JP2021165074A - 四輪駆動車両 - Google Patents
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Abstract
【課題】総駆動力に対する主駆動輪に伝達する駆動力の割合である主側配分率を調節可能な四輪駆動車両において、主駆動輪のスリップの発生を抑制しつつ、駆動力を増加できる四輪駆動車両の制御装置を提供する。【解決手段】四輪駆動車両10の総駆動力Ftに対する後輪16に伝達する駆動力Frの割合である後輪側配分率Xrが小さく、後輪側配分率Xrが大きいときに比べて後輪16にスリップが発生し難いときには、同じ模擬ギヤ段での低車速域における出力軸60の出力回転速度Noに対するエンジン12のエンジン回転速度Neの比であるトータル変速比γtvlが大きくされるため、後輪側配分率Xrが大きいときの後輪16にスリップが発生してしまうのを抑制しつつ、四輪駆動車両10の総駆動力Ftを増加させることができる。【選択図】図10
Description
本発明は、総駆動力に対する主駆動輪に伝達する駆動力の割合である主側配分率を調整可能な四輪駆動車両において、主駆動輪がスリップするのを抑制しつつ、四輪駆動車両の駆動力を向上できる技術に関する。
駆動源と、前記駆動源と出力回転部材との間の動力伝達経路に配置され、無段変速が可能な無段変速部とギヤ比が異なる複数のATギヤ段を成立させる有段変速部とが直列に配置されて成る自動変速機と、前記出力回転部材から主駆動輪および副駆動輪に駆動力を伝達可能で且つ前記出力回転部材から前記主駆動輪および前記副駆動輪に伝達する総駆動力に対する前記主駆動輪に伝達する駆動力の割合である主側配分率を調節可能な駆動力配分装置と、を備えた四輪駆動車両が知られている。特許文献1の車両がそれである。また、前記出力回転部材の回転速度に対する前記駆動源の回転速度の比が異なる複数の模擬ギヤ段のうち、変速条件に従って1つの模擬ギヤ段を成立させるように、前記無段変速部および前記有段変速部を制御する、所謂、模擬有段変速制御が知られている。
ところで、上述した四輪駆動車両において、前記模擬有段変速制御を行うに当たり、駆動力を高めるうえでは、低車速側の模擬ギヤ段での低車速域における出力回転部材の回転速度に対する駆動源の回転速度の比を大きくすればよいが、この比を大きくすると、車輪がスリップしやすくなり、特に、主側配分率が大きいときには、主駆動輪にスリップが発生する虞がある。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、総駆動力に対する主駆動輪に伝達する駆動力の割合である主側配分率を調節可能な四輪駆動車両において、主駆動輪のスリップの発生を抑制しつつ、駆動力を増加できる四輪駆動車両の制御装置を提供することにある。
第1発明の要旨とするところは、(a)駆動源と、前記駆動源と出力回転部材との間の動力伝達経路に配置され、無段変速部と有段変速部とが直列に連結されて構成される自動変速機と、前記出力回転部材から主駆動輪および副駆動輪に駆動力を伝達可能で且つ前記出力回転部材から前記主駆動輪および前記副駆動輪に伝達する総駆動力に対する前記主駆動輪に伝達する駆動力の割合である主側配分率を調節可能な駆動力配分装置と、制御装置とを、備えた四輪駆動車両であって、(b)前記制御装置は、前記出力回転部材の回転速度に対する前記駆動源の回転速度の比が異なる複数の模擬ギヤ段のうち、変速条件に従って1つの模擬ギヤ段を成立させるように、前記無段変速部および前記有段変速部を制御するとともに、少なくとも低車速側の模擬ギヤ段を成立させるに当たり、同じ模擬ギヤ段での少なくとも低車速域における前記出力回転部材の回転速度に対する前記駆動源の回転速度の比が、前記主側配分率が小さいときには、前記主側配分率が大きいときに比べて大きくなるように、前記無段変速部を制御することを特徴とする。
第2発明の要旨とするところは、第1発明の四輪駆動車両において、前記制御装置は、さらに、少なくとも低車速側の模擬ギヤ段を成立させるに当たり、同じ模擬ギヤ段での少なくとも低車速域における前記出力回転部材の回転速度に対する前記駆動源の回転速度の比が、運転者の加速要求量が大きいときには、加速要求量が小さいときに比べて大きくなるように、前記無段変速部を制御することを特徴とする。
第3発明の要旨とするところは、第1発明または第2発明の四輪駆動車両において、前記制御装置は、少なくとも低車速側の模擬ギヤ段を成立させるに当たり、同じ模擬ギヤ段での少なくとも低車速域における前記出力回転部材の回転速度に対する前記駆動源の回転速度の比が、前記主側配分率が予め設定されている所定値以下のときには、前記主側配分率が前記所定値よりも大きいときに比べて大きくなるように、前記無段変速部を制御することを特徴とする。
第4発明の要旨とするところは、第1発明から第3発明の何れか1の四輪駆動車両において、前記制御装置は、少なくとも低車速側の模擬ギヤ段を成立させるに当たり、前記主側配分率の目標値への変更が完了すると、同じ模擬ギヤ段での少なくとも低車速域における前記出力回転部材の回転速度に対する前記駆動源の回転速度の比の変更を開始することを特徴とする。
第5発明の要旨とするところは、第1発明から第4発明の何れか1の四輪駆動車両において、(a)前記無段変速部は、差動機構および回転機を含んで構成され、(b)前記差動機構は、前記駆動源に動力伝達可能に接続されている第1回転要素と、前記回転機に動力伝達可能に接続されている第2回転要素と、前記有段変速部に動力伝達可能に接続されている第3回転要素と、を備え、(c)前記制御装置は、前記回転機の回転速度を制御することにより、同じ模擬ギヤ段での前記出力回転部材の回転速度に対する前記駆動源の回転速度の比を変更することを特徴とする。
第1発明の四輪駆動車両によれば、主駆動輪および副駆動輪に伝達する総駆動力に対する主駆動輪に伝達する駆動力の割合である主側配分率が小さく、主側配分率が大きいときに比べて主駆動輪にスリップが発生し難いときには、少なくとも低車速側の模擬ギヤ段での少なくとも低車速域における出力回転部材の回転速度に対する駆動源の回転速度の比が大きくされるため、主側配分率が大きいときの主駆動輪にスリップが発生してしまうのを抑制しつつ、駆動力を増加させることができる。
第2発明の四輪駆動車両によれば、運転者の加速要求量が大きいときには、加速要求量が小さいときに比べて、出力回転部材の回転速度に対する駆動源の回転速度の比が大きくなるように無段変速部が制御されるため、運転者の加速要求量に応じた駆動力を発生させることができる。
第3発明の四輪駆動車両によれば、主側配分率が所定値以下のとき、主側配分率が所定値よりも大きいときに比べて、出力回転部材の回転速度に対する駆動源の回転速度比が大きくなるように、無段変速部が制御されるため、主駆動輪にスリップが発生するのを抑制しつつ、駆動力を増加させることができる。
第4発明の四輪駆動車両によれば、主側配分率の目標値への変更が完了すると、同じ模擬ギヤ段での少なくとも低車速域における前記出力回転部材の回転速度に対する前記駆動源の回転速度の比の変更が開始されるため、主側配分率の目標値への変更が完了する前に前記比の変更が開始される場合に比べて、安全に前記比を変更することができる。
第5発明の四輪駆動車両によれば、回転機の回転速度を制御することで、差動機構の差動作用によって駆動源の回転速度を変化させることができる。従って、回転機の回転速度を制御することにより、同じ模擬ギヤ段での出力回転部材の回転速度に対する駆動源の回転速度の比を変更することができる。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明が適用された四輪駆動車両10の概略構成を示すとともに、四輪駆動車両10の作動を制御する後述する電子制御装置120を含む制御系の概要を示している。
図1に示すように、四輪駆動車両10は、主駆動源としてのエンジン12と、左右一対の前輪14L、14Rと、左右一対の後輪16L、16Rと、エンジン12からの駆動力を前輪14L、14Rおよび後輪16L、16Rへそれぞれ伝達する動力伝達装置18と、電子制御装置120と、を備えている。後輪16L、16R(特に区別しない場合には後輪16と称す)は、二輪駆動走行中および四輪駆動走行中において共に駆動輪となる主駆動輪である。また、前輪14L、14R(特に区別しない場合には前輪14と称す)は、二輪駆動走行中において従動輪となり、四輪駆動走行中において駆動輪となる副駆動輪である。四輪駆動車両10は、前置エンジン後輪駆動(FR)をベースとする四輪駆動車である。なお、エンジン12が本発明の駆動源に対応し、後輪16が本発明の主駆動輪に対応し、前輪14が本発明の副駆動輪に対応している。
動力伝達装置18は、後述する第1回転機MG1および第2回転機MG2を含んで構成されるハイブリッド用のトランスミッション20と、トランスファ22と、フロントプロペラシャフト24およびリヤプロペラシャフト26と、前輪側差動歯車装置28(前輪側デファレンシャル装置)と、後輪側差動歯車装置30(後輪側デファレンシャル装置)と、左右一対の前輪車軸32L、32Rと、左右一対の後輪車軸34L、34R等と、を備えている。動力伝達装置18において、トランスミッション20を介して伝達されたエンジン12からの駆動力(動力)が、トランスファ22、リヤプロペラシャフト26、後輪側差動歯車装置30、後輪車軸34L、34R等を順次介して後輪16L、16Rへ伝達される。また、動力伝達装置18において、トランスファ22に伝達されたエンジン12からの駆動力の一部が前輪14L、14R側へ配分される場合、その配分された駆動力が、フロントプロペラシャフト24、前輪側差動歯車装置28、前輪車軸32L、32R等を順次介して前輪14L、14Rへ伝達される。なお、トランスミッション20が本発明の自動変速機に対応し、トランスファ22が本発明の駆動力配分装置に対応している。
エンジン12は、後述する電子制御装置120によって、電子スロットル弁、燃料噴射装置、点火装置等を含むエンジン制御装置36(図1参照)が制御されることによりエンジン12の出力トルクであるエンジントルクTeが制御される。
図2は、トランスミッション20の概略構成を示す骨子図である。トランスミッション20は、主駆動源であるエンジン12と出力回転部材として機能するトランスミッション20の出力軸60との間の動力伝達経路に配置され、後述する電気式無段変速部44と機械式有段変速部46とが直列に連結されて構成されている。
トランスミッション20は、第1回転機MG1および第2回転機MG2を備えている。第1回転機MG1および第2回転機MG2は、電動機(モータ)としての機能および発電機(ジェネレータ)としての機能を有する回転電気機械であって、所謂モータジェネレータである。第1回転機MG1および第2回転機MG2は、それぞれ四輪駆動車両10の走行用の駆動源となり得る。第1回転機MG1および第2回転機MG2は、それぞれ四輪駆動車両10に備えられたインバータ38(図1参照)を介して、四輪駆動車両10に備えられたバッテリ40(図1参照)に接続されている。第1回転機MG1および第2回転機MG2は、それぞれ電子制御装置120によってインバータ38が制御されることにより、第1回転機MG1の出力トルクであるMG1トルクTgおよび第2回転機MG2の出力トルクであるMG2トルクTmが制御される。回転機の出力トルクは、例えば正回転の場合、加速側となる正トルクでは力行トルクであり、減速側となる負トルクでは回生トルクである。バッテリ40は、第1回転機MG1および第2回転機MG2のそれぞれに対して電力を授受する蓄電装置である。第1回転機MG1および第2回転機MG2は、車体に取り付けられる非回転部材であるケース42内に設けられている。
トランスミッション20は、車体に取り付けられる非回転部材としてのケース42内において共通の回転軸線CL1上に直列に配設された、電気式無段変速部44および機械式有段変速部46等を備えている。電気式無段変速部44は、エンジン12と機械式有段変速部46との間の動力伝達経路に設けられている。電気式無段変速部44は、直接的に或いは図示しないダンパーなどを介して間接的にエンジン12に連結されている。
機械式有段変速部46は、電気式無段変速部44とトランスファ22との間の動力伝達経路に設けられている。機械式有段変速部46は、電気式無段変速部44の出力側に連結されている。トランスミッション20において、エンジン12や第2回転機MG2から出力される動力は、機械式有段変速部46へ伝達され、その機械式有段変速部46からトランスファ22に伝達される。以下、電気式無段変速部44を無段変速部44、機械式有段変速部46を有段変速部46という。なお、動力は、特に区別しない場合にはトルクや力も同意である。なお、無段変速部44および有段変速部46は、回転軸線CL1に対して略対称的に構成されており、図2ではその回転軸線CL1に対して下半分が省略されている。ここで、電気式無段変速部44が本発明の無段変速部に対応し、機械式有段変速部46が本発明の有段変速部に対応している。
無段変速部44は、第1回転機MG1と、エンジン12の動力を第1回転機MG1および無段変速部44の出力回転部材である中間伝達部材50に機械的に分割する動力分割機構としての差動機構52と、を含んで構成されている。中間伝達部材50には、第2回転機MG2が動力伝達可能に連結されている。第1回転機MG1は、エンジン12の動力が伝達される回転機である。無段変速部44は、第1回転機MG1の運転状態が制御されることにより差動機構52の差動状態が制御される電気式無段変速部である。無段変速部44は、入力回転部材となる連結軸48の回転速度と同値であるエンジン回転速度Neと、中間伝達部材50の回転速度であるMG2回転速度Nmとの比の値である変速比γ0(=Ne/Nm)が変化させられる電気的な無段変速部として作動させられる。第1回転機MG1は、差動機構52を介して、エンジン12の回転速度であるエンジン回転速度Neを制御可能な回転機である。なお、第1回転機MG1の運転状態を制御することは、第1回転機MG1の運転制御を行うことである。ここで、第1回転機MG1が本発明の回転機に対応している。
差動機構52は、シングルピニオン型の遊星歯車装置にて構成されており、サンギヤS0、キャリヤCA0、およびリングギヤR0を備えている。キャリヤCA0には連結軸48を介してエンジン12が動力伝達可能に接続され、サンギヤS0には第1回転機MG1が動力伝達可能に接続され、リングギヤR0には第2回転機MG2および有段変速部46が動力伝達可能に接続されている。差動機構52において、キャリヤCA0が入力要素(本発明の第1回転要素に対応)として機能し、サンギヤS0が反力要素(本発明の第2回転要素に対応)として機能し、リングギヤR0が出力要素(本発明の第3回転要素に対応)として機能する。
有段変速部46は、中間伝達部材50とトランスファ22との間の動力伝達経路を構成する有段式の変速機であり、走行用の駆動源であるエンジン12、第1回転機MG1、および第2回転機MG2と、前輪14および後輪16との間の動力伝達経路の一部を構成する自動変速機である。中間伝達部材50は、有段変速部46の入力軸としても機能する。また、中間伝達部材50には、第2回転機MG2が一体回転するように連結されている。有段変速部46は、例えば第1遊星歯車装置54および第2遊星歯車装置56の複数組の遊星歯車装置と、ワンウェイクラッチF1を含む、クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、ブレーキB2の複数の係合装置とを備えて構成される、公知の遊星歯車式の自動変速部である。以下、クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、及びブレーキB2については、特に区別しない場合は単に係合装置CBと称す。
係合装置CBは、油圧アクチュエータにより押圧される多板式或いは単板式のクラッチやブレーキ、油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成される、油圧式の摩擦係合装置である。係合装置CBは、四輪駆動車両10に備えられた油圧制御回路58(図1参照)から出力される調圧された係合装置CBの各油圧により、各々、係合や解放などの状態である作動状態が切り替えられる。
有段変速部46は、第1遊星歯車装置54および第2遊星歯車装置56の各回転要素が、直接的に或いは係合装置CBやワンウェイクラッチF1を介して間接的に連結されたり、中間伝達部材50、ケース42、或いは出力軸60に連結されている。第1遊星歯車装置54の各回転要素は、サンギヤS1、キャリヤCA1、リングギヤR1であり、第2遊星歯車装置56の各回転要素は、サンギヤS2、キャリヤCA2、リングギヤR2である。
有段変速部46は、複数の係合装置のうちの何れかの係合装置である所定の係合装置の係合によって、変速比(ギヤ比ともいう)γat(=入力回転速度Ni/出力回転速度No)が異なる複数のギヤ段(変速段ともいう)のうちの何れかの変速段が形成される有段変速部である。つまり、有段変速部46は、複数の係合装置が選択的に係合されることによって、ギヤ段が切り替えられる変速が実行される。有段変速部46は、変速条件に従って複数のギヤ段の各々が形成される、有段式の自動変速部である。
本実施例では、有段変速部46にて形成されるギヤ段をATギヤ段と称す。入力回転速度Niは、有段変速部46の入力軸の回転速度である有段変速部46の入力回転速度であって、中間伝達部材50の回転速度と同値であり、且つ、第2回転機MG2の回転速度であるMG2回転速度Nmと同値である。従って、入力回転速度Niを、MG2回転速度Nmで表すことができる。出力回転速度Noは、有段変速部46の出力回転部材である出力軸60の回転速度であって、無段変速部44と有段変速部46とを合わせたトランスミッション20の出力回転速度でもある。なお、出力軸60が本発明の出力回転部材に対応している。
有段変速部46は、例えば図3の係合作動表に示すように、複数のATギヤ段として、AT1速ギヤ段(図中の「1st」)−AT4速ギヤ段(図中の「4th」)の4段の前進用のATギヤ段が形成される。AT1速ギヤ段の変速比γatが最も大きく、ハイ側のATギヤ段ほど変速比γatが小さくなる。また、後進用のATギヤ段(図中の「Rev」)は、例えばクラッチC1の係合且つブレーキB2の係合によって形成される。つまり、後進走行を行う際には、例えばAT1速ギヤ段が形成される。図3の係合作動表は、各ATギヤ段と複数の係合装置の各作動状態との関係をまとめたものである。すなわち、図3の係合作動表は、各ATギヤ段と、各ATギヤ段において各々係合される係合装置である所定の係合装置との関係をまとめたものである。図3において、「○」は係合、「△」はエンジンブレーキ時や有段変速部46のコーストダウンシフト時に係合、空欄は解放をそれぞれ表している。
有段変速部46は、電子制御装置120(図1参照)によって、ドライバー(すなわち運転者)のアクセル操作や車速V等の走行条件に応じて、形成されるATギヤ段が切り替えられる、すなわち複数のATギヤ段が選択的に形成される。例えば、有段変速部46の変速制御においては、係合装置CBの何れかの掴み替えにより変速が実行される、すなわち係合装置CBの係合と解放との切替えにより変速が実行される、所謂クラッチツゥクラッチ変速が実行される。
図4は、無段変速部44と有段変速部46とにおける各回転要素の回転速度の相対的関係を表す共線図である。図4において、無段変速部44を構成する差動機構52の3つの回転要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第2回転要素RE2に対応するサンギヤS0の回転速度を表すg軸であり、第1回転要素RE1に対応するキャリヤCA0の回転速度を表すe軸であり、第3回転要素RE3に対応するリングギヤR0の回転速度(すなわち有段変速部46の入力回転速度)を表すm軸である。また、有段変速部46の4本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7は、左から順に、第4回転要素RE4に対応するサンギヤS2の回転速度、第5回転要素RE5に対応する相互に連結されたリングギヤR1およびキャリヤCA2の回転速度(すなわち出力軸60の回転速度)、第6回転要素RE6に対応する相互に連結されたキャリヤCA1およびリングギヤR2の回転速度、第7回転要素RE7に対応するサンギヤS1の回転速度をそれぞれ表す軸である。縦線Y1、Y2、Y3の相互の間隔は、差動機構52の歯車比ρ0に応じて定められている。また、縦線Y4、Y5、Y6、Y7の相互の間隔は、第1、第2遊星歯車装置54,56の各歯車比ρ1,ρ2に応じて定められている。共線図の縦軸間の関係においてサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔とされるとキャリヤとリングギヤとの間が遊星歯車装置の歯車比ρ(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)に対応する間隔とされる。
図4の共線図を用いて表現すれば、無段変速部44の差動機構52において、第1回転要素RE1にエンジン12(図中の「ENG」参照)が連結され、第2回転要素RE2に第1回転機MG1(図中の「MG1」参照)が連結され、中間伝達部材50と一体回転する第3回転要素RE3に第2回転機MG2(図中の「MG2」参照)が連結され、エンジン12の回転を中間伝達部材50を介して有段変速部46へ伝達するように構成されている。無段変速部44において、縦線Y2を横切る各直線L0e,L0m,L0Rにより、サンギヤS0の回転速度とリングギヤR0の回転速度との関係が示される。
また、有段変速部46において、第4回転要素RE4はクラッチC1を介して中間伝達部材50に選択的に連結され、第5回転要素RE5は出力軸60に連結され、第6回転要素RE6はクラッチC2を介して中間伝達部材50に選択的に連結されると共にブレーキB2を介してケース42に選択的に連結され、第7回転要素RE7はブレーキB1を介してケース42に選択的に連結される。有段変速部46では、係合装置CBの係合解放制御によって縦線Y5を横切る各直線L1,L2,L3,L4,LRにより、出力軸60における「1st」,「2nd」,「3rd」,「4th」,「Rev」の各回転速度が示される。
図4中の実線で示す、直線L0e、および直線L1,L2,L3,L4は、少なくともエンジン12を駆動源として走行するハイブリッド走行が可能なハイブリッド走行(=HV走行)モードでの前進走行における各回転要素の相対速度を示している。このハイブリッド走行モードでは、差動機構52において、キャリヤCA0に入力される正トルクのエンジントルクTeに対して、第1回転機MG1による負トルクの反力トルクとなるMG1トルクTgがサンギヤS0に入力されると、リングギヤR0には正回転にて正トルクとなるエンジン直達トルクTd(=Te/(1+ρ0)=−(1/ρ0)×Tg)が現れる。そして、要求駆動力に応じて、エンジン直達トルクTdとMG2トルクTmとの合算トルクが四輪駆動車両10の前進方向の駆動トルクとして、AT1速ギヤ段−AT4速ギヤ段のうちの何れかのATギヤ段が形成された有段変速部46を介してトランスファ22へ伝達される。第1回転機MG1は、正回転にて負トルクを発生する場合には発電機として機能する。第1回転機MG1の発電電力Wgは、バッテリ40に充電されたり、第2回転機MG2にて消費される。第2回転機MG2は、発電電力Wgの全部又は一部を用いて、或いは発電電力Wgに加えてバッテリ40からの電力を用いて、MG2トルクTmを出力する。
図4中の一点鎖線で示す直線L0mおよび図4中の実線で示す直線L1,L2,L3,L4は、エンジン12の運転を停止した状態で第1回転機MG1および第2回転機MG2のうちの少なくとも一方の回転機を駆動源として走行するモータ走行が可能なモータ走行(=EV走行)モードでの前進走行における各回転要素の相対速度を示している。モータ走行モードでの前進走行におけるモータ走行としては、例えば第2回転機MG2のみを駆動源として走行する単駆動モータ走行と、第1回転機MG1および第2回転機MG2を共に駆動源として走行する両駆動モータ走行とがある。単駆動モータ走行では、キャリヤCA0はゼロ回転とされ、リングギヤR0には正回転にて正トルクとなるMG2トルクTmが入力される。このとき、サンギヤS0に連結された第1回転機MG1は、無負荷状態とされて負回転にて空転させられる。単駆動モータ走行では、ワンウェイクラッチF0が解放されており、連結軸48はケース42に対して固定されていない。
両駆動モータ走行では、キャリヤCA0がゼロ回転とされた状態で、サンギヤS0に負回転にて負トルクとなるMG1トルクTgが入力されると、キャリヤCA0の負回転方向への回転が阻止されるようにワンウェイクラッチF0が自動係合される。ワンウェイクラッチF0の係合によってキャリヤCA0が回転不能に固定された状態においては、MG1トルクTgによる反力トルクがリングギヤR0へ入力される。加えて、両駆動モータ走行では、単駆動モータ走行と同様に、リングギヤR0にはMG2トルクTmが入力される。キャリヤCA0がゼロ回転とされた状態で、サンギヤS0に負回転にて負トルクとなるMG1トルクTgが入力されたとき、MG2トルクTmが入力されなければ、MG1トルクTgによる単駆動モータ走行も可能である。モータ走行モードでの前進走行では、エンジン12は駆動されず、エンジン回転速度Neはゼロとされ、MG1トルクTgおよびMG2トルクTmのうちの少なくとも一方のトルクが四輪駆動車両10の前進方向の駆動トルクとして、AT1速ギヤ段−AT4速ギヤ段のうちの何れかのATギヤ段が形成された有段変速部46を介して駆動輪(前輪14、後輪16)へ伝達される。モータ走行モードでの前進走行では、MG1トルクTgは負回転且つ負トルクの力行トルクであり、MG2トルクTmは正回転且つ正トルクの力行トルクである。
図4中の破線で示す、直線L0Rおよび直線LRは、モータ走行モードでの後進走行における各回転要素の相対速度を示している。このモータ走行モードでの後進走行では、リングギヤR0には負回転にて負トルクとなるMG2トルクTmが入力され、そのMG2トルクTmが四輪駆動車両10の後進方向の駆動トルクとして、AT1速ギヤ段が形成された有段変速部46を介して駆動輪(前輪14、後輪16)へ伝達される。四輪駆動車両10では、電子制御装置120によって、複数のATギヤ段のうちの前進用のロー側のATギヤ段である例えばAT1速ギヤ段が形成された状態で、前進走行時における前進用のMG2トルクTmとは正負が反対となる後進用のMG2トルクTmが第2回転機MG2から出力させられることで、後進走行を行うことができる。モータ走行モードでの後進走行では、MG2トルクTmは負回転且つ負トルクの力行トルクである。なお、ハイブリッド走行モードにおいても、直線L0Rのように第2回転機MG2を負回転とすることが可能であるので、モータ走行モードと同様に後進走行を行うことが可能である。
上述したように、動力伝達装置18は、エンジン12が動力伝達可能に連結された第1回転要素RE1としてのキャリヤCA0と、第1回転機MG1が動力伝達可能に連結された第2回転要素RE2としてのサンギヤS0と、中間伝達部材50が連結された第3回転要素RE3としてのリングギヤR0と、の3つの回転要素を有する差動機構52を備えて構成されている。また、無段変速部44では、第1回転機MG1の運転状態が制御されることにより、差動機構52の差動状態が制御される。また、中間伝達部材50が連結された第3回転要素RE3は、見方を換えれば、第2回転機MG2が動力伝達可能に連結された第3回転要素RE3である。つまり、動力伝達装置18において、エンジン12が動力伝達可能に連結された差動機構52と差動機構52に動力伝達可能に連結された第1回転機MG1とを有し、第1回転機MG1の運転状態(MG1回転速度Ng)が制御されることにより差動機構52の差動状態が制御される無段変速部44が構成される。無段変速部44は、第1回転機MG1のMG1回転速度Ngが制御されることで、入力回転部材となる連結軸48の回転速度と同値であるエンジン回転速度Neと、中間伝達部材50の回転速度であるMG2回転速度Nmとの比の値である変速比γ0(=Ne/Nm)が変化させられる、電気的な無段変速部として作動させられる。
例えば、ハイブリッド走行モードにおいては、有段変速部46にてATギヤ段が形成されたことで、車速Vに拘束されるリングギヤR0の回転速度に対して、第1回転機MG1のMG1回転速度Ngを制御することによってサンギヤS0の回転速度が上昇或いは下降させられると、キャリヤCA0の回転速度つまりエンジン回転速度Neが上昇或いは下降させられる。従って、ハイブリッド走行では、エンジン12を効率の良いエンジン動作点Pengにて作動させることができる。動作点は、回転速度とトルクとで表される運転点であり、エンジン動作点Pengは、エンジン回転速度NeとエンジントルクTeとで表されるエンジン12の運転点である。動力伝達装置18では、ATギヤ段が形成された有段変速部46と無段変速部として作動させられる無段変速部44とで、無段変速部44と有段変速部46とが直列に連結された自動変速機であるトランスミッション20が構成される。
また、無段変速部44を有段変速機のように変速させることもできる。従って、動力伝達装置18において、ATギヤ段が形成される有段変速部46と有段変速機のように変速させる無段変速部44とで、トランスミッション20全体として有段変速機のように変速させることができる。つまり、トランスミッション20において、出力回転速度Noに対するエンジン回転速度Neの比の値を表すトータル変速比γt(=Ne/No)が異なる複数のギヤ段を選択的に成立させるように、無段変速部44と有段変速部46とを制御することができる。本実施例では、トランスミッション20において成立させられるギヤ段を、模擬ギヤ段と称する。トータル変速比γtは、直列に配置された、無段変速部44と有段変速部46とで形成されるトランスミッション20全体の変速比であって、無段変速部44の変速比γ0と有段変速部46の変速比γatとを乗算した値(γt=γ0×γat)となる。
模擬ギヤ段は、例えば有段変速部46の各ATギヤ段と1又は複数種類の無段変速部44の変速比γ0との組合せによって、有段変速部46の各ATギヤ段に対してそれぞれ1又は複数種類を成立させるように割り当てられる。例えば、図5は、ギヤ段割当テーブルの一例である。図5において、トランスミッション20のアップシフトでは、AT1速ギヤ段(1st)に対して模擬1速ギヤ段(1thi)−模擬3速ギヤ段(3rdi)が成立させられ、AT2速ギヤ段(2nd)に対して模擬4速ギヤ段(4thi)−模擬6速ギヤ段(6thi)が成立させられ、AT3速ギヤ段(3rd)に対して模擬7速ギヤ段(7thi)−模擬9速ギヤ段(9thi)が成立させられ、AT4速ギヤ段(4th)に対して模擬10速ギヤ段(10thi)が成立させられるように予め定められている。また、トランスミッション20のダウンシフトでは、AT1速ギヤ段(1st)に対して模擬1速ギヤ段(1sti)−模擬2速ギヤ段(2ndi)が成立させられ、AT2速ギヤ段(2nd)に対して模擬3速ギヤ段(3rdi)−模擬5速ギヤ段(5thi)が成立させられ、AT3速ギヤ段(3rd)に対して模擬6速ギヤ段(6thi)−模擬8速ギヤ段(8thi)が成立させられ、AT4速ギヤ段(4th)に対して模擬9速ギヤ段(9thi)−模擬10速ギヤ段(10thi)が成立させられるように予め定められている。トランスミッション20では、出力回転速度Noに対して所定のトータル変速比γtを実現するエンジン回転速度Neとなるように無段変速部44が制御され、あるATギヤ段において異なる模擬ギヤ段が成立させられる。また、トランスミッション20では、ATギヤ段の切替えに合わせて無段変速部44が制御されることによって、模擬ギヤ段が切り替えられる。なお、図5では、アップシフトとダウンシフトとで、ATギヤ段に対して割り当てられる模擬ギヤ段が異なる場合がある一例を示したが、同じであっても良い。
次に、トランスファ22について説明する。トランスファ22は、トランスミッション20の出力軸60から伝達される駆動力を前輪14および後輪16に伝達可能であり、且つ、後述する前輪駆動用クラッチ76のトルク容量を調節することにより、前輪14および後輪16に伝達する総駆動力Ftに対する後輪16に伝達する駆動力Frの割合である後輪側配分率Xrを調節することができる。なお、トランスファ22が、本発明の駆動力配分装置に対応している。
図6は、トランスファ22の構造を説明するための骨子図である。トランスファ22は、非回転部材としてのトランスファケース70を備えている。トランスファ22は、トランスファケース70内において、後輪側出力軸72と、前輪駆動用ドライブギヤ74と、前輪駆動用クラッチ76と、を共通の回転軸線CL1を中心にして備えている。後輪側出力軸72は、有段変速部46の出力軸60に動力伝達可能に連結されているとともに、リヤプロペラシャフト26に動力伝達可能に連結されている。従って、後輪側出力軸72は、リヤプロペラシャフト26、後輪側差動歯車装置30、および左右一対の後輪車軸34を介して左右一対の後輪16に動力伝達可能に接続されている。トランスミッション20の出力軸60は、トランスファ22の入力軸としても機能する。前輪駆動用ドライブギヤ74は、後輪側出力軸72に対して相対回転可能に設けられている。前輪駆動用クラッチ76は、後輪側出力軸72と前輪駆動用ドライブギヤ74との間の動力伝達経路上に設けられている。前輪駆動用クラッチ76は、多板の湿式クラッチであり、後輪側出力軸72から前輪駆動用ドライブギヤ74へ伝達される伝達トルクを調節可能に設けられている。
前輪駆動用クラッチ76は、トルク容量を調節することにより、トランスミッション20の出力軸60から前輪14および後輪16に伝達する総駆動力Ftに対する後輪16に伝達する駆動力Frの割合である後輪側配分率Xrを調節することができる。後輪側配分率Xrは、前輪14に伝達される駆動力を駆動力Ff、後輪16に伝達される駆動力を駆動力Frとしたとき、前輪14および後輪16に伝達される総駆動力Ft(=Ff+Fr)に対する後輪16に伝達される駆動力Frの比(=Fr/Ft)に対応している。なお、後輪側配分率Xrが、本発明の主側配分率に対応している。
また、トランスファ22は、トランスファケース70内において、前輪側出力軸78と、前輪駆動用ドリブンギヤ80と、を共通の回転軸線CL2を中心にして備えている。さらに、トランスファ22は、前輪駆動用ドライブギヤ74と前輪駆動用ドリブンギヤ80との間を動力伝達可能に連結するための前輪駆動用アイドラギヤ82を備えている。前輪側出力軸78は、フロントプロペラシャフト24、前輪側差動歯車装置28、左右一対の前輪車軸32を介して、左右一対の前輪14に動力伝達可能に連結されている。前輪駆動用ドリブンギヤ80は、前輪側出力軸78に一体的に設けられている。前輪駆動用アイドラギヤ82は、前輪駆動用ドライブギヤ74および前輪駆動用ドリブンギヤ80にそれぞれ噛み合わされることで、前輪駆動用ドライブギヤ74と前輪駆動用ドリブンギヤ80との間を動力伝達可能に連結する。
前輪駆動用クラッチ76は、クラッチハブ84と、クラッチドラム86と、摩擦係合要素88と、ピストン90と、を備えている。クラッチハブ84は、後輪側出力軸72に相対回転不能に連結されている。クラッチドラム86は、前輪駆動用ドライブギヤ74に相対回転不能に連結されている。摩擦係合要素88は、クラッチハブ84に対して回転軸線CL1方向に相対移動可能且つクラッチハブ84に対して相対回転不能にスプライン嵌合された複数枚の第1摩擦板88aと、クラッチドラム86に対して回転軸線CL1方向に相対移動可能且つクラッチドラム86に対して相対回転不能にスプライン嵌合された複数枚の第2摩擦板88bと、を備えている。第1摩擦板88aと第2摩擦板88bとは、回転軸線CL1方向で交互に重なるようにして配置されている。ピストン90は、回転軸線CL1方向に移動可能に設けられ、摩擦係合要素88に当接して第1摩擦板88aおよび第2摩擦板88bを押圧することで、前輪駆動用クラッチ76のトルク容量が調整される。例えば、ピストン90が摩擦係合要素88を押圧しない場合には、前輪駆動用クラッチ76のトルク容量がゼロになる。また、ピストン90が摩擦係合要素88を押圧する場合には、ピストン90の押圧力に比例して前輪駆動用クラッチ76のトルク容量が増加する。
トランスファ22は、前輪駆動用クラッチ76のトルク容量を調節することで、トランスミッション20を介して伝達された駆動力Ftrを、後輪側出力軸72および前輪側出力軸78に配分する。例えば、トランスファ22において、前輪駆動用クラッチ76が解放されている場合には、後輪側出力軸72と前輪駆動用ドライブギヤ74との間の動力伝達経路が切断されるため、走行中の駆動源(エンジン12等)からトランスミッション20を介してトランスファ22に伝達された駆動力Ftrが、全て後輪側出力軸72に伝達され、さらに、リヤプロペラシャフト26等を介して後輪16へ伝達される。このとき、前輪14および後輪16に伝達する総駆動力Ftに対する後輪16に伝達する駆動力Frの割合である後輪側配分率Xrが1.0になる。すなわち、前輪14および後輪16に伝達される前後輪の駆動力配分が、0(前輪):100(後輪)になる。
また、トランスファ22において、前輪駆動用クラッチ76がスリップ係合状態または完全係合状態である場合には、前輪駆動用クラッチ76のトルク容量がゼロよりも大きいため、駆動源からトランスファ22を介して伝達された駆動力Ftrの一部が、フロントプロペラシャフト24等を介して前輪14に伝達されるとともに、駆動力の残部がリヤプロペラシャフト26等を介して後輪16に伝達される。このとき、後輪16に伝達される駆動力Frが総駆動力Ftよりも小さくなるため、後輪側配分率Xr(=Fr/Ft)が1.0よりも小さい値(0.5≦Xr<1.0)になる。なお、前輪駆動用クラッチ76が完全係合された場合には、前輪14に伝達される駆動力Ffと後輪16に伝達される駆動力Frとが等しく(Ff=Fr)なり、後輪側配分率Xrが0.5になる。すなわち、前輪14および後輪16に伝達される前後輪の駆動力配分が50:50となる。
トランスファ22は、前輪駆動用クラッチ76を作動させる装置として、電動モータ92と、電動モータ92によって回転させられるウォームホイール94と、電動モータ92の回転運動を直線運動に変換するねじ機構96と、を備えている。ウォームホイール94は、回転軸線CL1を中心にして回転可能に設けられている。
ねじ機構96は、後輪側出力軸72と同軸である回転軸線CL1上に配置されている。ねじ機構96は、ねじ軸部材98とナット部材100とを備えている。ナット部材100は、ウォームギヤ102を介して電動モータ92に動力伝達可能に接続されている。ウォームギヤ102は、電動モータ92のモータシャフトに一体的に設けられたウォーム104と、ナット部材100に一体的に設けられたウォームホイール94と、を備えた歯車対である。ナット部材100は、そのナット部材100が回転軸線CL1を中心にして回転すると、ねじ軸部材98に対して回転軸線CL1方向に相対移動するように、ねじ軸部材98に螺合されている。従って、ウォームギヤ102を介してナット部材100に伝達された電動モータ92の回転が、ナット部材100の回転軸線CL1方向の直線運動に変換される。
上記のように構成されることで、トランスファ22において、電動モータ92によってナット部材100が回転させられると、ナット部材100の回転運動が、ねじ機構96を介して回転軸線CL1方向への直線運動に変換され、さらに、ナット部材100の直線運動が、スラスト軸受を介してピストン90に伝達される。その結果、ピストン90が回転軸線CL1方向に移動させられることで、ピストン90が摩擦係合要素88を押圧する。このピストン90が摩擦係合要素88を押圧する押圧力が大きくなるほど、前輪駆動用クラッチ76のトルク容量が大きくなる。なお、前輪駆動用クラッチ76のトルク容量は、電動モータ92の回転角θmと略比例関係にあり、電動モータ92の回転角θmを調節することで、前輪駆動用クラッチ76のトルク容量が調節される。
上述したように、トランスファ22は、走行中の駆動源からの駆動力を主駆動輪である後輪16および副駆動輪である前輪14に伝達可能であって、且つ、前輪駆動用クラッチ76のトルク容量を調節することで、走行中の駆動源から後輪16および前輪14に伝達される総駆動力Ftに対する後輪16に伝達される駆動力Frの割合である後輪側配分率Xrを調節することができる。上述したように、ピストン90が摩擦係合要素88を押圧しない場合には、前輪駆動用クラッチ76のトルク容量がゼロになる。このとき、前輪駆動用クラッチ76が解放され、走行中の駆動源から前輪14および後輪16に伝達される総駆動力Ftに対する後輪16に伝達される駆動力Frの割合である後輪側配分率Xrが1.0になる。一方、ピストン90が摩擦係合要素88を押圧する場合には、前輪駆動用クラッチ76のトルク容量がゼロよりも大きくなり、前輪駆動用クラッチ76のトルク容量が増加するほど後輪側配分率Xrが低下する。そして、前輪駆動用クラッチ76が完全係合されるトルク容量になると、後輪側配分率Xrが0.5になる。なお、前輪駆動用クラッチ76が完全係合された状態では、前輪駆動用クラッチ76のトルク容量の増加に拘わらず、後輪側配分率Xrが0.5で維持される。
図1に戻り、四輪駆動車両10は、エンジン12、無段変速部44、および有段変速部46、トランスファ22などの制御に関連する四輪駆動車両10の制御装置を含むコントローラとしての電子制御装置120を備えている。図1は、電子制御装置120の入出力系を示す図でもあり、また、電子制御装置120による制御機能の要部を説明する機能ブロック図でもある。電子制御装置120は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより四輪駆動車両10の各種制御を実行する。電子制御装置120は、必要に応じてエンジン制御用、変速制御用、四輪駆動制御用等に分けて構成される。なお、電子制御装置120が、本発明の制御装置に対応している。
電子制御装置120には、四輪駆動車両10に備えられた各種センサ等(例えばエンジン回転速度センサ122、出力回転速度センサ124、MG1回転速度センサ126、MG2回転速度センサ128、各車輪(14L、14R、16L、16R)毎に設けられた車輪速センサ129、アクセル開度センサ130、スロットル弁開度センサ132、ブレーキペダルセンサ134、Gセンサ136、バッテリセンサ138、油温センサ140、シフトポジションセンサ142、ヨーレートセンサ144、ステアリングセンサ146など)による検出値に基づく各種信号等(例えばエンジン回転速度Ne、車速Vに対応する出力回転速度No、第1回転機MG1の回転速度であるMG1回転速度Ng、有段変速部46の入力軸(すなわち中間伝達部材50)の入力回転速度Niと同値である第2回転機MG2のMG2回転速度Nm、各車輪(14L、14R、16L、16R)の車輪速Nr、運転者の加速操作の大きさを表す運転者の加速操作量(すなわち加速要求量)としてのアクセル開度θacc、電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θth、ホイールブレーキを作動させるためのブレーキペダルの状態を示すブレーキオン信号Bon、四輪駆動車両10の前後および左右の加速度Gx、Gy、バッテリ40のバッテリ温度THbatやバッテリ充放電電流Ibatやバッテリ電圧Vbat、作動油の温度である作動油温THoil、四輪駆動車両10に備えられたシフトレバーの操作ポジションPOSsh、四輪駆動車両10の鉛直軸まわりの回転角速度であるヨーレートRyaw、四輪駆動車両10に備えられたステアリングホイールの操舵角θswなど)が、それぞれ供給される。
電子制御装置120からは、四輪駆動車両10に備えられた各装置(例えばエンジン制御装置36、インバータ38、油圧制御回路58、電動モータ92など)に各種指令信号(例えばエンジン12を制御するためのエンジン制御指令信号Se、第1回転機MG1および第2回転機MG2を各々制御するための回転機制御指令信号Smg、係合装置CBの作動状態を制御するための油圧制御指令信号Sat、電動モータ92を制御するための電動モータ制御指令信号Swなど)が、それぞれ出力される。油圧制御指令信号Satは、有段変速部46の変速を制御するための油圧制御指令信号でもあり、例えば係合装置CBの各々の油圧アクチュエータ(クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、ブレーキB2)へ供給される作動油の油圧を調圧する各ソレノイドバルブ等を駆動するための指令信号である。
電子制御装置120は、四輪駆動車両10における各種制御を実現するために、有段変速制御手段として機能する有段変速制御部152と、ハイブリッド制御手段として機能するハイブリッド制御部154と、四輪駆動制御手段として機能する四輪駆動制御部156と、を備えている。
有段変速制御部152は、予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された関係すなわち予め定められた関係である例えば図7に示すようなATギヤ段変速マップを用いて有段変速部46の変速判断を行い、必要に応じて有段変速部46の変速制御を実行するための油圧制御指令信号Satを油圧制御回路58へ出力する。上記ATギヤ段変速マップは、例えば車速Vおよび要求駆動力Fdemを変数とする二次元座標上に、有段変速部46の変速が判断されるための変速線を有する所定の関係である。ここでは、車速Vに代えて出力回転速度Noなどを用いても良い。また、要求駆動力Fdemに代えて、要求駆動トルクTrdem、アクセル開度θacc、またはスロットル弁開度θthなどを用いても良い。ATギヤ段変速マップにおける各変速線は、実線に示すようなアップシフトが判断されるためのアップシフト線、および破線に示すようなダウンシフトが判断されるためのダウンシフト線である。
ハイブリッド制御部154は、エンジン12の作動を制御するエンジン制御手段すなわちエンジン制御部としての機能と、インバータ38を介して第1回転機MG1および第2回転機MG2の作動を制御する回転機制御手段すなわち回転機制御部としての機能を含んでおり、それら制御機能によりエンジン12、第1回転機MG1、および第2回転機MG2によるハイブリッド駆動制御等を実行する。ハイブリッド制御部154は、予め定められた関係である例えば駆動要求量マップにアクセル開度θaccおよび車速Vを適用することで駆動要求量としての要求駆動力Fdemを算出する。前記駆動要求量としては、要求駆動力Fdem[N]の他に、各駆動輪(前輪14、後輪16)における要求駆動トルクTrdem[Nm]、各駆動輪における要求駆動パワーPrdem[W]、出力軸60における要求AT出力トルク等を用いることもできる。
ハイブリッド制御部154は、バッテリ40の充電可能電力Winや放電可能電力Wout等を考慮して、要求駆動トルクTrdemと車速Vとに基づく要求駆動パワーPrdemを実現するように、エンジン12を制御する指令信号であるエンジン制御指令信号Seと、第1回転機MG1および第2回転機MG2を制御する指令信号である回転機制御指令信号Smgとを出力する。エンジン制御指令信号Seは、例えばそのときのエンジン回転速度NeにおけるエンジントルクTeを出力するエンジン12のパワーであるエンジンパワーPeの指令値である。回転機制御指令信号Smgは、例えばエンジントルクTeの反力トルクとしての指令出力時のMG1回転速度NgにおけるMG1トルクTgを出力する第1回転機MG1の発電電力Wgの指令値であり、また、指令出力時のMG2回転速度NmにおけるMG2トルクTmを出力する第2回転機MG2の消費電力Wmの指令値である。
バッテリ40の充電可能電力Winは、バッテリ40の入力電力の制限を規定する入力可能電力であり、バッテリ40の放電可能電力Woutは、バッテリ40の出力電力の制限を規定する出力可能電力である。バッテリ40の充電可能電力Winおよび放電可能電力Woutは、例えばバッテリ温度THbatやバッテリ40の充電量に相当する充電状態値SOC[%]などに基づいて算出される。バッテリ40の充電状態値SOCは、バッテリ40の充電状態(充電量)を示す値であり、例えばバッテリ充放電電流Ibatおよびバッテリ電圧Vbatなどに基づいて算出される。
ハイブリッド制御部154は、例えば無段変速部44を無段変速機として作動させて無段変速部44と有段変速部46とが直列に配置されたトランスミッション20全体として無段変速機として作動させることができる。このとき、ハイブリッド制御部154は、エンジン最適燃費点等を考慮して、要求駆動パワーPrdemを実現するエンジンパワーPeが得られるエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとなるように、エンジン12を制御すると共に第1回転機MG1の発電電力Wgを制御することで、無段変速部44の無段変速制御を実行して無段変速部44の変速比γ0を変化させる。この制御の結果として、トランスミッション20を無段変速機として作動させる場合のトランスミッション20のトータル変速比γt(γt=γ0×γat)が制御される。
また、ハイブリッド制御部154は、例えば無段変速部44を有段変速機のように変速させてトランスミッション20全体として有段変速機のように変速させることができる。このとき、ハイブリッド制御部154は、予め定められた変速条件を規定する例えば模擬ギヤ段変速マップを用いてトランスミッション20の変速判断を行い、変速条件に従って有段変速制御部152による有段変速部46のATギヤ段の変速制御と協調して、トータル変速比γtの異なる複数の模擬ギヤ段のうちの1つを成立させるように無段変速部44の変速制御を実行する。複数の模擬ギヤ段は、それぞれのトータル変速比γtを維持できるように、出力回転速度Noに応じて第1回転機MG1のMG1回転速度Ngを制御し、エンジン回転速度Neを制御することによって成立させることができる。各模擬ギヤ段の出力回転速度Noに対するエンジン回転速度Neの比であるトータル変速比γtは、出力回転速度Noの全域に亘って必ずしも一定値である必要はなく、所定領域で変化させても良いし、各部の回転速度の上限や下限等によって制限が加えられても良い。なお、後述するように、本実施例では、同じ模擬ギヤ段の低車速域においてトータル変速比γtが変更されている。複数の模擬ギヤ段は、出力回転速度Noに応じてエンジン回転速度Neを制御するだけで良く、有段変速部46のATギヤ段の種類とは関係無く所定の模擬ギヤ段を成立させることができる。このように、ハイブリッド制御部154は、エンジン回転速度Neを有段変速のように変化させる変速制御が可能である。
上記模擬ギヤ段変速マップは、出力回転速度Noおよびアクセル開度θaccをパラメータとして予め定められている。図8は、模擬ギヤ段変速マップの一例であって、実線はアップシフト線であり、破線はダウンシフト線である。模擬ギヤ段変速マップに従って模擬ギヤ段が切り替えられることにより、無段変速部44と有段変速部46とが直列に配置されたトランスミッション20全体として有段変速機と同様の変速フィーリングが得られる。トランスミッション20全体として有段変速機のように変速させる模擬有段変速制御は、例えば運転者によってスポーツ走行モード等の走行性能重視の走行モードが選択された場合や要求駆動トルクTwdemが比較的大きい場合に、トランスミッション20全体として無段変速機として作動させる無段変速制御に優先して実行するだけでも良いが、所定の実行制限時を除いて基本的に模擬有段変速制御が実行されても良い。
ハイブリッド制御部154による模擬有段変速制御と、有段変速制御部152による有段変速部46の変速制御とは、協調して実行される。本実施例では、AT1速ギヤ段(1st)−AT4速ギヤ段(4th)の4種類のATギヤ段に対して、模擬1速ギヤ段(1sti)−模擬10速ギヤ段(10thi)の10種類の模擬ギヤ段が割り当てられている。そのため、模擬ギヤ段の変速タイミングと同じタイミングでATギヤ段の変速が行われるように、ATギヤ段変速マップが定められている。具体的には、図8における模擬ギヤ段の「3→4」、「6→7」、「9→10」の各アップシフト線は、ATギヤ段変速マップの「1→2」、「2→3」、「3→4」の各アップシフト線と一致している(図8中に記載した「AT1→2」等参照)。また、図8における模擬ギヤ段の「2←3」、「5←6」、「8←9」の各ダウンシフト線は、ATギヤ段変速マップの「1←2」、「2←3」、「3←4」の各ダウンシフト線と一致している(図8中に記載した「AT1←2」等参照)。ここで、図8の模擬ギヤ段変速マップによる模擬ギヤ段の変速判断に基づいて、ATギヤ段の変速指令を有段変速制御部152に対して出力するようにしても良い。このように、有段変速部46のアップシフト時は、トランスミッション20全体のアップシフトが行われる一方で、有段変速部46のダウンシフト時は、トランスミッション20全体のダウンシフトが行われる。有段変速制御部152は、有段変速部46のATギヤ段の切替えを、模擬ギヤ段が切り替えられるときに行う。模擬ギヤ段の変速タイミングと同じタイミングでATギヤ段の変速が行われることで、エンジン回転速度Neの変化を伴って有段変速部46の変速が行われるようになり、その有段変速部46の変速に伴うショックがあっても運転者に違和感を与え難くされる。
ハイブリッド制御部154は、走行モードとして、モータ走行モード又はハイブリッド走行モードを走行状態に応じて選択的に成立させる。例えば、ハイブリッド制御部154は、要求駆動パワーPrdemが予め定められた閾値よりも小さなモータ走行領域にある場合には、モータ走行モードを成立させる一方で、要求駆動パワーPrdemが予め定められた閾値以上となるハイブリッド走行領域にある場合には、ハイブリッド走行モードを成立させる。図7の一点鎖線Aは、四輪駆動車両10の走行用の駆動源を、少なくともエンジン12とするか、第2回転機MG2のみとするかを切り替えるための境界線である。すなわち、図7の一点鎖線Aは、ハイブリッド走行とモータ走行とを切り替えるためのハイブリッド走行領域とモータ走行領域との境界線である。この図7の一点鎖線Aに示すような境界線を有する予め定められた関係は、車速Vおよび要求駆動力Fdemを変数とする二次元座標で構成された駆動源切替マップの一例である。なお、図7では、便宜上、この駆動源切替マップをATギヤ段変速マップと共に示している。
ハイブリッド制御部154は、要求駆動パワーPrdemがモータ走行領域にあるときであっても、バッテリ40の充電状態値SOCが予め定められたエンジン始動閾値未満となる場合には、ハイブリッド走行モードを成立させる。前記エンジン始動閾値は、エンジン12を強制的に始動してバッテリ40を充電する必要がある充電状態値SOCであることを判断するための予め定められた閾値である。
ハイブリッド制御部154は、エンジン12の停止時にハイブリッド走行モードを成立させる場合には、エンジン12を始動する始動制御を行う。ハイブリッド制御部154は、エンジン12を始動するときには、第1回転機MG1によりエンジン回転速度Neを上昇させるとともに、エンジン回転速度Neが点火可能な所定回転速度以上になると点火することでエンジン12を始動させる。
四輪駆動制御部156は、走行中の駆動源から前輪14および後輪16に伝達される総駆動力Ftに対する後輪16に伝達される駆動力Frの割合である後輪側配分率Xrを1.0〜0.5の間で適宜調節する。四輪駆動制御部156は、車輪速センサ129、アクセル開度センサ130、Gセンサ136、ヨーレートセンサ144、ステアリングセンサ146などの各種センサによって検出される、四輪駆動車両10の走行状態に関連する各種走行状態関連値に基づいて後輪側配分率Xrの目標値Xrdemを随時設定し、後輪側配分率Xrが設定された目標値Xrdemとなるように、前輪駆動用クラッチ76のトルク容量を調節する。
四輪駆動制御部156は、例えば、各車輪速Nr、アクセル開度θacc、車両加速度Gx,Gy、ヨーレートRyayなどの走行状態に関連する各種走行状態関連値に基づいて、トランスファ22に伝達される駆動力Ftr(駆動トルク)に対する後輪側配分率Xrの目標値Xrdemを設定し、後輪側配分率Xrが設定された目標値Xrdemとなるように電動モータ92の回転角θmを制御する。四輪駆動制御部156は、後輪側配分率Xrに対する電動モータ92の回転角θmの関係マップを予め記憶しており、設定された目標値Xrdemに関係マップを適用することで、目標値Xrdemに対応する電動モータ92の回転角θmを求め、さらに、求められた回転角θmとなるように電動モータ92を制御する。なお、前記関係マップは、例えば後輪側配分率Xrとトランスファ22に伝達される駆動力Ftrとの二次元マップで構成され、後輪側配分率Xrおよび駆動力Ftrから回転角θmが求められる。
四輪駆動制御部156は、例えばアクセル開度θacc、各車輪速Nr、操舵角θswなどに基づいて四輪駆動車両10の走行状態が安定していると判定される場合には、後輪側配分率Xrの目標値Xrdemを例えば1.0に設定し、四輪駆動車両10を二輪駆動状態とすることで、燃料消費量を減少させる。
また、四輪駆動制御部156は、例えば旋回走行中の操舵角θswと車速Vとに基づいて算出される目標ヨーレートRyaw*と、ヨーレートセンサ144によって随時検出されるヨーレートRyawとの差に基づいて、ヨーレートRyawが目標ヨーレートRyaw*に追従する後輪側配分率Xrの目標値Xrdemを随時設定し、後輪側配分率Xrが目標値Xrdemとなるように電動モータ92の回転角θmを制御する。
ところで、四輪駆動車両10にあっては、前記模擬有段変速制御を行うに当たり、低車速領域での加速性能を向上させるため、同じ模擬ギヤ段での低車速域における出力回転速度Noに対するエンジン回転速度Neの比であるトータル変速比γtが、同じ模擬ギヤ段の高車速域で予め既定値(一定値)として設定されているトータル変速比γtよりも大きくなるように設定されている。言い換えれば、同じ模擬ギヤ段での低車速域における出力回転速度Noに対するエンジン回転速度Neが、同じ模擬ギヤ段の高車速域で予め設定されているトータル変速比γtに基づくエンジン回転速度Neよりも高くなるように設定されている。以下、同じギヤ段での高車速域で予め既定値(一定値)として規定されている、出力回転速度Noに対するエンジン回転速度Neの比であるトータル変速比γtを、トータル変速比γtstと記載し、低車速域におけるトータル変速比γtを、トータル変速比γtvlと記載する。ここで、高車速域は、トータル変速比γが規定値であるトータル変速比γtstとなる領域であり、低車速域は、トータル変速比γtがトータル変速比γtstよりも大きくなる領域である。なお、低車速域と高車速域との境界である閾値は、予め実験的または設計的に求められ、また、閾値は、模擬ギヤ段に応じて適宜変更される。
図9は、各模擬ギヤ段毎の出力回転速度Noに対するエンジン回転速度Neの関係を示している。図9において、横軸がトランスミッション20の出力回転部材に対応する出力軸60の出力回転速度Noを示し、縦軸がエンジン12のエンジン回転速度Neを示している。
図9に示すように、各模擬ギヤ段における出力回転速度Noの各閾値N1〜N10を越える領域では、出力回転速度Noに対するエンジン回転速度Neの比(=Ne/No)が一定になっている。すなわち、トータル変速比γtstが各模擬ギヤ段の規定値(一定値)に設定されている。図9に示すように、出力回転速度Noの閾値N1〜N10は、模擬ギヤ段毎に変更されている。また、図9において、各模擬ギヤ段における出力回転速度Noが閾値N1〜N10よりも高い領域が、各模擬ギヤ段における高車速域(中車速域を含む)に対応し、各模擬ギヤ段の出力回転速度Noが閾値N1〜N10以下の領域が、各模擬ギヤ段における低車速域に対応する。
一方、各模擬ギヤ段における出力回転速度Noが各閾値N1〜N10以下となる低車速域では、エンジン回転速度Neが、高車速域において予め規定されているトータル変速比γtstに基づくエンジン回転速度Neよりも高くなっている。
図9の破線で示す各エンジン回転速度Neは、低車速域においても各模擬ギヤ段の高車速域におけるトータル変速比γtstに基づいて回転速度が設定された場合のエンジン回転速度Neを示している。図9に示すように、実線で示す低車速域での各模擬ギヤ段のエンジン回転速度Neは、破線で示す同じ模擬ギヤ段に対応するエンジン回転速度Neに比べて高くなっている。言い換えれば、各模擬ギヤ段の低車速域になると、同じ模擬ギヤ段の出力回転速度Noに対するエンジン回転速度Neの比であるトータル変速比γtvlが、高車速域において予め設定されているトータル変速比γtstに比べて大きくなる。
ハイブリッド制御部154は、低車速域において、出力回転速度Noに対するエンジン回転速度Neの比であるトータル変速比γtvlを、図9に示す関係に従って、高車速域において予め設定されているトータル変速比γtstよりも大きくなるように、第1回転機MG1のMG1回転速度Ngを制御する。このように、第1回転機MG1のMG1回転速度Ngが制御されることにより、低車速域において同じ模擬ギヤ段であってもトータル変速比γtvlが変更される。その結果、低車速域において、エンジン回転速度Neが高車速域でのトータル変速比γtstに基づいて設定されるエンジン回転速度Neよりも高くされることで、トランスファ22に伝達される駆動力Ftrが増加し、四輪駆動車両10の前輪14および後輪16に伝達される総駆動力Ftを増加することができる。なお、各模擬ギヤ段の低車速域における出力回転速度Noに対するエンジン回転速度Neの比であるトータル変速比γtvl、すなわち各模擬ギヤ段の低車速域におけるエンジン回転速度Neの増加量は、予め実験的または設計的に求められ、低車速域において運転者が所望する四輪駆動車両10の総駆動力Ftが得られる値に設定されている。
上述したように、同じ模擬ギヤ段での低車速域におけるトータル変速比γtvlが高車速域におけるトータル変速比γtstよりも大きくされることで、低車速域における四輪駆動車両10の総駆動力Ftが増加する。しかしながら、低車速域におけるトータル変速比γtvlが大きくなると、前輪14および後輪16に伝達される総駆動力Ftが大きくなるため、前輪14および後輪16のスリップが発生しやすくなる。特に、後輪側配分率Xrが大きいときには、後輪16に伝達される駆動力Frが大きくなるため、後輪16がスリップしやすくなる。
上記後輪16に伝達される駆動力Frが大きくなることによる後輪16のスリップを抑制するため、ハイブリッド制御部154は、低車速域での模擬ギヤ段を成立させるに当たり、同じ模擬ギヤ段での低車速域における出力軸60の出力回転速度Noに対するエンジン回転速度Neの比であるトータル変速比γtvlが、後輪側配分率Xrが小さいときには後輪側配分率Xrが大きいときに比べて大きくなるように、無段変速部44を制御する。このように無段変速部44が制御されることで、後輪側配分率Xrが小さいときには後輪側配分率Xrが大きいときに比べてトータル変速比γtvlが大きくなるため、トランスファ22に伝達される駆動力Ftrが大きくなり、四輪駆動車両10の総駆動力Ftが増加する。また、後輪側配分率Xrが小さくなると、後輪16に伝達される駆動力Frが後輪側配分率Xrが大きいときに比べて小さくなる。従って、トランスファ22に伝達される駆動力Ftrが増加しても、後輪16のスリップの発生が抑制される。このように、後輪側配分率Xrが小さいときには、低車速域においてトータル変速比γtvlが大きくなっても、後輪16に伝達される駆動力Frが、後輪側配分率Xrが大きい場合に比べて小さくなるため、後輪16のスリップの発生が抑制される。その結果、後輪側配分率Xrが小さいときには後輪側配分率Xrが大きいときに比べてトータル変速比γtが大きくされることで、後輪16で発生するスリップを抑制しつつ、四輪駆動車両10の総駆動力Ftが増加する。
図10は、所定の模擬ギヤ段における車速Vに対応する出力回転速度Noに対するエンジン回転速度Neの関係を示している。図10では、一例として模擬1速ギヤ段(1sti)が示されているが、他の模擬ギヤ段についても同様に設定される。
図10において、低車速域における一点鎖線が、後輪側配分率Xrが1.0、すなわち二輪駆動走行(2WD)であるときの出力回転速度Noに対するエンジン回転速度Neの関係を示し、低車速域における実線が、後輪側配分率Xrが0.5、すなわち四輪駆動走行(4WD)であるときの出力回転速度Noに対するエンジン回転速度Neの関係を示している。
図10に示すように、後輪側配分率Xrが小さい四輪駆動走行(4WD、Xr=0.5)の方が、後輪側配分率が大きい二輪駆動走行(2WD、Xr=1.0)に比べて、出力回転速度Noに対するエンジン回転速度Neが高くなっている。従って、四輪駆動走行(4WD)の方が、二輪駆動走行(2WD)に比べてトータル変速比γtが大きくなり、四輪駆動車両10の総駆動力Ftが大きくなる。
低車速域における後輪側配分率Xrに対するトータル変速比γtvl(またはエンジン回転速度Neの増加量)は、予め実験的または設計的に求められ、例えば関係マップとして記憶されている。図11は、同じ模擬ギヤ段における、後輪側配分率Xrと低車速域でのトータル変速比γtvlとの関係を示す関係マップの一例である。図11において、横軸が後輪側配分率Xrを示している。図11において後輪側配分率Xrは、紙面右側に向かうほどその値が小さくなる。すなわち、図11において紙面右側に向かうほど前後輪の駆動力配分が均等になる。また、縦軸が、低車速域における出力回転速度Noに対するエンジン回転速度Neの比であるトータル変速比γtvlを示している。
図11に示すように、後輪側配分率Xrに対してトータル変速比γtvlが直線的に変化し、具体的には、後輪側配分率Xrが小さくなるほどトータル変速比γtvlが大きくなっている。すなわち、後輪側配分率Xrが小さくなるほど出力回転速度Noに対するエンジン回転速度Neが高くなる。従って、後輪側配分率Xrが小さくなるほど、すなわち前後輪の駆動力配分が均等に近づくほど、四輪駆動車両10の総駆動力Ftが大きくなる。後輪側配分率Xrに対するトータル変速比γtvlは、予め実験的または設計的に求められ、後輪16に伝達される駆動力Frによって後輪16のスリップが抑制される範囲において、四輪駆動車両10の総駆動力Ftが増加する値に設定されている。例えば、後輪16の駆動力Frが二輪駆動走行(2WD)の場合に設定される駆動力Fr(2WD)の上限を越えない範囲において、トータル変速比γtvlが最大となる値に設定されている。
また、ハイブリッド制御部154は、模擬ギヤ段を成立させるに当たり、同じ模擬ギヤ段での低車速域におけるトータル変速比γtvlを、運転者の加速要求量に相当するアクセル開度θaccが大きいときには、アクセル開度θaccが小さいときに比べて大きくなるように、無段変速部44を制御する。図12は、同じ模擬ギヤ段における、アクセル開度θaccと低車速域でのトータル変速比γtvlとの関係を示す関係図である。図12において、横軸がアクセル開度θaccを示し、縦軸が低車速域におけるトータル変速比γtvlを示している。図12に示すように、運転者の加速要求量に対応するアクセル開度θaccに対してトータル変速比γtvlが直線的に変化し、具体的には、アクセル開度θaccが大きくなるほどトータル変速比γtvlが大きくなっている。すなわち、アクセル開度θaccが大きくなるほど、四輪駆動車両10の総駆動力Ftが大きくなる。アクセル開度θaccが大きくなるほど運転者の加速要求量が大きくなることから、これに応じてトータル変速比γtvlが大きくなることで、四輪駆動車両10の総駆動力Ftも増加する。なお、アクセル開度θaccに対するトータル変速比γtvlは、予め実験的または設計的に求められ、後輪16のスリップが抑制される範囲で、アクセル開度θaccに対応する運転者の要求駆動力に応じた四輪駆動車両10の総駆動力Ftが出力される値に設定されている。
ハイブリッド制御部154は、図11に示す関係マップに現時点の後輪側配分率Xrを適用することで後輪側配分率Xrに応じたトータル変速比γtvlを求め、さらに、図12に示すトータル変速比γtvlとアクセル開度θaccとの関係に基づいて求められたトータル変速比γtを補正することで、最終的なトータル変速比γtvlを決定する。ハイブリッド制御部154は、決定されたトータル変速比γtvlとなるように、無段変速部44を構成する第1回転機MG1のMG1回転速度Ngを制御する。また、ハイブリッド制御部154は、低車速域における模擬ギヤ段を成立させるに当たり、後輪側配分率Xrが目標値Xrdemに変更する過渡期(変更中)にはトータル変速比γtvlを変更せず、後輪側配分率Xrの目標値Xrdemへの変更が完了した時点(変更後)に、トータル変速比γtvlの変更を開始する。これより、後輪側配分率Xrの変更中にトータル変速比γtvlが変更される場合に比べて、安全にトータル変速比γtvlを変更することができる。
図13は、電子制御装置120に制御作動の要部、すなわち後輪16のスリップの発生を抑制しつつ、低車速域における四輪駆動車両10の駆動力を増加する制御作動を説明するためのフローチャートである。このフローチャートは、車両運転中であって、車速Vが各模擬ギヤ段の低車速域にある場合に繰り返し実行される。
先ず、ハイブリッド制御部154の制御機能に対応するステップST1(以下、ステップを省略する)において、現時点における後輪側配分率Xrまたは後輪側配分率Xrの目標値Xrdemが読み込まれる。ハイブリッド制御部154の制御機能に対応するST2では、現時点でのアクセル開度θaccが読み込まれる。ハイブリッド制御部154の制御機能に対応するST3では、ST1およびST2で読み込まれた後輪側配分率Xrおよびアクセル開度θaccに基づいて、現在の模擬ギヤ段での低車速域における出力回転速度Noに対するエンジン回転速度Neの比であるトータル変速比γtvlが決定される。ハイブリッド制御部154の制御機能に対応するST4では、ST3で決定されたトータル変速比γtvlとなるように、無段変速部44の変速比γ0が制御される。
図14は、電子制御装置120の制御作動に基づく制御状態を示すタイムチャートである。図14のタイムチャートでは、四輪駆動車両10の停止中(すなわち低車速域)にアクセルペダルが大きく踏み込まれたときである車両発進時の制御状態が示されている。図14において、横軸が時間を示し、縦軸が、上から順番に、車速V[km/h]、アクセル開度θacc[%]、電動モータ92の回転角θm[°]、後輪側配分率Xr[-]、トータル変速比γtvl[-]をそれぞれ示している。
図14のt1時点においてアクセルペダルが大きく踏み込まれ、アクセル開度θaccが0%から100%に切り替わると、後輪側配分率Xrの目標値Xrdemが0.5に設定され、電動モータ92の駆動が開始される。t1時点からt2時点の間では、後輪側配分率Xrが0.5、すなわち前輪駆動用クラッチ76が完全係合される回転角θmを目標値にして電動モータ92が駆動させられる。t2時点において、電動モータ92の回転角θmが、前輪駆動用クラッチ76の完全係合される回転角に到達すると、トータル変速比γtvlが、後輪側配分率Xrが0.5のときに設定される目標値となるように、無段変速部44を構成する第1回転機MG1のMG1回転速度Ngが制御される。
このように制御されることで、後輪16の駆動力Frの増加によるスリップの発生を抑制しつつ、四輪駆動車両10の総駆動力Ftを増加させ、四輪駆動車両10の発進性能を向上させることができる。また、電動モータ92の作動が完了し、電動モータ92の回転角θmが目標値に到達した時点、すなわち後輪側配分率Xrの目標値Xrdemへの変更が完了した時点でトータル変速比γtvlが変更されることで、後輪側配分率Xrが目標値Xrdemに到達するまでの間にトータル変速比γtvlの変更を開始する場合に比べて、四輪駆動車両10を安全に発進させることができる。なお、図14のタイムチャートは、車両発進時の制御状態を示すものであったが、車両走行中においても、随時検出される後輪側配分率Xrまたは目標値Xrdemおよびアクセル開度θaccに基づいて、適切なトータル変速比γtvlが随時求められ、求められたトータル変速比γtvlとなるように無段変速部44が制御される。
上述のように、本実施例によれば、四輪駆動車両10の総駆動力Ftに対する後輪16に伝達する駆動力Frの割合である後輪側配分率Xrが小さく、後輪側配分率Xrが大きいときに比べて後輪16にスリップが発生し難いときには、同じ模擬ギヤ段での低車速域における出力軸60の出力回転速度Noに対するエンジン12のエンジン回転速度Neの比であるトータル変速比γtvlが大きくされるため、後輪側配分率Xrが大きいときの後輪16にスリップが発生してしまうのを抑制しつつ、四輪駆動車両10の総駆動力Ftを増加させることができる。
また、本実施例によれば、運転者の加速要求量に相当するアクセル開度θaccが大きいときには、アクセル開度θaccが小さいときに比べて、出力回転速度Noに対するエンジン回転速度Neの比であるトータル変速比γtvlが大きくなるように無段変速部44が制御されるため、運転者の加速要求量に応じた四輪駆動車両10の総駆動力Ftを発生させることができる。また、第1回転機MG1のMG1回転速度Ngを制御することで、差動機構52の差動作用によってエンジン回転速度Neを変化させることができる。従って、第1回転機MG1のMG1回転速度Ngを制御することにより、同じ模擬ギヤ段での出力回転速度Noに対するエンジン回転速度Neの比であるトータル変速比γtvlを適宜変更することができる。
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施例では、低車速域における模擬ギヤ段を成立させるに当たり、後輪側配分率Xrが所定値以下のとき、同じ模擬ギヤ段でのトータル変速比γtvlが、所定値よりも大きいときに比べて大きくなるように、無段変速部44が制御される。本実施例では、前記所定値が0.5に設定されている場合、すなわち四輪駆動車両200(図1参照)の前後輪の駆動輪配分が均等になった場合において、出力回転速度Noに対するエンジン回転速度Neの比であるトータル変速比γtvlが大きくされる態様を一例に説明する。
本実施例のハイブリッド制御部204(図1参照)は、模擬ギヤ段を成立させるに当たり、低車速域における後輪側配分率Xrが、所定値に設定されている0.5以下か否か、すなわち四輪駆動車両200の前後輪の駆動力配分が均等であるか否かを判定する。なお、後輪側配分率Xrは0.5を下回らないため、実質的には、後輪側配分率Xrが0.5であるかが判定される。ハイブリッド制御部204は、低車速域における後輪側配分率Xrが0.5よりも大きい場合、トータル変速比γtvlを、二輪駆動走行(2WD)において規定されている値に制御する。言い換えれば、ハイブリッド制御部204は、後輪側配分率Xrが0.5よりも大きい場合、トータル変速比γtvlが大きくなることはなく、四輪駆動車両200の総駆動力Ftが制限される。一方、ハイブリッド制御部204は、低車速域における後輪側配分率Xrが0.5である場合、トータル変速比γtvlを、四輪駆動走行(4WD)において設定される値に増加する。この四輪駆動走行でのトータル変速比γtvlは、後輪16のスリップが抑制される範囲において、四輪駆動車両10の総駆動力Ftを増加できる値、例えば後輪16のスリップが抑制される範囲において総駆動力Ftが最大となる値に設定されている。従って、後輪側配分率Xrが0.5になった場合には、後輪側配分率Xrが0.5よりも大きい場合に比べてトータル変速比γtvlが大きくなり、四輪駆動車両200の総駆動力Ftが増加する。
図15は、本発明の他の実施例に対応する電子制御装置202(図1参照)の制御作動の要部、すなわち低車速域における四輪駆動車両200の駆動力を増加する制御作動を説明するためのフローチャートである。このフローチャートは、車両運転中であって、車速Vが各模擬ギヤ段の低車速域にある場合に繰り返し実行される。
図15において、ハイブリッド制御部204の制御機能に対応するステップST10(以下、ステップを省略)では、後輪側配分率Xrが0.5であるか否か、すなわち前輪駆動用クラッチ76が完全係合され、前後輪の駆動力配分が均等になったが判定される。ST10が否定される場合、ハイブリッド制御部204の制御機能に対応するST12において、トータル変速比γtvlが二輪駆動走行(2WD)時において設定される値に維持され、トータル変速比γtvlは大きくならない。一方、ST10が肯定される場合、ハイブリッド制御部204の制御機能に対応するST11において、トータル変速比γtvlが、四輪駆動走行(4WD)時の値に設定され、トータル変速比γtvlが増加させられる。上記のように制御されることで、後輪側配分率Xrが0.5であると判定されたときには、トータル変速比γtvlが大きくなるため、四輪駆動車両200の総駆動力Ftが増加する。また、後輪側配分率Xrが0.5である場合には、後輪側配分率Xrが0.5よりも大きいときに比べて、後輪16の駆動力Frが抑えられるため、後輪16のスリップの発生が抑制される。
上述のように、後輪側配分率Xrが0.5のとき、後輪側配分率Xrが0.5よりも大きいときに比べて、トータル変速比γtvlが大きくなるように、無段変速部44が制御されることで、後輪16にスリップが発生するのを抑制しつつ、四輪駆動車両10の総駆動力Ftを増加させることができる。ここで、上述した態様は、後輪側配分率Xrが0.5である場合、すなわち前後輪の駆動力の配分が均等である場合にトータル変速比γtvlが増加させられる場合を一例に説明したが、トータル変速比γtvlを大きくするか否かを判断する所定値が0.5よりも大きい値を取ることもできる。すなわち、後輪側配分率Xrが0.5よりも大きい所定値以下になった場合において、トータル変速比γtvlが大きくされるものであっても構わない。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、四輪駆動車両10、200は、後輪16が二輪駆動走行(2WD)中および四輪駆動走行(4WD)中において駆動力が伝達される主駆動輪となり、前輪14が四輪駆動走行(4WD)中に駆動力が伝達される副駆動輪となる前置エンジン後輪駆動(FR)をベースとする四輪駆動車両であったが、本発明は、前後輪の駆動力配分を変更可能な四輪駆動車両であれば適宜変更することができる。具体的には、前輪14が二輪駆動走行中および四輪駆動走行中において駆動力が伝達される主駆動輪となり、後輪16が四輪駆動走行中に駆動力が伝達される副駆動輪となる前置エンジン前輪駆動(FF)をベースとする四輪駆動車両であっても、前後輪の駆動力配分を変更可能な構成であれば、本発明を適用することができる。
また、前述の実施例では、後輪側配分率Xrが目標値Xrdemに到達した時点で、トータル変速比γtvlの変更が開始されるものであったが、後輪側配分率Xrを目標値Xrdemに制御する過渡期において、トータル変速比γtvlが変更されるものであっても構わない。すなわち、後輪側配分率Xrの変更とトータル変速比γtvlの変更とを同時に行うものであっても構わない。
また、前述の実施例1では、後輪側配分率Xrに対してトータル変速比γtvlが直線的に変化するものであったが、本発明は、必ずしも直線的に変化するものに限定されない。例えば、後輪側配分率Xrに対して、トータル変速比γtvlがステップ的に変化するものであっても構わない。
また、前述の実施例では、各模擬ギヤ段の低車速の領域において、トータル変速比γtvlが大きくなるように設定されるものであったが、本発明は、必ずしも低車速域に限定されるものではなく、中車速域ならびに高車速域においてもトータル変速比γtvlが大きくされるように設定されるものであっても構わない。
また、前述の実施例では、全ての模擬ギヤ段において低車速域にてトータル変速比γtvlが大きくなるように設定されていたが、必ずしも全ての模擬ギヤ段において設定されなくても構わない。例えば、比較的低車速の領域で使用される模擬ギヤ段にのみ、トータル変速比γtvlが大きくなるように設定されるものであっても構わない。
また、前述の実施例では、後輪側配分率Xrおよびアクセル開度θaccに基づいて、低車速域でのトータル変速比γtvlが求められるものであったが、アクセル開度θaccは必ずしも必須ではなく、後輪側配分率Xrのみから低車速域でのトータル変速比γtvlが求められるものであっても構わない。
また、前述の実施例では、トランスファ22は、前輪駆動用クラッチ76のトルク容量が調節されることで、前後輪の駆動力配分が調節されるものであったが、本発明は上述したトランスファ22の構造に限定されない。本発明は、前後輪の駆動力配分を調節できる駆動力配分装置であれば、適宜適用することができる。
また、前述の実施例では、無段変速部44が、シングルピニオン型の遊星歯車装置を含んで構成され、差動機構52のサンギヤS0が第1回転機MG1が連結され、キャリヤCA0がエンジン12が連結され、リングギヤR0が有段変速部46に連結されていたが、無段変速部の構造は必ずしもこれに限定されない。すなわち、本発明は、差動機構を含んで構成され、エンジン12のエンジン回転速度Neを回転機等で制御できるように構成される無段変速部であれば、適宜適用することができる。
また、前述の実施例の有段変速部46は、本発明に適用可能な一態様であり、その構造およびギヤ段数等は適宜変更することができる。すなわち、有段変速可能な有段変速部である限りにおいて、本発明を適宜適用することができる。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10、200:四輪駆動車両
12:エンジン(駆動源)
14:前輪(副駆動輪)
16:後輪(主駆動輪)
20:トランスミッション(自動変速機)
22:トランスファ(駆動力配分装置)
44:電気式無段変速部(無段変速部)
46:機械式有段変速部(有段変速部)
52:差動機構
60:出力軸(出力回転部材)
120、202:電子制御装置(制御装置)
MG1:第1回転機(回転機)
CA0:キャリヤ(第1回転要素)
S0:サンギヤ(第2回転要素)
R0:リングギヤ(第3回転要素)
Xr:後輪側配分率(主側配分率)
γt:トータル変速比(出力回転部材の回転速度に対する駆動源の回転速度の比)
12:エンジン(駆動源)
14:前輪(副駆動輪)
16:後輪(主駆動輪)
20:トランスミッション(自動変速機)
22:トランスファ(駆動力配分装置)
44:電気式無段変速部(無段変速部)
46:機械式有段変速部(有段変速部)
52:差動機構
60:出力軸(出力回転部材)
120、202:電子制御装置(制御装置)
MG1:第1回転機(回転機)
CA0:キャリヤ(第1回転要素)
S0:サンギヤ(第2回転要素)
R0:リングギヤ(第3回転要素)
Xr:後輪側配分率(主側配分率)
γt:トータル変速比(出力回転部材の回転速度に対する駆動源の回転速度の比)
Claims (5)
- 駆動源と、前記駆動源と出力回転部材との間の動力伝達経路に配置され、無段変速部と有段変速部とが直列に連結されて構成される自動変速機と、前記出力回転部材から主駆動輪および副駆動輪に駆動力を伝達可能で且つ前記出力回転部材から前記主駆動輪および前記副駆動輪に伝達する総駆動力に対する前記主駆動輪に伝達する駆動力の割合である主側配分率を調節可能な駆動力配分装置と、制御装置とを、備えた四輪駆動車両であって、
前記制御装置は、前記出力回転部材の回転速度に対する前記駆動源の回転速度の比が異なる複数の模擬ギヤ段のうち、変速条件に従って1つの模擬ギヤ段を成立させるように、前記無段変速部および前記有段変速部を制御するとともに、少なくとも低車速側の模擬ギヤ段を成立させるに当たり、同じ模擬ギヤ段での少なくとも低車速域における前記出力回転部材の回転速度に対する前記駆動源の回転速度の比が、前記主側配分率が小さいときには、前記主側配分率が大きいときに比べて大きくなるように、前記無段変速部を制御する
ことを特徴とする四輪駆動車両。 - 前記制御装置は、さらに、少なくとも低車速側の模擬ギヤ段を成立させるに当たり、同じ模擬ギヤ段での少なくとも低車速域における前記出力回転部材の回転速度に対する前記駆動源の回転速度の比が、運転者の加速要求量が大きいときには、加速要求量が小さいときに比べて大きくなるように、前記無段変速部を制御する
ことを特徴とする請求項1の四輪駆動車両。 - 前記制御装置は、少なくとも低車速側の模擬ギヤ段を成立させるに当たり、同じ模擬ギヤ段での少なくとも低車速域における前記出力回転部材の回転速度に対する前記駆動源の回転速度の比が、前記主側配分率が予め設定されている所定値以下のときには、前記主側配分率が前記所定値よりも大きいときに比べて大きくなるように、前記無段変速部を制御する
ことを特徴とする請求項1または2の四輪駆動車両。 - 前記制御装置は、少なくとも低車速側の模擬ギヤ段を成立させるに当たり、前記主側配分率の目標値への変更が完了すると、同じ模擬ギヤ段での少なくとも低車速域における前記出力回転部材の回転速度に対する前記駆動源の回転速度の比の変更を開始する
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1の四輪駆動車両。 - 前記無段変速部は、差動機構および回転機を含んで構成され、
前記差動機構は、前記駆動源に動力伝達可能に接続されている第1回転要素と、前記回転機に動力伝達可能に接続されている第2回転要素と、前記有段変速部に動力伝達可能に接続されている第3回転要素と、を備え、
前記制御装置は、前記回転機の回転速度を制御することにより、同じ模擬ギヤ段での前記出力回転部材の回転速度に対する前記駆動源の回転速度の比を変更する
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1の四輪駆動車両。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020068548A JP2021165074A (ja) | 2020-04-06 | 2020-04-06 | 四輪駆動車両 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020068548A JP2021165074A (ja) | 2020-04-06 | 2020-04-06 | 四輪駆動車両 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2021165074A true JP2021165074A (ja) | 2021-10-14 |
Family
ID=78021557
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2020068548A Pending JP2021165074A (ja) | 2020-04-06 | 2020-04-06 | 四輪駆動車両 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2021165074A (ja) |
-
2020
- 2020-04-06 JP JP2020068548A patent/JP2021165074A/ja active Pending
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