以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。
本実施形態に係る方法の一側面は、第一部材と第二部材とを含む複合部材の製造方法であって、シリコーンゴム成形体である当該第一部材のシリコーンゴム表面と、ポリプロピレン成形体である当該第二部材のポリプロピレン表面とを接着する接着工程を含む。
また、本実施形態に係る複合部材は、シリコーンゴム成形体である第一部材と、ポリプロピレン成形体である第二部材と、を含み、当該第一部材のシリコーンゴム表面と、当該第二部材のポリプロピレン表面とが接着している。
本発明に係る複合部材は、互いに接着している第一部材と第二部材とを含むものであれば特に限られないが、本明細書においては、当該複合部材が、断熱二重容器を含む飲料容器の中栓部材であり、当該第一部材として、当該断熱二重容器の上部開口の内周面に密着する中栓パッキンを含み、当該第二部材として、当該中栓パッキンを支持する中栓基材を含む例について主に説明する。
図1には、中栓部材21を含む飲料容器1の一例について、その断面を示す。図1に示す例において、飲料容器1は、断熱二重容器10と、当該断熱二重容器10の上部開口11を開閉可能に覆う栓20とを含み、当該栓20は、中栓部材21を含む。
図2には、図1に示す飲料容器1の栓20の斜視断面を示す。図3A、図3B、及び図3Cには、図1に示す中栓部材21の製造方法の一例に含まれる主な工程を示し、図3Dには、当該方法により製造される中栓部材21を示す。
図4には、飲料容器1の他の例の一部について、その断面を示す。図5A、図5B、及び図5Cには、図4に示す中栓部材21の製造方法の一例に含まれる主な工程を示し、図5Dには、当該方法により製造される中栓部材21を示す。
なお、本明細書及び図面においては、同一又は類似の構成に同一の符号を付して説明する。また、本明細書においては、飲料容器1の軸線A(図1、図4)に沿った方向を「軸方向」といい、当該軸方向において、断熱二重容器10の底面12から上部開口11に向かう方向を「上方」といい、これと反対方向を「下方」という。また、飲料容器1の軸線Aに垂直な方向を「径方向」といい、当該径方向において、断熱二重容器10の中心から外方に向かう方向を「径方向外方」といい、これと反対方向を「径方向内方」という。
まず、中栓部材21の製造方法について説明する。中栓部材21は、飲料容器1の断熱二重容器10の上部開口11の内周面11aに密着する中栓パッキン(第一部材)30と、当該中栓パッキン30を支持する中栓基材(第二部材)40とを含む複合部材である。
中栓パッキン30は、シリコーンゴム成形体であり、シリコーンゴム表面(以下、「ゴム表面」という。)31を有する。中栓基材40は、ポリプロピレン成形体であり、ポリプロピレン表面(以下、「PP表面」という。)41を有する。
中栓部材21の製造方法は、中栓パッキン30のゴム表面31と、中栓基材40のPP表面41とを接着する接着工程を含む。接着工程においては、中栓部材21の通常の使用において中栓パッキン30のゴム表面31と中栓基材40のPP表面41とが分離不能な接着強度で、当該ゴム表面31と当該PP表面41とを接着する。
具体的に、接着工程においては、中栓パッキン30のゴム表面31と、中栓基材40のPP表面41とを、JIS K6256−2「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−接着性の求め方−第2部:剛板との90°剥離強さ」に準拠した方法により測定される剥離強さ(以下、単に「剥離強さ」という。)が3.0N/mm以上の強度で接着することが好ましい。
この場合、接着工程において達成するゴム表面31とPP表面41との接着強度は、剥離強さが3.0N/mm以上となる範囲であれば特に限られないが、当該剥離強さは、例えば、4.0N/mm以上であることが好ましく、5.0N/mm以上であることがより好ましく、5.5N/mm以上であることがより一層好ましく、6.0N/mm以上であることが特に好ましい。ゴム表面31とPP表面41との剥離強さが大きいことによる問題は特にないため、当該剥離強さの上限値は特に限られない。
なお、剥離強さ(N/mm)は、JIS K6256−2に準拠した方法により測定される最大剥離力(N)を試験片の幅(25mm)で除することにより算出される。最大剥離力(N)は、JIS K6256−2に準拠した方法により測定される、剥離するために必要な最大力(N)である。最大剥離力は、4つのサンプルについて得られた測定値の算術平均値として算出される。
接着工程において、中栓パッキン30のゴム表面31と、中栓基材40のPP表面41とを接着する方法は、所望の接着強度(例えば、剥離強さが上記所定値以上の接着強度)を達成する方法であれば特に限られないが、中栓部材21の製造方法は、当該中栓基材40のPP表面41に表面改質処理を施す表面改質工程と、当該中栓基材40の当該表面改質処理が施されたPP表面41にプライマーを塗布するプライマー塗布工程と、をさらに含み、接着工程において、当該中栓パッキン30のゴム表面31と、当該中栓基材40の当該プライマーが塗布されたPP表面41とを接着することが好ましい。
表面改質工程においては、予め成形された中栓基材40のPP表面41に表面改質処理を施すことにより、プライマーと化学的に反応して化学結合(例えば、共有結合)を形成する特性を有する反応性官能基を当該PP表面41に導入する(図3A、図5A)。表面改質処理は、中栓基材40のPP表面41に反応性官能基を導入する処理であれば特に限られないが、例えば、プラズマ放電処理、コロナ放電処理、フレーム処理、イトロ処理及び紫外線照射処理からなる群より選択される1以上であることが好ましい。
中栓基材40のPP表面41に導入される反応性官能基は、例えば、極性官能基であることとしてもよく、酸素原子を含む極性官能基であることが好ましく、水酸基(−OH)、カルボキシ基(−COOH)及びカルボニル基(−C(=O)−)からなる群より選択される1以上であることが特に好ましい。表面改質工程においては、中栓基材40のPP表面41のうち、中栓パッキン30のゴム表面31と接触する部分に表面改質処理を施し、反応性官能基を導入する。
プライマー塗布工程においては、中栓基材40の表面改質処理が施されたPP表面41にプライマーを塗布する(図3B、図5B)。プライマーは、中栓パッキン30のゴム表面31を構成するシリコーンゴムと化学結合(例えば、共有結合)を形成し得る反応性官能基と、中栓基材40の改質されたPP表面41の反応性官能基と化学結合(例えば、共有結合)を形成し得る反応性官能基と、を有するものであれば特に限られない。
プライマーの反応性官能基としては、例えば、アルコキシ基が挙げられるが、上述のようにシリコーンゴム及び改質されたPP表面41と化学結合を生成する1種類以上の反応性官能基であれば特に限られない。
中栓部材40のPP表面41にプライマーを塗布する方法は、特に限られないが、例えば、スプレーによる塗布、刷毛による塗布、印刷及びディッピングからなる群より選択される1以上であることが好ましい。プライマー塗布工程においては、中栓基材40の改質されたPP表面41のうち、中栓パッキン30のゴム表面31と接触する部分の一部又は全部にプライマーを塗布する。
接着工程においては、中栓パッキン30のゴム表面31と、プライマー塗布工程でプライマーが塗布された中栓基材40のPP表面41とを接着する(図3C、図5C)。中栓パッキン30のゴム表面31と、中栓基材40のPP表面41とを接着する方法は、プライマーを介して当該ゴム表面31と当該PP表面41とを接着する方法であれば特に限られないが、接着工程においては、インサート成形により、当該中栓パッキン30の当該ゴム表面31と、当該中栓基材40の当該PP表面41とを接着することが好ましい。
インサート成形においては、図3C及び図5Cに示すように、加熱された金型100内において、中栓基材40のPP表面41上で、シリコーンゴム原料組成物Mから中栓パッキン30を成形する。
すなわち、加熱下で、インサート成形用の金型100の一部(下金型101)に固定された中栓基材40のPP表面41(具体的には、プライマーが塗布された改質PP表面41)と、当該金型100の他の一部(上金型102)と、の間でシリコーンゴム原料組成物M(具体的には、シリコーンゴム原料と加硫剤(例えば、有機過酸化物)とを含む不定形組成物)をプレスする。
その結果、加熱された金型100内において、中栓基材40のPP表面41上でシリコーンゴムの加硫を進行させて中栓パッキン30を成形するとともに、当該PP表面41と当該中栓パッキン30のゴム表面31とをプライマーを介して接着する。
具体的に、中栓基材40のPP表面41を構成する改質されたポリプロピレンと、プライマーとが化学反応によって化学結合(例えば、共有結合)を形成するとともに、当該プライマーと、中栓パッキン30のゴム表面31を構成するシリコーンゴムとが化学反応によって化学結合(例えば、共有結合)を形成することにより、当該PP表面41と当該ゴム表面31とが強固に接着される。
インサート成形における加熱温度は、シリコーンゴムの加硫が進行し、プライマーとゴム表面31及びPP表面41との化学結合形成反応が進行し、且つ、中栓基材40がその機能が損なわれるほど熱変形しない範囲であれば特に限られない。
加熱温度は、例えば、シリコーンゴム原料組成物Mに含まれる加硫剤による加硫反応に適した温度範囲と、プライマーによる化学結合形成反応に適した温度範囲と、中栓基材40を構成するポリプロピレンの耐熱温度範囲とが重複する範囲として決定される。具体的に、加熱温度としては、例えば、使用する加硫剤の種類に応じて、当該加硫剤による加硫反応が十分に進行する温度(例えば、当該加硫剤の推奨温度)が好ましく採用される。
インサート成形において金型100を上記加熱温度に保持する時間は、インサート成形体である中栓部材21が得られる範囲であれば特に限られないが、例えば、使用する加硫剤の種類に応じて、当該加硫剤による加硫反応が十分に進行する時間(例えば、当該加硫剤の推奨時間)が好ましく採用される。
中栓部材21の製造方法は、接着工程で得られた中栓部材21の二次加硫を行う二次加硫工程をさらに含むこととしてもよい。すなわち、インサート成形により中栓部材21を成形する場合、金型100から取り出した中栓部材21を加熱下で保持することで二次加硫を行う。
二次加硫工程における中栓部材21の加熱温度は、二次加硫の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、例えば、加硫剤の推奨温度であることが好ましい。二次加硫工程において中栓部材21を上記加熱温度で保持する時間は、二次加硫の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、例えば、加硫剤の推奨時間であることが好ましい。
次に、本実施形態に係る中栓部材21及び飲料容器1について説明する。飲料容器1は、断熱二重容器10を含む。断熱二重容器10は、内容器13と外容器14とを含み、当該内容器13と当該外容器14との間に断熱空間15が形成されている。
内容器13及び外容器14を構成する材料は特に限られないが、当該内容器13及び外容器14は、例えば、それぞれ金属製又はガラス製であることが好ましい。図1及び図4に示す例において、二重断熱容器10の内容器13及び外容器14は、いずれもステンレス鋼製である。
内容器13と外容器14とは、これらの間に密閉空間が形成されるように接続されている。図1及び図4に示す例においては、内容器13の上端部と外容器14の上端部とが溶接により接続され、当該内容器13と当該外容器14との間に、減圧された密閉空間である断熱空間15が形成されている。こうして得られる断熱二重容器10は、いわゆる真空断熱容器である。
飲料容器1は、中栓部材21を含む。すなわち、図1、図2及び図4に示す例において、飲料容器1は、断熱二重容器10の上部開口11を開閉可能に覆う栓20を含み、当該栓20は、中栓部材21と、当該中栓部材21を支持するカバー部材22とを含む。
カバー部材22は、中栓部材21とは別体に製造され、当該中栓部材21は、当該カバー部材22に取り付けられる。カバー部材22は、断熱二重容器10の上部開口11の上方に配置される天蓋部22aと、当該上部開口11の外周面11bを覆う筒状部22bとを含む。
カバー部材22は、その筒状部22bの内周面22cが、断熱二重容器10の上部開口11の外周面11bと係合することにより、当該断熱二重容器10に取り付けられる。具体的に、図1及び図4に示す例において、カバー部材22の筒状部22bの内周面22cと、断熱二重容器10の上部開口11の外周面11bとは螺合されている。
カバー部材22は、中栓部材21を収容することとしてもよい。すなわち、図1、図2及び図4に示す例において、カバー部材22は、天蓋部22aと筒状部22bとを含む有底筒状に形成され、中栓部材21は、当該天蓋部22a及び筒状部22bに囲まれた空間に収容されている。
中栓部材21は、シリコーンゴム成形体である中栓パッキン30と、ポリプロピレン成形体である中栓基材40とを含む。本実施形態において、中栓部材21は、中栓パッキン30と中栓基材40とから構成される。
中栓部材21は、飲料容器1において、その中栓パッキン30が、断熱二重容器10の上部開口11の内周面11aに密着するように配置される。具体的に、中栓パッキン30の外周面32の一部(より具体的には、外周面32の下方端部)が、断熱二重容器10の上部開口11の内周面11aに密着する。
飲料容器1においては、中栓パッキン30が断熱二重容器10の上部開口11の内周面11aに密着することにより、当該断熱二重容器10内の飲料が、当該中栓パッキン30と当該内周面11aとの間から漏出することが効果的に防止される。
図1、図2及び図4に示すように、本実施形態に係る中栓パッキン30は、中栓基材40によって上方から支持される基部33と、当該基部33の径方向外方端から下方に延びる筒状の延設部34とを有し、当該延設部34の外周面34b(中栓パッキン30の外周面32の一部)が、断熱二重容器10の上部開口11の内周面11aに密着する。
また、図1及び図4に示す例において、中栓パッキン30は、断熱二重容器10の内周面11aのうち、当該断熱二重容器10の内径を低減するように径方向内方に張り出した部分(縮径部分)と密着している。
中栓パッキン30が断熱二重容器10の上部開口11の内周面11aに密着した状態において、当該中栓パッキン30の下面35は、当該上部開口11内に露出する。具体的に、図1及び図4に示す例では、中栓パッキン30の下面35及び延設部34の内周面34aが断熱二重容器10の上部開口11内に露出している。
ここで、本発明に係る中栓部材21において特徴的なことの一つは、中栓パッキン30と中栓基材40とが、飲料容器1の通常の使用において分離不能に接着されている点である。
すなわち、例えば、飲料容器1の使用者が中栓部材21を洗浄するために中栓パッキン30と中栓基材40とを分離しようとした場合に、当該使用者が当該中栓パッキン30と当該中栓基材40とは分離できないと認識できる程度に、当該中栓パッキン30と当該中栓基材40とは強固に接着されている。
この点、従来、断熱二重容器を含む飲料容器の中栓部材においては、樹脂製の中栓基材と、ゴム製の中栓パッキンとが分離可能に嵌着されていた。これは、飲料容器1の使用者が中栓部材を洗浄する際に、中栓パッキンと中栓基材とを分離して、これらの部材を別々に洗浄できるようにするためであった。
しかしながら、例えば、分離可能な中栓パッキンと中栓基材との間に隙間が形成されることは不可避であるため、飲料容器を使用した結果、当該隙間に汚れがたまってしまうことがあった。
また、例えば、使用者が中栓パッキンを中栓基材から分離して洗浄した後、当該中栓パッキンを中栓基材に取り付け忘れた場合には、当該中栓パッキンのない飲料容器が使用されることとなり、その結果、断熱二重容器の上部開口から飲料が漏出してしまうことがあった。また、例えば、飲料容器を展示販売する場合、飲料容器の中栓パッキンが中栓基材から取り外され、盗まれることもあった。これに対し、本発明に係る中栓部材21においては、中栓パッキン30と中栓基材40とが分離不能に接着されているため、上記問題が効果的に回避される。
本発明に係る中栓部材21において特徴的なことの他の一つは、中栓パッキン30としてシリコーンゴム成形体を採用するとともに、中栓基材40としてポリプロピレン成形体を採用している点である。
シリコーンゴムは、吸水性が低く、高温及び低温でも十分な弾性を維持し、十分な耐薬品性を有する点で、他のゴム材料に比べて、中栓パッキン30を構成する材料として優れている。
また、ポリプロピレンは、吸水性が低く、十分な強度及び耐薬品性を有し、安価であるという点で、例えば、ABS樹脂、ナイロン、ポリカーボネート等の他の樹脂に比べて、中栓基材40を構成する材料として優れている。
そこで、本発明の発明者らは、従来、強固な接着が困難と考えられていたシリコーンゴムとポリプロピレンとを分離不能に接着するための技術的手段について鋭意検討を行い、本発明を完成するに至った。
具体的に、本発明に係る中栓部材21において、中栓パッキン30のゴム表面31と中栓基材40のPP表面41とは、剥離強さが3.0N/mm以上の強度で接着していることが好ましい。この場合、中栓パッキン30のゴム表面31と、中栓基材40のPP表面41との接着強度は、剥離強さが3.0N/mm以上となる範囲であれば特に限られないが、当該剥離強さは、例えば、4.0N/mm以上であることが好ましく、5.0N/mm以上であることがより好ましく、5.5N/mm以上であることがより一層好ましく、6.0N/mm以上であることが特に好ましい。中栓パッキン30のゴム表面31と、中栓基材40のPP表面41との接着に係る剥離強さが大きいことによる問題は特にないため、当該剥離強さの上限値は特に限られない。
なお、中栓部材21は、カバー部材22に分離不能に(例えば、樹脂による無理嵌めにより)固定されていることとしてもよい。この場合、例えば、飲料容器1の使用者が栓20を洗浄するために中栓部材21とカバー部材22とを分離しようとした場合に、当該使用者が当該中栓部材21と当該カバー部材22とは分離できないと認識できる程度に、当該中栓部材21と当該カバー部材22とは強固に固定されている。
上述のようにプライマーを用いて中栓部材21を製造した場合、中栓パッキン30のゴム表面31と、中栓基材40のPP表面41とは、プライマー由来成分を介して接着している。
すなわち、この場合、中栓パッキン30のゴム表面31を構成するシリコーンゴムと、プライマー由来成分との間に化学結合(例えば、供給結合)が形成されるとともに、当該プライマー由来成分と、中栓基材40のPP表面41を構成するポリプロピレンとの間にも化学結合(例えば、供給結合)が形成されている。
プライマー由来成分は、プライマーと、中栓パッキン30のゴム表面31を構成するシリコーンゴム及び中栓基材40のPP表面41を構成する改質されたポリプロピレン(より具体的には、表面改質処理によってPP表面41に導入された反応性官能基)とが化学反応により化学結合を形成した結果、当該ゴム表面31と当該PP表面41との間に残存する当該プライマー分子の一部に相当する化学構造(例えば、上記化学結合を形成する化学反応によって変化しない、当該プライマー分子の一部の化学構造)である。
具体的に、例えば、プライマーとしてアルコキシシランを使用した場合、中栓パッキン30のゴム表面31と、中栓基材40のPP表面41との間には、当該アルコキシシラン分子の一部に相当する化学構造が含まれる。
中栓基材40は、改質されたPP表面41を有することとしてもよい。すなわち、中栓部材21の製造過程において、中栓基材40のPP表面41に表面改質処理を施した場合、製造された当該中栓部材21に含まれる当該中栓基材40は、改質されたPP表面41を有する。
中栓基材40の改質されたPP表面41は、例えば、上述したプライマー由来成分に加えて、表面改質処理により導入された反応性官能基由来成分を含む。反応性官能基由来成分は、中栓基材40のPP表面41の反応性官能基と、プライマーとが化学反応により化学結合を形成した結果、当該PP表面41に残存する当該反応性官能基の一部に相当する化学構造である。
また、例えば、中栓パッキン30のゴム表面31と接着している中栓基材40のPP表面41において、プライマーとの化学反応に費やされなかった反応性官能基が残存していることとしてもよい。
また、例えば、中栓部材21の製造過程において、表面改質処理によって、中栓基材40のPP表面41のうち、中栓パッキン30のゴム表面31と接着しない部分にも反応性官能基が導入された場合、当該中栓基材40は、当該ゴム表面31と接着していない改質されたPP表面41(当該反応性官能基が導入されたPP表面41)を有することとしてもよい。
中栓基材40のPP表面41に含まれる反応性官能基は、例えば、極性官能基であることとしてもよく、酸素原子を含む極性官能基であることが好ましく、水酸基(−OH)、カルボキシ基(−COOH)及びカルボニル基(−C(=O)−)からなる群より選択される1以上であることが特に好ましい。なお、表面改質処理が施されたPP表面41は、当該表面改質処理が施されていないPP表面41に比べて高い親水性を有する。
中栓部材21は、インサート成形体であることが好ましい。すなわち、中栓部材21は、上述のとおり、インサート成形により好ましく製造される(図3C、図5C)。
中栓部材21において、中栓基材40は、下方に延びて中栓パッキン30に侵入するフランジ部42を有することが好ましい。すなわち、図1、図2及び図4に示す例において、中栓基部40は、下方に延びる筒状のフランジ部42を有している。
中栓基材40のフランジ部42が中栓パッキン30の内部に侵入する結果、当該中栓パッキン30(具体的には、基部33)は、当該フランジ部42を覆っている。すなわち、中栓基材40のフランジ部42の表面は、PP表面41の一部であり、中栓パッキン30のゴム表面31と接着している。このため、中栓基材40がフランジ部42を有することにより、当該中栓基材40のPP表面41と、中栓パッキン30のゴム表面31との接着面積が効果的に増大する。
また、フランジ部42は、その下方端部(先端部)から上方に向けて、径方向の厚みが増大するテーパー形状であることが好ましい(例えば、図2参照)。フランジ部42をこのようなテーパー形状に形成することにより、当該フランジ部42の表面(下方端面、径方向外側面及び径方向内側面)にプライマーを容易且つ確実に塗布することができ、中栓基材40と中栓パッキン30との接着強度を効果的に高めることができる。
なお、中栓基材40は、径方向(例えば、径方向外方)に延びて中栓パッキン30に侵入するフランジ部を有しないこととしてもよい。すなわち、従来、中栓パッキンと中栓基材とが分離可能な中栓部材においては、断熱二重容器内が冷却されて減圧された場合に、当該中栓パッキンが当該中栓基材から軸方向に脱離することを防止するため、当該中栓基材に、径方向に延びて中栓パッキンに侵入するフランジ部が設けられていた。
しかしながら、本発明に係る中栓部材21においては、中栓パッキン30と中栓基材40とが分離不能に接着されているため、上記従来の径方向に延びるフランジ部を設ける必要がない。
また、例えば、インサート成形においては、シリコーンゴム原料組成物Mのみならず、中栓基材40も、加熱下で上下方向にプレスされることから(図3C、図5C)、当該中栓基材40が径方向に延びるフランジ部を有している場合、当該インサート成形によって、当該フランジ部は変形してしまうことがある。このため、中栓基材40は、径方向に延びるフランジ部を有していてもよいが、下方に延びるフランジ部42を有することが好ましい。
中栓基材40は、径方向に延びて、その上方及び下方から中栓パッキン30によって挟持されるブリッジ部44を有することとしてもよい(図2、図3D参照)。すなわち、インサート成形において、シリコーンゴム原料組成物Mが、中栓基材40のブリッジ部44の上方及び下方に形成された図示略の隙間に侵入して硬化することにより、得られた中栓部材21において、当該ブリッジ部44は中栓パッキン30に埋設される。中栓基材40がブリッジ部44を有することにより、中栓部材21において、当該中栓基材40と中栓パッキン30との接着面積が増大し、接着強度が効果的に高められるとともに、当該中栓パッキン30が当該中栓基材40から軸方向に脱離することが効果的に抑制される。
中栓基材40は、下方に延びて、中栓パッキン30(具体的には、基部33)の外周面32の一部(具体的には、外周面32の上方端部)を覆う土手部43を有することとしてもよい。この場合、土手部43の下面43aは、中栓パッキン30に覆われていないこととしてもよい。中栓基材40の土手部43は、例えば、インサート成形において、シリコーンゴム原料組成物Mが径方向外方にはみ出ないように、当該シリコーンゴム原料組成物Mをせき止める機能を担う。
中栓パッキン30は、外周面32に、径方向外方に環状に突出する環状突出部36を有することとしてもよい。環状突出部36は、延設部34の外周面34bより径方向外方に突出しないことが好ましい。すなわち、環状突出部36の径方向外方端(突出先端)は、延設部34の外周面34bよりも径方向内側に位置することが好ましい。中栓パッキン30の環状突出部36は、図3C及び図5Cに示すインサート成形において、下金型101と上金型102との境界面で、シリコーンゴム原料組成物Mが径方向外方に僅かにはみ出すことにより形成される。
飲料容器1において、中栓部材21は、断熱二重容器10の上部開口11の径方向断面の全部を閉塞可能な部材であってもよいし、当該上部開口11の径方向断面の一部のみを閉塞可能な部材であってもよい。
すなわち、図1に示す例において、中栓部材21は、断熱二重容器10の上部開口11の径方向断面の全部を閉塞している。具体的に、中栓パッキン30の基部33は、断熱二重容器10の上部開口11の径方向中央部分を覆う中央部37を有し、当該上部開口11の内周面aに密着することで、当該上部開口11の径方向断面の全部を閉塞している。
このように、中央部37を有する中栓パッキン30は、中栓基材40の下方のPP表面41の全体を覆っている。この結果、中栓パッキン30が中央部37を有しない場合に比べて、中栓パッキン30と中栓基材40との接着面積が増大し、接着強度が効果的に高められる。
一方、図4に示す例において、中栓部材21は、断熱二重容器10の上部開口11の径方向断面の一部のみを閉塞している。具体的に、中栓部材21の径方向中央部分には、中栓パッキン30及び中栓基材40を軸方向に貫通する連通穴23が形成されている。このため、中栓部材21は、断熱二重容器10の上部開口11の径方向外周部分のみを閉塞し、当該上部開口11の径方向中央部分は閉塞していない。
飲料容器1において、栓20は、その全部が開閉可能に断熱二重容器10に取り付けられるものであってもよいし、その一部が開閉可能に断熱二重容器10に取り付けられるものであってもよい。
すなわち、図1に示す例において、栓20は、その全部が開閉可能に断熱二重容器10に取り付けられている。具体的に、この例では、栓20の全部を断熱二重容器10から取り外すことにより、当該断熱二重容器10の上部開口11が外部と連通され、飲料容器1は開状態となる。飲料容器1の開状態において、使用者は、断熱二重容器10の上部開口11を介して、当該断熱二重容器10に収容された飲料を注出することができる。
一方、図4に示す例において、栓20は、その一部が開閉可能に断熱二重容器10に取り付けられている。具体的に、この例では、栓20のカバー部材22の天蓋部22aは、筒状部22bに対してヒンジ部22dを介して回動可能に取り付けられている。
そして、カバー部材22の筒状部22bが二重断熱容器10の上部開口11の外周面11bに取り付けられ、且つ、中栓部材21が当該筒状部22bに取り付けられた状態(中栓パッキン30が当該上部開口11の内周面11aに密着した状態)で、当該カバー部材22の天蓋部22aを回動させることにより、当該断熱二重容器10の上部開口11が、中栓部材21の連通穴23を介して外部と連通され、飲料容器1は開状態となる。
飲料容器1の開状態において、使用者は、断熱二重容器10の上部開口11及び中栓部材21の連通穴23を介して、当該断熱二重容器10に収容された飲料を注出することができる。
飲料容器1において、中栓パッキン30は、図1及び図4に示すように、断熱二重容器10の上部開口11内に配置されることとしてもよい。具体的に、この場合、中栓パッキン30は、その全部が、断熱二重容器10の上部開口11の上端11c(より具体的には、断熱二重容器の上端)より下方に配置される。また、中栓基材40の一部も、断熱二重容器10の上部開口11内に配置されることとしてもよい。
本実施形態に係る方法の他の側面は、断熱二重容器10に、中栓部材21を取り付ける取付工程を含む、飲料容器1の製造方法である。取付工程においては、中栓部材21の中栓パッキン30が断熱二重容器10の上部開口11の内周面11aに密着するよう、当該中栓部材21を当該断熱二重容器10に取り付ける。
中栓部材21を含む栓20を有する飲料容器1を製造する場合には、当該中栓パッキン30が断熱二重容器10の上部開口11の内周面11aに密着するよう、当該栓20を当該断熱二重容器10に取り付ける。
飲料容器1の製造方法は、上述した中栓部材21の製造方法により中栓部材21を製造する工程をさらに含んでもよい。この場合、飲料容器1の製造方法は、上述した接着工程を含む。また、飲料容器1の製造方法は、上述した表面改質工程、及びプライマー塗布工程をさらに含むこととしてもよい。すなわち、飲料容器1の製造方法は、表面改質工程、プライマー塗布工程、接着工程、及び取付工程を含むこととしてもよい。
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
[実施例1]
図1及び図2に示す中栓部材21及び飲料容器1を製造した。まず、ポリプロピレンの射出成形により、中栓基材40を成形した。次に、図3Aに示すように、中栓基材40のPP表面41に表面改質処理を施した。さらに、図3Bに示すように、中栓基材40の表面改質処理が施されたPP表面41にプライマーを塗布した。
そして、図3Cに示すように、インサート成形を行った。すなわち、下金型101に固定した中栓基材40のプライマーが塗布されたPP表面41上で、シリコーンゴム原料及び加硫剤を含むシリコーンゴム原料組成物Mを、当該加熱された下金型101と上金型102とによってプレスし、加硫が十分進行し、且つポリプロピレンが熱に耐えられる範囲の温度及び時間で保持した。
こうして、図3Dに示すように、シリコーンゴム成形体である中栓パッキン30と、ポリプロピレン成形体である中栓基材40とから構成されるインサート成形体である中栓部材21を得た。その後、金型100から取り出した中栓部材21を、排気機構を備えたオーブン内に入れ、加硫が十分進行する温度及び時間で保持することにより、二次加硫を行った。
製造された中栓部材21において、中栓パッキン30と中栓基材40とは強固に接着しており、これらを手で引っ張って分離することは実質的に不可能であった。そして、中栓部材21を、別途製造されたカバー部材22に取り付けることで、図2に示すような栓20を製造した。さらに、栓20を、別途製造された断熱二重容器10に取り付けることで、図1に示すような飲料容器1を製造した。
[実施例2]
例2−1においては、JIS K6256−2に準拠した方法により、シリコーンゴム試験片及びポリプロピレン試験片から構成されるインサート成形体における当該シリコーンゴム試験片と当該ポリプロピレン試験片との剥離強さを評価した。
まず、ポリプロピレンの射出成形により、ポリプロピレン試験片を成形した。次に、ポリプロピレン試験片の一方の表面に表面改質処理を施した。さらに、ポリプロピレン試験片の表面改質処理が施された表面にプライマーを塗布した。
そして、下金型に固定したポリプロピレン試験片のプライマーが塗布された表面上に、シリコーンゴム原料及び加硫剤を含むシリコーンゴム原料組成物を置き、当該加熱された下金型と上金型とによってプレスし、加硫が十分進行し、且つポリプロピレンが熱に耐えられる範囲の温度及び時間で保持することにより、インサート成形を行った。
こうして、シリコーンゴム成形体であるシリコーンゴム試験片と、ポリプロピレン成形体であるポリプロピレン試験片とから構成されるインサート成形体を得た。その後、金型から取り出したインサート成形体を、排気機構を備えたオーブン内に入れ、加硫が十分進行する温度及び時間で保持することにより、二次加硫を行った。
そして、市販の試験装置(試験治具としてゴム接着力試験装置2形(90度)を備えた精密万能試験機オートグラフ、株式会社島津製作所)を用いて、インサート成形体におけるシリコーンゴム試験片とポリプロピレン試験片との90°剥離試験を行い、変位(mm)に対する試験力(N)を測定し記録した。剥離試験で測定された最大剥離力(N)を試験片の幅(25mm)で除することにより、剥離強さ(N/mm)を算出した。
例2−2においては、JIS K6256−2に準拠した方法により、シリコーンゴム試験片とポリプロピレン試験片とを接着剤で接着して得られた複合試験片における当該シリコーンゴム試験片と当該ポリプロピレン試験片との剥離強さを評価した。
まず、上述の例2−1と同様に、ポリプロピレン試験片を成形した。次に、ポリプロピレン試験片の一方の表面に、ポリプロピレン及びポリエチレンに使用可能なプラスチック用の市販の接着剤(アロンアルファ、東亜合成株式会社)に付属のプライマーを塗布した。一方、上述の例2−1で使用したものと同一のシリコーンゴム原料組成物のコンプレッション成形により、シリコーンゴム試験片を成形した。
次に、ポリプロピレン試験片のプライマーが塗布された表面と、シリコーンゴム試験片の一方の表面とを、上記市販の接着剤(アロンアルファ、東亜合成株式会社)を用いて接着した。そして、上述の実施例2−1と同様にして、複合試験片におけるシリコーンゴム試験片とポリプロピレン試験片との剥離強さを評価した。
例2−3においては、ポリプロピレン試験片の表面にプライマー塗布を施さなかった点、及び、接着剤として、ポリプロピレンやポリエチレンにも使用可能な市販の接着剤(スコッチ(登録商標)、超強力接着剤・プレミアゴールド・スーパー多用途、スリーエムジャパン株式会社)を用いた点以外は上述の実施例2−2と同様にして、複合試験片におけるシリコーンゴム試験片とポリプロピレン試験片との剥離強さを評価した。
例2−4においては、ポリプロピレン試験片に代えて、ポリカーボネートの射出成形により得られたポリカーボネート試験片を用いたこと以外は上述の実施例2−1と同様にして、インサート成形体におけるシリコーンゴム試験片とポリカーボネート試験片との剥離強さを評価した。
図6には、例2−1、例2−2、例2−3及び例2−4の各々で測定された最大剥離力(N)及び剥離強さ(N/mm)を示す。なお、図6に示す最大剥離力は、各例において4つの試験片を用いて測定された4つの最大剥離力の算術平均値である。
図6に示すように、接着剤を用いた例2−2及び例2−3における剥離強さは、それぞれ1.5N/mm及び0.8N/mmであったのに対し、インサート成形を行った例2−1及び例2−4における剥離強さは、それぞれ6.2N/mm及び5.4N/mmであった。すなわち、インサート成形により達成される剥離強さは、接着剤を用いて達成される剥離強さに比べて顕著に大きかった。
また、ポリプロピレン試験片を用いた例2−1で達成された剥離強さは、ポリカーボネート試験片を用いた例2−4で達成された剥離強さよりも大きかった。すなわち、例2−1においては、飲料容器1の中栓部材21に適したポリプロピレンを用いることにより、ポリカーボネートを用いた場合よりも高い接着強度が達成された。