JP2021500921A - Fimh遮断剤の治療効率を評価するための新規ツール - Google Patents

Fimh遮断剤の治療効率を評価するための新規ツール Download PDF

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Abstract

本発明は、対象の便試料におけるfimH遺伝子の発現を検出する工程を含む、その腸管に多量のFimH発現プロテオバクテリアを保有する対象を同定するためのin vitro方法に関する。

Description

腸内細菌叢は、腸管、宿主免疫系、及び環境との境界に存在することから、幾つかの疾患において重要な役割を果たす。典型的なヒト腸内細菌叢は、片利共生細菌、有益細菌、又は病原性細菌を含む何千もの微生物種を含む。これらの微生物の各々の役割は、ほとんど記載されていない。しかし、それらが、疾患を有する個体においてある特定の片利共生細菌の病原潜在性に有利となるようにその挙動を変化させることは公知である。腸管の微生物含有量は、約1.5kgの重さがあると考えられ、宿主の細胞より10対1で数が多い。
炎症性腸疾患は、遺伝的に素因を有する宿主の腸内細菌叢に見出される微生物及び/又は微生物化合物に応答して起こる異常な免疫応答によって特徴付けられる。
クローン病(CD)は、口から肛門までの消化管の任意の部分に影響を及ぼしうる慢性炎症性腸疾患(IBD)である。発症年齢は一般的に、15〜30歳の間であり、有病率は男女同等である。最も高い有病率は、欧州及び北米において見出され、100,000人あたり300人を超える(Molodeckyら、2012)。CDは一般的に、腹痛、重度の下痢、及び体重障害をもたらす。疾患は、病因が不明の多因子性の疾患であり、環境要因、宿主遺伝学、及び腸内マイクロバイオームは全て、疾患のリスク及びその重症度に影響を及ぼすことが示されている(Choら、2011)。CDの臨床診断は、血清学的、放射線学的、内視鏡的、及び組織学的知見によって裏付けられる。
潰瘍性大腸炎(又はUC)は、別の型の炎症性腸疾患(IBD)である。潰瘍性大腸炎は、特徴的な潰瘍又は開放創を含む1つの型の大腸炎、すなわち結腸(大腸の最大の部分)の疾患である。活動性疾患の主な症状は、通常、徐々に発症する血液の混じった絶え間ない下痢である。
これらの疾患の発病において役割を果たしうる細菌の中でも、病原型の大腸菌(E. coli)は、「接着侵襲性大腸菌(Escherichia coli)」、略して「AIEC」と呼ばれ、強く関与している(Boudeauら、1999)。AIECは、腸上皮に接着して、腸粘膜に定着することができ、そこでそれらはIBDの発症に関与する。より正確には、AIECは、対照の6.2%と比較してCD患者の36.4%において回腸粘膜に会合して見出されており、これらの細菌がCDの発病に関係していることが示唆された(Darfeuille-Michaudら、2004;Dreux N.ら、2013)。
AIECはまた、特にCDに罹患している動物、又は対応するヒト潰瘍性大腸炎に近い疾患である肉芽腫性大腸炎(組織球性潰瘍性大腸炎とも呼ばれる)に罹患している動物に関連して、イヌ及びネコなどの動物の炎症性腸疾患に関係することも証明されている(Simpsonら、2006)。
従って、本発明は、消化管及び/又は泌尿器からこれらの細菌を効率よく根絶するための戦略を練るために極めて重要である。
大腸菌の粘膜上皮細胞への接着は、1型線毛と呼ばれるタンパク質様の杆状オルガネラによって媒介される。1型線毛は、柔軟な線毛先端の端部でアドヘシンを有する。このアドヘシンであるFimHは、高度にマンノシル化された糖タンパク質に対して強い親和性を有するレクチンである(Bouckaert J.ら、2006)。
1型線毛は、CEACAM6(Barnichら、2007;Barnichら、2010)、TLR4(Mossmanら、2008)、又はGP2(Chassaingら、2011)などの糖タンパク質とマンノースに関連して相互作用する。CEACAM6及びTLR4受容体は、回腸疾患を有するCD患者において炎症性サイトカインによってアップレギュレートされる。FimHがTLR4に結合すると、LPSとは無関係に腸管においてTNFα、IL-6、及びIL-8の産生を誘導する。更に、FimHがパイエル板のM細胞の表面でGP2に結合すると、AIECは、粘膜固有層に入ることができる。マクロファージによるAIECのその後の食作用は、TNFαの慢性的な産生に更に寄与する。炎症促進性サイトカイン放出の悪循環は、TNFα駆動性のCEACAM6の過剰発現及びTNFα駆動性のM細胞発達の増加によって生じる(Bennettら、2016)。このように、FimHは、腸管上皮からの炎症促進性サイトカインの直接産生を刺激するのみならず、粘膜固有層への侵襲においても重要な役割を果たす極めて重要な要因であるように思われる。
AIECのみならず、他の多くのプロテオバクテリアが、その表面にFimHを発現する。これらのプロテオバクテリアは、例えば尿路感染症の原因である。
例えば感染した対象をFimH遮断剤によって処置することによって、最終的にその消化管及び/又は泌尿器からそれらを根絶するために、前記対象においてこれらのFimH発現プロテオバクテリアを効率的に検出する戦略を練ることは極めて重要である。
しかし、そのような同定は、現在、難しい作業であると考えられている。
AIECの病原型は、当初、特定の細菌/細胞相互作用を調べるin vitro細胞株アッセイによって定義されていた(Darfeuille-Michaudら、2004)。それ以降、それらを同定する唯一の方法は、侵襲性の手順(大抵は、粘膜組織又はリンパ節の生検の際)によって得た患者の試料から細菌細胞を単離し、それらを数週間培養し、例えばAIECが生存及び複製することが既知である上皮細胞又はマクロファージと共に細菌/細胞相互作用アッセイを実施することである(Glasser AL.ら、2001;Bringer MA.ら、2006)。しかし、これらのプロトコールは、侵襲性で、時間がかかり、費用が高く、及び検査機関の間で再現性がない。従って、それらはバイオマーカー又は診断として日常的に使用することはできない。
今日まで、AIECの分子マーカーの探索は失敗に終わっている(O'Brienら、2016)。これは、まさに言及したように標準化されて非常に再現性の高いプロトコールがないためでありうるが、AIECが、単一遺伝子による制御下にあるのではなく、複合的な遺伝子調節下及び/又は環境制御下にあるという事実によっても説明することができる。
このため、感染した対象のプロテオバクテリアにおけるFimHの発現を容易にかつ信頼できるように検出するための非侵襲性で感度のよい診断試験がなおも必要である。
1型線毛は、fimオペロンによってコードされ、その発現は、fimオペロンの上流に位置してfimプロモーターを含有する可逆性(invertible)のDNAエレメント(fimS領域)に応じて相可変性(phase variable)である(Barnichら、2003)。より正確には、fimS領域は、fimE遺伝子とfimA遺伝子との間に及ぶ遺伝子間領域である。2つのチロシンリコンビナーゼ、FimB及びFimEは、図1に示すスイッチ機構によってfimS可逆性の領域の方向を制御することが公知である。FimBは、双方向性の活性を有し、主にfimオペロン転写をOFFからONへとスイッチするが、FimEは、ONからOFFへの相スイッチングのみを媒介する(Holdenら、2007;Kulasekaraら、1999)。このスイッチが高頻度で起こることは公知である。このいわゆる「FimSスイッチ機構」は、細菌においてfimオペロンの発現、特にfimH遺伝子の発現を調節する(Burnsら、2000;Zhangら、2016)。
EP 145,356 EP 240,191 EP 245,945 US 7,473,767 EP 1 371 964 EP 1 986 006 FR1456674 WO2013/134415 WO 2014/055474 WO 2011/050323 WO 2012/109263 WO 2014/194270 WO 2012/164074 WO 2011/073112 WO 2016/183501 WO 2014/173904
Barnich N.ら、AGA Abstract 2017 Maniatisら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual (New York: Cold Spring Harbor Laboratory、1982)、280〜281頁 Needleman及びWunsch(1970) [J. Mol. Biol. 48:443] ebi.ac.uk Sipponen T、IBD、2010 Sipponen T、IBD、2008
本発明は、対象の生物試料のヌクレオチド分画におけるfimオペロン転写のOFFからONへのスイッチを測定する工程を含む、対象におけるFimH遮断剤に対する治療応答を予測又は評価するためのin vitro方法に関する。fimオペロンのON位置の正規化増幅レベルが基準値より高い場合、前記対象は、FimH遮断剤による処置から利益を得る。このバイオマーカーを使用することによって、前記対象におけるIBD疾患の活動度をモニターすることも可能である。好ましくは、本方法で使用される生物試料は便試料である。
ON位置又はOFF位置でのfimオペロンの構造を開示する図である(Van der Woude及びBaumler、2004から)。 113個の凝集又は非凝集細菌単離体について測定したONリードのパーセンテージを開示する図である。 本発明において使用した異なる2組のプライマーの位置を開示する図である(Aでは、p1〜p4、Bではp5〜p8)。 CDの便において測定したON/(OFF+ON)比を開示する図である。左側の2個の試料は、右側の2個の試料より低いCQ比を有し、ON位置の細菌がより多量であることを示している。 MOBIDIC試験の集団全体における、群毎の対数尺度でのFimS OFF標的化アッセイの分布を開示する図である。 集団全体における、群毎の対数尺度でのFimS ON標的化アッセイの分布を開示する図である。 凝集の非存在下又は存在下でのFimH標的化アッセイの分布を開示する図である。 アッセイp5p7のROC曲線を示す図である。感度は、凝集を指し、及び特異度は、凝集なし又は成長なしを指す。 p1.p3 ON又はp6.p8 ONアッセイによる、活動性又は非活動性患者の群毎の対数尺度でのFimS ON標的化アッセイの分布を開示する図である。 幾つかの臨床変数と共にMOBIDICコホートについて実施した主成分分析を開示する図である。
IBD患者及び対照から単離され、十分に特徴付けされて完全にシークエンシングされた大腸菌株の大きいコレクションを使用して、本発明者らは、FimH遮断剤に対して効率的に凝集し、従ってその表面上にFimH遮断剤に結合するために十分量のFimHレクチンを発現する細菌株を単離することができた。これらの株に基づいて、本発明者らは、ex vivo試料においてその表面にFimHレクチンを実際に発現する(FimH遺伝子を有するのみならず)細菌数を測定するための容易で、再現性があり、及び定量的な試験を探索して同定した。
本発明者らによって同定された分子シグネチャーは、FimH分子パターン、より正確には、fimオペロン転写をOFFからONへとスイッチし、それによってプロテオバクテリアの表面でのFimHレクチンの発現をもたらす「FimSスイッチ機構」に集中している。本発明者らは本明細書において、この分子シグネチャーを、従来の手段(例えば、qPCR)によって検出できることを示す。これは、試料の収集後に速やかに得ることができる。これは、定量的であり、かつ再現可能である。最後に大事な点は、この試験が、いかなる精製/分離も行っていないそのままの(whole)便試料について非常に良好に機能する点である。
回腸で起こるスイッチ機構は、ON位置からOFF位置へと極めて迅速に逆転させる(revert)ことが公知であることから、この試験は、患者から収集された未加工のそのままの便試料に適用した場合に、意外にもスイッチのON位置を、感度よく定量的に検出できるように思われた。このことは、熟練者が内視鏡による生検を分析する必要がないこと、及び非侵襲性に得られる便試料で十分であることを意味することから、特に重要である。その上、本発明の試験は、試料中に存在する細菌を単離又は培養する必要がないことから、先行技術のプロトコールより遙かに迅速でより信頼性が高い。
これもまた、非常に驚くべきことである。実際に、AIECは、対照と比較してCD患者の回腸粘膜において有意に増加するが、便では見出されず、対照と類似の少量が見出されたことが報告されている。可能性がある1つの説明は、FimHの発現が細菌にとってエネルギーを消費することであるために、FimH発現が、接着するために真の必要性/利益が存在する場合に限って環境によって誘発される点である。従って、便及び健康な腸管では、大腸菌の大多数がFimHレクチンを発現しない(fimオペロンのOFF位置)。その結果、便試料においてFimH発現を検出するための方法がこれまで提唱されていなかった。
本発明者らは、幸運にも、感染した患者の便試料においてFimH発現細菌を検出し、従ってこれらの細菌のビルレンスを評価するために使用することができる分子シグネチャーを提唱することによって、この必要性を満たす。
更に、本発明の分子シグネチャーによって、FimH発現細菌と腸粘膜との間のFimHに基づく相互作用を遮断することをねらいとする治療介入の効果の予後判定が可能となる。最終的には、これによって、多量のFimH発現細菌を保有する患者の特定のサブセットに関して適合させた処置を設計することが可能となる。今や個別化処置は、FimH遮断剤処置を投与する前に、本発明の分子シグネチャーを検出するために患者の試料を予めスクリーニングすることによって可能となるであろう。
本明細書で使用される場合、用語「プロテオバクテリア」は、特にエスケリキア(Escherichia)、クレブシエラ(Klebsiella)、赤痢菌(Shigella)、サルモネラ(Salmonella)、ビブリオ(Vibrio)、エルシニア(Yersinia)及びヘリコバクター(Helicobacter)細菌を含む、グラム陰性細菌を示す。プロテオバクテリアは、ギリシャ文字のアルファ(α)からイプシロン(ε)で呼ばれる正当な公開された名称、並びにアシジチオバクテリア(Acidithiobacillia)及びオリゴフレキシア(Oligoflexia)によって6つのクラスに分類される。アルファプロテオバクテリアには、ブルセラ(Brucella)、リゾビウム(Rhizobium)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、カウロバクター(Caulobacter)、リケッチア(Rickettsia)、及びボルバキア(Wolbachia)細菌が挙げられる。ベータプロテオバクテリアには、ボルデテラ(Bordetella)、ラルストニア(Ralstonia)、ナイセリア(Neisseria)、及びニトロソモナス(Nitrosomonas)細菌が挙げられる。ガンマプロテオバクテリアには、エスケリキア、赤痢菌、サルモネラ、エルシニア、ブクネラ(Buchnera)、ヘモフィルス(Haemophilus)、ビブリオ、及びシュードモナス(Pseudomonas)細菌が挙げられる。イプシロンプロテオバクテリアには、ヘリコバクター(Helicobacter)、カンピロバクター(Campylobacter)、及びウォリネラ(Wolinella)細菌が挙げられる。
本明細書で使用される場合、用語「FimH発現プロテオバクテリア」は、その表面に多量の機能的FimHレクチンを発現する上記で定義したプロテオバクテリアを示す。好ましくは、前記FimH発現プロテオバクテリアは病原性である。特に、それらは、その表面に多量の機能的FimHレクチンを発現するガンマプロテオバクテリアである。これに対し、用語「FimHを有する細菌」は、そのゲノムにfimH遺伝子を有するが、必ずしもそれを細菌の表面に提示されるタンパク質として発現しない任意の細菌に関する。
本発明の目的は、分子手段及び非侵襲性に得られた試料、例えば便試料を単に使用することによって、その表面に多量の機能的FimHレクチンを発現する多量の腸内細菌を保有する患者を検出することである。これらの患者は、実際にFimH遮断剤処置によって利益を受け、自身の疾患をそれに従って追跡することができる。
細菌によってその表面に発現された「多量の機能的FimHレクチン」は、当技術分野で開示されている試験などの凝集試験又は接着試験によって評価することができる(Yakovenko O.、2015;Sokurenko EV 1995)。発現された機能的FimHレクチンの量は、その表面に如何なる機能的FimHレクチンも発現せず、凝集しないことが公知である基準細菌と比較して、試験した細菌の凝集が観察される場合、「多い」と言われる。例えば、大腸菌K12株、或いはFimH遺伝子を欠如するLF82株であるデルタFimH LF82株を、基準細菌として使用することができる。以前に記載されたAAEC191A株もまた、それらがその表面にFimHレクチンを発現しないことから基準細菌として使用することができる(Sokurenko EVら、1995)。
一態様では、本発明は、
a)任意選択で生物試料のヌクレオチド分画を単離する工程;
b)前記ヌクレオチド分画におけるfimH遺伝子の発現を、好ましくはqPCRによって検出する工程
を含む、対象の生物試料におけるFimH発現プロテオバクテリアの存在を検出するためのin vitro方法に関する。
上記で言及したように、本方法は、その腸管に多量のFimH発現プロテオバクテリアを保有する対象を同定するために使用することができる。
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、哺乳動物、好ましくはヒトを指す。より好ましくは、前記哺乳動物又はヒトは、FimH発現プロテオバクテリア感染による疾患、例えば尿路感染症(UTI)又はIBD(成人又は小児におけるクローン病又は潰瘍性大腸炎)に罹患していると診断されている。より好ましくは、前記対象は、クローン病に罹患している、又はクローン病の処置として外科手術を受けたことがあるヒトである。或いは、前記対象は、尿路感染症に罹患しているヒトである。
本明細書で使用される場合、用語「生物試料」は、細菌細胞を含有しうる、対象から収集した任意の試料を示す。これは、血清試料、血漿試料、尿試料、血液試料、便試料、リンパ試料、又は生検でありうる。本発明の文脈において、前記生物試料は、好ましくは便試料又は粘膜生検である。
「生物試料」として、外科手術の際に得て、生物バンクに保存されている外科標本もまた、これらの標本におけるAIECの存在が、クローン病の重度の術後内視鏡的再発の高いリスクを表すことが公知であることから、使用することが可能である(Barnich N.ら、AGA Abstract 2017)。
用語「生物試料」はまた、前記試料から精製した細菌単離体も示しうる。細菌の精製は、当技術分野で周知である。この点において任意の適した方法を使用することができる。
本明細書で使用される場合、遺伝子(本明細書ではfimH遺伝子)の「発現」とは、それによって遺伝子からの情報を機能的遺伝子産物(本明細書ではFimHレクチン)の合成に使用するプロセスである。遺伝子発現は、従来の手段によって、対応するmRNAの存在及び/又はタンパク質レベルでの遺伝子産物の存在を決定することによって検出することができる。
遺伝子の発現はまた、本発明の文脈において「コピー数」に関して遺伝子の存在量を測定することによっても評価することができる。実際に、コア遺伝子(例えば、fimH遺伝子)を考慮する場合、その存在量はその発現と相関する。そのコピー数が高ければ、遺伝子はより多く発現される。
好ましくは、本発明の分子的方法によって結論付けられるfimH遺伝子の発現レベルは、FimHレクチンが細菌細胞の表面に実際に存在することを示す機能的アッセイによって確認することができる。
以下の実験の章に示すように、前記方法の工程b)は、好ましくはfimH遺伝子のmRNAの発現レベルを分析する工程、又は前記生物試料のヌクレオチド分画におけるfimオペロン転写のOFFからONへのスイッチ、若しくはfimH遺伝子の存在量を検出する工程によって実施される。
従って、本明細書で使用される場合、用語「ヌクレオチド分画」は、便試料から単離又は回収することができる、二本鎖DNA、一本鎖DNA、及び前記DNAの転写産物を示し、並びにそれらとハイブリダイズするヌクレオチド配列も示す。そのため、この用語は、「核酸」、「核酸配列」又は「核酸の配列」、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」、及び「ヌクレオチド配列」という用語と類似であり、これらは本説明において等しく使用される。本発明は、その天然の染色体環境、すなわちその天然の状態にあるゲノムヌクレオチド配列には関連しないと理解すべきである。これは、「単離」及び/又は「精製」されている配列、すなわち、それらが例えばコピーすることによって、合成すること等によってその天然の染色体環境から直接又は間接的に除去されている配列を伴う。
ヌクレオチド分画を単離する方法は、当技術分野で公知である。幾つかのDNA単離技術が、例えばEP 145,356、EP 240,191、及びEP 245,945に記載されており、そのいずれもある特定の一連の工程においてアルコール及び酵素性タンパク質分解剤を使用する。標準的な核酸抽出技術は、Maniatisら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(New York:Cold Spring Harbor Laboratory、1982)、280〜281頁、及びより最近ではAyoib A.ら、2017に記載されている。
fimH遺伝子のmRNAの発現レベルを測定する工程は、任意の通常の手段、例えばRT-qPCRによって行うことができる。試料からのmRNAの単離もまた、広く開示されており、試料の性質に応じて市販のキットを利用することができる。異なる手段によるDNAの増幅は、当技術分野で十分に開示されている。
哺乳動物DNAは、任意の通常の手段、例えばCpGメチル化又は細菌16SリボソームDNAの検出によって微生物DNAと区別することができる。同様に、ヒトDNAにおけるALU(STR)反復領域、又はベータ-グロブリン、ベータ-アクチン、及びhTERT遺伝子を標的とするqPCRを使用することも可能である。Nanostring社の技術もまた有用でありうる。
試料中のDNAコピーの定量のために当技術分野で公知の最も一般的に使用される方法は、ノーザンブロッティング、インサイチューハイブリダイゼーション、及びPCRに基づく方法、例えば定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)を含む。或いは、DNA二重鎖又はDNA-タンパク質二重鎖を含む配列特異的二重鎖を認識することができる抗体を使用してもよい。シークエンシングに基づく分析のための代表的な方法には、チェーンターミネーション法、ショットガンシークエンシング法、de novoシークエンシング、次世代シークエンシング法(超並列シグネチャーシークエンシング(MPSS)、Polonyシークエンシング、454パイロシークエンシング、Illumina(Solexa)シークエンシング、SOLiDシークエンシング、イオン半導体シークエンシング、DNAナノボールシークエンシング、Heliscope 1分子シークエンシング、1分子リアルタイム(SMRT)シークエンシング、RNAPシークエンシング、ナノポアDNAシークエンシング、ハイブリダイゼーションによるシークエンシング、及びマイクロ流体サンガーシークエンシングを含む)が挙げられる。
qPCRは、その条件が市販のキット(SIGMA-ALDRICH社、QIAGEN社、...)の注意書きに十分に説明されている周知の技術である。これは、当業者にとって標的領域又はプライマーが既知である場合に使用される適切な条件を同定する日常的な作業である。任意のqPCR法を、本発明における標的化領域を増幅する及び増幅レベルを検出するために使用することができる。以下の実験の部において本発明者らによって使用されているSYBR GREEN qPCRは、現在、本発明に従う分子シグネチャーによってFimHの発現レベルを検出するための好ましい増幅方法である。
本発明の方法を実行するために、Nanostrings社のnCounter技術(例えば、US 7,473,767に記載)などの多重化技術を使用することも可能である。
本明細書で開示される場合、用語「in vitro」及び「ex vivo」は、等価であり、その通常の宿主生物(例えば、動物又はヒト)から単離されている試料(例えば、便試料中に存在する細胞又は細胞集団)を使用して実施される試験又は実験を指す。そのような試料は、本発明の方法において、更に処理することなく直接使用することができる。或いは、細菌細胞を精製した後、そのヌクレオチド分画を本発明の方法において使用してもよい。これらの方法は、例えばチューブ、フラスコ、ウェル、エッペンドルフ等の実験材料において実践するために縮小することができる。これに対し、用語「in vivo」は、そのままの生きている生物において実施される試験を指す。
本明細書で使用される場合、用語「便試料」は、適切なレシピエントにおいて排便後に非侵襲性に収集されているそのままの便試料を示す。前記レシピエントは、清潔で、好ましくは如何なる混入物質(細菌、材料、ウイルス等)も含まない。EP 1 371 964、EP 1 986 006、又はFR1456674に記載されるものなどの、特定のレシピエント及びプロトコールをこの目的のために使用することができる。
この試料から特定の細胞を除外、精製、又は抽出する必要はなく、未加工の試料に含有される全てのDNAを本発明の方法に使用することができる。
第1の好ましい実施形態では、細菌細胞のfimH表面レベルは、fimH遺伝子のDNAにおけるfimオペロン転写のOFFからONへのスイッチを測定することによって評価される。DNAは、好ましくは、MOBIO社、Qiagen社、又はZymo社によって提唱されるプロトコールなどの便利な市販の抽出プロトコールを使用することによって前記便試料から抽出される。注目すべきは、本発明の方法を縮小して実践するために、細菌DNA及び宿主DNAを物理的に分離する必要はない。
本発明は、より正確には、
a)便試料のヌクレオチド分画を単離する工程、
b)前記ヌクレオチド分画におけるfimオペロン転写のOFFからONへのスイッチをqPCRによって測定することによってfimH遺伝子の発現を検出する工程
を含む、対象の便試料におけるFimH発現プロテオバクテリアの存在を検出するための、又はその腸管に多量のFimH発現プロテオバクテリアを保有する対象を同定するためのin vitro方法に関する。
fimオペロン転写のOFFからONへのスイッチは、かなり以前に特徴付けされている(Klemm P.、1986)。しかしそれ以降、これは、分子識別子を発現するように操作されている変異体細胞又は系において研究されているに過ぎない(例えば、Zhang H.ら、2016を参照されたい)。この種の検出は、便試料などの天然の生物試料では可能ではない。天然に存在する細菌におけるfimオペロンのスイッチを検出するための当技術分野で提唱されている唯一の信頼できる手段は、細菌の表面でのFimHレクチンの発現を直接検出することであった。この検出は、最初に、試料(一般的に生検)から細菌を単離すること、次に、その数を増幅するためにそれらを培養すること、及び最後に抗FimH抗体を使用すること又はFimHアンタゴニストによる凝集試験を実施することが必要であった。しかし、これらの方法は時間がかかり、細菌細胞のex vivoでの拡大により、全く定量的ではなかった。その上、上記で言及したように、複数の細菌が同じ試料内で共存することから、それらは、FimH発現細菌の量が総細菌量と比較して非常に低い便試料に置き換えることができなかった。
これらの全ての不利益にもかかわらず、本発明者らは、対象の便試料におけるFimH発現細菌の量を評価することを可能にする定量的試験を何とか特定した。より正確には、本発明者らは、プロテオバクテリアの表面でのFimHレクチンの発現(凝集試験によって明らかとなる)と相関し、便試料において検出することができる分子シグネチャーを同定した。
この特定の実施形態では、この分子シグネチャーは、適切に選択した分子ツールを使用することによってfimSスイッチ機構を検出することに依存する。特にこれは、試料内のON及びOFF位置の相対量を検出するために、FimS、FimA、及びFimE領域内の特定の領域を標的とするプライマーを使用することを必要とする。同様に、FimSヌクレオチド配列におけるスイッチ領域に具体的にハイブリダイズするプローブを使用することができる。
FimE-FimS-FimA OFF位置は、配列番号13に示すヌクレオチド配列を有する。
FimE-FimS-FimA ON位置は、配列番号14に示すヌクレオチド配列を有する。
OFF位置のFimEヌクレオチド配列は、配列番号15の配列を有する。OFF位置のFimSヌクレオチド配列は、配列番号16の配列を有する。OFF位置のFimAヌクレオチド配列は、配列番号17の配列を有する。
ON位置のFimEヌクレオチド配列は、配列番号18の配列を有する。ON位置のFimSヌクレオチド配列は、配列番号19の配列を有する。ON位置のFimAヌクレオチド配列は、配列番号20の配列を有する。
FimS遺伝子内の「スイッチ領域」は、配列番号9及び配列番号10の配列を有する領域である。
配列番号11(ttggggcca)及び配列番号12(tggccccaa)のヌクレオチド領域はそれぞれ、配列番号27及び配列番号30に位置するFimS遺伝子に位置する逆方向反復領域に対応する。
好ましい実施形態では、本発明の方法におけるfimオペロン転写のOFFからONへのスイッチを測定する工程は、これらの特定の領域の1つ又は複数を標的化することによって、例えばこれらの領域の1つ又は複数を特異的に増幅する又はハイブリダイズするプライマー又はプローブを使用することによって実施される。
より詳しくは、以下のヌクレオチド領域を標的化することができる:
・ fimE遺伝子内で:配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、及び/又は配列番号26、
・ fimS遺伝子内で:配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、及び/又は配列番号31、
・ fimA遺伝子内で:配列番号32、及び/又は配列番号33。
配列番号15〜17(OFF位置)、配列番号18〜20(ON位置)、及び配列番号21〜配列番号33からなる群から選択される配列を有するヌクレオチド領域を部分的又は完全に増幅するプライマーは、本発明に包含される。
配列番号9及び/又は配列番号10の特異的「スイッチ領域」、又はより具体的には配列番号11(ttggggcca)及び/又は配列番号12(tggccccaa)の逆方向反復領域を含有する若しくはそれからなるヌクレオチド領域を部分的又は完全に増幅するプライマーもまた、本発明に包含される。
配列番号9及び/又は配列番号10の特異的「スイッチ領域」、又はより具体的には配列番号11(ttggggcca)及び/若しくは配列番号12(tggccccaa)の逆方向反復領域にハイブリダイズするプローブもまた、本発明に包含される。
特定の実施形態では、相同領域を標的化することができる。本発明の文脈では、「相同領域」は、その配列が、参照する基準核酸配列(例えば、配列番号9〜33)に対して、ある特定の改変、例えば特に欠失、切断、伸長、キメラ融合、及び/又は変異、特に点変異を有するヌクレオチド領域を指す。特定の実施形態では、これらの相同領域のヌクレオチド配列は、それらが参照する基準核酸配列(例えば、配列番号9〜33)と少なくとも80%、好ましくは90%又は95%同一性を共有する。
本発明の目的に関して、2つの核酸配列間の同一性のパーセンテージは、最適にアライメントさせた後に得られた、比較される2つの配列間で同一であるヌクレオチドのパーセンテージを指すことが意図され、このパーセンテージは、純粋に統計学的であり、2つの配列間の差は、無作為にその全長にわたって分布している。2つの核酸配列間の配列比較は従来、それらを最適にアライメントさせた後に、これらの配列を比較することによって行われ、前記比較は、配列類似性に関して局所領域を同定及び比較するために、セグメントによって又は「比較ウィンドウ」によって行われる。比較のための配列の最適なアライメントは、手作業で行うほか、Needleman及びWunsch(1970) [J. Mol. Biol. 48:443]のグローバルホモロジーアルゴリズムによって行うことができる。同一性のパーセンテージは、2つの配列間でヌクレオチドが同一である同一位置数を決定する工程、この同一位置数を位置の総数で除算する工程、及び得られた結果に100を乗算して、これらの2つの配列間の同一性のパーセンテージを得る工程によって計算される。例えば、サイトebi.ac.ukで入手可能なneedleのプログラムを使用してもよく、使用されるパラメータは、デフォルトで与えられるパラメータ(特に、パラメータについて「ギャップオープン」:10、及び「ギャップ伸長」:0.5;選択される行列は、例えばプログラムによって提唱される「BLOSUM 62」行列である)であり、比較される2つの配列間の同一性のパーセンテージを、プログラムによって直接計算する。
以下のqPCRプライマーが本発明者らによって試験されている(以下の実験の部も参照されたい):
これらのプライマーの相対的位置を図3に開示する。その上、それらの配列を、添付の配列表に適切なフォーマットで開示する。
より好ましい実施形態では、本発明の方法におけるfimオペロン転写のOFFからONへのスイッチを測定する工程は、配列番号1〜8のプライマーを使用して実施される。
更により好ましい実施形態では、FimHレクチンの発現を測定する工程は、試料中に含有されるヌクレオチド分画を、fimHオペロンのON及びOFF位置を強調する、配列番号1、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4のプライマーによって、又は配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8のプライマーによって増幅する工程によって実施される。2つのプライマー対[配列番号5;配列番号7]及び[配列番号6;配列番号8]、又は2つのプライマー対[配列番号1;配列番号3]及び[配列番号2;配列番号4]を、より具体的にはON位置を検出するために使用することができる。好ましくは、プライマー対[配列番号5;配列番号7]及び[配列番号6;配列番号8]を、fimHオペロンのON位置を検出するために使用する。より好ましくは、プライマー対[配列番号5;配列番号7]を、fimHオペロンのON位置を検出するために使用する。2つのプライマー対[配列番号5;配列番号8]及び[配列番号7;配列番号8]、又は2つのプライマー対[配列番号1;配列番号2]及び[配列番号3;配列番号4]を、より具体的にはOFF位置を検出するために使用することができる。好ましくは、プライマー対[配列番号5;配列番号8]及び[配列番号7;配列番号8]を、fimHオペロンのOFF位置を検出するために使用する。より好ましくは、プライマー対[配列番号5;配列番号8]を、fimHオペロンのOFF位置を検出するために使用する。
次に、これらのプライマー対について観察された増幅レベルを、試料中に含有される総DNAの量、又は総細菌量(宿主DNAの量を除く)、又は単にFimH発現細菌の量によって正規化することができる。これは、試料中に含有される細菌の絶対量を反映する細菌ハウスキーピング遺伝子を同時に増幅することによって、又はFimH遺伝子の保存された領域を使用することによって行うことができる。同様に、全ての結果をμLあたりのDNAコピー数で表記することによって、本発明のqPCRによって生成した結果を正規化することも可能である。
ON位置専用のプライマー対を使用することによって測定したfimオペロンの正規化増幅レベルが基準値より高い場合、fimオペロンはON位置にあり、このことは試料中に存在する細菌細胞の表面でのFimHの発現レベルが高いことを反映し、そのため、試験した対象は自身の腸管に多量のFimH発現細菌を保有し、従ってFimH遮断剤に対して感受性である。
OFF位置専用のプライマー対を使用することによって測定したfimオペロンの正規化増幅レベルが基準値より高い場合、fimオペロンはOFF位置にあり、このことは試料中に存在する細菌細胞の表面でのFimHの発現レベルが低いことを反映し、そのため、試験した対象は自身の腸管に少量のFimH発現細菌を保有し、従ってFimH遮断剤に対して無応答性である。
本明細書で使用される場合、用語「基準値」(又は「対照値」)は、多様な形態を取りうる特定の値又は既定の値を指す。これは、単一のカットオフ値、例えば中央値又は平均値でありうる。これは、あらゆる試料に個々に等しく応用可能な単一の数でありうるか、又は試料の特定のタイプ若しくは患者の亜集団に応じて変化しうる。この基準値は、その表面にFimHレクチンを発現しないことが公知である基準細菌(例えば、K12又はAAEC191A株の細菌)を使用することによって、当業者によって容易に決定することができる。これはまた、健康な対象の便試料においても決定することができる。K12細菌は、当技術分野において、例えばBoudeauら、2001、又はO'Brienら、2016に記載されている。
便試料を使用する場合、ON位置の正規化増幅レベルの典型的な基準値は、1%、2%、3%、4% 5%、10%、15%である。
便試料を使用する場合、OFF位置の正規化増幅レベルの典型的な基準値は、1%、2%、3%、4% 5%、10%、15%である。
更に進めると、本発明者らは、これらの試料に含有される細菌におけるFimSの表面レベルを評価するために、試料中に提供されるON/OFF比又はON/(ON+OFF)比を使用することも可能であることを特定した。
従って、本発明者らは、細菌試料並びに便試料におけるFimSのON/OFF比又はON/(ON+OFF)比の評価を可能にする特定のプライマー系を提唱する。プライマー系は以下の通りである:OFF位置に関して[配列番号3;配列番号4]又は[配列番号7;配列番号8]、及びON位置に関して[配列番号1;配列番号3]又は[配列番号5;配列番号7]。2つのプライマー対[配列番号5;配列番号7]及び[配列番号6;配列番号8]、又は2つのプライマー対[配列番号1;配列番号3]及び[配列番号2;配列番号4]を、より具体的にはON位置を検出するために使用することができる。好ましくは、プライマー対[配列番号5;配列番号7]及び[配列番号6;配列番号8]を、ON位置を検出するために使用する。より好ましくは、プライマー対[配列番号5;配列番号7]を、ON位置を検出するために使用する。2つのプライマー対[配列番号5;配列番号8]及び[配列番号7;配列番号8]、又は2つのプライマー対[配列番号1;配列番号2]及び[配列番号3;配列番号4]を、より具体的にはOFF位置を検出するために使用することができる。
適切に組み合わせると、これらのプライマー対は、fimオペロンのON/OFF比を決定することを可能にする。基準値より高いON/OFF比又はON/(ON+OFF)比は、前記細菌細胞の表面でのFimHの発現レベルが高いことを厳密に反映し、従って、試料中に存在する細菌細胞がFimH遮断剤を凝集する能力を反映する。
以下の実験の部に示すように、FimH発現細菌、例えばLF82 AIECは、30%高い典型的なON/(ON+OFF)比を有するが、非凝集細胞は、5%低い典型的なON/(ON+OFF)比を有する。従って、単離株に関連する基準値は約15%でありうる。
便試料を使用する場合、ON/(ON+OFF)比の典型的な基準値は、1%、2%、3%、4%、5%、10%、及び15%である。
便試料を使用する場合、ON/OFF比の典型的な基準値は、1%、2%、3%、4%、5%、10%、及び15%である。
より好ましい実施形態では、従って、本発明の方法におけるfimオペロン転写のOFFからONへのスイッチを測定する工程は、これらの特定のプライマー対を使用して上記で言及した特定の領域を標的化することによって実施される。
好ましい実施形態では、OFF位置の増幅レベルは、プライマー対[配列番号3;配列番号4]を使用して検出され、及びON位置の増幅レベルは、プライマー対[配列番号2;配列番号4]を使用して検出される。
好ましい実施形態では、OFF位置の増幅レベルは、プライマー対[配列番号3;配列番号4]を使用して検出され、及びON位置の増幅レベルは、プライマー対[配列番号1;配列番号3]を使用して検出される。
好ましい実施形態では、OFF位置の増幅レベルは、プライマー対[配列番号1;配列番号2]を使用して検出され、及びON位置の増幅レベルは、プライマー対[配列番号1;配列番号3]を使用して検出される。
好ましい実施形態では、OFF位置の増幅レベルは、プライマー対[配列番号1;配列番号2]を使用して検出され、及びON位置の増幅レベルは、プライマー対[配列番号2;配列番号4]を使用して検出される。
好ましい実施形態では、OFF位置の増幅レベルは、プライマー対[配列番号7;配列番号8]を使用して検出され、及びON位置の増幅レベルは、プライマー対[配列番号6;配列番号8]を使用して検出される。
好ましい実施形態では、OFF位置の増幅レベルは、プライマー対[配列番号7;配列番号8]を使用して検出され、及びON位置の増幅レベルは、プライマー対[配列番号5;配列番号7]を使用して検出される。
好ましい実施形態では、OFF位置の増幅レベルは、プライマー対[配列番号5;配列番号8]を使用して検出され、及びON位置の増幅レベルは、プライマー対[配列番号5;配列番号7]を使用して検出される。
より好ましい実施形態では、OFF位置の増幅レベルは、プライマー対[配列番号5;配列番号8]を使用して検出され、及びON位置の増幅レベルは、プライマー対[配列番号6;配列番号8]を使用して検出される。
前記基準値より高いONの正規化増幅レベル、又はON/OFF比、又はON/(ON+OFF)比は、それが臨床利益を有する確率が高い患者(細菌細胞が、FimH遮断剤によって遮断されるFimHレクチンを発現することから)と、前記処置から利益を得ない患者(患者が、その挙動が前記処置に対して感受性である細菌を保有しないことから)との識別を可能にすることから、FimH遮断剤処置の予測値である。
より正確には、上記の手段によって計算されるONの正規化増幅レベル、又はON/OFF、又はON/(ON+OFF)比が、前記基準値より高い場合、試験した試料がかなりの量のFimH発現細菌を含有する、及び試料を収集した患者がFimH遮断剤による処置から利益を得ると結論することができる。
これに対し、ONの正規化増幅レベル又はON/OFF又はON/(ON+OFF)比が、前記基準値より低い場合、試験した試料が少量のFimH発現細菌を含有する、及び試料を収集した患者がFimH遮断剤による処置から利益を得るには非常に少ないこれらの細菌を保有すると結論することができる。健康な対象はこのカテゴリーに入る。
第2の好ましい実施形態では、細菌細胞のfimHレクチン表面レベルを、対象から収集した生物試料のヌクレオチド分画におけるfimH遺伝子の存在量を測定することによって評価する。
実際に、本発明者らは、対象の便試料において測定したfimH遺伝子のコピー数が、FimH遮断剤EB8018を凝集し、従ってその表面にレクチンを発現する腸内細菌細胞(生検から単離された)の量と相関することを示している。従って、対象の便試料におけるfimH遺伝子の存在量を単に測定することによって、前記対象の腸管に存在する細菌がその表面に多量のFimHレクチンを有するか否か、及びどの程度有するか、従ってFimH遮断剤による処置に対して感受性であるか否かを同定することが可能である。
AIECが対照と比較してCD患者の回腸粘膜において有意に増加することが知られていたが、便において検出されたfimH遺伝子の存在量は、IBDに罹患している患者では増強されないと考えられたことから、この結果は予想外である。
以下の実施例6(及び図7)は、配列番号34のfimH遺伝子について実施したqPCRアッセイによって、当業者がfimH発現細菌を保有する対象を同定及び/又は識別することを示す。
従って、例えば、配列番号35〜36、配列番号37〜38、配列番号39〜40のプライマー対を使用することによって、対象の腸管におけるFimH発現プロテオバクテリアの存在を高い信頼性で検出することが可能である。
例えば、配列番号41〜43のプローブを使用することによって、対象の腸管におけるFimH発現プロテオバクテリアの存在を高い信頼性で検出することも可能である。
「遺伝子存在量」とは、本明細書において、試験した遺伝子の絶対量又は相対量を意味する。遺伝子の「絶対量」(又は「絶対存在量」)は、試験した試料の規定の体積中の前記遺伝子の総コピー数を示すが、遺伝子の「相対量」(又は相対存在量)は、遺伝子の全量と比較した前記遺伝子の総コピー数、又は或いは単一の基準遺伝子若しくは好ましくは試験した試料中に存在する基準遺伝子の組合せの量と比較した前記遺伝子の総コピー数を示す。遍在する遺伝子、例えば、DNAポリメラーゼのような生物の生存にとって必須の遺伝子、又はグルコース代謝に関係するタンパク質をコードする遺伝子は、メタゲノム研究における基準遺伝子の良好な候補である。
本発明の方法は、好ましくはnanostring又はqPCR技術によって従来提供される遺伝子の絶対量、例えばμLあたりの総コピー数の測定を必要とする。
適切なプライマー対を使用することによって測定したfimH遺伝子の存在量が基準値より高い場合、試験した対象は自身の腸管に多量のFimH発現細菌を保有し、従ってFimH遮断剤に対して感受性があると結論することができる。
適切なプライマー対を使用することによって測定したfimH遺伝子の存在量が基準値より低い場合、試験した対象は自身の腸管に少量のFimH発現細菌を保有し、従ってFimH遮断剤に対する感受性が不良である(又は無応答性ですらある)と結論することができる。
これらのプライマー対によって測定した存在量は通常、試料中に含有される総DNA量によって、又は総細菌量(宿主DNAの量を除く)によって正規化される。これは、試料中に含有される細菌の絶対量を反映する細菌ハウスキーピング遺伝子を同時に増幅することによって行うことができる。
便試料を使用する場合、FimH遺伝子の存在量の典型的な基準値は、1%、2%、3%、4% 5%、10%、15%である。
第3の好ましい実施形態では、「FimS ON/FimH」と呼ばれる比を計算するために、上記で開示した2つの分子マーカーを組み合わせる。この比は、本発明者らによってその腸管に多量のAIECを保有する対象を検出するために非常に貴重であることが見出されている。
この比を計算するために、2つの分子マーカー「FimS ON」及び「FimH」を上記で開示したように、すなわちスイッチ領域、又は「ON」領域、又は配列番号34のfimH遺伝子のいずれかとハイブリダイズする特定のプライマーの組を使用することによって検出及び定量する。次に、シグナルを正規化し、比を計算して基準値と比較する。
前記基準値は、例えば少なくとも2人の健康な対象の便試料において測定した配列番号34のfimH遺伝子の平均存在量である。
比FimS ON/FimHがこの基準値より高い場合、試験した対象は、自身の腸管に多量のFimH発現細菌を保有し、従ってFimH遮断剤に対して感受性であると結論することができる。本発明の方法により、今やFimH遮断剤処置から有効に(又はより有効に)利益を得る患者を容易に同定することが可能である。言い換えれば、FimH遮断剤を投与した場合の対象の治療応答を評価又は予測することが可能である。
本明細書で使用される場合、用語「FimH遮断剤」(又は「FimH阻害剤」又は「FimHアンタゴニスト」)は、腸管の上皮細胞上でFimHレクチンとグリコシル化タンパク質のマンノース残基との相互作用を妨害することができる任意の化合物を示す。この相互作用が弱くなるか又はなくなると、処置した患者における腸粘膜の細菌侵襲性が弱くなるか又はなくなる。その結果、炎症反応のカスケードが妨げられ又は防止され、炎症疾患が緩和される。
この妨害活性を有するいくつかの効率的なマンノース誘導体が記載されている。それらは全て、本明細書に包含される:
- ヘプチルマンノース(HM)は、最も効率的なFimHアンタゴニスト及び強力なin vitro AIEC接着阻害剤の1つである(Bouckaertら、2005、Bouckaertら、2013)。HMは一般的に、抗接着アッセイにおいて基準として使用されているが、in vivoでは効果を有しないことが証明されている。実際に、マウス膀胱炎モデルにおいて有意な細菌負荷の低減を観察するためにはミリモル濃度が必要であり(Wellensら、2008)、CEABAC 10クローン病モデルではAIECに関して効果を有しなかった(Sivignon 2015)。
- チアゾリルマンノシド(TazMans)は、クローン病を有する患者の腸管の炎症に関係する大腸菌株に関して強い抗接着特性を有する(Brumentら、2013;Chalopin Tら、2013及び2015)。
- Mydock-McGraneら、2016は、2005年から2015年の間に公開されている代替のマンノースに基づく、いくつかのFimHアンタゴニストの一般構造をその表1に開示した。それらの全てが包含される。
- Totsika M.ら、2013に開示されるZFH-04269、及びCusumano CKら、2011に開示される全ての化合物。
- WO2013/134415(VERTEX社)、WO 2014/055474(VERTEX社)に開示されるFimH阻害剤。
- WO 2011/050323(WASHINGTON UNIVERSITY)、WO 2012/109263(WASHINGTON UNIVERSITY)、WO 2014/194270(WASHINGTON UNIVERSITY)に開示されるFimH阻害剤。
- WO 2012/164074(UNIVERSITAET BASEL)及びWO 2011/073112(UNIVERSITAET BASEL)に開示されるFimH阻害剤。
CD及びUCなどのAIECに基づく病態を処置するために、他のマンノース誘導体が提唱されている。それらの1つは、式(I)の化合物である:
(1-(2,7-ビス(((2R,3S,4R,5S,6R)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)エチニル)スピロ[フルオレン-9,4'-ピペリジン]-1'-イル)エタン-1-オン)は、現在臨床試験中である。これは、後にEB8018と呼ばれる。
この化合物は、化学的に不活性なリンカーによって共に保持される2つのマンノシド残基を含む。これらのマンノシドは、グリコシル化タンパク質において見出される残基などのマンノース残基と結合に関して効率的に競合する。更に、その「二価」の性質のために、この化合物は、1つの細菌細胞上のFimH受容体に結合することができ、同時に異なる細菌細胞上の別のFimHに結合することができ、それによって幾つかの細菌細胞が共に連結される(Moorら、2017)。これによって、細菌の「凝塊」が起こり、これは腸管内腔からの細菌の選択的除去を容易にすることが示されている(Spauldingら、2017)。除去を容易にすることに加えて、凝塊プロセスは、FimH発現細菌の粘膜層及び腸上皮への侵入を有意に遅らせるか又は防止し、それによってクローン病を有する患者の腸管における炎症に寄与するTLR4、CEACAM6、及びGP2などの受容体との相互作用を防止しうる。
非マンノシド化合物もまた、強力なFimHアンタゴニストとして開示されている。それらは、例えば、WO 2016/183501(WASHINGTON UNIVERSITY)及びWO 2014/173904(VLAAMS INTERUNIVERSITAIR INSTITUUT VOOR BIOTECHNOLOGIE VZW)に開示されている。それらもまた、本出願に包含される。
FimH発現プロテオバクテリアのFimHレクチンと上皮細胞との相互作用を遮断することによって、上記で言及した化合物は、消化管及び/又は尿路粘膜の上皮細胞に対するその接着を阻害し、回腸及び結腸の両方へのその後の侵襲を阻害する。
従って別の態様では、本発明は、以前に開示された方法の工程、すなわち:
a)前記対象から生物試料のヌクレオチド分画を単離する工程,
b)前記ヌクレオチド分画におけるfimH遺伝子の発現をqPCRによって検出する工程
を含む、対象が、FimH遮断剤による処置から利益を得るか否かを予測するためのin vitro方法に関する。
以下の実験の部に示すように、前記方法の工程b)は、好ましくはfimH遺伝子の存在量を検出する工程、及び/又は上記で開示した方法のいずれかによって、前記試料のDNAにおいてfimオペロン転写のOFFからONへのスイッチを検出する工程によって実施される。前記生物試料は、好ましくは便試料である。
本発明の検出方法に関して上記で記載した実施形態は全て、本発明の方法を予測するために必要な変更を加えて適用される。
好ましい実施形態では、本発明は、
a)対象から便試料のヌクレオチド分画を単離する工程、
b)前記ヌクレオチド分画におけるfimオペロン転写のOFFからONへのスイッチをqPCRによって測定することによって、前記ヌクレオチド分画におけるfimH遺伝子の発現を検出する工程、
c)ON位置の増幅が基準値より高い場合、上記で説明したように、前記対象がFimH遮断剤による処置から利益を得ることを予測する工程
を含む、対象におけるFimH遮断剤に対する治療応答を予測するためのin vitro方法に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、
a)対象から便試料のヌクレオチド分画を単離する工程、
b)前記ヌクレオチド分画におけるfimH遺伝子の存在量をqPCRによって測定することによって、前記ヌクレオチド分画におけるfimH遺伝子の発現を検出する工程、
c)前記ヌクレオチド分画におけるfimH遺伝子の存在量が基準値より高い場合、上記で説明したように、前記対象がFimH遮断剤による処置から利益を得ることを予測する工程
を含む、対象におけるFimH遮断剤に対する治療応答を予測するためのin vitro方法に関する。
本発明の検出方法に関して上記で開示した全ての実施形態及び定義は、本予測方法に適用される。
より好ましい実施形態では、前記工程b)は、前記便試料におけるfimオペロン転写のON位置の正規化増幅レベル、又はON/OFF比、又はON/(OFF+ON)比を測定する工程、及びそれらを基準値と比較する工程で構成され、前記基準値は、好ましくは、健康な対象の便におけるfimオペロン転写のOFFからONへのスイッチを測定する工程によって得られる。
より好ましい実施形態では、前記工程b)は、前記便試料におけるfimH遺伝子のON位置の正規化増幅レベル及び存在量の両方を測定する工程、上記で説明したように比「ON/fimH」を計算する工程、及びそれを基準値と比較する工程で構成され、前記基準値は、好ましくは、健康な対象の便におけるfimオペロン転写のOFFからONへのスイッチ及びfimH存在量を測定した後に得られる。
言い換えれば、本発明の分子シグネチャーは、FimH遮断剤処置に対して無応答性であるか又は感受性であるかのいずれかである患者の亜群の同定を可能にする。
従って別の態様では、本発明は、本発明の検出方法の工程を含む、FimH遮断剤による処置に対して感受性であるか又は無応答性である患者のサブセットを同定するためのin vitroスクリーニング方法に関する。
前記対象の便試料において測定したfimオペロンのONの正規化増幅レベル、又はON/OFF比、又はON/(OFF+ON)比が、前記基準値より高い場合、前記対象は、FimH遮断剤による処置に対して感受性であると同定される。逆に、前記対象の便試料において測定したfimオペロンのONの正規化増幅レベル、又はON/OFF比、又はON/(ON+OFF)比が、前記基準値より低い場合、前記対象は、FimH遮断剤による処置に対して感受性であると同定される。
適切なプライマー対を使用することによって測定したfimH遺伝子の存在量が、基準値より高い場合、試験した対象は、自身の腸管に多量のFimH発現細菌を保有し、従ってFimH遮断剤に対して感受性であると結論することができる。
比FimS ON/FimHが基準値より高い場合、試験した対象は、自身の腸管に多量のFimH発現細菌を保有し、従ってFimH遮断剤に対して感受性であると結論することができる。本発明の検出方法に関して開示された全ての実施形態及び定義は、本スクリーニング方法に適用される。
本発明の分子シグネチャーを使用して、そのようなFimH遮断剤の投薬レジメンを調節し、多量のFimH発現プロテオバクテリアを保有する患者の特定のサブセットに関して適合させた処置を設計することができる。本発明の検出方法は、実際に、如何なる結腸鏡解析又は生検分析も行うことなく、患者が自身の腸管に少量又は多量のFimH発現プロテオバクテリアを保有するか否かを明らかにする。この情報を使用して、FimH遮断剤を投与する前に、本発明の分子シグネチャーを検出するために患者の便試料を予めスクリーニングすることによって、この情報に基づいて自身の処置を個別化することができる。
別の態様では、本発明は、
a)対象から生物試料、例えば便試料のヌクレオチド分画を単離する工程、
b)前記ヌクレオチド分画におけるfimH遺伝子の発現を、好ましくは前記ヌクレオチド分画におけるfimオペロン転写のOFFからONへのスイッチをqPCRによって測定することによって検出する工程、
c)その腸管に多量のFimH発現プロテオバクテリアを保有する対象に限ってFimH遮断剤を投与する工程
を含む、FimHプロテオバクテリアによって引き起こされる疾患に罹患している対象を処置するための方法に関する。
前記対象は、好ましくはfimオペロンのONの正規化増幅レベル、若しくはON/OFF比、若しくはON/(ON+OFF)比が基準値より高い対象であるか、又は適切なプライマー対を使用することによって測定したfimH遺伝子の存在量が基準値より高い対象であるか、又は比FimS ON/FimHが基準値より高い対象である。
この場合、本発明は、その腸管に多量のFimH発現プロテオバクテリアを保有する対象、好ましくはfimオペロンのONの正規化増幅レベル、若しくはON/OFF比、若しくはON/(ON+OFF)比が基準値より高い対象、又は適切なプライマー対を使用することによって測定したfimH遺伝子の存在量が基準値より高い対象、又は比FimS ON/FimHが基準値より高い対象の処置に使用するためのFimH遮断剤に関する。
前記対象の試料中で測定したfimオペロンのONの正規化増幅レベル、若しくはON/OFF比、若しくはON/(ON+OFF)比、又はfimH遺伝子の存在量、又はFimS ON/FimH比が、それぞれの基準値より低い場合、FimH遮断剤の前記対象への投与は、役に立たない。この場合、他の処置を投与すべきである。
他のIBD処置は、例えば:アザチオプリン、メサラミン、アバタセプト、アダリムマブ、アナキンラ、セルトリズマブ、エタネルセプト、ゴリムマブ、インフリキシマブ、リツキシマブ、トシリズマブ、ナタリズマブ、コルチコステロイド、シクロスポリン、メトトレキサート、タクロリムス、抗JAK(トファシチニブ)、抗インテグリン(ベドリズマブ、rhuMAbベータ7、MAdCAM-1アンタゴニスト)、又は抗IL12/IL23(ウステキヌマブ、ABT874)からなる群から選択される。
本発明の検出方法に関して開示された全ての実施形態及び定義は、本処置方法に適用される。好ましい生物試料は便試料である。
言い換えれば、本発明は、前記処置に対して感受性である、すなわち、FimH発現プロテオバクテリアが本発明の検出方法に従って検出される対象のサブセット(例えば、前記対象の便試料において測定したON/OFF比若しくはON/(ON+OFF)比、又はfimH遺伝子の存在量、又はON/FimH比が基準値より高い場合)を処置するために意図される薬物を調製するためのFimH遮断剤の使用に関する。FimH遮断剤は、前記処置に対して感受性であるFimHプロテオバクテリアによって引き起こされる疾患に罹患している対象のサブセット、すなわち、FimH発現プロテオバクテリアが本発明の検出方法に従って検出される対象のサブセット(例えば、前記対象の便試料において測定したfimオペロンのON/OFF比、若しくはON/(ON+OFF)比、又はfimH遺伝子の存在量、又はON/FimH比が基準値より高い場合)を処置するために使用することができる。
対象は、好ましくは、尿路感染症(例えば、慢性膀胱炎)又はIBD(好ましくはクローン病)に罹患している哺乳動物及びヒトであり、これらの疾患は、少なくとも部分的にビルレントなFimH発現プロテオバクテリアによって引き起こされることは公知である(Totsikaら、2013;Mydock-McGraneら、2016)。
本発明の検出方法に関して開示された全ての実施形態及び定義は、これらの処置方法に適用される。
本発明の分子シグネチャーの別の興味深い態様は、対象の便試料に存在するプロテオバクテリアの潜在的ビルレンスを予測することである。この情報に基づいて、その病因がビルレントなFimH発現プロテオバクテリアを伴う疾患を診断すること、及びこれらの疾患の活動度をモニターすることが可能である。
病因が、ビルレントなFimH発現プロテオバクテリアを伴う疾患は、例えば:尿路感染症、例えば慢性膀胱炎及びIBD(例えば、成人及び小児におけるUC又はCD)である。これらの疾患を、本明細書において「FimHプロテオバクテリア関連疾患」と呼ぶ。これはまた、外科的に処置されている患者におけるクローン病の術後再発も包含する。
別の態様では、本発明は、上記で公開した本発明の検出方法によって、対象の便試料におけるFimH発現細菌の存在を検出することによって、対象におけるFimHプロテオバクテリア関連疾患を診断するためのin vitro方法に関する。
別の態様では、本発明は、上記で公開した本発明の検出方法によって、対象の便試料におけるFimH発現細菌の存在を検出することによって、対象におけるFimHプロテオバクテリア関連疾患の進展をモニターするためのin vitro方法に関する。
前記対象の便試料において測定したfimオペロンのONの正規化増幅レベル、又はON/OFF比、又はON/(ON+OFF)比が、前記基準値より高い場合、前記対象は、ビルレント状態にあるFimHプロテオバクテリア関連疾患に罹患していると診断される。逆に、前記対象の便試料において測定したfimオペロンのONの正規化増幅レベル、又はON/OFF比、又はON/(ON+OFF)比が、前記基準値より低い場合、前記対象は、健康であるか、又は少なくともその腸管にFimH発現プロテオバクテリアを保有しないと同定され、従ってIBDなどのFimHプロテオバクテリア関連疾患に罹患している可能性は低い。
適切なプライマー対を使用することによって測定したfimH遺伝子の存在量が基準値より高い場合、試験した対象は、ビルレント状態にあるFimHプロテオバクテリア関連疾患に罹患していると診断されると結論することができる。
比FimS ON/FimHが基準値より高い場合、試験した対象は、ビルレント状態にあるFimHプロテオバクテリア関連疾患に罹患していると診断されると結論することができる。これらの結果は、本発明者らによって実験によって確認されている(実施例7及び図10を参照されたい)。
別の態様では、本発明は、処置の投与の前後で以前に記載した治療応答を予測する工程を含む、FimHプロテオバクテリア関連疾患に罹患している対象における処置の治療効率を試験するためのin vitro方法に関する。
前記処置の前に得た試料において測定したfimオペロンのONの正規化増幅レベル、若しくはON/OFF比、若しくはON/(ON+OFF)比、又はfimH遺伝子の存在量、又はON/FimH比がそれぞれ、前記処置の後に得た試料において測定したfimオペロンのONの正規化増幅レベル、若しくはON/OFF比、若しくはON/(ON+OFF)比、又はfimH遺伝子の存在量、又はON/FimH比より高い場合、前記処置は、前記対象において効率的であると結論することができる。
任意の処置(従来の抗生物質でさえも)の効率を、本方法によって評価することができる。好ましい実施形態では、前記処置は、上記で開示したFimH遮断剤の1つである。
本発明の検出方法に関して開示された全ての実施形態及び定義は、これらの方法に適用される。
特に、上記で言及したプライマー系を使用することによって、配列番号15〜20を有するFimS、FimA、及びFimE領域、又はその相同領域、好ましくは配列番号21〜33を有する領域内の特定の領域を特異的に増幅するプライマーを使用することが可能である。別の態様では、本発明は、配列番号15〜20を有するFimS、FimA、及びFimE領域、又は配列番号21〜33を有する領域内のヌクレオチド領域を特異的に増幅するヌクレオチドプライマーに関する。本発明はまた、前記プライマーを含有するキットにも関する。
これらのヌクレオチドプライマーは、好ましくは、配列番号15〜33の相補的配列の少なくとも1つの断片と、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、又は少なくとも95%の同一性を有する。
より正確には、本発明は、fimオペロンのON位置の増幅レベルを測定するために使用することができる以下のプライマー対の少なくとも1つを含有するキットに関する:
- [配列番号1;配列番号3]、
- [配列番号2;配列番号4]、
- [配列番号5;配列番号7]、
- [配列番号6;配列番号8]。
更に、前記キットは、fimオペロンのOFF位置の増幅レベルを測定するために使用することができる以下のプライマー対の少なくとも1つを含有しうる:
- [配列番号1;配列番号2]、
- [配列番号3;配列番号4]、
- [配列番号5;配列番号8]、
- [配列番号7;配列番号8]。
更に、前記キットは、fimH遺伝子の存在量を測定するために使用することができる以下のプライマー対の少なくとも1つを含有しうる:
- [配列番号35;配列番号36]、
- [配列番号37;配列番号38]、
- [配列番号39;配列番号40]。
好ましくは、キットは、少なくともプライマー対[配列番号5;配列番号7]及び[配列番号6;配列番号8]を含有する。より好ましくは、キットは、プライマー対[配列番号5;配列番号7]を含有する。より好ましくは、キットは、任意選択でプライマー対[配列番号5;配列番号7]と組み合わせた少なくともプライマー対[配列番号35;配列番号36]を含有する。
本発明はまた、以下の配列を有するヌクレオチドプライマーそのものにも関する:配列番号1(p1)、配列番号2(p2)、配列番号3(p3)、配列番号4(p4)、配列番号Z5(p5)、配列番号6(p6)、配列番号7(p7)、配列番号8(p8)、配列番号35、配列番号36。
好ましい実施形態では、配列番号1〜8及び/又は配列番号35〜40のプライマーを使用して、本発明の方法のいずれかを実行する前に試料をスクリーニングすることができる。
別の態様では、本発明は、便試料におけるfimオペロンのON位置の増幅レベル、又はON/OFF比、又はON/(ON+OFF)比を測定するための再現性がありかつ信頼できるツールとしての、本発明者らによって同定された配列番号1〜8のプライマー対p1〜p8に関する。本発明はまた、前記プライマー対を含有するキットにも関する。fimオペロンのOFF及びON位置を検出するための前記プライマー間の任意の適切な組合せが、本明細書において包含される。
別の態様では、本発明は、便試料におけるfimH遺伝子の存在量を測定するための再現性がありかつ信頼できるツールとしての、本発明者らによって同定された配列番号35〜40のプライマー対に関する。本発明はまた、前記プライマー対を含有するキットにも関する。前記プライマー間の任意の適切な組合せ、並びにfimオペロンのOFF及びON位置を検出するためのプライマーが、本明細書において包含される。
その上、本発明は、以下のヌクレオチド領域の少なくとも1つを標的とするプローブを含有する(又は有する)キット(又はマイクロアレイ)に関する。
- 配列番号9(小文字は公知の多型を表す):
TTAACTaATTGATAATAAAGTTAAAAAACAAATAAATACAAGACAATTGGGGCCAAACTGTCtATATCATAAATAAGTTACGTATTTTTTCTCAAGCA
- 配列番号10(小文字は公知の多型を表す):
AGTCAAACTCGTTGACAAAACAAAGTGTACAGAACGACTGCCCATGTCGATTTAGAAATAgTTTTTTTAAAGGAAAGCAGCATGAAA
配列番号9及び配列番号10は、fimS遺伝子のスイッチ領域に対応する。従って、これらのヌクレオチド領域にハイブリダイズするプローブは、fimオペロンのON位置を検出するために有用でありうる。
好ましい実施形態では、本発明のプローブは、配列番号11及び/又は配列番号12を有するFimS遺伝子に位置するIRR(逆方向反復領域)にハイブリダイズする。
一実施形態では、本発明は、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び/又は配列番号12のヌクレオチド領域に特異的にハイブリダイズするプローブに関する。
別の実施形態では、本発明は、配列番号34のfimH遺伝子のヌクレオチド領域に特異的にハイブリダイズするプローブ、特に、配列番号41、配列番号42、及び配列番号43のプローブに関する。
特異的ハイブリダイゼーションは、好ましくは高ストリンジェンシー条件下、すなわち、温度及びイオン強度条件が、2つの相補的DNA断片間のハイブリダイゼーションが維持されるように選択される条件下で観察される。例として、高ストリンジェンシー条件は、以下の通りでありうる。DNA-DNA又はDNA-RNAハイブリダイゼーションは、2工程で実行される:(1)5*SSC(1*SSCは0.15M NaCl+0.015Mクエン酸ナトリウム溶液に対応する)を含有するリン酸緩衝液(20mM、pH7.5)、50%ホルムアミド、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、10*デンハルト溶液、5%硫酸デキストラン、及び1%サケ精子DNA中、42℃で3時間のプレハイブリダイゼーション;(2)プローブのサイズに応じた温度(すなわち、サイズ>100のヌクレオチドのプローブでは42℃)で20時間の実際のハイブリダイゼーションの後に、2*SSC+2%SDS中、20℃で20分間の洗浄を2回行った後、0.1*SSC+0.1%SDS中、20℃で20分間の洗浄を1回行う。最終の洗浄は、サイズ>100ヌクレオチドのプローブに関して0.1*SSC+0.1%SDS中、60℃で30分間行う。既定のサイズのポリヌクレオチドに関して上記で記載した高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、当技術分野で周知であるように、より大きい又はより小さいサイズのオリゴヌクレオチドに関して当業者によって調節される。
本発明はまた、前記プローブを有する核酸マイクロアレイにも関する。本発明に従って、「核酸マイクロアレイ」は、マイクロチップ、スライドガラス、又はミクロスフェアサイズのビーズでありうる基質に結合させた異なる核酸プローブからなる。マイクロチップは、ポリマー、プラスチック、樹脂、多糖類、シリカ、又はシリカに基づく材料、炭素、金属、無機ガラス、又はニトロセルロースで構成されうる。プローブは、cDNA(「cDNAマイクロアレイ」)、又はオリゴヌクレオチド(「オリゴクレオチドマイクロアレイ」)などの核酸でありえて、オリゴヌクレオチドは長さが約25〜約60塩基対以下でありうる。前記核酸マイクロアレイは、追加の遺伝子に対して特異的な追加の核酸、及び任意選択で1つ又は複数の基準遺伝子を含みうるが、好ましくは、最大で500、400、300、200、好ましくは100、90、80、70、より好ましくは60、50、45、40、35、30、25、20、15、10、又は更にそれより少ない(例として、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個の)別個の核酸からなる。
前記キット(又はマイクロアレイ)は、追加の遺伝子又は1つ若しくは複数の基準遺伝子の遺伝子産物に対して特異的な追加の試薬(例えば、プライマー、プローブ、又は抗体)を含みうる。本明細書における基準遺伝子は、シグネチャーに関して遺伝子レベルを正規化するために使用することができる、細菌において遍在する発現レベル及び/又は存在量を有する遺伝子を示す。前記キットはまた、本発明の方法を縮小して実践するためにキットを使用する方法に関する説明書も含有しうる。
本発明者らは、対象の便試料においてFimH陽性発現プロテオバクテリアの存在を検出するために、又は対象がFimH遮断剤による処置から利益を得るか否かを予測するために、又はFimHプロテオバクテリア関連疾患に罹患している対象における処置の治療効率を試験するために、これらのキット、プライマー、及び/又はプローブ(又は前記プローブを有するマイクロアレイ)を使用することを提唱する。同様に、上記で開示した処置方法、診断方法、及びモニタリング方法において、これらのキット又はマイクロアレイを使用することも可能である。
I.本発明のqPCRアッセイの説明
本発明者らは、補完的診断として使用されるFimHスイッチ機構に基づいてqPCRアッセイを開発した。
凝集試験を、最初に全ての利用可能な単離株について実施し、後により複雑な試料、例えば細菌株の混合物を含有しうるCD患者の生検試料について実施した。シークエンシングデータを使用して、単離株におけるFimS位置を決定し、一方、FimS qPCRアッセイを、CD患者の便試料から抽出したDNAについて実施した。最終的にqPCR試験が診断試験として有用であるためには、便試料から抽出したDNAについて実施したアッセイが、患者の粘膜生検について実施した凝集試験と相関しなければならない。
以下の試験を実行した:
1.FimSスイッチ機構とEB8018に対する凝集との間の連鎖を実験によって確認する、
2.便試料においてFimSスイッチ機構を評価するqPCRに基づくアッセイFimSスイッチ機構を開発する。
CD患者の便におけるこのqPCRアッセイの成績を、EB8018に対する回腸大腸菌の凝集との相関に関して評価する。
I.I.材料及び方法
1.便の収集及びDNA抽出
CD患者の探索的長期的研究CrohnOmeter(Enterome社が依頼)を、2012年7月から2014年12月の間に、St. Antoine及びSt. Louis Hospitals(Paris、France)、並びにFrench patient association l'Association Francois Aupetit(AFA、Paris、France)において実施した。本試験に自発的に参加した対象98人の適格性を評価した。組み入れ基準は、年齢≧18歳、内視鏡、放射線、及び/又は組織学特色に従うCDの確立された診断であった。主な除外基準は、組み入れ前の8週間における抗生物質の使用、腸切除の既往、及び組み入れ前の3カ月間における結腸鏡鏡のための腸洗浄であった。患者は、約9カ月間長期的に追跡され、自宅で1カ月に1回収集した便試料を提供した。
便試料は、CD患者が自宅で、保存緩衝液9mlを満たしたSarstedtチューブ(Numbrecht、Germany)に収集した。受領後、チューブを-80℃で保存した。分割及びDNA単離は、Eurofins/GATC Biotech社(Konstanz、Germany)に外注した。チューブをバッチ毎に分割し、抽出するまで-80℃で保存した。細菌内容物の単離のために、市販の抽出キットであるQIAamp便DNAミニキット(Qiagen社、Hilden、Germany)を使用した。DNA濃度を、Qubit蛍光分析定量(Life Technologies社、Carlsbad、California、United States)を使用して測定した。
2.株の単離及び培養
La Girona University(Margarita Medina-Martinez Lab- Girona-Spain)及びCornell(Kenneth Simpson Lab - Ithaca - USA)からの110株の大腸菌株を、MTAを通して入手した。これらの単離株は、IBD患者又は対照の便又は回腸/結腸生検から以前に抽出されており、そのAIEC表現型に関して特徴付けされていた(Cornell株に関しては、別紙に要約されているDogan B.ら、2014;Baumgart M.ら、2007を参照されたい)。それらの110株を、全ての臨床検査を担当するSMALTIS社(Besancon、France)に送付した。更に3株の非大腸菌株を、陽性及び陰性対照としてそれぞれ役割を果たすLF82及びLF82デルタFimHと共に注文した。
凝集アッセイの3日前、細菌株をTSA(トリプトンソイ寒天)プレート上で解凍した。LBブロス3mLに細菌の単コロニーを接種することによって第1の一晩培養を実施し、その後に第2の一晩培養(第1の培養物1mL+LBブロス4mL)を実施した。
3.凝集試験
EB8018(China Gateway社が製造した試料SP-0010269-017)の6つの濃度を、凝集アッセイにおいて試験し(1nM/10nM/100nM/1μM/10μM、及び100μM)、500倍希釈標準液を、純粋なDMSO中で100mM保存液(65mg EB8018+1mL DMSO;MEB8018 :649.68g/mol)からの10倍連続希釈によって調製した。500倍希釈標準液(1μM、10μM、100μM、1mM、10mM、及び100mM)をアリコートに分割し、使用するまで-20℃で保存した。
試験当日、各々のEB8018 500倍希釈標準液(1μM、10μM、100μM、1mM、10mM、及び100mM)のアリコートを解凍し、LB培地中で2回希釈(最初の希釈に関して1:20倍、2回目の希釈に関して1:25倍)し、6つの2倍希釈標準液(2nM、20nM、200nM、2μM、20μM、及び200μM)を得た。第2の一晩細菌培養物を、LB培地中で希釈した(50倍希釈)。これらの細菌希釈物50μLを96ウェルプレート(8ウェル/株)に分配した。EB8018の2倍希釈標準液、又は新鮮なLB、又は0.2%DMSOを含むLB 50μLをウェルに添加した。マイクロプレートを絶えず振とう(200rpm)させながら37℃で5時間インキュベートした。毎時間、各ウェルを観察し、凝集の開始時間を記録した。5時間インキュベーション後、凝集が観察されたウェルに限って写真を撮影した。各濃度及び各時点に関して、技術者が凝集を評価した。凝集レベルを、以下のように4つの異なるレベルに従って報告した:
「-」凝集なし
「+/--」弱い凝集
「+/-」中等度の凝集
「+」強い凝集
更なる統計分析に関して、株毎のEB8018に対する凝集を以下の規則を用いて決定した:
- 全ての条件(濃度及びインキュベーション時間)に関して少なくとも1つの「+」又は1つの「+/-」があれば、単離株は凝集した
- 全ての結果が全ての条件(濃度及びインキュベーション時間)に関して陰性(「-」)である場合、単離株は凝集しなかった
- グレーゾーンは残りの全ての株を含有した(従って、弱い凝集)
このプロトコールを、113株の単離細菌株に適用した。各々のプレートにおいて、陽性対照(LF82)及び陰性対照(LF82-ΔFimH)を使用した。
4.単離株からのDNAの抽出、シークエンシング、及びバイオインフォマティクス
DNA抽出は、ZymoBIOMICS DNA PrepKitを使用して、製造元の説明書に従ってSMALTIS社が実施した。ゲノムシークエンシングは、GATC社(Konstance、Germany)が実施し、Illumina社のV4ケミストリーを使用してMiSeqによって300bpペアエンドとして実行したが、これは継続性を確保するためにこのプロジェクトの期間変化させない。陰性対照を各シークエンシングランに添加し、最終のphredスコア分析を、適した品質レベルを確保するために行った。混入に関してシークエンシングプロセスを制御するために、本発明者らはPhiX対照を使用した。
大腸菌株「LF82」をマッピングの基準として使用した。この株は、4376個の遺伝子を含有し、配列をNCBIからアップロードした。LF82遺伝子と、全ての単離された大腸菌ゲノムとのアライメントを、これらの以下の基準を使用して行った:95%の同一性及び90%のカバレッジ。各々の単離されたゲノムにおける遺伝子の存在及び非存在に関する表を作成した。
5.qPCR設計
fimE、fimS、及びfimA遺伝子の領域を、Ensembl細菌データベースの大腸菌LF82ゲノムから選択した。本発明者らの内部データベースにおいて利用可能な391個のメタゲノミクスCD試料をfimE/fimS/fimA領域にマッピングして、カバレッジ及び多型を調べ、qPCRプライマーの候補領域を選択した。図3に示すように、2つのプライマーをfimS領域(フォワード及びリバース鎖上)について設計し、一方、他の2つをfimE(フォワード鎖)及びfimA(リバース鎖)領域について設計する、4つのプライマー戦略を開発した。
上記のTable 1(表2)は、試験した8個のプライマーのヌクレオチド配列を要約する。
4つの個々のqPCR反応を各試料について実施することができ、これは、ONスイッチを検出するためのプライマーp1+p3(配列番号1及び3)及びp2+p4(配列番号2及び4)の組合せ、並びにOFFスイッチを検出するためのp1+p2(配列番号1及び2)及びp3+p4(配列番号3及び4)の組合せを含んだ。
8つのアッセイを設計し、以下の試料に適用した:FimS領域に関するそのNGS配列情報に基づいて選択した、CD患者の便から抽出した5つのDNA。ON位置で最も高いリードを有する2個の試料を選択し、ON位置で最大のシークエンシング深度でもリードを有しない2個の試料、及び中間の試料を選択した。
FimS on/offスイッチを標的とするSYBRに基づくアッセイを検証した。2組のアッセイを、p1〜4及びp5〜p8と呼ぶが、これらはTmが異なり、p1〜p4の組に関して60℃であり、p5〜p8の組に関して55℃であった。設計した8つのアッセイのうち、4つはFimS OFFスイッチ(p1p2、p3p4、p5p6、p7p8)を標的とし、4つはONスイッチ(p1p3、p2p4、p5p7、p6p8)を標的とする。
6.qPCRプロトコール
DNAを、DNase/RNaseフリー蒸留水で20倍希釈した後、分析した。qPCR分析をLC480(Roche社)機器において、TATAA SYBR(登録商標)GrandMasterミクス(TATAA Biocenter AB社)を使用して、4つのCD試料について二重の10μl反応の8つのアッセイ(SYBRに基づく)によって実施した。希釈した試料2μlを反応に添加した。EpMotion 5070(Eppendorf社)ロボットが全てのピペット操作を実施した。TATAAプレート間キャリブレータ(IPC)及びNTCを全てのプレートに含めた。全ての試料を同じプレートにおいて4アッセイ/ランで実行した(2組のプライマー間でTmが異なるため)。以下のプロトコール及び条件をqPCR分析のために使用した。
マスターミクスプロトコール
温度プロトコール
Cq値を、Light Cycler 480(Roche社)ソフトウェアにおいて全ての試料に関して絶対定量/2nd derivative max法によって回収した。
I.II.結果
ONスイッチと、単離株におけるEB80018に対する細菌の凝集との間の関連
110株の単離大腸菌株と共に追加の3株の非大腸菌株におけるEB8018の凝集試験によって以下の結論を得た。
凝集アッセイを、一連の110株について実施して成功した。陽性対照LF82は、2時間のインキュベーションによって凝集した。5時間のインキュベーション後、1nM、10nM、及び100nM濃度では強い凝集が観察された。1μMの濃度では中等度の凝集が観察された。陰性対照LF82-ΔFimHは、試験したいずれの濃度でも及びいずれのインキュベーション時間でもEB8018によって凝集しなかった。実験は、大腸菌単離体の中で凝集プロファイルが広く不均一であることを強調した。それらの一部は、非常に急速かつ強力に凝集したが、他は、より多くの時間を必要とした。わずかな凝集を示した単離体に関して、この現象は、経時的に安定であるように思われた。凝集プロファイルの不均一性は、細菌サイズ(顕微鏡による観察により、コレクション間の形態学的不均一性が明らかとなった)及び/又はFimHタンパク質の構造/機能に起因しうる。
各々の単離株に関して、EB8018に対する凝集を、EB8018の6つの異なる濃度で、既に記載したように4つの異なるレベルで毎時間、5時間測定した。EB8018に対する凝集を、3つの群において「凝集」、「凝集なし」、及び「グレーゾーン」(上記を参照されたい)と分類した。分析可能な全ての株のうちで、42%が凝集し、44%が凝集せず、及び13%がグレーゾーン(弱い凝集)であると分類された。
凝集分類と幾つかの表現型/情報との間の関連試験を実施した。凝集と、AIEC表現型との間に関連はなかった(p値=0.15、ピアソンのカイ二乗検定)。
ON及びOFF位置の両方でのFimA及びFimEにマッピングされたリードの数を、それらの株の配列データを使用して分析し、FimSにおけるリードのパーセンテージを、FimA ON及びFimE ONにマッピングされたリードのパーセンテージの平均値として推定した。ON及びOFF位置でFimAにマッピングされたリードがない、又はON及びOFF位置でFimEにマッピングされたリードがない場合、FimSにおけるリードのパーセンテージを推定することができない。
図2は、本発明者らの凝集分類に従うFimSにおけるリードのパーセンテージの分布を示す。FimSにおけるリードのパーセンテージと凝集分類との間には大きい関連があった(p<0.0001、ウィルコクソンの順位検定;弱い凝集(グレーゾーン)対凝集、p<0.0001、ウィルコクソンの順位検定)。
1%のカットオフをFimSにおけるリードのパーセンテージに適用した。以下の混同行列は、凝集転帰に従うFimS分類を報告する。35株は、FimSにおいて1%より多くのリードを有し、EB8018によって凝集し、24株は、FimSにおいて1%未満のリードを有し、EB8018によって凝集しなかった。偽陽性数は9であり、偽陰性数は7であり、従って感度は0.83に達し、特異度は0.73に達した。13株がグレーゾーンにあり、そのうち6株はFimSにおいて1%より多くのリードを有し、そのうち7株は、1%未満のリードを有した。11株ではFimA又はFimEにおけるリードはなく、FimSにおけるリードのパーセンテージを推定することは不可能であったが、これらの株はEB8018によって凝集しなかった。
結論:ON位置でのFimSは、EB8018に対して凝集する株の特徴である。
スイッチ変化に特異的なqPCRプライマーの特徴付け
EB8018に対する凝集とFimSスイッチとの間の強い関連により、FimSのON位置、FimSのOFF位置、及び基準としてFimH領域を標的とするqPCRアッセイを開発した。
上記で同定した4つの領域を標的とするqPCRアッセイを開発した。2組の4つのアッセイを、図3A及び図3Bに示すように設計し、この中で4つのプライマー(p2、p3、p6、及びp7)を、fimS領域に関して設計したが(フォワード及びリバース鎖上)、他の2つを、fimE(p1、p5、フォワード鎖)に関して設計し、及び他の2つをfimA(p4、p8、リバース鎖)領域に関して設計した。
設計したアッセイを、10個の試料(5個の株及び5個の便試料)を使用する単純化した検証プロトコールを使用して検証した。検証は、二重で測定した5つの標的濃度による標準曲線に基づいた。
FimS on/offスイッチを標的とするSYBRに基づくアッセイを開発した。材料及び方法の章に記載するように、2組の4つのアッセイを開発した;設計した8つのアッセイのうち、4つはFimS OFFスイッチ(p1p2、p3p4、p5p6、p7p8)を標的とし、4つはONスイッチ(p1p3、p2p4、p5p7、p6p8)を標的する。最初の結果として、Enterome社は、全ての試料に関して全てのPCRの増幅が正しいこと及び直線性をチェックした。探索的分析を行って、非正規化値(Cq)におけるOFFアッセイとONアッセイとの間の比を調べた。一次データに基づき、高レベルのONを有する株及び便を、低レベルのONを有する株及び便と識別することが可能であった。
このようにして、8つのアッセイを検証した。ONスイッチは、以下の4つのアッセイによって検出された:p1.p3;p2.p4;p5.p7;及びp6.p8。OFFスイッチは、以下の4つのアッセイによって検出された:p1.p2;p3.p4;p5.p8;及びp7.p8。
技術開発及び検証後、5つの便試料からの各々のアッセイ及び各々のPCR産物に関してPCR反応の効率を推定し、アッセイ毎に1つのPCR産物を選択し、更なる正規化のために効率を最大にした。しかし、全てのアッセイに関して良好な効率が観察された(0.90〜0.98の範囲)。最後に、効率、LOD、及びLOQ値、並びに正規化パラメータを、新規試料の更なる正規化のために保存した(詳細に関しては以下のtable 4(表8)を参照されたい)。
5個の試料を選択するための全てのプライマー対に関するPCR産物を、サンガー技術を使用してGATC社がシークエンシングした。アライメントは、如何なる予想外の細菌に対しても交差マッチを示さなかった。インサートもまた、大腸菌K12基準ゲノム上でアライメントさせて、fimS領域周囲のその位置をチェックした。インサートのアライメントは、fimS領域周囲の増幅領域に対応し、予想されたように、ON位置に対応するプライマーをリバース鎖においてアライメントさせたか、又はそれらが2つのトランスポゾンの1つと重複する場合には、フォワード鎖とリバース鎖との間で分割する。
2つのアッセイ間の比に基づいてPCRアッセイを開発するために(例えば、ON標的化領域とOFF標的化領域との間の比又はデルタ)、最高の効率を有する2つのアッセイを選択するように注意すべきである。PCR効率を使用して、PCRアッセイの性能を測ることができる。
PCR増幅効率値を、標準曲線の勾配を使用して推定した。OFF標的化アッセイのばらつきは、ON標的化アッセイのばらつきより低かった。全てのアッセイに関して、効率値の中央値は常に1(100%に対応する)より低かった。
線形回帰直線をプロットし、回帰式をr2係数によって報告した。同じ量のDNAを捕捉するようにアッセイを設計し、従って同じ機構のアッセイは低いばらつき及び勾配1、切片0で互いに相関するはずである。
非常に良好な相関が、p3.p4及びp7.p8(r2=0.99)に関して観察され、勾配はほぼ1(勾配=0.972)であり、切片は0に近かった。相関係数が外れ値によって偏りがあったが、p1.p2とp3.p4との間並びにp1.p2とp7.p8との間の関連もまた良好であった。p5.p6に関しては高いばらつきが観察された。
p1.p3及びp5.p7に関しては良好な相関が観察され、勾配は1に等しくはなく、切片のシフトが観察された。このシフトは、低濃度によって誘導された。他の関連に関して、相関は、p1.p3及びp6.p8を除いてより遅かったが、この比較に関して、分散は低いCq値に関してより大きかった。
図4に認めることができるように、2つのFimH「ON」試料は、qPCRアッセイに基づいて2つのFimH「OFF」試料から明らかに分離される。特にON発現を測定するためにアッセイp1〜p3及びp5〜p7を使用し、OFF位置を測定するためにアッセイp3〜p4及びp7〜p8を使用する場合、Cq値に基づいて計算した場合、良好なカットオフが55〜58%の間の値であることは明らかである。
II.2つの異なる代表的な集団における本発明のqPCRアッセイの使用
1.MOBIDIC試験
クローン病患者における分子マーカー及び接着侵襲性大腸菌(AIEC)検出試験(A clinical study for MOlecular BIomarkers and Adherent and Invasive Escherichia coli(AIEC) Detection study In Crohn's disease(MOBIDIC))患者の臨床試験を、2016年9月から2017年10月の間に実施した。この多施設試験におけるクローン病患者122人の適格性を、評価した。組み入れ基準は、(i)年齢18歳〜75歳の男性又は女性で、(ii)組み入れ前少なくとも3カ月間の回腸又は回腸-結腸クローン病の診断、(iii)試験組み入れ前に予定していた回腸結腸鏡検査、(iv)参加及びインフォームドコンセント用紙に署名する同意、(v)自宅で便の収集を実施できることを含むことであった。主な除外基準は、(i)モントリオール分類に基づくL2表現型の結腸クローン病、(ii)広範囲の小腸切除(>100cm)、又は短腸症候群、(iii)回腸結腸鏡の禁忌である小腸狭窄(stricture)/狭窄(stenosis)、(iv)現在、人工肛門又は回腸肛門パウチを使用している、(iv)現在、中心静脈栄養を受けている、(v)過去3カ月以内に受けた腸管前処置、(vi)出血リスクの増加(抗凝固剤/抗血小板療法を受けている患者)、(vii)腸癌又は結腸直腸がん、アルコール又は薬物の乱用、制御されない慢性障害の既往であった。
2.便試料の収集及びDNA抽出
便試料は、CD患者が自宅で、保存緩衝液9mLを満たしたSarstedt社チューブ(Numbrecht、Germany)を使用して収集した。受領後、チューブを-80℃で保存した。分割及びDNA単離は、Eurofins/GATC Biotech社(Konstanz、Germany)に外注した。チューブをバッチ毎に分割し、抽出するまで-80℃で保存した。細菌内容物の単離のために、市販の抽出キットであるQIAamp便DNAミニキット(Qiagen社、Hilden、Germany)を使用した。DNA濃度を、Qubit蛍光分析定量(Life Technologies社、Carlsbad、California、United States)を使用して測定した。
3.生検の収集
CD患者から単離した粘膜標本を、MOBIDIC試験から収集した。各患者に関して、4つの生検を収集し、2又は3つを更なる試験のために収集し、1又は2つをバックアップ試料としてCell&Co社(Clermont-Ferrand、France)で保存した。回腸標本を、15%グリセロールを有する冷蔵DMEM 1.8mLを含有する予め重さを測定したバイアルに直ちに入れた。バイアルの重さを測定し、試料の質量を確立した。理想的には、生検のサイズは、5〜10mgの間でなければならない。-80℃で凍結後、バイアルをCell&Co社に送付し、受領時に-80℃で保存した。
4.前記生検の収集から単離した細菌に対するEB8018の凝集
MOBIDIC生検から単離した細菌株のEB8018に対する凝集は、SMALTIS社(Besancon、France)に外注している。主な手順を以下に記載する。
1日目、生検を処理して、接着性の細菌(抽出物A)及び侵襲性の細菌(抽出物I)を回収した。接着性細菌の上皮細胞からの剥離は、超音波処理(30kHZ、300w)によって行い、次に生検をPBSによって洗浄し、培養のためにLBブロスに入れ、侵襲性細菌を単離するために、組織をボルテックスすることにより破壊した。侵入性及び接着性抽出物の両方に関して、抽出物100μLをMH寒天プレートに播種し、異なる細菌形態型を観察し、抽出物100μLを更なる凝集試験のためにEC LBブロス3mLに接種し、残りを長期保存のために-80℃で保存した。
抽出物A及びIを、LBブロスにおいて2×24時間培養し、3日目にLB一晩培養物を、EB8018化合物による凝集アッセイのために使用した。EB8018の3つの濃度(10nM/100nM/1μM最終濃度)を試験し、500倍希釈標準液を、100mM保存液からDMSO中で10倍連続希釈することによって調製し、96ウェルプレート中のDMSOの最終濃度は0.1%である。DMSO(如何なる化合物も含まない)もまた、LB中で500倍希釈し、0.2% DMSOを有するLB(ウェル中の最終濃度0.1%)を調製した。溶液(EB8018又はDMSO)50μL及び次に細菌希釈懸濁液50μLを、プレートテンプレートに従って96ウェルプレートに分配した。プレートを、SPARK 10M(96rpm)において攪拌しながら37℃で5時間インキュベートした。毎時間、細菌の成長を測定し、各ウェルの写真を、SPARK10Mを使用して撮影した。5時間後、マイクロプレートを振とうし、10分後、凝集評価のために写真を撮影した(凝集は、技術者がDMSOとの比較によって評価した)。任意の抽出物及び任意の濃度に関する凝集の場合、凝集のために使用したLB培養物の10-5/6倍希釈物を播種することによって、2 O/N培養物から形態型を単離した。次に、凝集アッセイを、抽出物の凝集と類似の条件で各形態型に関して実施した。EB8018化合物の存在下で凝集を示す形態型を同定し(MALDI-TOF)、-80℃で凍結した。各プレートにおいて、陽性対照(LF82)及び陰性対照(LF82-ΔFimH)を使用した。
抽出物及び単離された形態型に関して、凝集を技術者が最初に評価し、以下のようにSMALTIS社の技術報告書として報告した:
「-」凝集なし
「+/--」非常に弱い凝集
「+/-」中等度の凝集
「+」凝集
「++」強い凝集
「+++/++++」非常に強い凝集
抽出物について凝集が観察されなかった場合、又は決定的でない評価の場合(例えば、如何なる化合物も含まないDMSOによって凝集が観察された場合)、第2の生検を同じプロトコールに従って分析した。
全ての生検の分析後、凝集の如何なる誤解釈も回避するため、及び結果を標準化するために、Enterome社は、SMALTIS社に全ての結果の最終的な盲検での再審査を行うように要請した。単離された形態型に関して、Enterome社は、4時間、5時間、及び振とう後の5時間で撮影した写真のPDFを準備し、株のIDを匿名にした。全ての写真をSMALTIS社で2人の独立した技術者が再審査し、結果をEnterome社が非盲検にした。単離された形態型の凝集を、4つのレベル:「凝集なし」、「弱い/中等度の凝集」、「凝集」、又は「決定的でない」によって評価した。
5.便試料に関するqPCR分析の検証
5.1.MOBIDIC試験の便試料を、QIAamp便DNAミニキットを使用して分割及びDNA単離のためにEurofins/GATC Biotech社(Konstanz、Germany)に送付した。各々の便試料に関して、3つのアリコートを得て、最初の2つのアリコートを抽出した。幾つかの便試料に関して、第3のアリコートも抽出した。濃度及び分解を調べることによって、品質管理を実施した。試料を2つのバッチで処理し、第1のバッチは試料30個であり、残りの試料は第2のバッチであった。本発明者らは、第1のバッチに関してゲル電気泳動において尾を引くバンドを観察し、一部の試料は品質管理に合格しなかった。しかしこれらの品質チェックを、更なるシークエンシングの対照としてEurofins/GATC社が調整し、本発明者らは最善のアリコートを選択することによって、それらをqPCR分析に関して使用することを決定した。
121個のDNA試料を、qPCR分析のためにTATAA biocenter社に送付した。実験は、ISO 17025認定法「ME 5.4247 MGSアッセイSYBRによるqPCR分析」に従って実施した。全ての試料を9つのアッセイ全てにおいて二重に分析した。全体的にqPCRは、良好に作動し、遅い増幅を示した(>Cp35)p1p3アッセイにおける1回の反復実験(replicate)を除き、NTC(テンプレート対照)を増幅しなかった。これは、単なる1ウェルの混入であり、このため、試料に影響を及ぼさないか、又はマスターミクスの何らかの一般的混入を証明しないと考えられた。反復実験間の標準偏差は、大抵の場合、0.5未満であり、これは、本方法において使用される反復実験間で許容可能な散らばり(spread)の基準であった。Cq30に近い及びそれより高い値に達した一部の反応は、これが様々なアッセイのLOQに近いか又は等しいことから、反復実験間でSDの増加を証明した。
未加工データは、TATAA社によってエクセルファイルで送付され、Cq値をEnterome社が正規化した。認定された結果のみを正規化に使用し、他の全ての試料の増幅値を0に設定した。Cq値を、プレート間キャリブレータによって補正後、増幅曲線による補間によって正規化した。各々の試料に関する各々のアッセイの絶対濃度をコピー/μLとして表記した。
5.2.EB8018に対する凝集は、材料及び方法の章で説明したようにSmaltis社が実施した。この目的のため、1つから2つの生検の単離された形態型に関する写真を調べることによって凝集を評価した。凝集の評価は、Smaltis社の2人の独立した技術者が盲検で行い、データをEnterome社のデータ管理部門が統合した。122人のCD患者の中で、患者113人の少なくとも1つの生検をSmaltis社が評価した。それらのうち、患者7人の結果は、決定的ではなかった。残りの患者106人中、患者69人(65%)は、凝集する少なくとも1つの形態型を有し、患者21人(20%)は、無菌の生検を有し、及び患者16人(15%)は凝集を示さなかった。
5.3.関連試験を、生検におけるEB8108に対する凝集と、便試料におけるFimS-On、FimS-Off、及びFimH標的化アッセイの発現との間で実施した。ウィルコクソンの順位検定の実施によってqPCRアッセイの連続的発現を考慮に入れることによって、又はピアソンのカイ二乗検定の実施によって離散変数(増幅対非増幅)を考慮に入れることによって、関連を評価した。アッセイ間の強い相関のために、複数の試験に関する補正は行わなかった。以下に、本発明者らは、EB8018に対する凝集を2つのクラス:「凝集」対「凝集なし又は成長なし」として考慮する結果を報告している。追加の結果は、MOBIDIC試験に関する統計学的報告書において見出すことができる。
5.4.結果
5.4.1.FimS OFFアッセイの結果
以下の表は、FimS OFF標的化アッセイの記述統計値及び2つの検定(ウィルコクソンの順位検定及びピアソンのカイ二乗検定)のp値、及びその有意性(Sは有意を表し、NSは有意差なしを表す)を表す。
図5の画像は、集団全体における群毎の対数尺度でのFimS OFF標的化アッセイの分布を表す。
5.4.2.FimS ONアッセイの結果
以下の表は、FimS ON標的化アッセイの記述統計値及び2つの検定(ウィルコクソンの順位検定及びピアソンのカイ二乗検定)のp値、及びその有意性(Sは有意を表し、NSは有意差なしを表す)を表す。
図6の画像は、集団全体における群毎の対数尺度でのFimS ON標的化アッセイの分布を表す。
5.4.3.これらの結果は、全てのqPCRマーカーとEB8018に対する凝集との間に強い相関を示した。しかし、最も強い関連は、FimS ON標的化アッセイに関して、振幅(ウィルコクソンの順位検定)及び配列の検出/検出なし(ピアソンのカイ二乗検定)に関して得られた。FimS-ON標的化アッセイp5p7を特異的に調べることによって、検出限界に対応する閾値10コピー/μLを使用して以下の分割表を得た。このアッセイのAUC値は0.7であった。
図8は、この特定のアッセイに関して得られたROC曲線を開示する。
6.FimHアッセイ
大腸菌遺伝子FimHを標的とするqPCRアッセイもまた開発した。技術開発及び技術的検証を、ISO17025を遵守して実施した。
6.1.qPCRプライマーの候補領域の選択及びプライマーの設計
FimH遺伝子における4つの領域を、プライマーの設計のために選択した。4つの領域の各々に関して、3つのアッセイを設計した。加水分解プローブに基づくアッセイ設計を、Allele ID及びBeacon designer(PREMIER Biosoft社)を使用して実行した。プローブを、5'末端でFAMによって標識し、3'末端でIBFQクエンチャーに加えて内部ZENクエンチャー(PrimeTime ZENプローブ、IDT社)によって標識した。全てのアッセイのプローブ配列、センス及びアンチセンスプライマーを、以下の表に報告する(Table 9)(表12)。
6.2.qPCRアッセイの開発
FimHに関するqPCRアッセイの技術開発及び検証は、TATAA biocenter社が行った。
正しい増幅及び直線性をチェック後、PCR反応の効率を、各アッセイに関して推定し、FIMH_2_1を、更なる正規化のために効率の最大化によって選択した。最後に、効率、LOD、及びLOQ値、並びに正規化パラメータを新規試料の更なる正規化のために保存した(詳細に関しては以下の表を参照されたい)。
以下の表は、FimH標的化アッセイの記述統計値及びウィルコクソン検定に関連するp値及びその有意性を表す。
図7の画像は、集団全体における群毎の対数尺度でのFimH標的化アッセイの分布を表す。
7.クローン病の活動度指数(CDAI)とFimS ONとの間の関連
MOBIDIC試験において、患者35人が「活動性」(すなわち、CDAI>150を有する)と分類され、患者75人が「非活動性」(すなわち、CDAI≦150を有する)と分類された。2つのFimS-ONアッセイは、疾患活動度(p1.p3 ON、p=0.027 ;p6.p8 ON、p=0.031)と有意に関連した。CDAIスコアは当技術分野で周知である。これは例えば、Bestら、1976に記載されている。
図9の画像は、群毎の対数尺度でのFimS ON標的化アッセイの分布を開示する。
MOBIDICコホート(n=87)を、内視鏡スコア、タンパク質レベル(CRP、カルプロテクチン)、大腸菌存在量、並びに年齢及び体重を含む臨床変数に関して主成分分析を実施することによって分析した。
CRP及びカルプロテクチンは、既に報告されているように(Sipponen、IBD、2010、及びSipponen、IBD、2008)、内視鏡での活動度と相関した。
大腸菌は、疾患活動度と相関した。疾患活動度及び大腸菌は、内視鏡での活動度と直交した。例えば、SES-CDとCDAIとの間の相関はMOBIDICに関して0.25(スピアマンの係数)(図10を参照されたい)であった。
便マーカーと疾患活動度との間、又は疾患活動度と内視鏡での活動度との間の相関は、弱いことが示されていることから(Sipponen T、IBD、2010及びSipponen T、IBD、2008を参照されたい)、このことは意外である。
要約すると、このことは、
i)患者の便試料におけるFimH発現細菌の存在が、疾患の活動度と相関するが、炎症レベル及び症状とは相関しないこと;
ii)そのままの便試料において本発明のバイオマーカーの存在をアッセイすることによって、クローン病の活動度を予後判定することが可能であるが、SES-CDスコアなどの潰瘍マーカーでは不可能であること
を意味する。
結論
単離株のシークエンシングによって、本発明者らはFimS領域のDNA配列と、EB8018に対する凝集との間に強い関連を同定することができた(p<0.0001、ウィルコクソンの順位検定)。FimSスイッチ及びFimH遺伝子を標的とする9つのqPCRアッセイの技術開発及び検証を行った。MOBIDIC試験によって、本発明者らは、CD患者から便及び生検試料を得ることが可能であった。細菌DNAを便試料から単離し、9つのqPCRアッセイをDNA試料について実施した。同時に、EB8018に対する凝集試験を、回腸生検から単離した単離形態型について実施した。統計分析は、全てのqPCRアッセイとEB8018に対する凝集との間に、特にFimS-ON標的化アッセイに関して強い関連を示した(p5p7に関してp<0.001、ウィルコクソンの順位検定)。
参考文献

Claims (36)

  1. 対象の便試料におけるfimH遺伝子の発現を検出する工程を含む、その腸管に多量のFimH発現プロテオバクテリアを保有する対象を同定するためのin vitro方法。
  2. 前記検出する工程が、前記便試料のヌクレオチド分画におけるfimオペロン転写のOFFからONへのスイッチを測定する工程によって実施される、請求項1に記載の方法。
  3. fimオペロン転写のOFFからONへのスイッチが、fimオペロンのFimS、FimA、及びFimE領域内の配列番号13〜配列番号33のヌクレオチド領域の部分を増幅するプライマーを使用することによって、好ましくは配列番号1〜8のプライマー対を使用することによって、より好ましくは[配列番号5;配列番号7]のプライマー対を使用することによって、qPCRによって検出される、請求項2に記載の方法。
  4. 前記検出する工程が、前記便試料のヌクレオチド分画におけるfimH遺伝子の存在量を測定する工程によって実施される、請求項1に記載の方法。
  5. 前記検出する工程が、配列番号35〜40のプライマー対を使用することによってqPCRによって実施される、請求項1又は4に記載の方法。
  6. 対象の便試料におけるfimH遺伝子の発現を検出する工程を含む、対象が、FimH遮断剤による処置から利益を得るか否かを予測するためのin vitro方法。
  7. 前記便試料のヌクレオチド分画におけるfimオペロン転写のOFFからONへのスイッチを測定する工程を含む、請求項6に記載の方法。
  8. 前記便試料のヌクレオチド分画におけるfimH遺伝子の存在量を測定する工程を含む、請求項6又は7に記載の方法。
  9. 前記測定する工程がqPCRによって実施される、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
  10. a)前記対象から便試料を得る工程、
    b)前記試料のヌクレオチド分画におけるfimオペロン転写のOFFからONへのスイッチをqPCRによって測定する工程、
    c)前記試料におけるfimオペロンのON位置の正規化増幅レベルが基準値より高い場合、前記対象がFimH遮断剤による処置から利益を得ることを予測する工程
    を含む、請求項6又は7に記載の方法。
  11. 前記工程b)が、前記便試料におけるfimオペロン転写の配列番号14のON領域の存在を、好ましくは配列番号5及び7のプライマー対を使用することによって測定する工程で構成され、請求項10に記載の方法。
  12. 前記工程b)が、前記便試料におけるfimオペロン転写の配列番号13のOFF領域の存在を、好ましくは配列番号5及び8のプライマー対を使用することによって測定する工程で構成され、請求項10に記載の方法。
  13. 前記基準値が、健康な対象の便におけるfimオペロン転写のOFFからONへのスイッチを測定する工程によって得られる、請求項10に記載の方法。
  14. 前記FimH遮断剤が、マンノース誘導体、好ましくは式:
    の化合物である、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 対象の便試料におけるfimH遺伝子の発現を検出する工程を含む、FimH遮断剤による処置に対して感受性であるか又は抵抗性である患者のサブセットを同定するためのin vitroスクリーニング方法。
  16. 前記便試料のヌクレオチド分画におけるfimオペロン転写のOFFからONへのスイッチを測定する工程を含む、請求項15に記載の方法。
  17. 前記便試料のヌクレオチド分画におけるfimH遺伝子の存在量を測定する工程を含む、請求項15に記載の方法。
  18. 前記測定する工程が、qPCRによって実施される、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
  19. 前記FimH遮断剤が、マンノース誘導体、好ましくは式
    の化合物である、請求項15から18のいずれか一項に記載の方法。
  20. a)対象から便試料のヌクレオチド分画を単離する工程、
    b)前記ヌクレオチド分画におけるfimH遺伝子の発現を検出する工程
    c)その腸管に多量のFimH発現プロテオバクテリアを保有する対象に限ってFimH遮断剤を投与する工程
    を含む、FimHプロテオバクテリアによって引き起こされる疾患に罹患している対象を処置するための方法。
  21. 検出する工程b)が、前記ヌクレオチド分画におけるfimオペロン転写のOFFからONへのスイッチをqPCRによって測定する工程を含む、請求項20に記載の方法。
  22. 工程c)の選択された対象が、fimオペロンのONの正規化増幅レベル、又はON/OFF比、又はON/(ON+OFF)比が基準値より高い対象である、請求項20又は21に記載の方法。
  23. 検出する工程b)が、前記ヌクレオチド分画におけるfimH遺伝子の存在量を、qPCRによって測定する工程を含む、請求項20に記載の方法。
  24. 工程c)の選択された対象が、fimH遺伝子の存在量が基準値より高い対象である、請求項20又は23に記載の方法。
  25. 前記FimH遮断剤が、マンノース誘導体、好ましくは式:
    の化合物である、請求項20から24のいずれか一項に記載の方法。
  26. 対象の便試料におけるfimH遺伝子の発現を検出する工程を含む、対象におけるFimHプロテオバクテリア関連疾患を診断及び/又はモニターするためのin vitro方法。
  27. 検出する工程が、前記便試料のヌクレオチド分画におけるfimオペロン転写のOFFからONへのスイッチを、好ましくはqPCRによって測定する工程を含む、請求項26に記載の方法。
  28. 検出する工程が、前記便試料のヌクレオチド分画におけるfimH遺伝子の存在量を、好ましくはqPCRによって測定する工程を含む、請求項26に記載の方法。
  29. 前記処置の投与前及び投与後に、請求項6から14に規定の治療応答を予測する工程を含む、FimHプロテオバクテリア関連疾患に罹患している対象における処置の治療効率を試験するためのin vitro方法。
  30. 前記FimHプロテオバクテリア関連疾患が、炎症性腸疾患又は尿路感染症である、請求項20から29のいずれか一項に記載の方法。
  31. 前記対象がヒト、好ましくはクローン病に罹患しているヒトである、請求項20から30のいずれか一項に記載の方法。
  32. 配列番号13〜33を有する特定のヌクレオチド領域又はその相同領域の部分を特異的に増幅する少なくとも2つのヌクレオチドプライマーを含有するキット。
  33. 以下のプライマー対:
    - [配列番号1;配列番号3]及び/又は
    - [配列番号5;配列番号7]及び/又は
    - [配列番号6;配列番号8]及び/又は
    - [配列番号2;配列番号4]
    の少なくとも1つを含有する請求項32に記載のキット。
  34. その配列が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8からなる群から選択される、ヌクレオチドプライマー。
  35. 対象の便試料におけるFimH陽性発現プロテオバクテリアの存在を検出するための、請求項32若しくは33に記載のキット又は請求項34に記載のプライマーの使用。
  36. 対象がFimH遮断剤による処置から利益を得るか否かを予測するための、又はFimHプロテオバクテリア関連疾患に罹患している対象における処置の治療効率を試験するための、又はFimH遮断剤による処置に対して感受性であるか又は無応答性である患者のサブセットを同定するための、又は対象におけるFimHプロテオバクテリア関連疾患を診断及び/若しくはモニターするための、請求項32若しくは33に記載のキット又は請求項34に記載のプライマーの使用。
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