本願明細書に示される説明及び解説は、本発明、その原理、及びその実用的用途を他の当業者に熟知させることを意図したものである。ここに示した本発明の具体的な実施形態は、本発明を網羅し、又は限定することを意図したものではない。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲、それと共にこのような請求項が権利を付与される均等物の全ての範囲を参照して決定されるべきである。特許出願及び出版物を含む全ての論文及び参考文献の開示は、全ての目的のために参照によって組み込まれる。他の組合せもまた、以下の請求項から収集されるように可能であり、これらもまた、参照により本明細書に組み込まれる。
別に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する当業者によって一般的に理解される意味を有する。以下の参考文献、すなわち、Singletonら、「Dictionary of Microbiology and Molecular Biology」(1994年第2版)、The Cambridge Dictionary of Science and Technology(1988年Walker編)、The Glossary of Genetics、第5版、R.Riegerら(編集者)、Springer Verlag(1991年)、及びHale & Marham、The Harper Collins Dictionary of Biology(1991年)は、本開示で使用される用語の多くの一般的な定義を当業者に提供する。本明細書中で使用される場合、以下の用語は、特に指定のない限り、以下の用語に由来する意味を有する。
開示されるのは、1つ以上のエステル基及び典型的なエステル交換反応条件下で望ましくない副反応を受け得る官能基を有する化合物をエステル交換して、該化合物のエステル基上のヒドロカルビル部分を異なるヒドロカルビル部分で置換する方法である。エステル交換は、第1のエステル化合物を1種以上のアルコール又は1種以上の第2のエステル化合物と接触させることによって行われ、ここで、1種以上のアルコール化合物の炭化水素主鎖、又は第2のエステル化合物の1つ以上のヒドロカルビル部分が、第1のエステル化合物の1つ以上のエステル基上の1つ以上のヒドロカルビル部分を置換する。この方法は、比較的低い反応負荷量で触媒を用いて、160℃以下又は130℃以下のような比較的穏やかな温度で行うことができる。一般に、この方法はエステル交換反応を説明するためにアルコール試薬を用いた式1に示される。
ここで、Rは、それぞれの場合において別々に、エステル交換反応条件下で望ましくない副反応を受け得る官能基で置換されたヒドロカルビル基である。R
1及びR
2は、それぞれの場合に別々に、ヒドロカルビル基である。aは1以上の整数であり、bは0以上の整数であり、ここで、bはa以下である。この方法は、第2のエステル化合物試薬を用いてエステル交換反応を行う式2によって一般的に示される。
ここで、R、R
1、R
2、a、及びbは前述の通りであり、R
3はヒドロカルビル基である。製造される生成物は、出発反応物、条件、反応物の比率に基づく。
エステル化合物とは、1つ以上のエステル基を含む任意の化合物を指す。エステル基交換又はエステル交換に供されることができる第1のエステル化合物は、エステル基上のヒドロカルビル部分が脱離し、他のヒドロカルビル部分に置換されることができる1つ以上のエステル基を有し、エステル交換反応条件下で望ましくない副反応を受け得る官能基を含む任意の化合物である。第1のエステル化合物は以下の式に対応し得る。
ここで、R、R
1、及びaは、先に定義されている。本明細書中で使用される場合、第1のエステル化合物は、1,1−二置換アルケン化合物のエステルであり、これは、エステル交換方法に供され、次いで、前記方法によって変更されて、修飾としてさらに使用することができるか、又は他の化合物若しくは組成物を合成するために使用することができる所望の生成物を形成する。本明細書中で使用される場合、第2のエステル化合物は、第1のエステル化合物から脱離するヒドロカルビル部分のための交換ヒドロカルビル部分を提供するために存在する試薬エステルを指す。本質的には、反応後の第1及び第2のエステル化合物はエステル基上に異なるヒドロカルビル部分を有するものである。第3のエステル化合物は、第2のエステル化合物、及び第1のエステル化合物から脱離するヒドロカルビル部分から形成される副生成物である。
1,1−二置換アルケン化合物とは、1,1−ジエステルアルケン、1,1−二置換−1−アルケン、1,1−ジエステル置換−1−アルケン、1,1−ジエステル置換−1−アルキレン、メチレンマロネート、及びメチレンβ−ケトエステルをはじめとする、電子吸引置換基を含む1種以上のエステルを含有する化合物を指す。1,1−二置換アルケン化合物は、以下の式1に示されるように、それに結合した二重結合を有し、エステルの少なくとも1つのカルボニル炭素原子にさらに結合している炭素を有する化合物を指す。
ここで、R’は水素(反応性アルケン官能基を示す)であり、Xはエステル基(2つの置換基エステル基を与える)の別の酸素又は直接結合(メチレンβ−ケトエステルなど)であることが好ましい。R’は、アルキル又はアルキレン基に対応し得、それによって、化合物の反応中心を潜在的に再配置し得る(式1に例示されるように)。それにもかかわらず、これらの代替化合物は、本明細書では1,1−二置換アルケン化合物と呼ばれる。1,1−二置換アルケン化合物は、Malofskyら、US8,609,885号及び8,884,051号、並びにMalofskyら、WO2013/059473号に開示されているように調製することができる。メチレンベータ−ケトエステルは、Malofskyらの米国公開第2014/0288230号に開示されているように調製することができ、該公報は全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
「単官能性」という用語は、1つのコア単位のみを有する第1のエステル化合物(例えば1,1−二置換アルケン化合物)を意味する。コア単位は、関連する反応性アルケン官能基を示す式1の角括弧内に表される。「二官能性」という用語は、2つのコア式の各々上の1つの酸素原子間のヒドロカルビレン結合を通して結合した2つのコア式(反応性アルケン官能基など)を有する第1のエステル化合物又は反応の所望のエステル生成物を意味する。「多官能性」という用語は、2つの隣り合うコア式の各々上の1つの酸素原子間のヒドロカルビレン結合を通して鎖を形成する2つのコア単位(反応性アルケン官能基など)を有する第1のエステル化合物又は反応の所望のエステル生成物(1,1−二置換アルケン化合物など)を意味する。
本明細書で使用される酸触媒は、副反応を最小限にするか又は副反応に寄与せずに、エステル交換反応に触媒作用を及ぼす酸性種である。アルコール炭化水素主鎖という用語は、炭素原子及び水素原子を有する主鎖を指し、アルコールのヒドロキシル基が結合している他のヘテロ原子を含有してもよい。第2のエステル炭化水素主鎖という用語は、炭素原子及び水素原子を有する主鎖を指し、エステル化合物が結合する他のヘテロ原子を含んでいてもよい(例えば、酢酸塩又はギ酸塩)。
本明細書中で使用される1つ以上は、記載された成分の少なくとも1つ、又は複数が開示されるように使用され得ることを意味する。官能性に関して使用される名詞句は、理論的官能性を指し、一般に、これは使用される成分の化学量論から計算することができる。ヘテロ原子とは、窒素、酸素、硫黄、リンなどの炭素又は水素ではない原子を指し、より好ましいヘテロ原子は窒素や酸素を含む。本明細書中で使用されるヒドロカルビルは、1つ以上の炭素原子主鎖及び水素原子を含む基を指し、これは、任意選択的に1つ以上のヘテロ原子を含むことができる。ヒドロカルビル基がヘテロ原子を含む場合、ヘテロ原子は、当業者に既知の1つ以上の官能基を形成し得る。ヒドロカルビル基は、環状脂肪族、脂肪族、芳香族、又はそのようなセグメントの任意の組合せを含むことができる。脂肪族セグメントは、直鎖状又は分枝状であることができる。脂肪族及び環状脂肪族セグメントは、1つ以上の二重結合及び/又は三重結合を含むことができる。ヒドロカルビル基に含まれるのは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アルカリ基、及びアラルキル基である。環状脂肪族基は環状部分と非環状部分の両方を含むことができる。ヒドロカルビレンとは、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、アルカリレン及びアラルキレンのような、2以上の価数を有する炭化水素基又は記載されたサブセットのいずれかを意味する。本明細書で使用される場合、重量パーセント又は重量部は、特に明記しない限り、記載された重量又は化合物若しくは組成物を指すか、又はそれに基づく。
「ケタール」という用語は、ケタール官能基を有する分子、すなわち、2つの−OR基に結合した炭素を含む分子を指し、Oは酸素であり、Rは任意のアルキル基又は水素を表す。「揮発性」及び「不揮発性」という用語は、揮発性の場合、通常の温度及び圧力で容易に蒸発することができ、又は不揮発性の場合、通常の温度及び圧力で容易に蒸発することができない化合物を指す。本明細書中で使用される場合、「安定化された」(例えば、「安定化された」1,1−二置換アルケン化合物又はその組成物の文脈において)という用語は、時間が経過しても実質的に重合せず、時間が経過しても実質的に硬化せず、ゲルを形成せず、増粘せず、さもなければ、時間が経過しても粘度を増大させず、及び/又は時間が経過しても硬化速度の最小の損失を実質的に示す(すなわち、硬化速度が維持される)、化合物(又はその組成物)の傾向を指す。
出発物質である1,1−二置換アルケン化合物は、好ましくは、それが重合され得るように十分に高い純度をもたらす方法を用いて調製される。1,1−二置換アルケン化合物の純度は、重合工程中に70モルパーセント以上、好ましくは80モルパーセント以上、より好ましくは90モルパーセント以上、さらに好ましくは95モルパーセント以上、最も好ましくは99モルパーセント以上の1,1−二置換アルケン化合物がポリマーに変換されるように、十分に高くてもよい。1,1−二置換アルケン化合物の純度は、1,1−二置換アルケン化合物の総重量に対して、好ましくは約85モルパーセント以上、より好ましくは約90モルパーセント以上、さらに好ましくは約93モルパーセント以上、さらにより好ましくは約95モルパーセント以上、さらにより好ましくは約97モルパーセント以上、最も好ましくは約99モルパーセント以上である。1,1−二置換アルケン化合物が類似の1,1−二置換アルカン不純物を含む場合、それは好ましくは約10モルパーセント以下、又はより好ましくは約1モルパーセント以下でなければならない。ジオキサン基を含むあらゆる不純物の濃度は、1,1−二置換アルケン化合物の総重量に基づいて、約2モルパーセント以下が好ましく、約1モルパーセント以下がより好ましく、約0.2モルパーセント以下がさらに好ましく、約0.05モルパーセント以下が最も好ましい。類似のヒドロキシアルキル基で置換されたアルケン基を有するあらゆる不純物(例えば、アルケンの水とのマイケル付加による)の総濃度は、1,1−二置換アルケン化合物中の総モルに基づいて、約3モルパーセント以下が好ましく、約1モルパーセント以下がより好ましく、約0.1モルパーセント以下がさらにより好ましく、約0.01モルパーセント以下が最も好ましい。好ましい1,1−二置換アルケン化合物は、反応生成物又は中間反応生成物(例えば、ホルムアルデヒド源及びマロン酸エステルの反応生成物又は中間反応生成物)を蒸留する1以上の(例えば、2以上の)工程を含む方法によって調製される。
エステル基上のヒドロカルビル部分は、本明細書に開示される方法の条件下でエステル交換することができ、典型的なエステル交換条件下で反応性であり得る官能基を含有しなければならない。第1のエステル化合物は、エステル基のカルボニル基に結合したヒドロカルビル基を有する単官能エステルであることができる。第1のエステル化合物は、典型的なエステル交換条件下で反応性であり得る複数の官能基を有する化合物であってもよく、官能基の少なくとも1つはエステル基である。1つ以上のエステル基及び典型的なエステル交換条件下で反応し得る別の官能基を有する任意の化合物は、本明細書に開示される方法に従ってエステル交換に供される第1のエステル化合物であり得る。エステル交換条件下で副反応を受ける可能性がある官能基に含まれるのは、不飽和基、特に1つ以上の電子吸引基に隣接する不飽和基、すなわち、α,β−不飽和モノエステル又はα,β−不飽和1,1−ジエステル又はα,β−不飽和1−シアノ−1−エステルなどである。例示的な副反応としては、アニオン性又はフリーラジカル重合による付加重合、不飽和基へのアルコールのマイケル付加などが挙げられる。化合物の例示的なクラスは、1,1−二置換アルケン、シアノアクリレート、アクリレート、メタクリレートなどを含む。本発明の方法の生成物は、マイケル付加生成物又は重合生成物のような副生成物を少量しか含まないことが好ましい。いくつかの実施形態において、(例えば、アルケンを水でマイケル付加することによる)類似ヒドロキシアルキル基で置換されたアルケン基を有するあらゆる不純物の総濃度は、エステル交換された1,1−二置換アルケン化合物中の全モルに基づいて、好ましくは約3モルパーセント以下、より好ましくは約1モルパーセント以下、さらにより好ましくは約0.1モルパーセント以下、最も好ましくは約0.01モルパーセント以下である。重合によって生成されるあらゆる不純物の総濃度は、エステル交換された1,1−二置換アルケン化合物中の全モルに基づいて、約1モルパーセント以下、約0.5モルパーセント以下、約0.1モルパーセント以下、又は約0.01モルパーセント以下であることができる。
1,1−二置換アルケン化合物は、以下の代表的な式を有する化合物を指すメチレンマロネートであってもよい。
エステル交換は平衡方法であり、典型的には、交換の間に形成される副生成物(エステル交換を受けるエステルから脱離するヒドロカルビル部分によって形成される生成物を意味する)を除去する条件下で行われる。いくつかの所望の実施形態において、第1のエステル化合物のエステル基から脱離するヒドロカルビル部分は、エステル交換された第1のエステル化合物よりも副生成物をより揮発性にするように、該ヒドロカルビル部分を置換するヒドロカルビル部分よりも小さい。より小さな副生成物は、一般にエステル交換された第1のエステル化合物よりも揮発性が高く、その揮発性の性質のため副生成物の除去が容易になる。開示された方法は、脱離するヒドロカルビル部分から形成された副生成物を除去する任意の方法の条件と共に使用することができる。脱離するヒドロカルビル部分から形成される副生成物を除去するために使用され得る、例示的な方法の条件又は工程は、以下、すなわち、蒸留、膜輸送、不活性ガスパージなどの1つ又は複数を含むことができる。
開示されるのは、1,1−二置換アルケン化合物のエステルの1つ以上がエステル交換を受けるような条件下で、酸触媒又はそのエステル、例えば超酸又はそのエステルの存在下で、1つ以上のヒドロキシル基を有する1つ以上のアルコール又は1種以上の第2のエステル化合物との接触により、1種以上の1,1−二置換アルケン化合物の1つ以上のエステル基をエステル交換する方法である。アルコール炭化水素主鎖がヒドロカルビル部分を置換するか、又は第2のエステル上のヒドロカルビル部分が第1のエステル化合物のヒドロカルビル部分を置換する。得られた生成物は、1つ以上の置換されたヒドロカルビル部分を有する1種以上の1,1−二置換アルケン化合物を含む。アルコール又は第2のエステル化合物の混合物を用いて、化合物の混合物を調製することができる。アルコール又は第2のエステル化合物が多官能性である(すなわち、複数のヒドロキシル基又はエステル基を有する)場合、得られた生成物は、多数の二官能性及び/又は多官能性化合物を含むであろう。アルコール又は第2のエステルが、1つのヒドロキシル基又はエステル基を有する単官能性化合物の混合物及び多官能性アルコール又は第2のエステルを含む場合、得られた生成物は、単官能性化合物並びに二官能性及び/又は多官能性化合物の混合物であろう。この方法は式1及び式2で説明できる。
アルコール又は第二エステル化合物が多官能性である場合、得られた生成物は、第1のエステルのコア単位で置換されたエステル基からのアルコール又はヒドロカルビル部分の1つ以上を有することができる。したがって、アルコールのヒドロキシル基又は第2のエステル化合物のヒドロカルビル基の全てを第1のエステル化合物のコア単位で置換してもよいし、それらの一部のみを置換してもよい。後者の場合、得られた化合物は、エステル末端基及びヒドロキシル基末端基の両方又は多官能性の第2のエステル化合物の未反応部分に基づく末端基を有することができる。式3及び式4はこれらの反応を示す。
ここで、R、R
1、R
3及びaは、前述の通りであり、cは、それぞれの場合において別々に2以上の整数であり、dは、それぞれの場合において別々に1以上の整数であり、c以下であり、fは、それぞれの場合において別々に2以上の整数であり、gは、1以上の整数であり、ただし、gはf未満でなければならず、a以下であることを条件とする。R
4は、それぞれの場合において別々にf価のヒドロカルビル基である。
第1のエステル化合物のいくつかの実施形態では、aが2であり、Rが以下である1,1−二置換アルケン化合物である。
この実施形態では、開示される方法は、式5〜8によって図示される。
本明細書で使用されるR’は、水素、アルキル又はアルキレン基であることが好ましい。R’は、水素又はC1−10アルキル若しくはアルキレンであることが好ましい。より好ましくは、R’は水素又はC1−4アルキル若しくはアルキレンである。R’はより好ましくは水素又はアルキルである。最も好ましくは、R’は水素である。R’が水素である実施形態では、化合物は一般にメチレンマロネートと称される。
R1は、それぞれの場合において別々に、本明細書に開示される方法の条件下で置換又はエステル交換を受けることができる基である。好ましくは、R1は、それぞれの場合において別々に、アルキル、アルケニル、C3−C9シクロアルキル、ヘテロシクリル、アルキルヘテロシクリル、アリール、アラルキル、アルカリル、ヘテロアリール、若しくはアルクヘテロアリール、若しくはポリオキシアルキレンであるか、又はR1の両方が5〜7員環又は複素環を形成する。より好ましくは、R1は、それぞれの場合において別々に、C1〜C15アルキル、C2〜C15アルケニル、C3〜C9シクロアルキル、C2〜C20ヘテロシクリルC3〜20アルクヘテロシクリル、C6〜18アリール、C7〜25アルカリル、C7〜25アラルキル、C5〜18ヘテロアリール若しくはC6〜25アルキルヘテロアリール、若しくはポリオキシアルキレンであり、又はR1基の両方が5〜7員環若しくは複素環を形成する。列挙された基は、エステル交換反応を妨害しない1つ以上の置換基で置換されてもよい。好ましい置換基としては、ハロアルキルチオ、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロ、アジド、シアノ、アシルオキシ、カルボキシ、又はエステルが挙げられる。より好ましくは、R1は、それぞれの場合において別々に、C1〜C15アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C4〜18ヘテロシクリル、C4〜18アルクヘテロシクリル、C6〜18アリール、C7〜25アルカリル、C7〜25アラルキル、C5〜18ヘテロアリール若しくはC6〜25アルキルヘテロアリール、又はポリオキシアルキレンである。より好ましくは、R1は、それぞれの場合において別々に、C1〜8アルキル又はC5〜6シクロアルキルである。さらに好ましくは、R1は、それぞれの場合において別々に、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル又はシクロヘキシルである。最も好ましくは、R1は、1,1−二置換アルケン化合物上の各エステル基に対して同一である。より好ましい化合物は、ジメチル、ジエチル、ジシクロヘキシル、ジヘキシル、エチルメチル、ジプロピル、ジブチル、ジフェニル、及びエチル−エチルグルコネートメチレンマロネートである。最も好ましい化合物は、ジメチルジエチル、ジヘキシル、及びジシクロヘキシルメチレンマロネートである(Rは水素であり、R1はメチル、エチル、ヘキシル、又はシクロヘキシルのいずれかである)。
シアノアクリレートはシアノ基二重結合及び炭素原子に結合したアクリレートエステルを有するアクリレート化合物である。シアノアクリレートは以下の式に対応する。
ここで、R
5は、それぞれの場合において別々に、C
1〜15アルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アラルキル、アリール、アリル又はハロアルキル基である。例示的なシアノアクリレートは、メチルシアノアクリレート、エチル−2−シアノアクリレート、プロピルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート(n−ブチル−2−シアノアクリレートなど)、オクチルシアノアクリレート、アリルシアノアクリレート、β−メトキシエチルシアノアクリレート及びこれらの組合せから選択される。特に望ましいものは、エチル−2−シアノアクリレートである。いくつかの実施形態において、R
5は、それぞれの場合において別々に、C
1〜8アルキル、アルコキシアルキル、C
1〜8アルケニル又はアリル基である。いくつかの実施形態において、R
5は、それぞれの場合において別々に、メチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、アリル、及びβ−メトキシエチルである。
アルコールは、1,1−二置換アルケン化合物上の炭化水素部分をエステル交換又は置換することができる1種以上のアルコールであることができる。アルコールは、単官能性の1つのヒドロキシル基、又は多官能性の複数のヒドロキシル基であり得る。好ましくは、アルコールは、1〜10つのヒドロキシル基、より好ましくは1〜4つのヒドロキシル基、最も好ましくは1〜3つのヒドロキシル基を有することができる。単官能性アルコールは、単官能性化合物が所望の生成物である場合に利用される。多官能性アルコールは、二官能性又は多官能性の生成物が望まれる場合に利用される。生成物の混合物が望まれる場合には、アルコールの混合物を使用することができる。好ましくは、アルコールは、式R2−(OH)Cに対応し、ここでR2は、1,1−二置換アルケン化合物をエステル交換し得る、すなわちヒドロカルビル部分を置換する任意の基であることができる。好ましくは、R2は、それぞれの場合において別々に、アルキル、アルケニル、C3〜C9シクロアルキル、ヘテロシクリル、アルキルヘテロシクリル、アリール、アラルキル、アルカリル、ヘテロアリール、若しくはアルクヘテロアリール、又はポリオキシアルキレンである。より好ましくは、R2は、それぞれの場合において別々に、C1〜C15アルキル、C2〜C15アルケニル、C3〜C9シクロアルキル、C2〜20ヘテロシクリル、C3〜20アルクヘテロシクリル、C6〜18アリール、C7〜25アルカリル、C7〜25アラルキル、C5〜18ヘテロアリール若しくはC6〜25アルキルヘテロアリール、又はポリオキシアルキレンである。列挙された基は、エステル交換反応を妨害しない1つ以上の置換基で置換されていてもよい。好ましい置換基としては、ハロアルキルチオ、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロ、アジド、シアノ、アシルオキシ、カルボキシ、又はエステルが挙げられる。より好ましくは、R2は、それぞれの場合において別々に、C1〜C15アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C4〜18ヘテロシクリル、C4〜18アルクヘテロシクリル、C6〜18アリール、C7〜25アルカリル、C7〜25アラルキル、C5〜18ヘテロアリール若しくはC6〜25アルキルヘテロアリール、又はポリオキシアルキレンである。アルコールが多官能性である場合、R2の列挙された可能性の各々は、ヒドロキシル基の各々についての結合と共に使用され得、例えばアルコールが3つのヒドロキシル基を有する場合、列挙されたコアは、各ヒドロキシル基について3つの結合を有する。より好ましくは、R2は、エステル基のヒドロカルビル部分とは異なる1つ以上のC1〜8アルキル基若しくはC5〜6シクロアルキル基、シクロアルキル基、アルキル置換シクロアルキル基、シクロアルキル置換アルキル基、アルカリル基、アラルキル基又はポリオキシアルキレン基であり、これらはジエステル配位子置換を妨害しない任意の置換基で置換されていてもよい。最も好ましくは、R2は、それぞれの場合において別々に、ジエステル配位子とは異なるメチル、エチル、若しくはヘキシル、C3〜8アルキル、シクロヘキシル、フェンチル、C7〜18アルカリルポリイル(poly−yl)、又はC7〜18アルキルシクロアルキルポリイルである。アルコールが多官能性である実施形態において、R2は、C1〜15アルク−ポリ、C3〜8シクロアルク−ポリ、多数の分枝及びエーテル単位を含有するポリオキシアルキレンオキシド、C7〜18アルキルシクロアルキルであることができる。好ましいアルカリルポリオールの中には、−アリール−アルキル−アリール−(−フェニル−メチル−フェニル−又はフェニル−プロピル−フェニル−など)などの構造を有するポリオールがある。いくつかの実施形態において、cは、20以下、10以下、4以下、3以下又は2以下の整数である。好ましいアルキルシクロアルキルポリ−イルの中には、−シクロアルキル−アルキル−シクロアルキル−(−シクロヘキシル−メチル−シクロヘキシル−又はシクロヘキシル−プロピル−シクロヘキシル−など)などの構造を有するものがある。いくつかの実施形態において、アルコールは多官能性であることができ、アクリレート基のような他の官能基を含むことができる。いくつかの実施形態において、アルコールは、1種以上のヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートであることができ、2つ以上のヒドロキシル基及び/又は(メタ)アクリレート基を含むことができる。例示的なヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート基としては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシヘキシルアクリレート、ヒドロキシオクチルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシペンチルアクリレート、6−ヒドロキシノニルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシペンチルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、7−ヒドロキシヘプチルメタクリレート、5−ヒドロキシデシルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、アルコキシル化ヒドロキシエチルアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、アルコキシル化トリメチロールプロパンジアクリレート、アクリル酸又はメタクリル酸のポリエーテルグリコールの反応生成物、ビスフェノール−Aのモノアクリレート又はモノメタクリレートエステル、ビスフェノール−Aの完全水素化誘導体、シクロヘキシルジオールなどが挙げられる。より好ましくは、1つ以上の活性水素含有基と1つ以上のアクリレート基とを含む化合物としては、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。いくつかの実施形態において、アルコールは第一級又は第二級アルコールである。いくつかの実施形態において、アルコールは第一級である。
本開示の文脈で、第2のエステル化合物は、第1のエステル化合物のヒドロカルビル部分を置換するためのヒドロカルビル部分又は炭化水素主鎖を提供するエステル化合物である。一般に、第2のエステル化合物のヒドロカルビル部分又は主鎖は、第1のエステル化合物から脱離するヒドロカルビル部分とは異なる。いくつかの実施形態において、第2のエステル化合物からのヒドロカルビル部分は、第1のエステル化合物からの脱離部分よりも大きく、その結果、脱離ヒドロカルビル部分によって形成される副生成物は、反応混合物中の他の化合物、例えば、第2のエステル、第1のエステル、及びエステル交換生成物よりも揮発性が高い。この高い揮発性のために、所望のエステル交換生成物の方向に平衡を押し進めるように、副生成物の除去が容易になる。第2のエステルは、以下の式で例示することができる。
ここで、R
2及びaは前述の通りであり、R
3はヒドロカルビル基であり、R
4はf価のヒドロカルビル基である。好ましくは、R
3は、それぞれの場合において別々に、水素、アルキル、アルケニル、C
3〜C
9シクロアルキル、ヘテロシクリル、アルキルヘテロシクリル、アリール、アラルキル、アルカリル、ヘテロアリール、若しくはアルクヘテロアリール、又はポリオキシアルキレンである。より好ましくは、R
3は、それぞれの場合において別々に、水素、C
1〜C
15アルキル、C
2〜C
15アルケニル、C
3〜C
9シクロアルキル、C
2〜20ヘテロシクリル、C
3〜20アルクヘテロシクリル、C
6〜18アリール、C
7〜25アルカリル、C
7〜25アラルキル、C
5〜18ヘテロアリール若しくはC
6〜25アルキルヘテロアリール、又はポリオキシアルキレンである。さらに好ましくは、R
3は、それぞれの場合において別々に、水素又はC
1〜C
15アルキルである。さらに好ましくは、R
3は、それぞれの場合において別々に、水素又はC
1〜C
4アルキルである。最も好ましくは、R
3は、それぞれの場合において別々に、水素又はメチルである。列挙された基は、先に開示されたようなエステル交換反応を妨害しない1つ以上の置換基で置換されていてもよい。好ましくは、R
4は、それぞれの場合において別々に、f価のアルキル、アルケニル、C
3〜C
9シクロアルキル、ヘテロシクリル、アルキルヘテロシクリル、アリール、アラルキル、アルカリル、ヘテロアリール、若しくはアルクヘテロアリール、又はポリオキシアルキレン基である。より好ましくは、R
4は、それぞれの場合において別々に、f価のC
1〜C
15アルキル、C
2〜C
15アルケニル、C
3〜C
9シクロアルキル、C
2〜20ヘテロシクリル、C
3〜20アルクヘテロシクリル、C
6〜18アリール、C
7〜25アルカリル、C
7〜25アラルキル、C
5〜18ヘテロアリール若しくはC
6〜25アルキルヘテロアリール、又はポリオキシアルキレンである。最も好ましくは、R
4は、それぞれの場合において別々に、f価のC
1〜C
15アルキル又はポリオキシアルキレンポリオールである。好ましい置換基としては、ハロアルキルチオ、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロ、アジド、シアノ、アシルオキシ、カルボキシ、又はエステルが挙げられる。より好ましくは、R
2は、それぞれの場合において別々に、C
1〜C
15アルキル、C
3〜C
6シクロアルキル、C
4〜18ヘテロシクリル、C
4〜18アルクヘテロシクリル、C
6〜18アリール、C
7〜25アルカリル、C
7〜25アラルキル、C
5〜18ヘテロアリール若しくはC
6〜25アルキルヘテロアリール、又はポリオキシアルキレンである。いくつかの実施形態において、aは、20以下、10以下、4以下、3以下又は2以下の整数である。いくつかの実施形態において、fは、20以下、10以下、4以下、3以下又は2以下の整数である。第2のエステルの例示的なクラスには、ヒドロカルビルカルボキシレート、ヒドロカルビルアセテート、ヒドロカルビルホルメートなどが含まれる。特定の実施形態で使用され得る第2のエステルの中には、ヒドロカルビルアセテート、ヒドロカルビルホルメートなどがある。いくつかの実施形態において、第2のエステル上のヒドロカルビル基は、アルキル、アルケニル、アルカリル又はシクロアルキル置換アルキルである。特定の実施形態で使用され得る第2のエステルの中には、ヒドロカルビルアセテート、例えばブチルアセテート、イソブチルアセテート、tert−ブチルアセテート、ペンチルアセテート、イソペンチルアセテート、プレニルアセテート、アリルアセテート、ベンジルアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテートなどがある。特定の実施形態で使用され得る第2のエステルは、ヒドロカルビルホルメート、例えばブチルホルメート、イソブチルホルメート、ペンチルホルメート、イソペンチルホルメート、ヘキシルホルメート、ヘプチルホルメート、フェニルホルメート、フェネチルホルメート、アニシルホルメート、ベンジルホルメートなどである。
いくつかの実施形態において本明細書に示される式との関連で、c及びfは、それぞれの場合において別々に、20以下、10以下、4以下、又は3以下の整数であることができる。
第2のエステル化合物、例えばアセテート又はホルメートを用いて方法を実施する場合、エステル交換方法において、マイケル付加生成物の生成を最小限にするか、又は排除する。好ましくは、(例えばアルケンの水とのマイケル付加により)類似のヒドロキシアルキル基で置換されたアルケン基を有するあらゆる不純物の総濃度は、好ましくは、1,1−二置換アルケン化合物中の全モルに基づいて、好ましくは約3モルパーセント以下、より好ましくは約2モルパーセント以下、さらにより好ましくは約1モルパーセント以下、最も好ましくは約0.5モルパーセント以下である。
触媒は、酸又はそのエステルである。副反応を最小限に抑えながらエステル交換に触媒作用を及ぼす酸又はそのエステルを使用することができる。いくつかの実施形態において、前記酸、又はエステルを形成するために利用される酸は、以下に開示されるように、アセトニトリル又はジオキサンのような極性非プロトン性溶媒中にpKaを有する酸である。特に、pKaは、副反応及び反応混合物中の触媒の濃度を最小限にしながら、エステル交換反応に効率的に触媒作用を及ぼすように選択される。いくつかの実施形態において、使用される酸は、約−5以上、より好ましくは約−3以上、及び最も好ましくは約1.0以上のpKaを有する。いくつかの実施形態において、使用される酸は、約14以下、より好ましくは約11以下、最も好ましくは約9以下のpKaを有する。前記酸は、開示されたpKaを有するブレンステッド酸であることができる。いくつかの実施形態において、触媒は、超酸又はそのエステルである。「超酸」とは、100%の硫酸の強度を超える酸強度を有する酸を指す。そのエステルは、酸触媒との関連において、酸上の水素がヒドロカルビル基、好ましくはアルキル基で置換されている化合物を指す。
超酸は、100%の硫酸の強度より高い強度、100%未満の硫酸のpKa、すなわち8未満、より好ましくは約5未満、最も好ましくは約2未満のpKaを有する酸である。酸強度の測定は、2010年12月17日にウェブで公開されたKuttらの「Equilibrium Acidities of Super Acids」、Journal of Organic Chemistry 76巻、391〜395頁、2011(参照により本明細書に組み込まれる)に基づく。好ましい超酸としては、トリフルオロメタンスルホン酸(トリフル酸)、硫酸化された酸化スズ、トリフラート化された酸化スズ、硫酸化ジルコニア、トリフラート化ジルコニア、及びトリフラート化HZSM−5が挙げられる。最も好ましい超酸はトリフル酸とフルオロスルホン酸である。
好ましい酸触媒には、トリフル酸、フルオロスルホン酸、及び硫酸が挙げられる。一置換を必要とする反応(アルコール上の1つのヒドロキシル基又は第2のエステル上の1つのエステル基のみがエステル交換により置換される)には、硫酸と等しいかそれ以上のpKa値をもつ弱酸が望ましいことがある。このような酸の例としては、硫酸又はメタンスルホン酸が挙げられる。二置換を必要とする反応(アルコール上の2つのヒドロキシル基又は第2のエステル上の2つのエステル基がエステル交換により置換される)には、硫酸と等しいかそれ以下のpKa値をもつより強酸が望ましいことがある。このような酸の例としては、硫酸、フルオロスルホン酸、及びトリフル酸が挙げられる。多置換を必要とする反応(アルコール上の3つ以上のヒドロキシル基及び第2のエステル化合物上の3つ以上のエステル基)については、酸触媒の選択は二置換反応のための酸触媒の選択と同様であるが、反応時間を長くする必要があることがある。触媒として有用な酸の好ましいエステルには、アルキルトリフラートが挙げられる。
触媒は、反応物と混合することができるか、又は膜などの基材又は多孔質支持構造などの不活性担体に担持することができる(触媒は不均一であり得る)。担持されていない触媒は、一般に均一と呼ばれる。触媒は、エステル基上のヒドロカルビル部分を置換するために、アルコール又は第2のエステル化合物と第1のエステル化合物、例えば1,1−二置換アルケン化合物との反応に触媒作用を及ぼす任意の濃度で使用することができる。反応に利用される触媒の量は、選択される触媒の種類、及びアルコール中のヒドロキシル基又は第2のエステル化合物中のエステル基の所望の置換レベルに依存する。好ましくは、触媒の濃度は、第1のエステル化合物の当量当たり約0.1モル当量以下であり、より好ましくは約0.01モル当量以下であり、さらにより好ましくは約0.009モル当量以下であり、より好ましくは約0.006モル当量以下である。好ましくは、触媒の濃度は、第1のエステル化合物の当量当たり約0.001モル当量以上であり、最も好ましくは、約0.0015モル当量以上である。列挙されたよりも高い濃度の触媒が利用され得る。Malofskyら、US8,609,885号及び8,884,051号、並びにMalofskyら、WO2013/059473号に開示されるように、回収された1,1−二置換アルケン化合物中に酸が存在すると、化合物の使用に関して問題を生じる可能性があり、使用中の生成物中の酸の濃度は低いことが望まれる。最終生成物に高レベルの酸が含まれている場合は、追加の精製又は除去工程が必要になることがある。列挙された好ましい量は、効率的な触媒作用と使用のための製品中の低い酸濃度の必要性との間の均衡を達成する。触媒が、硫酸、又は硫酸のpKa値より大きいpKa値を有する酸から選択される実施形態では、反応混合物中のこのような触媒の濃度は、本明細書に列挙された範囲の上限であることが好ましい。
触媒が不均一である場合、酸又はそのエステルは、膜又は不活性担体上に担持され得る。不活性担体は多孔性支持構造であることができる。酸又はそのエステルを担持することができる任意の膜又は多孔性支持構造のような不活性担体を使用することができる。例示的な多孔質支持構造は、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミナ(アルミナ)、酸化ジルコニウム、酸化スズ、アルミノケイ酸塩、又はそれらの混合物の1つ以上を含む。アルミノケイ酸塩は、ZSM−5のようなゼオライトの形態であることができる。ZSM−5ゼオライトはHZSM−5ゼオライトであることができる。支持体は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素又はそれらの混合物であってもよい。触媒として本明細書に開示される酸又はエステルのいずれかは、膜又は不活性担体上に担持され得る。支持体上に担持される又は支持体に充填される酸は、硫酸、フルオロスルホン酸、又はトリフルオロメタンスルホン酸(トリフル(trifilic)酸)であり得る。触媒は、硫酸化された酸化アルミニウム、トリフラート化された酸化アルミニウム、硫酸化された酸化ケイ素、トリフラート化された酸化ケイ素、硫酸化された酸化スズ、トリフラート化された酸化スズ、トリフラート化HZSM−5、硫酸化ジルコニア又はトリフラート化ジルコニアであることができる。触媒は、硫酸化された酸化ケイ素又はトリフラート化された酸化ケイ素であることができる。記載された酸及びエステルは、イオン交換膜上に担持されていてもよい。記載された酸及びエステルは、イオン交換膜上に担持されていてもよい。イオン交換膜は強酸イオン交換膜であることができる。強酸イオン交換膜は、本明細書に記載された酸を提供する任意の強酸イオン交換膜であることができる。例示的なイオン交換膜には、Amberlyst(商標)−15強酸性イオン交換膜及びDOWEX(商標)50WX8強酸性イオン交換膜が挙げられ、いずれも米国ミシガン州ミッドランドのダウケミカル社から入手可能である。これらのイオン交換膜中のポリマーはスチレン−ジビニルベンゼンコポリマーである。
強酸又はそのエステルは、エステルのエステル交換を容易にするあらゆる量で不活性担体又は膜上に充填することができる。不活性担体又は膜への強酸又はそのエステルの充填は、酸及び支持体の重量に基づいて、約1.0重量パーセント以上、又は約2.0重量パーセント以上の支持体上の酸又はエステルであることができる。不活性担体又は膜への強酸又はそのエステルの充填は、酸及び支持体の重量に基づいて、約10.0重量パーセント以下、又は約8.0重量パーセント以下の支持体上の酸又はエステルであることができる。不均一触媒は、バッチ反応器、固定床反応器又は流動床反応器に使用することができる。バッチ反応器では、触媒を反応混合物中に懸濁させることができる。バッチ反応器は連続攪拌反応器であることができる。反応混合物は、反応物及び触媒を接触及び懸濁状態に維持するために、撹拌され得る。不均一触媒は、反応物のキログラムあたり約1グラム以上の不均一触媒、又は反応物のキログラムあたり2グラム以上の不均一触媒を提供するように、バッチ反応器に存在することができる。不均一触媒は、反応物のキログラムあたり約10g以下の不均一触媒、又は反応物のキログラムあたり5g以下の不均一触媒を提供するように、バッチ反応器に存在することができる。これらの量は、不活性担体又は膜及び強酸又はそのエステルの総重量を参照する。反応物の量は、溶媒又は担体を含まない反応物の量を指す。反応物の量及びその比は、本明細書に開示されているものと同じでよい。反応条件は本明細書に開示されたものと同じである。反応終了後、触媒を濾過して反応混合物から除去することができる。これは、酸又はそのエステルを反応混合物及び生成物から分離することが容易であるため、有利である。これにより、酸又はそのエステルが副反応に触媒作用を及ぼしたり、重合を阻害したりすることなく、生成物のさらなる使用が容易になる。また、これにより廃棄コストが削減される。
酸又はエステルは、任意の既知の方法によって多孔性支持体に導入することができる。例示的な方法は、以下に記載されるようなものであることができる。不活性担体を酸又はそのエステルの水溶液と接触させ、その混合物を加熱して水を蒸発させ、酸又はエステルを不活性担体上に堆積させることができる。接触温度は、周囲温度又は水の沸点未満の高温とすることができる。多くの不活性担体、例えばアルミノケイ酸塩が市販されている。一部の不活性担体は、酢酸スズ、塩化ジルコニル、硫酸アルミニウム、テトラエトキシシランなどの前駆体化合物から調製することができる。前駆体は水に、テトラエトキシシランの場合はエタノール及び水に溶解させる。溶液を水酸化アンモニウムと接触させ、水酸化スズ、水酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム又は水酸化ケイ素などの水酸化物を沈殿させる。回収した金属水酸化物を水で洗浄し、乾燥して焼成することができる。次に、乾燥した金属水酸化物を焼成して酸化物、例えば酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム又は酸化ケイ素を形成する。乾燥した金属水酸化物は、400℃以上又は約800℃以上に加熱することにより焼成することができる。乾燥した金属水酸化物は1000℃以下又は約900℃以下に加熱することにより焼成することができる。形成された酸化物は、前述のように、その酸又はエステルと接触させることができる。
アルコール及び/又は第2のエステル化合物の選択、並びに1,1−二置換アルケン化合物のような第1のエステル化合物に対するアルコール及び/又は第2のエステル化合物の相対モルは、方法の生成物に影響を及ぼすであろう。対称的な1,1−二置換アルケン化合物を調製するためには、1,1−二置換アルケン化合物のヒドロカルビル部分の全てを置換することが好ましく、この結果を達成するためにモル比を選択する。1,1−二置換アルケン化合物に対するアルコール及び/又は第2のエステル化合物のモル比は約2:1以上であることが好ましく、対称的な生成物の調製が望まれる実施形態では約4:1以上であることが好ましい。アルコール又は第2のエステル化合物が多官能性である実施形態において、ヒドロキシル基又は第2のエステルのエステル酸素の全てを反応させることが好ましく、1,1−二置換アルケン化合物に対するこのような化合物のモル比は、この結果を達成するように選択され、当量比は、過剰の1,1−二置換アルケン化合物が存在するように選択される。好ましくは、1,1−二置換アルケン化合物に対する多官能性アルコール又は第2のエステル化合物のモル比は約1:2以下であり、より好ましくは約1:3以下である。不斉1,1−二置換アルケン化合物を調製するために、1,1−二置換アルケン化合物に対する単官能性アルコール又は第2のエステル化合物のモル当量は、所望の生成物をもたらすように選択され、予想される統計的結果が達成され得ると考えられる。
反応条件下で反応物が液体の場合、反応物と無溶媒形態の(すなわち、溶媒や分散剤を用いない)触媒を接触させることが望まれる。溶媒の使用が望まれる場合は、反応物又は触媒と反応しない溶媒が好ましい。溶媒の選択における別の考慮事項は、選択される溶媒の沸点である。溶媒は、約15℃、好ましくは約20℃、又は反応が行われる温度より高い沸点を有することが望まれる。非プロトン性溶媒が好ましく、より好ましい溶媒は、本明細書中に記載されるような反応温度を超える沸点を有する長鎖アルカンであり、例示的溶媒はデカン又はドデカンである。
エステル交換が進行するいずれかの温度で反応物を接触させる。好ましくは、反応物を約80℃以上、最も好ましくは約100℃以上の温度で接触させる。好ましくは、反応物を約160℃以下、さらにより好ましくは140℃以下、最も好ましくは約130℃以下の温度で接触させる。
反応物を十分な時間接触させて、所望のエステル交換生成物を調製する。1,1−二置換アルケン化合物などの出発物質である第1のエステル化合物が、アルコール又は第2のエステル化合物と実質的に完全に反応して所望の生成物を調製するように、方法を実施することが好ましい。好ましくは、反応物を約1時間以上接触させる。好ましくは、反応物を4時間以下、より好ましくは約2時間以下接触させる。
エステル基の元のヒドロカルビル部分の置換を可能にするために、1,1−二置換アルケン化合物とアルコール又は第2のエステル化合物との接触を高める条件下で方法を実施することが望まれる。この接触を高めるためには、何らかの形式の攪拌が望まれる。攪拌の例示的方法には、攪拌器の使用、不活性ガスの散布などが含まれる。好ましい方法は、激しく撹拌及び/又は窒素を激しく散布することである。エステル交換反応は平衡反応であると考えられている。所望の生成物の方向に反応を推進する条件下で方法を実施することが推奨される。これを達成するための例示的な方法には、1つの反応物を過剰に加えたり、脱離するヒドロカルビル部分によって形成されるアルコール又はエステル副生成物を除去したりすることなどが含まれる。脱離するヒドロカルビル部分から形成される第2のアルコール又は第3のエステル化合物が揮発性である実施形態では、第2のアルコール又は第3のエステル化合物は、真空を使用したり、脱離するアルコール又はエステルを蒸留し、他の反応物及び生成物を蒸留しない条件を使用したりして除去することができる。
アルコール又は第2のエステル化合物及び1,1−二置換アルケン化合物のような第1のエステル化合物は、MalofskyらのUS8,609,885号及び8,884,051号、並びにMalofskyらのWO2013/059473号に記載されているようなフリーラジカル安定剤及びアニオン重合阻害剤の存在下で反応させることができ、関連部分は参照により本明細書に組み込まれる。ある実施形態において、ポリマー生成物の生成を防止するために、重合を阻害するが、エステル交換の触媒作用に大きく関与しない酸を含むことが望ましい。好ましくは、重合を阻害するために使用される酸は、100%の硫酸を超えるpKaを有する。特定の実施形態によれば、貯蔵寿命を延ばし、改善し、自然重合を防止するために、エステル交換生成物を含有する組成物に安定剤を含めることができる。一般に、1種以上のアニオン重合安定剤及び/又はフリーラジカル安定剤を組成物に添加することができる。アニオン重合安定剤は、一般に、前記組成物又は成長するポリマー鎖から電子を捕捉する求電子性化合物である。アニオン重合安定剤の使用により、さらなるポリマー鎖の伝播を停止させることができる。例示的なアニオン重合安定剤は酸であり、例示的な酸はカルボン酸、スルホン酸、リン酸などである。例示的な安定剤には、液相安定剤(例えば、メタンスルホン酸(「MSA」))及び気相安定剤(例えば、トリフルオロ酢酸(「TFA」))が挙げられる。いくつかの実施形態において、重合を阻害するために比較的弱い酸を利用することが望ましい。一般に、このような弱酸は、アセトニトリル中で−1.5を超え、より好ましくは約2を超えるpKaを示す。アニオン重合を阻害するために使用される好ましい酸の中には、アルキル置換アリールスルホン酸、例えばドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などがある。本発明の方法における触媒が酸であるので、本明細書に開示される方法を実施する際に、第2のアニオン重合阻害剤を必要としない場合がある。ここに開示される方法を実施する際には、フリーラジカル安定剤又は重合阻害剤を含むことが望ましい。本方法において有用な安定剤、又は重合阻害剤の濃度を以下に開示する。
フリーラジカル安定剤には、好ましくはフェノール化合物(例えば、4−メトキシフェノール、ヒドロキノンのモノメチルエーテル(「MeHQ」)、ブチル化ヒドロキシトルエン(「BHT」))が挙げられる。1,1−二置換アルケンの安定剤パッケージは、各々参照により組み込まれる米国特許第8,609,885号及び米国特許第8,884,051号に開示されている。さらなるフリーラジカル重合阻害剤は、米国特許第6,458,956号に開示され、参照により本明細書に組み込まれる。一般に、最小量の安定剤のみが必要であり、特定の実施形態では、約5000百万分の一(「ppm」)以下しか含まれない。特定の実施形態では、複数の安定剤のブレンド、例えば、アニオン性安定剤(MSA)及びフリーラジカル安定剤(MeHQ)のブレンドを含むことができる。
1種以上のアニオン重合安定剤は、早期重合を防止するのに十分な量で存在する。好ましくは、アニオン重合安定剤は、第1のエステル化合物(1,1−二置換アルケン)の重量に基づいて約1ppm以上、より好ましくは約5重量ppm以上、最も好ましくは約10重量ppm以上の量で存在する。好ましくは、アニオン重合安定剤は、第1のエステル化合物(1,1−二置換アルケン)の重量に基づいて約500重量ppm以下、より好ましくは約250重量ppm以下、最も好ましくは約100重量ppm以下の量で存在する。1種以上のフリーラジカル安定剤は、早期重合を防止するのに十分な量で存在する。好ましくは、フリーラジカル重合安定剤は、第1のエステル化合物(1,1−二置換アルケン)の重量に基づいて約10ppm以上、より好ましくは約100重量ppm以上、最も好ましくは約1000重量ppm以上の量で存在する。好ましくは、フリーラジカル重合安定剤は、第1のエステル化合物(1,1−二置換アルケン)の重量に基づいて約10,000重量ppm以下の量で存在し、より好ましくは約8000重量ppm以下、最も好ましくは約5000重量ppm以下の量で存在する。
本発明の方法は、1,1−二置換アルケン化合物又はシアノアクリレートのような活性化アルケン基を含む化合物で末端キャップされた化合物及びポリマーを調製することができる。この方法は、1,1−二置換アルケン化合物のような活性化アルケン基を含む化合物を、化合物又はポリマーの任意のヒドロキシル基上で置換するために使用することができる。例えばこの方法は、ポリオキシアルキレン化合物又はヒドロキシル基を1,1−二置換アルケン化合物のような活性化アルケン基を含む化合物で置換したポリマーを調製することができる。ビスフェノールA又はFのようなビスフェノール化合物は、記載されたように末端キャップされ得る。以下に例示的な反応を示す。
生成物は、MalofskyらのUS8,609,885号及び8,884,051号に開示されているように、蒸留によって回収し、精製することができる。
本明細書に開示される方法は、多くの新規な化合物及び組成物を調製する。いくつかの実施形態において、アセテート基又はホルメート基のようなエステル基を含むヒドロカルビル主鎖に結合した1つ以上のエステル基を有する1,1−二置換アルケンは、開示された方法によって調製することができる。1種以上の第2のエステル化合物の炭化水素主鎖に酸素原子によって結合された1種以上の1,1−二置換アルケンを含む組成物であって、1種以上の第2のエステル化合物の炭化水素主鎖が1つ以上のエステル基に結合している組成物を開示する。いくつかの実施形態において、炭化水素主鎖は、アクリレート基、アセテート基又はホルメート基に結合される。このような化合物は、以下の式によって例示することができる。
ここで、f−gは1以上であり、R
3はメチル又は水素である。いくつかの実施形態において、1,1−二置換アルケンをヒドロキシルアルキルアクリレートでエステル交換することができる。ヒドロキシアクリレートが2つ以上のヒドロキシアクリレート基を有し、エステル交換することができる1,1−二置換アルケンの、ヒドロキシアルキルアクリレートに対する当量比が1未満である場合、生成物は、ヒドロキシアルキルアクリレートにさらに結合するアルキル基に酸素結合により結合する1,1−二置換アルケンを含む。ヒドロキシルアルキルアクリレートが2つ以上のヒドロキシアルキル基を含み、全てのヒドロキシル基が反応するわけではない実施形態において、該組成物は新規である。このような化合物は、以下の式で表すことができる。
ここで、R’及びR
1は記載された通りであり、R
6はアルキルアクリレートの残基であり、cは、それぞれの場合において別々に、3以上の整数であり、dはそれぞれ場合において独立して、2以上の整数であり、cより小さい。
単官能性及び多官能性アルコール又は第2のエステルの混合物が使用される実施形態では、得られる組成物は新規である場合がある。例示的な新規組成物は、1種以上の1,1−二置換アルケン、及び2つ以上のヒドロキシル基を有する1種以上のアルコールの炭化水素主鎖又は2つ以上のエステル基を有する1種以上の第2のエステル化合物の炭化水素主鎖に酸素原子によって結合された1,1−二置換アルケンの2つ以上のコア単位を含む1種以上の化合物を含有する組成物であって、1,1−二置換アルケンの2つ以上のコア単位を含む1種以上の化合物の濃度は約1重量パーセント以上であり、いくつかの実施形態では約5重量パーセントであり、いくつかの実施形態では15重量パーセントを超える組成物を含む。いくつかの実施形態において、多官能性化合物の量は、約50重量パーセント以下であることができる。いくつかの実施形態において、1,1−二置換アルケンは、以下の式に対応し、
1,1−二置換アルケンの2つ以上のコア単位を含む1種以上の化合物は、以下の式に対応する。
ここで、R
1、R
2、及びR
3は、それぞれの場合において別々に、ヒドロカルビル基であり、R
4は、それぞれの場合において別々に、f価のヒドロカルビル基であり、R’は、それぞれの場合において別々に、ヒドロカルビル又は水素であり、cは、それぞれの場合において別々に、2以上の整数であり、dは、それぞれの場合において別々に、2以上及びc以下の整数であり、fは、それぞれの場合において別々に、1以上の整数であり、gは2以上の整数である。いくつかの実施形態において、1,1−二置換アルケンの2つ以上のコア単位を含む1種以上の化合物は、末端エステル基上のヒドロカルビル部分が異なる多くのそのような化合物を含む。これは、エステル交換反応において、出発物質である1,1−二置換アルケンの元のヒドロカルビル部分の全てがエステル交換反応において置換されるわけではない条件下で起こり得る。単官能性及び多官能性のアルコール又は第2のエステル試薬の混合物を1,1−二置換アルケンと反応させ、アルコール試薬のヒドロキシル単位の当量、又は第2のエステル試薬のエステル当量と比較して1,1−二置換アルケンから得られる化学量論上の過剰のエステル当量がある場合には、官能性及び多官能性でエステル基に異なるヒドロカルビル部分を有する化合物を含む化合物の混合物を調製することができる。この実施形態では、R
1は同じ化合物上で異なる。この実施形態において、混合物はまた、不斉である単官能性化合物を含有してもよく、ここで、エステル基のヒドロカルビル部分は異なり、いくつかは出発物質である1,1−二置換アルケンからのものであり、いくつかはアルコール試薬又は第2のエステル試薬でエステル交換が完了したものである。これらの実施形態において、多官能性化合物の量は、1重量パーセントを超えることができ、より好ましくは5重量パーセント以上である。いくつかの実施形態において、調製された混合物は、1重量パーセントを超えることができる。いくつかの実施形態において、多官能性モノマーの量は、50重量パーセント以下とすることができる。
以下の実施例は、本発明を例示するために提供されるが、その範囲を限定することを意図したものではない。部及びパーセントは、特に断らない限り全て重量による。
典型的な反応手順は以下のように記載される。蒸留ヘッドを備えた3つ首の100mL丸底フラスコ、温度計、真空アダプター、及び回収フラスコを、加熱マントル、熱電対、及び磁気攪拌棒と共に高真空グレードのグリースを用いて組み立てる。反応混合物を、典型的には400〜600rpmの範囲の撹拌に供する。真空を用いて、反応混合物からその後の副生成物を除去し、種々の圧力を、各々の場合における混合時間と共に、以下に示す。場合によっては、真空の代わりに混合物をパージするために窒素ガスを使用し、適用可能であれば、以下に示す。いずれの場合も、モル当量は、使用されるジエチルメチレンマロネート(「DEMM」)モノマーに対して相対的である。
300MHzのNMRを用いるNMR分光法を使用して反応混合物を分析する。クロロホルム−d(CDCl3)及び約0ppmに現れる内部標準としてのヘキサメチルジシロキサンを用いて試料を調製した。対称な置換基を有する1,1−二置換アルケン化合物(例えばDEMM)の場合、反応性アルケン官能基(すなわち二重結合)は約6.45ppmに現れる。非対称な置換基を有する1,1−二置換アルケン化合物(例えばエチルペンチルメチレンマロネート、すなわち「EPMM」)の場合、反応性アルケン官能性は約6.45ppmに二重項として現れる。ほとんどの場合、各試料に4回のNMRスキャンを実施し、スキャン間に20秒の遅延を設ける。
GC−MSを用いて、所望のエステル交換生成物への出発物質の転化を決定し、あらゆる副生成物の存在を検出する。約1mL/分のヘリウムガス(キャリアガス)パージを用いて、試料中のイオン化された種がMS検出器に到達するのを助ける。ジクロロメタン(CH2Cl2)中の約2〜5%の反応混合物の1〜2μLの典型的な試料注入量が、GC−MS機器への注入に使用される。GC−MSプロファイル法では、オーブンを100℃に維持し、続いて15℃/分のランプで250℃にする。典型的な実行時間は18〜23分の範囲である。上記の方法に基づく1,1−二置換アルケン化合物の保持時間は、4.5〜17分の範囲であり、置換基及びGCチャンバー中の特定の分子のイオン化の容易さに大きく依存する。
本明細書に開示される実施例について、出発反応物材料(すなわち、第1のエステル又は1,1−二置換アルケン化合物)の、適切なエステル交換試薬(すなわち、アルコール、アセテート、又はホルメート)の使用によりエステル交換された所望の1,1−二置換アルケン化合物への転化を、特に明記しない限り、以下のように計算する。すなわち、各反応における制限試薬の出発重量がベースライン測定として使用され、100%の理論上の最大転化を構成する。次いで、転化は、最終反応混合物中のGC−MSにより提供されるエステル交換生成物のパーセント組成を理論上の最大転化で割ることによって得られる。
原材料及び生成物
BEMM ベンジルエチルメチレンマロネート(エチルベンジル−1−メチレン−1,1−ジカルボキシレート)
BHT ブチル化ヒドロキシトルエン
DBSA ドデシルベンゼンスルホン酸
DEMM ジエチルメチレンマロネート(ジエチル−1−メチレン−1,1−ジカルボキシレート)
Di−EDiEGMM 二置換エチルジエチレングリコールメチレンマロネート(エチルジエチレングリコール−1−メチレン−1,1−ジカルボキシレート)
Di−EHMM 二置換エチルヘキシルメチレンマロンマロネート(エチルヘキシル−1−メチレン−1,1−ジカルボキシレート)
EAMM エチルアリルメチレンマロネート(エチルアリル−1−メチレン−1,1−ジカルボキシレート)
EBMM エチルブチルメチレンマロネート(エチルブチル−1−メチレン−1,1−ジカルボキシレート)
DDiEGMM エチルジエチレングリコールメチレンマロネート(エチルジエチレングリコール−1−メチレン−1,1−ジカルボキシレート)
EEmMM エチルエチルメタクリレートメチレンマロネート(エチルエチルメタクリレート−1−メチレン−1,1−ジカルボキシレート)
EHMM エチルヘキサノールメチレンマロネート(エチルヘキサノール−1−メチレン−1,1−ジカルボキシレート)
EIpMM エチルイソペンチルメチレンマロネート(エチルイソペンチル−1−メチレン−1,1−ジカルボキシレート)
EPMM エチルペンチルメチレンマロネート(エチルペンチル−1−メチレン−1,1−ジカルボキシレート)
EPrMM エチルプレニルメチレンマロネート(エチルイソペンテニル−1−メチレン−1,1−ジカルボキシレート)
FEMM フェンチルエチルメチレンマロネート(エチルフェンチル−1−メチレン−1,1−ジカルボキシレート)
HEMA ヒドロキシエチルメタクリレート
HEMM エチルヘキシルメチレンマロネート(エチルヘキシル−1−メチレン−1,1−ジカルボキシレート)
MeHQ モノメチルエーテルヒドロキノン
MEMM メンチルエチルメチレンマロネート(エチルメンチル−1−メチレン−1,1−ジカルボキシレート)
MePPEMM 2−メチル−1−フェニル−2−プロピルエチルメチレンマロネート(2−メチル−1−フェニル−2−プロピルエチル−1−メチレン−1,1−ジカルボキシレート)
MSA メタンスルホン酸
PEMM 2−フェニル−1−プロピルエチルメチレンマロネート(2−フェニル−1−プロピル−エチル−1−メチレン−1,1−ジカルボキシレート)
PPEMM 2−フェニル−2−プロピルエチルメチレンマロネート(2−フェニル−2−プロピル−エチル−1−メチレン−1,1−ジカルボキシレート)
TFMSA トリフルオロメタンスルホン酸又はトリフル酸
[実施例1−HEMMの調製]
反応器に、25g(1当量)のDEMM、5.9g(0.4当量)のヘキサノール、0.82g(0.25当量)のBHT、及び0.154gの硫酸(DEMM及びヘキサノールに基づいて約5重量%)を仕込む。反応混合物を130℃まで加熱し、約500mm Hgの減圧を用いてエタノール副生成物を除去する。GC−MSの結果を得て、それを使用して転化率を計算した。これらの条件下でHEMMへ約72.5%の転化率となった。これはGC−MSによる8.8分の溶出時間を有する。この反応は以下の式で示される。
[実施例2−EEmMMの調製]
組み立てられた丸底フラスコに、20g(1当量)のDEMM、3.7792g(0.25当量)のHEMA、1.442g(0.1当量)のMeHQ、1.8962g(0.05当量)のDBSA、0.1742(0.01当量)のTFMSAの混合物を攪拌しながら混合する。反応混合物に熱を加え、約90℃に維持し、窒素ガスで激しくパージしながら4時間混合する。エタノールを反応副生成物として回収する。GC−MSの結果を得て、それを使用して転化率を計算した。これらの条件下でEEmMMへ約75.8%の転化率となった。これはGC−MSによる9.96分の溶出時間約を有する。この反応は以下の式で示される。
[実施例3−EPMMの調製]
組み立てられた丸底フラスコに、30g(1当量)のDEMM、7.561g(0.33当量)のペンチルアセテート、2.163(0.1当量)のMeHQ、2.844g(0.05当量)のDBSA及び0.342(0.02当量)の硫酸の混合物を攪拌しながら混合する。反応混合物に熱を加え、約130℃に維持し、約450mmHg(59.9951kPa)で減圧しながら4時間混合する。反応副生成物としてエチルアセテートを回収する。GC−MSの結果を得て、それを使用して転化率を計算した。これらの条件下でEPMMへ約88.3%の転化率となった。これはGC−MSによる約7.93分の溶出時間を有する。この反応は以下の式で示される。
[実施例4−EPMMの調製]
組み立てられた丸底フラスコに、30g(1当量)のDEMM、5.120g(0.33当量)のペンタノール、2.163(0.1当量)のMeHQ、2.844g(0.05当量)のDBSA及び0.342(0.02当量)の硫酸の混合物を攪拌しながら混合する。反応混合物に熱を加え、約130℃に維持し、約450mmHg(59.9951kPa)で減圧しながら4時間混合する。反応副生成物としてエタノールを回収する。GC−MSの結果を得て、それを使用して転化率を計算した。これらの条件下でEPMMへ約74.4%の転化率となった。これはGC−MSによる約7.93分の溶出時間を有する。この反応は以下の式で示される。
[実施例5−EIpMMの調製]
組み立てられた丸底フラスコに、30g(1当量)のDEMM、7.561g(0.33当量)のイソペンチルアセテート、2.163g(0.1当量)のMeHQ、2.844g(0.05当量)のDBSA、0.261(0.01当量)のTFMSAの混合物を攪拌しながら混合する。反応混合物に熱を加え、約130℃に維持し、約450mmHg(59.9951kPa)で減圧しながら3時間混合する。反応副生成物としてエチルアセテートを回収する。GC−MSの結果を得て、それを使用して転化率を計算した。これらの条件下でElpMMへ約65.6%の転化率となった。これはGC−MSによる約7.55分の溶出時間を有する。この反応は以下の式で示される。
[実施例6−EPrMMの調製]
組み立てられた丸底フラスコに、30g(1当量)のDEMM、7.444g(0.33当量)のプレニルアセテート、2.163g(0.1当量)のMeHQ、2.844g(0.05当量)のDBSA及び0.261(0.01当量)TFMSAの混合物を攪拌しながら混合する。反応混合物に熱を加え、約130℃に維持し、約450mmHg(59.9951kPa)で減圧しながら1時間混合する。反応副生成物としてエチルアセテートを回収する。GC−MSの結果を得て、それを使用して転化率を計算した。これらの条件下でEPrMMへ約53.2%の転化率となった。これはGC−MSによる約7.92分の溶出時間を有する。この反応は以下の式で示される。
[実施例7及び8−EPMMの調製及びアニオン性安定剤の効果]
ペンタノールを試薬アルコールとし、DBSA又はMSAのいずれかをアニオン性安定剤として2つの反応を行う。組み立てられた丸底フラスコに、30g(1当量)のDEMM、5.120g(0.33当量)のペンタノール、2.163(0.1当量)のMeHQ、2.844g(0.05当量)のDBSA又は0.167g(0.01当量)のMSA、0.261(0.02当量)のTFMSAの混合物を攪拌しながら混合する。反応混合物に熱を加え、約130℃に維持し、約450mmHg(59.9951kPa)で減圧しながら3時間混合する。反応副生成物としてエタノールを回収する。GC−MSの結果を得て、それを使用して転化率を計算した。EPMMはGC−MSによる約7.93分の溶出時間を有する。
この反応は以下の式で示される。
これらの実施例は、高分子量酸化合物が、望ましくないマイケル付加生成物(例えば、エタノールのような低分子量アルコールの存在下でのDEMM)及びポリマー副生成物の量を減少させることによって、全体的な反応を改善する可能性をどのように有するかを例示する。
[実施例9−EAMMの調製]
組み立てられた丸底フラスコに、30g(1当量)のDEMM、5.815g(0.33当量)のアリルアセテート、4.362(0.2当量)のMeHQ、2.844g(0.05当量)のDBSA、0.342(0.02当量)の硫酸の混合物を攪拌しながら混合する。反応混合物に熱を加え、約80℃に維持し、約450mmHg(59.9951kPa)で減圧しながら6時間混合する。反応副生成物としてエチルアセテートを回収する。GC−MSの結果を得て、それを使用して転化率を計算した。これらの条件下でEAMMへ約21.8%の転化率となった。これはGC−MSによる約5.77分の溶出時間を有する。この反応は以下の式で示される。
[実施例10−BEMMの調製]
組み立てられた丸底フラスコに、30g(1当量)のDEMM、8.722g(0.33当量)のベンジルアセテート、2.163(0.1当量)のMeHQ、2.844g(0.05当量)のDBSA及び0.342(0.02当量)の硫酸の混合物を攪拌しながら混合する。反応混合物に熱を加え、約130℃に維持し、約450mmHg(59.9951kPa)で減圧しながら3時間混合する。反応副生成物としてエチルアセテートを回収する。GC−MSの結果を得て、それを使用して転化率を計算した。これらの条件下でBEMMへ約39.6%の転化率となった。これはGC−MSによる約10.27分の溶出時間を有する。この反応は以下の式で示される。
[実施例11−EBMMの調製]
組み立てられた丸底フラスコに、30g(1当量)のDEMM、5.932g(0.33当量)のブチルホルメート、2.163(0.1当量)のMeHQ、2.844g(0.05当量)のDBSA及び0.342(0.02当量)の硫酸の混合物を攪拌しながら混合する。反応混合物に熱を加え、約90℃に維持し、約450mmHg(59.9951kPa)で減圧しながら3時間混合した。反応副生成物としてエチルホルメートを回収する。GC−MSの結果を得て、それを使用して転化率を計算した。これらの条件下でEBMMへ約46.9%の転化率となった。これはGC−MSによる約6.97分の溶出時間を有する。この反応は以下の式で示される。
[実施例12−EDiEGMM及びDi−EDiEGMMの調製]
組み立てられた丸底フラスコに、30g(1当量)のDEMM、6.628g(0.2当量)のジエチレングリコールジアセテート、2.163(0.1当量)のMeHQ、2.844g(0.05当量)のDBSA及び0.342(0.02当量)の硫酸の混合物を攪拌しながら混合する。反応混合物に熱を加え、約130℃に維持し、約450mmHg(59.9951kPa)で減圧しながら3時間混合する。反応副生成物としてエチルアセテートを回収する。GC−MSの結果を得て、それを使用して転化率を計算した。GC−MSによる約10.93分の溶出時間で一置換型EDiEGMMへの転化率22.8%、GC−MSによる約14.21分の溶出時間でDi−EDiEGMMへの転化率22.3%となった。反応は以下の式で示される。
[実施例13−PEMMの調製]
組み立てられた丸底フラスコに、20g(1当量)のDEMM、6.09g(0.33当量)の2−フェニル−1−プロパノール、0.99g(0.025当量)のBHTの混合物を仕込む。真空ポンプを用いて約500mmHg(66.6612kPa)の減圧を維持する。次に反応混合物を加熱し、約130℃に維持する。温度が約90℃に達したら、0.27g(0.025当量)の硫酸を反応混合物に加える。次に反応を2時間攪拌する。反応副生成物としてエタノールを回収する。収率をこの反応について計算し、蒸留により反応混合物から単離された生成物の量に基づいて、これらの条件下でPEMMへの50.0%の収率である。これはGC−MSによる約11.3分の溶出時間を有する。反応は以下の式で示される。
[実施例14−FEMMの調製]
組み立てられた丸底フラスコに、20g(1当量)のDEMM、6.09g(0.33当量)のフェンコール、0.99g(0.036当量)のBHTの混合物を仕込む。真空ポンプを用いて約500mmHg(66.6612kPa)の減圧を維持した。次に反応混合物を加熱し、約130℃に維持する。温度が約90℃に達したら、0.27g(0.025当量)の硫酸を反応混合物に加える。次に反応を2時間攪拌する。反応副生成物としてエタノールを回収する。GC−MSの結果を得て、それを使用して転化率を計算した。これらの条件下でFEMMへ約29.5%の転化率となった。これはGC−MSによる約10.55分の溶出時間を有する。この反応は以下の式で示される。
[実施例15−MEMMの調製]
組み立てられた丸底フラスコに、20g(1当量)のDEMM、6.09g(0.3当量)のメントール及び0.67g(0.025当量)のBHTの混合物を仕込む。真空ポンプを用いて約500mmHg(66.6612kPa)の減圧を維持する。次に反応混合物を加熱し、約130℃に維持する。温度が90℃に達したら、0.27g(0.025当量)の硫酸を反応混合物に加えた。次に反応を2時間攪拌する。反応副生成物としてエタノールを回収する。GC−MSの結果を得て、それを使用して転化率を計算した。これらの条件下でMEMMへ約69.4%の転化率となった。これはGC−MSによる約11.0分の溶出時間を有する。この反応は以下の式で示される。
[実施例16 多数の触媒を用いるEPMM及びDi−EHMMの調製]
これらの代表的な反応条件を用いてペンタノール及びペンチルアセテートの反応を行う。約115〜130℃で維持した反応温度及び約300〜500mmHg(39.9967kPa〜66.6612kPa)の減圧を用いた。最適な転化が見られる時点を、下記の表2に反応時間と共に報告する。これらの反応について総反応時間を4時間に制限する。これらの(実施)例では、モノマー対アルコール又はアセテートの比率は約3:1である。均一触媒をDEMMモノマーに約0.01当量で添加する。不均一触媒を、全モノマーの約5重量パーセントで添加する。残りの材料を各反応に同様の当量で導入する。DBSA(0.05)及びMeHQ又はBHT(0.1)である。以下の結果は、GC−MSによる目標生成物へのパーセントの転化率を示し、この場合、EPMMはGC−MSによる約7.93分の溶出時間を有する。結果を表2にまとめた。反応は以下の式で示される。
ヘキサンジオールとの反応を、種々の酸触媒を用いて、最長3時間、約130℃、300〜500mmHg(39.9967kPa〜66.6612kPa)の減圧で行う。TMFSA、Nafion、エチルトリフラートを用いた反応では、ポリマー副生成物の生成が問題となり、このことはこの反応試薬について広く知られている。これらの場合、触媒充填率はDEMMに対し0.01当量である。DBSAをDEMMに対し0.05当量で安定剤として使用する。列挙されている他の全ての液体触媒については、全反応物混合物の0.5重量%を利用する。DBSAはアニオン性安定剤として添加しなかった。Amberlystについては、全反応混合物の5重量パーセントを、DEMMモノマーに対して0.025〜0.1の間のモル当量の量のBHTと共に使用する。これらの反応の各々におけるDEMMと1,6−ヘキサンジオールとの比率は約5:1である。所望の生成物は、GC−MSによる約15.45分の溶出時間を有するDi−EHMMである。結果を表2にまとめた。一置換EHMM(すなわち、未反応の第一級ヒドロキシル基を有する)も、ある種の反応条件下で観察した。これはGC−MSによる約11.05分の溶出時間を有する。反応は以下の式で示される。
その結果は、触媒系の選択が、メチレン二重結合にわたるマイケル付加及び重合によって引き起こされる副反応に比例して、所望の生成物の最終収率に大きく影響することを示す。より弱い酸は、かなりの量の出発反応物をエステル交換し、一置換が望まれる所望の生成物(エチルペンチルメチレンマロネート)を与える。エステル交換二官能性生成物のかなりの収率を得るためには、より強い酸が望ましい。
[実施例17 反応触媒として硫酸を用いた各種1,1−二置換アルケンの調製]
実施例は、実質的に実施例16に記載されているように実施される。最初の3回の実行は、実施例17の硫酸触媒反応である。結果を表3にまとめた。
不均一なエステル交換反応
以下の不均一触媒、すなわち、硫酸化及びトリフラート化された酸化スズ、硫酸化及びトリフラート化アルミナ、硫酸化及びトリフラート化シリカ、硫酸化及びトリフラート化ジルコニア、強酸イオン交換樹脂(AMBERLYST(商標)−15強酸イオン交換樹脂、DOWEX(商標)50WX8強酸イオン交換樹脂及びAMBERLITE(商標)IR120強酸イオン交換樹脂)、及びHZSM 5(Tricat)を使用する。
手順:反応フラスコにDEMM(2.5mol)、アルコール(1mol)又はジオール(1mol)、BHT(1000ppm)及び不均一触媒(5g)を仕込む。この反応混合物にN2を15分間散布した後、真空下(200mmHg)で130℃まで加熱する。この混合物を、ヘッド温度が35℃に低下する(約1時間)まで加熱し、次いで、追加のアルコール(0.2mol)又はジオール(0.2mol)を仕込む。反応混合物を140℃で1時間加熱する。その後、徐々に減圧して0.5mmHg(66.6612Pa)とし、DEMMを除去する。ポット温度を150℃に上昇させ、その温度に1時間保ち、マイケル付加を逆転させてアルケン数を増加させる。反応混合物を濾過して触媒を除去する。
全例でエステル交換を観察する。
本明細書で使用される重量部とは、具体的に言及される組成物の100重量部を参照する。上記の出願において列挙される数値は、いずれかの低い値といずれかの高い値との間に少なくとも2単位の分離がある場合には、1単位の増分で、低い値から上の値までの全ての値を含む。一例として、成分の量、又は例えば、温度、圧力、時間などの方法の変数の値が、例えば、1〜90、好ましくは20〜80、より好ましくは30〜70であると記載されている場合、本明細書では、15〜85、22〜68、43〜51、30〜32などの値を明確に列挙することを意図している。1未満の値については、必要に応じて1単位を0.0001、0.001、0.01又は0.1とする。これらは、具体的に意図されるものの例に過ぎず、列挙される最低値と最高値との間の数値の全ての可能な組み合わせが、同様の方法で本願において明確に述べられていると考えるものとする。特に記載のない限り、全ての範囲には端点及び端点間の全ての数字の両方が含まれる。範囲に関連して「約(about)」又は「約(approximately)」の使用は、範囲の両端に適用される。したがって、「約20〜30」は、少なくとも指定された端点を含む「約20〜約30」を包含することが意図される。組み合わせを記述するために、「本質的に含む」という用語は、指定された要素、因子、成分または工程、及びその組み合わせの基本的及び新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない他の要素、因子、成分又は工程を包含する。本明細書の要素、因子、成分又は工程の組合せを記述するために「含む(comprising)」又は「含む(including)」という用語の使用も、該要素、因子、成分又は工程から本質的になる実施形態を意図している。単一の統合された要素、因子、成分又は工程によって、複数の要素、因子、成分又は工程を提供することができる。あるいは、単一の統合された要素、因子、成分又は工程を、複数の要素、因子、成分又は工程に分割してもよい。要素、因子、成分又は工程を記述する「1つの(a)」又は「1」の開示は、追加の要素、因子、成分又は工程を除外することを意図していない。