gを充填したルツボ内に配置し、蓋をした後、高速昇温電気炉に入れ、1000℃まで1時間かけて昇温し、さらに、1700℃まで4時間かけて昇温した後、1700℃(還元処理温度)で5時間加熱した。その後、1000℃まで4時間かけて冷却した後、自然放冷により室温まで冷却して還元焼成物を得た。
次に、この還元焼成物を大気中、500℃の温度条件で5時間加熱して酸化し、セリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物を得た。
(アルミナ被覆工程)
続いて、回転式成膜炉を備えた粉末表面成膜装置を用いるスパッタ蒸着による均一薄膜成形手法を用いてセリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物の粒子表面上にセリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物の全重量に基づいて0.25重量%のアルミナを被覆した。
スパッタ蒸着では、Alターゲットを用いて、400℃の熱を掛けながら、セリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物の粒子表面上にスパッタリングでAlをコーティングした。
スパッタ蒸着により被覆されたアルミナ被膜は、非結晶質であるため、アルミナ被膜を形成後に、大気中、アルミナ被膜がθ相になる900℃で5時間熱処理を行うことで、θ相の均一なアルミナ被膜(0.25重量%)を有するセリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物を得た。
(実施例2)
実施例1におけるアルミナ被覆工程において、スパッタ蒸着の時間を長くして、セリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物の粒子表面上にセリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物の全重量に基づいて0.50重量%のアルミナを被覆した以外は、実施例1と同様にθ相の均一なアルミナ被膜(0.50重量%)を有するセリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物を得た。
(実施例3)
実施例1におけるアルミナ被覆工程において、スパッタ蒸着の時間を長くして、セリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物の粒子表面上にセリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物の全重量に基づいて0.75重量%のアルミナを被覆した以外は、実施例1と同様にθ相の均一なアルミナ被膜(0.75重量%)を有するセリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物を得た。
(比較例1)
実施例1におけるアルミナ被覆工程を実施しなかった、すなわち、セリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物の粒子表面上にアルミナを被覆しなかった以外は、実施例1と同様にセリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物を得た。
(比較例2)
実施例1におけるアルミナ被覆工程を以下のように実施した以外は、実施例1と同様に調製した。
(アルミナ被覆工程)
セリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物の粒子表面上にセリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物の全重量に基づいて0.25重量%のアルミナが被覆されるように調整された硝酸アルミニウムとクエン酸とを含む水溶液に、セリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物を添加して、蒸発乾固した後、大気中、500℃で、5時間焼成し、非結晶質の不均一なアルミナ被膜(0.25重量%)を有するセリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物を得た。
(比較例3)
比較例2と同様に調製した非結晶質の不均一なアルミナ被膜を有するセリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物を、大気中、アルミナ被膜がθ相になる900℃で5時間熱処理を行うことで、θ相の不均一なアルミナ被膜(0.25重量%)を有するセリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物を得た。
(比較例4)
比較例2と同様に調製した非結晶質の不均一なアルミナ被膜を有するセリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物を、大気中、アルミナ被膜がα相になる1100℃で5時間熱処理を行うことで、α相の不均一なアルミナ被膜(0.25重量%)を有するセリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物を得た。
(比較例5)
比較例3におけるアルミナ被覆工程において、原料として、セリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物の粒子表面上にセリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物の全重量に基づいて0.50重量%のアルミナが被覆されるように調整された硝酸アルミニウムとクエン酸とを含む水溶液を使用した以外は、比較例3と同様にθ相の不均一なアルミナ被膜(0.50重量%)を有するセリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物を得た。
(比較例6)
比較例3におけるアルミナ被覆工程において、原料として、セリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物の粒子表面上にセリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物の全重量に基づいて0.75重量%のアルミナが被覆されるように調整された硝酸アルミニウムとクエン酸とを含む水溶液を使用した以外は、比較例3と同様にθ相の不均一なアルミナ被膜(0.75重量%)を有するセリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物を得た。
(比較例7)
比較例3におけるアルミナ被覆工程において、原料として、セリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物の粒子表面上にセリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物の全重量に基づいて1.0重量%のアルミナが被覆されるように調整された硝酸アルミニウムとクエン酸とを含む水溶液を使用した以外は、比較例3と同様にθ相の不均一なアルミナ被膜(1.0重量%)を有するセリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物を得た。
(比較例8)
実施例1におけるアルミナ被覆工程において、スパッタ蒸着の時間を長くして、セリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物の粒子表面上にセリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物の全重量に基づいて1.0重量%のアルミナを被覆した以外は、実施例1と同様にθ相の均一なアルミナ被膜(1.0重量%)を有するセリア-ジルコニア-酸化プラセオジム複合酸化物を得た。
2.性能評価
・TEM分析
実施例1~3及び比較例1~8において調製された各粉末について、粉末法で調製した試料を用いて、以下の装置により、EDXマッピングを測定し、アルミナの被覆状態と結晶相を確認した。
装置:JEM-ARM300F(日本電子製、加速電圧300kV、Cs補正器搭載)、JED-2300T_Dual-X
・NOx浄化性能及び酸素吸放出性能
(1)フルサイズ触媒(排ガス浄化用触媒)への導入
実施例1~3及び比較例1~8において調製された各粉末について、以下のようにして排ガス浄化用触媒に導入した。
700cc(600セル(六角)、壁厚2mil)のコージェライトハニカム基材(基材名:N60H/2-7R-08)に、図1に示すように、下層にPd(0.79g/L)を含む下層コート層をコートし、上層にRh(0.3g/L)及び実施例1~3又は比較例1~8において調製された粉末(20g/L)を含む上層コート層をコートして、排ガス浄化用触媒を調製した。
(2)耐久試験
前記で調製した実施例1~3又は比較例1~8において調製された粉末を含む各排ガス浄化用触媒を実排環境下で下記の耐久試験を実施した後に、ベンチで性能評価を行った。
調製した各排ガス浄化用触媒を、V型8気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し、触媒床温950℃で50時間にわたり、ストイキ及びリーンの各雰囲気の排ガスを一定時間(3:1の比率)ずつ繰り返して流すことにより行った。
(3)NOx浄化性能
(2)で耐久試験を施した実施例1~3又は比較例1~8において調製された粉末を含む各排ガス浄化用触媒について、空燃比(A/F)14.4の排ガスを、Ga=30g/sで供給しながら、触媒床温を200℃から600℃まで20℃/分の速度で昇温し、NOx浄化の温度特性を評価した。NOxを50%浄化する温度(NOx-T50)を貴金属活性の指標とした。
(4)酸素吸放出性能
(2)で耐久試験を施した実施例1~3又は比較例1~8において調製された粉末を含む各排ガス浄化用触媒について、500℃の排ガスをGa=10g/sで供給しながら、空燃比(A/F)を14.1と15.1の間で切り替えた際の酸素吸放出量を評価した。
・比表面積(SSA)評価
実施例1~3及び比較例1~8において調製された各粉末について、以下の装置により、比表面積を測定し、アルミナ被膜中の細孔の有無を確認した。
装置:Macsorb(MOUNTEC製、BET1点法)
・XPS分析
実施例1~3及び比較例1~8において調製された各粉末について、以下の装置により、各粉末の粒子表面の元素分析を行い、以下の式でアルミナ被覆率を算出した。
装置:PHI 5000 VersaProbe II(ULVAC-PHI製、X線源AlKα単色光、電流電圧25W 15kW、照射範囲Φ100μm)
アルミナ被覆率計算式:
Al被覆率[%]={Al[at%]/(Al+Ce+Zr+Pr[at%])}×100
3.評価結果
・TEM分析によるアルミナ被膜の状態の違いの観察
図2に、実施例1のTEM-EDXマッピングとアルミナ被膜の回折子解析の結果を示し、図3に、比較例2及び3のTEM-EDXマッピングとアルミナ被膜の回折子解析の結果を示す。図2及び3のTEM-EDXマッピングでは、点線で囲まれた部分にアルミナが被覆されている。
図2及び3より、比較例2及び3では、アルミナ被膜が不均一に被覆(偏析)されているのに対し、実施例1では、アルミナ被覆が、約5nmの膜厚で、酸素吸放出材料の粒子の表面全体に均一に被覆されていることがわかった。また、比較例2の被覆されているアルミナは非結晶質であり、比較例3及び実施例1の被覆されているアルミナはθ相とα相が混在している結晶質であることがわかった。したがって、大気中、900℃以上で焼成することで、アルミナ被膜が結晶化(θ相及び/又はα相)することが確認された。
・アルミナ被覆の状態によるNOx-T50の変化
表1に実施例1及び比較例1~4のアルミナ被覆の量、状態及び結晶相についてまとめ、図4に、実施例1又は比較例1~4を含む排ガス浄化用触媒のNOx-T50を示す。
Figure 0007401392000001
表1及び図4より、比較例2と比較例3及び4とを比較して、アルミナ被膜が多孔質膜であっても、アルミナ被膜を結晶化することで、わずかにRh活性が向上することがわかった。これは、アルミナが結晶化することにより、アルミナ被膜の耐熱性が向上したと考えられる。
また、比較例3及び4と実施例1とを比較して、緻密な結晶化アルミナ被膜で粒子を被覆することで、特異的にRh活性が向上した。これは、アルミナ被膜を緻密にしたことで、アルミナ被膜の熱収縮の原因となる細孔が低減して、耐熱性が向上し、さらに、被覆により酸素吸放出材の露出面がより少なくなり、Rhと酸素吸放出材の接触が低減したと考えられる。
続いて、図5に、実施例1~3又は比較例1、3若しくは5~8を含む排ガス浄化用触媒のアルミナの含有量とNOx-T50の関係を示し、図6に、実施例1~3又は比較例1若しくは8を含む排ガス浄化用触媒のアルミナの含有量と酸素吸放出性能の関係を示す。
図5より、比較例1、3若しくは5~7について、アルミナ被膜が多孔質膜である場合、アルミナの含有量を0.5重量%よりも増加するとNOx浄化活性が低下することがわかった。これは、耐久試験中にアルミナ被膜中の細孔が潰れることにより、アルミナ被膜上に存在しているRhが失活するためと考えられる。
また、実施例1~3と比較例8とを比較すると、アルミナ被膜が緻密である場合、アルミナの含有量を0.25重量%以上にすることで、NOx浄化性能の向上に効果があり、アルミナの含有量を増やしても活性低下は見られないことが分かった。これは、緻密なアルミナ被膜中には細孔が少ないため、前記のようなRhの失活が起きないためと考えられる。
さらに実施例1~3と比較例1及び8とを比較すると、緻密なアルミナ被膜の量を0.75重量%よりも増加させると、酸素吸放出材の性能が低減することがわかった。これは、酸素吸放出材表面のアルミナ被膜の層が厚くなることで、酸素の出し入れが起こりにくくなったためであると考えられる。したがって、緻密で均一なアルミナ被膜のアルミナの含有量は好ましくは0.25重量%~0.75重量%である。
・比表面積(SSA)結果
図7に実施例1~3並びに比較例1、3、5及び6のSSAの結果を示す。
図7より、コアシェル型酸素吸放出材料のSSAが0.69m/g~0.83m/gの範囲になる緻密なアルミナを被覆することで、アルミナ被膜の熱収縮の原因となるアルミナ中の細孔形成を抑制と考えられる。
また、実施例1~3及び比較例3~6のアルミナにより増加した比表面積をアルミナの含有量(重量%)により除した値(アルミナSSA)={(コアシェル型酸素吸放出材料の粉末のBET法による比表面積-セリア-ジルコニア系複合酸化物の粉末のBET法による比表面積(0.60m/g))÷(プラセオジムを含むセリア-ジルコニア系複合酸化物全重量に基づくアルミナ系酸化物の含有量(重量%))}を計算したところ、実施例1~3では0.31~0.36であったのに対し、比較例3~6では1.0~1.73であった。アルミナSSAが大きいほどアルミナが疎な構造であり、アルミナSSAが小さいほどアルミナが緻密な構造であると考えられるので、実施例1~3のアルミナ被膜は緻密な構造を有することがわかった。
・XPS分析によるアルミナ被覆率の結果
図8に実施例1及び比較例3のアルミナ被覆率の結果を示す。図8より、アルミナ被覆率が50%以上、特に52%以上であることで優れた効果が発現することがわかった。

Claims (1)

  1. コアとしてのセリア-ジルコニア系複合酸化物の粒子の表面上にシェルとしてのアルミナ系酸化物が被覆されているコアシェル型酸素吸放出材料であって、
    セリア-ジルコニア系複合酸化物がプラセオジムを含み、
    アルミナ系酸化物がθ-アルミナを含み、
    アルミナ系酸化物の含有量がセリア-ジルコニア系複合酸化物の全重量に基づいて0.05重量%~0.95重量%であり、
    XPS測定により算出されるアルミナ被覆率が50%以上である、
    コアシェル型酸素吸放出材料。
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