本明細書の以下では、例示的で、非限定的な実施形態、及び付属の図の参照を使用して、本発明について、より完全に記載される。しかし、本発明は、多くの異なる形態で実施される可能性があり、下記に明示される、実施形態のセットに限定されると見なされるべきではない。そうではなくて、これらの実施形態は、本開示が、完全なものであり、本発明の範囲を、当業者へと伝達するように提示される。
本発明が、よりたやすく理解されうるために、下記では、ある特定の用語が規定される。さらなる定義は、本発明の、「発明を実施するための形態」中で見出されうる。
本明細書及び付属の特許請求の範囲で使用される、「ある(a)」、「ある(an)」、及び「その」という用語は、そうでないことが明確に指示されない限りにおいて、単数及び複数の両方の指示対象を含む。
本明細書及び付属の特許請求の範囲において、2つの分子種である、A及びBに言及する場合に使用される、「及び/又は」という用語は、A及びBのうちの少なくとも1つを意味する。本明細書及び付属の特許請求の範囲において、A、B、及びCなど、3つ以上の種に言及する場合に使用される、「及び/又は」という用語は、A、B、若しくはCのうちの少なくとも1つ、又はA、B、若しくはCの任意の組合せのうちの少なくとも1つ(各分子種は、単数又は複数である可能性がある)を意味する。
本明細書を通して、「〜を含む」という語、又は「〜を含む」若しくは「〜を含むこと」などの変化形は、言明された整数(又は構成要素)又は整数(又は構成要素)の群の包含を示唆するが、他の任意の整数(又は構成要素)又は整数(又は構成要素)の群の除外を示唆しないように理解される。
本明細書を通して、「〜を含むこと」という用語は、「〜を含むがこれらに限定されないこと」を意味するように使用される。「〜を含むこと」と、「〜を含むがこれらに限定されないこと」とは、互換的に使用される。
本明細書で使用される、「複数の」という用語は、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、又は23など、2つ以上であることを意味する。
「アミノ酸残基」又は「アミノ酸」という用語は、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドへと組み込まれたアミノ酸への言及を含む。「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸又はアミノ酸残基の、任意のポリマーを含む。「ポリペプチド配列」という用語は、ポリペプチドを、物理的に構成する、一連のアミノ酸又はアミノ酸残基を指す。「タンパク質」とは、1つ又は2つ以上の、ポリペプチド又はポリペプチド「鎖」を含む高分子である。「ペプチド」とは、合計約15〜20アミノ酸残基未満のサイズの、小型のポリペプチドである。「アミノ酸配列」という用語は、長さに応じて、ペプチド又はポリペプチドを、物理的に構成する、一連のアミノ酸又はアミノ酸残基を指す。そうでないことが指し示されない限りにおいて、本明細書で開示されるポリペプチド配列及びタンパク質配列は、左から右へと書かれ、それらの、アミノ末端からカルボキシ末端への順序を表す。
「アミノ酸」、「アミノ酸残基」、「アミノ酸配列」、又はポリペプチド配列という用語は、天然に存在するアミノ酸(L立体異性体及びD立体異性体を含む)を含み、そうでないことが指し示されない限りにおいて、また、セレノシステイン、ピロリシン、N−ホルミルメチオニン、ガンマ−カルボキシグルタミン酸、ヒドロキシプロリンヒプシン、ピログルタミン酸、及びセレノメチオニンなど、天然に存在するアミノ酸と同様に機能しうる、天然アミノ酸の、公知のアナログも含む。本明細書で言及されるアミノ酸は、以下の表Aの略記法により記載される。
ペプチド、ペプチド領域、ポリペプチド領域、タンパク質、又は分子のアミノ酸残基に関する、「保存的置換」という語句は、ペプチド、ペプチド領域、ポリペプチド領域、タンパク質、又は分子の、アミノ酸組成の変更であって、ペプチド、ペプチド領域、ポリペプチド領域、タンパク質、又は分子全体の機能及び構造を、実質的に変化させない変更(Creighton, Proteins: Structures and Molecular Properties (W. H. Freeman and Company, New York (2nd ed., 1992))を参照されたい)を指す。
本明細書で使用される、「HER2」という用語は、「neu」及び「ErbB2」という用語と、互換的に使用される。
本発明の目的では、ポリペプチド又はポリペプチド領域に言及する場合の、「〜に由来する」という語句は、ポリペプチド又はポリペプチド領域が、「親」タンパク質内に元来見出されるアミノ酸配列と、「親」分子の、ある特定の機能(複数可)及び構造(複数可)が、実質的に保存される限りにおいて、元のポリペプチド又はポリペプチド領域と比べた、ある特定のアミノ酸残基の付加、欠失、切断、再配列、又は他の変化を、今後において含みうるアミノ酸配列とを含むことを意味する。当業者は、当技術分野で公知の技法、例えば、タンパク質配列アライメントソフトウェアを使用して、ポリペプチド又はポリペプチド領域が由来した親分子を同定することが可能であろう。
特許請求される発明の目的では、かつ、志賀毒素ポリペプチド配列又は志賀毒素由来ポリペプチドに関して、「野生型」という用語は、一般に、例えば、病原性細菌など、生存種において見出される、天然に存在する志賀毒素タンパク質配列(複数可)を指し、この場合、この志賀毒素タンパク質配列(複数可)は、最も高頻度で生じるバリアントのうちの1つである。これは、少なくとも1つの志賀毒素タンパク質バリアントを含む種の、統計学的検出力のある数の天然に存在する生物個体をサンプリングする場合に、なおも天然に存在するものの所与の種の生物個体のうちの1パーセント未満において見出される低頻度で存在する志賀毒素タンパク質配列と対照的である。その天然環境の外部における、天然単離物のクローン拡大(単離物が、生物であるのか、生物学的配列情報を含む分子であるのかに関わらない)は、クローン拡大が、この種の天然に存在する集団内に存在しない、新たな配列の変動を導入しない、及び/又は互いに対する、配列バリアントの相対的比率を変更しない限りにおいて、天然存在要件を変化させない。
特許請求される発明に関する、「会合した」、「〜を会合させること」、「連結された」、又は「〜を連結すること」という用語は、分子の、2つ又は3つ以上構成要素が、つながれるか、接合されるか、接続されるか、若しくは他の形でカップリングされて、単一の分子を形成する状態、又は2つ分子の間の、会合、連結、接合、及び/若しくは他の任意の接続を創出することにより、2つ分子を、互いと会合させて、単一の分子を形成する作用を指す。例えば、「連結された」という用語は、単一の分子が、形成されるように、1つ又は2つ以上の原子間相互作用により会合した2つ又は3つ以上構成要素を指す場合があり、この場合、原子間相互作用は、共有結合的でありうる、及び/又は非共有結合的でありうる。2つの構成要素の間の共有結合的会合の非限定例は、ペプチド結合及びシステイン間のジスルフィド結合を含む。2つの分子構成要素の間の非共有結合的会合の非限定例は、イオン結合を含む。
本発明の目的では、「連結された」という用語は、単一の分子が形成されるように、1つ又は2つ以上の原子間相互作用により会合させた2つ又は3つ以上の分子構成要素を指し、この場合、原子間相互作用は、少なくとも1つの共有結合を含む。本発明の目的では、「〜を連結すること」という用語は、上記で記載した通り、連結された分子を創出する作用を指す。
本発明の目的では、「融合された」という用語は、ペプチド結合が、カルボン酸基の炭素原子の参与を伴うのか、例えば、α炭素、β炭素、γ炭素、σ炭素など、別の炭素原子を伴うのかに関わらず、ペプチド結合である、少なくとも1つの共有結合により会合した2つ又は3つ以上のタンパク質性構成要素を指す。一体に融合された、2つのタンパク質性構成要素の非限定例は、例えば、結果として得られる分子が、単一の、連続ポリペプチドであるように、ペプチド結合を介して、ポリペプチドへと融合された、アミノ酸、ペプチド、又はポリペプチドを含む。本発明の目的では、「〜を融合させること」という用語は、例えば、翻訳されると、単一のタンパク質性分子を産生する、遺伝子領域の組換え融合から作出される融合タンパク質など、上記で記載した融合分子を創出する作用を指す。
「::」という記号は、その前後のポリペプチド領域が、連続ポリペプチドを形成するように、物理的に、一体に連結されていることを意味する。
本明細書で使用される、「発現された」、「〜を発現すること」、又は「〜を発現する」という用語、及びこれらの文法的変化形は、ポリヌクレオチド又は核酸の、タンパク質への翻訳を指す。発現されたタンパク質は、細胞内にとどまる場合もあり、細胞表面膜の構成要素となる場合もあり、細胞外腔へと分泌される場合もある。
本明細書で使用された、少なくとも1つの細胞表面において、著明量の細胞外標的生体分子を発現する細胞は、「標的陽性細胞」又は「標的+細胞」であり、指定の細胞外標的生体分子と、物理的にカップリングされた細胞である。
本明細書で使用される、「α」という記号は、記号に後続する生体分子に結合することが可能な、免疫グロブリン型結合性領域の略記である。「α」という記号は、記号に後続する生体分子に、10−5以下の解離定数(KD;dissociation constant)により記載される結合アフィニティーで結合するその能力に基づく、免疫グロブリン型結合性領域の機能的特徴を指すように使用される。
本明細書で使用される、「重鎖可変(VH)ドメイン」又は「軽鎖可変(VL)ドメイン」という用語は、それぞれ、対応する天然抗体の、少なくとも定性的抗原結合能を保持する、任意の抗体のVHドメイン又はVLドメイン(例えば、ヒトVHドメイン又はヒトVLドメイン)のほか、これらの任意の派生物(例えば、天然のマウスVHドメイン又はマウスVLドメインに由来するヒト化VHドメイン又はヒト化VLドメイン)を指す。VHドメイン又はVLドメインは、3つのCDR又は抗原結合性領域(ABR;antigen-binding region)により中断された、「フレームワーク」領域からなる。フレームワーク領域は、抗原のエピトープに特異的に結合するように、CDR又はABRを位置合せするのに用いられる。アミノ末端から、カルボキシ末端へと、VH及びVLドメインのいずれも、以下のフレームワーク(FR;framework)と、CDR領域又はABR領域:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4;又は、同様に、FR1、ABR1、FR2、ABR2、FR3、ABR3、及びFR4を含む。本明細書で使用される、「HCDR1」、「HCDR2」、又は「HCDR3」という用語は、それぞれ、VHドメイン内の、CDR1、CDR2、又はCDR3を指すのに使用され、「LCDR1」、「LCDR2」、及び「LCDR3」という用語は、それぞれ、VLドメイン内の、CDR1、CDR2、又はCDR3を指すように使用される。本明細書で使用される、「HABR1」、「HABR2」、又は「HABR3」という用語は、それぞれ、VHドメイン内の、ABR1、ABR2、又はABR3を指すのに使用され、「LABR1」、「LABR2」、又は「LABR3」という用語は、それぞれ、VLドメイン内の、ABR1、ABR2、又はABR3を指すように使用される。ラクダ科動物のVHH断片、軟骨魚類のIgNARである、VNAR断片、ある特定の単一ドメイン抗体、及びこれらの派生物については、同じ基本配置:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4を含む、単一の重鎖可変ドメインが存在する。本明細書で使用される、「HCDR1」、「HCDR2」、又は「HCDR3」という用語は、単一の重鎖可変ドメイン内の、CDR1、CDR2、又はCDR3のそれぞれを指すのに使用されうる。
本発明の目的では、「エフェクター」という用語は、アロステリック効果(複数可)、及び/又は1つ若しくは2つ以上の因子の動員を結果としてもたらす、細胞毒性、生物学的シグナル伝達、酵素的触媒、細胞内経路決定、及び/又は分子間結合などの生物学的活性をもたらすことを意味する。
本発明の目的では、「志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド」、「志賀毒素エフェクターポリペプチド」、「志賀毒素エフェクターポリペプチド領域」、及び「志賀毒素エフェクター領域」という語句は、少なくとも1つの志賀毒素ファミリーのメンバーの志賀毒素Aサブユニットに由来する、ポリペプチド又はポリペプチド領域を指し、この場合、ポリペプチド又はポリペプチド領域は、少なくとも1つの志賀毒素機能を示すことが可能である。例えば、配列番号19〜21は、StxA及びSLT−1Aに由来する。
本発明の目的では、志賀毒素のエフェクター機能は、志賀毒素Aサブユニットに由来するポリペプチド領域、又は元の志賀毒素Aサブユニットにより付与される生物学的活性である。志賀毒素エフェクター機能の非限定例は、細胞への侵入の促進;脂質膜の変形;細胞への内部化の促進;クラスリン媒介性エンドサイトーシスの刺激;細胞内経路決定を、例えば、ゴルジ体、小胞体、及び細胞質ゾルなど、多様な細胞内区画へと方向付けること;細胞内経路決定を、カーゴにより方向付けること;リボソーム機能(複数可)の阻害;例えば、N−グリコシダーゼ活性などの触媒活性、及びリボソームの触媒性阻害;タンパク質合成の低減、カスパーゼ活性の誘導、エフェクターであるカスパーゼの活性化、細胞増殖抑制性効果の達成、及び細胞毒性を含む。志賀毒素触媒活性は、例えば、リボソームの不活化、タンパク質合成の阻害、N−グリコシダーゼ活性、ポリヌクレオチド:アデノシングリコシダーゼ活性、RNアーゼ活性、及びDNアーゼ活性を含む。志賀毒素は、リボソーム不活化タンパク質(RIP)である。RIPは、核酸、ポリヌクレオシド、ポリヌクレオチド、rRNA、ssDNA、dsDNA、mRNA(及びポリA)、及びウイルス性核酸を脱プリン化させうる(例えば、Barbieri L et al., Biochem J 286: 1-4 (1992); Barbieri L et al., Nature 372: 624 (1994); Ling J et al., FEBS Lett 345: 143-6 (1994); Barbieri L et al., Biochem J 319: 507-13 (1996); Roncuzzi L, Gasperi-Campani A, FEBS Lett 392: 16-20 (1996); Stirpe F et al., FEBS Lett 382: 309-12 (1996); Barbieri L et al., Nucleic Acids Res 25: 518-22 (1997); Wang P, Tumer N, Nucleic Acids Res 27: 1900-5 (1999); Barbieri L et al., Biochim Biophys Acta 1480: 258-66 (2000); Barbieri L et al., J Biochem 128: 883-9 (2000); Brigotti M et al., Toxicon 39: 341-8 (2001); Brigotti M et al., FASEB J 16: 365-72 (2002); Bagga S et al., J Biol Chem 278: 4813-20 (2003); Picard D et al., J Biol Chem 280: 20069-75 (2005)を参照されたい)。一部のRIPは、抗ウイルス活性及びスーパーオキシドジスムターゼ活性を示す(Erice A et al., Antimicrob Agents Chemother 37: 835-8 (1993); Au T et al., FEBS Lett 471: 169-72 (2000); Parikh B, Tumer N, Mini Rev Med Chem 4: 523-43 (2004); Sharma N et al., Plant Physiol 134: 171-81 (2004))。志賀毒素触媒活性は、インビトロ及びインビボのいずれにおいても観察されている。志賀毒素エフェクター活性についてのアッセイの非限定例は、例えば、タンパク質合成の阻害活性、脱プリン化活性、細胞増殖の阻害、細胞毒性、スーパーコイルドDNAに対する弛緩活性、及びヌクレアーゼ活性など、多様な活性を測定する。
本明細書で使用される、志賀毒素エフェクター機能の保持とは、適切な定量的アッセイにより、再現可能に測定される通り、同じ条件下で、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド対照(例えば、志賀毒素A1断片)、又は野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド(例えば、志賀毒素A1断片)を含む細胞ターゲティング分子と同等なレベルの志賀毒素機能活性を示すことが可能であることを指す。志賀毒素の、リボソーム不活化又はリボソーム阻害のエフェクター機能について、志賀毒素エフェクター機能の保持とは、例えば、当業者に公知のアッセイ、及び/又は本明細書で記載されているアッセイを使用することなどにより、インビトロ状況において、10,000pM以下のIC50を示すことである。標的陽性細胞殺滅アッセイにおける、志賀毒素の、細胞毒性のエフェクター機能について、志賀毒素エフェクター機能の保持とは、例えば、当業者に公知のアッセイ、及び/又は本明細書で記載されているアッセイを使用することにより示される通り、細胞型、及びそれによる、適切な細胞外標的生体分子の発現に応じて、1,000nM以下のCD50を示すことである。
特許請求される発明の目的では、リボソームの阻害に関する「同等な」という用語は、実験により測定される、リボソーム阻害活性のレベルであって、適切な定量的アッセイにより、再現可能性を伴って測定され、同じ条件下で、参照分子(例えば、第2の細胞ターゲティング分子、第3の細胞ターゲティング分子など)の活性から、再現可能に、10%以内にあるレベルを意味する。
特許請求される発明の目的では、細胞毒性に関する「同等な」という用語は、実験により測定される、細胞毒性のレベルであって、適切な定量的アッセイにより、再現可能性を伴って測定され、同じ条件下で、参照分子(例えば、第2の細胞ターゲティング分子、第3の細胞ターゲティング分子など)の活性から、再現可能に、10%以内にあるレベルを意味する。
細胞毒性に関して、本明細書で使用される、「弱毒化された」という用語は、分子が、同じ条件下で、参照分子により示されるCD50の、10倍〜100倍の間のCD50を示すか、又は示したことを意味する。
志賀毒素のエフェクター機能活性のレベルを決定する場合、不正確なIC50及びCD50値が考えられるべきではない。一部の試料について、正確な曲線の当てはめに要求されるデータ点を収集できないために、IC50又はCD50についての正確な値は、得られない場合がある。例えば、理論的に、所与の試料についての濃度系列中で、それぞれ、50%を超えるリボソームの阻害又は細胞死が生じない場合、IC50もCD50も決定されえない。例えば、下記の実施例において記載されるアッセイなど、例示的な志賀毒素のエフェクター機能アッセイからのデータについての解析において記載される通り、曲線を正確に当てはめるのに不十分なデータは、実際の志賀毒素のエフェクター機能を表すものとして考えられるべきではない。
志賀毒素のエフェクター機能の活性が検出できないことは、細胞への侵入、細胞内経路決定、及び/又は酵素活性の欠如ではなく、発現、ポリペプチドフォールディング、及び/又はタンパク質安定性の不適正のためでありうる。志賀毒素エフェクター機能についてのアッセイは、著明量の志賀毒素のエフェクター機能活性を測定するのに、多量の、本発明のポリペプチドを要求しない場合がある。低エフェクター機能又はエフェクター機能の消失の根底をなす原因が、実験により、タンパク質の発現又は安定性と関連することが決定される程度において、当業者は、志賀毒素の機能的エフェクター活性が、回復され、測定されうるように、当技術分野で公知のタンパク質化学法及び分子改変法を使用して、このような因子を補償することが可能でありうる。例として述べると、細胞ベースの、不適正な発現は、異なる発現制御配列を使用することにより補償される場合があり;ポリペプチドフォールディング及び/又は安定性の不適正は、末端の配列の安定化、又は分子の三次元構造を安定化させる、非エフェクター領域内の補償変異から利益を得る場合がある。
ある特定の志賀毒素エフェクター機能、例えば、細胞内経路決定機能は、容易に測定可能ではない。例えば、細胞内経路決定の不適正のために、志賀毒素エフェクターポリペプチドが、細胞毒性でない、及び/又は異種エピトープを送達しないのかどうかを識別する、規定の定量的アッセイは存在しないが、試験が利用可能な場合、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、適切な野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドと比較した、任意の著明レベルの細胞内経路決定について解析されうる。しかし、本発明の細胞ターゲティング分子の、志賀毒素エフェクターポリペプチドの構成要素が、野生型志賀毒素Aサブユニットコンストラクトと同等(comparable又はequivalent)細胞毒性を示す場合、細胞内経路決定活性レベルは、少なくとも、被験条件下では、野生型志賀毒素Aサブユニットコンストラクトの細胞内経路決定活性レベルと、それぞれ、同等(comparable又はequivalent)であると推定される。
個々の志賀毒素機能のための、新たなアッセイが利用可能な場合、志賀毒素エフェクターポリペプチド、及び/又は志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む細胞ターゲティング分子は、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドの活性の、1000倍若しくは100倍以内にあるか、又は機能的ノックアウト志賀毒素エフェクターポリペプチドと比較して、3倍〜30倍、若しくは30倍以上の活性を示す志賀毒素エフェクター機能など、これらの志賀毒素エフェクター機能の任意のレベルについて解析されうる。
十分な細胞内経路決定も、例えば、T細胞エピトープの提示に基づく細胞毒性アッセイ、又は細胞質ゾル及び/若しくは小胞体に局在化する標的基質を伴う毒素エフェクター機能に基づく細胞毒性アッセイなどの細胞毒性アッセイにおいて、分子の細胞毒性活性レベルを観察することにより推定されうるにとどまる。
本明細書で使用される、「著明」な志賀毒素エフェクター機能の保持とは、適切な定量的アッセイにより、再現可能に測定される通り、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド対照(例えば、志賀毒素A1断片)と同等なレベルの志賀毒素機能活性を指す。インビトロにおけるリボソームの阻害について、著明な志賀毒素のエフェクター機能は、アッセイにおいて使用されるリボソームの供給源(例えば、細菌供給源、古細菌供給源、又は真核生物(藻類、真菌、植物、又は動物)供給源)に応じて、300pM以下のIC50を示すことである。これは、触媒的に破壊された、SLT−1A 1〜251二重変異体(Y77S/E167D)についての、約100,000pMのIC50と比較して、著明に大きな阻害である。実験室の細胞培養物中の、標的陽性細胞殺滅アッセイにおける細胞毒性について、著明な志賀毒素のエフェクター機能は、結合性領域の標的生体分子(複数可)及び細胞型、特に、この細胞型による、査定される分子によりターゲティングされる、適切な細胞外標的生体分子(複数可)及び/又は細胞外エピトープ(複数可)の発現及び/又は細胞表面表示に応じて、100、50、30nM、又は30nM以下のCD50を示すことである。これは、細胞株に応じて、100〜10,000nMのCD50を有する、細胞をターゲティングする結合性領域を伴わない、志賀毒素Aサブユニット単独(又は野生型志賀毒素A1断片)と比較して、適切な標的陽性細胞集団に対する、著明に大きな細胞毒性である。
本発明の目的では、かつ、本発明の分子の志賀毒素エフェクター機能に関して、「妥当な活性」という用語は、天然に存在する(又は野生型)志賀毒素を含む分子に関して、本明細書で規定される、少なくとも中程度のレベル(例えば、11倍〜1,000倍以内)の志賀毒素エフェクター活性を示すことを指し、この場合、志賀毒素エフェクター活性は、内部化の効率、細胞質ゾルへの細胞内経路決定の効率、標的細胞(複数可)による、送達されたエピトープの提示、リボソームの阻害、及び細胞毒性からなる群から選択される。細胞毒性について、志賀毒素エフェクター活性の妥当なレベルは、例えば、野生型志賀毒素コンストラクトが、0.5nM(例えば、野生型志賀毒素A1断片を含む細胞ターゲティング分子)のCD50を示す場合に、500nM以下のCD50を示すことなど、野生型の志賀毒素コンストラクトの1,000倍以内であることを含む。
本発明の目的では、かつ、本発明の分子の細胞毒性に関して、「最適の」という用語は、野生型志賀毒素A1断片(例えば、志賀毒素Aサブユニット、又はある特定の、切断された、そのバリアント)及び/又は天然に存在する志賀毒素を含む分子の細胞毒性の、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10倍以内のレベルの、志賀毒素触媒性ドメインに媒介された細胞毒性を指す。
志賀毒素エフェクターポリペプチドの細胞毒性が、野生型志賀毒素Aサブユニット又はその断片と比べて、低減される場合であってもなお、効力が最高度であるバリアントは、細胞毒力低減バリアントにおいて最小化又は低減される、所望されない効果を示しうるため、実際は、弱毒化志賀毒素エフェクターポリペプチドを使用する適用も、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドの使用と同等以上に有効でありうることに注意されたい。野生型志賀毒素は、極めて強力であり、わずか1つの毒素分子が、中毒細胞の細胞質ゾルに達した後、又は、おそらく、わずか40個の毒素分子が、中毒細胞へと内部化された後に、中毒細胞を殺滅することが可能である。例えば、細胞内経路決定又は細胞毒性などの志賀毒素エフェクター機能が、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドと比較して、大幅に低減された志賀毒素エフェクターポリペプチドであってもなお、例えば、ターゲティング型細胞殺滅、異種エピトープの送達、並びに/又は特異的細胞及びそれらの細胞内区画の検出を伴う適用など、実際の適用に十分に、やはり強力でありうる。加えて、ある特定の活性低減型志賀毒素エフェクターポリペプチドは、カーゴ(例えば、さらなる外因性素材又はT細胞エピトープ)を、標的細胞の、ある特定の細胞内位置又は細胞内区画へと送達するために、特に有用でありうる。
分子の細胞毒性活性に関する、「選択的細胞毒性」という用語は、生体分子標的について陽性の細胞集団(例えば、標的細胞型)と、非標的バイスタンダー細胞集団(例えば、生体分子標的について陰性の細胞型)との間の、細胞毒性の相対レベルであって、細胞毒性選択性の計量、又は非標的細胞との対比での、標的細胞を殺滅する優先性の指標をもたらすように、標的細胞型についての50%細胞毒性濃度(CD50)の、非標的細胞型についてのCD50に対する比として表されうる細胞毒性の相対レベルを指す。
所与の細胞外標的生体分子(又は所与の標的生体分子の細胞外エピトープ)の細胞表面表示及び/又は細胞表面密度は、ある特定の、本発明の細胞ターゲティング分子が、最も適切に使用されうる適用に影響を及ぼしうる。所与の標的生体分子の細胞表面表示及び/又は細胞表面密度の、細胞間の差違は、所与の、本発明の細胞ターゲティング分子の、細胞への内部化の効率及び/又は細胞毒力を、定量的かつ定性的に変化させうる。所与の標的生体分子の細胞表面表示及び/又は細胞表面密度は、標的生体分子について陽性の細胞の間で大幅に変動する場合もあり、なお又は同じ細胞上でも、細胞サイクル又は細胞分化の異なる地点で、大幅に変動する場合もある。特定の細胞又は細胞集団における、所与の標的生体分子、及び/又は所与の標的生体分子の、ある特定の細胞外エピトープについての全細胞表面表示は、蛍光活性化細胞分取(FACS;fluorescence-activated cell sorting)によるフローサイトメトリーを伴う方法など、当業者に公知の方法を使用して決定されうる。
ポリペプチド領域又はポリペプチド内の特色に関して、本明細書で使用される、「破壊された」、「破壊」、又は「〜を破壊すること」という用語、及びこれらの文法的変化形は、領域内の、又は破壊された特色を構成する、少なくとも1つのアミノ酸の変化を指す。アミノ酸変化は、ポリペプチドのアミノ酸配列を変化させる、例えば、欠失(切断など)、逆位、挿入、又は置換など、多様な変異を含む。アミノ酸変化はまた、例えば、アミノ酸官能基内の、1つ若しくは2つ以上の原子の変化、又は1つ若しくは2つ以上の原子の、アミノ酸官能基への付加などの化学的変化も含む。
本明細書で使用される、「脱免疫化された」とは、脊索動物への投与の後で、例えば、野生型のペプチド領域、ポリペプチド領域、又はポリペプチドなどの参照分子と比較した、潜在的抗原性及び/又は潜在的免疫原性の低減を意味する。これは、1つ又は2つ以上の、デノボにおける、抗原性エピトープ及び/又は免疫原性エピトープの導入にかかわらない、参照分子と比較した、全体的な潜在的抗原性及び/又は潜在的免疫原性の低減を含む。ある特定の実施形態では、「脱免疫化された」とは、分子が、哺乳動物への投与の後で、例えば、野生型志賀毒素A1断片など、それが由来した「親」分子と比較した、抗原性及び/又は免疫原性の低減を示したことを意味する。ある特定の実施形態では、本発明の、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドは、参照分子と比較した、相対的抗原性であって、同じ条件下で、例えば、定量的なELISA解析又はウェスタンブロット解析のような、当業者に公知のアッセイ及び/又は本明細書で記載されるアッセイなど、同じアッセイにより測定された参照分子の抗原性より、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は90%以上低減される、相対的抗原性を示すことが可能である。ある特定の実施形態では、本発明の、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドは、参照分子と比較した、相対的免疫抗原性であって、同じ条件下で、例えば、所与の時点において分子の非経口投与を受けた後の哺乳動物(複数可)において産生される抗分子抗体の定量的測定のような、当業者に公知のアッセイ及び/又は本明細書で記載されるアッセイなど、同じアッセイにより測定された参照分子の免疫抗原性より、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、99%、又は99%以上低減される、相対的免疫抗原性を示すことことが可能である。
例示的な細胞ターゲティング分子の相対的免疫原性は、時間経過にわたる、反復非経口投与の後における、細胞ターゲティング分子に対する、インビボにおける抗体応答についてのアッセイを使用して決定された。
本発明の目的では、「B細胞及び/又はCD4+ T細胞が脱免疫化された」という語句は、分子が、哺乳動物への投与の後で、B細胞の抗原性若しくは免疫原性、及び/又はCD4+ T細胞の抗原性若しくは免疫原性に関して、潜在的抗原性及び/又は潜在的免疫原性を低減したことを意味する。ある特定の実施形態では、「B細胞が脱免疫化された」とは、分子が、哺乳動物への投与の後で、例えば、野生型志賀毒素A1断片など、それが由来した「親」分子と比較した、B細胞の抗原性及び/又は免疫原性の低減を示したことを意味する。ある特定の実施形態では、「CD4+ T細胞が脱免疫化された」とは、分子が、哺乳動物への投与の後で、例えば、野生型志賀毒素A1断片など、それが由来した「親」分子と比較した、CD4 T細胞の抗原性及び/又は免疫原性の低減を示したことを意味する。
志賀毒素エフェクターポリペプチド内の、B細胞エピトープ、CD4+ T細胞エピトープ、B細胞エピトープ領域、又はCD4+ T細胞エピトープ領域に関する、「内因性」という用語は、野生型志賀毒素Aサブユニット内に存在するエピトープを指す。
本発明の目的では、「CD8+ T細胞が高度に免疫化された」という語句は、分子が、生存する脊索動物内の、有核脊索動物細胞の内部に存在する場合、CD8+ T細胞の抗原性又は免疫原性に関して、潜在的抗原性及び/又は潜在的免疫原性を増大させていることを意味する。一般に、CD8+ T細胞免疫化分子は、固有の特色(複数可)のために、又は細胞ターゲティング分子の構成要素として、有核脊索動物細胞の早期エンドソーム区画への細胞内部化が可能である。
本発明の目的では、「異種」という用語は、供給源が、天然に存在する志賀毒素のAサブユニットと異なることを意味し、例えば、異種ポリペプチドは、天然の志賀毒素の、任意のAサブユニットの一部として、天然では見出されない。本発明のポリペプチドの、T細胞エピトープ又はT細胞エピトープペプチドの構成要素に関する、「異種」という用語は、修飾されるポリペプチド内で、初期に生じたものではなく、本明細書で記載される、埋込み、融合、挿入、及び/又はアミノ酸置換の方法を介して添加されるのであれ、他の任意の改変手段により添加されるのであれ、ポリペプチドへと付加された、エピトープ又はペプチド配列を指す。結果は、元の非修飾ポリペプチドに対して、外来のT細胞エピトープを含む、修飾ポリペプチドである、すなわち、T細胞エピトープは、元のポリペプチド内に存在しなかった。
本発明のポリペプチドの、T細胞エピトープ又はT細胞エピトープペプチドの構成要素に関する、「組み込まれた」という用語及びその文法的変化形は、出発ポリペプチド領域と、同じ総数のアミノ酸残基を共有する、新たなポリペプチド配列を作出するための、ポリペプチド領域内の、1つ又は2つ以上のアミノ酸の、異なるアミノ酸による、内部における置きかえを指す。したがって、「組み込まれた」という用語は、さらなるアミノ酸、ペプチド、又はポリペプチド構成要素の、出発ポリペプチドへの、外部、末端における融合も、さらなるアミノ酸残基の、内部における、さらなる挿入も含まず、存在するアミノ酸に対する置換だけを含む。内部における置きかえは、アミノ酸残基置換だけにより達せられる場合もあり、一連の置換、欠失、挿入、及び/又は逆位により達せられる場合もある。1つ又は2つ以上のアミノ酸の挿入が使用される場合、挿入に隣接して、同等数の近位アミノ酸が、欠失される結果として、組み込まれたT細胞エピトープをもたらさなければならない。これは、本発明のポリペプチド内に含有されるT細胞エピトープに関して、出発ポリペプチドと比較して、アミノ酸残基数を増大させた、新たなポリペプチドを結果としてもたらす、ポリペプチド内の内部における、1つ又は2つ以上のアミノ酸の挿入を指す、「挿入された」という用語の使用と対照的である。
本発明のポリペプチド内に含有されるT細胞エピトープに関する、「挿入された」という用語及びその文法的変化形は、出発ポリペプチドと比較して、アミノ酸残基数を増大させた、新たなポリペプチド配列を結果としてもたらす、ポリペプチド内の、1つ又は2つ以上のアミノ酸の挿入を指す。T細胞エピトープペプチドの「純粋な」挿入とは、結果として得られるポリペプチド長さが、挿入されたT細胞エピトープペプチドの全体におけるアミノ酸残基の数と同等な、アミノ酸残基の数だけ増大した場合である。本発明のポリペプチド内に含有されるT細胞エピトープに関する、「部分的に挿入された」、「組み込まれ、挿入された」という語句及びその文法的変化形は、結果として得られるポリペプチド長さが増大したが、挿入されたT細胞エピトープペプチドの全体の長さと同等な、アミノ酸残基の数未満だけ増大した場合を指す。挿入は、ポリペプチド内の挿入部位に対して近位でない、ポリペプチドの他の領域が、欠失され、この結果として、最終的なポリペプチドの全長の減少もたらす場合であってもなお、最終的なポリペプチドは、T細胞エピトープペプチドポリペプチド領域内の内部における、1つ又は2つ以上のアミノ酸の挿入を含むため、「純粋」であれ、「部分的」であれ、既に記載された挿入のうちのいずれかを含む。
分子の機能活性について記載する場合に、本明細書で使用される、「T細胞エピトープを送達すること」という用語は、分子が、細胞内の、細胞内区画へと局在化させる生物学的活性であって、T細胞エピトープペプチドを含む、分子のタンパク質性部分の、プロテアソームによる切断を結果としてもたらすのにコンピテントである、生物学的活性をもたらすことを意味する。分子の「T細胞エピトープ送達」機能は、分子を外因的に投与された細胞の細胞表面上における、MHCによる、分子のT細胞エピトープペプチドカーゴの提示を観察することによりアッセイされる場合もあり、アッセイが、そのエンドソーム区画のうちの、1つ又は2つ以上において、分子を含有する細胞により開始された場合に、アッセイされる場合もある。一般に、分子が、T細胞エピトープを、プロテアソームへと送達する能力は、「T細胞エピトープ送達」分子の初期の位置が、細胞の早期エンドソーム区画であり、次いで、分子が、エピトープペプチドを、細胞のプロテアソームへと送達することが実験により示される場合に決定されうる。しかし、「T細胞エピトープ送達」能はまた、分子が、細胞外位置で出発し、エピトープを、細胞及び細胞のプロテアソームへと送達することが、実験により、直接的に、又は間接的に示される場合にも決定されうる。例えば、ある特定の「T細胞エピトープ送達」分子は、例えば、エンドサイトーシスによる、この細胞への侵入の後などに、細胞のエンドソーム区画を通過する。代替的に、「T細胞エピトープ送達」活性は、細胞外位置において出発する分子についても観察されうるが、この場合、分子は、細胞のエンドソーム区画に侵入しない(代わりに、「T細胞エピトープ送達」分子は、細胞に侵入し、おそらく、「T細胞エピトープ送達」分子が、その固有の経路決定を、そのT細胞エピトープペプチドの構成要素の、プロテアソームによる切断を結果としてもたらすのにコンピテントである細胞内区画へと方向付けたために、T細胞エピトープペプチドを、細胞のプロテアソームへと送達する)。
本発明の目的では、本発明の細胞ターゲティング分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド領域の位置に言及する、「アミノ末端に対して近位の」という語句は、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域の、少なくとも1つのアミノ酸残基が、細胞ターゲティング分子が、適切なレベルの、本明細書で言及される、志賀毒素のエフェクター機能活性(例えば、ある特定のレベルの細胞毒力)を示すことが可能である限りにおいて、細胞ターゲティング分子のアミノ末端から、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、又は13以上、例えば、最大で、18〜20アミノ酸残基以内にある場合の距離を指す。したがって、本発明のある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドに対して、アミノ末端側に融合させたアミノ酸残基(複数可)は、志賀毒素エフェクターポリペプチドの機能活性が、本明細書で要求される、適切な活性レベルを下回って低減されるように、志賀毒素のエフェクター機能を低減する(例えば、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端領域の近傍の構造(複数可)の立体障害となることにより)べきではない。
本発明の目的では、本発明の細胞ターゲティング分子内の、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域の、別の構成要素(例えば、細胞をターゲティングする結合性領域、分子部分、及び/又はさらなる外因性素材)と比較した位置に言及する、「アミノ末端に対して、より近位の」という語句は、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端の、少なくとも1つのアミノ酸残基が、本発明の細胞ターゲティング分子の、直鎖状のポリペプチド構成要素のアミノ末端に対して、他の参照構成要素と比較して近接する場合の位置を指す。
本発明の目的では、「志賀毒素ファミリーのメンバーの、1つのAサブユニットに由来する、活性の酵素ドメイン」という語句は、触媒性リボソーム不活化機構を介して、タンパク質合成を阻害する能力を有することを指す。天然に存在する(又は野生型)志賀毒素の酵素活性は、例えば、生細胞の非存在下におけるRNA翻訳を伴う、インビトロアッセイ、又は生細胞内のRNA翻訳を伴う、インビボアッセイなど、当業者に公知のアッセイを使用する、タンパク質の翻訳を阻害する能力により規定されうる。当業者に公知のアッセイ、及び/又は本明細書で記載されているアッセイを使用して、志賀毒素の酵素活性の効力は、例えば、リボソームニッキングアッセイなど、リボソームRNA(rRNA)に対する、N−グリコシダーゼ活性を観察することにより、直接的に評価される場合もあり、並びに/又はリボソーム機能及び/若しくはタンパク質合成の阻害を観察することにより、間接的に評価される場合もある。
本発明の目的では、「志賀毒素A1断片領域」という用語は、志賀毒素A1断片から本質的になるポリペプチド領域、及び/又は志賀毒素の志賀毒素A1断片に由来するポリペプチド領域を指す。
本発明の目的では、細胞ターゲティング分子に関する、「末端」、「アミノ末端」、又は「カルボキシ末端」という用語は、一般に、細胞ターゲティング分子のポリペプチド鎖(例えば、単一の、連続ポリペプチド鎖)の、最後のアミノ酸残基を指す。細胞ターゲティング分子は、2つ以上のポリペプチド又はタンパク質を含むことが可能であり、したがって、本発明の細胞ターゲティング分子は、複数のアミノ末端及びカルボキシ末端を含みうる。例えば、細胞ターゲティング分子の「アミノ末端」は、出発アミノ酸残基の一級アミノ基を伴うか、又はN−アルキル化された、アルファアミノ酸残基のクラスのメンバーである、出発アミノ酸残基の場合の、等価の窒素を伴うアミノ酸残基とのペプチド結合を有さない、出発アミノ酸残基により、一般に特徴づけられる、ポリペプチドのアミノ末端を表す、ポリペプチド鎖の第1のアミノ酸残基により規定されうる。同様に、細胞ターゲティング分子の「カルボキシ末端」は、その一級カルボキシル基のアルファ炭素へのペプチド結合により連結されたアミノ酸残基を有さない、終端アミノ酸残基により、一般に特徴づけられる、ポリペプチドのカルボキシル末端を表す、ポリペプチド鎖の、最後のアミノ酸残基により規定されうる。
本発明の目的では、ポリペプチド領域に関する、「末端」、「アミノ末端」、又は「カルボキシ末端」という用語は、さらなるアミノ酸残基が、この領域の外部において、ペプチド結合により連結されるのかどうかに関わらず、この領域の、領域境界を指す。言い換えれば、この領域が、他のペプチド又はポリペプチドへと融合されているのかどうかに関わらず、ポリペプチド領域の末端を指す。例えば、2つのタンパク質性領域を含む融合タンパク質、例えば、ペプチド又はポリペプチドと、志賀毒素エフェクターポリペプチドとを含む結合性領域は、別のタンパク質性領域、例えば、結合性領域の起始を表す、残基251〜252位におけるアミノ酸残基を伴うペプチド結合にもかかわらず、カルボキシ末端が、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域のアミノ酸残基251を終端とする、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域を有しうる。この例では、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端領域とは、融合タンパク質の末端ではなく、領域境界の内部を表す、残基251を指す。したがって、ポリペプチド領域について、「末端」、「アミノ末端」、及び「カルボキシ末端」という用語は、境界が、物理的に、末端にあるのであれ、大型のポリペプチド鎖内に組み込まれた、内部の位置にあるのであれ、ポリペプチド領域の境界を指すように使用される。
本発明の目的では、「志賀毒素A1断片のカルボキシ末端領域」という語句は、天然に存在する(又は野生型)志賀毒素A1断片に由来するポリペプチド領域であって、疎水性残基(例えば、StxA−A1及びSLT−1A1のV236、並びにSLT−2A1のV235)で起始し、これに、疎水性残基と、志賀毒素A1断片ポリペプチド間で保存される、フーリン切断部位を終端とする領域とが後続し、天然の志賀毒素Aサブユニット内の、A1断片とA2断片との接合部を終端とする領域を指す。本発明の目的では、志賀毒素A1断片のカルボキシ末端領域は、例えば、志賀毒素A1断片のカルボキシ末端を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなるペプチド領域など、志賀毒素A1断片のカルボキシ末端ポリペプチドに由来するペプチド領域を含む。志賀毒素A1断片のカルボキシ末端に由来するペプチド領域の非限定例は、天然位置の、Stx1A(配列番号2)内又はSLT−1A(配列番号1)内の、236位〜239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、又は251位;及びSLT−2A(配列番号3)内の、235位〜239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、又は250位におけるアミノ酸残基配列を含む。
本発明の目的では、連結された分子部分及び/又は結合性領域に関する、「A1断片のカルボキシ末端ポリペプチドに対して近位の」という語句は、志賀毒素A1断片ポリペプチドの最後の残基を規定することアミノ酸残基から、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12アミノ酸残基以内にあることを指す。
本発明の目的では、「A1断片由来領域のカルボキシ末端を、立体的に遮蔽する」という語句は、例えば、天然位置の、Stx1A(配列番号2)内若しくはSLT−1A(配列番号1)内の236〜251位、又はSLT−2A(配列番号3)内の235〜250位のうちのいずれか1つにおけるアミノ酸残基に由来するアミノ酸残基など、A1断片由来領域のカルボキシ末端におけるアミノ酸残基へと連結された、及び/又は融合された、4.5kDa又は4.5kDa以上のサイズの、任意の分子部分(例えば、免疫グロブリン型結合性領域)を含む。本発明の目的では、「A1断片由来領域のカルボキシ末端を、立体的に遮蔽する」という語句はまた、例えば、A1断片由来領域及び/又は志賀毒素エフェクターポリペプチドの最後のアミノ酸に対して、カルボキシ末端側のアミノ酸残基など、A1断片由来領域のカルボキシ末端におけるアミノ酸残基へと連結された、及び/又は融合された、4.5kDa又は4.5kDa以上のサイズの、任意の分子部分(例えば、免疫グロブリン型結合性領域)も含む。本発明の目的では、「A1断片由来領域のカルボキシ末端を、立体的に遮蔽する」という語句はまた、例えば、真核細胞のERAD(小胞体関連分解;endoplasmic reticulum-associated degradation)機構による認識など、細胞による、A1断片由来領域のカルボキシ末端の認識を物理的に防止する、4.5kDa又は4.5kDa以上のサイズの、任意の分子部分(例えば、免疫グロブリン型結合性領域)も含む。
本発明の目的では、少なくとも40アミノ酸を含み、A1断片由来領域を含む、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端領域へと連結された(例えば、融合された)ポリペプチドを含む、例えば、免疫グロブリンの結合性領域又は免疫グロブリン型結合性領域などの結合性領域は、「A1断片由来領域のカルボキシ末端を立体的に遮蔽する」分子部分である。
本発明の目的では、少なくとも40アミノ酸を含み、A1断片由来領域を含む、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端領域へと連結された(例えば、融合された)ポリペプチドを含む、例えば、免疫グロブリンの結合性領域又は免疫グロブリン型結合性領域などの結合性領域は、「A1断片由来領域のカルボキシ末端を損なう」分子部分である。
本発明の目的では、「志賀毒素ファミリーのメンバーのA1断片」という用語は、志賀毒素Aサブユニットの中に保存され、野生型志賀毒素Aサブユニット内の、A1断片とA2断片との間に位置する、フーリン切断部位における、フーリンによるタンパク質分解の後で残存する、アミノ末端の志賀毒素Aサブユニットの断片を指す。
特許請求される発明の目的では、「A1断片領域のカルボキシ末端におけるフーリン切断モチーフ」という語句は、志賀毒素Aサブユニットの中に保存され、天然に存在する志賀毒素Aサブユニット内の、A1断片とA2断片との接合部を架橋する、特異的なフーリン切断モチーフを指す。
本発明の目的では、「A1断片領域のカルボキシ末端に対して近位のフーリン切断部位」という語句は、例えば、A1断片由来領域の、例えば、本発明の細胞ターゲティング分子の分子部分など、分子の別の構成要素への連結部に対して近位の位置など、A1断片領域又はA1断片由来の領域のカルボキシ末端に位置する、フーリン切断モチーフを含む、A1断片領域内又はA1断片由来の領域内の、最後のアミノ酸残基を規定するアミノ酸残基から、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又は8つ以上のアミノ酸残基未満の距離内に、アミノ酸残基を有する、任意の、同定可能なフーリン切断部位を指す。
本発明の目的では、「破壊されたフーリン切断モチーフ」という語句は、(i)本明細書のI−B節で記載された、特異的フーリン切断モチーフを指し、(ii)これは、分子に、フーリンによる切断の、参照分子と比較した低減であって、例えば、同じ条件下で、同じアッセイにおいて観察される、参照分子の、フーリンによる切断より、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%低度(切断なしに相当する100%を含む)であることが、再現可能に観察される、フーリンによる切断の低減などの低減を付与しうる、変異及び/又は切断を含む。参照分子と比較した、フーリンによる切断の百分率は、参照分子の切断される素材:切断されない素材の比で除された、所望の分子の切断される素材:切断されない素材の比(例えば、国際公開第2015/191764号パンフレット;国際公開第2016/196344号パンフレットを参照されたい)として表されうる。適切な参照分子の非限定例は、本明細書で記載される、野生型志賀毒素のフーリン切断モチーフ及び/若しくはフーリン切断部位を含む、ある特定の分子、並びに/又は下記の実施例において参照分子として使用される分子を含む。
本発明の目的では、「フーリンによる切断に抵抗性の」という語句は、分子又はその特異的ポリペプチド領域が、当業者に利用可能な、任意の手段であって、本明細書で記載される方法の使用を含む手段によりアッセイされる通り、(i)野生型志賀毒素Aサブユニット内の、志賀毒素A1断片のカルボキシ末端、又は(ii)天然位置の、A1断片と、A2断片との接合部における、天然に存在するフーリン切断部位が破壊されないコンストラクトの、志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端より低度の、フーリンによる切断を、再現可能に示すことを意味する。
本発明の目的では、「志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来する、活性の酵素ドメイン」という語句は、志賀毒素の酵素活性に基づく、リボソームの触媒性不活化を介して、タンパク質合成を阻害する能力を有するポリペプチド構造を指す。分子的構造が、タンパク質合成に対する阻害活性、及び/又はリボソームの触媒性不活化を示す能力は、例えば、生細胞の非存在下におけるRNA翻訳アッセイを伴う、インビトロアッセイ、又は生細胞内のリボソームを伴う、インビボアッセイなど、当業者に公知の、多様なアッセイを使用して観察されうる。例えば、当業者に公知のアッセイを使用して、志賀毒素の酵素活性に基づく、分子の酵素活性は、例えば、リボソームニッキングアッセイなど、リボソームRNA(rRNA)に対する、N−グリコシダーゼ活性を観察することにより、直接的に評価される場合もあり、並びに/又はリボソーム機能、RNA翻訳、及び/若しくはタンパク質合成の阻害を観察することにより、間接的に評価される場合もある。
志賀毒素エフェクターポリペプチドに関して、本明細書で使用される、「組合せ」とは、2つ又は3つ以上の亜領域を含む、志賀毒素エフェクターポリペプチドについて記載し、この場合、各亜領域は、以下:(1)内因性のエピトープ内又はエピトープ領域内の破壊;(2)組み込まれた異種T細胞エピトープ−ペプチド;(3)挿入された異種T細胞エピトープ−ペプチド;及び(4)A1断片領域のカルボキシ末端における、破壊されたフーリン切断モチーフのうちの少なくとも1つを含む。
本明細書で使用される、「さらなるHER2ターゲティング療法剤」という用語は、HER2をターゲティングして、治療効果又は利益をもたらす、さらなる治療剤(例えば、分子)を意味する。この、さらなるHER2ターゲティング療法剤は、本発明の細胞ターゲティング分子に対して補完的であり、そのHER2ターゲティング活性において、細胞ターゲティング分子と直接競合しない。さらなるHER2ターゲティング療法剤は、抗HER2抗体、又はHER2シグナル伝達に干渉する低分子阻害剤を含みうるか、これらから本質的になりうるか、又はこれらからなりうる。例えば、さらなるHER2ターゲティング療法剤は、ラパチニブ及び/又はネラチニブなどの、二重チロシンキナーゼ阻害剤を含みうるか、これらから本質的になりうるか、又はこれらからなりうる。さらなるHER2ターゲティング療法剤は、本発明の細胞ターゲティング分子が結合する抗原決定基と重複しない抗原決定基に結合するか、又は、結合しても、さらなるHER2ターゲティング療法剤が、本発明の細胞ターゲティング分子による、このHER2分子への結合を妨げないような形で、HER2分子に結合する抗HER2抗体療法を含みうるか、これらから本質的になりうるか、又はこれらからなりうる。例えば、さらなるHER2ターゲティング療法剤は、例えば、T−DM1(トラスツズマブ・エムタンシン)、トラスツズマブ、及び/又はペルツズマブなどの、抗HER2モノクローナル抗体療法及び/又は抗HER2抗体薬コンジュゲート療法を含みうるか、これらから本質的になりうるか、又はこれらからなりうる。さらなるHER2ターゲティング療法剤は、ラパチニブ、ネラチニブ、T−DM1(トラスツズマブ・エムタンシン)、トラスツズマブ、及び/又はペルツズマブのうちのいずれか1つ、又はこれらの組合せから選択されうる。
本発明の分子に関して、本明細書で使用される、「細胞ターゲティング分子」は、「HER2ターゲティング分子」又は「HER2結合性分子」と互換的に使用される。前述の分子型の全ては、多様な「HER2結合性タンパク質」を含む。
序説
本発明は、1つ又は2つ以上の志賀毒素エフェクターポリペプチド、及び少なくとも1つのHER2結合性領域を含む、多様な細胞ターゲティング分子を提供する。本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態は、構造的エレメントを組み合わせる結果として、例えば、1)特定のエレメントの組合せを欠く分子バリアントと比較した、抗原性及び/又は免疫原性の低減を示す、2)特定のエレメントの組合せを欠く分子バリアントと比較した、プロテアーゼによる切断の低減を示す、3)特定のエレメントの組合せを欠く分子バリアントと比較した、ある特定の投与量における、多細胞生物に対する非特異的毒性の低減を示す、及び/又は5)強力な細胞毒性を示す能力など、単一の分子内に、2つ又は3つ以上の特性をもたらす、志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む。本発明の細胞ターゲティング分子は、例えば、HER2ターゲティング型で、細胞毒性の治療用分子;HER2ターゲティング型で、非毒性の送達媒体;及びHER2ターゲティング型の診断用分子など、多様な細胞ターゲティング分子を創出するための足場として役立ちうる。
I.本発明の細胞ターゲティング分子の一般的構造
本発明は、各々が、(1)細胞をターゲティングする結合性領域と、(2)志賀毒素エフェクターポリペプチドの構成要素とを含む、多様な細胞ターゲティング分子を提供する。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、本発明の細胞ターゲティング分子を創出するのに、多様で、多岐にわたる、細胞ターゲティング構成要素(例えば、分子部分及び/又は薬剤)と会合及び/又はカップリングされうる。本発明の細胞ターゲティング分子は、(1)標的生体分子の細胞外部分に特異的に結合することが可能な結合性領域と、(2)1つ又は2つ以上の志賀毒素Aサブユニットのエフェクター機能を示すことが可能な、志賀毒素エフェクターポリペプチドとを含む。細胞をターゲティングする結合性領域(複数可)の、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドとの会合は、例えば、脱免疫化、強力な細胞毒性、効率的な細胞内経路決定、T細胞の高度免疫、分子的安定性、及びインビボの高投与量時における、ある特定の参照分子と比較した忍容性など、所望の特徴により、治療用分子及び診断用分子を改変することを可能とする。
本発明は、各々が、(1)HER2に結合することが可能な、細胞をターゲティングする結合性領域と、(2)志賀毒素のエフェクター機能を示すことが可能な、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドとを含む、多様なHER2ターゲティング分子を提供する。志賀毒素エフェクターポリペプチドは、本発明の細胞ターゲティング分子を創出するのに、多様で、多岐にわたる、HER2ターゲティング構成要素(例えば、分子部分及び/又は薬剤)と会合及び/又はカップリングされうる。本発明の細胞ターゲティング分子は、(1)HER2標的生体分子の細胞外部分に特異的に結合することが可能な結合性領域と、(2)例えば、細胞増殖抑制、細胞毒性、触媒活性、細胞への内部化を促進すること、細胞内経路決定を、ある特定の細胞内区画(複数可)へと方向付けること、及び素材(複数可)の細胞内送達など、1つ又は2つ以上の志賀毒素Aサブユニットのエフェクター機能を示すことが可能な、志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域とを含む。例えば、本発明の細胞ターゲティング分子は、志賀毒素A1断片に由来する領域を含む、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド構成要素を含むことが可能であり、この場合、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドは、(a)内因性のB細胞エピトープ領域及び/又はCD4+ T細胞エピトープ領域を破壊する、組み込まれるか、又は挿入された異種CD8+ T細胞エピトープ;並びに(b)組み込まれるか、又は挿入された異種CD8+ T細胞エピトープと重複しない、少なくとも3つの、内因性のB細胞エピトープ領域及び/又はCD4+ T細胞エピトープ領域の破壊を含み;志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端における、破壊されたフーリン切断モチーフを含み、前記フーリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットのカルボキシ末端と比較した、志賀毒素A1断片領域の、カルボキシ末端の切断により破壊され;志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドは、志賀毒素のエフェクター機能を示すことが可能である。
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、例えば、細胞の細胞表面と、物理的にカップリングされた、HER2標的生体分子などの標的生体分子の細胞外部分への結合特異性を介する細胞ターゲティングを媒介する、1つ又は2つ以上の、細胞をターゲティングする結合性領域へと連結されうる。本発明の細胞ターゲティング分子の、1つの非限定例は、例えば、免疫グロブリン又は免疫グロブリン型結合性領域など、タンパク質性の、細胞をターゲティングする結合性領域へと融合された、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドである。例えば、本発明の細胞ターゲティング分子は、HER2/neu/ErbB2の細胞外部分に特異的に結合することが可能であり、抗体可変断片、単一ドメイン抗体断片、単鎖可変断片、Fd断片、抗原結合性断片、ラクダ科動物抗体に由来するVHH断片、自律性VHドメイン、軟骨魚類抗体に由来する重鎖抗体ドメイン、VNAR断片、及び免疫グロブリン新規抗原受容体のうちの、1つ又は2つ以上を含むポリペプチドを含む、免疫グロブリンの結合性領域を含みうる。
A.HER2/neu/ErbB2結合性領域
ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子の結合性領域は、例えば、細胞表面上の、HER2/neu/ErbB2標的生体分子の細胞外部分(すなわち、細胞外標的生体分子)に、高アフィニティーで、特異的に結合することが可能な、ドメイン、分子部分、又は薬剤などの細胞ターゲティング構成要素である。当業者に公知であるか、又は当技術分野で公知の技法を使用する当業者により発見されうる、多種類の結合性領域が存在する。例えば、本明細書で記載される、必須の結合特徴を示す、いかなる細胞ターゲティング構成要素も、本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態において、結合性領域として使用されうる。
標的生体分子の細胞外部分とは、例えば、標的生体分子が、細胞表面において、細胞により発現される場合など、分子が、細胞と、物理的にカップリングされている場合に、細胞外環境へと露出された、その構造の一部を指す。この文脈では、「細胞外環境へと露出された」とは、標的生体分子の一部が、例えば、抗体、又は単一ドメイン型抗体ドメイン、ナノボディー(登録商標)、ラクダ科動物若しくは軟骨魚類に由来する重鎖抗体ドメイン、単鎖可変断片、又は任意の数の、免疫グロブリンに対して改変された、代替的足場など、抗体より小型の、少なくとも結合性部分により、アクセス可能であることを意味する(下記を参照されたい)。細胞と物理的にカップリングした標的生体分子の部分の、細胞外環境への露出、又はこの部分へのアクセシビリティーは、当技術分野で周知の方法を使用する当業者の実験により決定されうる。
当技術分野ではまた、受容体チロシン−タンパク質キナーゼである、erbB−2としても認知されるHER2は、細胞膜を隔てて、細胞増殖及びアポトーシスの細胞内調節因子へとシグナルを伝達するための細胞表面受容体として機能する、膜貫通タンパク質である。当技術分野では、HER2はまた、Neu、erbB−2、p185、CD340、NGL、及びHER2/neuとしても認知されている(Coussens L et al., Science 230: 1132-39 (1985); King C et al., Science 229: 974-6 (1985); Semba K et al., Proc Natl Acad Sci USA 82: 6497-501 (1985); Yamamoto T et al., Nature 319:230-234 (1986); Kokai Y et al., Proc Natl Acad Sci USA 85: 5389-93 (1988); Disis M et al., Cancer Res 54: 16-20 (1994); Yoshino I et al., J Immunol 152: 2393-400 (1994);例えば、GenBank受託番号:X03363;M17730;NM_004448;SEG_HUMHER20を参照されたい)。HER2という名称は、多様な種に由来する、類縁の構造及びポリペプチド配列を伴う、複数のタンパク質を指す場合があるが、本節の構造例の目的では、「HER2」という用語は、その正確な配列が、アイソフォームに基づき、かつ、個体間で、微妙に変動しうる、ヒトにおいて存在する、表皮増殖因子受容体タンパク質を指す。例えば、HER2とは、例示的なポリペプチド配列である、UniProt:P04626、並びにNCBI受託番号:NP_004439.2、NP_001005862.1、NP_001276865.1、NP_001276866.1、及びNP_001276867.1により表されるヒトタンパク質を指すが;スプライシング、多型及び/又は変異のために、異なるアイソフォーム及びバリアントが存在する(例えば、Siddig A et al., Ann N Y Acad Sci 1138: 84-94 (2008); Poole E et al., Int J Mol Epidemiol Genet 2: 300-15 (2011);国際公開第2000/020579号パンフレットを参照されたい)。当業者は、それらが、参照配列と異なる場合であってもなお、ヒトにおける、他のHER2タンパク質を同定することが可能であろう。
HER2は、多くのがん細胞、とりわけ、乳がん細胞により過剰発現され、その過剰発現は、転移の増大、疾患再発の増大、及び予後不良と強く関連する(例えば、Slamon D et al., Science 235: 177-82 (1987)を参照されたい)。
本発明の細胞ターゲティング分子を創出するように、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドと会合させうる、当業者に公知のHER2結合性領域が、多数存在する。本発明の目的では、「HER2結合性領域」という用語は、HER2分子の細胞外部分に、例えば、HER2に対する、1リットル当たり10−5〜10−12モルの解離定数を有するなど、高アフィニティーで、特異的に結合することが可能な分子部分(例えば、タンパク質性分子)又は薬剤を指す。本明細書で使用される、「HER2結合性」とは、ヒトHER2(また、neu又はErbB2としても公知である)のアイソフォーム又はバリアントの細胞外部分に結合する能力を指す。
本発明の細胞ターゲティング分子の結合性領域は、例えば、リガンド、ペプチド、免疫グロブリン型結合性領域、モノクローナル抗体、改変抗体派生物、又は抗体の改変代替物でありうる。例えば、結合性領域は、免疫グロブリンの結合性領域である。
ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子の結合性領域は、標的生体分子の細胞外部分に、高アフィニティーで、特異的に結合することが可能なタンパク質性部分である。本発明の細胞ターゲティング分子の結合性領域は、ランダムに作出されたペプチド配列、天然に存在するリガンド又はその派生物、免疫グロブリン由来のドメイン、免疫グロブリンドメインに対する代替物としての合成改変足場など、1つ又は2つ以上の、多様なペプチド部分又はポリペプチド部分を含みうる(例えば、国際公開第2005/092917号パンフレット;国際公開第2007/033497号パンフレット;Cheung M et al., Mol Cancer 9: 28 (2010);米国出願第2013/0196928号明細書;国際公開第2014/164693号パンフレット;国際公開第2015/113005号パンフレット;国際公開第2015/113007号パンフレット;国際公開第2015/138452号パンフレット;国際公開第2015/191764号パンフレットを参照されたい)。ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子は、細胞外標的生体分子に、選択的かつ特異的に結合することが可能な、1つ又は2つ以上ポリペプチドを含む結合性領域を含む。
ある特定のモノクローナル抗体、改変抗体派生物、及び抗体の改変代替物など、それらの結合特徴を介して、HER2の細胞外部分へと、分子をターゲティングするために有用である、当技術分野で公知の結合性領域が、多数存在する。
1つの、具体的であるが、非限定な態様に従い、結合性領域は、免疫グロブリン型結合性領域を含みうる。本明細書で使用される、「免疫グロブリン型結合性領域」という用語は、抗原又はエピトープなど、1つ又は2つ以上の標的生体分子に結合することが可能なポリペプチド領域を指す。結合性領域は、標的分子に結合する、それらの能力により、機能的に規定されうる。免疫グロブリン型結合性領域は一般に、抗体又は抗体様構造に由来するが、他の供給源に由来する、代替的足場も、用語の範囲内にあることが想定される。ある特定の実施形態では、結合性領域は、抗体又は抗体様構造に由来する、免疫グロブリンの結合性領域を含みうる。
免疫グロブリン(Ig;immunoglobulin)タンパク質は、Igドメインとして公知の構造ドメインを有する。Igドメインは、約70〜110アミノ酸残基の長さの範囲にあり、典型的に、7〜9本の逆平行ベータ鎖が、2枚のベータシートへと配置され、これが、サンドイッチ様構造を形成する、特徴的なIgフォールディングを持つ。Igフォールディングは、サンドイッチの内部表面上の、疎水性アミノ酸相互作用により安定化させられ、鎖内のシステイン残基間のジスルフィド結合により、高度に保存される。Igドメインは、可変(IgV又はVセット;variable)ドメイン、定常(IgC又はCセット;constant)ドメイン又は中間(IgI又はIセット;intermediate)ドメインでありうる。一部のIgドメインには、「相補性(complementary)決定領域」ともまた呼ばれ、抗体の、それらのエピトープへの結合の特異性に重要である、相補性決定領域(CDR;complementarity determining region)が付随していることがある。非免疫グロブリンタンパク質でもまた、Ig様ドメインが見出され、これに基づき、タンパク質のIgスーパーファミリーのメンバーとして分類される。HUGOヒトゲノム命名法委員会(HGNC;HUGO Gene Nomenclature Committee)は、Ig様ドメイン含有ファミリーのメンバーのリストを提供している。
免疫グロブリン型結合性領域は、抗体又はその抗原結合性断片のポリペプチド配列であることが可能であり、この場合、アミノ酸配列は、例えば、ライブラリースクリーニングを介する分子改変又は分子選択により、天然抗体又は非免疫グロブリンタンパク質のIg様ドメインのアミノ酸配列から変動させられている。免疫グロブリン型結合性領域の作出において、組換えDNA法及びインビトロライブラリースクリーニングが適切であるので、抗体は、小型のサイズ、細胞への侵入、又はインビボ適用及び/若しくは治療適用のための他の改善など、所望の特徴を得るように、再設計されうる。可能な変動は、多く、わずかに1つのアミノ酸の変更から、例えば、可変領域の、完全な再設計までの範囲にわたりうる。典型的に、抗原結合性特徴を改善するか、可変領域の安定性を改善するか、又は免疫原性応答の可能性を低減するために、可変領域内の変化がなされるであろう。
本発明の構成要素として想定される、多数の免疫グロブリン型結合性領域が存在する。ある特定の実施形態では、免疫グロブリン型結合性領域は、細胞外標的生体分子に結合することが可能な抗体パラトープなど、免疫グロブリンの結合性領域に由来する。ある特定の、他の実施形態では、免疫グロブリン型結合性領域は、免疫グロブリンドメインに由来しないが、細胞外標的生体分子への、高アフィニティーの結合をもたらすことにより、免疫グロブリンの結合性領域と同様に機能する、改変ポリペプチドを含む。この改変ポリペプチドは、本明細書で記載される、免疫グロブリンに由来する相補性決定領域を含むか、これらからなるか、又はこれらから本質的になるポリペプチド足場を含んでもよい。
それらの高アフィニティーの結合特徴を介して、ポリペプチドを、特異的細胞型へとターゲティングするために有用な多数の結合性領域はまた、先行技術にも存在する。ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子の結合性領域は、自律性VHドメイン、単一ドメイン型抗体ドメイン(sdAb)、ラクダ科動物に由来する重鎖抗体ドメイン(VHH断片又はVHドメイン断片)、ラクダ科動物のVHH断片又はVHドメイン断片に由来する重鎖抗体ドメイン、軟骨魚類に由来する重鎖抗体ドメイン、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、VNAR断片、単鎖可変(scFv)断片、ナノボディー(登録商標)、重鎖とCH1ドメインとからなるFd断片、単鎖Fv−CH3ミニボディー、二量体CH2ドメイン断片(CH2D)、Fc抗原結合性ドメイン(Fcab)、単離された相補性決定領域3(CDR3)断片、拘束型フレームワーク領域3、CDR3、フレームワーク領域4(FR3−CDR3−FR4)ポリペプチド、小型モジュラー免疫医薬(SMIP)ドメイン、scFv−Fc融合体、多量体化scFv断片(ダイアボディー、トリアボディー、テトラボディー)、ジスルフィド安定化抗体可変(Fv)断片、VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン、及びCH1ドメインからなる、ジスルフィド安定化抗原結合性(Fab)断片、二価ナノボディー(登録商標)、二価ミニボディー、二価F(ab’)2断片(Fab二量体)、二特異性タンデムVHH断片、二特異性タンデムscFv断片、二特異性ナノボディー(登録商標)、二特異性ミニボディー、及びそのパラトープ及び結合機能性を保持する、前出の遺伝子改変対応物(Ward E et al., Nature 341: 544-6 (1989); Davies J, Riechmann L, Biotechnology (NY) 13: 475-9 (1995); Reiter Y et al., Mol Biol 290: 685-98 (1999); Riechmann L, Muyldermans S, J Immunol Methods 231: 25-38 (1999); Tanha J et al., J Immunol Methods 263: 97-109 (2002); Vranken W et al., Biochemistry 41: 8570-9 (2002); Jespers L et al., J Mol Biol 337: 893-903 (2004); Jespers L et al., Nat Biotechnol 22: 1161-5 (2004); To R et al., J Biol Chem 280: 41395-403 (2005); Saerens D et al., Curr Opin Pharmacol 8: 600-8 (2008); Dimitrov D, MAbs 1: 26-8 (2009); Weiner L, Cell 148: 1081-4 (2012); Ahmad Z et al., Clin Dev Immunol 2012: 980250 (2012)を参照されたい)を含む群から選択される。例えば、本発明の細胞ターゲティング分子は、抗体可変断片、単一ドメイン抗体断片、単鎖可変断片、Fd断片、抗原結合性断片、ラクダ科動物抗体に由来するVHH断片、自律性VHドメイン、軟骨魚類抗体に由来する重鎖抗体ドメイン、VNAR断片、及び免疫グロブリン新規抗原受容体のうちの、1つ又は2つ以上を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる結合性領域を含みうる。ある特定のさらなる実施形態では、結合性領域は、単鎖可変断片及び/又はラクダ科動物抗体に由来するVHH断片を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。ある特定のさらなる実施形態では、結合性領域は、単鎖可変断片を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。ある特定のさらなる実施形態では、結合性領域は、ラクダ科動物抗体に由来するVHH断片を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。
例えば、改変二量体Fcドメイン、単量体Fc(mFc)、scFv−Fc、VHH−Fc、CH2ドメイン、単量体CH3ドメイン(mCH3)、合成再プログラム化免疫グロブリンドメイン、及び/又は免疫グロブリンドメインの、リガンドとのハイブリッド融合体(Hofer T et al., Proc Natl Acad Sci U. S. A. 105: 12451-6 (2008); Xiao J et al., J Am Chem Soc 131: 13616-13618 (2009); Xiao X et al., Biochem Biophys Res Commun 387: 387-92 (2009); Wozniak-Knopp G et al., Protein Eng Des Sel 23 289-97 (2010); Gong R et al., PLoS ONE 7: e42288 (2012); Wozniak-Knopp G et al., PLoS ONE 7: e30083 (2012); Ying T et al., J Biol Chem 287: 19399-408 (2012); Ying T et al., J Biol Chem 288: 25154-64 (2013); Chiang M et al., J Am Chem Soc 136: 3370-3 (2014); Rader C, Trends Biotechnol 32: 186-97 (2014); Ying T et al., Biochimica Biophys Acta 1844: 1977-82 (2014))など、免疫グロブリンの定常領域に由来するポリペプチドを含む、様々な結合性領域が存在する。
ある特定の、他の実施形態に従い、結合性領域は、改変された、免疫グロブリンドメインに対する代替的足場を含む。当技術分野では、標的生体分子に対する、高アフィニティーかつ特異的な結合など、免疫グロブリン由来構造と、同様の機能的な特徴を示す、改変された代替的足場が公知であり、例えば、安定性の増大又は免疫原性の低減など、改善された特徴を、ある特定の免疫グロブリンドメインにもたらしうる。一般に、免疫グロブリンドメインに対する代替的足場は、20キロドルトン未満であり、単一のポリペプチド鎖からなり、システイン残基を欠き、比較的高度な熱力学的安定性を示す。
本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、結合性領域は、自律性VHドメイン、単一ドメイン型抗体ドメイン(sdAb)、ラクダ科動物に由来する重鎖抗体ドメイン(VHH断片又はVHドメイン断片)、ラクダ科動物のVHH断片又はVHドメイン断片に由来する重鎖抗体ドメイン、軟骨魚類に由来する重鎖抗体ドメイン、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、VNAR断片、単鎖可変(scFv)断片、ナノボディー(登録商標)、重鎖とCH1ドメインとからなるFd断片、順列変異Fv(pFv)、単鎖Fv−CH3ミニボディー、二量体CH2ドメイン断片(CH2D)、Fc抗原結合性ドメイン(Fcab)、単離された相補性決定領域3(CDR3)断片、拘束型フレームワーク領域3、CDR3、フレームワーク領域4(FR3−CDR3−FR4)ポリペプチド、小型モジュラー免疫医薬(SMIP)ドメイン、scFv−Fc融合体、多量体化scFv断片(ダイアボディー、トリアボディー、テトラボディー)、ジスルフィド安定化抗体可変(Fv)断片、VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン、及びCH1ドメインからなる、ジスルフィド安定化抗原結合性(Fab)断片、二価ナノボディー(登録商標)、二価ミニボディー、二価F(ab’)2断片(Fab二量体)、二特異性タンデムVHH断片、二特異性タンデムscFv断片、二特異性ナノボディー(登録商標)、二特異性ミニボディー、及びその結合機能性を保持する、前出の遺伝子改変対応物(Worn A, Pluckthun A, J Mol Biol 305: 989-1010 (2001); Xu L et al., Chem Biol 9: 933-42 (2002); Wikman M et al., Protein Eng Des Sel 17: 455-62 (2004); Binz H et al., Nat Biotechnol 23: 1257-68 (2005); Hey T et al., Trends Biotechnol 23 :514-522 (2005); Holliger P, Hudson P, Nat Biotechnol 23: 1126-36 (2005); Gill D, Damle N, Curr Opin Biotech 17: 653-8 (2006); Koide A, Koide S, Methods Mol Biol 352: 95-109 (2007); Byla P et al., J Biol Chem 285: 12096 (2010); Zoller F et al., Molecules 16: 2467-85 (2011); Alfarano P et al., Protein Sci 21: 1298-314 (2012); Madhurantakam C et al., Protein Sci 21: 1015-28 (2012); Varadamsetty G et al., J Mol Biol 424: 68-87 (2012); Reichen C et al., J Struct Biol 185: 147-62 (2014))を含む群から選択される、代替的足場を含む。
例えば、ヒト細胞表面受容体であるHER2の細胞外部分に結合する、多数の代替的足場(例えば、Wikman M et al., Protein Eng Des Sel 17: 455-62 (2004); Orlova A et al. Cancer Res 66: 4339-8 (2006); Ahlgren S et al., Bioconjug Chem 19: 235-43 (2008); Feldwisch J et al., J Mol Biol 398: 232-47 (2010);米国特許第5,578,482号明細書;同第5,856,110号明細書;同第5,869,445号明細書;同第5,985,553号明細書;同第6,333,169号明細書;同第6,987,088号明細書;同第7,019,017号明細書;同第7,282,365号明細書;同第7,306,801号明細書;同第7,435,797号明細書;同第7,446,185号明細書;同第7,449,480号明細書;同第7,560,111号明細書;同第7,674,460号明細書;同第7,815,906号明細書;同第7,879,325号明細書;同第7,884,194号明細書;同第7,993,650号明細書;同第8,241,630号明細書;同第8,349,585号明細書;同第8,389,227号明細書;同第8,501,909号明細書;同第8,512,967号明細書;同第8,652,474号明細書;及び米国特許出願第2011/0059090号明細書を参照されたい)が同定されている。代替的抗体フォーマットに加えて、抗体様結合能は、例えば、オリゴマー、RNA分子、DNA分子、炭水化物、及びグリコカリックスアーレン(例えば、Sansone F, Casnati A, Chem Soc Rev 42: 4623-39 (2013)を参照されたい)などの非タンパク質性化合物、又は例えば、ペプチドとカップリングされた、フェノール−ホルムアルデヒド環状オリゴマー及びカリックスアーレン−ペプチド組成物などの、部分的なタンパク質性化合物(例えば、米国特許第5,770,380号明細書を参照されたい)によっても付与されうる。
ある特定の実施形態では、HER2結合性領域は、免疫グロブリン型結合性領域である。ある特定の実施形態では、免疫グロブリン型HER2結合性領域は、HER2の細胞外部分に結合することが可能な抗体パラトープなど、免疫グロブリンのHER2結合性領域に由来する。ある特定の、他の実施形態では、免疫グロブリン型HER2結合性領域は、免疫グロブリンドメインに由来しないが、HER2の細胞外部分への、高アフィニティーの結合をもたらすことにより、免疫グロブリンのHER2結合性領域と同様に機能する、改変ポリペプチドを含む。この改変ポリペプチドは、相補性決定領域 (例えば、重鎖可変ドメイン 及び/又は 軽鎖可変ドメインなど)及び/又は本明細書で記載される免疫グロブリンに由来する抗原結合性領域を含むか、これらからなるか、又はこれらから本質的になるポリペプチド足場を含んでもよい。
発明の構成要素として想定される、多数のHER2結合性領域が存在する。免疫グロブリン型HER2結合性領域の非限定例は、例えば、抗ErbB2、4D5、2C4、7F3、7C2、mumAb 4D5、chmAb 4D5、(rhu)mAb 4D5、huMAb4D5−1、huMAb4D5−2、huMAb4D5−3、huMAb4D5−4、huMAb4D5−5、huMAb4D5−6、huMAb4D5−7、huMAb4D5−8、トラスツズマブ、ヒト化520C9、4D5Fc8、無ヒンジrhu4D5、変異システイン残基を伴う、非グリコシル化rhu4D5、ペルツズマブ、及びヒト化2C4(Hudziak R et al., Mol Cell Biol 9: 1165-72 (1989); McKenzie S et al., Oncogene 4:543-8 (1989); Bacus S et al., Molecular Carcinogenesis 3: 350-62 (1990); Hancock M et al., Cancer Res 51: 4575-80 (1991); Maier L et al., Cancer Res 51: 5361-5369 (1991); Stancovski I et al., Proc Natl Acad Sci USA 88: 8691-5 (1991); Tagliabue E et al., Int J Cancer 47: 933-937 (1991); Bacus S et al., Cancer Res 52: 2580-9 (1992); Carter P et al., Proc Natl Acad Sci USA 89: 4285-89 (1992); Harwerth I et al. J Biol Chem 267: 15160-7 (1992); Kasprzyk P et al., Cancer Res 52: 2771-6 (1992); Lewis G et al., Cancer Immunol Immunother 37: 255-63 (1993); Xu F et al., Int J Cancer 53: 401-8 (1993); Arteaga C et al., Cancer Res 54: 3758-65 (1994); Shawver L et al., Cancer Res 54: 1367-73 (1994); Klapper L et al. Oncogene 14: 2099-109 (1997);国際公開第1993/21319号パンフレット;国際公開第1994/00136号パンフレット;国際公開第1997/00271号パンフレット;国際公開第1998/77797号パンフレット;米国特許第5,772,997号明細書;米国特許第5,783,186号明細書;米国特許第5,821,337号明細書;米国特許第5,840,525号明細書;米国特許第6,949,245号明細書;及び米国特許第7,625,859号明細書)など、HER2結合性モノクローナル抗体及びその派生物を含む。
ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子は、ヒトHER2及び/又はHER2陽性細胞の細胞表面への特異的結合、及び高アフィニティーの結合について選択される、免疫グロブリン型ポリペプチド(例えば、免疫グロブリンポリペプチド)を含む、結合性領域を含む。本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、結合性領域は、少なくとも1つの重鎖可変(VH)ドメイン;及び/又は少なくとも1つの軽鎖可変(VL)ドメインを含む。本明細書で記載される通り、少なくとも1つの、重鎖可変ドメインのポリペプチドは、リンカー(本明細書で記載されるリンカー又はドメイン間リンカーなど)により、少なくとも1つの、軽鎖可変ドメインのポリペプチドへと連結されうる。本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、結合性領域は、例えば、重鎖だけの可変(VHH)ドメイン(例えば、ラクダ科動物抗体に由来する)などの単一ドメイン抗体断片を含む。
本発明の細胞ターゲティング分子の結合性領域は、配列番号45〜74において規定された結合性領域など、そのCDRに照らして規定されうる。本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、結合性領域は、a)(i)配列番号45、配列番号51、配列番号57、若しくは配列番号63において示されたアミノ酸配列のうちの1つを含むか、若しくはこれから本質的になるHCDR1;(ii)配列番号46、配列番号52、配列番号58、若しくは配列番号64において示されたアミノ酸配列のうちの1つを含むか、若しくはこれから本質的になるHCDR2;及び(iii)配列番号47、配列番号53、配列番号59、若しくは配列番号65において示されたアミノ酸配列のうちの1つを含むか、若しくはこれから本質的になるHCDR3を含む、重鎖可変(VH)ドメイン;並びに/又はb)(i)配列番号48、配列番号54、配列番号60、若しくは配列番号66において示されたアミノ酸配列のうちの1つを含むか、若しくはこれから本質的になるLCDR1;(ii)配列番号49、配列番号55、配列番号61、若しくは配列番号67において示されたアミノ酸配列のうちの1つを含むか、若しくはこれから本質的になるLCDR2;及び(iii)配列番号50、配列番号56、配列番号62、若しくは配列番号68において示されたアミノ酸配列のうちの1つを含むか、若しくはこれから本質的になるLCDR3を含む、軽鎖可変(VL)ドメインからなる群から選択されるポリペプチド(複数可)を含む。ある特定の実施形態では、結合性領域は、(i)配列番号51、配列番号52、及び配列番号53のそれぞれに示された、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3のアミノ酸配列;(ii) 配列番号57、配列番号58、及び配列番号59のそれぞれに示された、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3のアミノ酸配列;又は (iii) 配列番号63、配列番号64、及び配列番号65のそれぞれに示された、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3のアミノ酸配列を含む、少なくとも1つの、重鎖可変ドメインのポリペプチドを含む。ある特定の実施形態では、結合性領域は、(i)配列番号54、配列番号55、及び配列番号56のそれぞれに示された、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列;(ii) 配列番号60、配列番号61、及び配列番号62のそれぞれに示された、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列;又は (iii) 配列番号66、配列番号67、及び配列番号68のそれぞれに示された、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列を含む、少なくとも1つの、軽鎖可変ドメインのポリペプチドを含む。
ある特定の実施形態では、結合性領域は、(i)配列番号51、配列番号52、及び配列番号53のそれぞれに示された、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3のアミノ酸配列;(ii) 配列番号57、配列番号58、及び配列番号59のそれぞれに示された、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3のアミノ酸配列;又は (iii) 配列番号63、配列番号64、及び配列番号65のそれぞれに示された、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3のアミノ酸配列を含む、少なくとも1つの、重鎖可変ドメインのポリペプチドと;(i)配列番号54、配列番号55、及び配列番号56のそれぞれに示された、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列;(ii) 配列番号60、配列番号61、及び配列番号62のそれぞれに示された、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列;又は (iii) 配列番号66、配列番号67、及び配列番号68のそれぞれに示された、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列を含む、少なくとも1つの、軽鎖可変ドメインのポリペプチドとを含む。例えば、結合性領域は、(i)配列番号51、配列番号52、及び配列番号53のそれぞれに示された、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3のアミノ酸配列を含む、少なくとも1つの、重鎖可変ドメインのポリペプチドと;(i)配列番号54、配列番号55、及び配列番号56のそれぞれに示された、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列を含む、少なくとも1つの、軽鎖可変ドメインのポリペプチドとを含みうる。例えば、結合性領域は、(i)配列番号57、配列番号58、及び配列番号59のそれぞれに示された、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3のアミノ酸配列を含む、少なくとも1つの、重鎖可変ドメインのポリペプチドと;(i)配列番号60、配列番号61、及び配列番号62のそれぞれに示された、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列を含む、少なくとも1つの、軽鎖可変ドメインのポリペプチドとを含みうる。例えば、結合性領域は、(i)配列番号63、配列番号64、及び配列番号65のそれぞれに示された、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3のアミノ酸配列を含む、少なくとも1つの、重鎖可変ドメインのポリペプチドと;(i)配列番号66、配列番号67、及び配列番号68のそれぞれに示された、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列を含む、少なくとも1つの、軽鎖可変ドメインのポリペプチドとを含みうる。これらのCDRを有する結合性領域は、単鎖可変断片を含む、免疫グロブリンの結合性領域でありうる。
本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、結合性領域は、a)(i)配列番号69若しくは配列番号72に示されたアミノ酸配列を含むか、若しくはこれから本質的になるHCDR1;(ii)配列番号70若しくは配列番号73に示されたアミノ酸配列を含むか、若しくはこれから本質的になるHCDR2;及び/又は(iii)配列番号71若しくは配列番号74に示されたアミノ酸配列を含むか、若しくはこれから本質的になるHCDR3を含む重鎖限定可変(VHH)ドメインからなる群から選択されるポリペプチド(複数可)を含む。ある特定のさらなる実施形態では、結合性領域は、a)(i)配列番号69又は配列番号72に示されたアミノ酸配列を含むか、又はこれから本質的になるHCDR1;(ii)配列番号70又は配列番号73に示されたアミノ酸配列を含むか、又はこれから本質的になるHCDR2;及び(iii)配列番号71又は配列番号74に示されたアミノ酸配列を含むか、又はこれから本質的になるHCDR3を含む重鎖限定可変(VHH)ドメインからなる群から選択されるポリペプチド(複数可)を含む。これらのCDRを有する結合性領域は、ラクダ科動物抗体に由来する重鎖限定可変(VHH)ドメインを含む、免疫グロブリンの結合性領域でありうる(例えば、下掲の実施例1を参照されたい)。
本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、結合性領域は、配列番号24のアミノ酸269〜501;配列番号25のアミノ酸269〜513;配列番号26若しくは配列番号27のアミノ酸269〜499;アミノ酸;配列番号28のアミノ酸269〜520;配列番号29又は配列番号30のアミノ酸269〜519;配列番号31のアミノ酸268〜386;配列番号32のアミノ酸269〜499;配列番号33のアミノ酸269〜499;配列番号34のアミノ酸253〜370;配列番号35のアミノ酸253〜367;配列番号36のアミノ酸269〜514;配列番号99のアミノ酸268〜498;配列番号100のアミノ酸268〜499;配列番号97のアミノ酸268〜500;配列番号98のアミノ酸268〜512;配列番号102又は配列番号103のアミノ酸268〜518;配列番号101のアミノ酸268〜519;配列番号104のアミノ酸267〜384;配列番号105のアミノ酸268〜498;配列番号106のアミノ酸252〜370;配列番号107のアミノ酸252〜366;及び配列番号108のアミノ酸268〜513のアミノ酸配列と、少なくとも85%(少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99%以上など)同一であるアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、結合性領域は、配列番号25のアミノ酸269〜513;配列番号26のアミノ酸269〜499;配列番号29又は配列番号30のアミノ酸269〜519;配列番号31のアミノ酸268〜386;配列番号34のアミノ酸253〜370;配列番号35のアミノ酸253〜367;又は配列番号36のアミノ酸269〜514のアミノ酸配列と、少なくとも85%(少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99%以上など)同一であるアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、結合性領域は、配列番号29又は配列番号30のアミノ酸269〜519と、少なくとも85%(少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99%以上など)同一であるアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。
本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、結合性領域は、以下のポリペプチド配列:配列番号24のアミノ酸269〜501;配列番号25のアミノ酸269〜513;配列番号26若しくは配列番号27のアミノ酸269〜499;アミノ酸;配列番号28のアミノ酸269〜520;配列番号29又は配列番号30のアミノ酸269〜519;配列番号31のアミノ酸268〜386;配列番号32のアミノ酸269〜499;配列番号33のアミノ酸269〜499;配列番号34のアミノ酸253〜370;配列番号35のアミノ酸253〜367;配列番号36のアミノ酸269〜514 配列番号99のアミノ酸268〜498;配列番号100のアミノ酸268〜499;配列番号97のアミノ酸268〜500;配列番号98のアミノ酸268〜512;配列番号102又は配列番号103のアミノ酸268〜518;配列番号101のアミノ酸268〜519;配列番号104のアミノ酸267〜384;配列番号105のアミノ酸268〜498;配列番号106のアミノ酸252〜370;配列番号107のアミノ酸252〜366;及び配列番号108のアミノ酸268〜513により表されたポリペプチドのうちのいずれか1つを含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、結合性領域は、以下のポリペプチド配列:配列番号25のアミノ酸269〜513;配列番号26のアミノ酸269〜499;配列番号29又は配列番号30のアミノ酸269〜519;配列番号31のアミノ酸268〜386;配列番号34のアミノ酸253〜370;配列番号35のアミノ酸253〜367;及び配列番号36のアミノ酸269〜514により表されたポリペプチドのうちのいずれか1つを含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、結合性領域は、配列番号29又は配列番号30のアミノ酸269〜519により表されたポリペプチドを含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、結合性領域は、配列番号29のアミノ酸269〜519、配列番号31のアミノ酸268〜386;配列番号34のアミノ酸253〜370;又は配列番号35のアミノ酸253〜367により表されたポリペプチドを含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。ある特定の実施形態では、結合性領域は、配列番号29のアミノ酸269〜519により表されたポリペプチドを含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。ある特定の実施形態では、結合性領域は、配列番号31のアミノ酸268〜386により表されたポリペプチドを含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。ある特定の実施形態では、結合性領域は、配列番号34のアミノ酸253〜370により表されたポリペプチドを含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。ある特定の実施形態では、結合性領域は、配列番号35のアミノ酸253〜367により表されたポリペプチドを含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。ある特定の実施形態では、結合性領域は、配列番号36のアミノ酸269〜514により表されたポリペプチドを含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。
本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、結合性領域は、配列番号35のアミノ酸253〜367;配列番号34のアミノ酸253〜370;配列番号31のアミノ酸268〜386;配列番号26、29、30又は36のアミノ酸269〜387;配列番号25のアミノ酸269〜397;配列番号24又は27のアミノ酸381〜500;及び配列番号28のアミノ酸401〜520のうちのいずれか1つに示されたアミノ酸配列と、少なくとも85%(少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99%以上など)同一であるアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる、少なくとも1つの重鎖可変(VH)ドメインを含む。ある特定のさらなる実施形態では、結合性領域は、配列番号35のアミノ酸253〜367;配列番号34のアミノ酸253〜370;配列番号31のアミノ酸268〜386;配列番号26、29、30又は36のアミノ酸269〜387;配列番号25のアミノ酸269〜397;配列番号24又は27のアミノ酸381〜500;及び配列番号28のアミノ酸401〜520を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる、少なくとも1つの重鎖可変(VH)ドメインを含む。本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、結合性領域は、配列番号26、29、30又は36のアミノ酸269〜387;配列番号25のアミノ酸269〜397;配列番号24又は27のアミノ酸381〜500;及び配列番号28のアミノ酸401〜520のうちのいずれか1つに示されたアミノ酸配列と、少なくとも85%(少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99%以上など)同一であるアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる、少なくとも1つの重鎖可変(VH)ドメインを含む。本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定のさらなる実施形態では、結合性領域は、配列番号24、27又は28のアミノ酸269〜375;配列番号26のアミノ酸393〜499;配列番号25のアミノ酸403〜513;配列番号36のアミノ酸408〜514;及び配列番号29又は30のアミノ酸413〜519のうちのいずれか1つに示されたアミノ酸配列と、少なくとも85%(少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99%以上など)同一であるアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる、少なくとも1つの軽鎖可変(VL)ドメインを含む。本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定のさらなる実施形態では、結合性領域は、配列番号24、27又は28のアミノ酸269〜375;配列番号26のアミノ酸393〜499;配列番号25のアミノ酸403〜513;配列番号36のアミノ酸408〜514;及び配列番号29又は30のアミノ酸413〜519を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる、少なくとも1つの軽鎖可変(VL)ドメインを含む。本明細書で記載される、重鎖可変ドメインポリペプチドのいずれかは、本明細書で記載される、軽鎖可変ドメインポリペプチドのいずれかと組み合わせて使用されうる。
ある特定の実施形態では、結合性領域は、(a)配列番号26、29、30又は36のアミノ酸269〜387;配列番号25のアミノ酸269〜397;配列番号24又は27のアミノ酸381〜500;配列番号36のアミノ酸401〜522、又は配列番号28のアミノ酸401〜520を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる、少なくとも1つの重鎖可変(VH)ドメインと;(b)配列番号24、27又は28のアミノ酸269〜375;配列番号26のアミノ酸393〜499;配列番号25のアミノ酸403〜513;配列番号36のアミノ酸408〜514;及び配列番号29又は30のアミノ酸413〜519を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる、少なくとも1つの軽鎖可変(VL)ドメインとを含みうる。例えば、結合性領域は、(a)配列番号24のアミノ酸381〜500を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる、少なくとも1つの重鎖可変(VH)ドメインと;(b)配列番号24のアミノ酸269〜375を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる、少なくとも1つの軽鎖可変(VL)ドメインとを含みうる。例えば、結合性領域は、(a)配列番号25のアミノ酸269〜397を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる、少なくとも1つの重鎖可変(VH)ドメインと;(b)配列番号25のアミノ酸403〜513を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる、少なくとも1つの軽鎖可変(VL)ドメインとを含みうる。例えば、結合性領域は、(a)配列番号26のアミノ酸269〜387を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる、少なくとも1つの重鎖可変(VH)ドメインと;(b)配列番号26のアミノ酸393〜499を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる、少なくとも1つの軽鎖可変(VL)ドメインとを含みうる。例えば、結合性領域は、(a)配列番号27のアミノ酸381〜500を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる、少なくとも1つの重鎖可変(VH)ドメインと;(b)配列番号27のアミノ酸269〜375を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる、少なくとも1つの軽鎖可変(VL)ドメインとを含みうる。例えば、結合性領域は、(a)配列番号28のアミノ酸401〜520を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる、少なくとも1つの重鎖可変(VH)ドメインと;(b)配列番号28のアミノ酸269〜375を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる、少なくとも1つの軽鎖可変(VL)ドメインとを含みうる。例えば、結合性領域は、(a)配列番号29のアミノ酸269〜387を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる、少なくとも1つの重鎖可変(VH)ドメインと;(b)配列番号29のアミノ酸413〜519を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる、少なくとも1つの軽鎖可変(VL)ドメインとを含みうる。例えば、結合性領域は、(a)配列番号30のアミノ酸269〜387を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる、少なくとも1つの重鎖可変(VH)ドメインと;(b)配列番号30のアミノ酸413〜519を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる、少なくとも1つの軽鎖可変(VL)ドメインとを含みうる。例えば、結合性領域は、(a)配列番号36のアミノ酸269〜387を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる、少なくとも1つの重鎖可変(VH)ドメインと;(b)配列番号36のアミノ酸408〜514を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる、少なくとも1つの軽鎖可変(VL)ドメインとを含みうる。
ある特定の実施形態では、結合性領域は、配列番号102のアミノ酸269〜520を含むか、又はこれから本質的になる。
ある特定の実施形態では、結合性領域は、配列番号26、29〜30、又は36のアミノ酸269〜387;配列番号25の269〜397;配列番号27の381〜500;又は配列番号36の401〜522を含むか、又はこれから本質的になる、重鎖可変ドメインを含む。ある特定のさらなる実施形態では、結合性領域は、配列番号27のアミノ酸269〜375;配列番号26の393〜499;配列番号25の403〜513;配列番号36の408〜514;配列番号29又は30の413〜519を含むか、又はこれから本質的になる、軽鎖可変ドメインを含む。ある特定のさらなる実施形態では、結合性領域は、配列番号25のアミノ酸269〜513;配列番号26の269〜499;配列番号29の269〜519;配列番号30の269〜519;配列番号31の268〜386;配列番号32の269〜499;配列番号33の269〜499;配列番号34の253〜370;配列番号35の253〜367;又は配列番号36の269〜514を含むか、又はこれから本質的になる。
天然リガンド又はその派生物は、本発明の細胞ターゲティング分子のための、HER2結合性領域として利用されうる。天然HER2は、エピレグリン及びヘレグリンのような表皮増殖因子などのリガンドに結合すると、ErbBファミリーの他のメンバーと共に、ヘテロ二量体化することが公知である(Moasser M, Oncogene 26: 6469-87 (2007); Riese D, Cullum R, Semin Cell Dev Biol 28: 49-56 (2014); Sollome J et al., Cell Signal 26: 70-82 (2014))。ErbBファミリーのメンバーに結合するErbBリガンドは、EGF、TGF−α、アンフィレグリン、ベータセルリン、HB−EGF、エピレグリン、HER2−68及びHER2−100、ヘレグリン、ヘルスタチン、NRG−2、NRG−3、及びNRG−4(Justman Q et al., J Biol Chem 277: 20618-24 (2002); Jhabvala-Romero F., et al., Oncogene 22: 8178-86 (2003))を含む。ErbBリガンドの例は、米国特許第5,641,869号明細書及びMarchionni M et al., Nature 362: 312-8 (1993)において開示されている、原型ヘレグリンなどのヘレグリン(HRG)を含む。ヘレグリンの例は、ヘレグリンα、ヘレグリンβ1、ヘレグリンβ2、及びヘレグリンβ3(Holmes W et al., Science 256: 1205-10 (1992);米国特許第5,641,869号明細書);neu分化因子(NDF)(Peles et al., Cell 69: 205-16 (1992));アセチルコリン受容体誘導活性(ARIA)(Falls D et al., Cell 72: 801-15 (1993));グリア増殖因子(GGF)(Marchionni M et al., Nature 362: 312-8 (1993));感覚ニューロン/運動ニューロン由来因子(SMDF)(Ho W et al., J Biol Chem 270: 14523-32 (1995));γ−ヘレグリン(Schaefer G et al., Oncogene 15: 1385-94 (1997))を含む。
本発明に従うErbBリガンドはまた、合成ErbBリガンドでもありうる。合成リガンドは、特定のErbB受容体に特異的な場合もあり、特定のErbB受容体複合体を認識する場合もある。合成リガンドの例は、合成ヘレグリン/EGFキメラビレグリン(Jones J et al., FEBS Lett, 447: 227-31 (1999))、及びEGF様ドメイン断片である、HRGβ1177−244である。HER2又はその派生物と相互作用する、ErbBリガンド又はErbBリガンドの一部は、HER2の細胞外部分に結合する、本発明の、HER2をターゲティングする細胞ターゲティング分子を構築するように、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドへと融合されうる。
HER2の細胞外部分に結合する合成ペプチドは、ターゲティングのための結合性領域として利用されうる。HER2に結合することが可能な、多くのペプチドについて記載されている(例えば、米国特許第5,578,482号明細書;同第5,856,110号明細書;同第5,869,445号明細書;同第5,985,553号明細書;同第6,333,169号明細書;同第6,987,088号明細書;同第7,019,017号明細書;同第7,282,365号明細書;同第7,306,801号明細書;同第7,435,797号明細書;同第7,446,185号明細書;同第7,449,480号明細書;同第7,560,111号明細書;同第7,674,460号明細書;同第7,815,906号明細書;同第7,879,325号明細書;同第7,884,194号明細書;同第7,993,650号明細書;同第8,241,630号明細書;同第8,349,585号明細書;同第8,389,227号明細書;同第8,501,909号明細書;同第8,512,967号明細書;同第8,652,474号明細書;及び米国出願第2011/0059090号明細書を参照されたい)。
ある特定の実施形態では、HER2の細胞外部分に結合する低分子は、ターゲティングのための結合性領域として利用されうる。チロシンキナーゼ阻害剤、AZD8931、ラパチニブ、ネラチニブ(HKI−272)、ダコミチニブ(PF−00299804)、アファチニブ(BIBW2992)など、HER2に結合することが可能な、多くの低分子について記載されている(Barlaam B et al., ACS Med Chem Lett 4: 742-6 (2013); Yu H, Riley G, J Natl Compr Canc Netw 11: 161-9 (2013); Roskoski R, Pharmacol Res 87C: 42-59 (2014))。HER2の細胞外部分に結合する、他の低分子は、ゲフィチニブ、エルロチニブ、AEE788、AG1478、AG1571(SU−5271)、AP26113、CO−1686、XL647、バンデタニブ、及びBMS−690514のような、公知のEGFR結合剤を誘導体化することなど、当業者に周知の方法(Kurokawa H, Arteaga C, Clin Cancer Res 7: 4436s-4442s (2001); Yigitbasi O et al., Cancer Res 64: 7977-84 (2004); Yu H, Riley G, J Natl Compr Canc Netw 11: 161-9 (2013); Roskoski R, Pharmacol Res 87C: 42-59 (2014))を使用して同定されうる。
前述のHER2結合性分子のうちのいずれも、HER2結合性領域としての使用に適切でありうるか、又は本発明の細胞ターゲティング分子における使用のための、1つ若しくは2つ以上のHER2結合性領域を創出するように修飾されうる。上記の結合性領域構造のうちのいずれも、結合性領域の構成要素が、HER2分子の細胞外部分.に対して、1リットル当たり10−5〜10−12モル、好ましくは、200ナノモル(nM;nanomolar)未満の解離定数を有する限りにおいて、本発明の分子の構成要素として使用されうる。
結合性領域が結合するHER2/neu/ErbB2標的生体分子
ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子の結合性領域は、好ましくは、例えば、がん細胞及び/又は腫瘍細胞など、所望の細胞型の表面と、物理的にカップリングされた、HER2生体分子の細胞外部分又は細胞外HER2生体分子に特異的に結合することが可能なタンパク質性領域を含む。
「標的生体分子」という用語は、グリコシル化などの翻訳後改変により修飾された生物学的分子、一般に、タンパク質性分子又はタンパク質であって、細胞ターゲティング分子の、多細胞生物内の、特異的細胞、細胞型、及び/又は位置へのターゲティングを結果としてもたらす、本発明の細胞ターゲティング分子の結合性領域が結合するタンパク質性分子又はタンパク質を指す。
本発明の目的では、標的生体分子に関する、「細胞外」という用語は、その構造のうちの、少なくとも一部を、細胞外環境へと露出させた生体分子を指す。細胞とカップリングした標的生体分子の部分の、細胞外環境への露出、又はこの部分へのアクセシビリティーは、当技術分野で周知の方法を使用する当業者の実験により決定されうる。細胞外標的生体分子の非限定例は、細胞膜構成要素、膜貫通型タンパク質、細胞膜係留型生体分子、細胞表面結合型生体分子、及び分泌型生体分子を含む。
本発明に関して、標的生体分子について記載するのに使用される場合の、「物理的にカップリングされた」という語句は、各単一の相互作用のエネルギーが、少なくとも約1〜5キロカロリーの桁数にある、標的生体分子と細胞との間の、複数の非共有結合的相互作用(例えば、静電結合、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性力など)など、標的生体分子又はその一部を、細胞の外部とカップリングさせる、共有結合的分子間相互作用及び/又は非共有結合的分子間相互作用を意味する。全ての内在性膜タンパク質は、細胞膜並びに表在性膜タンパク質と、物理的にカップリングされていることが見出されうる。例えば、細胞外標的生体分子は、膜貫通領域、脂質アンカー、糖脂質アンカーを含みうるであろう、及び/又は前出のうちのいずれか1つを含む因子と、非共有結合的に会合しうるであろう(例えば、非特異的疎水性相互作用及び/又は脂質結合性相互作用を介して)。
標的生体分子の細胞外部分は、非修飾ポリペプチド、生化学的官能基及び糖脂質の付加により修飾されたポリペプチドを含む、多様なエピトープを含みうる(例えば、米国特許第5,091,178号明細書;欧州特許第2431743号明細書を参照されたい)。
本発明の細胞ターゲティング分子の結合性領域は、それらのHER2標的の、細胞型特異的発現、特異的細胞型に関する、それらのHER2標的生体分子の物理的局在、及び/又はそれらの標的HER2生体分子の特性など、多数の基準に基づき設計又は選択されうる。例えば、ある特定の、本発明の細胞ターゲティング分子は、もっぱら、種の唯一の細胞型、又は多細胞生物内の唯一の細胞型により細胞表面において発現される、細胞表面HER2標的生体分子に結合することが可能な結合性領域を含む。細胞外標的HER2生体分子が、内因的に内部化されるか、又は本発明の細胞ターゲティング分子と相互作用すると、たやすく内部化するように強いられることは、所望であるが、必要ではない。
本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態の中で、結合性領域は、抗原が、がん細胞又は腫瘍細胞への発現に制約される場合の、がん細胞又は腫瘍細胞の細胞表面上の、HER2抗原への特異的かつ高アフィニティーの結合について選択される、免疫グロブリン型ポリペプチドに由来する(Glokler J et al., Molecules 15: 2478-90 (2010); Liu Y et al., Lab Chip 9: 1033-6 (2009)を参照されたい)。他の実施形態に従い、結合性領域は、HER2が、がん細胞により、非がん細胞と比較して、過剰発現されるか、又は優先的に発現される場合の、がん細胞の細胞表面上の、HER2の細胞外部分への、特異的かつ高アフィニティーの結合について選択される。
当業者により、任意の所望の標的HER2生体分子が、志賀毒素エフェクターポリペプチドと、会合及び/又はカップリングされて、本発明の細胞ターゲティング分子を作製するために、適切な結合性領域を設計又は選択するのに使用されうることが理解されるであろう。
本明細書で記載された、上記の結合性領域のうちのいずれも、単独で使用される場合もあり、本発明の方法を含む、本発明の、各個別の実施形態と組み合わせて使用される場合もある。
本発明の細胞ターゲティング分子の一般的構造は、それらの結合性領域の差違のために、それらの細胞ターゲティング活性の差違を示す、異なる、本発明の細胞ターゲティング分子を創出するように、多様で、多岐にわたる、HER2標的結合性領域を、多様な、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドと会合させうるという点で、モジュラーである。これは、異なる実施形態が、例えば、細胞増殖抑制、細胞毒性、及び外因性素材の細胞内送達などの、志賀毒素エフェクター機能を伴う、異なる種類の細胞をターゲティングするように、本発明の細胞ターゲティング分子の、異なる実施形態により示される、様々な細胞ターゲティング活性を可能とする。さらに、本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態は、それらのそれぞれの志賀毒素エフェクターポリペプチド領域の差違のために、例えば、脊索動物へと投与された場合の、低抗原性及び/又は低免疫原性、ある特定のプロテアーゼによるタンパク質分解性切断に対する抵抗性、多細胞生物へと投与された場合の高安定性、高投与量時の、インビボにおける忍容性、カーゴを、細胞内位置へと送達する能力、及び/又は細胞表面上の提示のために、T細胞エピトープを、MHCクラスI分子へと送達する能力など、ある特定の特徴を示す。
本発明の目的では、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域及び細胞をターゲティングするHER2結合性領域の、具体的な順序又は配向性は、明示的に言及されない限りにおいて、互いに対して、又は本発明の細胞ターゲティング分子内で固定されない。例えば、本発明の細胞ターゲティング分子が、アミノ末端の(複数可)及びカルボキシ末端(複数可)を伴う融合タンパク質である場合、本発明の構成要素の、多様な配置が、適切でありうる(例えば、図1を参照されたい)。本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、互いに対する、又は細胞ターゲティング分子内の、それらの構成要素の配置は、本明細書で記載される通りに限定される。例えば、ある特定の小胞体保持/賦活シグナルモチーフ(例えば、国際公開第2015/138435号パンフレットを参照されたい)は一般に、本発明の細胞ターゲティング分子のカルボキシ末端及び/又は本発明の細胞ターゲティング分子のタンパク質構成要素のカルボキシ末端に位置する。
B.志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドの一般的構造
本発明の細胞ターゲティング分子は、例えば、切断及び/又はアミノ酸残基置換(複数可)のような変異など、1つ又は2つ以上の構造的修飾をさらに含む、野生型志賀毒素Aサブユニットに由来する、少なくとも1つの、志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む。ある特定の実施形態では、本発明は、以下の志賀毒素エフェクターポリペプチド亜領域:(1)脱免疫化された亜領域、(2)志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端近傍の、プロテアーゼによる切断に抵抗性の亜領域、及び(3)T細胞エピトープペプチドが組み込まれるか、又は挿入された亜領域のうちの2つ又は3つ以上の組合せを含む、改善された、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドを改変することを伴う。例えば、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(1)脱免疫化された亜領域、(2)志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端近傍の、プロテアーゼによる切断に抵抗性の亜領域、及び(3)脱免疫化された亜領域と重複しない、T細胞エピトープペプチドを組み込まれるか、又は挿入された亜領域の組合せを含みうる。
ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子は、志賀毒素A1断片領域を含む、志賀毒素エフェクターポリペプチドを含み、この場合、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドは、(a)内因性のB細胞エピトープ領域及び/又はCD4+ T細胞エピトープ領域(志賀毒素A1断片領域内の領域など)を破壊する、組み込まれるか、又は挿入された異種CD8+ T細胞エピトープ;(b)組み込まれるか、又は挿入された異種CD8+ T細胞エピトープと重複しない、少なくとも3つの、内因性のB細胞エピトープ領域及び/又はCD4+ T細胞エピトープ領域(志賀毒素A1断片領域内の、3つ又は4つ以上の領域など)の破壊;並びに(c)志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端における、破壊されたフーリン切断モチーフを含み;志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドは、志賀毒素のエフェクター機能を示すことが可能である。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドは、野生型志賀毒素Aサブユニットと比べて、そのカルボキシ末端において切断されている結果として、1つ又は2つ以上の、内因性のB細胞エピトープ領域及び/又はCD4+ T細胞エピトープ領域が消失している。ある特定のさらなる実施形態では、フーリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットのカルボキシ末端と比較した、カルボキシ末端の切断を含む。ある特定のさらなる実施形態では、フーリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットのカルボキシ末端と比較した、カルボキシ末端の切断により破壊される。ある特定の実施形態では、細胞ターゲティング分子は、例えば、それが、細胞ターゲティング分子内に存在する、以下の特色:(1)組み込まれるか、又は挿入されたCD8+ T細胞エピトープ、(2)少なくとも3つの、内因性のB細胞エピトープ領域及び/若しくはCD4+ T細胞エピトープ領域の破壊、並びに/又は(3)志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端における、破壊されたフーリン切断モチーフの、任意の組合せを欠く点を除き、志賀毒素A1断片領域を含む野生型志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド、志賀毒素A1断片領域を含む野生型志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドを含む参照細胞ターゲティング分子、又は細胞ターゲティング分子からなる参照細胞ターゲティング分子などの参照分子と比較して、低度の、相対的抗原性及び/又は相対的免疫原性を示すことが可能である。
本発明の目的では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、1つ又は2つ以上の志賀毒素機能(例えば、Cheung M et al., Mol Cancer 9: 28 (2010);国際公開第2014/164693号パンフレット;国際公開第2015/113005号パンフレット;国際公開第2015/113007号パンフレット;国際公開第2015/138452号パンフレット;国際公開第2015/191764号パンフレットを参照されたい)を示すことが可能な、志賀毒素ファミリーの、志賀毒素Aサブユニットメンバーに由来するポリペプチドであり、カルボキシ末端を有する、志賀毒素A1断片に由来する領域を含む。志賀毒素機能は、例えば、細胞への内部化の増大、エンドソーム区画から細胞質ゾルへの細胞内経路決定の方向付け、細胞内分解の回避、リボソームの触媒性不活化、並びに細胞増殖抑制効果及び/又は細胞毒性効果の達成を含む。
毒素タンパク質の志賀毒素ファミリーは、構造的かつ機能的に類縁である、多様な天然に存在する毒素、例えば、志賀毒素、志賀様毒素1、及び志賀様毒素2から構成される(Johannes L, Romer W, Nat Rev Microbiol 8: 105-16 (2010))。志賀毒素ファミリーのホロトキシンメンバーは、一部の宿主細胞の表面上に存在する、特異的なグリコスフィンゴ脂質に優先的に結合するターゲティングドメインと、細胞の内部に入ると、リボソームを、恒久的に不活化させることが可能な酵素的ドメインとを含有する(Johannes L, Romer W, Nat Rev Microbiol 8: 105-16 (2010))。志賀毒素ファミリーのメンバーは、同じ全体構造及び作用機構を共有する(Engedal N et al., Microbial Biotech 4: 32-46 (2011))。例えば、Stx、SLT−1と、SLT−2とは、無細胞系において、識別不能な酵素活性を提示する(Head S et al., J Biol Chem 266: 3617-21 (1991); Tesh V et al., Infect Immun 61: 3392-402 (1993); Brigotti M et al., Toxicon 35:1431-1437 (1997))。
志賀毒素ファミリーは、志賀赤痢菌(S. dysenteriae)血清型1から単離された、真性志賀毒素(Stx;true Shiga toxin)、腸管出血性大腸菌(E. coli)の血清型から単離された、志賀様毒素1(SLT1又はStx1又はSLT−1又はSlt−I;Shiga-like toxin 1)のAサブユニットのバリアント、及び腸管出血性大腸菌の血清型から単離された、志賀様毒素2(SLT2又はStx2又はSLT−2;Shiga-like toxin 2)バリアントを包含する。SLT1は、Stxと、1アミノ酸残基だけ異なり、いずれも、ベロ細胞毒素又はベロ毒素(VT;verocytotoxin又はverotoxin)と称されている(O’Brien A, Curr Top Microbiol Immunol 180: 65-94 (1992))。SLT1バリアントと、SLT2バリアントとは、一次アミノ酸配列レベルでは、互いと、約53〜60%類似するに過ぎないが、志賀毒素ファミリーのメンバーに共通する、酵素活性及び細胞毒性の機構を共有する(Johannes L, Romer W, Nat Rev Microbiol 8: 105-16 (2010))。規定された亜型である、Stx1a、Stx1c、Stx1d、及びStx2a〜Stx2gなど、39を超える、異なる志賀毒素について記載されている(Scheutz F et al., J Clin Microbiol 50: 2951-63 (2012))。志賀毒素コード遺伝子が、遺伝子水平伝播を介して、細菌種間に拡散しうるため、志賀毒素ファミリーのメンバーは、天然では、いかなる細菌種にも限定されない(Strauch E et al., Infect Immun 69: 7588-95 (2001); Bielaszewska M et al., Appl Environ Micrbiol 73: 3144-50 (2007); Zhaxybayeva O, Doolittle W, Curr Biol 21: R242-6 (2011))。種間伝播の例として述べると、志賀毒素は、患者から単離されたA.ヘモリティクス(A. haemolyticus)の株において発見された(Grotiuz G et al., J Clin Microbiol 44: 3838-41 (2006))。志賀毒素をコードするポリヌクレオチドが、新たな亜種又は種に侵入すると、志賀毒素のアミノ酸配列は、志賀毒素ファミリーのメンバーに共通の細胞毒性機構を、やはり維持しながら、遺伝的浮動及び/又は選択圧のために、わずかな配列の変動を発生させることが可能であると推測される(Scheutz F et al., J Clin Microbiol 50: 2951-63 (2012)を参照されたい)。
1.脱免疫化された、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、例えば、野生型志賀毒素、野生型志賀毒素ポリペプチド、及び/又は野生型ポリペプチド配列だけを含む、志賀毒素エフェクターポリペプチドなどと比較して脱免疫化される。本発明の、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドは、各々、ポリペプチドを、脊索動物へと投与した後で、志賀毒素エフェクターポリペプチドの潜在的抗原性及び/又は潜在的免疫原性を低減するために、少なくとも1つの(例えば、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10以上などの)、推定の、内因性エピトープ領域の破壊を含む。志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は志賀毒素Aサブユニットポリペプチドは、天然に存在するのであれ、そうでないのであれ、本明細書で記載される方法、国際公開第2015/113005号パンフレット及び/若しくは国際公開第2015/113007号パンフレットにおいて記載されている方法、並びに/又は当業者に公知の方法により脱免疫化される場合があり、この場合、結果として得られる分子は、1つ又は2つ以上の志賀毒素Aサブユニット機能を保持するか、又は示す。
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、例えば、B細胞エピトープ及び/又はCD4+ T細胞エピトープなど、内因性のエピトープ又はエピトープ領域の破壊を含む。ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つ(少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、又は9つ以上など)の内因性のB細胞エピトープ領域及び/又はCD4+ T細胞エピトープ領域の破壊を含む。ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つ(少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、又は9つ以上など)の、本明細書で記載される内因性エピトープ領域の破壊を含み、この場合、破壊は、ポリペプチドを、脊索動物へと投与した後で、志賀毒素エフェクターポリペプチドの潜在的抗原性及び/又は潜在的免疫原性を低減し、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、例えば、著明レベルの志賀毒素細胞毒性など、1つ又は2つ以上の志賀毒素Aサブユニット機能を示すことが可能である。例えば、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも3つの、内因性のB細胞エピトープ領域及び/又はCD4+ T細胞エピトープ領域の破壊(例えば、野生型志賀毒素Aサブユニットと比べた、2つ又は3つ以上の変異、及び1つ又は2つ以上の切断などに起因する)を含む。
エピトープ領域に関して、本明細書で使用される、「破壊された」又は「破壊」という用語は、少なくとも1つ(少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、又は9つ以上など)のアミノ酸残基の、エピトープ領域内の欠失、少なくとも1つの反転されたアミノ酸残基が、エピトープ領域内に存在する、2つ又は3つ以上のアミノ酸残基の逆位、少なくとも1つ(少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、又は9つ以上など)のアミノ酸の、エピトープ領域への挿入、及び少なくとも1つのアミノ酸残基の、エピトープ領域内の置換を指す。変異によるエピトープ領域の破壊は、非標準的アミノ酸及び/又は非天然アミノ酸によるアミノ酸置換を含む。エピトープ領域は、エピトープ領域内の、少なくとも1つのアミノ酸をマスキングする、共有結合的に連結された化学的構造の付加による、アミノ酸の修飾を含む変異によっても、代替的に破壊されうる。例えば、PEG化(Zhang C et al., BioDrugs 26: 209-15 (2012)を参照されたい)、低分子アジュバント(Flower D, Expert Opin Drug Discov 7: 807-17 (2012))、及び部位特異的アルブミン化(Lim S et al., J Control Release 207-93 (2015))を参照されたい。
本明細書では、天然に存在する志賀毒素Aサブユニットが、成熟志賀毒素Aサブユニットを産生するために除去され、当業者に認識可能な、それらのアミノ末端における、約22アミノ酸のシグナル配列を含有する、前駆体形態を含みうることに注目して、配列表に提示される、天然の志賀毒素Aサブユニットの、特異的アミノ酸位置に言及することにより、ある特定のエピトープ領域及び破壊が指し示される。さらに、本明細書では、天然で、天然の志賀毒素Aサブユニット内の特異的位置(例えば、アミノ末端から33位におけるセリン残基に、S33)に存在する特異的アミノ酸(例えば、セリン残基に、S)に続き、論じられる特定の変異において、この残基が置換されたアミノ酸(例えば、S33Iは、アミノ末端からのアミノ酸残基33における、イソロイシンによる、セリンのアミノ酸置換を表す)に言及することにより、変異を含む、ある特定のエピトープ領域の破壊が指し示される。
ある特定の実施形態では、本発明の、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つ(少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、又は9つ以上など)の、本明細書で提示されるエピトープ領域の破壊を含む。例えば、本発明の、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも3つの、本明細書で提示されるエピトープ領域の破壊を含みうる。ある特定の実施形態では、本発明の、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも4つの、本明細書で提示されるエピトープ領域の破壊を含む。ある特定の実施形態では、本発明の、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも5つの、本明細書で提示されるエピトープ領域の破壊を含む。ある特定の実施形態では、本発明の、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの、国際公開第2015/113005号パンフレット又は国際公開第2015/113007号パンフレットに記載されたエピトープ領域の破壊を含む。本明細書で記載される通り、志賀毒素エフェクターポリペプチドがまた、組み込まれるか、又は挿入された異種CD8+ T細胞エピトープも含む場合、少なくともいくつかの、破壊された、内因性のB細胞エピトープ領域及び/又はCD4+ T細胞エピトープ領域は、組み込まれるか、又は挿入された異種CD8+ T細胞エピトープと重複しない。
ある特定の実施形態では、本発明の、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号1又は配列番号2の1〜15;配列番号3の3〜14;配列番号3の26〜37;配列番号1又は配列番号2の27〜37;配列番号1又は配列番号2の39〜48;配列番号3の42〜48;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の53〜66;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の94〜115;配列番号1又は配列番号2の141〜153;配列番号3の140〜156;配列番号1又は配列番号2の179〜190;配列番号3の179〜191;配列番号3の204;配列番号1又は配列番号2の205;配列番号3の210〜218;配列番号3の240〜258;配列番号1又は配列番号2の243〜257;配列番号1又は配列番号2の254〜268;配列番号3の262〜278;配列番号3の281〜297;及び配列番号1又は配列番号2の285〜293、並びに志賀毒素Aサブユニットポリペプチド内、保存された志賀毒素エフェクターポリペプチドの亜領域内、及び/又は非天然の志賀毒素エフェクターポリペプチド配列(配列番号4〜18に示された、志賀毒素エフェクターポリペプチドなど)内の同等な位置からなる天然位置のアミノ酸の群から選択されるアミノ酸配列の、少なくとも1つの破壊を含む、全長志賀毒素Aサブユニット(例えば、SLT−1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)、又はSLT−2A(配列番号3))を含むか、これからなるか、又は、これから本質的になる。
ある特定の実施形態では、本発明の脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドは、全長又は切断型の志賀毒素Aサブユニット(例えば、SLT−1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)、SLT−2A(配列番号3)、又は配列番号7〜18のうちのいずれか1つ)を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなり、少なくとも1つ(少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、又は9つ以上など)の内因性のB細胞エピトープ領域及び/又はCD4+ T細胞エピトープ領域の破壊をさらに含み、この場合、B細胞領域は、配列番号1又は配列番号2の1〜15;配列番号3の3〜14;配列番号3の26〜37;配列番号1又は配列番号2の27〜37;配列番号1又は配列番号2の39〜48;配列番号3の42〜48;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の53〜66;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の94〜115;配列番号1又は配列番号2の141〜153;配列番号3の140〜156;配列番号1又は配列番号2の179〜190;配列番号3の179〜191;配列番号3の204;配列番号1又は配列番号2の205、及び配列番号3の210〜218;配列番号3の240〜260;配列番号1又は配列番号2の243〜257;配列番号1又は配列番号2の254〜268;配列番号3の262〜278;配列番号3の281〜297;及び配列番号1又は配列番号2の285〜293;並びに志賀毒素Aサブユニット内、又はその派生物内の同等な領域(配列番号4〜6に示された、志賀毒素1のAサブユニットのバリアントのうちのいずれか1つ、及び配列番号7〜18に示された、志賀様毒素2のAサブユニットのバリアントのうちのいずれか1つの中の同等な領域など)からなる、天然位置の、志賀毒素Aサブユニット領域の群から選択され;CD4+ T細胞エピトープ領域は、配列番号1又は配列番号2の4〜33;配列番号1又は配列番号2の34〜78;配列番号1又は配列番号2の77〜103;配列番号1又は配列番号2の128〜168;配列番号1又は配列番号2の160〜183;配列番号1又は配列番号2の236〜258;及び配列番号1又は配列番号2の274〜293;並びに志賀毒素Aサブユニット内、又はその派生物内の同等な領域(配列番号4〜6に示された、志賀毒素1のAサブユニットのバリアントのうちのいずれか1つ、及び配列番号7〜18に示された、志賀様毒素2のAサブユニットのバリアントのうちのいずれか1つの中の同等な領域など)からなる、天然位置の、志賀毒素Aサブユニット領域の群から選択される。ある特定の実施形態では、B細胞エピトープ領域は、配列番号1又は配列番号2の1〜15;配列番号3の3〜14;配列番号3の26〜37;配列番号1又は配列番号2の27〜37;配列番号1又は配列番号2の39〜48;配列番号3の42〜48;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の53〜66;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の94〜115;配列番号1又は配列番号2の141〜153;配列番号3の140〜156;配列番号1又は配列番号2の179〜190;配列番号3の179〜191;配列番号3の204;配列番号1又は配列番号2の205;配列番号3の210〜218、及び配列番号1又は配列番号2の243〜257;並びに志賀毒素Aサブユニット内、又はその派生物内の同等な領域(配列番号4〜6に示された、志賀毒素1のAサブユニットのバリアントのうちのいずれか1つ、及び配列番号7〜18に示された、志賀様毒素2のAサブユニットのバリアントのうちのいずれか1つの中の同等な領域など)からなる、天然位置の、志賀毒素Aサブユニット領域の群から選択され;CD4+ T細胞エピトープ領域は、配列番号1又は配列番号2の4〜33;配列番号1又は配列番号2の34〜78;配列番号1又は配列番号2の77〜103;配列番号1又は配列番号2の128〜168;配列番号1又は配列番号2の160〜183;及び配列番号1又は配列番号2の236〜258;並びに志賀毒素Aサブユニット内、又はその派生物内の同等な領域(配列番号4〜6に示された、志賀毒素1のAサブユニットのバリアントのうちのいずれか1つ、及び配列番号7〜18に示された、志賀様毒素2のAサブユニットのバリアントのうちのいずれか1つの中の同等な領域など)からなる、天然位置の、志賀毒素Aサブユニット領域の群から選択される。
ある特定の実施形態では、本発明の脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも3つの、内因性のB細胞エピトープ領域及び/又はCD4+ T細胞エピトープ領域の破壊を含む、全長又は切断型の志賀毒素Aサブユニット(例えば、SLT−1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)、志賀毒素1のAサブユニットのバリアントエフェクターポリペプチド(配列番号4〜6)、SLT−2A(配列番号3)、又は志賀様毒素2のAサブユニットのバリアントエフェクターポリペプチド(配列番号7〜18))を含むか、これらから本質的になるか、又はこれらからなり、この場合、破壊は、配列番号1又は配列番号2の1〜15;配列番号3の3〜14;配列番号3の26〜37;配列番号1又は配列番号2の27〜37;配列番号1又は配列番号2の39〜48;配列番号3の42〜48;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の53〜66;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の94〜115;配列番号1又は配列番号2の141〜153;配列番号3の140〜156;配列番号1又は配列番号2の179〜190;配列番号3の179〜191;配列番号3の204;配列番号1又は配列番号2の205;配列番号3の210〜218、及び配列番号1又は配列番号2の243〜257;並びに志賀毒素Aサブユニット内、又はその派生物内の同等な領域(配列番号4〜6に示された、志賀毒素1のAサブユニットのバリアントのうちのいずれか1つ、及び配列番号7〜18に示された、志賀様毒素2のAサブユニットのバリアントのうちのいずれか1つの中の同等な領域など)からなる、天然位置の、志賀毒素Aサブユニット領域の群から選択される、B細胞エピトープ領域内;並びに/或いは配列番号1又は配列番号2の4〜33;配列番号1又は配列番号2の34〜78;配列番号1又は配列番号2の77〜103;配列番号1又は配列番号2の128〜168;配列番号1又は配列番号2の160〜183;及び配列番号1又は配列番号2の236〜258;並びに志賀毒素Aサブユニット内、又はその派生物内の同等な領域(配列番号4〜6に示された、志賀毒素1のAサブユニットのバリアントのうちのいずれか1つ、及び配列番号7〜18に示された、志賀様毒素2のAサブユニットのバリアントのうちのいずれか1つの中の同等な領域など)からなる、天然位置の、志賀毒素Aサブユニット領域の群から選択される、CD4+ T細胞エピトープ領域内の、野生型志賀毒素Aサブユニットと比べた変異を含む。ある特定の実施形態では、B細胞エピトープ領域及び/又はCD4+ T細胞エピトープ領域のうちの、少なくとも3つの各々は、野生型志賀毒素Aサブユニット配列と比べた、アミノ酸残基置換を含む破壊を含む。
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、切断型志賀毒素Aサブユニットを含むか、これからなるか、又は、これから本質的になる。志賀毒素Aサブユニットの切断は、志賀毒素のエフェクター機能(複数可)に影響を及ぼさずに、全エピトープ領域(複数可)の欠失を結果としてもたらしうるであろう。著明な酵素活性を示すことが示された、最小の志賀毒素Aサブユニット断片は、StxAの残基75〜247から構成されるポリペプチドであった(Al-Jaufy A et al., Infect Immun 62: 956-60 (1994))。SLT−1A、StxA、又はSLT−2Aのカルボキシ末端の、アミノ酸1〜251への切断は、2つの、予測されるB細胞エピトープ領域、2つの、予測されるCD4陽性(CD4+)T細胞エピトープ、及び予測される不連続B細胞エピトープを除去する。SLT−1A、StxA、又はSLT−2Aのアミノ末端の、75〜293への切断は、少なくとも3つの、予測されるB細胞エピトープ領域、及び3つの、予測されるCD4+ T細胞エピトープを除去する。SLT−1A、StxA、又はSLT−2Aのアミノ末端及びカルボキシ末端の両方の、75〜251への切断は、少なくとも5つの、予測されるB細胞エピトープ領域;4つの、推定CD4+ T細胞エピトープ;及び1つの、予測される、不連続B細胞エピトープを欠失させる。
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、提示されるエピトープ領域内の、少なくとも1つ(少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、又は9つ以上など)の変異、例えば、欠失、挿入、逆位、又は置換を伴う、全長又は切断型の志賀毒素Aサブユニットを含みうるか、これらからなりうるか、又はこれらから本質的になりうる。ある特定のさらなる実施形態では、ポリペプチドは、エピトープ領域内の、少なくとも1つのアミノ酸の欠失を含む破壊を含む。ある特定のさらなる実施形態では、ポリペプチドは、エピトープ領域内の、少なくとも1つのアミノ酸の挿入を含む破壊を含む。ある特定のさらなる実施形態では、ポリペプチドは、少なくとも1つの反転されたアミノ酸が、エピトープ領域内に存在する、アミノ酸の逆位を含む破壊を含む。ある特定のさらなる実施形態では、ポリペプチドは、エピトープ領域内の、少なくとも1つ(少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、又は9つ以上など)のアミノ酸の置換を含む破壊を含む。ある特定のさらなる実施形態では、ポリペプチドは、非標準アミノ酸又は側鎖が化学修飾されたアミノ酸へのアミノ酸置換などの変異を含む破壊を含む。単一のアミノ酸置換の多数の例は、下記の例に提示される。
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、天然配列と比較して、1つ又は2つ以上の変異を伴う、全長又は切断型の志賀毒素Aサブユニットであって、A、G、V、L、I、P、C、M、F、S、D、N、Q、H、及びKからなる群から選択される、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、全長又は切断型の志賀毒素Aサブユニットを含みうるか、これらからなりうるか、又はこれらから本質的になりうる。ある特定のさらなる実施形態では、ポリペプチドは、天然配列と比較して、単一の変異を伴う、全長又は切断型の志賀毒素Aサブユニットを含みうるか、これらからなりうるか、又はこれらから本質的になる場合があり、この場合、置換は、DからA、DからG、DからV、DからL、DからI、DからF、DからS、DからQ、EからA、EからG、EからV、EからL、EからI、EからF、EからS、EからQ、EからN、EからD、EからM、EからR、GからA、HからA、HからG、HからV、HからL、HからI、HからF、HからM、KからA、KからG、KからV、KからL、KからI、KからM、KからH、LからA、LからG、NからA、NからG、NからV、NからL、NからI、NからF、PからA、PからG、PからF、RからA、RからG、RからV、RからL、RからI、RからF、RからM、RからQ、RからS、RからK、RからH、SからA、SからG、SからV、SからL、SからI、SからF、SからM、TからA、TからG、TからV、TからL、TからI、TからF、TからM、TからS、YからA、YからG、YからV、YからL、YからI、YからF、及びYからMからなる群から選択される。
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、天然のアミノ酸残基配列と比較して、1つ又は2つ以上の変異を伴う、全長又は切断型の志賀毒素Aサブユニットであって、免疫原性残基の、少なくとも1つのアミノ酸置換、及び/又はエピトープ領域内の、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、全長又は切断型の志賀毒素Aサブユニットを含むか、これからなるか、又はこれから本質的になり、この場合、少なくとも1つの置換は、配列番号1又は配列番号2の1;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の4;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の8;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の9;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の11;配列番号1又は配列番号2の33;配列番号1又は配列番号2の43;配列番号1又は配列番号2の44;配列番号1又は配列番号2の45;配列番号1又は配列番号2の46;配列番号1又は配列番号2の47;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の48;配列番号1又は配列番号2の49;配列番号1又は配列番号2の50;配列番号1又は配列番号2の51;配列番号1又は配列番号2の53;配列番号1又は配列番号2の54;配列番号1又は配列番号2の55;配列番号1又は配列番号2の56;配列番号1又は配列番号2の57;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の58;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の59;配列番号1又は配列番号2の60;配列番号1又は配列番号2の61;配列番号1又は配列番号2の62;配列番号1又は配列番号2の84;配列番号1又は配列番号2の88;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の94;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の96;配列番号1又は配列番号2の104;配列番号1又は配列番号2の105;配列番号1又は配列番号2の107;配列番号1又は配列番号2の108;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の109;配列番号1又は配列番号2の110;配列番号1又は配列番号2の111;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の112;配列番号1又は配列番号2の141;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の147;配列番号1又は配列番号2の154;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の179;配列番号1又は配列番号2の180;配列番号1又は配列番号2の181;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の183;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の184;配列番号1又は配列番号2の185;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の186;配列番号1又は配列番号2の187;配列番号1又は配列番号2の188;配列番号1又は配列番号2の189;配列番号1又は配列番号2の198;配列番号3の204;配列番号1又は配列番号2の205;配列番号3の241;配列番号1又は配列番号2の242;配列番号1又は配列番号2の247;配列番号3の247;配列番号1又は配列番号2の248;配列番号3の250;配列番号1又は配列番号2の251;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の264;配列番号1又は配列番号2の265;及び配列番号1又は配列番号2の286、並びに志賀毒素Aサブユニットポリペプチド内、保存された志賀毒素エフェクターポリペプチドの亜領域内、及び/又は非天然の志賀毒素エフェクターポリペプチド配列(配列番号4〜6に示された、志賀毒素1のAサブユニットのバリアントエフェクターポリペプチド、又は配列番号7〜18に示された、志賀様毒素2のAサブユニットのバリアントエフェクターポリペプチドなど)内の同等な位置からなる群から選択される天然位置のアミノ酸群において生じる。
ある特定のさらなる実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、免疫原性残基の、少なくとも1つの置換、及び/又はエピトープ領域内の、少なくとも1つの置換を伴う、全長又は切断型の志賀毒素Aサブユニットを含むか、これからなるか、又はこれから本質的になり、この場合、少なくとも1つのアミノ酸置換は、以下の天然の位置:配列番号1若しくは配列番号2の1;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の4;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の8;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の9;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の11;配列番号1若しくは配列番号2の33;配列番号1若しくは配列番号2の43;配列番号1若しくは配列番号2の44;配列番号1若しくは配列番号2の45;配列番号1若しくは配列番号2の46;配列番号1若しくは配列番号2の47;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の48;配列番号1若しくは配列番号2の49;配列番号1若しくは配列番号2の50;配列番号1若しくは配列番号2の51;配列番号1若しくは配列番号2の53;配列番号1若しくは配列番号2の54;配列番号1若しくは配列番号2の55;配列番号1若しくは配列番号2の56;配列番号1若しくは配列番号2の57;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の58;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の59;配列番号1若しくは配列番号2の60;配列番号1若しくは配列番号2の61;配列番号1若しくは配列番号2の62;配列番号1若しくは配列番号2の84;配列番号1若しくは配列番号2の88;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の94;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の96;配列番号1若しくは配列番号2の104;配列番号1若しくは配列番号2の105;配列番号1若しくは配列番号2の107;配列番号1若しくは配列番号2の108;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の109;配列番号1若しくは配列番号2の110;配列番号1若しくは配列番号2の111;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の112;配列番号1若しくは配列番号2の141;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の147;配列番号1若しくは配列番号2の154;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の179;配列番号1若しくは配列番号2の180;配列番号1若しくは配列番号2の181;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の183;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の184;配列番号1若しくは配列番号2の185;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の186;配列番号1若しくは配列番号2の187;配列番号1若しくは配列番号2の188;配列番号1若しくは配列番号2の189;配列番号1若しくは配列番号2の198;配列番号3の204;配列番号1若しくは配列番号2の205;配列番号3の241;配列番号1若しくは配列番号2の242;配列番号1若しくは配列番号2の247;配列番号3の247;配列番号1若しくは配列番号2の248;配列番号3の250;配列番号1若しくは配列番号2の251;配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の264;配列番号1若しくは配列番号2の265;及び配列番号1若しくは配列番号2の286、又は志賀毒素Aサブユニットポリペプチド内、保存された志賀毒素エフェクターポリペプチドの亜領域内、及び/若しくは非天然の志賀毒素エフェクターポリペプチド配列(配列番号4〜18のうちのいずれか1つに示された、志賀毒素エフェクターポリペプチドなど)内の同等な位置のうちの1つに位置する、天然に存在するアミノ酸と比べた、非保存的アミノ酸(例えば、下掲の表Cを参照されたい)である。
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、天然のアミノ酸残基配列と比較して、1つ又は2つ以上の変異を伴う、全長又は切断型の志賀毒素Aサブユニットであって、免疫原性残基の、少なくとも1つのアミノ酸置換、及び/又はエピトープ領域内の、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、全長又は切断型の志賀毒素Aサブユニットを含むか、これから本質的になるか、又はこれからなり、この場合、少なくとも1つの置換は、配列番号1又は配列番号2の1;配列番号1又は配列番号2の11;配列番号1又は配列番号2の45;配列番号1の54、配列番号2;配列番号1又は配列番号2の55;配列番号1の57、配列番号2;配列番号1の59、配列番号2;配列番号1又は配列番号2の60;配列番号1又は配列番号2の61;配列番号1又は配列番号2の110;配列番号1又は配列番号2の141;配列番号1又は配列番号2の147;配列番号1又は配列番号2の188;配列番号1又は配列番号2の242;配列番号1又は配列番号2の248;及び配列番号1又は配列番号2の251からなる群から選択される天然位置のアミノ酸位置において生じる。
ある特定のさらなる実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、K1からA、G、V、L、I、F、M、及びH;T4からA、G、V、L、I、F、M、及びS;D6からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;S8からA、G、V、I、L、F、及びM;T8からA、G、V、I、L、F、M、及びS;T9からA、G、V、I、L、F、M、及びS;S9からA、G、V、L、I、F、及びM;K11からA、G、V、L、I、F、M、及びH;T12からA、G、V、I、L、F、M、及びS;S33からA、G、V、L、I、F、及びM;S43からA、G、V、L、I、F、及びM;G44からA、及びL;S45からA、G、V、L、I、F、及びM;T45からA、G、V、L、I、F、及びM;G46からA、及びP;D47からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;N48からA、G、V、L、及びM;L49からA又はG;F50;A51からV;D53からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;V54からA、G、及びL;R55からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;G56からA、及びP;I57からA、G、M、及びF;L57からA、G、M、及びF;D58からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;P59からA、G、及びF;E60からA、G、V、L、I、F、S、Q、N、D、M、及びR;E61からA、G、V、L、I、F、S、Q、N、D、M、及びR;G62からA;D94からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;R84からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;V88からA、及びG;I88からA、G、及びV;D94;S96からA、G、V、I、L、F、及びM;T104からA、G、V、I、L、F、M、及びS;A105からL;T107からA、G、V、I、L、F、M、及びS;S107からA、G、V、L、I、F、及びM;L108からA、G、及びM;S109からA、G、V、I、L、F、及びM;T109からA、G、V、I、L、F、M、及びS;G110からA;D111からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;S112からA、G、V、L、I、F、及びM;D141からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;G147からA;V154からA、及びG;R179からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;T180からA、G、V、L、I、F、M、及びS;T181からA、G、V、L、I、F、M、及びS;D183からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;D184からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;L185からA、G、及びV;S186からA、G、V、I、L、F、及びM;G187からA;R188からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;S189からA、G、V、I、L、F、及びM;D197からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;D198からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;R204からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;R205からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;C242からA、G、V、及びS;S247からA、G、V、I、L、F、及びM;Y247からA、G、V、L、I、F、及びM;R247からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;R248からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;R250からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;R251からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;C262からA、G、V、及びS;D264からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;G264からA;並びにT286からA、G、V、L、I、F、M、及びSからなる群から選択される、少なくとも1つのアミノ酸置換を伴う、全長又は切断型の志賀毒素Aサブユニットを含むか、又はこれから本質的になる。
ある特定のさらなる実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:K1A、K1M、T4I、D6R、S8I、T8V、T9I、S9I、K11A、K11H、T12K、S33I、S33C、S43N、G44L、S45V、S45I、T45V、T45I、G46P、D47M、D47G、N48V、N48F、L49A、F50T、A51V、D53A、D53N、D53G、V54L、V54I、R55A、R55V、R55L、G56P、I57F、I57M、D58A、D58V、D58F、P59A、P59F、E60I、E60T、E60R、E61A、E61V、E61L、G62A、R84A、V88A、D94A、S96I、T104N、A105L、T107P、L108M、S109V、T109V、G110A、D111T、S112V、D141A、G147A、V154A、R179A、T180G、T181I、D183A、D183G、D184A、D184A、D184F、L185V、L185D、S186A、S186F、G187A、G187T、R188A、R188L、S189A、D198A、R204A、R205A、C242S、S247I、Y247A、R247A、R248A、R250A、R251A、若しくはD264A、G264A、T286A、及び/又はT286Iのうちの、少なくとも1つ(少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、又は14以上など)を伴う、全長又は切断型の志賀毒素Aサブユニットを含むか、これからなるか、又はこれから本質的になる。ある特定のさらなる実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:K1A、S45I、V54I、R55L、I57F、P59F、E60T、E61L、G110A、D141A、G147A、R188A、C242S、R248A、及びR251Aのうちの、少なくとも1つ(少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、又は14以上など)を伴う、全長又は切断型の志賀毒素Aサブユニットを含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。これらのエピトープを破壊する置換は、エピトープ領域1つ当たり複数の置換、及び/又は破壊されているが、なおも、志賀毒素のエフェクター機能を保持する、複数のエピトープ領域を伴う、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドを形成するように組み合わされうる。例えば、天然位置の残基における置換である、K1A、K1M、T4I、D6R、S8I、T8V、T9I、S9I、K11A、K11H、T12K、S33I、S33C、S43N、G44L、S45V、S45I、T45V、T45I、G46P、D47M、D47G、N48V、N48F、L49A、F50T、A51V、D53A、D53N、D53G、V54L、V54I、R55A、R55V、R55L、G56P、I57F、I57M、D58A、D58V、D58F、P59A、P59F、E60I、E60T、E60R、E61A、E61V、E61L、G62A、R84A、V88A、D94A、S96I、T104N、A105L、T107P、L108M、S109V、T109V、G110A、D111T、S112V、D141A、G147A、V154A、R179A、T180G、T181I、D183A、D183G、D184A、D184A、D184F、L185V、L185D、S186A、S186F、G187A、G187T、R188A、R188L、S189A、D198A、R204A、R205A、C242S、S247I、Y247A、R247A、R248A、R250A、R251A、若しくはD264A、G264A、T286A、及び/又はT286Iは、可能な場合、本発明の脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドを創出するように、天然位置の残基における置換である、K1A、K1M、T4I、D6R、S8I、T8V、T9I、S9I、K11A、K11H、T12K、S33I、S33C、S43N、G44L、S45V、S45I、T45V、T45I、G46P、D47M、D47G、N48V、N48F、L49A、F50T、A51V、D53A、D53N、D53G、V54L、V54I、R55A、R55V、R55L、G56P、I57F、I57M、D58A、D58V、D58F、P59A、P59F、E60I、E60T、E60R、E61A、E61V、E61L、G62A、R84A、V88A、D94A、S96I、T104N、A105L、T107P、L108M、S109V、T109V、G110A、D111T、S112V、D141A、G147A、V154A、R179A、T180G、T181I、D183A、D183G、D184A、D184A、D184F、L185V、L185D、S186A、S186F、G187A、G187T、R188A、R188L、S189A、D198A、R204A、R205A、C242S、S247I、Y247A、R247A、R248A、R250A、R251A、若しくはD264A、G264A、T286A、及び/又はT286Iと組み合わされうる。例えば、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素Aサブユニット内の天然の位置における、以下の置換:K1A、S45I、V54I、R55L、I57F、P59F、E60T、E61L、G110A、G147A、C242S、R248A、及びR251Aを含む、全長又は切断型の志賀毒素Aサブユニットを含みうるか、これらから本質的になりうるか、又はこれらからなりうる。これらの置換は、配列番号24〜27及び97〜100のうちのいずれか1つに示された、例示的な細胞ターゲティング分子の、志賀毒素エフェクターポリペプチド内に存在する置換に対応する。例えば、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素Aサブユニット内の天然の位置における、以下の置換:S45I、V54I、R55L、I57F、P59F、E60T、E61L、G110A、R188A、C242S、R248A、及びR251Aを含む、全長又は切断型の志賀毒素Aサブユニットを含みうるか、これらから本質的になりうるか、又はこれらからなりうる。これらの置換は、配列番号28〜29、31〜32、34、36、101〜102、104〜105、106、及び108のうちのいずれか1つに示された、例示的な細胞ターゲティング分子の、志賀毒素エフェクターポリペプチド内に存在する置換に対応する。例えば、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素Aサブユニット内の天然の位置における、以下の置換:S45I、V54I、R55L、I57F、P59F、E60T、E61L、G110A、D141A、R188A、C242S、R248A、及びR251Aを含む、全長又は切断型の志賀毒素Aサブユニットを含みうるか、これらから本質的になりうるか、又はこれらからなりうる。これらの置換は、配列番号30又は103のうちのいずれか1つに示された、例示的な細胞ターゲティング分子の、志賀毒素エフェクターポリペプチド内に存在する置換に対応する。
本明細書で記載される、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドの亜領域、及び/又はエピトープを破壊する変異は、単独で使用される場合もあり、本発明の方法を含む、本発明の、各個別の実施形態と組み合わせて使用される場合もある。
2.プロテアーゼによる切断に抵抗性の、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(1)カルボキシ末端を有する、志賀毒素A1断片に由来する領域と、(2)志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端における、破壊されたフーリン切断モチーフとを含む。志賀毒素構成要素と、他の細胞ターゲティング分子の構成要素、例えば、細胞をターゲティングする結合性領域との接続の安定性の改善は、例えば、タンパク質分解の結果としての、接続の断絶及び細胞ターゲティングの喪失などにより引き起こされる、非特異的毒性を低減することにより、生物への投与の後における、それらの毒性プロファイルを改善しうる。ある特定の実施形態では、プロテアーゼによる切断に抵抗性の 本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、野生型志賀毒素Aサブユニットのカルボキシ末端と比較した、カルボキシ末端の切断を有する。
志賀毒素ファミリーのメンバーの志賀毒素Aサブユニットは、志賀毒素機能に重要な、それらのA1断片領域のカルボキシ末端において、保存された、フーリン切断部位を含む。フーリン切断部位モチーフ及びフーリン切断部位は、標準的技法を使用する当業者により、及び/又は本明細書における情報を使用することにより同定されうる。
志賀毒素細胞毒性のモデルは、中毒細胞内のフーリンによる、志賀毒素Aサブユニットの、細胞内タンパク質分解性プロセシングが、1)A1断片の、志賀ホロトキシンの残りの部分からの遊離、2)A1断片のカルボキシ末端における、疎水性ドメインを露出させることによる、A1断片の、小胞体からの逃避、3)A1断片の酵素的活性化に不可欠であることである(Johannes L, Romer W, Nat Rev Microbiol 8: 105-16 (2010)を参照されたい)。中毒細胞の小胞体内の、志賀ホロトキシンのうち、志賀毒素A1断片の、A2断片及び構成要素の残りの部分からの効率的な遊離は、野生型志賀毒素と同等である、細胞質ゾルへの、効率的な細胞内経路決定、最大の酵素活性、効率的なリボソームの不活化、及び最適の細胞毒性の達成に不可欠である(例えば、国際公開第2015/191764号パンフレット及びこの中の参考文献を参照されたい)。
志賀毒素中毒時に、Aサブユニットは、保存されたアルギニン残基(例えば、StxA内及びSLT−1A内の251位におけるアルギニン残基、並びにStx2A内及びSLT−2A内の250位におけるアルギニン残基)のカルボキシ結合において、フーリンにより、タンパク質分解的に切断される。志賀毒素Aサブユニットの、フーリンによる切断は、エンドソーム区画内及び/又はゴルジ区画内で生じる。フーリンとは、多種多様な細胞型、全ての被験ヒト組織、及び大半の動物細胞により発現される、特化されたセリンエンドプロテアーゼである。フーリンは、最小限の、二塩基性のコンセンサスモチーフである、R-x-(R/K/x)-Rに中心化されることが多い、アクセス可能なモチーフを含むポリペプチドを切断する。志賀毒素のAサブユニットファミリーのメンバーは、フーリンにより切断される、保存されたS-R/Y-x-x-Rモチーフを伴う、保存され、表面に露出された、伸展ループ構造(例えば、StxA内及びSLT−1A内の242〜261、並びにSLT−2内の241〜260)を含む。StxA内のアミノ酸残基242〜261に位置する、表面露出された、伸展ループ構造は、最小限のフーリン切断モチーフである、R−x−x−Rを挟む特徴を含む、StxAの、フーリンに誘導される切断に要求される。
志賀毒素Aサブユニット内及び志賀毒素エフェクターポリペプチド内の、フーリン切断モチーフ及びフーリン切断部位は、標準的方法を使用する当業者により、及び/又は本明細書における情報を使用することにより同定されうる。フーリンは、最小限のコンセンサスモチーフである、R−x−x−Rを切断する(Schalken J et al., J Clin Invest 80: 1545-9 (1987); Bresnahan P et al., J Cell Biol 111: 2851-9 (1990); Hatsuzawa K et al., J Biol Chem 265: 22075-8 (1990); Wise R et al., Proc Natl Acad Sci USA 87: 9378-82 (1990); Molloy S et al., J Biol Chem 267: 16396-402 (1992))。多くのフーリン阻害剤が、R−x−x−Rというモチーフを含むペプチドを含むことは、これと符合する。フーリンの合成阻害剤の例は、ペプチドであるR-V-K-R(配列番号157)を含む分子(Henrich S et al., Nat Struct Biol 10: 520-6 (2003))である。一般に、2つのアミノ酸残基により隔てられた、2つの、正に帯電したアミノ酸を伴う、表面においてアクセス可能な、二塩基性アミノ酸モチーフを含むペプチド又はタンパク質は、モチーフ内の最後の塩基性アミノ酸のカルボキシ結合において生じる切断を伴う、フーリンによる切断に対して感受性であることが予測される。
フーリンにより切断される、基質内のコンセンサスモチーフは、ある程度の特異性を伴って、同定されている。Schechter I, Berger, A, Biochem Biophys Res Commun 32: 898-902 (1968)において記載されている命名法を使用して、P14〜P6’と表示されうる、20の連続アミノ酸残基の領域を含む、フーリン切断部位モチーフについて記載されている(Tian S et al., Int J Mol Sci 12: 1060-5 (2011))。この命名法に従うと、フーリン切断部位は、P1と名指されたアミノ酸残基のカルボキシ結合にあり、フーリン切断モチーフのアミノ酸残基は、この参照P1残基から、アミノ末端へと向かう方向に、P2、P3、P4などと番号付けされる。P1参照残基から、カルボキシ末端へと向かう、モチーフのアミノ酸残基は、P2’、P3’、P4’などのプライム表記を伴って番号付けされる。この命名法を使用すると、P6〜P2’領域は、フーリンの酵素ドメインが結合するフーリン切断モチーフのコア基質を画定する。2つのフランキング領域である、P14〜P7及びP3’〜P6’は、それらの間に位置する、フーリン切断部位のコアへのアクセシビリティーを増大させる、極性のアミノ酸残基に富むことが多い。
一般的、フーリン切断部位は、P4−P3−P2−P1に対応するコンセンサスモチーフである、R−x−x−R[ここで、「R」は、アルギニン残基(表A、前出を参照されたい)を表し、ダッシュ「−」は、ペプチド結合を表し、小文字の「x」は、任意のアミノ酸残基を表す]により記載されることが多い。しかし、他の残基及び位置も、フーリン切断モチーフを、さらに規定する一助となりうる。わずかながら、より洗練されたフーリン切断部位コンセンサスモチーフは、P4−P3−P2−P1に対応するコンセンサスモチーフである、R−x−[K/R]−R(ここで、前傾スラッシュ「/」は、「又は」を意味し、同じ位置における代替的アミノ酸残基を分かつ)として報告されることが多い。フーリンが、このモチーフを含有する基質の切断に対する強い優先性を有することが観察されたからである。
最小限のフーリン切断部位である、R−x−x−Rに加えて、ある特定の位置において、ある特定のアミノ酸残基への優先性を伴う、大型のフーリン切断モチーフについても記載されている。多様な公知のフーリン基質を比較することにより、20アミノ酸残基長の、フーリン切断部位モチーフ内のアミノ酸残基についての、ある特定の物理化学的特性が特徴づけられている。フーリン切断モチーフのP6〜P2’領域は、フーリンの酵素ドメインと、物理的に相互作用する、フーリン切断部位のコアを画定する。2つのフランキング領域である、P14〜P7及びP3’〜P6’は、それらの間に位置する、フーリン切断部位のコアへの表面アクセシビリティーを増大させる、極性のアミノ酸残基に富む、親水性であることが多い。
一般に、P5〜P1位におけるフーリン切断モチーフ領域は、正の電荷及び/又は高等電点を伴うアミノ酸残基を含む傾向がある。特に、フーリンによるタンパク質分解の位置をマーキングするP1位は一般に、アルギニンにより占有されるが、他の正に帯電したアミノ酸残基も、この位置において生じうる。P2及びP3位は、可撓性のアミノ酸残基により占有される傾向があり、特に、P2は、アルギニン、リシンにより、又は、場合によって、グリシンのような、極めて小型で、可撓性のアミノ酸残基により占有される傾向がある。P4位は、フーリン基質内の、正に帯電したアミノ酸残基により占有される傾向がある。しかし、P4位が、脂肪族のアミノ酸残基により占有される場合、正に帯電した官能基の欠如は、P5及び/又はP6位(複数可)に位置する、正に帯電した残基により補償されうる。P1’及びP2’位は一般に、脂肪族のアミノ酸残基及び/又は疎水性のアミノ酸残基により占有され、P1’位は、最も一般に、セリンにより占有される。
2つの、親水性のフランキング領域は、極性であり、親水性であり、小型のアミノ酸官能基を有するアミノ酸残基により占有される傾向があるが;ある特定の、検証されたフーリン基質内では、フランキング領域は、親水性のアミノ酸残基を含有しない(Tian S, Biochem Insights 2: 9-20 (2009)を参照されたい)。
天然の志賀毒素Aサブユニット内の、志賀毒素のA1断片とA2断片との接合部において見出される、20アミノ酸残基の、フーリン切断モチーフ及びフーリン切断部位は、ある特定の志賀毒素内で、十分に特徴づけられている。例えば、StxA(配列番号2)及びSLT−1A(配列番号1)、又は別の志賀毒素1のAサブユニットエフェクターポリペプチド(例えば、配列番号4〜6)では、このフーリン切断モチーフは、天然位置の、L238〜F257に存在し、SLT−2A(配列番号3)、又は志賀様毒素2のAサブユニットのバリアント(例えば、配列番号7〜18)に基づく志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、このフーリン切断モチーフは、天然位置の、V237〜Q256に存在する。本明細書で記載される、アミノ酸相同性実験及び/又はフーリン切断アッセイに基づき、当業者は、他の天然の志賀毒素Aサブユニット内又は志賀毒素エフェクターポリペプチド内でも、フーリン切断モチーフを同定することが可能であり、この場合、モチーフは、実際のフーリン切断モチーフであるか、又は真核細胞内の、これらの分子の、フーリンによる切断の後で、A1断片及びA2断片の産生を結果としてもたらすことが予測される。
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(1)カルボキシ末端を有する志賀毒素A1断片由来ポリペプチドと、(2)志賀毒素A1断片由来ポリペプチドのカルボキシ末端における、破壊されたフーリン切断モチーフとを含む。志賀毒素A1断片由来ポリペプチドのカルボキシ末端は、例えば、タンパク質配列アライメントソフトウェアを使用して、(i)天然に存在する志賀毒素により保存されたフーリン切断モチーフ、(ii)天然に存在する志賀毒素により保存された、表面に露出され、伸展したループ、及び/又は(iii)ERAD系により認識されうる、主に疎水性である、アミノ酸残基の連なり(すなわち、疎水性「パッチ」)を同定することによるなど、当技術分野で公知の技法を使用することにより、当業者により同定されうる。
本発明の、プロテアーゼによる切断に抵抗性である志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(1)その志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端における、任意のフーリン切断モチーフを、完全に欠く場合がある、並びに/又は(2)は、その志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端における、破壊されたフーリン切断モチーフ、及び/若しくは志賀毒素A1断片のカルボキシ末端に由来する領域を含む。フーリン切断モチーフの破壊は、フーリン切断モチーフ内のアミノ酸残基に対する、多様な変化であって、例えば、翻訳後修飾(複数可)、アミノ酸官能基内の、1つ又は2つ以上の原子の変化、1つ又は2つ以上原子の、アミノ酸官能基への付加、非タンパク質性部分(複数可)との会合、及び/又は分枝状タンパク質性構造を結果としてもたらす、アミノ酸残基、ペプチド、ポリペプチドなどへの連結などの変化を含む。
プロテアーゼによる切断に抵抗性の、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、本明細書で記載される、国際公開第2015/191764号パンフレットにおいて記載されている、及び/又は当業者に公知である方法を使用して、天然に存在するのであれ、そうでないのであれ、志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は志賀毒素Aサブユニットポリペプチドから創出されうるが、この場合、結果として得られる分子は、1つ又は2つ以上の志賀毒素Aサブユニット機能をやはり保持する。
フーリン切断部位又はフーリン切断モチーフに関する、本発明の目的では、「破壊」又は「破壊された」という用語は、天然に存在するフーリン切断部位及び/又はフーリン切断モチーフからの変化であって、例えば、志賀毒素A1断片領域、又はそれに由来する同定可能な領域のカルボキシ末端に対して近位の、フーリンによる切断の、野生型志賀毒素Aサブユニット、又は野生型ポリペプチド配列だけを含む、野生型志賀毒素Aサブユニットに由来するポリペプチドの、フーリンによる切断と比較した低減を結果としてもたらす変異などの変化を指す。フーリン切断モチーフ内のアミノ酸残基に対する変化は、例えば、フーリン切断モチーフのカルボキシ末端の、欠失、挿入、逆位、置換、及び/又は切断など、フーリン切断モチーフ内の変異のほか、例えば、分子を、アミノ酸残基の官能基とコンジュゲートさせるか、又はこれへと連結することを伴う、グリコシル化、アルブミン化などの結果としての翻訳後修飾などを含む。フーリン切断モチーフは、約20のアミノ酸残基から構成されるため、理論的に、これらの20の位置のうちのいずれか1つの、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基が関わる変化、修飾、変異、欠失、挿入、及び/又は切断は、フーリンによる切断に対する感受性の低減を結果としてもたらしうるであろう(Tian S et al., Sci Rep 2: 261 (2012))。フーリン切断部位及び/又はフーリン切断モチーフの破壊は、例えば、トリプシン、及び哺乳動物の血管系において一般的な細胞外プロテアーゼなど、他のプロテアーゼによる切断に対する抵抗性を増大させる場合もあり、そうでない場合もある。所与のプロテアーゼによる切断への感受性に対する、所与の破壊の効果は、当技術分野で公知の技法を使用して、当業者により調べられうる。
本発明の目的では、「破壊されたフーリン切断モチーフ」とは、天然の志賀毒素Aサブユニット内の、志賀毒素のA1断片とA2断片との接合部領域において見出される、保存された、フーリン切断モチーフを表す、20アミノ酸残基の領域に由来し、フーリンによる、志賀毒素Aサブユニットの切断が、A1断片及びA2断片の産生を結果としてもたらすように、位置させた、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基の変化を含む、フーリン切断モチーフであり;この場合、破壊されたフーリン切断モチーフは、当業者に公知である、及び/又は本明細書で記載されている、適切なアッセイを使用して、実験により再現可能な形で、フーリンによる切断をモニタリングするのに、十分に大きなサイズの、カルボキシ末端のポリペプチドへと融合された、野生型の志賀毒素A1断片領域を含む参照分子と比較した、フーリンによる切断の低減を示す。
フーリン切断部位及びフーリン切断モチーフを破壊しうる変異の種類の例は、非標準的アミノ酸及び/又は非天然アミノ酸による置換を含む、アミノ酸残基の欠失、挿入、切断、逆位、及び/又は置換である。加えて、フーリン切断部位及びフーリン切断モチーフは、部位内又はモチーフ内の、少なくとも1つのアミノ酸をマスキングする、共有結合的に連結された構造の付加であって、例えば、PEG化、低分子アジュバントのカップリング、及び/又は部位特異的アルブミン化の結果としての付加などの付加による、アミノ酸の修飾を含む変異によっても破壊されうる。
フーリン切断モチーフが、変異及び/又は非天然アミノ酸残基の存在により破壊されている場合、ある特定の、破壊されたフーリン切断モチーフは、任意のフーリン切断モチーフと関連するものであると、容易には認識可能でない場合もあるが、志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端は、認識可能であり、それが破壊されなかった場合も、フーリン切断モチーフが、どこに位置するのかを規定するであろう。例えば、破壊されたフーリン切断モチーフは、志賀毒素Aサブユニット及び/又は志賀毒素A1断片と比較した、カルボキシ末端の切断のために、フーリン切断モチーフのうちの、20アミノ酸残基未満を含みうる。
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(1)カルボキシ末端を有する志賀毒素A1断片由来ポリペプチドと、(2)志賀毒素A1断片ポリペプチド領域のカルボキシ末端において、破壊されたフーリン切断モチーフとを含み;この場合、志賀毒素エフェクターポリペプチド(及びそれを含む、任意の細胞ターゲティング分子)は、フーリンによる切断に対して、例えば、A1断片のカルボキシ末端、及び/又はA1断片と、A2断片との間で保存された、フーリン切断モチーフを含む、野生型志賀毒素ポリペプチドなどの参照分子と比較して、より抵抗性である。例えば、1つの分子に対する、フーリンによる切断の、参照分子と比較した低減は、下記の実施例において記載され、同じ条件を使用して行われる、インビトロにおけるフーリン切断アッセイを使用し、次いで、切断から得られる、任意の断片のバンド密度の定量を実施して、フーリンによる切断の変化を、定量的に測定することにより決定されうる。
ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、インビトロ及び/又はインビボにおいて、フーリンによる切断に対して、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較して、より抵抗性である。
一般に、本発明の細胞ターゲティング分子の、プロテアーゼによる切断への感受性は、それを、その、フーリンによる切断に抵抗性の、志賀毒素エフェクターポリペプチドを、志賀毒素A1断片を含む、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドで置きかえた、同じ分子と比較することにより調べられる。ある特定の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフを含む、本発明の分子は、インビトロにおける、フーリンによる切断の、例えば、下記の実施例2において記載される参照分子である、SLT−1A−WT::scFv−1など、そのカルボキシ末端において、ペプチド又はポリペプチドへと融合された、野生型志賀毒素A1断片を含む参照分子と比較した、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、又は99%以上の低減を示す。
複数のフーリン切断モチーフの破壊について記載されている。例えば、最小限のR−x−x−Rモチーフ内の、2つの保存されたアルギニンを、アラニンへと変異させることは、フーリン及び/又はフーリン様プロテアーゼによるプロセシングを完全に遮断した(例えば、Duda A et al., J Virology 78: 13865-70 (2004)を参照されたい)。フーリン切断部位モチーフは、約20のアミノ酸残基から構成されるため、理論的に、これらの20のアミノ酸残基位置のうちのいずれか1つの、1つ又は2つ以上が関わる、ある特定の変異は、フーリンによる切断を失効化させうるか、又はフーリンによる切断効率を低減しうるであろう(例えば、Tian S et al., Sci Rep 2: 261 (2012)を参照されたい)。
ある特定の実施形態では、本発明の分子は、少なくとも1つの志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来する、志賀毒素エフェクターポリペプチドを含み、この場合、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素Aサブユニットの、保存された、高度にアクセス可能な、プロテアーゼによる切断に感受性のループに由来する、1つ又は2つ以上のアミノ酸の破壊を含む。例えば、StxA及びSLT−1Aでは、この、高度にアクセス可能な、プロテアーゼ感受性ループは、天然位置のアミノ酸残基242〜261にあり、SLT−2Aでは、この、保存されたループは、天然位置のアミノ酸残基241〜260にある。ポリペプチド配列の相同性に基づき、当業者は、この、保存された、高度にアクセス可能なループ構造を、他の志賀毒素Aサブユニット内でも同定しうる。このループ内のアミノ酸残基に対する、ある特定の変異は、ループ内の、ある特定のアミノ酸残基の、タンパク質分解性切断へのアクセシビリティーを低減することが可能であり、これは、フーリン切断感受性を低減しうるであろう。
ある特定の実施形態では、本発明の分子は、志賀毒素Aサブユニット間で保存された、表面露出型プロテアーゼ感受性ループ内に変異を含む、破壊されたフーリン切断モチーフを含む、志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、本発明の分子は、志賀毒素Aサブユニットの、このプロテアーゼ感受性ループ内の変異であって、フーリン切断感受性が低減されるように、ループ内の、ある特定のアミノ酸残基に対する表面アクセシビリティーを低減する変異を含む、破壊されたフーリン切断モチーフを含む、志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む。
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドの、破壊されたフーリン切断モチーフは、例えば、最小限のフーリン切断モチーフである、R/Y−x−x−Rの、1及び4位におけるアミノ酸残基など、コンセンサスアミノ酸残基である、P1及びP4の一方又は両方の、存在、位置、又は官能基に照らした破壊を含む。例えば、最小限のフーリンコンセンサス部位である、R−x−x−R内の、2つのアルギニン残基の一方又は両方の、アラニンへの変異は、フーリン切断モチーフを破壊し、この部位における、フーリンによる切断を防止するであろう。同様に、最小限のフーリン切断モチーフである、R−x−x−R内のアルギニン残基の一方又は両方の、当業者に公知の、任意の非保存的アミノ酸残基へのアミノ酸残基置換は、モチーフのフーリン切断感受性を低減するであろう。特に、アルギニンの、例えば、A、G、P、S、T、D、E、Q、N、C、I、L、M、V、F、W、及びYなど、陽性電荷を欠く、任意の非塩基性アミノ酸残基へのアミノ酸残基置換は、破壊されたフーリン切断モチーフを結果としてもたらすであろう。
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドの、破壊されたフーリン切断モチーフは、介在するアミノ酸残基の数が、2以外であることに関して、コンセンサスアミノ酸残基である、P4とP1との間隔の破壊を含み、したがって、P4及び/又はP1を、異なる位置へと変更し、P4及び/又はP1の指定を廃する。例えば、最小限のフーリン切断部位のフーリン切断モチーフ内、又はコアのフーリン切断モチーフ内の欠失は、フーリン切断モチーフのフーリン切断感受性を低減するであろう。
ある特定の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基置換を含む。ある特定のさらなる実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、最小限のフーリン切断部位である、R/Y−x−x−R内の、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基置換であって、例えば、StxA及びSLT−1A(及び他の志賀毒素1のAサブユニットのバリアント)由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換された、天然位置のアミノ酸残基であるR248、及び/又は任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換されたR251;並びにSLT−2A(及び他の志賀様毒素2のAサブユニットのバリアント)由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換された、天然位置のアミノ酸残基であるR/Y247、及び/又は任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換されたR250などのアミノ酸残基置換を含む。ある特定のさらなる実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、最小限のフーリン切断部位である、R/Y−x−x−R内の、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基置換であって、例えば、StxA及びSLT−1A(及び他の志賀毒素1のAサブユニットのバリアント)由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、アラニン残基で置換された、天然位置のアミノ酸残基である、R248及びR251;並びにSLT−2A(及び他の志賀様毒素2のAサブユニットのバリアント)由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、アラニン残基で置換された、天然位置のアミノ酸残基である、R/Y247及びR250などのアミノ酸残基置換を含む。
ある特定の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、破壊されていない、最小限のフーリン切断部位である、R/Y−x−x−Rを含むが、代わりに、例えば、天然位置の、例えば、241〜247及び/又は252〜259における、フーリン切断モチーフのフランキング領域内の、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基におけるアミノ酸残基置換など、破壊されたフランキング領域を含む。ある特定のさらなる実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、フーリン切断モチーフの、P1〜P6領域内に位置するアミノ酸残基のうちの、1つ又は2つ以上の置換;P1’の、例えば、R、W、Y、F、及びHなどのバルクアミノ酸への変異誘発;及びP2’の、極性かつ親水性のアミノ酸残基への変異誘発;並びに、フーリン切断モチーフの、P1’〜P6’領域内に位置するアミノ酸残基のうちの、1つ又は2つ以上の、1つ又は2つ以上の、バルクかつ疎水性のアミノ酸残基による置換を含む。
ある特定の実施形態では、フーリン切断モチーフの破壊は、フーリン切断モチーフ内の、少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失、挿入、逆位、及び/又は変異を含む。ある特定の実施形態では、本発明の、プロテアーゼによる切断に抵抗性である志賀毒素エフェクターポリペプチドは、天然位置の、志賀様毒素1のAサブユニット(配列番号1)、志賀毒素のAサブユニット(配列番号2)、若しくは別の志賀毒素1のAサブユニットのバリアント(例えば、配列番号4〜6)の248〜251;又は志賀様毒素2のAサブユニット(配列番号3)若しくは志賀毒素2バリアント配列のAサブユニット(例えば、配列番号7〜18)の247〜250、或いは保存された志賀毒素エフェクターポリペプチド内、及び/又は非天然の志賀毒素エフェクターポリペプチド配列内の、同等な位置における、アミノ酸配列の破壊を含みうる。ある特定のさらなる実施形態では、プロテアーゼによる切断に抵抗性の、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、フーリン切断モチーフ内の、少なくとも1つのアミノ酸の欠失を含む破壊を含む。ある特定のさらなる実施形態では、プロテアーゼによる切断に抵抗性の、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、プロテアーゼ切断モチーフ領域内の、少なくとも1つのアミノ酸の挿入を含む破壊を含む。ある特定のさらなる実施形態では、プロテアーゼによる切断に抵抗性の、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの反転されたアミノ酸が、プロテアーゼモチーフ領域内にある、アミノ酸の逆位を含む破壊を含む。ある特定のさらなる実施形態では、プロテアーゼによる切断に抵抗性の、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、非標準アミノ酸又は側鎖が化学修飾されたアミノ酸へのアミノ酸置換などの変異を含む破壊を含む。単一のアミノ酸置換の例は、下記の実施例において提示される。
本発明の分子についての、ある特定の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、フーリン切断モチーフ内の、カルボキシ末端のアミノ酸残基のうちの、9つ、10、11、又は12以上の欠失を含む。これらの実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、フーリン切断部位又は最小限のフーリン切断モチーフを含まなくなる。言い換えれば、ある特定の実施形態は、A1断片領域のカルボキシ末端における、フーリン切断部位を欠く。
ある特定の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、アミノ酸残基の欠失、及びアミノ酸残基置換の両方を含む。ある特定のさらなる実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、最小限のフーリン切断部位である、R/Y−x−x−R内の、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基の欠失及び置換であって、例えば、StxA及びSLT−1A(及び他の志賀毒素1のAサブユニットのバリアント)由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換された、天然位置のアミノ酸残基であるR248、及び/又は任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換されたR251;並びにSLT−2A(及び他の志賀様毒素Aサブユニット2バリアント)由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換された、天然位置のアミノ酸残基であるR/Y247、及び/又は任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換されたR250などのアミノ酸残基の欠失及び置換を含む。
ある特定の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、アミノ酸残基の欠失、及びアミノ酸残基置換、並びにカルボキシ末端の切断を含む。ある特定のさらなる実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、最小限のフーリン切断部位である、R/Y−x−x−R内の、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基の欠失及び置換であって、例えば、StxA及びSLT−1A(及び他の志賀毒素1のAサブユニットのバリアント)由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換された、天然位置のアミノ酸残基であるR248、及び/又は任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換されたR251;並びにSLT−2A(及び他の志賀様毒素Aサブユニット2バリアント)由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換された、天然位置のアミノ酸残基であるR/Y247、及び/又は任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換されたR250などのアミノ酸残基の欠失及び置換を含む。
ある特定のさらなる実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、最小限のフーリン切断部位である、R/Y−x−x−R内のアミノ酸置換、及びカルボキシ末端の切断の両方を含み、例えば、StxA及びSLT−1A(及び他の志賀毒素1のAサブユニットのバリアント)由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、天然の、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、又は292位以降のアミノ酸を終端とする切断などを含み、適切な場合、任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換された、天然位置のアミノ酸残基である、R248及び/又はR251を含み;SLT−2A(及び他の志賀様毒素Aサブユニット2バリアント)由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、天然の、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、又は292位以降のアミノ酸を終端とする切断などを含み、適切な場合、任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換された、天然位置のアミノ酸残基である、R/Y247及び/又はR250を含む。ある特定のさらなる実施形態では、フーリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットのカルボキシ末端と比較した、志賀毒素A1断片領域の、カルボキシ末端の切断により破壊され;この場合、カルボキシ末端の切断は、天然の、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291又は292位以降のアミノ酸を終端とし;破壊されたフーリン切断モチーフは、アラニン残基で置換された、志賀様毒素1(配列番号1)、志賀毒素(配列番号2)のAサブユニット、若しくは別の志賀毒素1のAサブユニットのバリアント(例えば、配列番号4〜6を参照されたい)の、天然位置のアミノ酸残基である、R248及び/又はR251、又は志賀様毒素2のAサブユニット(配列番号3)若しくは志賀様毒素2のAサブユニットのエフェクターポリペプチドバリアント(例えば、配列番号7〜18)の、天然位置のアミノ酸残基である、R/Y247及び/又はR250を含む。ある特定のさらなる実施形態では、フーリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットのカルボキシ末端と比較した、志賀毒素A1断片領域の、カルボキシ末端の切断により破壊され;この場合、カルボキシ末端の切断は、天然の、250、249、248、247、又は246位以前のアミノ酸を終端とする。ある特定の実施形態では、カルボキシ末端の切断は、天然の、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、又は261位のアミノ酸を終端とする。ある特定の実施形態では、カルボキシ末端の切断は、天然の、250位のアミノ酸を終端とする。ある特定の実施形態では、カルボキシ末端の切断は、天然の、251位のアミノ酸を終端とする。ある特定の実施形態では、カルボキシ末端の切断は、天然の、252位のアミノ酸を終端とする。ある特定の実施形態では、カルボキシ末端の切断は、天然の、253位のアミノ酸を終端とする。ある特定の実施形態では、カルボキシ末端の切断は、天然の、254位のアミノ酸を終端とする。ある特定の実施形態では、カルボキシ末端の切断は、天然の、255位のアミノ酸を終端とする。ある特定の実施形態では、カルボキシ末端の切断は、天然の、256位のアミノ酸を終端とする。ある特定の実施形態では、カルボキシ末端の切断は、天然の、257位のアミノ酸を終端とする。ある特定の実施形態では、カルボキシ末端の切断は、天然の、258位のアミノ酸を終端とする。ある特定の実施形態では、カルボキシ末端の切断は、天然の、259位のアミノ酸を終端とする。ある特定の実施形態では、カルボキシ末端の切断は、天然の、260位のアミノ酸を終端とする。ある特定の実施形態では、カルボキシ末端の切断は、天然の、261位のアミノ酸を終端とする。
ある特定の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、挿入されたアミノ残基(複数可)が、デノボで、フーリン切断部位を創出しない限りにおいて、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基の挿入を含む。ある特定の実施形態では、例えば、249若しくは250における、したがって、R248とR251との間における、1つ若しくは2つ以上のアミノ酸残基の挿入を含む、StxA及びSLT−1A(及び他の志賀毒素1のAサブユニットのバリアント)由来ポリペプチド;又は248若しくは249における、したがって、R/Y247とR250との間における、1つ若しくは2つ以上のアミノ酸残基の挿入を含む、SLT−2A由来ポリペプチド(及び他の志賀様毒素2のAサブユニットのバリアント)など、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基の挿入は、最小限のフーリン切断部位である、R/Y−x−x−R内の、アルギニン残基の間の、天然の間隔を破壊する。
ある特定の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、アミノ酸残基の挿入、及びカルボキシ末端の切断の両方を含む。ある特定の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、アミノ酸残基の挿入、及びアミノ酸残基置換の両方を含む。ある特定の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、アミノ酸残基の挿入、及びアミノ酸残基の欠失の両方を含む。
ある特定の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、アミノ酸残基の欠失、アミノ酸残基の挿入、及びアミノ酸残基置換を含む。
ある特定の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、アミノ酸残基の欠失、挿入、置換、及びカルボキシ末端の切断を含む。
ある特定の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフを含む、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、ペプチド結合により、アミノ酸、ペプチド、及び/又はポリペプチドを含む分子部分へと、直接融合されており、この場合、融合構造は、単一の、連続ポリペプチドを伴う。これらの融合についての実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフに後続するアミノ酸配列は、融合体接合部において、デノボで、フーリン切断部位を創出しないものとする。
上記のプロテアーゼによる切断に抵抗性の、志賀毒素エフェクターポリペプチドの亜領域、及び/又は破壊されたフーリン切断モチーフのうちのいずれかは、単独で使用される場合もあり、本発明の方法を含む、本発明の、各個別の実施形態と組み合わせて使用される場合もある。
3.T細胞が高度免疫化された、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、組み込まれるか、又は挿入されたエピトープペプチド、及び志賀毒素A1断片に由来する領域を含む。ある特定のさらなる実施形態では、エピトープペプチドは、例えば、志賀毒素Aサブユニットに対して異種であると考えられるエピトープなどの、異種T細胞エピトープペプチドである。ある特定のさらなる実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素A1断片領域内に、組み込まれるか、又は挿入されたエピトープペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、エピトープペプチドは、CD8+ T細胞エピトープである。ある特定のさらなる実施形態では、CD8+ T細胞エピトープペプチドは、10−4モル以下の解離定数(KD)により特徴づけられる、MHCクラスI分子に対する結合アフィニティーを有する、及び/又は結果として得られる、MHCクラスI−エピトープペプチド複合体は、10−4モル以下の解離定数(KD)により特徴づけられる、T細胞受容体(TCR;t-cell receptor)に対する結合アフィニティーを有する。
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、例えば、ヒトCD8+ T細胞エピトープなど、組み込まれるか、又は挿入された異種T細胞エピトープを含む。ある特定のさらなる実施形態では、異種T細胞エピトープは、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドが由来する、天然に存在する志賀毒素ポリペプチド内、又は親である志賀毒素エフェクターポリペプチド内で同定可能な、内因性のエピトープ又はエピトープ領域(例えば、B細胞エピトープ及び/又はCD4+ T細胞エピトープ)を破壊するように組み込まれるか、又は挿入される。例えば、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素A1断片に由来する領域内の、内因性のB細胞エピトープ領域及び/又はCD4+ T細胞エピトープ領域を破壊する、組み込まれるか、又は挿入された異種CD8+ T細胞エピトープを含みうる。
本発明の、ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド(及びそれを含む、任意の細胞ターゲティング分子)は、例えば、野生型志賀毒素ポリペプチドなどと比較して、CD8+ T細胞が高度に免疫化されている。本発明の、CD8+ T細胞が高度に免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、各々、組み込まれるか、又は挿入されたT細胞エピトープペプチドを含む。高度に免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、本明細書で記載される、国際公開第2015/113005号パンフレットにおいて記載されている、及び/又は当業者に公知の方法を使用して、天然に存在するのであれ、そうでないのであれ、志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は志賀毒素Aサブユニットポリペプチドから創出される場合があり、この場合、結果として得られる分子は、1つ又は2つ以上の志賀毒素Aサブユニット機能をやはり保持する。
特許請求される発明の目的では、T細胞エピトープは、抗原ペプチドに含まれ、直鎖状のアミノ酸配列により表されうる分子構造である。一般に、T細胞エピトープは、8〜11アミノ酸残基のサイズのペプチドである(Townsend A, Bodmer H, Annu Rev Immunol 7: 601-24 (1989))が、ある特定のT細胞エピトープペプチドは、長さが、8アミノ酸長より短いか、又は11アミノ酸長より長い(例えば、Livingstone A, Fathman C, Annu Rev Immunol 5: 477-501 (1987); Green K et al., Eur J Immunol 34: 2510-9 (2004)を参照されたい)。ある特定の実施形態では、組み込まれるか、又は挿入されたエピトープは、少なくとも7アミノ酸残基の長さである。ある特定の実施形態では、組み込まれるか、又は挿入されたエピトープには、Stone J et al., Immunology 126: 165-76 (2009)における式を使用して計算される、10mM未満(例えば、1〜100μM)のKDにより特徴づけられる結合アフィニティーで、TCRが結合する。しかし、MHCペプチド−TCR複合体の安定性、MHCペプチドの密度、及びCD8などのTCR補因子のMHC非依存性機能のような因子(Baker B et al., Immunity 13: 475-84 (2000); Hornell T et al., J Immunol 170: 4506-14 (2003); Woolridge L et al., J Immunol 171: 6650-60 (2003))などのために、MHCエピトープと、TCRとの、所与の範囲内の結合アフィニティーは、抗原性及び/又は免疫原性と相関しない場合があることに注意されたい(例えば、Al-Ramadi B et al., J Immunol 155: 662-73 (1995)を参照されたい)。
異種T細胞エピトープとは、本明細書で記載される、国際公開第2015/113005号パンフレットにおいて記載されている、及び/又は当業者に公知の方法による修飾のために、供給源ポリペプチドとして使用される、野生型志賀毒素Aサブユニット内;天然に存在する志賀毒素Aサブユニット内;及び/又は親の志賀毒素エフェクターポリペプチド内に、未だ存在していないエピトープである。
異種T細胞エピトープペプチドは、例えば、供給源ポリペプチド内に、1つ又は2つ以上のアミノ酸置換を創出する方法、1つ又は2つ以上のアミノ酸を、供給源ポリペプチドへと融合させる方法、1つ又は2つ以上のアミノ酸を、供給源ポリペプチドへと挿入する方法、ペプチドを、供給源ポリペプチドへと連結する方法、及び/又は前述の方法の組合せを含む、当業者に公知の多数の方法を介して、供給源ポリペプチドへと組み込まれうる。このような方法の結果は、1つ又は2つ以上の、組み込まれるか、又は挿入された異種T細胞エピトープペプチドを含む、供給源ポリペプチドの、修飾されたバリアントの創出である。
T細胞エピトープは、本発明における使用のための、多数の供給源分子から選び出されうるか、又はこれらに由来しうる。T細胞エピトープは、多様な、天然に存在するタンパク質から創出されうるか、又はこれらに由来しうる。T細胞エピトープは、多様な、例えば、微生物のタンパク質など、哺乳動物に対して外来である、天然に存在するタンパク質から創出されうるか、又はこれらに由来しうる。T細胞エピトープは、変異ヒトタンパク質及び/又は悪性ヒト細胞により、異常に発現される、ヒトタンパク質から創出されうるか、又はこれらに由来しうる。T細胞エピトープは、合成的に創出されうるか、又は合成分子に由来しうる(例えば、Carbone F et al., J Exp Med 167: 1767-9 (1988); Del Val M et al., J Virol 65: 3641-6 (1991); Appella E et al., Biomed Pept Proteins Nucleic Acids 1: 177-84 (1995); Perez S et al., Cancer 116: 2071-80 (2010)を参照されたい)。
いかなるT細胞エピトープペプチドも、本発明の異種T細胞エピトープとして使用されるものとして想定されうるが、ある特定のエピトープが、所望の特性に基づき、選択されうる。本発明の1つの目的は、脊椎動物への投与のための、CD8+ T細胞が高度に免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを創出することであり、異種T細胞エピトープが、高度に免疫原性であり、インビボにおいて、細胞の表面上で、MHCクラスI分子と、複合体化されて提示されると、ロバストな免疫応答を誘発しうることを意味する。ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、CD8+ T細胞エピトープである、1つ又は2つ以上の、組み込まれるか、又は挿入された異種T細胞エピトープを含む。異種CD8+ T細胞エピトープを含む、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、CD8+ T細胞が高度に免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドであると考えられる。
本発明の、T細胞エピトープの構成要素は、脊椎動物の免疫応答を誘発することが可能であることが既知である、多数の供給源分子から選び出されうるか、又はこれらに由来しうる。T細胞エピトープは、例えば、病原性微生物のタンパク質、及び非自己であるがん抗原など、脊椎動物に対して外来である、多様な、天然に存在するタンパク質に由来しうる。特に、感染性微生物は、公知の抗原特性及び/又は免疫原性特性を伴う、多数のタンパク質を含有しうる。さらに、感染性微生物は、公知の抗原性及び/又は免疫原性の亜領域又はエピトープを伴う、多数のタンパク質を含有しうる。
例えば、哺乳動物宿主を伴う、細胞内病原体のタンパク質は、T細胞エピトープの供給源である。十分に研究された抗原タンパク質又は抗原ペプチドを伴う、ウイルス、細菌、真菌、及び単細胞真核生物など、多数の細胞内病原体が存在する。T細胞エピトープは、例えば、マイコバクテリアのような細菌、トキソプラズマのような真菌、及びトリパノソーマのような原生生物などの、ヒトウイルス又は他の細胞内病原体から選択又は同定されうる。
例えば、ヒトに対して感染性であるウイルスに由来するウイルス性タンパク質の、多くの、免疫原性である、ウイルス性ペプチド構成要素が存在する。多数のヒトT細胞エピトープが、タンパク質であるHAの糖タンパク質である、FE17、S139/1、CH65、C05、ヘマグルチニン1(HA1;hemagglutinin 1)、ヘマグルチニン2(HA2;hemagglutinin 2)、非構造的タンパク質1及び2(NS1及びNS2;nonstructural protein 1及び2)、マトリックスタンパク質1及び2(M1及びM2;matrix protein 1及び2)、ヌクレオタンパク質(NP;nucleoprotein)、ノイラミニダーゼ(NA;neuraminidase)におけるペプチドなど、A型インフルエンザウイルスに由来するタンパク質内のペプチドへとマッピングされており、これらのペプチドの多くは、エクスビボアッセイを使用することなどにより、ヒト免疫応答を誘発することが示されている。同様に、多数のヒトT細胞エピトープが、タンパク質pp65(UL83)、UL128〜131、即初期1(IE−1;UL123;immediate-early 1)、糖タンパク質B、テグメントタンパク質におけるペプチドなど、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV;human cytomegalovirus)に由来するタンパク質のペプチド構成要素へとマッピングされており、これらのペプチドの多くは、エクスビボアッセイを使用することなどにより、ヒト免疫応答を誘発することが示されている。
別の例は、ヒトには、免疫原性のがん抗原が多く存在するということである。がん細胞抗原及び/又は腫瘍細胞抗原のCD8+ T細胞エピトープは、例えば、示差的ゲノミクス、示差的プロテオミクス、イムノプロテオミクス、予測に次ぐ検証、及び逆遺伝学トランスフェクションなどの遺伝学法(例えば、Admon A et al., Mol Cell Proteomics 2: 388-98 (2003); Purcell A, Gorman J, Mol Cell Proteomics 3: 193-208 (2004); Comber J, Philip R, Ther Adv Vaccines 2: 77-89 (2014))を参照されたい)など、当技術分野で公知の技法を使用して、当業者により同定されうる。ヒトのがん細胞内及び/又は腫瘍細胞内で生じることが、既に同定されるか、又は予測されている、抗原性のT細胞エピトープ及び/又は免疫原性のT細胞エピトープが多く存在する。例えば、T細胞エピトープは、例えば、ALK、CEA、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(GnT−V)、HCA587、HER2/neu、MAGE、Melan−A/MART−1、MUC−1、p53、及びTRAG−3など、一般に、新生物性細胞内で、変異又は過剰発現されるものとしてヒトタンパク質中において予測されている(例えば、van der Bruggen P et al., Science 254: 1643-7 (1991); Kawakami Y et al., J Exp Med 180: 347-52 (1994); Fisk B et al., J Exp Med 181: 2109-17 (1995); Guilloux Y et al., J Exp Med 183: 1173 (1996); Skipper J et al., J Exp Med 183: 527 (1996); Brossart P et al., 93: 4309-17 (1999); Kawashima I et al., Cancer Res 59: 431-5 (1999); Papadopoulos K et al., Clin Cancer Res 5: 2089-93 (1999); Zhu B et al., Clin Cancer Res 9: 1850-7 (2003); Li B et al., Clin Exp Immunol 140: 310-9 (2005); Ait-Tahar K et al., Int J Cancer 118: 688-95 (2006); Akiyama Y et al., Cancer Immunol Immunother 61: 2311-9 (2012)を参照されたい)。加えて、ヒトがん細胞に由来するT細胞エピトープの合成バリアントも創出されている(例えば、Lazoura E, Apostolopoulos V, Curr Med Chem 12: 629-39 (2005); Douat-Casassus C et al., J Med Chem 50: 1598-609 (2007)を参照されたい)。
本発明のポリペプチド内及び分子内では、いかなるT細胞エピトープも使用されうるが、ある特定のT細胞エピトープが、それらの公知の特徴及び/又は実験により決定された特徴に基づき、好ましい場合がある。例えば、多くの種では、そのゲノム内のMHC対立遺伝子は、複数のMHC−I分子バリアントをコードする。MHCクラスIタンパク質の多型は、CD8+ T細胞による、抗原−MHCクラスI複合体の認識に影響を及ぼしうるため、T細胞エピトープは、本発明における使用のために、ある特定のMHCクラスI多型、及び/又はある特定の抗原−MHCクラスI複合体が、異なる遺伝子型を有するT細胞により認識される能力についての知見に基づき、選び出されうる。
免疫原性である、MHCクラスI拘束性である、及び/又は特異的ヒト白血球抗原(HLA;human leukocyte antigen)バリアント(複数可)とマッチしていることが公知である、十分に規定されたペプチドエピトープが存在する。ヒトにおける適用、又はヒト標的細胞を伴う適用のために、HLAクラスI拘束性エピトープは、当技術分野で公知の標準的技法を使用する当業者により選択又は同定されうる。ペプチドが、ヒトMHCクラスI分子に結合する能力は、推定T細胞エピトープの免疫原性の可能性を予測するのに使用されうる。ペプチドが、ヒトMHCクラスI分子に結合する能力は、ソフトウェアツールを使用して、評定されうる。T細胞エピトープは、ある特定のヒト集団において高頻度の対立遺伝子によりコードされるHLAバリアントのペプチド選択性に基づき、本発明の、異種T細胞エピトープの構成要素としての使用のために選び出されうる。例えば、ヒト集団は、HLA遺伝子の対立遺伝子が、個体間で変動するために、MHCクラスI分子のアルファ鎖について、多型である。ある特定のT細胞エピトープは、例えば、HLA−A対立遺伝子群である、HLA−A2及びHLA−A3によりコードされる、一般に生じるHLAバリアントなど、特異的HLA分子により、より効率的に提示されうる。
T細胞エピトープを、本発明の、異種T細胞エピトープの構成要素としての使用のために選び出す場合、例えば、標的細胞内の以下の因子:プロテアソーム、ERAAP/ERAP1、タパシン、及びTAPの存在及びエピトープ特異性など、エピトープの作出、及び受容するMHCクラスI分子への輸送に影響を及ぼしうる、複数の因子が考えられうる。
T細胞エピトープを、本発明の、異種T細胞エピトープの構成要素としての使用のために選び出す場合、ターゲティングされる細胞型又は細胞集団において存在するMHCクラスI分子に、最もよくマッチするエピトープが選択されうる。異なるMHCクラスI分子は、特定のペプチド配列への優先的な結合を示し、特定のペプチド−MHCクラスIバリアント複合体は、エフェクターT細胞のT細胞受容体(TCR)により、特異的に認識される。当業者は、本発明で使用される異種T細胞エピトープの選択を最適化するのに、MHCクラスI分子の特異性及びTCRの特異性についての知見を使用しうる。
加えて、MHCクラスIによる提示のための、複数の、免疫原性の、T細胞エピトープは、例えば、複数のT細胞エピトープの、同時の、ターゲティングされた送達における使用などのために、同じ、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド内に組み込まれうる。
本明細書で記載される、プロテアーゼによる切断に抵抗性の、志賀毒素エフェクターポリペプチドの亜領域、及び/又は破壊されたフーリン切断モチーフのうちのいずれかは、単独で使用される場合もあり、本発明の方法を含む、本発明の、各個別の実施形態と組み合わせて使用される場合もある。
C.さらなる外因性素材
ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子は、さらなる外因性素材を含む。本明細書で使用される「さらなる外因性素材」とは、志賀毒素及び天然の標的細胞のいずれにおいても、一般に存在しないことが多い1つ又は2つ以上の原子又は分子を指し、この場合、本発明の細胞ターゲティング分子は、このような素材を、細胞の内部へと、特異的に輸送するのに使用されうる。1つの意味では、本発明の細胞ターゲティング分子全体が、細胞に侵入する外因性素材であり;したがって、「さらなる」外因性素材は、コアの細胞ターゲティング分子自体へと連結されているが、これ以外の異種素材である。さらなる外因性素材の非限定例は、放射性核種、ペプチド、検出促進剤、タンパク質、低分子化学療法剤、及びポリヌクレオチドである。
本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、さらなる外因性素材は、例えば、211At、131I、125I、90Y、111In、186Re、188Re、153Sm、212Bi、32P、60C、及び/又はルテチウムの放射性同位体など、1つ又は2つ以上放射性核種である。
ある特定の実施形態では、さらなる外因性素材は、アポトーシス促進性ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質、など、例えば、BCL−2、カスパーゼ(例えば、カスパーゼ3又はカスパーゼ6の断片)、チトクローム、グランザイムB、アポトーシス誘導性因子(AIF)、BAX、tBid(切断型Bid)、及びアポトーシス促進性断片、又はこれらの派生物(例えば、Ellerby H et al., Nat Med 5: 1032-8 (1999); Mai J et al., Cancer Res 61: 7709-12 (2001); Jia L et al., Cancer Res 63: 3257-62 (2003); Liu Y et al., Mol Cancer Ther 2: 1341-50 (2003); Perea S et al., Cancer Res 64: 7127-9 (2004); Xu Y et al., J Immunol 173: 61-7 (2004); Dalken B et al., Cell Death Differ 13: 576-85 (2006); Wang T et al., Cancer Res 67: 11830-9 (2007); Kwon M et al., Mol Cancer Ther 7: 1514-22 (2008); Qiu X et al., Mol Cancer Ther 7: 1890-9 (2008); Shan L et al., Cancer Biol Ther 11: 1717-22 (2008); Wang F et al., Clin Cancer Res 16: 2284-94 (2010); Kim J et al., J Virol 85: 1507-16 (2011)を参照されたい)などを含む。
ある特定の実施形態では、さらなる外因性素材は、酵素を含む、タンパク質又はポリペプチドを含む。ある特定の、他の実施形態では、さらなる外因性素材は、例えば、低分子阻害性RNA(siRNA)又はマイクロRNA(miRNA)として機能するリボ核酸などの核酸である。ある特定の実施形態では、さらなる外因性素材は、病原体、細菌性タンパク質、ウイルス性タンパク質、がんにおいて変異したタンパク質、がんにおける発現が異常なタンパク質、又はT細胞相補性決定領域に由来する抗原などの抗原である。例えば、外因性素材は、細菌に感染した抗原提示細胞に特徴的な抗原、及び外因性抗原として機能することが可能な、T細胞相補性決定領域などの抗原を含む。ポリペプチド又はタンパク質を含む外因性素材は、当業者に公知であれ、未知であれ、1つ又は2つ以上の抗原を含んでもよい。
本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドと会合させる全ての異種抗原及び/又は異種エピトープは、志賀毒素エフェクターポリペプチドの志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端に対して、アミノ末端側の、細胞ターゲティング分子内に配置する。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドと会合させる、全ての異種抗原及び/又は異種エピトープは、志賀毒素エフェクターポリペプチドの志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端に対して、アミノ末端側の位置において、志賀毒素エフェクターポリペプチドと、直接的に、又は間接的に会合させる。ある特定のさらなる実施形態では、抗原である、全てのさらなる外因性素材(複数可)は、例えば、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端と、直接的に、又は間接的に融合するなど、志賀毒素エフェクターポリペプチドに対して、アミノ末端側に配置する。
本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、さらなる外因性素材は、例えば、低分子化学療法剤、抗新生物剤、細胞毒性抗生剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害剤、及び/又はチューブリン阻害剤などの細胞毒性剤である。本発明を伴う使用に適切な細胞毒性剤の非限定例は、アジリジン、シスプラチン、テトラジン、プロカルバジン、ヘキサメチルメラミン、ビンカアルカロイド、タキサン、カンプトテシン、エトポシド、ドキソルビシン、ミトキサントロン、テニポシド、ノボビオシン、アクラルビシン、アントラサイクリン、アクチノマイシン、アマンチン、アマトキシン、ブレオマイシン、センタナマイシン(インドールカルボキサミド)、プリカマイシン、マイトマイシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ドラスタチン、メイタンシン、メイタンシノイド、ヅラマイシン、ドセタキセル、デュオカルマイシン、アドリアマイシン、カリケアミシン、アウリスタチン、ピロロベンゾジアゼピン、ピロロベンゾジアゼピン二量体(PBD;pyrrolobenzodiazepine dimer)、カルボプラチン、5−フルオロウラシル(5−FU;5-fluorouracil)、カペシタビン、マイトマイシンC、パクリタキセル、1,3−ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソウレア(BCNU;1,3-Bis(2-chloroethyl)-1-nitrosourea)、リファンピシン、シスプラチン、メトトレキサート、ゲムシタビン、アセグラトン、アセトゲニン(例えば、ブラタシン及びブラタシノン)、アクラシノマイシン、AG1478、AG1571、アルドホスファミドグリコシド、スルホン酸アルキル(例えば、ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファン)、アルキル化剤(例えば、チオテパ及びシクロホスファミド)、アミノレブリン酸、アミノプテリン、アムサクリン、アンシタビン、アントラマイシン、アラビノシド、アザシチジン、アザセリン、アジリジン(例えば、ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパ)、アザウリジン、ベストラブシル、ビサントレン、ビスホスホネート(例えば、クロドロネート)、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブリオスタチン、カクチノマイシン、カリスタチン、カラビシン、カルミノマイシン、カルモフール、カルムスチン、カルジノフィリン、CC−1065、クロラムブシル、クロランブシル、クロルナファジン、クロロゾトシン、クロモマイシン、クロモプロテイン系エンジイン抗生剤であるクロモフォア、CPT−11、クリプトフィシン(例えば、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8)、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノマイシン、デフォファミン、デメコルシン、デトルビシン、ジアジコン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ジデオキシウリジン、ジフルオロメチルオルニチン(DMFO;difluoromethylornithine)、ドキシフルリジン、ドキソルビシン(例えば、モルホリノドキソルビシン、シアノモルホリノドキソルビシン、2−ピロリノドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシン)、ジネミシン、エダトラキセート、エダトレキサート、エレウテロビン、エルホルミチン、酢酸エリプチニウム、エンジイン抗生剤(例えば、カリケアミシン)、エニルウラシル、エノシタビン、エピルビシン、エポチロン、エソルビシン、エスペラミシン、エストラムスチン、エチレンイミン、2−エチルヒドラジド、エトグルシド、フルダラビン、葉酸アナログ(例えば、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、及びトリメトレキサート)、葉酸補充在(例えば、フロリン酸)、ホテムスチン、フルベストラント、ガシトシン、硝酸ガリウム、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イバンドロネート、イホスファミド、メシル酸イマチニブ、エルロチニブ、フルベストラント、レトロゾール、PTK787/ZK222584(Novartis社、Basel、CH)、オキサリプラチン、ロイコボリン、ラパマイシン、ラパチニブ、ロナファルニブ、ソラフェニブ、メチラメラミン(例えば、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、及びトリメチロメラミン)、パンクラチスタチン、サルコジクチン、スポンジスタチン、窒素マスタード(例えば、クロランブシル、クロルナファジン、シクロホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベムビシン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、及びウラシルマスタード)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチン)、ジネミシン、ネオカルチノスタチン・クロモフォア、アントラマイシン、デトルビシン、エピルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン(例えば、マイトマイシンC)、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ウベニメクス、ジノステチン、ゾルビシン、プリンアナログ(例えば、フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、及びチオグアニン)、ピリミジンアナログ(例えば、アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、及びフロクスウリジン)、アセグラトン、レンチナン、ロニダイニン、メイタンシノイド(例えば、メイタンシン及びアンサマイトシン)、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダンモール、ニトラエリン、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ポドフィリン酸、2−エチルヒドラジド、リゾキシン、シゾフラン、スピロゲルマニウム、テヌアゾン酸、トリアジコン、2,2’,2’’トリクロロトリエチルアミン、トリコテセン(例えば、T−2毒素、ベラクリンA、ロリジンA、及びアンギジン)、ウレタン、ビンデシン、マンノムスチン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ピポブロマン、アラビノシド、シクロホスファミド、トキソイド(例えば、パクリタキセル及びドセタキセル)、6−チオグアニン、メルカプトプリン、白金、白金アナログ(例えば、シスプラチン及びカルボプラチン)、エトポシド(VP−16)、ミトキサントロン、ビノレルビン、ノバントロン、ダウノマイシン、ゼローダ、トポイソメラーゼ阻害剤であるRFS2000、レチノイド(例えば、レチノイン酸)、カペシタビン、ロムスチン、ロソキサントロン、メルカプトプリン、ニムスチン、ニトラエリン、ラパマイシン、ラゾキサン、ロリジンA、スポンジスタチン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、スーテント、T−2毒素、チアミプリン、チオテパ、トキソイド(例えば、パクリタキセル及びドセタキセル)、ツベルシジン、ベラクリンA、ビンブラスチン、ビンクリスチン、並びに前述のうちのいずれかの構造的アナログ(例えば、合成アナログ)、及び/又は前述のうちのいずれかの派生物(例えば、Lindell T et al., Science 170: 447-9 (1970); Remillard S et al., Science 189: 1002-5 (1975); Ravry M et al., Am J Clin Oncol 8: 148-50 (1985); Ravry M et al., Cancer Treat Rep 69: 1457-8 (1985); Sternberg C et al., Cancer 64: 2448-58 (1989); Bai R et al., Biochem Pharmacol 39: 1941-9 (1990); Boger D, Johnson D, Proc Natl Acad Sci USA 92: 3642-9 (1995); Beck J et al., Leuk Lymphoma 41: 117-24 (2001); Cassady J et al., Chem Pharm Bull (Tokyo) 52: 1-26 (2004); Sapra P et al., Clin Cancer Res 11: 5257-64 (2005); Okeley N et al., Clinc Cancer Res 16: 888-97 (2010); Oroudjev E et al., Mol Cancer Ther 9: 2700-13 (2010); Ellestad G, Chirality 23: 660-71 (2011); Kantarjian H et al., Lancet Oncol 13: 403-11 (2012); Moldenhauer G et al., J Natl Cancer Inst 104: 622-34 (2012); Meulendijks D et al., Invest New Drugs 34: 119-28 (2016)を参照されたい)を含む。
D.本発明の細胞ターゲティング分子の構造−機能関係
本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、例えば、構成要素の相対的配向性の、細胞毒力に対する効果;ある特定の投与量における、フーリンによる切断に感受性の、インビボにおける忍容性に対する効果;フーリンによる切断に感受性の、インビトロにおける安定性に対する効果;フーリンによる切断に感受性の、インビボにおける半減期に対する効果;及びフーリンによる切断に感受性の、多細胞生物のインビボにおける、非特異的毒性に対する効果などの、特異的構造−機能関係が観察されている。
本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域及び結合性領域の、具体的な順序又は配向性は、結合性領域が、細胞ターゲティング分子内で、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端領域に対して、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端領域より近位に位置するように固定される。本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、細胞ターゲティング分子内の、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域の配置は、細胞ターゲティング分子のポリペプチド構成要素のアミノ末端及び/又はその近傍であることに限定される(図1を参照されたい)。例えば、本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態は、1)細胞ターゲティング分子内の、カルボキシ末端の位置において、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域へと配向させられた結合性領域、2)志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端領域から遠位(例えば、50、100、200、若しくは250アミノ酸残基、又は251アミノ酸残基以上の距離)の位置において、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域と会合した結合性領域、3)志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端領域を、立体的に遮蔽しない結合性領域、及び/又は4)志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端領域の近傍において、構造(複数可)の立体障害とならない結合性領域(例えば、図1;国際公開第2015/138452号パンフレットを参照されたい)を含む。ある特定のさらなる実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子は、例えば、同じ志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド領域(複数可)、及び結合性領域(複数可)を含む、類縁の細胞ターゲティング参照分子の、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、又は11倍以上であるCD50値を示すことなど、より最適の細胞毒力を示すことが可能であり、この場合、結合性領域が、1)志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド領域に対して、アミノ末端側である、2)志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端領域に対して近位(例えば、50、40、30、20、又は10アミノ酸残基未満の距離)の位置において、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域と会合する、3)志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端領域を、立体的に遮蔽しない、及び/又は4)志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端領域の近傍において、構造(複数可)の立体障害とならない(例えば、図1;国際公開第2015/138452号パンフレットを参照されたい)。
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドは、志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端において、破壊されたフーリン切断モチーフを含む、志賀毒素A1断片に由来する領域(志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端に位置する、破壊されたフーリン切断部位など)(例えば、図1;国際公開第2015/191764号パンフレットを参照されたい)を含む。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、例えば、野生型の志賀毒素Aサブユニット又は志賀毒素A1断片を含む分子など、類縁の参照分子と比較して、フーリンによる切断に対して、より抵抗性である(例えば、国際公開第2015/191764号パンフレットを参照されたい)。ある特定のさらなる実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、同じ条件下で、同じアッセイにおいて観察される、参照分子の、フーリンによる切断より、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%低度(切断なしに相当する100%を含む)であることが、再現可能に観察される、フーリンによる切断の低減を示す。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、例えば、野生型の志賀毒素Aサブユニット又は志賀毒素A1断片を含む分子など、類縁の参照分子と比較して、フーリン以外のプロテアーゼに対して、より切断抵抗性である。
ある特定の、本発明の細胞ターゲティング分子は、志賀毒素エフェクターポリペプチド内の、破壊されたフーリン切断モチーフに対する、補償的な構造的特色の欠如にもかかわらず、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド領域を含む参照分子の100倍、20倍、10倍、5倍、又は5倍以内の細胞毒力を示す。フーリンによる切断イベントを維持しない、志賀毒素Aサブユニット由来の領域を含む、細胞ターゲティング分子、すなわち、標的細胞の内部で、フーリンにより切断されない、志賀毒素Aサブユニット由来の構成要素を含む分子では、最大限の細胞毒性を温存する、1つの代替法は、補償である。細胞毒性分子内の、志賀毒素Aサブユニットの、フーリン切断領域の欠如に対する補償は、志賀毒素Aサブユニット領域を、「前プロセシング」形態で提示することにより達せられうる。例えば、志賀毒素Aサブユニット領域を含む細胞ターゲティング分子は、志賀毒素Aサブユニット由来ポリペプチドのカルボキシ末端が、1)分子のカルボキシ末端に対して近位であり、2)フーリンによる切断の後で、天然の志賀毒素A1断片にマッチするか、又はこれに相似するように構築されうる(国際公開第2015/191764号パンフレットを参照されたい)。このような補償は、ある特定の、本発明の細胞ターゲティング分子では要求されず、それよりも、例えば、ある特定の投与量における、インビボ忍容性の改善;インビトロにおける安定性の増大;インビボにおける半減期の延長;及び/又は多細胞生物のインビボにおける、非特異的毒性の低減など、1つ又は2つ以上の機能(複数可)をもたらすために、意図的に回避される。ある特定の実施形態では、これらの有益な機能(複数可)は、本発明の細胞ターゲティング分子の細胞毒力の、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む参照分子と比較した、著明な低減を伴わずに存在する。
ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子は、志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端において、破壊されたフーリン切断モチーフを含む、志賀毒素A1断片に由来する領域(志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端に位置する、破壊されたフーリン切断部位など)を含む、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド(例えば、図1;国際公開第2015/191764号パンフレットを参照されたい)を含むが、志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端に対して近位である、及び/又は志賀毒素エフェクターポリペプチドと、比較的大型の分子部分(例えば、4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、又は50kDaより大きなサイズの結合性領域)との間に配向させられた、任意の補償的プロテアーゼ切断部位を含まない。ある特定のさらなる実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子は、例えば、野生型の志賀毒素Aサブユニット又は志賀毒素A1断片を含む分子など、類縁の参照分子と比較して、フーリンによる切断に対して、より抵抗性である、志賀毒素エフェクターポリペプチド(例えば、国際公開第2015/191764号パンフレットを参照されたい)を含む。ある特定のさらなる実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子は、同じ条件下で、同じアッセイにおいて観察される、参照分子の、フーリンによる切断より、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%低度である、フーリンによる切断の低減を示す一方で、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド領域を含む参照分子の100倍、20倍、10倍、5倍、又は5倍以内の細胞毒力を示す。ある特定のさらなる実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子は、その志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端において、野生型フーリン切断モチーフ及び/又は野生型フーリン切断部位を有する志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、類縁の参照分子と比較した、インビボにおける忍容性の改善を示す(例えば、国際公開第2015/191764号パンフレットを参照されたい)。例えば、インビボにおける忍容性の増大は、同じ投与量で、異なる分子を投与された実験動物の群において、死亡、罹患の徴候、及び/又はある特定の臨床徴候についての測定値を比較することにより決定されうる(例えば、下掲の実施例;国際公開第2015/191764号パンフレット;国際公開第2016/196344号パンフレットを参照されたい)。
ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子は、志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端において、破壊されたフーリン切断モチーフを含む、志賀毒素A1断片に由来する領域を含む、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド(志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端に位置する、破壊されたフーリン切断部位など)(例えば、図1;国際公開第2015/191764号パンフレットを参照されたい)を含む。細胞毒性構成要素を含む、本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、細胞ターゲティング分子は、プロテアーゼによる切断に対する感受性が大きなバリアントであって、とりわけ、例えば、細胞、組織、及び/又は生物の集団などの生体物質へと投与された場合に、分解され、これにより、細胞毒性構成要素を、結合性領域から放出する傾向が大きいバリアントと比較した、非特異的毒性の低減を示す。さらに、プロテアーゼによる切断に抵抗性の、ある特定の、本発明の細胞ターゲティング分子は、志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端において、破壊されたフーリン切断モチーフにより、細胞ターゲティング分子へと付与される、プロテアーゼによる切断に対する抵抗性に基づき、生体物質(例えば、ある特定の脊索動物)への投与の後における、プロテアーゼによる切断に対する感受性が大きなバリアントと比較した、インビボにおける半減期の延長を示しうる。
III.本発明の構成要素及び/又はそれらの亜構成要素を繋ぐ連結
本発明の、個別の、細胞をターゲティングする結合性領域、志賀毒素エフェクターポリペプチド、及び/又は細胞ターゲティング分子の構成要素は、当技術分野で周知である、及び/又は本明細書で記載される、1つ又は2つ以上のリンカーを介して、互いと、適切に連結されうる。個別のポリペプチドの、結合性領域の亜構成要素、例えば、重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)、CDR領域、及び/又はABR領域は、当技術分野で周知である、及び/又は本明細書で記載される、1つ又は2つ以上のリンカーを介して、互いと、適切に連結されうる。本発明のタンパク質性構成要素、例えば、多重鎖結合性領域は、当技術分野で周知である、1つ又は2つ以上のリンカーを介して、互いと、又は、他の、本発明のポリペプチド構成要素と、適切に連結されうる。本発明のペプチド構成要素、例えば、KDELファミリーの小胞体保持/賦活シグナルモチーフは、当技術分野で周知のタンパク質性リンカーなど、1つ又は2つ以上のリンカーを介して、別の、本発明の構成要素と、適切に連結されうる。
適切なリンカーは、一般に、本発明の各ポリペプチド構成要素が、リンカー又は他の構成要素を伴わずに、個別に作製されたポリペプチド構成要素と、極めて類似の三次元構造でフォールディングすることを可能とするリンカーである。適切なリンカーは、分枝状であれ、環状であれ、多様な非タンパク質性炭素鎖など、前述のうちのいずれかを欠く、単一のアミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、及びリンカーを含む。
適切なリンカーは、タンパク質性であることが可能であり、1つ若しくは2つ以上のアミノ酸、ペプチド、及び/又はポリペプチドを含む。タンパク質性リンカーは、組換え融合タンパク質及び化学的に連結されたコンジュゲートのいずれにも適切である。タンパク質性リンカーは、典型的に、例えば、約5〜約30又は約6〜約25アミノ酸残基など、約2〜約50アミノ酸残基を有する。選択されるリンカーの長さは、例えば、所望の特性又はリンカーが選択される特性など、様々な因子に依存するであろう。ある特定の実施形態では、リンカーは、タンパク質性であり、典型的に、末端から、約20アミノ酸以内の、本発明のタンパク質構成要素の末端近傍へと連結される。
適切なリンカーは、例えば、化学リンカーなど、非タンパク質性リンカーでありうる。当技術分野で公知の、多様な非タンパク質性リンカーは、免疫グロブリンポリペプチドを、異種ポリペプチドへとコンジュゲートさせるのに、一般に使用されるリンカーなど、細胞をターゲティングする結合性領域を、本発明の細胞ターゲティング分子の、志賀毒素エフェクターポリペプチドの構成要素へと連結するのに使用されうる。例えば、ポリペプチド領域は、例えば、カルボキシ、アミン、スルフヒドリル、カルボン酸、カルボニル、ヒドロキシル、及び/又は環状基など、それらのアミノ酸残基及び炭水化物部分の官能側鎖を使用して連結されうる。例えば、ジスルフィド結合及びチオエーテル結合は、2つ又は3つ以上のポリペプチドを連結するのに使用されうる。加えて、非天然のアミノ酸残基は、ケトン基など、他の官能側鎖と共に使用されうる。非タンパク質性化学リンカーの例は、N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)−アミノベンゾエート、S−(N−スクシンイミジル)チオアセテート(SATA;S-(N-succinimidyl) thioacetate)、N−スクシンイミジル−オキシカルボニル−cu−メチル−a−(2−ピリジルジチオ)トルエン(SMPT;N-succinimidyl-oxycarbonyl-cu-methyl-a-(2-pyridyldithio) toluene)、N−スクシンイミジル4−(2−ピリジルジチオ)−ペンタノエート(SPP;N-succinimidyl 4-(2-pyridyldithio)-pentanoate)、スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシレート(SMCC又はMCC;succinimidyl 4-(N-maleimidomethyl) cyclohexane carboxylate)、スルホスクシンイミジル(4−ヨードアセチル)−アミノベンゾエート、4−スクシンイミジル−オキシカルボニル−α−(2−ピリジルジチオ)トルエン、スルホスクシンイミジル−6−(α−メチル−α−(ピリジルジチオール)−トルアミド)ヘキサノエート、N−スクシンイミジル−3−(−2−ピリジルジチオ)−プロピオネート(SPDP;N-succinimidyl-3-(-2-pyridyldithio)-proprionate)、スクシンイミジル6(3(−(−2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド)ヘキサノエート、スルホスクシンイミジル6(3(−(−2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド)ヘキサノエート、マレイミドカプロイル(MC;maleimidocaproyl)、マレイミドカプロイル−バリン−シトルリン−p−アミノベンジルオキシカルボニル(MC−vc−PAB;maleimidocaproyl-valine-citrulline-p-aminobenzyloxycarbonyl)、3−マレイミドベンゾエートN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS;3-maleimidobenzoic acid N-hydroxysuccinimide ester)、アルファ−アルキル誘導体、スルホNHS−ATMBA(スルホスクシンイミジルN−[3−(アセチルチオ)−3−メチルブチリル−ベータ−アラニン])、スルホジクロロフェノール、2−イミノチオラン、3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオニルヒドラジド、エルマン試薬、ジクロロトリアジン酸、及びS−(2−チオピリジル)−L−システインを含むがこれらに限定されない。
タンパク質性であれ、非タンパク質性であれ、適切なリンカーは、例えば、プロテアーゼ感受性リンカー、環境内酸化還元電位感受性リンカー、pH感受性リンカー、酸切断性リンカー、光切断性リンカー、及び/又は熱感受性リンカーを含みうる。
タンパク質性リンカーは、本発明の組換え融合細胞ターゲティング分子への組込みのために選び出されうる。本発明の組換え融合細胞ターゲティングタンパク質のために、リンカーは、典型的に、約2〜50アミノ酸残基、好ましくは、約5〜30アミノ酸残基を含む。一般に、タンパク質性リンカーは、例えば、トレオニン、プロリン、グルタミン、グリシン、及びアラニンなど、極性残基、非帯電残基、及び/又は帯電残基を伴うアミノ酸残基の大部分を含む。タンパク質性リンカーの非限定例は、アラニン−セリン−グリシン−グリシン−プロリン−グルタミン酸(ASGGPE(配列番号158))、バリン−メチオニン(VM)、アラニン−メチオニン(AM)、AM(G2-4S)xAM[ここで、Gは、グリシンであり、Sは、セリンであり、xは、1〜10の整数である](配列番号159)を含む。
タンパク質性リンカーは、所望の特性に基づき選択されうる。タンパク質性リンカーは、融合体の分子フォールディング、安定性、発現、可溶性、薬物動態特性、薬力学特性、及び/又は融合コンストラクトの文脈における、同じドメイン自体の活性と比較した、融合ドメインの活性のうちの、1つ又は2つ以上を最適化するなど、特異的特色を念頭に置く当業者により選び出されうる。例えば、タンパク質性リンカーは、可撓性、非可撓性、及び/又は切断性に基づき選択されうる。当業者は、リンカーを選び出す場合に、データベースと、リンカーデザイン用のソフトウェアツールとを使用しうる。ある特定のリンカーは、発現を最適化するように選び出されうる。ある特定のリンカーは、同一なポリペプチド若しくはタンパク質の間の分子間相互作用を促進して、ホモ多量体を形成するか、又は異なるポリペプチド若しくはタンパク質の間の分子間相互作用を促進して、ヘテロ多量体を形成するように選び出されうる。例えば、例えば、二量体及び他の高次多量体の形成と関連する相互作用など、本発明の細胞ターゲティング分子のポリペプチド構成要素の間の、所望される非共有結合的相互作用を可能とする、タンパク質性リンカーが選択されうる。
可撓性のタンパク質性リンカーは、12アミノ酸残基長より大型であり、例えば、グリシン、セリン、及びトレオニンなど、小型で非極性のアミノ酸残基、極性のアミノ酸残基、及び/又は親水性のアミノ酸残基に富むことが多い。可撓性のタンパク質性リンカーは、構成要素間の空間的分離を増大させる、及び/又は構成要素間の分子内相互作用を可能とするように選び出されうる。例えば、当業者には、多様な「GS」リンカーが、公知であり、例えば、(GxS)n(配列番号160)、(SxG)n(配列番号161)、(GGGGS)n(配列番号162)、及び(G)n[ここで、xは、1〜6であり、nは、1〜30である](配列番号163)など、場合によって、反復単位である、複数のグリシン、及び/又は1つ若しくは2つ以上のセリンから構成される。可撓性のタンパク質性リンカーの非限定例は、GKSSGSGSESKS(配列番号164)、EGKSSGSGSESKEF(配列番号165)、GSTSGSGKSSEGKG(配列番号166)、GSTSGSGKSSEGSGSTKG(配列番号167)、GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号96)、SRSSG(配列番号168)、及びSGSSC(配列番号169)を含む。
非可撓性のタンパク質性リンカーは、剛直なアルファ−螺旋構造であり、プロリン残基、及び/又は1つ若しくは2つ以上の、戦略的に位置させたプロリンに富むことが多い。非可撓性リンカーは、連結された構成要素間の、分子内相互作用を防止するように選び出されうる。
適切なリンカーは、例えば、切断及び/又は環境特異的不安定性などのために、インビボにおける、構成要素の分離を可能とするように選び出されうる。インビボにおいて切断性のタンパク質性リンカーは、しばしば、生物内又はある特定の細胞型の内部の、特異的部位において、タンパク質分解性プロセシング、及び/又は還元的環境により、連結を解除することが可能である。インビボにおいて切断性のタンパク質性リンカーは、しばしば、プロテアーゼ感受性モチーフ、及び/又は1つ若しくは2つ以上のシステイン対により形成されるジスルフィド結合を含む。インビボにおいて切断性のタンパク質性リンカーは、生物内のある特定の位置、細胞内のある特定の区画だけに存在するプロテアーゼに感受性である、及び/又はある特定の生理学的状態又は病理学的状態(例えば、異常に高レベルを示すプロテアーゼ、ある特定の疾患部位において過剰発現されるプロテアーゼ、及び病原性微生物により特異的に発現されるプロテアーゼを伴う生理学的状態又は病理学的状態など)下だけで活性となるようにデザインされうる。例えば、例えば、R−x−x−Rモチーフ、及びAMGRSGGGCAGNRVGSSLSCGGLNLQAM(配列番号170)など、細胞内だけに存在するプロテアーゼ、特異的細胞型だけに存在するプロテアーゼ、及びがん又は炎症のような病理学的状態下だけに存在するプロテアーゼにより切断される、当技術分野で公知のタンパク質性リンカーが存在する。
本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、標的細胞内に存在するプロテアーゼによる切断をもたらすように、1つ又は2つ以上のプロテアーゼ感受性部位を含むリンカーが使用されうる。本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、脊椎動物への投与の後における、望ましくない毒性を低減するように、切断性ではないリンカーが使用されうる。
適切なリンカーは、タンパク質性であれ、非タンパク質性であれ、例えば、プロテアーゼ感受性リンカー、環境内酸化還元電位感受性リンカー、pH感受性リンカー、酸切断性リンカー、光切断性リンカー、及び/又は熱感受性リンカーを含みうる(例えば、Doronina S et al., Bioconjug Chem 17: 114-24 (2003); Saito G et al., Adv Drug Deliv Rev 55: 199-215 (2003); Jeffrey S et al., J Med Chem 48: 1344-58 (2005); Sanderson R et al., Clin Cancer Res 11: 843-52 (2005); Erickson H et al., Cancer Res 66: 4426-33 (2006); Chen X et al., Adv Drug Deliv Rev 65: 1357-69 (2013)を参照されたい)。適切な切断性リンカーは、当技術分野で公知の切断性基を含むリンカーを含みうる。
適切なリンカーは、pH感受性リンカーを含みうる。例えば、ある特定の適切なリンカーは、標的細胞の細胞内区画の内部における解離をもたらすように、低pH環境における、それらの不安定性について選び出されうる(例えば、van Der Velden V et al., Blood 97: 3197-204 (2001); Ulbrich K, Subr V, Adv Drug Deliv Rev 56: 1023-50 (2004)を参照されたい)。例えば、1つ又は2つ以上の、トリチル基、誘導体化トリチル基、ビスマレイミドエトキシプロパン基、アジピン酸ジヒドラジド基、及び/又は酸不安定性トランスフェリン基を含むリンカーは、特異的pH範囲を伴う環境において、本発明の細胞ターゲティング分子の構成要素、例えば、ポリペプチド構成要素の放出をもたらしうる。例えば、腫瘍組織内のpHは、健常組織内より低値であるなど、組織間の生理学的pH差に対応するpH範囲内で切断される、ある特定のリンカーが選び出されうる。
光切断性リンカーとは、可視範囲内の光など、ある特定の波長範囲の電磁放射線へと曝露されると切断されるリンカーである。光切断性リンカーは、ある特定の波長の光への曝露時に、本発明の細胞ターゲティング分子の構成要素、例えば、ポリペプチド構成要素を放出するのに使用されうる。光切断性リンカーの非限定例は、システインのための光切断性保護基としてのニトロベンジル基、ニトロベンジルオキシカルボニルクロリド架橋リンカー、ヒドロキシプロピルメタクリルアミドコポリマー、グリシンコポリマー、フルオレセインコポリマー、及びメチルローダミンコポリマーを含む。光切断性リンカーは、光ファイバーを使用して、光へと曝露されうる、疾患、障害、及び状態を治療するためにデザインされる、本発明の細胞ターゲティング分子を形成するように、構成要素を連結する場合に、特に使用される。
本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、細胞をターゲティングする結合性領域は、共有結合的連結及び非共有結合的連結の両方を含む、当業者に公知の、任意の数の手段を使用して、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドへと連結される。
本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、分子は、重鎖可変(VH)ドメインと、軽鎖可変(VL)ドメインとを接続するリンカーを伴うscFvである、結合性領域を含む。例えば、15残基の(Gly4Ser)3ペプチド(配列番号171)など、この目的に適切な、当技術分野で公知のリンカーが、多数存在する。非共有結合的多価構造の形成に使用されうる、適切なscFvリンカーは、GGS、(配列番号172)、GGGGS(配列番号94)、GGGGSGGG(配列番号173)、GGSGGGG(配列番号174)、GSTSGGGSGGGSGGGGSS(配列番号175)、及びGSTSGSGKPGSSEGSTKG(配列番号176)を含む。
本発明の細胞ターゲティング分子の構成要素を連結するために適切な方法は、接合が、細胞をターゲティングする結合性領域の結合能、志賀毒素エフェクターポリペプチドの構成要素の、細胞への内部化、及び/又は、該当する場合、本明細書で記載されるアッセイを含む、適切なアッセイにより測定される、所望の志賀毒素のエフェクター機能(複数可)を、実質的に損なわない限りにおいて、このような連結を達するための、現在、当技術分野で公知である、任意の方法による方法でありうる。
細胞ターゲティング分子の構成要素、例えば、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド及び/又は免疫グロブリン型HER2結合性領域は、さらなる構成要素、例えば、さらなる外因性素材を連結するために適切な接合部分をもたらすように改変されうる(例えば、WO2018/106895を参照されたい)。
本発明の細胞ターゲティング分子の目的では、具体的な順序又は配向性は、具体的に言及されない限りにおいて、構成要素:志賀毒素エフェクターポリペプチド(複数可)、結合性領域(複数可)、及び互い又は全細胞ターゲティング分子との関係で、任意であってもよいリンカー(複数可)について固定されない。本発明の細胞ターゲティング分子の構成要素は、結合性領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチドの所望の活性(複数可)が、消失しないという条件で、いかなる順序でも配置されうる。
IV.本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞ターゲティング分子の構造的変動の例
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、切断型志賀毒素Aサブユニットを含みうるか、これらからなりうるか、又はこれらから本質的になりうる。志賀毒素Aサブユニットの切断は、例えば、触媒活性及び細胞毒性などの志賀毒素エフェクター機能に影響を及ぼさずに、全エピトープ(複数可)及び/若しくは全エピトープ領域(複数可)、B細胞エピトープ、CD4+ T細胞エピトープ、並びに/又はフーリン切断部位の欠失を結果としてもたらしうるであろう。完全な酵素活性を示すことが示された、最小の志賀毒素Aサブユニット断片は、Slt1Aの残基1〜239から構成されるポリペプチドであった(LaPointe P et al., J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。著明な酵素活性を示すことが示された、最小の志賀毒素Aサブユニット断片は、StxAの残基75〜247から構成されるポリペプチドであった(Al-Jaufy A et al., Infect Immun 62: 956-60 (1994))。
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは一般に、全長志賀毒素Aサブユニットより小型であるが、本発明の細胞ターゲティング分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド領域は、アミノ酸77〜239位のポリペプチド領域(SLT−1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)、又は志賀毒素1のAサブユニットのバリアント(例えば、配列番号4〜6)、又は志賀毒素ファミリーのメンバーの他のAサブユニット内の同等なポリペプチド領域(例えば、配列番号3及び7〜18の77〜238)を維持することが好ましい。例えば、本発明の分子についての、ある特定の実施形態では、SLT−1Aに由来する、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸75〜251、配列番号1の1〜241、配列番号1の1〜251、若しくは配列番号1のアミノ酸1〜261を含みうるか、これらからなりうるか、又はこれらから本質的になることが可能であり、内因性エピトープ及び/若しくはエピトープ領域において、野生型志賀毒素Aサブユニットと比べて、変異されるか、若しくは欠失された、少なくとも1つのアミノ酸残基をさらに含む、並びに/又は志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端において、破壊されたフーリン切断モチーフ領域が存在する。同様に、志賀毒素1のAサブユニットのバリアント(Stx1cA、Stx1dA、及びStx1eAなど)に由来する、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域は、配列番号4〜6のアミノ酸75〜251、配列番号4〜6の1〜241、又は 配列番号4〜6の1〜251を含みうるか、これらから本質的になりうるか、又はこれらからなることが可能であり、内因性エピトープ及び/若しくはエピトープ領域において、野生型志賀毒素Aサブユニットと比べて、変異されるか、若しくは欠失された、少なくとも1つのアミノ酸残基をさらに含む、並びに/又は志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端において、破壊されたフーリン切断モチーフ領域が存在する。加えて、SLT−2に由来する、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域は、配列番号3のアミノ酸75〜251、配列番号3の1〜241、配列番号3の1〜251、若しくは配列番号3のアミノ酸1〜261を含みうるか、これらからなりうるか、又はこれらから本質的になることが可能であり、内因性エピトープ及び/若しくはエピトープ領域において、野生型志賀毒素Aサブユニットと比べて、変異されるか、若しくは欠失された、少なくとも1つのアミノ酸残基をさらに含む、並びに/又は志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端において、破壊されたフーリン切断モチーフ領域が存在する。同様に、志賀様毒素2のAサブユニットのバリアント(Stx2cAバリアント1、Stx2cAバリアント2、Stx2cAバリアント3、Stx2cAバリアント4、Stx2cAバリアント5、Stx2cAバリアント6、Stx2dAバリアント1、Stx2dAバリアント2、Stx2dAバリアント3、Stx2eAバリアント1、Stx2eAバリアント2、及びStx2fAなど)に由来する、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域は、配列番号7〜18のアミノ酸1〜241を含みうるか、これらから本質的になりうるか、又はこれらからなることが可能であり、内因性エピトープ及び/若しくはエピトープ領域において、野生型志賀毒素Aサブユニットと比べて、変異されるか、若しくは欠失された、少なくとも1つのアミノ酸残基をさらに含む、並びに/又は志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端において、破壊されたフーリン切断モチーフ領域が存在する。
ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(i)配列番号1〜6のうちのいずれか1つのアミノ酸75〜251;(ii)配列番号1〜18のうちのいずれか1つのアミノ酸1〜241;(iii)配列番号1〜6のうちのいずれか1つのアミノ酸1〜251;及び/又は(iv)配列番号1〜3のうちのいずれか1つのアミノ酸1〜261を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(i)配列番号1〜6のうちのいずれか1つのアミノ酸75〜251;(ii)配列番号1〜18のうちのいずれか1つのアミノ酸1〜241;(iii)配列番号1〜6のうちのいずれか1つのアミノ酸1〜251;及び/又は(iv)配列番号1〜3のうちのいずれか1つのアミノ酸1〜261を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなり、内因性エピトープ及び/若しくはエピトープ領域において、野生型志賀毒素Aサブユニットと比べて、少なくとも1つのアミノ酸残基が、変異されるか、若しくは欠失される、並びに/又は志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端において、破壊されたフーリン切断モチーフ領域が存在する。
本発明は、志賀毒素エフェクターポリペプチドのバリアント、及び本発明の細胞ターゲティング分子をさらに提供し、この場合、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、天然に存在する志賀毒素Aサブユニットと、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、若しくは41以上だけのアミノ酸残基、又は最大でこの数のアミノ酸残基(しかし、少なくとも85%、90%、95%、99%、又は99%以上のアミノ酸配列同一性を保持するアミノ酸残基数以下)異なる。したがって、志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来する本発明の分子は、天然に存在する志賀毒素Aサブユニットに対して、少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99%以上のアミノ酸配列同一性が維持される限りにおいて、元の配列に対する付加、欠失、切断、又は他の変化を含むことが可能であり、この場合、内因性エピトープ及び/若しくはエピトープ領域において、野生型志賀毒素Aサブユニットと比べて、少なくとも1つのアミノ酸残基が、変異されるか、若しくは欠失される、並びに/又は志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端において、破壊されたフーリン切断モチーフ領域が存在する。
したがって、ある特定の実施形態では、本発明の分子の、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、SLT−1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)、志賀毒素1のAサブユニットのバリアント(例えば、配列番号4〜6)、SLT−2A(配列番号3)、及び/又は志賀様毒素2のAサブユニットのバリアント(例えば、配列番号7〜18)など、天然に存在する志賀毒素Aサブユニット(又はこれらの断片)に対する、少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.7%の全配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これからなるか、又はこれから本質的になり、この場合、内因性エピトープ及び/若しくはエピトープ領域において、野生型志賀毒素Aサブユニットと比べて、少なくとも1つのアミノ酸残基が、変異されるか、若しくは欠失される、並びに/又は志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端において、破壊されたフーリン切断モチーフ領域が存在する。ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(i)配列番号1〜6のうちのいずれか1つのアミノ酸75〜251;(ii)配列番号1〜18のうちのいずれか1つのアミノ酸1〜241;(iii)配列番号1〜6のうちのいずれか1つのアミノ酸1〜251;及び(iv)配列番号1〜3のうちのいずれか1つのアミノ酸1〜261とから選択される野生型志賀毒素Aサブユニットのアミノ酸配列に対して、少なくとも85%同一(少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.7%同一など)であるアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(i)配列番号1〜3のうちのいずれか1つのアミノ酸75〜251;(ii)配列番号1〜3のうちのいずれか1つのアミノ酸1〜241;(iii)配列番号1〜3のうちのいずれか1つのアミノ酸1〜251;又は(iv)配列番号1〜3のうちのいずれか1つのアミノ酸1〜261とから選択される野生型志賀毒素Aサブユニットのアミノ酸配列に対して、少なくとも85%同一(少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.7%同一など)であるアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(i)配列番号1のアミノ酸75〜251;(ii)配列番号1のアミノ酸1〜241;(iii)配列番号1のアミノ酸1〜251;又は(iv)配列番号1のアミノ酸1〜261とから選択される野生型志賀毒素Aサブユニットのアミノ酸配列に対して、少なくとも85%同一(少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.7%同一など)であるアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(i)配列番号2のアミノ酸75〜251;(ii)配列番号2のアミノ酸1〜241;(iii)配列番号2のアミノ酸1〜251;又は(iv)配列番号2のアミノ酸1〜261とから選択される野生型志賀毒素Aサブユニットのアミノ酸配列に対して、少なくとも85%同一(少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.7%同一など)であるアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(i)配列番号3のアミノ酸75〜251;(ii)配列番号3のアミノ酸1〜241;(iii)配列番号3のアミノ酸1〜251;又は(iv)配列番号3のアミノ酸1〜261とから選択される野生型志賀毒素Aサブユニットのアミノ酸配列に対して、少なくとも85%同一(少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.7%同一など)であるアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。
志賀毒素Aサブユニットの全長形又は切断形は、本発明の分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド領域を含んでもよく、この場合、志賀毒素由来ポリペプチドは、天然に存在する志賀毒素と比較した、1つ又は2つ以上の変異(例えば、置換、欠失、挿入、又は逆位)を含む。本発明のある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、宿主細胞の形質転換、トランスフェクション、感染、若しくは導入の周知の方法により、又は志賀毒素エフェクターポリペプチドと連結された、細胞をターゲティングする結合性領域により媒介される内部化により、細胞への侵入の後に、細胞毒性を保持するのに十分な、天然に存在する(又は野生型)志賀毒素Aサブユニットに対する配列同一性を有することが好ましい。志賀毒素Aサブユニット内の酵素活性及び/又は細胞毒性に最も重要な残基は、他の残基位置の中でも、以下の残基位置:アスパラギン75、チロシン77、グルタミン酸167、アルギニン170、及びアルギニン176へとマッピングされている(Di R et al., Toxicon 57: 525-39 (2011))。本発明の実施形態のうちのいずれか1つでは、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、必ずしもそうではないが、好ましくは、StxA内、SLT−1A内の、77、167、170、及び176位において見出される位置、又は細胞毒性活性に典型的に要求される、他の志賀毒素ファミリーのメンバー内の、同等な、保存された位置などの位置における、1つ又は2つ以上の保存されたアミノ酸を維持しうる。本発明の細胞毒性分子が、細胞死を引き起こす能力、例えば、その細胞毒性は、当技術分野で周知の多数のアッセイのうちの、任意の1つ又は2つ以上を使用して測定されうる。
A.脱免疫化された、志賀毒素エフェクターポリペプチドの例
ある特定の実施形態では、本発明の、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドは、2つ又は3つ以上の変異を有する、切断型志賀毒素Aサブユニットから本質的になりうる。志賀毒素Aサブユニットの切断は、例えば、触媒活性及び細胞毒性などの志賀毒素エフェクター機能に影響を及ぼさずに、全エピトープ(複数可)及び/若しくは全エピトープ領域(複数可)、B細胞エピトープ、CD4+ T細胞エピトープ、並びに/又はフーリン切断部位の欠失を結果としてもたらしうるであろう。SLT−1A、StxA、又はSLT−2Aのカルボキシ末端の、アミノ酸 1〜251への切断は、2つの、予測されるB細胞エピトープ領域、2つの、予測されるCD4陽性(CD4+)T細胞エピトープ、及び予測される、不連続B細胞エピトープを除去する。これらのエピトープはまた、配列番号4〜18に示された、志賀毒素エフェクターポリペプチドにも存在しない。配列番号4〜6に示された、志賀毒素1のAサブユニットエフェクターポリペプチドは、251位において切断された、野生型志賀毒素Aサブユニットのバリアントの断片に関し、配列番号7〜18に示された、志賀毒素2のAサブユニットエフェクターポリペプチドは、250位において切断された、志賀様毒素2のAサブユニットのバリアントの断片に関する。SLT−1A、StxA、又はSLT−2Aのアミノ末端の、75〜293への切断は、少なくとも3つの、予測されるB細胞エピトープ領域、及び3つの、予測されるCD4+ T細胞エピトープを除去する。SLT−1A、StxA、又はSLT−2Aのアミノ末端及びカルボキシ末端の両方の、75〜251への切断は、少なくとも5つの、予測されるB細胞エピトープ領域、4つの、推定CD4+ T細胞エピトープ、及び1つの、予測される、不連続B細胞エピトープを欠失させる。
ある特定の実施形態では、本発明の、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドは、提示された、内因性のB細胞エピトープ領域内、及び/又はCD4+ T細胞エピトープ領域内の、少なくとも1つの変異(野生型志賀毒素ポリペプチドと比べた)、例えば、欠失、挿入、逆位、又は置換を伴う、全長又は切断型の志賀毒素Aサブユニットを含みうるか、これらからなりうるか、又はこれらから本質的になりうる。ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、内因性のB細胞エピトープ領域内及び/又はCD4+ T細胞エピトープ領域内の、少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失を含む、変異(野生型志賀毒素ポリペプチドと比べた)を含む破壊を含む。ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、内因性のB細胞エピトープ領域内及び/又はCD4+ T細胞エピトープ領域内の、少なくとも1つのアミノ酸残基の挿入を含む破壊を含む。ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの反転されたアミノ酸残基が、内因性のB細胞エピトープ領域内及び/又はCD4+ T細胞エピトープ領域内に存在する、アミノ酸残基の逆位を含む破壊を含む。ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、例えば、アミノ酸置換、非標準アミノ酸、及び/又は側鎖が化学修飾されたアミノ酸残基へのアミノ酸置換などの変異(野生型志賀毒素ポリペプチドと比べた)を含む破壊を含む。本発明における使用に適切な、脱免疫化された、志賀毒素エフェクター亜領域の非限定例については、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2015/113007号パンフレット、及び国際公開第2015/191764号パンフレットにおいて記載されている。アミノ酸置換を含む、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドの、多数の非限定例は、実施例において提示される。
他の実施形態では、本発明の、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドは、全長志賀毒素Aサブユニットより短い、切断型志賀毒素Aサブユニットを含み、この場合、少なくとも1つのアミノ酸残基は、天然位置の、B細胞エピトープ領域内、及び/又はCD4+ T細胞エピトープ領域内で破壊される。
脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドを創出するために、提示されるエピトープ領域内の、任意のアミノ酸残基を、多様な手段により修飾することは、例えば、野生型志賀毒素ポリペプチドと比べた、側鎖の、欠失、挿入、逆位、再配列、置換、及び化学修飾を表す修飾など、原理的に、エピトープの破壊を結果としてもたらしうる。しかし、ある特定のアミノ酸残基の修飾、及びある特定のアミノ酸修飾の使用は、ある特定のレベルの志賀毒素のエフェクター機能(複数可)を維持しながら、抗原性及び/又は免疫原性を低減することに成功する可能性が高い。例えば、末端の切断及び内部のアミノ酸置換は、これらの種類の修飾が、志賀毒素エフェクターポリペプチド内の、アミノ酸残基の全体的な間隔を維持するために好ましく、したがって、志賀毒素エフェクターポリペプチドの構造及び機能を維持する可能性が高い。
本発明のある特定の実施形態の中には、SLT−1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)、及び/又はSLT−2A(配列番号3)のアミノ酸75〜251を含むか、これらからなるか、又はこれらから本質的になる、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドがあり、この場合、少なくとも1つのアミノ酸残基は、天然位置のエピトープ領域において破壊される。ある特定の、他の実施形態の中には、SLT−1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)、及び/又はSLT−2A(配列番号3)のアミノ酸1〜241を含むか、又はこれらから本質的になる、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドがあり、この場合、少なくとも1つのアミノ酸残基は、天然位置のエピトープ領域において破壊される。さらなる実施形態は、SLT−1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)、及び/又はSLT−2A(配列番号3)のアミノ酸1〜251を含むか、これらからなるか、又はこれらから本質的になる、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドであり、この場合、少なくとも1つのアミノ酸残基は、提示された天然位置のエピトープ領域において破壊される。さらなる実施形態は、SLT−1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)、及び/又はSLT−2A(配列番号3)のアミノ酸1〜261を含む、志賀毒素エフェクターポリペプチドであり、この場合、少なくとも1つのアミノ酸残基は、天然位置のエピトープ領域において破壊される。本発明のある特定の実施形態の中には、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号1〜6のうちのいずれか1つのアミノ酸75〜251を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなり、この場合、少なくとも1つのアミノ酸残基は、天然位置のエピトープ領域において破壊される。ある特定の、他の実施形態の中には、配列番号1〜18のアミノ酸1〜241を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドがあり、この場合、少なくとも1つのアミノ酸残基は、天然位置のエピトープ領域において破壊される。さらなる実施形態は、配列番号1〜6のアミノ酸1〜251を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドであり、この場合、少なくとも1つのアミノ酸残基は、提示された天然位置のエピトープ領域において破壊される。さらなる実施形態は、配列番号1〜3のアミノ酸1〜261を含む、志賀毒素エフェクターポリペプチドであり、この場合、少なくとも1つのアミノ酸残基は、天然位置のエピトープ領域において破壊される。ある特定の実施形態では、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号1〜6のうちのいずれか1つのアミノ酸75〜251を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなり、この場合、少なくとも1つのアミノ酸残基は、天然位置のエピトープ領域において破壊される。ある特定のさらなる実施形態の中には、配列番号1〜6のアミノ酸1〜241を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドがあり、この場合、少なくとも1つのアミノ酸残基は、天然位置のエピトープ領域において破壊される。さらなる実施形態は、配列番号1〜6のアミノ酸1〜251を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドであり、この場合、少なくとも1つのアミノ酸残基は、提示された天然位置のエピトープ領域において破壊される。さらなる実施形態は、配列番号1〜3のアミノ酸1〜261を含む、志賀毒素エフェクターポリペプチドであり、この場合、少なくとも1つのアミノ酸残基は、天然位置のエピトープ領域において破壊される。
本発明の脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドを創出するのに使用されうる、多数の、多岐にわたる、内部のアミノ酸置換が存在する。エピトープ領域内で使用することが可能な置換アミノ酸のうちで、以下の置換アミノ酸残基:G、D、E、S、T、R、K、及びHは、エピトープの抗原性及び/又は免疫原性を低減する可能性が最も高いことが予測される。グリシンを除き、これらのアミノ酸残基は全て、極性残基及び/又は帯電残基として分類されうる。置換することが可能なアミノ酸のうちで、以下のアミノ酸A、G、V、L、I、P、C、M、F、S、D、N、Q、H、及びKは、置換されるアミノ酸に応じて、著明レベルの志賀毒素のエフェクター機能(複数可)の保持をもたらしながら、抗原性及び/又は免疫原性を低減する可能性が最も高いことが予測される。一般に、置換は、極性アミノ酸残基及び/又は帯電アミノ酸残基を、非極性かつ非帯電の残基へと変化させるべきである(例えば、国際公開第2015/113007号パンフレットを参照されたい)。加えて、アミノ酸残基のR基官能側鎖の全体のサイズ及び/又は全長を低減することも、エピトープ破壊に有益でありうる(例えば、国際公開第2015/113007号パンフレットを参照されたい)。しかし、エピトープ破壊を付与する可能性が最も高い置換についての、これらの一般的検討事項にもかかわらず、目的は、著明な志賀毒素のエフェクター機能(複数可)を保存することであるため、置換アミノ酸は、例えば、極性残基及び/又は帯電残基を置換する、類似するサイズの、非極性及び/又は非帯電残基など、置換されるアミノ酸に相似する場合に、志賀毒素のエフェクター機能(複数可)を保存する可能性が高くなりうるであろう。
下記の実施例、及び国際公開第2015/113007号パンフレットでは、多くの変異が、多様な志賀毒素エフェクターポリペプチド、及び細胞ターゲティング分子の、志賀毒素のエフェクター機能に対する効果(複数可)について実験により調べられている。表Bは、単独の、又は1つ若しくは2つ以上の他の置換と組み合わせたアミノ酸置換が、強力なレベルの志賀毒素のエフェクター機能(複数可)の呈示を妨げなかった、国際公開第2015/113007号パンフレット及び国際公開第2016/196344号パンフレットにおいて記載されている結果についてまとめる。表Bは、国際公開第2016/196344号パンフレットにおいて記載されている、エピトープ領域の番号付けスキームを使用する。
国際公開第2015/113007号パンフレット及び国際公開第2016/196344号パンフレットにおける、実験による証拠に基づき、志賀毒素のAサブユニット内の、ある特定のアミノ酸位置は、著明な志賀毒素エフェクター機能を、なおも保持しながら、エピトープの破壊を許容することが予測される。例えば、以下の天然に存在する位置:配列番号1又は配列番号2の1;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の4;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の8;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の9;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の11;配列番号1又は配列番号2の33;配列番号1又は配列番号2の43;配列番号1又は配列番号2の44;配列番号1又は配列番号2の45;配列番号1又は配列番号2の46;配列番号1又は配列番号2の47;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の48;配列番号1又は配列番号2の49;配列番号1又は配列番号2の50;配列番号1又は配列番号2の51;配列番号1又は配列番号2の53;配列番号1又は配列番号2の54;配列番号1又は配列番号2の55;配列番号1又は配列番号2の56;配列番号1又は配列番号2の57;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の58;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の59;配列番号1又は配列番号2の60;配列番号1又は配列番号2の61;配列番号1又は配列番号2の62;配列番号1又は配列番号2の84;配列番号1又は配列番号2の88;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の94;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の96;配列番号1又は配列番号2の104;配列番号1又は配列番号2の105;配列番号1又は配列番号2の107;配列番号1又は配列番号2の108;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の109;配列番号1又は配列番号2の110;配列番号1又は配列番号2の111;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の112;配列番号1又は配列番号2の141;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の147;配列番号1又は配列番号2の154;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の179;配列番号1又は配列番号2の180;配列番号1又は配列番号2の181;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の183;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の184;配列番号1又は配列番号2の185;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の186;配列番号1又は配列番号2の187;配列番号1又は配列番号2の188;配列番号1又は配列番号2の189;配列番号1又は配列番号2の198;配列番号3の204;配列番号1又は配列番号2の205;配列番号3の241;配列番号1又は配列番号2の242;配列番号1又は配列番号2の247;配列番号3の247;配列番号1又は配列番号2の248;配列番号3の250;配列番号1又は配列番号2の251;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の264;配列番号1又は配列番号2の265;及び配列番号1又は配列番号2の286は、細胞毒性など、志賀毒素のエフェクター機能(複数可)を保持しながら、単独のアミノ酸置換、又は組合せにおけるアミノ酸置換を許容する。
国際公開第2015/113007号パンフレット及び国際公開第2016/196344号パンフレットにおける実験データは、志賀毒素エフェクターポリペプチドが、例えば、前述の切断及び置換を許容する位置の新たな組合せのほか、類縁の志賀毒素Aサブユニット内の、同一の位置又は保存された位置における新たな置換など、著明な志賀毒素のエフェクター機能を示す能力を保持しながら、志賀毒素エフェクターポリペプチドの抗原性及び/又は免疫原性を低減しうる、他の、エピトープを破壊する置換、及びエピトープを破壊する置換の組合せを指示する。
本明細書における被験置換のうちの、保存的官能基を有するアミノ酸残基への、他のアミノ酸置換も、著明な志賀毒素のエフェクター機能を温存しながら、抗原性及び/又は免疫原性を低減しうることが予測可能である。例えば、K1A、K1M、T4I、D6R、S8I、T8V、T9I、S9I、K11A、K11H、T12K、S33I、S33C、S43N、G44L、S45V、S45I、T45V、T45I、G46P、D47M、D47G、N48V、N48F、L49A、F50T、A51V、D53A、D53N、D53G、V54L、V54I、R55A、R55V、R55L、G56P、I57F、I57M、D58A、D58V、D58F、P59A、P59F、E60I、E60T、E60R、E61A、E61V、E61L、G62A、R84A、V88A、D94A、S96I、T104N、A105L、T107P、L108M、S109V、T109V、G110A、D111T、S112V、D141A、G147A、V154A、R179A、T180G、T181I、D183A、D183G、D184A、D184A、D184F、L185V、L185D、S186A、S186F、G187A、G187T、R188A、R188L、S189A、D198A、R204A、R205A、C242S、R247A、S247I、Y247A、R248A、R250A、R251A、若しくはD264A、G264A、T286A、及び/又はT286Iのうちのいずれかと類似することが当業者に公知である、他の置換は、少なくとも1つの、志賀毒素のエフェクター機能を維持しながら、内因性エピトープを破壊しうる。特に、K1A、K1M、T4I、S8I、T8V、T9I、S9I、K11A、K11H、S33I、S33C、S43N、G44L、S45V、S45I、T45V、T45I、G46P、D47M、N48V、N48F、L49A、A51V、D53A、D53N、V54L、V54I、R55A、R55V、R55L、G56P、I57F、I57M、D58A、D58V、D58F、P59A、E60I、E60T、E61A、E61V、E61L、G62A、R84A、V88A、D94A、S96I、T104N、T107P、L108M、S109V、T109V、G110A、D111T、S112V、D141A、G147A、V154A、R179A、T180G、T181I、D183A、D183G、D184A、D184F、L185V、S186A、S186F、G187A、R188A、R188L、S189A、D198A、R204A、R205A、C242S、S247I、Y247A、R247A、R248A、R250A、R251A、D264A、G264A、T286A、及びT286Iと類似する、保存的アミノ酸残基へのアミノ酸置換は、同じ効果又は同様の効果を及ぼしうる。ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、例えば、K1からG、V、L、I、F、及びH;T4からA、G、V、L、F、M、及びS;S8からA、G、V、L、F、及びM;T8からA、G、V、I、L、F、及びM;T9からA、G、L、F、M、及びS;S9からA、G、L、I、F、及びM;K11からG、V、L、I、F、及びM;S33からA、G、V、L、F、及びM;S43からA、G、V、L、I、F、及びM;S45からA、G、L、F、及びM;T45からA、G、L、F、及びM;D47からA、V、L、I、F、S、及びQ;N48からA、G、L、及びM;L49からG;Y49からA;D53からV、L、I、F、S、及びQ;R55からG、I、F、M、Q、S、K、及びH;D58からG、L、I、S、及びQ;P59からG;E60からA、G、V、L、F、S、Q、N、D、及びM;E61からG、I、F、S、Q、N、D、M、及びR;R84からG、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;V88からG;I88からG;D94からG、V、L、I、F、S、及びQ;S96からA、G、V、L、F、及びM;T107からA、G、V、L、I、F、M、及びS;S107からA、G、V、L、I、F、及びM;S109からA、G、I、L、F、及びM;T109からA、G、I、L、F、M、及びS;S112からA、G、L、I、F、及びM;D141からV、L、I、F、S、及びQ;V154からG;R179からG、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;T180からA、V、L、I、F、M、及びS;T181からA、G、V、L、F、M、及びS;D183からV、L、I、F、S、及びQ;D184からG、V、L、I、S、及びQ;S186からG、V、I、L、及びM;R188からG、V、I、F、M、Q、S、K、及びH;S189からG、V、I、L、F、及びM;D197からV、L、I、F、S、及びQ;D198からA、V、L、I、F、S、及びQ;R204からG、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;R205からG、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;S247からA、G、V、I、L、F、及びM;Y247からA、G、V、L、I、F、及びM;R247からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;R248からG、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;R250からG、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;R251からG、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;D264からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;並びにT286からA、G、V、L、I、F、M、及びSなど、実験による被験アミノ酸への、類似する保存的アミノ酸置換を含みうる。
同様に、電荷、極性を除去するアミノ酸置換、及び/又は側鎖長を短縮するアミノ酸置換は、少なくとも1つの、志賀毒素のエフェクター機能を維持しながら、エピトープを破壊しうる。ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、例えば、以下の群:A、G、V、L、I、P、C、M、F、S、D、N、Q、H、又はKから選択される、適切なアミノ酸で、位置:配列番号1又は配列番号2の1;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の4;配列番号1又は配列番号2の6;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の8;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の9;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の11;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の12;配列番号1又は配列番号2の33;配列番号1又は配列番号2の43;配列番号1又は配列番号2の44;配列番号1又は配列番号2の45;配列番号1又は配列番号2の46;配列番号1又は配列番号2の47;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の48;配列番号1又は配列番号2の49;配列番号1又は配列番号2の50;配列番号1又は配列番号2の51;配列番号1又は配列番号2の53;配列番号1又は配列番号2の54;配列番号1又は配列番号2の55;配列番号1又は配列番号2の56;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の57;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の58;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の59;配列番号1又は配列番号2の60;配列番号1又は配列番号2の61;配列番号1又は配列番号2の62;配列番号1又は配列番号2の84;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の88;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の94;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の96;配列番号1又は配列番号2の104;配列番号1又は配列番号2の105;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の107;配列番号1又は配列番号2の108;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の109;配列番号1又は配列番号2の110;配列番号1又は配列番号2の111;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の112;配列番号1又は配列番号2の141;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の147;配列番号1又は配列番号2の154;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の179;配列番号1又は配列番号2の180;配列番号1又は配列番号2の181;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の183;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の184;配列番号1又は配列番号2の185;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の186;配列番号1又は配列番号2の187;配列番号1又は配列番号2の188;配列番号1又は配列番号2の189;配列番号3の197;配列番号1又は配列番号2の198;配列番号3の204;配列番号1又は配列番号2の205;配列番号3の241;配列番号1又は配列番号2の242;配列番号1又は配列番号2の247;配列番号3の247;配列番号1又は配列番号2の248;配列番号3の250;配列番号1又は配列番号2の251;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の264;配列番号1又は配列番号2の265;及び配列番号1又は配列番号2の286におけるアミノ酸残基を置換することなど、側鎖電荷が除去されるような置換、極性が除去されるような置換、及び/又は側鎖長さが短縮されるような置換により破壊される、1つ又は2つ以上のエピトープを含みうる。ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:K1からA、G、V、L、I、F、M、及びH;T4からA、G、V、L、I、F、M、及びS;D6からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;S8からA、G、V、I、L、F、及びM;T8からA、G、V、I、L、F、M、及びS;T9からA、G、V、I、L、F、M、及びS;S9からA、G、V、L、I、F、及びM;K11からA、G、V、L、I、F、M、及びH;T12からA、G、V、I、L、F、M、及びS;S33からA、G、V、L、I、F、及びM;S43からA、G、V、L、I、F、及びM;G44からA、及びL;S45からA、G、V、L、I、F、及びM;T45からA、G、V、L、I、F、及びM;G46からA、及びP;D47からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;N48からA、G、V、L、及びM;L49からA又はG;F50;A51からV;D53からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;V54からA、G、及びL;R55からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;G56からA、及びP;I57からA、G、M、及びF;L57からA、G、M、及びF;D58からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;P59からA、G、及びF;E60からA、G、V、L、I、F、S、Q、N、D、M、及びR;E61からA、G、V、L、I、F、S、Q、N、D、M、及びR;G62からA;D94からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;R84からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;V88からA、及びG;I88からA、G、及びV;D94;S96からA、G、V、I、L、F、及びM;T104からA、G、V、I、L、F、M、及びS;A105からL;T107からA、G、V、I、L、F、M、及びS;S107からA、G、V、L、I、F、及びM;L108からA、G、及びM;S109からA、G、V、I、L、F、及びM;T109からA、G、V、I、L、F、M、及びS;G110からA;D111からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;S112からA、G、V、L、I、F、及びM;D141からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;G147からA;V154からA、及びG;R179からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;T180からA、G、V、L、I、F、M、及びS;T181からA、G、V、L、I、F、M、及びS;D183からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;D184からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;L185からA、G、及びV;S186からA、G、V、I、L、F、及びM;G187からA;R188からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;S189からA、G、V、I、L、F、及びM;D197からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;D198からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;R204からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;R205からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;C242からA、G、V、及びS;S247からA、G、V、I、L、F、及びM;Y247からA、G、V、L、I、F、及びM;R247からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;R248からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;R250からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;R251からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;C262からA、G、V、及びS;D264からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;G264からA;並びにT286からA、G、V、L、I、F、M、及びSのうちの、1つ又は2つ以上を含みうる。
加えて、著明な志賀毒素のエフェクター機能を保持しながら、エピトープを破壊する、志賀毒素エフェクターポリペプチドの、1つのエピトープ領域内の、任意のアミノ酸置換が、著明レベルの志賀毒素のエフェクター機能を保持しながら、複数のエピトープ領域が破壊された、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドを形成するように、著明な志賀毒素のエフェクター機能を保持しながら、エピトープを破壊する、同じであるか、又は異なるエピトープ領域内の、任意の他のアミノ酸置換と組合せ可能である。ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、前述の置換のうちの、2つ若しくは3つ以上の組合せ、並びに/又は国際公開第2015/113007号パンフレット及び/若しくは国際公開第2016/196344号パンフレットにおいて記載されている置換の組合せを含みうる。
実施例、並びに国際公開第2015/113007号パンフレット及び国際公開第2016/196344号パンフレットにおける、実験による証拠に基づき、志賀毒素のAサブユニット内の、ある特定のアミノ酸領域は、著明な志賀毒素エフェクター機能を、なおも保持しながら、エピトープの破壊を許容することが予測される。例えば、天然位置の、1〜15、39〜48、53〜66、55〜66、94〜115、180〜190、179〜190、及び243〜257におけるエピトープ領域は、志賀毒素の酵素活性及び細胞毒性を損なわずに、複数のアミノ酸置換の組合せを、同時に許容した。
ある特定の実施形態では、本発明の、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号19〜21及び75〜89のうちのいずれか1つから選択されるアミノ酸配列と、少なくとも85%(少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99%以上など)同一であるアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。例えば、本発明の脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドは、以下の置換のセット:(i)K1A、S45I、V54I、R55L、I57F、P59F、E60T、E61L、G110A、G147A、C242S、R248A、及びR251A;(ii)S45I、V54I、R55L、I57F、P59F、E60T、E61L、G110A、R188A、C242S、R248A、及びR251A;又は(iii)S45I、V54I、R55L、I57F、P59F、E60T、E61L、G110A、D141A、R188A、C242S、R248A、及びR251Aのうちのいずれかを含む。
B.フーリンによる切断に抵抗性である、志賀毒素エフェクターポリペプチドの例
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端における、破壊された、フーリン切断モチーフ及び/又はフーリン切断部位を含みうる。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端に対して近位において、フーリンによる切断をもたらしうる、公知の補償構造を含まない。本発明における使用に適切な、破壊された、フーリン切断モチーフ及びフーリン切断部位の非限定例については、国際公開第2015/191764号パンフレットにおいて記載されている。
本明細書では、天然に存在する志賀毒素Aサブユニットが、成熟志賀毒素Aサブユニットを産生するために除去され、当業者に認識可能な、それらのアミノ末端における、約22アミノ酸のシグナル配列を含有する、前駆体形態を含むことに注目して、配列表に提示される、天然の志賀毒素Aサブユニットの、特異的アミノ酸位置に言及することにより、ある特定のフーリン切断モチーフの破壊が指し示される。さらに、本明細書では、天然で、天然の志賀毒素Aサブユニット内の特異的位置(例えば、アミノ末端から251位におけるアルギニン残基に、R251)に存在する特異的アミノ酸(例えば、アルギニン残基に、R)に続き、論じられる特定の変異において、この残基が置換されたアミノ酸(例えば、R251Aは、アミノ末端からのアミノ酸残基251における、アラニンによる、アルギニンのアミノ酸置換を表す)に言及することにより、変異を含む、ある特定のフーリン切断モチーフの破壊が指し示される。
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素A1断片に由来する領域を含み、この場合、志賀毒素A1断片に由来する領域は、志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端において、破壊されたフーリン切断モチーフを含み、本明細書では、このような実施形態は、野生型の志賀毒素Aサブユニット及び/又は野生型の志賀毒素A1断片融合タンパク質と比べた、それらの特性(複数可)について記載するのに、「フーリンによる切断に抵抗性」又は「プロテアーゼによる切断に抵抗性」の志賀毒素エフェクターポリペプチドと称される。
ある特定の実施形態では、本発明の、プロテアーゼによる切断に抵抗性である志賀毒素エフェクターポリペプチドは、2つ又は3つ以上の変異を有する、切断型志賀毒素Aサブユニットから本質的になる。
ある特定の実施形態では、本発明の、プロテアーゼによる切断に抵抗性である志賀毒素エフェクターポリペプチドは、最小限のフーリン切断部位コンセンサスモチーフ内のアルギニン残基の一方又は両方の、A、G、又はHによるアミノ酸残基置換(野生型志賀毒素ポリペプチドと比べた)を含む、破壊されたフーリン切断モチーフを含む。ある特定の実施形態では、本発明の、プロテアーゼによる切断に抵抗性である志賀毒素エフェクターポリペプチドは、フーリン切断モチーフ領域内のアミノ酸置換を含む破壊を含み、この場合、置換は、配列番号3の247、配列番号1又は配列番号2の248、配列番号3の250、配列番号1又は配列番号2の251、並びに、例えば、配列番号7〜18の247位、配列番号4〜6の248位、配列番号7〜18の250位、又は配列番号4〜6の251位など、保存された志賀毒素エフェクターポリペプチド内、及び/又は非天然の志賀毒素エフェクターポリペプチド配列内の同等な位置からなる群から選択される天然位置のアミノ酸において生じる。ある特定のさらなる実施形態では、置換は、任意の、非保存的アミノ酸への置換であり、置換は、天然位置のアミノ酸残基位置において生じる。ある特定のさらなる実施形態では、変異は、R247A、R248A、R250A、R251A、並びに保存された志賀毒素エフェクターポリペプチド内、及び/又は非天然の志賀毒素エフェクターポリペプチド配列内の同等な位置からなる群から選択されるアミノ酸置換を含む。
ある特定の実施形態では、本発明の、プロテアーゼによる切断に抵抗性である志賀毒素エフェクターポリペプチドは、欠失である変異を含む、破壊されたフーリン切断モチーフを含む。ある特定のさらなる実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、StxA(配列番号2)内、SLT−1A(配列番号1)内、及び他の志賀毒素1のAサブユニットのバリアント(例えば、配列番号4〜6)内、天然位置の、247〜252における領域、又はSLT−2A(配列番号3)内及び志賀様毒素2のAサブユニットのバリアント(例えば、配列番号7〜18)内、天然位置の、246〜251における領域の欠失;StxA(配列番号2)内、SLT−1A(配列番号1)内、及び他の志賀毒素1のAサブユニットのバリアント(例えば、配列番号4〜6)内、天然位置の、244〜246における領域、又はSLT−2A(配列番号3)内及び志賀様毒素2のAサブユニットのバリアント(例えば、配列番号7〜18)内、天然位置の、243〜245における領域の欠失;又はStxA(配列番号2)内及びSLT−1A(配列番号3)内、天然位置の、253〜259における領域、若しくはSLT−2A(配列番号3)内、天然位置の、252〜258における領域の欠失である変異を含む。
ある特定の実施形態では、本発明の、プロテアーゼによる切断に抵抗性である志賀毒素エフェクターポリペプチドは、野生型志賀毒素Aサブユニットのカルボキシ末端と比較した、カルボキシ末端の切断により破壊される、志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端における、破壊されたフーリン切断モチーフを含む、志賀毒素A1断片領域を含み、この場合、切断は、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、フーリン切断モチーフ内の、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基の欠失を結果としてもたらす。ある特定のさらなる実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、最小限の切断部位である、Y/R−x−x−R内の、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基を欠失させる、カルボキシ末端の切断であって、例えば、StxA及びSLT−1A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、天然の、250、249、248、247、246、245、244、243、242、241、240、又は239位以前のアミノ酸残基を終端とする切断;及びSLT−2A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、天然の、249、248、247、246、245、244、243、242、241、又は240位以前のアミノ酸残基を終端とする切断などの切断を含む。ある特定のさらなる実施形態は、可能な場合、前述の変異のうちのいずれかの組合せを含む、破壊されたフーリン切断モチーフを含む。
ある特定の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、フーリン切断モチーフのカルボキシ末端の、部分的な切断である変異(複数可)を含むが、本発明の、ある特定の分子は、全20アミノ酸残基である、フーリン切断モチーフのカルボキシ末端の、完全な切断である、破壊されたフーリン切断モチーフを含まない。例えば、ある特定の、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、StxA(配列番号2)内、SLT−1A(配列番号1)内、又は別の志賀毒素1のAサブユニットのバリアント(例えば、配列番号4〜6)内の、天然の240位までの志賀毒素A1断片領域の、部分的な、カルボキシ末端の切断を含む、破壊されたフーリン切断モチーフを含むが、239位以前における、カルボキシ末端の切断は含まない。同様に、ある特定の、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、SLT−2A(配列番号3)内、又は志賀様毒素2のAサブユニットのバリアント(例えば、配列番号7〜18)内の、天然の239位までの、志賀毒素A1断片領域の、部分的な、カルボキシ末端の切断を含む、破壊されたフーリン切断モチーフを含むが、238位以前における、カルボキシ末端の切断は含まない。変異が、破壊されたフーリン切断モチーフを含む、フーリンによる切断に抵抗性の、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドの、最大のカルボキシ末端の切断においても、フーリン切断モチーフのP14及びP13位は、依然として存在する。
ある特定の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、フーリン切断モチーフ内のアミノ酸残基置換、及びカルボキシ末端の切断の両方を含む。ある特定のさらなる実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、最小限のフーリン切断部位である、R/Y−x−x−R内のアミノ酸残基置換、及びカルボキシ末端の切断の両方を含む、例えば、StxA及びSLT−1A(及び志賀毒素1のAサブユニットのバリアント)由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、天然の、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、又は292位以降のアミノ酸残基を終端とする切断などを含み、適切な場合、任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換された、天然位置のアミノ酸残基である、R248及び/又はR251を含み;SLT−2A(及び志賀様毒素2のAサブユニットのバリアント)由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、天然の、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、又は292位以降のアミノ酸残基を終端とする切断などを含み、適切な場合、任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換された、天然位置のアミノ酸残基である、R/Y247及び/又はR250を含む。ある特定の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフを含む、切断型志賀毒素エフェクターポリペプチドはまた、最適の細胞毒性を維持するために、P9、P8、及び/又はP7位におけるアミノ酸残基である、フーリン切断モチーフも含む。
ある特定の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、1つ又は2つ以上の、内部のアミノ酸残基の欠失である変異(複数可)を含む。ある特定のさらなる実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、最小限のフーリン切断部位である、R/Y−x−x−R内の、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基の欠失を有する変異(複数可)を含む。例えば、例えば、249、250、247、252など、周囲の残基の欠失と組み合わされうる、天然位置のアミノ酸残基である、R248及び/又はR251の内部欠失を含むStxA及びSLT−1A(及び他の志賀毒素1のAサブユニットのバリアント)由来の志賀毒素エフェクターポリペプチド;並びに、例えば、248、249、246、251など、周囲の残基の欠失と組み合わされうる、天然位置のアミノ酸残基である、R/Y247及び/又はR250の内部欠失を含むSLT−2A(及び志賀様毒素2のAサブユニットのバリアント)由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドである。ある特定のさらなる実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、最小限のフーリン切断部位である、R/Y−x−x−Rを欠失させる、4つの連続アミノ酸残基の欠失である変異、例えば、R248〜R251を欠くStxA及びSLT−1A(及び他の志賀毒素1のAサブユニットのバリアント)由来の志賀毒素エフェクターポリペプチド、及びR/Y247〜R250を欠くSLT−2A(及び志賀様毒素2のAサブユニットのバリアント)由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドなどを含む。ある特定のさらなる実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、コアであるフーリン切断モチーフを挟むアミノ酸残基における、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基の欠失であって、例えば、SLT−1A、StxA、又は別の志賀毒素1のAサブユニットのバリアントにおける、244〜247及び/又は252〜255の欠失などの欠失を有する変異(複数可)を含む。ある特定のさらなる実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、表面に露出された、プロテアーゼによる切断に感受性のループの全体の内部欠失である変異であって、例えば、StxA及びSLT−1A(及び他の志賀毒素1のAサブユニットのバリアント)由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、天然位置のアミノ酸残基241〜262の欠失;及びSLT−2A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、天然位置のアミノ酸残基240〜261の欠失などの変異を含む。
ある特定の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、フーリン切断モチーフ内の、アミノ酸残基の内部欠失である変異、及びカルボキシ末端の切断である変異の両方を含む。ある特定のさらなる実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、最小限のフーリン切断部位である、R/Y−x−x−R内のアミノ酸残基の欠失である変異、及びカルボキシ末端の切断である変異の両方を含む。例えば、プロテアーゼによる切断に抵抗性の、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、アミノ酸残基である、247及び/又は252をなおも有する、切断型のStxAポリペプチド又はSLT−1Aポリペプチド(又は別の志賀毒素1のAサブユニットのバリアント)における、天然位置のアミノ酸残基である、248〜249及び/若しくは250〜251、又はアミノ酸残基である、246及び/若しくは251をなおも有する、切断型のSLT−2A(又は志賀様毒素2のAサブユニットのバリアント)における、アミノ酸残基である、247〜248及び/又は249〜250の欠失である変異(複数可)を含む、破壊されたフーリン切断モチーフを含みうる。ある特定のさらなる実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、最小限のフーリン切断部位である、R/Y−x−x−Rを欠失させる、4つの連続アミノ酸残基の欠失、及びカルボキシ末端の切断を有する変異を含む、例えば、StxA及びSLT−1A(及び他の志賀毒素1のAサブユニットのバリアント)由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、天然の、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、又は292位以降のアミノ酸残基を終端とする切断などを有し、R248〜R251を欠き;SLT−2A(及び志賀毒素2Aサブユニットのバリアント)由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、天然の、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、又は292位以降のアミノ酸残基を終端とする切断などを有し、R/Y247〜R250を欠く。
C.エピトープを埋め込んだ、志賀毒素エフェクターポリペプチドの例
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、脱免疫化及び/又は標的細胞のMHCクラスI提示経路への送達を目的とする、1つ又は2つ以上の、組み込まれるか、又は挿入された異種T細胞エピトープを含みうる。ある特定の実施形態、及び/又はある特定の志賀毒素エフェクターポリペプチドの亜領域では、例えば、埋込み型の修飾が、志賀毒素エフェクターポリペプチドの、多岐にわたる亜領域内で成功する可能性が高いのに対し、挿入の成功は、志賀毒素エフェクターポリペプチドの亜領域の、小さいサブセットへと、より限定されるため、T細胞エピトープの埋込み又は部分的な埋込みは、T細胞エピトープの挿入より好ましい場合がある。本明細書では、「成功する」という用語は、志賀毒素エフェクターポリペプチドに対する修飾(例えば、異種T細胞エピトープの導入)が、単独で、又は細胞ターゲティング分子の構成要素として、1つ又は2つ以上の志賀毒素エフェクター機能を、必須の活性レベルで保持する、修飾された志賀毒素エフェクターポリペプチドを結果としてもたらすことを意味するように使用される。
国際公開第2015/113007号パンフレットにおいて記載されている、志賀毒素エフェクターポリペプチドの亜領域のうちのいずれも本発明のある特定の実施形態において、適切であることが可能であり、国際公開第2015/113007号パンフレットにおいて記載されている、志賀毒素エフェクターポリペプチドのうちのいずれも、例えば、脱免疫化(本明細書で記載されるものなど)及び/又はフーリン切断モチーフの破壊(本明細書で記載されるものなど)のための、1つ又は2つ以上の、新たなエピトープ領域の破壊の付加により、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドへと修飾されうる。
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、組み込まれるか、又は挿入された異種T細胞エピトープと、1つ又は2つ以上の他の変異とを含む、切断型志賀毒素Aサブユニットから本質的になる。ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、組み込まれるか、又は挿入された異種T細胞エピトープを含み、例えば、SLT−1A(配列番号1)若しくはStxA(配列番号2)のアミノ酸77〜239、又は他の志賀毒素のAサブユニットファミリーのメンバーにおける同等物(例えば、SLT−2A(配列番号3)のアミノ酸77〜238)により表されるポリペプチドに由来するポリペプチドなど、全長の志賀毒素Aサブユニットより小型である。例えば、組み込まれるか、又は挿入された異種T細胞エピトープを含む、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号19〜21及び75〜89のうちのいずれか1つから選択されるアミノ酸配列と、少なくとも85%(少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99%以上など)同一であるアミノ酸配列を含みうるか、これらから本質的になりうるか、又はこれらからなりうる。例えば、組み込まれた異種エピトープを含む、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、V54I、R55L、I57F、P59F、E60T、及びE61Lを含む。
D.組合せ志賀毒素エフェクターポリペプチドの例
本発明の組合せ志賀毒素エフェクターポリペプチドは、2つ又は3つ以上の亜領域(すなわち、重複しない亜領域)を含み、この場合、各亜領域は、以下:(1)内因性のエピトープ内又はエピトープ領域内の破壊;(2)組み込まれた異種T細胞エピトープ−ペプチド;(3)挿入された異種T細胞エピトープ−ペプチド;及び(4)志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端において、破壊されたフーリン切断モチーフのうちの少なくとも1つを含む。ある特定のさらなる実施形態では、組合せ志賀毒素エフェクターポリペプチドは、野生型志賀毒素Aサブユニットと比べた、カルボキシ末端の切断を含む。ある特定のさらなる実施形態では、カルボキシ末端の切断は、切断されていない、野生型志賀毒素Aサブユニット内に存在する、1つ又は2つ以上の、内因性のB細胞エピトープ領域及び/又はCD4+ T細胞エピトープ領域の除去を結果としてもたらす。
本発明の組合せ志賀毒素エフェクターポリペプチドの、ある特定の実施形態は、(1)内因性のエピトープ内又はエピトープ領域内の破壊、及び(2)A1断片に由来する領域のカルボキシ末端における、破壊されたフーリン切断モチーフの両方を含む。国際公開第2015/113007号パンフレット及び国際公開第2016/196344号パンフレットに記載されている、個々の、脱免疫化された、志賀毒素エフェクター亜領域(例えば、表B、前出を参照されたい)のうちのいずれもが、一般に、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドを創出するために、本明細書で記載される、国際公開第2015/191764号パンフレットにおいて記載されている、及び/又は当技術分野で公知の、破壊されたフーリン切断モチーフを含む、任意の志賀毒素エフェクター亜領域と組み合わされうることが予測される。
本発明の、ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、組み込まれるか、又は挿入された異種CD8+ T細胞エピトープと重複しない、少なくとも1つの、内因性のB細胞エピトープ領域及び/又はT細胞エピトープ領域の破壊をさらに含む、配列番号37に示されたポリペプチドから本質的になり;この場合、破壊は、野生型志賀毒素と比べて、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基置換を含む。ある特定のさらなる実施形態では、置換は、K1からA、G、V、L、I、F、M、及びH;T4からA、G、V、L、I、F、M、及びS;D6からA、G、V、L、I、F、S、Q、及びR;S8からA、G、V、I、L、F、及びM;T8からA、G、V、I、L、F、及びM;T9からA、G、V、I、L、F、M、及びS;S9からA、G、V、L、I、F、及びM;K11からA、G、V、L、I、F、M、及びH;T12からA、G、V、I、L、F、M、S、及びK;S12からA、G、V、I、L、F、及びM;S33からA、G、V、L、I、F、M、及びC;S43からA、G、V、L、I、F、及びM;G44からA又はL;S45からA、G、V、L、I、F、及びM;T45からA、G、V、L、I、F、及びM;G46からA、及びP;D47からA、G、V、L、I、F、S、M、及びQ;N48からA、G、V、L、M、及びF;L49からA、V、C、及びG;Y49からA、G、V、L、I、F、M、及びT;F50からA、G、V、L、I、及びT;D53からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;V54からA、G、I、及びL;R55からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;G56からA、及びP;I57からA、G、V、及びM;L57からA、V、C、G、M、及びF;D58からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;P59からA、G、及びF;E60からA、G、V、L、I、F、S、Q、N、D、M、T、及びR;E61からA、G、V、L、I、F、S、Q、N、D、M、及びR;G62からA;R84からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;V88からA、及びG;I88からA、V、C、及びG;D94からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;S96からA、G、V、I、L、F、及びM;T104からA、G、V、L、I、F、M、及びN;A105からL;T107からA、G、V、L、I、F、M、及びP;S107からA、G、V、L、I、F、M、及びP;L108からA、V、C、及びG;S109からA、G、V、I、L、F、及びM;T109からA、G、V、I、L、F、M、及びS;G110からA;S112からA、G、V、L、I、F、及びM;D111からA、G、V、L、I、F、S、Q、及びT;S112からA、G、V、L、I、F、及びM;D141からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;G147からA;V154からA及びG;R179からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;T180からA、G、V、L、I、F、M、及びS;T181からA、G、V、L、I、F、M、及びS;D183からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;D184からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;L185からA、G、V、及びC;S186からA、G、V、I、L、F、及びM;G187からA;R188からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;S189からA、G、V、I、L、F、及びM;D198からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;R204からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;R205からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;S247からA、G、V、I、L、F、及びM;Y247からA、G、V、L、I、F、及びM;R247からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;R248からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;R250からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;R251からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;D264からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;G264からA;並びにT286からA、G、V、L、I、F、M、及びSからなる群から選択される。ある特定のさらなる実施形態では、複数の、内因性のB細胞エピトープ領域及び/又はCD8+ T細胞エピトープ領域の、複数の破壊が存在し、この場合、各破壊は、K1からA、G、V、L、I、F、M、及びH;T4からA、G、V、L、I、F、M、及びS;D6からA、G、V、L、I、F、S、Q、及びR;S8からA、G、V、I、L、F、及びM;T9からA、G、V、I、L、F、M、及びS;S9からA、G、V、L、I、F、及びM;K11からA、G、V、L、I、F、M、及びH;T12からA、G、V、I、L、F、M、S、及びK;S12からA、G、V、I、L、F、及びM;S33からA、G、V、L、I、F、M、及びC;S43からA、G、V、L、I、F、及びM;G44からA又はL;S45からA、G、V、L、I、F、及びM;T45からA、G、V、L、I、F、及びM;G46からA、及びP;D47からA、G、V、L、I、F、S、M、及びQ;N48からA、G、V、L、M、及びF;L49からA、V、C、及びG;Y49からA、G、V、L、I、F、M、及びT;F50からA、G、V、L、I、及びT;A51からV;D53からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;V54からA、G、I、及びL;R55からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;G56からA、及びP;I57からA、G、V、及びM;L57からA、V、C、G、M、及びF;D58からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;P59からA、G、及びF;E60からA、G、V、L、I、F、S、Q、N、D、M、T、及びR;E61からA、G、V、L、I、F、S、Q、N、D、M、及びR;G62からA;R84からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;V88からA、及びG;I88からA、V、C、及びG;D94からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;S96からA、G、V、I、L、F、及びM;T104からA、G、V、L、I、F、M、及びN;A105からL;T107からA、G、V、L、I、F、M、及びP;S107からA、G、V、L、I、F、M、及びP;L108からA、V、C、及びG;S109からA、G、V、I、L、F、及びM;T109からA、G、V、I、L、F、M、及びS;G110からA;S112からA、G、V、L、I、F、及びM;D111からA、G、V、L、I、F、S、Q、及びT;S112からA、G、V、L、I、F、及びM;D141からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;G147からA;V154からA及びG;R179からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;T180からA、G、V、L、I、F、M、及びS;T181からA、G、V、L、I、F、M、及びS;D183からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;D184からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;L185からA、G、V、及びC;S186からA、G、V、I、L、F、及びM;G187からA;R188からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;S189からA、G、V、I、L、F、及びM;D198からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;R204からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;R205からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;S247からA、G、V、I、L、F、及びM;Y247からA、G、V、L、I、F、及びM;R247からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;R248からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;R250からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;R251からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;D264からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;G264からA;並びにT286からA、G、V、L、I、F、M、及びSからなる群から選択される、少なくとも1つのアミノ酸残基置換を伴う。
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドについての、ある特定の実施形態は、(1)組み込まれるか、又は挿入された異種T細胞エピトープペプチド、及び(2)A1断片に由来する領域のカルボキシ末端における、破壊されたフーリン切断モチーフの両方を含む。下記の実施例、又は国際公開第2015/113007号パンフレットにおいて記載される、組み込まれるか、又は挿入された異種T細胞エピトープを含む、志賀毒素エフェクターポリペプチドの亜領域のうちのいずれかは、一般に、細胞ターゲティング分子の構成要素として、プロテアーゼによる切断に抵抗性であり、かつ、異種T細胞エピトープを、標的細胞のMHCクラスI提示経路へと送達することが可能な、組合せの志賀毒素エフェクターポリペプチドを創出するために、任意の、プロテアーゼによる切断に抵抗性の、志賀毒素エフェクターポリペプチドの亜領域(例えば、本明細書で記載される、国際公開第2015/191764号パンフレットにおいて記載される、及び/又は当技術分野で公知の、修飾された、志賀毒素Aサブユニット亜領域)と組み合わされうる。この種類の、組合せ志賀毒素エフェクターポリペプチドの非限定例は、配列番号19〜21及び75〜89に示される。
本発明の、ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、組み込まれるか、又は挿入された異種T細胞エピトープと、志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端における、破壊されたフーリン切断モチーフとを含む。例えば、ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸75〜251、配列番号1の1〜241、配列番号1の1〜251、又は配列番号1のアミノ酸1〜261に由来し、この場合、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの、組み込まれるか、又は挿入された異種T細胞エピトープと、志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端における、破壊されたフーリン切断モチーフとを含む。同様に、他の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸75〜251、配列番号2の1〜241、配列番号2の1〜251、又は配列番号2のアミノ酸1〜261に由来し、この場合、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの、組み込まれるか、又は挿入された異種T細胞エピトープと、志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端における、破壊されたフーリン切断モチーフとを含む。加えて、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸75〜251、配列番号3の1〜241、配列番号3の1〜251、又は配列番号3のアミノ酸1〜261に由来することが可能であり、この場合、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの、組み込まれるか、又は挿入された異種T細胞エピトープと、志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端における、破壊されたフーリン切断モチーフとを含む。ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(i)配列番号1〜18のうちのいずれか1つのアミノ酸75〜251;(ii)配列番号1〜18のうちのいずれか1つのアミノ酸1〜241;(iii)配列番号1〜18のうちのいずれか1つのアミノ酸1〜251;及び(iv)配列番号1〜18のうちのいずれか1つのアミノ酸1〜261を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなり、この場合、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの、組み込まれるか、又は挿入された異種T細胞エピトープと、志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端における、破壊されたフーリン切断モチーフとを含む。ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(i)配列番号1〜6のアミノ酸75〜251、(ii)配列番号1〜18の1〜241、(iii)配列番号1〜6の1〜251、又は(iv)配列番号1〜3のアミノ酸1〜261を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなり、この場合、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの、組み込まれるか、又は挿入された異種CD8+ T細胞エピトープと、志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端における、破壊されたフーリン切断モチーフとを含む。ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(i)配列番号1〜6のうちのいずれか1つのアミノ酸75〜251;(ii)配列番号1〜18及び75〜89のうちのいずれか1つのアミノ酸1〜241;(iii)配列番号1〜6及び75〜89のうちのいずれか1つのアミノ酸1〜251;又は(iv)配列番号1〜3のうちのいずれか1つのアミノ酸1〜261を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなり;この場合、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの、組み込まれるか、又は挿入された異種T細胞エピトープと、志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端における、破壊されたフーリン切断モチーフとを含む。ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(i)配列番号1〜6のうちのいずれか1つのアミノ酸75〜251;(ii)配列番号1〜18及び75〜89のうちのいずれか1つのアミノ酸1〜241;(iii)配列番号1〜6及び75〜89のうちのいずれか1つのアミノ酸1〜251;又は(iv)配列番号1〜3のうちのいずれか1つのアミノ酸1〜261を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなり;この場合、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの、組み込まれるか、又は挿入された異種T細胞エピトープと、志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端における、破壊されたフーリン切断モチーフとを含む。
本発明の組合せ志賀毒素エフェクターポリペプチドの、ある特定の実施形態は、(1)内因性のエピトープ内又はエピトープ領域内の破壊、及び(2)組み込まれた異種T細胞エピトープペプチドの両方を含む。しかし、本明細書又は国際公開第2015/191764号パンフレットにおいて記載されている、挿入されるか、又は組み込まれた異種T細胞エピトープを含む志賀毒素エフェクター亜領域は一般に、結果として得られる組合せ分子が、十分なレベルの志賀毒素のエフェクター機能(複数可)を保持するような組合せに成功することが、実験により示された場合を除き、あらゆる本明細書で記載される、脱免疫化志賀毒素エフェクター亜領域と、組合せ可能なわけではない。本明細書における開示は、このような実施形態が、どのようにして作製され、成功を、実験により裏付けるように調べられるのかを示す。
本明細書では、「成功する」という用語は、志賀毒素エフェクターポリペプチド内の、2つ又は3つ以上のアミノ酸残基置換が、修飾された志賀毒素エフェクターポリペプチドが、1つ又は2つ以上の志賀毒素エフェクター機能を保持する一方で、例えば、脱免疫化、フーリンによる切断の低減、及び/又は組み込まれるか、若しくは挿入されたエピトープを送達する能力などの機能的特色を結果としてもたらすことを意味するように使用される。本明細書で記載される手法及びアッセイは、組合せによる、志賀毒素エフェクターポリペプチド及びこれを含む細胞ターゲティング分子を表す、本発明の実施形態を、どのようにして設計し、作製し、これらについて実験により調べるのかを示す。
例えば、本発明の、ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸75〜251、配列番号1の1〜241、配列番号1の1〜251、又は配列番号1のアミノ酸1〜261に由来し、この場合、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの、組み込まれるか、又は挿入された異種T細胞エピトープを含み、少なくとも1つのアミノ酸は、内因性のB細胞エピトープ領域内、及び/又はCD4+ T細胞エピトープ領域内で破壊され、破壊されたアミノ酸は、組み込まれるか、又は挿入されたエピトープと重複しない。同様に、他の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸75〜251、配列番号2の1〜241、配列番号2の1〜251、又は配列番号2のアミノ酸1〜261に由来し、この場合、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの、組み込まれるか、又は挿入された異種T細胞エピトープを含み、少なくとも1つのアミノ酸は、内因性のB細胞エピトープ領域内、及び/又はCD4+ T細胞エピトープ領域内で破壊され、破壊されたアミノ酸は、組み込まれるか、又は挿入されたエピトープと重複しない。加えて、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸75〜251、配列番号3の1〜241、配列番号3の1〜251、又は配列番号3のアミノ酸1〜261に由来することが可能であり、この場合、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの、組み込まれるか、又は挿入された異種T細胞エピトープを含み、少なくとも1つのアミノ酸は、内因性のB細胞エピトープ領域内、及び/又はCD4+ T細胞エピトープ領域内で破壊され、破壊されたアミノ酸は、組み込まれるか、又は挿入されたエピトープと重複しない。ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(i)配列番号1〜6のうちのいずれか1つのアミノ酸75〜251;(ii)配列番号1〜18のうちのいずれか1つのアミノ酸1〜241;(iii)配列番号1〜6のうちのいずれか1つのアミノ酸1〜251;及び(iv)配列番号1〜3のうちのいずれか1つのアミノ酸1〜261を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなるポリペプチドに由来し、この場合、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの、組み込まれるか、又は挿入された異種T細胞エピトープを含み、少なくとも1つのアミノ酸は、内因性のB細胞エピトープ領域内、及び/又はCD4+ T細胞エピトープ領域内で破壊され、破壊されたアミノ酸は、組み込まれるか、又は挿入されたエピトープと重複しない。ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(i)配列番号1〜6のアミノ酸75〜251、(ii)配列番号1〜18の1〜241、(iii)配列番号1〜6の1〜251、又は(iv)配列番号1〜3のアミノ酸1〜261を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなるポリペプチドに由来し、この場合、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの、組み込まれるか、又は挿入された異種T細胞エピトープを含み、少なくとも1つのアミノ酸は、内因性のB細胞エピトープ領域内、及び/又はCD4+ T細胞エピトープ領域内で破壊され、破壊されたアミノ酸は、組み込まれるか、又は挿入されたエピトープと重複せず、組み込まれるか、又は挿入された異種T細胞エピトープは、さらなる、内因性のB細胞エピトープ領域及び/又はCD4+ T細胞エピトープ領域を破壊する。
組合せによる、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、例えば、フーリン切断モチーフの破壊、個別のエピトープの破壊、及び/又は異種T細胞エピトープのカーゴなど、それらのそれぞれの亜領域の特色を組み合わせ、これらの組合せは、場合によって、それらの部分的に脱免疫化された亜領域の総和と比較して、免疫原性を、相乗作用的に低減した志賀毒素エフェクターポリペプチドを結果としてもたらす。特に、配列番号19〜21及び75〜89に示された、例示的な志賀毒素エフェクターポリペプチドは、それらのうちの1つが、組み込まれた異種T細胞エピトープを含み、それらのうちの別の1つが、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基置換により破壊された、内因性エピトープを含む、2つ又は3つ以上の亜領域の組合せのために、相乗作用的に脱免疫化される。
ある特定の実施形態では、本発明の、組合せであり、脱免疫化され、プロテアーゼによる切断に抵抗性であり、組み込まれたT細胞エピトープを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドは、K1R及びK11Rからなる、志賀毒素Aサブユニット内の天然の位置における置換の群から選択される、1つ又は2つ以上の置換を含む。
ある特定の実施形態では、本発明の、組合せであり、脱免疫化され、プロテアーゼによる切断に抵抗性であり、組み込まれたT細胞エピトープを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号19〜21及び75〜89のうちのいずれか1つに示されたポリペプチド配列により表されるか、配列番号35のアミノ酸2〜252により表されるか、又は配列番号107のアミノ酸1〜251により表されたポリペプチドのうちの1つを含むか、これからなるか、又はこれから本質的になる。
ある特定の濃度で、無細胞毒性又は低減細胞毒性を示す、本発明の、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチド、例えば、R179Aを含む、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、外因性素材を、細胞へと送達するための、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドとして、やはり有用でありうる。同様に、ある特定の濃度で、無細胞毒性又は低減細胞毒性を示す、本発明の、CD8+ T細胞が高度に免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド、例えば、その触媒性ドメインへと組み込まれたエピトープを含む、志賀毒素エフェクターポリペプチド(例えば、国際公開第2015/113005号パンフレット、実施例1−Fを参照されたい)も、T細胞エピトープ(複数可)を、志賀毒素エフェクターポリペプチドが存在する細胞の、所望の細胞内区画へと送達するために、又はT細胞エピトープ(複数可)の、標的細胞への送達のための、細胞ターゲティング分子の構成要素として、やはり有用でありうる。
E.本発明の細胞ターゲティング分子の例
本明細書で記載される、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、多様なHER2標的生体分子及びエピトープをターゲティングする、細胞ターゲティング分子の構成要素として使用されうる。以下の例は、細胞表面において、HER2と物理的にカップリングされた細胞、例えば、HER2を発現する細胞をターゲティングする、例示的な、本発明の細胞ターゲティング分子の、ある特定の構造について、より詳細に記載する。本発明の細胞ターゲティング分子は、(i)HER2/neu/ErbB2の細胞外部分に特異的に結合することが可能であり、抗体可変断片、単一ドメイン抗体断片、単鎖可変断片、Fd断片、抗原結合性断片、ラクダ科動物抗体に由来するVHH断片、自律性VHドメイン、軟骨魚類抗体に由来する重鎖抗体ドメイン、VNAR断片、及び免疫グロブリン新規抗原受容体のうちの、1つ又は2つ以上を含む、免疫グロブリンの結合性領域と;(ii)志賀毒素A1断片領域を含む、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドであって、(a)志賀毒素A1断片領域内の、内因性のB細胞エピトープ領域及び/又はCD4+ T細胞エピトープ領域を破壊する、組み込まれるか、又は挿入された異種CD8+ T細胞エピトープ;並びに(b)組み込まれるか、又は挿入された異種CD8+ T細胞エピトープと重複しない、志賀毒素A1断片領域内の、複数の、内因性のB細胞エピトープ領域及び/又はCD4+ T細胞エピトープ領域の破壊を含み;志賀毒素A1断片領域が、志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端における、破壊されたフーリン切断モチーフを含み;志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドが、野生型志賀毒素Aサブユニットのカルボキシ末端と比較した、カルボキシ末端の切断を含み;カルボキシ末端の切断が、1つ又は2つ以上の、本明細書で記載される内因性のB細胞エピトープ領域及び/又はCD4+ T細胞エピトープ領域の除去を結果としてもたらし;志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドが、志賀毒素のエフェクター機能(例えば、触媒活性)を示すことが可能であり;HER2ターゲティング分子が、B細胞の抗原性若しくは免疫原性、及び/又はCD4+ T細胞の抗原性若しくは免疫原性が低減しており;結合性領域が、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドのカルボキシ末端と会合するように、結合性領域と、志賀毒素エフェクターポリペプチドとが、融合され、連続ポリペプチドを形成する、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドを含む、HER2ターゲティング分子でありうる。
他の構造的変動
標的生体分子の、任意の細胞外部分への、機能的な結合性部位を含有し、なおより好ましくは、高アフィニティー(例えば、KDにより示される)で、標的生体分子に結合することが可能である、本発明の細胞ターゲティング分子の、断片、バリアント、及び/又は派生物を使用することは、本発明の範囲内にある。例えば、10-5〜10-12モル/リットル、好ましくは、200nM未満の解離定数(KD)で、標的生体分子の細胞外部分に結合する、任意の結合性領域は、本発明の細胞ターゲティング分子の作製、及び本発明の方法における使用のために代替されうる。
当業者は、例えば、1)潜在的抗原性及び/若しくは潜在的免疫原性を低減する、内因性エピトープの破壊、2)タンパク質分解性切断を低減する、フーリン切断モチーフの破壊、並びに/或いは3)潜在的抗原性及び/若しくは潜在的免疫原性を低減するか、又は細胞表面上における提示のために、MHC I分子へと送達されることが可能な、組み込まれるか、若しくは挿入されたエピトープのうちの、1つ又は2つ以上などと共に、志賀毒素エフェクターポリペプチドの、全体的な構造及び機能を維持することにより、それらの生物学的活性を減少させずに、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞ターゲティング分子、並びに前者のうちのいずれかをコードするポリヌクレオチドへと変動が施されうることを認識するであろう。例えば、一部の修飾は、発現を容易としうる、精製を容易としうる、薬物動態特性を改善しうる、及び/又は免疫原性を改善しうる。このような修飾は、当業者に周知であり、例えば、アミノ末端において付加され、起始部位をもたらす、メチオニン、いずれかの末端に配置され、好都合に位置した制限部位又は終結コドンを創出する、さらなるアミノ酸、並びにいずれかの末端へと融合されて、簡便な検出及び/又は精製をもたらす、生化学的アフィニティータグを含む。非脊索動物系(例えば、原核細胞)を使用して作製されるポリペプチドの免疫原性を改善する、一般的な修飾は、例えば、N−ホルミルメチオニン(fMet;N-formylmethionine)の存在は、脊索動物において、所望されない免疫応答を誘導しうるため、ポリペプチドを作製した後で、例えば、細菌宿主系などにおける作製時にホルミル化されうる、起始部のメチオニン残基を除去することである。
本明細書ではまた、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、本発明の細胞ターゲティング分子、又は本発明の細胞ターゲティング分子のタンパク質性構成要素のアミノ末端及び/又はカルボキシ末端における、エピトープタグ又は他の部分の配列など、さらなるアミノ酸残基の組入れも想定される。さらなるアミノ酸残基は、例えば、クローニングを容易とする目的、発現を容易とする目的、翻訳後修飾目的、合成を容易とする目的、精製目的、検出を容易とする目的、及び投与を含む、多様な目的で使用されうる。エピトープタグ及び部分の非限定例は、キチン結合性タンパク質ドメイン、エンテロペプチダーゼ切断部位、因子Xa切断部位、FIAsHタグ、FLAGタグ、緑色蛍光タンパク質(GFP;green fluorescent protein)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ部分、HAタグ、マルトース結合性タンパク質ドメイン、mycタグ、ポリヒスチジンタグ、ReAsHタグ、Strepタグ、StrepタグII、TEVプロテアーゼ部位、チオレドキシンドメイン、トロンビン切断部位、及びV5エピトープタグである。
上記の実施形態のうちの、ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は細胞ターゲティング分子のポリペプチド配列は、全ての、要求される構造的特色が依然として存在し、志賀毒素エフェクターポリペプチドが、単独で、又は細胞ターゲティング分子の構成要素として、任意の要求される機能(複数可)を示すことが可能である限りにおいて、ポリペプチド領域(複数可)へと導入される、1つ又は2つ以上の保存的アミノ酸置換により変動させられる。本明細書で使用される、「保存的置換」という用語は、1つ又は2つ以上のアミノ酸が、別の、生物学的に類似するアミノ酸残基により置きかえられることを表示する。例は、類似する特徴を伴うアミノ酸残基、例えば、小型アミノ酸、酸性アミノ酸、極性アミノ酸、塩基性アミノ酸、疎水性アミノ酸、及び芳香族アミノ酸による置換(例えば、表Cを参照されたい)を含む。内因性の、哺乳動物ペプチド及び哺乳動物タンパク質において、通例見出されない残基による、保存的置換の例は、アルギニン残基又はリシン残基の、例えば、オルニチン、カナバニン、アミノエチルシステイン、又は別の塩基性アミノ酸による保存的置換である。ペプチド及びタンパク質における、表現型的なサイレント置換に関する、さらなる情報については、例えば、Bowie J et al., Science 247: 1306-10 (1990)を参照されたい。
表Cの保存的置換スキームでは、例示的な、アミノ酸の保存的置換は、物理化学的特性により群分けされる:I:中性で親水性;II:酸及びアミド;III:塩基性;IV:疎水性;V:芳香族、バルクアミノ酸、VI:親水性で非帯電、VII:脂肪族で非帯電、VIII:非極性で非帯電、IX:シクロアルケニル会合型、X:疎水性、XI:極性、XII:小型、XIII:回転許容性、及びXIV:可撓性。例えば、保存的アミノ酸置換は、以下を含む:1)Sは、Cで置換されうる;2)M又はLは、Fで置換されうる;3)Yは、Mで置換されうる;4)Q又はEは、Kで置換されうる;5)N又はQは、Hで置換されうる;及び6)Hは、Nで置換されうる。
さらなる、保存的アミノ酸置換は、以下を含む:1)Sは、Cで置換されうる;2)M又はLは、Fで置換されうる;3)Yは、Mで置換されうる;4)Q又はEは、Kで置換されうる;5)N又はQは、Hで置換されうる;及び6)Hは、Nで置換されうる。
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞ターゲティング分子は、それが、(1)少なくとも1つの、組み込まれるか、若しくは挿入された異種T細胞エピトープを含み、少なくとも1つのアミノ酸は、内因性のB細胞エピトープ領域及び/若しくはCD4+ T細胞エピトープ領域において破壊され、破壊されたアミノ酸は、組み込まれるか、若しくは挿入されたエピトープと重複しないか;(2)少なくとも1つの、組み込まれるか、若しくは挿入された異種T細胞エピトープと、志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端における、破壊されたフーリン切断モチーフとを含むか;(3)志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端において、破壊されたフーリン切断モチーフを含み、内因性のB細胞エピトープ領域及び/若しくはCD4+ T細胞エピトープ領域において破壊された、少なくとも1つのアミノ酸を含み、破壊されたアミノ酸は、破壊されたフーリン切断モチーフと重複しないか;又は(4)少なくとも1つの、組み込まれるか、若しくは挿入された異種T細胞エピトープ;内因性のB細胞エピトープ領域及び/若しくはCD4+ T細胞エピトープ領域において破壊された、少なくとも1つのアミノ酸であって、組み込まれるか、若しくは挿入されたエピトープと重複しない、破壊されたアミノ酸;並びに志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端において、破壊されたフーリン切断モチーフを含む限りにおいて、本明細書で列挙されるポリペプチド配列(そして、本明細書で列挙されるポリペプチド配列に対する、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99%以上のアミノ酸配列同一性を保持する)と比較して、最大で、20、15、10、9つ、8つ、7つ、6つ、5つ、4つ、3つ、2つ、又は1つのアミノ酸置換を有する、本明細書で記載される、本発明のポリペプチド領域の、機能的断片又はバリアントを含みうる。志賀毒素エフェクターポリペプチドのバリアント、及び本発明の細胞ターゲティング分子は、細胞毒性の変更、細胞増殖抑制効果の変更、免疫原性の変更、及び/又は血清半減期の変更など、所望の特性を達成するために、結合性領域内又は志賀毒素エフェクターポリペプチド領域内などで、1つ若しくは2つ以上のアミノ酸残基を変化させるか、又は1つ若しくは2つ以上のアミノ酸残基を欠失させるか、若しくは挿入することにより、本明細書で記載されるポリペプチドを変更する結果として、本発明の範囲内にある。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞ターゲティング分子は、シグナル配列を、さらに伴う場合もあり、これを伴わない場合もある。
したがって、ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子は、配列番号22〜36及び97〜108のうちのいずれか1つに示されたアミノ酸配列と、少なくとも85%(少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%など)同一であるアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子は、配列番号25〜31、34〜36、97〜104、及び106〜108のうちのいずれか1つに示されたアミノ酸配列と、少なくとも85%(少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99%以上など)同一であるアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子は、配列番号29、31、34、35、36、102、104、及び106〜108のうちのいずれか1つに示されたアミノ酸配列と、少なくとも85%(少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99%以上など)同一であるアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子は、配列番号29又は102のうちのいずれか1つに示されたアミノ酸配列と、少なくとも85%(少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99%以上など)同一であるアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子は、配列番号31又は104のうちのいずれか1つに示されたアミノ酸配列と、少なくとも85%(少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99%以上など)同一であるアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子は、配列番号34又は106のうちのいずれか1つに示されたアミノ酸配列と、少なくとも85%(少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99%以上など)同一であるアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子は、配列番号35又は107のうちのいずれか1つに示されたアミノ酸配列と、少なくとも85%(少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99%以上など)同一であるアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子は、配列番号36又は108のうちのいずれか1つに示されたアミノ酸配列と、少なくとも85%(少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99%以上など)同一であるアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。
したがって、ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、例えば、SLT−1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)、SLT−2A(配列番号3)、Stx1cA(配列番号4)、Stx1dA(配列番号5)、Stx1eA(配列番号6)、Stx2cAバリアント1(配列番号7)、Stx2cAバリアント2(配列番号8)、Stx2cAバリアント3(配列番号9)、Stx2cAバリアント4(配列番号10)、Stx2cAバリアント5(配列番号11)、Stx2cAバリアント6(配列番号12)、Stx2dAバリアント1(配列番号13)、Stx2dAバリアント2(配列番号14)、Stx2dAバリアント3(配列番号15)、Stx2eAバリアント1(配列番号16)、Stx2eAバリアント2(配列番号17)、及び/又は Stx2fA(配列番号18)などの志賀毒素Aサブユニットなど、天然に存在する(例えば、野生型)志賀毒素Aサブユニット又はその断片に対する、少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、又は99%の、全配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなり、この場合、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(1)少なくとも1つの、組み込まれるか、若しくは挿入された異種T細胞エピトープを含み、少なくとも1つのアミノ酸は、内因性のB細胞エピトープ領域及び/若しくはCD4+ T細胞エピトープ領域において破壊され、破壊されたアミノ酸は、組み込まれるか、若しくは挿入されたエピトープと重複しないか;(2)少なくとも1つの、組み込まれるか、若しくは挿入された異種T細胞エピトープと、志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端における、破壊されたフーリン切断モチーフとを含むか;又は(3)志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端において、破壊されたフーリン切断モチーフを含み、内因性のB細胞エピトープ領域及び/若しくはCD4+ T細胞エピトープ領域において破壊された、少なくとも1つのアミノ酸を含み、破壊されたアミノ酸は、破壊されたフーリン切断モチーフと重複しないか;又は(4)(i)少なくとも1つの、組み込まれるか、若しくは挿入された異種T細胞エピトープ、(ii)内因性のB細胞エピトープ領域及び/若しくはCD4+ T細胞エピトープ領域において破壊された、少なくとも1つのアミノ酸であって、組み込まれるか、若しくは挿入されたエピトープと重複しない、破壊されたアミノ酸、並びに(iii)志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端において、破壊されたフーリン切断モチーフを含む。本明細書で記載される通り、志賀毒素Aサブユニットの断片は、(i)配列番号1〜6、37、及び75〜89のうちのいずれか1つのアミノ酸75〜251;(ii)配列番号1〜18、37、及び75〜89のうちのいずれか1つのアミノ酸1〜241;(iii)配列番号1〜6、37、及び75〜89のうちのいずれか1つのアミノ酸1〜251;又は(iv)配列番号1〜3のうちのいずれか1つのアミノ酸1〜261を含みうるか、これから本質的になりうるか、又はこれからなる。例えば、志賀毒素Aサブユニットの断片は、アミノ酸:(i)配列番号75〜89のうちのいずれか1つの75〜251、(ii)配列番号75〜89のうちのいずれか1つの1〜241、(iii)配列番号75〜89のうちのいずれか1つの1〜251、又は(iv)配列番号1〜3のうちのいずれか1つの1〜261を含みうるか、これらから本質的になりうるか、又はこれらからなりうる。
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドについての、ある特定の実施形態では、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基は、志賀毒素エフェクターポリペプチドの酵素活性を増大させるために、変異されうるか、挿入されうるか、又は欠失されうる。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドについての、ある特定の実施形態では、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基は、志賀毒素エフェクターポリペプチドの触媒活性及び/又は細胞毒性活性を低減するか、又は消失させるために、変異されうるか、又は欠失されうる。例えば、志賀毒素のAサブユニットファミリーのメンバーの触媒活性及び/又は細胞毒性活性は、変異又は切断により、減少させうるか、又は消失させうる。
志賀毒素のAサブユニットファミリーのメンバーの細胞毒性は、変異及び/又は切断により、変化しうるか、低減しうるか、又は消失しうる。位置を表示されたチロシン77、グルタミン酸167、アルギニン170、チロシン114、及びトリプトファン203は、Stx、Stx1、及びStx2の触媒活性に重要であることが示されている(Hovde C et al., Proc Natl Acad Sci USA 85: 2568-72 (1988); Deresiewicz R et al., Biochemistry 31: 3272-80 (1992); Deresiewicz R et al., Mol Gen Genet 241: 467-73 (1993); Ohmura M et al., Microb Pathog 15: 169-76 (1993); Cao C et al., Microbiol Immunol 38: 441-7 (1994); Suhan M, Hovde C, Infect Immun 66: 5252-9 (1998))。グルタミン酸167及びアルギニン170の両方の変異誘発は、無細胞リボソーム不活化アッセイにおいて、Slt−I A1の酵素活性を消失させた(LaPointe P et al., J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。小胞体内の、Slt−I A1のデノボ発現を使用する、別の手法では、グルタミン酸167及びアルギニン170の両方の変異誘発は、この発現レベルにおける、Slt−I A1断片の細胞毒性を消失させた(LaPointe P et al., J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。切断解析は、残基75〜268のStxAの断片が、インビトロにおいて、著明な酵素活性を依然として保持することを裏付けた(Haddad J et al., J Bacteriol 175: 4970-8 (1993))。残基1〜239を含有する、Slt−I A1の切断断片は、インビトロにおける、著明な酵素活性、及び細胞質ゾル内のデノボ発現による細胞毒性を提示した(LaPointe P et al., J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。残基1〜239へと切断された、Slt−I A1断片の、小胞体内の発現は、細胞質ゾルへと逆行移動できなかったため、細胞毒性ではなかった(LaPointe P et al., J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。
志賀毒素Aサブユニット内の酵素活性及び/又は細胞毒性に最も重要な残基は、他の残基位置の中でも、以下の残基位置:アスパラギン75、チロシン77、チロシン114、グルタミン酸167、アルギニン170、アルギニン176、及びトリプトファン203へとマッピングされた(Di R et al., Toxicon 57: 525-39 (2011))。特に、グルタミン酸E167からリシンへの変異、及びアルギニン176からリシンへの変異を含有する、Stx2Aの二重変異体コンストラクトが、完全に不活化される一方、Stx1及びStx2における、多くの単一の変異は、細胞毒性の、10倍の低減を示した。さらに、Stx1Aの、1〜239又は1〜240への切断は、その細胞毒性を低減し、同様に、Stx2Aの、保存された疎水性残基への切断は、その細胞毒性を低減した。志賀毒素Aサブユニット内の、真核生物リボソームへの結合及び/又は真核生物リボソームの阻害に最も重要な残基は、他の残基位置の中でも、以下の残基位置:アルギニン172、アルギニン176、アルギニン179、アルギニン188、チロシン189、バリン191、及びロイシン233へとマッピングされている(McCluskey A et al., PLoS One 7: e31191 (2012))。しかし、ある特定の修飾は、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドにより示される、志賀毒素機能活性を増大させうる。例えば、Stx1A内の残基位置アラニン231を、グルタミン酸へと変異させることは、インビトロにおいて、Stx1Aの酵素活性を増大させる(Suhan M, Hovde C, Infect Immun 66: 5252-9 (1998))。
SLT−1A(配列番号1)又はStxA(配列番号2)に由来する、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドについての、ある特定の実施形態では、変異される、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基は、75位におけるアスパラギン、77位におけるチロシン、114位におけるチロシン、167位におけるグルタミン酸、170位におけるアルギニン、176位におけるアルギニンの置換、及び/又は203位におけるトリプトファンの置換を含む。75位におけるアスパラギンの、アラニンへの置換、77位におけるチロシンの、セリンへの置換、114位におけるチロシンの、セリンへの置換、167位におけるグルタミン酸の、グルタミン酸への置換、170位におけるアルギニンの、アラニンへの置換、176位におけるアルギニンの、リシンへの置換、203位におけるトリプトファンの、アラニンへの置換、及び/又は231位におけるアラニンの、グルタミン酸による置換など、このような置換の例は、先行技術に基づき、当業者に公知であろう。志賀毒素の酵素活性及び/又は細胞毒性を増強又は低減する、他の変異は、本発明の範囲内にあり、本明細書で開示される周知の技法及びアッセイを使用して決定されうる。
ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子は、一価及び/又は単量体でありうる。ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子は、多価及び/又は多量体ではない場合がある。適用例により裏付けられる通り、ある特定の細胞ターゲティング分子の、一価形態及び/又は単量体形態は、HER2発現細胞に対する、強力な細胞毒性を依然として示しながら、インビボにおいて使用されると、低レベルの毒性を示しうる。
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞ターゲティング分子は、本明細書で記載される、そのような薬剤を含む、当技術分野で公知の、治療剤、診断剤、及び/又は他のさらなる外因性素材を含みうる、1つ又は2つ以上さらなる薬剤へとコンジュゲートされてもよい。ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド又は細胞ターゲティング分子は、例えば、脱免疫化をもたらす、志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端における、伸展したループ及び/又はフーリン切断モチーフをマスキングすることにより、フーリンによる切断を破壊する、薬物動態特性を改善する、及び/又は免疫原性を改善するなどのために、PEG化又はアルブミン化される(例えば、Wang Q et al., Cancer Res 53: 4588-94 (1993); Tsutsumi Y et al., Proc Natl Acad Sci USA 97: 8548-53 (2000); Buse J, El-Aneed A, Nanomed 5: 1237-60 (2010); Lim S et al., J Control Release 207-93 (2015)を参照されたい)。
V.本発明の細胞ターゲティング分子の一般的機能
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドの、細胞をターゲティングする結合性領域との機能的会合は、特異的細胞型を選択的に殺滅する、これらの増殖を阻害する、外因性素材を、これらへと送達する、及び/又はこれらを検出する、細胞ターゲティング分子の創出を可能とする。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドの特性は、従来の志賀毒素エフェクターポリペプチドと比較して、脊索動物における治療域を改善した、細胞ターゲティング分子の創出を可能とする。
ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子は、脊索動物への投与の後で、以下:1)ターゲティングされた細胞、例えば、感染細胞又は悪性細胞の、低投与用量における、強力かつ選択的な殺滅、2)細胞ターゲティング分子が、細胞外腔に存在する間の、細胞をターゲティングする結合性領域と、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域との連結安定性、3)低レベルのオフターゲット細胞死及び/又は望ましくない組織損傷、並びに4)例えば、CD8+ T細胞の動員、及びサイトカインの、組織箇所における、局在化された放出など、所望のT細胞媒介性免疫応答を誘発するために、標的細胞による提示のための、異種CD8+ T細胞エピトープの、細胞ターゲティング型送達のうちの、1つ又は2つ以上をもたらす。
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞ターゲティング分子は、例えば、細胞の殺滅;細胞増殖の阻害;細胞内へのカーゴの送達;生物学的情報の収集;免疫応答の刺激、及び/又は健康状態の回復を伴う、多岐にわたる適用において有用である。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、例えば、リガンド−毒素融合体、免疫毒素、及び/又は免疫コンジュゲートなど、多様な治療用分子及び/又は診断用分子の構成要素として有用である。本発明の細胞ターゲティング分子は、例えば、がん、免疫障害、及び微生物感染を含む、様々な疾患の、診断又は治療のための、特異的細胞型に対するインビボターゲティングを伴う適用における、例えば、細胞をターゲティングする、細胞毒性の治療用分子;細胞をターゲティングする、非毒性の送達媒体;及び/又は細胞をターゲティングする診断用分子などとしての、治療用分子及び/又は診断用分子として有用である。
実施形態に応じて、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド又は細胞ターゲティング分子は、以下の特徴又は機能性:(1)脱免疫化、(2)プロテアーゼによる切断に対する抵抗性、(3)ある特定の濃度における、強力な細胞毒性、(4)さらなる素材(例えば、異種T細胞エピトープ)からなるカーゴの細胞内送達、(4)選択的細胞毒性、(6)ある特定の用量又は投与量における、多細胞生物内の低オフターゲット毒性、(7)異種T細胞エピトープの、標的細胞のMHCクラスI提示経路への送達、及び/又は(8)CD8+ T細胞免疫応答(複数可)の刺激のうちの、1つ又は2つ以上を有しうるか、又はもたらしうる。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態は、分子が、本明細書で記載される特徴又は機能性のうちの、2つ又は3つ以上を有するために、多機能性である。本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定のさらなる実施形態は、前述の特徴及び機能性の全てを、単一の分子内においてもたらす。
本発明の、細胞をターゲティングする結合性領域(複数可)の、志賀毒素エフェクターポリペプチド(複数可)との会合、カップリング、及び/又は連結は、哺乳動物などの多細胞生物への、ある特定の用量又は投与量における投与の後における有害作用を抑制しうる、志賀毒素機能(複数可)を伴う細胞ターゲティング分子の改変を可能とする。有害作用の非限定例は、オフターゲット毒性、非標的細胞毒性、及び/又は望ましくない免疫応答を含む。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態は、例えば、脱免疫化、オフターゲット毒性の低減、及び/又は細胞ターゲティング分子を送達された、CD8+ T細胞エピトープの細胞表面提示を介するなど、所望の免疫応答のターゲティングされた刺激など、機能的な特性のために、志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は細胞ターゲティング分子の、脊索動物への投与を伴う適用において、特に有用である。
ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子は、特定の細胞型の細胞表面と会合した細胞外標的生体分子に結合し、これらの細胞に侵入することが可能である。標的細胞型内に内部化されると、本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態は、酵素的に活性の、細胞毒性である志賀毒素エフェクターポリペプチド断片を、標的細胞の細胞質ゾルへと経路決定し、最終的に、細胞を殺滅することが可能である。代替的に、本発明の細胞ターゲティング分子の非毒性バリアント又は低減毒性バリアントは、エピトープ、ペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチド、及び検出促進剤など、さらなる外因性素材を、標的細胞へと送達するのに使用されうる。この系は、任意の数の、多岐にわたる結合性領域が、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドを、多様で、多岐にわたる細胞型へとターゲティングするのに使用されうるという点で、モジュラーである。
A.脊索動物への投与を伴う適用ための脱免疫化
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドの脱免疫化は、志賀毒素Aサブユニット又は志賀毒素エフェクターポリペプチドの、1つ又は2つ以上の、内因性のB細胞エピトープ領域及び/又はCD4+ T細胞エピトープ領域の破壊の操作であって、変異及び/若しくは切断を介すること、又は共有結合的に連結された化学的構造のコンジュゲーションを介することを含む操作により達せられる。B細胞エピトープは、成熟CD4+ T細胞のエピトープと一致又は重複することが多いため、内因性のB細胞エピトープ領域の破壊は、内因性のCD4+ T細胞エピトープを同時に破壊することが多いか、又はこの逆も成り立つ。
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態は、1つ又は2つ以上のB細胞エピトープ及び/又はCD4+ T細胞エピトープに関して脱免疫化されており、これらの分子が、同じB細胞エピトープ及び/若しくはCD4+ T細胞エピトープ、又はこれらのエピトープ領域に対する、同一の破壊を欠く、並びに/或いは同じB細胞エピトープ及び/若しくはCD4+ T細胞エピトープ(複数可)、又はこれらのエピトープ領域(複数可)に対する、任意の破壊を欠く、従来の志賀毒素エフェクターポリペプチド、及び細胞ターゲティング分子と比較した、潜在的抗原性及び/又は潜在的免疫原性の低減を示すことを意味する。ある特定のさらなる実施形態は、脱免疫化特性をもたらす、複数の変異の存在にもかかわらず、野生型レベルではないにせよ、強力な、志賀毒素Aサブユニットの触媒性ドメインに依存する細胞毒性を示す。脱免疫化本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞ターゲティング分子は、投与された分子により惹起される、所望されない免疫応答をもたらす可能性の低減のために、志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は細胞ターゲティング分子の、例えば、哺乳動物、両生類、鳥類、魚類、爬虫類、又はサメなどの脊索動物への非経口投与を伴う適用に有用である。
多様な、本発明の、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドは、多様な脊索動物種へと投与された場合に、それらの抗原性プロファイルにおいて異なりうるが、全ての、本発明の脱免疫化ポリペプチドは、少なくとも1つの定量的アッセイにより測定される、少なくとも1つの生物における抗原性及び/又は免疫原性の低減を示す。特に、本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態は、哺乳動物レシピエントに関して、例えば、分子が、この哺乳動物へと投与された場合に、参照分子(例えば、野生型志賀毒素A1断片を含む、類縁の細胞ターゲティング分子)と比較して、低量及び/又は低頻度の「抗細胞ターゲティング分子」抗体を惹起するなど、脱免疫化されている。加えて、複数の、内因性エピトープ領域が破壊された、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、このようなポリペプチドの、脊索動物レシピエントにおける、所望されない免疫応答の発生の確率を、より大幅に低減することが予測される。
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、脱免疫化特性(複数可)は、志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端において、破壊されたフーリン切断モチーフを含む、構造的変化(複数可)の結果である。
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、脱免疫化特性(複数可)は、内因性のB細胞エピトープ領域及び/又はCD4+ T細胞エピトープ領域.を破壊する、T細胞エピトープの埋込み及び/又は挿入を含む、構造的変化(複数可)の結果である。
ある特定の実施形態では、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドが由来した、親である志賀毒素ポリペプチドの、例えば、細胞への内部化の促進、細胞内経路決定の方向付け、及び強力な細胞毒性である、志賀毒素Aサブユニットの機能など、所望の生物学的機能(複数可)が保存される。保存とは、本明細書で記載される、最小限の活性レベルの保持を指す。
B.プロテアーゼによる切断に対する感受性の低減
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態は、野生型の志賀毒素A1断片領域を含む、類縁の分子と比較して、プロテアーゼによる切断に対する感受性の低減を示す。ある特定のさらなる実施形態は、プロテアーゼによる切断に対する感受性の、この低減、及び中毒細胞内の、カノニカルのフーリン切断イベントの欠如にもかかわらず、最適ではないにせよ、強力な、志賀毒素Aサブユニット触媒性ドメイン依存性の細胞毒性を示す。
プロテアーゼによる切断に抵抗性の、本発明の細胞ターゲティング分子(すなわち、その志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端における、破壊されたフーリン切断モチーフを含む、志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む細胞ターゲティング分子)についての、ある特定の実施形態は、野生型の志賀毒素A1断片領域を含む類縁の分子と比較して、インビボにおける忍容性の改善を示す。ある特定のさらなる実施形態は、プロテアーゼによる切断に対する感受性の、この低減、及び中毒細胞内の、カノニカルのフーリン切断イベントの欠如にもかかわらず、最適ではないにせよ、強力な、志賀毒素Aサブユニット触媒性ドメイン依存性の細胞毒性を示す。
かつては、志賀毒素A1断片触媒性領域を含む、細胞毒性の志賀毒素Aサブユニットコンストラクトは、志賀毒素の、天然の効率的かつ強力な細胞毒性への適応を保存するために、中毒細胞内のフーリンによる、天然に存在するタンパク質分解性プロセシングを維持するか、又は何らかの形で、これを補償しなければならないと考えられた。カルボキシ末端部分の存在にもかかわらず、志賀毒素A1断片のカルボキシ末端における、フーリンによる切断イベントの非存在下で、野生型志賀毒素による対照コンストラクトのレベルの、強力な志賀毒素細胞毒性が達成されたため、フーリンによる切断イベントが、強力な細胞毒性に要求されないことが、予測外に発見された(例えば、国際公開第2015/191764号パンフレット;国際公開第2016/196344号パンフレットを参照されたい)。中毒細胞内の、フーリン切断イベントの欠如は、志賀毒素A1断片様領域の効率的な遊離を防止することが可能であり、この結果として、比較的大型の部分(例えば、28kDaより大きなサイズである)の、志賀毒素A1断片領域への、持続的連結をもたらしうる。しかし、この可能性にもかかわらず、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域を含み、例えば、志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端に対して近位の細胞内切断をもたらすことなど、公知の補償特徴(複数可)を欠く、フーリンによる切断を欠損するコンストラクトにより、強力な、志賀毒素細胞毒性が達成された(例えば、国際公開第2015/191764号パンフレット;国際公開第2016/196344号パンフレットを参照されたい)。
これは、A1断片領域へと連結された、比較的大型の分子部分の残留及び/又は非効率的放出が、志賀毒素の細胞毒力を、必ずしも低減しないことを示唆する。これは、最適の志賀毒素による中毒法は、遊離させられたA1断片を、小胞体から、細胞質ゾルへと、効率的に逆行移動させるのに、志賀毒素A1断片の、他の全ての大型分子部分からの遊離を要求すると考えられていた、ここで、A1断片は、中毒細胞のリボソームを触媒的に不活化させる、酵素的活性構造を形成しうるため、驚くべきことであった。特に、志賀毒素A1断片のカルボキシ末端を遮蔽する、比較的大型の分子部分の残留及び/又は非効率的放出は、A1断片の疎水性カルボキシ末端ドメインの露出、及びこのドメインの、ERAD系による認識を伴う、細胞質ゾルへのアクセスを効率的に得る、志賀毒素A1断片の天然の機構に干渉すると予測された(Di R et al., Toxicon 57: 525-39 (2011); Li S et al., PLoS One 7: e41119 (2012)を参照されたい)。
志賀毒素Aサブユニット派生物を含む分子に対する、中毒細胞に媒介される、フーリンによる切断イベントの欠如は、仮説的には、補償されうる。潜在的な補償法の非限定例は、1)コンストラクトの、1つのカルボキシ末端を、志賀毒素A1断片のカルボキシ末端様ポリペプチド領域で終結させる手法、2)志賀毒素Aサブユニットポリペプチドが、その志賀毒素A1断片様ポリペプチドのカルボキシ末端の近傍において、既にニッキングされているように、志賀毒素由来のコンストラクトを作製する手法、3)異種プロテアーゼ部位及び/又は異所性プロテアーゼ部位を改変する手法であって、天然の志賀毒素、フーリン切断イベントの欠如を、機能的に代替しうる手法、並びに4)手法3及び4の組合せを含む。
第1の手法では、志賀毒素A1断片のカルボキシ末端様ポリペプチドは、カルボキシ末端部分により遮蔽されず、したがって、志賀毒素A1断片のカルボキシ末端様ポリペプチドは、小胞体内のERAD機構による認識のために、恒久的に露出される。残りの3つの手法では、志賀毒素A1断片様ポリペプチドは、小胞体内で、志賀毒素A1断片のカルボキシ末端様ポリペプチドが、ERAD機構による認識のために露出されるよう、分子が中毒細胞の小胞体に到達する時点までに、細胞内で、コンストラクトの、1つ又は2つ以上の、他の構成要素から解離するようにデザインされうる。例えば、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドを含む細胞毒性分子は、ポリペプチド領域を、A1断片のカルボキシ末端様領域の近傍においてニッキングするように、標的細胞に接触させる前に、プロテアーゼで前処理されうるであろう。代替的に、細胞毒性分子は、標的細胞の細胞内プロテアーゼにより切断される、プロテアーゼ部位を含むようにも、改変されうるであろう。
中毒細胞により媒介される、フーリンによる切断イベントの欠如を補償する、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドを設計するための、これらの仮説的手法は、細胞毒性の効率及び効力を、最適の、天然に存在するフーリン切断部位を含む、野生型配列だけを含む、野生型志賀ホロトキシン、又は志賀毒素Aサブユニットコンストラクトと比較して、著明に変化させうる。例えば、現在のところ、標的細胞のフーリン以外のエンドプロテアーゼに依拠する補償法であって、フーリンによる切断と同等の、完全に補償的な細胞毒性をもたらしうる補償法は知られておらず、カルパインのような、フーリンに対して代替的な、細胞内プロテアーゼは、志賀毒素の細胞毒性を容易とするのに、それほど効率的でないことが示されている(Garred O et al., Exp Cell Res 218: 39-49 (1995); Garred O et al., J Biol Chem 270: 10817-21 (1995); Kurmanova A et al., Biochem Biophys Res Commun 357: 144-9 (2007))。
本発明は、中毒細胞内の、フーリンによる切断イベントの欠如に対する補償のためであれ、一部の、説明されていない理由ためであれ、強力に細胞毒性である、フーリンによる切断に抵抗性の、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドを提供する。ある特定の、本発明の細胞ターゲティング分子は、プロテアーゼによる切断に感受性の、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド領域を含む、細胞ターゲティング分子と、少なくとも同じ程度に、効率的かつ強力に細胞毒性である(例えば、国際公開第2016/196344号パンフレットを参照されたい)。
C.安定性及びインビボにおける忍容性の改善
ある特定の実施形態では、本発明の分子(例えば、本発明の細胞ターゲティング分子)は、フーリンによる切断に対する感受性が大きなアナログ、及び/又は脱免疫化が低度のアナログ(本発明の、1つ又は2つ以上の構造的特色を欠く、近縁の分子であるアナログ)と比較した、安定性の増大、及び/又はインビボにおける忍容性の改善を示す。
細胞ターゲティング分子の、参照分子と比較した安定性の増大は、インビトロ及び/又はインビボにおいて示されうる。治療用分子又は診断用分子の、時間経過にわたる安定性は、重要な特色であり、分子が、どの適用に、実際に利用されうるのかに影響を及ぼしうる。分子の安定性は、例えば、投与後、及びある温度範囲及び濃度範囲にわたる保管時における生物内の安定性など、インビトロ及びインビボにおける安定性を含む。ある特定の免疫毒素又はリガンド−毒素融合体では、毒素と、他の構成要素との間の、連結の安定性は、生物内の時間経過にわたり、非ターゲティング毒素の存在及び/又は量により引き起こされる、非特異的毒性の量に影響を及ぼしうる。
ある特定の、本発明の細胞ターゲティング分子は、プロテアーゼによる切断に対する感受性が大きなバリアントと比較した、インビボにおける忍容性の増大として顕在化される、インビボにおける非特異的毒性の低減を示す。インビボにおける忍容性は、当技術分野で公知の技法及び/又は本明細書で記載される技法を使用する当業者により決定されうる。死亡を使用して、インビボにおける忍容性を評価することに加えて、例えば、体重の様態、身体的外見、測定可能な臨床徴候、非刺激性挙動、及び外的刺激に対する応答など、罹患の徴候も、インビボにおける忍容性を評価するために使用されうる(例えば、Morton D, Griffiths P, Vet Rec 116: 431-43 (1985); Montgomery C, Cancer Bull 42: 230-7 (1990); Ullman-Cullere M, Foltz C, Lab Anim Sci 49: 319-23 (1999); Clingerman K, Summers L, J Am Assoc Lab Anim Sci 51: 31-6 (2012)を参照されたい)。罹患の徴候及び/又は瀕死状態を受けて安楽死が使用され、これが死亡時点となる場合がある。例えば、2〜3日間における、15〜20%の体重の減少は、齧歯動物における罹患の徴候、及び安楽死処理のための根拠として使用されうる(例えば、Institute of Laboratory Animal Research 2011. Guide for the care and use of laboratory animals, 8th ed., Washington, DC, U.S.: National Academies Pressを参照されたい)。
例示的な、本発明の細胞ターゲティング分子について観察される、フーリンによる切断に対する感受性が大きなアナログと比較した、インビボにおける忍容性の改善は、はるかに高用量の、これらの本発明の細胞ターゲティング分子が、フーリンによる切断に感受性の、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域を含む、類縁の分子の投与と比較して、安全に、哺乳動物へと投与されうることを示唆する。ある特定の、本発明の細胞ターゲティング分子は、プロテアーゼへの抵抗性は、志賀毒素エフェクターの構成要素と、細胞ターゲティング部分の構成要素との連結を保護及び保存するのに役立つため、プロテアーゼに対する感受性が大きなバリアントと比較した、非特異的毒性の低減を示しうるであろう。
加えて、本発明の細胞ターゲティング分子についての、インビボにおける忍容性は、所与の細胞ターゲティング分子の脱免疫化特性と関連しうる。したがって、高用量の、本発明の、このような脱免疫化細胞ターゲティング分子は、「脱免疫化されていない」、又は脱免疫化が低度の志賀毒素エフェクターポリペプチド(例えば、野生型志賀毒素A1断片)を含む、類縁の分子の投与と比較して、哺乳動物へと、安全に投与されうる。
加えて、本発明の、ある特定の分子は、プロテアーゼによる切断に対する感受性が大きなバリアントと比較して、インビトロ及び/又はインビボの両方において、半減期の増大を示す。分子的安定性は、その構成要素の会合に関する、所望の分子の半減期を決定することによりアッセイされうる。本発明の分子についての、ある特定の実施形態は、とりわけ、志賀毒素エフェクターポリペプチドの構成要素と、1つ又は2つ以上の、他の構成要素との持続的会合に関して、フーリンによる切断に感受性のバリアントと比較した、長い半減期を有するであろう。例えば、本発明の分子についての、ある特定の実施形態は、志賀毒素エフェクターポリペプチドの構成要素と、別の構成要素、例えば、細胞をターゲティングする結合性領域との持続的会合に関して、フーリンによる切断に感受性のバリアントと比較した、長い半減期を有するが、この場合、フーリンによる切断に感受性の部位(複数可)は、これらの2つ構成要素の間にある。
D.志賀毒素Aサブユニットの細胞毒性を介する細胞殺滅
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態は、細胞毒性である。本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定のさらなる実施形態は、1つ又は2つ以上の志賀毒素エフェクターポリペプチドの構成要素の存在だけのために、細胞毒性である。志賀毒素のAサブユニットファミリーのメンバーは、各々、細胞の細胞質ゾルに入ると、真核細胞を殺滅することが可能な、酵素的に活性のポリペプチド領域を含む。志賀毒素ファミリーのメンバーは、真核細胞を殺滅するように適応させられているため、例えば、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドのある特定の実施形態を含む分子など、志賀毒素に由来する分子についての、強力な細胞殺滅活性を示しうる。
本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、細胞ターゲティング分子の結合性領域の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされた細胞(例えば、標的陽性細胞)に接触すると、細胞ターゲティング分子は、細胞の殺滅を引き起こすことが可能である。ある特定の実施形態では、細胞ターゲティング分子のCD50値は、5、2.5、1、0.5、又は0.25nM未満であり、これは、非ターゲティング型の、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド(例えば、配列番号1〜18)より、はるかに強力である。
細胞の殺滅は、例えば、エクスビボで操作された標的細胞、インビトロで培養された標的細胞、インビトロで培養された組織内の標的細胞、又は多細胞生物内のような、インビボ状況にある標的細胞など、標的細胞についての、様々な条件下で、本発明の分子を使用して達せられうる。
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞ターゲティング分子は、(1)脱免疫化された、志賀毒素エフェクター亜領域、(2)志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端の近傍における、プロテアーゼによる切断に抵抗性の領域、(3)カルボキシ末端の、小胞体保持/賦活シグナルモチーフ;及び/又は(4)異種T細胞エピトープが、組み込まれるか、若しくは挿入された領域を含むが、ある特定の実施形態では、これらの構造的修飾は、志賀毒素の細胞毒力を、例えば、野生型志賀毒素A1断片などの、野生型志賀毒素Aサブユニットポリペプチドを含む参照分子と比較して、著明に変化させない。したがって、脱免疫化されている、プロテアーゼによる切断に抵抗性である、及び/又は組み込まれるか、若しくは挿入された異種エピトープを保有する、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞ターゲティング分子は、1つ又は2つ以上の、他の多様な機能性又は特性をもたらしながら、強力な細胞毒性を維持しうる。
志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、既に細胞毒性である細胞ターゲティング分子は、より細胞毒性である、及び/又は完全に異なる機構を介して作動する、冗長的な、バックアップの細胞毒性を有するように、本明細書で提示される情報及び方法を使用する当業者により改変されうる。これらの、複数の細胞毒性機構は、それらの、多岐にわたる機能により、互いを補完しうる(直接的及び間接的な、2つの細胞殺滅機構を介して、強力な殺滅をもたらすことによるほか、局所領域に対する、免疫刺激の機構などにより)、互いを、冗長的にバックアップしうる(他の機構の非存在下で、1つの細胞殺滅機構をもたらすことなどにより(標的細胞が、既に活性の機構のサブセットに対して、耐性であるか、又はこれに対する、何らかの免疫を獲得する場合のように))、及び/又は発生した耐性に対して保護しうる(悪性細胞又は感染細胞が、複数の、異なる細胞殺滅機構を、同時に遮断する、起こりにくい状況へと、耐性を制限することにより)。
E.細胞表面における、MHCクラスIによる提示のための、T細胞エピトープの送達
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞ターゲティング分子は、送達、及び有核脊索動物細胞による細胞表面提示のための、エピトープペプチドカーゴの、事実上、非限定的な選出しを伴う、「T細胞エピトープ送達」分子の改変を可能とする、T細胞エピトープを含む。ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞ターゲティング分子は、各々、志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は細胞ターゲティング分子と会合した1つ又は2つ以上のT細胞エピトープを、細胞のプロテアソームへと送達することが可能である。次いで、送達されたT細胞エピトープは、タンパク質分解性プロセシングにかけられ、MHCクラスI経路により、細胞の表面上に提示される。MHCクラスIエピトープを、細胞ターゲティング分子へと改変することにより、脊索動物免疫系の、有益な機能(複数可)を利用し、方向付けるための、免疫刺激性抗原の、ターゲティングされた送達及び提示が達せられうる。
ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子は、細胞表面提示のために、T細胞エピトープを、細胞のMHCクラスI分子へと送達することが可能である。ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド又は細胞ターゲティング分子は、さらなる外因性素材としてであれ、志賀毒素エフェクターポリペプチド内に組み込まれるか、又は挿入されるのであれ、異種T細胞エピトープを含む。ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド又は細胞ターゲティング分子は、細胞表面提示のために、組み込まれるか、又は挿入されたT細胞エピトープを、MHCクラスI分子へと送達することが可能である。
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、MHCクラスI分子による、細胞の表面における、T細胞エピトープの提示のために、志賀毒素エフェクターポリペプチド内に組み込まれるか、又は挿入されたT細胞エピトープを、その中に志賀毒素エフェクターポリペプチドが存在する細胞の、MHCクラスI分子へと送達することが可能である。ある特定の実施形態では、T細胞エピトープは、異種T細胞エピトープである。ある特定の実施形態では、T細胞エピトープは、既知のものであれ、現在当業者に規定の方法を使用して、将来同定されるものであれ、CD8+ T細胞エピトープとして機能する。
ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子は、MHCクラスI分子による、細胞の表面における、T細胞エピトープの提示のために、細胞ターゲティング分子と会合したT細胞エピトープを、細胞のMHCクラスI分子へと送達することが可能である。ある特定のさらなる実施形態では、T細胞エピトープは、志賀毒素エフェクターポリペプチド内に組み込まれるか、又は挿入された異種T細胞エピトープである。ある特定のさらなる実施形態では、T細胞エピトープは、既知のものであれ、現在当業者に規定の方法を使用して、将来同定されるものであれ、CD8+ T細胞エピトープとして機能する。
ある特定の実施形態では、細胞を、本発明の細胞ターゲティング分子と接触させると、細胞ターゲティング分子は、MHCクラスI分子による、細胞の表面における、T細胞エピトープペプチドの提示のために、細胞ターゲティング分子と会合したT細胞エピトープペプチドを、細胞のMHCクラスI分子へと送達することが可能である。ある特定のさらなる実施形態では、T細胞エピトープペプチドは、志賀毒素エフェクターポリペプチド内に組み込まれるか、又は挿入された異種エピトープである。ある特定のさらなる実施形態では、T細胞エピトープペプチドは、既知のものであれ、現在当業者に規定の方法を使用して、将来同定されるものであれ、CD8+ T細胞エピトープとして機能する。
異種エピトープの、本発明の細胞ターゲティング分子への付加、又は異種エピトープの、本発明の細胞ターゲティング分子内の存在は、さらなる外因性素材としてであれ、志賀毒素エフェクターポリペプチド内に組み込まれるか、又は挿入されるのであれ、このような細胞ターゲティング分子を、脊索動物内の、有核の標的細胞による、細胞表面提示のために選び出されたエピトープの、細胞ターゲティング型送達のために使用する方法を可能とする。
ある特定の、本発明の、CD8+ T細胞が高度に免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞ターゲティング分子の1つの機能は、細胞による、MHCクラスI提示のための、1つ又は2つ以上のT細胞エピトープペプチドの、MHCクラスI分子への送達である。外因性のT細胞エピトープペプチドの、標的細胞のMHCクラスI系への送達は、細胞表面上に、MHCクラスI分子と会合したT細胞エピトープペプチドを提示するように、標的細胞を誘導し、これが、その後、標的細胞を攻撃するように、CD8+エフェクターT細胞の活性化をもたらすのに使用されうる。
当業者は、当技術分野で公知の技法を使用して、ある特定の、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドを、他の多様な、細胞をターゲティングする結合性領域と会合させて、カップリングさせて、及び/又は連結して、細胞と物理的にカップリングされた、特異的な細胞外標的生体分子をターゲティングする、本発明の細胞ターゲティング分子を創出し、これらの細胞ターゲティング分子の、標的細胞内部化を促進しうる。全ての有核脊椎動物細胞は、MHCクラスI系を使用して、細胞内エピトープを提示することが可能であると考えられる。したがって、本発明の細胞ターゲティング分子の細胞外標的生体分子は、原理的に、このような細胞の、MHCクラスI提示経路への、T細胞エピトープの送達のために、任意の有核脊椎動物細胞をターゲティングしうる。
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞ターゲティング分子のエピトープ送達機能は、当技術分野で、当業者に公知である、及び/又は本明細書で記載される、様々な標準的方法により検出及びモニタリングされうる。例えば、本発明の細胞ターゲティング分子が、T細胞エピトープペプチドを送達し、標的細胞のMHCクラスI系による、エピトープペプチドの提示を駆動する能力は、例えば、MHCクラスI/ペプチド複合体の、直接的な検出/視覚化、異種T細胞エピトープペプチドの、MHCクラスI分子に対する結合アフィニティーの測定、及び/又は細胞毒性Tリンパ球(CTL;cytotoxic T-lymphocyte)応答をモニタリングすることによる、MHCクラスI−ペプチド複合体の、標的細胞上の提示の、機能的な帰結の測定(例えば、下掲の実施例を参照されたい)を含む、多様なインビトロアッセイ及びインビボアッセイを使用して検討されうる。
本発明のポリペプチド及び分子の、この機能をモニタリングする、ある特定のアッセイは、インビトロ又はエクスビボにおける、特異的なMHCクラスI/ペプチド抗原複合体の、直接的な検出を伴う。ペプチド−MHCクラスI複合体の、直接的な視覚化及び定量のための、一般的な方法は、当業者に公知の、多様な免疫検出試薬を伴う。例えば、特定のMHCクラスI/ペプチド抗原複合体を認識するための、特異的モノクローナル抗体が開発されうる。同様に、TCR-STAR試薬(Altor Bioscience Corp.社、Mirmar、FL、U.S.)など、可溶性の多量体であるT細胞受容体も、特異的なMHC I/抗原複合体を、直接視覚化又は定量するのに使用されうる(Zhu X et al., J Immunol 176: 3223-32 (2006))。これらの、特異的な、mAb又は可溶性の多量体であるT細胞受容体は、例えば、免疫組織化学、フローサイトメトリー、及び酵素免疫測定アッセイ(ELISA;enzyme-linked immuno assay)を含む、多様な検出法により使用されうる。
MHC I/ペプチド複合体の直接的な同定及び定量のための代替法は、例えば、ペプチド−MCHクラスI複合体が、細胞の表面から抽出され、次いで、ペプチドが、シーケンシング用質量分析により精製及び同定される、ProPresent Antigen Presentation Assay(ProImmune, Inc.社、Sarasota、FL、U.S.)(Falk K et al., Nature 351: 290-6 (1991))などの質量分析を伴う。
本発明のポリペプチド及び分子の、T細胞エピトープ送達及びMHCクラスI提示の機能をモニタリングする、ある特定のアッセイは、MHCクラスIとペプチドとの結合及び安定性をモニタリングする、コンピュータ法及び/又は実験法を伴う。例えば、IEDB(Immune Epitope Database and Analysis Resource)による、MHC-I binding prediction Consensus tool(Kim Y et al., Nucleic Acid Res 40: W525-30 (2012))など、ペプチドの、MHCクラスI対立遺伝子に対する結合応答を予測するための、当業者による使用に、複数のソフトウェアプログラムが利用可能である。例えば、結合動態を定量及び/又は比較するのに、細胞表面結合アッセイ及び/又は表面プラズモン共鳴アッセイなど、複数の実験アッセイが、規定的に適用されている(Miles K et al., Mol Immunol 48: 728-32 (2011))。加えて、所与のMHCクラスI対立遺伝子に対して、ペプチドが、三次MHCペプチド複合体を安定化させる能力についての、公知の対照と比較した尺度に基づく、他のMHCペプチド結合アッセイも、開発されている(例えば、ProImmmune, Inc.社製のMHCペプチド結合アッセイ)。
代替的に、MHCクラスI/ペプチド抗原複合体の、細胞表面における提示の帰結についての測定は、細胞毒性T細胞(CTL;cytotoxic T-cell)の、特異的複合体に対する応答をモニタリングすることによっても実施されうる。これらの測定は、CTLの、MHCクラスI四量体試薬又はMHCクラスI五量体試薬による、直接的な標識付けを含む。四量体又は五量体は、主要組織適合性複合体(MHC;Major Histocompatibility Complex)対立遺伝子とペプチドとの複合体により決定される、特定の特異性を有するT細胞受容体に直接結合する。加えて、特異的CTL応答を同定するのに、インターフェロンガンマ又はインターロイキンなど、放出されたサイトカインの、ELISA又は酵素免疫スポット(ELIspot;enzyme-linked immunospot)による定量も、一般にアッセイされる。CTLの細胞毒性能は、古典的なクロム51(Cr;51 Chromium)放出アッセイ、又は代替的な非放射性細胞毒性アッセイ(例えば、Promega Corp.社、Madison、WI、U.S.から市販されているCytoTox 96(登録商標)非放射性キット及びCellTox(商標)CellTiter-GLO(登録商標)キット)、グランザイムB ELISpot、カスパーゼ活性アッセイ、又はLAMP−1移動フローサイトメトリーアッセイを含む、多数のアッセイを使用して測定されうる。標的細胞の殺滅を、特異的にモニタリングするために、エピトープ特異的なCSFE標識付け標的細胞の殺滅をモニタリングする、インビトロ又はインビボにおける検討に所望の細胞集団を、容易かつ迅速に標識付けするように、カルボキシフルオレセイン二酢酸スクシンイミジルエステル(CFSE;carboxyfluorescein diacetate succinimidyl ester)が使用されうる(Durward M et al., J Vis Exp 45 pii 2250 (2010))。
MHCクラスI提示に対するインビボ応答に続く、MHCクラスI/抗原促進剤(例えば、ペプチド、タンパク質、又は不活化/弱毒化ウイルスワクチン)の投与に続き、活性薬剤(例えば、ウイルス)で感作し、この薬剤に対する応答を、典型的に、非ワクチン接種対照と比較してモニタリングする。既に記載されている方法と類似の方法(例えば、CTL細胞毒性アッセイ及びサイトカイン放出の定量)により、CTL活性について、エクスビボ試料がモニタリングされうる。
HLA−A、HLA−B、及び/又はHLA−C分子は、免疫アフィニティーを使用する溶解の後で、中毒細胞から単離され(例えば、抗MHC抗体による「プルダウン」精製)、会合したペプチド(すなわち、単離MHC分子により提示されるペプチド)は、精製された複合体から回収される。回収されたペプチドは、シーケンシング用質量分析により解析される。質量分析データは、ヒトについての、外因性(非自己)ペプチド(T細胞エピトープX)の配列、及びIPI(International Protein Index)からなる、タンパク質データベースライブラリー(「自己」又は非免疫原性のペプチドを表す)に対して比較される。ペプチドは、確率データベースに従う有意性によりランク付けされる。検出された、全ての抗原(非自己)ペプチド配列が一覧される。偽ヒットを低減するために、データは、スクランブルデコイデータベースに照らして検索することにより検証される(例えば、Ma B, Johnson R, Mol Cell Proteomics 11: O111.014902 (2012)を参照されたい)。結果は、T細胞エピトープXに由来するペプチドが、中毒標的細胞の表面上において、MHC複合体内に提示されることを裏付けるであろう。
提示されるペプチド抗原−MHC複合体のセットは、発現される、抗原特異的HLA分子のために、細胞間で変動しうる。次いで、T細胞は、異なる抗原特異性を伴う、異なるTCR分子を使用して、細胞表面上に提示される、特異的ペプチド抗原−MHC複合体を認識しうる。
例えば、2つ又は3つ以上の、異なるT細胞エピトープを、エフェクターポリペプチドを送達する、単一のプロテアソーム内に埋め込むことなどにより、複数のT細胞エピトープが、本発明の細胞ターゲティング分子により、送達されうるため、本発明の、単一の細胞ターゲティング分子は、例えば、異なるHLA対立遺伝子を伴うヒトなど、異なるMHCクラスバリアントを伴う、同じ種の脊索動物において有効でありうる。これは、MHC複合体タンパク質の多様性及び多型に基づき、異なる対象の亜集団における、異なる有効性を伴う、異なるT細胞エピトープを、単一の分子内に組み合わせることを可能としうる。例えば、ヒトMHC複合体タンパク質である、HLAタンパク質は、遺伝子祖型、例えば、アフリカ系(サハラ以南系)、アメリカ先住民系、コーカソイド系、モンゴロイド系、ニューギニア系及びオーストラリア系、又は太平洋島嶼系に基づき、ヒトの間で変動する。
本発明の、T細胞エピトープを送達するポリペプチド及び分子を伴う適用は、広範である。哺乳動物における、あらゆる有核細胞は、それらの細胞の外部表面において、MHCクラスI分子へと複合化させられた、免疫原性のT細胞エピトープペプチドの、MHCクラスI経路による提示が可能でありうる。加えて、T細胞エピトープ認識の感受性は、極めて精緻であるため、免疫応答を結果としてもたらすのに、少数のMHC−Iペプチド複合体の提示が要求されるに過ぎず、例えば、単一の複合体の提示であってもなお、エフェクターT細胞による認識に十分でありうる(Sykulev Y et al., Immunity 4: 565-71 (1996))。
T細胞応答の活性化は、患者の固有の免疫系を、標的細胞に向けて刺激する、ある特定の抗がん性生物学的薬物、抗新生物性生物学的薬物、抗腫瘍性生物学的薬物、及び/又は抗微生物性生物学的薬物の、所望の特徴である。ロバストかつ強力なT細胞応答の活性化はまた、多くのワクチンの所望の特徴でもある。生物内の標的細胞による、T細胞エピトープの提示は、生物内の標的細胞及び/又はその全体領域に対する、ロバストな免疫応答の活性化をもたらしうる。したがって、提示のためのT細胞エピトープの送達のターゲティングは、治療レジメにおいて、T細胞応答を活性化させるための機構として利用されうる。
MHCクラスI系による、免疫原性の、T細胞エピトープペプチドの提示は、CTL媒介性溶解による殺滅のために、提示細胞をターゲティングし、また、局所微小環境内で、免疫刺激も誘発する。標的細胞内部化型治療用分子の、志賀毒素エフェクターポリペプチドの構成要素内の、免疫原性のエピトープ配列を改変することにより、免疫刺激性抗原の、ターゲティングされた送達及び提示が達せられうる。例えば、標的細胞による、高免疫原性を伴う、公知のウイルス性抗原などの、免疫刺激性非自己抗原の提示は、標的細胞を破壊するほか、より多くの免疫細胞を、領域へと動員するように、他の免疫細胞へとシグナル伝達する。
MHCクラスI複合体による、免疫原性の、T細胞エピトープペプチドの提示は、CTL媒介性細胞溶解による殺滅のために、提示細胞をターゲティングする。ターゲティングされた細胞による、例えば、高免疫原性を伴う、公知のウイルス性エピトープペプチドなどの、免疫刺激性非自己抗原の提示は、標的細胞を破壊し、より多くの免疫細胞を、脊索動物内の標的細胞部位へと動員するように、他の免疫細胞へとシグナル伝達しうる。
したがって、本発明の方法を使用して、例えば、志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、治療用分子又は潜在的な治療用分子など、既に細胞毒性である分子が、より細胞毒性の大きな分子へと改変されうる、及び/又はT細胞エピトープの送達、提示、及びエフェクターT細胞の刺激を介して作動する、さらなる細胞毒性機構を有するように改変されうる。これらの、複数の細胞毒性機構は、互いを補完しうる(直接的な標的細胞の殺滅及び間接的な(CTL媒介性の)細胞殺滅の両方をもたらすことなどにより)、互いを、冗長的にバックアップしうる(他の機構の非存在下で、1つの細胞殺滅機構をもたらすことなどにより)、及び/又は治療耐性の発生に対して保護しうる(耐性を、悪性細胞又は感染細胞が、2つの、異なる細胞殺滅機構を、同時に遮断するように進化する、起こりにくい状況へと制限することにより)。
加えて、触媒性ベースの細胞毒性を示す、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域を含む細胞毒性分子は、規定の方法を使用する当業者により、酵素的に不活性のバリアントへと改変されうる。例えば、細胞毒性分子の、細胞毒性である志賀毒素エフェクターポリペプチドの構成要素は、結果として得られる分子が、T細胞エピトープを、標的細胞のMHCクラスI系へと送達するその能力、及び後続する、標的細胞の表面への提示を介して、なおも細胞毒性でありうるように、1つ又は2つ以上の変異及び/又は切断の導入により、活性の低減を付与されうる、及び/又は不活性とされうる。別の例では、志賀毒素エフェクターポリペプチドが、エピトープの付加により不活化されるように、T細胞エピトープが、志賀毒素エフェクターポリペプチドへと、挿入されるか、又は組み込まれうる(例えば、国際公開第2015/113005号パンフレットを参照されたい)。この手法は、1つの細胞毒性機構を除去する一方で、別の細胞毒性機構を保持又は付加し、また、T細胞エピトープ提示の送達又は「抗原播種」を介して、生物内の、標的細胞(複数可)の局所領域に対する免疫刺激を示すことが可能な分子ももたらしうる。さらに、組み込まれるか、又は挿入された異種T細胞エピトープを含む、本発明の細胞ターゲティング分子の、非細胞毒性バリアントは、脊索動物内の免疫刺激、及び/又は脊索動物内の標的細胞の、MHCクラスI分子により提示されるエピトープによる標識付けを伴う適用において有用でありうる。
ある特定の、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞ターゲティング分子が、T細胞エピトープを送達する能力は、様々な条件下、及び、例えば、エクスビボで操作された標的細胞、インビトロで培養された標的細胞、インビトロで培養された組織試料内の標的細胞、又は多細胞生物内のような、インビボ状況にある標的細胞など、非標的バイスタンダー細胞の存在下で達せられうる。
F.ターゲティングされた細胞毒性及び/又は細胞毒性T細胞のエンゲージメントを介する細胞殺滅
ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子は、1)標的細胞によるMHCクラスI提示のための、T細胞エピトープの送達、及び/又は2)強力な細胞毒性をもたらしうる。本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、細胞をターゲティングする結合性領域の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされた細胞に接触すると、本発明の細胞ターゲティング分子は、細胞の死滅を引き起こすことが可能である。細胞殺滅の機構は、例えば、毒素エフェクターポリペプチド領域の酵素活性を介して、直接的な場合もあり、CTL媒介性細胞溶解を介して、間接的な場合もある。
1.T細胞エピトープの送達及びMHCクラスIによる提示を介する、間接的な細胞殺滅
本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態は、標的細胞のMHCクラスI提示経路に送達され、標的細胞の細胞表面に提示されることが可能な、CD8+ T細胞エピトープを含むために、細胞毒性である。例えば、T細胞エピトープを送達する、本発明の、内因性エピトープの脱免疫化を伴うか、又はこれを伴わない、CD8+ T細胞が高度に免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、間接的な細胞殺滅を伴う適用のための、細胞ターゲティング分子の構成要素として使用されうる。
本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、細胞をターゲティングする結合性領域の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされた細胞に接触すると、本発明の細胞ターゲティング分子は、例えば、標的細胞による、1つ又は2つ以上のT細胞エピトープの提示、及びその後における、標的細胞を殺滅するCTLの動員などを介して、細胞の死滅を、間接的に引き起こすことが可能である。
MHCクラスI分子と複合体化された抗原ペプチドの、細胞による提示は、アポトーシス、溶解、及び/又は壊死の導入を介する、細胞毒性T細胞(CTL)による、ターゲティングされた殺滅へと、提示細胞を感作する。加えて、標的細胞を認識するCTLは、例えば、インターフェロンガンマ(IFN−ガンマ;interferon gamma)、腫瘍壊死因子(TNF;tumor necrosis factor)アルファ、マクロファージ炎症性タンパク質1ベータ(MIP−1beta;macrophage inflammatory protein-1 beta)、並びにIL−17、IL−4、及びIL−22などのインターロイキンなどの、免疫刺激性サイトカインを放出しうる。さらに、提示されたエピトープの認識による、CTLの活性化は、提示細胞に対して近位である、他の細胞も、これらの近位の細胞により提示される、ペプチド−MHCクラスI複合体レパートリーに関わらず、無差別的に殺滅する(Wiedemann A et al., Proc Natl Acad Sci USA 103: 10985-90 (2006))。
MHC対立遺伝子の、異なる種内の多様性のために、単一のエピトープだけを含む、本発明の細胞ターゲティング分子は、同じ種の、異なる患者又は対象に対して、有効性の変動を示しうる。しかし、本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態は、各々、標的細胞のMHCクラスI系へと、同時に送達されることが可能な、複数のT細胞エピトープを含みうる。したがって、本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、細胞ターゲティング分子は、それらのMHC分子のエピトープペプチドに対する結合アフィニティーの差違が、大幅である(すなわち、それらのMHC対立遺伝子及び/又はMHC遺伝子型の差違が、大幅である)、異なる対象を治療するのに使用される。加えて、本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態は、複数の細胞殺滅機構を、同時に使用することにより(例えば、複数の、異なるT細胞エピトープを介して、直接的な殺滅及び間接的な殺滅を、同時に使用することにより)、殺滅を回避する、標的細胞の適応(例えば、治療有効性を回避する、標的がん細胞の変異、又は「変異体逃避」)を低減又は防止する。
2.細胞ターゲティング型の志賀毒素細胞毒性を介する、直接的な細胞殺滅
本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態は、触媒的に活性の、志賀毒素エフェクターポリペプチドを含むために、細胞毒性であり、分子内の、免疫原性の、CD8+ T細胞エピトープの存在に関わらない。例えば、本発明の、内因性エピトープの脱免疫化を伴うか、又はこれを伴わない、CD8+ T細胞が高度に免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、例えば、志賀毒素エフェクターポリペプチドの、リボ毒性である酵素活性、又は非触媒性機構(複数可)に起因する、リボソームへの結合及びリボソームの機能に対する干渉などを介する、直接的な細胞殺滅を伴う適用のための、細胞ターゲティング分子の構成要素として使用されうる。
CD8+ T細胞が高度に免疫化された、本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態では、細胞をターゲティングする結合性領域の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされた細胞に接触すると、本発明の細胞ターゲティング分子は、例えば、非ターゲティング型の細胞毒性T細胞の関与などを伴わずに、細胞の死滅を、直接的に引き起こすことが可能である(V−D節、前出を参照されたい)。
G.細胞型の間の選択的細胞毒性
ある特定の、本発明の細胞ターゲティング分子は、非標的バイスタンダー細胞の存在下における、特異的標的細胞の、選択的殺滅において使用される。細胞をターゲティングする結合性領域(複数可)を介して、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドの、特異的細胞への送達をターゲティングすることにより、本発明の細胞ターゲティング分子は、非標的細胞の存在下で、選択された細胞型の、排他的殺滅又は優先的殺滅を結果としてもたらす、細胞型特異的な、制限的細胞殺滅活性を示しうる。同様に、免疫原性のT細胞エピトープの、標的細胞のMHCクラスI経路への送達をターゲティングすることにより、本発明の細胞ターゲティング分子により誘導される、後続のT細胞エピトープの提示、及び標的細胞の、CTL媒介性細胞溶解は、非標的細胞の存在下で、選択された細胞型の、排他的殺滅又は優先的殺滅へと制限されうる。加えて、潜在的に細胞毒性である、両方の構成要素の送達が、非標的細胞の存在下で、標的細胞へと、排他的に、又は優先的に制限されるように、細胞毒性の志賀毒素エフェクターポリペプチド領域、及び免疫原性のT細胞エピトープの両方の、細胞ターゲティング型送達も、本発明の、単一の細胞ターゲティング分子により達せられうる。
ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子は、ある特定の濃度で、細胞毒性である。ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子を、細胞型の混合物へと投与すると、細胞毒性である細胞ターゲティング分子は、細胞外標的生体分子と、物理的にカップリングされた細胞を、細胞外標的生体分子と、物理的にカップリングされていない細胞型と比較して、選択的に殺滅することが可能である。ある特定の実施形態では、本発明の、細胞毒性である細胞ターゲティング分子は、2つ又は3つ以上の異なる細胞型の混合物中の、特異的細胞型の死滅を、選択的に、又は優先的に引き起こすことが可能である。これは、細胞毒性活性を、特異的細胞型へと、標的生体分子を発現しない「バイスタンダー」細胞型に対して、3倍の細胞毒性効果など、高度の優先性でターゲティングすることを可能とする。代替的に、標的生体分子が、十分に低量で発現する、及び/又は低量で、ターゲティングされない細胞型と、物理的にカップリングする場合、結合性領域の標的生体分子の発現は、排他的に1つの細胞型への発現ではない場合がある。これは、著明量の標的生体分子を発現しないか、又は著明量の標的生体分子と物理的にカップリングされていない、「バイスタンダー」細胞型に対して、3倍の細胞毒性効果など、高度の優先性による、特異的細胞型に対する、ターゲティングされた細胞殺滅を可能とする。
ある特定のさらなる実施形態では、細胞毒性である細胞ターゲティング分子を、2つの異なる細胞型の集団へと投与すると、細胞毒性である細胞ターゲティング分子は、そのメンバーが、細胞毒性である細胞ターゲティング分子の結合性領域の、細胞外標的生体分子を発現しない細胞の集団に対する、細胞毒性である、同じ細胞ターゲティング分子のCD50用量の、少なくとも3分の1の用量で、そのメンバーが、細胞毒性である細胞ターゲティング分子の結合性領域の、細胞外標的生体分子を発現する、標的細胞の集団上において、50%細胞毒性濃度(CD50)により規定される細胞死を引き起こすことが可能である。
ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子の、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされた細胞型の集団に対する細胞毒性活性は、結合性領域の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされていない細胞型の集団に対する細胞毒性活性の、少なくとも3倍である。本発明に従い、選択的細胞毒性は、(a)結合性領域の標的生体分子と物理的にカップリングされた、特異的細胞型の細胞集団に対する細胞毒性の、(b)結合性領域の標的生体分子と物理的にカップリングされていない細胞型の細胞集団に対する細胞毒性に対する比(a/b)との関係で定量されうる。ある特定の実施形態では、細胞毒性比は、結合性領域の標的生体分子と物理的にカップリングされていない、細胞又は細胞型の集団と比較した、結合性領域の標的生体分子と物理的にカップリングされた、細胞又は細胞型の集団について、少なくとも3倍、5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、75倍、100倍、250倍、500倍、750倍、又は1000倍である、選択的細胞毒性を指し示す。
ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子の、優先的細胞殺滅機能又は選択的細胞毒性は、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド内に存在する、さらなる外因性素材(例えば、細胞毒性素材)及び/又は異種T細胞エピトープのためであり、必ずしも、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域の触媒活性の結果ではない。
この優先的細胞殺滅機能は、様々な条件下、及びエクスビボで操作された細胞型の混合物、インビトロで培養された、細胞型の混合物を伴う組織、又はインビボにおける、複数の細胞型の存在下(例えば、多細胞生物内の、インサイチュー又は天然の位置における)など、非標的バイスタンダー細胞の存在下における、ターゲティングされた細胞の、ある特定の、細胞毒性である、本発明の細胞ターゲティング分子による殺滅を可能とする。
H.ターゲティングされた細胞の内部への、さらなる外因性素材の送達
細胞毒性適用、細胞増殖抑制適用、及び免疫刺激適用に加えて、本発明の細胞ターゲティング分子は、例えば、情報収集及び診断機能を伴う適用などにおける、ターゲティングされた細胞内送達機能のために使用されてもよい。
その細胞毒性低減形態及び/又は非毒性形態を含む、本発明の細胞ターゲティング分子は、細胞ターゲティング分子の結合性領域により認識される、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされた細胞に侵入することが可能であるため、本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態は、さらなる外因性素材を、標的細胞型の内部へと送達するのに使用されうる。例えば、細胞毒性である、本発明の細胞ターゲティング分子の非毒性バリアント、又は細胞毒性であってもよいバリアントは、さらなる外因性素材を、細胞ターゲティング分子の結合性領域の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされた細胞へと送達する、及び/又はこれらの内部を標識付けするのに使用されうる。標的生体分子を、少なくとも1つの細胞表面へと発現する、多様な種類の細胞及び/又は細胞集団は、外因性素材を受け取るために、本発明の細胞ターゲティング分子によりターゲティングされうる。多様な志賀毒素エフェクターポリペプチド、さらなる外因性素材、及び結合性領域を、例えば、腫瘍細胞についての非侵襲性のインビボイメージングなど、カーゴ送達を伴う、多岐にわたる適用に適切な細胞ターゲティング分子をもたらすように、互いと会合させうるという点で、本発明の機能的構成要素はモジュラーである。
ある特定の、本発明の細胞ターゲティング分子による、外因性素材機能の、この送達は、様々な条件下、及び、例えば、エクスビボで操作された標的細胞、インビトロで培養された標的細胞、インビトロで培養された組織試料内の標的細胞、又は多細胞生物内のような、インビボ状況にある標的細胞など、非標的バイスタンダー細胞の存在下で達せられうる。さらに、ある特定の、本発明の細胞ターゲティング分子による、外因性素材の、ある特定の細胞への選択的送達は、様々な条件下、及びエクスビボで操作された細胞型の混合物、インビトロで培養された、細胞型の混合物を伴う組織、又はインビボにおける、複数の細胞型の存在下(例えば、多細胞生物内の、インサイチュー又は天然の位置における)など、非標的バイスタンダー細胞の存在下で達せられうる。
ある特定の濃度範囲など、標的細胞を殺滅すること、及び/又は標的細胞のMHC分子による細胞表面提示のために、組み込まれるか、又は挿入されたエピトープを送達することが可能でない、志賀毒素エフェクターポリペプチド、及び細胞ターゲティング分子も、例えば、検出促進剤などの外因性素材を、細胞へと送達するために、なおも有用でありうる。
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、低細胞毒性〜無細胞毒性を示し、したがって、本明細書では、「非細胞毒性及び/又は低減細胞毒性」と称される。ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子は、低細胞毒性〜無細胞毒性を示し、「非細胞毒性バリアント」及び/又は「低減細胞毒性バリアント」と称されうる。例えば、本発明の分子についての、ある特定の実施形態は、著明レベルの、志賀毒素ベースの細胞毒性を示さず、この場合、例えば、当業者に公知のアッセイ及び/又は本明細書で記載されるアッセイなどにより測定される通り、1000nM、500nM、100nM、75nM、50nM未満の用量で、適切な参照分子と比較して、著明量の細胞死が見られない。ある特定のさらなる実施形態では、本発明の分子は、哺乳動物レシピエント1kg当たりの投与量1〜100μgで、毒性を示さない。細胞毒性低減バリアントは、ある特定の濃度又は投与量において、なおも細胞毒性でありうるが、例えば、ある特定の状況において、著明レベルの志賀毒素細胞毒性を示すことが可能でないなど、細胞毒性の低減を示す。
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、及びこれを含む、ある特定の細胞ターゲティング分子は、例えば、志賀毒素Aサブユニット及び/又は志賀毒素エフェクターポリペプチドを不活化させることが当業者に公知である、1つ又は2つ以上のアミノ酸置換の付加であって、本明細書で記載される、例示的な置換を含む付加などを介して、非細胞毒性とされうる。本発明の細胞ターゲティング分子の非細胞毒性バリアント及び低減細胞毒性バリアントは、ある特定の状況では、さらなる外因性素材の送達に、細胞毒性の大きなバリアントより適切でありうる。
診断機能のための情報の収集
ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子は、インビトロ及び/又はインビボにおける、特異的細胞、細胞型、及び/又は細胞集団のほか、前述のうちのいずれかの、特異的細胞内区画の検出において使用される。検出促進剤へとコンジュゲートされた、細胞毒性である、本発明の細胞ターゲティング分子の、細胞毒性低減形態及び/又は非毒性形態は、例えば、同じ標的生体分子、重複エピトープ、及び/又は同じエピトープに、高アフィニティーで結合する結合性領域など、同じ結合性領域又は同様の結合性領域を含む治療レジメンと共に使用される、コンパニオン診断剤など、診断機能のために使用されてもよい。
ある特定の実施形態では、本明細書で記載される細胞ターゲティング分子は、診断及び治療の両方に、又は診断単独に使用される。同じ、細胞毒性である細胞ターゲティング分子が、診断及び治療の両方に使用される場合、本発明のある特定の実施形態では、診断のための検出促進剤を組み込む、細胞ターゲティング分子のバリアントは、本明細書で記載される、例示的な置換を含む、1つ又は2つ以上のアミノ酸置換を介する、その志賀毒素エフェクターポリペプチド領域(複数可)の触媒性不活化により、その細胞毒性を低減される場合もあり、非毒性とされる場合もある。例えば、本発明の細胞ターゲティング分子の、ある特定の非毒性バリアントは、用量1mg/kg未満の投与の後において、5%、4%、3%、2%、又は1%未満の標的細胞の死滅を示す。細胞毒性低減バリアントは、ある特定の濃度又は投与量において、なおも細胞毒性でありうるが、例えば、本明細書で記載される、著明レベルの志賀毒素細胞毒性を示すことが可能でないなど、細胞毒性の低減を示す。
当技術分野で公知の検出促進剤を、多様な、本発明の細胞ターゲティング分子へとコンジュゲートさせる能力は、例えば、がん細胞、腫瘍細胞、免疫細胞、及び/又は感染細胞など、ある特定の細胞の検出に有用な組成物をもたらす。本発明の細胞ターゲティング分子についての、これらの診断的実施形態は、当技術分野で公知の、多様なイメージング法及びイメージングアッセイを介する情報収集に使用されうる。例えば、本発明の細胞ターゲティング分子についての、診断的実施形態は、患者又は生検試料における、個別のがん細胞、免疫細胞、及び/又は感染細胞の細胞内小器官(例えば、エンドサイトーシス区画、ゴルジ区画、小胞体区画、及び細胞質ゾル区画)に対するイメージングを介する情報収集に使用されうる。
診断的使用のためであれ、他の使用のためであれ、本発明の細胞ターゲティング分子についての、診断的実施形態を使用して、多様な種類の情報が収集されうる。この情報は、例えば、新生物性細胞型の診断、患者の疾患の治療感受性の決定、時間経過にわたる、抗新生物療法の進行についてのアッセイ、時間経過にわたる、免疫調節療法の進行についてのアッセイ、時間経過にわたる、抗微生物療法の進行についてのアッセイ、移植素材中の、感染細胞の存在についての査定、移植素材中の、望ましくない細胞型の存在についての査定、及び/又は腫瘍塊の、手術による切除の後における、遺残腫瘍細胞の存在についての査定において、有用でありうる。
例えば、本発明の細胞ターゲティング分子の診断用バリアントを使用して収集される情報を使用して、患者の亜集団が確認される場合があり、次いで、これらの診断用実施形態を使用して明らかにされる、それらの独自の特徴(複数可)に基づき、個々の患者が、亜集団へと、さらに類別されうるであろう。例えば、具体的な医薬又は療法の有効性は、患者亜集団を規定するのに使用される基準でありうるであろう。例えば、特定の、細胞毒性である、本発明の細胞ターゲティング分子の、非毒性の診断用バリアントは、この、本発明の細胞ターゲティング分子の細胞毒性バリアントに対して、肯定的に応答することが予測される、患者のクラス又は亜集団に、どの患者が入るのかを識別するのに使用されうる。したがって、細胞毒性である、本発明の細胞ターゲティング分子の、非毒性のバリアントを含む、本発明の細胞ターゲティング分子を使用する、患者の同定、患者の層別化、及び診断のための、関連する方法も、本発明の範囲内にあると考えられる。
例えば、直接的な細胞殺滅、間接的な細胞殺滅、T細胞エピトープのような外因性素材の送達、及び/又は情報の収集のためなど、本発明の細胞ターゲティング分子による細胞ターゲティングのために、細胞による標的生体分子の発現が天然である必要はない。標的生体分子の、細胞表面における発現は、感染、病原体の存在、及び/又は細胞内の微生物病原体の存在の結果でありうるであろう。標的生体分子の発現は、例えば、ウイルス性発現ベクターによる感染の後において、強制又は誘導される発現など、人工的な場合もあり、例えば、アデノウイルス系、アデノ随伴ウイルス系、及びレトロウイルス系を参照されたい。HER2の発現は、細胞を、イオン化放射線へと曝露することにより誘導されうる(Wattenberg M et al., Br J Cancer 110: 1472-80 (2014))。
VI.本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、及びこれを含む細胞ターゲティング分子の、作製、製造、及び精製
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、及びある特定の細胞ターゲティング分子は、当業者に周知の技法を使用して作製されうる。例えば、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞ターゲティング分子は、標準的合成法により製造される場合もあり、組換え発現系の使用により製造される場合もあり、他の任意の適切な方法により製造される場合もある。したがって、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞ターゲティング分子は、例えば、(1)標準的な固相法又は液相法を使用して、段階的に、又は断片アセンブリーにより、細胞ターゲティング分子のポリペプチド若しくはポリペプチド構成要素を合成し、最終的なポリペプチド化合生成物を単離及び精製する方法;(2)本発明の細胞ターゲティング分子のタンパク質若しくはタンパク質構成要素をコードするポリヌクレオチドを、宿主細胞内で発現させ、発現産物を、宿主細胞若しくは宿主細胞培養物から回収する方法;又は(3)本発明の細胞ターゲティング分子のポリペプチド若しくはポリペプチド構成要素をコードするポリヌクレオチドの、無細胞のインビトロ発現法、及び発現産物を回収する方法を含む、多数の方式で合成される場合もあり、(1)、(2)、又は(3)の方法の任意の組合せを行って、タンパク質構成要素の断片を得、その後、ペプチド又はポリペプチド断片を接続して(例えば、ライゲーションして)、ポリペプチド構成要素を得、ポリペプチド構成要素を回収することにより合成される場合もある。
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、本発明の細胞ターゲティング分子、又は本発明の細胞ターゲティング分子のタンパク質構成要素を、固相又は液相のペプチド合成により合成することが好ましい場合がある。本発明のポリペプチド及び細胞ターゲティング分子は、標準的な合成法により、適切に製造されうる。したがって、ペプチドは、例えば、ペプチドを、標準的な固相法又は液相法を介して、段階的に、又は断片のアセンブリーにより合成するステップと、最終的なペプチド生成物を、単離及び精製するステップとを含む方法により合成されうる。この文脈では、国際公開第1998/011125号パンフレット、又は、とりわけ、Fields G et al., Principles and Practice of Solid-Phase Peptide Synthesis (Synthetic Peptides, Grant G, ed., Oxford University Press, U.K., 2nd ed., 2002)、及びこの中の合成例が参照されうる。
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞ターゲティング分子は、当技術分野で周知の組換え法を使用して調製(作製及び精製)されうる。一般に、コードするポリヌクレオチドを含むベクターで形質転換されるか、又はこれをトランスフェクトされた宿主細胞を培養し、タンパク質を、細胞培養物から精製又は回収することにより、タンパク質を調製するための方法については、例えば、Sambrook J et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, U.S., 1989); Dieffenbach C et al., PCR Primer: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, N.Y., U.S., 1995)において記載されている。任意の適切な宿主細胞は、本発明のポリペプチド及び/又は細胞ターゲティングタンパク質を作製するのに使用されうる。宿主細胞は、本発明のポリペプチドの発現を駆動する、1つ又は2つ以上発現ベクターを、安定的に、又は一過性にトランスフェクトされるか、これらにより形質転換されるか、これらを形質導入するか、又はこれらを感染させられる細胞でありうる。加えて、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は細胞ターゲティング分子は、細胞毒性の変更、細胞増殖抑制効果の変更、及び/又は血清半減期の変更など、所望の特性を達成するために、1つ若しくは2つ以上のアミノ酸の変化、又は1つ若しくは2つ以上のアミノ酸の欠失若しくは挿入を結果としてもたらす、本発明のポリペプチド又は細胞ターゲティングタンパク質をコードするポリヌクレオチドの修飾により作製されうる。
本発明のポリペプチド又は細胞ターゲティングタンパク質を作製するのに選び出されうる、多種多様な発現系が存在する。例えば、本発明の細胞ターゲティングタンパク質を発現させるための宿主生物は、大腸菌及び枯草菌(B. subtilis)などの原核生物、酵母及び糸状菌(出芽酵母(S. cerevisiae)、メタノール資化酵母(P. pastoris)、アワモリコウジカビ(A. awamori)、及びK.ラクティス(K. lactis)のような)、藻類(コナミドリムシ(C. reinhardtii)のような)、昆虫細胞株、哺乳動物細胞(CHO細胞のような)、植物細胞株などの真核生物、及びトランスジェニック植物(シロイヌナズナ(A. thaliana)及びベンサミアナタバコ(N. benthamiana)のような)などの真核生物を含む。
したがって、本発明はまた、上記で列挙された方法に従い、本発明のポリペプチド、若しくは本発明の細胞ターゲティングタンパク質のタンパク質構成要素の一部若しくは全部をコードするポリヌクレオチド、宿主細胞へと導入されると、本発明のポリペプチド若しくは細胞ターゲティングタンパク質の一部若しくは全部をコードすることが可能な、少なくとも1つの、本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクター、及び/又は本発明のポリヌクレオチド若しくは発現ベクターを含む宿主細胞を使用して、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は細胞ターゲティング分子を作製するための方法も提供する。
宿主細胞系又は無細胞系において、組換え法を使用して、タンパク質が発現される場合、高純度であるか、又は実質的に均質である調製物を得るために、所望のタンパク質を、宿主細胞因子など、他の構成要素から分離(又は精製)することが有利である。精製は、遠心分離法、抽出法、クロマトグラフィー/分画法(例えば、ゲル濾過によるサイズ分離、イオン交換カラムによる電荷分離、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、シリカ上又はDEAEなどのカチオン交換樹脂上におけるクロマトグラフィー、等電点電気泳動、及び夾雑物を除去する、Protein A Sepharoseクロマトグラフィー)、及び沈殿法(例えば、エタノール沈殿又は硫酸アンモニウム沈殿)など、当技術分野で周知の方法により達せられうる。本発明のポリペプチド及び/又は細胞ターゲティング分子の純度を増大させるのに、任意の数の生化学的精製法が使用されうる。ある特定の実施形態では、本発明のポリペプチド及び細胞ターゲティング分子は、ホモ多量体形態(例えば、2つ又は3つ以上の本発明のポリペプチド又は細胞ターゲティング分子を含む分子複合体)中で精製されてもよい。
下記の実施例は、例示的な、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞ターゲティング分子を作製するための方法の非限定例のほか、作製法についての、具体的であるが、非限定的な態様についての記載である。
VII.本発明の細胞ターゲティング分子を含む、医薬組成物及び診断用組成物
本発明は、下記に、さらに詳細に記載される状態、疾患、障害、又は症状(例えば、がん、悪性腫瘍、非悪性腫瘍、増殖異常、免疫障害、及び微生物感染)の治療又は予防のための、単独の、又は医薬組成物中に、1つ又は2つ以上の、さらなる治療剤と組み合わせた使用のための、志賀毒素エフェクターポリペプチド、及び細胞ターゲティング分子を提供する。ある特定の実施形態では、1つ又は2つ以上の、さらなる治療剤は、本明細書で記載される、1つ又は2つ以上の、さらなるHER2ターゲティング療法剤を含む。さらなるHER2ターゲティング療法剤は、抗HER2抗体療法、又はHER2シグナル伝達に干渉する低分子阻害剤を含みうるか、これらから本質的になりうるか、又はこれらからなりうる。さらなるHER2ターゲティング療法剤は、HER2シグナル伝達に干渉する低分子阻害剤を含みうるか、これらから本質的になりうるか、又はこれらからなりうる。例えば、さらなるHER2ターゲティング療法剤は、ラパチニブ及び/又はネラチニブなどの、二重チロシンキナーゼ阻害剤を含みうるか、これらから本質的になりうるか、又はこれらからなりうる。例えば、さらなるHER2ターゲティング療法剤は、ラパチニブを含みうるか、これらから本質的になりうるか、又はこれらからなりうる。例えば、さらなるHER2ターゲティング療法剤は、ネラチニブを含みうるか、これらから本質的になりうるか、又はこれらからなりうる。さらなるHER2ターゲティング療法剤は、本発明の細胞ターゲティング分子が結合する抗原決定基と重複しない抗原決定基に結合するか、又は、結合しても、さらなるHER2ターゲティング療法剤が、本発明の細胞ターゲティング分子による、このHER2分子への結合を妨げないような形で、HER2分子に結合する抗HER2抗体療法を含みうるか、これらから本質的になりうるか、又はこれらからなりうる。例えば、さらなるHER2ターゲティング療法剤は、抗HER2モノクローナル抗体療法、及び/又は抗HER2抗体薬コンジュゲート療法を含みうるか、これらから本質的になりうるか、又はこれらからなりうる。例えば、さらなるHER2ターゲティング療法剤は、T−DM1、トラスツズマブ、及び/又はペルツズマブを含みうるか、これから本質的になりうるか、又はこれからなる。例えば、さらなるHER2ターゲティング療法剤は、T−DM1を含みうるか、これから本質的になりうるか、又はこれからなる。例えば、さらなるHER2ターゲティング療法剤は、トラスツズマブ及び/又はペルツズマブを含みうるか、これから本質的になりうるか、又はこれからなる。例えば、さらなるHER2ターゲティング療法剤は、トラスツズマブを含みうるか、これらから本質的になりうるか、又はこれらからなりうる。例えば、さらなるHER2ターゲティング療法剤は、ペルツズマブを含みうるか、これらから本質的になりうるか、又はこれらからなりうる。
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、本明細書で記載される、少なくとも1つの、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は媒体をさらに含む。本発明は、本発明の志賀毒素ポリペプチド、若しくは細胞ターゲティング分子、又は本発明に従う、その薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を、少なくとも1つの、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は媒体と併せて含む医薬組成物をさらに提供する。ある特定の実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、溶媒、分散媒、コーティング、抗微生物薬剤、等張剤、若しくは吸収遅延剤を含む;及び/又は医薬組成物は、水性担体若しくは非水性担体;界面活性剤;安定化剤、保存剤、緩衝剤、抗酸化剤、保湿剤、乳化剤、分散剤;等張剤;及び/又は抗菌剤若しくは抗真菌剤をさらに含む。
ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド又は細胞ターゲティング分子の、ホモ多量体形態及び/又はヘテロ多量体形態を含みうる。ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、本発明の細胞ターゲティング分子の、単量体形態及び/又は一価形態を含みうる。ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、本発明の細胞ターゲティング分子の、単量体形態及び/又は一価形態について強化されうる。適用例により裏付けられる通り、ある特定の細胞ターゲティング分子の、一価形態及び/又は単量体形態を主に含む組成物は、HER2発現細胞に対する、依然として強力な細胞毒性を示しながら、インビボにおいて使用されると、低レベルの毒性を示しうる。本発明の医薬組成物は、下記でさらに詳細に記載される、疾患、状態、障害、又は症状を治療、改善、又は予防する方法において有用である。疾患、障害、又は状態は、HER2と物理的にカップリングされた細胞により特徴づけられうる。HER2標的生体分子は、細胞の表面と物理的にカップリングされている場合がある。ある特定の実施形態では、疾患、障害、又は状態は、HER2標的生体分子を発現する細胞(HER2を過剰発現する細胞を含む)により特徴づけられうる。HER2は、細胞の表面において発現(過剰発現を含む)されうる。このような、各疾患、各状態、各障害、又は各症状は、本発明に従う医薬組成物の使用に関する、別個の実施形態であることが想定される。本発明は、下記でより詳細に記載される、本発明に従う治療の、少なくとも1つの方法における使用のための医薬組成物をさらに提供する。
本明細書で使用される、「患者」及び「対象」という用語は、任意の生物、一般に、少なくとも1つの疾患、障害、又は状態の症状、徴候(sign及び/又はindication)を提示する、ヒト及び動物などの脊椎動物を指すように、互換的に使用される。これらの用語は、霊長動物、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、愛玩動物(例えば、ネコ、イヌなど)、及び実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラットなど)の非限定例などの哺乳動物を含む。
本明細書で使用される、「〜を治療する」、「〜を治療すること」、又は「治療」、及びこれらの文法的変化形は、有益であるか、又は所望の臨床結果を得る手法を指す。用語は、状態、障害、若しくは疾患の発生若しくは発症速度を緩徐化すること、これと関連する症状を低減若しくは緩和すること、状態の完全な退縮若しくは部分的な退縮をもたらすこと、又は上記のいずれかによる、何らかの組合せを指す場合がある。本発明の目的では、有益であるか、又は所望の臨床結果は、検出可能であれ、検出不能であれ、症状の低減又は緩和、疾患の程度の減少、疾患の状態の安定化(例えば、非増悪)、疾患の進行の遅延又は緩徐化、疾患状態の改善又は抑制、及び寛解(部分寛解であれ、完全寛解であれ)を含むがこれらに限定されない。「〜を治療する」、「〜を治療すること」、又は「治療」はまた、治療を施されない場合に予測される生存時間と比べた、生存の延長も意味しうる。したがって、治療を必要とする対象(例えば、ヒト)は、既に、問題の疾患又は障害に罹患している対象でありうる。「〜を治療する」、「〜を治療すること」、又は「治療」という用語は、病理学的状態又は症状の重症度の増大の、治療の非存在と比べた阻害又は軽減を含むが、対象とする疾患、障害、又は状態の、完全な根絶を含意することは、必ずしも意図されない。腫瘍及び/又はがんに関して、治療は、全体的な腫瘍負荷及び/又は個々の腫瘍サイズの低減を含む。
本明細書で使用される、「〜を予防する」、「〜を予防すること」、「予防」という用語、及びこれらの文法的変化形は、状態、疾患、又は障害の発症を予防するか、又はこれらの病理を変化させる手法を指す。したがって、「予防」とは、予防的(prophylactic又はpreventive)手段を指す場合がある。本発明の目的では、有益であるか、又は所望の臨床結果は、検出可能であれ、検出不能であれ、疾患の症状、進行、又は発生の予防又は緩徐化を含むがこれらに限定されない。したがって、予防を必要とする対象(例えば、ヒト)は、未だ、問題の疾患又は障害に罹患していない対象でありうる。「予防」という用語は、疾患の発生の、治療の非存在と比べた緩徐化を含むが、対象とする疾患、障害、又は状態の、恒久的な予防を含意することは、必ずしも意図されない。したがって、ある特定の文脈における、状態「を予防すること」又は状態の「予防」とは、状態を発症する危険性を低減するか、又は状態と関連する症状の発症を予防するか、若しくは遅延させることを指しうる。
本明細書で使用される、「有効量」又は「治療有効量」とは、標的状態を、予防若しくは治療すること、又は状態と関連する症状を、有益に緩和することなど、対象において、少なくとも1つの、所望の治療効果をもたらす、組成物(例えば、治療用組成物、治療用化合物、又は治療剤)の量又は用量である。最も所望される治療有効量とは、それを必要とする、所与の対象のために、当業者により選択される、特定の治療の、所望の有効性をもたらす量である。この量は、治療用組成物の特徴(活性、薬物動態、薬力学、及びバイオアベイラビリティーを含む)、対象の生理学的状態(年齢、性別、疾患の種類、病期、全般的健康状態、所与の投与量に対する応答性、及び医薬の種類を含む)、製剤中の、薬学的に許容される、1つ又は2つ以上の担体の性質、及び投与経路を含むがこれらに限定されない、当業者により理解される、様々な因子に応じて変動するであろう。臨床技術分野及び薬理学技術分野における当業者は、規定の実験を介して、すなわち、組成物の投与に対する、対象の応答をモニタリングし、これに応じて、投与量を調整することにより、治療有効量を決定することが可能であろう(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (Gennaro A, ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, U.S., 19th ed., 1995)を参照されたい)。
本発明の診断用組成物は、本発明の細胞ターゲティング分子と、1つ又は2つ以上の検出促進剤とを含む。本発明の診断用組成物を、作製又は製造する場合、本発明の細胞ターゲティング分子は、1つ又は2つ以上の検出促進剤へと、直接的に、又は間接的に連結されうる。多様な検出促進剤を、タンパク質又は分子のタンパク質性構成要素、とりわけ、免疫グロブリン及び免疫グロブリン由来ドメインへと組み込む、固定する、及び/又はコンジュゲートするための、当業者に公知の標準的技法が、多数存在する。
生物の疾患、障害、又は状態に対する、診断適用及び/又は予後診断適用などのための情報収集法のために、本発明のポリペプチド又は細胞ターゲティング分子に作動可能に連結されうる、同位体、染料、比色薬剤、造影剤、蛍光剤、生物発光剤、及び磁性剤など、当業者に公知の検出促進剤が多数存在する(例えば、Cai W et al., J Nucl Med 48: 304-10 (2007); Nayak T, Brechbiel M, Bioconjug Chem 20: 825-41 (2009); Paudyal P et al., Oncol Rep 22: 115-9 (2009); Qiao J et al., PLoS ONE 6: e18103 (2011); Sano K et al., Breast Cancer Res 14: R61 (2012)を参照されたい。)。これらの薬剤は、任意の適切な位置において、本発明のポリペプチド又は細胞ターゲティング分子と会合させうる、これと連結させうる、及び/又はこの中に組み込みうる。例えば、検出促進剤の連結又は組込みは、本発明の分子のアミノ酸残基(複数可)を介する場合もあり、当技術分野で公知の、ある種類の連結であって、リンカー及び/又はキレート剤を含む連結を介する場合もある。薬剤の組込みは、スクリーン手順、アッセイ手順、診断手順、及び/又はイメージング法における、診断用組成物の存在の検出を可能とするような形の組込みである。
同様に、一般に、医療分野で使用される、非侵襲性のインビボイメージング法、例えば、コンピュータ断層撮影イメージング(CTスキャン;computed tomography imaging)、光学イメージング(直接的な蛍光イメージング及び生物発光イメージングを含む)、核磁気共鳴イメージング(MRI;magnetic resonance imaging)、ポジトロン放射断層撮影(PET;positron emission tomography)、単一光子放射断層撮影(SPECT;single-photon emission computed tomography)、超音波コンピュータ断層撮影イメージング、及びx線コンピュータ断層撮影イメージングなど、当業者に公知である、多数のイメージング法が存在する。
VIII.本発明の細胞ターゲティング分子を含む医薬組成物及び/又は診断用組成物の作製又は製造
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞ターゲティング分子のうちのいずれかの、薬学的に許容される塩又は溶媒和物は、本発明の範囲内にある。
本発明の文脈では、「溶媒和物」という用語は、溶質(この場合、本発明に従うタンパク質性化合物又は薬学的に許容されるその塩)と溶媒との間で形成される、化学量論比が規定された複合体を指す。この関連における溶媒は、例えば、水、エタノール、又は別の、薬学的に許容され、典型的に、低分子量である、酢酸又は乳酸などであるがこれらに限定されない有機分子種でありうる。問題の溶媒が水である場合、このような溶媒和物は、通常、水和物と称される。
本発明のポリペプチド及びタンパク質、又はこれらの塩は、保管又は投与のために調製された医薬組成物であって、典型的に、薬学的に許容される担体中に、治療有効量の、本発明の分子、又はその塩を含む医薬組成物として製剤化されうる。「薬学的に許容される担体」という用語は、標準的医薬担体のうちのいずれかを含む。薬学技術分野では、治療用分子への使用のための薬学的に許容される担体が周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Co. (A. Gennaro, ed., 1985)において記載されている。本明細書で使用される、「薬学的に許容される担体」は、任意で全ての、生理学的に許容される、すなわち、適合性である、溶媒、分散媒、コーティング、抗微生物剤、等張剤、及び吸収遅延剤などを含む。薬学的に許容される担体又は希釈剤は、経口投与、直腸内投与、経鼻投与、又は非経口投与(皮下投与、筋内投与、静脈内投与、皮内投与、及び経皮投与を含む)に適切な製剤中で使用される担体又は希釈剤を含む。例示的な、薬学的に許容される担体は、滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌注射用溶液又は滅菌分散液の即席調製物のための滅菌粉末を含む。本発明の医薬組成物において利用されうる、適切な水性担体及び非水性担体の例は、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及びこれらの適切な混合物、オリーブ油などの植物油、並びにオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルを含む。溶液の適正な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング素材を使用することにより維持される場合もあり、分散液の場合には、要求される粒子サイズを維持することにより維持される場合もあり、界面活性剤を使用することにより維持される場合もある。ある特定の実施形態では、担体は、静脈内投与、筋内投与、皮下投与、非経口投与、脊髄内投与、又は表皮投与(例えば、注射又は注入による)に適切である。選択された、投与の経路に応じて、タンパク質又は他の医薬成分は、化合物を、特定の投与経路により患者へと投与される場合に、活性タンパク質が遭遇しうる、低pH及び他の天然の不活化状態の作用から保護することを意図される素材によりコーティングされうる。
本発明の医薬組成物の製剤は、単位剤形で提示されうると好都合であり、薬学技術分野で周知の方法のうちのいずれかにより調製されうる。このような形態では、組成物は、適切な量の活性成分を含有する、単位用量へと分割される。単位剤形は、パッケージが、個別の量の調製物を含有する、パッケージングされた調製物、例えば、バイアル内又はアンプル内に封入された、錠剤、カプセル、及び粉末でありうる。単位剤形はまた、カプセル自体、カシェ自体、又は錠剤自体の場合もあり、適切な数の、これらのパッケージング形態のうちのいずれかの場合もある。単位剤形は、単回投与用量の注射用形態、例えば、ペン形態で提供されうる。組成物は、任意の適切な投与経路及び投与手段のために製剤化されうる。本明細書で記載される治療用タンパク質には、皮下投与方式又は経皮投与方式が、特に、適切でありうる。
本発明の医薬組成物はまた、保存剤、保湿剤、乳化剤、及び分散剤などのアジュバントも含有しうる。微生物の存在の防止は、滅菌手順、並びに多様な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの組入れの両方により確保されうる。糖、塩化ナトリウムなどの等張剤の、組成物への組入れもまた、所望されうる。加えて、注射用医薬形態の吸収の延長も、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなど、吸収を遅延させる薬剤の組入れによりもたらされうる。
本発明の医薬組成物はまた、薬学的に許容される抗酸化剤を含んでもよい。例示的な、薬学的に許容される抗酸化剤は、アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化剤;パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニゾール(BHA;butylated hydroxyanisole)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT;butylated hydroxytoluene)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ−トコフェロールなどの、油溶性抗酸化剤;及びクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA;ethylenediamine tetraacetic acid)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤である。
別の態様では、本発明は、本発明の、異なるポリペプチド及び/若しくは細胞ターゲティング分子、又は前出のうちのいずれかのエステル、塩、若しくはアミドのうちの1つ、或いはこれと、少なくとも1つの、薬学的に許容される担体との組合せを含む医薬組成物を提供する。
治療用組成物は、典型的に、滅菌であり、製造条件下及び保管条件下で安定である。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、又は高薬物濃度に適切な、他の秩序構造として製剤化されうる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)などのアルコール、又は任意の適切な混合物を含有する、溶媒又は分散媒でありうる。溶液の適正な流動性は、当技術分野で周知の製剤化学に従い、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することにより維持される場合もあり、分散液の場合には、要求される粒子サイズを維持することにより維持される場合もあり、界面活性剤を使用することにより維持される場合もある。ある特定の実施形態では、組成物中では、等張剤、例えば、糖、及びマンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、又は塩化ナトリウムが、所望でありうる。注射用組成物の吸収の延長は、モノステアリン酸塩及びゼラチンなど、吸収を遅延させる薬剤の、組成物への組入れによりもたらされうる。
皮内適用又は皮下適用のために使用される溶液又は懸濁液は、典型的に、注射用水、生理食塩液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩などの緩衝剤;及び塩化ナトリウム又はデキストロースなどの張性調整剤のうちの1つ又は2つ以上を含む。pHは、塩酸又は水酸化ナトリウム、又はクエン酸塩、リン酸塩、酢酸塩などの緩衝剤などの酸又は塩基で調整されうる。このような調製物は、アンプル内、使い捨て型のシリンジ内、又はガラス製若しくはプラスチック製の複数回投与用バイアル内に封入されうる。
滅菌注射溶液は、本発明のポリペプチド又は細胞ターゲティング分子を、適切な溶媒中に、要求される量で、要求に応じて、上記で記載された成分のうちの1又は組合せと共に組み込んだ後で、滅菌精密濾過することにより調製されうる。分散液は、活性化合物を、分散媒、及び上記で記載された成分など、他の成分を含有する、滅菌媒体へと組み込むことにより調製されうる。滅菌注射溶液を調製するための滅菌粉末の場合、調製法は、有効成分に、滅菌濾過されたその溶液に由来する、任意のさらなる所望の成分を加えた粉末をもたらす、真空乾燥法及び凍結乾燥法(freeze-drying(lyophilization))である。
治療有効量の、本発明のポリペプチド及び/又は細胞ターゲティング分子が、例えば、静脈内注射、皮内注射、又は皮下注射により投与されるように設計される場合、結合剤は、発熱物質非含有で、非経口的に許容可能な水溶液形態であろう。適切なpH、等張性、安定性などを考慮に入れて、非経口的に許容可能なタンパク質溶液を調製するための方法は、当技術分野の技術の範囲内にある。静脈内注射、皮内注射、又は皮下注射に好ましい医薬組成物は、結合剤に加えて、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース/塩化ナトリウム注射液、乳酸加リンゲル注射液、又は当技術分野で公知の他の媒体などの等張性媒体を含有するであろう。本発明の医薬組成物はまた、安定化剤、保存剤、緩衝剤、抗酸化剤、又は当業者に周知の他の添加剤も含有しうる。
本明細書の別の箇所で記載される通り、本発明のポリペプチド及び/又は細胞ターゲティング分子は、インプラント、経皮パッチ、及びマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤など、活性の治療剤を、急速な放出に対して保護する担体と共に、調製されうる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸など、生体分解性の、生体適合性ポリマーが使用されうる。このような製剤を調製するための、多くの方法が、特許を付与されるか、又は一般に、当業者に公知である(例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems (Robinson J, ed., Marcel Dekker, Inc., NY, U.S., 1978)を参照されたい)。
ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、例えば、クエン酸塩、クエン酸、ヒスチジン、リン酸塩、コハク酸塩、及び/又はコハク酸などの緩衝剤を含む。ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、例えば、マンニトール又はソルビトールなどの、保存剤、抗菌、又は抗真菌剤を含む。ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、例えば、ポリソルベート20又はポリソルベート80などの界面活性剤を含む。ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、例えば、ポリソルベート20又はポリソルベート80などの低温保護剤を含む。ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、例えば、アルギニン、硫酸アルギニン、グリセロール、マンニトール、メチオニン、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ソルビトール、スクロース、及び/又はトレハロースなどの賦形剤を含む。ある特定のさらなる実施形態では、本発明の医薬組成物は、クエン酸塩、ポリソルベート20、ナトリウム、ソルビトール、及び塩化物のうちの、1つ又は2つ以上(これらの全てを含む)を含む。ある特定のさらなる実施形態では、医薬組成物は、20ミリモル濃度のクエン酸塩、200ミリモル濃度のソルビトール、及び0.2%のポリソルベート20を含む。ある特定のさらなる実施形態では、室温(例えば、約25℃)において、医薬組成物は、約5.3〜5.7のpH、5.4〜5.6の間のpH、及び/又は5.5のpHを有する。
ある特定の実施形態では、本発明の組成物(例えば、医薬組成物及び/又は診断用組成物)は、本発明の細胞ターゲティング分子の、所望のインビボ分布を確保するように製剤化されうる。例えば、血液脳関門は、多くの大型化合物及び/又は親水性化合物を排除する。本発明の治療用分子又は組成物を、特定のインビボ位置へとターゲティングするために、それらは、例えば、特異的な細胞又は臓器へと、選択的に輸送され、これにより、ターゲティング型薬物送達を増強する、1つ又は2つ以上の部分を含みうるリポソーム内に製剤化されうる。例示的なターゲティング部分は、葉酸又はビオチン;マンノシド;抗体;界面活性剤である、プロテインA受容体;p120カテニンなどを含む。
医薬組成物は、インプラント系又は微粒子系として使用されるように設計された非経口製剤を含む。インプラントの例は、ポリマー又はエマルジョンなどの疎水性成分、イオン交換樹脂、及び可溶性塩溶液などから構成されるデポ製剤である。微粒子系の例は、マイクロスフェア、マイクロ粒子、ナノカプセル、ナノスフェア、及びナノ粒子である(例えば、Honda M et al., Int J Nanomedicine 8: 495-503 (2013); Sharma A et al., Biomed Res Int 2013: 960821 (2013); Ramishetti S, Huang L, Ther Deliv 3: 1429-45 (2012)を参照されたい)。制御放出製剤は、例えば、リポソーム、ポロキサマー407、及びヒドロキシアパタイトなど、イオンに対して感受性のポリマーを使用して調製されうる。
本発明の医薬組成物中の、薬学的に許容される担体は、生理学的に許容される溶媒、分散媒、コーティング、抗微生物薬剤、等張剤、吸収遅延剤、滅菌水溶液若しくは滅菌水性分散液、又は滅菌粉末;水、アルコール(例えば、エタノール)、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、又はポリエチレングリコール)、及びこれらの混合物などの、水性担体又は非水性担体;植物油;或いはオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルを含みうる。本発明の医薬組成物は、保存剤、保湿剤、乳化剤、若しくは分散剤などのアジュバント;パラベン、クロロブタノール、フェノール、若しくはソルビン酸などの、抗菌剤若しくは抗真菌剤;糖、マンニトール若しくはソルビトールなどのポリアルコール、又は塩化ナトリウムなどの等張剤;モノステアリン酸アルミニウム若しくはゼラチンなどの吸収遅延剤;レシチンなどのコーティング;薬学的に許容される抗酸化剤;界面活性剤;緩衝剤;及び/又は安定化剤をさらに含みうる。ある特定の実施形態では、薬学的に許容される抗酸化剤は、アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、若しくは亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化剤;アスコルビルパルミチン酸、ブチル化ヒドロキシアニゾール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、若しくはアルファ−トコフェロールなどの油溶性抗酸化剤;又はクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、若しくはリン酸などの金属キレート剤である。
IX.本発明のポリヌクレオチド、発現ベクター、及び宿主細胞
本発明のポリペプチド及び細胞ターゲティング分子を超えて、本発明のポリペプチド及び細胞ターゲティング分子又はこれらの機能的な部分をコードするポリヌクレオチドもまた、本発明の範囲内に包含される。「ポリヌクレオチド」という用語は、それらの各々が、デオキシリボ核酸(DNA;deoxyribonucleic acid)のポリマー、リボ核酸(RNA;ribonucleic acid)のポリマー、ヌクレオチドアナログを使用して作出される、これらのDNA又はRNAのアナログ、並びにこれらの派生物、断片、及びホモログのうちの、1つ又は2つ以上を含む、「核酸」という用語と同等である。本発明のポリヌクレオチドは、一本鎖の場合もあり、二本鎖の場合もあり、三本鎖の場合もある。このようなポリヌクレオチドは、例えば、RNAコドンの第3の位置において許容されることが公知であるが、異なるRNAコドンと同じアミノ酸をコードする揺らぎを考慮に入れると、例示的なタンパク質をコードすることが可能な、全てのポリヌクレオチドを含むことが、具体的に開示される(Stothard P, Biotechniques 28: 1102-4 (2000)を参照されたい)。
一態様では、本発明は、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/若しくは細胞ターゲティング分子、又はこれらの断片若しくは派生物をコードするポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドは、例えば、本発明のポリペプチド又は細胞ターゲティング分子のアミノ酸配列のうちの1つを含むポリペプチドと、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又は99%以上同一であるポリペプチドをコードする核酸配列を含みうる。本発明はまた、厳密な条件下で、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/若しくは細胞ターゲティング分子、又はこれらの断片若しくは派生物、或いは任意のこのような配列のアンチセンス又は相補体をコードするポリヌクレオチドとハイブリダイズするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドも含む。
本発明の分子(例えば、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、及びこれを含む細胞ターゲティング分子)の派生物又はアナログは、とりわけ、同じサイズのポリヌクレオチド(又はポリペプチド)配列にわたり、又はアライメントが、当技術分野で公知の、コンピュータ相同性プログラムによりなされる、アライメントされた配列と比較した場合に、ポリヌクレオチド(又は本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞ターゲティング分子)に対して、例えば、少なくとも約45%、50%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、なお又は99%の同一性(好ましい同一性は、80〜99%である)により、実質的に相同な領域を有するポリヌクレオチド(又はポリペプチド)分子を含む。例示的なプログラムは、Smith T, Waterman M, Adv. Appl. Math 2: 482-9 (1981)によるアルゴリズムを使用する、デフォルト設定を使用する、GAPプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package、Version 8 for UNIX、Genetics Computer Group社, University Research Park、Madison、WI、U.S.)である。また、本発明の細胞ターゲティングタンパク質をコードする配列の相補体と、厳密な条件(例えば、Ausubel F et al., Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons, New York, NY, U.S, 1993)を参照されたい)、及びこれを下回る条件下でハイブリダイズすることが可能なポリヌクレオチドも含まれる。当業者には、厳密な条件が公知であり、例えば、Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons, NY, U.S, Ch. Sec. 6.3.1-6.3.6 (1989))において見出すことができる。
本発明は、本発明の範囲内のポリヌクレオチドを含む発現ベクターをさらに提供する。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は細胞ターゲティング分子をコードすることが可能なポリヌクレオチドは、発現ベクターを作製するための、当技術分野で周知の素材及び方法を使用して、細菌プラスミド、ウイルスベクター、及びファージベクターを含む、公知のベクターへと挿入されうる。このような発現ベクターは、任意の、選ばれた宿主細胞又は無細胞発現系(例えば、pTxb1及びpIVEX2.3)内で想定される、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は細胞ターゲティング分子の作製を支援するのに必要なポリヌクレオチドを含むであろう。当業者には、特異的種類の宿主細胞又は無細胞発現系を伴う使用のための発現ベクターを含む特異的ポリヌクレオチドが周知であり、規定の実験を使用して決定されうる、及び/又は購入されうる。
本明細書で使用される、「発現ベクター」という用語は、1つ又は2つ以上の発現単位を含む、直鎖状又は環状のポリヌクレオチドを指す。「発現単位」という用語は、所望のポリペプチドをコードし、宿主細胞内で、核酸セグメントの発現をもたらすことが可能な、ポリヌクレオチドセグメントを表す。発現単位は、典型的に、全てが、作動可能に構成された、転写プロモーター、所望のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム、及び転写ターミネーターを含む。発現ベクターは、1つ又は2つ以上の発現単位を含有する。したがって、本発明の文脈では、単一のポリペプチド鎖を含む、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は細胞ターゲティング分子をコードする発現ベクターが、単一のポリペプチド鎖のための、少なくとも1つの発現単位を含むのに対し、例えば、2つ又は3つ以上ポリペプチド鎖(例えば、1つの鎖が、VLドメインを含み、第2の鎖が、毒素エフェクターポリペプチドへと連結された、VHドメインを含む)を含むタンパク質は、タンパク質の2つのポリペプチド鎖の各々について1つずつの、少なくとも2つの発現単位を含む。本発明の多重鎖細胞ターゲティングタンパク質を発現させるために、各ポリペプチド鎖の発現単位はまた、異なる発現ベクター上に、個別に含有される場合もある(例えば、発現は、各ポリペプチド鎖のための発現ベクターが導入された、単一の宿主細胞により達成されうる)。
当技術分野では、ポリペプチド及びタンパク質の、一過性発現又は安定的発現を方向付けることが可能な発現ベクターが周知である。発現ベクターは、一般に、それらの各々が、当技術分野で周知である、以下:異種シグナル配列又は異種シグナルペプチド、複製起点、1つ又は2つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列のうちの、1つ又は2つ以上を含むがこれらに限定されない。当技術分野では、利用されうる、任意の調節的制御配列、組込み配列、及び有用なマーカーが公知である。
「宿主細胞」という用語は、発現ベクターの複製又は発現を支援しうる細胞を指す。宿主細胞は、大腸菌など、原核細胞の場合もあり、真核細胞(例えば、酵母細胞、昆虫細胞、両生類細胞、鳥類細胞、又は哺乳動物細胞)の場合もある。本発明のポリヌクレオチドを含むか、又は本発明のポリペプチド及び/若しくは細胞ターゲティング分子を産生することが可能な、宿主細胞株の創出及び単離は、当技術分野で公知の、標準的技法を使用して達せられうる。
本発明の範囲内の、志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は志賀毒素エフェクタータンパク質は、それを、宿主細胞による、より最適の発現など、所望の特性を達成するのに、より適切としうる、1つ若しくは2つ以上のアミノ酸を変化させるか、又は1つ若しくは2つ以上のアミノ酸を欠失させるか、若しくは挿入することを介して、細胞ターゲティング分子のポリペプチド構成要素及び/又はタンパク質性構成要素をコードするポリヌクレオチドを修飾することにより作製される、本明細書で記載されるポリペプチド及び分子の、バリアント又は派生物でありうる。
X.固体基質上に固定化された、本発明の分子
本発明のある特定の実施形態は、固体基質上に固定化された、本発明の分子(例えば、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、細胞ターゲティング分子、融合タンパク質、又はポリヌクレオチド)、又はこれらの任意のエフェクター断片を含む。本明細書で想定される固体基質は、当技術分野で公知の、マイクロビーズ、ナノ粒子、ポリマー、マトリックス材料、マイクロアレイ、マイクロ滴定プレート、又は任意の固体表面(例えば、米国特許第7,771,955号明細書を参照されたい)を含むがこれらに限定されない。これらの実施形態に従い、本発明の分子は、当業者に公知の技法(例えば、Jung Y et al., Analyst 133: 697-701 (2008)を参照されたい)を使用して、例えば、ビーズ、粒子、又はプレートなどの固体基質へと、共有結合的に、又は非共有結合的に連結されうる。固定化された、本発明の分子(例えば、配列番号29、36、102、及び108のうちのいずれか1つを含むか、これからなるか、又は、これから本質的になる、HER2ターゲティング分子)は、当技術分野で公知の技法を使用する、スクリーニング適用のために使用されうる(例えば、Bradbury A et al., Nat Biotechnol 29: 245-54 (2011); Sutton C, Br J Pharmacol 166: 457-75 (2012); Diamante L et al., Protein Eng Des Sel 26: 713-24 (2013); Houlihan G et al., J Immunol Methods 405: 47-56 (2014)を参照されたい)。
本発明の分子が固定化されうる固体基質の非限定例は、マイクロビーズ、ナノ粒子、ポリマー、ナノポリマー、ナノチューブ、磁気ビーズ、常磁性ビーズ、超常磁性ビーズ、ストレプトアビジンコーティングビーズ、逆相磁気ビーズ、カルボキシ終端ビーズ、ヒドラジン終端ビーズ、シリカ(ナトリウムシリカ)ビーズ及びイミノ二酢酸(IDA;iminodiacetic acid)修飾ビーズ、アルデヒド修飾ビーズ、エポキシ活性化ビーズ、ジアミノジプロピルアミン(DADPA;diaminodipropylamine)修飾ビーズ(一級アミン表面基を伴うビーズ)、生体分解性ポリマービーズ、ポリスチレン基質、アミノポリスチレン粒子、カルボキシルポリスチレン粒子、エポキシポリスチレン粒子、ジメチルアミノポリスチレン粒子、ヒドロキシポリスチレン粒子、着色粒子、フローサイトメトリー粒子、スルホン酸ポリスチレン粒子、ニトロセルロース表面、強化ニトロセルロース膜、ナイロン膜、ガラス表面、活性化ガラス表面、活性化石英表面、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF;polyvinylidene difluoride)膜、ポリアクリルアミドベースの基質、ポリ(塩化ビニル)基質、ポリ(メタクリル酸メチル)基質、ポリ(ジメチルシロキサン)基質、及び共有結合的連結を形成することが可能な、光反応性分子種(ニトレンラジカル、カルベンラジカル、及びケチルラジカルなど)を含有する、光ポリマーを含む。本発明の分子が固定化されうる固体基質の、他の例は、一般に、例えば、細胞表面、ファージ、及びウイルス粒子などの分子ディスプレイシステムにおいて使用される。
XI.送達デバイス及びキット
ある特定の実施形態では、本発明は、それを必要とする対象への送達のための、医薬組成物又は診断用組成物など、1つ又は2つ以上の、本発明の、物の組成物を含むデバイスに関する。したがって、1つ又は2つ以上の、本発明の組成物を含む送達デバイスは、静脈内注射、皮下注射、筋内注射、若しくは腹腔内注射;経口投与;経皮投与;肺内投与若しくは経粘膜投与;植込み、浸透圧ポンプ、カートリッジ、若しくはマイクロポンプによる投与を含む、多様な送達方法により;又は当業者により認知される他の手段により、患者へと本発明の物の組成物を投与するのに使用されうる。
本発明の範囲内にはまた、本発明の、少なくとも1つの、物の組成物を含むキットもあり、パッケージング及び使用説明書があってもよい。例えば、本発明は、(i)本発明のHER2ターゲティング分子、(ii)本発明の医薬組成物、(iii)本発明の診断用組成物、(iv)本発明のポリヌクレオチド、(v)本発明の発現ベクター、及び/又は(vi)本発明の宿主細胞を含むキットを提供し;パッケージング及び使用説明書を提供してもよい。キットは、薬物投与及び/又は診断情報の収集に有用でありうる。本発明のキットは、少なくとも1つのさらなる試薬(例えば、標準物質、マーカーなど)を含んでもよい。キットは、典型的に、キットの内容物の、対象となる使用を指し示す表示を含む。キットは、試料中又は対象において、細胞型(例えば、腫瘍細胞)を検出するか、又は患者が、本発明の化合物、組成物、若しくは、例えば、本明細書で記載される方法など、関連する方法を使用する治療戦略に応答する群に属するのかどうかを診断するための試薬及び他のツールをさらに含みうる。
XII.本発明の細胞ターゲティング分子及び/又はその医薬組成物及び/又は診断用組成物を使用するための方法
一般に、本明細書で言及される、ある特定のがん、腫瘍、増殖異常、免疫障害、又はさらなる病理学的状態などの、疾患、障害、及び状態の、予防及び/又は治療において使用されうる、薬理学的な活性薬剤のほか、これを含む組成物を提供することが、本発明の目的である。したがって、本発明は、本発明のポリペプチド、細胞ターゲティング分子、及び医薬組成物を、細胞の、ターゲティングされた殺滅、ターゲティングされた細胞への、さらなる外因性素材の送達、診断情報を収集するための、ターゲティングされた細胞の内部の標識付け、標的細胞のMHCクラスI提示経路への、T細胞エピトープの送達、並びに本明細書で記載される疾患、障害、及び状態の治療のために使用する方法を提供する。例えば、本発明の方法は、がん、がんの始原、腫瘍の始原、転移、及び/又は疾患の再発を予防又は治療するのに使用されうる。
特に、現在、当技術分野で公知の薬剤、組成物、及び/又は方法と比較して、ある特定の利点を有する、このような薬理学的活性薬剤、組成物、及び/又は方法を提供することが、本発明の目的である。したがって、本発明は、指定されたタンパク質配列を伴う、志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞ターゲティング分子、並びにそれらの医薬組成物を使用する方法を提供する。例えば、本明細書で記載されるアミノ酸配列のいずれも、以下の方法、又は例えば、国際公開第2014/164680号パンフレット、国際公開第2014/164693号パンフレット、国際公開第2015/138435号パンフレット、国際公開第2015/138452号パンフレット、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2015/113007号パンフレット、国際公開第2015/191764号パンフレット、米国特許出願第20150259428号明細書、国際公開第2016/196344号パンフレット、国際公開第2017/019623号パンフレット、及び国際公開第2018/140427号パンフレットにおいて記載されている、多様な方法など、当業者に公知の、細胞ターゲティング分子を使用するための任意の方法において使用される、細胞ターゲティング分子の構成要素として、具体的に利用されうる。
本発明は、細胞を殺滅する方法であって、細胞を、インビトロ又はインビボにおいて、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、細胞ターゲティング分子、又は医薬組成物と接触させるステップを含む方法を提供する。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、細胞ターゲティング分子、及び医薬組成物は、1つ又は2つ以上の細胞を、特許請求される、物の組成物のうちの1つと接触させて、特異的細胞型を殺滅するのに使用されうる。ある特定の実施形態では、細胞(複数可)は、HER2と物理的にカップリングされている。ある特定の実施形態では、細胞(複数可)は、HER2を発現(過剰発現を含む)させる。HER2は、細胞の表面において発現(過剰発現を含む)されうる。ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子又は医薬組成物は、がん細胞、感染細胞、及び/又は血液細胞を含む混合物など、異なる細胞型の混合物中の、特異的細胞型を殺滅するのに使用されうる。ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子又は医薬組成物は、異なる細胞型の混合物中のがん細胞を殺滅するのに使用されうる。ある特定の実施形態では、本発明の細胞毒性志賀細胞ターゲティング分子又は医薬組成物は、移植前組織など、異なる細胞型の混合物中の、特異的細胞型を殺滅するのに使用されうる。ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、細胞ターゲティング分子、又は医薬組成物は、治療を目的とする投与前組織素材など、細胞型の混合物中の、特異的細胞型を殺滅するのに使用されうる。ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子又は医薬組成物は、ウイルス若しくは微生物に感染した細胞を選択的に殺滅するか、又は細胞表面局在化HER2バリアントなど、特定の細胞外標的生体分子を発現する細胞を、他の形で選択的に殺滅するのに使用されうる。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、細胞ターゲティング分子、及び医薬組成物は、適用範囲が広く、例えば、インビトロ又はインビボにおいて、望ましくない細胞型を、組織から枯渇させることにおける使用、抗ウイルス薬としての使用、及び移植組織から、望ましくない細胞型を取り除く使用を含む。ある特定の実施形態では、細胞は、muc−4及び/又はCD44を発現する。ある特定の実施形態では、細胞は、T−DM1(トラスツズマブ・エムタンシン)及び/又はトラスツズマブにより引き起こされる細胞毒性に対して耐性である。ある特定の実施形態では、細胞(複数可)は、ペルツズマブ、T−DM1(トラスツズマブ・エムタンシン)、ラパチニブ、及び/若しくはネラチニブの存在下にある;並びに/又は、かつて、ペルツズマブ、T−DM1(トラスツズマブ・エムタンシン)、ラパチニブ、及び/若しくはネラチニブと接触されていた。本発明のある特定の実施形態の中には、細胞(例えば、HER2発現細胞)を殺滅する方法であって、細胞を、本発明の細胞ターゲティング分子、又は本発明の医薬組成物と接触させるステップを含み、細胞が、ペルツズマブ、T−DM1(トラスツズマブ・エムタンシン)、ラパチニブ、及び/若しくはネラチニブの存在下にある;並びに/又は、かつて、ペルツズマブ、T−DM1(トラスツズマブ・エムタンシン)、ラパチニブ、及び/若しくはネラチニブと接触されていた方法がある。ある特定の実施形態では、細胞(複数可)は、T−DM1(トラスツズマブ・エムタンシン)の存在下にある。ある特定の実施形態では、細胞(複数可)は、ペルツズマブの存在下にある。ある特定の実施形態では、細胞(複数可)は、ラパチニブの存在下にある。ある特定の実施形態では、細胞(複数可)は、ネラチニブの存在下にある。ある特定のさらなる実施形態では、細胞(複数可)はかつて、ペルツズマブと接触されていた。ある特定のさらなる実施形態では、細胞(複数可)はかつて、T−DM1(トラスツズマブ・エムタンシン)と接触されていた。ある特定のさらなる実施形態では、細胞(複数可)はかつて、ラパチニブと接触されていた。ある特定のさらなる実施形態では、細胞(複数可)はかつて、ネラチニブと接触されていた。
ある特定の実施形態では、単独の、又は他の化合物若しくは医薬組成物と組み合わせた、ある特定の、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、細胞ターゲティング分子、及び医薬組成物は、インビトロにおいて、又は治療を必要とする患者などの対象のインビボにおいて、細胞の集団へと投与されると、強力な細胞殺滅活性を示しうる。特異的細胞型に対する、高アフィニティーの結合性領域を使用すること、酵素的に活性の志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド及び/又はT細胞エピトープの送達をターゲティングすることにより、細胞殺滅活性は、ある特定のがん細胞、新生物性細胞、悪性細胞、非悪性腫瘍細胞、及び/又は感染細胞など、生物内の、ある特定の細胞型を、特異的かつ選択的に殺滅することに制限されうる。
本発明は、それを必要とする患者における、細胞を殺滅する方法であって、患者へと、少なくとも1つの、本発明の細胞ターゲティング分子、又はその医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。
ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子又はそれらの医薬組成物は、がん細胞又は腫瘍細胞と、物理的にカップリングされて見出される細胞外生体分子をターゲティングすることにより、患者におけるがん細胞を殺滅するのに使用されうる。「がん細胞」又は「がん性細胞」という用語は、異常に加速化された形で、及び/又は調節不能な形で、増殖及び分裂する、多様な新生物性細胞を指すが、当業者には明らかであろう。「腫瘍細胞」という用語は、悪性細胞及び非悪性細胞の両方を含む。一般に、がん及び/又は腫瘍は、治療及び/又は予防に適する、疾患、障害、又は状態と規定されうる。本発明の方法及び組成物から利益を得うる、がん細胞及び/又は腫瘍細胞から構成される、がん及び腫瘍(悪性又は非悪性)は、当業者に明らかであろう。新生物性細胞は、以下のうちの、1つ又は2つ以上:調節不能の増殖、分化の欠如、局所的組織浸潤、血管新生、及び転移と関連することが多い。疾患、障害、及び状態結果として得られるある特定のがん細胞及び/又は腫瘍細胞をターゲティングする、本発明の方法及び組成物から利益を得うる、がん及び/又は腫瘍(悪性又は非悪性)から生じる、疾患、障害、及び状態は、当業者に明らかであろう。例えば、疾患、障害、又は状態は、HER2と物理的にカップリングされた細胞により特徴づけられうる。HER2標的生体分子は、細胞の表面と物理的にカップリングされている場合がある。ある特定の実施形態では、疾患、障害、又は状態は、HER2標的生体分子を発現する細胞(HER2を過剰発現する細胞を含む)により特徴づけられうる。HER2は、細胞の表面において発現(過剰発現を含む)されうる。
本発明の細胞ターゲティング分子及び組成物についての、ある特定の実施形態は、患者が、HER2ターゲティング療法剤を、既に施された後で、患者における、疾患、障害、又は状態(例えば、HER2陽性がん及び/又は腫瘍など)を治療するのに使用されうる。多くの状況では、細胞表面HER2の発現は、例えば、抗HER2モノクローナル抗体療法若しくは抗HER2抗体薬コンジュゲート療法を使用する、HER2ターゲティング療法、又はチロシンキナーゼ阻害剤を使用する、化学療法剤による治療などの治療後においても、疾患の進行時に遷延する。したがって、HER2は、悪性/標的細胞の表面上の標的として、依然として存在し、細胞表面へのドッキング及び細胞への内部化のための、本発明の細胞ターゲティング分子によるターゲティングが可能である。さらに、実施例により裏付けられる通り、本発明の細胞ターゲティング分子(及び細胞ターゲティング分子を含む組成物)は、HER2の非重複抗原決定基に結合する抗HER2抗体療法など、他のHER2ターゲティング療法剤;又は本発明の細胞ターゲティング分子と異なるHER2ターゲティング活性を有するチロシンキナーゼ阻害剤と組み合わせて使用されうる。したがって、本発明の方法において、少なくとも1つの細胞ターゲティング分子又はそれらの医薬組成物を投与される、「それを必要とする患者」は、さらなるHER2ターゲティング療法剤で、かつて治療されたことがある患者(複数可);及び/又はさらなるHER2ターゲティング療法剤による治療を受けつつある患者(複数可)を含む。ある特定の実施形態では、患者(複数可)は、本明細書で記載される、さらなるHER2ターゲティング療法剤でかつて治療されたことがある。ある特定の実施形態では、患者(複数可)は、本明細書で記載される、さらなるHER2ターゲティング療法剤による治療を受けつつある。ある特定の実施形態では、「それを必要とする患者」は、1つ又は2つ以上の、さらなるHER2ターゲティング療法剤による治療に応答しないか、又はこれらから利益を得ない。例えば、これは、とりわけ、獲得耐性及び/又は内因性耐性のためでありうる。ある特定の実施形態では、さらなるHER2ターゲティング療法剤は、チロシンキナーゼ阻害剤、抗HER2モノクローナル抗体療法、又は抗HER2抗体薬コンジュゲート療法を含む。ある特定の実施形態では、さらなるHER2ターゲティング療法剤は、ペルツズマブ、トラスツズマブ、T−DM1(トラスツズマブ・エムタンシン)、ラパチニブ、及び/又はネラチニブのうちの、1つ又は2つ以上を含む。ある特定の実施形態では、さらなるHER2ターゲティング療法剤は、ペルツズマブである。ある特定の実施形態では、さらなるHER2ターゲティング療法剤は、トラスツズマブである。ある特定の実施形態では、さらなるHER2ターゲティング療法剤は、T−DM1(トラスツズマブ・エムタンシン)である。ある特定の実施形態では、さらなるHER2ターゲティング療法剤は、ラパチニブである。ある特定の実施形態では、さらなるHER2ターゲティング療法剤は、ネラチニブである。
本明細書で使用される通り、「さらなるHER2ターゲティング療法剤で、かつて治療されたことがある」、「それを必要とする患者」への言及は、本発明の細胞ターゲティング分子又は医薬組成物による治療の、少なくとも6カ月間(少なくとも5カ月間、4カ月間、3カ月間、2カ月間、又は1カ月間など)、少なくとも6週間(少なくとも5週間、4週間、3週間、2週間、又は1週間など)、又は少なくとも144時間(少なくとも120時間、96時間、72時間、48時間、24時間、12時間、又は6時間など)前に、さらなるHER2ターゲティング療法剤による治療を、最後に投与された患者を含む。
本明細書で使用される通り、「さらなるHER2ターゲティング療法剤による治療を受けつつある」、「それを必要とする患者」への言及は、本発明の細胞ターゲティング分子又は医薬組成物と、さらなるHER2ターゲティング療法剤とを、同時に、又は逐次的に投与される患者を含む。患者は、本発明の細胞ターゲティング分子又は医薬組成物による治療の少なくとも1時間(少なくとも6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、120時間、又は144時間など)、1週間(少なくとも2週間、3週間、4週間、5週間、又は6週間など)、若しくは1カ月間(少なくとも2カ月間、3カ月間、4カ月間、5カ月間、又は6カ月間など)前に、又はこの期間に後続して、さらなるHER2ターゲティング療法剤を投与されうる。
本明細書で使用される通り、1つ又は2つ以上の、さらなるHER2ターゲティング療法剤による治療に応答しないか、又はこれらから利益を得ない、「それを必要とする患者」への言及は、1つ又は2つ以上の、さらなるHER2ターゲティング療法剤に対して、耐性であるか、又はこれらに対する耐性を発症した患者を含む。例えば、薬物耐性は、薬物排出ポンプ又はチトクロームP450酵素(例えば、CYP3A4)の発現のほか、HER2エピトープへの結合を阻止する障害物、例えば、HER2ターゲティング療法剤が結合するエピトープに対する、HER2エピトープマスキングから生じうる。例えば、薬物耐性は、HER2シグナル伝達に対して冗長であるか、又はHER2活性の下流にあり、これにより、HER2を迂回する、活性化生存/増殖経路の存在から生じうる。例えば、薬物耐性は、薬物の有効性を変化させる、HER2における変異であって、例えば、HER2阻害剤が結合するATP結合性ポケットにおける変異などの変異の存在から生じうる。さらなるHER2ターゲティング療法剤の作用機構と結びついた耐性機構は、異なる作用機構をもたらす、本発明のHER2ターゲティング分子により回避することができる。
本発明の細胞ターゲティング分子及び組成物についての、ある特定の実施形態は、対象が、HER2ターゲティング療法を、既に施された後で、対象におけるがん及び/又は腫瘍を治療するのに使用されうる。多くの状況では、HER2は、例えば、抗HER2モノクローナル抗体療法若しくは抗HER2抗体薬コンジュゲート療法を使用する、HER2ターゲティング療法、又はチロシンキナーゼ阻害剤を使用する、化学療法剤による療法などの治療後においても、疾患の進行時に遷延する。したがって、HER2は、悪性/標的細胞の表面上の標的として、依然として存在し、本発明の細胞ターゲティング分子によるターゲティングが可能である。
本発明の細胞ターゲティング分子及び組成物についての、ある特定の実施形態は、一般に、分裂が緩徐であり、化学療法及び放射線のようながん療法に対して耐性である、がん幹細胞、腫瘍幹細胞、前悪性のがん始原細胞、及び腫瘍始原細胞を殺滅するのに使用されうる。
志賀毒素Aサブユニットベースの作用機構のために、本発明の物の組成物は、それらの、例えば、化学療法、免疫療法、放射線、幹細胞移植、及び免疫チェックポイント阻害剤など、他の療法との組合せを伴う方法において、若しくはこれらと相補的な形で、より有効に使用されうる、並びに/又は化学療法耐性細胞/放射線耐性細胞、及び/若しくは休眠腫瘍細胞/腫瘍始原細胞/幹細胞に対して有効でありうる。同様に、本発明の物の組成物は、同じ疾患、障害、又は状態のための、非重複標的上又は異なる標的上の、同じエピトープ以外のエピトープをターゲティングする、他の細胞ターゲティング療法との組合せを伴う方法においても、より有効に使用されうる。これらの他の療法又は他の細胞ターゲティング療法は、本明細書で記載される、さらなるHER2ターゲティング療法剤(複数可)を含む。
本発明の細胞ターゲティング分子、又はその医薬組成物についての、ある特定の実施形態は、免疫細胞と、物理的にカップリングされていることが見出される細胞外生体分子をターゲティングすることにより、患者における免疫細胞(健常であれ、悪性であれ)を殺滅するのに使用されうる。
本発明の細胞ターゲティング分子、又はそれらの医薬組成物についての、ある特定の実施形態は、感染細胞と、物理的にカップリングされていることが見出される細胞外生体分子をターゲティングすることにより、患者における感染細胞を殺滅するのに使用されうる。
本発明の細胞ターゲティング分子、又はそれらの医薬組成物についての、ある特定の実施形態は、脊索動物内に、免疫系を活性化させて、ある箇所の監視を増強するために、非自己であるT細胞エピトープペプチドの提示細胞により、その箇所「に播種する」のに使用されうる。この、本発明の「播種する」方法についての、ある特定のさらなる実施形態では、その箇所は、腫瘍塊又は感染組織部位である。この、本発明の「播種する」方法についての、好ましい実施形態では、非自己であるT細胞エピトープペプチドは、細胞ターゲティング分子の標的細胞により、未だ提示されたことがないペプチド、標的細胞により発現されるタンパク質内に存在しないペプチド、標的細胞のプロテオーム内又はトランスクリプトーム内に存在しないペプチド、播種される部位の細胞外微小環境に存在しないペプチド、及びターゲティングされる腫瘍塊又は感染組織部位に存在しないペプチドからなる群から選択される。
この「播種する」方法は、エフェクターT細胞による認識、及び下流における免疫応答の活性化のために、脊索動物内の、1つ又は2つ以上の標的細胞を、1つ又は2つ以上の、MHCクラスIにより提示されたT細胞エピトープで標識づけるように機能する。本発明の細胞ターゲティング分子の、細胞内部化機能、細胞内経路決定機能、及びT細胞エピトープ送達機能を利用することにより、送達されたT細胞エピトープを提示する標的細胞は、宿主T細胞による、提示する標的細胞の認識、及びCTLによる標的細胞の殺滅を含む、さらなる免疫応答の導入を誘導するのに用いられる。本発明の細胞ターゲティング分子を使用する、この「播種する」方法は、細胞ターゲティング分子により送達されたT細胞エピトープ(複数可)を提示するのであれ、提示しないのであれ、例えば、腫瘍塊又は感染組織部位などの、播種された微小環境内の細胞を攻撃するように、獲得免疫応答を誘導することにより、一時的なワクチン接種効果をもたらしうる。この「播種する」方法はまた、脊索動物内の、標的細胞集団、腫瘍塊、及び/又は感染組織部位に対する、免疫寛容の破壊も誘導しうる。
脊索動物内の、1つ又は2つ以上の抗原性エピトープ及び/又は免疫原性エピトープによる、ある箇所への播種を伴う、ある特定の、本発明の方法は、例えば、本発明の組成物の、サイトカイン、細菌生成物、又は植物サポニンのような、1つ又は2つ以上の免疫アジュバントとの共投与など、ある特定の抗原に対する免疫応答を刺激するように、局所投与されるのであれ、全身投与されるのであれ、免疫アジュバントの投与と組み合わされうる。本発明の方法における使用に適切でありうる、免疫アジュバントの他の例は、例えば、アラム、水酸化アルミニウム、鉱物油、スクアレン、パラフィン油、ラッカセイ油、及びチメロサールなどの、アルミニウム塩及び油を含む。
加えて、本発明は、患者における疾患、障害、又は状態を治療する方法であって、それを必要とする患者へと、治療有効量の、本発明の細胞ターゲティング分子、又はその医薬組成物のうちの少なくとも1つを投与するステップを含む方法を提供する。疾患、障害、又は状態は、HER2/neu/ErbB2と、物理的にカップリングされた細胞により特徴づけられうる。HER2/neu/ErbB2は、細胞の表面と物理的にカップリングされている場合がある。ある特定の実施形態では、疾患、障害、又は状態は、HER2/neu/ErbB2を発現(過剰発現を含む)させる細胞により特徴づけられうる。HER2/neu/ErbB2は、細胞の表面において発現(過剰発現を含む)されうる。この方法を使用して治療されうる、想定される疾患、障害、及び状態は、がん、悪性腫瘍、非悪性腫瘍、増殖異常、免疫障害、及び微生物感染を含む。がん、腫瘍、増殖異常、免疫障害、又は微生物感染は、HER2/neu/ErbB2と、物理的にカップリングされた細胞により特徴づけられうる。HER2/neu/ErbB2は、細胞の表面と物理的にカップリングされている場合がある。ある特定の実施形態では、がん、腫瘍、増殖異常、免疫障害、又は微生物感染は、HER2/neu/ErbB2を発現(過剰発現を含む)させる細胞により特徴づけられうる。HER2/neu/ErbB2は、細胞の表面において発現(過剰発現を含む)されうる。「治療有効投与量」の、本発明の組成物の投与は、疾患症状の重症度の低下、無疾患症状時間の頻度及び持続時間の増大、又は疾患の罹患に起因する、機能障害若しくは身体障害の防止を結果としてもたらしうる。「それを必要とする患者」とは、本明細書で記載される通りである。ある特定の実施形態では、「それを必要とする患者」は、1つ又は2つ以上の、さらなるHER2ターゲティング療法剤で、かつて治療されたことがある;及び/又は、1つ又は2つ以上の、さらなるHER2ターゲティング療法剤による治療を受けつつある。ある特定の実施形態では、「それを必要とする患者」は、本明細書で記載される、1つ又は2つ以上の、さらなるHER2ターゲティング療法剤でかつて治療されたことがある。ある特定の実施形態では、「それを必要とする患者」は、本明細書で記載される、1つ又は2つ以上の、さらなるHER2ターゲティング療法剤による治療を受けつつある。ある特定の実施形態では、「それを必要とする患者」は、本明細書で記載される、1つ又は2つ以上の、さらなるHER2ターゲティング療法剤による治療に応答しないか、又はこれらから利益を得ない。1つ又は2つ以上の、さらなるHER2ターゲティング療法剤は、本明細書で記載される通りである。例えば、さらなるHER2ターゲティング療法剤は、例えば、ラパチニブ及び/又はネラチニブなどの、二重チロシンキナーゼ阻害剤を含みうる。例えば、さらなるHER2ターゲティング療法剤は、HER2ターゲティング分子が結合するHER2内の抗原決定基と重複しない、HER2内の抗原決定基に結合する抗HER2抗体であって、例えば、T−DM1、トラスツズマブ、及び/又はペルツズマブなどの抗HER2抗体を含みうる。例えば、さらなるHER2ターゲティング療法剤は、T−DM1などの抗HER2抗体薬コンジュゲート療法を含みうる。ある特定の実施形態では、1つ又は2つ以上の、さらなるHER2ターゲティング療法剤は、ラパチニブ、ネラチニブ、T−DM1、トラスツズマブ、及びペルツズマブから選択される。
本発明の組成物の治療有効量は、投与経路、治療される生物の種類、及び検討下にある、具体的患者の身体特徴に依存するであろう。医療技術分野の当業者には、これらの因子、及びこの量の決定との、それらの関係が周知である。この量及び投与法は、最適の有効性を達成するように微調整される場合があり、体重、食餌、併用医薬、及び医療技術分野の当業者に周知である、他の因子のような因子に依存しうる。ヒトにおける使用に最も適切な、投与量のサイズ及び投与レジメンは、本発明により得られる結果により導かれる場合があり、適正にデザインされた臨床試験により確認されうる。有効な投与量及び治療プロトコールは、実験動物において、低用量で始め、次いで、効果をモニタリングしながら、投与量を増大させ、また、投与レジメンも、体系的に変動させる、従来の手段により決定されうる。所与の対象に最適の投与量を決定する場合、臨床医により、多数の因子が検討されうる。このような検討事項は、当業者に公知である。
許容可能な投与経路とは、エアゾール、腸内経路、経鼻経路、眼内経路、経口経路、非経口経路、直腸内経路、膣内経路、又は経皮経路(例えば、クリーム、ゲル、若しくは軟膏の局所投与、又は経皮パッチによる)を含むがこれらに限定されない、当技術分野で公知である、任意の投与経路を指す場合がある。「非経口投与」は、典型的に、対象となる作用部位における注射、又はこれと連絡する注射であって、眼窩下注入による投与、点滴投与、動脈内投与、嚢内投与、心内投与、皮内投与、筋内投与、腹腔内投与、肺内投与、髄腔内投与、胸骨内投与、髄腔内投与、子宮内投与、静脈内投与、くも膜下投与、被膜下投与、皮下投与、経粘膜投与、又は経気管投与を含む注射と関連する。
本発明の医薬組成物の投与のために、投与量範囲は一般に、1キログラム当たり、約0.001〜10ミリグラム(mg/kg)であり、より通例では、対象の体重1kg当たり0.001〜0.5mgである。例示的な投与量は、体重1kg当たり0.001mg、体重1kg当たり0.005mg、体重1kg当たり0.0075mg、体重1kg当たり0.015mg、体重1kg当たり0.020mg、若しくは体重1kg当たり0.025mg、又は体重1kg当たり0.001〜0.030mgの範囲内でありうる。例示的な投与量は、体重1kg当たり0.01mg、体重1kg当たり0.03mg、体重1kg当たり0.05mg、体重1kg当たり0.075mg、若しくは体重1kg当たり0.1mg、又は0.01〜0.1mg/kgの範囲内でありうる。例示的な治療レジメは、毎日1回若しくは2回の投与、又は毎週1回若しくは2回の投与、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、1カ月間ごとに1回、2若しくは3カ月間ごとに1回、又は3〜6カ月間ごとに1回である。投与量は、医療ケア分野の当業者により、特定の患者のための治療利益を最大化するのに要求される通りに、選択及び再調整されうる。
本発明の医薬組成物は、典型的に、同じ患者へと、複数の機会において投与されるであろう。投与の間の間隔は、例えば、2〜5日間、毎週、毎月、2又は3カ月間ごと、6カ月間ごと、又は毎年でありうる。投与の間の間隔はまた、対象又は患者における、血液レベル又は他のマーカーの調節に基づき、不規則でもありうる。本発明の組成物のための投与レジメンは、対象への、毎週1回又は2回ずつ、4又は5週間など、連続3又は4週間以上にわたり投与される組成物による、体重1キログラム(kg;kilogram)当たり、1〜50μgのHER2ターゲティング分子の静脈内投与を含む。本発明の組成物のための、例示的な投与レジメンは、対象への、毎週1回又は2回ずつ、4又は5週間など、連続3又は4週間以上にわたり投与される組成物による、体重1kg当たり、1〜25μgのHER2ターゲティング分子の静脈内投与を含む。本発明の組成物のための投与レジメンは、対象への、毎週1回又は2回ずつ、4又は5週間など、連続3又は4週間以上にわたり投与される組成物による、体重1kg当たり、10〜50μgのHER2ターゲティング分子の静脈内投与を含む。本発明の組成物のための投与レジメンは、2〜4週間ごと、6回の投与にわたり投与される組成物による、体重1kg当たり0.01〜1mg又は体重1kg当たり0.03〜3mgの静脈内投与、次いで、体重1kg当たり0.01〜3mg又は体重1kg当たり0.01〜0.03mgで、3カ月間ごとの静脈内投与を含む。
本発明の医薬組成物は、当技術分野で公知である、様々な方法のうちの、1つ又は2つ以上を使用して、1つ又は2つ以上の投与経路を介して投与されうる。当業者により理解される通り、投与経路及び/又は投与方式は、所望される結果に応じて変動するであろう。本発明の細胞ターゲティング分子及び医薬組成物のための投与経路は、例えば、注射又は注入による、例えば、静脈内経路、筋内経路、皮内経路、腹腔内経路、皮下経路、脊髄内投与、又は他の非経口経路を含む。他の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子又は医薬組成物は、局所投与経路、表皮投与経路、又は経粘膜投与経路など、非経口経路以外の経路により投与される場合があり、例えば、鼻腔内投与、経口投与、膣内投与、直腸内投与、舌下投与、又は局所投与されうる。
本発明の治療用細胞ターゲティング分子又は治療用医薬組成物は、当技術分野で公知である、様々な医療デバイスのうちの、1つ又は2つ以上により投与されうる。例えば、一実施形態では、本発明の医薬組成物は、無針皮下注射デバイスにより投与されうる。本発明において有用な、当技術分野で周知のインプラント及びモジュールの例は、例えば、制御速度送達のための、植込み式マイクロ注入ポンプ;皮膚を通して投与するためのデバイス;正確な注入速度における送達のための注入ポンプ;連続的な薬物送達のための、流量可変型植込み式注入デバイス;及び浸透圧式薬物送達システムを含む。これらのインプラント、送達システム、及びモジュール、並びに他のこのようなものは、当業者に公知である。
本発明の細胞ターゲティング分子又は医薬組成物は、単独で投与される場合もあり、1つ又は2つ以上の、他の治療剤又は診断剤と組み合わせて投与される場合もある。組合せ療法は、治療される、特定の患者、疾患、又は状態に基づき選択される、少なくとも1つの、他の治療剤と組み合わされた、本発明の細胞ターゲティング分子、又はその医薬組成物を含みうる。他のこのような薬剤の例は、とりわけ、細胞毒性剤、抗がん剤、若しくは化学療法剤、抗炎症剤若しくは抗増殖剤、抗微生物剤若しくは抗ウイルス剤、増殖因子、サイトカイン、鎮痛剤、治療的に活性の低分子若しくはポリペプチド、単鎖抗体、古典的抗体若しくはその断片、又は1つ若しくは2つ以上のシグナル伝達経路をモジュレートする核酸分子、及び治療レジメン若しくは予防処置レジメンにおいて、補完的な場合もあり、他の形で有益奈場な合もある、同様のモジュレート型治療用分子を含む。
本発明の細胞ターゲティング分子又は医薬組成物は、単独で投与される場合もあり、1つ又は2つ以上の、他のHER2ターゲティング療法剤と組み合わせて投与される場合もある。本発明の細胞ターゲティング分子又は医薬組成物は、単独で投与される場合もあり、例えば、T−DM1(トラスツズマブ・エムタンシン)、トラスツズマブ、ペルツズマブ、及び/又はラパチニブなど、1つ又は2つ以上の、さらなるHER2ターゲティング療法剤と組み合わせて投与される場合もある。組合せ療法は、治療される、特定の患者、疾患、又は状態に基づき選択される、少なくとも1つの、他の治療剤と組み合わされた、本発明の細胞ターゲティング分子、又はその医薬組成物を含みうる。他のこのような薬剤の例は、とりわけ、細胞毒性剤、抗がん剤、若しくは化学療法剤、抗炎症剤若しくは抗増殖剤、抗微生物剤若しくは抗ウイルス剤、増殖因子、サイトカイン、鎮痛剤、治療的に活性の低分子若しくはポリペプチド、単鎖抗体、古典的抗体若しくはその断片、又は1つ若しくは2つ以上のシグナル伝達経路をモジュレートする核酸分子、及び治療レジメン若しくは予防処置レジメンにおいて、補完的な場合もあり、他の形で有益な場合もある、同様のモジュレート型治療用分子を含む。ある特定の実施形態では、それを必要とする患者における疾患、障害、又は状態を治療するための、本発明の方法は、患者へと、治療有効量の、1つ又は2つ以上の、さらなるHER2ターゲティング療法剤を投与するステップをさらに含みうる。さらなるHER2ターゲティング療法剤は、本明細書で記載される通りである。例えば、さらなるHER2ターゲティング療法剤は、ラパチニブ及び/又はネラチニブなどの、二重チロシンキナーゼ阻害剤を含みうる。例えば、さらなるHER2ターゲティング療法剤は、HER2ターゲティング分子が結合するHER2内の抗原決定基と重複しない、HER2内の抗原決定基に結合する抗HER2抗体であって、T−DM1、トラスツズマブ、及び/又はペルツズマブなど、配列番号29、36、102、及び108のうちのいずれか1つを含むか、これからなるか、又は、これから本質的になる、HER2ターゲティング分子のための抗HER2抗体を含みうる。例えば、さらなるHER2ターゲティング療法剤は、T−DM1などの抗HER2抗体薬コンジュゲート療法を含みうる。
本発明の細胞ターゲティング分子又は医薬組成物による患者の治療は、好ましくは、ターゲティングされた細胞の細胞死及び/又はターゲティングされた細胞の増殖の阻害をもたらす。このように、細胞毒性である、本発明の細胞ターゲティング分子、及びそれらを含む医薬組成物は、とりわけ、がん細胞、腫瘍細胞、他の増殖異常細胞、免疫障害細胞、及び感染細胞などの標的細胞を殺滅するか、又はこれらを枯渇させることが、有益でありうる、様々な病理学的障害を治療するための方法において、有用であろう。本発明は、細胞増殖を抑制し、HER2発現細胞を伴う細胞障害であって、新生物を含む細胞障害を治療するための方法を提供する。
ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子及び医薬組成物は、それを必要とする患者における疾患、障害、又は状態の治療又は予防における使用のためのものである。疾患、障害、又は状態は、HER2と物理的にカップリングされた細胞(例えば、細胞は、HER2が、細胞の表面上に発現されるように、HER2を発現する)により特徴づけられうる。ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子及び医薬組成物は、それを必要とする患者における、がん、腫瘍(悪性及び非悪性)、増殖異常、免疫障害、及び/又は微生物感染の治療又は予防における使用のためのものである。ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子及び医薬組成物は、それを必要とする患者における、がん、腫瘍(悪性及び非悪性)、及び/又は増殖異常の治療又は予防における使用のためのものである。ある特定の実施形態では、本発明の細胞ターゲティング分子及び医薬組成物は、それを必要とする患者における、がん及び/又は腫瘍(悪性及び非悪性)の治療又は予防における使用のためのものである。がん、腫瘍、増殖異常、免疫障害、及び/又は微生物感染は、HER2と物理的にカップリングされた細胞(例えば、細胞は、HER2が、細胞の表面上に発現されるように、HER2を発現する)により特徴づけられうる。「それを必要とする患者」とは、本明細書で記載される通りである。ある特定の実施形態では、「それを必要とする患者」は、1つ又は2つ以上の、さらなるHER2ターゲティング療法剤で、かつて治療されたことがある;及び/又は、1つ又は2つ以上の、さらなるHER2ターゲティング療法剤による治療を受けつつある。ある特定の実施形態では、「それを必要とする患者」は、本明細書で記載される、1つ又は2つ以上の、さらなるHER2ターゲティング療法剤でかつて治療されたことがある。ある特定の実施形態では、「それを必要とする患者」は、本明細書で記載される、1つ又は2つ以上の、さらなるHER2ターゲティング療法剤による治療を受けつつある。ある特定の実施形態では、「それを必要とする患者」は、本明細書で記載される、1つ又は2つ以上の、さらなるHER2ターゲティング療法剤による治療に応答しないか、又はこれらから利益を得ない。ある特定の実施形態では、それを必要とする患者における疾患、障害、又は状態の治療又は予防は、患者へと、治療有効量の、1つ又は2つ以上の、さらなるHER2ターゲティング療法剤を投与するステップをさらに含みうる。さらなるHER2ターゲティング療法剤は、本明細書で記載される通りである。
ある特定の実施形態では、本発明は、ヒトなど、哺乳動物対象における、悪性腫瘍又は新生物、及び他の血液細胞関連がんを治療するための方法であって、それを必要とする対象へと、治療有効量の、細胞毒性である、本発明の細胞ターゲティング分子又は医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。
本発明の細胞ターゲティング分子及び医薬組成物は、様々な適用がなされる。本発明の細胞ターゲティング分子及び医薬組成物は、一般に、抗新生物剤であり、それらが、がん細胞又は腫瘍細胞の増殖を阻害すること、及び/又はこれらの死滅を引き起こすことにより、新生物性細胞又は悪性細胞の、発生、成熟、又は拡散を治療及び/又は予防することが可能であることを意味する。しかし、本発明の細胞ターゲティング分子についての、ある特定の実施形態又は医薬組成物は、例えば、T細胞媒介性であるか、B細胞媒介性であるか、形質細胞媒介性であるか、又は抗体媒介性である、疾患又は障害などの免疫障害を治療するのに使用される。
本発明の細胞ターゲティング分子及び医薬組成物のある特定の実施形態は、がんを治療する方法であって、それを必要とする患者へと、治療有効量の、本発明の細胞ターゲティング分子及び/又は医薬組成物を投与するステップを含む方法において利用されうる。本発明の方法についての、ある特定の実施形態では、治療されるがんは、骨がん(多発性骨髄腫又はユーイング肉腫など)、乳がん、中枢/末梢神経系がん(脳がん、神経線維腫症、又は神経膠芽腫など)、消化器がん(胃がん又は結腸直腸がんなど)、胚細胞がん(卵巣がん及び精巣がんなど)、腺がん(膵臓がん、副甲状腺がん、褐色細胞腫、唾液腺がん、又は甲状腺がんなど)、頭頸部がん(鼻咽頭がん、口腔がん、又は喉頭がんなど)、血液がん(白血病、リンパ腫、又は骨髄腫など)、腎尿路がん(腎臓がん及び膀胱がんなど)、肝がん、肺/胸膜がん(中皮腫、小型細胞肺癌腫、又は非小細胞肺癌など)、前立腺がん、肉腫(血管肉腫、線維肉腫、カポジ肉腫、又は滑膜肉腫など)、皮膚がん(基底細胞癌、扁平細胞がん、又は黒色腫など)、及び子宮がんからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、治療されるがんは、乳がん、胃がん、尿路上皮がん、膀胱がん、尿路上皮膀胱がん、漿液性子宮がん、肝外胆管がん、及び胆管癌からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、治療されるがんは、乳がん及び/又は消化器がんである。
本発明のある特定の実施形態の中には、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド又は細胞ターゲティング分子を、がん、腫瘍、他の増殖異常、免疫障害、及び/又は微生物感染の、治療又は予防のための、医薬組成物又は医薬の構成要素として使用することがある。例えば、皮膚腫瘍は、腫瘍サイズを低減するか、又は腫瘍を完全に消失させようとする取組みにおいて、このような医薬により治療されうる。
本発明のある特定の実施形態の中には、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、細胞ターゲティング分子、医薬組成物、及び/又は診断用組成物を使用して、新生物性細胞を標識付けするか、又はこれらの内部を検出する方法がある。この方法は、ある特定の、本発明の細胞ターゲティング分子が、特異的細胞型に侵入し、逆行性細胞内輸送を介して、細胞内で、検出のために標識付けされた、特異的細胞型の内部区画へと経路決定する能力に基づきうる。これは、インサイチューにおける患者内の細胞において、又は生物、例えば、生検素材から取り出された細胞及び組織において実施されうる。
本発明のある特定の実施形態の中には、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、細胞ターゲティング分子、医薬組成物、及び/又は診断用組成物を使用して、疾患、状態、及び/又は障害に関する情報収集の目的で、細胞型の存在を検出する方法がある。疾患、障害、又は状態は、HER2と物理的にカップリングされた細胞により特徴づけられうる。HER2標的生体分子は、細胞の表面と物理的にカップリングされている場合がある。ある特定の実施形態では、疾患、障害、又は状態は、HER2標的生体分子を発現する細胞(HER2を過剰発現する細胞を含む)により特徴づけられうる。HER2は、細胞の表面において発現(過剰発現を含む)されうる。方法は、アッセイ法又は診断法により、分子を検出するために、細胞を、診断に十分な量の、本発明の細胞ターゲティング分子と接触させるステップを含む。「診断に十分な量」という語句は、利用される、特定のアッセイ法又は診断法による情報収集を目的として、十分な検出及び正確な測定をもたらす量を指す。一般に、全生物のインビボにおける診断使用のための、診断に十分な量は、対象1kg当たりの、検出促進剤を連結した、本発明の細胞ターゲティング分子の非累積用量0.001〜10ミリグラムの間であろう。典型的に、これらの情報収集法において使用される、本発明の細胞ターゲティング分子の量は、それが、依然として、診断に十分な量であることを条件として、可能な限りの低量であろう。例えば、生物のインビボにおける検出のために、対象へと投与される、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、細胞ターゲティング分子、又は医薬組成物の量は、実施可能な限りの低量であろう。
検出促進剤と組み合わされた、本発明の細胞ターゲティング分子による、細胞型特異的ターゲティングは、本発明の分子の結合性領域の、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされた細胞を検出及びイメージングする方途をもたらす。本発明の細胞ターゲティング分子を使用する、細胞のイメージングは、任意の、適切な、当技術分野で公知の技法により、インビトロ又はインビボにおいて実施されうる。診断情報は、生物に対する全身イメージングを含む、当技術分野で公知の、多様な方法を使用して収集される場合もあり、生物から採取されたエクスビボ試料を使用して収集される場合もある。本明細書で使用される、「試料」という用語、任意の数のものを指し、血液、尿、血清、リンパ、唾液、肛門分泌物、膣分泌物、及び精液などの体液、並びに生検手順により得られる組織に限定されない。例えば、多様な検出促進剤が、核磁気共鳴イメージング(MRI)、光学法(直接的な蛍光イメージング及び生物発光イメージングなど)、ポジトロン放射断層撮影(PET)、単一光子放射断層撮影(SPECT)、超音波コンピュータ断層撮影、x線コンピュータ断層撮影、及び前述の組合せなどの技法による、非侵襲性のインビボ腫瘍イメージングに利用されうる(総説については、Kaur S et al., Cancer Lett 315: 97-111 (2012)を参照されたい)。
本発明のある特定の実施形態の中には、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、細胞ターゲティング分子、又は医薬組成物を、診断用組成物中で使用して、血液細胞、がん細胞、腫瘍細胞、感染細胞、及び/又は免疫細胞の内部を、標識付けするか、又は検出する方法(例えば、Koyama Y et al., Clin Cancer Res 13: 2936-45 (2007); Ogawa M et al., Cancer Res 69: 1268-72 (2009); Yang L et al., Small 5: 235-43 (2009)を参照されたい)がある。ある特定の、本発明の細胞ターゲティング分子が、特異的細胞型に侵入し、逆行性細胞内輸送を介して、細胞内で経路決定する能力に基づき、特異的細胞型の内部区画が、検出のために標識付けされる。これは、インサイチューにおける患者内の細胞において、又は生物、例えば、生検素材から取り出された細胞及び組織において実施されうる。
本発明の診断用組成物は、疾患、障害、又は状態を、類縁の、本発明の医薬組成物により、潜在的に治療可能であると特徴付けるのに使用されうる。ある特定の、本発明の物の組成物は、患者が、本明細書で記載される、本発明の化合物、組成物、又は類縁の方法の使用をもたらす治療戦略に応答する群に属するのかどうか、又は本発明の送達デバイスの使用に、十分に適切であるのかどうかを決定するのに使用されうる。
本発明の診断用組成物は、疾患、例えば、がんの後で使用され、遠隔転移、異種性、及びがん進行の病期をモニタリングするなど、それをより良く特徴付けるために検出されうる。疾患、障害、又は感染についての表現型の評価は、治療についての決定を下す際の、予後診断及び予測の一助となりうる。疾患の再発時に、ある特定の、本発明の方法は、局所問題であるのか、全身問題であるのかを決定するのに使用されうる。
本発明の診断用組成物は、治療の種類、例えば、低分子薬、生物学的薬物、又は細胞ベースの治療に関わらず、治療に対する応答を評価するのに使用されうる。例えば、本発明の診断剤についての、ある特定の実施形態は、腫瘍サイズの変化、数及び分布を含む抗原陽性細胞集団の変化を測定するか、又は患者へと、既に投与されている治療によりターゲティングされる抗原と異なるマーカーをモニタリングするのに使用されうる(Smith-Jones P et al., Nat. Biotechnol 22: 701-6 (2004); Evans M et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 108: 9578-82 (2011)を参照されたい)。
細胞型の存在を検出するのに使用される方法についての、ある特定の実施形態は、例えば、骨がん(多発性骨髄腫又はユーイング肉腫など)、乳がん、中枢/末梢神経系がん(脳がん、神経線維腫症、又は神経膠芽腫など)、消化器がん(胃がん又は結腸直腸がんなど)、胚細胞がん(卵巣がん及び精巣がんなど)、腺がん(膵臓がん、副甲状腺がん、褐色細胞腫、唾液腺がん、又は甲状腺がんなど)、頭頸部がん(鼻咽頭がん、口腔がん、又は喉頭がんなど)、血液がん(白血病、リンパ腫、又は骨髄腫など)、腎尿路がん(腎臓がん及び膀胱がんなど)、肝がん、肺/胸膜がん(中皮腫、小型細胞肺癌腫、又は非小細胞肺癌など)、前立腺がん、肉腫(血管肉腫、線維肉腫、カポジ肉腫、又は滑膜肉腫など)、皮膚がん(基底細胞癌、扁平上皮がん、又は黒色腫など)、子宮がん、急性リンパ芽球性白血病(ALL;acute lymphoblastic leukemia)、T細胞急性リンパ球性白血病/リンパ腫(ALL;T-cell acute lymphocytic leukemia/lymphoma)、急性骨髄性(myelogenous)白血病、急性骨髄性(myeloid)白血病(AML;acute myeloid leukemia)、B細胞慢性リンパ球性白血病(B−CLL;B-cell chronic lymphocytic leukemia)、B細胞前リンパ球性リンパ腫、バーキットリンパ腫(BL;Burkitt’s lymphoma)、慢性リンパ球性白血病(CLL;chronic lymphocytic leukemia)、慢性骨髄性白血病(CML−BP;chronic myelogenous leukemia)、慢性骨髄性白血病(CML;chronic myeloid leukemia)、びまん性大細胞性B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、有毛細胞白血病(HCL;hairy cell leukemia)、ホジキンリンパ腫(HL;Hodgkin’s Lymphoma)、血管内大細胞性B細胞リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、リンパ形質細胞性リンパ腫、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、多発性骨髄腫(MM;multiple myeloma)、ナチュラルキラー細胞白血病、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL;Non-Hodgkin’s lymphoma)、形質細胞白血病、形質細胞腫、原発性滲出性リンパ腫、前リンパ球性白血病、前骨髄球性白血病、小型リンパ球性リンパ腫、脾性辺縁帯リンパ腫、T細胞リンパ腫(TCL;T-cell lymphoma)、重鎖病、単クローン性免疫グロブリン血症、単クローン性免疫グロブリン沈着症、骨髄異形成症候群(MDS;myelodysplastic syndrome)、くすぶり型多発性骨髄腫、及びワルデンシュトロームマクログロブリン血症などの疾患、障害、及び状態に関する情報を収集するのに使用されうる。
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞ターゲティング分子、又はそれらの医薬組成物は、診断及び治療の両方に、又は診断単独に使用される。一部の状況では、本発明の細胞ターゲティング分子を、治療(複数可)における使用のために選択する前に、例えば、治療を必要とする患者などの対象及び/又は対象に由来する罹患組織において発現される、HLAバリアント(複数可)及び/又はHLA対立遺伝子を決定又は検証することが所望であろう。
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び本発明の細胞ターゲティング分子(例えば、「発明の概要」における、実施形態セット1〜3の実施形態)のうちの、いかなる実施形態も、本発明の方法の、各個別の実施形態と共に使用されうる。
本発明は、1)本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、2)本発明の細胞ターゲティング分子、及び3)前述のポリペプチドを含み、ある特定の細胞型を、特異的にターゲティングすることが可能な、細胞毒性である、本発明の細胞ターゲティング分子についての、以下の非限定例により、さらに例示される。
[実施例]
以下の例は、本発明のある特定の実施形態を裏付ける。しかし、これらの例は、例示だけを目的とするものであり、本発明の条件及び範囲について、完全に規定的であることを意図するものでも、そのようなものであるとみなされるべきでもないことが理解されるものとする。以下の例における実験は、そうでないことが記載される場合を除き、当業者に周知であり、規定である、標準的技法を使用して実行された。
以下の例は、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、複数の、例示的な、細胞毒性である、志賀毒素Aサブユニット由来ポリペプチド足場について記載する。例中の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、強力な細胞毒性活性を保持しながら、脱免疫化されている。
以下の例はまた、各分子が、細胞の細胞表面と、物理的に会合したHER2の細胞外部分の標的生体分子に特異的に結合することが可能な、細胞をターゲティングする結合性領域へと、直接的に、又は間接的に連結された、志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、複数の、細胞毒性である、細胞ターゲティング分子についても記載する。下記で記載される、例示的な、細胞毒性である、細胞ターゲティング分子は、ターゲティングされる、腫瘍細胞型により発現された、細胞表面の、標的生体分子に結合し、これらのターゲティングされた細胞に侵入した。内部化された、細胞ターゲティング分子は、それらの志賀毒素エフェクターポリペプチドを、標的細胞の細胞質ゾルへと、有効に経路決定し、そこで、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、リボソームを不活化させ、その後、ターゲティングされた細胞の、アポトーシス性死滅を引き起こした。
加えて、例示的な細胞ターゲティング分子の一部は、さらなる、内因性エピトープ領域の破壊により、さらに脱免疫化されてはいない、フーリンによる切断に抵抗性の、志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、親である細胞毒性分子と比較して、インビボにおける免疫原性プロファイル(抗体応答の低減)の改善を示す、プロテアーゼによる切断に抵抗性の、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む。さらに、これらの、例示的な、プロテアーゼによる切断に抵抗性の、脱免疫化細胞ターゲティング分子は、より多くの、プロテアーゼによる切断に感受性の志賀毒素エフェクターポリペプチド領域を含む、類縁の細胞ターゲティング分子と比較した、インビボにおける忍容性の改善を示す。
下記の例は、ある特定の、本発明の細胞ターゲティング分子、及びそれらの特性について記載する。ある特定の例は、志賀毒素エフェクターポリペプチドの構成要素が、(1)脱免疫化される;(2)細胞ターゲティング分子のポリペプチド構成要素のアミノ末端上にあるか、若しくはこれに対して近位である;(3)フーリンによる切断に抵抗性である;及び/又は(4)組み込まれるか、若しくは挿入されたT細胞エピトープを含む、本発明の細胞ターゲティング分子について記載する。
フーリンによる切断に抵抗性である、志賀毒素Aサブユニットに由来するポリペプチドを含むHER2ターゲティング分子
各々が、(1)HER2をターゲティングする、少なくとも1つの免疫グロブリン型結合性領域と、(2)少なくとも1つの志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドとを含む、多様なHER2ターゲティング分子を構築し、HER2陽性がん細胞の殺滅における使用のために調べた。
A.HER2ターゲティング分子の構築及び作製
多様な志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド(各々が、1つ又は2つ以上の志賀毒素Aサブユニット機能をもたらすことが可能である)と、各々が、細胞をターゲティングする結合性領域として、ヒトHER2の細胞外部分に結合することが可能である、多様な、免疫グロブリン型結合性領域とを使用して、HER2をターゲティングするように、細胞毒性である細胞ターゲティング分子を設計した。これらのHER2ターゲティング分子の、免疫グロブリン型結合性領域は、ヒトがん細胞の表面と物理的にカップリングされた、細胞表面HER2標的生体分子に、高度のアフィニティー、特異性、及び選択性で結合する単鎖抗体可変断片又はラクダ科動物VHHであった。前述の構成要素:(1)少なくとも1つの抗HER2抗体可変断片と、(2)少なくとも1つの志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドとを含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを構築した。これらのポリヌクレオチドを使用して、114773(配列番号22)、115172(配列番号23)、114778(配列番号24)、114795(配列番号25)、114791(配列番号26)、114912(配列番号28)、115111(配列番号29)、115411(配列番号30)、114898(配列番号31)、115195(配列番号32)、115194(配列番号33)、115645(配列番号34)、及び115845(配列番号35)を含む、細胞毒性である、本発明の細胞ターゲティング分子を作製した。参照細胞ターゲティング分子を含む、本実施例の実験における、被験細胞ターゲティング分子の全ては、細菌系内で作製し、当業者に周知の技法を使用する、カラムクロマトグラフィーにより精製した。ある特定の、例示的な、本発明のHER2ターゲティング分子の精製は、例えば、キチン結合性ドメイン(配列番号43)又は6×Hisポリヒスチジンタグ(配列番号44)などのアフィニティータグの融合を使用することにより容易とした。
1.キチンアフィニティーベースの精製
ある特定の、例示的な、本実施例のHER2結合性タンパク質について、クローニング及び精製は、本質的に、IMPACT(商標)(キチン結合性アフィニティータグによるインテイン媒介型精製;Intein Mediated Purification with an Affinity Chitin-binding Tag)システム(New England Biolabs社、Ipswich、MA、U.S.A.)についての製造元のマニュアルに記載されている通りに行った。本実施例のHER2ターゲティング分子の一部を精製するのに使用したアフィニティータグは、大腸菌発現ベクターであるpTxb1(New England Biolabs社、Ipswich、MA、U.S.A.)を使用して、本実施例の融合タンパク質の一部のカルボキシ末端へと融合させた、インテインキチン結合性ドメイン(CBD)配列(配列番号43)であった。これらのCBD融合タンパク質は、可溶性画分から抽出された細菌内で発現させ、次いで、キチンカラムに結合させた。次いで、ジチオトレイトール(DTT;dithiothreitol)を伴うインキュベーションにより、インテインを、融合タンパク質から切断し、CBDアフィニティータグ(配列番号43)を除去した後で、所望のHER2結合性タンパク質を、キチンカラムから溶出させた。
例示的な、本発明のHER2ターゲティング融合タンパク質である、114778(配列番号24)、114795(配列番号25)、及び114791(配列番号26)を発現させ、試料を、SDS−PAGEにより解析した(図2)。これらのタンパク質試料の3つ全ては、還元条件下で、SDS−PAGEにより測定される、約55kDaのタンパク質分子種により、主に含まれた(図2)。
次いで、以下の細胞毒性アッセイを使用して、これらの、例示的なHER2ターゲティング分子を、細胞毒性活性について調べた。ある特定のヒト腫瘍細胞株細胞を、384ウェルプレート内、20μLの細胞培養培地中に播種した(典型的に、HER2ターゲティング分子を添加する前日又は当日において播種された接着性細胞について、ウェル1つ当たりの細胞1〜2×103個)。被験分子の系列希釈液(典型的に10倍)を、適切な緩衝液中で調製し、5μLの希釈液又は緩衝液だけの対照を、播種された細胞へと添加した。細胞培養培地だけを含有する対照ウェルを、ベースラインの補正のために使用した。細胞試料を、HER2ターゲティング分子又は緩衝液だけと共に、37℃、5%二酸化炭素(CO2)の雰囲気中、3又は5日間にわたりインキュベートした。全細胞生存又は細胞生存率パーセントは、製造元の使用説明書に従い、CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(Promega Corp.社、Madison、WI、U.S.A.)を使用する発光リードアウトを使用して決定した。被験ヒト細胞は、HCC1954細胞株、及びある特定のNCI/ADR−RES細胞試料に、それらに、HER2を、細胞表面へと発現するHER2発現ベクターを、それらをHER2陽性とするのに十分な量でトランスフェクトした、NCI/ADR−RES細胞株(本明細書では、「NCI/ADR−RES−HER2+」と称する)に由来する細胞を含んだ。
実験ウェル内の細胞の生存率パーセントは、以下の式:(被験RLU−平均培地RLU)÷(平均細胞RLU−平均培地RLU)×100を使用して計算した。細胞ターゲティング分子のタンパク質濃度の対数、対、生存率パーセントを、Prism(GraphPad Prism、San Diego、CA、U.S.A.)にプロットし、log(阻害剤)対反応(3パラメータ)解析又はlog(阻害剤)対正規化反応解析を使用して、被験分子についての50%細胞毒性濃度(CD50)値を決定した。可能な場合は、各被験分子についてのCD50値(複数可)も計算した。CD50値が、被験濃度にわたる曲線の形状に基づいて計算できなかった場合は、CD50値が、最大被験濃度を超えると称した。全てのグラフ及び非線形回帰は、GraphPad Prismにより行い、フローサイトメトリーデータは、FloJoソフトウェアにより解析した。
細胞毒性アッセイの結果を、下記に報告する(表1及び図3を参照されたい)。例示的なHER2ターゲティング分子である、114778(配列番号24)、114795(配列番号25)、及び114791(配列番号26)は、HER2陽性細胞に対して、細胞毒性であった(表1;図3)。一部の実験ではまた、HER2陰性細胞を、系列希釈液中、最大濃度のHER2ターゲティング分子でも治療し、これらの条件下で、HER2陰性細胞は、緩衝液だけの対照と比較して、生存率の変化を示さなかった。
このデータは、それらの全てが、キチン結合性精製システムである、IMPACT(商標)CBDインテインアフィニティータグを使用して精製された融合タンパク質である、114795(配列番号25)、114778(配列番号24)、及び114791(配列番号26)の間で、同様の細胞毒力を裏付けた。
2.プロテインLへのアフィニティーベースの精製
プロテインLへの結合アフィニティーに基づく、タンパク質精製の代替法を使用し、IMPACT(商標)システムを伴う、上記で使用したインテイン−CBDアフィニティータグ法と比較した。細菌性プロテインLと、ある特定のscFvとの結合アフィニティーを使用して、例示的な、本発明のHER2ターゲティング分子:カルボキシ末端のインテイン−CBDタグ(配列番号43)を含む114773(配列番号22)、114912(配列番号28)、115111(配列番号29)、及び115411(配列番号30)を精製した。図4〜5は、プロテインL結合アフィニティー法を使用する精製の後における、114773(配列番号22)、114791(配列番号26)、114912(配列番号28)、115111(配列番号29)、及び115411(配列番号30)の試料についてのSDS−PAGE解析を示す。
図4は、プロテインL結合アフィニティー法を使用する精製の後における、114773(配列番号22)(カルボキシ末端のインテイン−CBDタグ(配列番号43)を伴う)及び114791(配列番号26)(カルボキシ末端のインテイン−CBDタグ(配列番号43)を伴う)の試料についてのSDS−PAGE解析を示す。図5は、114912(配列番号28)(インテイン−CBDタグを伴わない)、115111(配列番号29)(インテイン−CBDタグを伴わない)、及び115411(配列番号30)(インテイン−CBDタグを伴わない)についてのSDS−PAGE解析を示す。
プロテインLへの結合を使用して精製された、例示的なHER2ターゲティング分子である、114912(配列番号28)及び115111(配列番号29)を、CBDインテイン系を使用して精製された試料について、上記で記載したアッセイを使用して、細胞毒性活性について調べた。細胞毒性アッセイの結果を、下記に報告する(表2及び図6を参照されたい)。
例示的なHER2ターゲティング融合タンパク質である、114912(配列番号28)及び115111(配列番号29)は、HER2陽性細胞に対して、細胞毒性であった(表2;図6)。このデータは、それらのいずれもが、プロテインLへのアフィニティーを使用して精製された、115111(配列番号29)の、114912(配列番号28)と比較して、大きな細胞毒力を裏付けた。極めて低レベルのHER2を発現するMCF−7細胞に対する細胞毒性は、被験HER2ターゲティング分子濃度の大半について観察されなかった(図6)。
115111(配列番号29)と類縁である、さらなる例示的な、本発明のHER2ターゲティング分子を、上記で記載した細胞毒性アッセイを使用して、HER2陽性細胞株に対する細胞毒性活性について調べた。タンパク質である、115172(配列番号23)、115195(配列番号32)、及び115194(配列番号33)は、各々が、同一な重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含むため、115111(配列番号29)と類縁である。
当業者は、scFv内の、可変ドメインの間のリンカー(又は「ドメイン間リンカー」)の長さが、非共有結合的な多量体である多価分子の、自発的なアセンブリーに影響を及ぼしうることを理解するであろう。一般に、3アミノ酸残基〜12アミノ酸残基の間の長さであるリンカー(例えば、五量体である、G4S(配列番号94))が、分子間可変ドメインスワッピングを介して、ダイアボディーの形成を促進するのに対し;長いリンカー(例えば、(G4S)5(配列番号92))は、分子内の重鎖と軽鎖との対合を可能とする結果として、主に、単量体分子をもたらす(例えば、国際公開第2018/140427号パンフレットを参照されたい)。115111(配列番号29)は、25マーのドメイン間リンカーを含み、主に、一価の単量体を形成することが確証された。115195(配列番号32)は、五量体のドメイン間リンカーを含み、主に、二価の二量体を形成することが確証された。115194(配列番号33)は、同じ五量体ドメイン間リンカーを有する、115195(配列番号32)と同一なscFvを含み、115195(配列番号32)のような、二価の二量体を形成することが予測される。115172(配列番号23)及び115194(配列番号33)は、その志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドである、SLTA−FR(配列番号37)が、大半において、野生型配列を含み、最小限のフーリン切断部位内の、A1断片のカルボキシ末端だけにおいて変異を有し、エピトープ領域8(表B、上掲)を破壊する点において、115111(配列番号29)及び115195(配列番号32)と異なる。これらの分子についての細胞毒性データを、下記に報告する(表3及び図7を参照されたい)。
この細胞毒性実験からのデータは、単量体である115111(配列番号29)、二量体である115195(配列番号32)、予測された単量体である115172(配列番号23)、及び予測された二量体である115194(配列番号33)が、全て、インビトロにおいて、同等な細胞毒性活性を示したことを指し示した(例えば、表3及び図7を参照されたい)。HER2陰性細胞に対する細胞毒性は、被験HER2ターゲティング分子濃度の大半について(例えば、100ng/mLを下回る濃度で)観察されなかった。
B.例示的な、本発明のHER2ターゲティング分子のインビトロ活性についての試験
1.リボソーム阻害活性
例示的な、本発明のHER2ターゲティング分子である、115111(配列番号29)及び115411(配列番号30)を、上記で記載した、プロテインLへの結合を使用する精製の後における酵素活性について調べた。リボソーム不活化に関する、それらの触媒活性を、脱免疫化SLT−1A1断片単独(DI−2(配列番号20))、及び大半において、野生型SLT−1A配列を含み、フーリン切断モチーフを変異させ(SLTA−FR)、エピトープ領域8を破壊する変化(表B、上掲)(配列番号37)だけを有する、HER2ターゲティング分子である、115172(配列番号23)と比較した。
リボソーム阻害アッセイは、TNT(登録商標)Quick Coupled Transcription/Translationキット(L1170、Promega社、Madison、WI、U.S.A.)を使用する、無細胞の、インビトロにおける、タンパク質翻訳アッセイを使用した。キットは、Luciferase T7 Control DNA(L4821、Promega社、Madison、WI、U.S.A.)及びTNT(登録商標)Quick Master Mixを含む。リボソーム活性反応物を、製造元の使用説明書に従い調製した。希釈液の系列(典型的に、10倍)を、適切な緩衝液中で調製し、各希釈液にわたり、同一のTNT反応混合物成分の系列を創出した。タンパク質試料を、Luciferase T7 Control DNAと共に、TNT反応混合物の各々と組み合わせた。被検試料を、30℃で、1.5時間にわたりインキュベートした。インキュベーションの後、Luciferase Assay Reagent(E1483、Promega社、Madison、WI、U.S.A.)を、全ての被検試料へと添加し、ルシフェラーゼタンパク質の翻訳量を、製造元の使用説明書に従い、発光により測定した。翻訳の阻害レベルは、log変換された全タンパク質濃度、対、相対発光単位の非線形回帰分析により決定した。統計学的ソフトウェア(GraphPad Prism、San Diego、CA、U.S.A.)を使用して、50%阻害濃度(IC50)値は、「用量反応阻害」という標題下の、応答(3パラメータ)対log(阻害剤)についての、Prismソフトウェアの関数[Y=最低値+((最高値-最低値)/(1+10X-Log IC50))]を使用して、各試料について計算した。リボソーム阻害アッセイの結果を、下記に報告する(表4及び図8を参照されたい)。
例示的な、本発明のHER2ターゲティング融合タンパク質である、115172(配列番号23)、115111(配列番号29)、及び115411(配列番号30)リボソームを、例えば、低ピコモル(pM;picomolar)範囲の高効力で阻害した(表4;図8を参照されたい)。115111(配列番号29)について測定された、リボソーム阻害についてのIC50値は、24.2pMであった(表4)。志賀毒素エフェクターポリペプチドである、SLTA−DI−2(配列番号20)と、例示的なHER2ターゲティング分子である、115172(配列番号23)、115111(配列番号29)及び115411(配列番号30)とにより示される、同様レベルの、リボソームタンパク質の阻害は、これらの分子が、115111(配列番号29)又は115411(配列番号30)又は115172(配列番号23)の、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド構成要素を、免疫グロブリン型HER2標的結合性領域へと融合された、融合タンパク質として、予測される作用機構(タンパク質合成の触媒性阻害)を保持することを裏付けた。
例示的なHER2ターゲティング分子である、115172(配列番号23)、115111(配列番号29)、及び115411(配列番号30)はまた、上記で記載した通りに、HER2をトランスフェクトした、HER2陽性NCI/ADR−RES細胞に対する細胞毒性活性についても調べ、結果を、本明細書上記の表4及び図9に報告する。これらの例示的なHER2ターゲティング融合タンパク質の細胞毒性活性を、脱免疫化SLT−1A1断片単独(SLTA−DI−2(配列番号20))、及びフーリン切断モチーフを変異させ、エピトープ領域8を破壊する変化(表B、上掲)を有する、志賀様毒素A1断片である、SLTA−FR(配列番号37)を含む、HER2ターゲティング分子である、115172(配列番号23)と比較した。この実験からの細胞毒性データは、非ターゲティングSLTA−DI−2コンストラクト(配列番号20)を伴う、2,000μg/mLまでの濃度では、細胞毒性効果が見られなかったので、標的細胞を殺滅するには、HER2ターゲティング部分が必要であることを裏付けた(図9を参照されたい)。115111(配列番号29)について測定された細胞毒性のCD50値は、NCI/ADR−RES−HER2+細胞に対して、1.2ng/mLであった。
2.HER2への結合活性
例示的な、本発明のHER2ターゲティング分子の細胞結合特性について検討するために、フローサイトメトリーベースの方法を使用して、HER2ターゲティング分子の、ヒトHER2陽性HCC1954細胞に対する結合活性を測定した。各被験HER2ターゲティング分子の系列希釈液を、細胞へと添加し、細胞を洗浄し、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチド(例えば、配列番号20)を認識する、FITCへとコンジュゲートさせた抗SLTA−DI−2モノクローナル抗体(mAb;monoclonal antibody)を使用して、細胞に結合したHER2ターゲティングタンパク質を検出した。各試料について、蛍光強度中央値(MFI)値を生成するのに、フローサイトメトリーを使用して、FITCシグナルを測定した。非線形曲線回帰分析(Prism(GraphPad Prism、San Diego、CA、U.S.A.、Prismソフトウェア関数である、sigmoidal 4PL)を使用して、MFI値を、log変換されたHER2ターゲティング分子濃度の関数としてプロットして、Bmax及びKDを決定した。本研究の結果を、下記に報告する(表5及び図10を参照されたい)。
例示的な、本発明のHER2ターゲティング融合タンパク質である、115111(配列番号29)、115845(配列番号35)、及び115195(配列番号32)は、インビトロにおける、HCC1954細胞への同様の結合を示した。115111(配列番号29)は、HER2陽性HCC1954細胞に、0.42μg/mLのKDで結合し、115845は、HER2陽性HCC1954細胞に、0.32μg/mLのKDで結合した。この結合アッセイでは、114912(配列番号28)は、HCC1954細胞に対して、他の被験HER2ターゲティング分子と比較して、わずかに低度の結合アフィニティーを示した。このアッセイでは、115645(配列番号34)は、同様のKDを示したが、他の被験HER2ターゲティング分子と比較して、Bmaxが低減された。
a.例示的なHER2ターゲティング分子である、115111による結合についての、HER2エピトープマッピング
Integral Molecular社(Philadelphia、PA、U.S.A.)によるショットガン突然変異誘発法を使用して、115111(配列番号29)が結合した、ヒトHER2の細胞外エピトープをマッピングして、接触残基を同定した。HER2エピトープへの結合をスクリーニングするための、115111(配列番号29)の最適濃度を決定するために、HEK−293T細胞に、384ウェルフォーマット内の、標的ヒトHER2タンパク質(UniProt ID: P04626(配列番号38))の野生型(WT;wild-type)コンストラクトを発現するように設計されたベクター、又はベクター単独をトランスフェクトした。115111(配列番号29)の系列希釈液を、WT HER2標的タンパク質(配列番号38)又はベクター単独を発現する細胞に対する免疫反応性についてのハイスループットフローサイトメトリーを介して調べた。この結合アッセイのための、115111(配列番号29)に最適のスクリーニング濃度は、生のシグナル値及びシグナル対バックグラウンドの計算に基づき決定した。同じ方法を行って、対照のHER2結合性抗体である、トラスツズマブに最適のスクリーニング濃度も決定した。
上記で言及したヒトHER2タンパク質(配列番号38)に基づく、アラニン走査突然変異誘発ライブラリーを創出し、ハイスループットフローサイトメトリーにより、115111(配列番号29)の結合について、二連でスクリーニングした。各試験時点について、バックグラウンド蛍光を、生データから減算し、次いで、これを、115111(配列番号29)の、WT HER2タンパク質(配列番号38)との結合に照らして正規化した。115111(配列番号29)の、WT HER2(配列番号38)への結合と関連する、最重要の変異誘発クローンを同定した。115111(配列番号29)の、WT HER2(配列番号38)への結合についての、主要な最重要残基は、115111(配列番号29)で調べると、その変異が、115111(配列番号29)の結合を低減するが、トラスツズマブ(HER2結合性の、陽性対照mAb)の結合について調べると、WT HER2標的タンパク質対照と同様である残基であった。結果として得られる、ヒトWT HER2(配列番号38)内で選択された、最重要残基位置についての、結合反応性中央値であって、このエピトープマッピングアッセイを使用して測定される、115111(配列番号29)による、WT HER2への結合に対する百分率として表される結合反応性中央値を、表6に列挙する。
上記の手法を使用して、115111(配列番号29)が結合するHER2エピトープは、全てが、HER2細胞外ドメイン(ECD)のドメインI(NCBI受託番号:NP_004439.2、アミノ酸残基23〜653)(配列番号39)へとマッピングされる、Y112、Q178、及びL181を含むと考えられた。1つの残基である、G152は、エピトープマッピングアッセイにおいて、それが、「最重要」であるための閾値ガイドラインを満たさなかったので、副次的残基として同定されたが、G152A変異は、115111(配列番号29)の結合の、WT HER2(配列番号38)と比較した大幅な低下を結果としてもたらした。G152Aを発現するクローンへの結合は、G152を、主要な最重要残基と類別するのに要求される、35%の閾値レベルに対して、WTへの結合の39%の結合レベルを示した。HER2内のG152位は、このアッセイを使用してマッピングされた、主要な最重要残基に近接することから、G152位もまた、115111(配列番号29)が結合する、ヒトHER2内のエピトープ(配列番号38)の一部でありうることが示唆される。
図11は、上記で記載した手法により測定される、115111(配列番号29)が結合するための、最重要残基及び副次的残基を強調するマーキングを伴う、ヒトHER2についての概略を示す。図11の左図では、115111(配列番号29)の、HER2(配列番号38)への結合に最重要である、主要な残基を、HER2の結晶構造(PDB 1S78;Franklin M et al., Cancer Cell 5: 317-28 (2004))に基づき、青色の球として視覚化された副次的残基と共に、赤色の球として視覚化する。図11の右図では、HER2における最重要の結合残基は、上記のデータ、及びCho H et al., Nature 421: 756-60 (2003); Franklin M et al., Cancer Cell 5: 317-28 (2004)における情報に基づき、115111(配列番号29)の結合については、青色の球として示され、ペルツズマブの結合については、マゼンタの球として示され、トラスツズマブの結合については、紫色の球として示される。115111(配列番号29)が結合するHER2エピトープが、HER2細胞外ドメイン(ECD)(配列番号39)内の、ドメインIへとマッピングされるのに対し、ペルツズマブは、HER2のECDのドメインIIへとマッピングされるエピトープに結合し、トラスツズマブは、HER2のECD(配列番号39)のドメインIVへとマッピングされるエピトープに結合する(図11を参照されたい)。したがって、115111(配列番号29)は、トラスツズマブ及びペルツズマブが結合するエピトープとは異なる、HER2内のエピトープに結合する。
b.例示的なHER2ターゲティング分子である115111の、HER2結合特異性
例示的な、本発明のHER2ターゲティング融合タンパク質である、115111(配列番号29)の、結合の特異性、アフィニティー、及び選択性について、HEK−293T細胞の細胞表面上で発現するようにトランスフェクトされた、5,300の異なるタンパク質を含む、膜プロテオームアレイ(Integral Molecular, Inc. 社、Philadelphia、PA、U.S.A.)への、この精製融合タンパク質の結合を解析することにより調べた。図12に示した結果は、5,300のタンパク質の中で、HER2だけが、115111(配列番号29)の、選択的な結合標的であると同定及び検証されたことを示す。
3.細胞毒性活性
1.他の薬物と比較した、インビトロにおける細胞毒性活性
115111(配列番号29)の、HER2陽性細胞に対する細胞毒性活性を、T−DM1(トラスツズマブ・エムタンシン)、トラスツズマブ、及びペルツズマブを含む、参照HER2ターゲティング治療剤と比較し、組み合わせて査定した。これらの治療用分子の全ては、ヒトHER2の細胞外部分に特異的に結合するので、これらの分子は、組み合わされると、HER2への結合について、互いと競合する場合もあり、他の形で相互作用して、それらの機能活性を変化させる場合もあろう。例えば、異なる、細胞毒性である、HER2ターゲティング分子を、組み合わせて投与する場合、HER2陽性細胞に対する細胞毒性活性の、低減又は増大が、観察されうるであろう。さらなる例では、例えば、異なる、細胞毒性である、HER2ターゲティング分子を、組み合わせて投与する場合、HER2陽性細胞の殺滅の増大が、細胞毒性に対する、相加効果又は相乗効果として観察されうるであろう。
異なる細胞型の細胞の細胞表面上の、可能なHER2受容体の数について検討するために、実験を実施して、細胞1つ当たりの、結合するHER2ターゲティング型抗体分子の数を定量した。この実験は、細胞の、フィコエリトリン(PE;phycoerythrin)へとコンジュゲートさせた抗HER2抗体(抗HER2−PE抗体、クローン24D2、Biolegend、San Diego、CA、U.S.A.)を伴うインキュベーションを伴った。次いで、フローサイトメトリーを使用して、結合を定量するように、試料を解析した。既知のPEロードを有するBD Quantibrite(商標)PEビーズにより作成された検量線を使用して、MFIシグナル値を、各試料についての、細胞1個当たりの、結合する抗体の数へと転換した。次いで、これらのHER2陽性細胞を、本質的に、上記で記載した通りに実施される細胞毒性アッセイにおいて使用して、115111(配列番号29)の細胞毒性活性を、T−DM1及びラパチニブと比較した。これらの細胞毒性アッセイからの結果を、下記及び表7に報告し、T−DM1についての代表的データセットを、図13に示す。
115111(配列番号29)は、この実験における、全ての被験HER2+細胞:HCC1954細胞、NCI−N87細胞、HCC1569細胞、HCC1419細胞、AU565細胞、及びJIMT−1細胞に対する、強力な細胞毒性を示した(表7;また表2〜3、8〜10;図6〜7及び13〜19、も参照されたい)。
115111(配列番号29)及びT−DM1のいずれも、HCCC1954細胞、NCI−N87細胞、HCC1569細胞、HCC1419細胞、及びAU565細胞に対して、強力に細胞毒性であり(表7)、115111は、HCCC1954細胞、NCI−N87細胞、HCC1569細胞、及びHCC1419細胞に対して、T−DM1より強い細胞毒力を示した(表7;例えば、図13を参照されたい)。115111(配列番号29)は、NCI/ADR−RES−HER2+細胞及びJIMT−1細胞に対して、T−DM1より強力な細胞毒性を示した(表7;図13を参照されたい)。
NCI/ADR−RES細胞は、MDR1の発現のために、T−DM1に対して耐性であると考えられる。115111(配列番号29)は、HER2陽性NCI/ADR−RES細胞を殺滅した(表2〜3及び7;図6〜7、9、及び13)ため、p糖タンパク質(Pgp;p-glycoprotein)1型多剤耐性排出ポンプを発現する、他のHER2陽性細胞に対しても、細胞毒性である可能性が高い。
JIMT−1細胞は、MUC−4及び/又はCD44の発現を介する、エピトープのマスキングのために、トラスツズマブに対して耐性であると(例えば、Wilken J, Maihle N, Ann N Y Acad Sci 1210: 53-65 (2010)を参照されたい)考えられる。115111(配列番号29)は、JIMT−1細胞を殺滅した(表1〜2及び7;図6〜7)ため、MUC−4及び/又はCD44の存在も、例えば、エピトープマスキングなどを介して、115111(配列番号29)の細胞毒性を阻止することがない(例えば、図6〜7及び表7を参照されたい)。
115111(配列番号29)は、HER2の細胞外部分に結合し、標的細胞へと内部化して、それらのリボソームを探し出して、不活化させるので、115111(配列番号29)の細胞毒性活性は、HER2のキナーゼドメインへの結合又はその不活化に依存性ではない。これに対し、ラパチニブは、それらのキナーゼドメインに結合し、キナーゼ活性を阻害することにより、HER2及びEGFRをターゲティングする、二重チロシンキナーゼ阻害剤である。ラパチニブのような薬物に依拠するがん療法は、HER2のキナーゼ触媒性ドメイン内の保護的変異、又は構成的な/調節不能なHER2シグナル伝達経路の活性化を結果としてもたらす、デノボの異常、又はHER2の下流の地点における、HER2シグナル伝達経路の過剰活性化であって、これにより、HER2キナーゼ活性、なお又はHER2の発現の非存在下など、受容体を迂回する、HER2シグナル伝達経路の過剰活性化など、耐性機構の発生のために、有効でなくなる可能性がある。したがって、本発明の、ある特定のHER2ターゲティング分子(例えば、115111(配列番号29))は、不応性又は非応答性の治療耐性状況、例えば、ラパチニブ及び/又はネラチニブなどの、例えば、チロシンキナーゼ阻害剤を伴う治療に対して耐性の腫瘍において有効でありうる。
2.他の薬物の存在下における細胞毒性活性
a.ラパチニブ及びT−DM1
115111(配列番号29)の、HER2陽性細胞に対する細胞毒性活性を、本質的に、上記で記載した通りに実施される細胞毒性アッセイを、ラパチニブ及びT−DM1と組み合わせて使用して査定した。1μMのラパチニブ、又はある濃度範囲のT−DM1と組み合わせた、ある濃度範囲にわたる115111(配列番号29)の細胞毒性を、図14及び15に示す。いずれの組合せも、このインビトロ細胞殺滅アッセイにおいて観察される、115111(配列番号29)により、HER2陽性細胞に対して引き起こされる細胞毒性に対して、有害ではないと考えられた。さらに、これらの実験の結果は、115111(配列番号29)の、他の薬剤との組合せが、HER2発現細胞に対する、なおより強力な細胞毒性を達成する可能性を示す。
図14は、HER2陽性である、HCC1419細胞又はHCC1954細胞を使用する、細胞毒性アッセイであって、115111(配列番号29)、ラパチニブ、又はこれらの両方の組合せを、細胞へと投与した細胞毒性アッセイの結果を示す。115111(配列番号29)及びラパチニブの濃度は、単一の薬剤が、各細胞株について、約50%の生存率を結果としてもたらすように選択した。この実験の結果は、115111(配列番号29)を、ラパチニブと共に投与して、いずれかを個別に投与した場合より大きな細胞毒性を達成しうることを示した。図14におけるデータは、115111(配列番号29)とラパチニブとの組合せが、単独のラパチニブ又は115111(配列番号29)を伴う治療より高百分率の細胞を殺滅したことを示した。これらの結果は、115111(配列番号29)を、ラパチニブと組み合わせることができること、及び/又はラパチニブの存在下で、115111(配列番号29)の、HER2陽性細胞に対する細胞殺滅活性を、それほど失わずに投与しうることを示した。さらに、これらの結果は、115111(配列番号29)(又は同様の、本発明のHER2ターゲティング分子)とラパチニブとの組合せの投与が、いずれか1つを単独で、同じ、それぞれの用量で使用する場合より、多くのHER2陽性細胞を殺滅しうることを示唆した。
図15は、HER2陽性HCC1954細胞を使用する、細胞毒性アッセイであって、115111(配列番号29)、T−DM1、又はこれらの両方の組合せを、細胞へと投与した細胞毒性アッセイの結果を示す。図15におけるデータは、115111(配列番号29)とT−DM1との組合せが、単独のT−DM1又は115111(配列番号29)を伴う治療より高百分率の細胞を殺滅したことを示した。これらの結果は、115111(配列番号29)を、T−DM1と組み合わせることができること、及び/又はT−DM1の存在下で、115111(配列番号29)の、HER2陽性細胞に対する細胞殺滅活性を、それほど失わずに投与しうることを示した。さらに、これらの結果は、115111(配列番号29)(又は同様の、本発明のHER2ターゲティング分子)とT−DM1との組合せの投与が、いずれか1つを単独で、同じ、それぞれの用量で使用する場合より、多くのHER2陽性細胞を殺滅しうることを示唆した。
b.T−DM1及びトラスツズマブ
114912(配列番号28)及び115111(配列番号29)の、HER2陽性HCC1954細胞に対する細胞毒性活性を、他のHER2ターゲティング分子を添加する前に、1時間にわたり、細胞を、トラスツズマブ(20μg/mL)で前処理したことを除き、本質的に、上記で記載した通りに実施される細胞毒性アッセイを使用して、過剰量のトラスツズマブの存在下で査定した。図16は、HER2陽性HCC1954細胞を使用する、細胞毒性アッセイであって、114912(配列番号28)及び115111(配列番号29)の細胞毒性活性を、トラスツズマブの非存在下、及び過剰量のトラスツズマブの存在下の両方における、T−DM1と比較して査定した細胞毒性アッセイの結果を示す。HER2陽性がん細胞の、過剰量のトラスツズマブによる前処理は、115111(配列番号29)の細胞毒性活性を変化させなかった(図16、中図を参照されたい)。これは、過剰量のトラスツズマブの、それらの両方が、トラスツズマブの抗原結合性領域のうちの、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む、T−DM1、又は例示的なHER2ターゲティング分子である、114912(配列番号28)との組合せと対照的であった。これらのデータは、本発明のHER2ターゲティング分子が、非重複エピトープに結合し、HER2ターゲティング分子の作用機構と競合したり、これに干渉したりしない、他のHER2結合性治療剤の存在下で、細胞を殺滅しうることを示唆する(図11を参照されたい;トラスツズマブが、ECDのドメインIVへとマッピングされたエピトープに結合するのに対し、115111(配列番号29)は、ECDのドメインIと相互作用する)。モノクローナル抗体であるトラスツズマブは、このインビトロ細胞毒性アッセイ(HER2陽性がん細胞及び培養培地だけを伴う)において、細胞毒性を示さなかった。
c.トラスツズマブ及びペルツズマブ
ある濃度範囲にわたる115111(配列番号29)の、HER2陽性細胞に対する細胞毒性活性を、他のHER2ターゲティング分子を添加する前に、1時間にわたり、細胞を、トラスツズマブ(100μg/mL)、ペルツズマブ(100μg/mL)、又はトラスツズマブ(100μg/ml)及びペルツズマブ(100μg/mL)の両方(合計では、200μg/mLの抗体)で前処理したことを除き、本質的に、上記で記載した通りに実施される細胞毒性アッセイを使用して、過剰量のトラスツズマブ、過剰量のペルツズマブ、又は過剰量のトラスツズマブ及びペルツズマブの両方の存在下で査定した。図17及び表8は、HER2陽性である、HCC1954細胞又はNCI−N87細胞を使用する、細胞毒性アッセイであって、115111(配列番号29)の活性を、過剰量のトラスツズマブ、ペルツズマブ、又はこれらの両方の存在下で査定した細胞毒性アッセイの結果を示す。HER2ターゲティング融合タンパク質である115111(配列番号29)は、過剰量のトラスツズマブの存在下で、HCC1954細胞を殺滅した(図16〜17)。115111(配列番号29)は、過剰量のトラスツズマブ及び過剰量のペルツズマブ又は過剰量の両方の存在下で、HCC1954細胞及びNCI−N87細胞を殺滅した(図17)。モノクローナル抗体である、トラスツズマブ又はペルツズマブは、このインビトロ細胞毒性アッセイ(がん細胞及び培養培地だけを伴う)において、細胞殺滅活性を示さなかった。
図17及び表8におけるデータは、20μg/mLまでの濃度における、被験HER2ターゲティング分子である、115111(配列番号29)が、過剰量のトラスツズマブ又はペルツズマブ(いずれかを個別に100μg/mL、又は各々100μg/mLずつの、合計で、200μg/mLの共時的曝露)の存在下で、HER2発現細胞に対して細胞毒性であることを示し、これにより、115111(配列番号29)、及び非重複HER2結合性エピトープ(例えば、図11を参照されたい)を有する、トラスツズマブ又はペルツズマブのようなモノクローナル抗体など、別のHERターゲティング治療剤の投与を伴う、組合せ療法の可能性を示唆した。したがって、例示的なHER2ターゲティング分子である、115111(配列番号29)は、それらのHER2結合エピトープが異なる限りにおいて、他のHER2ターゲティング療法と組み合わせた、HER2を発現するがん細胞の殺滅において有効である可能性を有する。
本発明のHER2ターゲティング分子の作用機構(内部化及びリボソーム不活化のターゲティング)は、HER2をターゲティングするモノクローナル抗体の作用機構(トラスツズマブのHER2への結合は、ADCCを誘導し、HER2シグナル伝達を阻害する)(ペルツズマブのHER2への結合は、二量体化を阻害する)と異なり、T−DM1のような抗体薬物コンジュゲート(微小管阻害のターゲティング)とも異なる。HER2ターゲティング分子により使用される作用機構(複数可)以外の作用機構を使用する薬物に依拠するがん治療は、これらの他の作用機構のうちの、1つ又は2つ以上に特異的な耐性機構の発生のために、有効でなくなる可能性がある。例えば、腫瘍は、例えば、T−DM1、トラスツズマブ、及び/若しくはペルツズマブなど、特異的HER2エピトープに結合するモノクローナル抗体を伴う治療、並びに/又は、例えば、ラパチニブ及び/若しくはネラチニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤を伴う治療に対して、耐性となりうる。本発明の、ある特定のHER2ターゲティング分子(例えば、115111(配列番号29))は、不応性又は非応答性の治療耐性状況、例えば、T−DM1、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ及び/又はネラチニブを伴う治療に対して耐性の腫瘍において有効でありうる。さらに、本発明のHER2ターゲティング分子の、独自の作用機構は、単剤療法が利益をもたらす、新たな機会(治療耐性患者/非レスポンダー患者)のほか、T−DM1、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、及び/又はネラチニブとの組合せなど、異なる作用機構及び/又は補完的な作用機構を組み合わせる、組合せ療法をもたらしうる。
3.曝露の持続時間に基づく、例示的なHER2ターゲティング分子の細胞毒性
例示的な、本発明のHER2ターゲティング分子の細胞毒性効果について研究するため、動態的細胞殺滅実験を実施した。ここでも、上記で記載した細胞殺滅アッセイを使用したが、HER2発現細胞の、HER2ターゲティング分子への曝露の持続時間が異なった。本研究では、HER2陽性の、SKBR3又はHCC1954を、HER2ターゲティング分子へと、具体的な、短い持続時間(例えば、1又は4時間)にわたり曝露し、次いで、細胞を洗浄し、培地を置きかえた(「ウォッシュアウト」)。対照試料を、実験を通して、連続的に、HER2ターゲティング分子と共にインキュベートした(「洗浄なし」)。同じ条件下で、媒体単独により治療された試料に対する結果を比較することにより、全てのデータを正規化した。本研究からの結果を、表9〜10及び図18〜19に示す。
連続曝露下で、115111(配列番号29)は、HER2陽性HCC1954細胞に対して、115195(配列番号32)について測定される、3.9ng/mLのCD50値と同様である、5.6ng/mLのCD50値を示した。連続曝露下で、115111(配列番号29)は、HCC1954細胞に対して、115845(配列番号35)について測定される、25.3ng/mL、及び115645(配列番号34)について測定される、41.5ng/mLのCD50値と同様である、5.6及び37.3ng/mLのCD50値を示した。しかし、短い曝露条件は、115111(配列番号29)及び115195(配列番号32)と、他の被験HER2ターゲティング分子との、ある驚くべき差違を明らかにした。
これらの実験からのデータは、115111(配列番号29)が、ごく短い持続時間(1〜4時間)にわたり、HER2発現細胞へと曝露されても、強力な細胞毒性活性を及ぼすことを裏付けた(表9〜10及び図18〜19を参照されたい)。リンカー(多量体化に影響を及ぼす)だけが異なる、二量体/二価の115195(配列番号32)は、単量体/一価である、115111(配列番号29)と類縁であり、連続条件下及びウォッシュアウト条件下の両方で、115111(配列番号29)と同様の活性を示した(表10、図19)。これに対し、114912(配列番号28)、114898(配列番号31)、115645(配列番号34)、及び115845(配列番号35)のような、他のHER2ターゲティング分子は、短い曝露持続時間では、連続曝露と比較した、細胞毒性活性の大幅な低減を示した(例えば、表9〜10及び図18〜19を参照されたい)。
上記に示した、HER2への結合及び触媒活性データは、比較的短い持続時間にわたる曝露下の細胞毒力が、トラスツズマブベースの114912(配列番号28)など、他の被験HER2ターゲティング分子と対比した、115111(配列番号29)及び115195(配列番号32)について最大となることの、明確な指標をもたらさなかった。さらに、連続曝露(例えば、3〜5日間にわたる)の条件下で収集された、上記の細胞毒性アッセイデータは、曝露の持続時間が短い(例えば、4時間以下である)条件下で、どのHER2ターゲティング分子が、より強力となるのかについての指標をもたらさなかった。
異なるHER2ターゲティング分子を比較すると、結合アフィニティーが、細胞毒性活性と、常に相関するわけではないことが明らかである。例えば、115645(配列番号34)及び115845(配列番号35)は、HER2陽性HCC 1954に対して、同等な細胞毒性活性を有する(表10;図19)が、Bmaxにより測定される、HER2への結合では、細胞毒性活性が異なる(表5及び図10)。逆に、115111(配列番号29)は、HCC1954細胞に対する細胞毒性が、115845(配列番号35)より強力である(表7〜9;図6〜7、及び18〜19を参照されたい)が、これらの2つHER2ターゲティング分子は、これらの細胞に対して、同様の、Bmax及びKDによる結合特徴を裏付けた(表5及び10;図10を参照されたい)。短い持続時間にわたる曝露は、分子間の、極めて大きな差違を明らかにし、この知見は、HER2への結合データ、触媒性データ、及び連続曝露データによっては予測できなかった。
4.HER2への結合についての、種間の交差反応性
動物研究のために準備する中で、インビトロにおける結合アッセイを使用して、115111(配列番号29)の、異なる種に由来する組換えHER2タンパク質への結合について検討した。酵素免疫測定アッセイ(ELISA)プレートのウェルを、ヒト供給源(配列番号38)、カニクイザル種供給源(GenBank:EHH58073.1及びNCBI参照番号:XP_001090430.1(配列番号40〜41))、及びマウス供給源(UnitProt:P70424(配列番号42))に由来する、組換えHER2細胞外ドメイン(ECD)タンパク質でコーティングした。ウェルをブロッキングし、洗浄し、次いで、例示的なHER2ターゲティング分子:115111(配列番号29)、115195(配列番号32)、又は114912(配列番号28)のうちの1つと共にインキュベートした。結合しなかったタンパク質は、洗浄により除去し、HER2に結合したHER2ターゲティング分子は、これらの分子内の志賀毒素エフェクターポリペプチドの構成要素を認識する、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP;horse radish peroxidase)コンジュゲートmAbである、抗SLTA−DI−2抗体を使用して検出した。これらの結合アッセイの結果を、下記に報告する(表11及び図20を参照されたい)。
表11及び図20におけるデータは、115111(配列番号29)、類縁の分子である、115195(配列番号32)(リンカーだけが異なる、一価である115111(配列番号29)の、二価二量体バリアントである)、及びトラスツズマブの結合性ドメインに由来する分子である、114912(配列番号28)の全てが、ヒト及びカニクイザルの組換えHER2 ECDタンパク質(Sino Biological Inc.社、Beijing、CN、それぞれ、カタログ番号:10004−H02H及び90295−C02H)の両方に結合したことを示す。このアッセイでは、114912(配列番号28)は、マウスHER2 ECDタンパク質(Sino Biological Inc.社、Beijing、CN、カタログ番号:50714−M02H)に結合しなかった。このアッセイでは、115111(配列番号29)は、マウスHER2 ECDタンパク質に結合しなかった(図20)。表11及び図20に示される通り、単量体/一価である、115111(配列番号29)と、類縁の、二量体/二価である、115195(配列番号32)とは、ヒト及びカニクイザルの組換えHER2 ECDタンパク質に対する、同様の結合を示した。114912(配列番号28)は、ヒト及びカニクイザルのHER2 ECDタンパク質に、Bmaxの点で、115111(配列番号29)及び115195(配列番号32)と同様のアフィニティーで結合した(表11;図20を参照されたい)が、トラスツズマブベースの114912(配列番号28)は、115111(配列番号29)及び115195(配列番号32)の両方と比較して、わずかに高値のKD(2〜5倍)を示した(表11を参照されたい)。
インビトロデータの概要:
上記のインビトロデータに基づき、最も有望な、被験HER2ターゲティング分子は、114912(配列番号28)、115111(配列番号29)、115195(配列番号32)、115172(配列番号23)、115194(配列番号33)、115411(配列番号30)、115645(配列番号34)、及び115845(配列番号35)であった(表1〜3及び9〜10;図3、6〜7、及び18〜19を参照されたい)。これらのHER2ターゲティング分子は、インビトロにおける、連続曝露の条件下で、強力な細胞毒性活性を示した。インビトロにおけるリボソームの阻害アッセイでは、被験HER2ターゲティング分子の間で、著明な差違は観察されなかった。インビトロにおける細胞結合性アッセイでは、被験HER2ターゲティング分子の間で、ある程度の差違が観察されたが;結合特徴は、細胞毒力と、必ずしも相関しない(115645(配列番号34)及び115845(配列番号35)に関する、上記の議論を参照されたい)。上記の、インビトロにおける細胞毒性データは、115111(配列番号29)、115195(配列番号32)、115172(配列番号23)、115194(配列番号33)、及び115411(配列番号30)の中の、どの分子(複数可)が、インビボにおいて、最も有効かつ安全であるのかについての示唆をもたらさなかった。しかし、115172(配列番号23)及び115194(配列番号33)における志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド構成要素は、他の有望なHER2ターゲティング分子である、115111(配列番号29)、115411(配列番号30)、及び115195(配列番号32)の志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド構成要素より、脱免疫化が低度であった。したがって、115111(配列番号29)、115411(配列番号30)、又は115195(配列番号32)の、動物への投与は、115172(配列番号23)又は115194(配列番号33)の投与より忍容良好であることが予測された。特に、がんを治療するための、それらの安全性プロファイル及び/又は有効性の任意の差違を区別し、最も有望な候補物質を、ヒト臨床試験へと送り込むために、異なる、例示的なHER2ターゲティング分子の、異なる投与量における投与を伴う動物研究を企図した。上記のインビトロデータも、115111(配列番号29)が一価であるのに対し、115195(配列番号32)が、二量体の二価分子を形成するという事実も、これらの2つの例示的なHER2ターゲティング分子のうちのいずれが、インビボにおいて、効能良好であるのかを示唆しなかった。
C.例示的な、本発明のHERターゲティング分子についてのインビボ研究
動物モデルを使用して、インビボにおける、例示的な、本発明のHERターゲティング分子の効果について検討した。異なるマウス株を使用して、健常な免疫正常マウス、及び免疫障害マウスにおける異種移植腫瘍であって、これらのマウスへの、細胞表面上にHER2を発現するヒト新生物性細胞の注入から得られる異種移植腫瘍の両方への投与の後における、115111(配列番号29)の効果(複数可)について調べた。非ヒト霊長動物を使用して、健常な非ヒト霊長動物への静脈内投与の後における、115111(配列番号29)の効果(複数可)について検討した。例示的なHER2ターゲティング分子である、115111(配列番号29)は、動物において、他の被験HER2ターゲティング分子より忍容良好であることが観察された。驚くべきことに、115111(配列番号29)の投与は、近縁の候補HER2ターゲティング分子である、115195(配列番号32)の投与より忍容良好であることが観察された。
1.血清曝露
免疫正常C57BL/6マウスを使用して、体重1キログラム当たり1ミリグラム(mg/kg)の単回静脈内(IV)投与の後における、115111(配列番号29)及び115195(配列番号32)の血清曝露(薬物動態)について検討した。HER2ターゲティング分子である、115111(配列番号29)及び115195(配列番号32)を、各々、リン酸塩緩衝生理食塩液(PBS;phosphate buffered saline)中で希釈し、治療群1つ当たりのマウスを3匹ずつとするマウスへと、IV投与した。各時点において、血清を、各マウスから回収し、いずれもが検量線を使用して定量される、HER2結合性分子を捕捉するための組換えヒトHER2タンパク質を使用し、存在するHER2ターゲティング分子を定量するための抗SLTA−DI−2 mAbを使用する、MDA(Mesoscale Discovery Assay)(Cambridge Biomedical Inc.社、Boston、MA、U.S.A.)により、HER2ターゲティング分子の濃度を測定した。本研究からの結果を、表12に示す。
表12におけるデータは、マウスにおける115195(配列番号32)の血清曝露が、115111(配列番号29)の血清曝露より、著明に長かったことを指し示す。
2.忍容性
a.免疫正常マウスにおける忍容性
免疫正常BALB/cマウスを使用して、時間経過にわたる、同じマウスへの反復投与(マウス1匹当たりの、のべ投与6回の投与)の後における、例示的なHER2ターゲティング分子である、115111(配列番号29)、115172(配列番号23)、115195(配列番号32)、及び115194(配列番号33)の毒性及び免疫原性について検討した。115111(配列番号29)、115172(配列番号23)、115195(配列番号32)、及び115194(配列番号33)を、PBS中で希釈し、マウスへと投与した(群1つ当たりのn=6、体重1kg当たりの用量1mgで、1、3、5、8、10、及び12日目における静脈内(IV)投与)。対照として、媒体だけの試料を、陰性対照治療群へと投与した。研究中に、マウスの体重及び健康状態をモニタリングした。本研究からの治療忍容性結果を、体重の変化及び死亡を、忍容性の指標として、表13及び図21に示す。治療群の体重中央値の百分率の、0日目と比較した変化を、治療群内の、全動物中の動物死亡数と共に示す。
本研究からのデータは、115111(配列番号29)が、例示的な被験HERターゲティング分子中で、最も忍容良好な分子であることを裏付けた(表13及び図21を参照されたい)。115111(配列番号29)を施されたマウスの群は、対照群と比較した、体重の減少を示さず、動物死亡の非存在を示す。これと対照的に、115195(配列番号32)を投与されたマウスの群は、体重が、マウス1匹当たりの平均で20%を超えて減少し、6匹中5匹(83%)のマウスが、研究の、最初の2週間において死んだ。これは、単量体/一価である、115111(配列番号29)が、類縁の二量体/二価分子である、115195(配列番号32)より忍容良好であったことを指し示す。加えて、SLTA−DI−2(配列番号20)を含む、115111(配列番号29)分子は、SLTA−FR(配列番号37)構成要素を含む、115172(配列番号23)と比較して、忍容良好であった。115111(配列番号29)は、115172(配列番号23)と比較して、多くの脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドの構成要素を含むので、これは予測されうるであろう。115172(配列番号23)を施されたマウスの群は、平均で9.5%の体重減少を示したが、動物は死亡せず、全てのマウスは、投与が完了した後で、体重を回復させた。本研究において忍容が最小の分子は、二量体/二価であり、志賀毒素エフェクターポリペプチドのSLTA−FR構成要素(配列番号37)を含む、115194(配列番号33)であった。115194(配列番号33)を施されたマウスの群は、最大の体重減少を示す結果として、投与4回目の後において、投与の中止をもたらしたが、この投与群内の全てのマウス(6匹中6匹(100%))は、研究の12日目までに死んだ。
まとめると、これらのデータは、本研究において、115111(配列番号29)が、最も忍容良好なHER2ターゲティング分子であることを指し示した。115111(配列番号29)及び115195(配列番号32)についての血清曝露データに基づけば、115195(配列番号32)の投与が、血清中の遊離志賀毒素の減少を結果としてもたらし、したがって、良好な忍容性を結果としてもたらすことを予測しうるであろう。しかし、115195(配列番号32)は、未だ完全には解明されていない理由のために、より大きな毒性を結果としてもたらした。
免疫正常C57BL/6マウスを使用して、時間経過にわたる、同じマウスへの反復投与(マウス1匹当たり2サイクルで、のべ12回の投与)の後における、115111(配列番号29)の忍容性について検討した。115111(配列番号29)試料を、PBS中で希釈し、体重1kg当たりの用量0.1mgで、マウス(群1つ当たりのn=6〜10)へと、静脈内(IV)投与した。対照として、脱免疫化が低度の115172(配列番号23)(例えば、国際公開第2016/196344号パンフレットを参照されたい)及び115411(配列番号30)のインビボ効果について、同じ研究内で、並行して研究した。対照として、媒体だけの試料を、陰性対照治療群へと投与した。研究中に、マウスの体重及び健康状態をモニタリングし、投与1回当たり1mg/kgで投与されたマウスについての結果を、表14及び図22に示す。
表14における、体重及び動物死滅の結果は、115111(配列番号29)及び115411(配列番号30)が、115172(配列番号23)より忍容良好であることを示した。115111(配列番号29)治療群又は115411(配列番号30)治療群では、マウスが死ななかったのに対し、115172(配列番号23)治療群では、マウス6匹中6匹(100%)が、研究の最初の22日間で死んだ。図22における体重データは、115111(配列番号29)が、115172(配列番号23)より忍容良好であることを示した。これらの結果は、SLTA−DI−2(配列番号20)を含む115111(配列番号29)分子及び115411(配列番号30)分子が、脱免疫化が低度である、志賀毒素エフェクターポリペプチドのSLTA−FR構成要素(配列番号37)を含む、115172(配列番号23)と比較して忍容良好であったことを指し示す。
b.免疫原性
免疫正常BALB/cマウスを使用して、時間経過にわたる、同じマウスへの反復投与(マウス1匹当たりの、のべ6回の投与)の後における、115111(配列番号29)、115172(配列番号23)、115195(配列番号32)、及び115194(配列番号33)の免疫原性について検討した。1つの研究では、115111(配列番号29)、115172(配列番号23)、115195(配列番号32)、及び115194(配列番号33)を、PBS中で希釈し、体重1kg当たりの用量1mgで、マウス(群1つ当たりのn=6)へと、静脈内(IV)投与した。本研究で測定された免疫応答結果を、下記及び図23に報告する。別の研究では、115111(配列番号29)、115172(配列番号23)、又は媒体だけの対照試料を、体重1kg当たりの用量0.25mgで、マウス(群1つ当たりのn=6)へと、腹腔内(IP)注射を介して投与した。
これらの研究中に、マウスにおける、HER2ターゲティング分子に対する、抗薬物抗体(ADA;anti-drug antibody)の量をモニタリングした。抗薬物抗体レベルは、血清試料を、マウスから採取し、試料を希釈し、希釈された試料を、被験HER2ターゲティング分子(115111(配列番号29)又は115172(配列番号23))と共に、一晩にわたりインキュベートして、免疫複合体を形成することによりモニタリングした。次いで、組換えヒトHER2タンパク質でコーティングしたプレートを伴うELISA法を使用して、ヒトHER2結合性ドメインを含む分子(例えば、本発明のHER2ターゲティング分子)を捕捉した。次いで、ヒトHER2 ELISA法により捕捉される抗マウスIgGの数を定量するように、西洋ワサビペルオキシダーゼへとコンジュゲートさせた抗マウス免疫グロブリンG(IgG−HRP;anti-mouse immunoglobulin G conjugated to horse radish peroxidase)を使用して、各試料中に存在する、免疫複合体の量を推定した。この抗薬物抗体(ADA)アッセイからの結果を、図23に示す。
図23の上図は、高度に脱免疫化された115111(配列番号29)が、体重1kg当たり0.25mgの腹腔内(IP)投与を伴う研究の、最初の36日間において、115172(配列番号23)より低度の、IgGに対する抗薬物抗体(ADA)ELISAシグナルを結果としてもたらすことを示した。図23の下図は、高度に脱免疫化された115111(配列番号29)の投与が、研究の22日目における、体重1kg当たり1mgのIV投与を伴う、115172(配列番号23)の投与より低度の、IgGに対するADA ELISAシグナルを結果としてもたらすことを示した。115111(配列番号29)が、115172(配列番号23)と比較して、多くの脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドの構成要素を含むので、これらの結果は予測外ではない。
c.非ヒト霊長動物
毎週3回ずつ、2週間にわたる、6回の静脈内(IV)ボーラス投与による、115111(配列番号29)の投与を伴う、2つの毒性研究を、カニクイザルにおいて実施して、3週間(又は、低用量研究では、18日間)にわたる、投与後の観察期間に続く、任意の所見について、潜在的な回復可能性、進行又は進行の遅延を査定した。
「高用量」のGLP(医薬品の安全性試験の実施に関する基準;Good Laboratory Practice)研究は、体重1kg当たりの用量50、150、及び300μgについて調べた。これらの「高」用量は、忍容良好ではなかった。
「低用量」のGLP研究は、体重1kg当たりの用量1、5、及び25μgについて調べた。これらの「低」用量は、動物の健康に有害な影響を及ぼさないと考えられる効果を示したので、これらの2つ研究についてのNOAEL(無毒性量;No-Observed-Adverse-Effect Level)及びHNSTD(重度の毒性が発生しない最大用量;Highest Non-Severely Toxic Dose)は、体重1kg当たり25μgであった(すなわち、「低用量」研究における、最大被験用量)。
3.HER2を発現する腫瘍の異種移植の有効性
ヒト乳がんについてのマウスモデルを使用して、腹腔内(IP)投与の後における、115111(配列番号29)の効果(複数可)について調べた。まず、それらの細胞表面上にHER2を発現するヒト新生物性細胞を、マウスへと注入し、次いで、マウスを、115111(配列番号29)で治療した。
115111(配列番号29)の活性について、皮下に、ヒトHER2陽性腫瘍を保有する、SCID Beigeマウスを使用する、皮下腫瘍モデルにおいて研究した。ヒト乳がん由来の細胞株に由来するHCC1954細胞を、皮下移植し、次いで、腫瘍が、100〜150mm3の平均に達したら、治療を開始し、これにより、研究0日目を規定した。マウスに、研究の1、3、5、8、10、12、22、24、26、29、31日目(体重1kg当たりの用量0.1又は0.5mgを投与された群については、33日目を加える)において、体重1kg当たりの用量0.1、0.5、又は2mgで、2サイクルにわたる115111(配列番号29)を静脈内投与した。治療期間中に、腫瘍体積をモニタリングし、0日目〜60日目(全ての群内の動物のうちの50パーセントを超える動物が生存した、最後の時点)における結果を、図24に示す。加えて、0日目〜84日目(研究の終了時)における研究からの生存結果を、図24に示す。
本研究は、115111(配列番号29)の、体重1kg当たり0.1、0.5、及び2mgにおける反復投与が、研究の84日目まで、腫瘍増殖の遅延及び生存の利益を結果としてもたらすことを示した(例えば、図24を参照されたい)。体重1kg当たりの用量2mgを投与された、115111(配列番号29)治療群において観察された、体重の減少は、予定された最終回投与(33日目)の中止を結果としてもたらし、1kg当たりの115111(配列番号29)2mgの治療群内の2匹のマウスは、研究中に死んだ。
要約
驚くべきことに、例示的なHER2ターゲティング分子である、115111(配列番号29)は、動物へと、体重1kg当たり1〜2mgの間の範囲の用量で投与するのに、本実施例における、他の任意の例示的な被験HER2ターゲティング分子より、はるかに安全であった。この安全性結果は、上記のインビトロデータから予測できなかった。これらの2つ分子は、同一の構成要素:これらの分子内で同じである、志賀毒素エフェクターポリペプチド、重可変鎖、軽可変鎖、及び志賀毒素エフェクターポリペプチドと、HER2結合性領域とのリンカーを共有するため、単量体である115111(配列番号29)は、二量体である115195(配列番号32)より忍容良好であることは、特に驚くべきであった。さらに、インビトロデータは、115195(配列番号32)が、二量体であり、かつ、二価であるのに対し、115111(配列番号29)は、単量体であり、かつ、一価であることを除き、これらの分子の間の有意差を明らかにしなかった。例えば、115195(配列番号32)及び115111(配列番号29)のいずれも、インビトロにおける、同等な細胞毒性(表3及び10;図19を参照されたい)、及びHER2陽性細胞に対する、同様の結合特徴(表5及び11;図10を参照されたい)を示した。115111(配列番号29)及び115195(配列番号32)のいずれも、連続曝露と比較した、短い持続時間にわたる曝露において、細胞毒力を維持した(表9〜10及び図18〜19を参照されたい)。115111(配列番号29)は、連続曝露又は短曝露を伴うこと条件下で、114912(配列番号28)より大きな細胞毒力を示した(表2及び9;並びに図6及び18を参照されたい)。HER2ターゲティング分子である、それらのいずれもが、部分的に、広く使用される薬である、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))に基づく、114912(配列番号28)及び114778(配列番号24)は、本明細書の最も強力な被験HER2ターゲティング分子の中に入らなかった。
本発明のHER2ターゲティング分子の治療的使用に対する、対象の応答の予測、及びこれに適切な対象の同定
異なる疾患、障害、及び/又は状態について、最も感受性又は抵抗性の組織学及び/又は組織学的亜型を同定するために、上記の実施例1で記載したHER2ターゲティング分子など、例示的なHER2ターゲティング分子を、インビトロにおいて、患者由来の細胞株へと投与した。次いで、当業者に公知の方法を使用して、患者を、異なる亜集団へと類別した。例えば、実施例1で記載した細胞毒性アッセイ、又は当業者に公知の他の方法を使用して、乳がん由来の細胞株(又は、代替的に、胃、卵巣、肺、結腸直腸、黒色腫、又は膵臓におけるがん由来の細胞株)のパネルを、インビトロにおいて調べた。加えて、これらの細胞毒性アッセイは、例えば、T−DM1(トラスツズマブ・エムタンシン)、トラスツズマブ、及びペルツズマブ、並びに/又は、例えば、ラパチニブ及び/若しくはネラチニブなど、HER2機能に影響を及ぼす、さらなる薬物などを含む、さらなるHER2ターゲティング療法剤と組み合わせても実施する。細胞毒性結果は、例えば、分子マーカー(バイオマーカーの発現、遺伝子コピー数、変異、及び多型、増殖促進性経路の活性化又は増殖阻害性経路の阻害、代謝活性、遺伝子型解析を含む);標準的な、化学療法剤/細胞毒性剤、ホルモン剤(例えば、エストロゲン、エストラジオールなど)、及び生物学的薬剤(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)に対する応答;並びにプラスチック上及び軟性寒天内で増殖する能力のほか、インビボにおいて皮下増殖する能力及び同所増殖する能力など、各細胞株に関する情報に基づき、どの徴候、細胞型、組織学、組織学的亜型、及び/又は対象が、特定の本発明のHER2ターゲティング分子、及び/又は本発明のHER2ターゲティング分子と、本明細書で記載される、別のHER2ターゲティング療法剤など、さらなる治療剤との特定の組合せに応答するか、又は耐性でありうるのかを同定又は予測するのに有用な、ある特定の関連を明らかにする。さらに、個別の患者に由来するがんの悪性組織検体又は循環腫瘍細胞も、当業者に公知である、規定の方法を使用して、感受性/耐性についてのバイオマーカーの存在について調べられる。このバイオマーカー関連、組織学関連、及びインビトロにおける細胞特徴に基づき、患者は、HER2ターゲティング分子療法(組合せ療法を含む)を、それらの悪性腫瘍のための治療レジメンの一部として施されるのに適切な(又は不適切な)候補として、選択又は類別される。
本発明の一部の実施形態について、例示を目的として記載してきたが、本発明が、本発明の精神から逸脱したり、特許請求の範囲を超えたりしない限りにおいて、多くの修飾、変動、及び適応を伴い、当業者の技術の範囲内にある、多数の均等物又は代替的解決法の使用を伴って実施されうることが明らかであろう。
全ての刊行物、特許、及び特許出願は、各個別の刊行物、特許、又は特許出願が、参照によりその全体において組み込まれることが、具体的かつ個別に指し示された場合と同じ程度において、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる。国際特許出願公開第2014/164680号パンフレット、国際特許出願公開第2014/164693号パンフレット、国際特許出願公開第2015/138435号パンフレット、国際特許出願公開第2015/138452号パンフレット、国際特許出願公開第2015/113005号パンフレット、国際特許出願公開第2015/113007号パンフレット、国際特許出願公開第2015/191764号パンフレット、国際特許出願公開第2016/196344号パンフレット、国際特許出願公開第2017/019623号パンフレット、及び国際特許出願公開第2018/140427号パンフレットは、各々、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる。米国特許出願第2015/259428号明細書、同第2016/17784号明細書、同第2017/143814号明細書、及び同第62/659,116号明細書の開示は、各々、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる。本明細書で引用される、アミノ酸配列及びヌクレオチド配列についての、GenBank(National Center for Biotechnology Information、U.S.)による、全ての電子的に利用可能な生物学的配列情報の完全な開示は、各々、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる。