JP7379883B2 - 炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法 - Google Patents

炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7379883B2
JP7379883B2 JP2019119419A JP2019119419A JP7379883B2 JP 7379883 B2 JP7379883 B2 JP 7379883B2 JP 2019119419 A JP2019119419 A JP 2019119419A JP 2019119419 A JP2019119419 A JP 2019119419A JP 7379883 B2 JP7379883 B2 JP 7379883B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
silicon carbide
insulating film
type
semiconductor device
spectrum
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019119419A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2021005663A (ja
Inventor
美紀 磯野
豊 寺尾
隆之 広瀬
健志 藤井
英徳 辻
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fuji Electric Co Ltd
Original Assignee
Fuji Electric Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fuji Electric Co Ltd filed Critical Fuji Electric Co Ltd
Priority to JP2019119419A priority Critical patent/JP7379883B2/ja
Publication of JP2021005663A publication Critical patent/JP2021005663A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7379883B2 publication Critical patent/JP7379883B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Formation Of Insulating Films (AREA)

Description

この発明は、炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法に関する。
炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)よりも、絶縁破壊電界強度が高い、熱伝導率が高いなどの優れた特長により、特にパワーデバイスへの応用が期待されている。また、炭化珪素は、シリコンと同様に、熱酸化により酸化膜(SiO2膜)を形成することができる。このため、炭化珪素を用いた半導体装置(以下、炭化珪素半導体装置とする)では、熱酸化により形成した酸化膜をゲート絶縁膜として用いたMOSゲート(金属-酸化膜-半導体からなる絶縁ゲート)を備えたMOS型炭化珪素半導体装置の開発が進められている。
例えば、炭化珪素を用いた半導体基板(以下、炭化珪素基板とする)上に、一酸化窒素(NO)や亜酸化窒素(N2O)を含む酸窒化雰囲気での熱酸化によりゲート絶縁膜となる酸化膜を形成することで、特性の向上や安定化を図る方法が公知である。このように熱酸化によりゲート絶縁膜を形成することでチャネル移動度が向上し、バイアス-熱ストレス試験(BT試験:Bias Temperature-stress test)によるゲート閾値電圧Vthの変動ΔVthが抑制される。
また、シリコン半導体装置のゲート酸化膜の薄膜化に対するリーク電流の対策のため、熱酸窒化によりシリコン酸窒化膜を生成する技術が公知である(例えば、下記非特許文献1参照。)。また、SiC基板の最表面のSiとCのいずれか又は両方の元素の一部を窒素(N)で置換することで、十分に強いSiC基板表面の終端構造を形成する技術が公知である(例えば、下記特許文献1参照。)。また、炭化珪素半導体装置において、ゲート絶縁膜としての窒化酸化シリコン膜を用いることで、VDMOSFETのチャネル移動度を向上させる技術が公知である(例えば、下記特許文献2参照。)。
特開2014-78727号公報 特開2018-56570号公報
土井謙太郎他、「シリコン酸窒化膜の安定性と電子構造に関する理論研究の現状」、J.Vac.Soc.Jpn.(真空)Vol.50,No.11,2007
炭化珪素半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する際に、界面準位(電子トラップ)密度(Dit:Interface State Density)が高くなり、チャネル移動度の低下や、ゲートしきい値電圧Vthの変動ΔVthが起きるという問題がある。上記特許文献1、2のようにゲート絶縁膜と炭化珪素半導体との界面を窒素によって終端することで界面準位密度を低減することができる。しかしながら、界面を窒素によって終端しても界面準位密度を十分低減させることはできなかった。
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、ゲート絶縁膜と炭化珪素半導体との界面の界面準位密度を低減させることができる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、次の特徴を有する。炭化珪素半導体装置は、炭化珪素からなる半導体基板と、前記半導体基板に接するゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜に沿って設けられ、前記ゲート絶縁膜を介して前記半導体基板と対向するゲート電極と、を備える。前記ゲート電極が除去された前記ゲート絶縁膜の表面を、赤外分光法(IR)で測定したスペクトルにおいてC≡Nのピーク強度ICNに対するC=N、C-Nそれぞれのピーク強度IC=N、IC-Nの比がIC=N/ICN<0.1、かつ、IC-N/ICN<0.1である。
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記ゲート電極が除去された前記ゲート絶縁膜の表面を、光電子分光法(XPS)で測定した際のN1sスペクトルのうち、CNに起因するピークの面積がN1sスペクトル面積全体の10%未満であることを特徴とする。
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記ゲート絶縁膜が接する前記半導体基板の面は、m面であることを特徴とする。
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記ゲート絶縁膜は、前記半導体基板上に設けられた第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に設けられた第2絶縁膜とからなり、前記第1絶縁膜は、酸窒化膜であり、前記第2絶縁膜は、堆積酸化膜であることを特徴とする。
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第1絶縁膜は、前記半導体基板上から3nm以下の厚さであることを特徴とする。
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、次の特徴を有する。炭化珪素からなる半導体基板と、前記半導体基板に接するゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜に沿って設けられ、前記ゲート絶縁膜を介して前記半導体基板と対向するゲート電極と、を備える炭化珪素半導体装置の製造方法である。前記ゲート絶縁膜を形成する工程は、前記半導体基板上に熱酸窒化により第1絶縁膜を形成する第1工程と、前記第1絶縁膜上に堆積により第2絶縁膜を形成する第2工程と、を含む。前記第1工程では、前記第1絶縁膜を、一酸化窒素を100Torr未満の圧力で含む酸窒化雰囲気で熱酸窒化を行って形成する。
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第1工程では、前記第1絶縁膜を、前記一酸化窒素を50Torr未満の圧力で形成することを特徴とする。
上述した発明によれば、赤外分光法(IR)で測定したスペクトルにおいて、ピーク強度ICNに対するピーク強度IC=Nの比IC=N/ICNおよびピーク強度ICNに対するピーク強度IC-Nの比IC-N/ICNが0.1未満となっている。炭化珪素のバンドギャップ中に準位を形成するC=N構造およびC-N構造が少なくなっているため、実施の形態では、ゲート絶縁膜と炭化珪素半導体との界面の界面準位密度を低減させることができる。
本発明にかかる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法によれば、ゲート絶縁膜と炭化珪素半導体との界面の界面準位密度を低減させることができるという効果を奏する。
実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。 実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法の概要を示すフローチャートである。 NO処理時間と酸窒化膜厚さとの関係を示すグラフである。 実施例にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その1)。 実施例にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その2)。 実施例にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その3)。 実施例にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その4)。 実施例にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その5)。 比較例1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その1)。 比較例1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その2)。 比較例1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その3)。 比較例1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その4)。 比較例2にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その1)。 比較例2にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その2)。 比較例2にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その3)。 比較例2にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その4)。 比較例2にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その5)。 光電子分光法によるサンプルのN1sスペクトルを示すグラフである。 光電子分光法によるサンプルのSi2pスペクトルを示すグラフである。 表面からの深さに対するCNピーク面積/N1sスペクトル面積を示すグラフである。 ATR法によるサンプルのIRスペクトルを示すグラフである。 ATR法によるSiC基板のIRスペクトルを示すグラフである。 ATR法による熱酸化したSiC基板のIRスペクトルを示すグラフである。 サンプルのCNのみを抽出したIRスペクトルを示すグラフである。 実施例と比較例1、2の測定結果を示す表である。
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本明細書では、ミラー指数の表記において、“-”はその直後の指数につくバーを意味しており、指数の前に“-”を付けることで負の指数をあらわしている。そして、同じまたは同等との記載は製造におけるばらつきを考慮して5%以内まで含むとするのがよい。
(実施の形態)
実施の形態にかかる炭化珪素(SiC)半導体装置の構造について、トレンチ型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)70を例に説明する。図1は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。図1には、MOSFETの1つの単位セル(素子の構成単位)を示し、当該単位セルに隣り合う他の単位セルを図示省略する。また、図1には、活性領域のみを図示し、活性領域の周囲を囲むエッジ終端領域を図示省略する。
活性領域は、炭化珪素半導体装置がオン状態のときに電流が流れる領域である。エッジ終端領域は、活性領域と炭化珪素基板(炭化珪素からなる半導体基板:半導体チップ)側面との間の領域であり、ドリフト領域の、基板おもて面(炭化珪素基板のおもて面)側の電界を緩和して耐圧を保持する領域である。エッジ終端領域には、例えばガードリングや接合終端(JTE:Junction Termination Extension)構造を構成するp型領域や、フィールドプレート、リサーフ等の耐圧構造が配置される。耐圧とは、半導体装置が誤動作や破壊を起こさない限界の電圧(耐電圧)である。
図1に示すように、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置は、n+型炭化珪素基板1の第1主面(おもて面)、例えば(0001)面(Si面)に、n-型炭化珪素エピタキシャル層2が堆積されている。
+型炭化珪素基板1は、炭化珪素単結晶基板である。n-型炭化珪素エピタキシャル層2は、n+型炭化珪素基板1よりも低い不純物濃度であり、例えば低濃度n型ドリフト層である。n-型炭化珪素エピタキシャル層2の、n+型炭化珪素基板1側に対して反対側の表面には、n型高濃度領域5が設けられていてもよい。n型高濃度領域5は、n+型炭化珪素基板1よりも低くn-型炭化珪素エピタキシャル層2よりも高い不純物濃度の高濃度n型ドリフト層である。
-型炭化珪素エピタキシャル層2の、n+型炭化珪素基板1側に対して反対側の表面には、p型ベース層6が設けられている。以下、n+型炭化珪素基板1とn-型炭化珪素エピタキシャル層2とn型高濃度領域5とp型ベース層6とを併せて炭化珪素半導体基体(炭化珪素からなる半導体基板)18とする。
+型炭化珪素基板1の第2主面(裏面、すなわち炭化珪素半導体基体18の裏面)には、裏面電極13となるドレイン電極が設けられている。裏面電極13の表面には、ドレイン電極パッド(不図示)が設けられている。
炭化珪素半導体基体18の第1主面側(p型ベース層6側)には、トレンチ構造が形成されている。具体的には、トレンチ16は、p型ベース層6のn+型炭化珪素基板1側に対して反対側(炭化珪素半導体基体18の第1主面側)の表面からp型ベース層6を貫通してn型高濃度領域5(n型高濃度領域5を設けない場合にはn-型炭化珪素エピタキシャル層2、以下単に(2)と記載する)に達する。トレンチ16の内壁に沿って、トレンチ16の底部および側壁にゲート絶縁膜9が形成されており、トレンチ16内のゲート絶縁膜9の内側にゲート電極10が形成されている。ゲート絶縁膜9によりゲート電極10が、n型高濃度領域5(2)およびp型ベース層6と絶縁されている。ゲート電極10の一部は、トレンチ16の上方(後述するソース電極12が設けられている側)からソース電極12側に突出していてもよい。
具体的には、ゲート絶縁膜9は、熱酸窒化により形成された酸窒化膜(第1絶縁膜)とCVD(化学気相成長:Chemical Vapor Deposition)により形成された堆積酸化膜(第2絶縁膜)との2層から構成される。酸窒化膜は、炭化珪素半導体層(例えば、p型ベース層6)の表面から3nm以下の厚さであることが好ましい。また、ゲート絶縁膜9は、m面上に形成することが好ましい。例えばトレンチ構造が形成されている場合には、トレンチ16の側壁がm面であることが好ましい。
実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置では、ゲート絶縁膜9を形成するための熱酸窒化により、ゲート絶縁膜9と炭化珪素半導体層との接合界面(SiO2/SiC界面)は窒素(N)よって終端される。
本発明の発明者らは、窒素処理を行った炭化珪素表面を光電子分光にて分析すると、Nの化学状態はSi3NおよびCNがあり、第一原理計算から、CNのうちC=N構造およびC-N構造が炭化珪素のバンドギャップ中に準位を形成すること、Si3Nは移動度を向上させることを明らかにした。このため、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置では、ゲート電極10を除去した、ゲート絶縁膜9と炭化珪素半導体層との接合界面では、赤外分光法(IR:infrared spectroscopy)で測定したスペクトルにおいてC≡N(窒素と炭素が三重結合)のピーク強度ICNに対するC=N(窒素と炭素が二重結合),C-N(窒素と炭素が一重結合)それぞれのピーク強度IC=N、IC-Nの比がIC=N/ICN<0.1、かつ、IC-N/ICN<0.1としている。これにより、ゲート絶縁膜9と炭化珪素半導体層との接合界面の界面準位密度を低減させている。また、接合界面だけでなく、ゲート絶縁膜9内でもIC=N/ICN<0.1、かつ、IC-N/ICN<0.1であることが好ましい。
赤外分光法は、測定対象の物質に赤外線を照射し、透過(あるいは反射)光を分光することでスペクトルを得て、対象物の特性を知る方法であり、実施の形態では、赤外分光法により、窒素の化学状態の中で炭素と結合した状態CNでの結合次数の比率を測定している。測定方法の詳細は、後述する実施例において説明する。
上述したように、CNのうちC=N構造およびC-N構造は炭化珪素のバンドギャップ中に準位を形成し、Si3Nは移動度を向上させるため、Nの化学状態として、CNは少なく、Si3Nは多い方が好ましい。このため、ゲート電極10を除去した、ゲート絶縁膜9と炭化珪素半導体層との接合界面では、X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)で測定した際のN1sスペクトルのうち、CNに起因するピークの面積比がN1sスペクトル面積全体の10%未満であることが好ましい。接合界面だけでなく、ゲート絶縁膜9内でも、X線光電子分光法で測定した際のN1sスペクトルのうち、CNに起因するピークの面積比がN1sスペクトル面積全体の10%未満であることが好ましい。
光電子分光法は、測定対象の物質の表面にX線を照射し、生じる光電子のエネルギーを測定することで、測定対象の物質の構成元素とその電子状態を分析する方法である。実施の形態では、光電子分光法により、窒素の化学状態の中で炭素と結合した状態(CN)の割合を測定している。測定方法の詳細は、後述する実施例において説明する。
n型高濃度領域5(2)のn+型炭化珪素基板1側に対して反対側(炭化珪素半導体基体18の第1主面側)の表面層には、トレンチ16の間に、第1p+型ベース領域3が設けられている。また、n型高濃度領域5(2)内に、トレンチ16の底部と接する第2p+型ベース領域4が設けられている。第2p+型ベース領域4は、トレンチ16の底部と深さ方向(ソース電極12から裏面電極への方向)に対向する位置に設けられる。第2p+型ベース領域4の幅は、トレンチ16の幅と同じかそれよりも広い。トレンチ16の底部は、第2p+型ベース領域4に達してもよいし、p型ベース層6と第2p+型ベース領域4に挟まれたn型高濃度領域5(2)内に位置していてもよい。
また、n-型炭化珪素エピタキシャル層2内に、トレンチ16間の第1p+型ベース領域3よりも深い位置にn型高濃度領域5(2)よりピーク不純物濃度が高いn+型領域17が設けられる。なお、深い位置とは、第1p+型ベース領域3よりもドレイン電極13に近い位置のことである。
p型ベース層6の内部には、炭化珪素半導体基体18の第1主面側にn+型ソース領域7が選択的に設けられている。また、p+型コンタクト領域8が選択的に設けられていてもよい。また、n+型ソース領域7およびp+型コンタクト領域8は互いに接する。
層間絶縁膜11は、炭化珪素半導体基体18の第1主面側の全面に、トレンチ16に埋め込まれたゲート電極10を覆うように設けられている。ソース電極12は、層間絶縁膜11に開口されたコンタクトホールを介して、n+型ソース領域7およびp型ベース層6に接する。また、p+型コンタクト領域8が設けられる場合、ソース電極12は、n+型ソース領域7およびp+型コンタクト領域8に接する。ソース電極12は、層間絶縁膜11によって、ゲート電極10と電気的に絶縁されている。ソース電極12上には、ソース電極パッド(不図示)が設けられている。ソース電極12と層間絶縁膜11との間に、例えばソース電極12からゲート電極10側への金属原子の拡散を防止するバリアメタル14が設けられていてもよい。
次に、炭化珪素半導体装置の製造方法について説明する。図2は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法の概要を示すフローチャートである。まず、n型の炭化珪素でできたn+型炭化珪素基板1を用意する。そして、このn+型炭化珪素基板1の第1主面上に、n型の不純物、例えば窒素原子(N)をドーピングしながら炭化珪素でできた第1n-型炭化珪素エピタキシャル層を、例えば30μm程度の厚さまでエピタキシャル成長させる。
次に、第1n-型炭化珪素エピタキシャル層の表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所望の開口部を有する図示しないマスクを、例えば酸化膜で形成する。そして、この酸化膜をマスクとしてイオン注入法によってn型の不純物、例えば窒素原子をイオン注入してもよい。これによって、第1n-型炭化珪素エピタキシャル層の内部に、n+型領域17が形成される。
次に、n+型領域17を形成するためのイオン注入時に用いたマスクを除去する。次に、第1n-型炭化珪素エピタキシャル層の表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所定の開口部を有するイオン注入用マスクを例えば酸化膜で形成する。そして、アルミニウム等のp型の不純物を、酸化膜の開口部に注入し、深さ0.5μm程度の下部第1p+型ベース領域および第2p+型ベース領域4を形成する。n+型領域17を形成した場合の、n+型領域17のn+型炭化珪素基板1と反対側の表面上に、下部第1p+型ベース領域をn+型領域17に重なるように形成する。
次に、イオン注入用マスクの一部を除去し、開口部に窒素等のn型の不純物をイオン注入し、第1n-型炭化珪素エピタキシャル層の表面領域の一部に、例えば深さ0.5μm程度の下部n型高濃度領域を形成してもよい。下部n型高濃度領域の不純物濃度を例えば1×1017/cm3程度に設定する。
次に、第1n-型炭化珪素エピタキシャル層の表面上に、窒素等のn型の不純物をドーピングした第2n-型炭化珪素エピタキシャル層を、0.5μm程度の厚さで形成する。第2n-型炭化珪素エピタキシャル層の不純物濃度が3×1015/cm3程度となるように設定する。以降、第1n-型炭化珪素エピタキシャル層と第2n-型炭化珪素エピタキシャル層を合わせてn-型炭化珪素エピタキシャル層2となる。
次に、第2n-型炭化珪素エピタキシャル層の表面上に、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するイオン注入用マスクを例えば酸化膜で形成する。そして、アルミニウム等のp型の不純物を、酸化膜の開口部に注入し、深さ0.5μm程度の上部第1p+型ベース領域を、下部第1p+型ベース領域に重なるように形成する。下部第1p+型ベース領域と上部第1p+型ベース領域は連続した領域を形成し、第1p+型ベース領域3となる。上部第1p+型ベース領域の不純物濃度を例えば5×1018/cm3程度となるように設定する。
次に、イオン注入用マスクの一部を除去し、開口部に窒素等のn型の不純物をイオン注入し、第2炭化珪素エピタキシャル層の表面領域の一部に、例えば深さ0.5μm程度の上部n型高濃度領域を形成してもよい。上部n型高濃度領域の不純物濃度を例えば1×1017/cm3程度に設定する。この上部n型高濃度領域と下部n型高濃度領域は少なくとも一部が接するように形成され、n型高濃度領域5を形成する。ただし、このn型高濃度領域5が基板全面に形成される場合と、形成されない場合がある。
次に、n-型炭化珪素エピタキシャル層2の表面上に、エピタキシャル成長によりp型ベース層6を1.1μm程度の厚さで形成する。p型ベース層6の不純物濃度は4×1017/cm3程度に設定する。p型ベース層6をエピタキシャル成長により形成した後、p型ベース層6にさらにアルミニウム等のp型の不純物を、イオン注入してもよい。
次に、炭化珪素半導体基体18の第1主面層(p型ベース層6の表面層)に、MOSゲートを構成する所定領域を形成する(ステップS1)。具体的には、p型ベース層6の表面上に、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するイオン注入用マスクを例えば酸化膜で形成する。この開口部に窒素(N)、リン(P)等のn型の不純物をイオン注入し、p型ベース層6の表面の一部にn+型ソース領域7を形成する。次に、n+型ソース領域7の形成に用いたイオン注入用マスクを除去し、同様の方法で、所定の開口部を有するイオン注入用マスクを形成し、p型ベース層6の表面の一部にリン等のp型の不純物をイオン注入し、p+型コンタクト領域8を形成してもよい。p+型コンタクト領域8の不純物濃度は、p型ベース層6の不純物濃度より高くなるように設定する。
次に、イオン注入で形成した全領域を活性化するための熱処理(活性化アニール)を行う(ステップS2)。例えば、1700℃程度の不活性ガス雰囲気で熱処理(アニール)を行い、第1p+型ベース領域3、第2p+型ベース領域4、n+型ソース領域7、p+型コンタクト領域8およびn+型領域17の活性化処理を実施する。なお、上述したように1回の熱処理によって各イオン注入領域をまとめて活性化させてもよいし、イオン注入を行うたびに熱処理を行って活性化させてもよい。
次に、p型ベース層6の表面上に、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するトレンチ形成用マスクを例えば酸化膜で形成する。次に、ドライエッチングによってp型ベース層6を貫通し、n型高濃度領域5(2)に達するトレンチ16を形成する。トレンチ16の底部はn型高濃度領域5(2)に形成された第2p+型ベース領域4に達してもよい。次に、トレンチ形成用マスクを除去する。次に、炭化珪素半導体基体18のおもて面を例えばフッ化水素(HF)で洗浄する(ステップS3)
次に、炭化珪素半導体基体18のおもて面を酸素と窒素を含むガスによって熱酸窒化し、酸窒化膜を形成する(ステップS4)。ステップS4の熱酸窒化は、酸窒化種として一酸化窒素(NO)を含む酸窒化雰囲気で行う。この酸窒化雰囲気は、キャリアガスとして例えばアルゴン(Ar)ガスを含む。
図3は、NO処理時間と酸窒化膜厚さとの関係を示すグラフである。図3において、縦軸は酸窒化膜厚さを示し、横軸は一酸化窒素による処理時間を示す。図3の破線で囲んだ部分で示すように、酸窒化膜はNO処理の初期で急激に成長している。このため、実施の形態では、低圧で処理することで成長速度を低減させ極薄膜の酸窒化膜を成膜する。具体的には、熱酸窒化は、一酸化窒素を100Torr未満の圧力で処理することが好ましく、50Torr未満の圧力で処理することがより好ましい。
次に、酸窒化膜上にCVDにより、堆積酸化膜を形成する(ステップS5)。酸窒化膜と堆積酸化膜によりゲート絶縁膜9が形成される。発明者らは、NO酸化、NO-PDA(堆積後のアニール:Post Deposition Annealing)を模擬した反応シミュレーションで生成したCN化合物の内訳を解析した。この結果、同じNO量および温度で比較すると、NO酸化の方が界面、酸化膜共にC=N,C-Nの量が少なくなった。このため、NO処理はアニールとして行うよりも、最初期の絶縁膜の作成に用いることで欠陥が低減させられる。したがって、実施の形態では、炭化珪素半導体上にNOで極薄膜(<3nm)の酸窒化膜を成膜した後で、堆積酸化膜を形成することで、界面にC=N,C-Nを作らずに窒素終端を可能としている。
次に、ゲート絶縁膜9上に、例えばリン原子がドーピングされた多結晶シリコン層を設ける。この多結晶シリコン層はトレンチ16内を埋めるように形成してもよい。この多結晶シリコン層をフォトリソグラフィによりパターニングし、トレンチ16内部に残すことによって、ゲート電極10を形成する(ステップS6)。
次に、ゲート絶縁膜9およびゲート電極10を覆うように、例えばリンガラスを1μm程度の厚さで成膜し、層間絶縁膜11を形成する。次に、層間絶縁膜11を覆うように、チタン(Ti)または窒化チタン(TiN)からなるバリアメタル14を形成してもよい。層間絶縁膜11およびゲート絶縁膜9をフォトリソグラフィによりパターニングしn+型ソース領域7およびp+型コンタクト領域8を露出させたコンタクトホールを形成する。その後、熱処理(リフロー)を行って層間絶縁膜11を平坦化する。
次に、層間絶縁膜11を選択的に除去して炭化珪素半導体基体18の表面に、ニッケル(Ni)かTiの膜を成膜する。次に、表面を保護してn+型炭化珪素基板1の裏面側にNiかTiの膜を成膜する。次に1000℃程度の熱処理を行い炭化珪素半導体基体18の表面側とn+型炭化珪素基板1の裏面の表面側にオーミック電極を形成する。
次に、上記コンタクトホール内に形成したオーミック電極部分に接触するように、および層間絶縁膜11上にソース電極12となる導電性の膜を設け、n+型ソース領域7およびp+型コンタクト領域8とソース電極12とを接触させる。
次いで、n+型炭化珪素基板1の第2主面上に、例えばニッケル(Ni)膜でできた裏面電極13を形成する。その後、例えば970℃程度の温度で熱処理を行って、n+型炭化珪素基板1と裏面電極13とをオーミック接合する。
次に、例えばスパッタ法によって、炭化珪素半導体基体18のおもて面のソース電極12上および層間絶縁膜11の開口部に、ソース電極パッド(不図示)となる電極パッドを堆積する。電極パッドの層間絶縁膜11上の部分の厚さは、例えば5μmであってもよい。電極パッドは、例えば、1%の割合でシリコンを含んだアルミニウム(Al-Si)で形成してもよい。次に、ソース電極パッドを選択的に除去する。
次に、裏面電極13の表面に、ドレイン電極パッド(不図示)として例えばチタン(Ti)、ニッケル(Ni)および金(Au)をこの順に成膜する。以上のようにして、図1に示す半導体装置が完成する。
次に、実施の形態による実施例と従来技術による比較例のサンプルを作成して、XPS分析、IR分析および界面準位密度を測定した結果を示す。
(実施例)
まず、実施の形態による実施例のサンプルを以下のように作成した。図4A~図4Eは、実施例にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。まず、図4Aに示すように、炭化珪素基板20を用意した。次に、図4Bに示すように、炭化珪素基板20のm面上に、酸素と窒素を含むガスによって熱酸窒化し、酸窒化膜30を形成した。ここでは、10Torrの圧力、一酸化窒素ガス10%、アルゴンガス90%の雰囲気で、1200℃、10分間熱酸窒化して、厚さw1が2nmの酸窒化膜30を形成した。
次に、図4Cに示すように、酸窒化膜30上にCVDにより、堆積酸化膜40を形成した。ここでは、キャリアガスに亜酸化窒素(N2O)ガスを、成膜ガスとしてシラン(SiH4)を導入して、800℃、60分間堆積して、厚さw2が50nmの堆積酸化膜40を形成した。
次に、図4Dに示すように、欠陥を減少させ、膜質を向上させるため、アニールを行った。ここでは、アルゴンガスを雰囲気ガスとして用いて、加熱温度1000℃ 、加熱時間10分間アニールを行い、厚さw3が52nmのゲート絶縁膜9を形成した。
次に、図4Eに示すように、抵抗加熱蒸着により厚さw4が100nmのAl電極50を形成した。これにより、実施例のサンプルが作成された。
(比較例1)
次に、従来技術による比較例1のサンプルを以下のように作成した。図5A~図5Dは、比較例1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。まず、図5Aに示すように、炭化珪素基板20を用意した。次に、図5Bに示すように、炭化珪素基板20のm面上に、CVDにより、堆積酸化膜40を形成した。ここでは、キャリアガスに亜酸化窒素(N2O)ガスを、成膜ガスとしてシラン(SiH4)を導入して、800℃、60分間堆積して、厚さs1が50nmの堆積酸化膜40を形成した。
次に、図5Cに示すように、一酸化窒素ガス10%の雰囲気で、1200℃、60分間NO-PDAを行い、炭化珪素基板20と堆積酸化膜40との間に窒素終端層40を形成し、厚さs1が50nmのゲート絶縁膜9を形成した。
次に、図5Dに示すように、抵抗加熱蒸着により厚さs2が100nmのAl電極50を形成した。これにより、比較例1のサンプルが作成された。
(比較例2)
次に、従来技術による比較例2のサンプルを以下のように作成した。図6A~図6Eは、比較例2にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。まず、図6Aに示すように、炭化珪素基板20を用意した。次に、図6Bに示すように、炭化珪素基板20のm面上に、酸素と窒素を含むガスによって熱酸窒化し、酸窒化膜30を形成した。ここでは、760Torrの圧力、一酸化窒素ガス30%の雰囲気で、1200℃、5分間熱酸窒化して、厚さt1が10nmの酸窒化膜30を形成した。
次に、図6Cに示すように、酸窒化膜上にCVDにより、堆積酸化膜40を形成した。ここでは、キャリアガスに亜酸化窒素(N2O)ガスを、成膜ガスとしてシラン(SiH4)を導入して、800℃、40分間堆積して、厚さt2が50nmの堆積酸化膜40を形成した。
次に、図6Dに示すように、アルゴンガスを雰囲気ガスとして用いて、加熱温度1000℃ 、加熱時間10分間アニールを行い、厚さt3が52nmのゲート絶縁膜9を形成した。
次に、図6Eに示すように、抵抗加熱蒸着により厚さt4が100nmのAl電極50を形成した。これにより、比較例2のサンプルが作成された。
(XPS分析)
次に、実施例、比較例1および比較例2のサンプルのXPS分析の詳細を説明する。まず、前処理として、サンプルを70℃に加熱した塩酸に10分間浸漬させ、Al電極50を剥離した。
XPS分析では、光源として、AlKα線(1486.6eV)を用い、サンプルサイズは10mm×10mm程度にした。ハンドリングのし易さの点からサンプルサイズは5mm×5mm以上が好ましく、サンプルホルダーの大きさから100mm×100mm以下にする必要がある。
また、サンプルは検出器に対して45°の角度で配置(一般的な光電子分光分析装置の基準の配置)して測定した。線源の種類と検出器の角度からSiCの分析深さは表面から4~5nmとなる。測定するエネルギー領域(横軸)は、N1sのピークが検出される395~402eVとした。
図7は、光電子分光法によるサンプルのN1sスペクトルを示すグラフである。図7において、縦軸はスペクトルの強度を示し、単位は1秒あたりの光電子数である。横軸は結合エネルギーを示し、単位はeVである。評価方法の説明のために、図7~9では、CNスペクトル成分が大きい比較例1のサンプルを用いて説明している。
図7のN1sで示すグラフがN1sスペクトルである。N1sスペクトルを2つのピークでフィッティングし、高エネルギー側のピークをCN(C≡N、C=N、C-Nの混合)と帰属する。具体的には、CNスペクトルは、N1sスペクトルのピークより高エネルギー側にのみ存在するため、N1sスペクトルのピークより低エネルギー側を高エネルギー側にフィッティングすることで、Si3Nスペクトルのグラフを得ることができる。N1sスペクトルとSi3Nスペクトルとの差分がCNスペクトルとなる。このCNスペクトルは、C≡N、C=N、C-Nの混合スペクトルである。
次に、バックグラウンドの成分を除いた後、求めたCNスペクトルとN1sスペクトルの面積を求め、N1sスペクトルの面積に対するCNスペクトルの面積の比(CNスペクトルの面積/N1sスペクトルの面積)を算出した。N1sスペクトルの面積とは、N1sスペクトルとC/S=0の直線lとが囲む部分の面積である。CNスペクトルの面積も同様である。
ここで、算出した比は、サンプルの酸化膜の表面の比であるため、Arイオンでの酸化膜のエッチングと上記測定とを交互に行い、5nm間隔で深さ方向に順次比を算出する。エッチングと測定は、炭化珪素の表面が露出するまで行った。つまり、サンプルの酸化膜の表面から酸化膜と炭化珪素との界面まで上記比を算出した。炭化珪素の表面に達したかどうかは、以下のように判定した。
図8は、光電子分光法によるサンプルのSi2pスペクトルを示すグラフである。図8において、縦軸は規格化したスペクトルの強度を示す。横軸は結合エネルギーを示し、単位はeVである。Si2pスペクトルでは、SiO2のピークとSiCのピークが検出された。
図8で、(1)のグラフは、酸化膜の表面のSi2pスペクトルであり、(2)のグラフは、酸化膜の表面を5nmエッチングした後のSi2pスペクトルであり、(3)のグラフは、酸化膜の表面をさらに5nm(計10nm)エッチングした後のSi2pスペクトルである。これ以降のグラフはさらに5nmエッチングした後のSi2pスペクトルである。(1)~(3)で示すように、エッチングを行うにつれて、SiO2のピークが低くなり、SiCのピークが高くなっている。(4)のグラフになると、SiO2のピークが検出されず、SiCのピークのみになる。この場合、サンプルの酸化膜がすべてエッチングで除去され炭化珪素の表面が露出したと判定した。
N1sスペクトルの面積に対するCNスペクトルの面積の比として、サンプルの酸化膜の表面から酸化膜と炭化珪素との界面までに算出されたCNピーク面積/N1sスペクトル面積の平均値を用した。図9は、表面からの深さに対するCNピーク面積/N1sスペクトル面積を示すグラフである。図9において、縦軸はCNピーク面積/N1sスペクトル面積を示し、横軸は酸化膜の表面からの深さを示し、単位はnmである。図9の例では、N1sスペクトルの面積に対するCNスペクトルの面積の比として、1~10までの値の平均値を用いる。
(IR分析)
次に、実施例、比較例1および比較例2のサンプルのIR分析の詳細を説明する。IR分析では、C≡N、C=N、C-Nの存在比を算出した。C≡N、C=N、C-Nのそれぞれの伸縮振動のピークは、2200cm-1付近、1550cm-1付近、1000~1100cm-1付近に存在するため、IR分析からC≡N、C=N、C-Nのそれぞれの伸縮振動のピークを特定して、ピークの大きさから存在比を算出した。
なお、上記のXPS分析は、破壊検査であるため、1つのサンプルを2つに分割して、1つをXPS分析に使用して、残りをIR分析に使用した。また、1つのサンプルに対して非破壊検査のIR分析を最初に行い、次にXPS分析を行うことも可能である。まず、IR分析でも、前処理として、サンプルを70℃に加熱した塩酸に10分間浸漬させ、Al電極50を剥離した。IR分析では、表面に敏感な全反射測定法(Attenuated Total Reflection、ATR法)を用いて、プリズムはゲルマニウムを使用した。サンプルが数cm角以下の大きさであればそのまま測定可能でサンプル表面からプリズムを接触させ測定する。
ATR法では、分析深さは波数範囲900~2400cm-1でサブミクロンである。このため、酸化膜、界面、基板である炭化珪素の情報が合わせて分析される。図10は、ATR法によるサンプルのIRスペクトルを示すグラフである。図10において、縦軸はIRスペクトルの規格化した強度を示し、横軸は波数を示し、単位はcm-1である。また、図10および以下の図11~図13は、比較例1のサンプルのIRスペクトルを示すグラフである。
図10に示すように、IRスペクトルにはSiCのピークが400~900cm-1の範囲に、SiO2のピークが1200~1300cm-1付近に大きく観測されるため、単独ではCNのピークを得ることは困難である。そのため、熱酸化処理で得られた酸化膜のIRスペクトルと、SiC基板のIRスペクトルをそれぞれ測定し、サンプルのIRスペクトルから引くことでCNのピークを抽出した。熱酸化はm面SiC基板を大気中1500℃において処理し約1μmの熱酸化膜を得ることでSiO2のみのIRスペクトルを取得した。
図11は、ATR法によるSiC基板のIRスペクトルを示すグラフである。図12は、ATR法による熱酸化したSiC基板のIRスペクトルを示すグラフである。図13は、サンプルのCNのみを抽出したIRスペクトルを示すグラフである。図11~図13において、縦軸はIRスペクトルの規格化した強度を示し、横軸は波数を示し、単位はcm-1である。
SiCのピークを除去するため、サンプルのIRスペクトルとSiC基板のIRスペクトルとで、300~500cm-1のピーク強度で規格化して差分を取った。次に、SiO2のピークを除去するため、サンプルのIRスペクトルと熱酸化したSiC基板のIRスペクトルとで、1200~1300cm-1のピーク強度で規格化して差分を取った。図13は、この差分結果のグラフである。
図13において、2200cm-1付近のピークがC≡NのIRスペクトルであり、1550cm-1付近のピークがC=NのIRスペクトルであり、1000~1100cm-1の範囲のピークがC-NのIRスペクトルであり、各ピークの強度ICN、IC=N、IC-Nを求め、比率IC=N/ICN、IC-N/ICNを算出した。
図14は、実施例と比較例1、2の測定結果を示す表である。図14において、界面準位密度はHigh-Low法によるCV(Cyclic Voltammetry)測定の解析から得た。
図14に示すように、比較例1では、N1sスペクトル面積に対するCNピーク面積比が10%以上であり、ピーク強度ICNに対するピーク強度IC=Nの比IC=N/ICNおよびピーク強度ICNに対するピーク強度IC-Nの比IC-N/ICNが0.1以上となっている。これは、比較例1では、堆積酸化膜と炭化珪素との界面に窒素終端層ができているためであり、界面準位密度は4×1011cm-2eV-1と高くなっている。
また、比較例2では、N1sスペクトル面積に対するCNピーク面積比が10%未満であるが、ピーク強度ICNに対するピーク強度IC=Nの比IC=N/ICNおよびピーク強度ICNに対するピーク強度IC-Nの比IC-N/ICNが0.1以上となっている。これは、比較例2では、酸窒化膜が厚く形成されているためであり、界面準位密度は4×1011cm-2eV-1と高くなっている。
一方、実施例では、N1sスペクトル面積に対するCNピーク面積比が10%未満であり、ピーク強度ICNに対するピーク強度IC=Nの比IC=N/ICNおよびピーク強度ICNに対するピーク強度IC-Nの比IC-N/ICNが0.1未満となっている。実施例では、酸窒化膜が薄く形成されているため、IC=N/ICNおよびIC-N/ICNが0.1未満となり、界面準位密度が1×1011cm-2eV-1と低くなっている。
実施例のようにIC=N/ICNおよびIC-N/ICNを0.1未満とすることで、界面準位密度を低くすることができる。また、C=N構造およびC-N構造が少ないほどよいため、N1sスペクトル面積に対するCNピーク面積比が10%未満であることが好ましい。実施例、比較例1、2にはないが、IC=N/ICNおよびIC-N/ICNが0.1未満で、N1sスペクトル面積に対するCNピーク面積比が10%以上の場合でも、C=N構造およびC-N構造が少ないため、界面準位密度は低くなっている。
以上、説明したように、実施の形態によれば、赤外分光法(IR)で測定したスペクトルにおいて、ピーク強度ICNに対するピーク強度IC=Nの比IC=N/ICNおよびピーク強度ICNに対するピーク強度IC-Nの比IC-N/ICNが0.1未満となっている。炭化珪素のバンドギャップ中に準位を形成するC=N構造およびC-N構造が少なくなっているため、実施の形態では、ゲート絶縁膜と炭化珪素半導体との界面の界面準位密度を低減させることができる。
以上において本発明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であり、上述した各実施の形態において、例えば各部の寸法や不純物濃度等は要求される仕様等に応じて種々設定される。また、各実施の形態では第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としたが、本発明は第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としても同様に成り立つ。
また、本発明は、炭化珪素基板の主面に設けた熱酸化膜をゲート絶縁膜とするMOSゲートを備えた様々な構造の炭化珪素半導体装置に適用可能である。例えば、本発明は、MOSFETやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)等のMOS型炭化珪素半導体装置に適用可能であり、その構造は縦型、横型、プレーナゲート構造およびトレンチゲート構造のいずれであってもよい。
以上のように、本発明にかかる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法は、MOS型炭化珪素半導体装置に有用である。
1 n+型炭化珪素基板
2 n-型炭化珪素エピタキシャル層
3 第1p+型ベース領域
4 第2p+型ベース領域
5 n型高濃度領域
6 p型ベース層
7 n+型ソース領域
8 p+型コンタクト領域
9 ゲート絶縁膜
10 ゲート電極
11 層間絶縁膜
12 ソース電極
13 裏面電極
14 バリアメタル
16 トレンチ
17 n+型領域
18 炭化珪素半導体基体
20 炭化珪素基板
30 酸窒化膜
40 堆積酸化膜
50 Al電極
60 窒素終端層
70 トレンチ型MOSFET

Claims (7)

  1. 炭化珪素からなる半導体基板と、
    前記半導体基板に接するゲート絶縁膜と、
    前記ゲート絶縁膜に沿って設けられ、前記ゲート絶縁膜を介して前記半導体基板と対向するゲート電極と、
    を備え、
    前記ゲート電極が除去された前記ゲート絶縁膜の表面を、赤外分光法(IR)で測定したスペクトルにおいてC≡Nのピーク強度ICNに対するC=N、C-Nそれぞれのピーク強度IC=N、IC-Nの比がIC=N/ICN<0.1、かつ、IC-N/ICN<0.1である
    ことを特徴とする炭化珪素半導体装置。
  2. 前記ゲート電極が除去された前記ゲート絶縁膜の表面を、光電子分光法(XPS)で測定した際のN1sスペクトルのうち、CNに起因するピークの面積がN1sスペクトル面積全体の10%未満であることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
  3. 前記ゲート絶縁膜が接する前記半導体基板の面は、m面であることを特徴とする請求項1または2に記載の炭化珪素半導体装置。
  4. 前記ゲート絶縁膜は、前記半導体基板上に設けられた第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に設けられた第2絶縁膜とからなり、
    前記第1絶縁膜は、酸窒化膜であり、
    前記第2絶縁膜は、堆積酸化膜であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の炭化珪素半導体装置。
  5. 前記第1絶縁膜は、前記半導体基板上から3nm以下の厚さであることを特徴とする請求項4に記載の炭化珪素半導体装置。
  6. 炭化珪素からなる半導体基板と、前記半導体基板に接するゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜に沿って設けられ、前記ゲート絶縁膜を介して前記半導体基板と対向するゲート電
    極と、を備える炭化珪素半導体装置の製造方法において、
    前記ゲート絶縁膜を形成する工程は、
    前記半導体基板上に熱酸窒化により第1絶縁膜を形成する第1工程と、
    前記第1絶縁膜上に堆積により第2絶縁膜を形成する第2工程と、
    を含み、
    前記第1工程では、前記第1絶縁膜を、一酸化窒素を100Torr未満の圧力で含む酸窒化雰囲気で熱酸窒化を行って形成することを特徴とする炭化珪素半導体装置の製造方法。
  7. 前記第1工程では、前記第1絶縁膜を、前記一酸化窒素を50Torr未満の圧力で形成することを特徴とする請求項6に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法
JP2019119419A 2019-06-27 2019-06-27 炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法 Active JP7379883B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019119419A JP7379883B2 (ja) 2019-06-27 2019-06-27 炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019119419A JP7379883B2 (ja) 2019-06-27 2019-06-27 炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021005663A JP2021005663A (ja) 2021-01-14
JP7379883B2 true JP7379883B2 (ja) 2023-11-15

Family

ID=74097310

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019119419A Active JP7379883B2 (ja) 2019-06-27 2019-06-27 炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7379883B2 (ja)

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006156478A (ja) 2004-11-25 2006-06-15 Mitsubishi Electric Corp 炭化珪素半導体装置およびその製造方法
JP2011091186A (ja) 2009-10-22 2011-05-06 Mitsubishi Electric Corp 炭化珪素半導体装置の製造方法
JP2018098288A (ja) 2016-12-09 2018-06-21 ルネサスエレクトロニクス株式会社 半導体装置およびその製造方法
JP2018186140A (ja) 2017-04-24 2018-11-22 富士電機株式会社 炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法
JP2019050294A (ja) 2017-09-11 2019-03-28 株式会社豊田中央研究所 炭化珪素半導体装置

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006156478A (ja) 2004-11-25 2006-06-15 Mitsubishi Electric Corp 炭化珪素半導体装置およびその製造方法
JP2011091186A (ja) 2009-10-22 2011-05-06 Mitsubishi Electric Corp 炭化珪素半導体装置の製造方法
JP2018098288A (ja) 2016-12-09 2018-06-21 ルネサスエレクトロニクス株式会社 半導体装置およびその製造方法
JP2018186140A (ja) 2017-04-24 2018-11-22 富士電機株式会社 炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法
JP2019050294A (ja) 2017-09-11 2019-03-28 株式会社豊田中央研究所 炭化珪素半導体装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2021005663A (ja) 2021-01-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5525940B2 (ja) 半導体装置および半導体装置の製造方法
US10062759B2 (en) Silicon carbide semiconductor device and method for manufacturing same
US9947527B2 (en) Method of manufacturing semiconductor device
US9922822B2 (en) Silicon carbide semiconductor device and manufacturing method of silicon carbide semiconductor device
JP4965576B2 (ja) 半導体装置及びその製造方法
US20180308937A1 (en) Silicon carbide semiconductor device and method of manufacturing silicon carbide semiconductor device
WO2014068813A1 (ja) 半導体装置
US20120193643A1 (en) Semiconductor device
JP2012164707A (ja) 半導体装置およびその製造方法
JP2006066439A (ja) 半導体装置およびその製造方法
JP2022190166A (ja) 半導体装置およびその製造方法
JP6432232B2 (ja) 炭化ケイ素半導体装置および炭化ケイ素半導体装置の製造方法
US10186596B2 (en) Silicon carbide (SiC) MOSFET with a silicon oxide layer capable of suppressing deterioration of carrier mobility and variation in threshold voltage
US10256323B2 (en) Method of manufacturing semiconductor device including an n type semiconductor region formed in a p type semiconductor layer
JP6988140B2 (ja) 炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法
JP6991476B2 (ja) 半導体装置
JP2016201500A (ja) 炭化ケイ素mos型半導体装置およびその製造方法
JP7379883B2 (ja) 炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法
US11424325B2 (en) Silicon carbide semiconductor device and method of manufacturing silicon carbide semiconductor device
JP2021190666A (ja) 炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法
JP6582537B2 (ja) 半導体装置および半導体装置の製造方法
JP2021180222A (ja) 炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法
US11600702B2 (en) Silicon carbide semiconductor device and method of manufacturing silicon carbide semiconductor device
JP7304577B2 (ja) 絶縁ゲート型半導体装置及び絶縁ゲート型半導体装置の製造方法
US20210280677A1 (en) SiC WAFER AND MANUFACTURING METHOD THEREOF

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220516

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230516

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20230518

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230623

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20231003

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20231016

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7379883

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150