JP2021160175A - 積層フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】帯電防止性と離型性および耐スクラッチ性の両立が可能な積層フィルムを、安定的に大量生産可能な技術を提供する。【解決手段】樹脂層(A)、樹脂層(X)、離型層(R)を有する積層フィルムであって、前記樹脂層(X)が一方の表層、前記離型層(R)がもう一方の表層に有しており、前記樹脂層(X)と離型層(R)は異なる組成からなり、前記離型層(R)がフッ素及びシリコーン成分を含んでおらず、前記樹脂層(X)と離型層(R)の摩擦帯電量が−50V以上+50V以下である積層フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、積層フィルムおよびその製造方法に関する。
熱可塑性樹脂フィルム、中でも二軸配向ポリエステルフィルムは、機械的性質、電気的性質、寸法安定性、透明性、耐薬品性などに優れた性質を有するため、磁気記録材料、包装材料などの多くの用途において広く使用されている。粘着製品における粘着材層の保護フィルムや、各種工業製品の加工工程におけるキャリアフィルムとして、離型性に優れたフィルムの需要が高まっている。しかしながら、これらのキャリアフィルムはロール状に巻き取る際、およびそのロールを次工程にて繰り出す際に発生する帯電がしばしば問題となる。このような背景の中でポリエステルフィルムの加工工程における帯電に起因するキズや異物の抑制を目的に「離型性」と「帯電防止性」の両立が求められている。
離型性に優れるフィルムとしては、工業的な生産性の点から、シリコーン化合物を樹脂層に含有せしめたフィルムが最も一般的に使用されている(例えば特許文献1参照)。また、シリコーン系の粘着剤を相手剤とする場合や特に耐熱性を求められる用途においては、フッ素系の化合物を含有する離型フィルムを使用する場合がある(例えば特許文献2)。一方、シリコーンやフッ素を含まない化合物(以下、非シリコーン離型剤と記載する)を用いた例として、長鎖アルキル基含有樹脂、オレフィン樹脂を用いた技術が知られている(特許文献3および特許文献4)。
一方、帯電防止性に着眼した技術としては、例えば特許文献5にはポリエステル樹脂に帯電防止を添加し塗布する方法が記載されている。
特開2010−155459号公報 特開2014−117815号公報 特開2004−230772号公報 特開2014−151481号公報 特開昭61−204240号公報
しかしながら、例えば特許文献1および2の離型フィルムはシリコーンやフッ素などの化合物が負の電荷を帯びやすく、摩擦により帯電しやすいことが分かった。一方、特許文献3および4に記載の技術についても、シリコーンやフッ素ほどではないが、ロール状に巻き上げた際に表裏の面が滑りやすく、また帯電が生じることが明らかとなった。一方、帯電防止に着目した特許文献5の技術よれば帯電を抑制することは可能であるが、離型性との両立が困難であった。
そこで、本発明では上記の欠点を解消し、帯電防止性と離型性および耐スクラッチ性の両立が可能な樹脂フィルムを、安定的に大量生産可能な技術を提供することを課題とする。
(1)樹脂層(A)、樹脂層(X)、離型層(R)を有する積層フィルムであって、前記樹脂層(X)が一方の表層、前記離型層(R)がもう一方の表層に有しており、前記樹脂層(X)と離型層(R)は異なる組成からなり、前記離型層(R)がフッ素及びシリコーン成分を含んでおらず、前記樹脂層(X)と離型層(R)の摩擦帯電量が−50V以上+50V以下である積層フィルム。
(2)前記樹脂層(X)がナノインデンテーション法による強押し込み弾性率が4.0GPa以上である(1)の積層フィルム。
(3)前記樹脂層(X)の鉛筆硬度がH未満である(1)または(2)の積層フィルム。
(4)前記離型層(R)の弱押し込み弾性率度と強押し込み弾性率の比が4以上100以下である(1)から(3)のいずれかの積層フィルム。
(5)セラミックグリーンシートの製造用工程フィルムとして用いられる(1)から(4)のいずれかの積層フィルム。
本発明によれば、帯電防止性と離型性および耐スクラッチ性の両立が可能な樹脂フィルムを、安定的に大量生産可能な技術を提供することが出来る。
以下、本発明の積層フィルムについて詳細に説明する。本発明の積層フィルムは、樹脂層(A)、樹脂層(X)、離型層(R)を有する積層フィルムであって、一方の表層に離型層(R)を有し、もう一方の表層(離型層(R)とは反対面)に離型層(R)とは異なる組成からなる樹脂層(X)を有する両面異種積層フィルムである。本発明が解決しようとする課題である、ロール加工時の帯電について、本発明者らが検討した結果、特定の表裏の組み合わせにより、効果的に帯電を防止できることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明の両面異種積層フィルムが満たすべき特徴は以下の2点である。1.前記離型層(R)がフッ素乃至はシリコーン成分を含まない、2.前記離型層(R)と樹脂層(X)の摩擦帯電量が±50V以下である両面異種積層フィルム。
フィルム加工時の帯電はフィルムの表裏の層が摩耗されることにより発生する。異なる材質の面が接触する際に生じる電位差は、一般には帯電列と呼ばれる半経験的な序列として知られている。本発明者らが検討したところ、特にマイナスの電荷を帯びやすいシリコーンやフッ素系の材料を離型層(R)に含有する場合には、同様の加工工程を経た場合にも帯電が生じやすい事が明らかとなった。すなわち本発明の積層フィルムは、離型層(R)にフッ素乃至はシリコーン成分を含まないことを第一の特徴とする。なお、本発明において、離型層(R)にフッ素及びシリコーン成分を含んでいないとは、後述する測定方法において、それぞれポリジメチルシロキサンに由来するフラグメント、炭化フッ素に由来するフラグメントにより判断する。また、好ましい離型層(R)の材料については後述する。
一方前述の通り帯電列は、離型層(R)と裏面との間に生じる電位差に関する序列であり、双方の材質の影響を受ける。具体的には離型層(R)がフッ素乃至はシリコーン成分を含まない上に、裏面の樹脂層(X)と近い帯電列にあり、摩擦帯電量が±50V以下となることを第二の特徴とする。摩擦帯電量が±50Vを超える場合には、帯電防止効果を得にくくなる場合がある。なお摩擦帯電量の評価方法と、樹脂層(X)の好ましい材料については後述する。
[積層フィルム]
本発明における積層フィルムの樹脂層(A)、樹脂層(X)、離型層(R)を構成する樹脂は、特に限られるものでは無く、例えば、公知のアクリル樹脂やポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。本発明においては、後述する好ましい製造方法にて作成する場合の安定性の観点から、アクリル樹脂およびメラミン樹脂であることが好ましい。
ここで本発明における「層」とは、前記積層体の表面から厚み方向に向かい、隣接する部位との構成元素の組成、粒子等の含有物の形状、厚み方向の物理特性が不連続な境界面を有することで区別される有限の厚みを有する部位を指す。より具体的には、前記積層体を表面から厚み方向に各種組成/元素分析装置(FT−IR、XPS、XRF、EDAX、SIMS、EPMA、EELS等)、電子顕微鏡(透過型、走査型)または光学顕微鏡にて断面観察した際、前記不連続な境界面により区別され、有限の厚みを有する部位を指す。
[離型層(R)]
本発明の積層フィルムにおける離型層(R)とは、積層フィルムの少なくとも一方の表層に有するものである。樹脂層(A)と離型層(R)の間に異なる層を有していても良いが、前述の樹脂層(A)の少なくとも片面に離型層(R)を有するものであることが好ましい。本発明における離型層(R)は、積層フィルムの離型性の発現に必要な層であると同時に、後述する好ましい樹脂層(X)との組み合わせにより優れた帯電防止性を発現しうる層である。
本発明の積層フィルムの離型層(R)は、膜厚が20nm以上400nm未満であることが好ましく、50nm以上200nm未満であることがさらに好ましく、40nm以上100nm未満であることが特に好ましい。離型層(R)の膜厚を20nm以上400nm未満とすることで、離型性や帯電防止性を安定して発現することができ、更に巻き取り時の滑り性が得られることから品位に優れたフィルムロールを得ることが出来る。離型層(R)の膜厚が20nm未満の場合には前述の離型性や帯電防止性を得られない。一方、400nm以上であっても離型性や帯電防止性を得ることは可能であるが、ムラの発生や離型層(R)が削れやすくなるなど品位の低下が見られる場合がある。離型層(R)の膜厚を制御する方法としては、例えば、後述する塗料組成物(r)中に含まれる固形分の濃度を調節する方法が挙げられる。
<被着体>
本発明の積層フィルムは離型層(R)の表面に被着体を設けた後に、積層フィルムを剥離することで、被着体の表面に離型層(R)の一部または全部を転写することが出来る。ここで被着体とは積層フィルムの離型層(R)を有する面の上に設ける粘着テープなどの樹脂、金属、セラミックなどを含む層状の成型体を指す。被着体を設ける方法は特に限定されないが、例えば塗布、蒸着、貼合などの方法によって、離型層(R)の表面に形成することができる。被着体の作成に溶媒成分を有する塗液を使用する場合、また被着体が反応性の活性部位を反応させて成る硬化層の場合には、未乾燥の状態及び未硬化の状態を含め、被着体と記載する場合がある。なお、本発明の積層フィルムにおいて、離型層(R)の表面に、複数の層が積層される場合には、離型層(R)と隣接する層もしくは離型層(R)に隣接する層を含む積層体を総じて被着体と記載する場合がある。
[樹脂層(X)]
本発明の積層フィルムは、離型層(R)とは異なる側の表層に、前述の離型層(R)との組み合わせによる帯電防止性、および耐スクラッチ性の観点から設計された、樹脂層(X)を有する。樹脂層(X)の形成方法は、前述の条件満たすことができれば特に限定されないが、塗料組成物(x)により形成されていることが好ましい。支持基材の製膜途中で後述する塗料組成物(x)を塗布したフィルムを作成してもよいし、支持基材の製膜後、塗料組成物(x)を支持基材に塗布し、乾燥、巻き取りを行ってもよい。
例えば樹脂層(X)を塗布により形成する場合、樹脂層(X)の厚み(乾燥後の塗布厚み)は、好ましくは、10〜2000nm、より好ましくは40〜1000nm、さらに好ましくは80〜800nmである。厚みが10nm〜2000nmであると、樹脂層(X)によって付与したい機能、即ち帯電防止性、耐スクラッチ性と塗膜品位を得ることができるため好ましい。
[ナノインデンテーションを用いた押し込み弾性率]
本発明の積層フィルムにおいて、樹脂層(X)の押し込み弾性率には好ましい範囲が存在する。具体的には後述する強い押し込みによる押し込み弾性率(強押し込み弾性率)が4。0GPa以上が好ましい。強押し込み弾性率が4.0GPa未満の場合には、樹脂層(X)が変形しやすくなり、ロール加工時に接触面積が増加しやすくなり、結果帯電が発生しやすくなる場合がある。
[強押し込み弾性率と弱押し込み弾性率]
ここでナノインデンタ−による押し込み弾性率測定は、極微小部分の圧子による圧縮試験であり、押し付け力により変形度合いが変化する。具体的には押し込み強さが強いほど、より内層までの平均的な物性情報に相当する。本発明の積層フィルムの樹脂層(X)は、巻き取り時の変形や、摩耗時の塗膜の脱落を抑制することで帯電防止効果を発揮するため、強く押し込まれた際にも十分な押し込み弾性率が必要となる。具体的には押し込み深さ10nmにて測定した強押し込み弾性率が前述の通り、4.0GPa以上であることが好ましい。なお強押し込み弾性率の評価方法の詳細ついては後述する。
一方、離型層(R)の表面においては、適度な柔軟性を有する事が被着体に剥離に有効である。離型層(R)が十分な離型性を発揮するためには、離型層(R)の押し込み深さ2nmの弱押し込み弾性率と離型層(R)の前述の強押し込み弾性率の比が4以上100以下であることが特に好ましい。
前記の比を4以上にすることで、表裏の層の接触による帯電を好適に抑制しつつ、十分な離型性を発現することが出来る。一方で、100を超える場合には内部に歪みが発生しやすく、白化などの品位の低下が起こる場合がある。なお弱押し込み弾性率の評価方法の詳細ついては後述する。
[鉛筆硬度]
樹脂層(X)の鉛筆硬度には好ましい範囲が存在する。鉛筆硬度は層の表面を傷つけることが出来る鉛筆の硬さで、層の硬さを表現した値である。一般には鉛筆の硬さに比例して層の硬さが増すと考えられるが、フィルムの摩耗性とは必ずしも一致しない。具体的には、フィルム面同士を摩耗した場合、鉛筆硬度が高すぎる層では、削れ粉の発生によりむしろ層の劣化が早くなる場合がある。本発明の樹脂層(X)としては鉛筆硬度が高いことは好ましくなく、具体的には鉛筆硬度H以下であることが好ましい。鉛筆硬度がHを超える場合には、フィルム面の摩耗により、離形性が低下したり、帯電防止性が不足する場合がある。
[樹脂層(A)(支持基材)]
本発明の積層フィルムの好ましい形態としては、樹脂層(A)とその一方の表面に離形層(R)が、他方の面に樹脂層(X)がそれぞれ積層された積層フィルムである。樹脂層(A)は離形層(R)および樹脂層(X)の支持基材となる。支持基材として用いられる樹脂は特に限られるものでは無いが、耐熱性およびコストの観点からは、ポリエステルが好適に用いられる。(以下ポリエステルフィルムを支持基材と呼称する場合がある)。支持基材として用いられるポリエステルフィルムは特に限られるものではないが、ポリエステルを主成分とする層であることが好ましい(以下支持基材として用いられるポリエステルを主成分とする層をポリエステルフィルムと呼ぶ場合がある)。なお、本発明において主成分とは、層を構成する樹脂全体に対して50重量%以上をしめる成分をあらわす。
本発明において、支持基材は、粒子の含有量が、支持基材全体に対して、0.1重量%以下であることが好ましい。粒子の含有量を上記の範囲とすることで、内部へイズを0.2%以下とすることができ、透明性に優れた積層フィルムとすることができる。
以下、本発明の積層フィルムの支持基材に用いられるポリエステルについて述べる。まずポリエステルとは、エステル結合を主鎖に有する高分子の総称であって、エチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート、ブチレンテレフタレート、プロピレン−2,6−ナフタレート、エチレン−α,β−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどから選ばれた少なくとも1種の構成成分とするものを好ましく用いることができる。
上記ポリエステルを使用したポリエステルフィルムは、二軸配向されたものであるのが好ましい。二軸配向ポリエステルフィルムとは、一般に、未延伸状態のポリエステルシート又はフィルムを長手方向および長手方向に直行する幅方向に各々2.5〜5倍程度延伸され、その後、熱処理を施されて、結晶配向が完了されたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。ポリエステルフィルムが二軸配向している場合には、熱安定性、特に寸法安定性や機械的強度が十分で、平面性も良好である。
また、ポリエステルフィルム中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機系易滑剤、顔料、染料、有機又は無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などがその特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。
ポリエステルフィルムの厚みは特に限定されるものではなく、用途や種類に応じて適宜選択されるが、機械的強度、ハンドリング性などの点から、通常は好ましくは10〜500μm、より好ましくは15〜250μm、最も好ましくは20〜200μmである。また、ポリエステルフィルムは、共押出しによる複合フィルムであってもよいし、得られたフィルムを各種の方法で貼り合わせたフィルムであっても良い。
[塗料組成物]
本発明の積層フィルムおよび、好ましい樹脂層(X)の製造方法には好ましい塗料組成物が存在する。以下、離型層(R)と樹脂層(X)のそれぞれについて好ましい塗料組成物の詳細を説明する。
[離型層(R)の塗料組成物(r)]
離型層(R)の製造には好適に使用可能な塗料組成物が存在する。具体的には、長鎖アルキル基含有樹脂、オレフィン樹脂、ワックス系化合物から選ばれる少なくとも1種類の離型剤(r−A)(スリップ材料という場合がある)を含有する塗料組成物から形成されることが好ましい。かかる構成とすることで、前述のテープ剥離時の膜厚減少率を20%以上とすることが容易となり、被着体に対して十分な滑り性を付与する効果を得やすくなるため好ましい。また、かかる構成とすることで、より好ましい態様としては、前述のテープ剥離時の膜厚減少率を100%未満とすることが容易となり、離型層(R)が被着体に転写した後、被着体との密着性を良好にすることができる。
更に、本発明の積層フィルムの離型層(R)を形成するための塗料組成物(r)は、易滑剤や無機粒子、有機粒子、界面活性剤、酸化防止剤、熱開始剤などの各種添加剤を、積層フィルムの特性を悪化させない範囲で含んでいても構わない。その際、塗料組成物(r)においては、後述する離型剤(r−A)、樹脂または化合物(r−B)の合計を100重量部としたとき、0.01重量部〜10重量部の範囲であることが好ましい。
<離型剤(r−A)>
本発明でいう離型剤(r−A)とは、塗料組成物に含有することにより、塗布層の表面に離型性(すなわち樹脂の表面自由エネルギーを低下させたり、樹脂の静止摩擦係数μsを低下させたりする特性)を付与する化合物を示す。本発明において用いることのできる離型剤(r−A)としては、長鎖アルキル基含有樹脂、オレフィン樹脂、フッ素化合物、ワックス系化合物などが挙げられる。
長鎖アルキル基含有化合物は市販されているものを使用してもよく、具体的には、アシオ産業社製の長鎖アルキル系化合物である“アシオレジン”(登録商標)シリーズ、一方社油脂工業社製の長鎖アルキル化合物である“ピーロイル”(登録商標)シリーズ、中京油脂社製の長鎖アルキル系化合物の水性分散体である“レゼム”シリーズなどを使用することができる。前記離型剤(r−A)は、炭素数12以上のアルキル基を有することが好ましく、炭素数16以上のアルキル基を有することがより好ましい。アルキル基の炭素数を12以上にすることで、疎水性が高まることとなり、離型剤(r−A)として十分な離型性能を発現させることができる。アルキル基の炭素数が12未満であると、離型性能が不十分なものとなる恐れがある。アルキル基の炭素数の上限は特に限定されるものではないが、25以下であると製造が容易であるため好ましい。
オレフィン樹脂としては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセンなどが挙げられる。
ワックス系化合物としては、天然ワックス、合成ワックス、それらを配合したワックスが挙げられる。天然ワックスとは、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、石油ワックスである。植物系ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油が挙げられる。動物系ワックスとしては、みつろう、ラノリン、鯨ロウが挙げられる。鉱物系ワックスとしてはモンタンワックス、オゾケライト、セレシンが挙げられる。石油ワックスとしてはパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムが挙げられる。合成ワックスとしては、合成炭化水素、変性ワックス、水素化ワックス、脂肪酸、酸アミド、アミン、イミド、エステル、ケトンが挙げられる。合成炭化水素としては、フィッシャー・トロプシュワックス(別名サゾワールワックス)、ポリエチレンワックスが有名であるが、このほかに低分子量の高分子(具体的には粘度平均分子量500から20000の高分子)である以下のポリマーも含まれる。すなわち、ポリプロピレン、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックまたはグラフト結合体がある。変性ワックスとしてはモンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体が挙げられる。ここでの誘導体とは、精製、酸化、エステル化、ケン化のいずれかの処理、またはそれらの組み合わせによって得られる化合物である。水素化ワックスとしては硬化ひまし油、および硬化ひまし油誘導体が挙げられる。
塗料組成物における離型剤(r−A)の含有量は、塗料組成物の全固形分質量に対して、10質量%以上90質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、20質量%以上60質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上40質量%以下である。離型剤(r−A)の含有量を、塗料組成物の全固形分質量に対して、10質量%以上90質量%以下とすることで、樹脂層の外観品位を維持しながら、離型性を付与することが可能となる。
<樹脂または化合物(r−B)>
本発明の積層フィルムの離型層(R)は、前記離型剤(r−A)に加え、樹脂または化合物(r−B)も含有する塗料組成物(r)から形成されることが好ましい。樹脂または化合物(r−B)を含有することで、樹脂層の厚みむらを抑制し、均一な離型性と帯電防止性を付与することが容易となる。
本発明において用いることのできる樹脂または化合物(r−B)としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。
樹脂または化合物(r−B)として用いることができるエポキシ樹脂としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル系架橋剤、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル系架橋剤、ジグリセロールポリグリシジルエーテル系架橋剤及びポリエチレングリコールジグリシジルエーテル系架橋剤などを用いることができる。エポキシ樹脂として、市販されているものを使用してもよく、例えば、ナガセケムテック株式会社製エポキシ化合物“デナコール”(登録商標)EX−611、EX−614、EX−614B、EX−512、EX−521、EX−421、EX−313、EX−810、EX−830、EX−850など)、坂本薬品工業株式会社製のジエポキシ・ポリエポキシ系化合物(SR−EG、SR−8EG、SR−GLGなど)、大日本インキ工業株式会社製エポキシ架橋剤“EPICLON”(登録商標)EM−85−75W、あるいはCR−5Lなどを好適に用いることができ、中でも、水溶性を有するものが好ましく用いられる。
樹脂または化合物(r−B)として用いることができるメラミン樹脂としては、例えば、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、及びこれらの混合物などを用いることができる。また、メラミン樹脂としては、単量体または2量体以上の多量体からなる縮合物のいずれでもよく、これらの混合物でもよい。エーテル化に用いられる低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール及びイソブタノールなどを用いることができる。官能基としては、イミノ基、メチロール基、あるいはメトキシメチル基やブトキシメチル基等のアルコキシメチル基を1分子中に有するもので、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂及び完全アルキル型メチル化メラミン樹脂などである。その中でも、メチロール化メラミン樹脂が最も好ましく用いられる。
樹脂または化合物(r−B)として用いることができるメラミン樹脂としては、例えば、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、及びこれらの混合物などを用いることができる。また、メラミン樹脂としては、単量体または2量体以上の多量体からなる縮合物のいずれでもよく、これらの混合物でもよい。エーテル化に用いられる低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール及びイソブタノールなどを用いることができる。官能基としては、イミノ基、メチロール基、あるいはメトキシメチル基やブトキシメチル基等のアルコキシメチル基を1分子中に有するもので、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂及び完全アルキル型メチル化メラミン樹脂などである。その中でも、メチロール化メラミン樹脂が最も好ましく用いられる。
また、樹脂または化合物(r−B)として用いることができるオキサゾリン化合物は、該化合物中に官能基としてオキサゾリン基を有するものであり、オキサゾリン基を含有するモノマーを少なくとも1種以上含み、かつ、少なくとも1種の他のモノマーを共重合させて得られるオキサゾリン基含有共重合体からなるものが好ましい。
オキサゾリン基を含有するモノマーとしては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン及び2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどを用いることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することもできる。中でも、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。
オキサゾリン化合物において、オキサゾリン基を含有するモノマーに対して用いられる少なくとも1種の他のモノマーは、該オキサゾリン基を含有するモノマーと共重合可能なモノマーであり、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシルなどのアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどの不飽和アミド類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニルなどの含ハロゲン−α,β−不飽和モノマー類、スチレン及びα−メチルスチレンなどのα,β−不飽和芳香族モノマー類などを用いることができ、これらは1種または2種以上の混合物を使用することもできる。
また、樹脂または化合物(r−B)として用いることができるカルボジイミド化合物は、該化合物中に官能基としてカルボジイミド基、またはその互変異性の関係にあるシアナミド基を分子内に1個または2個以上有する化合物である。このようなカルボジイミド化合物の具体例としては、ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、テトラメチルキシリレンカルボジイミド及びウレア変性カルボジイミド等を挙げることができ、これらは1種または2種以上の混合物を使用することもできる。
また、樹脂または化合物(r−B)として用いることができるポリエステル樹脂は、主鎖あるいは側鎖にエステル結合を有するもので、ジカルボン酸とジオールから重縮合して得られるものが好ましい。
該ポリエステル樹脂の原料となるジカルボン酸としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸が使用できる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビスフェノキシエタン−p−p’−ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを用いることができる。脂肪族及び脂環族のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸など、及びそれらのエステル形成性誘導体を用いることができる。
該ポリエステル樹脂の原料となるジオール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1、3−シクロブタンジオール、4,4’−チオジフェノール、ビスフェノールA、4、4’−メチレンジフェノール、4、4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−、m−、及びp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、4,4’−イソプロピリデンビンジオール、シクロペンタン−1、2−ジオール、シクロヘキサン−1,2’−ジオール、シクロヘキサン−1、2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオールなどを用いることができる。
また、該ポリエステル樹脂として、変性ポリエステル共重合体、例えば、アクリル、ウレタン、エポキシなどで変性したブロック共重合体、グラフト共重合体などを用いることも可能である。
樹脂または化合物(r−B)として用いることができるアクリル樹脂は、特に限定されることはないが、アルキルメタクリレート及び/またはアルキルアクリレートから構成されるものが好ましい。アルキルメタクリレート及び/またはアルキルアクリレートとしては、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどを用いるのが好ましい。これらは1種もしくは2種以上を用いることができる。
また、樹脂または化合物(r−B)として用いることができるウレタン樹脂は、ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物を、乳化重合、懸濁重合などの公知のウレタン樹脂の重合方法によって反応させて得られる樹脂であることが好ましい。
ポリヒドロキシ化合物としては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン・プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリカプトラクトン、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリテトラメチレンセバケート、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ポリカーボネートジオール、グリセリンなどを挙げることができる。
ポリイソシアネート化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートとトリメチレンプロパンの付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールエタンの付加物などを用いることができる。
さらに、本発明の積層フィルムの樹脂層は、樹脂または化合物(r−B)としてイソシアネート化合物を含んでいても良い。イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、1,6−ジイソシアネートヘキサン、トリレンジイソシアネートとヘキサントリオールの付加物、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ポリオール変性ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ビトリレン−4,4’ジイソシアネート、3,3’ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネートなどが挙げられる。
さらに、イソシアネート基は水と反応し易いため、塗剤のポットライフの点で、イソシアネート基をブロック剤などでマスクしたブロックイソシアネート系化合物などを好適に用いることができる。この場合、樹脂フィルムに塗料組成物(r)を塗布した後の乾燥工程において熱がかかることで、ブロック剤が解離し、イソシアネート基が露出する結果、架橋反応が進行することになる。
塗料組成物(r)における前記樹脂または化合物(r−B)の含有量は、塗料組成物の全固形分質量に対して、10質量%以上90質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、40質量%以上80質量%以下、さらに好ましくは40質量%以上60質量%以下である。前記樹脂または化合物(r−B)の含有量を、塗料組成物(r)の全固形分質量に対して、10質量%以上90質量%以下とすることで、離型層(R)の外観品位を良好に維持することが可能となる。
[樹脂層(X)の塗料組成物(x)]
樹脂層(X)の製造には好適に使用可能な塗料組成物(x)が存在する。具体的には金属酸化物粒子、アクリル樹脂、バインダー樹脂、導電性化合物を含むことができる。また前記の成分に加えて、各種添加剤を含んでも良い。以下、成分の好ましい形態について詳細を記載する。
[金属酸化物粒子(x−C)]
本発明の積層フィルムでは、樹脂層(X)がSi、Al、Ti、Zr、Se、Feからなる群から選ばれる、少なくとも1種の金属元素を含む金属酸化物粒子(x−C)を含有することが好ましい。金属酸化物粒子(x−C)を含有することで、積層フィルム表層にナノ凹凸構造が形成され、滑り性が良化し、耐スクラッチ性に優れることができる。本発明の積層フィルムに用いられる金属酸化物粒子(x−C)としては、具体的には、二酸化珪素(シリカ)(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、二酸化チタン(TiO)、二酸化ジルコニウム(ZrO)、二酸化セレン(SeO)、酸化鉄(Fe)粒子などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用しても良い。
特に、金属酸化物粒子(x−C)として、酸化チタン(TiO)粒子、酸化アルミニウム(Al)粒子、酸化ジルコニウム(ZrO)粒子を用いると、帯電列の関係から効果的に帯電を抑制しつつ、耐スクラッチ性を付与することができ、好ましい。
本発明の積層フィルムに用いられる金属酸化物粒子(x−C)は、粒子径10〜100nmであると、積層フィルムの表面により緻密なナノ凹凸構造が形成され、摩擦力が分散された結果、耐スクラッチ性に優れるため好ましい。なお、本発明における金属酸化物粒子(x−C)の粒子径とは、以下の方法によって走査型電子顕微鏡(SEM)により求められる粒子径をいう。
(金属酸化物粒子(x−C)の粒子径の求め方)
ミクロトームを用いて、積層フィルムの表面に対して垂直方向に切削した小片を作成し、その断面を走査透過型電子顕微鏡(SEM)を用いて100000倍に拡大観察して撮影した。その断面写真よりフィルム中に存在する粒子の粒度分布を画像解析ソフトImage−Pro Plus(日本ローパー(株))を用いて求めた。断面写真は異なる任意の測定視野から選び出し、断面写真中から任意に選び出した200個以上の粒子の直径(円相当径)を測定し、横軸を粒子径、縦軸を粒子の存在比率としてプロットした体積基準粒度分布を得た。前記、体積基準粒度分布において、横軸を担う粒子径は、0nmを初点とした10nm間隔毎の階級により、縦軸を担う粒子の存在比率は、計算式「存在比率=該当する粒子径を持つ検出粒子の合計体積/全検出粒子の合計体積」により表す。上記により得られた粒子の存在比率のチャートから、極大を示すピークトップの粒子径を読み取る。
本発明の積層フィルムに用いられる金属酸化物粒子(x−C)は、更には、金属酸化物粒子(x−C)の表面の一部または全部に、アクリル樹脂(x−D)を有する組成物(x−CD)であることが好ましい。アクリル樹脂(x−D)を有する組成物(x−CD)とすることで、積層フィルム中の金属酸化物粒子(x−C)をナノ分散させることができ、積層フィルムに力が加わった際に該力を粒子へ分散させることができる。その結果、積層フィルムの耐スクラッチ性を向上させることが可能となる。また、積層フィルムの透明性も維持でき好ましい。
金属酸化物粒子(x−C)の表面の一部または全部に、アクリル樹脂(x−D)を有する組成物(x−CD)となるためには、後述する金属酸化物粒子(x−C)をアクリル樹脂(x−D)で表面処理する方法などを挙げることができる。具体的には、以下の(i)〜(iv)の方法が例示される。なお、本発明において、表面処理とは、特定の元素を有する金属酸化物粒子(x−C)の表面の全部または一部にアクリル樹脂(x−D)を吸着・付着させる処理をいう。
(i)金属酸化物粒子(x−C)とアクリル樹脂(x−D)をあらかじめ混合した混合物を溶媒中に添加した後、分散する方法。
(ii)溶媒中に、金属酸化物粒子(x−C)とアクリル樹脂(x−D)を順に添加して分散する方法。
(iii)溶媒中に、金属酸化物粒子(x−C)とアクリル樹脂(x−D)をあらかじめ分散し、得られた分散体を混合する方法。
(iv)溶媒中に、金属酸化物粒子(x−C)を分散した後、得られた分散体に、アクリル樹脂(d−2)を添加する方法。
これらのいずれの方法によっても目的とする効果を得ることができる。
また、分散を行う装置としては、ディゾルバー、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、ミーダー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、SCミル、アニュラー型ミル、ピン型ミル等が使用できる。
また、分散方法としては、上記装置を用いて、回転軸を周速5〜15m/sで回転させる。回転時間は5〜10時間である。
また、分散時に、ガラスビーズ等の分散ビーズを用いることが分散性を高める点でより好ましい。ビーズ径は、好ましくは0.05〜0.5mm、より好ましくは0.08〜0.5mm、特に好ましくは0.08〜0.2mmである。
混合、攪拌する方法は、容器を手で振って行ったり、マグネチックスターラーや攪拌羽根を用いたり、超音波照射、振動分散などを行うことができる。
なお、金属酸化物粒子(x−C)の表面の全部または一部への、アクリル樹脂(x−D)の吸着・付着の有無は、次の分析方法により確認可能である。測定対象物を、日立卓上超遠心機(日立工機株式会社製:CS150NX)により遠心分離を行い(回転数3,0000rpm、分離時間30分)、金属酸化物粒子(x−C)(及び金属酸化物粒子(x−C)の表面に吸着したアクリル樹脂(x−D))を沈降させた後、上澄み液を除去し、沈降物を濃縮乾固する。濃縮乾固した沈降物をX線光電子分光法(XPS)により分析し、金属酸化物粒子(x−C)の表面におけるアクリル樹脂(x−D)の有無を確認する。金属酸化物粒子(x−C)の表面に、金属酸化物粒子(x−C)の合計100重量%に対して、アクリル樹脂(x−D)が1重量%以上存在することが確認された場合、金属酸化物粒子(x−C)の表面に、アクリル樹脂(x−D)が吸着・付着しているものとする。
[アクリル樹脂(x−D)]
前述したとおり、本発明の積層フィルムにおいて、絶縁相(A)に含有する金属酸化物粒子(x−C)が、その表面の一部または全部に、アクリル樹脂(x−D)を有する組成物(x−CD)であることが好ましい。アクリル樹脂(x−D)を有する組成物(x−CD)を用いることで、積層フィルム中の金属酸化物粒子(x−C)をナノ分散させることができ、積層フィルムの透明性を維持すると共に、積層フィルムに力が加わった際に該力を粒子へ分散させることができる。その結果、積層フィルムの耐スクラッチ性を向上させることが可能となる。
本発明におけるアクリル樹脂(x−D)とは、式(1)で表されるモノマー単位(d)と、式(2)で表されるモノマー単位(d)と、式(3)で表されるモノマー単位(d)を有する樹脂であることが好ましい。
Figure 2021160175
(式(1)において、R基は、水素元素またはメチル基を表す。またnは、9以上34以下の整数を表す。)。
Figure 2021160175
(式(2)において、R基は、水素元素またはメチル基を表す。また、R基は、飽和の炭素環を2つ以上含む基を表す。)。
Figure 2021160175
(式(3)において、R基は、水素元素またはメチル基を表す。また、R基は、水酸基、カルボキシル基、3級アミノ基、4級アンモニウム塩基、スルホン酸基、または、リン酸基を表す。)
ここで、本発明におけるアクリル樹脂(x−D)は、式(1)で表されるモノマー単位(d)を有する樹脂であることが好ましい。
式(1)において、nが9未満のモノマー単位を有するアクリル樹脂を用いると、水系溶媒(水系溶媒の詳細については、後述する。)中における金属酸化物粒子(x−C)の分散性が不安定となる。式(1)におけるnが9未満のモノマー単位を有するアクリル樹脂を用いると、塗料組成物中において金属酸化物粒子(x−C)が激しく凝集し、場合によっては水系溶媒中で金属酸化物粒子(x−C)が沈降することがある。その結果、積層フィルムの透明性が損なわれる場合や、突起物となり欠点に繋がる場合がある。一方、式(1)におけるnが34を越えるモノマー単位を有するアクリル樹脂は、水系溶媒への溶解性が著しく低いので、水系溶媒中においてアクリル樹脂の凝集が起こりやすくなる。かかる凝集体は、可視光の波長より大きいため、透明性の良好な積層フィルムを得ることができなくなる場合や、本発明の積層フィルムの表層にさらに塗膜積層した際に干渉斑が不良となる場合がある。上記のような式(1)で表されるモノマー単位(d)を有する樹脂を用いることで、金属酸化物粒子(x−C)が適度な相互作用で水系溶媒中では分散する一方で、乾燥後は複数の金属酸化物粒子(x−C)が異方性を持って、積層フィルムでナノオーダーレベルに微細に凝集し、積層フィルムの表面に非円形状の絶縁性ドメインを形成するため、導電性材料の暴露を抑えることができ、帯電防止性の経時変化に対する耐性を向上することができる。
本発明におけるアクリル樹脂(x−D)が、式(1)で表されるモノマー単位(d)を有するためには、次の式(4)で表される(メタ)アクリレートモノマー(d’)を原料として用い、重合することが必要である。
該(メタ)アクリレートモノマー(d’)としては、式(4)におけるnが9以上34以下の整数で表される(メタ)アクリレートモノマーが好ましく、より好ましくは11以上32以下の(メタ)アクリレートモノマー、更に好ましくは13以上30以下の(メタ)アクリレートモノマーである。
Figure 2021160175
(メタ)アクリレートモノマー(d’)は、式(4)におけるnが9以上34以下である(メタ)アクリレートモノマーであれば特に制限されないが、具体的にはデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、1−メチルトリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート、テトラコシル(メタ)アクリレート、トリアコンチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、特にドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレートが好ましい。これらは1種で使用してもよく、2種以上の混合物を使用してもよい。
また、本発明におけるアクリル樹脂(x−D)は、前記式(2)で表されるモノマー単位(d)を有する樹脂であることが重要である。
式(2)において、飽和の炭素環を1つのみ含むモノマー単位を有するアクリル樹脂を用いると、立体障害としての機能が不十分となり、塗料組成物中において金属酸化物粒子(x−C)が凝集または沈降したり、場合によっては水系溶媒中で金属酸化物粒子(x−C)が沈降することがある。その結果、積層フィルムの透明性が損なわれる場合や、突起物となり欠点に繋がる場合ある。
かかる凝集体は、可視光の波長より大きいため、透明性の良好な積層フィルムを得ることができなくなる場合ある。本発明におけるアクリル樹脂(x−D)が、式(2)で表されるモノマー単位(d)を有するためには、次の式(5)で表される(メタ)アクリレートモノマー(d’)を原料として用い、重合することが必要である。
式(5)で表される(メタ)アクリレートモノマー(d’)としては、架橋縮合環式(2つまたはそれ以上の環がそれぞれ2個の元素を共有して、結合した構造を有する)、スピロ環式(1個の炭素元素を共有して、2つの環状構造が結合した構造を有する)などの各種環状構造、具体的には、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ基などを有する化合物が例示でき、その中でも特にバインダーとの相溶性の観点から、ビシクロ基を含有する(メタ)アクリレートが好ましい。
Figure 2021160175
上記ビシクロ基を含有する(メタ)アクリレートとしては、イソボニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、ジシロクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、特にイソボニル(メタ)アクリレートが好ましい。
さらに、本発明におけるアクリル樹脂(x−D)は、前記式(3)で表されるモノマー単位(d)を有する樹脂であることが好ましい。
式(3)におけるR基が、水酸基、カルボキシル基、3級アミノ基、4級アンモニウム基、スルホン酸基、リン酸基、のいずれも有しないモノマー単位を有するアクリル樹脂を用いると、アクリル樹脂の水系溶媒中への相溶性が不十分となり、塗料組成物中において、アクリル樹脂が析出したり、それに伴い金属酸化物粒子(x−C)が凝集または沈降したり、乾燥工程において金属酸化物粒子(x−C)が凝集したりすることがある。
かかる凝集体は、可視光の波長より大きいため、透明性の良好な積層フィルムを得ることができなくなる場合がある。本発明におけるアクリル樹脂(x−D)が、式(3)で表されるモノマー単位(d)を有するためには、式(6)で表される(メタ)アクリレートモノマ(d’)を原料として用い、重合することが必要である。
式(6)で表される(メタ)アクリレートモノマー(d’)として次の化合物が例示される。
Figure 2021160175
水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2、3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステル化物、あるいは、該モノエステル化物にε−カプロラプトンを開環重合した化合物などが挙げられ、特に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましい。
カルボキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸などのα、β−不飽和カルボン酸、あるいは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと酸無水物とのハーフエステル化物などが挙げられ、特にアクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
3級アミノ基含有モノマーとしては、N、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、などのN、N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのN、N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられ、特にN、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
4級アンモニウム塩基含有モノマーとしては、上記3級アミノ基含有モノマーにエピハロヒドリン、ハロゲン化ベンジル、ハロゲン化アルキルなどの4級化剤を作用させたものが好ましく、具体的には、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムブロマイド、2−(メタクリロイオキシ)エチルトリメチルアンモニウムジメチルホスフェートなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウム塩、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムブロマイドなどの(メタ)アクリロイルアミノアルキルトリアルキルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム(メタ)アクリレートなどのテトラアルキル(メタ)アクリレート、トリメチルベンジルアンモニウム(メタ)アクリレートなどのトリアルキルベンジルアンモニウム(メタ)アクリレートなどが挙げられ、特に2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライドが好ましい。
スルホン酸基含有モノマーとしては、ブチルアクリルアミドスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などの(メタ)アクリルアミド−アルカンスルホン酸、あるいは、2−スルホエチル(メタ)アクリレートなどのスルホアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、特に2−スルホエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
リン酸基含有アクリルモノマーとしては、アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、特にアシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
この中でも、特にアクリル樹脂(x−D)が、前記式(3)で表されるモノマー単位(d)を有する樹脂であり、式(3)におけるR基が、水酸基、カルボキシル基であることが、後述する金属酸化物粒子(x−C)と吸着力が高く、より強固な膜を形成できる点で好ましい。
本発明では、積層フィルム中のアクリル樹脂(x−D)の含有量は5〜30重量%であることが好ましく、この範囲とすることで、金属酸化物粒子(x−C)とアクリル樹脂(x−D)の吸着が強固になり、積層フィルムの耐スクラッチ性を向上させることができる。
特に、アクリル樹脂(x−D)の含有量は、積層フィルム全体に対して5重量%以上30重量%以下であることがより、好ましく、積層フィルム中のアクリル樹脂(x−D)の含有量は、10重量%以上30量%以下がより好ましい。なお、本発明において、積層フィルム中の含有量とは、積層フィルムを形成する塗料組成物の固形分([(塗料組成物の重量)−(溶媒の重量)])中の含有量を表す。
本発明の積層フィルムは、積層フィルムの金属酸化物粒子(x−C)含有量が、積層フィルム全体に対して、15〜50重量%であると、積層フィルム中に金属酸化物粒子(x−C)が充填されることで、導電材料が積層フィルムの表面に露出することを防ぎ、帯電防止性能が安定化しやすくなる。また粒子成分の面積が増加することで、積層フィルム全体の硬度が向上し、耐スクラッチ性に優れるため好ましい。金属酸化物粒子(x−C)の含有率は、好ましくは20〜50重量%、より好ましくは30〜50重量%である。
[バインダー樹脂]
本発明の離型層(R)および樹脂層(X)では、成分として、バインダー樹脂を含有することが好ましい。バインダー樹脂とは、公知のアクリル樹脂やポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、およびそれらの共重合体が含まれる。
ウレタン樹脂としては、例えば、ポリイソシアネート化合物(I)由来の構成単位とポリオール(II)単位を有する樹脂を使用することができる。尚、ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート化合物(I)単位及びポリオール(II)単位以外の他の単位(例えば、カルボン酸単位、アミン単位など)を有していてもよい。
ポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリアクリル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂などである。ポリウレタン樹脂は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ポリイソシアネート化合物(I)としては、イソシアネート基を2個以上有するもので
あれば、特に限定されない。
ポリイソシアネート化合物(I)としては、例えば、ポリイソシアネート(例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートなど)、ポリイソシアネートの変性体[又は誘導体、例えば、多量体(二量体、三量体など)、カルボジイミド体、ビウレット体、アロファネート体、ウレットジオン体、ポリアミン変性体など]などが挙げられる。ポリイソシアネート化合物(I)は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。脂肪族ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、脂肪族ジイソシアネート[例えば、アルカンジイソシアネート(例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネートなどのC2−20アルカンジイソシアネート、好ましくはC4−12アルカンジイソシアネートなど)]、3以上のイソシアネート基を有する脂肪族ポリイソシアネート(例えば、1,4,8−トリイソシアナトオクタンなどの脂肪族トリ乃至ヘキサイソシアネートなど)などが挙げられる。
脂環族ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、脂環族ジイソシアネート{例えば、シクロアルカンジイソシアネート(例えば、メチル−2,4−又は2,6−シクロヘキサンジイソシアネートなどのC5−8シクロアルカンジイソシアネートなど)、イソシアナトアルキルシクロアルカンイソシアネート[例えば、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)などのイソシアナトC1−6アルキルC5−10シクロアルカンイソシアネートなど]、ジ(イソシアナトアルキル)シクロアルカン[例えば、水添キシリレンジイソシアネートなどのジ(イソシアナトC1−6アルキル)C5−10シクロアルカン]、ジ(イソシアナトシクロアルキル)アルカン[例えば、水添ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(4,4’−メチレンビスシクロヘキシルイソシアネート)などのビス(イソシアナトC5−10シクロアルキル)C1−10アルカンなど]、ポリシクロアルカンジイソシアネート(ノルボルナンジイソシアネートなど)など}、3以上のイソシアネート基を有する脂環族ポリイソシアネート(例えば、1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサンなどの脂環族トリ乃至ヘキサイソシアネートなど)などが挙げられる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、芳香脂肪族ジイソシアネート{例えば、ジ(イソシアナトアルキル)アレーン[例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)(1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン)などのビス(イソシアナトC1−6アルキル)C6−12アレーンなど]}、3以上のイソシアネート基を有する芳香脂肪族ポリイソシアネート(例えば、芳香脂肪族トリ乃至ヘキサイソシアネートなど)などが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、芳香族ジイソシアネート{例えば、アレーンジイソシアネート[例えば、o−,m−又はp−フェニレンジイソシアネート、クロロフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)などのC6−12アレーンジイソシアネートなど]、ジ(イソシアナトアリール)アルカン[例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートなど)、トリジンジイソシアネートなどのビス(イソシアナトC6−10アリール)C1−10アルカンなど]、3以上のイソシアネート基を有する芳香族ポリイソシアネート(例えば、4,4’−ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネートなどの芳香族トリ乃至ヘキサイソシアネートなど)などが挙げられる。
本発明ではポリイソシアネート化合物(I)として、脂環族ポリイソシアネートを用いることが、耐クラック性の点で好ましい。
ポリオール(II)としては、ヒドロキシル基を2個以上有するものであれば、特に限定されない。
ポリオール(II)としては、例えば、ポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオールなどが挙げられる。ポリオール(II)は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ポリアクリルポリオールとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル単位とヒドロキシル基を有する成分由来の単位(ヒドロキシル基を有する成分単位)を有する共重合体などである。ポリアクリルポリオールは、(メタ)アクリル酸エステル単位とヒドロキシル基を有する成分単位以外の単位を有していてもよい。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価カルボン酸成分単位とポリオール成分単位を有する共重合体などである。ポリエステルポリオールは、多価カルボン酸成分単位とポリオール成分単位以外の単位を有していてもよい。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、多価アルコールにアルキレンオキシドを付加させた共重合体などである。多価アルコールとしては、特に限定されず、例えば、上記した二価アルコールなどを使用することができる。多価アルコールは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
また、アルキレンオキシドとしては、特に限定されず、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのC2−12アルキレンオキシドなどが挙げられる。アルキレンオキシドは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。ポリウレタン樹脂は、構成成分として、鎖延長剤を含んでいてもよい(又は、鎖延長剤由来の構成単位を有していてもよい)。
鎖延長剤としては、特に限定されず、例えば、グリコール類(例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオールなどのC2−6アルカンジオール)、多価アルコール類(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのC2−6アルカントリ乃至ヘキサオール)、ジアミン類(例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などの一般的な鎖延長剤を使用してよい。
本発明の樹脂層(X)は、エーテル成分を含有することが好ましい。エーテル成分を含有することで、ポリエーテル構造の高柔軟性ゆえ、加工時に発生する応力を緩和することができ、加工性を向上させることができる。
さらに、本発明の積層フィルムは、エーテル成分とともにウレタン成分を含有することが好ましい。 上記のようなウレタン樹脂成分を用いると、ウレタン樹脂成分の親水性が高くなる。そのため、金属酸化物粒子(x−C)や金属酸化物粒子(x−C)の表面の一部または全部にアクリル樹脂(x−D)を有する組成物(x−CD)と、ウレタン樹脂成分を含む塗料組成物(x)を支持基材となる樹脂層(A)の少なくとも片面に塗布した後に加熱して樹脂層(X)を形成せしめる際に、親水性の高いウレタン樹脂成分は樹脂層(X)内において支持基材となる樹脂層(A)側に偏在し、比較的親水性の低い金属酸化物粒子(x−C)や金属酸化物粒子(x−C)の表面の一部または全部にアクリル樹脂(x−D)を有する組成物(x−CD)は樹脂層(X)の表面近傍に偏在するという相分離構造を形成することができる。樹脂層(X)の表面近傍に金属酸化物粒子(x−C)、樹脂層(X)の樹脂層(A)との界面近傍にウレタン樹脂成分を偏在化させる相分離構造を有することで、樹脂層(X)の表面近傍に高い弾性率を有するドメイン(島成分)を形成させることができるために耐スクラッチ性を発現しつつ、樹脂層(X)の内層では柔軟なウレタン樹脂成分による応力緩和によって加工性を発現するため、耐スクラッチ性、加工性を高いレベルで両立することができるため好ましい。
[その他成分]
本発明の積層フィルムにおいては、樹脂層(X)が、メラミン化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する塗料組成物により形成されると、積層フィルムが緻密架橋構造となるため、耐スクラッチ性および帯電防止性能の安定性に優れ好ましい。そのため、本発明の積層フィルムの導電相(B)は、メラミン化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、エポキシ化合物に由来する成分を含むことが好ましい。
特に、その中でもメラミン化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物を含む塗料組成物(x)を用いると、積層フィルムに窒素含有官能基が導入されるため、極性力が向上し、次加工にて塗布層やスパッタ層、蒸着層など金属層との接着性が向上し、好ましい。
さらに導電性との両立の観点からは、メラミン化合物については一部導電性材料との共存下で抵抗値の上昇が見られる場合があるため、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種を含む塗料組成物(x)を用いることが好ましい。
一方、透明性などの光学特性との両立を必要とする場合には、メラミン化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、エポキシ化合物などの架橋剤の中から2種類以上の材料を併用することが好ましい。2種類以上の架橋剤を併用することで導電性の安定性や耐キズ性の向上に必要な架橋性を維持しながら、個別の材料の添加量を低減することで樹脂成分との相溶性を付与することが容易となる。中でも、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物から選ばれる少なくとも2種を含む塗料組成物(x)を用いることが好ましい。
メラミン系化合物としては、例えば、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、及びこれらの混合物などを用いることができる。具体的には、トリアジンとメチロール基を有する化合物が特に好ましい。本発明におけるメラミン化合物とは、次に述べるメラミン化合物が、ウレタン樹脂や、アクリル樹脂、オキサゾリン化合物、またはカルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、エポキシ化合物などと架橋構造を形成する場合は、メラミン化合物に由来する成分を意味する。またメラミン系化合物としては単量体、2量体以上の多量体からなる縮合物にいずれでもよく、これらの混合物でもよい。エーテル化に用いられる低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノールなどを用いることができる。基としては、イミノ基、メチロール基、あるいはメトキシメチル基やブトキシメチル基等のアルコキシメチル基を1分子中に有するもので、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂、完全アルキル型メチル化メラミン樹脂などである。その中でもメチロール化メラミン樹脂が最も好ましい。更に、メラミン系化合物の熱硬化を促進するため、例えばp−トルエンスルホン酸などの酸性触媒を用いてもよい。
このようなメラミン系化合物用いると、メラミン系化合物の自己縮合による塗膜硬度アップによる耐スクラッチ性向上が見られるだけでなく、アクリル樹脂に含まれる水酸基やカルボン基とメラミン系化合物の反応が進行し、より強固な積層フィルムを得ることができ、耐スクラッチ性に優れるフィルムを得ることができる。
オキサゾリン化合物とは、次に述べるオキサゾリン化合物、もしくはオキサゾリン化合物がウレタン樹脂(d−2)や、アクリル樹脂(x−D)、メラミン化合物、イソシアネート化合物、またはカルボジイミド化合物などと架橋構造を形成する場合は、オキサゾリン化合物に由来する成分を意味する。オキサゾリン化合物としては、該化合物中に官能基としてオキサゾリン基を有するものであれば特に限定されるものではないが、オキサゾリン基を含有するモノマーを少なくとも1種以上含み、かつ、少なくとも1種の他のモノマーを共重合させて得られるオキサゾリン基含有共重合体からなるものが好ましい。
オキサゾリン基を含有するモノマーとしては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどを用いることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することもできる。中でも、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。
オキサゾリン化合物において、オキサゾリン基を含有するモノマーに対して用いられる少なくとも1種の他のモノマーとしては、該オキサゾリン基を含有するモノマーと共重合可能なモノマーであれば、特に限定されないが、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシルなどのアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどの不飽和アミド類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニルなどの含ハロゲン−α,β−不飽和モノマー類、スチレン、α−メチルスチレンなどのα,β−不飽和芳香族モノマー類などを用いることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することもできる。
本発明におけるカルボジイミド化合物とは、次に述べるカルボジイミド化合物、もしくはカルボジイミド化合物がウレタン樹脂や、アクリル樹脂、メラミン化合物、イソシアネート化合物、またはオキサゾリン化合物などと架橋構造を形成する場合は、カルボジイミド化合物に由来する成分を意味する。カルボジイミド化合物とは、該化合物中に官能基としてカルボジイミド基、またはその互変異性の関係にあるシアナミド基を分子内に1個または2個以上有する化合物であれば特に限定されるものではない。
カルボジイミド化合物の製造には公知の技術を適用することができ、一般的には、ジイソシアネート化合物を触媒存在下で重縮合することによりカルボジイミド化合物が得られる。該カルボジイミド化合物の出発原料であるジイソシアネート化合物としては、芳香族、脂肪族、脂環式ジイソシアネートなどを用いることができ、具体的にはトリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネートなどを用いることができる。
[積層フィルムの製造方法]
本発明の積層フィルムの製造方法について以下に例を示して説明するが、以下に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す例により限定的に解釈されるべきものではない。
本発明の積層フィルムは、離型層(R)を形成する塗料組成物(r)と樹脂層(X)を形成する塗料組成物(x)を、同時ないしは逐次塗布し、塗料組成物が溶媒ないしは分散媒を含む場合には、これらを乾燥させることによって、樹脂層(A)の両面に離型層(R)および樹脂層(X)を形成することによって得ることができる。
また本発明において、塗料組成物に溶媒ないしは分散媒を含有せしめる場合は、溶媒ないは分散媒として水溶性媒体を用いること(水系塗剤とすること)が好ましい。水溶性媒体を用いることで、乾燥工程での溶媒の急激な蒸発を抑制でき、均一な組成物層を形成できるだけでなく、環境負荷の点で優れているためである。
ここで、水溶性媒体とは、水、または水とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類など水に可溶である有機溶媒が任意の比率で混合させているものを指す。
なお、各種成分を水系塗剤化する方法としては、カルボン酸やスルホン酸といった親水基を含有せしめる方法や、乳化剤を用いてエマルジョン化する方法が挙げられる。
塗料組成物(r)および塗料組成物(x)の樹脂フィルムへの塗布方法はインラインコート法であることが好ましい。インラインコート法とは、支持基材である樹脂層(A)となる樹脂フィルム、特にポリエステルフィルムの製造の工程内で塗布を行う方法である。具体的には、ポリエステル樹脂を溶融押し出ししてから二軸延伸後熱処理して巻き上げるまでの任意の段階で塗布を行う方法を指し、通常は、溶融押出し後・急冷して得られる実質的に非晶状態の未延伸(未配向)ポリエステルフィルム(Aフィルム)、その後に長手方向に延伸された一軸延伸(一軸配向)ポリエステルフィルム(Bフィルム)、またはさらに幅方向に延伸された熱処理前の二軸延伸(二軸配向)ポリエステルフィルム(Cフィルム)の何れかのフィルムに塗布する。
本発明では、結晶配向が完了する前の上記Aフィルム、Bフィルム、の何れかのポリエステルフィルムに、塗料組成物を塗布し、その後、ポリエステルフィルムを一軸方向又は二軸方向に延伸し、溶媒の沸点より高い温度で熱処理を施しポリエステルフィルムの結晶配向を完了させるとともに離型層(R)および樹脂層(X)を設ける方法を採用することが好ましい。この方法によれば、ポリエステルフィルムの製膜と、塗料組成物の塗布乾燥(すなわち、離型層(R)および樹脂層(X)の形成)を同時に行うことができるために製造コスト上のメリットがある。また、塗布後に延伸を行うことで樹脂層(X)中の金属酸化物粒子(x−C)の凝集状態を制御することが可能となり、耐スクラッチ性や帯電防止性を向上することが出来る。
中でも、長手方向に一軸延伸されたフィルム(Bフィルム)に、各種塗料組成物を塗布し、その後、幅方向に延伸し、熱処理する方法が優れている。未延伸フィルムに塗布した後、二軸延伸する方法に比べ、延伸工程が1回少ないため、延伸による組成物層の欠陥や亀裂が発生しづらく、透明性や平滑性、帯電防止性に優れた組成物層を形成できるためである。
更に、インラインコート法で離型層(R)および樹脂層(X)を同時に設けることにより、塗料組成物を塗布した後に延伸処理が施されることによって、金属酸化物粒子(x−C)の表面配列が促進され、また、金属酸化物粒子(x−C)が異方性を持った凝集体とすることが促進され、その結果、樹脂層(X)の形状最適化し、帯電防止性を発現すると共に、耐スクラッチ性の安定性を良好にすることができる。
本発明において離型層(R)および樹脂層(X)は、上述した種々の利点から、インラインコート法により設けられることが好ましい。ここで、樹脂フィルムへの塗料組成物の塗布方式は、公知の塗布方式、例えばバーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ブレードコート法等の任意の方式を用いることができる。
本発明において最良の積層フィルムの形成方法は、水系溶媒を用いた各種塗料組成物を、ポリエステルフィルムの各面にインラインコート法を用いて順次塗布し、乾燥、熱処理することによって形成する方法である。またより好ましくは、一軸延伸後のBフィルムに各種塗料組成物を順次インラインコートする方法である。本発明の積層フィルムの製造方法において、乾燥は塗料組成物の溶媒の除去を完了させるために、80〜130℃の温度範囲で実施することができる。また、熱処理はポリエステルフィルムの結晶配向を完了させるとともに塗料組成物の熱硬化を完了させ離型層(R)および樹脂層(X)の形成を完了させるために、160〜240℃の温度範囲で実施することができる。上記の高温熱処理の温度および時間を変更することで、絶縁相(A)や導電相(B)の好ましい弾性率を調整することが可能であり、耐スクラッチ性や離型性を良好にすることが出来る。
次に、本発明の積層フィルムの製造方法について、ポリエステルフィルムとしてポリエチレンテレフタレート(以下、PET)フィルムを用いた場合を例に説明する。まず、PETのペレットを十分に真空乾燥した後、押出機に供給し、約280℃で溶融押し出しし、冷却された金属ドラムロールの上にてシート状に冷却固化せしめて未延伸(未配向)PETフィルム(Aフィルム)を作製する。このフィルムを80〜120℃に加熱したロールで長手方向に2.5〜5.0倍延伸して一軸配向PETフィルム(Bフィルム)を得る。このBフィルムの両面に所定の濃度に調製した本発明の好ましい塗料組成物を塗布する。なお塗布面はいずれでも良いが、品位の観点から前述のAフィルム製造時に冷却ドラムに接触した面に離型層(R)を、反対面に樹脂層(X)を形成することが特に好ましい。
この時、塗布前にPETフィルムの塗布面にコロナ放電処理等の表面処理を行ってもよい。コロナ放電処理等の表面処理を行うことで、塗料組成物のPETフィルムへの濡れ性が向上し、塗料組成物のはじきを防止し、均一な塗布厚みの樹脂層(X)を形成することができる。塗布後、PETフィルムの端部をクリップで把持して80〜130℃の熱処理ゾーン(予熱ゾーン)へ導き、塗料組成物の溶媒を乾燥させる。乾燥後幅方向に1.1〜5.0倍延伸する。引き続き160〜240℃の熱処理ゾーン(熱固定ゾーン)へ導き1〜30秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させる。
この熱処理工程(熱固定工程)で、必要に応じて幅方向、あるいは長手方向に3〜15%の弛緩処理を施してもよい。かくして得られた積層フィルムは離型性、耐スクラッチ性、帯電防止性に優れた積層フィルムとなる。
なお、本発明の積層フィルムは、離型層(R)ないしは樹脂層(X)と支持基材となる樹脂層(A)との間に中間層を設けても良いが、中間層を設ける場合は、中間層を積層したフィルムの巻き取り時や、その後の本発明の樹脂層(X)を設けるまでの工程において、フィルムの品位が低下する場合がある。そのため、本発明では、樹脂層(X)と支持基材が直接積層されていることが好ましい。
本発明の積層フィルムは、支持基材となる樹脂層(A)の構成に制限はなく、例えば、A層のみからなる単層構成や、A層/B層の積層構成すなわち2種2層積層構成、A層/B層/A層の積層構成すなわち2種3層積層構成、A層/B層/C層の積層構成すなわち3種3層積層構成等の構成を挙げることができる。
本発明の積層フィルムにおける支持基材となる樹脂層(A)の積層方法は制限されるものではなく、例えば、共押出法による積層方法、貼り合わせによる積層方法、これの組み合わせによる方法等を挙げることができるが、透明性と製造安定性の観点から、共押出法を採用することが好ましい。積層体とする場合、それぞれの層に異なる機能を付与すること目的として、異なる樹脂構成としても良い。例えば、A層/B層/A層の積層構成すなわち2種3層積層構成とする場合には、透明性の観点からB層をホモポリエチレンテレフタレートで構成し、A層には、易滑性付与のために、粒子を添加する等の方法を挙げることができる。
[特性の測定方法および効果の評価方法]
本発明における特性の測定方法および効果の評価方法は次のとおりである。
(1)積層フィルムの測定
(1-1)摩擦帯電量
摩擦帯電量は以下の方法で測定した。積層フィルムの試験片を2枚切り出し、離型層(R)と樹脂層(X)が接するように積層した。次いで、試験片同士を長手方向に100mmのストロークで10往復こすり合わせた。剥離試験機に前述の試験片を設置し、春日電気株式会社製デジタル低電位測定器KSD−0202(静電電位測定器)にて、試験片の剥離点までのセンサーの距離を6mmとし、300mm/分の速度、90°の剥離角度にて剥離し、電位を測定した。得られた帯電量の20秒から40秒(すなわち100〜200mmの範囲)の帯電量を5秒間隔で5点読み取り、その平均値を摩擦帯電量とした。その他の測定条件は以下の通りである。
試験片を23℃±1℃、50%±2%の相対湿度に調湿する。
試験片の寸法:幅8mm、長さ300mm
測定室の条件:恒温恒湿(23℃±1℃、50%±2%の相対湿度)
(1−2)ヘイズ(透明性)
ヘイズの測定は、常態(23℃、相対湿度50%)において、積層フィルムサンプルを40時間放置した後、日本電色工業(株)製濁度計「NDH5000」を用いて、JIS K 7136「透明材料のヘイズの求め方」(2000年版)に準ずる方式で行った。なお、サンプルの樹脂層(X)面側から光を照射して測定した。サンプルは一辺50mmの正方形のものを10サンプル準備し、それぞれ1回ずつ、合計10回測定した平均値をサンプルのヘイズ値とした。
(2)離型層(R)の測定
(2−1)フッ素およびシリコーンの有無
GCIB−TOF−SIMS(GCIB:ガスクラスターイオンビーム、TOF−SIMS:飛行時間型二次イオン質量分析法)を用いて、積層フィルムの樹脂層表面の組成を分析した。測定条件は、下記の通りであった。
<スパッタリング条件>
イオン源:アルゴンガスクラスターイオンビーム
<検出条件>
1次イオン:Bi3++(25keV)
2次イオン極性:Negative
質量範囲:m/z 0〜1000
測定範囲:200×200μm
最大強度で検出されるフラグメントのピーク強度をK、ポリジメチルシロキサンに由来するフラグメント(SiCH フラグメントイオン(M/Z=43))のピーク強度をPsとし、その比Ps/Kを算出した。Ps/K<0.01の場合、離型層(R)は実質的にシリコーン化合物を含んでいないと判断した。
同様に炭化フッ素に由来するフラグメント(CF2 +フラグメントイオン(M/Z=50))のピーク強度をPfとし、比Pf/Kを算出、Pf/K<0.01の場合、離型層(R)は実質的にフッ素化合物を含んでいないと判断した。
(2−2)強押し込み硬度と弱押し込み硬度
測定には(株)エリオニクス製のナノインデンター「ENT−2100」を用いた。積層体の測定面とは反対側に、東亞合成株式会社製「“アロンアルファ”(登録商標) プロ用耐衝撃」を1滴塗布し、瞬間接着剤を介して積層体を専用のサンプル固定台に固定して、積層体の表面層を測定面として測定を行った。測定には稜間角115°の三角錐ダイヤモンド圧子(Berkovich圧子)を用いた。
測定モード:負荷−除荷試験
最大荷重に達した時の保持時間:1秒
荷重速度、除荷速度:10mN/sec。
測定データは「ENT−2100」の専用解析ソフト(version 6.18)により処理した。測定に使用する最大荷重を0.5mNから始め、変形量が10nmを超える場合には荷重を0.05mNずつ低減し、変形量が10nmに満たない場合には0.05mNずつ増加し、同様の測定を繰り返した。 得られた押し込み弾性率のうち、その変形量が10nmを超える最小の弾性率を樹脂層(X)の最表面側から測定した強押し込み弾性率[GPa]として採用した。
同様に最大荷重を0.1mNから始め、変形量が2nmを超える場合には荷重を0.05mNずつ低減し、変形量が10nmに満たない場合には0.05mNずつ増加し、同様の測定を繰り返した。 得られた押し込み弾性率のうち、その変形量が2nmを超える最小の弾性率を樹脂層(X)の最表面側から測定した弱押し込み弾性率[GPa]として採用した。
(2−3)離型層(R)の離型性(テープ剥離力)
初期テープ剥離力は下記の手順で測定した。まず、アクリル系ポリエステル粘着テープ(日東電工社製、日東31Bテープ、19mm幅)を、本発明の積層フィルムの樹脂層上に貼り合わせ、その上から、2kgfのローラを1往復させ、テープ貼合積層フィルムを作成した。その後、テープ貼合積層フィルムを25℃65%RHの環境下に24時間静置した後、島津(株)製万能試験機「オートグラフAG‐1S」を用いて、剥離角度180°、引張速度300mm/分で剥離力(N/19mm)を測定した。測定により得られた、剥離力(N/19mm)−試験時間(sec)のグラフから、5〜10secにおける剥離力の平均値を算出した。この測定を5回行い、最大値と最小値を省いた3回の平均を積層フィルムの剥離力(N/19mm)とし、その値をN/50mmに換算した値を初期テープ剥離力とした(すなわち、[初期テープ剥離力(N/50mm)]=[剥離力(N/19mm)]/19×50)。
(2−4)離型層(R)厚み
積層フィルムについて、OsO染色超薄膜切片方法により試料を作製した。得られた試料の断面について、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することにより、積層フィルム上の樹脂層の厚みを測定した。樹脂層の厚みは、TEMにより20万倍の倍率で撮影した画像から樹脂層の厚みを読み取った。20点の樹脂層厚みを測定し、その平均値を樹脂層の膜厚(nm)とした。
・測定装置:透過型電子顕微鏡(日立(株)製 H−7100FA型)。
(2−5)外観ムラ
積層フィルムの樹脂層(X)側に黒色光沢テープ(ヤマト(株)製、ビニ−ルテープNo.200−50−21:黒)を、気泡を噛み込まないように貼り合わせた。
このサンプルを暗室にて3波長蛍光灯(パナソニック(株)製、3波長形昼白色(F・L 15EX−N 15W))の直下30cmに置き、視角を変えながら目視により干渉ムラの程度を観察し、以下の評価を行った。B以上のものを良好とした。
A:干渉ムラがほぼ見えない
B:干渉ムラがわずかに見える
C:干渉ムラが強い。
(3)樹脂層(X)の測定
(3−1)ナノインデンターよる強押し込み弾性率
測定には(株)エリオニクス製のナノインデンター「ENT−2100」を用いた。積層体の測定面とは反対側に、東亞合成株式会社製「“アロンアルファ”(登録商標) プロ用耐衝撃」を1滴塗布し、瞬間接着剤を介して積層体を専用のサンプル固定台に固定して、積層体の表面層を測定面として測定を行った。測定には稜間角115°の三角錐ダイヤモンド圧子(Berkovich圧子)を用いた。
測定モード:負荷−除荷試験
最大荷重に達した時の保持時間:1秒
荷重速度、除荷速度:10mN/sec。
測定データは「ENT−2100」の専用解析ソフト(version 6.18)により処理した。測定に使用する最大荷重は0.5mNから始め、変形量が10nmを超える場合には荷重を0.05mNずつ低減し、変形量が10nmに満たない場合には0.05mNずつ増加し、同様の測定を繰り返した。 得られた押し込み弾性率のうち、その変形量が10nmを超える最小の弾性率を樹脂層(X)の最表面側から測定した強押し込み弾性率[GPa]として採用した。
(3−2)耐スクラッチ性
以下の条件で擦過処理を実施した後の積層フィルムの樹脂層(X)面における傷の発生の有無を目視で確認し、下記評価を実施した。
[擦過処理]積層フィルムの樹脂層(X)をスチールウール(ボンスター#0000、日本スチールウール(株)製)を荷重200g/cmで10往復擦過する。
S:傷なし
A:傷1〜5本
B:傷6〜10本
C:傷11〜15本
D:傷16本以上。
(3−3)樹脂層(X)の金属酸化物粒子(x−C)含有有無
SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて樹脂層(X)の表面を10万倍の倍率で観察することにより、ポリエステルフィルム上の樹脂層(X)について、EDX(エネルギー分散型X線分光法)による元素分析を実施し、金属酸化物粒子(x−C)の含有有無を判断した。
具体的には、日立ハイテクノロジーズ製電界放射型走査電子顕微鏡(型番S−4800)で観察される、樹脂層(X)について、BrukerAXS製QUANTAX Flat QUAD System (型番 Xflash 5060FQ)で元素検出を測定し、Si、Al、Ti、Zr、Se、Feからなる群から選ばれる、少なくとも1種の金属元素が検出された場合、金属酸化物粒子(x−C)を有すると判定した。
<参考例>
・離型剤(r−A):
長鎖アルキルアクリレート化合物(rA―1):
攪拌機、温度計、コンデンサーを備えた温度調整可能な4つ口フラスコにキシレン200部、オクタデシルイソシアネート600部を加え、攪拌下に加熱した。キシレンが還流し始めた時点から、平均重合度500、ケン化度88モル%のポリビニルアルコール100部を少量ずつ10分間隔で約2時間にわたって加えた。ポリビニルアルコールを加え終わってから、さらに2時間還流を行い、反応を終了した。反応混合物を約80℃まで冷却してから、メタノール中に加えたところ、反応生成物が白色沈殿として析出したので、この沈殿を濾別し、キシレン140部を加え、加熱して完全に溶解させた後、再びメタノールを加えて沈殿させるという操作を数回繰り返した後、沈殿をメタノールで洗浄し、乾燥粉砕することで、長鎖アルキル基含有樹脂(rA―1):ポリメチレンを主鎖として側鎖に炭素数18のアルキル基を有する)を得た。これを水で希釈し、20質量%に調整した。
オレフィン系樹脂(rA−2):
三井化学(株)製、“ケミパール”(登録商標)XEP800H
フッ素化合物(rA−3):
日信化学工業(株)製、“ビニブラン”(登録商標)FJ−371
シリコーン系化合物(rA−4):
信越化学工業(株)製のシリコーン成分を含む塗剤、型番X−62−7655と信越化学工業(株)製のシリコーン成分を含む塗剤、型番X−62−7622と信越化学工業(株)製の触媒、型番CAT―7605を質量比95:5:1で混合した。
・樹脂および化合物(r−B)
オキサゾリン化合物(rB−1):
(株)日本触媒製、“エポクロス”(登録商標)WS−500(固形分濃度40質量%、溶媒:水)
アクリル樹脂(rB−2):
ステンレス反応容器に、メタクリル酸メチル(α)、メタクリル酸ヒドロキシエチル(β)、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業(株)製、アートレジン(登録商標)UN−3320HA、アクリロイル基の数が6)(γ)を(α)/(β)/(γ)=94/1/5の質量比で仕込み、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを(α)〜(γ)の合計100質量部に対して2質量部を加えて撹拌し、混合液1を調製した。次に、攪拌機、環流冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた反応装置を準備した。上記混合液1を60質量部と、イソプロピルアルコール200質量部、重合開始剤として過硫酸カリウム5質量部を反応装置に仕込み、60℃に加熱し、混合液2を調製した。混合液2は60℃の加熱状態のまま20分間保持させた。次に、混合液1の40質量部とイソプロピルアルコール50質量部、過硫酸カリウム5質量部からなる混合液3を調製した。続いて、滴下ロートを用いて混合液3を2時間かけて混合液2へ滴下し、混合液4を調製した。その後、混合液4は60℃に加熱した状態のまま2時間保持した。得られた混合液4を50℃以下に冷却した後、攪拌機、減圧設備を備えた容器に移した。そこに、25%アンモニア水60質量部、及び純水900質量部を加え、60℃に加熱しながら減圧下にてイソプロピルアルコール及び未反応モノマーを回収し、純水に分散されたアクリル樹脂(rB−2)を得た。
<参考例1>金属酸化物粒子(x−C)の表面にアクリル樹脂(x−D)を有する組成物(CD−1)を含有するエマルジョン(EM−1)
攪拌機、温度計、還流冷却管の備わった通常のアクリル樹脂反応槽に、溶剤としてイソプロピルアルコール100重量部を仕込み、加熱攪拌して100℃に保持した。
この中に、(メタ)アクリレート(d’−1)として、n=19のエイコシルメタクリレート40重量部、(メタ)アクリレート(d’−2)として、2個の環を有するイソボニルメタクリレート40重量部、その他水酸基を有する(メタ)アクリレート(d’−3)として、2−ヒドロキシエチルアクリレート20重量部からなる混合物を3時間かけて滴下した。そして、滴下終了後、100℃で1時間加熱し、次にt−ブチルパーオキシ2エチルヘキサエート1重量部からなる追加触媒混合液を仕込んだ。次いで、100℃で3時間加熱した後冷却し、アクリル樹脂(xD−1)を得た。
無機粒子(x−C)としてAl元素を含む無機粒子(“NanoTek”Alスラリー(シーアイ化成株式会社製 数平均粒子径60nm:xC−1)を用い、水系溶媒中に、“NanoTek”Alスラリーと上記アクリル樹脂(xD−1)を順に添加し、以下の方法で分散せしめ、無機粒子(x−C)とアクリル樹脂(xD−1)の混合組成物(x−CD)含有するエマルジョン(EM−1)を得た。(前記(ii)の方法。)
無機粒子(x−C)およびアクリル樹脂(xD−1)の添加量比(重量比)は、(x−C)/(xD−1)=25/45とした(なお重量比は、小数点第1位を四捨五入して求めた)。分散処理は、ホモミキサーを用いて行い、周速10m/sで5時間回転させることによって行った。また、最終的に得られた組成物における、粒子(x−C)とアクリル樹脂(xD−1)の重量比は、(xC)/(xD−1)=25/45であった(なお、重量比は小数点第1位を四捨五入して求めた)。
なお、得られた組成物(x−CD)を、日立卓上超遠心機(日立工機株式会社製:CS150NX)により遠心分離を行い(回転数3000rpm、分離時間30分)、無機粒子(x−C)(及び無機粒子(x−C)の表面に吸着したアクリル樹脂(x−D))を沈降させた後、上澄み液を除去し、沈降物を濃縮乾固させた。濃縮乾固した沈降物をX線光電子分光法(XPS)により分析した結果、無機粒子(x−C)の表面にアクリル樹脂(x−D)が存在することが確認された。つまり、無機粒子(x−C)の表面には、アクリル樹脂(x−D)が吸着・付着しており、得られた組成物(x−CD)が無機粒子(x−C)の表面にアクリル樹脂(x−D)を有する粒子に該当することが判明した。
<参考例2>
無機粒子(x−C)の表面にアクリル樹脂(x−D)を有する組成物(x−CD)を含有するエマルジョン(EM−2)
無機粒子(x−C)およびアクリル樹脂(xD−1)の添加量比(重量比)を、(x−C)/(xD−1)=25/20に変更した以外は、参考例1と同様にして、EM−2を得た。
<参考例3>
金属酸化物粒子(x−C)として、Si元素を含む“スノーテックス(登録商標)”OLコロイダルシリカスラリー(日産化学工業株式会社製 数平均粒子径40nm)を使用した以外は、参考例1と同様の方法で、金属酸化物粒子(x−C)とアクリル樹脂(xD−1)の混合組成物(CD−3)含有するエマルジョン(EM−3)を得た。
<参考例4>
ウレタン樹脂(DIC製“ハイドラン”(登録商標) AP−40N)(エーテル成分を有さないウレタン樹脂):35重量部
<実施例1>
はじめに、塗料組成物1を次の通り調製した。
<塗料組成物>
離型剤(r−A)として前述の(rA−1)使用し、水系溶媒で希釈することで塗料組成物r1を得た。
水系溶媒に、下記エマルジョンを表に記載の比率で混合し、塗料組成物x1を得た。
・金属酸化物粒子(x−C)およびアクリル樹脂(xD−1)の混合組成物(EM−1)
:70重量部
・メラミン系化合物(DIC製“ベッカミン”(登録商標) APM):30重量部。
<積層フィルム>
次いで、実質的に粒子を含有しないPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を充分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し285℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。この未延伸フィルムを90℃に加熱して長手方向に3.4倍延伸し、一軸延伸フィルム(Bフィルム)とした。
次に塗料組成物r1およびx1を、表1に示す面に一軸延伸フィルムのコロナ放電処理面にバーコートを用いて塗布した。塗料組成物を塗布した一軸延伸フィルムの幅方向両端部をクリップで把持して予熱ゾーンに導き、雰囲気温度75℃とした後、引き続いてラジエーションヒーターを用いて雰囲気温度を110℃とし、次いで雰囲気温度を90℃として、塗料組成物を乾燥させ、樹脂層(X)を形成せしめた。引き続き連続的に120℃の加熱ゾーン(延伸ゾーン)で幅方向に3.5倍延伸し、続いて230℃の熱処理ゾーン(熱固定ゾーン)で20秒間熱処理を施し、結晶配向の完了した積層フィルムを得た。得られた積層フィルムにおいて透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより測定したPETフィルムの厚みは50μm、離型層(R)の厚みは50nm、樹脂層(X)の厚みは800nmであった。得られた積層フィルムの特性等を表2および表3に示す。摩耗帯電量や透明性、テープ剥離力、耐スクラッチ性、干渉ムラに優れるものであった。
<実施例2、実施例3および実施例5〜8、実施例10>
塗料組成物とその狙い厚みを表1および下記の通り変更した以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性などを表2および表3に示す。
<塗料組成物r2>
水系溶媒に、離型剤(r−A)と樹脂および化合物(r−B)を記載の比率で混合し、塗料組成物r2を得た。
オレフィン系樹脂(rA−2): 20質量部
オキサゾリン化合物(rB−1):80質量部
<塗料組成物x2>
・金属酸化物粒子(x−C)およびアクリル樹脂(x−D)の混合組成物(EM−2)
:45重量部
・ウレタン樹脂(DIC製“ハイドラン”(登録商標) WLS210)(エーテル成分を有するウレタン樹脂) :35重量部
・メラミン系化合物(DIC製“ベッカミン”(登録商標) APM) :20重量部。
<塗料組成物x4>
・金属酸化物粒子(x−C)およびアクリル樹脂(x−D)の混合組成物(EM−3)
:45重量部
・ウレタン樹脂(DIC製“ハイドラン”(登録商標) AP−40N)(エーテル成分を有さないウレタン樹脂) :35重量部
・メラミン系化合物(DIC製“ベッカミン”(登録商標) APM) :20重量部。
<実施例4>
離型層(R)を形成する塗材として塗料組成物r1、基材として東レ株式会社製PETフィルム“ルミラーT60”(基材厚み50μm)を使用した。基材の上に塗料組成物を、ワイヤーバーを用いて塗布し、次いで熱風オーブンにて180℃、1minの条件で加熱、硬化を実施した。得られた積層ポリエステルフィルムにおいてPETフィルムの厚みは50μm、樹脂層の厚みは50nmであった。次いで、離型層(R)と反対の面に以下の塗料組成物x3を塗布し、次いで以下の乾燥および硬化を経て、樹脂層(X)を形成した。得られた樹脂層(X)の厚みは800nmであった。得られた積層ポリエステルフィルムの特性などを表2および表3に示す。
<塗料組成物x3>
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 18.8質量部
・シリカ粒子分散物 44.4質量部
(“MEK−AC−2140Z” 日産化学工業株式会社)
・酢酸エチル 35.6質量部
・光ラジカル重合開始剤 1.2質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社)。
(塗料組成物x3の乾燥・硬化条件)
「乾燥工程」
送風温湿度 : 温度:80℃
風速 : 塗布面側:5m/秒、反塗布面側:5m/秒
風向 : 塗布面側:基材の面に対して平行、反塗布面側:基材の面に対して垂直
滞留時間 : 2分間
「UV硬化工程」
積算光量 : 120mJ/cm
酸素濃度 : 200ppm以下。
<実施例9>
ポリエステルフィルムに対する塗布層を表1に記載の通り反転させた以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性などを表2および表3に示す。
<比較例1、2>
塗料組成物とその狙い厚みを表1および下記の通り変更した以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性などを表2および表3に示す。
<塗料組成物r3>
水系溶媒に、離型剤(r−A)と樹脂および化合物(r−B)を記載の比率で混合し、塗料組成物r3を得た。
フッ素化合物(rA−3):20質量部
アクリル樹脂(rB−2):80質量部
<塗料組成物r4>
水系溶媒に、離型剤(r−A)と樹脂および化合物(r−B)を記載の比率で混合し、塗料組成物r4を得た。
シリコーン系化合物(rA−4):20質量部
アクリル樹脂(rB−2):80質量部
<比較例3>
ポリエステルフィルムに対する塗布層を表1に示す通り片面にした以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性などを表に示す。
Figure 2021160175
Figure 2021160175
Figure 2021160175
なお、表中、金属の有無おいて、「Y」は「有り」、「N」は「無し」を表す。また、表中、フッ素、シリコーンの有無において、「Si」は「シリコーンあり」、「F」は「フッ素あり」、「N」は「無し」をそれぞれ表す。
本発明は、帯電防止性と離型性、耐スクラッチ性を併せ持つ積層フィルムに関する。各種工業製品の加工に用いられるプラスチックフィルム、粘着製品における粘着材層の保護フィルムや、各種工業製品の加工工程におけるキャリアフィルムとして好適に利用可能である。

Claims (5)

  1. 樹脂層(A)、樹脂層(X)、離型層(R)を有する積層フィルムであって、
    前記樹脂層(X)が一方の表層、前記離型層(R)がもう一方の表層に有しており、
    前記樹脂層(X)と離型層(R)は異なる組成からなり、
    前記離型層(R)がフッ素及びシリコーン成分を含んでおらず、
    前記樹脂層(X)と離型層(R)の摩擦帯電量が−50V以上+50V以下である積層フィルム。
  2. 前記樹脂層(X)がナノインデンテーション法による強押し込み弾性率が4.0GPa以上である請求項1に記載の積層フィルム。
  3. 前記樹脂層(X)の鉛筆硬度がH未満である請求項1または請求項2に記載の積層フィルム。
  4. 前記離型層(R)の弱押し込み弾性率度と強押し込み弾性率の比が4以上100以下である請求項1から3のいずれかに記載の積層フィルム。
  5. セラミックグリーンシートの製造用工程フィルムとして用いられる請求項1から4のいずれかに記載の積層フィルム。
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