JP2021169167A - 積層体および電子素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い電気特性を得ることができ、効率的に電子素子を製造することができる積層体を提供する。【解決手段】積層体11は、炭化珪素から構成されており、シリコン面である第1面12Aを有するベース部12と、ベース部12が位置する側と反対側の主面である第2面13Aを有し、第1面12A上に配置されるグラフェン膜13と、グラフェン膜13が位置する側と反対側の主面である第3面21Aを有し、珪素を含み、第2面13A上に配置される酸化膜21と、酸化膜21が位置する側と反対側の主面である第4面22Aを有し、第3面21A上に配置される絶縁膜22と、を備える。【選択図】図1

Description

本開示は、積層体および電子素子に関するものである。
グラフェンは、炭素原子がsp混成軌道を形成して平面的に結合した物質である。このような炭素原子の結合状態に起因して、グラフェンにおけるキャリア(電子)の移動度は、極めて高い。グラフェンをトランジスタなどの電子素子のチャネルとして有効に利用することができれば、電子素子の性能の向上を図ることができる。
SiC(炭化珪素)から構成される基板を加熱して珪素原子を離脱させることで基板の表層部をグラフェンに変換する方法がある。このようにして形成されたグラフェンを用いたトランジスタについて、非特許文献1に開示されている。
Y.−M.Lin et al.、"100−GHz Transistors from Wafer−Scale Epitaxial Graphene"、SCIENCE.327,662(2010)
珪素原子を離脱させて形成されたグラフェンを含む積層体を用いてトランジスタなどの電子素子を製造する場合がある。グラフェンが露出した状態となっていると、例えばドライエッチング等を行った場合に、グラフェンを構成する炭素原子の結晶性の劣化を引き起こすおそれがある。そうすると、グラフェンにダメージを与えてしまい、グラフェンにおけるキャリアの高い移動度を確保できない。その結果、積層体の電気特性を低下させてしまう。また、積層体を用いて効率的に電子素子を製造することが求められる。そこで、高い電気特性を得ることができ、効率的に電子素子を製造することができる積層体および高い変調特性を得ることができる電子素子を提供することを目的の一つとする。
本開示に従った積層体は、炭化珪素から構成されており、シリコン面である第1面を有するベース部と、ベース部が位置する側と反対側の主面である第2面を有し、第1面上に配置されるグラフェン膜と、グラフェン膜が位置する側と反対側の主面である第3面を有し、珪素を含み、第2面上に配置される酸化膜と、酸化膜が位置する側と反対側の主面である第4面を有し、第3面上に配置される絶縁膜と、を備える。
上記積層体によれば、高い電気特性を得ることができ、効率的に電子素子を製造することができる。
図1は、実施の形態1における積層体の構造を示す概略断面図である。 図2は、実施の形態1に係る積層体を含む電子素子の断面の一部のTEM像である。 図3は、図2に示すTEM像におけるEDXの結果を示す概略図である。 図4は、図2に示すTEM像におけるEDXの結果を示す概略図である。 図5は、積層体の深さ方向における積層体の原子の組成比を示すグラフである。 図6は、本発明の範囲外である酸化膜を含まない積層体を含む電子素子を製造する際に製造工程において行うドライエッチングの前のラマン分光分析の結果を示すグラフである。 図7は、本発明の範囲外である酸化膜を含まない積層体を含む電子素子を製造する際に製造工程において行うドライエッチングの後のラマン分光分析の結果を示すグラフである。 図8は、実施の形態1における積層体を含む電子素子を製造する際に製造工程において行うドライエッチングの前のラマン分光分析の結果を示すグラフである。 図9は、実施の形態1における積層体を含む電子素子を製造する際に製造工程において行うドライエッチングの後のラマン分光分析の結果を示すグラフである。 図10は、実施の形態1における積層体の製造方法の代表的な工程を示すフローチャートである。 図11は、積層体の製造方法を示すための概略断面図である。 図12は、加熱装置の構造を示す概略断面図である。 図13は、グラフェン膜形成工程および酸化膜形成工程における珪素原子の付着の状態における加熱温度の変化を示す概略図である。 図14は、酸化膜形成工程における珪素原子の付着の状態を示す概略図である。 図15は、珪素を酸素と反応させて酸化膜とした状態を示す概略図である。 図16は、実施の形態2における電界効果トランジスタ(FET)の概略断面図である。 図17は、積層体を含むFETの製造方法の代表的な工程を示すフローチャートである。 図18は、積層体を含むFETの製造方法を説明するための概略断面図である。 図19は、積層体を含むFETの製造方法を説明するための概略断面図である。 図20は、積層体を含むFETの製造方法を説明するための概略断面図である。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。本開示に係る積層体は、炭化珪素から構成されており、シリコン面である第1面を有するベース部と、ベース部が位置する側と反対側の主面である第2面を有し、第1面上に配置されるグラフェン膜と、グラフェン膜が位置する側と反対側の主面である第3面を有し、珪素を含み、第2面上に配置される酸化膜と、酸化膜が位置する側と反対側の主面である第4面を有し、第3面上に配置される絶縁膜と、を備える。
炭化珪素から構成されるベース部と、ベース部上に配置されるグラフェン膜とを備える積層体においては、グラフェン膜におけるキャリア(電子)の移動度が高い。したがって、電子素子としてのトランジスタのチャネル層にグラフェン膜を利用することが考えられる。
上記した積層体によると、グラフェン膜上に珪素を含む酸化膜が配置されている。そうすると、積層体を用いてトランジスタなどの電子素子を製造する場合において、例えばドライエッチングを行ったとしても、グラフェン膜がダメージを受けるおそれを低減することができる。よって、電子素子の製造時におけるグラフェン膜の結晶性の低下等によって積層体の電気特性が低下するおそれを低減することができる。また、酸化膜上に配置される絶縁膜を、例えばトランジスタにおけるゲート絶縁膜等に利用することができる。よって、積層体の高い電気特性を維持することができ、効率的に電子素子を製造することができる。また、このような積層体に含まれるグラフェン膜をチャネル層にするトランジスタを電子素子として製造した場合において、変調特性を向上することができると考えられる。
上記積層体において、酸化膜は、Si(1−a)またはSi(1−a)で表されてもよい。aは、0よりも大きく、1よりも小さくてもよい。wは、0よりも大きくてもよい。Xは、Al、HfおよびTiのうちの少なくともいずれか1つであってもよい。このような積層体によると、トランジスタなどの電子素子を製造する場合に、上記酸化膜を絶縁膜として有効に利用することができる。
上記積層体において、aは、0.1以上0.9以下であってもよい。このような積層体によると、トランジスタなどの電子素子を製造する場合に、上記酸化膜を絶縁膜としてより有効に利用することができる。
上記積層体において、酸化膜の厚さは、0.1nm以上10nm以下であってもよい。このようにすることにより、酸化膜の厚さを適切にして、トランジスタなどの電子素子を製造した場合に、電子素子の変調特性を良好にすることができる。
本開示に係る電子素子は、炭化珪素から構成されており、シリコン面である第1面を有するベース部と、ベース部が位置する側と反対側の主面である第2面を有し、第1面上に配置されるグラフェン膜と、グラフェン膜が位置する側と反対側の主面である第3面を有し、珪素を含み、第2面のうちの一部の上に配置される酸化膜と、酸化膜が位置する側と反対側の主面である第4面を有し、第3面上に配置される絶縁膜と、を備える積層体と、第2面上の、酸化膜が配置される位置と異なる位置に配置される第1電極と、第2面上の、酸化膜が配置される位置と異なる位置であって、第1電極とは離れて配置される第2電極と、第4面上に配置される第3電極と、を備える。本開示の電子素子によれば、上記積層体を備えることにより、効率的に製造することができ、変調特性を向上させることができる。
[本開示の実施形態の詳細]
次に、本開示の積層体の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付しその説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
本開示の実施の形態1に係る積層体について説明する。図1は、実施の形態1における積層体の構造を示す概略断面図である。図1において、積層体11の厚さ方向は、矢印Tで示される。
図1を参照して実施の形態1における積層体11は、ベース部12と、グラフェン膜13と、酸化膜21と、絶縁膜22と、を備える。ベース部12は、円板状である。ベース部12の直径として、例えば2インチ(50.8mm)が選択される。なお、ベース部12の直径として、例えば4インチ(101.6mm)を選択してもよい。ベース部12は、炭化珪素(SiC)から構成されている。ベース部12を構成する炭化珪素(SiC)は、六方晶SiCであって、例えば6H構造を有する。なお、ベース部12を構成するSiCは、六方晶SiCであって、4H構造を有してもよい。ベース部12は、厚さ方向の一方側に位置する主面である第1面12Aを有する。第1面12Aは、ベース部12を構成するSiCのシリコン面である。
グラフェン膜13は、ベース部12の第1面12A上に配置される。グラフェン膜13は、一方の主面13Bがベース部12の第1面12Aと対向して配置される。グラフェン膜13は、ベース部12が位置する側と反対側の主面である第2面13Aを有する。
酸化膜21は、グラフェン膜13の第2面13A上に配置される。酸化膜21は、一方の主面21Bがグラフェン膜13の第2面13Aと対向して配置される。酸化膜21は、グラフェン膜13が位置する側と反対側の主面である第3面21Aを有する。酸化膜21は、珪素を含む。本実施形態においては、酸化膜21は、Si(1−a)で表される。aは、0よりも大きく、1よりも小さい。Xは、アルミニウムである。図1において、グラフェン膜13と酸化膜21との界面23Bを破線で図示している。また、理解の容易の観点から、グラフェン膜13、酸化膜21および絶縁膜22の厚さを厚く図示している。
絶縁膜22は、酸化膜21の第3面21A上に配置される。絶縁膜22は、一方の主面22Bが酸化膜21の第3面21Aと対向して配置される。絶縁膜22は、酸化膜21が位置する側と反対側の主面であって露出する面である第4面22Aを有する。実施の形態1における絶縁膜22は、具体的には例えば原子層体積法(ALD(Atomic Layer Deposition))により形成されたAlである。積層体11において、第4面22Aは、積層体11の露出面となる。図1において、酸化膜21と絶縁膜22との界面23Aを破線で図示している。
図2は、実施の形態1に係る積層体11を含む電子素子の断面の一部のTEM(Transmission Electron Microscope)像である。TEM像の撮影については、JEM−2800(日本電子株式会社製)を用い、測定条件については、加速電圧を200kV、プローブのサイズを0.5nm、CL絞りを3とした。また、後述するEDXによる原子の検出の条件としては、EDX(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)を用い、測定条件については、スポットサイズを0.5nmとし、CL絞りを3とし、分析モードをマッピングとし、分析時間を20分間とした。
図2を参照して、電子素子27は、上記した積層体11と、電極24と、を含む。電極24は、積層体11上、具体的には、積層体11に含まれる絶縁膜22の第4面22A上に配置される。電極24は、ニッケル層25と、金層26とを含む。ニッケル層25は、第4面22A上に配置される。金層26は、ニッケル層25上に配置される。電子素子27における電極24としては、例えばトランジスタにおけるゲート電極が挙げられる。
図3および図4は、図2に示すTEM像におけるEDX(Energy Dispersive X−ray spectrometry)の結果を示す概略図である。図3中の像28A内において黒色のドットで珪素原子の分布状態を示し、像28B内において黒色のドットでアルミニウム原子の分布状態を示し、像28C内において黒色のドットで酸素原子の分布状態を示す。図4中の像29A内において黒色のドットで珪素原子の分布状態を示し、像29B内において黒色のドットでアルミニウム原子の分布状態を示し、像29C内において黒色のドットで酸素原子の分布状態を示す。図4は、図3の一部を拡大して示す図である。界面23Aと界面23Bとの厚さ方向の距離は、約5nmである。
図3および図4を参照して、界面23Aと界面23Bとの間の層に珪素および酸素が多く分布していることが把握できる。すなわち、界面23Aと界面23Bとの間に珪素を含む酸化膜21が配置されていることが把握できる。また、酸化膜21中にアルミニウムが分布していることが把握できる。
図5は、積層体11の深さ方向における積層体11の原子の組成比を示すグラフである。図5において、縦軸は組成比(atom%)を示し、横軸は深さを示す。線Sで珪素原子の組成比を示し、線Sで酸素原子の組成比を示し、線Sでアルミニウム原子の組成比を示す。横軸において露出面からの深さは、矢印で示す向きに向かって浅くなる。なお、グラフェン膜13は、界面23Bよりもやや深い位置にあると考えられる。図3および図4に示す界面23Aおよび界面23Bの位置についても図5中に図示している。
図5を参照して、界面23Bに達するまでは、積層体11には珪素が多く含まれている。酸素およびアルミニウムは含有されていない。すなわち、界面23Bに達するまでの位置には、ベース部12が配置されていることが把握できる。界面23Bに達した後、珪素の含有比率が減少していき、酸素の含有比率が増加していく。また、アルミニウムの含有比率も増加していく。深さが浅くなるほど、珪素の含有比率が減少していき、酸素の含有比率およびアルミニウムの含有比率が増加していく。この界面23Bと界面23Aとの間の層において、珪素を含む酸化膜、本実施形態においてはさらにアルミニウムを含む酸化膜が形成されていることが把握できる。
このような積層体11によると、グラフェン膜13上に珪素を含む酸化膜21が配置されている。そうすると、積層体11を用いてトランジスタなどの電子素子を製造する場合において、例えばドライエッチングを行ったとしても、グラフェン膜13がダメージを受けるおそれを低減することができる。よって、電子素子の製造時におけるグラフェン膜13の結晶性の低下等によって積層体11の電気特性が低下するおそれを低減することができる。また、酸化膜21上に配置される絶縁膜22を、例えばトランジスタにおけるゲート絶縁膜等に利用することができる。その結果、積層体11の高い電気特性を維持することができ、効率的に電子素子を製造することができる。また、このような積層体11に含まれるグラフェン膜13をチャネル層にするトランジスタを電子素子として製造した場合において、変調特性を向上することができると考えられる。
図6は、本発明の範囲外である酸化膜を含まない積層体を含む電子素子を製造する際に製造工程において行うドライエッチングの前のラマン分光分析の結果を示すグラフである。図7は、本発明の範囲外である酸化膜を含まない積層体を含む電子素子を製造する際に製造工程において行うドライエッチングの後のラマン分光分析の結果を示すグラフである。図8は、実施の形態1における積層体11を含む電子素子を製造する際に製造工程において行うドライエッチングの前のラマン分光分析の結果を示すグラフである。図9は、実施の形態1における積層体11を含む電子素子を製造する際に製造工程において行うドライエッチングの後のラマン分光分析の結果を示すグラフである。図6〜図9において、縦軸は検出強度(arb.unit)を示し、横軸はラマンシフト(cm−1)を示す。なお、ラマン分光分析については、532nmの波長のレーザーを使用した。
まず、図6および図7を参照して、本発明の範囲外である酸化膜を含まない積層体を用いて製造された電子素子において、ドライエッチングを行う前と比較して、ドライエッチングを行った後では、ラマンシフトが1300〜1450cm−1の範囲において図6および図7中の矢印で示す位置付近にDピークが出現していることが認められる。Dピークは、結晶の欠陥に基づいて発生するピークであり、ドライエッチングを行った際に結晶に欠陥が発生していることが把握できる。これに対し、図8および図9を参照して、実施の形態1における積層体11を用いて製造された電子素子において、ドライエッチングを行う前と比較して、ドライエッチングを行った後では、ラマンシフトが1300〜1450cm−1の範囲において図8および図9中の矢印で示す位置付近にDピークが出現していない。よって、ドライエッチングを行った際に結晶に欠陥が発生していないことが把握できる。実施の形態1における積層体11では、例えば酸化膜21がドライエッチングにおける保護膜として機能したと考えられる。
以上より、実施の形態1における積層体11によれば、高い電気特性を得ることができる。また、効率的に電子素子を製造することができる。
次に、図10〜図12を参照して、実施の形態1における積層体11の製造方法の一例の概要について説明する。
図10は、実施の形態1における積層体11の製造方法の代表的な工程を示すフローチャートである。図10を参照して、実施の形態1における積層体11の製造方法では、まず工程(S10)として原料基板準備工程が実施される。図11は、積層体11の製造方法を示すための概略断面図である。図11を参照して、この工程(S10)では、例えば、直径2インチ(50.8mm)の6H−SiCから構成される炭化珪素基板51が準備される。具体的には、例えばSiCから構成されるインゴットをスライスすることにより、SiCから構成される炭化珪素基板51が得られる。炭化珪素基板51の表面が研磨された後、洗浄等のプロセスを経て主面の平坦性および清浄性が確保される。炭化珪素基板51は、第1基板面51Aを有する。第1基板面51Aは、炭化珪素基板51を構成するSiCのシリコン面である。
次に、チャンバー内に配置されたカバー部材により閉じられた第1空間内に炭化珪素基板を配置する工程(S20)として炭化珪素基板配置工程が実施される。この工程(S20)は、例えば図12に示す加熱装置を用いて実施することができる。図12は、加熱装置の構造を示す概略断面図である。図12を参照して、加熱装置41は、チャンバー42と、サセプタ43と、カバー部材44と、気体導入管45と、気体排出管46とを備える。
チャンバー42は、中空円筒状の形状を有する側壁部42Aと、側壁部42Aの第1の端部を閉塞する底壁部42Bと、側壁部42Aの第2の端部を閉塞する上壁部42Cとを含む。チャンバー42の内部の底壁部42B上には、サセプタ43が配置される。サセプタ43は、炭化珪素基板51を保持するための基板保持面43Aを有する。
チャンバー42の内部には、サセプタ43を覆うためのカバー部材44が配置される。カバー部材44は、たとえば一対の端部のうちの一方の端部が閉塞され、他方の端部が開口する中空円筒状の形状を有する。カバー部材44の他方の端部側が底壁部42Bに接触するようにカバー部材44が配置される。サセプタ43およびサセプタ43上の炭化珪素基板51は、カバー部材44およびチャンバー42の底壁部42Bにより取り囲まれる。カバー部材44およびチャンバー42の底壁部42Bにより取り囲まれる空間である第1空間43C内に、サセプタ43およびサセプタ43上の炭化珪素基板51が配置される。カバー部材44は、上壁面44Aと、側壁面44Bとを含む。カバー部材44の上壁面44Aと、炭化珪素基板51の第1基板面51Aとが対向する。
ここで、上記した実施の形態1における積層体11を得るための手法として、例えば、カバー部材44で覆った第1空間43Cに珪素を配置した状態で加熱してシリコン面から珪素原子を離脱させる。具体的な一例としては、第1基板面51Aと対向するカバー部材44の上壁面44Aに、シリコンを付着させる。すなわち、第1空間43C内には、珪素原子を含有する物質を含む第1部材としての珪素層47が配置される。より具体的には、上壁面44Aに珪素層47を蒸着させる。このようにすることにより、第1基板面51Aからの珪素原子を離脱させる速度を比較的遅くすると共に、離脱させた珪素原子の第1基板面51Aへの再付着を促進することが容易となる。
気体導入管45および気体排出管46は、チャンバー42の上壁部42Cに接続される。気体導入管45および気体排出管46は、上壁部42Cに形成された貫通孔に一方の端部において接続される。気体導入管45の他方の端部は、不活性ガスを保持するガス保持部(図示しない)に接続される。実施の形態1では、ガス保持部にはアルゴンが保持される。気体排出管46の他方の端部は、ポンプ等の排気装置(図示しない)に接続される。
工程(S20)は、加熱装置41を用いて以下のように実施することができる。まず、サセプタ43の基板保持面43Aに工程(S10)において準備された炭化珪素基板51が配置される。次に、サセプタ43および炭化珪素基板51を覆うように、工程(S20)において、カバー部材44が底壁部42B上に配置される。これにより、サセプタ43およびサセプタ43上の炭化珪素基板51は、カバー部材44およびチャンバー42の底壁部42Bにより取り囲まれ、第1空間43C内に配置される。
次に、気体導入管45に取り付けられたバルブ(図示しない)が閉じた状態で気体排出管46に取り付けられたバルブ(図示しない)が開いた状態とされる。そして、気体排出管46に接続された排気装置が作動することにより、チャンバー42の内部の気体が矢印Fに沿って気体排出管46から排出される。これにより、チャンバー42の内部が減圧される。ここで、サセプタ43および炭化珪素基板51は、カバー部材44およびチャンバー42の底壁部42Bにより取り囲まれているものの、カバー部材44と底壁部42Bとは接合されているわけではない。そのため、チャンバー42の内部の減圧が進行すると、第1空間43Cの内部と外部との圧力差によりカバー部材44と底壁部42Bとのわずかな隙間から第1空間43C内の気体が排出される。その結果、第1空間43C内も減圧される。
次に、排気装置の動作が停止されると共に、気体導入管45に取り付けられたバルブが開いた状態とされる。これにより、ガス保持部に保持されているアルゴンが、気体導入管45を通って矢印Fに沿ってチャンバー42の内部に導入される。ここで、チャンバー42内の圧力が上昇すると、第1空間43Cの内部と外部との圧力差によりカバー部材44と底壁部42Bとのわずかな隙間から内部にアルゴンが侵入する。このようにして、チャンバー42の内部の気体が、アルゴンにより置換される。チャンバー42の内部のアルゴンの圧力が常圧(大気圧)にまで上昇すると、余剰のアルゴンが気体排出管46から排出されることにより、内部の圧力が常圧に維持される。すなわち、チャンバー42の内部が、常圧のアルゴン雰囲気に維持される。
次に、第1空間内の炭化珪素基板を加熱することにより、第1基板面から珪素原子を離脱させてグラフェン膜を形成する工程(S30)としてグラフェン膜形成工程が実施される。図13は、グラフェン膜形成工程および後述する酸化膜形成工程の一部における加熱時間と温度との関係を概略的に示すグラフである。図13において、縦軸は温度(℃)を示し、横軸は時間を示す。図13を参照して、この工程では、炭化珪素基板51が加熱される。炭化珪素基板51は、例えばチャンバー42が加熱されることにより加熱される。チャンバー42は、例えば誘導加熱により加熱されてもよい。炭化珪素基板51は、例えば常圧のアルゴン中において1600℃以上1900℃以下の温度に加熱される。具体的な加熱処理の内容として、例えば1800℃で5分間加熱してもよい。これにより、SiCから構成される炭化珪素基板51の第1基板面51A側から珪素原子が離脱し、第1基板面51Aを含む表層部がグラフェン膜に変換される。
次に、形成されたグラフェン膜に珪素原子を付着させて、酸化膜を形成する工程(S40)として酸化膜形成工程が実施される。図14は、酸化膜形成工程における珪素原子の付着の状態を示す概略図である。図14を参照して、この工程では、炭化珪素基板51は、例えば常圧のアルゴン中において上記グラフェン膜形成工程と同じ温度か、1700℃に温度を下げた状態とする。この状態は1〜30分間保持される。このようにしてカバー部材44によって形成される第1空間43C内に浮遊している珪素原子30をグラフェン膜13の表面、具体的には、グラフェン膜13の第2面13Aに付着させる。
珪素原子30を付着させた後、珪素と酸素を反応させて酸化膜とする。図15は、珪素を酸素と反応させて酸化膜とした状態を示す概略図である。図15を参照して、グラフェン膜13の第2面13A上には、酸化膜21が形成される。酸化膜21は、例えば加熱装置41から珪素を付着させた炭化珪素基板51を取り出し、珪素と酸素とを接触させて自然酸化膜を形成することにしてもよい。また、加熱装置41内において酸素を供給しながら加熱等を行って酸化膜を形成することにしてもよい。
その後、酸化膜21上に例えば原子層堆積法等を用いて原子層を堆積させて絶縁膜を形成して、絶縁膜を形成する工程(S50)として絶縁膜形成工程が実施される。
このようにして、図1を参照して、ベース部12と、ベース部12の第1面12A上に配置されるグラフェン膜13と、グラフェン膜13の第2面13A上に配置される酸化膜21と、酸化膜21の第3面21A上に配置される絶縁膜22と、を備える積層体11が得られる。このようにすることにより、上記した積層体11を効率的に得ることができる。
なお、このようにして得られる積層体11については、SiCから構成されるベース部12とグラフェン膜13との密着性が良好である。また、グラフェン膜13を炭化珪素基板51の全面に形成することができる。したがって、量産性が求められるトランジスタのような電子素子を製造する際に好適である。
上記の実施の形態において、酸化膜21は、窒素を含んでもよい。すなわち、積層体11において、酸化膜は、Si(1−a)またはSi(1−a)で表されてもよい。wは、0よりも大きくてもよい。また、Xは、Alに限らず、Al、HfおよびTiのうちの少なくともいずれか1つであってもよい。このような積層体11によると、トランジスタなどの電子素子を製造する場合に、上記酸化膜21を絶縁膜として有効に利用することができる。
また、上記の実施の形態において、aは、0.1以上0.9以下であってもよい。このような積層体11によると、トランジスタなどの電子素子を製造する場合に、上記酸化膜21を絶縁膜としてより有効に利用することができる。なお、aを0.3以上0.7以下とすることがより好適である。
上記積層体11において、酸化膜21の厚さは、0.1nm以上10nm以下であってもよい。このようにすることにより、酸化膜21の厚さを適切にして、トランジスタなどの電子素子を製造した場合に、電子素子の変調特性を良好にすることができる。酸化膜21の厚さは、さらに好適には、1nm以上7nm以下である。
(実施の形態2)
次に、上記実施の形態1の積層体11を用いて作製される電子素子の一例であるFET(Field Effect Transister)について説明する。図16は、実施の形態2におけるFETの概略断面図である。図16を参照して、実施の形態2におけるFET15は、ベース部12と、グラフェン膜13と、酸化膜21および絶縁膜22を含むゲート絶縁膜19とを備える積層体11を含む。FET15は、さらに第1電極としてのソース電極16と、ソース電極16とは離れて配置される第2電極としてのドレイン電極17と、ソース電極16およびドレイン電極17と離れて配置される第3電極としてのゲート電極18と、を含む。
ソース電極16は、第2面13A上に配置される。ソース電極16は、第2面13Aに接触して形成される。ソース電極16は、グラフェン膜13とオーミック接触可能な導電体、例えばNi(ニッケル)/Au(金)から構成されている。ドレイン電極17は、第2面13A上に配置される。ドレイン電極17は、第2面13Aに接触して形成される。ドレイン電極17は、グラフェン膜13とオーミック接触可能な導電体、例えばNi/Auから構成されている。
ソース電極16とドレイン電極17との間に位置するグラフェン膜13の第2面13Aを覆うように、酸化膜21が配置される。ソース電極16の一部とドレイン電極17の一部および酸化膜21を覆うように絶縁膜22を形成し、酸化膜21と絶縁膜22にてゲート絶縁膜19として機能させる。ゲート絶縁膜19は、例えば窒化珪素(SiN)、酸化アルミニウム(Al)等の絶縁体から構成されている。本実施形態においては、ゲート絶縁膜19は、酸化膜21および絶縁膜22を含む。
ゲート電極18は、ゲート絶縁膜19上に接触するように配置される。ゲート電極18は、ソース電極16とドレイン電極17との間に位置する第2面13Aに対応する領域に配置される。ゲート電極18は、導電体、例えばNi/Auから構成されている。
このFET15において、ゲート電極18に印加される電圧が閾値電圧未満の状態、すなわち、FET15がオフの状態では、ソース電極16とドレイン電極17との間(チャネル領域)に位置するグラフェン膜13にはキャリアとなる電子が十分に存在せず、ソース電極16とドレイン電極17との間に電圧が印加されても非導通の状態が維持される。一方、ゲート電極18に閾値電圧以上の電圧が印加されてFET15がオンの状態となると、チャネル領域にキャリアとなる電子が生成する。その結果、キャリアとなる電子が生成したチャネル領域によってソース電極16とドレイン電極17とが電気的に接続された状態となる。このような状態でソース電極16とドレイン電極17との間に電圧が印加されると、ソース電極16とドレイン電極17との間に電流が流れる。
ここで、実施の形態2のFET15では、ソース電極16とドレイン電極17とが、上記実施の形態1において説明した積層体11の第2面13A上に形成される。また、ゲート電極18は、酸化膜21および絶縁膜22を含むゲート絶縁膜19上に配置される。すなわち、電子素子としてのFET15は、炭化珪素から構成されており、シリコン面である第1面を有するベース部12と、ベース部12が位置する側と反対側の主面である第2面を有し、第1面上に配置されるグラフェン膜13と、グラフェン膜13が位置する側と反対側の主面である第3面を有し、珪素を含み、第2面のうちの一部の上に配置される酸化膜21と、酸化膜21が位置する側と反対側の主面である第4面を有し、第3面上に配置される絶縁膜22と、を備える積層体11と、第2面上の、酸化膜が配置される位置と異なる位置に配置される第1電極としてのソース電極16と、第2面上の、酸化膜が配置される位置と異なる位置であって、ソース電極16とは離れて配置される第2電極としてのドレイン電極17と、第4面上に配置される第3電極としてのゲート電極18と、を備える。このような積層体11を含むFET15は、効率的に製造することができ、変調特性を向上させることができる。
次に、図1および図17を参照して、実施の形態2のFET15の製造方法について説明する。図17は、積層体11を含むFET15の製造方法の代表的な工程を示すフローチャートである。図17を参照して、実施の形態2のFET15の製造方法では、まず工程(S110)として処理部材準備工程が実施される。この工程(S110)では、上記実施の形態1の積層体11のうち、処理部材として絶縁膜22が形成されていない状態のものが準備される。積層体11のうち、絶縁膜22が形成されていない状態のものは、上記実施の形態1において説明した製造方法において、工程(S10)〜(S40)を実施することにより製造することができる。
次に、図17を参照して、工程(S120)としてオーミック電極形成工程が実施される。この工程(S120)では、図1および図18を参照して、第2面13Aに接触するようにソース電極16およびドレイン電極17が形成される。まず、珪素と酸素を反応させてグラフェン膜13の第2面13A上に酸化膜21を形成した後、グラフェン膜13の第2面13A上のソース電極16およびドレイン電極17が形成されるべき領域の酸化膜21を例えばフッ酸洗浄等により除去する。その後、ソース電極16およびドレイン電極17が形成されるべき領域に対応する開口を有するレジストから構成されるマスク層を酸化膜21上に形成する。次に、ソース電極16およびドレイン電極17を構成する導電体(例えばNi/Au)から構成される導電膜を形成した後、リフトオフを実施することによりソース電極16およびドレイン電極17を形成することができる。
次に、図17を参照して、工程(S130)として絶縁膜形成工程が実施される。この工程(S130)では、図19を参照して、ソース電極16とドレイン電極17との間の領域を覆うように、絶縁膜22が形成される。具体的には、酸化膜21の第3面21A、ソース電極16およびドレイン電極17を覆うように絶縁膜22が形成される。絶縁膜22を形成する工程は、上記の工程(S50)に相当する。ゲート絶縁膜19は、酸化膜21と、酸化膜21上に形成される絶縁膜22とを含む。酸化膜21上に形成される絶縁膜22は、例えばCVD法により形成することができる。絶縁膜22を構成する材料としては、例えば窒化珪素(SiN)を採用することができる。
次に、図17を参照して、工程(S140)としてゲート電極形成工程が実施される。この工程(S140)では、図19および図20を参照して、ソース電極16とドレイン電極17との間に位置する第2面13Aを覆う絶縁膜22上に接触するように、ゲート電極18が形成される。ゲート電極18は、例えばゲート電極18が形成されるべき領域に対応する開口を有するレジストから構成されるマスク層を形成し、ゲート電極18を構成する導電体(例えばNi/Au)から構成される導電膜を形成した後、リフトオフを実施することにより形成することができる。
次に、図17を参照して、工程(S150)としてコンタクトホール形成工程が実施される。この工程(S150)では、図16および図20を参照して、ソース電極16上およびドレイン電極17上に位置する絶縁膜22を除去することにより、ソース電極16およびドレイン電極17と配線とのコンタクトを可能にするためのコンタクトホールが形成される。具体的には、例えばソース電極16上およびドレイン電極17上に対応する領域に開口を有するマスクを形成し、開口から露出する絶縁膜22をエッチングにより除去する。これにより、コンタクトホールが形成されると共に、残存する絶縁膜22は、ゲート絶縁膜19となる。ゲート絶縁膜19は、ソース電極16とドレイン電極17との間に位置する第2面13Aを覆うと共に、ソース電極16およびドレイン電極17の上部表面(グラフェン膜13に接触する側とは反対側の主面)の一部を覆う領域にまで延在する。
以上の工程により、実施の形態2におけるFET15が完成する。その後、例えば配線が形成され、ダイシングにより各電子素子に分離される。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本開示の積層体および電子素子は、高い電気特性を得ることができ、効率的に電子素子を製造することが求められる場合に特に有利に適用され得る。
11 積層体
12 ベース部
12A 第1面
13 グラフェン膜
13A 第2面
13B,21B,22B 主面
15 FET
16 ソース電極
17 ドレイン電極
18 ゲート電極
19 ゲート絶縁膜
21 酸化膜
21A 第3面
22 絶縁膜
22A 第4面
23A,23B 界面
24 電極
25 ニッケル層
26 金層
27 電子素子
28A,28B,28C,29A,29B,29C 像
30 珪素原子
41 加熱装置
42 チャンバー
42A 側壁部
42B 底壁部
42C 上壁部
43 サセプタ
43A 基板保持面
43C 第1空間
44 カバー部材
44A 上壁面
44B 側壁面
45 気体導入管
46 気体排出管
47 珪素層
51 炭化珪素基板
51A 第1基板面
T,F,F 矢印
,S,S
S10,S20,S30,S40,S50,S110,S120,S130,S140,S150 工程

Claims (5)

  1. 炭化珪素から構成されており、シリコン面である第1面を有するベース部と、
    前記ベース部が位置する側と反対側の主面である第2面を有し、前記第1面上に配置されるグラフェン膜と、
    前記グラフェン膜が位置する側と反対側の主面である第3面を有し、珪素を含み、前記第2面上に配置される酸化膜と、
    前記酸化膜が位置する側と反対側の主面である第4面を有し、前記第3面上に配置される絶縁膜と、を備える、積層体。
  2. 前記酸化膜は、Si(1−a)またはSi(1−a)で表され、
    前記aは、0よりも大きく、1よりも小さく
    前記wは、0よりも大きく、
    前記Xは、Al、HfおよびTiのうちの少なくともいずれか1つである、請求項1に記載の積層体。
  3. 前記aは、0.1以上0.9以下である、請求項2に記載の積層体。
  4. 前記酸化膜の厚さは、0.1nm以上10nm以下である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の積層体。
  5. 炭化珪素から構成されており、シリコン面である第1面を有するベース部と、
    前記ベース部が位置する側と反対側の主面である第2面を有し、前記第1面上に配置されるグラフェン膜と、
    前記グラフェン膜が位置する側と反対側の主面である第3面を有し、珪素を含み、前記第2面のうちの一部の上に配置される酸化膜と、
    前記酸化膜が位置する側と反対側の主面である第4面を有し、前記第3面上に配置される絶縁膜と、を備える積層体と、
    前記第2面上の、前記酸化膜が配置される位置と異なる位置に配置される第1電極と、
    前記第2面上の、前記酸化膜が配置される位置と異なる位置であって、前記第1電極とは離れて配置される第2電極と、
    前記第4面上に配置される第3電極と、を備える、電子素子。
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