JP2021062480A - 積層フィルム - Google Patents

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春樹 青野
Haruki Aono
春樹 青野
忠彦 岩谷
Tadahiko Iwaya
忠彦 岩谷
恵子 澤本
Keiko Sawamoto
恵子 澤本
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Teruya Tanaka
照也 田中
光 荒本
Hikari Aramoto
光 荒本
悠 阿部
Hisashi Abe
悠 阿部
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Abstract

【課題】被着体の表面に滑り性を付与可能であり、かつ被着体の外観品位を維持することができる積層フィルムを提供する。【解決手段】ポリエステルフィルム1と、樹脂層2を有する積層フィルムであり、樹脂層が少なくとも一方の表層にあり、初期の積層フィルムの樹脂層の厚みをd0(nm)、前記樹脂層に日東電工製No.31Bテープを貼り付け、150℃×5時間加熱した後、日東電工製No.31Bテープを剥離した後の積層フィルムの樹脂層の厚みをd1(nm)としたとき、次式(1)の関係を満たす積層フィルム。{(d0—d1)/d0}×100≧20式(1)【選択図】図1

Description

本発明は、ポリエステルフィルムと樹脂層を有する積層フィルムに関する。
ワックス材料に代表されるスリップ材料は、プラスチックフィルムや成型体、自動車、鉄道車両、飛行機、建物等の各種外板、および床面などの各種面に滑り性の向上させる目的や艶出しなどを目的に表面に配される(以降、スリップ材料が配される材料のことを被着体という場合がある)。被着体にスリップ材料を配する方法としては、浸漬法、吹付法、コート法(ロールコーター法、スプレーコート法、刷毛塗り法など)といった方法が知られている。しかしながら、吹付法やコート法では、曲面を有する被着体にスリップ材料を均一に設けるのが難しいという課題がある。
上記の課題に対して、スリップ材料を表面に有するフィルムを、被着体の表面に貼り付ける方法が知られている。例えば特許文献1にはポリエステルフィルムの少なくとも片面にワックス材料を含む特定の組成物からなる易接着性塗膜を形成させた積層フィルムを被着体に貼り付ける方法が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の方法では、ポリエステルフィルムの少なくとも片面にワックス材料を含む特定の組成物からなる易接着性塗膜を形成させた積層フィルムをそのままの構成で被着体に貼り合わせるため、積層フィルムの色味や質感により、被着体の風合いが悪化し、品位の低下につながる点が課題であった。
かかる課題に対して、少なくとも片面にスリップ材料を有するフィルムを、スリップ材料を有する側を被着体に接するように貼り付けた後、フィルムを剥がし、被着体の表面にスリップ材料を転写させる技術が知られている。転写フィルムと呼ばれるフィルムは、一般に基材となるフィルムの上にスリップ材料を含む層(以降、転写層という場合がある)を設けた構成とし、転写層を基材フィルムから脱落させて被着体に移行することにより、被着体にスリップ材料の機能を付与することができる。例えば、特許文献2には易剥離性シートの上にスリップ材料としてフッ素樹脂からなる薄膜を転写可能に形成してなる転写シートが開示されている。
特開2002−155158号公報 特開平5−213000号公報 特開2010−155459号公報 特開2004−351626号公報 特開2014−151481号公報
しかしながら、特許文献2の方法について本発明者らが検討したところフッ素材料を被着体に転写させようとしても、フッ素材料は低表面エネルギーであるため、被着体との密着性を高いレベルとすることが難しく、また被着体へ均一に滑り性付与を行うことが困難であった。
一方、スリップ材料として前述のワックス系やフッ素系と類似した材料をフィルム表面に有するフィルムとして、離型フィルムが挙げられる。離型フィルムの離型層も、一般に良好な滑り性を有することから、特許文献3、4および5に代表されるような離型フィルムについて、特許文献2と同様の転写フィルムとして使用を試みたが、被着体へ均一に滑り性付与を行うことが困難であった。
そこで、本発明では上記欠点を解消し、被着体の表面に滑り性を付与可能であり、かつ被着体の外観品位を維持することができる積層フィルムを提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の物理特性を有する樹脂層を有する積層フィルムを用いることにより、熱をかけることで、前記樹脂層が被着体に転写し、被着体の表面に滑り性を付与することができる積層フィルムとなし得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は次の構成からなる。すなわち、
[I]ポリエステルフィルムと、樹脂層を有する積層フィルムであり、前記樹脂層が少なくとも一方の表層にあり、初期の積層フィルムの樹脂層の厚みをd0(nm)、前記樹脂層に日東電工製No.31Bテープを貼り付け、150℃×5時間加熱した後、日東電工製No.31Bテープを剥離した後の積層フィルムの樹脂層の厚みをd1(nm)としたとき、下記式(1)を満たす積層フィルム、
{(d0―d1)/d0}×100≧20 式(1)
[II]前記樹脂層に日東電工製No.31Bテープを貼り付け、150℃×5時間加熱した後、日東電工製No.31Bテープを剥離した際に、前記テープに付着する樹脂層の厚みの最大値をd2(nm)、前記テープに付着する樹脂層の厚みの最小値をd3(nm)としたとき、下記式(2)を満たす[I]に記載の積層フィルム、
{(d2―d3)/d2}×100≦50 式(2)
[III]前記樹脂層の水接触角が95°以上110°以下である[I]または[II]に記載の積層フィルム、
[IV]前記樹脂層の初期テープ剥離力が0.5N/50mm以上4.0N/50mm以下であり、かつ、150℃×5時間加熱後テープ剥離力が8.0N/50mm以上14.0N/50mm以下である[I]〜[III]のいずれかに記載の積層フィルム、
[V]前記樹脂層が、長鎖アルキル基含有樹脂、オレフィン樹脂、フッ素化合物、ワックス系化合物から選ばれる少なくとも1種類の離型剤(A)を含有する塗料組成物から形成される[I]〜[IV]のいずれかに記載の積層フィルム、
である。
[VI]転写用途に用いられる[I]〜[V]のいずれかに記載の積層フィルム。
本発明によれば、被着体の表面に滑り性を付与可能であり、かつ被着体の外観品位を維持することが可能な積層フィルムを提供することができる。
本発明の積層フィルムの断面模式図 本発明の樹脂層の各種厚みの断面模式図 被着体に転写した樹脂層の厚みの断面模式図
本発明の積層フィルムは、図1に示すように、ポリエステルフィルムと樹脂層を有し、前記樹脂層が少なくとも一方の表層にあり、初期の積層フィルムの樹脂層の厚みをd0(nm)、前記樹脂層に日東電工製No.31Bテープを貼り付け、150℃×5時間加熱した後、日東電工製No.31Bテープを剥離した後の積層フィルムの樹脂層の厚みをd1(nm)としたとき、下記式(1)を満たす積層フィルムである。
{(d0―d1)/d0}×100≧20 式(1)
初めにこれらの物理特性の意味と制御方法の例について説明する。
本発明において樹脂層の厚みとは、透過電子顕微鏡(TEM)の断面画像から、積層フィルムが有する樹脂層部分の厚みを測定することで求められるものである。具体的な測定方法については後述する。
また、本発明において、前記式(1)において{(d0―d1)/d0}で表される膜厚減少率は、以下に記載の通り測定する。まず、本発明の積層フィルムの樹脂層上に、アクリル系粘着テープ(日東電工社製No.31Bテープ、19mm幅)を、2kgfのローラを1往復させることにより貼り合わせる。次に、粘着テープを貼り合わせた積層フィルムを熱風オーブンにて150℃×5時間加熱する。その後、島津(株)製万能試験機「オートグラフAG‐1S」を用いて、剥離角度180°、引張速度300mm/分にて、粘着テープを積層フィルムから剥離する。その後、初期の積層フィルムの樹脂層の厚みd0(nm)、テープ剥離後の樹脂層の厚みd1(nm)を前述の方法により測定し、下記式によりテープ剥離時の膜厚減少率を算出する。
テープ剥離時の膜厚減少率(%)={(d0―d1)/d0}×100
本発明の積層フィルムは、テープ剥離時の膜厚減少率が20%以上であることが好ましい。具体的には、図2に示すように初期の積層フィルムの樹脂層の厚みをd0(nm)、前記樹脂層に日東電工製No.31Bテープを貼り付け、150℃×5時間加熱した後、日東電工製No.31Bテープを剥離した後の積層フィルムの樹脂層の厚みをd1(nm)としたとき、下記式(1)を満たすことが必要である。
{(d0―d1)/d0}×100≧20 式(1)
この時アクリル系粘着テープは被着体に相当し、積層フィルムが式(1)を満たすことは、樹脂層の層内に劈開が発生し、被着体に接触している樹脂層の一部が被着体である粘着テープに転写することを意味する。テープ剥離時の膜厚減少率は、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上である。テープ剥離時の膜厚減少率が20%に満たない場合には、被着体に対して十分な滑り性を付与できない場合がある。一方、テープ剥離時の膜厚減少率の好ましい上限としては100%未満であることが好ましく、95%未満であることがより好ましい。膜厚減少率が100%である場合は、樹脂層が樹脂層の層内に劈開が発生せずに、基材フィルムから樹脂層のすべてが被着体に転写していることを表す。この場合は、滑り性は十分であるが、被着体と樹脂層の密着性が十分発揮されない場合がある。
テープ剥離時の膜厚減少率は、特に限定されないが樹脂層の塗料組成や、樹脂層の製造方法などによって制御することが可能である。好ましい樹脂層の製造方法や塗料組成物については後述する。
また、本発明の積層フィルムは、被着体に転写する樹脂層の厚みむらが50%以下であることが好ましい。具体的には、図2および図3に示すように樹脂層に日東電工製No.31Bテープを貼り付け、150℃×5時間加熱した後、日東電工製No.31Bテープを剥離した際に、前記テープに付着する樹脂層の厚みの最大値をd2(nm)、前記テープに付着する樹脂層の厚みの最小値をd3(nm)としたとき、下記式(2)を満たすことが好ましい。
{(d2―d3)/d2}×100≦50 式(2)
積層フィルムが式(2)を満たすことは、被着体に転写する樹脂層の厚みむらが小さく、均一であることを意味する。転写する樹脂層の厚みむらの指標である式(2)は、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下である。テープに付着する樹脂層の厚みむらの指標である式(2)が50%を超える場合には、転写する樹脂層が不均一となり、被着体に対して十分な滑り性を付与できない場合ある他、転写後の被着体の外観品位が悪化する場合がある。転写する樹脂層の厚みむらの指標である式(2)を制御する方法は特に限定されないが樹脂層の塗料組成などが挙げられる。好ましい樹脂層の製造方法については後述する。
<樹脂層の水接触角>
本発明の積層フィルムの樹脂層は、水接触角が95°以上110°以下であることが好ましい。本発明において水接触角とは、JIS R3257:1999年に記載の静滴法にて求められるものである。樹脂層表面上に水滴を乗せ、その雰囲気下で平衡になっているとき、下式により求めることができる値であり、一般には、その固体表面の塗れ性を判断する指標となるものである。すなわち、水接触角の値が小さいほど前記固体表面は塗れ性が良好、値が大きいほど塗れ性が不良であることを表す。
γS = γLcosθ + γSL
(上記式において、γSは固体の表面張力、γLは液体の表面張力、γSLは固体/液体の界面張力、θは接触角を示す)。
上記の式を「ヤングの式」と言い、液体表面と固体表面のなす角度を「接触角」と定義している。水接触角は、広く市販されている装置により測定することができるが、本発明においては、協和界面科学社製の接触角計DropMaster DM−501により測定した値を表す。具体的な水接触角の数値範囲、及び測定方法については後述する。
本発明の積層フィルムにおいて、樹脂層の水接触角を95°以上とすることで、積層フィルムに良好な離型性を付与することができ、樹脂層を被着体に転写させた際には、被着体に対して十分な滑り性を付与することができる。樹脂層の水接触角が95°未満である場合、離型性が不良となる上、樹脂層を被着体に転写させたとしても、被着体に対して十分な滑り性を付与することができない。
また、本発明の積層フィルムにおいて、樹脂層の水接触角を110°以下とすることで、樹脂層の表面に被着体を形成する塗料組成物の塗布性を良好なものとすることができ、被着体が樹脂層から自然剥離することも防ぐことができる。樹脂層の水接触角が110°より大きい場合、被着体を形成する塗料組成物をハジキやピンホールといった欠点なく塗布することが困難になる上、被着体の一部が樹脂層から脱落するなど品位の低下が発生する。より好ましくは98°以上105°以下である。
本発明の積層フィルムは、初期テープ剥離力は0.5N/50mm以上4.0N/50mm以下であり、かつ、150℃×5時間加熱後テープ剥離力は8.0N/50mm以上14.0N/50mm以下であることが好ましい。初期テープ剥離力を0.5N/50mm以上とすることで、樹脂層の表面に被着体を形成した際、被着体が自然剥離することを防ぐことができる。また、初期テープ剥離力を4.0N/50mm以下とすることで、積層フィルムに良好な離型性を付与することができ、樹脂層を被着体に転写させた際には、被着体に対して十分な滑り性を付与することができる。一方、150℃×5時間加熱後テープ剥離力を8.0N/50mm以上とすることで、熱をかけた際の積層フィルムの樹脂層と被着体の相互作用が強くなり、積層フィルムの樹脂層の膜厚減少率を20%以上としやすくなる結果、被着体に良好な滑り性を付与することが容易となる。また、150℃×5時間加熱後テープ剥離力を14.0N/50mm以下とすることで、積層フィルムを被着体から剥離する際のジッピングを抑制し、被着体に転写する樹脂層の厚みむらを50%以下としやすくなる結果、被着体に良好な滑り性を付与し、かつ被着体の外観品位を維持することが容易となる。初期テープ剥離力は、より好ましくは、0.9N/50mm以上3.5N/50mm以下であり、さらに好ましくは1.2N/50mm以上3.0N/50mm以下である。また、150℃×5時間加熱後テープ剥離力は、より好ましくは、9.0N/50mm以上13.0N/50mm以下であり、さらに好ましくは9.5N/50mm以上12.0N/50mm以下である。
本発明において、初期テープ剥離力は、次に記載の通りと定義する。まず、アクリル系粘着テープ(日東電工社製、日東31Bテープ、19mm幅)を、本発明の積層フィルムの樹脂層上に貼り合わせ、その上から、2kgfのローラを1往復させる。その後、そのテープを貼合した積層フィルムを25℃65%RHの環境下に24時間静置した後、島津(株)製万能試験機「オートグラフAG‐1S」を用いて剥離角度180°、引張速度300mm/分で剥離したときの剥離荷重を初期テープ剥離力とした。具体的な初期テープ剥離力の測定方法については、後述する。
また、本発明において150℃×5時間加熱後テープ剥離力とは、次に記載の通りと定義する。まず、アクリル系粘着テープ(日東電工社製、日東31Bテープ、19mm幅)を、本発明の積層フィルムの樹脂層上に貼り合わせ、その上から、2kgfのローラを1往復させる。その後、そのテープを貼合した積層フィルムを熱風オーブンにて150℃×5時間加熱した後、島津(株)製万能試験機「オートグラフAG‐1S」を用いて剥離角度180°、引張速度300mm/分で剥離したときの剥離荷重を150℃×5時間加熱後テープ剥離力とした。具体的な150℃×5時間加熱後テープ剥離力の測定方法については、後述する。
本発明の積層フィルムの初期テープ剥離力を0.5N/50mm以上4.0N/50mm以下、かつ、150℃×5時間加熱後テープ剥離力を8.0N/50mm以上14.0N/50mm以下にする方法としては、特に限定されることはないが、代表的な方法としては、前記樹脂層を、長鎖アルキル基含有樹脂、オレフィン樹脂、フッ素化合物、ワックス系化合物から選ばれる少なくとも1種類の離型剤(A)を含有する塗料生成物から形成する方法がある。詳細は塗料組成物の項に記載する。
以下、本発明の積層フィルムについて詳細に説明する。
<ポリエステルフィルム>
本発明の積層フィルムにおいて、基材フィルムとなるポリエステルフィルムについて詳しく説明する。ポリエステルとは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称であって、エチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート、ブチレンテレフタレート、プロピレン−2,6−ナフタレート、エチレン−α,β−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4−ジカルボキシレートなどから選ばれた少なくとも1種の構成成分を主要構成成分とするものを好ましく用いることができる。本発明では、ポリエステルフィルムとしてポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。またポリエステルフィルムに熱や収縮応力などが作用する場合には、耐熱性や剛性に優れたポリエチレン−2,6−ナフタレートが特に好ましい。
また、このポリエステル中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機系易滑剤、顔料、染料、有機又は無機の粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などがその特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。
上記ポリエステルフィルムは、二軸配向されたものであるのが好ましい。二軸配向ポリエステルフィルムとは、一般に、未延伸状態のポリエステルシート又はフィルムを長手方向及び長手方向に直行する幅方向に各々2.5〜5倍程度延伸し、その後、熱処理を施して、結晶配向を完了させたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。ポリエステルフィルムが二軸配向していない場合には、積層フィルムの熱安定性、特に寸法安定性や機械的強度が不十分であったり、平面性の悪いものとなったりするので好ましくない。
また、本発明で用いられるポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルム自身が2層以上の積層構造体であってもよい。積層構造体としては、例えば、内層部と表層部と有する複合体フィルムであって、内層部と表層部が化学的に異種のポリマーであっても同種のポリマーであってもよい。
ポリエステルフィルムの厚みは特に限定されるものではなく、用途や種類に応じて適宜選択されるが、機械的強度、ハンドリング性などの点から、通常は好ましくは10〜500μm、より好ましくは23〜125μm、最も好ましくは38〜75μmである。また、ポリエステルフィルムは、共押出しによる複合フィルムであってもよいし、得られたフィルムを各種の方法で貼り合わせたフィルムであっても良い。
<樹脂層>
本発明の積層フィルムにおける樹脂層とは、積層フィルムの少なくとも一方の表層に有するものである。ポリエステルフィルムと樹脂層の間に異なる層を有していても良いが、前述のポリエステルフィルムの少なくとも片面に樹脂層を有するものであることが好ましい。本発明における樹脂層は、本発明の積層フィルムの樹脂層上に被着体を積層(あるいは貼り合わせた)後、積層フィルムから後述の被着体を剥離させた際に被着体に転写することで、被着体に対して十分な滑り性を付与するために必要な層である。
本発明の積層フィルムの樹脂層は、膜厚が50nm以上400nm未満であることが好ましく、50nm以上200nm未満であることがさらに好ましく、70nm以上130nm未満であることが特に好ましい。樹脂層の膜厚を50nm以上400nm未満とすることで、被着体に滑り性を付与することが容易となり、また被着体に均一な滑り性を付与することが容易となる。樹脂層の膜厚が50nm未満もしくは400nm以上である場合、被着体に滑り性を付与できない場合がある。樹脂層の膜厚を制御する方法としては、例えば、後述する塗料組成物中に含まれる固形分の濃度を調節する方法が挙げられる。
<被着体>
本発明の積層フィルムは樹脂層の表面に被着体を設けた後に、積層フィルムを剥離することで、被着体の表面に樹脂層の一部または全部を転写することができる。ここで被着体とは積層フィルムの樹脂層を有する面の上に設ける樹脂、金属、セラミックなどを含む層状の成型体を指す。被着体を設ける方法は特に限定されないが、例えば塗布、蒸着、貼合などの方法によって、樹脂層の表面に形成することができる。被着体の作成に溶媒成分を有する塗液を使用する場合、また被着体が反応性の活性部位を反応させて成る硬化層の場合には、未乾燥の状態及び未硬化の状態を含め、被着体と記載する場合がある。なお、本発明の積層フィルムにおいて、樹脂層の表面に、複数の層が積層される場合には、樹脂層と隣接する層もしくは樹脂層に隣接する層を含む積層体を総じて被着体と記載する場合がある。
ここで層とは、積層体の表面側から厚み方向に向かって、厚み方向に隣接する部位と境界面を有することにより区別でき、かつ有限の厚みを有する部位を指す。より具体的には、前記積層体の断面を電子顕微鏡(透過型、走査型)または光学顕微鏡にて断面観察した際、不連続な境界面の有無により区別されるものを指す。そのため、樹脂層の厚み方向に組成が変わっていても、その間に前述の境界面がない場合には、1つの層として取り扱う。
<塗料組成物>
本発明の積層フィルムの樹脂層を形成する方法としては、例えば、ポリエステルフィルムの少なくとも一方の表面に、樹脂層を構成する塗料組成物を塗布した後、次いで熱処理を施して、樹脂層を形成する方法が挙げられる。本発明に用いられる好ましい塗料組成物について記載する。
本発明の積層フィルムの樹脂層は、長鎖アルキル基含有樹脂、オレフィン樹脂、フッ素化合物、ワックス系化合物から選ばれる少なくとも1種類の離型剤(A)(スリップ材料という場合がある)を含有する塗料組成物から形成されることが好ましい。かかる構成とすることで、前述のテープ剥離時の膜厚減少率を20%以上とすることが容易となり、被着体に対して十分な滑り性を付与する効果を得やすくなるため好ましい。また、かかる構成とすることで、より好ましい態様としては、前述のテープ剥離時の膜厚減少率を100%未満とすることが容易となり、樹脂層が被着体に転写した後、被着体との密着性を良好にすることができる。
更に、本発明の積層フィルムの樹脂層を形成するための塗料組成物は、易滑剤や無機粒子、有機粒子、界面活性剤、酸化防止剤、熱開始剤などの各種添加剤を、積層フィルムの特性を悪化させない範囲で含んでいても構わない。その際、塗料組成物においては、後述する離型剤(A)、樹脂または化合物(B)の合計を100重量部としたとき、0.01重量部〜10重量部の範囲であることが好ましい。
<離型剤(A)>
本発明でいう離型剤(A)とは、塗料組成物に含有することにより、塗布層の表面に離型性(すなわち樹脂の表面自由エネルギーを低下させたり、樹脂の静止摩擦係数μsを低下させたりする特性)を付与する化合物を示す。本発明において用いることのできる離型剤(A)としては、長鎖アルキル基含有樹脂、オレフィン樹脂、フッ素化合物、ワックス系化合物などが挙げられる。
長鎖アルキル基含有化合物は市販されているものを使用してもよく、具体的には、アシオ産業社製の長鎖アルキル系化合物である“アシオレジン”(登録商標)シリーズ、一方社油脂工業社製の長鎖アルキル化合物である“ピーロイル”(登録商標)シリーズ、中京油脂社製の長鎖アルキル系化合物の水性分散体である“レゼム”シリーズなどを使用することができる。前記離型剤(A)は、炭素数12以上のアルキル基を有することが好ましく、炭素数16以上のアルキル基を有することがより好ましい。アルキル基の炭素数を12以上にすることで、疎水性が高まることとなり、離型剤(A)として十分な離型性能を発現させることができる。アルキル基の炭素数が12未満であると、離型性能が不十分なものとなる恐れがある。アルキル基の炭素数の上限は特に限定されるものではないが、25以下であると製造が容易であるため好ましい。
オレフィン樹脂としては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセンなどが挙げられる。
フッ素化合物とは、化合物中にフッ素原子を含有している化合物のことである。例えば、パーフルオロアルキル基含有化合物、フッ素原子を含有するオレフィン化合物の重合体、フルオロベンゼン等の芳香族フッ素化合物などが挙げられる。
ワックス系化合物としては、天然ワックス、合成ワックス、それらを配合したワックスが挙げられる。天然ワックスとは、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、石油ワックスである。植物系ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油が挙げられる。動物系ワックスとしては、みつろう、ラノリン、鯨ロウが挙げられる。鉱物系ワックスとしてはモンタンワックス、オゾケライト、セレシンが挙げられる。石油ワックスとしてはパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムが挙げられる。合成ワックスとしては、合成炭化水素、変性ワックス、水素化ワックス、脂肪酸、酸アミド、アミン、イミド、エステル、ケトンが挙げられる。合成炭化水素としては、フィッシャー・トロプシュワックス(別名サゾワールワックス)、ポリエチレンワックスが有名であるが、このほかに低分子量の高分子(具体的には粘度平均分子量500から20000の高分子)である以下のポリマーも含まれる。すなわち、ポリプロピレン、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックまたはグラフト結合体がある。変性ワックスとしてはモンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体が挙げられる。ここでの誘導体とは、精製、酸化、エステル化、ケン化のいずれかの処理、またはそれらの組み合わせによって得られる化合物である。水素化ワックスとしては硬化ひまし油、および硬化ひまし油誘導体が挙げられる。
塗料組成物における離型剤(A)の含有量は、塗料組成物の全固形分質量に対して、10質量%以上90質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、20質量%以上60質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上40質量%以下である。離型剤(A)の含有量を、塗料組成物の全固形分質量に対して、10質量%以上90質量%以下とすることで、樹脂層の外観品位を維持しながら、被着体に対する滑り性を付与することが可能となる。
<樹脂または化合物(B)>
本発明の積層フィルムの樹脂層は、前記離型剤(A)に加え、樹脂または化合物(B)も含有する塗料組成物から形成されることが好ましい。樹脂または化合物(B)を含有することで、被着体に転写する樹脂層の厚みむらを50%以下とすることが容易となり、被着体に均一な滑り性を付与することが容易となる。
本発明において用いることのできる樹脂または化合物(B)としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。
樹脂または化合物(B)として用いることができるエポキシ樹脂としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル系架橋剤、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル系架橋剤、ジグリセロールポリグリシジルエーテル系架橋剤及びポリエチレングリコールジグリシジルエーテル系架橋剤などを用いることができる。エポキシ樹脂として、市販されているものを使用してもよく、例えば、ナガセケムテック株式会社製エポキシ化合物“デナコール”(登録商標)EX−611、EX−614、EX−614B、EX−512、EX−521、EX−421、EX−313、EX−810、EX−830、EX−850など)、坂本薬品工業株式会社製のジエポキシ・ポリエポキシ系化合物(SR−EG、SR−8EG、SR−GLGなど)、大日本インキ工業株式会社製エポキシ架橋剤“EPICLON”(登録商標)EM−85−75W、あるいはCR−5Lなどを好適に用いることができ、中でも、水溶性を有するものが好ましく用いられる。
樹脂または化合物(B)として用いることができるメラミン樹脂としては、例えば、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、及びこれらの混合物などを用いることができる。また、メラミン樹脂としては、単量体または2量体以上の多量体からなる縮合物のいずれでもよく、これらの混合物でもよい。エーテル化に用いられる低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール及びイソブタノールなどを用いることができる。官能基としては、イミノ基、メチロール基、あるいはメトキシメチル基やブトキシメチル基等のアルコキシメチル基を1分子中に有するもので、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂及び完全アルキル型メチル化メラミン樹脂などである。その中でも、メチロール化メラミン樹脂が最も好ましく用いられる。
樹脂または化合物(B)として用いることができるメラミン樹脂としては、例えば、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、及びこれらの混合物などを用いることができる。また、メラミン樹脂としては、単量体または2量体以上の多量体からなる縮合物のいずれでもよく、これらの混合物でもよい。エーテル化に用いられる低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール及びイソブタノールなどを用いることができる。官能基としては、イミノ基、メチロール基、あるいはメトキシメチル基やブトキシメチル基等のアルコキシメチル基を1分子中に有するもので、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂及び完全アルキル型メチル化メラミン樹脂などである。その中でも、メチロール化メラミン樹脂が最も好ましく用いられる。
また、樹脂または化合物(B)として用いることができるオキサゾリン化合物は、該化合物中に官能基としてオキサゾリン基を有するものであり、オキサゾリン基を含有するモノマーを少なくとも1種以上含み、かつ、少なくとも1種の他のモノマーを共重合させて得られるオキサゾリン基含有共重合体からなるものが好ましい。
オキサゾリン基を含有するモノマーとしては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン及び2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどを用いることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することもできる。中でも、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。
オキサゾリン化合物において、オキサゾリン基を含有するモノマーに対して用いられる少なくとも1種の他のモノマーは、該オキサゾリン基を含有するモノマーと共重合可能なモノマーであり、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシルなどのアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどの不飽和アミド類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニルなどの含ハロゲン−α,β−不飽和モノマー類、スチレン及びα−メチルスチレンなどのα,β−不飽和芳香族モノマー類などを用いることができ、これらは1種または2種以上の混合物を使用することもできる。
また、樹脂または化合物(B)として用いることができるカルボジイミド化合物は、該化合物中に官能基としてカルボジイミド基、またはその互変異性の関係にあるシアナミド基を分子内に1個または2個以上有する化合物である。このようなカルボジイミド化合物の具体例としては、ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、テトラメチルキシリレンカルボジイミド及びウレア変性カルボジイミド等を挙げることができ、これらは1種または2種以上の混合物を使用することもできる。
また、樹脂または化合物(B)として用いることができるポリエステル樹脂は、主鎖あるいは側鎖にエステル結合を有するもので、ジカルボン酸とジオールから重縮合して得られるものが好ましい。
該ポリエステル樹脂の原料となるジカルボン酸としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸が使用できる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビスフェノキシエタン−p−p’−ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを用いることができる。脂肪族及び脂環族のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸など、及びそれらのエステル形成性誘導体を用いることができる。
該ポリエステル樹脂の原料となるジオール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1、3−シクロブタンジオール、4,4’−チオジフェノール、ビスフェノールA、4、4’−メチレンジフェノール、4、4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−、m−、及びp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、4,4’−イソプロピリデンビンジオール、シクロペンタン−1、2−ジオール、シクロヘキサン−1,2’−ジオール、シクロヘキサン−1、2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオールなどを用いることができる。
また、該ポリエステル樹脂として、変性ポリエステル共重合体、例えば、アクリル、ウレタン、エポキシなどで変性したブロック共重合体、グラフト共重合体などを用いることも可能である。
樹脂または化合物(B)として用いることができるアクリル樹脂は、特に限定されることはないが、アルキルメタクリレート及び/またはアルキルアクリレートから構成されるものが好ましい。アルキルメタクリレート及び/またはアルキルアクリレートとしては、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどを用いるのが好ましい。これらは1種もしくは2種以上を用いることができる。
また、樹脂または化合物(B)として用いることができるウレタン樹脂は、ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物を、乳化重合、懸濁重合などの公知のウレタン樹脂の重合方法によって反応させて得られる樹脂であることが好ましい。
ポリヒドロキシ化合物としては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン・プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリカプトラクトン、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリテトラメチレンセバケート、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ポリカーボネートジオール、グリセリンなどを挙げることができる。
ポリイソシアネート化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートとトリメチレンプロパンの付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールエタンの付加物などを用いることができる。
さらに、本発明の積層フィルムの樹脂層は、樹脂または化合物(B)としてイソシアネート化合物を含んでいても良い。イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、1,6−ジイソシアネートヘキサン、トリレンジイソシアネートとヘキサントリオールの付加物、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ポリオール変性ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ビトリレン−4,4’ジイソシアネート、3,3’ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネートなどが挙げられる。
さらに、イソシアネート基は水と反応し易いため、塗剤のポットライフの点で、イソシアネート基をブロック剤などでマスクしたブロックイソシアネート系化合物などを好適に用いることができる。この場合、ポリエステルフィルムに塗料組成物を塗布した後の乾燥工程において熱がかかることで、ブロック剤が解離し、イソシアネート基が露出する結果、架橋反応が進行することになる。
塗料組成物における前記樹脂または化合物(B)の含有量は、塗料組成物の全固形分質量に対して、10質量%以上90質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、40質量%以上80質量%以下、さらに好ましくは40質量%以上60質量%以下である。前記樹脂または化合物(B)の含有量を、塗料組成物の全固形分質量に対して、10質量%以上90質量%以下とすることで、樹脂層が転写した被着体の外観品位を良好に維持することが可能となる。
<製造方法>
本発明の積層フィルムにおいて、ポリエステルフィルムに樹脂層を設ける方法は、特に限られるものではなく、インラインコート法、オフコート法のどちらでも用いることができる。インラインコート法とは、ポリエステルフィルムの製造の工程内で塗布を行う方法である。特に、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムの少なくとも一方の表層に、離型剤(A)を含有する塗料組成物を塗布した後、少なくとも一軸方向に延伸し、次いで熱処理を施して、該ポリエステルフィルムの結晶配向を完了させる製造方法によって製造されることが好ましい。また、オフコート法とは、製造が完了したポリエステルフィルムの少なくとも一方の表層に、前述の塗料組成物を塗布し、次いで乾燥、硬化することにより形成する方法である。樹脂層の硬化の際、熱や紫外線などによる処理を施すが、オフコート法にてこれらの処理を施すとフィルムの平面性が損なわれる可能性があるため、インラインコート法が好ましい。
<塗布方式>
ポリエステルフィルムへの塗料組成物の塗布方式は、公知の塗布方式を任意で用いることができる。例えばワイヤーバーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ブレードコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法などが挙げられる。
<樹脂層の形成方法>
本発明では、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、塗料組成物を塗布した後、乾燥せしめることにより樹脂層を形成させることが好ましい。本発明において、塗料組成物に溶媒を含有せしめる場合は、溶媒として水系溶媒を用いることが好ましい。水系溶媒を用いることで、乾燥工程での溶媒の急激な蒸発を抑制でき、均一な樹脂層を形成できるだけでなく、環境負荷の点で優れる。
ここで、水系溶媒とは、水、または水とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類など水に可溶である有機溶媒が任意の比率で混合させているものを指す。
塗料組成物のフィルムへの塗布方法は、特に限定するものではないが、前述したとおり、インラインコート法であることが好ましい。具体的には、ポリエステル樹脂を溶融押し出ししてから二軸延伸後熱処理して巻き上げるまでの任意の段階で塗布を行う方法を指し、通常は、溶融押出し後・急冷して得られる実質的に非晶状態の未延伸(未配向)フィルム(Aフィルム)、その後に長手方向または幅方向に延伸された一軸延伸(一軸配向)フィルム(Bフィルム)、またはさらに幅方向または長手方向に延伸された熱処理前の二軸延伸(二軸配向)フィルム(Cフィルム)の何れかのフィルムに塗布する。
本発明では、結晶配向が完了する前の上記Aフィルム、Bフィルム、の何れかのフィルムに、塗料組成物を塗布し、その後、フィルムを一軸方向又は二軸方向に延伸し、溶媒の沸点より高い温度で熱処理を施しフィルムの結晶配向を完了させるとともに樹脂層を設ける方法、すなわちインラインコート法を採用することが好ましい。この方法によれば、フィルムの製膜と、塗料組成物の塗布乾燥(すなわち、樹脂層の形成)を同時に行うことができるために製造コスト上のメリットがあるばかりでなく、製膜時の高温での熱処理により、表面層の効果反応が効率よく進むことで、被着体に転写する際に、均一な塗膜が得やすくなる。
中でも、長手方向に一軸延伸されたフィルム(Bフィルム)に、塗料組成物を塗布し、その後、幅方向に延伸し、熱処理する方法が特に好ましい。この方法の場合、未延伸フィルムに塗布した後、二軸延伸する方法に比べ、塗料組成物を塗布した後の延伸工程が1回少ないため、延伸による樹脂層の欠陥や亀裂が発生しづらく、透明性および外観品位に優れた樹脂層を形成できるためである。
本発明の積層フィルムの製造方法において、乾燥は塗料組成物の溶媒の除去を完了させるために、80〜130℃の温度範囲で実施することができる。また、熱処理はポリエステルフィルムの結晶配向を完了させるとともに塗料組成物の熱硬化を完了させ樹脂層の形成を完了させるために、160〜240℃の温度範囲で実施することができる。さらに、この加熱工程(熱処理工程)で、幅方向あるいは長手方向に3〜15%の弛緩処理を施すことが好ましい。弛緩処理を施すことで、樹脂層内に適度なひずみが堆積し、結果として前述の150℃×5時間の熱処理により樹脂層を転写した際に、均一な層を転写しやすくなる場合がある。
さらに塗料組成物の固形分濃度は40質量%以下であることが好ましい。固形分濃度を40質量%以下とすることにより、塗料組成物に良好な塗布性を付与でき、均一な樹脂層を有する積層フィルムを製造することができる。
なお、固形分濃度とは、塗料組成物の質量に対して、塗料組成物の質量から溶媒の質量を除いた質量が占める割合を表す(すなわち、[固形分濃度(質量%)]=[(塗料組成物の質量)−(溶媒の質量)]/[塗料組成物の質量]×100である)。
<積層フィルムの製造方法>
次に、本発明の積層フィルムの製造方法について説明する。まず、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す。)のペレットを十分に真空乾燥した後、押出機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出し、冷却固化せしめて未延伸(未配向)PETフィルム(Aフィルム)を作製する。このフィルムを80〜120℃に加熱したロールで長手方向に2.5〜5.0倍延伸して一軸配向PETフィルム(Bフィルム)を得る。この時、Bフィルムの片面に所定の濃度に調製した離型剤(A)を有する塗料組成物を塗布してもよく、さらに、塗布前にPETフィルムの塗布面にコロナ放電処理等の表面処理を行ってもよい。コロナ放電処理等の表面処理を行うことで、塗料組成物のPETフィルムへの濡れ性を向上させ、塗料組成物のハジキを防止し、均一な塗布厚みを達成することができる。
塗布後、PETフィルムの端部をクリップで把持して80〜130℃の熱処理ゾーン(予熱ゾーン)へ導き、塗料組成物の溶媒を乾燥させる。乾燥後幅方向に1.1〜5.0倍延伸する。引き続き150〜250℃の加熱ゾーン(熱処理ゾーン)へ導き1〜30秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させるとともに、樹脂層の形成を完了させる。更に、この加熱工程(熱処理工程)で、幅方向、3〜15%の弛緩処理を施す。
かくして得られる本発明の積層フィルムは、樹脂層を被着体に転写することで、被着体の外観品位を損なうことなく、被着体の表面に滑り性を付与することが可能であるので、転写フィルムとして好適に用いることができる。
<特性の測定方法及び効果の評価方法>
本発明における特性の測定方法、及び効果の評価方法は次の通りである。
(1)樹脂層の膜厚の評価方法
積層フィルムについて、RuO及び/またはOsOを用いて染色した。次に、積層フィルムを凍結せしめ、フィルム厚み方向に切断し、樹脂層断面観察用の超薄切片サンプルを得た。サンプルの断面について、TEM(透過型電子顕微鏡:(株)日立製作所製H7100FA型)を用いて観察することにより、積層フィルム上の樹脂層の厚みを測定した。樹脂層の厚みは、TEMにより10万倍の倍率、250nm×250nmの視野で撮影した画像から樹脂層の厚みを読み取った。20点の樹脂層厚みを測定し、その平均値を樹脂層の膜厚(nm)とした。
・測定装置:透過型電子顕微鏡(日立(株)製 H−7100FA型)。
(2)テープ剥離時の膜厚減少率、転写する樹脂層の厚みむら
テープ剥離時の膜厚減少率、および転写する樹脂層の厚みむらは、下記の通り測定した。
まず、本発明の積層フィルムの樹脂層上に、アクリル系粘着テープ(日東電工社製No.31Bテープ、19mm幅)を、2kgfのローラを1往復させることにより貼り合わせた。次に、粘着テープを貼り合わせた積層フィルムを熱風オーブンにて150℃×5時間加熱した。その後、島津(株)製万能試験機「オートグラフAG‐1S」を用いて、剥離角度180°、引張速度300mm/分にて、粘着テープを積層フィルムから剥離した。その後、初期の積層フィルムの樹脂層の厚みd0(nm)、テープ剥離後の樹脂層の厚みd1(nm)を前述の断面TEM観察により測定し、下記式によりテープ剥離時の膜厚減少率を算出した。
テープ剥離時の膜厚減少率(%)={(d0―d1)/d0}×100
また、粘着テープ側についても前述の断面TEM観察を行い、粘着テープに付着した樹脂層の厚みの最大値d2(nm)、最小値d3(nm)を測定した。その後、下記式により、転写する樹脂層の厚みむらを算出した。
転写する樹脂層の厚みむら(%)={(d2―d3)/d2}×100
(3)水接触角の測定方法
まず、積層フィルムを室温23℃相対湿度65%の雰囲気中に24時間放置後した。その後、同雰囲気下で、積層フィルムの樹脂層の表面側に対して、純水の接触角を、協和界面科学社製 接触角計DropMaster DM−501により、それぞれ5点測定した。5点の測定値の最大値と最小値を除いた3点の測定値の平均値を水接触角とした。
(4)初期テープ剥離力
初期テープ剥離力は下記の通り測定した。
まず、アクリル系粘着テープ(日東電工社製、日東31Bテープ、19mm幅)を、本発明の積層フィルムの樹脂層上に貼り合わせ、その上から、2kgfのローラを1往復させ、テープ貼合積層フィルムを作成した。その後、テープ貼合積層フィルムを25℃65%RHの環境下に24時間静置した後、島津(株)製万能試験機「オートグラフAG‐1S」を用いて、剥離角度180°、引張速度300mm/分で剥離力(N/19mm)を測定した。測定により得られた、剥離力(N/19mm)−試験時間(sec)のグラフから、5〜10secにおける剥離力の平均値を算出した。この測定を5回行い、最大値と最小値を省いた3回の平均を積層フィルムの剥離力(N/19mm)とし、その値をN/50mmに換算した値を初期テープ剥離力とした(すなわち、[初期テープ剥離力(N/50mm)]=[剥離力(N/19mm)]/19×50)。
(5)150℃×5時間加熱後テープ剥離力
150℃×5時間加熱後テープ剥離力は下記の通り測定した。まず、アクリル系粘着テープ(日東電工社製、日東31Bテープ、19mm幅)を、本発明の積層フィルムの樹脂層上に貼り合わせ、その上から、2kgfのローラを1往復させ、テープ貼合積層フィルムを作成した。その後、テープ貼合積層フィルムをエスペック(株)製の熱風オーブン「HIGH―TEMP OVEN PHH−200」にて設定温度150℃、風速5目盛で5時間加熱した後、室温23℃相対湿度65%の雰囲気中に30分間放置し、島津(株)製万能試験機「オートグラフAG‐1S」を用いて、剥離角度180°、引張速度300mm/分で剥離力(N/19mm)を測定した。測定により得られた、剥離力(N/19mm)−試験時間(sec)のグラフから、5〜10secにおける剥離力の平均値を算出した。この測定を5回行い、最大値と最小値を省いた3回の平均を積層フィルムの剥離力(N/19mm)とし、その値をN/50mmに換算した値を150℃×5時間加熱後テープ剥離力とした(すなわち、[150℃×5時間加熱後テープ剥離力(N/50mm)]=[剥離力(N/19mm)]/19×50)。
(6)被着体に対する滑り性の付与
被着体の滑り性は下記の通り判定した。
(2)に記載の方法で積層フィルムの樹脂層に粘着テープを貼り付け、150℃×5時間加熱し、剥離した後の粘着テープを作成した。―次いで、同様に作成した粘着テープの樹脂層が転写した面同士を向かい合わせて積層し、指で粘着テープ同士をこすり合わせた。上記処理時の滑り性を以下の5段階にて評価した。
5:ほとんど抵抗なく、界面をすり合わせることができる。
4:軽い力で界面を滑らせることができる。
3:界面を滑らせることができる。
2:界面での滑りがほとんど起こらない
1:粘着テープ同士が完全に貼りつき、界面での滑りが起こらない
(7)積層フィルムの透明性(ヘイズ)
ヘイズの測定は、常態(23℃、相対湿度50%)において、積層ポリエステルフィルムサンプルを40時間放置した後、日本電色工業(株)製濁度計「NDH5000」を用いて、JIS K 7136「透明材料のヘイズの求め方」(2000年版)に準ずる方式で行った。なお、サンプルの樹脂層が積層された面側から光を照射して測定した。サンプルは一辺50mmの正方形のものを10サンプル準備し、それぞれ1回ずつ、合計10回測定した平均値をサンプルのヘイズ値とした。
また、透明性はヘイズ値により、3段階評価を行った。Cは実用上問題のあるレベル、Bは実用レベルであり、Aは良好とした。
A :3.0%以下
B :3.0%を超えて5.0%以下
C :5.0%を超える。
(8)被着体に転写した樹脂層の透明性(ヘイズ)
被着体に転写した樹脂層のヘイズ値は以下の方法にて測定した。まず、アクリル系粘着テープ(日東電工社製No.31Bテープ)の幅を30mmに変更した以外は、(2)と同様の方法で樹脂層の転写を実施した。次いで、(8)と同様の方法で、樹脂層転写後の粘着テープのヘイズ値を測定した。更に、樹脂層未転写の粘着テープのヘイズ値を基準とし、その差を被着体に転写した樹脂層の透明性とした。Cは実用上問題のあるレベル、Bは実用レベルであり、Aは良好とした。
A :ヘイズ差が3.0%以下
B :ヘイズ差が3.0%を超えて5.0%以下
C :ヘイズ差が5.0%を超える。
以下、具体的な実施例に基づいて、本発明の積層フィルムを詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
・塗料組成物:
離型剤(A)として後述する(a−1)を、樹脂または化合物(B)として後述する(b−1)を用いて、固形分質量比で(A)/(B)=20/80となるように混合した。さらに、ポリエステルフィルムへの塗布性を向上するために、フッ素系界面活性剤(互応化学工業(株)製“プラスコート”(登録商標) RY−2)を、上記の混合した塗料組成物全体100質量部に対して0.1質量部になるように添加した。
・ポリエステルフィルム:
2種類の粒子(1次粒径0.3μmのシリカ粒子を4質量%、1次粒径0.8μmの炭酸カルシウム粒子を2質量%)を含有したPETペレット(極限粘度0.64dl/g)を十分に真空乾燥した後、押出機に供給して280℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。この未延伸フィルムを90℃に加熱して長手方向に3.1倍延伸し、一軸延伸フィルム(Bフィルム)とした。
・積層フィルム
一軸延伸フィルムに空気中でコロナ放電処理を施した後、表1に示す塗料組成物をワイヤーバーコートを用いて塗布厚み約6μmで塗布した。続いて、塗料組成物を塗布した一軸延伸フィルムの幅方向の両端部をクリップで把持して予熱ゾーンに導いた。予熱ゾーンの雰囲気温度は90〜100℃にし、塗料組成物の溶媒を乾燥させた。引き続き、連続的に100℃の延伸ゾーンで幅方向に3.6倍延伸し、続いて240℃の熱処理ゾーンで20秒間熱処理を施し、樹脂層を形成せしめ、さらに同温度にて幅方向に5%の弛緩処理を施し、ポリエステルフィルムの結晶配向の完了した積層フィルムを得た。得られた積層フィルムにおいてPETフィルムの厚みは50μm、樹脂層の厚みは60nmであった。
・離型剤(A):長鎖アルキルアクリレート化合物(a―1):
攪拌機、温度計、コンデンサーを備えた温度調整可能な反応器中に、トルエン500質量部、ステアリルメタクリレート(アルキル鎖の炭素数18)80質量部、メタクリル酸15質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート5質量部、アゾビスイソブチロニトリル1部を滴下器に入れ、反応温度85℃にて4時間で滴下して重合反応を行った。その後、同温度で2時間熟成して反応を完了させ得られた化合物を、イソプロピルアルコール5質量%とn−ブチルセロソルブ5質量%を含む水に溶解させ、長鎖アルキルアクリレート化合物(a−1)を含む溶液を得た。
・樹脂または化合物(B):アクリル樹脂(b−1):
ステンレス反応容器に、メタクリル酸メチル(α)、メタクリル酸ヒドロキシエチル(β)、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業(株)製、アートレジン(登録商標)UN−3320HA、アクリロイル基の数が6)(γ)を(α)/(β)/(γ)=94/1/5の質量比で仕込み、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを(α)〜(γ)の合計100質量部に対して2質量部を加えて撹拌し、混合液1を調製した。次に、攪拌機、環流冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた反応装置を準備した。上記混合液1を60質量部と、イソプロピルアルコール200質量部、重合開始剤として過硫酸カリウム5質量部を反応装置に仕込み、60℃に加熱し、混合液2を調製した。混合液2は60℃の加熱状態のまま20分間保持させた。次に、混合液1の40質量部とイソプロピルアルコール50質量部、過硫酸カリウム5質量部からなる混合液3を調製した。続いて、滴下ロートを用いて混合液3を2時間かけて混合液2へ滴下し、混合液4を調製した。その後、混合液4は60℃に加熱した状態のまま2時間保持した。得られた混合液4を50℃以下に冷却した後、攪拌機、減圧設備を備えた容器に移した。そこに、25%アンモニア水60質量部、及び純水900質量部を加え、60℃に加熱しながら減圧下にてイソプロピルアルコール及び未反応モノマーを回収し、純水に分散されたアクリル樹脂(b−1)を得た。
得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。被着体の滑り性、積層フィルムの透明性、被着体に転写した樹脂層の透明性がいずれも良好であった。
(実施例2〜5)
樹脂層の厚みを表2に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを製造した。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。被着体の滑り性、積層フィルムの透明性、被着体に転写した樹脂層の透明性がいずれも良好であった。
(実施例6)
樹脂または化合物(B)として、以下のポリエステル樹脂(b−2)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを製造した。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。被着体の滑り性、積層フィルムの透明性、被着体に転写した樹脂層の透明性がいずれも良好であった。
・樹脂または化合物(B):ポリエステル樹脂(b−2)
下記の共重合組成からなるポリエステル樹脂の水分散体を調整した。
<共重合成分>
(ジカルボン酸成分)
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル:88モル%
5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム:12モル%
(ジオール成分)
ビスフェノールS1モルに対してエチレンオキサイド2モルを付加した化合物:86モル%
1,3−プロパンジオール:14モル%
(実施例7〜9)
樹脂層の厚みを表2に記載の通りに変更した以外は、実施例6と同様の方法で、積層フィルムを製造した。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。被着体の滑り性、積層フィルムの透明性、被着体に転写した樹脂層の透明性がいずれも良好であった。
(実施例10)
樹脂または化合物(B)を用いなかった以外は、実施例3と同様の方法で、積層フィルムを製造した。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。被着体の滑り性、積層フィルムの透明性、被着体に転写した樹脂層の透明性がいずれも良好であった。
(実施例11)
離型剤(A)として以下の長鎖アルキル樹脂(a−2)を用いた以外は、実施例10と同様の方法で、積層フィルムを製造した。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。被着体の滑り性、被着体に転写した樹脂層の透明性が低下したが、実用レベルであった。
・離型剤(A):長鎖アルキル基含有樹脂(a―2)
4つ口フラスコにキシレン200部、オクタデシルイソシアネート600部を加え、攪拌下に加熱した。キシレンが還流し始めた時点から、平均重合度500、ケン化度88モル%のポリビニルアルコール100部を少量ずつ10分間隔で約2時間にわたって加えた。ポリビニルアルコールを加え終わってから、さらに2時間還流を行い、反応を終了した。反応混合物を約80℃まで冷却してから、メタノール中に加えたところ、反応生成物が白色沈殿として析出したので、この沈殿を濾別し、キシレン140部を加え、加熱して完全に溶解させた後、再びメタノールを加えて沈殿させるという操作を数回繰り返した後、沈殿をメタノールで洗浄し、乾燥粉砕することで、長鎖アルキル基含有樹脂(a―2):ポリメチレンを主鎖として側鎖に炭素数18のアルキル基を有する)を得た。これを水で希釈し、20質量%に調整した。
(実施例12)
離型剤(A)として以下のオレフィン樹脂(a−3)、樹脂または化合物(B)として以下のオキサゾリン化合物(b−3)を用いた以外は、実施例3と同様の方法で、積層フィルムを製造した。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。被着体の滑り性、積層フィルムの透明性、被着体に転写した樹脂層の透明性がいずれも良好であった。
・オレフィン系樹脂(a−3):三井化学(株)製、“ケミパール”(登録商標)XEP800H
・オキサゾリン化合物(b−3):(株)日本触媒製、“エポクロス”(登録商標)WS−500(固形分濃度40質量%、溶媒:水)
(実施例13〜16)
ポリエステルフィルムの製法において、一軸延伸フィルム(Bフィルム)の時点で塗料組成物の塗布を行わない以外は、実施例1と同様にして、結晶配向の完了したポリエステルフィルムを得た。次に、このポリエステルフィルムの上に、表1に示す塗料組成物をバーコーターを用いて塗布厚み約6μmで塗布した。その後、100℃オーブンで20秒間乾燥させ、次いで240℃オーブンで20秒間熱処理を施し、樹脂層を形成せしめ、積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。積層フィルムの透明性が実施例3対比で低下したが、実用レベルであった。
(実施例17、18)
塗料組成物中の離型剤(A)と樹脂または化合物(B)の比率を表1に記載の通りに変更した以外は、実施例3と同様の方法で、積層フィルムを製造した。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。被着体の滑り性、積層フィルムの透明性、被着体に転写した樹脂層の透明性がいずれも良好であった。
(実施例19、20)
塗料組成物中の離型剤(A)と樹脂または化合物(B)の比率を表1に記載の通りに変更した以外は、実施例8と同様の方法で、積層フィルムを製造した。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。被着体の滑り性、積層フィルムの透明性、被着体に転写した樹脂層の透明性がいずれも良好であった。
(実施例21)
離型剤(A)として以下のフッ素化合物(a−4)を用いた以外は、実施例3と同様の方法で、積層フィルムを製造した。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。被着体の滑り性、積層フィルムの透明性、被着体に転写した樹脂層の透明性がいずれも良好であった。
・フッ素化合物(a−4):日信化学工業(株)製、“ビニブラン”(登録商標)FJ−371
(実施例22)
離型剤(A)として以下のワックス系化合物(a−5)を用いた以外は、実施例3と同様の方法で、積層フィルムを製造した。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。被着体の滑り性、積層フィルムの透明性、被着体に転写した樹脂層の透明性がいずれも良好であった。
・ワックス系化合物(a−5):中京油脂(株)製、“レゼム”(登録商標)R−819
(実施例23)
離型剤(A)として以下のシリコーン系化合物(a−6)を用いた以外は、実施例3と同様の方法で、積層フィルムを製造した。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。被着体の滑り性、積層フィルムの透明性、被着体に転写した樹脂層の透明性がいずれも良好であった。
・シリコーン系化合物(a−6):
信越化学工業(株)製のシリコーン成分を含む塗剤、型番X−62−7655と信越化学工業(株)製のシリコーン成分を含む塗剤、型番X−62−7622と信越化学工業(株)製の触媒、型番CAT―7605を質量比95:5:1で混合した。
(実施例24)
積層フィルム製造時の幅方向の弛緩処理を5%ではなく2%とした以外は、実施例3と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。被着体に転写した樹脂層の透明性が実施例3対比で低下したが、実用レベルであった。
(実施例25)
離型剤(A)を用いなかった以外は、実施例3と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。実施例3対比で被着体の滑り性が低下したが、実用レベルであった。
(比較例1)
樹脂および化合物(B)としてアクリル樹脂(b−2)、オキサゾリン化合物(b−3)を用い、塗料組成物の比率を表1に記載の通りに変更した以外は、実施例3と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。被着体の滑り性が不良であった。
(比較例2)
樹脂および化合物(B)としてアクリル樹脂(b−3)、及び下記のメラミン樹脂(b−4)を用い、塗料組成物の比率を表1に記載の通りに変更した以外は、実施例3と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。被着体の滑り性が不良であった。
・メラミン樹脂(b−4):(株)三和ケミカル製のメチロール化メラミン、“ニカラック”(登録商標)MW−035(固形分濃度70質量%、溶媒:水)を用いた。
(比較例3)
樹脂または化合物(B)として、オキサゾリン化合物(b−3)を用いた以外は、実施例25と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。被着体の滑り性が不良であった。
(比較例4)
樹脂または化合物(B)として、メラミン樹脂(b−4)を用いた以外は、実施例25と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。被着体の滑り性が不良であった。
Figure 2021062480
Figure 2021062480
Figure 2021062480
1 ・・・ ポリエステルフィルム
2 ・・・ 樹脂層
3 ・・・ 初期の樹脂層厚みd0
4 ・・・ 被着体(日東電工製No.31Bテープ)
5 ・・・ テープ剥離後の樹脂層厚みd1
6 ・・・ テープに付着する樹脂層厚みの最大値d2
7 ・・・ テープに付着する樹脂層厚みの最小値d3
本発明の積層フィルムは、プラスチックフィルムや成型体、自動車、鉄道車両、飛行機、建物等の各種外板、および床面などの各種面の滑り性の向上させることができる転写フィルムに好適に使用することができる。

Claims (6)

  1. ポリエステルフィルムと、樹脂層を有する積層フィルムであり、前記樹脂層が少なくとも一方の表層にあり、初期の積層フィルムの樹脂層の厚みをd0(nm)、前記樹脂層に日東電工製No.31Bテープを貼り付け、150℃×5時間加熱した後、日東電工製No.31Bテープを剥離した後の積層フィルムの樹脂層の厚みをd1(nm)としたとき、下記式(1)を満たす積層フィルム。
    {(d0―d1)/d0}×100≧20 式(1)
  2. 前記樹脂層に日東電工製No.31Bテープを貼り付け、150℃×5時間加熱した後、日東電工製No.31Bテープを剥離した際に、前記テープに付着する樹脂層の厚みの最大値をd2(nm)、前記テープに付着する樹脂層の厚みの最小値をd3(nm)としたとき、下記式(2)を満たす請求項1に記載の積層フィルム。
    {(d2―d3)/d2}×100≦50 式(2)
  3. 前記樹脂層の水接触角が95°以上110°以下である請求項1または2に記載の積層フィルム。
  4. 前記樹脂層の初期テープ剥離力が0.5N/50mm以上4.0N/50mm以下であり、かつ、150℃×5時間加熱後テープ剥離力が8.0N/50mm以上14.0N/50mm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の積層フィルム。
  5. 前記樹脂層が、長鎖アルキル基含有樹脂、オレフィン樹脂、フッ素化合物、ワックス系化合物から選ばれる少なくとも1種類の離型剤(A)を含有する塗料組成物から形成される請求項1〜4のいずれかに記載の積層フィルム。
  6. 転写用途に用いられる請求項1〜5のいずれかに記載の積層フィルム。
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