JP2021195527A - 樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた難燃性、耐衝撃性を維持しつつ、高品位である樹脂組成物及びその成形体を提供する。【解決手段】(A)スチレン系共重合体100質量部と、(A)スチレン系共重合体100質量部に対して(B)ゴム重合体2.5〜40質量部と、(C)塩素系樹脂10〜90質量部と、を含み、(A)スチレン系共重合体の数平均分子量が40,000〜150,000である、スチレン系樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物及びその成形体に関する。
アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS樹脂)など耐衝撃性に優れる熱可塑性樹脂は、電気機器及び電子機器の筐体等、広範囲に亘って使用されている。
例えば、特許文献1には、スチレン系樹脂に塩素化ポリエチレン、有機スズ系安定剤、ポリオルガノシロキサンを配合することで、難燃性、耐衝撃性に優れ、かつ成形時の滞留劣化を少なくする技術が開示されている。
特開昭63−108067号公報
近年、電気機器及び電子機器の筐体等において、更なる高品位が求められている。
具体的には高い表面光沢による外観向上や、射出成形時に樹脂が熱滞留しても変色しにくく色調が安定していることが挙げられる。また、大型成形体用途や、複雑な形状の成形体用途への展開でもシルバーなどの問題がなく成形できることが重要となっている。
従来の技術では、難燃性、耐衝撃性を維持しつつ、これらの要求を満足することはできず改善の余地がある。
本発明が解決しようとする課題は、優れた難燃性、耐衝撃性を維持しつつ、高品位である樹脂組成物及びその成形体を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した。その結果驚くべきことに、特定の構成のスチレン系樹脂組成物を用いることで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1]
(A)スチレン系共重合体100質量部と、(A)スチレン系共重合体100質量部に対して(B)ゴム重合体2.5〜40質量部と、(C)塩素系樹脂10〜90質量部と、を含み、(A)スチレン系共重合体の数平均分子量が40,000〜150,000である、スチレン系樹脂組成物。
[2]
樹脂組成物全体100質量部に対し、更に(D)流動改質剤を0.1〜10質量部含む、[1]に記載のスチレン系樹脂組成物。
[3]
前記(D)流動改質剤が、シリコンオイル、ポリエチレンワックス、脂肪族アルコール、エチレンビスステアリン酸アミド及びミネラルオイルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、[2]に記載のスチレン系樹脂組成物。
[4]
前記(A)スチレン系共重合体が、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂)及びアクリロニトリル・αメチルスチレン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である、[1]〜[3]のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物。
[5]
前記(B)ゴム重合体が、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン樹脂(ABS樹脂)及びメタクリル酸メチル・ブタジエン・スチレン樹脂(MBS樹脂)からなる群より選ばれる少なくとも1種である、[1]〜[4]のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物。
[6]
前記(C)塩素系樹脂が、塩化ビニル樹脂(PVC)、塩素化ポリエチレン(CPE)及び塩化ビニリデン樹脂(PVDC)からなる群より選ばれる少なくとも1成分である、[1]〜[5]のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物。
[7]
樹脂組成物全体100質量部に対し、更に(E)酸化アンチモンを1〜10質量部含む、[1]〜[6]のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物。
[8]
樹脂組成物全体100質量部に対し、更に(F)安定剤を0.1〜10質量部含む、[1]〜[7]のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物。
[9]
[1]〜[8]のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物を含む成形体。
本発明によれば、優れた難燃性、耐衝撃性を維持しつつ、高品位である樹脂組成物及びその成形体を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)について、詳細に説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定するものではない。本発明は、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
[樹脂組成物]
本実施形態のスチレン系樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」とも記す)は、(A)スチレン系共重合体100質量部と、(A)スチレン系共重合体100質量部に対して、(B)ゴム重合体2.5〜40質量部と、(C)塩素系樹脂10〜90質量部と、を含み、(A)スチレン系共重合体の数平均分子量が40,000〜150,000である。
本実施形態に用いる(A)スチレン系共重合体の数平均分子量は、40,000〜150,000である。
(A)スチレン系共重合体の数平均分子量が40,000以上であることで、射出成形時に樹脂組成物が熱滞留しても変色しにくく色調が安定することができる。更に(A)スチレン系共重合体の数平均分子量が150,000以下であることで、大型射出成形でもシルバーの発生を抑え、かつ成形体の光沢性を向上させることができる。
(A)スチレン系共重合体の数平均分子量の下限値は、好ましくは42,000以上、より好ましくは45,000以上である。
(A)スチレン系共重合体の数平均分子量の上限値は、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、更に好ましくは65,000以下である。
(A)スチレン系共重合体の数平均分子量を前記範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、反応温度、反応時間、触媒量などにより制御する方法が挙げられる。
なお、本実施形態において、(A)スチレン系共重合体の数平均分子量は以下の方法で測定することができる。(A)スチレン系共重合体をテトラヒドロフラン(THF)中に浸漬し、溶解した(A)スチレン系共重合体成分をろ別する。得られたろ液を用い、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定する。当該測定結果に基づき、(A)スチレン系共重合体の数平均分子量を、ポリスチレン(PS)を標準物質として算出する。
本実施形態に用いる(B)ゴム重合体の含有量は、(A)スチレン系共重合体100質量部に対し、2.5〜40質量部である。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、(A)スチレン系共重合体100質量部に対し、(B)ゴム重合体の含有量が2.5質量部以上であることにより耐衝撃性を付与することができる。更に本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、(A)スチレン系共重合体100質量部に対し、(B)ゴム重合体の含有量が40質量部以下であることで、難燃性を安定させ、かつ成形体の光沢性を維持することができる。
(B)ゴム重合体の含有量の下限値は、(A)スチレン系共重合体100質量部に対し、好ましくは4質量部、より好ましくは5質量部である。
(B)ゴム重合体の含有量の上限値は、(A)スチレン系共重合体100質量部に対し、好ましくは35質量部、より好ましくは30質量部である。
本実施形態に用いる(C)塩素系樹脂の含有量は、(A)スチレン系共重合体100質量部に対し、10〜90質量部である。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、(A)スチレン系共重合体100質量部に対し、(C)塩素系樹脂の含有量が10質量部以上であることにより難燃性を付与することができる。更に本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、(A)スチレン系共重合体100質量部に対し、(C)塩素系樹脂の含有量が90質量部以下であることで、射出成形時に樹脂組成物が熱滞留しても変色しにくく色調が安定することができる。
(C)塩素系樹脂の含有量の下限値は、(A)スチレン系共重合体100質量部に対し、好ましくは13質量部、より好ましくは15質量部である。
(C)塩素系樹脂の含有量の上限値は、(A)スチレン系共重合体100質量部に対し、好ましくは80質量部、より好ましくは70質量部である。
[(A)スチレン系共重合体]
本実施形態の樹脂組成物において使用することができる(A)スチレン系共重合体について、詳細に説明する。
本実施形態において使用可能な(A)スチレン系共重合体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン(以下「St」ともいう)及びαメチルスチレン(以下「αMeSt」ともいう)から選ばれる少なくとも1種と、共重合可能な成分からなる重合体が挙げられる。(A)スチレン系共重合体は2成分以上からなってもよい。(A)スチレン系共重合体の具体例としては、特に限定されないが、例えば、St−アクリロニトリル(以下「AN」ともいう)共重合体、αMeSt−AN共重合体、St−αMeSt−AN共重合体、St−AN−マレイミド系共重合体、St−メチルメタクリレート(以下「MMA」ともいう)共重合体、St−MMA−マレイミド系共重合体、St−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。上記の構成成分の他に、他のビニルモノマー、例えばo−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロムスチレン、メタクリレートリル、クロロアクリロニトリル、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレートなどを多くとも10質量%更に共重合したものも同様に使用することができる。
本実施形態に用いる(A)スチレン系共重合体は、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂)及びアクリロニトリル・αメチルスチレン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂)であることがより好ましい。(A)スチレン系共重合体がこのような樹脂であると、樹脂組成物及びその成形体の外観が良くなる傾向になる。
本実施形態に用いる(A)スチレン系共重合体において、スチレン成分の比率は60〜85質量%が好ましい。より好ましくは70〜85質量%、更に好ましくは73〜85質量%である。
[(B)ゴム重合体]
本実施形態の樹脂組成物において使用することができる(B)ゴム重合体について、詳細に説明する。
本実施形態において使用可能な(B)ゴム重合体としては、特に限定されないが、例えば、(b1)ゴム成分に(b2)グラフト樹脂をグラフトさせることにより得ることができるゴム重合体が挙げられる。特に限定されないが、例えば、(b1)ゴム成分として、ブタジエンゴム、ブタジエン・スチレンゴム(ブタジエンとスチレンとの共重合体ゴム)、アクリルゴム、シリコン・アクリルゴム(シリコンとアクリルとの共重合体ゴム)、及びその他のゴム重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。(b2)グラフト樹脂としては、特に限定されないが、例えば、(b2−1)スチレン系樹脂、(b2−2)アクリル系樹脂から選ばれる少なくとも1種からなるグラフト樹脂が挙げられる。(b2−1)スチレン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、αメチルスチレンから選ばれる少なくとも1種が挙げられ、これに共重合可能な成分を共重合したスチレン系樹脂でもよい。共重合可能な成分として、特に限定されないが、例えばアクリロニトリル、メタアクリロニトリルが挙げられる。
(b1)ゴム成分としては、特に限定されないが、例えば、ブタジエン単独重合ゴム及びブタジエンと少量(一般には10質量%以下)のスチレン又はアクリロニトリルとのランダム又はブロック共重合ゴムから選ばれるブタジエン系ゴムが挙げられる。ランダム又はブロック共重合体成分は2種以上からなってもよい。好ましくは、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・αメチルスチレン樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、2種以上の混合であってもよく、より好ましくは(A)スチレン系共重合体と同成分からなる。
(b2−2)アクリル系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸エステル(例えば、アクリル酸ブチル)又はこのエステルと少量(一般には10質量%以下)と他の単量体(たとえば、アクリロニトリル)とを重合させることによって得られるアクリル酸エステル系ゴムが挙げられる。(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸等のアクリル酸類;が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
(b2−3)その他のゴム重合体としては、特に限定されないが、例えば、エチレンとプロピレンとの共重合ゴム並びにエチレン及びプロピレンと少量(一般には10質量%以下)の二個の二重結合が末端に含有する直鎖又は分岐鎖のジオレフィン(例えば、1,4−ペンタジエン)、二重結合を一個だけ末端に含む直鎖又は分岐鎖ジオレフィン(例えば、1,4−へキサジエン)及びビシクロ(2,2,1)−へブテン−2又はその誘導体との多元共重合ゴムからえらばれるエチレン−プロピレン系ゴムが挙げられる。
(B)ゴム重合体の具体例として更に好ましくは、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン樹脂(ABS樹脂)及びメタクリル酸メチル・ブタジエン・スチレン樹脂(MBS樹脂)からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、2種の混合であってもよい。
[(C)塩素系樹脂]
本実施形態の樹脂組成物において使用することができる(C)塩素系樹脂について、詳細に説明する。
本実施形態において使用可能な(C)塩素系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル(塩化ビニル樹脂(PVC))、ポリ塩化ビニリデン(塩化ビニリデン樹脂(PVDC))、塩素化ポリプロピレン、塩素化塩化ビニルから選ばれる少なくとも1種であり、2種以上の混合でもよい。(C)塩素系樹脂としては、塩化ビニル樹脂(PVC)、塩素化ポリエチレン(CPE)及び塩化ビニリデン樹脂(PVDC)からなる群より選ばれる少なくとも1成分であることが好ましい。(C)塩素系樹脂がこのような成分であると、樹脂組成物及びその成形体の難燃性及び耐衝撃性が優れる傾向にある。
塩素化ポリエチレン(以下、「CPE」ともいう)としては、例えば、後述のポリエチレンの粉末又は粒子を水性懸濁液中で塩素化するか、あるいは有機溶媒にポリエチレンを溶解し、塩素化することによって製造することができる。なかでも、水性懸濁中で塩素化する方法が好ましい。CPEは工業的に製造され、多方面にわたって利用されており、前記の製造方法及び各種物性は良く知られている。
原料となるポリエチレンは、エチレンを単独重合又はエチレンと多くとも20質量%(好ましくは10質量%以下)の炭素数が多くとも12個(好ましくは3〜8個)のα−オレフィンとを共重合することによって得られるものである。該ポリエチレンの密度は、一般には0.910〜0.970g/cm3であることが好ましく、とりわけ0.920〜0.970g/cm3であることがより好ましい。
本実施形態に使用されるCPEの塩素含有量は10〜45質量%であることが好ましく、15〜40質量%であることがより好ましく、とりわけ20〜40質量%がさらに好適である。CPEの塩素含有量が10質量%以上では、得られる樹脂組成物の耐衝撃性及び難燃性が優れる傾向にある。また、CPEの塩素含有量が45質量%以下であると、得られる樹脂組成物は、耐衝撃性が優れるのみならず、熱安定性の点でも優れる傾向にある。また、CPEのムーニー粘度(ML1+4 、100℃)は、一般には30〜150であることが好ましく、40〜150がより好ましく、特に40〜130であることがさらに好適である。CPEのムーニー粘度(ML1+4 、100℃)が30以上であると得られる樹脂組成物の機械強度が高い傾向にある。また、CPEのムーニー粘度(ML1+4 、100℃)が150以下であると成形性の点で好ましい。
ポリ塩化ビニル(以下、「PVC」ともいう)としては、重合度が380〜4500の範囲のPVCが好ましい。より好ましくは、380〜3000の範囲のPVCである。
更に、(C)塩素系樹脂としては、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリプロピレンと、これらに共重合し得る二重結合を少なくとも一個を有する化合物との共重合体であってもよい。当該共重合体の具体例としては、特に限定されないが、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−イソプレン共重合体、塩化ビニル−塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、可塑化ポリ塩化ビニルが挙げられる。
PVCは、塩化ビニルを単独重合又は塩化ビニルと共重合し得る他種のモノマーを共重合することによって製造される重合体である。他種モノマーの代表例としては、塩化ビニリデン、エチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル並びにアクリル酸、メタクリル酸及び無水マレイン酸並びにそれらのエステルが挙げられる。他種のモノマーの共重合割合は、通常多くとも40質量%であることが好ましく、とりわけ30質量%以下がより好ましい。
これらの単独重合及び共重合体は、一般には懸濁重合、塊状重合又は乳化重合によって製造される。本実施形態に用いるPVCの平均重合度は組成物を製造する際の混練性、得られる樹脂組成物の機械的特性、及び熱安定性の点から、一般には380〜2,000であることが好ましく、380〜1,800が好ましく、特に400〜1,600がさらに好適である。PVCの平均重合度が380以上であれば得られる樹脂組成物の耐衝撃性の点で優れている。また、PVCの平均重合度が2,000以下であれば成形性の点で優れている。これらのPVCは工業的に製造され、多方面にわたって利用されているものでありその製造方法、物性については良く知られている。
[(D)流動改質剤]
本実施形態の樹脂組成物において、更に(D)流動改質剤を含むことが好ましい。
(D)流動改質剤の含有量は、樹脂組成物全体100質量部に対し、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは、0.5〜8質量部、更に好ましくは1〜6質量部である。(D)流動改質剤の含有量がこのような範囲にあることで、成形体表面の光沢を向上させるだけでなく、耐衝撃性を向上させることができる。
(D)流動改質剤として、好ましくはシリコンオイル、ポリエチレンワックス、脂肪族アルコール、エチレンビスステアリン酸アミド及びミネラルオイルからなる群より選ばれる少なくとも1種である。(D)流動改質剤としてこれらを用いることで成形体表面の光沢を向上させるだけでなく、耐衝撃性を向上させることができる。
[(E)酸化アンチモン]
本実施形態の樹脂組成物において、更に(E)酸化アンチモンを含むことが好ましい。
(E)酸化アンチモンの含有量は、樹脂組成物全体100質量部に対し、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは2〜9.5質量部、更に好ましくは4〜9質量部である。(E)酸化アンチモンの含有量がこのような範囲にあることで、高い難燃性及び難燃性の安定化を図ることができる。酸化アンチモンは、難燃助剤として広く用いられているものである。(E)酸化アンチモンとしては、特に限定されないが、例えば、三酸化アンチモン(三酸化二アンチモン)及び五酸化アンチモンなどの酸化アンチモンが代表例として挙げられる。該酸化アンチモンの平均粒子径は0.3〜150μmであることが好ましい。
[(F)安定剤]
本実施形態の樹脂組成物において、更に(F)安定剤を含むことが好ましい。
(F)安定剤の含有量は、樹脂組成物全体100質量部に対し、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは1〜8質量部、更に好ましくは2〜6質量部である。(F)安定剤の含有量がこのような範囲にあることで、機械物性を維持しつつ、成形時の安定性(特に熱滞留での安定性)を高め、光沢性の良好な成形体を得ることができる。
(F)安定剤としては、好ましくは、ジブチルスズマレイン酸塩、ジブチルスズ−3メルカプトプロピオン酸塩、ハイドロタルサイト、ステアリン酸亜鉛が挙げられる。その他、塩素系樹脂用の安定剤を用いることができる。
[その他成分]
本実施形態の樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、公知の添加剤を添加できる。具体的には、特に限定されないが、例えば、充填材(タルク、マイカ、炭酸カルシウム等)、導電付与剤(カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト等)、着色剤(酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミニウム、有機染料等)、紫外線吸収剤、耐候剤、滑剤、酸化防止剤を含有することができる。これらの含有量は、樹脂組成物100質量部に対し、充填材、導電付与剤は30質量部以下が好ましく、それ以外は5質量部以下であることが好ましい。これらは単独であっても、複数を組み合わせて使用してもよい。
[樹脂組成物の製造方法]
本実施形態の樹脂組成物は、公知の方法による製造を行うことができる。具体的には、特に限定されないが、例えば、一軸又は多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー等により、以下のように原料成分を混合及び溶融混練し、成形することにより製造することができる。
原料成分を混合及び溶融混練する方法としては、特に限定されず、当業者が周知の方法を利用できる。具体的には、特に限定されないが、例えば、原料成分を、予めスーパーミキサー、タンブラー、V字型ブレンダー等で混合し、一軸押出機又は二軸押出機で一括溶融混練する方法、一部成分を二軸押出機メインスロート部に供給し溶融混練しつつ、押出機の途中から残る成分を添加する方法等が挙げられる。これらはいずれも利用できるが、本実施形態の成形体の機械的物性を高めるためには、(C)塩素系樹脂以外を二軸押出機メインスロート部に供給し溶融混練しつつ、押出機の途中から(C)塩素系樹脂を添加する方法が好ましい。最適な条件は、押出機の大きさによって変動するため、当業者の調整可能な範囲で適宜調整することが好ましい。より好ましくは、押出機のスクリューデザインに関しても、当業者に調整可能な範囲で種々調整する。
[成形体]
本実施形態における成形体は、上述のスチレン系樹脂組成物を含む。
[成形体の製造方法]
本実施形態における成形体を得るための成形方法については、特に限定されず、公知の成形方法を利用できる。具体的には、特に限定されないが、例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発泡射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法のいずれかによって成形することができる。
[用途]
本実施形態の樹脂組成物は、難燃性、機械的強度及び外観が要求される成形体の原料として使用することができる。
本実施形態の成形体は電気機器及び電子機器の筐体として好適に使用でき、特に屋内外用途の電子機器、電気やガスメーターの外装、火災報知器の部品等に好適に使用できる。
以下、実施例及び比較例により本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、これらの実施例及び比較例に限定されるものではない。
実施例及び比較例で用いた樹脂組成物及び成形体の製造条件と評価項目は以下のとおりである。
(1)押出
原料を一括ブレンドし、シリンダ温度を160〜200℃に設定し、二軸押出機(ZSK−25、コペリオン製)にて押出を実施して樹脂組成物を得た。
(2)成形体の作製
射出成形機(EC−75SXII、東芝機械(株)製)を用いて、得られた樹脂組成物から、JIS K7152−1及びISO294−1に準拠した小型試験片の樹脂成形体を得た。また、燃焼性試験用試験片としては、得られた樹脂組成物から、IEC−60695−11−10に準拠した小型試験片の樹脂成形体を得た。
(3)難燃性
前記IEC−60695−11−10に準拠して成形された125mm×13mm×1.5mm厚の小型試験片の樹脂成形体を用い、UL94に準拠した燃焼試験を行い、難燃性を以下のように評価した。
○:(合格)自己消火性あり
×:(不合格)自己消火性なし
(4)耐衝撃性(シャルピー衝撃強度)
前記ISO294−1に準拠して成形された小型試験片の樹脂成形体を用い、ISO179に準拠した切削後衝撃強度試験を行い、シャルピー衝撃強度を測定し、耐衝撃性を以下のように評価した。
◎:(合格)シャルピー衝撃強度7.5kJ/m2以上
○:(合格)シャルピー衝撃強度6kJ/m2以上、7.5kJ/m2未満
△:(合格)シャルピー衝撃強度4.5kJ/m2以上、6kJ/m2未満
×:(不合格)シャルピー衝撃強度4.5kJ/m2未満
(5)大型射出成形性
得られた樹脂組成物から、大型射出成形機にて600mm×30mm×15mmの格子状のプレート板を成形し、プレート板におけるシルバー発生量に基づき大型射出成形性を以下のように評価した。
○:(合格)シルバーが全体の1/20未満で見られる
△:(合格)シルバーが全体の1/20〜1/10の範囲で見られる
×:(不合格)シルバーが全体の1/10を超えて見られ、非常に多い
(6)熱滞留性安定性
成形機温度を200℃とし、10分間成形機内に溶融滞留後成形したサンプルの変色の色差ΔE(分光5nm光学反射、光源:D65光10°視野、正反射光を除いた測定(d/8)条件、観察視野:直径15mm)を測定し、熱滞留性安定性を以下のように評価した。
<評価>
〇:(合格)ΔE≦1
△:(合格)1<ΔE≦3
×:(不合格)3<ΔE
(7)外観(光沢)
光沢計(グロスメーターUGV−6P、スガ試験機(株)製)を用い、カラープレートの光沢を測定し、外観を以下のように評価した。なお、カラープレートは、90mm×50mm×2.5mm厚の鏡面金型を用いて樹脂組成物から得られた。
◎:(合格)光沢が92%以上
○:(合格)光沢が90%以上、92%未満
△:(合格)光沢が88%以上、90%未満
×:(不合格)光沢が88%未満
〔原料成分〕
実施例及び比較例に用いた樹脂組成物及び成形体の原料成分を以下に説明する。
(A)スチレン系共重合体は、以下のものを用いた。
(A1)アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂):スチレン比率75質量%、数平均分子量35,000
(A2)アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂):スチレン比率75質量%、数平均分子量40,000
(A3)アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂):スチレン比率75質量%、数平均分子量60,000
(A4)アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂):スチレン比率75質量%、数平均分子量80,000
(A5)アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂):スチレン比率75質量%、数平均分子量130,000
(A6)アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂):スチレン比率75質量%、数平均分子量160,000
(A7)アクリロニトリル・αメチルスチレン樹脂:αメチルスチレン比率75質量%、数平均分子量60,000
なお、本実施例において、(A)スチレン系共重合体の数平均分子量は以下の方法で測定した。(A)スチレン系共重合体をテトラヒドロフラン(THF)中に浸漬し、溶解した(A)スチレン系共重合体成分をろ別した。得られたろ液を用い、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した。当該測定結果に基づき、(A)スチレン系共重合体の数平均分子量を、ポリスチレン(PS)を標準物質として算出した。
(B)ゴム重合体は、以下のものを用いた。
(B1)(b1)ブタジエンゴムに(b2)アクリロニトリル・スチレン樹脂(平均ゴム粒径500nm)をグラフトさせたゴム重合体
(C)塩素系樹脂は、以下のものを用いた。
(C1)ポリ塩化ビニル(PVC):平均重合度600
(C2)塩素化ポリエチレン(CPE):MFR1.5g/10min、塩素含有量30質量%
(D)流動改質剤は、以下のものを用いた。
(D1)ジメチルシリコーンオイル:基油粘度 350mm2/s(40℃)
(D2)流動パラフィン:動粘度 69.67mm2/s(40℃)
(D3)エチレンビスステアリン酸アミド
(E)酸化アンチモンは、以下のものを用いた。
(E1)三酸化二アンチモン:平均粒子径1μm
(F)安定剤は、以下のものを用いた。
(F1)ジブチルスズマレイン酸塩
(F2)ジブチルスズ−3メルカプトプロピオン酸塩
[実施例1〜14、比較例1〜6]
各成分がそれぞれ表1に記載の割合となるように原料を配合して上記方法により押出し、樹脂組成物を製造した。得られた樹脂組成物を用い、上記条件にて成形し、成形体を製造した。
得られた成形体の物性を表1及び2にまとめた。
以上の実施例及び比較例の結果から、本実施形態の樹脂組成物は、優れた難燃性、耐衝撃性を維持しつつ、高品位である(外観(光沢)、熱滞留安定性、大型射出成形性に優れる)ことは明白である。
Figure 2021195527
Figure 2021195527
本発明の樹脂組成物及び成形体は、優れた難燃性、耐衝撃性を維持しつつ、高品位を有することから、電気機器及び電子機器の筐体等の分野において産業上の利用可能性を有する。
[実施例1、2、5、6及び8〜14、参考例1〜3、比較例1〜6]
各成分がそれぞれ表1に記載の割合となるように原料を配合して上記方法により押出し、樹脂組成物を製造した。得られた樹脂組成物を用い、上記条件にて成形し、成形体を製造した。
得られた成形体の物性を表1及び2にまとめた。
以上の実施例及び比較例の結果から、本実施形態の樹脂組成物は、優れた難燃性、耐衝撃性を維持しつつ、高品位である(外観(光沢)、熱滞留安定性、大型射出成形性に優れる)ことは明白である。
Figure 2021195527
[実施例1、2、6及び8〜14、参考例1〜、比較例1〜6]
各成分がそれぞれ表1に記載の割合となるように原料を配合して上記方法により押出し、樹脂組成物を製造した。得られた樹脂組成物を用い、上記条件にて成形し、成形体を製造した。
得られた成形体の物性を表1及び2にまとめた。
以上の実施例及び比較例の結果から、本実施形態の樹脂組成物は、優れた難燃性、耐衝撃性を維持しつつ、高品位である(外観(光沢)、熱滞留安定性、大型射出成形性に優れる)ことは明白である。
Figure 2021195527

Claims (9)

  1. (A)スチレン系共重合体100質量部と、(A)スチレン系共重合体100質量部に対して(B)ゴム重合体2.5〜40質量部と、(C)塩素系樹脂10〜90質量部と、を含み、(A)スチレン系共重合体の数平均分子量が40,000〜150,000である、スチレン系樹脂組成物。
  2. 樹脂組成物全体100質量部に対し、更に(D)流動改質剤を0.1〜10質量部含む、請求項1に記載のスチレン系樹脂組成物。
  3. 前記(D)流動改質剤が、シリコンオイル、ポリエチレンワックス、脂肪族アルコール、エチレンビスステアリン酸アミド及びミネラルオイルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項2に記載のスチレン系樹脂組成物。
  4. 前記(A)スチレン系共重合体が、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂)及びアクリロニトリル・αメチルスチレン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物。
  5. 前記(B)ゴム重合体が、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン樹脂(ABS樹脂)及びメタクリル酸メチル・ブタジエン・スチレン樹脂(MBS樹脂)からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物。
  6. 前記(C)塩素系樹脂が、塩化ビニル樹脂(PVC)、塩素化ポリエチレン(CPE)及び塩化ビニリデン樹脂(PVDC)からなる群より選ばれる少なくとも1成分である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物。
  7. 樹脂組成物全体100質量部に対し、更に(E)酸化アンチモンを1〜10質量部含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物。
  8. 樹脂組成物全体100質量部に対し、更に(F)安定剤を0.1〜10質量部含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物を含む成形体。
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