JP2021167448A - チタン合金棒材及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】Dwell疲労特性の良好なチタン合金棒材及びその製造方法を提供する。【解決手段】α+β型チタン合金からなるチタン合金棒材であり、隣接するα粒のc軸間の方位差が20゜以下であるα粒の集合体をマイクロテクスチャとした場合、前記マイクロテクスチャの最大円相当径が100μm以下である、チタン合金棒材を採用する。【選択図】なし

Description

本発明は、チタン合金棒材及びその製造方法に関する。
チタン合金は、軽量高強度の材料として、航空機、自動車、ゴルフクラブ等の民生品などの分野で使用されている。チタン合金の中で汎用的に使われる合金は、主としてα相とβ相から構成される、Ti−6Al−4V、Ti−6Al−2Sn−4Zr−2Mo、Ti−5Al−1Fe合金などが知られている。
特に航空機エンジン分野では、最近になって、台形波型の負荷サイクルに代表される、降伏応力に近い応力が作用する高負荷状態が一定時間継続する疲労(Dwell疲労)が必要とされ、疲労特性の向上が課題となっている。
Dwell疲労は、高負荷状態が継続することがない三角波あるいは正弦波の負荷サイクルの場合と比較して、少ないサイクル数で破断に至るため、特に、飛行毎の点検を行い、高い信頼性が必要とされる航空機のジェットエンジン部品で使用される場合に課題になる。また、一般的な自動車などにおいても、最近の環境問題にも対応するエンジンの燃焼効率向上を主たる一因として、燃焼圧は高まる傾向にある。
非特許文献1〜3のように、Dwell疲労では、三角波あるいは正弦波の負荷サイクルの場合と異なる破壊機構が知られている。これらの文献によると、c軸の傾きが45°付近のα粒(S)と、c軸が応力方向に対し垂直に近い方位のα粒(H)が隣接する場合、H粒に応力が集中して応力軸に垂直なファセット状破面が生じ、早期に疲労破壊の起点が形成される。また、このファセットは稠密六方晶の底面とほぼ平行である。
特許文献1(特開2016−199796号公報)では、優れた疲労特性を有するチタン合金棒材およびその製造方法が開示されている。特許文献1では、初析α粒のうち、稠密六方構造のc軸方向とチタン合金棒材の長さ方向とのなす角度(c軸の傾き)が25°以上55°以下で、かつ円相当直径が20μm以上である初析α粒の金属組織中の面積率が2.0%以下であることが述べられている。これは特許文献1の段落0020に記載の、「稠密六方晶の底面すべりは、結晶方位(図2においては符号「θ」で示す。)が45°に近いほど生じやすく、結晶方位が25°以上55°以下であると活発になる。また、金属組織に含まれる等軸状の初析α粒の大きさが大きいほど、試験片に付与される応力が集中しやすく、円相当直径が20μm以上であると応力の集中が顕著となる。したがって、c軸の傾きが25°以上55°以下で、かつ円相当直径が20μm以上の初析α粒は、稠密六方晶の底面すべりが生じやすく、しかも応力が集中しやすいため、疲労寿命が短くなったと考えられる。」との技術思想に基づくものであり、通常の疲労破壊の機構として妥当なものである。
一方、非特許文献1〜3に説明されているように、Dwell疲労では、異なる破壊機構が知られている。これらの文献によると、応力方向に対するc軸の傾きが45°付近のα粒(S)と、傾きが0°付近のα粒(H)が隣接する場合、H粒に応力が集中して応力軸に垂直なファセット状破面が生じるとされる。また、このファセットは稠密六方晶の底面とほぼ平行であることが、別の研究により知られている。
特許文献1には、Dwell疲労について何の言及もされていない。
特許文献2(特表2009−531546号公報)には、Dwell疲労に対する抵抗力を改善する技術が開示されている。ここでは、TA6Zr4DE(Ti−6Al−2Sn−4Zr−2Mo)合金において、β変態点−20〜−15℃の温度で4〜8時間の熱処理を施すことで、破断寿命が5500回から10000回に向上した。しかし、熱処理以前の工程はβ域におけるスタンピングのみであり、それ以前の加工熱処理工程は不明確であり、充分に微細なミクロ組織を形成することができず、Dwell疲労寿命の異方性に関する効果は不確実である。
特許文献3(特開2012−224935号公報)には、α相のc軸の特定方向に対する集積度が規定されたチタン合金ビレットが開示されている。しかし、疲労破壊の起点となるα相の粒径については言及されておらず、単に集積度を高めただけで疲労特性が改善されるものではない。
特許文献4(特開2014−65967号公報)には、α相のc軸の特定方向に対する集積度が規定されたチタン合金ビレットが開示されている。しかし、同特許文献は、疲労強度の向上を意図したものではないためその効果は得られず、また、c軸の集積方向は、本発明の形態とは異なっている。
特開2016−199796号公報 特表2009−531546号公報 特開2012−224935号公報 特開2014−65967号公報
M.R.Bache,"A review of dwell sensitive fatigue in titanium alloys:the role of microstructure,texture and operating conditions",International Journal of Fatigue 25 (2003) 1079−1087 V.Sinha,M.J.Mills,J.C.Williams,"Determination of crystallographic orientation of dwell−fatigue fracture facets in Ti−6242 alloy",J Mater Sci (2007) 42:8334−8341 Adam L.Pilchak,"Progress in Understanding the Fatigue Behavior of Ti Alloys",Materials Science Forum Vol.710,pp85−92
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、Dwell疲労特性の良好なチタン合金棒材及びその製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。なお、本発明において良好なDwell疲労特性とは、通常の正弦波あるいは三角波の疲労寿命に対するDwell疲労寿命の低下代が小さいことを意味する。
具体的に言えば、素材が細長く加工され、一方向に強い応力が付与され、高負荷状態が継続する用途、一例として、航空機ジェットエンジン部品であるファンブレードに最適なチタン合金棒材を工業的に安定生産できる。また、ここで言うDwell疲労の対象となる降伏応力に近い応力が作用する高負荷とは、(使用温度での)降伏応力の70%以上を意味する。また、その状態の継続とは、前記の高負荷が3s以上継続して作用するものを意味するものとする。
[1] α+β型チタン合金からなるチタン合金棒材であり、
隣接するα粒のc軸間の方位差が20゜以下であるα粒の集合体をマイクロテクスチャとした場合、
前記マイクロテクスチャの最大円相当径が100μm以下である、チタン合金棒材。
[2] 隣接するα粒のc軸間の方位差が20゜以下のα粒の集合体である前記マイクロテクスチャのうち、円相当径20〜100μmのマイクロテクスチャの最大アスペクト比が3.0超である、[1]に記載のチタン合金棒材。
[3] 前記チタン合金棒材の長手方向に平行な断面において、隣接するα粒のc軸間の方位差が20゜以下のα粒の集合体である前記マイクロテクスチャの面積率が10.0%以下である、[1]または[2]に記載のチタン合金棒材。
[4] 前記チタン合金棒材の長手方向に平行な断面において、前記α粒の面積率が30%以上であり、かつ前記α粒の平均円相当直径が20μm以下である、[1]乃至[3]の何れか一項に記載のチタン合金棒材。
[5] 化学成分が、Al:5.50〜6.75質量%、V:3.5〜4.5質量%、Fe:0.05〜0.40質量%、O:0.05〜0.25質量%を含有し、残部がTiおよび不純物からなる、[1]乃至[4]の何れか一項に記載のチタン合金棒材。
[6] 化学成分が、Al:5.50〜6.50質量%、Sn:1.75〜2.25質量%、Zr:3.5〜4.5質量%、Mo:1.8〜2.2質量%、Fe:0.02〜0.25質量%、O:0.02〜0.15質量%を含有し、残部がTiおよび不純物からなる、[1]乃至[4]の何れか一項に記載のチタン合金棒材。
[7] チタン合金鋳塊をβ単相域の温度に加熱し、総断面減少率が25%以上となる鍛造を行った後に冷却する第1の工程と、
α+β二相域の温度に加熱し、総断面減少率が80%以上となる鍛造を行い、その後、300℃以下まで冷却する第2の工程と、
α+β二相域の温度であって前記第2の工程の加熱温度以下の温度に加熱し、工程前後での断面減少率が35%以上となる複数回の鍛造を行い、その後、300℃以下まで冷却する第3の工程と、をこの順に行い、
前記第2の工程における鍛造は、前記チタン合金鋳塊の長手方向と直交する方向から一対の金敷による圧下を加えることで前記チタン合金鋳塊を長手向に伸ばす鍛伸加工とし、
前記第3の工程における前記鍛造は、前記チタン合金鋳塊を長手方向に送りつつ金敷によって長手圧下する加工であって、1回当たりの圧下量ΔHが5%以下、かつひずみ速度が1×10−1−1以下となるように圧下する鍛造であり、この鍛造を前記チタン合金鋳塊を長手方向に沿って複数回繰り返し行ってから、前記チタン合金鋳塊を長手周りに回転させて前記チタン合金鋳塊に対する圧下方向を変更する、
ことを特徴とする[1]乃[6]のいずれか一項に記載のチタン合金棒材の製造方法。
[8] 前記第1の工程と前記第2の工程との間に、前記チタン合金鋳塊をβ単相域の温度に加熱した後に急冷する熱処理工程を有することを特徴とする、[7]に記載のチタン合金棒材の製造方法。
本発明によれば、Dwell疲労特性の良好なチタン合金棒材及びその製造方法を提供できる。更に言えば、素材が細長く加工され、一方向に強い応力が付与され、高負荷状態が継続する用途、一例として、航空機ジェットエンジン部品であるファンブレードに最適なチタン合金棒材を提供でき、また、このようなチタン合金棒材を工業的に安定生産できる。
Dwell疲労特性の良好なα+β型チタン合金棒材を得るため、発明者らは多数の実験に基づき鋭意検討を行った。
Dwell疲労における寿命低下機構を調査した結果、同一の結晶方位を有する“複数の”α粒で構成される局所的な集合組織(マイクロテクスチャ)のサイズの増加に伴い、ファセット領域の寸法が大きくなり、き裂進展が促進され、Dwell疲労寿命が“大幅”に低下することを見出した。このようなマイクロテクスチャは、隣接するα粒のc軸間の方位差が20°以内である複数のα粒により形成される。このようなマイクロテクスチャは、板状もしくは針状のα粒で形成されるコロニーとは異なり、複数の加工工程を経て十分に等軸微細化されたα粒においても、複数のα粒からなるマイクロテクスチャが形成される。Dwell疲労による寿命低下を最小にするためには、このマイクロテクスチャを微細化することが有効であることを知見した。また、α粒のc軸が応力負荷方向に対して垂直になる比率(面積率)を低減させることで、Dwell疲労による寿命低下をより最小にできることも知見した。
そこで、Dwell疲労特性に優れるα+β型チタン合金棒材と、そのための手段となるマイクロテクスチャを微細化する製造方法について、更に詳細に鋭意検討し、明らかにした。
α+β型チタン合金は、低温ではhcp構造のα相、高温ではbcc構造のβ相を主体とする。α相からβ相へ相変態する温度をβ変態点(Tβ)という。α相は高温でも高い強度を維持し、β相は加工性に優れる。
α粒の大きさや結晶方位を制御するには、チタン合金の熱間加工中の金属組織変化挙動を把握することが重要である。一般に、チタン合金の鍛造工程において、β単相域に加熱することで、それ以前に存在するα相の結晶方位の偏りを軽減してランダム化する工程が組み込まれる。しかし、その後にα+β域で加工することにより、新たにα相のマイクロテクスチャが形成される。α+β域での加工後のチタン合金棒材の集合組織は、長手方向に対して垂直方向にα粒のc軸が集積したラウンド型集合組織が大部分であるが、一部に長手方向に伸長した形状があり、α粒のc軸がチタン合金棒材の長手方向にほぼ平行であるマイクロテクスチャが加工前後の結晶粒を超えて、単一ないし複数の結晶粒に渡って形成される。このようなマイクロテクスチャは、Dwell疲労寿命を低下させる。このようなマイクロテクスチャを分断し、細粒化するためには、α粒のc軸方位を回転させる底面すべりの活動を促進させることが重要である。
本発明においては、チタン合金鋳塊を断面減少率80%以上とする鍛造を行ってラウンド型集合組織とし、次いで、低温のα+β域において、低ひずみ、低ひずみ速度の鍛造を実施することで、チタン合金棒材の長手方向に伸長したマイクロテクスチャを分断し、微細化する。これにより、航空機エンジン部品に使用される素材に適したチタン合金棒材になる。
なお、チタン合金の分野では、隣り合うα相との結晶方位差が15°未満である、粒状α相の集合体をコロニーと称する場合がある。コロニーと本実施形態に係るマイクロテクスチャとは、次の点で異なる。すなわち、α相は六方最密充填構造をなしており、六方最密充填構造の結晶軸は3つ存在する。隣り合うα相同士の間で、六方最密充填構造の3つの結晶軸の方位差が全て15°未満である場合にはそのような粒状α相の集合体をコロニーと表現し、c軸のみ結晶方位差が20°未満である場合にはマイクロテクスチャと表現する。本実施形態に係るマイクロテクスチャの方位やサイズは、Dwell疲労特性に密接に関係する。
以下、本発明の実施形態であるチタン合金棒材について説明する。
本実施形態のチタン合金棒材は、例えば、25℃においてα相を主相としβ相を第2相とする金属組織を有するものがよい。すなわち、AMS4928で規定される成分で形成されていてもよい。つまり、Al:5.50〜6.75質量%、V:3.5〜4.5質量%、Fe:0.05〜0.40質量%、O:0.05〜0.25質量%を含有し、残部がTiおよび不純物であってもよい。不純物としては、例えば、N:0.08質量%以下、C:0.08質量%以下、H:0.015質量%以下を含有してもよい。
また、本実施形態のチタン合金棒材は、例えば、AMS4975で規定される成分で形成されていてもよい。つまり、Al:5.50〜6.50質量%、Sn:1.75〜2.25質量%、Zr:3.5〜4.5質量%、Mo:1.8〜2.2質量%、Fe:0.02〜0.25質量%、O:0.02〜0.15質量%を含有し、残部がTiおよび不純物であってもよい。不純物としては、例えば、Si:0.10質量%以下、N:0.08質量%以下、C:0.08質量%以下、H:0.015質量%以下を含有していてもよい。
本実施形態のチタン合金棒材の形状は、円柱状の棒材でもよく、多角形状の棒材でもよい。チタン合金棒材の長手方向に直交する断面は円の場合、真円であってもよいが、真円である必要はなく、おおよそ円形状であれば良い。多角形状の場合もおおよそ多角形であればよい。
一方で、鋳塊から棒材に製造されるまでの中間形態の形状については、長手方向に直交する断面形状は円形状に限定されず、四角形や八角形の多角形や、角が丸い多角形であってもよい。
次に、本実施形態のチタン合金棒材の結晶組織について説明する。本発明者らは、隣接するα粒のc軸間の方位差が20゜以下であるα粒の集合体であるマイクロテクスチャが金属組織中に存在した場合、マイクロテクスチャが粗大な結晶粒と同様に振る舞い、その結果、負荷が加わった場合にき裂発生の起点になるおそれがあることを見出した。本発明の最大の成果は、疲労破壊の起点として振舞うα粒のc軸の方位差のしきい値が20°であることを明らかにした点にある。当然ながら、方位差は、好ましくは、19°、更に好ましくは18°とも考えられる。しかし、20°がしきい値と推定され、20°までの変化率に比べた場合、実績値に大きな違いは認められない。
本実施形態のチタン合金棒材では、マイクロテクスチャを微細化し、かつ、その存在割合を低減させることがDwell疲労を改善するために有効であることを見出したものである。
そのため、本実施形態のチタン合金棒材は、隣接するα粒のc軸間の方位差が20゜以下であるα粒の集合体をマイクロテクスチャとした場合、マイクロテクスチャの最大円相当径が100μm以下である必要がある。マイクロテクスチャの最大円相当直径が100μm以下であれば、ファセット破面のサイズが減少し、Dwell疲労を改善することができる。マイクロテクスチャの最大円相当径が100μmを超えると、Dwell疲労が悪化するので好ましくない。好ましくは、98μm以下、更に好ましくは、95μm以下である。
また、Dwell疲労では、マイクロテクスチャの大きさに相当するファセット破面が同時多発的に形成されると、き裂発生および進展が促進され、寿命低下に至る。このため、マイクロテクスチャの面積率は小さいことが好ましい。本実施形態のチタン合金棒材は、チタン合金棒材の長手方向に平行な断面において、隣接するα粒のc軸間の方位差が20゜以下のα粒の集合体であるマイクロテクスチャの面積率が10.0%以下であることが好ましい。マイクロテクスチャの面積率を10.0%以下とすることで、疲労起点となる特定方位のマイクロテクスチャの存在割合が小さくなり、つまりは、ファセット破面が形成される頻度が減少し、Dwell疲労を改善することができる。マイクロテクスチャの面積率が10.0%を超えると、疲労破壊の起点が増加してしまい、Dwell疲労を改善することが困難になる。更に好ましくは、9.5%以下、最も好ましくは、9.0%以下である。
更に、一方向に特に強い応力が付与され、高負荷状態が継続する用途、一例として、航空機ジェットエンジン部品であるファンブレードへの適用を想定した場合、Dwell疲労をより改善するために、本実施形態のチタン合金棒材は、隣接するα粒のc軸間の方位差が20゜以下のα粒の集合体であるマイクロテクスチャのうち、円相当径20〜100μmのマイクロテクスチャの最大アスペクト比が3.0超であることが好ましい。更に好ましくは、3.3以上、最も好ましくは、3.6以上である。ここで、マイクロテクスチャのアスペクト比は、長手方向の寸法Lと、長手方向の直交方向の最大長さWとの比(L/W)である。Dwell疲労寿命は長手方向の直交方向の最大長さと相関関係がある。マイクロテクスチャのアスペクト比が3を超えると、長手方向の直交方向の最大長さが小さくなり、長手方向におけるDwell疲労を改善することができる。すなわち、特に強い応力が付与される方向と長手方向を同一にすることにより、Dwell疲労が改善される。なお、円相当径20μm未満のマイクロテクスチャは、円相当径が小さくDwell疲労への影響が少ないため、本実施形態では考慮しなくてよい。なお、ここで言う、一方向に特に強い応力が付与される高負荷状態とは、(使用温度での)降伏応力の80%以上を意味するものとする。
更に、本実施形態のチタン合金棒材は、その長手方向に平行な断面において、α粒の面積率が30%以上であり、かつα粒の平均円相当直径が20μm以下であることが好ましい。通常の疲労においてき裂発生の起点となりやすい比較的大きなα粒は、Dwell疲労においてもき裂発生の起点になりやすい。そのため、α粒の平均円相当直径は、20μm以下であることが好ましい。更に好ましくは、19.5μm以下、最も好ましくは、19.0μm以下である。また、本実施形態のチタン合金棒材は、その長手方向に平行な断面において、α粒の面積率が30%以上であることが好ましい。α粒の面積率を30%以上とすることで、本実施形態のチタン合金棒材を航空機のエンジン部品に適用した場合に、必要とされる強度を確保することが可能になる。更に好ましくは、40%以上、最も好ましくは、50%以上であると考える。
本実施形態のチタン合金棒材の結晶組織は、走査型電子顕微鏡(SEM)に付属するEBSD装置(電子線後方散乱回折;Electron Backscatter Diffraction)を用いて測定することができる。
まず、チタン合金棒材の長手方向中心部より、長手方向断面を観察面とする試験片を採取する。観察面における測定箇所は、断面が半径rの円形の試料について、表面からr/2の深さの位置とし、断面の辺長がdの矩形の試料についてはその辺長がなす表面からd/4の深さの位置とする。次に、試験片の観察面の測定箇所における、縦3mm横3mmの矩形の領域を視野とし、測定間隔は2.0μm、加速電圧15kVで、EBSDを用いて測定する。
得られた測定結果を、OIM(株式会社 TSLソリューションズ製の結晶方位解析ソフト)を用いて解析する。まず、α相のみを対象とするPartitonを作成し、解析の対象とする。
次に、隣り合うEBSD測定点の結晶方位の角度差(ミスオリエンテーション角)を15°以下としてα結晶粒を決定し、そのα結晶粒の測定点数から各α結晶粒の面積を求め、各α結晶粒の円相当直径を算出し、平均円相当径を求める。
また、得られた測定結果(オイラー角ph1,PH,ph2)から、隣り合うEBSD測定点のc軸方位差を求め、c軸方位差が20°以下としてマイクロテクスチャを決定し、マイクロテクスチャの面積率(Total Fraction)、最大円相当径、円相当径20〜100μmのマイクロテクスチャの最大アスペクト比を求める。なお、マイクロテクスチャは長手方向に最大長さとなるため、アスペクト比は長手方向の長さをその垂直方向の長さで除して求める。
次に、本実施形態のチタン合金棒材の製造方法について説明する。
本実施形態のチタン合金棒材は、所定の化学成分を有する上記チタン合金鋳塊を、β単相域の温度に加熱し、総断面減少率が25%以上となる鍛造を行った後に冷却する第1の工程と、α+β二相域の温度に加熱し、総断面減少率が80%以上となる鍛造を行い、その後、300℃以下まで冷却する第2の工程と、α+β二相域の温度であって第2の工程の加熱温度以下の温度に加熱し、第3の工程の前後での断面減少率が35%以上となる複数回の鍛造を行い、その後、300℃以下まで冷却する第3の工程と、をこの順に行う。ここで、第2の工程における鍛造は、チタン合金鋳塊の長手方向と直交する方向から一対の金敷による圧下を加えることでチタン合金鋳塊を長手向に伸ばす鍛伸加工とする。また、第3の工程における鍛造は、チタン合金鋳塊を長手方向に送りつつ金敷によって長手圧下する加工であって、1回当たりの圧下量ΔHが5%以下、かつひずみ速度が1×10−1−1以下となるように圧下する鍛造であり、この鍛造をチタン合金鋳塊を長手方向に沿って複数回繰り返し行ってから、チタン合金鋳塊を長手方向周りに回転させて前記チタン合金鋳塊に対する圧下方向を変更する。
また、本実施形態では、第1の工程と第2の工程との間に、チタン合金鋳塊をβ単相域の温度に加熱した後に急冷する熱処理工程を行ってもよい。
第1の工程では、マイクロテクスチャを細粒化させる目的で、β粒を細粒化させるために、β単相域において所定の条件で鍛造する。また、第2の工程では、α+β二相域の温度において所定の条件で鍛造することにより、ラウンド型集合組織と長手方向に伸長したマイクロテクスチャとを形成する。そして、第3の工程では、マイクロテクスチャの細粒化を行う。
以下、各工程について詳細に説明する。
(第1の工程)
第1の工程では、鍛造素材としてα+β型の化学成分を有するチタン合金鋳塊を用いる。チタン合金鋳塊をβ単相域の温度に加熱し、鍛造した後に冷却することで、鋳造組織を細粒化し、さらに結晶粒の粗大化を抑制する。β単相域の加熱は、加熱炉内の温度をβ変態点温度(Tβ)℃に対して、(Tβ)℃以上とすることが好ましく、(Tβ+50)℃以上、(Tβ+200)℃以下とすることがより好ましい。加熱炉内の温度が(Tβ+50)℃以上であると、加熱炉内に温度が不均一な部分があったり、チタン合金鋳塊が大きいものであったりしても、鋳塊全体が(Tβ)℃以上に加熱されるため好ましい。また、加熱炉内の温度が(Tβ+200)℃以下であると、チタン合金鋳塊の表層の酸化が抑制されるとともに、チタン合金鋳塊中の金属組織の粗大化が抑制されるため、高品質のチタン合金棒材が得られる。鋳造組織を細粒化し、さらに結晶粒の粗大化を抑制するため、第1の工程における総断面減少率を25%以上(鍛錬比1.5)とすることが好ましい。
また、第1の工程では、加工を終えた後に急冷することが好ましい。急冷は充分な冷却速度を得るために、十分な量の水に鍛造素材を浸漬することで行う水冷が一般的であるが、水冷相当以上の冷却速度が得られる他の手段を用いてもよい。急冷は鍛造素材の表面温度が300℃以下になるまで続けることが好ましい。第1の工程によって、β粒が細粒化される。
(第2の工程)
次に、第2の工程では、第1の工程を終えたチタン合金鋳塊をα+β二相域の温度に加熱し、鍛造した後に冷却する。加熱は、加熱炉内の温度をβ変態点温度(Tβ)℃に対して、(Tβ−70)℃以上、(Tβ)℃未満とすることが好ましい。加熱温度が(Tβ−70)℃以上であると、熱間加工を施す際の鍛造素材の変形抵抗が大きくなりすぎることを防止でき、容易に効率よく熱間加工を行うことができる。また、加熱炉内の温度が(Tβ)℃未満であると、鍛造素材の金属組織中にα結晶粒が十分に析出するため、粒成長が抑制されるとともに、α+β二相温度域で熱間加工を施すことによる効果が十分に得られる。
鍛造素材であるチタン合金鋳塊の表面温度は鍛造中に徐々に低下する。表面温度の低下により表面性状が悪化したり表面割れが生じやすくなったりする場合には、第2の工程の終了前に、鍛造を一旦中断し、再度、鍛造素材を加熱してから鍛造を行うことが好ましい。
第2の工程では、鍛造素材の長手方向とほぼ直交する方向から一対の金敷による圧下を加えて、鍛造素材を長手方向に伸ばす鍛造、すなわち、鍛伸加工を行う。第2の工程によって、チタン合金中のα粒のc軸が、棒材の長手方向に集積することを抑制する。
具体的には、鍛造素材の外周面の一部である被加工部位を金敷によって圧下した後、鍛造素材を長手方向に所定の送り量だけ相対移動させ、金敷に新たな被加工部位を対向させ、この新たな被加工部位に対して圧下を行う。この動作を、鍛造素材の長手方向一端から他端に向けて順次行い、必要に応じて掴み替えを行い、鍛造素材全体に対して鍛造を行う。この間、鍛造素材は長手方向に沿って金敷に対して相対的に送り出すのみであり、長手中心に回転させることはしない。これにより、鍛造素材の外周面の一部に対して圧下が行われる。この操作を、1回の鍛造という。
1回目の鍛造が終了したら、鍛造素材をその長手を中心にして回転させる。これにより、鍛造素材の外周面のうち、1回目の被加工部位とは別の被加工部位を金敷に向けさせる。次いで、2回目の鍛造を行う。たとえば、矩形断面の場合には90°の異なる方向から圧下し、八角形断面の場合には45°毎の方向から圧下を加えるとよい。
2回目の鍛伸加工が終了したら、3回目、4回目の鍛造を順次行う。鍛造の回数の上限は第2の工程前後での総断面減少率(鍛錬比)で制限する。チタン合金鋳塊に対する第2の工程前後での断面減少率が80%以上になるまで鍛造を繰り返す。総断面減少率を80%以上とすることで、チタン合金中のα粒のc軸を、棒材の長手方向に対して垂直方向に集積させる。80%未満では、c軸を特定方向に集積させることができない、さらに、α結晶粒の大きさを微細化することができなくなり、疲労寿命が悪化する。
第2の工程において、α+β二相域の温度において所定の条件で鍛造することにより、一部の旧β粒内においてα粒が析出し、更に複数の旧β粒に含まれるα粒の集合体であるマイクロテクスチャが形成される。形成されたマイクロテクスチャが鍛造によってチタン合金鋳塊の長手方向に延伸して更に微細化され、マイクロテクスチャの微細等軸組織が形成される。
(第3の工程)
次に、第3の工程では、α+β二相域の温度であって第2の工程の加熱温度以下の温度に加熱し、総断面減少率が35%以上になるまで鍛造を行う。第3の工程において、チタン合金ビレットを加熱する加熱炉内の温度は、(Tβ−100)℃以上、第2の工程の加熱温度以下とすることが好ましい。加工発熱による温度上昇を加味すると、加熱温度の上限はβ変態点温度より20℃低い温度未満(Tβ−20)℃未満であることが好ましい。
第3の工程では、第2の工程の加熱温度以下の温度で鍛造を行うことで、鍛造素材を圧下方向から見た場合の幅方向への(0001)面方位の集積度をより高めさせ、長手方向への(0001)面方位の集積度を低下させ、同時に、(10−10)面方位の長手方向への集積度を上昇させる。
第3の工程における鍛造は、1回当たり、チタン合金鋳塊を圧下量ΔHが5%以下となるように、かつひずみ速度が1×10−1−1以下になるように設定する。さらに、第2の工程の鍛造と同様に、第3の工程前後での断面減少率が35%以上になるまで繰り返す。圧下量ΔHが5%以下となるように、かつひずみ速度が1×10−1−1以下になるように鍛造することで、チタン合金鋳塊中のマイクロテクスチャを細粒化させる。また、総断面減少率を35%以上とすることで、チタン合金鋳塊中のマイクロテクスチャをさらに細粒化させる。
第3の工程においても、チタン合金鋳塊の温度が鍛造中に徐々に低下するため、表面性状が悪化したり表面割れが生じやすくなったりする場合には、第3の工程の終了前に、鍛造を一旦中断し、再度、チタン合金ビレットを加熱してから鍛造することが好ましい。
圧下量ΔHが5%以下、かつひずみ速度が1×10−1−1以下になるように鍛造することで、マイクロテクスチャにおいて十分に底面すべりを生じさせる。その結果、c軸の方位回転が生じ、c軸の分断、つまりはマイクロテクスチャの分断が生じる。さらに、同一箇所を高温保持することで、回復が生じ、再加工時においても底面すべりが優先して活動するようになり、マイクロテクスチャの分断に有利になる。
第1の工程と第2の工程との間において、チタン合金鋳塊をβ単相域の温度に加熱した後に急冷する熱処理工程を行ってもよい。熱処理を行うことによって再結晶を生じさせることで、鋳造組織の細粒化し、さらに結晶粒の粗大化抑制にさらに効果が期待できる。急冷は充分な冷却速度を得るために、十分な量の水に鍛造素材を浸漬することで行う水冷が一般的であるが、水冷相当以上の冷却速度が得られる他の手段を用いてもよい。急冷は鍛造素材の表面温度が300℃以下になるまで続けることが好ましい。さらに、平均冷却速度は、1℃/s以上であることが好ましい。なお、水冷は、第1の工程の直後に迅速に実施することが望ましいが、工業的には圧延終了後5分以内に実施すればよい。
以上説明したように、本実施形態のチタン合金棒材によれば、Dwell疲労特性を向上させることができる。
また、本実施形態のチタン合金棒材の製造方法によれば、第1の工程、第2の工程及び第3の工程を順次行うことで、Dwell疲労特性に優れたチタン合金棒材を工業的に安定製造できる。
本実施形態のチタン合金棒材は、例えば、航空機エンジンのファンブレードの素材として好適に用いることができる。すなわち、本実施形態のチタン合金棒材に対して更に加工を施してファンブレードとすることで、Dwell疲労特性に優れたファンブレードとすることができる。
次に、本発明の実施例について説明する。
以下に示す方法によりチタン合金棒材を製造し、評価した。
(第1の工程)
溶解して得られた、表1に示す組成および形状を有するチタン合金鋳塊を、β変態温度以上に加熱した加熱炉内でβ単相温度域に加熱した後、加熱炉から取り出し、表2に示す断面減少率になるまで鍛造した。表1に示すチタン合金鋳塊のβ変態点温度は995℃〜1000℃の範囲であった。なお、表1のチタン合金鋳塊の形状の欄において、例えば、「ψ750」は、断面形状が直径750mmの円形状であることを意味する。
鍛造は、鍛造素材であるチタン合金鋳塊の外周面の一部である被加工部位を金敷によって圧下した後、鍛造素材を長手方向に所定の送り量だけ相対移動させ、金敷に新たな被加工部位を対向させ、この新たな被加工部位に対して圧下を行った。この動作を、鍛造素材の長手方向一端から他端に向けて順次行い、必要に応じて掴み替えを行い、鍛造素材全体に対して鍛造を行った。この間、鍛造素材は長手方向に沿って金敷に対して相対的に送り出すのみであり、長手中心に回転させることはしなかった。以上の操作を1回の鍛造とし、鍛造を1回行う毎に鍛造素材を長手回りに回転させることで鍛造時の圧下方向を各回で変更させた。このようにして、第1工程において表2に示す断面減少率になるまで、1回以上の鍛造を行った。
第1の工程での加熱温度は、970℃〜1150℃の温度範囲であった。また、第1工程の後は、鍛造素材の表面温度が少なくとも300℃を下回る温度になるまで空冷(放冷)した。
また、No.6では、第1の工程後に熱処理工程を実施した。熱処理工程では、鍛造素材をβ単相域の温度に加熱後に急冷した。急冷は、鍛造素材の表面温度が300℃以下になるまで続けた。平均冷却速度は、1℃/s以上とした。また、急冷は、鍛造後5分以内に実施した。
(第2の工程)
第1の工程を終えたチタン合金鋳塊(鍛造素材)を、表2に示す加熱温度の加熱炉内で加熱した後、表2に示す断面減少率になるまで鍛造した。
鍛造は、鍛造素材の外周面の一部である被加工部位を金敷によって圧下した後、鍛造素材を長手方向に所定の送り量だけ相対移動させ、金敷に新たな被加工部位を対向させ、この新たな被加工部位に対して圧下を行った。この動作を、鍛造素材の長手方向一端から他端に向けて順次行い、必要に応じて掴み替えを行い、鍛造素材全体に対して鍛造を行った。この間、鍛造素材は長手方向に沿って金敷に対して相対的に送り出すのみであり、長手中心に回転させることはしなかった。以上の操作を1回の鍛造とし、鍛造を1回行う毎に鍛造素材を長手回りに回転させることで鍛造時の圧下方向を各回で変更させた。このようにして、第2工程において表2に示す断面減少率になるまで、加熱炉での加熱と鍛造とを複数回繰り返し行った。
第2の工程での加熱温度は、900℃〜970℃の温度範囲であった。また、第2工程の後は、鍛造素材の表面温度が少なくとも300℃を下回る温度になるまで空冷(放冷)した。
(第3の工程)
第2の工程で得た鍛造素材を、表2に示す加熱温度の加熱炉内で加熱した後、加熱炉から取り出して鍛造した。鍛造は、表2に示す圧下量ならびにひずみ速度(最大ストローク速度)にて鍛造素材の外周面の一部である被加工部位を金敷によって圧下した後、鍛造素材を長手方向に所定の送り量だけ相対移動させ、金敷に新たな被加工部位を対向させ、この新たな被加工部位に対して圧下を行った。この動作を、鍛造素材の長手方向一端から他端に向けて順次行い、必要に応じて掴み替えを行い、鍛造素材全体に対して鍛造を行った。この間、鍛造素材は長手方向に沿って金敷に対して相対的に送り出すのみであり、長手中心に回転させることはしなかった。その後、表2に示す断面減少率になるまで、加熱炉での加熱と鍛造とを複数回繰り返して、断面形状が円形である鍛造素材を得た。また、鍛造を1回行う毎に鍛造素材を長手回りに回転させることで鍛造時の圧下方向を各回毎に変更させた。
第3の工程での加熱温度は、930℃〜970℃の温度範囲であった。また、第3工程の後は、インゴット表面温度が少なくとも300℃を下回る温度になるまで空冷(放冷)した。
(結晶組織の測定)
得られたチタン合金棒材の結晶組織の測定を、SEMに付属するEBSD装置を用いて測定した。
まず、チタン合金棒材の長手方向中心部より、長手方向断面を観察面とする試験片を採取した。観察面における測定箇所は、断面が半径rの円形の試料について、表面からr/2の深さの位置とした。次に、試験片の観察面の測定箇所における、縦3mm横3mmの矩形の領域を視野とし、測定間隔は2.0μm、加速電圧15kVで、EBSDを用いて測定した。
得られた測定結果を、OIM(株式会社 TSLソリューションズ製の結晶方位解析ソフト)を用いて解析した。まず、α相のみを対象とするPartitonを作成し、解析の対象とした。
次に、隣り合うEBSD測定点の結晶方位の角度差(ミスオリエンテーション角)を15°以下としてα結晶粒を決定し、そのα結晶粒の測定点数から各α結晶粒の面積を求め、各α結晶粒の円相当直径を算出し、平均円相当径を求めた。
また、得られた測定結果(オイラー角ph1,PH,ph2)から、隣り合うEBSD測定点のc軸方位差を求め、c軸方位差が20°以下としてマイクロテクスチャを決定し、マイクロテクスチャの面積率(Total Fraction)、最大円相当径、円相当径20〜100μmのマイクロテクスチャの最大アスペクト比を求めた。なお、マイクロテクスチャは長手方向に最大長さとなるため、アスペクト比は長手方向の長さをその垂直方向の長さで除して求めた。
(疲労特性)
また、得られたチタン合金棒材のDwell疲労特性を測定した。
試験片として、チタン合金棒材の長手方向が長手方向となるように引張試験片と疲労試験片を採取した。
引張試験の測定条件は以下の通りとした。
試験片形状:平行部φ5×30mm、ゲージ長さ25mm。
ひずみ速度:8.3×10−5−1
疲労試験の測定条件は以下の通りとした。
疲労試験片形状:平行部φ5.08mm×15.24mm、ゲージ長さ12mm。
疲労試験方法:軸力、片振り、応力比0.05。最大応力=同材料(同方向)の0.2%耐力の95%。
通常疲労:三角波、負荷1s、除荷1s。
Dwell疲労:台形波、負荷1s、保持120s、除荷1s。
通常疲労寿命をDwell疲労寿命で除した値をDwell debitとして、Dwell debitが2.0以下の場合を、Dwell疲労特性が良好とした。
表3に、α結晶粒の面積率および平均粒径、マイクロテクスチャの面積率、最大アスペクト比および最大円相当径Dwell debit=(通常疲労寿命)/(Dwell疲労寿命)を示す。本発明の範囲にある発明例例では、通常疲労寿命は16000回以上であり、Dwell疲労寿命は8000回以上であった。
表3に示すように、本発明の範囲にある発明例は、Dwell debitの値が2.0以下と小さく、通常の疲労特性に対するDwell疲労特性の低下代が小さくなっていることが分かる。一方、本発明の範囲外である比較例では、通常の疲労特性に対するDwell疲労特性の低下代が大きくなっていることが分かる。
Figure 2021167448
Figure 2021167448
Figure 2021167448

Claims (8)

  1. α+β型チタン合金からなるチタン合金棒材であり、
    隣接するα粒のc軸間の方位差が20゜以下であるα粒の集合体をマイクロテクスチャとした場合、
    前記マイクロテクスチャの最大円相当径が100μm以下である、チタン合金棒材。
  2. 隣接するα粒のc軸間の方位差が20゜以下のα粒の集合体である前記マイクロテクスチャのうち、円相当径20〜100μmのマイクロテクスチャの最大アスペクト比が3.0超である、請求項1に記載のチタン合金棒材。
  3. 前記チタン合金棒材の長手方向に平行な断面において、隣接するα粒のc軸間の方位差が20゜以下のα粒の集合体である前記マイクロテクスチャの面積率が10.0%以下である、請求項1または請求項2に記載のチタン合金棒材。
  4. 前記チタン合金棒材の長手方向に平行な断面において、前記α粒の面積率が30%以上であり、かつ前記α粒の平均円相当直径が20μm以下である、請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のチタン合金棒材。
  5. 化学成分が、Al:5.50〜6.75質量%、V:3.5〜4.5質量%、Fe:0.05〜0.40質量%、O:0.05〜0.25質量%を含有し、残部がTiおよび不純物からなる、請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のチタン合金棒材。
  6. 化学成分が、Al:5.50〜6.50質量%、Sn:1.75〜2.25質量%、Zr:3.5〜4.5質量%、Mo:1.8〜2.2質量%、Fe:0.02〜0.25質量%、O:0.02〜0.15質量%を含有し、残部がTiおよび不純物からなる、請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のチタン合金棒材。
  7. チタン合金鋳塊をβ単相域の温度に加熱し、総断面減少率が25%以上となる鍛造を行った後に冷却する第1の工程と、
    α+β二相域の温度に加熱し、総断面減少率が80%以上となる鍛造を行い、その後、300℃以下まで冷却する第2の工程と、
    α+β二相域の温度であって前記第2の工程の加熱温度以下の温度に加熱し、工程前後での断面減少率が35%以上となる複数回の鍛造を行い、その後、300℃以下まで冷却する第3の工程と、をこの順に行い、
    前記第2の工程における鍛造は、前記チタン合金鋳塊の長手方向と直交する方向から一対の金敷による圧下を加えることで前記チタン合金鋳塊を長手向に伸ばす鍛伸加工とし、
    前記第3の工程における前記鍛造は、前記チタン合金鋳塊を長手方向に送りつつ金敷によって長手圧下する加工であって、1回当たりの圧下量ΔHが5%以下、かつひずみ速度が1×10−1−1以下となるように圧下する鍛造であり、この鍛造を前記チタン合金鋳塊を長手方向に沿って複数回繰り返し行ってから、前記チタン合金鋳塊を長手周りに回転させて前記チタン合金鋳塊に対する圧下方向を変更する、
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のチタン合金棒材の製造方法。
  8. 前記第1の工程と前記第2の工程との間に、前記チタン合金鋳塊をβ単相域の温度に加熱した後に急冷する熱処理工程を有することを特徴とする、請求項7に記載のチタン合金棒材の製造方法。
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