JP2022007491A - 硬化性ウレタン組成物及び電子機器 - Google Patents

硬化性ウレタン組成物及び電子機器 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱性及び耐湿熱性に優れた硬化物を形成することができる硬化性ウレタン組成物またはこの硬化性ウレタン組成物を用いて作製された電子機器を提供する。【解決手段】硬化性ウレタン組成物には、ダイマージオールと水添ポリイソプレンポリオールとを含むポリオールと、ポリイソシアネートと、可塑剤と、が含まれている。電子機器1は、電子部品2と、電子部品を収容するケース3と、ケース内に充填された注型材4と、を有し、注型材は、硬化性ウレタン組成物の硬化物Cから構成されている。【選択図】図1

Description

本発明は、硬化性ウレタン組成物及び電子機器に関する。
ポリウレタンは、優れた電気絶縁性を有しているため、電子部品の封止材や注型材等に用いられている。ポリウレタンは、分子内に複数の水酸基を有するポリオールと、分子内に複数のイソシアネート基を有するポリイソシアネートとを含む硬化性ウレタン組成物を硬化させることによって形成されている。
硬化性ウレタン組成物におけるポリオールとしては、ポリブタジエンポリオールや、ひまし油に由来する骨格を備えたひまし油系ポリオールが使用されることがある。
例えば特許文献1には、水酸基含有化合物とイソシアネート基含有化合物とを反応させてなるポリウレタン樹脂、及び無機充填剤(D)を含有するポリウレタン樹脂組成物であって、前記水酸基含有化合物が、ポリブタジエンポリオール(A)及びダイマー酸ポリオール(B)を含有し、かつ前記イソシアネート基含有化合物が、ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(C)を含有する、ポリウレタン樹脂組成物に関する記載がある。
特開2016-98325号公報
特許文献1のポリウレタン樹脂組成物の硬化物には、ポリブタジエンポリオールに由来する二重結合が存在している。硬化物中の二重結合は、例えば電子部品を高温環境中で使用する際等に、架橋することがある。そのため、特許文献1のポリウレタン樹脂組成物の硬化物は、長期間にわたって使用する際に硬度が上昇しやすいという問題がある。
また、ひまし油系ポリオールを含むポリウレタン樹脂組成物の硬化物には、ひまし油系ポリオールに由来するエステル結合が存在している。硬化物中のエステル結合は、例えば電子部品を高湿環境中で使用する際等に、加水分解することがある。そのため、ひまし油系ポリオールを含むポリウレタン樹脂組成物の硬化物は、長期間にわたって使用する際に軟化しやすいという問題がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、耐熱性及び耐湿熱性に優れた硬化物を形成することができる硬化性ウレタン組成物またはこの硬化性ウレタン組成物を用いて作製された電子機器を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、ダイマージオールと水添ポリイソプレンポリオールとを含むポリオールと、
ポリイソシアネートと、
可塑剤と、を含む硬化性ウレタン組成物にある。
本発明の他の態様は、電子部品(2)と、
前記電子部品を収容するケース(3)と、
前記ケース内に充填された注型材(4)と、を有し、
前記注型材は、前記の態様の硬化性ウレタン組成物の硬化物(C)からなる、電子機器(1)にある。
前記硬化性ウレタン組成物中のポリオールには、ダイマージオール及び水添ポリイソプレンポリオールが含まれている。ダイマージオール及び水添ポリイソプレンポリオールは熱や湿気に対して優れた安定性を有しているため、前記硬化性ウレタン組成物の硬化物は、高温環境下や高温環境下におけるポリオールに由来する構造単位の変質を抑制することができる。それ故、硬化性ウレタン組成物は、耐熱性及び耐湿熱性に優れた硬化物を形成することができる。
また、前記電子機器は、ケース内に、前記硬化性ウレタン組成物の硬化物からなる注型材が充填されている。前述したように、前記硬化性ウレタン組成物の硬化物は、優れた耐熱性及び耐湿熱性を有している。それ故、前記電子機器は、高温環境や高湿環境においても長期間にわたって性能を維持することができる。
以上のごとく、上記態様によれば、耐熱性及び耐湿熱性に優れた硬化物を形成することができる硬化性ウレタン組成物またはこの硬化性ウレタン組成物を用いて作製された電子機器を提供することができる。なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
図1は、実施形態2における電子機器の要部を示す断面図である。
(実施形態1)
前記硬化性ウレタン組成物に係る実施形態について説明する。本形態に係る硬化性ウレタン組成物には、ポリオールと、ポリイソシアネートと、可塑剤と、が含まれている。
・ポリオール
前記硬化性ウレタン組成物におけるポリオールとは、1分子中に複数の水酸基を有する化合物をいう。本形態に係る硬化性ウレタン組成物中のポリオールには、少なくともダイマージオールと水添ポリイソプレンポリオールとが含まれている。ダイマージオールは、ダイマー酸、つまり、不飽和脂肪酸の二量体を還元することにより得られる化合物であり、分子構造中に、ダイマー酸に由来する骨格と、ダイマー酸のカルボキシル基が還元されることによって形成された水酸基とを有している。
具体的には、ダイマージオールは、例えば、不飽和脂肪酸の不飽和結合同士が結合してなる二塩基酸を還元してなる分子構造を有していてもよい。前記不飽和脂肪酸としては、例えば、オレイン酸やリノール酸、リノレン酸、リシノレイン酸等の天然物由来の不飽和脂肪酸を用いることができる。ポリオール中に含まれるダイマージオールの主成分は、炭素数38以上の骨格を有していることが好ましい。なお、前述した「主成分」とは、ダイマージオールを構成する各成分の合計を100質量%とした場合に、最も含有比率が多い成分をいう。
ポリオールには、1種類のダイマージオールが含まれていてもよく、2種以上のダイマージオールが含まれていてもよい。
ダイマージオールの水酸基価は、30mgKOH/g以上500mgKOH/g以下であることが好ましく、100mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることがより好ましく、150mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。ダイマージオールの水酸基価を30mgKOH/g以上とすることにより、前記硬化性ウレタン組成物の粘度を低下させ、使用時の作業性をより向上させることができる。また、ダイマージオールの水酸基価を500mgKOH/g以下とすることにより前記硬化性ウレタン組成物を硬化させてなる硬化物の柔軟性をより向上させることができる。
前述したダイマージオールの水酸基価とは、ダイマージオール1g中の水酸基と当量の水酸化カリウムの質量を意味する。ダイマージオールの水酸基価は、JIS K1557-1:2007に規定された方法により算出された値とする。
ポリオール中のダイマージオールの含有量は、ポリオール100質量部に対して10質量部以上90質量部以下であることが好ましく、15質量部以上70質量部以下であることがより好ましく、20質量部以上60質量部以下であることがさらに好ましい。この場合には、ダイマージオールによる耐熱性向上の効果及び耐湿熱性向上の効果をより高めることができる。なお、前述した「ポリオール100質量部」とは、ポリオールに含まれる化合物の含有量の合計を100質量部とすることを意味する。例えば、ポリオールがダイマージオールと水添ポリイソプレンポリオールとから構成されている場合、前述した「ポリオール100質量部」とは、ダイマージオールと水添ポリイソプレンポリオールとの合計を100質量部とすることを意味する。また、例えば、ポリオールがダイマージオールと水添ポリイソプレンポリオールとからなる場合、前述した「ポリオール100質量部」とは、ダイマージオールと、水添ポリイソプレンポリオールと、これら以外のポリオールに含まれる化合物との合計を100質量部とすることを意味する。
前記硬化性ウレタン組成物におけるポリオールには、水添ポリイソプレンポリオールが含まれている。水添ポリイソプレンポリオールの含有量は、例えば、ポリオール100質量部に対して10質量部以上90質量部以下とすることができる。
水添ポリイソプレンポリオールは、分子構造中の二重結合の数が比較的少ない。そのため、硬化性ウレタン組成物の硬化物の温度が上昇した際に、二重結合に起因する架橋の進行を抑制し、硬化物の硬度の上昇を抑制することができる。さらに、ダイマージオールと水添ポリイソプレンポリオールとを併用することにより、硬化性ウレタン組成物の硬化物の機械的特性をより改善することができる。それ故、ダイマージオールと水添ポリイソプレンポリオールとを含む硬化性ウレタン組成物は、耐熱性をより向上させるとともに、硬化物の機械的特性をより改善することができる。
前述した作用効果をより確実に奏する観点からは、水添ポリイソプレンポリオールのヨウ素価が50gI/100g以下であることが好ましい。同様の観点から、水添ポリイソプレンポリオールの含有量は、ポリオール100質量部に対して10質量部以上90質量部以下であることが好ましく、20質量部以上80質量部以下であることがより好ましい。また、水添ポリイソプレンポリオールの数平均分子量は1000以上4000以下であることが好ましい。
前述した水添ポリイソプレンポリオールのヨウ素価とは、水添ポリイソプレンポリオール100gにハロゲンを反応させた際に結合するハロゲンの量をヨウ素の質量で表した値を意味する。水添ポリイソプレンポリオールのヨウ素価は、JIS K0079-1992に規定された方法により算出された値とする。
また、前記硬化性ウレタン組成物におけるポリオールには、ダイマージオール及び水添ポリイソプレンポリオール以外の化合物が含まれていてもよい。例えば、ポリオールは、さらにポリイソプレンポリオールを含んでいてもよい。水素添加されていないポリイソプレンポリオールは、比較的粘度が低い。そのため、前記硬化性ウレタン組成物中にポリイソプレンポリオールを配合することにより、前記硬化性ウレタン組成物の粘度をさらに低下させ、使用時の作業性をより向上させることができる。
しかし、ポリイソプレンポリオールの含有量が過度に多くなると、前記硬化性ウレタン組成物の硬化物中に存在する二重結合の数が多くなり、耐熱性の低下を招くおそれがある。かかる問題を回避する観点から、前記硬化性ウレタン組成物中のポリイソプレンポリオールの含有量は、ポリイソプレンポリオールと前記水添ポリイソプレンポリオールとのヨウ素価の加重平均が50gI/100gとなる量以下であることが好ましい。
前述したポリイソプレンポリオールと前記水添ポリイソプレンポリオールとのヨウ素価の加重平均Xavg[gI/100g]は、ポリイソプレンポリオールのヨウ素価をXip[gI/100g]、ポリイソプレンポリオールのヨウ素価をmip[g]、水添ポリイソプレンポリオールのヨウ素価をXhip[gI/100g]、水添ポリイソプレンポリオールのヨウ素価をmhip[g]とした場合に、下記式により算出される値である。
avg=(Xip・mip+Xhip・mhip)/(mip+mhip
また、ポリオール中に含まれる、ダイマージオール、水添ポリイソプレンポリオール及びポリイソプレンポリオール以外の化合物の含有量は、ポリオール100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましい。
特に、ポリオール中には、ポリエステルポリオールやダイマー酸エステルジオールなどのエステル結合を含む化合物及びポリブタジエンポリオールが実質的に含まれていないことが好ましい。エステル結合を含む化合物は、エステル結合の加水分解によって耐湿熱性の低下を招くおそれがある。また、ポリブタジエンポリオールは、二重結合の架橋によって耐熱性の低下を招くおそれがある。そのため、これらの化合物の含有量は、ポリオール100質量部に対して5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、1質量部以下であることがさらに好ましく、0質量部であることが特に好ましい。
・ポリイソシアネート
前記硬化性ウレタン組成物におけるポリイソシアネートとは、1分子中に複数のイソシアネート基を有する化合物をいう。本形態に係る硬化性ウレタン組成物において、ポリイソシアネートとしては、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びキシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂肪族ジイソシアネート;水添MDI、水添XDI、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)等の脂環族ジイソシアネート;二官能型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート、イソシアヌレート型ポリイソシアネート等のジイソシアネートの多量体;アダクト型ポリイソシアネート;ポリイソシアネートに由来する構造単位とポリオールに由来する構造単位とを含むウレタンプレポリマー等を使用することができる。これらの化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
硬化性ウレタン組成物中のポリイソシアネートの含有量は、ポリオール中の水酸基の含有量がポリイソシアネート中のイソシアネート基の含有量に対してモル比で0.8倍以上1.2倍以下となるように適宜設定すればよい。ポリオール中の水酸基の含有量(単位:mol)は、例えば、ポリオールの水酸基価(単位:mgKOH/g)にポリオールの質量(単位:g)を乗じた後、水酸化カリウムの分子量で除し、さらに1000で除することによって算出することができる。また、ポリイソシアネート中のイソシアネート基の含有量(単位:mol)は、例えば、ポリイソシアネートのイソシアネート基含有率(単位:質量%)にポリイソシアネートの質量(単位:g)を乗じた後、イソシアネート基の分子量で除し、さらに100で除することによって算出することができる。
ポリイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネートに由来する構造及び脂環族ジイソシアネートに由来する構造からなる群より選択される1種または2種以上の構造から構成された骨格構造を有していることが好ましい。すなわち、硬化性ウレタン組成物におけるポリイソシアネートは、非芳香族ポリイソシアネートから構成されていることが好ましい。
前述した非芳香族ポリイソシアネートとは、骨格構造中に芳香族環を含まないポリイソシアネートをいう。非芳香族ポリイソシアネートという概念には、具体的には、脂肪族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートの多量体、脂肪族ジイソシアネートのアダクト体、脂肪族ジイソシアネートと脂肪族ポリオールとからなるウレタンプレポリマー等の脂肪族系ポリイソシアネート;脂環族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートの多量体、脂環族ジイソシアネートのアダクト体、脂環族ジイソシアネートと脂環族ポリオールとからなるウレタンプレポリマー等の脂環族系ポリイソシアネート;脂肪族ジイソシアネートに由来する骨格構造と脂環族ジイソシアネートに由来する骨格構造との両方を含むジイソシアネートの多量体、脂肪族ジイソシアネートに由来する骨格構造と脂環族ジイソシアネートに由来する骨格構造との両方を含むアダクト型ポリイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートと脂環族ジイソシアネートと芳香族環を含まないポリオールとからなるウレタンプレポリマー等のその他の非芳香族ポリイソシアネートが包含される。これらの非芳香族ポリイソシアネートは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記特定の骨格構造を備えたポリイソシアネートは、ダイマージオールや水添ポリイソプレンポリオールとの相溶性が良好である。そのため、前記特定の骨格構造を備えたポリイソシアネートを使用することにより、硬化性ウレタン組成物の硬化物の機械的特性をより改善することができる。また、前記特定の骨格構造を備えたポリイソシアネートは、前記硬化性ウレタン組成物の粘度をより低下させることができるため、硬化物を封止材や注型材、接着材として使用する際の作業性をより向上させることができる。
前記ポリイソシアネートには、下記構造式(1)で表されるアロファネート基を備えたアロファネート基含有ポリイソシアネートが含まれていることが好ましい。
Figure 2022007491000002
ただし、前記構造式(1)におけるRは炭素数6以上12以下の飽和炭化水素基である。前記構造式(1)におけるRは、直鎖状飽和炭化水素基であってもよいし、分岐状飽和炭化水素基であってもよい。
アロファネート基含有ポリイソシアネートとしては、例えば、旭化成株式会社製「デュラネートD101」、「デュラネートD201」、「デュラネートA201H」などの化合物を使用することができる。これらの化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、「デュラネート」は旭化成株式会社の登録商標である。
アロファネート基含有ポリイソシアネートは、硬化性ウレタン組成物の硬化物の機械的特性をより改善することができる。また、アロファネート基含有ポリイソシアネートは、前記硬化性ウレタン組成物の相溶性をより向上させることができる。これらの作用効果をより高める観点からは、前記アロファネート基含有ポリイソシアネートには下記構造式(2)で表される分子構造を有する化合物が含まれていることがより好ましい。
Figure 2022007491000003
ただし、前記構造式(2)におけるRは炭素数6以上12以下の飽和炭化水素基である。前記構造式(2)におけるRは、直鎖状飽和炭化水素基であってもよいし、分岐状飽和炭化水素基であってもよい。前記構造式(2)におけるRは炭素数8の飽和炭化水素基であることが好ましい。
前記構造式(2)で表される化合物としては、例えば、旭化成株式会社製「デュラネートA201H」などの化合物を使用することができる。これらの化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記アロファネート基含有ポリイソシアネートの含有量は、ポリイソシアネート100モル%に対して10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることがさらに好ましい。この場合には、アロファネート基含有ポリイソシアネートによる前述した作用効果をより確実に奏することができる。
また、前記アロファネート基含有ポリイソシアネートの含有量は、ポリイソシアネート100モル%に対して90モル%以下であることが好ましく、85モル%以下であることがより好ましく、80モル%以下であることがさらに好ましい。この場合には、前記硬化性ウレタン組成物の硬化物の架橋密度を適度に高くし、封止材等の用途に好適な強度をより容易に達成することができる。なお、前述した「ポリイソシアネート100モル%」とは、アロファネート基含有ポリイソシアネートと、アロファネート基含有ポリイソシアネート以外の化合物との含有量を100モル%とすることを意味する。
ポリイソシアネートには、下記構造式(3)で表されるイソシアヌレート基と、3個以上のイソシアネート基とを備えたイソシアヌレート型ポリイソシアネートが含まれていてもよい。このようなイソシアヌレート型ポリイソシアネートは、1分子当たり3分子以上のポリオールと結合することができる。そのため、硬化性ウレタン組成物中にイソシアヌレート型ポリイソシアネートを配合することにより、ポリオールとポリイソシアネートとを三次元的に架橋させることができる。その結果、硬化性ウレタン組成物の硬化物の機械的特性をより改善することができる。
かかる観点からは、ポリイソシアネートには、アロファネート基含有ポリイソシアネートとイソシアヌレート型ポリイソシアネートとの両方の化合物が含まれていることが特に好ましい。
・可塑剤
前記硬化性ウレタン組成物には、可塑剤が含まれている。前記硬化性ウレタン組成物中の可塑剤の含有量は、例えば、ポリオールの含有量に対して質量比において0.5倍以上3倍以下の範囲から適宜設定することができる。
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、ジカルボン酸エステル、ポリαオレフィン、ポリアクリル化合物等の化合物を使用することができる。フタル酸エステルとしては、具体的には、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル等が挙げられる。トリメリット酸エステルとしては、例えば、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリス(2-エチルヘキシル)等が挙げられる。ジカルボン酸エステルとしては、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル等のアジピン酸エステル、セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)等のセバシン酸エステル、アゼライン産ビス(2-エチルヘキシル)等のアゼライン酸エステルが挙げられる。ポリアクリル化合物としては、例えば、東亞合成株式会社製「ARUFON UPシリーズ」等の化合物が挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、「ARUFON」は東亞合成株式会社の登録商標である。
可塑剤には、炭素数8以上のアルコールとアゼライン酸とのエステル、炭素数8以上のアルコールとセバシン酸とのエステル、炭素数10以上のアルコールとフタル酸とのエステル、炭素数8以上のアルコールとトリメリット酸とのエステル及びポリαオレフィンからなる群より選択される1種または2種以上の化合物が含まれていることが好ましい。これらの化合物は、ダイマージオールや水添ポリイソプレンポリオールとの相溶性が良好である。そのため、前記特定の化合物を可塑剤として使用することにより、硬化性ウレタン組成物の粘度をより低下させ、前記硬化性ウレタン組成物を封止材や注型材、接着材として使用する際の作業性をより向上させることができる。また、前記特定の化合物を可塑剤として使用することにより、低温における硬化物の柔軟性をより向上させることができる。
このような化合物としては、例えば、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)、ポリαオレフィン、トリメリット酸トリス(2-エチルヘキシル)、炭素数8~11のアルコールの混合物とトリメリット酸とのエステルなどの化合物を使用することができる。これらの化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
・その他の成分
前記硬化性ウレタン組成物には、必須成分としてのポリオール、ポリイソシアネート及び可塑剤の他に、前述した作用効果を損なわない範囲で、充填剤、難燃剤、難燃助剤、離型剤、触媒等の添加剤が含まれていてもよい。
(実施形態2)
本実施形態においては、実施形態1に係る硬化性ウレタン組成物が注型材として用いられている電子機器の実施形態を説明する。本実施形態に係る電子機器1は、図1に示すように、電子部品2と、電子部品2を収容するケース3と、ケース3内に充填された注型材4とを有している。注型材4は、前記硬化性ウレタン組成物の硬化物より構成されている。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
本実施形態の電子機器1におけるケース3は、有底箱状を呈しており、その一面が開口している。電子部品2は、ケース3内に収容されている。また、ケース3内には注型材4が充填されており、電子部品2の全面が注型材4により被覆されている。なお、図には示さないが、電子部品2は、注型材4の外部に突出し、電子機器1の周辺機器と電気的に接続するための配線や端子等を有していてもよい。
電子部品2は、例えば、エンジンコントロールユニットなどの電子制御装置であってもよい。
本実施形態の電子機器1は、例えば以下のようにして作製することができる。まず、ケース3内に電子部品2を収容した後、ケース3内に硬化性ウレタン組成物を注入する。電子部品2の全面が硬化性ウレタン組成物により被覆された後、硬化性ウレタン組成物の注入を停止する。
その後、電子機器1を加熱して硬化性ウレタン組成物を硬化させることにより注型材4を形成することができる。前記硬化性ウレタン組成物中のポリオールには、ダイマージオールが含まれている。そのため、注型材4は、耐熱性及び耐湿熱性に優れており、長期間にわたって電子部品2を保護することができる。
(実験例)
本例では、組成を種々変更した硬化性ウレタン組成物の例を説明する。本例で使用した化合物は、具体的には以下の通りである。
<ポリオール>
・ポリオールA1:ダイマージオール(クローダ社製「Pripol 2033LQ」、水酸基価 211mgKOH/g)
・ポリオールA2:ダイマー酸エステルジオール(クローダ社製「Priplast 3199LQ」、水酸基価 55mgKOH/g)
・ポリオールA3:水添ポリイソプレンポリオール(出光興産株式会社製「エポール」、水酸基価 50.5mgKOH/g、ヨウ素価 7.9gI/100g)
・ポリオールA4:ポリイソプレンポリオール(出光興産株式会社製「poly ip」、水酸基価 46.5mgKOH/g、ヨウ素価 349gI/100g)
・ポリオールA5:ポリブタジエンポリオール(出光興産株式会社製「R45HT」、水酸基価 46.5mgKOH/g、ヨウ素価 398gI/100g)
なお、「Pripol」及び「Priplast」はクローダ社の登録商標であり、「エポール」及び「poly ip」は出光興産株式会社の登録商標である。
<イソシアネート>
・イソシアネートB1:HDI系アロファネート基含有ポリイソシアネート(旭化成株式会社製「デュラネート A201H」、イソシアネート基含有率 15.9質量%)
・イソシアネートB2:HDI系アロファネート基含有ポリイソシアネート(旭化成株式会社製「デュラネート D201」、イソシアネート基含有率 15.9質量%)
・イソシアネートB3:HDI系イソシアヌレート型ポリイソシアネート(旭化成株式会社製「デュラネート TPA100」、イソシアネート基含有率 23質量%)
<可塑剤>
・可塑剤C1:フタル酸ジイソデシル(新日本理化株式会社製「サンソサイザーDIDP」)
・可塑剤C2:フタル酸ジウンデシル(新日本理化株式会社製「サンソサイザーDUP」)
・可塑剤C3:セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)(新日本理化株式会社製「サンソサイザーDOS」)
・可塑剤C4:トリメリット酸トリス(2-エチルヘキシル)(株式会社ジェイ・プラス製「TOTM」)
なお、「サンソサイザー」は新日本理化株式会社の登録商標である。
<その他の成分>
・触媒:ビスマスカルボン酸塩(日東化成株式会社製「ネオスタンU600」)
・充填剤:シリカ(株式会社龍森製「E-2」)
なお、「ネオスタン」は日東化成株式会社の登録商標である。
前述した化合物を表1及び表2に示す質量比で混合することにより、硬化性ウレタン組成物(試験剤1~試験剤18)を作製した。そして、これらの試験剤を用い、以下の方法により初期接着性、耐熱性、耐湿熱性及び耐寒性の評価を行った。
<接着性>
JIS K6850:1999に記載された方法に従って引張せん断接着強さの測定を行った。なお、被着材としてはポリブチレンテレフタレートからなる板材を使用した。各試験剤の引張せん断接着強さは、表1及び表2中の「引張せん断接着強さ」欄に示した通りであった。
また、試験が完了した後、試験剤の硬化物の破壊の態様を目視により観察した。その結果、硬化物の破壊態様が完全な凝集破壊であった場合には、表1及び表2中の「破壊態様」欄に記号「A」を、凝集破壊した部分と、硬化物と被着材との間の界面において界面破壊した部分とが混在していた場合、または、完全な界面破壊であった場合には、同欄に記号「B」を記載した。
初期接着性の評価においては、硬化物の破壊態様が完全な凝集破壊となった記号「A」の場合を優れた接着性を有しているため合格と判定し、接着面の一部または全部が界面破壊となった記号「B」の場合を接着性が劣っているため不合格と判定した。
<耐熱性>
JIS K6850:1999に記載された方法に従って引張せん断接着強さの測定に用いる試験片を作製した。なお、被着材としてはポリブチレンテレフタレートからなる板材を使用した。この試験片を130℃の温度に1000時間保持した。そして、加熱後の試験片を用い、JIS K6850:1999に記載された方法に従って引張せん断接着強さの測定を行った。
表1及び表2の「耐熱性」欄には、加熱後の試験片の引張せん断接着強さと、加熱前の引張せん断接着強さとの差が加熱前の引張せん断接着強さの20%未満である場合に記号「A」、20%以上30%未満である場合に記号「B」、30%以上である場合に記号「C」を記載した。
耐熱性の評価においては、加熱による引張せん断接着強さの低下率が30%未満となった記号「A」または記号「B」の場合を加熱による物性変化が小さいため合格と判定し、30%以上となった記号「C」の場合を加熱による物性変化が大きいため不合格と判定した。
<耐湿熱性>
JIS K6850:1999に記載された方法に従って引張せん断接着強さの測定に用いる試験片を作製した。なお、被着材としてはポリブチレンテレフタレートからなる板材を使用した。この試験片を温度85℃、相対湿度85%RHの環境中に1000時間静置して高温高湿処理を行った。この試験片を用い、JIS K6850:1999に記載された方法に従って引張せん断接着強さの測定を行った。
表1及び表2の「耐湿熱性」欄には、高温高湿処理後の試験片の引張せん断接着強さと、処理前の引張せん断接着強さとの差が処理前の引張せん断接着強さの20%未満である場合に記号「A」、20%以上30%未満である場合に記号「B」、30%以上である場合に記号「C」を記載した。
耐湿熱性の評価においては、高温高湿処理による引張せん断接着強さの低下率が30%未満となった記号「A」または記号「B」の場合を高温高湿環境中での物性変化が小さいため合格と判定し、30%以上となった記号「C」の場合を高温高湿環境中での物性変化が大きいため不合格と判定した。
<耐寒性>
各試験剤を硬化させ、幅5mm、厚み1.5mm、長さ40mmの寸法を有する板状試験片を作製した。この板状試験片を130℃の温度に1000時間保持した後、動的粘弾性測定を行った。具体的には、開始温度を-100℃とし、5℃/分の昇温速度で150℃に到達するまで温度を上昇させながら板状試験片の弾性率を測定した。また、動的粘弾性測定における変形モードは引張モードとした。
耐寒性の評価は、上記の動的粘弾性測定において得られた-40℃における弾性率の値に基づいて行った。表1及び表2の「耐寒性」欄には、-40℃における試験片の弾性率が100MPa未満である場合に記号「A」、100MPa以上である場合に記号「B」を記載した。
耐寒性の評価においては、-40℃における試験片の弾性率が100MPa未満となった記号「A」の場合を低温環境での機械的特性に優れているため合格と判定し、100MPa以上となった記号「B」の場合を低温環境での機械的特性に劣るため不合格と判定した。
Figure 2022007491000004
Figure 2022007491000005
表1及び表2に示したように、ポリオール中にダイマージオール及び水添ポリイソプレンポリオールが含まれている試験剤1~試験剤14は、接着性、耐熱性、耐湿熱性及び耐寒性の全てにおいて良好な特性を示した。これらの試験剤の中でも、ポリオール中にエステル結合を有する化合物が含まれていない試験剤1~試験剤9及び試験剤12~試験剤14は、ポリオール中にエステル結合を有する化合物が含まれている試験剤10~試験剤11よりも耐湿熱性を高めることができた。
一方、表2に示す試験剤15は、ポリオール中にダイマージオールが含まれていないため、試験剤1~試験剤14に比べて接着性に劣っていた。さらに、試験剤15は、試験剤1~試験剤14に比べて耐寒性に劣っていた。これは、130℃の温度に保持している間に硬化物中の二重結合が架橋し、架橋密度が上昇したためと推定される。
試験剤16及び試験剤17は、ポリオール中に水添ポリイソプレンポリオールが含まれておらず、二重結合の含有量の多いポリイソプレンポリオールやポリブタジエンポリオールが比較的多量に使用されているため、耐熱性の低下を招いた。
試験剤18は、ポリオール中にダイマージオールが含まれておらず、エステル結合を有するダイマー酸エステルジオールが比較的多量に使用されているため、耐湿熱性の低下を招いた。さらに、試験剤18は、試験剤1~14に比べて耐寒性に劣っていた。
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。例えば、実施形態2においては、硬化性ウレタン組成物を注型材に適用する例を示したが、硬化性ウレタン組成物は、注型材以外に、接着材や封止材として構成されていてもよい。
1 電子機器
2 電子部品
3 ケース
4 注型材
C 硬化物

Claims (8)

  1. ダイマージオールと水添ポリイソプレンポリオールとを含むポリオールと、
    ポリイソシアネートと、
    可塑剤と、を含む硬化性ウレタン組成物。
  2. 前記ダイマージオールの含有量は前記ポリオール100質量部に対して10質量部以上90質量部以下である、請求項1に記載の硬化性ウレタン組成物。
  3. 前記水添ポリイソプレンポリオールのヨウ素価は50gI/100g以下である、請求項1または2に記載の硬化性ウレタン組成物。
  4. 前記可塑剤は、炭素数8以上のアルコールとアゼライン酸とのエステル、炭素数8以上のアルコールとセバシン酸とのエステル、炭素数10以上のアルコールとフタル酸とのエステル、炭素数8以上のアルコールとトリメリット酸とのエステル及びポリαオレフィンからなる群より選択される1種または2種以上の化合物を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性ウレタン組成物。
  5. 前記ポリイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネートに由来する構造及び脂環族ジイソシアネートに由来する構造からなる群より選択される1種または2種以上の構造から構成された骨格構造を有している、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性ウレタン組成物。
  6. 前記ポリイソシアネートは、下記構造式(1)で表されるアロファネート基を備えたアロファネート基含有ポリイソシアネートを含んでおり、前記アロファネート基含有ポリイソシアネートの含有量は前記ポリイソシアネート100モル%に対して10モル%以上90モル%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化性ウレタン組成物。
    Figure 2022007491000006
    (ただし、前記構造式(1)におけるRは炭素数6以上12以下の飽和炭化水素基である。)
  7. 前記アロファネート基含有ポリイソシアネートは、下記構造式(2)で表される分子構造を有する化合物を含んでいる、請求項6に記載の硬化性ウレタン組成物。
    Figure 2022007491000007
    (ただし、前記構造式(2)におけるRは炭素数6以上12以下の飽和炭化水素基である。)
  8. 電子部品(2)と、
    前記電子部品を収容するケース(3)と、
    前記ケース内に充填された注型材(4)と、を有し、
    前記注型材は、請求項1~7のいずれか1項に記載の硬化性ウレタン組成物の硬化物(C)からなる、電子機器(1)。
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