JP2021131296A - 圧力センサ - Google Patents

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Abstract

【課題】高い耐圧性能を有し、かつ圧力に対するヒステリシスを抑制することで測定誤差が小さく、さらには高感度で生産性にも優れる圧力センサ提供する。【課題手段】被測定流体の圧力を受ける第1主面(第3下面13b)およびこの第1主面の反対側に位置する第2主面(第1上面11a)を有するダイアフラム部10Aと、ハウジング20と、前記ダイアフラムの変形を電気信号として出力するセンシング部30と、を備え、前記ダイアフラム部は、少なくとも一部が複数の薄板部材11A、12A、13Aが積層することで形成される多層構造からなり、これら複数の薄板部材は、前記被測定流体の圧力が前記第1主面に印加された受圧状態において、少なくとも一部が互いに圧接しながらそれぞれが独立して変形するように構成された圧力センサ1Aとする。【選択図】図2

Description

本発明は、流体等の圧力を検出する圧力センサ、特にサニタリー用圧力センサに関するものである。
流体の圧力を検出する圧力センサのうち、食品や医薬品等の分野の製造現場等で用いられるサニタリー用圧力センサに対しては、衛生的な配慮が必要とされることから、耐食性、清浄性、信頼性および汎用性等に関して厳しい要件が課せられている。これら要請は、衛生管理に関する法規制の厳格化が図られている近年において、さらに厳しいものとなっている。
このようなサニタリー用圧力センサを取り巻く状況のもとでは、例えば、耐食性の要件から、圧力の測定対象の流体(例えば液体)が接触する接液部分にステンレス鋼(SUS)、セラミックスおよびチタン等の耐食性の高い材料が用いられている。また、清浄性の要件から、洗浄しやすいフラッシュダイアフラム構造が採用され、さらに、蒸気洗浄に対応できるように耐熱衝撃性能の高い設計となっている。また、信頼性の要件から、封入剤(例えば非圧縮性流体としてのオイル)を使用しない構造(いわゆるオイルフリー構造)およびダイアフラムが破れ難い構造(バリア高剛性)が採用されている。
このように、サニタリー用圧力センサにおいては、使用する材料や構造が他の圧力センサに比べて制限されている。このため、圧力センサに求められる全ての性能を高い次元で達成することは容易でない。例えば、高い耐圧強度を有しかつ圧力に対するヒステリシスを低減して測定誤差を小さく抑えるためには、膜厚を大きくした(厚みに対する径のアスペクト比を小さくした)高強度・高剛性のダイアフラムが求められる一方で、センサ感度を高めるためには、小さな圧力変動に対して大きく変形する低剛性のダイアフラムが求められる。このように、ダイアフラムの剛性に対する要請は、各性能で異なり、かつこれら異なる要請は相反している(特に、ヒステリシスを低減して測定誤差を小さく抑えることとセンサ感度を高めることとの間で相反している)。当該ダイアフラムの機械的性質に対する相反する要請と上述したような設計上の制限が課せられた条件のもとでは、例えば高強度・高剛性のダイアフラムを採用した上で、犠牲となっているセンサ感度を高めるためるための技術的措置が講じられている。
例えば、特許文献1には、ダイアフラム(3)の支持面(3B)に略垂直に起立する3つの支持部材(2a、2b,2c)を所定の位置に立設し、これら支持部材の上に半導体チップを載置した圧力センサ(100)が記載されている。この圧力センサ(100)においては、ダイアフラム(3)の微小なたわみが、3つの支持部材(2a、2b,2c)、具体的には、支持面(3B)の中心(30)に配設された1つの支持部材(2a)と、中心(30)に対して点対称となる位置に配設された2つの支持部材(2b,2c)とを通じて効率的にセンシング部(半導体チップ1)に伝えられる(具体的には、半導体チップ1が、支持面3Bに直接設けられている場合に比べて大きく歪むように構成される)ことで、センサ感度が高められている。
特開2017−120214号公報
従来技術においては、上述したように、ダイアフラムの剛性等の機械的性質に対する相反関係を容認した上で、上記技術的措置(特許文献1に記載の技術的措置等)を講じることにより各性能が満たされるように構成されている。このため、更なる改善、例えば、ダイアフラム自体の構造を見直すことで上記相反関係を改善(できれば解消)し、これにより、上記技術的措置と相まってさらなる高性能化を推し進めることが技術的に求められている。
本発明は、上記課題に鑑み創作されたものであり、その目的は、高い耐圧性能を有し、かつ圧力に対するヒステリシスを抑制することで測定誤差が小さい圧力センサにあって、測定対象の流体(以下、「被測定流体」と称する。)の圧力変動に対する感度を、ダイアフラム自体の構造を見直すことで改善した圧力センサを提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る圧力センサ(1A、1B、1C、1D、1E)は、被測定流体の圧力を受ける第1主面およびこの第1主面の反対側に位置する第2主面を有するダイアフラム部と、前記ダイアフラム部を支持するハウジングと、前記ダイアフラムの前記第2主面上に配設され前記ダイアフラムの変形を電気信号として出力するセンシング部と、
を備え、前記ダイアフラム部は、少なくとも一部が複数の薄板部材が積層することで形成される多層構造からなり、これら複数の薄板部材は、前記被測定流体の圧力が前記第1主面に印加された受圧状態において、少なくとも一部が互いに圧接しながらそれぞれが独立して変形するように構成されていることを特徴とする。
前記圧力センサにおいて、前記複数の薄板部材が、前記受圧状態にあるときそれぞれの外周縁部を通じて前記圧力に起因した力の反力を受けるように、前記複数の薄板部材の各外周縁部が前記ハウジングまたは隣り合う前記薄板部材によって支持されているように構成してもよい。
また、前記圧力センサにおいて、前記複数の薄板部材の少なくとも一部が、互いが外周縁部で接合され、この接合された外周縁部(14)の少なくとも一部が前記ハウジングに固定されるように構成してもよい。
さらに、隣り合う2つの前記薄板部材における対向する一対の面を、互いが接するように形成してもよい。
また、前記圧力センサにおいて、隣り合う前記薄板部材の少なくとも一部の間に隙間が形成されるように構成してもよい。
さらに、前記圧力センサにおいて、前記複数の薄板部材の少なくとも一部が、表裏2つの面のうちの少なくとも一方の面に形成された凸状部(11c、12c)を備えるように構成してもよい。
また、前記圧力センサにおいて、前記複数の薄板部材の中央部が接合されるように形成していてもよい。
さらに、前記圧力センサにおいて、隣り合う2つの前記薄板部材の間に潤滑部材(40、50)が配設されていてもよい。
また、前記圧力センサにおいて、隣り合う前記薄板部材は異なる材料からなるように構成してもよい。
なお、上記説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
本発明によれば、高い耐圧性能を有し、また、圧力に対するヒステリシスを抑制することで測定誤差が抑制され、さらには、被測定流体の圧力変動に対して高感度な圧力センサを提供することができる。
図1は、本発明の実施の形態に係る圧力センサおよびこれと接続する配管の断面図である。 図2は、本発明の第1の実施の形態に係る圧力センサが備えるダイアフラム部の断面のうちの図1中のX部分を拡大した図である。 図3は、本発明の第1の実施の形態に係る圧力センサが備えるダイアフラム部の受圧時の変形態様を示す断面図である。 図4は、本発明の第1の実施の形態に係る圧力センサが備えるダイアフラム部の受圧時の変形態様を表わす概念図である。 図5は、図3中のY部分を拡大した断面図である。 図6は、本発明の第2の実施の形態に係る圧力センサが備えるダイアフラム部の断面のうちの図1中のX部分を拡大した図である。 図7は、本発明の第2の実施の形態に係る圧力センサが備えるダイアフラム部の受圧時の変形態様を示す断面であって、図6中のY部分に相当する部分を拡大した図である。 図8は、本発明の第3の実施の形態に係る圧力センサが備えるダイアフラム部の断面図であって、図1におけるX部分を拡大した図である。 図9は、本発明の第4の実施の形態に係る圧力センサが備えるダイアフラム部の断面図であって、図1におけるX部分を拡大した図である。 図10は、本発明の第5月の実施の形態に係る圧力センサが備えるダイアフラム部の断面図であって、図1におけるX部分を拡大した図である。
以下、本発明の好ましい実施の形態である第1の実施の形態ないし第5の実施の形態を、図1ないし図10に基づいて説明する。各実施の形態において共通する構成要素については、同一の符号を付するとともに繰り返しの説明を割愛する。なお、説明文中の左右方向、前後方向および上下方向は、各図に示された圧力センサ1A、1B、1C、1D、1Eおよび/またはダイアフラム部10A、10B、10C、10D、10Eの紙面に対する奥行き方向、上下方向および左右方向としてそれぞれ定義する。また、各図は概念図であって、それぞれに示された内容は、実際の圧力センサと必ずしも一致するものではない。
≪第1の実施の形態≫
はじめに、本発明の第1の実施の形態に係るダイアフラム部10Aを備える圧力センサ1Aを、図1および図2に基づいて説明する。
〔圧力センサの構成〕
まず、圧力センサ1Aの構成を、図1および図2に基づいて説明する。この圧力センサ1Aは、図1に示すように、被測定流体Fの圧力Pを受けて変形する(たわむ)ダイアフラム部10Aと、このダイアフラム部10Aの外周縁と結合してこれを支持するハウジング20と、ダイアフラム部10Aの変形を所定の電気信号(例えば、電圧信号)として検出するセンシング部30とから主に構成されている。また、ハウジング20の下方に、被測定流体Fが流出入する配管Hが、例えばクランプCを介して取り付けられている。
<ダイアフラム部10A>
ダイアフラム部10Aは、被測定流体Fの圧力Pの大きさに応じてその変形量が変化する薄膜部材から構成された要素である。ダイアフラム部10Aは、図2に示すように、3つの薄板部材、すなわち、第1薄板部材11A、第2薄板部材12Aおよび第3薄板部材13Aから構成され、これら薄膜部材が積層された多層構造を有している。
第1薄板部材11A、第2薄板部材12Aおよび第3薄板部材13Aは、例えばそれぞれの外周縁が溶接等によって接合し、これによって、円筒状の固定部14がダイアフラム部10Aの外周縁部に形成されている。当該固定部14は、ハウジング20(より具体的には、後述する開口部21の内周側壁面21a)と、例えば溶接により接合し、これにより、ダイアフラム部10Aがハウジング20を通じて支持・固定されている。また、固定部14の内側は、変形領域(センシング部30が配設された変形領域を、特に、「変形検出領域R」と称することがある。)を形成している。
第1薄板部材11A、第2薄板部材12Aおよび第3薄板部材13Aは、例えば、それぞれの厚み(第1薄板部材11Aの板厚t11、第2薄板部材12Aの板厚t12および第3薄板部材13Aの板厚t13)が等しい平面視略円形の薄板からなる。これら薄板部材は、いずれも平坦な面として形成され、上下(表裏)2つの面を有している。具体的には、第1薄板部材11Aは第1上面11Aaおよび第1下面11Abを有し、第2薄板部材12Aは第2上面12Aaおよび第2下面12Abを有し、第3薄板部材13Aは第3上面13Aaおよび第3下面13Abを有している。最上面を形成する第1上面11Aaは、特許請求の範囲に記載の「第2主面」に相当する部位であって、センシング部30が載置されこれを保持する支持面として機能する。また、最下面を形成する第3下面13Abは、特許請求の範囲に記載の「第1主面」に相当する部位であって、被測定流体Fと接して圧力Pを受ける受圧面をとして機能する。
本実施の形態では、隣り合う2つの薄板部材、すなわち、第1薄板部材11Aと第2薄板部材12Aおよび第2薄板部材12Aと第3薄板部材13Aが、互いに接するように構成されている。具体的には、被測定流体Fの圧力Pがダイアフラム部10Aに印加されていない非受圧状態にあるときでも、互いに対向する一対の面、すなわち、第1下面11Abと第2上面12Aaおよび第2下面12Abと第3上面13Aaとが接すように構成されている。これにより、不感帯の発生を防止することができる。
ここで、上記対向する一対の面を、摩擦係数が小さくかつ表面自由エネルギの小さな材料、例えばフッ素樹脂等の高分子材料を用いてコーティングしてもよい。このようなコーティングを施した仕様においては、被測定流体Fの圧力Pが、例えば等価分布荷重として印加された状態にあるとき(以下、「受圧時」または「受圧状態」と称することがある。)でも、上記対向する一対の面が圧着することを物理化学的に防止することができる。これにより、第1薄板部材11A、第2薄板部材12Aおよび第3薄板部材13Aが、受圧時に互いが圧接しながらそれぞれが独立して変形するように構成することが容易になる(受圧時に隣り合う2つの薄板部材間で異なるひずみが生じる場合には、互いが摺動するように構成することが容易になる)。
一例では、第1薄板部材11A、第2薄板部材12Aおよび第3薄板部材13Aが、同一の材料、例えば、耐食性に優れたステンレス鋼(SUS)またはチタンのいずれか1つからなるように構成されている。
他の例では、第1薄板部材11A、第2薄板部材12Aおよび第3薄板部材13Aが、異なる材料、例えばステンレス鋼(SUS)およびチタンのいずれかからなるように構成されている。この場合、隣り合う2つの薄板部材間で材料が異なるように構成するとよい。例えば、第1薄板部材11Aおよび第3薄板部材13Aはステンレス鋼(SUS)からなり、第2薄板部材12Aはチタンからなる。このように構成することで、受圧時に第1薄板部材11A、第2薄板部材12Aおよび第3薄板部材13Aが互いに圧接しても、対向する一対の面が表面自由エネルギによって圧着することを物理化学的に抑制することができる。また、異なる材料として、各薄板部材の変形態様が略同じとなるように、例えば縦弾性係数や熱膨張率といった物性値が略同じ材料を用いてもよい。
なお、第1薄板部材11A、第2薄板部材12Aおよび第3薄板部材13Aの板厚t11、t12およびt13が異なるように構成してもよい。例えば、受圧時に各薄板部材の表面のひずみ(当該表面に生じる応力)が等しくなるように板厚を異ならせてもよい。
固定部14は、上述したように、第1薄板部材11A、第2薄板部材12Aおよび第3薄板部材13Aの外周縁部が溶接等によって互いに結合することで形成された円筒状の部位である。固定部14の外径D14は、ダイアフラム部10の外周縁径を画成し、同内径d14は、ダイアフラム部10の変形領域の外周縁径を画成する。ここで、センサ感度を高めるためには、固定部14の内径d14を、変形検出領域Rの外径D30よりも大きく設定するとよい。これにより、変形検出領域Rのもとでは、ダイアフラム部10が第1薄板部材11A、第2薄板部材12Aおよび第3薄板部材13Aから形成された多層構造によって構成されることとなる。このように構成することで、ダイアフラム部10Aの変形検出領域Rは、受圧時に各薄膜部材が独立して変形することとなる。具体的には、第1薄板部材11A、第2薄板部材12Aおよび第3薄板部材13Aがそれぞれ中立面S11A、S12A、S13Aを有し、これら中立面S11A、S12A、S13Aを境に、図3および図5における下側(受圧面として機能する第3下面13Abの側)が圧縮応力を伴って変形し、同上側(センシング部30の支持面として機能する第1上面11Aaの側)が引張応力を伴って変形することとなる。
固定部14の外周縁を形成する外周側壁面14aは、後述するハウジング20の開口部21に嵌入されたのち、例えば、溶接によって少なくともその一部(溶接部W)が開口部21の内周側壁面21aに結合される。これにより、ダイアフラム部10Aは、固定部14(より具体的には溶接部W)を介してハウジング20に支持・固定される。当該固定態様においては、受圧面として機能する第3下面13Abを通じて被測定流体Fの圧力Pが印加されると、その反力が固定部14(より具体的には溶接部W)を介してハウジング20に作用することとなる。
なお、ダイアフラム部10Aの上記固定態様は一例にすぎず、受圧時にダイアフラム部10Aに作用する力をハウジング20が受け、かつ当該力の反力がダイアフラム部10Aの固定部14を通じて各薄板部材の外周縁部に作用するように構成された固定態様であれば特定のものに限定されない。例えば、ハウジング20の開口部21に固定部14の上端面と当接する座面を形成し、当該座面と固定部14の下端面に取付けたスナップリングとで固定部14を挟持するようにして、ダイアフラム部10Aをハウジング20へ固定する態様としてもよい。
<ハウジング20>
ハウジング20は、内側に開口部21が開口する略円筒状のダイアフラム支持要素であって、耐食性の高い金属材料、例えば、ステンレス鋼(SUS)から形成されている。ハウジング20は、図1に示すように、その下部に、配管Hのフェルールフランジ部Hfと接合するフェルールフランジ部20fが、半径方向外側に向かって突出するように設けられている。圧力センサ1Aと配管Hとは、重なり合うフェルールフランジ部20fとフェルールフランジ部HfとがクランプCによって上下方向に挟持されることで互いが連結している。開口部21の内周側壁面21aは、その下部でダイアフラム部10Aの外周縁と結合し、ダイアフラム部10A、より具体的には、ダイアフラム部10Aの第1上面11Aaと共に、被測定流体Fが流出入する配管Hの内部と隔絶された円柱状の空間Vを形成している。この空間Vは、例えば大気と連通し、次に述べるセンシング部30が内側に配設されている。
<センシング部30>
センシング部30は、上述したように、ダイアフラム部10Aの変形を検出し、この変形量に応じた電気信号、例えば、電圧信号を出力する機能部である。センシング部30は、例えば、ダイアフラム部10Aの第1上面11Aaの上に立設された複数の構造体31a、31b、31cと、これら構造体31a、31b、31cによって支持された半導体チップ32とから構成されている。この半導体チップ32は、例えば、Si等の半導体材料からなる基板と、この基板の上に形成されたホイートストンブリッジ回路からなるひずみゲージとから構成されている。ホイートストンブリッジ回路が備える4つの抵抗素子(例えば拡散抵抗)は、ダイアフラム部10Aの変形に応じてその長さが変位(伸縮)することで抵抗値が増減するように構成されている。これにより、ダイアフラム部10Aの変形が、ホイートストンブリッジ回路の中間点の電圧値の変化として検出される。
なお、本実施の形態では、従来技術との相乗効果により、低ヒステリシスと高感度化をより高い次元で実現するために、上記構成のセンシング部30としているが、必ずしも当該構成を必須とするわけではなく、例えば第1薄板部材11Aの第1上面11Aaに直接センシング部30を貼設してもよい。
〔圧力センサ1Aの動作原理〕
上記構成の圧力センサ1Aを用いて被測定流体Fの圧力Pを測定する原理(動作原理)を、ダイアフラム部10Aの変形態様を交えながら図3および図4に基づいて説明する。
ダイアフラム部10Aが受圧状態にあるとき、受圧面を形成する第3薄板部材13Aの第3下面13Abには、図3および図4に示すように、等価分布荷重Pに起因した所定の力F0(図4には、便宜的に力F0を集中荷重として表示している)が上向きに印加される。このとき、第3薄板部材13Aは、固定部14を介してハウジング20に支持・固定されている外周縁に下向きの反力Fr13が作用するとともに、曲げモーメントを伴いながら中央部が突出するように変形する。この変形は、第3上面13Aaと接する第2下面12Abを通じて第2薄板部材12Aへと伝えられ、同時に第3薄板部材13Aから第2薄板部材12Aへ上向きの力F1が伝達される。このとき、第3薄板部材13Aの第3上面13Aaには、力F1の反力Fr1が下向きに作用する。これにより、第3薄板部材13Aは、上向きの力F0と、下向きの反力Fr1および反力Fr13とが釣り合った状態で静止する。なお、図4には、便宜的に力F1およびその反力Fr1を集中荷重として表示しているが、実際には面接触によってこれら力が伝達される。
第3薄板部材13Aの第3上面13Aaと接する第2下面12Abを通じて、上向きの力F1が印加された第2薄板部材12Aは、固定部14を介してハウジング20に固定されている外周縁に下向きの反力Fr12が作用するとともに、曲げモーメントを伴いながら中央部が突出するように変形する。この変形は、第2上面12Aaと接する第1下面11Abを通じて第1薄板部材11Aへと伝えられ、同時に第2薄板部材12Aから第1薄板部材11Aへ上向きの力F2が伝達される。このとき、第2薄板部材12Aの第2上面12Aaには、力F2の反力Fr2が下向きに作用する。これにより、第2薄板部材12Aは、上向きの力F1と、下向きの反力Fr2および反力Fr12とが釣り合った状態で静止する。なお、図4には、便宜的に力F2およびその反力Fr2を集中荷重として表示しているが、実際には面接触によってこれら力が伝達される。
第2薄板部材12Aの第2上面12Aaと接する第1下面11Abを通じて、上向きの力F2が印加された第1薄板部材11Aは、固定部14を介してハウジング20に固定されている外周縁に、当該力F2と釣り合った下向きの反力Fr11が作用することで静止するとともに、曲げモーメントを伴いながら中央部が突出するように変形する。
第1薄板部材11Aの上記変形は、第1上面11Aaに貼設されたセンシング部30へと伝えられ、センシング部30を構成する半導体チップ32を変形させる。これにより、この半導体チップ32内のホイートストンブリッジ回路からなるひずみゲージが備える抵抗素子が変位(伸縮)し、当該変形(量)に応じた電圧値がセンシング部30から出力される。
〔効果〕
上記構成からなる本実施の形態に係る圧力センサ1Aの効果、具体的には、ダイアフラムを用いた圧力センサに求められる耐圧性能、測定誤差および圧力感度に対する効果を、単層のダイアフラムを用いた従来の圧力センサと比較しながら図3ないし図5に基づいて説明する。
耐圧性能は、受圧状態にあるダイアフラムに作用する曲げモーメントに起因した応力σ(曲げ応力度σ)の最大値σmaxによって評価される。この最大応力値σmaxは、外周縁が溶接等によってハウジングに固定された円板状のダイアフラムに等分布荷重が印加される態様において、固定端である外周縁に生じる。最大応力値σmaxは、等分布荷重をP、ダイアフラムの半径をa、ダイアフラムの板厚をtとすると、関係式σmax=3P・a2/4t2から算出することができる。所望の耐圧性能を得るためには、最大応力値σmaxが規定値以下となることが求められ、そのためには、外周縁部分の板厚tを大きくする(または厚みに対する径、すなわちアスペクト比を小さくする)ことが有用である。したがって、所定の大きさ(径)を有するダイアフラムの耐圧性能を向上させるためには、ダイアフラムの板厚tを大きくすることが求められる。
測定誤差は、例えば、圧力に対するヒステリシスを抑えることで小さくすることができる。圧力に対するヒステリシスを抑えるためには、受圧状態と非受圧状態とを繰り返すダイアフラムにおいて、センシング部が配設された変形検出領域Rにおける応力σ(曲げ応力度σ)およびひずみεの振幅を小さくすること、すなわち、最大応力値σmaxおよび最大ひずみεmaxを小さくすることが有効である。このように、最大応力値σmaxおよび最大ひずみεmaxは、測定誤差(圧力に対するヒステリシス)の程度を表す指標の1つとなる。最大応力値σmaxおよび最大ひずみεmaxを小さくするためには、ダイアフラムにおける変形領域の剛性を高めること、すなわち、ダイアフラムの板厚tを大きくすることが有用である。このため、測定誤差(圧力に対するヒステリシス)を抑制するためには、ダイアフラムの板厚tを大きくすることが求められる。
圧力感度は、センシング部が配設されたダイアフラム内の変形領域における変形量に依存し、被測定流体Fの圧力変化に対する当該変形量の割合が大きいほど、すなわち、ダイアフラムの剛性が低くて大きくたわむほど向上する。ダイアフラムの剛性を低くするためにはダイアフラムの板厚tを小さくすることが有用である。このため、圧力感度を向上させるためには、ダイアフラムの板厚tを小さくすることが求められる。
以上述べたように、ダイアフラムの板厚tへの要求事項は、耐圧性能および測定誤差と圧力感度との間で相反し、また、ダイアフラムの剛性への要求事項は、測定誤差と圧力感度との間で相反する。従来の圧力センサにおいては、耐圧性能を保証する観点から、ダイアフラムの厚みtが十分な大きさの値として設定される。この結果、背景技術のところでも述べたように、ダイアフラムの剛性が高まることで圧力に対するヒステリシスが抑制されて測定誤差も小さくなる一方、変形量が微小となるため圧力感度が低下する。このため、従来の圧力センサにおいては、所望の圧力感度を得るために、特許文献1に記載の支持部材を別途設けるなどの技術的措置が必須となる。
これに対し、本実施の形態に係るダイアフラム部10Aを備えた圧力センサ1Aによれば、ダイアフラムの剛性等の機械的性質を見直したことで、上記特許文献1に記載の発明が備える技術的措置と相まって、上記相反関係をより高い次元で改善(解消)することができる。すなわち、圧力センサ1Aが備えるダイアフラム部10Aは、上述したように、変形領域(変形検出領域R)が第1薄板部材11A、第2薄板部材12Aおよび第3薄板部材13Aから形成された多層構造からなり、これら第1薄板部材11A、第2薄板部材12Aおよび第3薄板部材13Aが、上記受圧状態においてそれぞれが独立して変形するように構成されている。具体的には、第1薄板部材11A、第2薄板部材12Aおよび第3薄板部材13Aは、それぞれが異なる曲率半径(曲率半径ρ11A、ρ12Aおよびρ13A)をもつ中立面S11A、S12A、S13Aを有し、それぞれが、当該中立面S11A、S12A、S13Aを境に、図3および5における下側(受圧面として機能する第3下面13Abの側)が圧縮応力を伴って変形し、同上側(センシング部30の支持面として機能する第1上面11Aaの側)が引張応力を伴って変形するように構成されている(図3および図5を参照)。
ここで、上記受圧状態にあるときの第1薄板部材11A、第2薄板部材12Aおよび第3薄板部材13Aに作用する曲げモーメントに起因した応力σ11A、σ12A、σ13A(曲げ応力度σ11A、σ12A、σ13A)は、例えば、各薄板部材が同一材料から場合、その縦弾性係数をE、各中立面の曲率半径をρ11A、ρ12Aおよびρ13A、ならびに各中立面からの距離をz11A、z12Aおよびz13Aとすると、関係式σk=E×zk/ρk(k=11A、12A、13A)によって近似的に算出することができる。中立面からの距離zkは、各板厚tkによってその範囲が画定され、縦断面形状が上下対称であって単一材料からなる円板状の第1薄板部材11A、第2薄板部材12Aおよび第3薄板部材13Aにおいては、距離zkの最大値は板厚tkの1/2となる。すなわち、応力σkは、第1薄板部材11A、第2薄板部材12Aおよび第3薄板部材13Aの表面で最大となり、その値(近似値)は、σkmax=E×tk/(2×ρk)(以下、「関係式α」と称する。)となる。
上記関係式α中のσkmaxは、上述したように、測定誤差(圧力に対するヒステリシス)の程度を表す指標となるものであって、その値は小さいほど好ましい。また、上記関係式α中の曲率半径ρkは、変形の程度を表す指標、すなわち、圧力感度の指標となるものであって、その値が小さいほど変形の程度が大きく、圧力感度を高めるのに好適となる。
ここで、第1薄板部材11A、第2薄板部材12Aおよび第3薄板部材13Aのそれぞれの板厚t11、t12およびt13が単層のダイアフラムの板厚tの1/3であるとした場合、以下に述べるように、ダイアフラム部10Aを備える圧力センサ1Aの測定誤差(圧力に対するヒステリシス)および圧力感度は、単層のダイアフラムを用いた従来の圧力センサのそれらに優位することとなる。
すなわち、測定誤差(圧力に対するヒステリシス)の指標である最大応力値σmaxが2つのダイアフラムで同一であるとすれば、圧力感度の指標となるダイアフラム部10Aの曲率半径(より具体的には、センシング部30が配設された第1薄板部材11Aの曲率半径ρ11A)は、関係式αから単層のダイアフラムの略1/3倍となる。したがって、圧力感度が曲率半径に反比例すると仮定すれば、ダイアフラム部10Aを備える圧力センサ1Aは、単層のダイアフラムを用いた従来の圧力センサと比較して、測定誤差(圧力に対するヒステリシス)は同等、かつ圧力感度は略3倍となる。
また、ダイアフラム部10Aの最大応力値σmaxが単層のダイアフラムのそれの1/2である場合、ダイアフラム部10Aの曲率半径(より具体的には、センシング部30が配設された第1薄板部材11Aの曲率半径ρ11A)は、関係式αから単層のダイアフラムのそれの略2/3倍となる。したがって、測定誤差(圧力に対するヒステリシス)が応力σ(曲げ応力度σ)の最大値に比例し、かつ圧力感度が曲率半径に反比例すると仮定すれば、ダイアフラム部10Aを備える圧力センサ1Aは、単層のダイアフラムを用いた従来の圧力センサに比べて、測定誤差が1/2でありかつ圧力感度が略1.5倍となる。
このように、複数の薄膜部材から構成された多層構造のダイアフラム部10Aを備える圧力センサ1Aにおいては、これまで相反するとされていた測定誤差と圧力感度とを高い次元で両立することができる(すなわち、ダイアフラムの剛性に対する上記相反関係を改善することができる)。この効果は、ダイアフラム部10Aを構成する薄板部材の枚数を増やしてその板厚を薄くすることで、より顕著なものとしてもたらされる。
また、多層構造のダイアフラム部10Aを備える圧力センサ1Aにおいては、耐圧強度についても優れた効果を奏する。すなわち、第1薄板部材11A、第2薄板部材12Aおよび第3薄板部材13Aから構成される多層構造のダイアフラム部10Aにおいては、図4に示すような力が作用する。ここで、力F1とその反力Fr1、および力F2とその反力Fr2は等しい。これら力の釣り合い式から、被測定流体Fの圧力Pに起因した力F0は、第1薄板部材11A、第2薄板部材12Aおよび第3薄板部材13Aの外周縁に作用する反力Fr11、Fr12およびFr13の合算値と等しくなる。すなわち、ダイアフラムを多層構造とすることで、被測定流体Fの圧力Pに起因した力F0は、各層に分散されることとなる。これにより、各薄板部材をたわませる力は、単層のダイアフラムをたわませる力より小さくなる。例えば、第1薄板部材11Aにおいては、反力Fr1が作用する分だけ当該力が小さくなる。したがって、被測定流体Fの圧力Pに起因した力F0が同値である場合、ダイアフラム部10の外周縁に発生する応力σ(曲げ応力度σ)の最大値σmax、より具体的には、第1薄板部材11A、第2薄板部材12Aおよび第3薄板部材13Aのそれぞれの外周縁に発生する応力σi(曲げ応力度σi)(i=11A、12A、13A)の最大値σimaxは、単層のダイアフラムのそれよりも小さくなり、耐圧性能が向上する。この効果は、ダイアフラム部10Aを構成する薄板部材の枚数を増やすことで、より顕著なものとしてもたらされる。
≪第2の実施の形態≫
つぎに、本発明の第2の実施の形態に係る圧力センサ1Bについて説明する。この圧力センサ1Bは、上記第1の実施の形態に係る圧力センサ1Aが備えるダイアフラム部10Aを、図6に示すダイアフラム部10Bに置き換えたものであって、その他の構成は、圧力センサ1Aと同一である。以下、ダイアフラム部10Bの構成について説明する。
<ダイアフラム部10B>
ダイアフラム部10Bは、図6に示すように、中央部に形成された剛性の高い非変形部15と、この非変形部15の周縁を囲うように形成された剛性の低い第1薄板部材11B、第2薄板部材12Bおよび第3薄板部材13Bから構成されている。第1薄板部材11B、第2薄板部材12Bおよび第3薄板部材13Bは、円筒状の薄板として形成され、その内周縁が非変形部15の外周縁に接続し、かつその外周縁がハウジング20(より具体的には、開口部21の内周側壁面21a)に接続している。
非変形部15は、直径D15および高さH15の円柱領域として形成されている。非変形部15は、例えば、ダイアフラム部10Aを構成する第1薄板部材11A、第2薄板部材12Aおよび第3薄板部材13Aの中央部が所定の範囲で接合(例えば溶接で接合)することで形成される。当該仕様においては、高さH15は、第1薄板部材11B、第2薄板部材12Bおよび第3薄板部材13Bの板厚の合計値(すなわち、H15=t11+t12+t13)となる。また、直径D15は、センシング部30を構成するひずみゲージが変形可能となるように、変形検出領域Rの外径D30よりも小さな値に設定される。
上記形態のダイアフラム部10Bにおいては、剛性の高い非変形部15が、剛性の低い第1薄板部材11B、第2薄板部材12Bおよび第3薄板部材13Bを介してハウジング20(より具体的には、開口部21の内周側壁面21a)に支持・固定されることとなる。このため、上記形態のダイアフラム部10Bが受圧状態にあるときは、剛性の低い第1薄板部材11B、第2薄板部材12Bおよび第3薄板部材13Bが変形することとなる。具体的には、ダイアフラム部10Bは、非変形部15を含む中央部が突出するように第1薄板部材11B、第2薄板部材12Bおよび第3薄板部材13Bが変形する。
上記変形態様においては、非変形部15は略変形しないため、曲げモーメントに起因した応力は殆ど生じない。他方、第1薄板部材11B、第2薄板部材12Bおよび第3薄板部材13Bは、図7に示すように、異なる曲率半径(曲率半径ρ11B、ρ12Bおよびρ13B)を持つ3つの中立面S11B、S12BおよびS13Bを境にして圧縮応力または引張応力を伴って変形する。これにより、第1薄板部材11B、第2薄板部材12Bおよび第3薄板部材13Bの内部に曲げモーメントに起因した応力σ11B、σ12B、σ13B(曲げ応力度σ11B、σ12B、σ13B)が生じる。この結果、ダイアフラム部10Bを備える圧力センサ1Bにおいても、ダイアフラム部10Aを備える圧力センサ1Aと同様の効果がもたらされることとなる。
非変形部15が形成されることで、ダイアフラム部10Bの一体性が高められる。すなわち、被測定流体Fの圧力Pは、非変形部15が作用点の一部を形成することで、各薄膜部材へ伝達される。これにより、圧力センサ1Bの安定した動作が保証される。非変形部15が配設される位置および形状は、各薄板部材が独立して変形(たわむ)ことを妨げず、また、センシング部30がダイアフラム部10Aの変形を検出できれば、特定のものに限定されない。例えば、変形検出領域Rの外側に非変形部15を配設してもよい。このときの非変形部15の形状は、円環状の部位として形成されてもよいし、同心円上に点在する複数の円柱状部位として形成されてもよい。
≪第3の実施の形態≫
つづいて、本発明の第3の実施の形態に係る圧力センサ1Cについて説明する。この圧力センサ1Cは、上記第1の実施の形態に係る圧力センサ1Aが備えるダイアフラム部10Aを、図8に示すダイアフラム部10Cに置き換えたものであって、その他の構成は、圧力センサ1Aと同一である。以下、ダイアフラム部10Cの構成について説明する。
<ダイアフラム部10C>
ダイアフラム部10Cは、その基本形態がダイアフラム部10Aと同一であり、ただし、図8に示すように、これを構成する第1薄板部材11Cおよび第2薄板部材12Cの下面、すなわち、第1下面11Cbおよび第2下面12Cbに凹部が形成されている点がダイアフラム部10Aと異なる。当該凹部が形成されていることで、隣り合う2つの薄板部材の間、すなわち、第1薄板部材11Cと第2薄板部材12Cとの間および第2薄板部材12Cと第3薄板部材13Cとの間に、隙間C1、C2が形成されることとなる。
隙間C1、C2が形成されていることで、第1薄板部材11C、第2薄板部材12Cおよび第3薄板部材13Cが互いに圧着することを物理的に防止する。具体的には、受圧時に、互いが圧接する領域が必要最小限の領域(例えば、センシング部30が配設された変形検出領域R)に抑えられることで、複数の部材が一体的に変形することを防止する(これにより、各薄板部材が独立して変形する(たわむ)ことができる)。また、第1薄板部材11C、第2薄板部材12Cおよび第3薄板部材13Cの材料が相違することで生じる各薄膜部材の変形態様の相違(例えば、縦弾性係数が異なることで生じる変形態様の相違、および熱膨張が異なることで生じる各薄膜部材の変形態様の相違)を、当該隙間C1、C2が吸収することで、各薄板部材間における変形の干渉等を抑えることができる。
なお、上記凹部を形成する部分や形成の態様は、適宜変更することができる。例えば、上記凹部を、第1薄板部材11Cの第1下面11Cbおよび第2薄板部材12Cの第2下面12Cbではなく第2薄板部材12Cの第2上面12Caおよび第3薄板部材13Cの第3上面13Caに形成してもよい。また、凹部が形成されていない薄板状の平板からなる第1薄板部材11C、第2薄板部材12Cおよび第3薄板部材13Cの間に、リング状のスペーサを介在させて上記凹部(隙間C1、C2)を形成してもよい。
≪第4の実施の形態≫
つぎに、本発明の第4の実施の形態に係る圧力センサ1Dについて説明する。この圧力センサ1Dは、上記第1の実施の形態に係る圧力センサ1Aが備えるダイアフラム部10Aを、図9に示すダイアフラム部10Dに置き換えたものであって、その他の構成は、圧力センサ1Aと同一である。以下、ダイアフラム部10Dの構成について説明する。
<ダイアフラム部10D>
ダイアフラム部10Dは、第1薄板部材11Dの第1下面11Dbに凸状部11cが設けられ、第2薄板部材12Dの第2下面12Dbに凸状部12cが設けられている点でダイアフラム部10Aと相違し、その他の構成は、ダイアフラム部10Aと同一である。
凸状部11cおよび凸状部12cは、例えば、第1薄板部材11Dおよび第2薄板部材12Dと同一の材料からなり、フォトリソグラフィ等の微細加工や蒸着等の成膜加工によって各薄板部材の表面に形成される。ただし、凸状部11cおよび凸状部12cを形成する材料は、上記材料に限定されない。例えば、凸状部11cおよび12cは、潤滑性を有する高分子材料から形成されていてもよい。
凸状部11cおよび凸状部12cは、例えばドーム状を呈し、第1下面11Dbおよび第2下面12Dbの中央部と、同心円上にあって略90°間隔を隔てた4つの位置に配設されている。また、凸状部11cと凸状部12cとは、互いが上下一列となるように配設されている。なお、凸状部11cおよび凸状部12cの形状は、特定のものに限定されない。例えば、凸状部11cおよび12cは、柱状(円柱状、角柱状)または錐台状(円錐台状、角錐台状)であってもよい。また、凸状部11cおよび凸状部12cが配設される数および位置も、特定のものに限定されない。例えば、凸状部11cおよび12cを、中心部のみに1つ配設してもよいし中心部と外周縁との間に複数個配設してもよい。複数個の凸状部11cおよび12cを配設する場合には、これらを規則正しく配置してもよいしランダムに配置してもよい。
また、凸状部11cおよび12cが、ダイアフラム部10Dを構成する第2薄板部材12Dおよび第3薄板部材13Dの上面に突設されていてもよい。さらに、第1薄板部材11Dおよび第2薄板部材12Dの下面に突設された凸状部11cおよび12cと第2薄板部材12Dおよび第3薄板部材13Dの上面に突設された凸状部11cおよび12cとが混在するように構成してもよい。
凸状部11cおよび凸状部12cが設けられたダイアフラム部10Dにおいては、隣り合う薄板部材(第1薄板部材11Dと第2薄板部材12Dおよび第2薄板部材12Dと第3薄板部材13D)との接触面積が小さくなる。これにより、受圧時に隣り合う薄板部材、具体的には、第1薄板部材11Dと第2薄板部材12Dおよび第2薄板部材12Dと第3薄板部材13Dとが圧着して一体的に変形することを好適に防止できる。すなわち、第1薄板部材11D、第2薄板部材12Dおよび第2薄板部材12Dがそれぞれ独立して変形するように構成することが容易になる。
≪第5の実施の形態≫
つぎに、本発明の第5の実施の形態に係る圧力センサ1Eについて説明する。この圧力センサ1Eは、上記第1の実施の形態に係る圧力センサ1Aが備えるダイアフラム部10Aを、図10に示すダイアフラム部10Eに置き換えたものであって、その他の構成は、圧力センサ1Aと同一である。以下、ダイアフラム部10Eの構成について説明する。
<ダイアフラム部10E>
ダイアフラム部10Eは、第1薄板部材11Cと第2薄板部材12Cとの間、および第2薄板部材12Cと第3薄板部材13Cとの間に潤滑部材40、50が配設されている点でダイアフラム部10Cと相違し、その他の構成は、ダイアフラム部10Cと同一である。
潤滑部材40、50は、潤滑部材40、50は、表面自由エネルギの小さな高分子材料、例えばフッ素樹脂からなることが好ましい。また、潤滑部材40、50は、これらが配設されたことでダイアフラム部10Cの剛性が高まることをできるだけ抑制するために、可撓性を備えた材料であることが望ましい。
潤滑部材40、50は、センシング部30が配設された領域の下方にあって、受圧時に隣り合う薄板部材が圧接する部分(図7の中央部)に配設されればよい。換言すれば、隣り合う薄板部材における対向する一対の面の全てを覆うように配設される必要はない。
上記構成のダイアフラム部10Eによれば、受圧状態または非受圧状態に関わらず、隣り合う薄板部材(第1薄板部材11Cと第2薄板部材12Cおよび第2薄板部材12Cと第3薄板部材13C)が付着または圧着することを好適に抑えることができる。これにより、受圧状態にある第1薄板部材11C、第2薄板部材12Cおよび第3薄板部材13Cが一体となって変形する(たわむ)ことを好適に抑えることができる。すなわち、受圧状態にある第1薄板部材11C、第2薄板部材12Cおよび第2薄板部材12Cがそれぞれ独立して変形するように構成することが容易となる。
以上、本発明に係る実施の形態を説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、明細書および図面に直接記載のない構成であっても、本発明の作用・効果を奏する以上、本発明の技術的思想の範囲内である。さらに、上記記載および各図で示した実施の形態は、その目的および構成等に矛盾がない限り、互いの記載内容を組み合わせることも可能である。
例えば、上記実施の形態においては、ダイアフラムの変形による圧力検出手法(センシング原理)として、ひずみゲージを含む半導体チップ32を用いているが、これに限定されるわけではなく、例えば、静電容量式センサ、金属歪みゲージ、抵抗ゲージをスパッタ等により成膜したものを用いた圧力検知手法(センシング原理)であってもよい。
1A、1B、1C、1D、1E…圧力センサ、10A、10B、10C、10D、10E…ダイアフラム部、11A、11B、11C、11D…第1薄板部材、11Aa、11Ba、11Ca、11Da…第1上面、11Ab、11Bb、11Cb、11Db…第1下面、11c…凸状部、12A、12B、12C、12D…第2薄板部材、12Aa、12Ba、12Ca、12Da…第2上面、12Ab、12Bb、12Cb、12Db…第2下面、12c…凸状部、13A、13B、13C、13D…第3薄板部材、13Aa、13Ba、13Ca、13Da…第3上面、13Ab、13Bb、13Cb、13Db…第3下面、14…固定部、20…ハウジング、21…開口部、30…センシング部、40、50…潤滑部材。

Claims (9)

  1. 被測定流体の圧力を受ける第1主面およびこの第1主面の反対側に位置する第2主面を有するダイアフラム部と、
    前記ダイアフラム部を支持するハウジングと、
    前記ダイアフラムの前記第2主面上に配設され前記ダイアフラムの変形を電気信号として出力するセンシング部と、
    を備え、
    前記ダイアフラム部は、少なくとも一部が複数の薄板部材が積層することで形成される多層構造からなり、これら複数の薄板部材は、前記被測定流体の圧力が前記第1主面に印加された受圧状態において、少なくとも一部が互いに圧接しながらそれぞれが独立して変形するように構成されている圧力センサ。
  2. 請求項1に記載の圧力センサにおいて、
    前記複数の薄板部材は、前記受圧状態にあるときそれぞれの外周縁部を通じて前記圧力に起因した力の反力を受けるように、前記複数の薄板部材の各外周縁部が前記ハウジングまたは隣り合う前記薄板部材によって支持されている圧力センサ。
  3. 請求項2に記載の圧力センサにおいて、
    前記複数の薄板部材の少なくとも一部は、互いが外周縁部で接合され、この接合された外周縁部の少なくとも一部が前記ハウジングに固定されている圧力センサ。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の圧力センサにおいて、
    隣り合う2つの前記薄板部材における対向する一対の面は、互いが接するように形成されている圧力センサ。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の圧力センサにおいて、
    隣り合う前記薄板部材の少なくとも一部の間に隙間が形成されている圧力センサ。
  6. 請求項5に記載の圧力センサにおいて、
    前記複数の薄板部材の少なくとも一部は、表裏2つの面のうちの少なくとも一方の面に形成された凸状部を備える圧力センサ。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の圧力センサにおいて、
    前記複数の薄板部材の中央部が接合されている圧力センサ。
  8. 請求項5ないし7のいずれか1項に記載の圧力センサにおいて、
    隣り合う2つの前記薄板部材の間に潤滑部材が配設されている圧力センサ。
  9. 請求項1ないし8のいずれか1項に記載の圧力センサにおいて、
    隣り合う前記薄板部材は異なる材料からなる圧力センサ。
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