本実施形態の好ましい実施形態に対してここで詳細に言及がなされ、それらの例は、添付の図面で例証されている。
本実施形態は、RTLSを含む、対象のRFベースの同定、追跡および位置検出のための方法およびシステムに関する。一実施形態によると、方法およびシステムは、狭帯域幅レンジング信号を利用する。該実施形態は、VHF帯で作動するが、UHF帯およびより高い周波数と同様に、HF、LFおよびVLF帯でも使用され得る。これは、マルチパス緩和プロセッサーを利用する。マルチパス緩和プロセッサーを利用することで、システムによって実行される追跡および位置検出の精度が増す。
該実施形態は、ユーザーが複数の人および対象を追跡、位置検出、および監視することを可能にする、小型で、高い携帯性のベースユニットを含む。各ユニットは、それ自体のIDを有している。各ユニットは、そのIDとともにRF信号を送信し、IDの他に、音声、データおよび追加情報も含むことができる、帰還信号を送り返すことができる。各ユニットは、他のユニットからの帰還信号を処理し、三角測量または三辺測量及び/又は使用される他の方法に依存して、その相対的な及び/又は実際の位置を継続的に判定する。
好ましい実施形態はまた、GPS装置、スマートフォン、送受信兼用の無線機およびPDAなどの製品と容易に統合され得る。結果として製品は、既存のディスプレイ、センサー(高度計、GPS、加速度計およびコンパスなど)およびそのホストの処理能力を活用しながら、独立型の装置の機能のすべて有するだろう。例えば、本明細書に記載の装置の技術を有するGPS装置は、マップ上にユーザーの位置を提供する他に、グループの他のメンバーの位置をマッピングすることができるだろう。
FPGAの実施に基づく好ましい実施形態のサイズは、集積回路技術が進歩すると、およそ2×4×1インチと2×2×0.5インチの間、またはそれより小さくなる。使用される周波数によって、アンテナは、装置へと統合されるか、または格納装置(device enclosure)を突き出るだろう。装置のASIC(特定用途向け集積回路)ベースのバージョンは、ユニットまたはタグ(Tag)にFPGAの機能および他の電子部品のほとんどを組み込むことができるだろう。製品のASICベースの独立型のバージョンは、結果として、1×0.5×0.5インチまたはそれより小さな装置のサイズとなるだろう。アンテナのサイズは、使用される周波数によって判定され、アンテナの一部は、格納装置へと統合され得る。ASICベースの実施形態は、チップセットのみから成り得る製品へと統合されるように設計されている。マスター(Master)またはタグのユニット間に大きな物理的大きさの違いはないはずである。
装置は、マルチパス緩和アルゴリズムの処理のために複数の周波数範囲(バンド)で作動する標準的なシステム構成部品(在庫部品)を使用することができる。デジタル信号処理およびソフトウェア無線のためのソフトウェアが使用され得る。最小のハードウェアと組み合わせた信号処理ソフトウェアは、ソフトウェアによって定義された送受信波形を有する無線機の組み立てを可能にする。
同時係属中の出願第11/670,595号は、狭帯域幅レンジング信号システムを開示し、これによると、狭帯域幅レンジング信号は、例えば、わずか数キロヘルツ幅の音声チャネルを使用する、低帯域幅のチャネル(数十キロヘルツに拡張するものもあるが)に適合するように設計されている。これは、何百キロヘルツから何十メガヘルツの幅のチャネルを使用する従来の位置検出システムとは対照的である。
この狭帯域幅レンジング信号システムの利点は、以下の通りである:1)より低い動作周波数/バンドで、従来の位置検出システムのレンジング信号帯域幅は、搬送波(動作)周波数値を超える。したがって、このようなシステムは、LF/VLF、およびHFを含む他のより低い周波数バンドで配備され得ない。従来の位置検出システムとは異なり、同時係属中の出願第11/670,595号に記載される狭帯域幅レンジング信号システムは、そのレンジング信号帯域幅が搬送周波数値をはるかに下回るために、LF、VLFおよび他のバンド上にうまく配備され得る;2)(例えばUHFバンドまでの)RFスペクトルの下端(lower end)(幾つかのVLF、LF、HFおよびVHFバンド)では、FCCが許容可能なチャネル帯域幅(12−25kHz)を厳しく制限する(これによって、従来のレンジング信号を使用することは不可能である)ために、従来の位置検出システムは使用することができない。従来の位置検出システムとは異なり、狭帯域幅レンジング信号システムのレンジング信号帯域幅は、FCCの規定および他の国際的なスペクトル規制機関に完全に順守している;および3)動作周波数/バンドとは無関係に、広帯域幅信号と比較して、狭帯域幅信号が本質的により高いSNR(信号対雑音比)を有していることは周知である(MRI: the basics, by Ray H. Hashemi, William G. Bradley ... − 2003を参照)。これによって、UHFバンドを含む、操作する周波数/バンドとは無関係に、狭帯域幅レンジング信号の位置検出システムの動作範囲は増大する。
したがって、従来の位置検出システムとは異なり、狭帯域幅レンジング信号の位置検出システムは、LF/VLFバンドまでの、RFスペクトルの下端(例えば、VHFおよびより低い周波数バンド)に配備され得、ここでマルチパス現象はそれほど顕著でない。同時に、狭帯域幅レンジングの位置検出システムはまた、UHFバンド上に及びそれを越えて(beyond)配備され得ることで、レンジング信号SNRが改善され、結果として、位置検出システムの動作範囲が増大する。
マルチパス、例えば、RFエネルギー反射を最小限にするために、VLF/LFバンド上で動作することが望ましい。しかしながら、これらの周波数では、携帯/移動アンテナの効率は非常に低い(RF波長に対する小型のアンテナ長(サイズ)が原因で約0.1%以下)。さらに、これらの低周波数では、自然発生源および人為発生源からの雑音レベルは、より高い周波数/バンド(例えばVHFの)上よりもはるかに高い。ともに、これらの2つの現象は、位置検出システムの適用可能性、例えば、その動作範囲及び/又は移動性/携帯性を制限し得る。それ故、動作範囲及び/又は移動性/携帯性が非常に重要である特定の適用のために、より高いRF周波数/バンド、例えば、HF、VHF、UHFおよびUWBが使用され得る。
VHFおよびUHFのバンドでは、自然発生源および人為発生源からの雑音レベルは、VLF、LFおよびHFのバンドと比較して、かなり低く;およびVHFおよびHFの周波数でのマルチパス現象(例えば、RFエネルギー反射)は、UHFおよびより高い周波数でのマルチパス現象ほど深刻ではない。また、VHFでのアンテナ効率は、HFおよびより低い周波数でのアンテナ効率よりも著しく優れており、VHFおよびRFでの浸透能力は、UHFでの浸透能力よりもはるかに優れている。したがって、VHFバンドは、移動/携帯用の適用のための良い妥協点(compromise)をもたらす。一方で、幾つかの特別な場合、例えば、VHF周波数(またはより低い周波数)が電離層に浸透できない(または偏向/反射される)GPSでは、UHFはよい選択であり得る。しかしながら、いずれの場合(およびすべての場合/適用)も、狭帯域幅レンジング信号システムは、従来の広帯域幅レンジング信号の位置検出システムに対する利点を有するだろう。
実際の適用は、正確な技術仕様(パワー、放出、帯域幅および動作周波数/バンドなど)によって判定されるだろう。狭帯域レンジングが、最も厳格な狭帯域幅:FCCに明記される、25kHz、11.25kHz、12.5kHz、25kHzおよび50kHz、および適切なセクションに対応する技術的要件に従うものを含む、多くの異なる帯域幅/周波数での操作を可能にするために、狭帯域幅レンジングによって、ユーザーは、ライセンスを受ける又はライセンスの例外を受ける、あるいはFCCに明記されるようなライセンスのないバンドを使用することが可能となる。結果として、複数のFCCセクションおよびそのようなセクション内の例外が適用可能となる。適用可能である主要なFCC規定は以下の通りである:47 CFR Part 90− Private Land Mobile Radio Services、47 CFR Part 94 personal Radio Services、47 CFR Part 15 − Radio Frequency Devices。(比較すると、この文脈における広帯域信号は、数百kHzから10−20MHzまである。)
典型的に、Part 90およびPart 94に関して、VHFの実施によって、ユーザーは、特定の例外の下で(Low Power Radio Serviceがその例)100mWまで装置を作動させることが可能となる。特定の適用のために、VHFバンドでの許容可能な送信電力は、2ワットから5ワットの間である。900MHz(UHFバンド)に対しては、それは1Wである。160kHz−190kHzの周波数(LFバンド)ては、許容可能な送信電力は、1ワットである。
狭帯域レンジングは、異なるスペクトル許容範囲のすべてとは言わなくてもその多くに従うことができ、最も厳格な規制条件に従いながらも、正確なレンジングが可能である。
これは、FCCだけでなく、欧州、日本および韓国を含む、世界中のスペクトルの用途を規制する他の国際組織にも該当する。
以下は、典型的な電力使用量、およびタグが現実世界の環境で他のリーダーと通信することができる距離を用いる、使用される共通周波数のリストである(Indoor Propagation and Wavelength Dan Dobkin, WJ Communications, V 1.4 7/10/02を参照):
915MHz 100mW 150フィート
2.4GHz 100mW 100フィート
5.6Ghz 100mW 75フィート
提案されるシステムは、VHF周波数で作動し、RF信号を送信および処理するための独自の方法を利用する。より具体的には、これは、VHF周波数での狭帯域幅要件の制限に打ち勝つために、DSP技術およびソフトウェア無線(SDR)を使用する。
より低い(VHF)周波数で作動させることで、拡散が減少し、はるかに優れた壁貫通がもたらされる。最終的な結果として、一般に使用される周波数よりもおよそ10倍の範囲の増加がもたらされる。例えば、プロトタイプの測定された範囲を、上にリストされるRFID技術の測定された範囲と比較されたい:
216MHz 100mw 700フィート
狭帯域レンジング技術を利用すると、典型的な電力使用量およびタグの通信範囲が現実世界の環境で他のリーダーと通信伝達することができる距離を用いる、一般に使用される周波数の範囲は、著しく増大するだろう:
915MHz 100mW 150フィートから500フィートまで
2.4GHz 100mW 100フィートから450フィートまで
5.6Ghz 100mW 75フィートから400フィートまで
バッテリー消費は、設計、送信電力、および装置の負荷サイクル、例えば、2回の連続する距離(位置)測定間の時間間隔に依る。多くの適用において、負荷サイクルは、大きく、10Xから1000Xまでである。大きな負荷サイクル、例えば100Xでの適用において、100mWの電力を送信するFPGAのバージョンは、およそ3週間の動作可能時間を有するだろう。ASICベースのバージョンは、動作可能時間を10X増大させると予想される。また、ASICは、本質的により低い雑音レベルを有する。したがって、ASICベースのバージョンはまた、動作範囲を約40%増大させ得る。
当業者は、本実施形態が、システムの長距離の動作範囲を損なわず、一方で、RFの困難な環境(例えば、ビル、都市回廊など)で位置検出の精度を著しく増大させることを認識するだろう。
典型的に、追跡および位置検出のシステムは、追跡−位置検出−ナビゲート(Track−Locate−Navigate)の方法を利用する。これらの方法は、到着時間(TOA)、微分到着時間(Differential−Time−Of−Arrival)(DTOA)、およびTOAとDTOAの組み合わせを含む。測距技術としての到着時間(TOA)は、米国特許第5,525,967号に一般に記載されている。TOA/DTOAベースのシステムは、RFレンジング信号の直接見通し線(DLOS)の飛行時間、例えば、時間遅延を測定し、これはその後、距離範囲に変換される。
RF反射(例えば、マルチパス)の場合には、様々な遅延時間を有するRFレンジング信号の複数のコピーが、DLOS RFレンジング信号上に重畳される。狭帯域幅レンジング信号を使用する追跡−位置検出のシステムは、マルチパス緩和なしでDLOS信号と反射信号を識別することができない。結果として、これらの反射信号は、推定されたレンジング信号DLOの飛行時間の誤差を誘発し、次に、範囲推定精度に影響を与える。
本実施形態は、DLOS信号と反射信号を分離するために、マルチパス緩和プロセッサーを好都合に使用する。したがって、本実施形態は、推定されたレンジング信号DLOSの飛行時間の誤差を著しく低下させる。提案されるマルチパス緩和方法は、すべてのRFバンド上で使用され得る。これはまた、広帯域幅レンジング信号の位置検出システムとともに使用され得る。これはまた、DSS(直接拡散スペクトル)およびFH(周波数ホッピング)などの、拡散スペクトル技術(Spread Spectrum techniques)を含む、様々な変調/復調技術を支持することができる。
さらに、マルチパス緩和方法の精度をさらに上げるために、雑音低減方法が適用され得る。
これらの雑音低減方法は、限定されないが、コヒーレントサミング(coherent summing)、非コヒーレントサミング(non−coherent summing)、マッチトフィルタリング、時間ダイバーシチの技術などを含むことができる。マルチパス干渉誤差の残り(remnants)は、最大推定法(例えば、ビタービアルゴリズム)、最小分散推定法(カルマンフィルタ)などの、後処理技術を適用することによってさらに減少され得る。
本実施形態は、操作のシンプレックス、半二重および全二重のモードを有するシステムで使用され得る。全二重の操作は、複雑性、コストおよびRF送信機上のロジスティックスの点で要求が高く、これによって、携帯/移動用装置の実施における動作範囲が制限される。操作の半二重モードでは、リーダー(しばしば「マスター」と呼ばれる)およびタグ(時に「スレイブ(slaves)」または「ターゲット(targets)」と呼ばれる)は、マスターまたはスレイブが任意の与えられた時間で送信することのみを可能にするプロトコルによって制御される。
交互の送信および受信によって、単一の周波数は、測距で使用されることが可能となる。そのような配置は、全二重のシステムと比較してシステムのコストおよび複雑性を減少させる。操作のシンプレックスモードは、概念上はより簡潔であるが、レンジング信号シーケンス(sequence)の開始を含む、マスターおよびターゲットユニット間の事象のより厳密な同期を必要とする。
本実施形態では、狭帯域幅レンジング信号のマルチパス緩和プロセッサーは、レンジング信号の帯域幅を増大させない。これは、好都合に、狭帯域幅レンジング信号の伝搬を可能にする、異なる周波数成分を使用する。さらなるレンジング信号処理が、超分解能スペクトルの推定アルゴリズム(MUSIC、rootMUSIC、ESPRIT)及び/又はRELAXのような統計アルゴリズムを利用することによって周波数ドメインにおいて、または比較的大きな帯域幅を有する合成レンジング信号を構築して、この信号にさらなる処理を適用することによって時間ドメインにおいて実行され得る。狭帯域幅レンジング信号の異なる周波数成分は、無作為に選択される擬似成分であり得、また、周波数において隣接し得るか又は間隔を置かれ得、および周波数において均一及び/又は不均一な間隔を有し得る。
本実施形態は、マルチパス緩和技術を拡張する。狭帯域レンジングのための信号モデルは、(本文書のどこかで導入されるように)復素指数関数であり、その周波数は、範囲によって定義された遅延+その遅延がマルチパスに関連する時間遅延によって定義される同類項に正比例する。該モデルは、信号構造の実際の実施、例えば、ステップ周波数、線形周波数変調などとは無関係である。
ダイレクトパスとマルチパスとの間の周波数分離は、名目上(nominally)極端に小さく、通常の周波数ドメイン処理では、ダイレクトパスの範囲を推測するのに十分ではない。例えば、30メートルの範囲(100.07ナノ秒の遅延)で5MHzを超える100KHzのステップレートでのステップ周波数のレンジング信号は、結果として、0.062875ラジアン/秒の周波数となる。35メートルのパス(経路)長での多重反射は、結果として、0.073355の周波数をもたらすだろう。分離は0.0104792である。観察可能な50のサンプルの周波数分解能は、0.12566Hzの天然の周波数分解能を有する。結果的に、反射されたパスからのダイレクトパスの分離のために従来の周波数推定技術を使用すること、およびダイレクトパス範囲を正確に推測することは不可能である。
この制限を克服するために、本実施形態は、部分空間分解の高分解能スペクトルの推定方法論とマルチモーダルのクラスター分析の実施の特有の組み合わせを使用する。
部分空間分解技術は、観測データの推測された共分散行列を、2つの直交部分空間、即ち、雑音部分空間および信号部分空間へと分解することに依存する。部分空間分解の方法論の背後にある理論は、雑音部分空間上へのオブザーバブル(observable)の投射が雑音のみから成り、信号部分空間上へのオブザーバブルの投射が信号のみから成るということである。
超分解能スペクトルの推定アルゴリズムおよびRELAXアルゴリズムは、雑音の存在下でのスペクトルにおいて密接に置かれた周波数(シヌソイド)を区別することができる。周波数は、調和関係にある必要はなく、デジタル・フーリエ変換(DFT)とは異なり、信号モデルはいかなる人為的周期性も導入しない。与えられた帯域幅に対して、これらのアルゴリズムは、フーリエ変換よりも著しく高い分解能を提供する。したがって、直接見通し線(DLOS)は、高精度で、他のマルチパス(MP)と確実に区別され得る。同様に、後で説明される閾値方法を、人為的に生成された合成的なより広い帯域幅レンジング信号に適用することによって、高精度で、DLOSを他のパスと確実に区別することが可能である。
本実施形態に従って、デジタル信号処理(DSP)は、DLOSを他のMPパスと確実に区別するマルチパス緩和プロセッサーによって利用され得る。様々な超分解能アルゴリズム/技術は、スペクトル解析(スペクトル推定)技術中に存在する。例は、以下の部分空間ベースの方法を含む:多重信号特性(MUltiple SIgnal Characterization)(MUSIC)アルゴリズムまたはroot−MUSICアルゴリズム、回転不変性技術による信号パラメーターの推定(ESPRIT)アルゴリズム、ピサレンコ高調波分解(PHD)アルゴリズム、RELAXアルゴリズムなど。
上述の超分解能アルゴリズムのすべてにおいて、入ってくる(即ち、受信された)信号は、復素指数関数と周波数のその複素振幅との線形結合としてモデル化される。
マルチパスの場合には、受信された信号は、以下の通りとなる:
が送信された信号である場合に、fは動作周波数であり、Lはマルチパス成分の数であり、および
およびτ
Kは、それぞれ、K番目の(K−th)パスの複素減衰および伝搬遅延である。
マルチパス成分は、伝搬遅延が昇順で考慮されるようにインデックス付けされる。結果として、このモデルでは、τ
0は、DLOSパスの伝搬遅延を示す。明白なことに、τ
0値は、すべての値の中で最も小さい値であるため、最も興味深い値である。位相θ
Kは、通常、均一の確率密度関数U(0,2π)を有して、1つの測定サイクルから別の測定サイクルまでランダムであると仮定される。したがって、α
K=const(即ち、一定値)であると仮定する。
パラメーターαKおよびτKは、ビル内およびビルのまわりの人および機器の動きを反映するランダムな時変関数である。しかしながら、測定時間間隔と比較して、それらの変動速度が非常にゆっくりであるため、これらのパラメーターは、与えられた測定サイクル内の時間不変ランダム変数として処理され得る。
これらすべてのパラメーターは、伝達係数および反射係数などの無線信号の特徴に関連するため、周波数依存性である。しかしながら、実施形態では、動作周波数はほとんど変化しない。したがって、上述のパラメーターは、周波数依存性ではないと仮定され得る。
方程式(1)は、次のような周波数ドメインで示され得:
式中:A(f)は、受信されたシグナルの複素振幅であり、(2π×τ
K)は、超分解能アルゴリズムによって推定される人工の「周波数」であり、および動作周波数fは、独立変数であり;α
Kは、K番目のパス振幅である。
方程式(2)では、(2π×τK)の超分解能推定値および続くτK値は、連続周波数に基づく。実際には、有限数の測定値がある。したがって、変数fは、連続変数にはならず、むしろ離散変数になるだろう。したがって、複素振幅A(f)は、以下のように計算され得る:
は、離散周波数f
nでの離散複素振幅推定値(即ち、測定値)である。
方程式(3)では、
は、振幅、およびマルチパスチャネルを通って伝搬した後の周波数f
nの正弦波信号の位相として解釈され得る。すべてのスペクトル推定ベースの超分解能アルゴリズムが、複素入力データ(即ち複素振幅)を必要とすることに留意されたい。
幾つかの場合では、実信号データ、例えば、
を、複素信号(例えば、分析信号)へと変換することが可能である。例えば、そのような変換は、ヒルベルト変換または他の方法を用いることによって達成され得る。しかしながら、短距離の場合には、値τ
0は、非常に小さく、これは結果的に非常に低い(2π×τ
K)「周波数」をもたらす。
これらの低い「周波数」は、ヒルベルト変換(または他の方法)の実施に伴う問題を引き起こす。加えて、振幅値(例えば、
)のみが使用される場合、推定される周波数の数は、(2π×τ
K)「周波数」だけでなくそれらの組み合わせも含むだろう。概して、知られていない周波数の数を増やすことによって、超分解能アルゴリズムの精度に影響を与える。したがって、他のマルチパス(MP)のパスからのDLOSパスの信頼性のある且つ正確な分離は、複素振幅推定を必要とする。
以下は、マルチパスの存在下での複素振幅
を得るタスクの間の方法およびマルチパス緩和プロセッサーの操作の記載である。該記載は、操作の半二重モードに集中しているが、全二重モードのために容易に拡張され得ることに留意されたい。操作のシンプレックスモードは、半二重モードのサブセットであるが、追加の事象の同期を必要とするだろう。
操作の半二重モードでは、リーダー(大抵の場合「マスター」と呼ばれる)およびタグ(「スレイブ」または「ターゲット」とも呼ばれる)は、マスターまたはスレイブが任意の与えられた時間で送信することのみを可能にするプロトコルによって制御される。操作のこのモードでは、タグ(ターゲット装置)は、トランスポンダーとして機能する。タグは、リーダー(マスター装置)からレンジング信号を受信し、それをメモリに保存し、その後、一定時間(遅延)の後に、信号を再送信してマスターに戻す。
レンジング信号の一例は、図1および図1Aに示される。典型的なレンジング信号は、隣接する異なる周波数成分を利用する。周波数及び/又は時間あるいは直交などで間隔を置かれた、疑似ランダムを含む、他の波形も、レンジング信号帯域幅が狭いままである限り使用され得る。図1では、あらゆる周波数成分のための持続時間Tfは、レンジング信号狭帯域幅のプロパティーを得るのに十分長い。
異なる周波数成分でのレンジング信号の別の変動は、図2に示される。これは、個々の周波数狭帯域を作るために長期間にわたって送信された複数の周波数(f1、f2、f3、f4、fn)を含む。そのような信号は、より効率的であるが、広帯域幅内を占領し、広帯域幅レンジング信号は、その後動作範囲を縮小するSNRに影響を与える。また、そのような広帯域幅レンジング信号は、VHFバンドまたはより低い周波数バンドに関するFCC要件に違反するだろう。しかしながら、特定の適用では、この広帯域幅レンジング信号は、既存の信号へのより容易な統合および伝送プロトコルを可能にする。また、そのような信号は、追跡−位置検出時間を減少させる。
これらの複数の周波数(f1、f2、f3、f4、fn)のバーストは、周波数及び/又は時間ありは直交で間隔を置かれて、隣接してもよい及び/又は疑似ランダムであってもよい。
狭帯域レンジングモードは、即時の広帯域レンジングの形態での精度をもたらし、一方で、広帯域レンジングと比較して、この精度が実現され得る範囲を増大させる。固定された送信電力で、狭帯域レンジング信号の受信機での(適切な信号帯域幅中の)SNRが、広帯域レンジング信号の受信機でのSNRよりも大きいために、この性能が達成される。
SNR利得は、広帯域レンジング信号の総帯域幅と狭帯域レンジング信号の各チャネルの帯域幅のおよその比率である。これによって、例えば、人のウォーキングまたはランニングなどの、定常的で動きの遅いターゲットに非常に急速なレンジングが必要とされないときに、優れたトレードオフが提供される。
マスター装置およびタグ装置は、同一であり、マスターまたはトランスポンダーのモードのいずれかで作動することができる。すべての装置は、データ/リモートコントロールのコミュニケーションチャネルを含む。装置は、情報を交換することができ、マスター装置は、遠隔でタグ装置を管理することができる。図1で描写されるこの例では、マスター(即ち、リーダー)のマルチパス緩和プロセッサーの操作で、レンジング信号をタグに発信する間に、および特定の遅延後に、マスター/リーダーは、タグからの繰り返しのレンジング信号を受信する。
その後、マスターのマルチパス緩和プロセッサーは、受信されたレンジング信号を、マスターから元々送られたレンジング信号と比較し、あらゆる周波数成分fn用の振幅および位相の形態で、
は、一方向のレンジング信号トリップのために定義されることに留意されたい。実施形態では、レンジング信号はラウンドトリップを形成する。言いかえれば、それは下記の両方向を移動する:マスター/リーダーからターゲット/スレイブまでの移動およびターゲット/スレイブからマスター/リーダーまで戻る移動。したがって、マスターによって受信されて戻される、このラウンドトリップの信号複素振幅は、以下の通りに計算され得る:
例えば、整合フィルタ
含む、複素振幅および位相値の推定に利用可能な多くの技術がある。実施形態によると、複素振幅の判定は、マスター及び/又はタグの受信機RSSI(受信信号強度指標)に由来する、
は、リーダー/マスターによって受信されて戻ってきたベースバンドのレンジング信号位相と、元々の(すなわち、リーダー/マスターによって送信された)ベースバンドのレンジング信号位相とを比較することによって得られる。さらに、マスター装置およびタグ装置が、独立したクロックシステムを有するため、装置の操作の詳細な説明が、位相推定誤差へのクロック精度の影響の分析によって増補される。上述の記載が示すように、一方向の振幅値
は、ターゲット/スレイブ装置から直接入手可能である。しかしながら、一方向の位相値
実施形態では、レンジングベースバンド信号は、図1に描写されるものと同じである。
しかしながら、簡潔性のために、レンジングベースバンド信号が2つの周波数成分のみから成り、その各々が異なる周波数:F1およびF2の余弦波または正弦波の複数の周期を包含していることが本明細書で仮定される。F1=f1およびF2=f2であることに留意されたい。第1周波数成分における周期の数はLであり、第2周波数成分における周期の数はPである。Tf=定数に関して、各周波数成分が異なる数の周期を有することができるため、Lは、Pと等しいかもしれない又は等しくないかもしれないことに留意されたい。また、各周波数成分間に時間差はなく、F1およびF2の両方は、0に等しい初期位相から開始する。
図3A、3Bおよび3Cは、RFの移動追跡および位置検出システムのマスターユニットおよびスレイブユニット(タグ)のブロック図を描写する。FOSCは、装置のシステムクロック(図3Aの水晶発振器20)の周波数を指す。装置内で生成された周波数はすべて、このシステムクロックの水晶発振器から生成される。以下の定義が使用される:Mはマスター装置(ユニット)であり;AMはタグ(ターゲット)装置(ユニット)である。タグ装置は、トランスポンダーモードで作動しており、トランスポンダー(AM)ユニットと呼ばれる。
好ましい実施形態では、装置は、RFフロントエンドおよびRFバックエンド、ベースバンドおよびマルチパス緩和プロセッサーから成る。RFバックエンド、ベースバンドおよびマルチパス緩和プロセッサーは、FPGA 150において実施される(図3Bおよび3Cを参照)。システムクロック発生器20(図3Aを参照)は、FOSC=20MHz、またはωOSC=2π×20×106で発振する。これは理想的な周波数であり、なぜなら実際の装置において、システムクロックの周波数は、必ずしも20MHzに等しいとは限らないからである:
20MHz以外のFOSCの周波数は、システム性能への影響なしで使用され得ることに留意されたい。
両方のユニット(マスターおよびタグ)の電子構成は同一であり、操作の異なるモードは、ソフトウェアによってプログラム可能である。ベースバンドレンジング信号は、マスターのFPGA 150、ブロック155−180によってデジタル形式で生成される(図2Bを参照)。これは、2つの周波数成分から成り、その各々が異なる周波数の余弦波または正弦波の複数の周期を包含している。始めに、t=0で、マスター装置中のFPGA 150(図3B)は、I/Q DACs 120および125を介して、デジタルのベースバンドレンジング信号を、そのアップコンバーター50に出力する。FPGA 150は、F1周波数で開始し、時間T1後に、T2の期間、F2周波数を生成し始める。
水晶発振器の周波数が20MHzとは異なるかもしれないため、FPGAによって生成された実際の周波数は、F1γMおよびF2γMとなるだろう。また、時間T1はT1βMとなり、T2はT2βMとなるだろう。また、ITでは、F1γM*T1βM=F1T1およびF1γM*T2βM=F2T2となるように、T1、T2、F1、F2が設定され、ここで、F1T1およびF2T2が整数であると、仮定される。これは、F1とF2の初期位相が0に等しいことを意味する。
全ての周波数がシステムの水晶発振器20クロックから生成されるため、マスターのベースバンドI/Q DAC120および125の出力は、以下の通りである:
F1=γM20×106×KF1およびF2=γM20×106×KF2であり、
ここで、KF1およびKF2は、一定の係数である。同様に、周波数シンセサイザー25(ミキサー50および85用のLO信号)からの出力周波数TX_LOおよびRX_LOは、一定の係数によって表わされ得る。これらの一定の係数は、マスター(M)およびトランスポンダー(AM)に対しても同じであり、その違いは、各装置のシステムの水晶発振器20クロックの周波数にある。
マスター(M)およびトランスポンダー(AM)は、半二重モードで作動する。マスターのRFフロントエンドは、直交アップコンバーター(即ち、ミキサー)50を使用して、マルチパス緩和プロセッサーによって生成されたベースバンドレンジング信号をアップコンバートし、このアップコンバートされた信号を送信する。ベースバンド信号が送信された後、マスターは、RFフロントエンドのTX/RXスイッチ15を使用して、TXからRFモードへと切り替える。トランスポンダーは、信号を受信して、そのRFフロントエンドのミキサー85(第1のIFを生成する)およびADC140(第2のIFを生成する)を使用して、受信された信号をダウンコンバートして戻す。
その後、この第2のIF信号は、デジタルフィルタ190を使用して、トランスポンダーのRFバックエンドプロセッサーにおいてデジタル式でフィルタ処理され、RFバックエンドの直交ミキサー200、デジタルI/Qフィルタ210および230、デジタル直交発振器220および加算器270を使用して、ベースバンドレンジング信号にさらにダウンコンバートされる。このベースバンドレンジング信号は、ラム・データバス・コントローラー(Ram Data Bus Controller)195および制御ロジック180を使用して、トランスポンダーのメモリ170に保存される。
次に、トランスポンダーは、RFフロントエンドスイッチ15を使用して、RXからTXモードへと切り替え、一定の遅延tRTX後に、保存されたベースバンド信号を再送信し始める。遅延がAM(トランスポンダー)システムクロックで測定されることに留意されたい。それ故、
である。マスターは、トランスポンダー送信を受け、そのRFバックエンドの直交ミキサー200、デジタルIQフィルタ210および230、およびデジタル直交発振器220を使用して、受信された信号をダウンコンバートしてベースバンド信号へと戻す(図3Cを参照)。
その後、マスターは、マルチパス緩和プロセッサーのarctanブロック250および位相比較ブロック255を使用して、受信された(即ち、再生された(recovered))ベースバンド信号中のF1とF2の間の位相差を計算する。振幅値は、RFバックエンドのRSSIブロック240より得られる。
推定精度の改善のために、ブロック240からの振幅推定値およびブロック255からの位相差推定値のSNRを改善することが常に望ましい。好ましい実施形態では、マルチパス緩和プロセッサーは、レンジング信号の周波数成分の持続時間(Tf)にわたる多くのタイムインスタンス(time instance)に対する振幅と位相差の推定値を計算する。これらの値は、平均されたときに、SNRを改善する。SNRの改善は、
に比例する位数(in an order)にあり得、ここでNは、振幅および位相差の値が得られた(即ち、判定された)ときのインスタンスの数である。
SNRの改善への別の手法は、一定期間にわたって整合フィルタ技術を適用することによって、振幅および位相差の値を判定することである。しかし、別の手法は、受信された(即ち、繰り返された)ベースバンドレンジング信号の周波数成分をサンプリングし、I/Q様式で、元々の(即ち、マスター/リーダーによって送信された)ベースバンドレンジング信号の周波数成分を期間T≦Tfにわたって積分することによって、受信された(即ち、繰り返された)ベースバンドレンジング信号の周波数成分の位相および振幅を推定することであろう。積分は、I/Q形式での振幅および位相の複数のインスタンスの平均化の効果を有している。その後、位相値および振幅値は、I/Q形式から、
t=0での、マスターのマルチパスプロセッサー制御下で、マスターベースバンドプロセッサー(FPGA150において両方)は、ベースバンドレンジングのシーケンスを開始すると仮定する。
マスターのDAC120および125出力の位相は、以下の通りである:
DAC120および125が、システムクロックに依存しない内部伝搬遅延、
同様に、送信機回路部品15、30、40および50は、システムクロックに依存しない追加の遅延、
結果として、マスターによって送信されたRF信号の位相は、以下のように計算され得る:
マスター(M)からのRF信号は、マスターとタグの間のマルチパス現象の関数である位相シフトφMULTを受ける。
φMULT値は、送信された周波数、例えばF1およびF2に依存する。トランスポンダー(AM)受信機のものは、受信機のRF部分の制限された(即ち、狭い)帯域幅のために、各パスを分解することができない。したがって、一定時間の後、例えば(〜300メートルの飛行と等価な)1マイクロ秒後、すべての反射信号が受信機アンテナに到着したときに下記の式が適用される:
第1のダウンコンバーター、要素85、出力、例えば第1のIFでのAM(トランスポンダー)受信機内では、信号の位相は、以下の通りである:
受信機RF部(要素15および60乃至85)における伝搬遅延
は、システムクロックに依存しないことに留意されたい。RFのフロントエンドのフィルタおよびアンプ(要素95乃至110および125)を通った後、第1のIF信号は、RFバックエンドADC140によってサンプリングされる。ADC140は、入力信号(例えば第1のIF)をアンダーサンプリングしていると仮定される。したがって、ADCは、第2のIFを生成するダウンコンバーターのようにも作用する。第1のIFフィルタ、アンプおよびADCは、伝搬遅延時間を加える。ADC出力(第2のIF)で:
FPGA150では、(ADC出力からの)第2のIF信号は、RFバックエンドのデジタルフィルタ190によってフィルタ処理され、第3のダウンコンバーター(即ち、直交ミキサー200、デジタルフィルタ230、210、ならびにデジタル直交発振器220)によって、さらにダウンコンバートされてベースバンドレンジング信号に戻され、加算器270で加算され、およびメモリ170に保存される。第3のダウンコンバーター出力(即ち、直交ミキサー)で:
FIRセクション190における伝搬遅延
は、システムクロックに依存しないことに留意されたい。
RX->TX遅延の後、マスター(M)からの(メモリ170に)記憶されたベースバンドレンジング信号は、再送信される。RX->TX遅延は、
トランスポンダーからの信号が、マスターの(M)受信機アンテナに到着する時間までに、トランスポンダー(AM)からのRF信号は、マルチパスの関数である別の位相シフトφMULTを受ける。上に議論されるように、この位相シフトは、すべての反射信号がマスターの受信機アンテナに到着したときの一定時間後に起こる:
マスター受信機では、トランスポンダーからの信号は、トランスポンダー受信機でのように、同じダウンコンバート処理を 受ける。結果として得られるものは、マスターによって元々送信された、再生されたベースバンドレンジング信号である。
第1の周波数成分F1について:
第2の周波数成分F2について:
置換え:
ここで、T
D_
M−AMは、マスター(M)およびトランスポンダー(AM)回路を介しての伝搬遅延である。
ここで:φ
BB_
M-AM(0)は、ADCを含む、マスター(M)およびトランスポンダー(AM)周波数ミキサーからの、時間t=0での、LO位相シフトである。
また:
第1の周波数成分F1:
第1の周波数成分F1は、引き続き:
第2の周波数成分F2:
第2の周波数成分F2は、引き続き:
さらに置換えると:
その後の、最終段階の方程式は、次の通りである:
方程式(5)から:
であり、
ここで、i=2、3、4...............;および
例えば、タイムインスタンスT1およびT2での違い
の違いを見つけるために、我々は、T
D_
M−AMを知る必要がある:
ここで、T
LB_MとT
LB_AMは、マスター(M)およびトランスポンダー(AM)TXおよびRX回路を介する伝搬遅延であり、該回路は、装置をループバックモードにすることによって測定される。マスターおよびトランスポンダー装置は、T
LB_MとT
LB_AMを自動的に測定できることに留意された;我々はまた、t
RTX値を知っている。
上記の式およびtRTX値から、TD_M−AMは判定され得、従って、与えられたT1およびT2については、
方程式(6)から、動作周波数では、レンジング信号複素振幅値は、帰還ベースバンドレンジング信号の処理から見出されることが結論付けられ得る。
部分空間アルゴリズムは、一定の位相オフセットに感受性ではないため、初期位相値
は、ゼロに等しいと仮定することができる。必要ならば、
値(位相初期値)は、同時係属中の出願番号第11/670,595号(その全体が引用によって本明細書に組み込まれる)に記載されるような狭帯域幅レンジング信号方法を使用して、TOA(到着時間)を判定することによって、見出され得る。この方法は、レンジング信号ラウンドトリップ遅延を推定し、これは、
好ましい実施形態では、帰還ベースバンドレンジング信号の位相値
は、マルチパスプロセッサーのarctanブロック250によって計算される。SNRを改善するために、マルチパス緩和プロセッサーの位相比較ブロック255は、方程式(6A)を使用して、多くのインスタンスn(n=2、3、4...............)のために
を計算し、その後、それらの平均を求めて、SNRを改善する。
方程式5および6から、再生された(即ち、受信された)ベースバンドレンジング信号は、マスターによって送信された元々のベースバンド信号と同じ周波数を有していることが明らかになる。したがって、マスター(M)およびトランスポンダー(AM)システムクロックが異なり得るという事実にもかかわらず、周波数変換はない。ベースバンド信号は、いくつかの周波数成分から成り、各成分は、正弦波の多数の周期から成るため、対応する元々の(即ち、マスターによって送信された)ベースバンド信号の個々の周波数成分によって受信ベースバンド信号の個々の成分周波数をサンプリングし、およびT≦Tfの周期で結果として生じる信号を積分することによって、受信されたレンジング信号の位相および振幅を推定することも可能である。
この動作は、I/Q形式での受信されたレンジング信号の複素振幅値
を生成する。マスターによって送られた各ベースバンド信号の個々の周波数成分は、T
D_
M−AMによって時間内でシフトされなければならないことに留意されたい。積分操作は、(例えば、SNRを増加させる)振幅および位相の多数のインスタンスを平均する効果をもたらす。位相および振幅値は、I/Q様式から
様式に変換できることに留意されたい。サンプリングし、T≦T
fの周期の間積分し、次に、I/Q様式から
様式へ変換するこの方法は、図3Cの位相比較ブロック255で実施され得る。したがって、ブロックの255の設計および実施に依存して、このセクションに記載される、方程式(5)に基づいた好ましい実施形態の方法、または代替方法のいずれかが使用され得る。
レンジング信号帯域幅は狭いが、周波数差fn−f1は、例えば、数メガヘルツの位数において、比較的大きくなり得る。結果として、受信機の帯域幅は、F1:fnレンジング信号の周波数成分をすべて通すように十分に広くしておかれなければならない。この広帯域受信機の帯域幅は、SNRに影響を与える。受信機有効帯域幅を低減する且つSNRを改善するために、受信されたレンジング信号ベースバンド周波数成分は、受信ベースバンドレンジング信号の個々の周波数成分のために調整されたデジタル狭帯域幅フィルタによって、FPGA150においてRFバックエンドプロセッサーによりフィルタ処理される。しかしながら、この多量のデジタルフィルタ(個々の周波数成分、nの数に等しいフィルタの数)は、FPGAリソースにさらなる負担をかけ、そのコスト、サイズおよび電力消費を増加させる。
好ましい実施形態では、2つの狭帯域幅デジタルフィルタのみが使用される:1つのフィルタは、f1周波数コンポーネントのために常に調整され、もう1つのフィルタは他のすべての周波数コンポーネント:f2:fnのために調整され得る。レンジング信号の多数のインスタンスは、マスターによって送られる。各インスタンスは、2つの周波数:f1:f2;f1:f3.....;f1:fi.....;f1:fnのみから成る。同様の方策も可能である。
ベースバンドレンジング信号成分を、周波数シンセサイザーの調節(例えばKSYNの変更)によって、周波数成分の残りを生成する2つだけ(あるいは1つでも)に維持することお全体的に可能であることに留意されたい。アップコンバーターおよびダウンコンバーターのミキサー用のLO信号が、ダイレクトデジタル合成(DDS)技術を使用して生成されることが望ましい。高いVHF帯周波数については、これは、トランシーバー/FPGAハードウェア上の望ましくない負担を示し得る。しかしながら、より低い周波数については、これは有用なアプローチかもしれない。アナログ周波数シンセサイザーも使用することができるが、周波数が変更された後に安定させるための付加時間を要するかもしれない。また、アナログシンセサイザーの場合には、アナログシンセサイザーの周波数を変更した後に生じるかもしれない位相オフセットを取り消すために、同じ周波数の2回の測定がされなければならないだろう。
上記の方程式で使用される実際のTD_M−AMは、両方で測定され:マスター(M)およびトランスポンダー(AM)のシステムクロック、例えば、TLB_AMおよびtRTXは、トランスポンダー(AM)クロックで計算され、TLB_Mは、マスター(M)クロックで計算される。しかしながら、
は、両方で計算されるときに:T
LB_AMとt
RTXは、マスター(M)クロックで測定(計算)される。 これはエラーを導入する:
位相推定誤差(7)は、正確さに影響を与える。それ故、この誤差を最小限にすることが必要である。βM=βAM、言いかえれば、全てのマスターおよびトランスポンダー(タグ)システムクロックが同期される場合、tRTX時間からの関与が除去される。
好ましい実施形態では、マスターおよびトランスポンダーのユニット(装置)は、クロックを装置のいずれかと同期させることができる。例えば、マスター装置は、参考として有用である。クロック同期は、リモートコントロール通信チャネルの使用によって達成され、これによって、FPGA 150制御下で、温度補償型水晶発振器TCXO 20の周波数が調節される。選択されたトランスポンダー装置が搬送波信号を送信している間、周波数差は、マスター装置の加算器270の出力で測定される。
その後、マスターは、TCXO周波数を増加/減少するために、トランスポンダーにコマンドを送信する。この手順は、加算器270出力で周波数を最小にすることによって、より高い精度を達成するために数回繰り返され得る。理想的な場合では、加算器270出力での周波数がゼロに等しくなるべきであることに留意されたい。代替方法は、周波数差を測定し、トランスポンダーのTCXO周波数を調節せずに、推定位相の補正を行うことである。
βM=βAMは、かなり減少され得るが、βM≠1のときに位相推定誤差がある。この場合、誤差の範囲は、基準装置(通常、マスター(M))クロック発振器の長期間の安定度に依存する。加えて、クロック同期のプロセスは、特に当該技術分野における多くのユニットで、かなりの時間がかかり得る。同期プロセス中、追跡-位置検出システムは、部分的にまたは完全に作動不能になり、これは、システム即応性および性能に負の影響を与える。この場合、トランスポンダーのTCXO周波数の調節を必要としない上述の方法が好ましい。
市販の(既成の)TCXOコンポーネントは、高い精度と安定性を有している。具体的には、GPS商用アプリケーション用のTCXOコンポーネントは、非常に正確である。
これらの装置では、位置検出精度への位相誤差の影響は、頻繁なクロック同期を必要とせずに、1メートル未満であり得る。狭帯域幅レンジング信号マルチパス緩和プロセッサーが、帰還狭帯域幅レンジング信号複素振幅
を得た後、さらなる処理(即ち、超分解能アルゴリズムの実行)が、マルチパス緩和プロセッサーの一部である、ソフトウェアベースのコンポーネントで実施される。このソフトウエアコンポーネントは、マスター(リーダ)のホストコンピューターCPU及び/又はFPGA150(図示せず)に埋め込まれているマイクロプロセッサーで実施され得る。
好ましい実施形態では、マルチパス緩和アルゴリズムのソフトウエアコンポーネントは、マスターホストコンピュータCPUによって実行される。
超分解能アルゴリズムは、(2π×τK)「周波数」(例えばτK値)の推定をもたらす。
最終工程では、マルチパス緩和プロセッサーは、最小値(即ち、DLOS遅延時間)のτを選択する。
レンジング信号狭帯域幅の要件が多少緩められる特定の場合では、DLOSパスは、連続的な(時間内の)チャープの使用によって、MPパスから分離され得る。好ましい実施形態では、この連続的なチャープは、線形周波数変調(LFM)である。しかしながら、他のチャープ波形も使用され得る。マルチパス緩和プロセッサー制御下で、帯域幅Bおよび持続時間Tを有するチャープが送信されると仮定する。それは、
ラジアン/秒のチャープ速度を与える。多くのチャープは、送信され、受信されて戻される。チャープ信号は、同じ位相で始められた各チャープによりデジタルで生成されることに留意されたい。
マルチパスプロセッサーでは、各々の受信された単一のチャープは、帰還したチャープが、対象の領域の中心からのものとなるように、位置を調整される。
チャープ波形方程式は、
であり、ここで、ω
0は、0<t<Tに対する初期周波数である。単一の遅延ラウンドトリップτ(例えばマルチパスでないもの)については、帰還信号(チャープ(cirp))は、s(t−τ)である。
その後、マルチパス緩和プロセッサーは、元々送信されたチャープとの複素共役の混合(mix)を実行することによって、s(t−τ)を「脱傾斜(deramps)」する。結果として生じる信号は、複素正弦波である:
は振幅であり、2βτは、周波数および0≦t≦Tである。末項は位相であり、無視できることに留意されたい。
マルチパスの場合には、合成脱傾斜信号は、多くの複素正弦波から成り:
ここでLは、DLOSパスおよび0≦t≦Tを含む、レンジング信号パスの数である。
多くのチャープは、送信されて処理される。上に記述されるように、各チャープは、個々に扱われる/処理される。その後、マルチパス緩和プロセッサーは、個々のチャープ処理の結果を集約し:
であり、t
deadは、2つの連続チャープ間の不感時間帯(dead time zone)であり;2βτ
Kは、人工遅延「周波数」である。 再び、最も興味深いものは、DLOSパス遅延に相当する、最低「周波数」である。
方程式(10)では、
は、時に複素正弦波の合計のNサンプルと考えられ得:
したがって、サンプルの数は、複数のN(例えば、αN;α=1,2,.....)となり得る。
方程式(10)から、マルチパス緩和プロセッサーは、さらなる処理(即ち、超分解能アルゴリズムの実行)中に使用される、時間ドメインのαN複素振幅サンプルを生成する。このさらなる処理は、マルチパス緩和プロセッサーの一部である、ソフトウエアコンポーネントで実施される。このソフトウエアコンポーネントは、マスター(リーダ)のホストコンピューターCPUによって、及び/又はFPGA 150(図示せず)に埋め込まれているマイクロプロセッサーによって、またはその両方によって実行され得る。好ましい実施形態では、マルチパス緩和アルゴリズムのソフトウェアは、マスターのホストコンピューターCPUによって実行される。
超分解能アルゴリズムは、2βτK「周波数」、例えば、τK値の推定を生成する。最終工程では、マルチパス緩和プロセッサーは、最小値、即ち、DLOS遅延時間を伴うτを選択する。
「閾値技術」と呼ばれる特殊処理方法の説明がされ、これは、超分解能アルゴリズムに代わるものとして機能し得る。言いかえれば、これは、人工的に生成された合成の広帯域幅レンジング信号を使用して他のMPパスとDLOSパスを区別する際に信頼性と精度を向上させるために使用される。
図1および図1Aに示される周波数ドメインのベースバンドレンジング信号は、時間ドメインのベースバンド信号s(t)に変換され得る:
S(t)が、期間1/Δtを有して周期的であり、任意の整数kに対して、s(k/Δt)=2N+1であり、これは信号のピーク値であることが容易に確認される。ここで、図1および図1Aにおいてn=Nである。
図4は、N=11およびΔf=250kHzの場合のs(t)の2つの周期を示す。信号は、1/Δf=4マイクロ秒で分離された高さ2N+1=23の一連のパルスとして現われる。パルス間では、可変振幅と2Nのゼロとを伴う正弦波波形がある。信号の広帯域幅は、高いパルスの狭さが原因であり得る。帯域幅が、ゼロ周波数からNΔf=2.75MHzまで及ぶこともわかるだろう。
好ましい実施形態で使用される閾値方法の根本概念は、他のMPパスとDLOSパスを区別する際に人工的に生成された合成のより広い帯域幅レンジングの信頼性および精度を向上させることである。閾値方法は、広帯域のパルスのリーディングエッジの始まりの部分が受信機にいつ到着するかを検出するものである。送信器と受信機におけるフィルタ処理のために、リーディングエッジは、瞬間的には上昇しないが、滑らかに増加する傾斜を伴って雑音から上昇する。 リーディングエッジのTOAは、リーディングエッジが予め定義された閾値Tといつ交差するかを検出することによって測定される。
小さな閾値が望ましく、なぜなら、それがより早く交差され、パルスの正確な始まりと閾値交差との間のエラー遅延τが小さいからである。したがって、レプリカの始まりの部分がτより大きな遅延を有している場合、マルチパスにより到着する任意のパルスレプリカは、何の影響も有さない。しかしながら、雑音の存在は、閾値Tがどれくらい小さくなり得るかに制限を与えている。導関数がより速く上昇するために、遅延τを減少させる1つの方法は、パルス自体の代わりに受信されたパルスの導関数を使用することである。
二次導関数は、さらに速く上昇する。高位導関数が使用されるかもしれないが、実際には、それらは許容不可能な値に雑音レベルを上昇させ、そのため、閾値化された二次導関数が使用される。
図4に描かれる2.75MHzの広帯域信号は、適正な広帯域幅を有しているが、上述の方法による範囲測定には適していない。その方法は、各々ゼロ信号前駆体を有している送信されたパルスを必要とする。しかしながら、パルス間の正弦波波形が本質的に取り消されるように信号を変えることによって、その目標を達成することは可能である。好ましい実施形態では、これは、高いパルス間の選ばれた間隔で信号に密に近接する波形を構築し、その後、それを元々の信号から引くことによって行われる。
該技術は、図1内においてそれを信号に適用することによって例証され得る。波形上に示される2つの黒点は、第1の2つのパルス間の中心にある間隔Iのエンドポイントである。最良の結果を与えるように実験的に判定された、間隔Iの左および右のエンドポイントは、それぞれ次の通りである:
この間隔で信号s(t)を本質的に取り消すが、その間隔以外で害をそれほど引き起こさない関数g(t)を生成する試みがなされる。s(t)が1/sinπΔftによって変調された正弦波形状sinπ(2N+1)Δftであることを、式(11)が示すため、最初に、間隔Iで1/sinπΔftに密に近接する関数h(t)が見出され、その後、製品としてのg(t)が形成される:
その解は、akに対してJの偏導関数を取り入れ、それらをゼロに等しく設定することによって容易に得られる。結果はM+1方程式の線形システムである。
これは、akに対して解かれ得、ここで、
その後、
(12)によって与えられる関数φk(t)の定義を用いて、
g(t)をs(t)から引くことで関数r(t)が得られ、これは間隔Iでs(t)を本質的に取り消すはずである。付録(Appendix)で示されるように、方程式(20)での総和の上限Mに対する適切な選択は、M=2N+1である。この値と付録からの結果を用いて、
方程式(17)から、所望の信号r(t)を得るために、(ゼロ周波数DC項を含む)2N+3周波数の合計が必要とされることが分かる。図5は、図1で示される元々の信号s(t)に対する結果として生じる信号r(t)を示し、ここでN=11である。この場合、r(t)の構築は、(DC項b0を含む)25の搬送波を必要とする。
上のように構築されるr(t)の重要な特徴は、以下の通りである:
1.(14)から分かるように、最低周波数は0Hzであり、最高周波数は(2N+1)ΔfHzである。したがって、全帯域幅は(2N+1)ΔfHzである。
2.搬送波はすべて、1つの搬送波を除いて、Δfを間隔をおいて配した(DCを含む)余弦関数であり、これは周波数
3.元々の信号s(t)は周期1/Δfを有するが、r(t)は周期2/Δfを有する。s(t)の全周期である、r(t)の各周期の第1の半期は、信号の取り消された部分を含み、r(t)の第2の半期は、大きく振動するセグメントである。したがって、前駆体の取り消しは、s(t)の一周期ごとにのみ生じる。
取り消す関数g(t)がs(t)一周期ごとにs(t)を実際に強化するために、これが生じる。その理由は、g(t)がs(t)のすべてのピークでその極性を逆にする一方で、s(t)はそうしないためである。s(t)のすべての周期に、処理利得を3dB増加させるための取り消された部分を含ませる方法が、以下に記載される。
4.s(t)の取り消された部分の長さは、1/Δfの約80−90%である。したがって、Δfは、マルチパスが原因のr(t)の以前のゼロでない部分からの任意の残留信号を除去するのにこの長さを十分長くするために、十分に小さい必要がある。
5.r(t)の各ゼロ部分の直後に来るのは、振動する部分の第1の周期である。好適な実施形態において、上に記載されるようなTOA測定法では、この周期の第1半期は、TOA、特にその上昇の開始を測定するために使用される。この第1の半周期のピーク値(主ピークと呼ばれるだろう)が、ほぼ同じ時点にあるs(t)の対応するピークより多少大きいことに留意することは興味深い。第1の半周期の幅は、NΔfにおよそ反比例する。
6.大量の処理利得は、以下によって達成することができる:
(a)r(t)が周期2/Δfを有して周期的であるために、信号r(t)の反復の使用。また、追加の3dBの処理利得が、恐らく後に記載される方法によるものである。
(b)狭帯域フィルタ処理。2N+3搬送波の各々が狭帯域信号であるため、信号の占有周波数帯幅は、全体の割当周波数帯域にわたって広げられた広帯域信号のものよりはるかに小さい。
図5に示される信号r(t)に関して、N=11であり、Δf=250kHzである場合、s(t)の取り消された部分の長さは、約3.7マイクロ秒または1,110メートルである。これは、マルチパスが原因のr(t)の以前のゼロでない部分からの任意の残留信号を除去するのに十分過ぎるほどである。主ピークは、およそ35の値を有し、前駆体(すなわち、取り消し)領域における最大の大きさは約0.02であり、これは、主ピークを下回る65dBである。これは、上に記載されるようなTOA測定閾値技術を使用する優れた性能の獲得に望ましい。
より少ない搬送波の使用が図6に描写され、これは、2N+3=9の搬送波のみの合計に対して、Δf=850kHz、N=3、およびM=2N+1=7を用いて生成される信号を例証する。この場合、信号の周期は、周期が8マイクロ秒である図5での信号と比較して、わずか
マイクロ秒である。この例は単位時間当たりで多くの周期を有するため、より多くの処理利得が達成可能であると予測される。
しかしながら、より少ない搬送波が使用されるので、主ピークの振幅は以前と同じ約1/3の大きさであり、これは予期された過剰な処理利得を取り消す傾向がある。また、ゼロ信号前駆体セグメントの長さは、より短く、約0.8マイクロ秒または240メートルである。これは、マルチパスが原因のr(t)の以前のゼロでない部分からの任意の残留信号を除去するのにまだ十分であるはずである。(2N+1)Δf=5.95MHzの全帯域幅が以前とほぼ同じであり、主ピークの半周期の幅も同様におよそ同じであることに留意されたい。より少ない搬送波が使用されるため、各搬送波が受信機で狭帯域にフィルタ処理される際には、いくらかの過剰な処理利得があるはずである。さらに、前駆体(即ち、取り消し)領域における最大の大きさは、主ピークを下回る約75dBであり、先の例から10dB改善されている。
RF周波数での送信:この時点まで、r(t)は、簡略化の目的のためのベースバンド信号が記載されてきた。しかしながら、これはRFにまで変換されて、送信され、受信され、その後、受信機でベースバンド信号として再構築され得る。例証のために、インデックスj(ラジアン/秒周波数は表記上の簡略化のために使用される)を有するマルチパス伝搬パスの1つを介して移動するベースバンド信号r(t)内の周波数成分ωkの1つに何が起こるかを考察する:
送信機と受信機が周波数同期されるということがここで想定される。パラメーターbkは、r(t)に対する式(21)におけるk番目の係数である。パラメーターτjおよびφjは、それぞれ、j番目の伝搬パスの(反射器の誘電特性が原因の)パス遅延および位相シフトである。パラメーターθは、受信機内のベースバンドへのダウンコンバートで生じる位相シフトである。同様の一連の関数は、方程式(21)の正弦波成分のために示され得る。
r(t)におけるゼロ信号前駆体が最大の大幅な伝搬遅延よりも著しく大きな長さを有する限り、方程式(20)における最終的なベースバンド信号が、依然としてゼロ信号前駆体を有するということに留意することが重要である。もちろん、すべてのパス(インデックスj)上の周波数コンポーネント(インデックスk)をすべて組み合わせる際には、受信機のベースバンド信号は、位相シフトをすべて含むr(t)の歪みのあるバージョンになるだろう。
連続的な搬送波送信および信号の再構築は、図1および図1Aで例証されている。送信機と受信機は時間と周波数とに同期していると考えられており、2N+3で送信された搬送波は同時に送信される必要はない。一例として、ベースバンドの表示が図1Aおよび図6のものである信号の送信を考慮する。
図6において、N=3であり、1ミリ秒に対する9つの周波数成分の各々は連続して送信されると想定する。各送信周波数に対する始まりと終わりの時間は、受信機で知られており、そのため、その周波数送信は、それぞれの時間に、各周波数成分のその受信を連続して開始および終了することができる。信号伝搬時間が1ミリ秒(それは、意図される用途で、通常、数マイクロ秒未満であるだろう)と比較して非常に短いため、各々の受信された周波数成分の一部は無視されるはずであり、受信機は容易にそれを消すことができる。
9つの周波数成分を受信する全体のプロセスは、処理利得を増加させるために、9ミリ秒ブロックの追加の受信で繰り返され得る。1秒の総受信時間には、利得の処理に利用可能な約111のそのような9ミリ秒ブロックがあるだろう。さらに、各ブロック内には、
の主ピークから利用可能な追加の処理利得があるだろう。
一般に、信号の再構築が、非常に経済的に行われ得、あらゆる可能な処理利得を本質的に可能にするであろうということに留意する価値はある。2N+3の受信周波数の各々に関して:
1.その周波数に対応する保存されたベクトル(位相ベクトル)の列を形成するために、その周波数の各1ミリ秒の受信の位相と振幅を測定する。
2.その周波数に対する保存されたベクトルを平均化する。
3.最後に、持続時間2/Δfを有するベースバンド信号の1つの周期を再構築するために2N+3周波数に対する2N+3ベクトルの平均を使用し、信号のTOAを予測するための再構築を使用する。
この方法は、1ミリ秒の送信に制限されず、送信の長さは、増加または減少し得る。しかしながら、すべての送信のための総時間は、受信機または送信機のあらゆる運動を凍結するのに十分短いものでなければならない。
r(t)の代替的な半周期での取り消しの獲得:取り消す関数g(t)の極性を単に逆にすることによって、s(t)のピーク間の取り消しは、r(t)が以前に振動したところで可能である。しかしながら、s(t)のすべてのピーク間の取り消しを得るために、関数g(t)とその極性が逆にされたバージョンが、受信機で適用されなければならず、これは、受信機での係数の重み付け(weighting)を含む。
受信機での係数の重み付け:所望されると、方程式(21)の係数bkは、送信器でのr(t)の構築に使用され、その代わりとして受信機で導入されてもよい。これは、bkが最初の工程の代わりに最後の工程で導入される場合に最終的な信号が同じである方程式(20)において信号のシーケンスを考慮することによって容易に見られる。雑音を無視すると、値は以下の通りである:
その後、送信器は同じ振幅ですべての周波数を送信することができ、それによってその設計は単純化される。この方法がまた、各周波数で雑音に重みを加え、その影響が考慮されなければならないことに留意されたい。係数の重み付けが、2倍分もの使用可能な主ピークを得るg(t)の極性反転に影響を与えるために、受信機で行われなければならないとことにも留意されたい。
チャネル内の中心周波数に対するΔfのスケーリング:VHFまたはより低い周波数でFCC要件を満たすために、一定のチャネル間隔を有するチャネル送信が必要とされるであろう。割り当てられた全帯域と比べて小さな、一定のチャネル間隔を有するチャネル伝送帯域では(VHFおよびより低い周波数帯域の場合)、必要に応じて、Δfに対する少しの調整によって、元々の設計値から性能を大きく変化させることなく、すべての送信された周波数がチャネルの中心にくるようにすることが可能となる。先に示されたベースバンド信号の2つの例において、すべての周波数成分はΔf/2の倍数であり、したがって、チャネル間隔がΔf/2を分ける場合、最も低いRFで送信された周波数は1本のチャンネルに集中させることができ、他のすべての周波数はチャネルの中心に落ちる。
幾つかの無線周波数(RF)ベースの同定、追跡、および位置検出システムにおいて、距離測定機能を働かすことに加えて、マスター装置とタグ装置の両方は、音声、データおよび制御通信機能も実行する。同様に、好適な実施形態において、マスター装置とタグの両方は、距離測定機能に加えて、音声、データおよび制御通信機能を実行する。
好適な実施形態によって、レンジング信号は、マルチパス軽減を含む、広範囲の洗練された信号処理技術の対象となる。しかしながら、これらの技術は、音声、データおよび制御信号には有用ではない。結果として、提案されるシステムの動作範囲は(他の既存のシステムと同様に)、距離を確実かつ正確に測定するその能力によっては限定されないが、音声及び/又はデータ及び/又は制御通信の間に範囲から外れることによって限定されることもある。
他の無線周波数(RF)ベースの同定、追跡、および位置検出システムにおいて、距離測定機能は、音声、データおよび制御通信機能から分離される。これらのシステムでは、音声、データおよび制御通信機能を実行するために、別々のRFトランシーバーが使用される。この手法の欠点は、システムの高い費用、複雑性、サイズなどである。
前述の欠点を回避するために、好適な実施形態において、狭帯域幅レンジング信号またはベースバンド狭帯域幅レンジング信号の幾つかの個々の周波数成分は、同一のデータ/制御信号によって変調され、音声の場合には、デジタル音声パケットデータで変調される。受信機では、最も高い信号強度を有する個々の周波数成分は復調され、得られた情報信頼度は、「投票(voting)」を行うことによって、または情報の冗長を利用する他の信号処理技術によってさらに高められる。
この方法によって、「ゼロ(null)」現象を回避することができ、ここで、複数のパスから入ってくるRF信号は、DLOSパスと及び互いに破壊的に結合し、それ故、受信された信号の強度を著しく低下させ、それをSNRと関連付ける。その上、そのような方法によって、複数のパスから入ってくる信号がDLOSパスと及び互いに構造的に結合している、1セットの周波数を見つけることができ、それ故、受信された信号の強度を増加させ、それをSNRと関連付ける。
先に言及されたように、スペクトル推定ベースの超分解能アルゴリズムは、一般に、同じモデル:復素指数関数と周波数のその複素振幅との線形結合、を使用する。この複素振幅は、上記の方程式3によって与えられる。
スペクトル推定ベースの超分解能アルゴリズムはすべて、復素指数関数の数、即ち、マルチパス数の演繹的知識を必要とする。この復素指数関数の数は、モデルサイズと呼ばれ、方程式1乃至3で示されるように、マルチパス成分Lの数によって判定される。しかしながら、パス遅延を推定するときに(RF追跡-位置検出の用途の場合)、この情報は入手できない。これは、別の次元、即ち、モデルサイズの推定を、超分解能アルゴリズムを介するスペクトルの推定プロセスに加える。
モデルサイズの過小評価の場合に、周波数推定の精度に影響があり、モデルサイズが過大評価されると、アルゴリズムは疑似の(例えば、存在しない)周波数を生成することが示されている(Kei Sakaguchi et al.,Influence of the Model Order Estimation Error in the ESPRIT Based High Resolution Techniques)。AIC(赤池情報量基準)、MDL(最小記述長)などのモデルサイズ推定の既存の方法は、信号(復素指数関数)間の相関性に対して高い感度を有する。しかし、RFマルチパスの場合には、これは常にそうである。例えば、前後の平滑化アルゴリズムが適用された後でさえ、相関性の残差量が常にあるであろう。
Sakaguchiの文献において、これらの信号電力(振幅)を推定し、その後、非常に低い電力で信号を拒絶することによって、過大評価されたモデルと、疑似周波数(信号)とは異なる実際の周波数(信号)を使用することが示唆されている。この方法は既存の方法を改善したものであるが、保証されてはいない。本発明者は、Kei Sakaguchiらによる方法を実施し、より大きなモデルサイズを用いて、より複雑な場合のシミュレーションを行った。幾つかの場合には、擬似信号が実際の信号振幅に非常に近い振幅を有し得ることが観察された。
すべてのスペクトル推定ベースの超分解能アルゴリズムは、入ってくる信号の複素振幅データを2つの部分空間:雑音部分空間および信号部分空間に分割することによって動作する。これらの部分空間が適切に定義される(分離される)場合、モデルサイズは信号の部分空間サイズ(次元)と等しい。
一実施形態では、モデルサイズの推定は、「F」統計値を用いて達成される。例えば、ESPRITアルゴリズムについて、(前後の相関性の平滑化による)共分散行列の推定の特異値分解は、昇順で命じられる。その後、割り算が行われ、それによって(n+1)固有値がn番目の固有値によって割られる。この比率は「F」ランダム変数である。
最悪の場合は、自由度(1,1)の「F」ランダム変数である。自由度(1,1)の「F」ランダム変数に対する95%の信頼区間は、161である。閾値としてその値を設定することで、モデルサイズを判定する。雑音部分空間に対して、固有値が雑音電力の推定を表わすことにも留意されたい。
固有値の比率に「F」統計値を適用するこの方法は、モデルサイズを推定する、より正確な方法である。「F」統計値における他の自由度が、閾値計算と、その結果としてのモデルサイズ推定とに使用することができるということに留意するべきである。
それにもかかわらず、場合によっては、2以上の非常に近接して(時間内に)間隔を置かれた信号が、現実世界の測定欠陥のために1つの信号に縮退することがある。結果として、上記の方法は、信号の数(即ち、モデルサイズ)を過小評価するだろう。モデルサイズの過小評価が、周波数の推定精度を低下させるために、特定の数を加えることによってモデルサイズを増加させることが賢明である。この数は、実験的に及び/又はシミュレーションから判定可能である。しかしながら、信号が近接に間隔を置かれてないときに、モデルサイズは過大評価されるだろう。
そのような場合、疑似の(即ち、存在しない)周波数が現われることもある。先に述べたように、幾つかの場合では、擬似信号が、実際の信号振幅に非常に近い振幅を有すると観察されたため、擬似信号の検出のために信号振幅を使用することは、必ずしも機能するとは限らない。それ故、振幅弁別に加えて、フィルタ処理は、疑似周波数の消去確率を改善するために実施され得る。
超分解能アルゴリズムによって推定される周波数は、人工周波数(方程式2)である。
実際に、これらの周波数は、マルチパス環境の個々のパス遅延である。結果として、負の周波数は存在するはずがなく、超分解能アルゴリズムによって生成される負の周波数はすべて、拒絶される疑似周波数である。さらに、DLOS距離範囲は、超分解能方法とは異なる方法を用いて測定中に得られた複素振幅
値から推定され得る。これらの方法は精度が低いが、この手法は、遅延、即ち、周波数を識別するために使用される範囲を確立する。例えば、信号振幅
が最大(即ち、ゼロを回避する)に近いΔf間隔における
の比率は、DLOS遅延範囲を与える。実際のDLOS遅延が2倍まで大きく又は小さくなり得るが、これは疑似の結果を拒絶する助けとなる範囲を定義する。
本実施形態において、レンジング信号はラウンドトリップをなす。言いかえれば、これは両方向に:マスター/リーダーからターゲット/スレイブまで、およびターゲット/スレイブからマスター/リーダーまで移動する。
マスターは音:
を送信し、ここでωは、動作帯域内の動作周波数であり、αは音信号振幅である。
ターゲットの受信機では、受信された信号(一方向)は以下の通りである:
このとき:Nはマルチパス環境中の信号パスの数であり;K0とτ0は、DLOS信号の振幅および飛行時間であり;
このとき:
は、周波数ドメインの一方向のマルチパスRFチャネル伝達関数であり、A(ω)≧0である。
ターゲットは受信された信号を再送信する:
マスター受信機では、ラウンドトリップ信号は以下の通りである:
他方で、方程式(26)および(28)から、
ここで:
は、周波数領域中のラウンドトリップマルチパスRFチャネル伝達関数である。
方程式29から、ラウンドトリップマルチパスチャネルは、一方向のチャネルマルチパスよりも多くのパスを有し、これは例えば、τ0÷τNパス遅延に加えて、
の式が、これらのパス遅延、例えば、τ
0+τ
2.....、 τ
1+τ
2、 τ
1+τ
3....などの組み合わせを含むためである。
これらの組み合わせは、信号(復素指数関数)の数を劇的に増加させる。従って、非常に接近して間隔を置かれた(時間内で)信号の確立も高まり、大きなモデルサイズの過小評価をもたらすこともある。したがって、一方向のマルチパスRFチャネル伝達関数を得ることが望ましい。好適な実施形態において、一方向の振幅値
は、ターゲット/スレイブ装置から直接得ることができる。しかしながら、一方向の位相値
は、直接測定することができない。ラウンドトリップ位相測定観察から一方向の位相を判定することは可能である:
しかしながら、ωの各値に対して、 ej2α(ω)=ejβ(ω)のような、位相α(ω)の2つの値がある:
この曖昧さを解決する詳細な記載が以下に示される。レンジング信号の異なる周波数成分が互いに接近している場合、大抵、一方向の位相は、ラウンドトリップ位相を2で割ることによって見出され得る。例外は、「ゼロ」に接近している領域を含み、ここで位相は、小さな周波数工程でさえ大きな変更を受け得る。注:「ゼロ」現象は、多数のパスからの入ってくるRF信号がDLOSパスと及び互いに破壊的に結合しているところにあり、したがって、受信された信号強度を著しく弱めて、それとSNRを関連付ける。
h(t)を通信チャネルの一方向のインパルス応答にする。周波数ドメインにおける対応する伝達関数は、
ここで、A(ω)≧0が大きさであり、α(ω)は伝達関数の位相である。一方向のインパルス応答が、受信されているときに同じチャネルを通って再送信されて戻される場合、結果として生じる双方向の伝達関数は、
ここでβ(ω)≧0である。双方向の伝達関数G(ω)が、幾つかの開かれた周波数間隔(ω1、ω2)ですべてのωに対して既知であると仮定する。G(ω)を生成した(ω1、ω2)上で定義された一方向の伝達関数H(ω)を判定することは可能であろうか。
双方向の伝達関数の大きさが、一方向の大きさの二乗であるため、
しかしながら、G(ω)の観察から一方向の伝達関数の位相を回復しようとすると、状況はますますとらえどころがない。ωの各値に対して、
ej2α(ω)=ejβ(ω) (33)
のような位相α(ω)の2つの値が存在する。
多くの異なる解は、各々の異なる周波数ωに対して2つのあり得る位相値の1つを独立して選択することによって生成されることもある。
任意の一方向の伝達関数がすべての周波数で連続的であると仮定する、以下の定理は、この状況を解決するのを助ける。
定理1:Iを、双方向の伝達関数G(ω)=B(ω)ejβ(ω)のゼロを含まない周波数ωの開区間とする。
をI上の連続関数とし、ここでβ(ω)=2γ(ω)である。その後、J(ω)と−J(ω)は、I上でG(ω)を生成する一方向の伝達関数であり、他のものはない。
証明:一方向の伝達関数のための解の1つは、I上で連続的な関数
であり、それはI上で微分可能であるためI上で連続的であり、ここで、β(ω)=2α(ω)である。I上でG(ω)≠0であるため、H(ω)およびJ(ω)は、I上で非ゼロである。そのとき、
H(ω)とJ(ω)は、I上で連続的であり、非ゼロであり、それらの比率はI上で連続的であるため、(34)の右側はI上で連続的である。状態β(ω)=2α(ω)=2γ(ω)は、各々の
に対して、α(ω)−γ(ω)が0またはπのいずれかであることを示唆している。しかしながら、α(ω)−γ(ω)は、(34)の右側で不連続を引き起こすことなく、これらの2つの値を切り替えることはできない。したがって、すべての
に対してα(ω)−γ(ω)=πのいずれかである。第1の場合、J(ω)=H(ω)が得られ、第2の場合は、J(ω)=−H(ω)が得られる。
この定理は、伝達関数G(ω)=β(ω)ejβ(ω)のゼロを含まない任意の開間隔I上で一方向の解を得るために、関数
を作成し、J(ω)を連続的にするような方法でβ(ω)=2γ(ω)を満たすγ(ω)の値を選択する。この特性(すなわち、H(ω))を有する解があることは知られているので、これを行うことは常に可能である。
一方向の解を見つけるための代替手順は、以下の定理に基づく:
定理2:H(ω)=A(ω)ejα(ω)を一方向の伝達関数にし、Iを、H(ω)のゼロを含まない周波数の開区間とする。その後、H(ω)の位相関数α(ω)は、I上で連続的でなければならない。
証明:ω0を間隔I内の周波数とする。図7において、複素数値H(ω0)は、複素平面中の点として計画され、仮説によって、H(ω0)≠0である。ε>0を任意に小さな実数とし、図7で示される測定値εの2つの角度を、H(ω0)で中心にある及び2つの放射線OAおよびOBの接する円と同様に考慮する。仮定によって、H(ω)はすべてのωに連続的である。したがって、ωがω0に十分に接近していると、複素数値H(ω)は円内にあり、
であることが分かる。ε>0は任意に選択されたため、α(ω)→(ω
0)をω→ω
0として結論付け、その結果、位相関数α(ω)はω
0で連続的となる。
定理3:Iを、双方向の伝達関数G(ω)=β(ω)e
jβ(ω)のゼロを含まない周波数ωの開区間とする。
をI上の関数とし、ここで、β(ω)=2γ(ω)およびγ(ω)はI上で連続的である。そのとき、J(ω)と−J(ω)は、I上でG(ω)を生成する一方向の伝達関数であり、他のものではない。
証明:証明は、定理1の証明に類似する。一方向の伝達関数のための解の1つが、関数
であり、ここで、β(ω)=2α(ω)であることを我々は知っている。I上でG(ω)≠0であるため、H(ω)およびJ(ω)は、I上で非ゼロである。そのとき、
仮説によって、γ(ω)はI上で連続的であり、定理2によって、α(ω)は、同様にI上で連続的である。したがって、α(ω)−γ(ω)はI上で連続的である。状態β(ω)=2α(ω)=2γ(ω)は、各
に対して、 α(ω)−γ(ω)が0またはπのいずれかであることを示唆している。しかしながら、α(ω)−γ(ω)は、I上で不連続になることなく、これらの2つの値を切り替えることはできない。したがって、すべての
に対してα(ω)−γ(ω)=πのいずれかである。第1の場合、J(ω)=H(ω)が得られ、第2の場合、J(ω)=−H(ω)が得られる。
定理3は、伝達関数G(ω)=β(ω)ejβ(ω)のゼロを含まない任意の開区間上で一方向の解を得るために、関数
を単に形成し、位相関数γ(ω)を連続的にするような方法でβ(ω)=2γ(ω)を満たすγ(ω)の値を選択することを我々に教示している。この特性、すなわち、H(ω)を有する解があることが知られているため、これを行うことは常に可能である。
上記の定理は、双方向の関数G(ω)を生成する2つの一方向の伝達関数を再構築する方法を示しているが、それらは、G(ω)のゼロを含んでいない周波数間隔I上でのみ有用である。一般に、G(ω)は、ゼロを含み得る周波数間隔(ω1、ω2)上で観察されるであろう。以下は、この問題を回避し得る方法であり、(ω1、ω2)にG(ω)の有限数のゼロのみがあること、および一方向の伝達関数が、(ω1、ω2)上のすべての順序の導関数を有し、その全てが任意の所定の周波数ωで0ではないことを仮定している。
H(ω)を間隔(ω1、ω2)上でG(ω)を生成する一方向の関数とし、G(ω)が(ω1、ω2)上に少なくとも1つのゼロを有すると仮定する。G(ω)のゼロは、(ω1、ω2)を、有限数の隣接する開かれた周波数間隔J1、J2、...、Jnに分けるだろう。各々のそのような間隔上において、定理1または定理3のいずれかを使用して、解H(ω)または−H(ω)が見出されるだろう。我々は、これらの解を「まとめる(stitich together)」必要があり、その結果、まとめられた解が、(ω1、ω2)のすべてにわたってH(ω)または−H(ω)のいずれかになるようにする。これを行うためには、1つの部分区間から次の部分区間に移動する際に、H(ω)から−H(ω)に、または−H(ω)からH(ω)に切り替えないように、2つの隣接する部分区間中の解を対にする方法を知る必要がある。
我々は、第1の2つの隣接した開かれた部分区間J1およびJ2で始まる、まとめる手順を例証する。これらの部分区間は、G(ω)のゼロである周波数ω1で隣接するだろう(もちろん、ω1は、いずれの部分区間にも含まれていない)。一方向の伝達関数の特性に関する上記の仮定によって、H(n)(ω1)≠0となるように、最小の正整数nが存在しなければならず、このとき、上付き文字(n)はn番目の導関数を示す。その後、左からω→ω1としてJ1における一方向の解のn番目の導関数の極限は、J1内での我々の解がH(ω)または−H(ω)であるかどうかによって、H(n)(ω1)または−H(n)(ω1)のいずれかになるだろう。同様に、右からω→ω1としてJ2における一方向の解のn番目の導関数の極限は、J2における我々の解がH(ω)または−H(ω)であるかどうかによって、H(n)(ω1)または−H(n)(ω1)のいずれかになるだろう。H(n)(ω1)≠0であるので、J1とJ2の解が両方ともH(ω)または両方とも−H(ω)である場合に限り、2つの極限は等しくなるであろう。左右の極限値が不等である場合、部分区間J2における解を逆にする。そうでない場合は、そのようにはしない。
(必要ならば)部分区間J2における解を逆にした後に、部分区間J2とJ3のために同一の手順を実行して、(必要ならば)部分区間J3における解を逆にする。この方法を継続して、最終的には区間(ω1、ω2)上で完全解を作り上げる。
H(ω)の高次導関数が上記の再構築手順で必要とされないことが望ましい。なぜなら、それらは雑音存在下では正確に計算するのが難しいからである。G(ω)の任意のゼロでは、H(ω)の一次導関数が非ゼロになる可能性が高いように思われるため、このような問題が起こる可能性は少なく、またそうでなければ、二次導関数は非ゼロになる可能性が高いだろう。
実際的なスキームでは、双方向の伝達関数G(ω)は離散周波数で測定され、該離散周波数は、G(ω)のゼロの近くの導関数を合理的に正確に計算することを可能にするほどに十分にともに接近していなければならない。
RFベースの距離測定に関して、演繹的な既知の形状を備えたレンジング信号の、未知数の、近接して間隔を置いた、オーバーラップする、および雑音の多いエコーを解決することが必要である。レンジング信号が狭帯域であると仮定すると、周波数ドメインでは、このRF現象は、多くの正弦波の和として記載(モデル化)され得、その各々は、マルチパス成分ごとにあり、パスの複素減衰と伝搬遅延を伴う。
上記の和のフーリエ変換を行うことで、時間ドメイン中のこのマルチパスモデルが表わされるだろう。この時間ドメイン式での可変時間と可変周波数の役割を交換すると、このマルチパスモデルは高調波信号スペクトルとなり、ここで、パスの伝搬遅延は高調波信号に変形される。
超(高)分解能スペクトル推定法は、スペクトル中の近接に配された周波数を識別するために設計され、多数の高調波信号(例えば、パス遅延)の個々の周波数を推定するために使用される。結果として、パス遅延を正確に推定することができる。
超分解能スペクトル推定は、ベースバンドレンジング信号サンプルの共分散行列の固有の構造および共分散行列の固有の特性を利用することによって、個々の周波数(例えば、パス遅延)の根本的な推定に対して解を与える。固有の構造特性の1つは、固有値を組み合わせることができ、その結果として、直交の雑音と信号の固有ベクトル(aka部分空間)に分けることができるということである。別の固有の構造特性は、回転不変量信号の部分空間特性である。
部分空間分解技術(MUSIC、rootMUSIC、ESPRITなど)は、観測データの推定される共分散行列を、2つの直交部分空間、雑音部分空間と信号部分空間に分けることに依存する。部分空間分解の方法論の背後にある理論は、雑音部分空間上へのオブザーバブルの投影が雑音のみからなり、信号の部分空間上へのオブザーバブルの投影が信号のみからなるということである。
スペクトル推定方法は、信号が狭帯域であり、高調波信号の数も知られており、即ち、信号の部分空間のサイズを知る必要があることを仮定している。信号の部分空間のサイズはモデルサイズと呼ばれる。一般に、これは詳細には知ることはできず、環境が変わると、特にインドアで、急速に変わり得る。任意の部分空間分解アルゴリズムを適用する際の最も困難且つ巧妙な問題の1つは、存在する周波数成分の数として得ることができる信号の部分空間の次元であり、これは、マルチパス反射+ダイレクトパスの数である。現実世界の測定欠陥のために、モデルサイズの推定における誤差は常にあり、これはその後結果として、周波数推定(即ち、距離)の精度の損失をもたらすであろう。
距離測定精度を改善するために、一実施形態は、部分空間分解の高分解能推定の方法論において現状技術を発展させる6つの特徴を含む。遅延パス判定の曖昧さをさらに減少させる異なる固有の構造特性を使用することによる、個々の周波数を推定する2つ以上のアルゴリズムの組み合わせが含まれる。
rootMusicは個々の周波数を見出し、オブザーバブルが雑音部分空間上に投影されるときに、投影のエネルギーを最小化する。 Espritアルゴリズムは、回転演算子から個々の周波数を判定する。また多くの点において、この演算は、オブザーバブルが信号部分空間上に投影されるときに、投影のエネルギーを最大化にする周波数を見出すという点で、Musicの共役である。
モデルサイズは、これらのアルゴリズム両方の鍵となるものであり、実際には、インドアのレンジングで見られるような複素信号環境で鍵となるものであり、MusicとEspritに最も優れた性能を提供するモデルサイズは、一般には等しくなく、その理由については以下で議論する。
Musicについては、分解の基礎要素を「信号の固有値」(第1種誤差(Type I Error))として同定する側で誤ることが好ましい。これは、雑音部分空間上で投影される信号エネルギーの量を最小化し、精度を改善するだろう。Espritに関しては、逆のことが正しく、分解の基礎要素を「雑音固有値」として同定する側で誤ることが好ましい。これも第1種誤差である。これは、信号部分空間上に投影されるエネルギーへの雑音の影響を最小化するだろう。したがって、Musicのためのモデルサイズは、一般に、Espritのためのモデルサイズより多少大きくなる。
第2に、複素信号環境下では、強い反射、およびダイレクトパスが事実上マルチパス反射の幾つかよりはるかに弱いという可能性を有して、モデルサイズが十分な統計信頼性をもって推定するのが難しくなる状況が生じる。この問題には、MusicとEspritの両方のための「ベース」モデルサイズを推定すること、および各々に関するベースモデルサイズによって定義されたモデルサイズのウィンドウにおいてMusicとEspritを使用する観察可能なデータを処理することによって対処する。これによって、結果的に各測定の複数測定がもたらされる。
実施形態の第1の特徴は、モデルサイズを推定するためのF統計値の使用である(上記参照)。第2の特徴は、MusicとEspritのためのF統計値における異なる第1種誤差の使用である。これは、上に議論されるように、MusicとEspritとの間の第1種誤差を実施する。第3の特徴は、ダイレクトパスを検知する可能性を最大限にするためのベースモデルサイズおよびウィンドウの使用である。
物理的および電子的な環境を急速に変更する可能性があるために、すべての測定がしっかりとした回答を示すとは限らないだろう。これは、ロバストレンジ推定を与えるために、多重測定でクラスター分析を使用することによって対処される。実施形態の第4の特徴は、多重測定の使用である。
多重測定が存在するため、多重測定に由来する多数の回答の確率分布は、各々がMusicとEspritの両方の実施から多数のモデルサイズを使用して、マルチモーダルである。従来のクラスター分析は、この用途に十分ではないだろう。第5の特徴は、投影されたマルチパス成分の直接的な範囲および同等の範囲を推定する、マルチモーダルのクラスター分析の発達である。6番目の特徴は、クラスター分析(範囲および標準偏差)によって提供される範囲推定の統計の分析、および統計的に同一なこれらの推定値の組み合わせである。これは結果的に、より正確なレンジ推定をもたらす。
前述の方法も広帯域幅レンジング信号の位置検出システムで使用することができる。
閾値法におけるr(t)の微分おために、式(20)で始めて、以下を得る:
ここで、以下の三角関数の公式が使用される:
a
0を除いて、係数a
kは、偶数のkに対してゼロである。この理由は、間隔I上で、h(t)で近似させようとしている関数1/sinπΔftは、Iの中心に近い偶数であるが、偶数のk、k≠0に対する基底関数sinkπΔftは、Iの中心に近い奇数であり、それ故、I上の1/sinπΔftに直交である。したがって、置き換えk=2n+1を作ることができ、Mを奇数の正整数にすることができる。実際に、M=2N+1とする。この選択は、間隔Iでの振動(oscillations)の相当な量の取り消しを与えるために実験的に判定された。
ここで、第1の和においてk=N−nの置き換えを行い、第2の和においてk=N+n+1の置き換えを行って、
s(t)からg(t)を引くと、結果として、
ここで、
その後、(A4)は以下のように書くことができる。
本実施形態は、関連する技術分野の欠点の1つ以上を実質的に除去する、無線通信および他の無線ネットワークでの位置決定/位置検出の方法に関する。本実施形態は、同時係属中の出願第12/502,809号に記載される、マルチパス緩和のプロセス、技術およびアルゴリズムを利用することによって、複数のタイプの無線ネットワークにおいて追跡および位置検出の機能性の精度を好適に向上させる。これらの無線ネットワークは、ZigBeeおよびBlue Tooth(登録商標)などの無線パーソナルネットワーク(WPGAN)、WiFiおよびUWBなどの無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)、複数のWLANから成る無線メトロポリタンエリアネットワーク(WMAN)、主要な例であるWiMax、White Space TV Bandsなどの無線ワイドエリアネットワーク(WAN)、および典型的に音声およびデータの送信に使用されるモバイルデバイスネットワーク(MDN)を含む。MDNは、典型的に、グローバル移動体通信システム(GSM(登録商標))および個人通信サービス(PCS)の基準に基づく。
より最近のMDNは、ロング・ターム・エボリューション(LTE)の基準に基づく。これらの無線ネットワークは、典型的に、ベースステーション、デスクトップ、タブレットおよびラップトップコンピューター、ハンドセット、スマートフォン、アクチュエーター、専用タグ、センサーを含む装置の組み合わせの他に、他の通信およびデータ装置からも構成される(一般に、これらのすべての装置は、「無線ネットワーク装置」と呼ばれる)。
既存の位置検出および位置決定の情報ソリューションは、GPS、AGPS、携帯電話塔の三辺測量(Cell Phone Tower Triangulation)およびWi−Fiを含む、複数の技術およびネットワークを使用する。この位置検出情報を引き出すために使用される方法の幾つかは、RFフィンガープリント法、RSSI、およびTDOAを含む。既存の位置検出およびレンジングの方法は、現在のE911要件に許容可能であるが、来たるE911要件の他に、LBS及び/又はRTLSの適用要件も同様にサポートするのに必要とされる信頼性および精度を、特にインドアでおよび都市の環境で有していない。
同時係属中の出願第12/502,809号に記載される方法は、単一の無線ネットワークまたは複数の無線ネットワークの組み合わせ内で、ターゲットにされる装置を正確に位置検出且つ追跡する能力を著しく向上させる。実施形態は、DL−OTDOA(ダウンリンクOTDOA)、U−TDOA、UL−TDOAおよび他のものを含む、増強されたCell−IDおよびOTDOA(観測到着時間差)を使用する無線ネットワークによって使用される、追跡および位置検出の方法の既存の実施を著しく向上させたものである。
Cell−IDの位置検出技術は、特定のセクターのサービスエリアの精度を有してユーザー(UE − ユーザー機器)の位置を推測することを可能にする。したがって、達成可能な精度は、Cell−ID(基地局)のセクター化(sectoring)のスキームおよびアンテナビーム幅に依存する。精度を上げるために、増強されたCell−ID技術は、eNBからRTT(ラウンドトリップ時間)測定値を加える。注:ここで、RTTは、ダウンリンクDPCH−専用物理チャネル、(DPDCH)/DPCCH:専用物理データチャネル/専用物理制御チャネルのフレームの送信と、対応するアップリンクの物理フレームの開始との差を構成している。本例では、上述のフレームは、レンジング信号として作用する。この信号がどれくらいの時間eNBからUEまで伝搬するかの情報に基づいて、eNBからの距離は計算され得る(図10を参照)。
観測到着時間差(OTDOA)の技術では、隣接する基地局(eNB)から来る信号の到着時間が計算される。一旦3つの基地局からの信号が受信されると、UE位置は、ハンドセット(UEベースの方法)、またはネットワーク(NTベースの、UE支援の方法)において推測され得る。測定された信号は、CPICH(共通パイロットチャネル)である。信号の伝搬時間は、局所的に生成されたレプリカ(replica)と相互に関連している。相関性のピークは、測定された信号の伝搬の観測時間を示す。2つの基地局間の到着値の時間差は、双曲線を判定する。2つの双曲線を定義するために、少なくとも3つの参照点が必要とされる。UEの位置は、これらの2つの双曲線の交差点にある(図11を参照)。
アイドル期間のダウンリンク(Idle Period Downlink)(IPDL)は、さらなるOTDOAの増強である。OTDOA−IPDL技術は、アイドル期間内に行われる通常のOTDOA時間測定と同じ測定に基づき、その中で、サービング(serving)eNBは、その送信を止めて、このセルの受信圏内のUEが、離れたeNB(s)から来るパイロットを聴く(hear)ことを可能にする。サービングeNBは、連続モードまたはバーストモードでアイドル期間を提供する。連続モードでは、あらゆるダウンリンクの物理フレーム中に1つのアイドル期間が挿入される(10ms)。バーストモードでは、アイドル期間は、偽似ランダム法で生じる。時間整列された(Time Aligned)IPDL(TA−IPDL)を介して、さらなる向上が得られる。時間整列(Time alignment)は、共通のアイドル期間を作り出し、その間に、各基地局は、その送信を止めるか、または共通パイロットを送信する。パイロット信号の測定がアイドル期間に生じる。DL OTDOA−IPDL方法をさらに増強する幾つかの他の技術、例えば累積的なバーチャルブランキング(Cumulative Virtual Blanking)、UTDOA(アップリンクTDOA)などが存在する。これらの技術はすべて、他の(非サービング(non−serving))eNBを聴く能力を向上させる。
OTDOAベースの技術の1つの重大な欠点は、この方法を実行可能にするために、基地局のタイミング関係が、知られなければならないか、測定(同期)されなければならない。非同期のUMTSネットワークに関して、3GPP基準は、このタイミングがどのように再生され得るかの案を提案している。しかしながら、ネットワークオペレーターは、そのような解決策を実施していない。結果として、CPICHシグナル測定の代わりにRTT測定を使用する代替案が提案された(米国特許公開番号20080285505, John Carlson et al., SYSTEM AND METHOD FOR NETWORK TIMING RECOVERY IN COMMUNICATIONS NETWORKSを参照)
上述の方法/技術はすべて、地上信号の到着時間及び/又は到着時間差の測定(RTT、CPICH、など)に基づく。そのような測定の問題は、これらがマルチパスによって深刻な影響を受けるということである。これはその後、上述の方法/技術の位置検出/追跡の精度を著しく下げる(Jakub Marek Borkowski: Performance of Cell ID+RTT Hybrid Positioning Method for UMTSを参照)。
1つのマルチパス緩和技術は、過剰数のeNBまたは無線基地局(RBS)からの検知/測定値を使用する。最小値は3であるが、マルチパス緩和について、RBSの必要数は、少なくとも6から8である(METHOD AND ARRANGEMENT FOR DL−OTDOA (DOWNLINK OBSERVED TIME DIFFERENCE OF ARRIVAL) POSITIONING IN A LTE (LONG TERM EVOLUTION) WIRELESS COMMUNICATIONS SYSTEM, WO/2010/104436を参照)。しかしながら、この多数のeNBからUEが聴く(UE hearing)確率は、3つのeNBからのそれよりもはるかに低い。
これは、多数のRBS(eNB)では、幾つかのRBSはUEからはるかに離れるためであり、これらのRBSから受信された信号は、UEの受信機感度レベル以下に落ちるかもしれないか、あるいは受信された信号は、低いSNRを有するだろう。
RF反射(例えば、マルチパス)の場合には、様々な遅延時間を有するRF信号のコピーが、DLOS(直接見通し線)の信号上に重畳される。RTT測定を含む、様々なCELL IDおよびOTDOAの方法/技術に使用されるCPICH、アップリンクDPCCH/DPDCHおよび他の信号が、限られた帯域幅の信号であるために、DLOS信号および反射された信号は、適切なマルチパスの処理/緩和なしでは識別することができず;また、このマルチパス処理なしでは、これらの反射された信号は、RTT測定を含む、推定される到着時間差(TDOA)および到着時間(TOA)の測定における誤差を誘発するだろう。
例えば、3G TS 25.515 v.3.0.0(199−10)基準は、RTTを、「....ダウンリンクDPCHフレーム(信号)の送信と、UEからの対応するアップリンクDPCCH/DPDCHフレーム(信号)の開始(第1の重要なパス)の受信との違い」として定義している。該基準は、この「第1の重要なパス」を構成するものを定義していない。該基準は、「第1の重要なパスの定義には、さらなる精錬を必要とする」という言及を続けている。例えば、重いマルチパス環境では、これは一般的に発生し、それによって、第1の重要なパスであるDLOS信号は、1つ以上の反射された信号と比較して重度に減衰される(10dB −20dB)。「第1の重要なパス」が信号強度の測定によって判定される場合、それは、反射された信号の1つであり得、DLOSシグナルではない。これは、結果として、誤ったTOA/DTOA/RTT測定および位置検出精度の損失につながるだろう。
以前の無線ネットワークの世代では、位置検出精度は、位置検出方法によって使用されるフレーム(信号)(RTT、CPCIHおよび他の信号)の低いサンプリングレートによっても影響を受けた。現在の第3およびそれに続く無線ネットワークの世代は、はるかに高いサンプリングレートを有する。結果として、これらのネットワークでは、位置検出精度の現実の影響は、地上のRF伝搬現象(マルチパス)からのものである。
本実施形態は、操作のシンプレックス、半二重および全二重のモードを含む、参照信号及び/又はパイロット信号、及び/又は同期信号を利用するすべての無線ネットワークで使用され得る。例えば、本実施形態は、OFDM変調及び/又はその派生物を利用する無線ネットワークで作動する。したがって、本実施形態は、LTEネットワークで作動する。
これはまた、WiMax、WiFi、およびWhite Spaceを含む、他の無線ネットワークに適用可能である。参照及び/又はパイロット信号または同期信号を使用しない他の無線ネットワークは、同時係属中の出願第12/502,809号に記載されるような以下のタイプの代替的な変調の実施形態の1つ以上を利用し得る:1)フレームの一部分が、同時係属中の出願第12/502,809号に記載されるようなレンジング信号/レンジング信号要素に向けられる、実施形態;2)レンジング信号要素(同時係属中の出願第12/502,809号)が、送信/受信信号フレームに組み込まれる、実施形態;および3)(同時係属中の出願第12/502,809号に記載される)レンジング信号要素が、データとともに組み込まれる、実施形態。
これらの代替的な実施形態は、同時係属中の出願第12/502,809号に記載されるマルチパス緩和プロセッサーおよびマルチパス緩和技術/アルゴリズムを利用し、すべての操作モード:シンプレックス、半二重および全二重で使用され得る。
また、複数の無線ネットワークは、同時に、好ましい及び/又は代替的な実施形態を利用する傾向もある。一例として、スマートフォンは、Blue Tooth(登録商標)、WiFi、GSM(登録商標)およびLTEの機能を有し、それらを複数のネットワーク上で同時に操作する性能を備える。アプリケーションの需要及び/又はネットワークの利用可能性によって、位置決定/位置検出する情報を提供するための異なる無線ネットワークが利用され得る。
提案される実施形態の方法およびシステムは、無線ネットワークの参照信号/パイロット信号及び/又は同期信号を活用する。さらに、参照信号/パイロット信号/同期信号の測定は、RTT(ラウンドトリップ時間)の測定またはシステムタイミングと組み合わせられるかもしれない。一実施形態によると、RFベースの追跡および位置検出は、3GPP LTEのセルラーネットワーク上で実施されるが、様々な信号技術を利用する他の無線ネットワーク、例えば、WiMax、Wi−Fi、LTE、センサーのネットワークなどでも実施され得る。典型的な実施形態および上に言及された代替的な実施形態は両方とも、同時係属中の出願第12/502,809号に記載されるマルチパス緩和の方法/技術およびアルゴリズムを利用する。提案されるシステムは、ソフトウェア実行型デジタル信号処理を使用することができる。
本実施形態のシステムは、ユーザー機器(UE)、例えば携帯電話またはスマートフォン、ハードウェア/ソフトウェアの他に、基地局(ノードB(Node B))/増強された基地局(eNB)も活用する。基地局は、一般に、フィーダーによってアンテナに接続されたキャビンまたはキャビネット中の送信機および受信機から成る。これらの基地局は、マイクロセル(Micro Cell)、ピコセル(Pico Cell)、マクロセル(Macro Cell)、アンブレラセル(Umbrella Cell)、携帯電話の中継塔(Cell Phone towers)、ルーター(Routers)およびフェムトセル(Femtocells)を含む。結果として、UE装置およびシステム全体に対しては増分費用がほとんどかからない又は全くかからないだろう同時に、位置検出精度は著しく改善されるだろう。
その精度の改善は、本実施形態および同時係属中の出願第12/502,809号によって提供されるマルチパス緩和から生じる。本実施形態は、マルチパス緩和アルゴリズム、ネットワークの参照信号/パイロット信号及び/又は同期信号およびネットワークノード(eNB)を使用する。これらには、RTT(ラウンドトリップ時間)の測定値が補足されるかもしれない。マルチパス緩和アルゴリズムは、UE及び/又は基地局(eNB)、またはその両方:UEおよびeNBで実施される。
本実施形態は、DLOS信号が、1つ以上の反射信号と比較して、著しく減衰される(10dB−20dB低い)ときであえ、DLOS信号と反射された信号の分離を可能にするマルチパス緩和のプロセッサー/アルゴリズムを好適に使用する(同時係属中の出願第12/502,809号を参照)。したがって、本実施形態は、推測されるレンジング信号DLOSの飛行時間および結果的にTOA、RTTおよびDTOAの測定における誤差を著しく減少させる。提案されるマルチパス緩和およびDLOSの識別(認識)方法は、すべてのRFバンドおよび無線システム/ネットワーク上で使用され得る。また、これは、DSS(直接拡散スペクトル)およびFH(周波数ホッピング)などの、拡散スペクトル技術を含む、様々な変調/復調技術を支持することができる。
さらに、マルチパス緩和方法の精度をさらに上げるために、雑音低減方法が適用され得る。これらの雑音低減方法は、限定されないが、コヒーレントサミング、非コヒーレントサミング、マッチトフィルタリング、時間ダイバーシチの技術などを含むことができる。
マルチパス干渉誤差の残りは、最大推定法(例えば、ビタービアルゴリズム)、最小分散推定法(カルマンフィルタ)などの、後処理技術を適用することによってさらに減少され得る。
本実施形態では、マルチパス緩和プロセッサーおよびマルチパス緩和の技術/アルゴリズムは、RTT、CPCIHおよび他の信号及び/又はフレームを変更しない。本実施形態は、チャネル応答/推定を得るために使用される、無線ネットワークの参照信号、パイロット信号及び/又は同期信号を活用する。本発明は、UE及び/又はeNBによって作成されるチャネル推定の統計値(statistics)を使用する(Iwamatsu et al., APPARATUS FOR ESTIMATING PROPAGATION PATH CHARACTERISTICS, US 2003/008156; US 7167456 B2を参照)。
LTEネットワークは、あらゆるダウンリンクおよびアップリンクのサブフレームにおいて送信される、特定の(非データ)参照信号/パイロット信号及び/又は同期信号(既知信号)を使用し、セル帯域幅全体に及ぶかもしれない。簡潔性のために、これ以降、我々は、参照信号/パイロット信号および同期信号を参照信号と呼ぶ。LTE参照信号の一例は、図9にある(これらの信号はLTE資源要素間に点在する)。図2から、参照信号(シンボル)は、送信される、6つの副搬送波(subcarrier)ごとに送信される。さらに、参照信号(シンボル)は、時間および周波数の両方で交互に配置される(staggered)。総計で、参照信号は、3つの副搬送波ごとにカバーする(covering)。
これらの参照信号は、UEによる初期セル検索、ダウンリンクの信号強度測定、スケジューリングおよびハンドオーバなどで使用される。参照信号には、コヒーレントな復調に対するチャネル推定(応答判定)のためにUE固有の参照信号が含まれる。UE固有の参照信号に加えて、他の参照信号もまた、チャネル推定のために使用され得る(Chen et al、米国特許出願公開番号2010/0091826 A1を参照)。
LTEは、OFDM(直交周波数分割多重)変調(技術)を利用する。LTEにおいて、マルチパスによって引き起こされるISI(シンボル間干渉)は、各OFDMシンボルの開始にサイクリックプレフィックス(CP)を挿入することによって処理される。前のOFDMシンボルの遅延した反射信号が次のOFDMシンボルに到達する前に消えてしまうように、CPは十分な遅延を提供する。
OFDMシンボルは、複数の非常に緊密に間隔を置かれた副搬送波からなる。OFDMシンボル内では、(マルチパスによって引き起こされる)現在のシンボルの時間が互い違いにされたコピーが、キャリア間干渉(ICI)を結果的にもたらす。LTEにおいて、マルチパスチャネル応答を判定し、受信機においてチャネル応答を補正することによって、ICIが処理(緩和)される。
LTEにおいて、マルチパスチャネル応答(推定)は、受信機において、参照シンボルを運ぶ副搬送波から計算される。残りの副搬送波上のチャネル応答を推定するために補間が使用される。チャネル応答は、チャネルの振幅および位相の形態で計算(推定)される。チャネル応答が、(既知の参照信号の周期的な送信によって)判定されると、マルチパスによって引き起こされるチャネルの歪みが、副搬送波単位で振幅および位相シフトを適用することによって緩和される(Jim Zyren, Overview of the 3GPP Long Term Evolution Physical Layer,白書を参照)。
LTEのマルチパス緩和は、(サイクリックプレフィックスを挿入することによって)ISIと、ICIを除去するように設計されているが、反射された信号からDLOS信号を分離するようには設計されていない。例えば、現在のシンボルの時間が互い違いされたコピーは、各々の変調された各副搬送波信号を時間内で拡散し、これによりICIを引き起こす。上述のLTE技術を使用してマルチパスチャネル応答を補正することによって、変調された副搬送波信号が時間内で縮小されるが、このタイプの補正は、(OFDMシンボル内の)結果として得られる変調された搬送波信号がDLOS信号であることを保証するものではない。DLOSの変調された副搬送波信号が、遅延された反射信号と比較して著しく減衰される場合には、結果として得られる出力信号は、遅延された反射信号となり、DLOS信号は失われる。
LTEに準拠した受信機では、さらなる信号処理は、DFT(デジタルフーリエ変換)を含む。DFT技術が、信号及び/又はチャネル帯域幅に反比例する時間より長いまたはその時間と等しい時間の間遅延される信号のコピーのみを解消する(resolve)(除去する)ことができることが周知である。この方法の精度は、効率的なデータ転送に十分であり得るが、重いマルチパス環境における正確な距離測定には十分ではないかもしれない。例えば、30メートルの精度を実現するために、信号および受信機のチャネル帯域幅は、10MHz(1/10MHz=100ns)以上でなければならない。より良い精度のためには、信号および受信機のチャネル帯域幅は、より広く、3メートルに対して100MHzでなければならない。
しかしながら、RTT測定を含む、様々なCELL IDおよびOTDOAの方法/技術に使用されるCPICH、アップリンクDPCCH/DPDCHおよび他の信号に加えて、LETの受信機の信号の副搬送波は、10MHzより著しく狭い帯域幅を有する。結果として、(LTEにおいて)現在用いられている方法/技術は、100メートル範囲で位置検出誤差を生じる。
上述の制限を克服するために、本実施形態は、部分空間分解の高分解能スペクトルの推定方法論とマルチモーダルのクラスター分析の実施の特有の組み合わせを使用する。この分析と、同時係属中の出願第12/502,809号に記載される関連するマルチパス緩和の方法/技術およびアルゴリズムは、他の反射された信号パスからのDLOSパスの信頼性のある且つ正確な分離を可能にする。
LTEにおいて使用される方法/技術と比較すると、重いマルチパス環境においては、この方法/技術およびアルゴリズム(同時係属中の出願第12/502,809号)は、他のマルチパス(MP)のパスからのDLOSパスを信頼性のある且つ正確な分離を介して、距離測定の20倍から50倍の精度向上をもたらす。
同時係属中の出願第12/502,809号に記載される方法/技術およびアルゴリズムは、レンジング信号の複素振幅の推定を必要とする。したがって、チャネル推定(応答判定)に使用されるLTE参照信号および他の参照信号(パイロット信号及び/又は同期信号を含む)は、同時係属中の出願第12/502,809号に記載される方法/技術およびアルゴリズムにおけるレンジング信号としても解釈されてもよい。この場合、レンジング信号の複素振幅は、振幅および位相の形態でLTE受信機によって計算(推定)されるチャネル応答である。言い換えれば、LTE受信機によって計算(推定)されるチャネル応答の統計値は、同時係属中の出願第12/502,809号に記載される方法/技術およびアルゴリズムによって必要とされる複素振幅の情報を提供することができる。
マルチパスのない理想的なオープン空間のRF伝搬環境では、受信された信号(レンジング信号)の位相変化、例えばチャネル応答位相は、信号の周波数(直線)に正比例し、このような環境におけるRF信号の飛行時間(伝搬遅延)は、位相対周波数依存性の一次導関数を計算することによって、位相対周波数依存性から直接計算され得る。その結果、伝搬遅延は一定となる。
この理想的な環境では、初期(または任意)の周波数の絶対位相値は、重要ではなく、なぜなら、導関数は絶対位相値の影響を受けないからである。
重いマルチパス環境では、受信された信号の位相変化対周波数は、複雑な曲線(非直線)であり、一次導関数は、他の反射信号パスからのDLOSパスの正確な分離に使用され得る情報を提供していない。これが、同時係属中の出願第12/502,809号に記載されるマルチパス緩和のプロセッサーおよび方法/技術ならびにアルゴリズムを利用する理由である。
与えられた無線ネットワーク/システムにおいて達成される位相および周波数の同期(位相コヒーレンス)が非常に優れている場合、同時係属中の出願第12/502,809号に記載されるマルチパス緩和のプロセッサーおよび方法/技術ならびにアルゴリズムは、他の反射信号パスからDLOSパスを正確に分離し、このDLOSパスの長さ(飛行時間)を判定する。
この位相コヒーレントのネットワーク/システムにおいて、追加の測定は必要とされない。言い換えれば、一方向のレンジング(シンプレックスレンジング(simplex ranging))は実現可能である。
しかしながら、与えられた無線ネットワーク/システムにおいて達成される同期(位相コヒーレンス)の程度が十分に正確ではない場合、重いマルチパス環境において、受信された信号の位相および振幅の変化対周波数は、2つ以上の異なる位置(距離)で実施された測定と非常に類似しているかもしれない。この現象は、受信された信号のDLOS距離(飛行時間)の判定における曖昧さにつながるかもしれない。
この曖昧さを解決するために、少なくとも1つの周波数に対する実際の(絶対)位相値を知ることが必要である。
しかしながら、振幅および位相対LTE受信機によって計算される周波数依存性は、実際の位相値を含まず、なぜなら、すべての振幅および位相値は、ダウンリンク/アップリンクの参照信号から、例えば、互いに相対的に計算される。したがって、LTE受信機によって計算(推定)されるチャネル応答の振幅および位相は、少なくとも1つの周波数(搬送波周波数)で実際の位相値を必要とする。
LTEにおいて、この実際の位相値は、1つ以上のRTTの測定、TOAの測定、又は1つ以上の受信された参照信号のタイムスタンプから判定することができる。ただし、1)eNBによってこれらの信号を送信するこれらのタイムスタンプもまた、受信機において既知であり(その逆も然り);2)受信機及びeNBのクロックは、時間的によく同期されており;及び/又は3)マルチラテレーション技術を使用することを条件とする。
上述の方法の全ては、1つ以上の参照信号の飛行時間値を提供する。これらの参照信号の飛行時間値及び周波数から、1つ以上の周波数における実際の位相値を計算することができる。
本実施形態は、同時係属出願第12/502809号に記載されるマルチパス緩和プロセッサー、方法/技術、及びアルゴリズムと、1)LTEのUE及び/又はeNBの受信機によって計算される振幅、及び位相vs周波数依存性とを組み合わせることによって、又は、2)LTEのUE及び/又はeNBの受信機によって計算される振幅、及び位相vs周波数依存性と、RTT及び/又はTOAを介して取得された1つ以上の周波数の実際の位相値との組み合わせとを組み合わせることによって、及び/又はタイムスタンプの測定と組み合わせることによって、重いマルチパス環境における高精度なDLOS距離の判定/位置検出を実現する。
これらのケースにおいて、実際の位相値は、マルチパスの影響を受ける。しかしながら、これは、同時係属出願第12/502809号に記載される方法/技術及びアルゴリズムの性能に影響を与えない。
DL−OTDOA、U−TDOA、UL−TDOA等を含むLTEのRTT/TOA/TDOA/OTDOAにおいては、5メートルの分解能で測定を行うことができる。RTT測定は、専用の接続中に実行される。したがって、UEがハンドオーバ状態かつUEが定期的に測定を収集し、UEに折り返し報告する場合に、複数の同時測定が可能である。
そこでは、DPCHフレームが、UEと、異なるネットワーク(基地局)との間で交換される。RTTと同様に、TOAの測定は、信号の飛行時間(伝搬遅延)を提供するが、TOAの測定は、同時に行うことはできない(Jakub Marek Borkowskiによる「Performace of Cell ID+RTT Hybrid Positioning Method for UMTS」)。
平面上でUEを位置検出するためには、少なくとも3つのeNBから/へのDLOS距離が判定されなければならない。三次元空間においてUEを位置検出するためには、4つのeNBから/への最小4つのDLOS距離が判定されなければならない(少なくとも1つのeNBが同一平面上にないと仮定する)。
UEの測位方法の一例が図1に示されている。
同期が非常に良い場合には、RTTの測定は必要ではない。
同期化の度合いが十分に正確でない場合には、OTDOAと、セルID+RTTと、他の方法(例えばAOA(到来角)並びにAOAと他の方法との組み合わせ)といった方法が、UEを位置検出するために使用することができる。
セルID+のRTT追跡−位置検出方法の精度は、マルチパス(RTTの測定値)とeNB(基地局)のアンテナビーム幅との影響を受ける。基地局のアンテナビーム幅は33度と65度との間である。これらの広いビーム幅は、都市部において50〜150メートルの位置検出誤差という結果をもたらす(Jakub Marek Borkowskiによる「Performace of Cell ID+RTT Hybrid Positioning Method for UMTS」)。重いマルチパス環境において、現在のLTEのRTT距離測定の平均誤差は約100メートルであることを考慮すると、LTEセルID+RTT方法によって現在用いられている全体の予想平均位置検出誤差は、約150メートルである。
実施形態のうちの1つは、AOA方法に基づくUEの位置検出である。それにより、UEからの1つ以上の参照信号がUEを位置検出するために用いられる。これは、DLOSのAOAを判定するためにAOA判定デバイスの位置検出を伴う。このデバイスは、基地局と一緒に用いられるか、及び/又は、当該基地局の位置から独立した別の1つ以上の位置に備え付けることができる。これらの位置の座標は、知られているものと思われる。UE側に変更の必要はない。
このデバイスは、小型アンテナアレイを含み、同時係属出願第12/502809号に記載されるのと同一のマルチパス緩和プロセッサー、方法/技術及びアルゴリズムの変形に基づいている。この1つの考えら得る実施形態は、UEユニットからのDLOS RFエネルギーのAOAを正確に判定する(非常に狭いビーム幅)という利点を有する。
他の1つの選択肢においては、この追加されたデバイスは、受信デバイスでしかない。
その結果、その大きさ/重量及びコストが非常に低い。
正確なDLOS距離の測定が得られる実施形態と、正確なDLOSのAOA判定を行うことができる実施形態とを組み合わせることにより、セルID+RTTの追跡−位置検出方法の精度を大幅に、即ち10倍以上向上させる。このアプローチの別の利点は、UEの位置を、1つの塔を用いていつでも判定することができる(UEをソフトハンドオーバモードにすることを必要としない)ことである。正確な位置修正(location fix)が1つの塔を用いて得ることができるので、複数のセル塔を同期させる必要はない。
DLOSのAOAを判定する別の選択肢は、既存のeNBのアンテナアレイとeNB機器とを使用することである。この選択肢は、強化セルID+RTT方法の実施のコストを更に下げ得る。しかしながら、eNBアンテナは、位置検出用途用に設計されていないので、測位精度が低下することがある。また、ネットワーク事業者は、基地局(ソフトウェア/ハードウェア)における必要な変更を実施したがらない場合がある。
LTE(Evoled Universal Terrestrial Raido Access(E−UTRA);Physical Channels and Modulation;3GPP TS 36.211 Release9 technical Specification)において、測位参照信号(PRS)が追加された。これらの信号は、DL−OTDOA(ダウンリンクOTDOA)の測位のためにUEによって使用される。また、このRelease9では、eNBを同期させることが必要である。このようにして、OTDOA方法の最後の障害をクリアする(上記の段落274を参照)。PRSは、複数のeNBのUEにおけるUE可聴性(hear−ability)を向上させる。注記:Release9は、eNBの同期精度を明記していない(幾つかの提案:100ns)。
U−TDOA/UL−TDOAは、研究段階であり、2011年に標準化される。
DL−OTDOA方法(Release9)は、米国特許出願公開第2011/0124347 A1(Chenらによる「Method and Apparatus for UE Positioning in LTE Networks」)に詳述されている。Release 9のDL−OTDOAはマルチパスの影響を受ける。幾つかのマルチパス緩和は、増加したPRS信号帯域幅を介して実現することができる。しかしながら、このトレードオフにより、スケジューリングの複雑さが増し、UEの位置を修正する間の時間が長くなる。更に、例えば、動作帯域幅が例えば10MHzと制限されているネットワークでは、可能な限りの最高の精度は100メートルである(Chenによる表1参照)。
上記の数字は、可能な限り最高のケースである。他のケースにおいて、特に反射信号強度と比較してDLOS信号強度が著しく低い(10〜20dB)場合には、上述の位置検出/測距誤差が著しく大きく(2倍〜4倍)になるという結果をまねく。
本明細書に記載される実施形態は、「背景技術」において記載されるChenらのRelease9のDL−OTDOA方法及びUL−PRS方法によって実現される性能にわたり、測距/位置検出の精度を、与えられた信号帯域幅に対して50倍にまで向上させることが可能である。故に、本明細書に記載される方法の実施形態をRelease9のPRS処理に適用することにより、全ての可能なケースの95%において3メートル以下(3 meters or better)に位置検出誤差を低減する。また、この精度利得は、スケジューリングの複雑さと、UEの位置を修正する間の時間とを低減させる。
本明細書に記載される実施形態を用いることにより、OTDOA方法のさらなる改善が可能である。例えば、サービングセルへの測距は、他のサービングセルの信号から判定することができ、これにより、隣接するセルの可聴性を向上させ、スケジューリングの複雑さと、UEの位置を修正する間の時間とを低減する。
実施形態はまた、ChenらからのU−TDOA方法及びUL−TDOA方法の精度を50倍にまで向上させることができる(「背景技術」に記載)。実施形態をChenのUL−TDOAの変形に適用することにより、全ての可能なケースの95%において3メートル以下にまで位置検出誤差を低減する。更に、この精度利得は、スケジューリングの複雑さと、UEの位置を修正する間の時間とを更に低減させる。
重ねて、本実施形態を用いることにより、ChenのUL−TDOA方法の精度を50倍にまで向上させることができる。したがって、本実施形態をChenのU−TDOAの変形に適用することにより、全ての可能なケースの95%において3メートル以下にまで位置検出誤差を低減することになる。更に、この精度利得は、スケジューリングの複雑さと、UEの位置を修正する間の時間とを更に低減させる。
上述のDL−TDOA方法及びU−TDOA/UL−TDOA方法は、単方向測定(測距)に依存する。本実施形態及び実質的に他の全ての測距技術は、単方向測距の処理において使用されるPRS及び/又は他の信号の周波数及び位相がコヒーレントであることを要求する。LTEのようなOFDMに基づくシステムでは、周波数がコヒーレントである。しかしながら、UEユニット及びeNBは、UTCといった共通ソースによって、2、3nsに位相又は時間が同期されておらず、例えば、ランダム位相加算器(random phase adder)が存在する。
測距精度に対する位相コヒーレンスの影響を回避するために、マルチパスプロセッサーの実施形態は、レンジング信号間、例えば参照信号間、個々の成分(副搬送波)間の位相差を計算する。これにより、ランダム位相項加算器(random phase term adder)が必要なくなる。
Chenらの考察において上記で特定されるように、本明細書に記載される実施形態を適用することは、Chenらによって実現される性能と比較して、屋内環境において大幅な精度向上をもたらす。例えば、Chenらによれば、DL−OTDOA及び/又はU−TDOA/UL−TDOAは、主に屋外環境のためのものであり、屋内(建物、キャンパス等)では、DL−OTDOA及びU‐TDOA技術はうまく機能しない場合がある。幾つかの理由として、屋内で一般的に用いられる分散アンテナシステム(DAS)を含むことに言及している(Chen、#161〜164参照)。ここで、各アンテナは、固有のIDを有していない。
下記の実施形態は、OFDM変調及び/又はその派生を用いる無線ネットワーク、並びに参照/パイロット/及び又は同期の信号を用いる無線ネットワークで動作する。したがって、以下記の実施形態は、LTEネットワークで動作し、当該実施形態はまた、参照/パイロット/及び/又は同期の信号の有無にかかわらず、他のタイプの変調を含む他の無線システム及び他の無線ネットワークにも適用することができる。
本明細書に記載されるアプローチは、WiMAX、WiFi、White Spaceを含む他の無線ネットワークにも適用することができる。参照/パイロット及び/又は同期の信号を使用しない他の無線ネットワークは、同時係属出願第12/502809号に記載されるような以下のタイプの1つ以上の代替の変調態様を用いることもある:1)フレームの一部がレンジング信号/レンジング信号要素専用である;2)レンジング信号要素は、送信/受信の信号フレームに埋め込まれている;3)レンジング信号要素は、データとともに埋め込まれている。
本明細書に記載されるマルチパス緩和の範囲推定アルゴリズムの実施形態(同時係属特許出願第13/008519号及び13/109904号にも記載)は、マルチパスの反射に加えて信号の直線経路(DLOS)からなる集合(ensemble)の範囲の推定を提供することによって動作する。
LTEのDASシステムは、移動受信機(UE)に、様々な時間オフセットで見られる同一の信号の複数のコピーを生成する。遅延は、アンテナと移動受信機との間の幾何学的関係を一意に判定するように使用される。受信機から見た信号は、マルチパス環境で見られる信号と似ているが、主要な「マルチパス」成分が、複数のDASアンテナからのオフセット信号の合計から生じたものを除く。
受信機から見た信号の集合は、実施形態が利用するように設計された信号の集合のタイプと同じであるが、この場合、主要なマルチパス成分は、従来のマルチパスではないことを除く。本マルチパス緩和プロセッサー(アルゴリズム)は、DLOS及び各パス、例えば反射の減衰や伝搬遅延を判定することができる(方程式1〜3及び関連する記載を参照)。分散RFチャネル(環境)のせいでマルチパスが存在し得る一方、この信号の集合における主要なマルチパス成分は、複数のアンテナからの送信に関連している。本マルチパスアルゴリズムの実施形態は、これらのマルチパス成分を推定することができ、DASアンテナから受信機への範囲を分離し、位置検出プロセッサー(ソフトウェアに実装)に範囲データを提供する。アンテナの配置(antenna placing geometry)に応じて、この解決法は、X及びYと、X、Y及びZとの双方の位置座標を提供することができる。
その結果、本実施形態は、ハードウェア及び/又は新たなネットワーク信号の追加を必要としない。更に、1)マルチパスを緩和することによって、2)アクティブDASの場合には、測位誤差の下限を、例えば約50メートルから約3メートルに下げるといったように、大幅に下げることができることによって、測位精度を大幅に向上させることができる。
DASの各アンテナの場所(位置)が既知であるとする。各アンテナの(又は他のアンテナに相対する)信号伝搬遅延もまた、判定され(知られ)なければならない。
アクティブDASシステムでは、既知信号が往復送信され、この往復時間が測定されるループバック技術を使用して、信号伝搬遅延が自動的に判定され得る。このループバック技術はまた、温度、時間等を用いて信号伝搬遅延の変化(ドリフト)を排除する。
複数のマクロセル及び関連のアンテナを使用して、ピコセル及びマイクロセルは、追加の基準点を提供することによって、解決を更に高める。複数のアンテナからの複数のコピーの信号の集合における個々の範囲推定である上述の実施形態は、次の2つの方法で信号送信構造を変更することによって更に改善することができる。1つ目は、各アンテナからの送信の時間多重化である。2つ目は、各々のアンテナの周波数多重化である。双方の改善である時間多重化及び周波数多重化を同時に使用することは、システムの測距及び位置検出の精度を更に向上させる。別のアプローチは、各アンテナに伝播遅延を追加することである。追加の遅延に起因するマルチパスがISI(シンボル間干渉)をもたらさないように、遅延値は、特定のDAS環境(チャネル)において遅延拡散を超えるのに十分大きいが、サイクリックプレフィックス(CP)の長さよりも小さくなるように選択される。
各アンテナに固有のID又は固有の識別子を追加することは、結果として得られる解決の効率を向上させる。例えば、プロセッサーが各アンテナからの信号から全ての範囲を推定する必要性を排除する。
LTEのダウンリンクを利用する一実施形態において、パイロット及び/又は同期の信号の副搬送波を含む1つ以上の参照信号の副搬送波が、副搬送波の位相及び振幅を判定するように用いられる。副搬送波の位相及び振幅は、次に、マルチパス干渉の緩和のためにマルチパスプロセッサーに適用され、マルチラテレーションと位置整合アルゴリズムとを使用して範囲に基づく位置オブザーバブルと位置推定とを生成することにより、ワイルドポイントを編集する。
別の実施形態は、LTEのアップリンクがまた、参照副搬送波も含む参照信号をモバイルデバイスから基地局に信号送達するという事実を利用する。実際には、周波数帯域をアップリングデバイスに割り当てるためにネットワークによって用いられる完全な発音モード(sounding mode)から、アップリンク信号等の変調を補助するためにチャネルインパルス応答を生成するように参照搬送波が用いられるモードまでの参照搬送波を含む、1つより多いモードが存在する。また、Release9に追加されたDL PRSと同様に、追加のUL参照信号は、次回及び将来の標準Releaseに追加されるかもしれない。この実施形態において、アップリンク信号は、同一の範囲を用いて複数の基地ユニット(eNB)により位相へ処理され、マルチパス緩和処理により、範囲に関連したオブザーバブルを生成する。この実施形態において、位置整合アルゴリズムが、マルチラテレーションアルゴリズムによって確立されるように使用されることにより、ワイルドポイントのオブザーバブルを編集し、位置推定を生成する。
更に別の実施形態において、LTEのダウンリンク及びLTEアップリンク双方の、関連する1つ以上の参照(パイロット及び/又は同期を含む)副搬送波が収集され、範囲から位相へのマッピングが適用され、マルチパス緩和が適用され、範囲に関連したオブザーバブルが推定される。それから、マルチラテレーションアルゴリズム及び位置整合アルゴリズムを使用して、位置に関する堅牢なオブザーバブルのセットを提供するように、これらのデータが融合される。この利点は、ダウンリンクとアップリンクの2つの異なる周波数帯が存在するために精度が向上する結果となる冗長性であり、又はTDD(時分割二重化)の場合には、システムコヒーレンスが向上する。
複数のアンテナがマイクロセルから同一のダウンリンク信号を送信するDAS(分散アンテナシステム)環境において、位置整合アルゴリズムが拡張されることにより、参照信号(パイロット及び/又は同期を含む)の副搬送波からマルチパス緩和処理によって生成されたオブザーバブルからDASアンテナの範囲を分離し、複数のDASエミッター(アンテナ)の範囲からの位置推定を取得する。
DASシステム(環境)において、個々のアンテナからの信号経路が高精度で解決できる場合にのみ、正確な位置推定を取得することが可能である。ここで、経路誤差は、アンテナ間の距離のほんの一部である(10メートル以下の精度)。全ての既存の技術/方法が重いマルチパス環境(複数のDASアンテナからの信号が、重いマルチパスを誘発したように思われる)においては、このような精度を提供することができないので、既存の技術/方法は、上述の位置整合アルゴリズムの拡張、及び、DAS環境においてこの位置検出方法/技術を利用することができない。
同時係属出願第12/502809号に記載される、物体の識別及び位置検出のための、インヴィジトラックのマルチパス緩和方法及びシステムは、LTEのダウンリンク、アップリンク及び/又はその両方(ダウンリンク及びアップリンク)、1つ以上の参照信号の副搬送波を利用して、及び、マルチラテレーションと位置整合性とを用いて、範囲から信号位相へのマッピング、マルチパス干渉緩和、並びに範囲に関連した位置オブザーバブルを生成する処理に適用されることで、位置推定を生成する。
上述の全ての実施形態において、三辺測量測位アルゴリズムも用いることができる。
DL−OTDOAの位置検出は、LTE Release9「Evolved Universal Terrestrial Radio Access(E−UTRA);Physical Channels and Modulation;3GPP TS 36.211 Release9 technical Specification」に明記されている。しかしながら、これは、無線通信事業者(キャリア)によって実施されていない。一方、ダウンリンクの位置検出は、既存の物理層測定オペレーションを使用することによって、現在の、例えば修正されていない、LTEネットワーク環境内において実施することができる。
LTEにおいて、UE及びeNBは、無線特性の物理層測定を行うために必要とされる。測定定義は、3GPP TS 36.214に明記されている。これらの測定は、定期的に実行され、上位層に報告され、様々な目的のために使用される。これらの目的は、周波数内及び周波数間のハンドオーバ、無線通信アクセス技術間(inter−RAT)ハンドオーバ、タイミングの測定、及びRRM(無線資源管理;Radio Resource Management)を支持する他の目的を含む。
例えば、RSRP(参照信号受信電力)は、全帯域幅にわたってセル特有の参照信号を伝送する全ての資源要素の電力の平均である。
別の例は、追加情報を提供するRSRQ(参照信号受信品質)の測定である(RSRQは、信号強度と干渉レベルとを組み合わせる)。
LTEネットワークは、eNB隣接(サービングeNBに対して隣接するeNB)リストをUEに提供する。ネットワーク知識構成に基づいて、(サービング)eNBは、隣接するeNBの識別子等をUEに提供する。その後、UEは、UEが受信することが可能な隣接するeNBの信号品質を測定する。UEは、結果をeNodeBに折り返し報告する。注記:UEはまた、サービングeNBの信号品質を測定する。
本明細書によれば、RSRPは、考慮された測定周波数帯域内のセル特有の参照信号を搬送する資源要素の電力貢献(単位:W(in [W]))の線形平均値として定義される。RSRPを判定するためにUEによって使用される測定帯域幅は、対応する測定精度の要件が満たされなければならないという制限付きで、UEの実施に委ねられる。
測定帯域幅の精度要件を考慮すると、この帯域幅はかなり大きく、RSRPの測定において使用されるセル特有の参照信号が更に処理されることにより、これらの参照信号の副搬送波の位相及び振幅を判定することができる。これら参照信号の副搬送波の位相及び振幅は、その後、マルチパスプロセッサーに適用されることにより、マルチパス干渉を低減し、範囲に基づく位置オブザーバブルを生成する。加えて、RSRPの測定において使用される他の参照信号、例えばSSS(二次同期信号)もまた使用され得る。
その後、3つ以上のセルからの範囲のオブザーバブルに基づいて、位置修正を、マルチラテレーションと位置整合アルゴリズムとを用いて推定することができる。
上記したように、RFフィンガープリンティングデータベース不安定性の幾つかの要因が存在するが、その主要なものの1つは、マルチパスである(RF署名は、マルチパスに非常に敏感である)。その結果、RFフィンガープリンティング法/技術の位置検出精度は、マルチパスのダイナミックスに大きく影響される。前記ダイナミックスは、経時的な変化と、環境(例えば、天候)の変化と、デバイスのZ高さ及び/又はアンテナの向きに依存して変動性が100%より大きい垂直の不確実性を含む、人々及び/又は物体の動きの変化とを含む(Tsung−Han Linらによる「Microscopic Examination of an RSSI−Signature−Based Indoor Localization System」参照)。
本実施形態は、大幅に減衰したDLOSを含む個々の各経路を見つけ且つ特徴付ける能力を有する(マルチパスプロセッサー)ので、RFフィンガープリンティングの位置検出精度を大幅に向上させることができる。その結果、位置修正についてのRFフィンガープリンティングの判定は、リアルタイムマルチパス分布情報によって補完することができる。
上述したように、位置修正は、位置参照(position reference)を時間的に同期させる必要がある。無線ネットワークにおいて、これらの位置参照は、アクセスポイント、マクロ/ミニ/ピコ及びフェムトセル、並びにいわゆる小さなセル(eNB)を含み得る。しかしながら、無線通信事業者は、正確な位置修正のために必要とされる同期精度を実施しない。例えば、LTEの場合には、規格はFDD(周波数分割二重)ネットワーク用のeNB間で時間的な同期を必要としない。LTEのTDD(時間分割二重)では、この時間的な同期精度の限度は、+/−1.5マイクロ秒である。これは、400メートル以上の位置検出不確実性に相当する。必須ではないが、LTEのFDDネットワークもまた同期されるが、限度は更に大きい(1.5マイクロ秒より大きい)。
無線LTEの事業者は、GPS/GNSS信号を使用して周波数及び時間的にeNBを同期する。注記:LTEのeNBは、非常に正確なキャリア周波数を維持しなければならない:マクロセル/ミニセルについては、0.05ppm、他のタイプのセルについては、少し精度が低い(0.1〜0.25ppm)。GPS/GNSS信号もまた、10ナノ秒より優れた、(位置検出のために)必要とされる時間同期精度を可能する。しかしながら、ネットワーク事業者やネットワーク機器製造業者は、パケットトランスポート、例えばNTP(ネットワーク時間プロトコル)及び/又はPTP(高精度時間プロトコル)(例えば、IEEE 1588v2 PTP)を用いるインターネット/イーサネット(登録商標)のネットワーキング時間同期の方を好んで、GPS/GNSSユニットに関連するコストを削減しようとしている。
IPネットワークに基づく同期は、最小周波数及び時間的要件を満たす可能性を有しているが、位置修正に必要とされるGPS/GNSS精度を欠いている。
本明細書に記載されるアプローチは、GPS/GNSS信号、eNB及び/又はAPによって生成された信号、もしくは他の無線ネットワーク機器によって生成された信号に基づいている。このアプローチはまた、IPネットワーキング同期信号、プロトコル、並びに、eNB及び/又はAPによって生成された信号、もしくは他の無線ネットワーク機器によって生成された信号に基づいている。このアプローチはまた、WiMax、WiFi、及びWhite Spaceを含む他の無線ネットワークにも適用することができる。
eNBの信号は、事業者のeNB施設(図12)に設置された時間観測ユニット(TMO;Time Observation Unit)によって受信される。TMOまた、外部同期ソース入力を含む。
eNBの信号は、TMOによって処理され、外部同期ソース入力で同期したクロックを使用してタイムスタンプがそれに付与される。
外部同期ソースは、GPS/GNSS及び/又はインターネット/イーサネット(登録商標)のネットワーキング、例えばPTP、NTP等からのものであり得る。
タイムスタンプが付与された信号、例えばLTEのフレーム開始(特に、他のネットワークでは、他の信号であってもよい)はまた、eNB(セル)の位置及び/又はセルIDを含み、インターネット/イーサネット(登録商標)を介して、全てのeNBのデータベースを作成し、維持し、更新する中央TMOサーバーに折り返し送信される。
測距し、及び位置修正を取得する処理に関与するUE及び/又はeNBは、TMOサーバーを探し(quire)、サーバーは、関与したeNB間の時間同期オフセットを送り返す。これらの時間同期オフセットは、位置修正を取得する処理に関与するUE及び/又はeNBによって使用されることにより、位置修正を調整する。
あるいは、測距の処理に関与したUE及び/又はeNBがまた、取得した測距情報をTMOサーバーに供給する場合には、TMOサーバーによって位置修正の計算及び調整を行うことができる。その後、TMOサーバーは、正確な(調整した)位置修正を送り返す。
1つより多いセルのeNB機器が、共に同じ場所に配置されている場合、たった1つのTMOが全てのeNBからの信号を処理し、タイムスタンプを付与する。
RTT(往復遅延時間)の測定(測距)が位置検出のために使用され得る。欠点は、RTTの測距が、位置検出精度に大きな影響を与えるマルチパスにさらされることである。
一方、RTTの位置検出は、一般的に位置参照の同期(時間的な同期)を必要とせず、LTEの場合には、特にeNBを必要としない。
同時に、無線ネットワークのパイロット参照信号及び/又は他の信号で動作する場合には、同時係属出願第12/502809号に記載されるマルチパス緩和プロセッサー、方法/技術及びアルゴリズムが、RTT信号のチャネル応答を判定、例えば、RTT信号が通過するマルチパスチャネルを識別することが可能である。これは、実際のDLOS時間が判定されるように、RTTの測定を補正することを可能にする。
DLOS時間が既知である場合には、eNB又は位置参照の時間的な同期を必要することなく、三辺測量及び/又は類似の位置検出方法を使用して、位置修正を取得することが可能である。
TMO及びTMOサーバーが適所にある場合でも、インヴィジトラックの技術統合は、マクロセル/ミニセル/ピコセル及び小さいセル、並びに/又はUE(携帯電話)における変更を必要とする。これらの変更は、SW/FW(ソフトウェア/ファームウェア)のみに限定されているが、既存のインフラストラクチャーを改造するためには多くの労力を要する。また、場合によってはネットワーク事業者及び/又はUE/携帯電話の製造業者/供給業者は、機器の変更に抵抗する。注記:UEは、無線ネットワークのユーザー機器である。
TMO及びTMOサーバーの機能が、インヴィジトラックの位置検出技術を支持するように拡張された場合には、このSW/FWの変更を完全に回避することができる。言い換えれば、下記の別の実施形態は、無線ネットワーク信号で動作するが、無線ネットワーク機器/インフラストラクチャーの変更を必要としない。したがって、下記の実施形態は、LTEネットワークで動作し、また、Wi−Fiを含む他の無線システム/ネットワークにも適用することができる。
本質的には、この実施形態は、無線ネットワーク信号を用いることにより位置修正を取得する、並列無線位置検出インフラストラクチャーを作成する。
TMO及びTMOサーバーと同様に、インヴィジトラックの位置検出インフラストラクチャーは、1つ以上の無線ネットワーク信号取得ユニット(NSAU;Network Signals Acquisition Unit)と、1つ以上の位置検出サーバユニット(LSU;Locate Server Unit)とからなる。位置検出サーバユニットは、NSAUからデータを収集し、それを分析し、範囲及び位置を判定し、それを、例えば瞬間的な電話/UEのID及び位置のテーブルに変換する。LSUは、ネットワークAPIを介して無線ネットワークにインターフェースする。
複数のこれらのユニットは、大規模なインフラストラクチャーの様々な場所に配置され得る。NSAUのタイミングがコヒーレントな場合、全ての結果が使用され得、より高い精度が得られる。
コヒーレントなタイミングは、GPSクロック及び/又は他の安定したクロック源から導出することができる。
NSAUは、LAN(ローカルエリアネットワーク)、メトロエリアネットワーク(MAN)及び/又はインターネットを介してLSUと通信する。
幾つかの設備/場合において、NSAUとLSUとは、単一のユニットに組み合わせ/一体化することができる。
LTE又は他の無線ネットワークを使用して位置検出サービスを支持するために、送信機は、厳しい公差内でクロック同期及びイベント同期される必要がある。通常、これは、GPSの1PPS信号にロックすることによって達成される。これは、ローカルエリアにおいて、3ナノ秒(1−シグマ)内の時間同期を結果としてもたらすことになる。
しかしながら、このタイプの同期は、実用的ではない多くの例が存在する。本実施形態は、位置検出処理に遅延補償値を提供するために、ダウンリンク送信機間の時間オフセット推定と、時間オフセットの追跡とを提供する。それにより、送信機がクロック同期及びイベント同期されたように位置検出処理が進行する。これは、(位置検出サービスに必要とされる)送信アンテナの事前の情報と、既知の事前のアンテナの位置を有する受信機とによって実現される。この同期ユニットと呼ばれる受信機は、全てのダウンリンク送信機からデータを収集し、位置の情報が与えられている場合には、事前に選択された基地アンテナからオフセットタイミングを計算する。これらのオフセットは、ダウンリンク送信機に対してクロックドリフトを補償する追跡アルゴリズムの使用を介して、システムによって追跡される。注記:受信したデータから擬似範囲を導出する処理は、インヴィジトラックのマルチパス緩和アルゴリズム(同時係属出願第12/502809号に記載)を利用することになる。そのため、同期はマルチパスによる影響を受けない。
これらのオフセットデータは、位置検出プロセッサー(ロケートサーバ、LSU)によって使用されることにより、各ダウンリンク送信機からのデータを適切に位置合わせする。その結果、データは、同期した送信機によって生成されたように見える。時間精度は、最良の1−PPSの追跡に匹敵し、3メートルの位置検出精度(1−シグマ)を支持する。
同期受信機及び/又は受信機のアンテナは、最高性能のために最適なGDOPに基づいて配置される。大規模な設備では、ネットワーク全体わたって3ナノ秒(1−シグマ)に相当する同期オフセットを提供するように複数の同期受信機を利用することができる。同期受信機を利用することによって、ダウンリンク送信機の同期のための要件が排除される。
同期受信機ユニットは、NSAU及び/又はLSUと通信するスタンドアローンユニットであってもよい。あるいは、この同期受信機はNSAUと一体化することができる。
無線ネットワークの例示的な位置検出機器の図を図13に示す。
LTE信号を利用する、完全自律システムの実施形態(No Customer Network Investment)は、以下のモードで動作する。
1.アップリンクモード−位置検出のために無線ネットワークのアップリンク(UL)信号を使用する(図16及び図17)。
2.ダウンリンクモード−位置検出のために無線ネットワークダウンリンク(DL)信号を使用する(図14及び図15)。
3.双方向モード−位置検出のためにUL信号及びDL信号の両方を使用する。
アップリンクモードにおいて、複数のアンテナが1つ以上のNSAUに接続されている。
これらのアンテナの位置は、無線ネットワークアンテナから独立している。NSAUのアンテナ位置は、GDOP(幾何学的精度劣化度)を最小にするように選択される。
UE/携帯電話デバイスからのネットワークのRF信号は、NSAUのアンテナによって収集され、NSAUよって処理されることにより、時間間隔中に、処理されたネットワークRF信号のタイムスタンプが付与されたサンプルを生成する。当該時間間隔は、目的の全ての信号の1つ以上のインスタンスを捕獲するのに適切である。
随意に、NSAUはまた、ダウンリンク信号のサンプルを受信し、処理し、タイムスタンプを付与することにより、例えばUE/電話ID等を判定するために、追加情報を取得する。
捕獲されたタイムスタンプを付与したサンプルから、各UE/携帯電話の識別番号(ID)と関連付けられる対象のタイムスタンプを付与した目的の無線ネットワーク信号とともに、UE/携帯電話デバイスの識別番号(ID)が、判定(取得)される。この動作は、NSAU又はLSUのいずれかによって実行することができる。
NSAUは、LSUにデータを定期的に供給する。スケジューリングされていないデータが1つ以上のUE/携帯電話のIDに必要とされる場合には、LSUは追加のデータを要求することになる。
ULモード動作用に無線ネットワークインフラストラクチャー及び/又は既存のUE/携帯電話において、変更/修正は必要ではない。
ダウンリンク(DL)モードでは、インヴィジトラックが有効にしたUEが必要となる。また、携帯電話が位置修正を取得するように使用される場合には、携帯電話のFWが変更されなければならない。
幾つかの場合において、事業者は、BBU(ベースバンドユニット)からのベースバンド信号を利用可能にできる。このような場合、NSAUはまた、RFの無線ネットワーク信号の代わりに、これらの利用可能なベースバンドの無線ネットワーク信号を処理することもできる。
DLモードにおいて、UE/携帯電話のIDと1つ以上の無線ネットワーク信号とを関連付けする必要はない。なぜなら、これらの信号はUE/携帯電話において処理されるか、又はUE/携帯電話は、処理されたネットワークRF信号のタイムスタンプが付与されたサンプルを定期的に生成し、これらをLSUに送信し、LSUは、結果をUE/携帯電話に折り返し送信するからである。
DLモードにおいて、NSAUは、RFの無線ネットワーク信号、又は(利用可能な場合には)ベースバンドの無線ネットワーク信号を処理し、処理したものをタイムスタンプ処理する。捕獲されたタイムスタンプが付与されたサンプルから、ネットワークアンテナに関連付けられた無線ネットワーク信号のDLフレーム開始が判定(取得)され、それらのフレーム開始間の差(オフセット)が計算される。この動作は、NSAU又はLSUのいずれかによって実行することができる。ネットワークアンテナのフレーム開始オフセットは、LSUに格納される。
DLモードにおいて、UE/電話デバイスがインヴィジトラックの技術を用いて自身の位置修正を処理/判定する場合には、ネットワークアンテナのフレーム開始オフセットがLSUからUE/電話デバイスに送信される。その他の場合には、UE/携帯電話デバイスが処理されたネットワークRF信号のタイムスタンプが付与されたサンプルを定期的にLSUに送信する際、LSUは、デバイスの位置修正を判定し、そのデバイスに位置修正データを折り返し送信する。
DLモードにおいて、無線ネットワークのRF信号は、1つ以上の無線ネットワークアンテナから来る。結果得られる精度に対するマルチパスの影響を回避するために、RF信号は、アンテナから傍受される(sniff out)か、又は無線ネットワーク機器へのアンテナ接続から傍受されるべきである。
双方向モードは、UL及びDL動作の両方から、位置修正を判定することを包含する。
これにより、位置検出精度を更に向上させることができる。
幾つかの企業のセットアップは、1つ以上のリモート無線ヘッド(RRH)を供給する1つ以上のBBUを使用し、その後、各RRHは、複数のアンテナに同一のIDを供給する。このような環境において、無線ネットワーク構成に依存して、ダウンリンクモードのネットワークアンテナのフレーム開始オフセットを判定することは必要とされない場合がある。これは、単一のBBUのセットアップ並びに複数のBBSを含む。ここで、各BBUのアンテナには、特定のゾーンが割り当てられており、隣接するゾーンカバレッジは、オーバーラップしている。
一方、複数のBBUから供給されるアンテナが同一のゾーンにおいて交互配置される構成は、DLモードのネットワークアンテナのフレーム開始オフセットを判定する必要がある。
DAS環境におけるDLモード動作において、複数のアンテナが同一のIDを共有し得る。
本実施形態において、位置整合アルゴリズムは、参照信号(パイロット及び/又は同期を含む)の副搬送波からのマルチパス緩和処理により生成されたオブザーバブルからDASアンテナの範囲を分離し、且つ複数のDASエミッター(アンテナ)の範囲から位置推定を得るために拡張/展開される。
しかしながら、これらの整合アルゴリズムでは、同一のIDを発するアンテナの数に制限がある。以下の1〜3によって同一のIDを発するアンテナの数を削減することができる:
1.与えられたカバレッジゾーンでは、セクター化されたBBUの、異なるセクターから供給されるアンテナを交互に配置する(BBUは6セクターまで支持することができる);
2.与えられたカバレッジゾーンでは、セクター化されたBBUの、異なるセクターから供給されるアンテナと、異なるBBUから供給されるアンテナとを交互に配置する;
3.各アンテナに伝搬遅延要素を追加する。
追加の遅延に起因するマルチパスがISI(シンボル間干渉)をもたらさないように、遅延値は、特定のDAS環境(チャネル)において遅延拡散を超えるのに十分大きいが、サイクリックプレフィックス(CP)の長さよりも小さくなるように選択される。1つ以上のアンテナに固有の遅延IDを付加することは、同じIDを発するアンテナの数を更に減少させる。
一実施形態において、No Customer Network Investmentを有する完全自律システムを提供することができる。このような実施形態において、システムは、LTE帯域以外の帯域で動作することができる。例えば、ISM(industrial Scientific and Medical)帯域及び/又はWhite Space帯域は、LTEのサービスが利用できない場所において使用することができる。
本実施形態はまた、マクロ/ミニ/ピコ/フェムト基地局及び/又はUE(携帯電話)機器と一体化することができる。一体化はCustomer Network Investmentを必要とすることもあるが、それは諸経費を削減することができ、大幅にTCO(総保有コスト;Total Cost Of Ownership)を改善することができる。
本明細書において上述したように、ダウンリンク観測到来時間差(DL−OTDOA)測位のためにUEによって、PRSを使用することができる。隣接する基地局(eNB)の同期に関して、3GPP TS 36.305(Stage2 funcitonal specification of User Equipment (UE) positioning in E−UTRAN)は、UEへの転送のタイミングを明記する。このタイミングは、候補セル(例えば、隣接するセル)へのeNode Bサービスに相対的である。3GPP TS 36.305はまた、測定のために候補セルの物理セルID(PCI)及びグローバルセルID(GCI)を明記する。
3GPP TS 36.305によると、この情報は、E−MLC(Enhanced Serving Mobile Location Centre)サーバーから配信される。TS 36.305は、上述のタイミング精度を明記していないことに留意すべきである。
加えて、3GPP TS 36.305は、UEが参照信号時間差(RSTD;Reference Signal Time Difference)の測定を含むダウンリンクの測定をE‐MLCに返すことを明記する。
RSTDは、一対のeNB間で取られた測定である(TS 36.214 Evolved Universal Terrestrial Radio Access(E−UTRA);Physical Layer Measurement;Release9を参照)。この測定は、隣接するセルjから受信されたサブフレームと、サービングセルiの対応するサブフレームとの間の相対的なタイミング差として定義される。測位参照信号は、これらの測定を行うために使用される。結果は、位置を計算するロケートサーバに折り返し報告される。
一実施形態において、新たに導入されたPRS及び既存の参照信号の両方を収容するように、ハイブリッド法を定義することができる。言い換えれば、ハイブリッド法は、PRS信号で、他の参照信号(例えば、セル特有の参照信号(CRS))で、又は両方のタイプの信号で使用/動作することができる。
このようなハイブリッド法は、ネットワーク事業者が、状況又はネットワークパラメータに依存して動作モードを動的に選択することができるという利点を提供する。例えば、PRSは、CRSよりも良好な可聴性を有するが、データスループットが最大7%減少することになり得る。一方、CRS信号は、スループットの減少を引き起こさない。加えて、CRSの信号は、先の全てのLTE Releaseとの下位互換性(例えば、Release8以下)を有する。このように、ハイブリッド法は、トレードオフを行う、つまり可聴性と、スループットと、及び互換性との間のバランスをとる能力を、ネットワーク事業者に提供する。
Long Term Evolution(LTE)の実施において、LTEのダウンリンクベースバンド信号(セル又は無線ノードによって生成され、本明細書では「ノード」と称される)は一般的に、ダウンリンクフレームと組み合わせられる。そのような信号を検出し且つ受信するための受信機は、複数のセル又はノード(2以上)からダウンリンクフレームを検出する場合がある。各ダウンリンクフレームは、複数のCRS又は参照信号を含む。ダウンリンク(DL)フレームにおいて、これら参照信号は、時間的及び周波数的に予め定めた位置を備えており、例えば、与えられたフレーム中の、フレーム開始と各CRSとの間に、決定論的な時間オフセットが存在する。
加えて、各CRSは特殊コードで変調される。変調及びコードも予め定められる。CRS変調は全てのノードに対して同一であるが、コード(シード)は、ノードのID(識別)番号により判定される。
その結果、ノードのIDを知ることにより、参照信号のスペクトルにおいて、各ノード(セル)から各フレームのフレーム開始時間のコース位置を推定することが、可能となる。そうするために、先ず、フレーム開始時間、又は異なるノードから全てのDL信号に関するフレーム開始を決定することが、必要となる。例えば、一実施形態において、受信したDLベースバンド信号を、(検出器及び/又はマルチパス緩和プロセッサーにより内部に生成される)コード変調したCRSの既知のレプリカに関連付けることによって、様々なノードから全てのCRSシーケンス又は他の参照信号を見出すことが可能となり、この情報は、全ての観察可能なノードの、およその位置フレームの開始を見出す。一実施形態において、検出器はまた、CRSを復調化/複合化し、次に、復調化/複合化したCRSを、CRSに割り当てられるベースバンド副搬送波と関連付ける場合がある。
同時に、一実施形態において、CRSはまた、マルチパス緩和プロセッサーによってレンジング信号として使用される場合がある。それ故、およそのフレーム開始を見出すことに加えて、検出器の相関プロセスはまた、それらのシグナルを変調するために使用されたコードを使用して、フレーム中で他の信号(ペイロードなど)からCRSを分離することが可能である。その後、これらの分離したCRS、及び関連付けしたフレーム開始は、測距用のマルチパス緩和プロセッサーに転送される。
同様のアプローチがアップリンクモードで使用することができる。ここで、異なるノード受信機間のタイミングオフセットを、判定することができる。
ダウンリンクの実施形態において、ネットワークと通信して1つ以上の無線ネットワークデバイスを追跡及び位置検出するためのシステムは、ネットワークと通信して2つ以上のノードから複数の信号を受信するように構成されるユーザー機器受信機を含み、複数の信号は、複数の信号を送信する2つ以上のノードの各ノードの識別によって判定されたコードにより変調されるものであり、ユーザー機器受信機は、識別に基づいて複数の信号から参照信号を検出及び分離するように構成される検出器を含むものであり、及び、前記システムは、1つ以上の無線ネットワークデバイスを追跡及び位置検出するために各ノードからレンジング信号として参照信号を使用するように構成されるプロセッサーを含む。
実施形態において、2つ以上のノードの各ノードからの複数の信号は、参照信号を含むフレームに組み合わせられ、及び、検出器は更に、各ノードからのフレーム開始のコース位置を推定するように構成される。
実施形態において、検出器は更に、参照信号を、前記参照信号の既知のレプリカと関連付けることにより、コース位置を推定するように構成される。
実施形態において、検出器は更に、フレーム中で他の信号から参照信号を分離するように構成され、及び、検出器は更に、2つ以上のノードの各ノードの参照信号を分離するように構成される。
実施形態において、プロセッサーは、少なくとも1つのマルチパス緩和プロセッサーであり、マルチパス緩和プロセッサーは、コース位置及び分離した参照信号を受信し、且つ各ノードからレンジング信号の到着の相対時間を推定するように構成される。
実施形態において、プロセッサーは少なくとも1つのマルチパス緩和プロセッサーである。
実施形態において、2つ以上のノードの各ノードからの複数の信号はフレーム内にあり、検出器は更に、各ノードからフレーム開始のコース位置を推定するように構成され、検出器は、フレーム中で他のシグナルから参照信号を分離するように構成され、検出器は更に、2つ以上のノードの各ノードの参照信号を分離するように構成され、検出器は、各ノードのコース位置及び分離した参照信号をマルチパス緩和プロセッサーに通すように構成され、及び、マルチパス緩和プロセッサーは、コース位置及び分離した参照信号を受信し、且つ各ノードからレンジング信号の到着の相対時間を推定するように構成される。
実施形態において、システムは更に、ノード受信機が1つ以上の無線ネットワークデバイスからデバイス信号を受信するように構成されるアップリンクの実施形態を含み、デバイス信号は、デバイス信号を送信する1つ以上の無線ネットワークデバイスの各無線ネットワークデバイスのデバイス識別により判定されるデバイスコードにより変調されるものであり、ノード受信機は、デバイス識別に基づいてデバイス信号からデバイスの参照信号を検出且つ分離するように構成されるデバイス検出器を含むものであり、及び、前記システムは、1つ以上の無線ネットワークデバイスを追跡且つ位置検出するための各無線ネットワークデバイスからレンジング信号としてデバイス参照信号を使用するように構成される第2プロセッサーを含む。
一実施形態において、ネットワークと通信して1つ以上の無線ネットワークデバイスを追跡及び位置検出するためのシステムは、ネットワークと通信して2つ以上のノードから複数の信号を受信するように構成されるユーザー機器受信機を含み、複数の信号は、複数の信号を送信する2つ以上のノードの各ノードの識別によって判定されたコードにより変調されるものであり、及び、前記システムは、識別に基づいて複数の信号から参照信号を検出且つ分離するように、及び、1つ以上の無線ネットワークデバイスを追跡及び位置検出するために各ノードからレンジング信号として参照信号を使用するように構成されるプロセッサーを含む。
実施形態において、2つ以上のノードの各ノードからの複数の信号は、参照信号を含むフレームに組み合わせられ、及び、プロセッサーは更に、各ノードからのフレーム開始のコース位置を推定するように構成される。
実施形態において、プロセッサーは更に、参照信号を、参照信号の既知のレプリカと関連付けることにより、コース位置を推定するように構成される。
実施形態において、プロセッサーは更に、コース位置及び分離した参照信号に基づいて各ノードからレンジング信号の到着の相対的な時間を推定するように構成される。
実施形態において、プロセッサーは更に、フレーム中で他の信号から参照信号を分離するように構成され、及び、プロセッサーは更に、2つ以上のノードの各ノードの参照信号を分離するように構成される。
実施形態において、2つ以上のノードの各ノードからの複数の信号はフレーム内にあり、プロセッサーは更に、参照信号を、参照信号の既知のレプリカと関連付けすることにより各ノードからフレーム開始のコース位置を推定するように構成され、プロセッサーは更に、フレーム中の他の信号から参照信号を分離し、且つ2つ以上のノードの各ノードの参照信号を分離するように構成され、及び、プロセッサーは更に、コース位置及び分離した参照信号に基づいて各ノードからレンジング信号の到着の相対的な時間を推定するように構成される。
一実施形態において、ネットワークと通信して1つ以上の無線ネットワークデバイスを追跡及び位置検出するためのシステムは、ネットワークと通信して2つ以上のノードから複数の信号を受信するように構成される検出器を含み、複数の信号は、複数の信号を送信する2つ以上のノードの各ノードの識別によって判定されたコードにより変調されるものであり、検出器は、識別に基づいて複数の信号から参照信号を検出且つ分離するように構成されるものであり、及び、前記システムは、1つ以上の無線ネットワークデバイスを追跡及び位置検出するために各ノードからレンジング信号として参照信号を使用するように構成されるプロセッサーを含む。
実施形態において、2つ以上のノードの各ノードからの複数の信号は、参照信号を含むフレームに組み合わせられ、及び、検出器は更に、各ノードからのフレーム開始のコース位置を推定するように構成される。
実施形態において、検出器は更に、参照信号を、前記参照信号の既知のレプリカと関連付けることにより、コース位置を推定するように構成される。
実施形態において、検出器は更に、フレーム中で他の信号から参照信号を分離するように構成され、及び、検出器は更に、2つ以上のノードの各ノードの参照信号を分離するように構成される。
実施形態において、プロセッサーは、少なくとも1つのマルチパス緩和プロセッサーであり、マルチパス緩和プロセッサーは、コース位置及び分離した参照信号を受信し、且つ各ノードからレンジング信号の到着の相対時間を推定するように構成される。
実施形態において、プロセッサーは少なくとも1つのマルチパス緩和プロセッサーである。
実施形態において、2つ以上のノードの各ノードからの複数の信号はフレーム内にあり、検出器は更に、各ノードからフレーム開始のコース位置を推定するように構成され、検出器は、フレーム中で他のシグナルから参照信号を分離するように構成され、検出器は更に、2つ以上のノードの各ノードの参照信号を分離するように構成され、検出器は、各ノードのコース位置及び分離した参照信号をマルチパス緩和プロセッサーに通すように構成され、及び、マルチパス緩和プロセッサーは、コース位置及び分離した参照信号を受信し、且つ各ノードからレンジング信号の到着の相対時間を推定するように構成される。
一実施形態において、ネットワークと通信して1つ以上の無線ネットワークデバイスを追跡且つ位置検出するためのシステムは、1つ以上の無線ネットワークデバイスからデバイス信号を受信するように構成されるノード受信機を含み、デバイス信号は、デバイス信号を送信する1つ以上の無線ネットワークデバイスの各無線ネットワークデバイスのデバイス識別により判定されるデバイスコードにより変調されるものであり、ノード受信機は、デバイス識別に基づいてデバイス信号からデバイス参照信号を検出且つ分離するように構成されるものであり、及び、前記システムは、1つ以上の無線ネットワークデバイスを追跡且つ位置検出するための各無線ネットワークデバイスからレンジング信号としてデバイス参照信号を使用するように構成されるプロセッサーを含む。
さらに、ハイブリッド法は、LTEのUE測位アーキテクチャに対して透過的であり得る。例えば、ハイブリッド法は、3GPP TS 36.305フレームワークにおいて動作することができる。
1つの実施形態において、RSTDを測定することができ、3GPP TS 36.305によれば、UEからE‐SMLCに転送することができる。
UL‐TDOA(U‐TDOA)は、現在研究段階であり、次回のRelease 11で標準化されると予想される。
UL‐TDOA(アップリンク)の実施形態は、本明細書で上述されており、また、図16および図17に示されている。本明細書で下に記載される図18および図19は、UL‐TDOAの代替の実施形態の例を提供する。
図18は、1つ以上のDASおよび/またはフェムト/小型セルのアンテナを含み得る環境を示している。この例示的な実施形態では、各NSAUは単一のアンテナを備えている。図示したように、少なくとも3つのNSAUが必要である。しかしながら、各UEが少なくとも3つのNSAUによって「聴こえ」なければならないので、可聴性を向上するように追加のNSAUを追加することができる。
さらに、NSAUは、受信機として構成することができる。例えば、各NSAUは、空気を越えて情報を受信するが、送信はしない。動作において、各NSAUは、UEからの無線アップリンクネットワーク信号を聴く(リスニングする)ことができる。UEのそれぞれは、携帯電話、タグ、および/または他のUEデバイスであり得る。
さらに、NSAUは、有線サービス、LAN等といったインターフェースを介して位置検出サーバユニット(LSU)と通信するように構成することができる。その後、LSUは、無線またはLTEネットワークと通信することができる。通信はネットワークAPIを介して行われることが可能であり、ここで、LSUは例えば、LTEのE−SMLCと通信することができ、LAN及び/又はWANのような有線サービスを使用できる。
随意に、LSUはまた、DAS基地局および/またはフェムト/小型セルと直接通信することができる。この通信は同じ又は改訂されたネットワークAPIを介して行うことができる。
この実施形態において、位置検出のために、サウンディング参照信号(SRS)を使用することができる。しかしながら、他の信号を使用することもできる。
NSAUは、UEのアップリンク送信信号をデジタル形式、例えば、I/Qサンプルに変換することができ、タイムスタンプが付与されたLSUに、変換された多くの信号を定期的に送信することができる。
DAS基地局および/またはフェムト/小型セルは、以下のデータのうちの1つまたはすべてをLSUに渡すことができる:
1)SRS、I/Qサンプル、およびタイムスタンプ;
2)サービングされたUEIDのリスト;および
3)SRSスケジューリングリクエスト構成(Schedule Request Config)情報およびSRS‐UL構成(SRS‐UL‐Config)情報を含む、UEIDを有するUEごとのSRSスケジュール。
LSUに渡される情報は、上述の情報に限定されない場合がある。この情報は、各UEIDを有する各UEデバイスのアップリンク信号(例えば、UESRS)を相関させるために必要な任意の情報を含むことができる。
LSUの機能は、UEの測距計算と位置修正を取得することを包含することができる。
これらの判定/計算は、NSAU、DAS基地局および/またはフェムト/小型セルからLSUに渡された情報に基づいて行うことができる。
LSUはまた、NSAUからLSUに渡された、入手可能なダウンリンク伝送情報からタイミングオフセットを判定してもよい。
その後、LSUは、無線またはLTEネットワークにUEの位置修正やその他の計算およびデータを提供することができる。このような情報は、ネットワークAPIを介して通信することができる。
同期のために、各NSAUは、ダウンリンク信号のサンプルを受信し、処理し、それにタイムスタンプを付与し得る。各NSAUはまた、タイムスタンプを含むこのような複数のサンプルをLSUに定期的に送信し得る。
また、各NSAUは、外部信号との同期するように構成された入力を含み得る。
図19は、UL‐TDOAの別の実施形態を示す。図18に示したコンポーネントに加えて、この実施形態の環境は、DAS基地局および/またはフェムト/小型セルの代わりに使用することができる1つ以上のセル塔を含み得る。1つ以上のセル塔からのデータは、UEの位置修正を取得するように使用することができる。
このように、この実施形態の利点は、単一のセル塔(eNB)のみを用いて位置修正を取得することを包含する。また、この実施形態では、1つ以上のeNBがDAS基地局および/またはフェムト/小型セルを置き換えることができることを除いて、図18で記載したような同様の方法で動作するように構成することができる。
UEのアップリンクの位置検出の1つの方法は、セル同定法(CID)である。基礎的なCID法において、UEの位置はセルレベルで判定されてもよい。この方法は、純粋にネットワークに基づくものである。その結果、UE(例えばハンドセット)は、それが追跡されているという事実に気づかない。これは比較的簡単な方法である一方で、位置検出不確実性がセル径と等しいので、それは精度を欠く。例えば、図20に例証されるように、サービングセル塔2004のセル径2002内のハンドセット2000のいずれも、それらが同じ位置になくても、効果的に同じ位置をとる。サービングするセクター識別(セクターID)の情報と組み合わせた時、CID法の精度は上げることができる。例えば、図21に例証されるように、セクターID2100は、セル径2002の他のセクターにおける他のハンドセット2000とは異なる位置を有することが知られている多くのハンドセット2104を含むセル径2002内のセクション2102を識別する。
CID法に対するさらなる強化は、強化されたセルID(E−CID)法を介して可能であり、これは上に記載された基礎的なCID法にさらなる改良を提供する。1つの強化は、UEがeNB(ネットワークノード)からどれくらい遠いか計算するためにタイミング測定を使用する。ラウンドトリップ時間(RTT)又はLTEにおけるタイミングアドバンス(RTT)(LTE TA)の半分として(光速をかけて)(times the speed of light)計算され得る。UEが接続されるとき、RTTまたはTAは距離推定のために使用されてもよい。この場合:サービングするセル塔またはセクターおよびUEの両方は(サービングするeNBコマンドによって)、RxサブフレームおよびTxサブフレームの間のタイミング差を測定するだろう。UEはeNBに(またeNB管理下で)その測定値を報告するだろう。LTE Rel−9は、ランダムアクセス法(random access procedure)の間にPRACHのプリアンブルの受信から推測されるタイミングアドバンスに依存するTAタイプ2測定値を付加することに留意されたい。PRACH(物理的/パケットランダムアクセスチャネル)のプリアンブルは、追跡されているUEから応答を受信しない場合、1つのPRACHランピングサイクル(ramping cycle)中に送られるプリアンブルの最大値を指定する。LTEタイプ1 TA測定は以下のようにRTT測定に対する等価物である:
RTT = TA (type 1) = eNB(Rx − Tx) + UE(Rx − Tx)
eNBの座標およびサービングセル塔のアンテナの高さについての知識により、UEの位置はネットワークによって計算され得る。
しかしながら、1次元において位置検出精度は、セクター幅およびサービングするセル塔からの距離に依存し、他の次元において誤差はTA(RTT)測定の精度に依存するため、E−CID位置検出法はまだ限定的である。セクター幅はネットワークトポロジーにより様々であり、伝搬現象、具体的にはマルチパスによって影響を与えられる。セクターの精度の推定値は、200メートルから500メートル超まで様々である。LTE TA測定の分解能は4Tsであり、これは最大39メートルの誤差に相当する。しかしながら、LTE TA測定における実際の誤差は、キャリブレーションの不正確性および伝搬現象(マルチパス)により、さらに大きく、200メートルにも達することがある。
図22に例証されるように、E−CID法は、到着角(AoA)として知られる特徴の付加によりさらに改良されてもよい。eNBは、等しく間隔を置かれたアンテナ素子2200のリニアアレイを使用してUEが送信している方向を推測する。典型的には、参照信号はAoA判定に使用される。参照信号が2つの隣接したアンテナ素子2200でUEから受信されるとき、AoA、搬送波周波数およびエレメントスペーシングに依存する量の分だけ、図23に示されるように、参照信号は相回転されてもよい。AoAには、eNBがそれぞれアンテナアレイ/適応アンテナを装備することを必要とされる。また、それはマルチパスおよびトポロジーの変動にさらされる。それにもかかわらず、高度なアンテナアレイは、セクター2100の幅2202を著しく減少させることができ、これはよりよい位置検出精度につながるかもしれない。その上、図23に例証されるように、ハンドセットAoA判定をなすために、2つ以上のサービングするセル塔2300(方向性アンテナアレイを装備したeNBの基地局)を使用することができる場合、精度は相当に改善されるかもしれない。そのような場合において、精度は、マルチパス/伝搬現象の影響をなお受ける。
複数LTEバンドに関してネットワークワイドなアンテナアレイ/適応アンテナを配備することは、資本、時間、メンテナンスなどに巨大な労力を必要とする。その結果、アンテナアレイ/適応アンテナはUE位置検出の目的のために配備されてこなかった。信号強度ベースの方法など他の手法は、著しい精度向上をもたらさない。そのような信号強度手法の1つはフィンガープリンティングであり、これは、膨大な連続的に変化する(時間内の)指紋データベースを作成し、継続的にアップデートすることを必要とする(例えば著しい精度向上なしに大きい主要な再度生じる経費)。その上、フィンガープリンティングはUEベースの技術であり、それによって、UE位置はUEアプリケーションレベルでのUE支援なしでは測定され得ない。
他のアップリンク位置検出方法の制限の解決は、アンテナアレイ/適応アンテナの必要性なしでAoA性能の用途を包含している。そのような実施形態はAoA判定のためにTDOA(到着時間差)位置検出技術を使用してもよく、それは、複数受信機でのソースからの信号の到着時間差の推定に基づくかもしれない。時間差推定の特定の値は、UEと通信して2つの受信機の間の双曲線を定義する。受信アンテナ間の距離が位置しているエミッター(ハンドセット)の距離に対して短いとき、TDOAは、センサー(受信機アンテナ)のベースラインとエミッターからの入射RFネルギーの間との間の角度と同等である。ベースラインと実際のノース(true North)との間の角度が知られているとき、象限方位線(LOB)及び/又はAoAは判定され得る。
TDOAまたはLOB(AoAとしても知られている)のいずれかを使用する一般的な位置検出方法が知られている一方で、TDOA位置検出方法は、こうした技術の精度を許容可能にするにはTDOA基準点が互いに近すぎるので、LOBを判定するためには使用されてこなかった。むしろ、LOBは通常、方向性アンテナ及び/又はビームフォーミングアンテナを使用して判定される。しかしながら、本明細書中に記載される超分解能の方法は、劇的に精度を改善しながら、TDOAをLOB判定のために使用することを可能にする。加えて、本明細書に記載されている、参照信号処理技術なしで、「聴く」こと(例えば、サービングセクター外部のUEから来る参照信号を、例えばサービングでないセクター及び/又はアンテナによって、検知する)は、可能ではないかもしれない。本明細書に記載されている分解能および処理の性能なしで、LOB判定のためにTDOAを使用することは、少なくとも2つの参照点(例えば2本以上のセクター及び/又はアンテナ)が必要であるので、可能ではないかもしれない。同様に、UEはサービングするセクター以外のものから(例えば、サービングしないセクター及び/又はアンテナから)UEまで来る参照信号を検知することができないかもしれない
例えば、図24では、2つのアンテナ分離シナリオ、つまり広い分離および狭い(小さい)分離が例証される:両方のシナリオでは、双曲線2400および入射線2402はハンドセット2000の位置に交差しているが、しかし、アンテナ2404の分離が広い場合には、これがより急な角度で起こり、次に、実質的に位置検出誤差を減少させる。同時に、互いに近接するアンテナ2404の場合には、双曲線2400は、RFエネルギー入射の線2402またはLOB/AoAと交換可能となる。
以下に述べられる式は、エミッターからの付帯的なRFエネルギーを判定するために使用されることがあり、ここで、2本のアンテナ(センサー)間のRFエネルギーの到着時間差が次の式によって与えられる:
式中:
Δtは秒数での時間差あり;
xはメーター数での2センサーの間の距離であり;
は、度数でのセンサーのベースラインと入射RF波との間の角度であり;
および
cは光速である。
いくつかの位置検出の戦略は、TDOA位置検出の実施形態の使用を通じて利用可能であり、該戦略は:(1)2つ以上のサービングするセル間のTDOA測定値(マルチラテレーション)が利用可能なときに、例えば広い分離;(2)TDOA測定値が、1つ以上のサービングするセルでの2つ以上のセクターからのみであるときに;例えばLOB/AoAのような小さいアンテナ分離;(3)戦略(1)および(2)の組み合わせ;及び(4)TA測定値および戦略(1)‐(3)の組み合わせ、例えば改良されたE−CID、を含む。
以下にさらに説明されるように、近接して配置されたアンテナの場合、2本以上のアンテナからの信号が同じセル塔からのものであるとき、TDOA位置検出の実施形態は、象限方位線を使用してもよい。これらの信号は受信された合成信号において検知することができる。塔の位置および各々のセクター及び/又はアンテナの方位角を知ることによって、象限方位線及び/又はAoAを位置検出プロセスで計算し利用することができる。LOB/AoAの精度は、マルチパス、ノイズ(SNR)などによって影響を与えられるかもしれない。しかしながら、この影響は、高度な信号処理、および上に記載されたマルチパス緩和処理技術によって緩和されてもよく、それは超分解能技術に基づいてもよい。こうした高度な信号処理は、限定しないが、信号の関連/修正、フィルタリング、平均化、同時の平均化、および他の方法/技術を含む。
図25に例証されるように、サービングするセル塔2500は典型的には複数のセクターから成り、それは3つのセクター(セクターA、セクターBおよびセクターC)の構成を示す。例証された3つのセクターの配備は、1つのセクター当たり1つ以上のアンテナ2502を含んでもよい。ハンドセット送信信号(handset transmissions)がセクターAの主ローブ(主ローブの中央はセクター方位角と一致する)にあるので、セクターAなどの単一のセクターは、UE(ハンドセット)の制御化にある。同時に、ハンドセット送信信号は、セクターBおよびCの主ローブの外側に(例えば、アンテナサイドローブへ)落ちる(fall)だろう。したがって、ハンドセット送信信号は、セクターBおよびCの出力信号帯の中にまだあるだろうが、しかし、セクターBまたはセクターCの主ローブに位置する他のハンドセットからの信号に比べて著しく弱められるだろう。それにもかかわらず、高度な信号処理の使用を通じて、上下に記載されるように、それらをセクターBおよびセクターCサイドローブなど隣接のセクターのサイドローブから検知可能にするレンジング信号上の十分な処理利得を得ることは起こり得る。ネットワークベースの位置検出の目的のために、LTEアップリンクSRS(サウンディング参照信号)はレンジング信号として使用されてもよい。
言いかえれば、UEアップリンク参照信号が隣接するセクターアンテナのサイドローブにあるかもしれない一方、本明細書に記載されている参照信号の処理方法を介した処理利得は、2つ(またはそれ以上の)セクターアンテナ間のTDOAの計算を可能にするのに十分かもしれない。この実施形態の精度は、上に記載されたマルチパス緩和処理アルゴリズムによって著しく強化しうる。したがって、LTE/AOAタイミングで計算された環で交差したLOB/AOAは、UE位置を、20×100メーターの誤差楕円範囲内にし得る。
2つ以上のLTE塔によってUEを聴くことができるとき、さらなる位置検出の誤差減少が達成されてもよく、それは処理利得および上に記載したマルチパス緩和技術を伴う可能性が高く、そのような場合、TDOA双曲線と1以上のLOB/AoAの線の交差点は、結果として30×20メートルの誤差楕円(2セクターのセル塔に関して)になり得る。セル塔がそれぞれ3つ以上のセクターを支持するとき、誤差楕円は10―15メートルまでさらに減少し得る。UEが3以上のeNB(セル塔)によって聴かれるとき、5〜10メートルの精度が達成されることがある。モール、オフィスパーク、などの高価値なエリアでは、追加の小さいセルまたは受動的なリスニング装置は必要なカバレッジを作り出すために使用されてもよい。
上に言及されるように、セル塔2500の各セクターは、1つ以上のアンテナ2502を含んでもよい。典型的なインストールでは、与えられたセクターのために、各々のアンテナからの信号はセクターの受信機の入力で組み合わせられる。その結果、位置検出の目的のために、2本以上のセクターアンテナを、複合の方向性のパターン、方位角、および仰角で単一のアンテナとして見ることができる。仮説のアンテナの複合の方向性およびその(主ローブ)方位角および仰角は、セクター自体に割り当てられてもよい。
ある実施形態において、各々のサービングするセル塔および隣接のサービングするセル塔のすべてのセクターからの受信された信号(デジタルフォーマットにおいて)は、位置判定のために位置検出サーバユニット(LSU)に送られる。また、各々がサービングされたUE当たりのSRSスケジュールおよびTA測定値は、各々サービングセル塔から各々サービングセクターによってLSUに提供される。各サービングセル塔および各隣接するセル塔の座標、仮定の(複合の)セクターアンテナ方位角および仰角による1塔当たりのセクター数、およびセル塔での各セクターの位置が知られていると想定して、LSUは、サービングセル塔及び/又は隣接するセル塔の位置と比較して各UEの位置を判定してもよい。上述の情報はすべて、1以上の標準化されたインターフェースまたはプロプラエタリのインターフェースを使用して、有線ネットワーク(例えばLAN、WANなど)を介して送られてもよい。LSUはまた、標準化されたインターフェースおよび(または)ネットワークキャリアーの定義されたインターフェース/APIを使用して、ワイヤレスネットワークインフラストラクチャーをインターフェースで接続してもよい。位置判定は、またネットワークノードおよびLSUの間で分離していてもよく、または単独でネットワークノードにおいて実行されてもよい。
1つの実施形態において、位置判定はUEで実行されてもよく、またはUEとLSUまたはネットワークノードの間で分離してもよい。そのような場合、UEは標準ネットワークプロトコル/インターフェースを使用して、空気を越えて通信してもよい。さらに、位置判定は、UE、LSU及び/又はネットワークノードの組み合わせによって実行することができ、又はLSUの機能、SUPLサーバー、E−SMLCサーバー、及び/又は、その後LSUのかわりに使用できるLCS(LoCation Services)システム、へ実施される(組み込まれる)ことが可能である。
ダウンリンク(DL)位置検出法の実施形態は、上に記載されたアップリンク(UL)位置検出の実施形態に対して相反的である。DL実施形態において、セクターは、セクターの受信した方向性、方位角および仰角と一致する、送信パターン、方位角および仰角を伴う送信機になってもよい。アップリンクの実施形態とは異なり、DLの実施形態では、典型的にはUEは単一の受信アンテナを有する。したがって、UEに関して、RF波の入射を判定するために使用できるセンサーベースラインはない。しかしながらUEは、異なるセクター間のTDOAを、及び結果的にセクター間の双曲線(マルチラテレーション)を測定でき、小さいセル塔セクターが互いに近接しているので、図24と比較して上に記載されるように、双曲線は、RFエネルギーの入射の線またはLOB/AoAにより交換可能になる。LOB/AoAの精度はマルチパス、ノイズ(SNR)などによって影響を受けることがあるが、この影響は、上に記載した高度な信号処理、及びマルチパス緩和処理(それは超分解能技術に基づく)の使用を通じて緩和されるかもしれない。
言及されたように、UEアップリンクの位置検出に類似する方法でUE DL位置検出を達成することができ、例外として、RF波入射角は上記の式から測定され得ない。代わりに、マルチラテレーション技術は、各サービングセル塔のLOB/AoAの測定に使用されてもよい。
UE DL位置検出の実施形態はまた参照信号を利用する。DLの場合において、こうしたネットワークベースの位置検出のための1つの手法は、レンジング信号としてLTEのセル特有の参照信号(CRS)を使用することであってもよい。また、LTE Release 9に導入された測位参照信号(PRS)が使用されてもよい。したがって、位置検出は、CRSのみ、PRSのみ、またはCRSおよびPRS両方を使用して行われてもよい。
UEアップリンク位置検出の実施形態でのように、UEダウンリンク位置検出の実施形態のために、デジタルフォーマットのUE受信信号のスナップショットが、処理のためにLSUに送られてもよい。随意に、UEはまたTA測定値を得て、LSUにそれらを提供してもよい。随意に、各々がサービングされたUEについてTA測定値は、各サービングセル塔(ネットワークノード)から各サービングセクターによってLSUに提供されてもよい。前に記したように、各サービングセル塔および各隣接するセル塔の位置の座標、各セクターの送信パターン、方位角および仰角による、1塔当たりのセクターの数およびセル塔の各セクター位置が知られていると想定して、LSUは、各サービングセル塔及び/又は隣接するセル塔の位置と比較して各UEの位置を判定してもよい。実施形態において、位置判定はUEで実行されてもよく、またはUEとLSUまたはネットワークノードとの間で分離してもよい。実施形態において、位置検出はすべてLSUまたはネットワークノードにおいて実行され得るか、または2つの間で分離し得る。
UEは、標準の無線プロトコル/インターフェースを使用して、空気を越えて、測定結果および他の情報を通信/受信するだろう。LSUおよびネットワークノードの間の情報交換は、プロプラエタリ及び/又は1以上の標準化されたインターフェースを使用して、有線ネットワーク(例えばLAN、WANなど)を通っていてもよい。LSUはまた、標準化されたインターフェースおよび(または)ネットワークキャリアーの定義されたインターフェース/APIを使用して、ワイヤレスネットワークインフラストラクチャーを接続してもよい。位置判定は、またネットワークノードおよびLSUの間で分離していてもよく、または単独でネットワークノードにおいて実行されてもよい。
上記に記載されたUE DL位置検出の実施形態については、アンテナポートマッピング情報も位置を検出するために使用することができる。3GPP TS 36.211 LTE標準は、DLのためのアンテナポートを定義する。個別の参照信号(パイロット信号)は各アンテナポートに対してLTE標準で定義されている。したがって、DL信号はさらにアンテナポート情報を伝える。この情報はPDSCH(物理的なダウンリンク共有チャネル)に含まれている。PDSCHは以下のアンテナポートを使用する:0;0および1;0,1,2および3);又は5。図26に例証されるように、これらの論理的なアンテナポートは物理的な送信アンテナに割り当てられている(マッピングされている)。
結果として、このアンテナポート情報をアンテナ識別(アンテナID)に使用することができる。
例えば、アンテナポートマッピング情報は、(アンテナ位置が知られていると想定して)アンテ間のRF波の入射および双曲線(マルチラテレーション)を測定するために使用され得る。位置判定がどこで実行されるかに依存して、アンテナマッピング情報はLSUまたはUE、またはネットワークノードに利用可能でなければならない。異なるタイムスロットおよび異なるリソース要素にCRS信号を置くことにより、アンテナポートが示されることは留意されたい。1つのCRS信号のみがDLアンテナポートにつき送信される。
eNBまたはネットワークノードにおけるMIMO(多入力多出力)配備の事象において、受信機は与えられたUEからの到着時間差を測定できるかもしれない。アンテナ位置を含む、受信機マッピング、例えばMIMOマッピング、に対するアンテナについての情報によって、アンテナに対するRF波の入射(LOB/AoA)および与えられたeNBアンテナに対する双曲線(マルチラテレーション)を測定することが可能であり得る。同様に、UEでは、UE受信機は、2以上のeNBまたはネットワークノードおよびMIMOアンテナからの到着時間差を測定することが可能であり得る。eNBアンテナ位置及びアンテナマッピングについての情報によって、アンテナからのRF波の入射(LOB/AoA)および与えられたeNBアンテナに対する双曲線(マルチラテレーション)を測定することが可能であろう。位置判定がどこで行われるかに依存して;アンテナマッピング情報はLSUまたはUE、またはネットワークノードに利用可能でなければならない。
単入力多出力(SIMO)、単出力多入力(SOMI)、単入力単出力(SISO)など、MIMOのサブセットである他の構成がある。これらの構成はすべて、アンテナポートマッピング及び/又はMIMOアンテナマッピングの情報によって位置検出の目的のために定義/決定されてもよい。
このようにして、システムおよび方法の、異なる実施形態を記載したが、それは記載された方法および装置の特定の利点が達成されたことが当業者には明白であるはずである。
特に、物体を追跡し、位置検出するためのシステムがFGPAまたはASICと、標準信号処理ソフトウェア/ハードウェアとの組み合わせを使用して、非常にわずかな増分費用で組み立てることができることが、当業者によって理解されるはずである。このようなシステムは、様々な用途において、例えば屋内または屋外環境、過酷なおよび厳しい環境等において人々の位置を特定するのに有用である。
また、様々な変更、適合、および代替の実施形態が本発明の範囲および精神内においてなされ得ることが理解されるべきである。