JP2021532150A - ヘアケアの分野において使用するためのレスペデザ・カピタータ抽出物 - Google Patents

ヘアケアの分野において使用するためのレスペデザ・カピタータ抽出物 Download PDF

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Abstract

本発明は、ヘアケア分野で化粧品および/または皮膚科学における、より詳しくは、脱毛症および/または頭皮脂漏症の治療および/または予防における使用のためのレスペデザ・カピタータMichx.抽出物に関する。

Description

本発明は、ヘアケア分野で化粧品および/または皮膚科学における、より詳しくは、脱毛症および/または頭皮脂漏症の治療および/または予防における使用のためのレスペデザ・カピタータ(Lespedeza capitata)Michx.抽出物に関する。
レスペデザ・カピタータMichx.は、北アメリカ起源のマメ科の多年草である。レスペデザ・カピタータMichx.は、欧州、特に、フランスで栽培されている。
レスペデザ・カピタータMichx.は、綿毛のある植物で、その直立茎は1.5メートルの高さに達し得る。その葉は、互生、複葉で、一般に三葉であり;小葉はおよそ4.5×1.8cmの長さであり;葉柄は短い(2〜5mm)。葉および茎は伏毛に覆われ、これが植物に銀色の光沢を与え得る。花は蝶型であり、密に群生して腋生花序をなす。花弁は、ピンク〜紫系の標準的なもの以外に白がある。萼は宿存性であり、時間が経つと褐色系になる。実は非裂開性であり、単一の種子を保持する。レスペデザ・カピタータMichx.は深根性であり、地中に2.5メートル潜り得る主根を持つ。
レスペデザ・カピタータMichx.は、多くのネイティブアメリカン民族の伝統的な薬の一部である。オマハ・ポンカ族は、リウマチまたは神経痛を治療するためのもぐさとして茎を使用した。コマンチ族は、葉を煎薬の形で使用した。メスクワキ族は、根を中毒の解毒薬として使用した(USDA-NRCS. Plant Guide 05 Dec. 2000)。現在、レスペデザ・カピタータMichx.は、主として、栄養補助食品および医薬、ホメオパシーおよび獣医学的調製物におけるその使用のために栽培されている。
レスペデザ・カピタータMichx.の地上部は、泌尿系におけるそれらの特性(特に、それらの利尿能および抗窒素血症能)は、本質的に研究されてきた。いくつかの臨床試験が文献に示されている。大多数は主としてフランスで60〜80年代に行われた。これらの臨床試験は特に、腎臓疾患を有する患者へのレスペデザ・カピタータMichx.抽出物の静脈内投与に関するものである。経口投与されたレスペデザ・カピタータMichx.のチンキ剤のコレステロール降下活性が、安定な高コレステロール血症を有する39名の被験者で実施された臨床試験として文献に示されている(Yarnell and Abascal, Alternative and Complementary Therapies. 13(1): 18-23, 2007)。
レスペデザ・カピタータMichx.の地上部は、それらの治療特性のために今もなお使用されている。粉末状または抽出物の形で、それらは煎剤の調製のために栄養補助食品、ホメオパシーまたは医薬調製物(窒素血症;泌尿系)または獣医学的調製物(泌尿系)として市販されている。
ある最近の刊行物では、レスペデザ・カピタータMichx.のエタノール抽出物が、線維芽細胞およびケラチノサイトのin vitro増殖、コラゲナーゼの阻害および線維芽細胞によるコラーゲン合成の刺激を誘導し、脂肪分解作用を有することが示されている(Pastorino et al. 2017. Industrial Crops and Products. 96: 158-164)。また、特許出願CN104606122も、他の植物との混合物中のレスペデザ・カピタータが妊娠関連の腹部脂肪を燃焼させ得ることを特許請求している。
予期外に、意外にも、本出願人らは、レスペデザ・カピタータMichx.抽出物が皮膚および毛髪障害の治療および/または予防の分野で、特に、脱毛に対処するため、ならびに頭皮脂漏症および関連障害を治療するために、対象とする薬理活性を有することを示した。
実際に、本発明者らは、レスペデザ・カピタータMichx.抽出物が真皮乳頭の細胞によるDickkopf関連タンパク質1(DKK1)の合成および放出を阻害することを示した。よって、レスペデザ・カピタータMichx.は、脱毛の遅延および防止を助け、毛の生活環を延長する。
さらに、本発明者らは、レスペデザ・カピタータMichx.抽出物が真皮乳頭細胞の5α−レダクターゼ活性を阻害することを示した。結果として、レスペデザ・カピタータMichx.抽出物は、脱毛予防の分野ならびに頭皮脂漏症および関連の皮膚および毛髪障害においても有用である。
ヘアケア分野におけるレスペデザ・カピタータMichx.のこの新たな使用が本発明の主題であり、ケアにより毛髪の審美的外観を改善するため、ならびに脱毛および/または頭皮脂漏症および総ての関連の皮膚および毛髪障害を予防および/または治療するための様々なレスペデザ・カピタータMichx.に基づく製品の適用を想定することを可能とする。
よって、本発明はまた、少なくとも1つの皮膚および毛髪障害の治療および/または予防を目的とするその使用のためのレスペデザ・カピタータ抽出物に関する。
有利には、前記皮膚および毛髪障害は、脱毛症、頭皮脂漏性皮膚炎、頭皮紅斑、頭皮脂漏症およびそれらの組合せから選択される。
皮膚および毛髪障害はまた油毛症であり得る。
発明の具体的説明
化粧目的のみならず脱毛を予防し、毛髪を再生するためにも、ヘアケアは研究者に常に注目されている。
毛包は、皮下組織までの皮膚に係留された小器官であり、その主要な機能は毛幹の形成である。毛包は毛を生成する動的な構造である。毛は絶えず成長するのではなく、3相に分けられる毛の成長周期に従う:
・成長期(anagen):真皮乳頭細胞(線維芽細胞)が毛球の幹細胞にシグナルを送り、これがそれらの増殖を可能とする。これらの細胞は形質転換され、真皮乳頭を覆って毛の硫黄マトリックスを形成する。それらが分裂し、毛の構造を担う細胞であるケラチノサイトへと分化する。毛が適切な構造となるためには、ケラチノサイトは含硫タンパク質、ビタミンB6ならびに亜鉛およびマグネシウムなどの様々な無機物を必要とする。この相の持続期間は、毛の長さを決定し、毛包の基部の毛母細胞の増殖および分化に依存する。
・退行期(catagen):毛母細胞が死に、結果として、真皮乳頭がこの毛母細胞と接触しなくなる。これらの細胞間の交換もなくなる。毛包および真皮乳頭が表皮まで移動する。
・休止期(telogen):真皮乳頭および毛球細胞が完全な形となり、不活性となる。毛は抜け落ちる。新たな毛が成長し、周期が再開される。
毛髪はそれ自体絶えず再生し、毛を構成する100,000〜150,000本の大多数が成長期にある。健康な毛では、正常な生理脱毛は1日に60〜100本前後である。これを超える脱毛は、周期的なものであれ進行性のものであれ病的と見なされる。
脱毛症という用語は、部分的または全体的な脱毛を表す。例えば、遺伝的因子、年齢、性別、疾患、ストレス、ホルモンの問題、薬物の副作用および損傷など、多くの因子が脱毛症に関与し得る。脱毛症のいくつかの形態が識別可能である:
・遺伝性アンドロゲン性脱毛症は最も多い。早期脱毛は遺伝的素因のある対象に起こり、特に男性に影響を及ぼす。この脱毛症は毛量の減少またはさらには禿頭として現れ、50歳を超える男性の50%に見られる;
・閉経後脱毛症は、女性の禿頭(boldness)の最も多い原因である。女性では、脱毛は男性よりもよりびまん性であり、拡散性である。びまん性女性脱毛症は、多くは閉経時に始まり、70歳を超える高齢女性のおよそ40%に関与する障害である。びまん性という用語は、男性とは異なり、脱毛が頭部の毛髪の総てに一様に関与することを示す;
・急性または反応性脱毛症は、化学療法の処置、ストレス、出産、主要な食事の欠乏、鉄欠乏およびホルモン障害に関連し得る。この脱毛症は実質的な毛量の同時的およびびまん性的喪失である;
・瘢痕性脱毛症は、皮膚の問題(腫瘍、火傷、円形脱毛症)、急性照射、紅斑性狼瘡または寄生体(白癬、苔癬)によって引き起こされ得る;
・円形脱毛症は自己免疫起源のものと思われ、1か所以上の様々な大きさの斑状の損傷を特徴とする;
・先天性脱毛症は希であり、毛根の不在または毛髪の異常(突然変異)である。
脱毛症は、本質的に毛の再生の混乱に関連し、これはまず、毛の質、その後その量を犠牲にして周期頻度の加速化をもたらす。最も多い現象は、細胞増殖の休止による成長周期(成長期)の短縮である。その結果は退行期の早期誘導、休止期の毛包の数の増加、従って、脱毛の増加である。従って、脱毛症に対処するためには、例えば、成長期を活性化することにより、毛周期を再開させることが必要である。
遺伝性アンドロゲン性脱毛症(脂漏性脱毛症とも呼ばれる)の原因となる機序はとりわけ、アンドロゲン受容体(テストステロンおよびDHT受容体)の過剰発現および5α−レダクターゼ酵素のより強い活性を伴うホルモン成分を含むということが現在知られている。このホルモン調節不全は、テストステロンの活性代謝物であるジヒドロテストステロン(DHT)の過剰生産をもたらす。真皮乳頭では、この代謝産物は、毛周期阻害剤の生産を刺激して成長期の短縮をもたらし、毛を休止期に向かわせるのが早すぎ、良質のケラチンを生産する十分な時間を毛包に与えず、必然的に、数周期の後に疲弊を招き、毛包の毛幹生成能の消耗をもたらす。
過剰なアンドロゲンによるこの脱毛症はまた、閉経中(閉経後脱毛症)またはアンドロゲン処置後の女性にも影響を及ぼす。この脱毛症は側頭および頭頂に始まる。この脱毛は男性におけるものよりもびまん性であり、拡散性である。この脱毛は頭皮全体に一様に関与する。
従って、5α−レダクターゼ阻害剤は、男性および/または女性の脱毛の治療および/または予防を可能とする。
脂漏症は皮脂腺による皮脂の過剰生産である。全体的に見れば、ヒトには、6,000,000本の毛とともに2,000,000の皮脂腺がある。皮脂腺の分布は均一ではない。皮脂腺の密度は、顔面および頭皮で皮脂腺300〜900/cmに達し、この密度は、胸および背の上部で皮脂腺100/cm前後である。皮脂腺の活性は、アンドロゲンによって影響を受ける。アンドロゲンは、皮脂の生産を誘導する皮脂腺におけるアンドロゲンの代謝を保証する5α−レダクターゼ酵素の影響下でのみ活性がある。5α−レダクターゼ酵素の過剰な活性化は脂漏症を誘発する。
脂漏症の発現部位は、皮脂腺が最も多く、最も大きい顔面内側領域(額、鼻、頤)である。脂漏症は頭皮にも発現し、前頭および前頭側頭領域ならびに頭蓋頂部に多い。
頭皮脂漏症は、頭皮脂漏性皮膚炎および頭皮紅斑などの審美的および皮膚科病態を引き起こす。
頭皮脂漏性皮膚炎(SD)は、表皮に粘着している、時には化膿性の、また時には重度のそう痒を引き起こす、油性の白い外皮のような鱗屑に覆われたびまん性のピンクの炎症斑を特徴とする。
脂漏症は、アンドロゲン性脱毛症に関連している場合が多い。
従って、5α−レダクターゼ酵素の有効阻害剤は、皮脂分泌を軽減し、脂漏症を治療し、脂漏症に関連する皮膚科および/または審美的問題を解決することを可能とする。
毛の成長周期は、毛包の様々なコンパートメント(真皮乳頭、毛球中に存在する幹細胞、毛包マトリックスのケラチノサイト)が様々な分子交換を介して密接な関係に入る高度に調節されたプロセスである。関与するシグナルの中でも、Wnt/β−カテニンシグナルは、毛の成長を促進することが知られている(Leiros et al., Br. J. Dermatol. 166(5)-1035-1042, 2012)。
脱毛の最も多い形態であるアンドロゲン性脱毛症は、明らかにアンドロゲン性の疾患である。アンドロゲンは、真皮乳頭により分泌される因子を調節不全にし、これがカノニカルなWntシグナル伝達経路の阻害による幹細胞分化の不全をもたらす。
毛の成長周期阻害剤「Dickkopf関連タンパク質1(DKK1)」は、β−カテニンにより媒介されるWnt経路のカノニカルな活性化を遮断し、退行期の進行を促進することが知られている(Kwack et al., J. Invest. Dermatol. 132(6):1554-60, 2012)。DKK1はまた、アンドロゲンにより調節されることが記載されている(Kwack et al., J. Invest. Dermatol. 128(2):262-9, 2008)。
これらの結果を考え合わせると、DKK1は、アンドロゲン性脱毛症において、アンドロゲンにより誘発される毛の成長の抑制および退行期の早期誘導に重要な役割を果たすことが示される(Inui and Itami, J. Dermatol. Sci. 61(1):1-6, 2011)。
本発明による抽出物
本明細書では、レスペデザ・カピタータMichx.植物は、短くレスペデザ・カピタータと呼称する場合がある。
本発明の文脈で、レスペデザ・カピタータ抽出物は、茎、枝、葉、実、種子および/または花などの根および地上部から選択されるレスペデザ・カピタータ植物の1以上の部分から得られる。有利には、それは、葉、茎または花それぞれ単独または混合物から選択される地上部である。
本発明の特定の実施態様では、この抽出物は、レスペデザ・カピタータの葉および/または茎および/または花、特に、乾物から得られる。
本発明の特定の実施態様では、抽出物は、レスペデザ・カピタータ細胞の培養物から得られる。
特定の実施態様によれば、この抽出物は、ヒドロアルコール抽出物、特に、ヒドロエタノール抽出物である。有利には、それはヒドロアルコール抽出、特に、ヒドロエタノール抽出から得られる抽出物である。
好ましい実施態様によれば、本発明による抽出物は、下記の本発明による方法により得ることができる。
レスペデザ・カピタータ植物またはその一部は、新鮮または乾燥された、全体、切断物または破砕物であり得、次いで、抽出工程を受けてもよい。
本発明による抽出物の調製法は、親水性〜非極性溶媒、好ましくは、親水性〜中極性水性溶媒によるレスペデザ・カピタータ植物の全部または一部の抽出工程を含んでなる。
「中極性溶媒」は、本発明の意味の範囲内で、C1〜C5アルコール、グリコール(プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール)、グリセロール、アセトン、アルキルエステル(例えば、特に、酢酸エチルおよび酢酸イソプロピル)、例えばヒドロアルコール混合物またはアセトン/水混合物などの水混和性溶媒の混合物、またはさらにはハイドロトロープ溶媒(hydrotropic solvents)からなる群から選択される溶媒を表す。別のハイドロトロープ溶媒群として、十分な濃度から、抽出物の特徴に記載されているものなどの中極性化合物中に抽出され得る、水に可溶な両親媒性分子がある。
本発明の意味の範囲内で、「アルキルエステル」は、R−COO−R化合物を表し、ここで、RおよびRは同一または異なる(C−C)アルキル基である。エステルは特に酢酸エステル、すなわち、CHCOO−R化合物であり得る。
本発明の意味の範囲内で、「(C−C)アルキル」基は、1〜6個の炭素原子、好ましくは、1〜4個の炭素原子を含んでなる直鎖または分岐型炭化水素鎖を意味する。例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチルまたはヘキシル基が挙げられる。
本発明の意味の範囲内で、「非極性溶媒」は、ヘプタン、ヘキサン、リモネン、ハロゲン化炭化水素(クロロホルム、ジクロロメタン)、超臨界COおよび超臨界CO+エタノールの混合物から選択される溶媒を表す。
抽出に関して上記で定義されるような非極性溶媒の選択は好ましくないと理解される。
「親水性溶媒」は、水、亜臨界水、水混和性アルコール(例えば、エタノール)、C3〜C5グリコール、グリセロール、アセトン、およびそれらの混合物からなる群から選択される溶媒を意味する。
「水性溶媒」は、水単独および水と亜臨界水、水混和性アルコール(例えば、エタノール)、C3〜C5グリコール、グリセロール、アセトン、およびそれらの混合物との組合せからなる群から選択される溶媒を表す。
本発明の意味の範囲内で、「乾燥抽出物」は、抽出溶媒もしくは担体溶媒を含まないか、または無視できる痕跡の状態で溶媒を含有するだけの抽出物を表す。従って、このような乾燥抽出物は、レスペデザ・カピタータに由来する材料のみを含有する。それもまた抽出溶媒の無視できる痕跡を含有してもよい。
本発明の好ましい実施態様では、抽出溶媒は、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、C1〜C5アルコール、C3〜C5グリコール、グリセロールもしくは水またはそれらの混合物から選択され得る。好ましくは、それは水または水/アルコール混合物である。有利には、それはエタノール/水混合物である。
いっそうさらに有利には、このエタノール/水混合物は、エタノール/水割合が9:1〜7:3(v/v)であることを特徴とする。
なおさらに有利には、中極性溶媒は、9:1(v/v)の割合のエタノール/水混合物である。
本発明の別の特定の実施態様によれば、抽出は、撹拌しながらまたは静的に、還流下、周囲温度または周囲温度〜還流の間の温度で行う。抽出は、超音波、マイクロ波または1分〜48時間の時間での1/3〜1/30の植物重/溶媒容量比での押出しにより補助してもよい。抽出は、2〜3回繰り返すことができる。
本発明の別の特定の実施態様によれば、次に、粒子を含まない透明な液相を回収するために、固相を遠心分離または濾過により分離する。濾過は、5〜20μm、特に10〜20μmの間のカットオフ閾値の濾紙または濾過プレートで行うことができる。好適な濾紙または濾過プレートは、Pall(登録商標)系Kラインの深層濾過製品から選択することができる。このようなプレートはセルロース繊維、珪藻土およびパーライトのバランスの取れた混合物から構成され、これは明確に定義されたマトリックスの作出を可能とする。よって、例えば、Pall(登録商標)K300〜K900系kプレートを選択することができる。抽出物に相当する液相を、乾燥抽出物が得られる程度まで多少とも濃縮することができる。
本発明の別の実施態様では、1〜75%の乾燥抽出物を含有する抽出物を得るために濃縮工程中に担体を加えることができる。担体はマルトデキストリン、ラクトース、シリカ、グリセリン、グリコール、または抽出物、好ましくは生物系起源のものを可溶化する他のいずれかの美容学上許容可能な担体、例えば、生物系グリコール(1,2−ペンタンジオール;1,3−ブタンジオール;1,3−プロパンジオールなど)、ならびにまたハイドロトロープ、例えば、アルキルグリコシド(Sepiclear、Apyclean、APXC4など)であり得る。
本発明の特定の実施態様によれば、クロロフィルの総てまたは一部を除去するために、例えば活性炭により抽出物から脱色することができる。
本発明の特定の実施態様によれば、本発明によるレスペデザ・カピタータ抽出物は、乾燥抽出物100グラム当たりのエピカテキンのグラムで表して2〜40%、特に5〜35%、より詳しくは10〜30%、さらにより詳しくはおよそ25%の総ポリフェノール(乾燥抽出物の重量に対する重量%)の含量を特徴とする。
本発明において、「およそ」は、関与する値が示された値より10%、特に5%、特に1%低くても高くてもよいことを意味する。
本発明による組成物
本発明の別の主題は、毛髪および/または頭皮のケアを意図した、少なくとも1つの本発明によるレスペデザ・カピタータ抽出物と少なくとも1つの化粧品学的にまたは皮膚科学的に許容可能な賦形剤を含んでなる化粧品学的、皮膚科学的または皮膚および毛髪用組成物に関する。
本発明において、「化粧品学的にまたは皮膚科学的に許容可能な」とは、全般的に安全、非毒性で、生物学的にまたはそれ以外の点で望ましくないものでなく、かつ、特に毛髪および/または頭皮への局所適用による化粧品学的、皮膚科学的または皮膚および毛髪用途に許容可能である化粧品学的、皮膚科学的または皮膚および毛髪用化合物の調製に有用であるものを意味する。
「局所適用」とは、皮膚、特に頭皮、粘膜および/または外皮、特に毛髪および頭皮への適用を意味する。
「外皮」とは、毛髪および体毛、眉、睫毛および/または爪、好ましくは、頭部の毛を意味する。
本発明の特定の実施態様では、本発明による組成物は、頭皮および/または毛髪への局所投与に適当な形態で存在することを特徴とする。
本発明の特定の実施態様では、本発明による組成物は、特に頭皮および/または毛髪および外皮への組成物の適用による局所適用のために意図される。
よって、本発明による組成物は、有効成分の特性および接近性を改善するために浸透させる賦形剤を含む局所投与のための一般に知られる形態、すなわち、特に、ローション、香膏、シャンプー、ムース、ゲル、分散物、エマルション、スプレー、セラム、マスクまたはクリームで存在することができる。
有利には、本発明による組成物は、毛髪および頭皮への局所投与のための一般に知られる形態、すなわち、特に、シャンプー、コンディショナー、ヘアクリーム、ヘアローション、マスクまたはノーリンススプレーで存在し得る。従って、それらは化粧品学的、皮膚科学的または皮膚および毛髪用組成物である。
よって、すすがれるべく配合される製品とすすぐ必要のない製品は区別される。
本発明の特定の実施態様では、本発明による組成物は、経口投与に適当な形態で存在することを特徴とする。レスペデザ・カピタータは経口投与された場合でもレニン−アンギオテンシン系変換酵素を阻害し得ることが実際に示されている(Yarnell, 2012, IJKD, vol 6, 407-418)。従って、この抽出物は、その消化管通過により完全には代謝されない。
本発明の別の実施態様によれば、本発明による組成物はまた、経口投与のための一般に知られている形態、すなわち、特に、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤および経口溶液または懸濁液で存在し得る。固体組成物が錠剤の形態で調製される場合、主要な有効成分は、ゼラチン、デンプン、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、アラビアガムなどの医薬担体と混合される。錠剤はスクロースまたは他の適当な材料でコーティングすることができ、またはそれらが長期もしくは遅延活性を有するように、また、所定量の有効成分を持続的に放出するように処理することさえできる。
カプセル製剤は、有効成分を希釈剤と混合し、得られた混合物を硬カプセルまたは軟カプセルに注ぐことにより得られる。
本発明による抽出物に加え、これらの化合物は、生理学的に許容可能な媒体、一般に、水または溶媒系、例えば、アルコール、エーテルまたはグリコールを含有する。それらはまた、界面活性剤、錯化剤、保存剤、安定剤、乳化剤、増粘剤、ゲル化剤、保湿剤、皮膚軟化剤、微量元素、精油、芳香剤、色素、保湿剤または温泉水なども含有し得る。
1つの実施態様では、本発明による化粧品組成物または皮膚科学的組成物、特に、皮膚および毛髪用組成物は、組成物の総重量に対する乾燥抽出物の重量で0.0001〜2重量%、好ましくは0.001〜1重量%、好ましくは0.005〜0.8重量%、より好ましくは0.01〜0.5重量%のレスペデザ・カピタータ抽出物を含んでなる。
本発明による組成物において使用されるレスペデザ・カピタータ抽出物は有利には、抽出物の総重量に対して1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%の乾燥抽出物含量を含んでなる。
特定の実施態様では、レスペデザ・カピタータ抽出物は、毛髪および/または頭皮ケアのために意図される組成物中で使用される唯一の有効剤である。有効剤は、本発明が対象とする皮膚および毛髪障害の治癒的または予防的薬剤を意味する。
本発明による抽出物または本発明による化粧品組成物もしくは皮膚科学的組成物はまた、フィナステリドもしくはミノキシジルなどの脱毛症の治療と組み合わせて、ならびに/または例えば、含硫タンパク質、ビタミンB6および様々な無機物、例えば、亜鉛および/もしくはマグネシウムなどの良好な毛髪構造に有用な化合物と組み合わせて使用することができる。
本発明による抽出物または組成物はまた、少なくとも1つの抗菌薬、抗真菌薬、抗炎症薬およびそれらの混合物と組み合わせることもできる。
本発明による抽出物または本発明による化粧品組成物もしくは皮膚科学的組成物は、マイクログラフトを有する個体に使用することができる。
好ましくは、本発明による組成物は、毛髪または頭皮をべたつかせることなく最適な浸透も可能とする軽い質感を有する。最初の適用から、毛髪は強度と活力を取り戻す。
よって、本発明はまた、少なくとも1つの皮膚および毛髪障害の治療および/または予防を目的とする使用のための本発明による皮膚科学的組成物に関する。
少なくとも1つの皮膚および毛髪障害の治療および/または予防を目的とする使用のための本発明による組成物は、少なくとも1つの皮膚および毛髪障害が脱毛症、頭皮脂漏性皮膚炎(dermitis)、頭皮紅斑、頭皮脂漏症およびそれらの組合せから選択されることを特徴とする。
少なくとも1つの皮膚および毛髪障害の治療および/または予防のための本発明による組成物は、脱毛症がアンドロゲン性脱毛症、反応性脱毛症、閉経後脱毛症および円形脱毛症からなる群から選択されることを特徴とする。
本発明の別の目的は、脱毛症の予防および/または治療における使用のための本発明によるレスペデザ・カピタータ抽出物を含んでなる皮膚科学的組成物に関する。
本発明の特定の実施態様では、脱毛症は、アンドロゲン性脱毛症、閉経後脱毛症、反応性脱毛症および円形脱毛症からなる群から選択される。
別の側面によれば、本発明は、脱毛を制限するため、および/または毛髪の成長を促進するため、および/または毛包の密度を増すため、および/またはより被覆度の高い毛髪を得るため、および/または毛包再生を促進するため、および/または頭皮脂漏症を軽減するために、および/または毛髪のべたつきを少なくするための毛髪および/または頭皮のケアを目的とする、上記の方法に従う本発明による抽出物または上記の方法に従う本発明による化粧品組成物もしくは皮膚科学的組成物の化粧品学的使用に関する。
別の側面において、本発明は、脱毛を制限するため、および/または毛髪の成長を促進するため、および/または毛包の密度を増すため、および/またはより被覆度の高い毛髪を得るため、および/または毛包再生を促進するため、および/または頭皮脂漏症を軽減するため、および/または毛髪のべたつきを少なくするための、本発明による抽出物のそれを必要とする者への投与を含んでなる、毛髪および/または頭皮の化粧品学的処置法に関する。この投与は局所投与または経口投与であり得る。
よって、本発明は、脱毛を制限するため、および/または毛髪の成長を促進するため、および/または毛包の密度を増すため、および/またはより被覆度の高い毛髪を得るため、および/または毛包再生を促進するため、および/または頭皮脂漏症を軽減するため、および/または毛髪のべたつきを少なくするための、本発明によるレスペデザ・カピタータ抽出物の化粧品学的使用に関する。
あるいは、本発明は、脱毛を制限するため、および/または毛髪の成長を促進するため、および/または毛包の密度を増すため、および/またはより被覆度の高い毛髪を得るため、および/または毛包再生を促進するため、および/または頭皮脂漏症を軽減するため、および/または毛髪のべたつきを少なくするための毛髪および/または頭皮のケアを目的とする、本発明による化粧品組成物の化粧品学的使用に関する。
本発明はまた、脱毛を制限するため、および/または毛髪の成長を促進するため、および/または毛包の密度を増すため、および/またはより被覆度の高い毛髪を得るため、および/または毛包再生を促進するため、および/または頭皮脂漏症を軽減するための毛髪および/または頭皮のケアを目的とする、有効量の上記の方法に従う本発明による抽出物または上記の方法に従う本発明による化粧品組成物もしくは皮膚科学的組成物の必要な個体への投与を含んでなる化粧品学的方法に関する。
別の側面において、本発明は、脱毛を制限するため、および/または毛髪の成長を促進するため、および/または毛包の密度を増すため、および/またはより被覆度の高い毛髪を得るため、および/または毛包再生を促進するため、および/または頭皮脂漏症を軽減するため、および/または毛髪のべたつきを少なくするための毛髪および/または頭皮に対する、本発明による化粧品組成物のそれを必要とする者への投与を含んでなる化粧品学的処置に関する。この投与は、好ましくは、毛髪および/または頭皮に、局所的にされる。
本発明による抽出物または化粧品組成物もしくは皮膚科学的組成物は、有利には、局所投与および/または経口投与される。
本明細書に記載のものなどの本発明による組成物は、頭皮および/または毛髪への局所投与に適当な形態で存在することを特徴とする。
本明細書に記載のものなどの本発明による組成物は、経口投与に適当な形態で存在することを特徴とする。
本発明による抽出物、または本発明による化粧品組成物もしくは皮膚科学的組成物はまた、毛髪資本を量および質において温存するように毛周期を延長することによって脱毛を停止させる助けをする。
別の側面によれば、本発明はまた、毛髪の成長を促進することにより、および/またはより被覆度の高い毛髪の生産を促進することにより、および/または脱毛を制限することにより、毛髪の審美性を改善することを意図した化粧品学的ヘアケア方法であって、有効量の本発明によるレスペデザ抽出物、または本発明による組成物の毛髪および/または頭皮への適用、その組成物を毛髪および/または頭皮と接触した状態に置くこと、および場合により、毛髪および頭皮をすすぐことを含んでなることを特徴とする方法に関する。
別の側面によれば、本発明はまた、べたついた毛髪に対処すること、および/またはくすんだ毛髪に光沢を取り戻すこと、および/またはべたついた頭皮を洗浄することにより、毛髪の審美性を改善することを意図した化粧品学的ヘアケア方法であって、有効量の本発明によるレスペデザ抽出物、または本発明による組成物の毛髪および/または頭皮への適用、その組成物を毛髪および/または頭皮と接触した状態に置くこと、および場合により、毛髪および頭皮をすすぐことを含んでなることを特徴とする方法に関する。
以下の実施例は、本発明をその範囲を限定することなく説明することを意図する。これらの実施例を限定されない例として示す。
本発明に使用される抽出物の調製
実施例1:エタノール90による還流抽出
乾燥および粉砕したレスペデザ・カピタータ地上部2.5キログラムを、反応器内で1時間、25リットルの90:10(v/v)エタノール/水混合物により撹拌しながら還流抽出する。次に、この抽出物をK900で濾過し、溶媒を蒸発させて250グラムの緑色粉末を質量収率10%で得る。得られる乾燥抽出物は、エピカテキンで表される26%のポリフェノールを含有する。
実施例2:酢酸エチルによる還流抽出
乾燥および粉砕したレスペデザ・カピタータ地上部100グラムを、反応器内で1時間、1リットルの酢酸エチルにより撹拌しながら還流抽出する。次に、この抽出物をK900で濾過し、溶媒を蒸発させて2グラムの緑色ペーストを質量収率2%で得る。得られる乾燥抽出物は、エピカテキンで表される3%のポリフェノールを含有する。
実施例3:エタノール30による周囲温度での抽出
乾燥および粉砕したレスペデザ・カピタータ地上部20キログラムを、反応器内で12時間、350リットルの30:70(v/v)エタノール/水混合物により撹拌しながら周囲温度で抽出する。次に、この抽出物をK900で濾過し、溶媒を蒸発させて3.4グラムの褐色粉末を質量収率17%で得る。得られる乾燥抽出物は、エピカテキンで表される36%のポリフェノールを含有する。
実施例4:超音波により補助されるエタノール90による抽出とその後の活性炭による脱色
乾燥および粉砕したレスペデザ・カピタータ地上部26グラムを、260ミリリットルの90:10(v/v)エタノール/水混合物に接触させ、次いで、100%の振幅で1分3回、超音波(20kHz)の作用下で抽出する。K900で濾過した後、抽出物を濃縮し、活性炭(0.2%w/v)で脱色する。濾過後、溶媒を蒸発させて1.5グラムの褐色粉末を質量収率6%で得る。得られる乾燥抽出物は、エピカテキンで表される25%のポリフェノールを含有する。
実施例5:エタノール90による還流抽出および活性炭による脱色
乾燥および粉砕したレスペデザ・カピタータ地上部280グラムを、反応器内で1時間、2800ミリリットルの90:10(v/v)エタノール/水混合物により撹拌しながら還流抽出する。K900で濾過した後、抽出物を濃縮し、活性炭(0.2%w/v)で脱色する。濾過後、溶媒を蒸発させて25グラムの抽出物を褐色粉末の形態で、質量収率9%で得る。得られる抽出物は、エピカテキンで表される25%のポリフェノールを含有する。
実施例6:エタノール90による還流抽出とその後の活性炭による脱色および担体への収容
乾燥および粉砕したレスペデザ・カピタータ地上部2.5キログラムを、反応器内で1時間、25リットルの90:10(v/v)エタノール/水混合物により撹拌しながら還流抽出する。K900で濾過した後、抽出物を濃縮し、活性炭(0.2%w/v)で脱色する。濾過後、抽出物を1,2−ペンタンジオール中で乾燥させて、46グラムの抽出物を暗色の粘稠な液体の形態で得る。得られる抽出物は、50%の1,2−ペンタンジオールおよびエピカテキンで表される12%のポリフェノールを含有する。
実施例7:エタノール90による還流抽出
乾燥および粉砕したレスペデザ・カピタータ葉100グラムを、反応器内で1時間、1リットルの90:10(v/v)エタノール/水混合物により撹拌しながら還流抽出する。次に、抽出物をK900で濾過し、溶媒を蒸発させて17グラムの緑色粉末を質量収率17%で得る。得られる乾燥抽出物は、エピカテキンで表される28%のポリフェノールを含有する。
薬理学的評価
実施例8:レスペデザ・カピタータ地上部の抽出物による、真皮乳頭細胞によるDKK1の合成および放出の阻害
本研究は、ヒト毛包の真皮乳頭細胞によるDKK1の生産および分泌に対する本発明による抽出物の効果を評価すること、ならびに脱毛予防薬としてのこの抽出物の皮膚科学的および化粧品学的価値を評価することを目的とする。DKK1はアンドロゲン性脱毛症における重要な因子であることが示されている(Kwack et al, BMB Reports, Volume 43, Issue 10, 2010, p. 688-692参照)。
実験は3名の異なるドナーを起源とするヒト毛包の真皮乳頭細胞で行った。
これらの細胞を96ウェルプレートに播種し、標準培養培地で24時間培養した。次に、培地を、供試化合物を含有するまたは含有しない(対照条件)試験培地に置き換える。レスペデザ・カピタータは、本発明の実施例5に従って調製される抽出物であり、この抽出物を3μg/mlと10μg/mlの2種類の濃度で試験し、それはDMSOで希釈された乾燥抽出物である。24時間後、培養上清を回収し、−80℃で保存する。
DKK1タンパク質をLuminex(キット参照:HBNMAG−51K、Millipore)により製造者の説明書に従って定量した。
生データをマイクロソフト・エクセルおよびプリズムソフトウエアによって分析する。統計分析はANOVAを用いた群間比較とその後のダネット検定により行う。
結果
以下の表1は、レスペデザ・カピタータの存在下または不在下でのDKK1発現およびその阻害パーセンテージを示す。
Figure 2021532150
ヒト毛包真皮乳頭細胞は本来、DKK1を150pg/ml前後で分泌する。これらの細胞がレスペデザ・カピタータ抽出物で処理されると、このタンパク質の発現が、3μg/mlの濃度から濃度依存的に有意に低下する。10μg/mlのレスペデザ・カピタータ抽出物の存在下では、DKK1の低下は72%に達する。
従って、本発明者らは、レスペデザ抽出物がDKK1標的に対して阻害剤活性を有することを実証した。
よって、この抽出物は、脱毛の予防および/または治療における薬剤としてのその使用に関して注目される活性を有する。
実施例9:レスペデザ・カピタータ地上部の抽出物による、真皮乳頭細胞による5α−レダクターゼの合成の阻害
本研究は、脱毛およびまたは頭皮脂漏症の予防の分野におけるこの抽出物の価値を評価するために、真皮乳頭細胞における5α−レダクターゼ活性に対する本発明による抽出物の効果を評価することを目的とする。
実験は2名の異なるドナーを起源とするヒト毛包の真皮乳頭細胞で行った。これらの細胞を24ウェルプレートに播種し(150,000細胞/ウェル)、標準培養培地で24時間培養した。次に、培地を24時間、供試化合物を含有するまたは含有しない(対照条件)試験培地または参照品(フィナステリド10μM)に置き換える。レスペデザ・カピタータ抽出物は、本発明の実施例5に従って調製される抽出物であり、この抽出物を30μg/mlと100μg/mlの2種類の濃度で試験し、それはDMSOで希釈された乾燥抽出物である。次に、これらの細胞を、C14テストステロンを含有する、かつ供試化合物を含有するまたは含有しない培地で24時間処理する。次に、テストステロン代謝分析のために培養上清を回収する。
上清のステロイド分子をクロロホルム/メタノール混合物により抽出する。有機相を回収し、薄層クロマトグラフィーにより、ジクロロメタン、酢酸エチルおよびメタノールを含有する溶媒系を使用することによってDHTを分離する。次に、このクロマトグラフィーに対してオートラジオグラフィーを行い、変換されたテストステロンを濃度測定分析により評価する。生データをマイクロソフト・エクセルにより分析する。統計分析は、反復測定ANOVAを用いた群間比較とその後のダネット検定により行う。
本研究では、DHT/テストステロン比を、5α−レダクターゼ酵素の活性を表すように選択する。この比が化合物の添加によって低下すれば、この化合物は5α−レダクターゼ阻害剤であると見なされる。この化合物がこの酵素に対して真に特異的であることが確かであるためには、5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオール/テストステロン比およびアンドロステンジオン/テストステロン比の低下ならびに4−アンドロステン−3,17−ジオン/テストステロン比の上昇を確認することが重要である。
結果
以下の表2は、参照化合物(フィナステリド)およびレスペデザ・カピタータ抽出物とともに24時間+24時間インキュベートした後の5α−レダクターゼ活性(DHT/テストステロン比)を示す。
Figure 2021532150
フィナステリドによるヒト毛包真皮乳頭細胞の処理は、テストステロンのDHTへの変換に極めて強い低下(DHT/テストステロン比の低下)を示す。これらの結果は予想されたものであり、試験の妥当性の確認を可能とする。
レスペデザ・カピタータ抽出物の存在下で、DHT/テストステロン比は濃度依存的に低下し、この低下(60%に達する)はレスペデザ・カピタータ濃度100μg/mlで統計的に有意である。30μg/mlでの活性は統計的に有意とは見なされなかったが、それはなお示唆的である。
従って、本発明者らは、レスペデザ抽出物が5α−レダクターゼに対して阻害剤活性を有することを明らかに実証した。
よって、このレスペデザ・カピタータ抽出物は、皮膚および毛髪障害、特に、脱毛および/または頭皮脂漏症および関連の障害の予防および/または治療における薬剤としてのその使用に関して注目される活性を示す。
実施例10:レスペデザ・カピタータ地上部の抽出物による真皮乳頭細胞の代謝活性および/または増殖の阻害
真皮乳頭は、毛包の基部に、皮膚組織中に深く係留されて存在する。真皮乳頭細胞は毛包の成長に重要な役割を果たすことは長い期間知られていた。血管に富み、真皮乳頭は毛髪に栄養を送り、周期毎に新たな毛を生産するように上皮細胞の増殖および分化に必要な分子情報を与える。研究によれば、健常なヒト毛包において、またラット実験では、病変誘発ヒゲ再生モデルにおいて、真皮乳頭の大きさと真皮乳頭の細胞数および毛幹の大きさとの間にも相関があることが示されている。この相関は進行性の脱毛に関して維持され、毛包および毛幹の大きさは毛の成長サイクルとともに連続的に小さくなる。さらに、毛包内の真皮乳頭の細胞数の増加は部分的には真皮乳頭への新たな細胞の動員によって起こり得るが、真皮乳頭細胞の増殖もまたこの拡大に寄与する。
本研究は、脱毛予防の分野でのこの抽出物の価値を評価するために、真皮乳頭細胞の代謝活性および/または増殖に対する本発明による抽出物の効果を評価することを目的とする。
実験は3名の異なるドナーを起源とするヒト毛包の真皮乳頭細胞で行った。
これらの細胞を96ウェルプレートに播種し、標準培養培地で24時間培養した。次に、培地を、供試化合物を含有するまたは含有しない(対照条件)試験培地(Follicle Dermal Papilla Cell Basal)(HFDPC)培地、Ref C−26500 Promocell製)に置き換える。5%の追加培地(Follicle Dermal Papilla Cell Growth Medium SupplementPack、Ref C−39620、Promocell)を補給した同じ培地の群を陽性対照とする。レスペデザ・カピタータ抽出物は、本発明の実施例2に従って調製される抽出物であり、この抽出物は3μg/mlと10μg/mlの2種類の濃度で試験し、それはDMSOで希釈された乾燥抽出物である。72時間後、培養上清を回収し、−80℃で保存する。
細胞代謝活性および増殖を比色定量法、可溶性テトラゾリウム塩(WIST−1)により評価し、これは薄い赤色であり、ホルマザンに還元された際に赤色となる(Takara Clontechにより販売されている検査、カタログ番号MK400)。生データはマイクロソフト・エクセルにより分析する。統計分析は反復測定ANOVAを用いた群間比較とその後のダネット検定により行う。
結果
表3は、代謝活性および細胞増殖に対するレスペデザ抽出物の結果を示す。
Figure 2021532150
添加剤を加えた培地による真皮乳頭細胞の処理は、細胞増殖および/または代謝活性の有意な活性化を誘導する。この結果によりこのモデルの妥当性が確認される。3μg/mlのレスペデザ・カピタータ抽出物は、細胞増殖および/または代謝活性の統計学的に有意な増加を誘導する。この活性化は、レスペデザ・カピタータが10μg/mlである場合には、おそらく結果のばらつきが大きいために有意には達しないが、それはやはり少なくとも抽出物の効果を示唆する。
よって、本発明者らは、レスペデザ抽出物が細胞増殖および/または代謝活性に対して刺激活性を有することを明らかに実証した。よって、このレスペデザ・カピタータ抽出物は、毛髪の生活環を強化および刺激することによる、ならびに毛髪の再生を促進することによる、毛髪成長の促進におけるその使用に関して注目される活性を有する。
実施例11:ヒトJAK1、JAK2およびJAK3阻害に対するレスペデザ・カピタータ地上部の評価
JAK−STATは、成長、生存、分化および病原体に対する耐性を調節する伝達のためのシグナル伝達経路である。この経路は、サイトカイン、インターフェロンおよび増殖因子の効果を媒介する。哺乳動物では、JAKファミリーは、JAK1、JAK2、JAK3およびTYK2という4つのメンバーからなる。マウス毛包において行われた研究では、JAK−STAT経路は毛周期において動的に調節され、JAK−STAT経路は退行期および休止期に活性化され、成長期の開始時に抑制されることが示された。さらに、マウスでは、休止期におけるトファシチニブ(JAK1/3>JAK2>TYK2)およびルキソリチニブ(JAK1/2>TYK2>JAK3)を含むJAK−STAT経路阻害剤での局所処置は、成長期の開始への迅速な戻りをもたらすことが示された(Harel et al., 2015 Sci. Adv.1, e1500973)。この同じ研究で、ヒト毛包におけるJAK−STATの阻害がex vivoにおいて毛髪の成長を増すことも示される。これらのデータは、JAK−STATシグナル伝達経路が毛髪の成長を刺激するための新たな標的となり得ることを示唆する。
本実施例の目的は、本発明による抽出物がJAK−STATシグナル伝達経路を阻害し得るかどうかを評価することである。この阻害をヒト組換えJAK1、JAK2またはJAK3タンパク質で評価する。
方法
レスペデザ・カピタータ抽出物は、本発明の実施例5に従って調製される抽出物である。この抽出物をDMSOで希釈し、様々な濃度(0.1〜1000μg/ml)で試験する。この試験で、陽性対照(トファシチニブおよびルキソリチニブ)も評価する。
供試品を反応バッファー(JAK1の場合はTris/HCl、JAK2およびJAK3の場合はMOPS(3−モルホリノ−1−プロパンスルホン酸))、EDTAおよび特異的ペプチド基質を伴ってヒト組換えJAK1、JAK2またはJAK3タンパク質とともにインキュベートする。次に、リン酸化反応を、酢酸マグネシウムと放射性標識ATP(JAK1およびJAK2の場合は45μMおよびJAK3の場合は10μM)の混合物の添加により開始させる。周囲温度で40分間のインキュベーション後、リン酸の添加により反応を停止させる。リン酸で4回およびメタノールで1回洗浄を行って、標識ATPを含む小分子を溶出させる。最後に、特定のリン酸化基質の放射能を測定する。化合物は独立した3回の実験で試験し、各実験について2反復行う。
供試品による各組換えJAK1、JAK2およびJAK3タンパク質のIC50値(μg/ml)を以下の表4に示す。
Figure 2021532150
参照化合物(ルキソリチニブおよびトファシチニブ)で得られた結果は予想されたものと同様である。実際に、これら2つの化合物はJAK−STAT活性を強く阻害する(最大阻害97%〜100%、ミリリットル当たり1ナノグラム前後という極めて低いIC50値)。ルキソリチニブは、JAK3よりもJAK1またはJAK2に大きな親和性を示す。トファシチニブは、JAK2よりもJAK1またはJAK3に対して大きな親和性を示す。これらの予想された結果により本試験の妥当性が確認される。
レスペデザ・カピタータ地上部の抽出物は、IC50値24.8μg/mlでJAK1の強い阻害(最大阻害100%)を、やや高いIC50値146.5μg/mlでJAK2の強い阻害(最大阻害100%)を、また、IC50値3.9μg/mlでJAK3の強い阻害(最大阻害100%)を示す。
本試験は、レスペデザ・カピタータ抽出物がチロシンキナーゼ活性の阻害(JAK3に対してより大きい親和性で)の誘導を示し、毛髪成長を促進するために注目される薬理活性を明らかとする。
実施例12:レスペデザ・カピタータ地上部の抽出物のJAK−STAT経路阻害活性の細胞レベルでの確認
本実施例の目的は、細胞モデル、すなわち、毛包の外上皮鞘の濾胞性ケラチノサイト(外毛根鞘(ORS)モデル)におけるJAK−STATシグナル伝達経路に対するレスペデザ・カピタータ抽出物の阻害活性を確認することである。このモデルでは、両方ともこの毛包上皮鞘で発現されるIL−6受容体およびGP130受容体の活性化によりJAK1/2−STAT3経路を活性化するためにインターロイキンIL−6を使用する。Il−6は、毛髪成長周期阻害剤として働くサイトカインである。トランスジェニックマウスモデルにおけるその過剰発現は、毛髪成長の遅延をもたらす。さらに、アンドロゲン性脱毛症では、IL−6は、アンドロゲンの影響下で真皮乳頭細胞において過剰発現されると思われる(Kwack et al., 2012, J Invest Dermatology 132(1): 43-9)。また、IL−6はヒトにおいて毛包成長を遅延させることが報告されている。
方法
この研究は毛包の外上皮鞘の濾胞性ケラチノサイト(外毛根鞘(ORS)モデル)で行う。ケラチノサイトを96ウェルプレート中の適当な培地(CnT−PR、CellNTech製)で培養する。24時間後、細胞をアルカリ性リン酸バッファー(PBS)で洗浄し、培地をCnT−PR−H(初代ヒトケラチノサイトの標準維持培地)に交換する。48時間後、細胞を供試化合物(DMSOで希釈した30および100μg/mlのレスペデザ・カピタータ抽出物)および参照化合物(5μMのルキソリチニブおよびトファシチニブ、両方ともDMSOで希釈)で1時間処理する。供試したレスペデザ・カピタータは、本発明の実施例5に従って調製される抽出物である。次に、IL−6による刺激処理を100ng/mlで15分間行う。
総ての条件をn=3の異なるドナーからの細胞で試験する。レスペデザ・カピタータ抽出物をn=3の異なる実験で試験し、対照条件、刺激および参照化合物はn=6の実験で行う。各実験で、データを3反復で得る。
JAK活性は、STAT3タンパク質のリン酸化の程度を評価することにより評価する。統計分析は正規性および等分散性の確認の後にパラメトリック検定により行い、そうでなければノンパラメトリック検定を選択する。
結果
結果を以下の表5にまとめる。
Figure 2021532150
IL−6によるケラチノサイトの処理は、STAT3のリン酸化程度に有意な増加を誘導する。この増加は16%に達し、統計的に有意である(p<0.05)。参照化合物(5μMで試験したルキソリチニブおよびトファシチニブ)は、STAT3のリン酸化程度を有意に低下させる(それぞれ85%および104%、ルキソリチニブではp<0.05およびトファシチニブではp<0.01)。これらの予想された結果により本試験の妥当性が確認される。
レスペデザ・カピタータ抽出物は、試験した両濃度で有意に(両濃度ともp<0.01)かつ極めて顕著にIL−6刺激により誘導されるSTAT3のリン酸化程度を阻害した。
よって、本発明者らは、毛髪の再成長の促進におけるレスペデザ・カピタータ地上部の抽出物の価値を証明するものである。

Claims (12)

  1. 少なくとも1つの皮膚および毛髪障害の治療および/または予防を目的とする使用のためのレスペデザ・カピタータ抽出物であって、少なくとも1つの皮膚および毛髪障害が脱毛症、頭皮脂漏性皮膚炎、頭皮紅斑、頭皮脂漏症およびそれらの組合せから選択されることを特徴とする、レスペデザ・カピタータ抽出物。
  2. 茎、枝、葉、実、種子および/または花などの根および地上部から選択されるレスペデザ・カピタータ植物の1以上の部分から得られる、請求項1に記載の使用のためのレスペデザ・カピタータ抽出物。
  3. C1〜C5アルコール、グリコール、グリセロール、アセトン、アルキルエステル、ならびにヒドロアルコール混合物またはアセトン/水混合物およびハイドロトロープ溶媒などの水混和性溶媒の混合物からなる群から選択される親水性または中極性溶媒での抽出の後に得られる、請求項1または2に記載の使用のためのレスペデザ・カピタータ抽出物。
  4. 抽出溶媒がエタノール/水混合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用のためのレスペデザ・カピタータ抽出物。
  5. 乾燥抽出物の重量に対して2〜40重量%総ポリフェノールを含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用のためのレスペデザ・カピタータ抽出物。
  6. 脱毛症がアンドロゲン性脱毛症、反応性脱毛症、閉経後脱毛症および円形脱毛症からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用のためのレスペデザ・カピタータ抽出物。
  7. 有効成分としての請求項1〜5のいずれか一項に定義されるようなレスペデザ・カピタータ抽出物と少なくとも1つの化粧品学的にまたは皮膚科学的に許容可能な賦形剤とを含んでなる、化粧品組成物または皮膚科学的組成物。
  8. 組成物の総重量に対する乾燥抽出物の重量で0.0001〜2重量%、好ましくは0.001〜1重量%のレスペデザ・カピタータ抽出物を含んでなる、請求項7に記載の組成物。
  9. 頭皮および/または毛髪への局所投与のために適当な形態で存在する、請求項7または8に記載の組成物。
  10. 経口投与に適当な形態で存在する、請求項7および8に記載の組成物。
  11. 脱毛症、頭皮脂漏性皮膚炎、頭皮紅斑、頭皮脂漏症およびそれらの組合せから選択される少なくとも1つの皮膚および毛髪障害の治療および/または予防を目的とする使用のための、請求項7〜10のいずれか一項に記載の皮膚科学的組成物。
  12. 脱毛症がアンドロゲン性脱毛症、反応性脱毛症、閉経後脱毛症および円形脱毛症からなる群から選択される、請求項11に記載の使用のための組成物。
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