以下に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
図1に、光学式エンコーダ(以下、単にエンコーダという)の構成を示す。エンコーダは、不図示の装置の固定部に取り付けられるセンサユニット10と、該装置の可動部に取り付けられ、センサユニット10に対して回転移動可能なスケール20とを有するロータリーエンコーダである。なお、装置の固定部にスケール20を取り付け、可動部にセンサユニット10を取り付けてもよい。すなわち、センサユニット10とスケール20とが相対移動可能であればよい。
図1では、センサユニット10やスケール20に形成されている格子の表示を省略している。センサユニット10から光は、破線で示され、スケール20の計測領域に照射される。スケール20の計測領域におけるスケール20の移動方向は、図1のX方向である。以下の説明において、センサユニット10に対するスケール20の移動方向(図1のX方向)、すなわちスケール20とセンサユニット10との相対移動方向を位置検出方向という。また、本実施形態ではスケール20は反射型スケールであるが、透過型スケールであっても良い。
図1のX軸側から見た、光学式エンコーダの断面構造を図2に示す。センサユニット10の平面図を図3に示す。センサユニット10は、発散光を放出するLEDにより構成された光源11と、受光素子アレイ12を有する受光IC13と、が同一パッケージ内に実装された受発光一体型のセンサユニットである。
光源11からスケール20に向かう光路中には、位置検出方向に交互に配列された光透過部と遮光部のパターンにより透過型回折格子として形成された第1格子パターンとしての光源格子パターン14が設けられている。また、スケール20と受光素子アレイ12との間で、スケール20から受光素子アレイ12に向かう光路中には、第3格子パターンとしてのインデックス格子パターン15が設けられている。インデックス格子パターン15も、位置検出方向に交互に配列された光透過部と遮光部のパターンにより透過型回折格子として形成されている。
光源格子パターン14とインデックス格子パターン15はそれぞれ、カバーガラス16の一方の面上に遮光部となるクロム膜を形成することで設けられる。光源格子パターン14とインデックス格子パターン15が設けられたカバーガラス16は、透光性樹脂17によって光源11および受光IC13が実装された基板18に対して接着される。これにより、カバーガラス16と光源11、受光IC13は光学的に一体化される。透光性樹脂17としてはUV硬化樹脂や熱硬化樹脂を採用しうるが、透光性を有しておれば、この限りではない。センサユニット10にはテレセントリックレンズなど、大型の光学部品は含まれておらず、小型かつ軽量である。
光源格子パターン14は第1周期P1を有し、スケールパターン21は第2周期P2を有し、インデックス格子パターン15は第2周期と僅かに異なる第3周期P3を有する。
光源11としてのLEDから出射された発散光束は、光源格子パターン14を通過することによって互いにインコヒーレントな複数の2次点光源を含む光源アレイを形成する。光源格子パターン14から出射された発散光束は、スケールパターン21に入射する。なお、LEDと光源格子パターン14との組み合わせによって2次点光源を形成しているが、電流狭窄型LEDや半導体レーザ等を実効的な点光源としてこれらの代わりに配置してもよい。
受光素子アレイ12は、スケール20に設けられた第2格子パターンとしてのスケールパターン21で反射された光の強度分布を検出するための複数の受光素子が位置検出方向(X方向)に配列されて構成されている。図4に、受光素子アレイの概略図を示す。受光素子アレイ12は、32個の受光素子が位置検出方向に一列に並べられて構成されている。位置検出方向において互いに隣り合う2つの受光素子の中心間距離(隣接素子ピッチ)Xpdは、例えば64μmである。32個の受光素子は、A(+)相、B(+)相、A(−)相およびB(−)相の順序で循環的に割り当てられており、これら4つの相の受光素子が1つの集合体(1群)として、その集合体が周期的に8つ設けられている。同相の8つの受光素子は互いに電気的に接続されており、出力(電流)が互いに足し合わされて後段に相ごとに設けられたIV変換アンプ(電気回路)に入力される。同じ相に属する受光素子のうち、位置検出方向において最も近い2つの受光素子の中心間距離(第4の周期)P4は256(=64×4)μmである。すなわち、受光素子の集合体の幅は256μmである。
A(+)相とA(−)相は受光IC13に含まれる後段の差分回路(電気回路)により合成され、A相信号が生成される。同様に、B(+)相とB(−)相は受光IC13に含まれる不図示の後段の差分回路により合成され、B相信号が生成される。最終的に、受光IC13は、位相がおおよそ90°異なるA相およびB相の波形信号(インクリメンタル信号)を出力する。
図5に、エンコーダの光路の展開図を示す。図5ではスケールパターン21における反射を透過のように展開して示している。光源格子パターン14からスケールパターン21までの距離L1は、スケールパターン21からインデックス格子パターン15までの距離L2と等しいか、等しいとみなせる範囲内に設定される。なお、距離L0、L1、L2、L3は実効光路長であり、物理的な距離を屈折率で除した値である。カバーガラス16や透光性樹脂17は1よりも大きい屈折率を有するため、実効光路長は物理的な距離(間隔)よりも小さくなる。
図6に、スケール20上に形成されたスケールパターン21の一部分を示す。スケールパターン21は位相格子パターンである。図6において、グレーの領域が凹部、白い領域が凸部を表し、段差によって生じる位相差がおおよそ半波長となるように設計されている。スケール20の素材はガラスであり、表面に反射膜が成膜されている。読み取り中心半径r0を中心とし、外周方向に幅W0/2の領域には領域A1を備え、内周方向に幅W0/2の領域には領域A2を備える。スケール20はロータリースケールであるため、距離で表したスケールの周期は、半径によって変化する。スケールの格子の数をNとすると、読み取り中心半径とスケールの設計周期P2は以下の式で対応づけられる。
2πr0=NP2・・・(1)
一方、角度で表したスケールの周期Tpと、距離で表したスケールの周期P2には、以下の関係がある。
領域A1のパターンは、凹部の幅がTp/3と2Tp/3のパターンが径方向に繰り返し配置されている。また、位置検出方向に隣接するパターン同士で、凹部の幅が入れ替わっている。一方、領域A2の凹部については幅がTp/2のパターンが位置検出方向にTp/6だけずらされて、径方向に繰り返し配置されている。また、位置検出方向に隣接するパターン同士で、ずれの方向が反対となっている。
なお、領域A1および領域A2のいずれのパターンについても径方向の格子周期は、径方向への±1次回折光が受光素子アレイ12にほとんど入射しないような周期に設計されている。これにより、信号に高調波のノイズ成分が混入することを防いでいる。領域A1およびA2を図6に示すパターンにすることで、アライメント許容値を低下させる3次回折光の発生を抑えることができる。また、パターンに製造誤差が生じても、インクリ信号の歪みの原因となる0次回折光が発生することを抑えることができる。
半径がr0+w0/2より大きい領域Bには、千鳥格子状のパターンが設けられている。位置検出方向に隣接するパターン同士で、凹部の位置が径方向に半周期ずれるように配置されている。また、凹部の幅はそれぞれTp/3となるように設計されている。同様に、半径がr0−w0/2より小さい領域Cにも、千鳥格子状のパターンが設けられている。領域Cについても、位置検出方向に隣接するパターン同士で、凹部の位置が径方向に半周期ずれるように配置されている。また、凹部の幅はそれぞれTp/3となるように設計されている。
領域Bおよび領域Cのいずれのパターンについても径方向の格子周期は、径方向への±1次回折光が受光素子アレイ12に入射するような周期に設計されている。領域Bおよび領域Cをこのような千鳥格子状のパターンとすることで、受光素子アレイ12へより多くの光を集光し、光の利用効率を高めることができる。
スケールパターン21の位置検出方向への+1次回折光と−1次回折光は、インデックス格子パターン15の入射面上で干渉し、周期P2の干渉縞が形成される。この干渉縞の周期P2に対して、インデックス格子パターン15の周期P3は異なっているため、インデックス格子パターン15の射出面上にはモアレ縞(第1モアレ縞)が形成される。図7に、インデックス格子パターン15の射出面上のモアレ縞(光強度分布)を示す。当該光強度分布は、粗い空間周期Pmを有するモアレ縞にインデックス格子パターン15の影が重畳された分布となる。モアレ縞の空間周期Pmは以下の式で表すことができる。ただし、ABS(x)はxの絶対値を表す関数である。
インデックス格子パターン15の透過光はインデックス格子パターン15から受光素子アレイ12までの空間を伝搬して、受光素子アレイ12の受光面上にモアレ縞(第2モアレ縞)を形成し、受光素子アレイ12が受光する。第2モアレ縞の光強度分布は、粗い空間周期Pm´を有するモアレ縞にインデックス格子パターン15の影が重畳された分布となる。光源11は発散光源であるため、モアレ縞の周期Pm´はモアレ縞の周期PmよりもM3倍だけ拡大される。ここで、像倍率M3は以下の式で表される。
したがって、受光素子アレイ12の受光面上に形成される、モアレ縞の周期Pm´とインデックス格子パターン15の影の周期P3´は以下のようになる。
受光素子アレイ12上のモアレ縞の周期Pm´と、受光素子の集合体の幅(周期)P4が一致するとき、受光素子アレイ12から出力される信号の振幅はおおよそ最大となる。
一方、受光素子アレイ12上に投影される周期P3´のインデックス格子パターン15の影は高周波成分となり、出力信号の波形を歪ませたり、振幅を低下させたりする。
また、製造誤差によりカバーガラス16に位置ずれが生じると、受光素子アレイ12に対する光源格子パターン14やインデックス格子パターン15の位置が変化する。この結果、受光素子アレイ12上に投影されるインデックス格子パターン15の影も移動するが、A(+)相、B(+)相、A(−)相、B(−)相のいずれにより多くの影が投影されるかによって、それぞれの受光素子の出力に影響を及ぼす。このため、製造される複数のエンコーダにおいて、カバーガラス16の位置にバラツキが生じると、信号波形に大きな個体差をもたらしうる。
[第1実施形態]
そこで、本実施形態では、インデックス格子パターン15の光回折作用を利用することにより、受光素子アレイ12上に投影されるインデックス格子パターン15の影を平滑化する。
光源11の波長をλとすると、インデックス格子パターン15による1次回折光の回折角θは、インデックス格子パターン15の周期P3を用いて以下の式で表される。
インデックス格子パターン15によって光が回折されるため、インデックス格子パターン15から受光素子アレイ12までの空間を伝搬することで、光束の広がりが生じる。インデックス格子パターン15の+1次回折光と−1次回折光の光束広がりd3は、インデックス格子パターン15から受光素子アレイ12までの距離L3を用いて、以下の式で表される。光束広がりd3は距離L3に比例する。
d3=2L3tanθ・・・(8)
図8は、受光素子アレイ12上に投影されるインデックス格子パターンの影の周期P3´に対する、光束広がりd3の比率が変化したときに、受光素子アレイ12上の第2モアレ縞がどのように変化するかを模式的に示した図である。
インデックス格子パターン15の射出面と受光素子アレイ12の受光面が一致するとき(d3/P3´=0.0)、受光素子アレイ12上の第2モアレ縞には、インデックス格子パターン15の影による高コントラストの高周波成分が含まれる。
インデックス格子パターン15から受光素子アレイ12の受光面までの距離L3が大きくなり、d3/P3´=0.5とする。この場合、受光素子アレイ12上の第2モアレ縞に含まれる高周波成分(インデックス格子パターン15の影)はやや平滑化され、高周波成分のコントラストは低下する。結果として、信号波形の歪みや個体差が小さくなる。
さらに、距離L3が大きくなり、d3/P3´=1.0となると、インデックス格子パターン15の影の中心を±1次光が照明することで、影の光強度分布が最大限に平滑化される。このため、受光素子アレイ12上の第2モアレ縞に含まれる高周波成分のコントラストは大幅に低減され、信号波形の歪みや個体差の発生が抑えられる。
さらに、距離L3が大きくなり、d3/P3´=1.5となると、d3/P3´=1.0のときと比較すると、第2モアレ縞に含まれる高周波成分のコントラストがやや大きくなるが、d3/P3´=0.0のときと比べ、高周波成分はやや平滑化されている。
さらに、距離L3が大きくなり、d3/P3´=2.0となると、インデックス格子パターン15の透過部(明部)の中心を±1次光が照明することで、明部では光を強め合う。一方で、影の部分は±1次光で照明されず、暗部は暗いままとなる。このため、受光素子アレイ12上にインデックス格子パターン15の影が高いコントラストで投影される。結果として、信号波形の歪みや個体差の発生を招くことになる。
受光素子アレイ12上に投影されるインデックス格子パターン15の影の周期P3´に対する、光束広がりd3の比率が変化した場合について説明する。図9に、この場合に、カバーガラス16の位置ずれによる受光素子アレイからの出力の振幅のバラツキ(個体差)が、どれだけ生じるかを、計算した結果の一例を示す。図9の横軸は、光束広がりd3/インデックス格子パターン15の影の周期P3´を表し、縦軸は、受光素子アレイからの出力の振幅のバラツキを表す。
インデックス格子パターンの射出面に形成される第1モアレ縞を受光素子アレイ12で検出する場合(d3/P3´=0.0のとき)、約15%と、大きな振幅のバラツキが発生することが分かる。一方、光束の広がりd3が、受光素子アレイ12の受光面に投影される第3格子パターンの影の周期P3´に対して、0.15以上1.85以下、または、2.15以上の比率とすることで、振幅のバラツキをおおむね10%以下に低減できることが分かる。
さらに好適には、光束の広がりd3が、受光素子アレイ12の受光面に投影される第3格子パターンの影の周期P3´に対して、0.25以上1.75以下、または、2.25以上の比率とすることで、振幅の個体差を概ね5%以下に低減できることが分かる。このように、受光素子アレイ12に投影されるインデックス格子パターン15の影が第1モアレ縞よりも平滑化された、第2モアレ縞を受光素子アレイ12が検出することで、振幅のバラツキを低減しうる。
一方で、光束の広がりd3が大きくなりすぎると、第2モアレ縞のうちエンコーダによる位置検出に用いるモアレ縞(コントラスト)も平滑化してしまう。例えば、光束の広がりd3がモアレ縞の周期Pm´に一致すると、第2モアレ縞は平滑化されてコントラストがほぼゼロに低下する。このため、第3格子パターンの1次回折光が第3格子パターンから受光素子アレイ12までの空間を伝搬することによる光束の広がりd3は、モアレ縞の周期Pm´に対して、1/2以下、好ましくは1/4以下の比率であることが好ましい。
次に、受光素子アレイ12上に投影される光源格子パターン14の影の影響について説明する。光源格子パターン14を通過した光は光源格子パターン14から受光素子アレイ12までの空間を伝搬して、受光素子アレイ12上に光源格子パターン14の影が投影される。光源11は発散光源であるため、受光素子アレイ12上に投影される光源格子パターン14の影の周期P1´は光源格子パターン14の周期P1よりもM1倍だけ拡大される。ここで、像倍率M1は以下の式で表される。
したがって、受光素子アレイ12上に投影される光源格子パターン14の影の周期P1´は以下の式で表される。
受光素子アレイ12上に投影される光源格子パターン14の影の周期P1が、受光素子の集合体の幅P4に対して0.5倍となると(P1´/P4=0.5のとき)、A相とB相の振幅差が大きくなりうる。このとき、例えば、A(+)相とA(−)相の部分が影となると、B相と比較してA相の振幅が低下する。逆に、B(+)相とB(−)相の部分が影となると、A相と比較してB相の振幅が低下する。製造誤差により、受光素子アレイ12に対して、光源格子パターン14の位置ずれが生じると、A相とB相の振幅に大きな個体差をもたらしうる。
図10に、受光素子の集合体の幅P4に対する、受光素子アレイ12上に投影される光源格子パターン14の影の周期P1´の比率が変化したときに、A相とB相の振幅がどのようになるのかを、計算した結果の一例を示す。図10の横軸は、光源格子パターン14の影の周期P1´/受光素子の集合体の幅P4を表し、縦軸は、受光素子アレイのA相の振幅とB相の振幅を表す。
受光素子アレイ12上に投影される光源格子パターン14の影の周期P1´が、受光素子の集合体の幅P4に対して0.5倍となる(P1´/P4=0.5)とき、A相とB相の振幅差が±7%と大きくなっている。一方、受光素子アレイ12に投影される光源格子パターン14の影の周期が、受光素子の集合体の幅P4に対して、0.475以下または0.525以上の比率のとき、A相とB相の振幅差をおおむね1.5%以下に低減できることが分かる。
なお、本実施形態では受光素子アレイ12は互いに位相がおおよそ90°異なる4相の信号を出力している。ただし、このような構成に限定されるものではなく、例えば受光素子アレイは互いに位相がおおよそ120°異なる3相(A相、B相、C相)の信号を出力しても良い。この場合、受光素子アレイ12上に投影される光源格子パターン14の影の周期が、受光素子の集合体の幅(第4の周期)に対して1倍となる(P1´/P4=1)と、A相、B相、C相の振幅差が大きくなりうる。なぜなら、このとき特定の相の受光素子に光源格子パターン14の影が選択的に投影されうるためである。受光素子アレイ12に投影される光源格子パターン14の影の周期を、第4の周期に対してずらして、好ましくは0.95以下または1.05以上の比率とする。これにより、光源格子パターン14の影は3相の受光素子に分散されて投影されるため、A相、B相、C相の振幅差を低減しうる。
実施例1において、光源格子パターン14の周期は20μm、スケールパターン21の周期は20μm、インデックス格子パターン15は21.92μmである。また、カバーガラス16からスケール20までの空間距離は1.0mm、カバーガラス16の厚みは0.7mm、光源11および受光素子アレイ12からカバーガラス16までの距離は0.6mmである。実施例1の光学式エンコーダでは、10μm周期のインクリメンタル信号が得られる。
カバーガラス16および透光性樹脂17の屈折率は1.5で、実効光路長はそれぞれ、L0が0.40mm、L1が1.47mm、L2が1.47mm、L3が0.40mmとなる。したがって、像倍率はM1が9.33、M3が1.12となり、受光素子アレイ12上に投影される光源格子パターン14の影の周期P1´は187μm、インデックス格子パターン15の影の周期P3´は24.6μmとなる。また、インデックス格子パターン15の射出面に形成されるモアレ縞の周期Pmは229μm、受光素子アレイ12の受光面に形成されるモアレ縞の周期Pm´は256μmとなる。
光源11の波長λは650nmで、インデックス格子パターン15による1次回折光が、インデックス格子パターン15から受光素子アレイ12までの空間を伝搬することで生じる光束の広がりd3は23.7μmとなる。このため、受光素子アレイ12の受光面に投影されるインデックス格子パターン15の影の周期P3´に対する光束の広がりd3の比率は0.97となる。したがって、第2モアレ縞に含まれる高周波成分は十分に平滑化される。つまり、インデックス格子パターン15と受光素子アレイの間の距離は、第2モアレ縞に含まれる高周波成分が平滑化される設定されている。
また、モアレ縞の周期Pm´に対する光束の広がりd3の比率は0.09となり、位置検出に用いられるモアレ縞が極端に平滑化されることなく、受光素子アレイ12上には十分に高いコントラストのモアレ縞が形成される。
また、受光素子の集合体の幅P4に対する受光素子アレイ12の受光面に投影される光源格子パターン14の影の周期P1´の比率は0.73となり、A相とB相の振幅差が小さくなり、製造誤差によらず信号波形が安定する。つまり、受光素子の集合体の半周期に対して光源格子パターン14の影の周期P1´をずらした状態で、受光素子アレイ12が第2モアレ縞を受光する。ここで、光源格子パターン14の周期は受光素子の集合体の半周期に対してずれるように設定されている。
以上により、本実施例を適用した光学式エンコーダによれば、インクリメンタル信号の歪みや個体差が低減された小型のモアレ検出型光学式エンコーダを提供することができる。
実施例2において、光源格子パターン14の周期は10μm、スケールパターン21の周期は10μm、インデックス格子パターン15は9.57μmである。また、カバーガラス16からスケール20までの空間距離は0.7mm、カバーガラス16の厚みは0.5mm、光源11および受光素子アレイ12からカバーガラス16までの距離は0.6mmである。実施例2の光学式エンコーダでは、5μm周期のインクリメンタル信号が得られる。
カバーガラス16および透光性樹脂17の屈折率は1.5で、実効光路長はそれぞれ、L0が0.40mm、L1が1.03mm、L2が1.03mm、L3が0.40mmとなる。したがって、像倍率はM1が7.17、M3が1.16となり、受光素子アレイ12上に投影される光源格子パターン14の影の周期P1´は71.7μm、インデックス格子パターン15の影の周期P3´は11.1μmとなる。また、インデックス格子パターン15の射出面に形成されるモアレ縞の周期Pmは220μm、受光素子アレイ12の受光面に形成されるモアレ縞の周期Pm´は256μmとなる。
光源11の波長λは632nmで、インデックス格子パターン15による1次回折光が、インデックス格子パターン15から受光素子アレイ12までの空間を伝搬することで生じる光束の広がりd3は53.0μmとなる。このため、受光素子アレイ12の受光面に投影されるインデックス格子パターン15の影の周期P3´に対する光束の広がりd3の比率は4.8となる。したがって、第2モアレ縞に含まれる高周波成分は十分に平滑化される。
また、モアレ縞の周期Pm´に対する光束の広がりd3の比率は0.21となり、位置検出に用いられるモアレ縞が極端に平滑化されることなく、受光素子アレイ12上には十分に高いコントラストのモアレ縞が形成される。
また、受光素子の集合体の幅P4に対する受光素子アレイ12の受光面に投影される光源格子パターン14の影の周期P1´の比率は0.28となり、A相とB相の振幅差が小さくなり、製造誤差によらず信号波形が安定する。
以上により、本実施例を適用した光学式エンコーダによれば、インクリメンタル信号の歪みや個体差が低減された小型のモアレ検出型光学式エンコーダを提供することができる。
実施例3において、光源格子パターン14の周期は4μm、スケールパターン21の周期は4μm、インデックス格子パターン15は4.07μmである。また、カバーガラス16からスケール20までの空間距離は0.7mm、カバーガラス16の厚みは0.5mm、光源11および受光素子アレイ12からカバーガラス16までの距離は0.5mmである。実施例3の光学式エンコーダでは、2μm周期のインクリメンタル信号が得られる。
カバーガラス16および透光性樹脂17の屈折率は1.5で、実効光路長はそれぞれ、L0が0.33mm、L1が1.03mm、L2が1.03mm、L3が0.33mmとなる。したがって、像倍率はM1が8.20、M3が1.14となり、受光素子アレイ12上に投影される光源格子パターン14の影の周期P1´は32.8μm、インデックス格子パターン15の影の周期P3´は4.64μmとなる。また、インデックス格子パターン15の射出面に形成されるモアレ縞の周期Pmは225μm、受光素子アレイ12の受光面に形成されるモアレ縞の周期Pm´は256μmとなる。
光源11の波長λは460nmで、インデックス格子パターン15による1次回折光が、インデックス格子パターン15から受光素子アレイ12までの空間を伝搬することで生じる光束の広がりd3は75.8μmとなる。このため、受光素子アレイ12の受光面に投影されるインデックス格子パターン15の影の周期P3´に対する光束の広がりd3の比率は16.3となり、第2モアレ縞に含まれる高周波成分は十分に平滑化される。また、モアレ縞の周期Pm´に対する光束の広がりd3の比率は0.30となり、モアレ縞が極端に平滑化されることなく、受光素子アレイ12上には十分に高いコントラストのモアレ縞が形成される。
また、受光素子の集合体の幅P4に対する受光素子アレイ12の受光面に投影される光源格子パターン14の影の周期P1´の比率は0.13となり、A相とB相の振幅差が小さくなり、製造誤差によらず信号波形が安定する。
以上により、本実施例を適用した光学式エンコーダによれば、インクリメンタル信号の歪みや個体差が低減された小型のモアレ検出型光学式エンコーダを提供することができる。
受光素子アレイ12上に投影される格子パターンの影は、受光素子アレイからの出力信号の波形を歪ませうる。具体的には、受光素子アレイ上に形成される格子パターンの影の周期Pに対する、隣接する受光素子の中心間距離Dの比率がn−1/2(nは自然数)に近い場合に、リサージュ歪みが大きくなる。
図11を用いて、この理由を説明する。図11、12は、受光素子アレイ上に形成される格子パターンの影の周期Pに対して、隣接する受光素子の中心間距離Dの比率D/Pが、n−1/2(n=3)の場合、すなわち2.5の場合の例である。
受光素子に対して格子パターンの影の位相が図11(a)の状態にあるとき、A(+)相及びA(−)相の受光素子には格子パターンの影の山(光が透過することで照度が極大となる部分)が3個、谷(光が遮光されることで照度が極小となる部分)が2個入る。一方、B(+)相およびB(−)相の受光素子には格子パターンの影の山が2個、谷が3個入る。このため、A(+)相およびA(−)相の受光素子に入射する光の強度(光量)が、B(+)相およびB(−)相の受光素子に入射する光の強度(光量)よりも大きくなる。したがって、A(+)相およびA(−)相の受光素子で検出される信号波の振幅は、B(+)相およびB(−)相の受光素子で検出する信号波の振幅より大きくなる。結果として、図11(b)に示されるように、リサージュは、真円ではなく、0°方向に長軸を有する楕円状に歪む。
一方、受光素子に対して、格子パターンの影の位相が図12(a)の状態にあるとき、A(+)相およびA(−)相の受光素子には格子パターンの影の山が2.5個、谷が2.5個入る。B(+)相およびB(−)相の受光素子にも格子パターンの影の山が2.5個、谷が2.5個入る。このため、A相とB相の振幅は等しくなる。
ただし、A(+)相およびA(−)相の受光素子では影の強度分布の重心が左寄りなのに対して、B(+)相およびB(−)相の受光素子では影の強度分布の重心が右寄りとなる。これにより、A(+)相およびA(−)相の受光素子が左寄りに、B(+)相およびB(−)相の受光素子が右寄りに配置されたのと実質的に等価な状態となる。信号波が図12(a)の状態にあるとき、A(+)相の受光素子が左側にシフトすると、受光される光強度が低下することにより、位相が遅延する。一方、B(+)相の受光素子が右側にシフトすると、受光される光強度が低下することにより、位相が先進する。同様に、A(−)相では、受光素子が左側にシフトすると、受光される光強度が増加することにより位相が遅延し、B(−)相では、受光素子が右側にシフトすると、受光される光強度が増加することにより位相が先進する。
以上をまとめると、A(+)相およびA(−)相の受光素子で検出する信号波の位相は影がない場合よりも遅延し、B(+)相およびB(−)相の受光素子で検出する信号波の位相は影がない場合よりも先進する。結果として、A相とB相の位相差が90°からずれるため、図12(b)に示されるように、リサージュ波形は45°方向に長軸を有する楕円状に歪む。
製造誤差によりカバーガラス16に位置ずれが生じると、受光素子アレイ12に対する光源格子パターン14やインデックス格子パターン15の位置が変化する。この結果、受光素子アレイ12上に投影される格子パターンの影も移動するため、カバーガラス16の位置バラツキが生じると、信号波形に大きな個体差をもたらしうる。また、温度などの環境要因により、受光素子に対して格子パターンの影がシフトすると、信号波形が変化してしまう。
[第2実施形態]
そこで、本実施形態を適用した光学式エンコーダでは、少なくとも光源格子パターン14とインデックス格子パターン15のいずれか一方で、以下の条件を満たす。つまり、受光素子アレイ上に形成される格子パターンの影の周期Pに対する、隣接する受光素子の中心間距離Dの比率D/Pがn−1/4以上n+1/4以下(nは任意の自然数)の範囲となる。
図13、14は受光素子アレイ上に形成される格子パターンの影の周期に対して、隣接する受光素子の中心間距離の比率が3の場合の例である。これは、n=3にて、n−1/4以上n+1/4以下、つまり2.75以上3.25以下を満たす。
受光素子に対して、格子パターンの影の位相が図13(a)の状態にあるとき、A(+)相およびA(−)相の受光素子には格子パターンの影の山が3個、谷が3個入り、B(+)相およびB(−)相の受光素子にも格子パターンの影の山が3個、谷が3個入る。このため、A(+)相およびA(−)相の受光素子に入射する光は、B(+)相およびB(−)相の受光素子に入射する光と同レベルとなる。したがって、A(+)相およびA(−)相の受光素子で検出する信号波の振幅は、B(+)相およびB(−)相の受光素子で検出する信号波の振幅と同レベルとなる。結果として、A相信号とB相信号の振幅はほぼ等しくなり、図13(b)に示されるように、リサージュは真円に近づく。
受光素子に対して、格子パターンの影の位相が図14(a)の状態にあるとき、A(+)相およびA(−)相の受光素子には格子パターンの影の山が3個、谷が3個入り、B(+)相およびB(−)相の受光素子にも格子パターンの影の山が3個、谷が3個入る。このため、A(+)相およびA(−)相の受光素子に入射する光は、B(+)相およびB(−)相の受光素子に入射する光と同レベルとなる。また、A(+)相およびA(−)相の受光素子では格子パターンの影の強度分布の重心が左寄りとなり、B(+)相およびB(−)相の受光素子でも格子パターンの影の強度分布の重心も左寄りとなる。したがって、4相の受光素子のいずれにおいても検出する信号波の位相は格子パターンの影がない場合よりも遅延するが、隣接する受光素子間で検出する信号の位相差は90°付近に保たれる。結果として、A相信号とB相信号の振幅はほぼ等しくなるとともに、位相差が略90°となるため、図14(b)に示されるように、リサージュは真円に近づく。
[第3実施形態]
本実施形態では、複数の受光素子群の間で、格子パターンの影の位相をシフトさせることにより、リサージュ歪みを低減しうることを、図15を用いて説明する。
図15は、受光素子アレイ、格子パターンの影及び信号波形の関係を示す図である。本実施形態の受光素子アレイ12は、第1から第8まで、8つの受光素子群で構成される。例えば、第2の受光素子群は、第1の受光素子群と第3の受光素子群の間に、互いに隣接して配置されている。各群は、A(+)相、B(+)相、A(−)相およびB(−)相の受光素子で構成される。B(+)相は、A(+)相とA(−)相の間に、互いに隣接して配置されている。また、A(−)相は、B(+)相とB(−)相の間に、互いに隣接して配置されている。
図15には、受光素子アレイ上に形成される格子パターンの影の周期Pに対して、隣接する受光素子の中心間距離Dの比率D/Pが1.53125(格子パターンの影が41.796μmに相当)の例を示す。この値はn−1/4以上n+1/4以下(nは自然数)を満たさない。
第1の受光素子群に注目すると、A(+)相およびA(−)相の受光素子には格子パターンの影の山が2個、谷が1個入る一方、B(+)相およびB(−)相の受光素子には格子パターンの影の山が1個、谷が2個入る。このため、A(+)相およびA(−)相の受光素子に入射する光が、B(+)相およびB(−)相の受光素子に入射する光よりも大きくなる。したがって、A(+)相およびA(−)相の受光素子で検出する信号波の振幅は大きくなり、B(+)相およびB(−)相の受光素子で検出する信号波の振幅は小さくなる。結果として、もし第1の受光素子群のみでインクリメンタル信号を検出した場合、図16(a)に示されるように、リサージュは0°方向に長軸を有する楕円状に歪む。
受光素子アレイ上に形成される格子パターンの影の周期に対する、隣接する受光素子の中心間距離の比率は完全にn−1/2(nは自然数)とは一致していない。このため、第1の受光素子群とそれ以外の受光素子群の間で、格子パターンの影の位相がシフトしている。
隣接する受光素子群における格子パターンの影の位相差ΔΦは、以下の式(11)で表される。ここで、PDは隣接する受光素子群の中心間距離、P´は受光素子アレイ上の格子パターンの影の周期、round(x)は少数点第一位を四捨五入する関数を表す。
格子パターンの影が41.796μmの場合を例にすると、隣接する受光素子群における格子パターンの影の位相差はπ/4となる。したがって、第m(m=1〜8)の受光素子群における格子パターンの影の位相は、π/4(m−1)だけシフトする。
この例において、第5の受光素子群では、格子パターンの影の位相はπだけシフトする。つまり、第1群と第5群で、格子パターンの影の位相が反転する。したがって、第5の受光素子群に注目すると、A(+)相およびA(−)相の受光素子には格子パターンの影の山が1個、谷が2個入る一方、B(+)相およびB(−)相の受光素子には格子パターンの影の山が2個、谷が1個入る。このため、A(+)相およびA(−)相の受光素子に入射する光が、B(+)相およびB(−)相の受光素子に入射する光よりも小さくなる。したがって、A(+)相およびA(−)相の受光素子で検出する信号波の振幅は小さくなり、B(+)相およびB(−)相の受光素子で検出する信号波の振幅は大きくなる。結果として、もし第5の受光素子群のみでインクリメンタル信号を検出した場合、図16(e)に示すように、リサージュは90°方向に長軸を有する楕円状に歪む。
第1の受光素子群のみで検出した場合のリサージュは横方向に長い楕円形状であり、第5の受光素子群のみで検出した場合のリサージュは縦方向に長い楕円形状となる。したがって、受光IC13にて両者の信号を足し合わせると、真円に近いリサージュ信号が得られる。
次に、第3の受光素子群に注目すると、格子パターンの影の位相はπ/2だけシフトする。A(+)相およびA(−)相の受光素子には格子パターンの影の山が1.5個、谷が1.5個入り、B(+)相およびB(−)相の受光素子にも格子パターンの影の山が1.5個、谷が1.5個入る。しかし、A(+)相およびA(−)相の受光素子では格子パターンの影の強度分布の重心が左寄りなのに対して、B(+)相およびB(−)相の受光素子では格子パターンの影の強度分布の重心が右寄りとなる。このため、A(+)相およびA(−)相の受光素子の感度中心が左寄りに、B(+)相およびB(−)相の受光素子の感度中心が右寄りとなる。これは、感度が均一なA(+)相およびA(−)相の受光素子が左寄りに、感度が均一なB(+)相およびB(−)相の受光素子が右寄りに配置されたのと等価な状態である。したがって、A(+)相およびA(−)相の受光素子で検出する信号波の位相は遅延し、B(+)相およびB(−)相の受光素子で検出する信号波の位相は先進する。結果として、A相とB相の位相差が90°からずれるため、図16(c)に示すように、リサージュは45°方向に長軸を有する楕円状に歪む。
次に、第7の受光素子群に注目すると、格子パターンの影の位相は3π/2だけシフトする。A(+)相およびA(−)相の受光素子には格子パターンの影の山が1.5個、谷が1.5個入り、B(+)相およびB(−)相の受光素子にも格子パターンの影の山が1.5個、谷が1.5個入る。しかし、A(+)相およびA(−)相の受光素子では影の強度分布の重心が右寄りなのに対して、B(+)相およびB(−)相の受光素子では影の強度分布の重心が左寄りとなる。このため、A(+)相およびA(−)相の受光素子の感度中心が右寄りに、B(+)相およびB(−)相の受光素子の感度中心が左寄りとなる。これは、感度が均一なA(+)相およびA(−)相の受光素子が右寄りに、感度が均一なB(+)相およびB(−)相の受光素子が左寄りに配置されたのと等価な状態である。したがって、A(+)相およびA(−)相の受光素子で検出する信号波の位相は先進し、B(+)相およびB(−)相の受光素子で検出する信号波の位相は遅延する。結果として、A相とB相の位相差が90°からずれるため、図16(g)に示すように、リサージュは135°方向に長軸を有する楕円状に歪む。
第3の受光素子群のみで検出した場合のリサージュは45°方向に長軸を有する楕円形状であり、第7の受光素子群のみで検出した場合のリサージュは135°方向に長軸を有する楕円形状となる。したがって、受光IC13にて両者の信号を足し合わせると、真円に近いリサージュ信号が得られる。
第2の受光素子群に注目すると、格子パターンの影の位相はπ/4だけシフトする。これは、第1の受光素子群と第3の受光素子群の中間である。このため、リサージュは、図16(b)に示すように、22.5°方向に長軸を有する楕円形状となる。同様に、第6の受光素子群に注目すると、格子パターンの影の位相は5π/4だけシフトする。これは、第5の受光素子群と第7の受光素子群の中間である。このため、リサージュは、図16(f)に示すように、112.5°方向に長軸を有する楕円形状となる。受光IC13にて第2の受光素子群と第6の受光素子群の信号を足し合わせると、真円に近いリサージュ信号が得られる。
第4の受光素子群によるリサージュは、図16(d)に示すような楕円形状となる。第8の受光素子群によるリサージュは、図16(h)に示すような楕円形状となる。そのため、受光IC13にて第4の受光素子群と第8の受光素子群の信号を足し合わせると、真円に近いリサージュ信号が得られる。
以上により、格子パターンの影の位相が反転している異なる2つの受光素子群(第1と第5、第2と第6、第3と第7、第4と第8の受光素子群)の信号を足し合わせることで、真円に近いリサージュ信号が得られる。
ここで、以下の式(12)で表される指標Iを定義する。PDは隣接する受光素子群の中心間距離、P´は受光素子アレイ上の格子パターンの影の周期、round(x)は少数点以下第一位を四捨五入する関数、Nは受光素子群の数を表す。
ここで、指標Iは異なる受光素子群の間でどれだけ格子パターンの影の位相が異なっているかを表す。I=0の場合、全ての受光素子群の間で、格子パターンの影は同相である。I=1の場合、第m群と第(N/2+m)群で、格子パターンの影が逆相となる。例えば、I=1で受光素子群の数Nが8の場合、第1と第5、第2と第6、第3と第7、第4と第8の受光素子群で、格子パターンの影が逆相となる。I=2の場合、第m群と第(N/4+m)群で、格子パターンの影が逆相となる。例えば、I=2で受光素子群の数Nが8の場合、第1と第3、第2と第4、第5と第7、第6と第8の受光素子群で、格子の影が逆相となる。
図17は指標Iに対して、リサージュ歪みがどのように変化するか計算した結果を示したグラフである。I=0の場合、つまり全ての受光素子群の間で格子パターンの影が同相の場合、大きなリサージュ歪みが発生する。Iが整数の場合、異なる受光素子群の間で格子パターンの影が逆相となるため、リサージュ歪みはゼロとなる。I≧3/4の条件で、複数の受光素子群の出力が足し合わされることにより、受光素子群が1つしかない場合(I=0)と比較して、リサージュ歪みは30%以下まで低減される。本実施形態を適用した光学式エンコーダでは、少なくとも光源格子パターンとインデックス格子パターンのいずれか一方で、I≧3/4の条件を満たす。
なお、第2、第3本実施形態では受光素子アレイ12は互いに位相がおおよそ90°異なる4相の信号を出力している。ただし、このような構成に限定されるものではなく、例えば受光素子アレイは互いに位相がおおよそ120°異なる3相(A相、B相、C相)の信号を出力しても良い。
実施例4において、光源格子パターン14の周期は6μm、スケールパターン21の周期は6μm、インデックス格子パターン15の周期は5.85μmである。また、カバーガラス16からスケール20までの空間距離は1.2mm、カバーガラス16の厚みは1.0mm、光源11および受光素子アレイ12からカバーガラス16までの距離は0.6mmである。実施例4の光学式エンコーダでは、周期3μmのインクリメンタル信号が得られる。
カバーガラス16および透光性樹脂17の屈折率は1.5で、実効光路長はそれぞれ、L0が0.40mm、L1が1.87mm、L2が1.87mm、L3が0.40mmとなる。したがって、像倍率はM1が11.33、M3が1.10となり、受光素子アレイ12上に投影される光源格子パターンの影の周期P´1は68.0μm、インデックス格子パターンの影の周期P´3は6.42μmとなる。また、インデックス格子パターン15の射出面に形成される第1モアレ縞の周期Pmは233.4μm、受光素子アレイ12の検出面に形成される第2モアレ縞の周期P´mは256μmとなる。
製造誤差などにより、L1およびL2の実効光路長は±0.15mmの公差、L0およびL3の実効光路長は±0.033mmの公差を有する。表1に、その製造誤差の範囲内における、受光素子アレイ上に形成される光源格子パターン14の影の周期Pに対する、隣接する受光素子の中心間距離Dの比率D/Pの値を示す。比率は0.82〜1.07の範囲内であり、n−1/4以上n+1/4以下(nは自然数)を満たす。
表2に、上記製造誤差の範囲内における、受光素子アレイ上に形成されるインデックス格子パターン15の影の周期Pに対する、隣接する受光素子の中心間距離Dの比率D/Pの値を示す。比率は9.84〜10.10であり、n−1/4以上n+1/4以下(nは自然数)を満たす。このように、光源格子パターンとインデックス格子パターンのいずれにおいても、以下の条件を満たす。つまり、受光素子アレイ上に形成される格子パターンの影の周期に対する、隣接する受光素子の中心間距離の比率がn−1/4以上n+1/4以下(nは自然数)となるので、製造誤差があってもリサージュの歪みが低減される。
本実施例を適用した光学式エンコーダによれば、インクリメンタル信号の歪みや個体差が低減された小型のモアレ検出型光学式エンコーダを提供することができる。
実施例5において、光源格子パターン14の周期は16μm、スケールパターン21の周期は16μm、インデックス格子パターン15の周期は17.18μmである。また、カバーガラス16からスケール20までの空間距離は1.0mm、カバーガラス16の厚みは0.7mm、光源11および受光素子アレイ12からカバーガラス16までの距離は0.5mmである。本実施例の光学式エンコーダでは、周期8μmのインクリメンタル信号が得られる。
カバーガラス16および透光性樹脂17の屈折率は1.5で、実効光路長はそれぞれ、L0が0.33mm、L1が1.47mm、L2が1.47mm、L3が0.33mmとなる。したがって、像倍率はM1が10.8、M3が1.10となり、受光素子アレイ12上に投影される光源格子パターンの影の周期P´1は172.8μm、インデックス格子パターンの影の周期P´3は18.94μmとなる。また、インデックス格子パターン15の射出面に形成される第1モアレ縞の周期Pmは232.3μm、受光素子アレイ12の検出面に形成される第2モアレ縞の周期P´mは256μmとなる。
製造誤差などにより、L1およびL2の実効光路長は±0.15mmの公差、L0およびL3の実効光路長は±0.067mmの公差を有する。表3に、その製造誤差の範囲内における、受光素子アレイ上に形成される光源格子パターン14の影の周期Pに対する、隣接する受光素子の中心間距離Dの比率D/Pの値を示す。比率は0.28〜0.47の範囲内であり、n−1/4以上n+1/4以下(nは自然数)を満たさない。
表4に、上記製造誤差の範囲内における、受光素子アレイ上に形成されるインデックス格子パターン15の影の周期Pに対する、隣接する受光素子の中心間距離Dの比率D/Pの値を示す。比率は3.29〜3.46であり、n−1/4以上n+1/4以下(nは自然数)を満たさない。このように、光源格子パターンとインデックス格子パターンのいずれにおいても、受光素子アレイ上に形成される格子の影の周期に対する、隣接する受光素子の中心間距離の比率がn−1/4以上n+1/4以下(nは自然数)を満たしていない。このため、もし単一の受光素子群のみからインクリメンタル信号を検出した場合、リサージュが歪みうる。
表5に、上記製造誤差の範囲内における、受光素子アレイ上に形成される光源格子パターン14の影に関する指標Iの値を示す。指標Iの値は1.06〜3.85で、I≧3/4を満たす。表6に、上記製造誤差の範囲内における、受光素子アレイ上に形成されるインデックス格子パターン15の影に関する指標Iの値を示す。指標Iの値は0.87〜3.85で、I≧3/4を満たす。
このように、光源格子パターンとインデックス格子パターンのいずれにおいても、I≧3/4を満たしているので、異なる受光素子群の間で格子パターンの影の位相がずれることにより、製造誤差があってもリサージュの歪みが低減される。
以上により、本実施例を適用した光学式エンコーダによれば、インクリメンタル信号の歪みや個体差が低減された小型のモアレ検出型光学式エンコーダを提供することができる。
実施例6において、光源格子パターン14の周期は20μm、スケールパターン21の周期は20μm、インデックス格子パターン15の周期は18.37μmである。また、カバーガラス16からスケール20までの空間距離は1.0mm、カバーガラス16の厚みは0.7mm、光源11および受光素子アレイ12からカバーガラス16までの距離は0.7mmである。実施例3の光学式エンコーダでは、周期10μmのインクリメンタル信号が得られる。
カバーガラス16および透光性樹脂17の屈折率は1.5で、実効光路長はそれぞれ、L0が0.47mm、L1が1.47mm、L2が1.47mm、L3が0.47mmとなる。したがって、像倍率はM1が8.29、M3が1.14となり、受光素子アレイ12上に投影される光源格子パターンの影の周期P´1は165.7μm、インデックス格子パターンの影の周期P´3は20.9μmとなる。また、インデックス格子パターン15の射出面に形成される第1モアレ縞の周期Pmは225.1μm、受光素子アレイ12の検出面に形成される第2モアレ縞の周期P´mは256μmとなる。
製造誤差などにより、L1およびL2の実効光路長は±0.15mmの公差、L0およびL3の実効光路長は±0.067mmの公差を有する。表7に、その製造誤差の範囲内における、受光素子アレイ上に形成される光源格子パターン14の影の周期に対する、隣接する受光素子の中心間距離の比率の値を示す。比率は0.32〜0.46の範囲内であり、n−1/4以上n+1/4以下(nは自然数)を満たさない。このため、もし単一の受光素子群のみからインクリメンタル信号を検出した場合、リサージュが歪みうる。
表8に、上記製造誤差の範囲内における、受光素子アレイ上に形成されるインデックス格子パターン15の影の周期Pに対する、隣接する受光素子の中心間距離Dの比率D/Pの値を示す。比率は2.98〜3.14であり、n−1/4以上n+1/4以下(nは自然数)を満たす。このため、インデックス格子パターンの影によって発生するリサージュ歪みは低減される。
表9に、上記製造誤差の範囲内における、受光素子アレイ上に形成される光源格子パターン14の影に関する指標Iの値を示す。指標Iの値は1.24〜3.93で、I≧3/4を満たす。このように、光源格子パターンについて、I≧3/4を満たしているので、異なる受光素子群の間で格子パターンの影の位相がずれることにより、製造誤差があってもリサージュの歪みが低減される。
以上により、本実施例を適用した光学式エンコーダによれば、インクリメンタル信号の歪みや個体差が低減された小型のモアレ検出型光学式エンコーダを提供することができる。
上記実施形態ではロータリーエンコーダを説明したが、これに限らず、リニアエンコーダにも適用することができる。エンコーダは、物体の回転角度や位置を検出するために使用されうる。エンコーダによって検出された検出結果としての位置や角度(変位)は、モータなどのアクチュータ(駆動部)を制御するコントローラ(制御部)によってその変位の制御に用いられる。また、本実施形態のエンコーダを適用した制御装置としては、ロボットの関節を駆動するアクチュータと、そのアクチュータの回転角度を計測するエンコーダと、を備えるロボットがある。また、モータと、モータの回転軸の回転角を計測するエンコーダと、有するガルバノスキャナがある。また、ステージを駆動するリニアモータと、ステージの位置を計測するエンコーダと、を備えるステージ装置がある。