JP2021194927A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】軟弱路でのトラクション性能を向上させた空気入りタイヤを提供する。【解決手段】一対のサイドウォール部3を有する空気入りタイヤ1である。少なくとも一方のサイドウォール部3のタイヤ軸方向の外表面は、ベース面10と、ベース面10よりもタイヤ軸方向の外側に突出した少なくとも1つの第1突出部11と、第1突出部11をベース面10から離隔させるようにベース面10を延びる凹部13とを含む。第1突出部11は、ベース面10に対して第1突出量h1を有する第1面16と、ベース面10に対して第1突出量h1とは異なる第2突出量h2を有する第2面17とを含み、これらが段差を形成するように繋がっている。【選択図】図2

Description

本発明は、空気入りタイヤに関する。
例えば、下記特許文献1には、トレッド部のパターン要素を規定することにより、氷上路面における性能と、乾燥路面における性能、特に耐摩耗性能とをより高い次元で両立し得るタイヤが提案されている。
特開2020−045099号公報
ところで、近年、不整地走行を前提とした空気入りタイヤには、様々な路面における走破性能の向上が求められており、とりわけ、雪路や砂地といった軟弱路でのトラクション性能の向上が求められている。
発明者らは、サイドウォール部に突出部を設けることに着目し、かつ、前記突出部の形状を改善することにより、本発明を完成させるに至った。
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、軟弱路でのトラクション性能を向上させた空気入りタイヤを提供することを主たる課題としている。
本発明は、一対のサイドウォール部を有する空気入りタイヤであって、前記一対のサイドウォール部の少なくとも一方のサイドウォール部のタイヤ軸方向の外表面は、ベース面と、前記ベース面よりもタイヤ軸方向の外側に突出した少なくとも1つの第1突出部と、前記第1突出部を前記ベース面から離隔させるように前記ベース面を延びる凹部とを含み、前記第1突出部は、前記ベース面に対して第1突出量を有する第1面と、前記ベース面に対して前記第1突出量とは異なる第2突出量を有する第2面とを含み、これらが段差を形成するように繋がっている。
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第1突出部において、前記第1面と前記第2面とは、タイヤ半径方向に並んでいるのが望ましい。
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第2突出量は、前記第1突出量よりも小さく、前記第2面は、前記第1面のタイヤ半径方向外側に位置しているのが望ましい。
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第1突出部の前記ベース面に沿った断面の面積は、前記凹部の底部側に向かって大きくなっているのが望ましい。
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記少なくとも一方のサイドウォール部は、複数の前記第1突出部を備え、前記第1突出部の間に、前記ベース面よりもタイヤ軸方向外側に突出した第2突出部が配されているのが望ましい。
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第2突出部は、前記ベース面から直接タイヤ軸方向外側に突出しているのが望ましい。
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第2突出部は、前記ベース面からの突出量がタイヤ半径方向内側に向かって小さくなっているのが望ましい。
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第2突出部の前記ベース面からの最大突出量は、前記第1突出部の前記ベース面からの最大突出量よりも小さいのが望ましい。
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第2突出部のタイヤ半径方向の最大の長さは、前記第1突出部のタイヤ半径方向の最大の長さよりも小さいのが望ましい。
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第2突出部のタイヤ周方向の最大の長さは、前記第1突出部のタイヤ周方向の最大の長さよりも小さいのが望ましい。
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第2突出部は、タイヤ軸方向外側を向く頂面を含み、前記頂面には、凹溝が設けられているのが望ましい。
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記凹溝は、前記第2突出部の前記頂面をタイヤ半径方向に延びているのが望ましい。
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記凹部の底面には、前記凹部の開口形状に沿って延びる溝部が設けられているのが望ましい。
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記少なくとも一方のサイドウォール部には、前記第1突出部のタイヤ半径方向外側に、タイヤ周方向に延びる周方向溝が設けられているのが望ましい。
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記周方向溝は、前記ベース面に連なるエッジと、前記ベース面から最も深い位置となる底とを含み、前記周方向溝の横断面において、前記底を通る法線のタイヤ軸方向に対する角度は、前記エッジを通る法線のタイヤ軸方向に対する角度よりも小さいのが望ましい。
本発明の空気入りタイヤは、上記の構成を採用したことによって、軟弱路でのトラクションを向上させることができる。
本発明のタイヤの一実施形態の横断面図である。 図1のサイドウォール部の拡大斜視図である。 図2のA−A線端面図である。 本発明の他の実施形態のサイドウォール部の拡大斜視図である。 図4のB−B線端面図である。 本発明のさらに他の実施形態のサイドウォール部の拡大斜視図である。 図6のC−C線端面図である。 本発明のさらに他の実施形態のサイドウォール部の拡大斜視図である。 図8の第1突出部の頂面及び凹部の開口面の拡大平面図である。 図9のD−D線端面図である。 図8のE−E線端面図である。 比較例のタイヤのサイドウォール部の拡大斜視図である。
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の空気入りタイヤ1(以下、単に「タイヤ」という場合がある)の正規状態におけるタイヤ回転軸を含む横断面図である。なお、図1は、円環状に延びるタイヤ1をタイヤ周方向と直交する仮想平面で切断したときの、タイヤ赤道Cよりもタイヤ軸方向の一方側のタイヤ断面を示す図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、オフロード走行に対応したRV用又はSUV用として好適に用いられる。
前記正規状態とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。なお、本明細書で説明された各構成は、ゴム成形品に含まれる通常の誤差を許容するものとする。
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2と、一対のサイドウォール部3と、一対のビード部4と、カーカス6とを備えている。ビード部4には、ビードコア5が埋設されている。カーカス6は、一対のビード部4の間をトロイド状に跨っている。なお、図1において、トレッド部2の半分、一対のサイドウォール部3の一方、及び、一対のビード部4の一方は省略されている。
カーカス6は、一方のビード部4からトレッド部2を通って他方のビード部(図示省略)まで延びるカーカスコードを有するカーカスプライ6Aを含む。カーカスコードは、サイドウォール部3を通るのは言うまでもない。
本実施形態のカーカスプライ6Aは、例えば、並列されたカーカスコードがトッピングゴムで被覆されて構成されている。本実施形態のカーカス6は、1枚のカーカスプライ6Aで構成されているが、複数枚のカーカスプライ6Aで構成されても良い。
カーカスプライ6Aは、例えば、本体部6aと折返し部6bとを含んでいる。本体部6aは、例えば、2つのビード部4の間を延びている。これにより、本体部6aは、少なくともトレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至る。折返し部6bは、例えば、本体部6aに連なりビードコア5の廻りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返されている。本体部6aと折返し部6bとの間には、ビードコア5からタイヤ半径方向外側にのびるビードエーペックス8が配され、ビード部4が適宜補強される。
カーカスコードには、例えば、アラミド、レーヨンなどの有機繊維コードが採用される。カーカスコードは、タイヤ赤道Cに対して70〜90°の角度で配列されるのが望ましい。
望ましい態様として、本実施形態のカーカス6のタイヤ半径方向外側には、ベルト層7が設けられている。ベルト層7は、例えば、タイヤ半径方向に重ねられた2枚のベルトプライ7A、7Bで構成されている。各ベルトプライ7A、7Bは、ベルトコードがトッピングゴムで被覆されて構成されており、互いのベルトコードが交差する向きにタイヤ半径方向内外に重ねられている。
図2には、サイドウォール部3の拡大斜視図が示されている。図2に示されるように、一対のサイドウォール部3の少なくとも一方のサイドウォール部3のタイヤ軸方向の外表面は、ベース面10と、少なくとも1つの第1突出部11と、凹部13とを含む。第1突出部11は、ベース面10よりもタイヤ軸方向の外側に突出している。凹部は、第1突出部11をベース面10から離隔させるようにベース面10を延びている。本実施形態では、第1突出部11がタイヤ周方向に複数設けられている。
本実施形態において、タイヤ1の最大幅位置とトレッド端Teとの間の領域は、サイドウォール部3の外表面に含まれるものとする。ベース面10は、サイドウォール部3の外表面の主要部を構成するものであり、トレッド部2の外表面やビード部4の外表面と滑らかに連なる。トレッド端Teは、前記正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。
「正規荷重」は、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。また、各種の規格が定められていないタイヤの場合、「正規荷重」は、タイヤの標準使用状態において、1つのタイヤに作用する荷重を指す。前記「標準使用状態」とは、タイヤの使用目的に応じた標準的な車両にタイヤが装着され、かつ、前記車両が走行可能な状態で平坦な路面上に静止している状態を指す。
図3には、図2のA−A線端面図が示されている。図3に示されるように、第1突出部11は、ベース面10に対して第1突出量h1を有する第1面16と、ベース面10に対して第1突出量h1とは異なる第2突出量h2を有する第2面17とを含み、これらが段差18を形成するように繋がっている。本発明のタイヤ1は、上記の構成を採用したことによって、軟弱路でのトラクションを向上させることができる。その理由としては、以下のメカニズムが推察される。
一般に、雪路や砂地等の軟弱路では、タイヤの走行時、トレッド部2だけでなくサイドウォール部3の外表面も路面と接触する。このため、第1突出部11は、軟弱路において、タイヤの回転に伴ってタイヤ周方向の反力を提供し、トラクション性能を高める。
本発明では、凹部13によって第1突出部11がその根元部分からタイヤ周方向に変形し易い。このため、第1突出部11は、軟弱路であっても適度に変形して大きなトラクションを発揮し得る。
また、第1突出部11に段差18があることにより、その頂面15の表面積が大きくなる。これにより、頂面15と路面との接触面積を増やすことができ、軟弱路においてトラクション性能がさらに向上する。このようなメカニズムにより、本発明のタイヤ1は、軟弱路でのトラクションを向上させることができると推察される。
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本発明は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本発明のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
図1に示されるように、第1突出部11は、タイヤ1が軟弱路を走行したときに路面と接触する位置に設けられるのが望ましい。このため、第1突出部11は、サイドウォール部3の内、タイヤ1の最大幅位置よりもタイヤ半径方向外側に設けられる。さらに望ましい態様では、トレッド端Teから第1突出部11のタイヤ半径方向の外端までのタイヤ半径方向の距離が、50mm以下とされる。
図2に示されるように、第1突出部11の頂面15は、例えば、その平面視において矩形状であり、望ましくはタイヤ半径方向に縦長の矩形状である。但し、前記頂面15は、このような態様に限定されるものではなく、多角形状、楕円形状等、種々の態様を採用し得る。
段差18は、例えば、第1突出部11の頂面15をタイヤ周方向に延びている。本実施形態の段差は、タイヤ周方向に平行に延びており、頂面15を完全に横断している。
図3に示されるように、第1突出部11において、第1面16と第2面17とは、タイヤ半径方向に並んでいる。また、第2突出量h2は、第1突出量h1よりも小さく、第2面17は、第1面16のタイヤ半径方向外側に位置している。第1突出部11は、タイヤ半径方向外側の領域に大きな負荷が作用するため、この領域の突出量を相対的に小さくすることにより、第1突出部11に作用する負荷を分散させることができる。したがって、上述の構成により、第1突出部11が軟弱路と接触したときの第1突出部11の過度な変形が抑制され、タイヤ周方向の反力を大きくすることができる。
第1面16のタイヤ半径方向の長さL1は、第2面17のタイヤ半径方向の長さL2よりも小さい。具体的には、第1面16の前記長さL1は、第2面17の前記長さL2の40%〜60%である。このような第1面16及び第2面17は、第1突出部11の耐久性を維持しつつ、トラクション性能を向上させることができる。
ベース面10からの第1突出量h1は、例えば、2〜6mmであり、望ましくは3〜5mmである。ベース面10からの第2突出量h2は、例えば、1〜5mmであり、望ましくは2〜4mmである。段差18の大きさh3は、例えば、1〜4mmであり、望ましくは2〜3mmである。
第1突出部11のベース面10に沿った断面の面積は、凹部13の底部側に向かって大きくなっているのが望ましい。第1突出部11の頂面15の平面視における面積(第1面16と第2面17との面積の合計)は、第1突出部11の前記凹部13の底における前記断面の面積の65%〜95%である。これにより、第1突出部11の根元部分の剛性が高くなり、トラクション性能が向上する。また、このような第1突出部11は、凹部13内に雪や砂が保持されるのを防ぐこともできる。
図2に示されるように、凹部13は、例えば、第1突出部11を囲むループ状であるのが望ましい。これにより、第1突出部11のタイヤ周方向を向く側面の面積を大きく確保でき、トラクション性能がより一層向上する。
図3に示されるように、凹部13のベース面10に沿った開口幅L3は、例えば、0.5〜3.0mmである。凹部13の深さd1は、例えば、1.0〜4.0mmである。但し、本発明の凹部13は、このような態様に限定されるものではない。
以下、本発明の他の実施形態が説明される。他の実施形態を示す図において、既に説明された要素には、上述のものと同じ符号が付されており、上述の構成を適用することができる。
図4には、本発明の他の実施形態のサイドウォール部3の拡大斜視図が示されている。この実施形態のサイドウォール部3は、複数の第1突出部11を備え、これらの第1突出部11の間に、ベース面10よりもタイヤ軸方向外側に突出した第2突出部12が配されている。この実施形態では、第1突出部11及び第2突出部12によってトラクション性能のさらなる向上を期待している。
第2突出部12は、第1突出部11と異なる形状で構成されている。このため、第1突出部11と第2突出部12とが異なる態様で変形し、サイドウォール部3の雪や泥が付着して保持されるのを防ぐことができる。
第2突出部12は、例えば、ベース面10から直接タイヤ軸方向外側に突出している。換言すれば、第2突出部12の側面がベース面10と連なっている。このような第2突出部12は、高い剛性を有し、軟弱路だけでなく、比較的大きな石が敷き詰められたロック路面でのトラクションの向上に役立つ。
この実施形態では、第2突出部12のタイヤ半径方向の最大の長さは、第1突出部11のタイヤ半径方向の最大の長さよりも小さい。また、第2突出部12のタイヤ周方向の最大の長さは、第1突出部11のタイヤ周方向の最大の長さよりも小さい。さらに、第2突出部12のベース面10からの最大突出量は、第1突出部11のベース面10からの最大突出量よりも小さい。これにより、第1突出部11と第2突出部12との間に泥や雪が付着して保持されるのを防ぐことができる。
図5には、図4のB−B線端面図が示されている。図5に示されるように、第2突出部12の頂面20には、段差が設けられていない。また、第2突出部12の頂面20は、例えば、タイヤ外方に凸に湾曲した面で構成されている。これにより、第2突出部12の耐久性が向上する。
第2突出部12は、ベース面10からの突出量がタイヤ半径方向内側(図5では右側)に向かって小さくなっている。これにより、ベース面10に対する第2突出部12の頂面20の角度θ1は、例えば、10〜45°であり、望ましくは15〜25°である。このような第2突出部12は、雪や砂を第1突出部11の剛性の大きい部分に誘導する。このため、第2突出部12は、上述の第1突出部11との組み合わせにより、トラクション性能をより一層向上させることができる。
第2突出部12のベース面10からの最大の突出量h4は、第1突出部11のベース面10からの第1突出量h1(図3に示す)よりも小さい。第2突出部12の最大の突出量h4は、例えば、第1突出部11の第1突出量h1の30%〜60%である。このような第2突出部12は、耐久性を維持しつつトラクション性能を高めることができる。
本実施形態では、第2突出部12のタイヤ半径方向の外端部において、第2突出部12の最大の突出量h4が構成されている。また、第2突出部12のタイヤ半径方向の内端部において、第2突出部12の最小の突出量h5が構成されている。前記最小の突出量h5は、前記最大の突出量h4の10%〜30%である。これにより、第2突出部12が押し退けた雪や砂が、さらに第1突出部11の第1面16側に案内され易くなり、より一層トラクション性能が向上する。
図6には、図4とは異なる形状の第2突出部12が設けられたサイドウォール部3の拡大斜視図が示されている。図6に示されるように、この実施形態の第2突出部12の頂面20には、凹溝21が設けられている。これにより、第2突出部12がタイヤ周方向に適度に変形し易くなり、軟弱路でのトラクション性能がより一層向上する。
上述の効果を確実に発揮させるために、凹溝21は、例えば、第2突出部12の頂面20をタイヤ半径方向に延びている。凹溝21は、例えば、一定の幅でタイヤ半径方向に平行に延びている。凹溝21は、前記頂面20をタイヤ半径方向に横断しているのが望ましい。また、凹溝21は、第2突出部12の頂面20のタイヤ周方向の中心位置の上に設けられているのが望ましい。このような凹溝21を有する第2突出部12は、上述の第1突出部11との組み合わせにより、様々な路面で優れたトラクション性能を発揮できる。
図7には、図6のC−C線端面図が示されている。図7に示されるように、この実施形態では、第1突出部11の第2面17が第2突出部12の頂面20よりも突出している。第1突出部11の第2面17と第2突出部12の頂面20との突出量の差h6は、望ましくは1.0mm以上、より望ましくは1.5mm以上であり、望ましくは3.0mm以下、より望ましくは2.5mm以下である。これにより、第1突出部11及び第2突出部12が協働して優れたトラクション性能を発揮し得る。
凹溝21のタイヤ周方向の幅W1は、例えば、第2突出部12の頂面20のタイヤ周方向の長さL4の50%以下であり、望ましくは20〜45%である。凹溝21の最大の深さd2は、第1突出部11に隣接する凹部13の最大の深さd1よりも小さいのが望ましい。具体的には、凹溝21の前記深さd2は、0.5〜2.0mmであり、望ましくは1.0〜1.5mmである。このような凹溝21は、第2突出部12の耐久性を維持しつつトラクション性能を向上させるのに役立つ。
図8には、さらに他の実施形態のサイドウォール部3の拡大斜視図が示されている。図8に示されるように、この実施形態では、タイヤ周方向に並んだ第1突出部11の間に、これらを連結してタイヤ周方向に延びるリブ23が設けられている。このようなリブ23は、第1突出部11に連動して変形し、軟弱路走行時、第1突出部11の周辺に泥や土が保持されるのを防ぐことができる。
リブ23の頂面は、例えば、第1突出部11の第2面17と段差を介することなく連なっている。これにより、リブ23のベース面10からの突出量は、第2面17の第2突出量h2と同一である。但し、この実施形態は、このような態様に限定されるものではない。
リブ23は、例えば、タイヤ周方向に平行に延びている。また、リブ23は、凹部13を横断して第1突出部11に連結している。これにより、凹部13は、リブ23によってタイヤ半径方向の一方側と他方側とに分断されている。このようなリブ23は、第1突出部11の周辺に泥や土が保持されるのを確実に防ぐことができる。
リブ23の長さ方向と直交する向きの幅は、例えば、第2面17のタイヤ半径方向の長さよりも小さい。また、リブ23の前記幅は、例えば、第1面16のタイヤ半径方向の長さよりも小さい。具体的には、リブ23の前記幅は、0.5〜2.0mmである。
図9には、第1突出部11の頂面15及び凹部13の開口面の拡大平面図が示されている。なお、図9において、凹部13の開口面は、着色されている。図10には、図9のD−D線端面図が示されている。図9及び図10に示されるように、凹部13の底面には、凹部13の開口形状に沿って延びる溝部25が設けられている。溝部25の開口幅W2は、凹部13の開口幅L3の5%〜15%であり、望ましくは7%〜12%である。溝部25の深さd3は、凹部13の深さd1(溝部25を除く深さである)の5%〜20%である。このような溝部25が設けられた凹部13は、開き易くなり、その内部に多くの雪や砂を取り込むことができる。
この実施形態の凹部13は、例えば、リブ23で分断されることにより、リブ23よりもタイヤ半径方向外側の外側部31と、リブ23よりもタイヤ半径方向内側の内側部32とを含んでいる。また、内側部32は、タイヤ周方向に延びる1つの周方向部33と、周方向部33の両側に連なってタイヤ半径方向に延びる2つの径方向部34とを含む。この実施形態では、凹部13の径方向部34に溝部25が設けられている。一方、外側部31の全体及び内側部32の周方向部33には、溝部25が設けられていない。このような溝部25の配置は、第1突出部11の耐久性を維持しつつ、上述の効果を発揮することができる。
図8に示されるように、この実施形態のサイドウォール部3には、第1突出部11のタイヤ半径方向外側に、タイヤ周方向に延びる周方向溝40が設けられている。このような周方向溝40は、軟弱路走行時、第1突出部11と協働して泥や土を押し固めてタイヤ周方向の反力を提供し、ひいてはトラクション性能を高める。とりわけ、この実施形態では、周方向溝40と溝部25が設けられた凹部13との組み合わせによって、泥濘地において優れたトラクション性能が発揮される。
周方向溝40の開口幅W3は、例えば、第1突出部11の第2面17のタイヤ半径方向の長さよりも小さい。また、周方向溝40の開口幅W3は、例えば、リブ23の幅よりも大きい。周方向溝40の開口幅W3は、例えば、1.5〜3.0mmである。周方向溝40に深さは、例えば、0.5〜2.5mmである。
図11には、図8のE−E線端面図が示されている。図11に示されるように、周方向溝40は、例えば、半円形の断面形状を有している。本実施形態では、周方向溝40は、ベース面10に連なるエッジ41と、ベース面10から最も深い位置となる底42とを含む。周方向溝40の横断面において、底42を通る法線42aのタイヤ軸方向に対する角度θ2は、エッジ41を通る法線41aのタイヤ軸方向に対する角度θ3よりも小さい。前記角度θ2は、例えば、5〜30°であり、望ましくは10〜25°である。このような周方向溝40は、第1突出部11側に向かって泥を押し固め易くなり、トラクション性能がさらに向上する。
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
図1の基本構造を有しかつ図2〜図11のいずれかに示されるサイドウォール部を有するサイズ35×12.50R20LTの空気入りタイヤが試作された。比較例として、図12に示されるサイドウォール部aを有するタイヤが試作された。図12に示されるように、比較例のサイドウォール部aには、凹部に囲まれていない複数の突出部bを有している。また、比較例の突出部bは、その頂面が平坦であり、本発明の第1突出部のような段差を有していない。比較例のタイヤは、突出部の構成を除き、実施例のタイヤと実質的に同じ構成を具えている。各テストタイヤのトラクション性能及び突出部の耐久性がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
リム:10.0JJ×20
タイヤ内圧:450kPa
テスト車両:排気量4700cc、四輪駆動
テストタイヤ装着位置:全輪
<トラクション性能>
雪路及び砂地を含む軟弱路からなる周回路を上記テスト車両で2周走行したときの平均タイムが測定された。結果は、比較例の前記タイムの逆数を100とする指数であり、数値が大きい程、前記タイムが小さく、軟弱路でのトラクション性能が優れていることを示す。
<突出部の耐久性>
比較的大きな石が敷き詰められたロック路面を一定距離走行した後、第1突出部のクラックの発生個数が測定された。結果は、前記発生個数の逆数であり、比較例を100とする指数で示されている。数値が大きい程、突出部にクラックが発生し難く、クラックの耐久性が優れていることを示す。
なお、以下で示される各表において、トラクション性能を示す指数と、突出部の耐久性を示す指数との合計は、タイヤの総合性能を示す評点として扱っても構わない。
図2に示される突出部を有し、かつ、段差の大きさh3及び凹部の深さd1を変化させたタイヤが試作された。また、これらのタイヤについて、上述のテストが実施された。
テストの結果が表1に示される。
Figure 2021194927
表1に示される通り、図2に示される実施形態は、軟弱路において優れたトラクション性能を発揮していることが確認できた。また、表1に記載の実施例のタイヤの突出部は、比較例の突出部と比較して適度な柔軟性を有しているため、クラックが発生し難く、優れた耐久性を発揮していることも確認できた。
図2に示される突出部を有し、かつ、第1突出部の凹部の底におけるベース面に沿った断面の面積Sbに対する、第1突出部の頂面の平面視における面積Saの面積を変化させたタイヤが試作された。また、これらのタイヤについて、上述のテストが実施された。
テストの結果が表2に示される。
Figure 2021194927
表2に示されるように、第1突出部の頂面の面積が、トラクション性能と相関していることが確認できた。また、表2に示される実施例は、突出部の耐久性が優れていることも確認できた。
図4に示される突出部を有し、かつ、第2突出部の頂面の角度θ1を変化させたタイヤが試作された。また、これらのタイヤについて、上述のテストが実施された。
テストの結果が表3に示される。
Figure 2021194927
表3に示される通り、図4に示される実施形態は、優れたトラクション性能を発揮していることが確認できた。また、第2突出部の頂面の角度θ1が、トラクション性能と相関していることが確認できた。
図6に示される突出部を有し、かつ、第1突出部と第2突出部との突出量の差h6及び凹溝の深さd2を変化させたタイヤが試作された。また、これらのタイヤについて、上述のテストが実施された。
テストの結果が表4に示される。
Figure 2021194927
表4に示される通り、図6に示される実施形態は、優れたトラクション性能を発揮していることが確認できた。また、前記突出量の差h6及び前記凹溝の深さd2がトラクション性能と相関していることが確認できた。
図8に示される突出部を有し、かつ、凹部内に設けられた溝部の寸法を変化させたタイヤが試作された。また、これらのタイヤについて、上述のテストが実施された。
テストの結果が表5に示される。
Figure 2021194927
表5に示される通り、図8に示される実施形態は、優れたトラクション性能を発揮していることが確認できた。また、凹部内に設けられた溝部は、トラクション性能と相関していることが確認できた。
図8に示される突出部を有し、かつ、周方向溝の底を通る法線の角度θ2を変化させたタイヤが試作された。また、これらのタイヤについて、上述のテストが実施された。なお、これらのテストタイヤの周方向溝のエッジを通る法線の角度θ3は、35°と統一されている。
テストの結果が表6に示される。
Figure 2021194927
表5に示される通り、図8に示される実施形態は、優れたトラクション性能を発揮していることが確認できた。また、前記角度θ2は、トラクション性能と相関していることが確認できた。
3 サイドウォール部
10 ベース面
11 第1突出部
13 凹部
16 第1面
17 第2面
h1 第1突出量
h2 第2突出量

Claims (15)

  1. 一対のサイドウォール部を有する空気入りタイヤであって、
    前記一対のサイドウォール部の少なくとも一方のサイドウォール部のタイヤ軸方向の外表面は、
    ベース面と、
    前記ベース面よりもタイヤ軸方向の外側に突出した少なくとも1つの第1突出部と、
    前記第1突出部を前記ベース面から離隔させるように前記ベース面を延びる凹部とを含み、
    前記第1突出部は、前記ベース面に対して第1突出量を有する第1面と、前記ベース面に対して前記第1突出量とは異なる第2突出量を有する第2面とを含み、これらが段差を形成するように繋がっている、
    空気入りタイヤ。
  2. 前記第1突出部において、前記第1面と前記第2面とは、タイヤ半径方向に並んでいる、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記第2突出量は、前記第1突出量よりも小さく、
    前記第2面は、前記第1面のタイヤ半径方向外側に位置している、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記第1突出部の前記ベース面に沿った断面の面積は、前記凹部の底部側に向かって大きくなっている、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記少なくとも一方のサイドウォール部は、複数の前記第1突出部を備え、
    前記第1突出部の間に、前記ベース面よりもタイヤ軸方向外側に突出した第2突出部が配されている、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記第2突出部は、前記ベース面から直接タイヤ軸方向外側に突出している、請求項5に記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記第2突出部は、前記ベース面からの突出量がタイヤ半径方向内側に向かって小さくなっている、請求項5又は6に記載の空気入りタイヤ。
  8. 前記第2突出部の前記ベース面からの最大突出量は、前記第1突出部の前記ベース面からの最大突出量よりも小さい、請求項5ないし7のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  9. 前記第2突出部のタイヤ半径方向の最大の長さは、前記第1突出部のタイヤ半径方向の最大の長さよりも小さい、請求項5ないし8のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  10. 前記第2突出部のタイヤ周方向の最大の長さは、前記第1突出部のタイヤ周方向の最大の長さよりも小さい、請求項5ないし9のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  11. 前記第2突出部は、タイヤ軸方向外側を向く頂面を含み、
    前記頂面には、凹溝が設けられている、請求項5ないし10のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  12. 前記凹溝は、前記第2突出部の前記頂面をタイヤ半径方向に延びている、請求項11に記載の空気入りタイヤ。
  13. 前記凹部の底面には、前記凹部の開口形状に沿って延びる溝部が設けられている、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  14. 前記少なくとも一方のサイドウォール部には、前記第1突出部のタイヤ半径方向外側に、タイヤ周方向に延びる周方向溝が設けられている、請求項1ないし13のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  15. 前記周方向溝は、前記ベース面に連なるエッジと、前記ベース面から最も深い位置となる底とを含み、
    前記周方向溝の横断面において、前記底を通る法線のタイヤ軸方向に対する角度は、前記エッジを通る法線のタイヤ軸方向に対する角度よりも小さい、請求項14に記載の空気入りタイヤ。
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