JP2021130867A - 銀めっき材、接点又は端子部品、及び自動車 - Google Patents
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Abstract
Description
銀めっき材の耐摩耗性を向上させる技術としては、例えば、特許文献1には、銀めっき皮膜に0.1〜2.0質量%のアンチモンを含有させる方法が提案されている。
しかしながら、銀めっき皮膜にアンチモンを含有させると、銀が合金化して硬度が高くなることで耐摩耗性が向上するものの、銀の純度が低くなるため、接触抵抗が増加(導電性が低下)するという問題がある。
そこで、特許文献2には、銀めっき皮膜にセレンを含有させることで、硬度を高く維持したまま、接触抵抗の増加を防止する技術が提案されている。
本発明の実施形態は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、耐熱性、耐摩耗性及び導電性に優れる銀めっき材を提供することを目的とする。
また、本発明の実施形態は、上記の特性を有する銀めっき材を備える接点又は端子部品、及びこの接点又は端子部品を備える自動車を提供することを目的とする。
さらに、本発明の実施形態は、上記の接点又は端子部品を備える自動車に関する。
また、本発明の実施形態によれば、上記の特性を有する銀めっき材を備える接点又は端子部品、及びこの接点又は端子部品を備える自動車を提供することができる。
図1に示されるように、銀めっき材10は、基材1と、基材1上に形成された銀めっき皮膜2とを有する。銀めっき皮膜2は、基材1の少なくとも一部に形成されていてもよいし、基材1の全体に形成されていてもよい。
層状結晶組織3と銀めっき皮膜2の硬度との関係は不明であるが、本発明者らは、層状結晶組織3を有する銀めっき皮膜2とすることにより、結晶粒界が多くなるため、欠陥の転位(変形)が抑制され、銀めっき皮膜2の硬度が高くなるのではないかと考えている。特に、銀めっき皮膜2の初期硬度(ビッカース硬さ)が120HV以上となるため、耐摩耗性を向上させることができる。また、銀めっき材10に対して150℃で20時間の熱処理を行った後でも、銀めっき皮膜2の初期硬度に対する硬度の変動が小さいため、耐熱性を維持することができる。
ここで、銀めっき皮膜2の結晶組織4は、銀めっき材10の厚さ方向に平行な断面をSEM観察することによって確認することができる。
層状結晶組織3を構成する層の厚さを100nm未満とすることにより、結晶粒界を安定して多くすることができるため、銀めっき皮膜2の硬度を安定して高くすることができる。
なお、層状結晶組織3を構成する層の厚さの下限値は、特に限定されないが、好ましくは10nm、より好ましくは15nm、更に好ましくは20nmである。
ここで、本明細書において「積層角度」とは、基材1の表面を0°とした場合の層の角度のことを意味する。例えば、基材1の表面と平行に層が積層している場合は積層角度が0°であり、基材1の表面と垂直に層が積層している場合は積層角度が+90°又は−90°として定義される。
層状結晶組織3を構成する層の積層角度を±10°以内とすることにより、銀めっき皮膜2の表面で結晶粒界のすべりによる変形を抑制することができるため、銀めっき皮膜2の硬度が高くなる。
層状結晶組織3を構成する層の積層厚さを1μm以上とすることにより、層状結晶組織3による上記の効果を安定して得ることができる。
なお、層状結晶組織3を構成する層の積層厚さの上限値は、特に限定されないが、好ましくは10μm、より好ましくは6μmである。
層状結晶組織3を構成する層の数を10〜50とすることにより、層の積層厚さを上記の範囲に制御することができる。
ここで、本明細書において「層状結晶組織3の面積率」とは、層状結晶組織3及び層状以外の構造を有する結晶組織4の合計面積に対する層状結晶組織3の面積の割合のことを意味する。
銀めっき皮膜2の断面における層状結晶組織3の面積率を15%以上とすることにより、層状結晶組織3による上記の効果を安定して得ることができる。
なお、銀めっき皮膜2の断面における層状結晶組織3の面積率の上限値は、特に限定されないが、好ましくは90%である。
銀めっき皮膜2における銀の含有量を99.5質量%以上とすることにより、導電性を向上させることができる。特に、銀の含有量が99.9質量%以上であれば、米国自動車研究連合会(USCAR)規格を満たしつつ、導電性、耐摩耗性及び耐熱性を確保することができる。
ここで、本明細書において銀めっき皮膜2中の「銀の含有量」とは、銀めっき皮膜2の形成に用いられる銀めっき浴の成分に含まれる元素のうち、K、Na、C、N、O及びHを除いた全元素中に占める銀の含有量のことを意味する。例えば、シアン化銀カリウム(K[Ag(CN)2])、シアン化カリウム(KCN)、炭酸カリウム(K2CO3)、硝酸カリウム(KNO3)、水硫化カリウム(KSH)及び不可避不純物を含む銀めっき浴を用いる場合、銀及び硫黄の合計含有量に占める銀の含有量のことを意味する。
通常、ホール・ペッチの関係式に従うと、結晶子径が大きくなるほど硬度は低下する。しかしながら、本発明の実施形態に係る銀めっき材10の銀めっき皮膜2は、結晶子径が比較的大きいにもかかわらず、硬度を高めることができる。
また、銀めっき皮膜2の結晶子径の上限値は、特に限定されないが、好ましくは150nm(1500Å)、より好ましくは130nm(1300Å)である。
熱処理前後の結晶子径の変動率が±30%以内であれば、熱処理によっても結晶粒の成長が少ないということができる。そのため、熱処理によっても硬度が低下し難く、耐熱性を確保することができる。
ここで、本明細書において「熱処理」とは、150℃で20時間の加熱処理のことを意味する。
また、熱処理前後の結晶子径の変動率は、以下の式(1)によって算出することができる。
熱処理前後の結晶子径の変動率=(熱処理後の結晶子径−熱処理前の結晶子径)/熱処理前の結晶子径×100 (1)
銀めっき皮膜2の硬度が120HV以上であれば、耐摩耗性が高いということができる。
なお、銀めっき皮膜2の硬度の上限値は、特に限定されないが、添加物を減らして高い銀濃度を実現する観点から、好ましくは200HV、より好ましくは180HVである。
熱処理前後の硬度の変動率が±15%以内であれば、熱処理によっても硬度の変動が少ないということができる。そのため、熱処理によっても耐摩耗性が低下せず、耐熱性を確保することができる。
ここで、熱処理前後の硬度の変動率は、以下の式(2)によって算出することができる。
熱処理前後の硬度の変動率=(熱処理後の硬度−熱処理前の硬度)/熱処理前の強度×100 (2)
銀めっき皮膜2の(111)配向率を40%以上とすることにより、耐摩耗性を向上させることができる。
なお、銀めっき皮膜2の(111)配向率の上限値は、特に限定されないが、好ましくは98%、より好ましくは95%である。
熱処理前後の(111)配向率の変動率が±32%以内であれば、熱処理によっても耐摩耗性が低下し難く、耐熱性を確保することができる。
ここで、熱処理前後の(111)配向率の変動率は、以下の式(3)によって算出することができる。
熱処理前後の(111)配向率の変動率=(熱処理後の(111)配向率−熱処理前の(111)配向率)/熱処理前の(111)配向率×100 (3)
下地層としては、上記の機能を有する層であれば特に限定されないが、基材が銅又は銅合金である場合は、銅の拡散を防止する観点から、Niめっき層であることが好ましい。
下地層の厚さは、好ましくは0.2〜2.0μm、より好ましくは0.5〜1.5μmである。下地層の厚さを0.2μm以上とすることにより、基材1と銀めっき皮膜2との間の密着性を向上させる効果を得ることができる。また、下地層の厚さを2.0μm以下とすることにより、銀めっき材10の加工性の低下を抑制することができる。
また、下地層としてNiめっき層を設ける場合、銀めっき皮膜2とNiめっき層との密着性を向上させる観点から、Niめっき層と銀めっき皮膜2との間にストライクAgめっき層を設けることが好ましい。ストライクAgめっき層の厚さは、銀めっき皮膜2の厚さなどに応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。
ここで、本明細書において「硫化物」とは、硫化水素(H−S−H)の1つ又は2つの原子を他の原子に置換した構造を有する化合物を意味する。特に、硫化水素の1つの原子を他の原子に置換した構造を有する化合物を「水硫化物」という。
水硫化物としては、水硫化ナトリウム(NaSH)、水硫化カリウム(KSH)などのアルカリ金属の水硫化物を用いることができる。また、水硫化物以外の硫化物としては、硫化カリウム(K2S)、硫化ナトリウム(Na2S)、硫化カルシウム(CaS)、硫化マグネシウム(MgS)、硫化アンモニウム((NH4)2S)などを用いることで本発明の実施形態に係る銀めっき材を製造し得る。
例えば、水硫化カリウム(KSH)を用いる場合、15〜250mg/Lの水硫化カリウム(KSH)を含有する銀めっき浴を用いて基材1の電気めっきを行うことによって本発明の実施形態に係る銀めっき材10を製造することができる。水硫化カリウムの濃度を15mg/L以上とすることにより、層状結晶組織3が形成され易くなるため、硬度を高め、耐摩耗性を向上させることができる。また、水硫化カリウムの濃度を250mg/L以下とすることにより、硫化銀の生成を抑制することができる。そのため、銀めっき浴の変色や硫化銀の沈殿に起因する銀めっき皮膜2の外観異常が起こり難くなる。
また、水硫化ナトリウム(NaSH)を用いる場合、48〜130mg/Lの水硫化ナトリウム(NaSH)を含有する銀めっき浴を用いて基材1の電気めっきを行うことによって本発明の実施形態に係る銀めっき材10を製造し得る。水硫化ナトリウムの濃度を48mg/L以上とすることにより、銀めっき皮膜中に硫黄を十分に含有させることができるため、硬度を高め、耐摩耗性を向上させることができる。また、水硫化ナトリウムの濃度を130mg/L以下とすることにより、硫化銀の生成を抑制することができる。そのため、銀めっき浴の変色や硫化銀の沈殿に起因する銀めっき皮膜の外観異常が起こり難くなる。
なお、銀めっき浴における銀の供給源としては、特に限定されないが、例えば、シアン化銀カリウム(K[Ag(CN)2])などを用いることができる。
銀めっき浴中のシアン化カリウムの濃度は、好ましくは100〜175g/L、より好ましくは100〜150g/Lである。シアン化カリウムの濃度を100g/L以上とすることにより、硫化銀の生成を抑制することができる。そのため、銀めっき浴の変色や硫化銀の沈殿に起因する銀めっき皮膜2の外観異常が起こり難くなる。また、シアン化カリウムの濃度を175g/L以下とすることにより、作業者に害を及ぼす影響を低減することができる。
56g/Lのシアン化銀カリウム(K[Ag(CN)2])、100g/Lのシアン化カリウム(KCN)、20g/Lの炭酸カリウム(K2CO3)、20g/Lの硝酸カリウム(KNO3)及び32mg/Lの水硫化カリウム(KSH)を含む銀めっき浴を調製した。なお、この銀めっき浴における銀濃度は30g/Lであり、シアン化カリウム濃度に対する銀濃度の比が0.30である。
次に、表層側から厚さ0.05μmのストライクAgめっき層、及び厚さ0.2μmのNiめっき層が形成された銅板(真鍮板、株式会社山本鍍金試験器製B−60−P03)を基材として用い、銀めっき浴の温度を23℃、電流密度を2.5A/dm2として電気めっきを行い、基材のストライクAgめっき層上に厚さ5μmの銀めっき皮膜を形成することによって銀めっき材を得た。
56g/Lのシアン化銀カリウム(K[Ag(CN)2])、100g/Lのシアン化カリウム(KCN)、20g/Lの炭酸カリウム(K2CO3)、20g/Lの硝酸カリウム(KNO3)及び42mg/Lの水硫化カリウム(KSH)を含む銀めっき浴を調製した。なお、この銀めっき浴における銀濃度は30g/Lであり、シアン化カリウム濃度に対する銀濃度の比が0.30である。
次に、表層側から厚さ0.05μmのストライクAgめっき層、及び厚さ0.2μmのNiめっき層が形成された銅板(真鍮板、株式会社山本鍍金試験器製B−60−P03)を基材として用い、銀めっき浴の温度を23℃、電流密度を2.5A/dm2として電気めっきを行い、基材のストライクAgめっき層上に厚さ5μmの銀めっき皮膜を形成することによって銀めっき材を得た。
56g/Lのシアン化銀カリウム(K[Ag(CN)2])、100g/Lのシアン化カリウム(KCN)、20g/Lの炭酸カリウム(K2CO3)、20g/Lの硝酸カリウム(KNO3)及び84mg/Lの水硫化カリウム(KSH)を含む銀めっき浴を調製した。なお、この銀めっき浴における銀濃度は30g/Lであり、シアン化カリウム濃度に対する銀濃度の比が0.30である。
次に、表層側から厚さ0.05μmのストライクAgめっき層、及び厚さ0.2μmのNiめっき層が形成された銅板(真鍮板、株式会社山本鍍金試験器製B−60−P03)を基材として用い、銀めっき浴の温度を23℃、電流密度を2.5A/dm2として電気めっきを行い、基材のストライクAgめっき層上に厚さ5μmの銀めっき皮膜を形成することによって銀めっき材を得た。
56g/Lのシアン化銀カリウム(K[Ag(CN)2])、100g/Lのシアン化カリウム(KCN)、20g/Lの炭酸カリウム(K2CO3)、20g/Lの硝酸カリウム(KNO3)及び210mg/Lの水硫化カリウム(KSH)を含む銀めっき浴を調製した。なお、この銀めっき浴における銀濃度は30g/Lであり、シアン化カリウム濃度に対する銀濃度の比が0.30である。
次に、表層側から厚さ0.05μmのストライクAgめっき層、及び厚さ0.2μmのNiめっき層が形成された銅板(真鍮板、株式会社山本鍍金試験器製B−60−P03)を基材として用い、銀めっき浴の温度を23℃、電流密度を2.5A/dm2として電気めっきを行い、基材のストライクAgめっき層上に厚さ5μmの銀めっき皮膜を形成することによって銀めっき材を得た。
56g/Lのシアン化銀カリウム(K[Ag(CN)2])、125g/Lのシアン化カリウム(KCN)、20g/Lの炭酸カリウム(K2CO3)及び81mg/Lの水硫化ナトリウム(NaSH)を含む銀めっき浴を調製した。なお、この銀めっき浴における銀濃度は30g/Lであり、シアン化カリウム濃度に対する銀濃度の比が0.24である。
次に、表層側から厚さ0.05μmのストライクAgめっき層、及び厚さ0.2μmのNiめっき層が形成された銅板(真鍮板、株式会社山本鍍金試験器製B−60−P03)を基材として用い、銀めっき浴の温度を23℃、電流密度を2.5A/dm2として電気めっきを行い、基材のストライクAgめっき層上に厚さ5μmの銀めっき皮膜を形成することによって銀めっき材を得た。
銀めっき浴として、純銀めっき浴(MS−5、JX金属商事株式会社)を用いた。
次に、表層側から厚さ0.05μmのストライクAgめっき層、及び厚さ0.2μmのNiめっき層が形成された銅板(真鍮板、株式会社山本鍍金試験器製B−60−P03)を基材として用い、銀めっき浴の温度を40℃、電流密度を2.5A/dm2として電気めっきを行い、基材のストライクAgめっき層上に厚さ5μmの銀めっき皮膜を形成することによって銀めっき材を得た。
まず、銀めっき皮膜における硫黄(S)の含有を、高周波誘導加熱炉燃焼−赤外線吸収法を用いた炭素硫黄分析装置(CS装置;LECO製CS844型)にて測定した。測定用試料としては、銀めっき材を5mm角の板状に加工した試料を用いた。試料を助燃剤(LECO製カッパーメタルアクセラレーター)とともに坩堝に入れて高周波誘導加熱炉内に配置し、試料を燃焼させた後、赤外線吸収法によって硫黄含有量を測定した。検量線にはCuの標準物質を用いた。硫黄の含有量は、銀めっき材の試料における硫黄の含有量から銀めっきされていない試料(銅板)における硫黄の含有量を差し引くことによって算出した。
なお、本開示において、硫黄(S)含有量の測定に供した銀めっき材(実施例1〜5、比較例1)は、上述の銀めっき材と以下の点で異なる。
・表層側から厚さ0.05μmのストライクAgめっき層、及び厚さ0.2μmのNiめっき層が形成された銅板(真鍮板、株式会社山本鍍金試験器製B−60−P03)に代えて、ストライクAgめっき層及びNiめっき層が形成されていない銅板(株式会社山本鍍金試験器製B−60−P05)を基材として用いたこと
・上述の電気めっき条件にて2時間めっきを行ない、厚さ192μm(計算値)の銀めっき皮膜を形成したこと
次に、銀めっき皮膜における銀(Ag)含有量について、不可避不純物の含有量を0質量%とし、銀めっき皮膜の形成に用いられる銀めっき浴の成分に含まれる元素のうち、K、Na、C、N、O及びHを除いた元素が、銀及び硫黄であるとして算出した。すなわち、本開示においては、銀めっき皮膜における銀の含有量は、銀めっき皮膜における硫黄の含有量を100質量%から差し引くことによって求めた。
150℃で20時間熱処理した後の銀めっき材を厚さ方向に切断し、その断面をSEM観察(36,000倍)し、SEM画像から層状結晶組織の有無を評価した。SEM画像は、層状結晶組織と、それ以外の構造を有する結晶組織との境界をわかりやすくなるように明るさ及びコントラストを調整した。
なお、SEM画像の代表例として、熱処理後の実施例1の銀めっき材のSEM画像を図2、熱処理後の比較例1の銀めっき材のSEM画像を図3にそれぞれ示す。また、参考として、熱処理前の実施例3の銀めっき材のSEM画像を図4、セレンを含有させた銀めっき皮膜を有する熱処理後の銀めっき材(特許文献2の銀めっき材に相当)のSEM画像を図5にそれぞれ示す。図4に示されるように、銀めっき材は、熱処理後だけでなく熱処理前においても層状結晶組織が観察される。また、銀めっき材の層状結晶組織は、熱処理前後で大きく変化しないことを確認した。
また、以下のSEM画像を用いた評価は、得られたSEM画像の層状結晶組織を構成する層と層との境界が分かりやすくなるように明るさ及びコントラストを適宜調整したうえで、画像処理ソフトImageJを用いて実施した。
銀めっき材の上記SEM画像を基にして、層状結晶組織を構成する層の厚さを測定した。この層の厚さは、ランダムに選択された3つの層状結晶組織で測定した。
銀めっき材の上記SEM画像を基にして、層状結晶組織を構成する層の基材表面に対する積層角度を測定した。この積層角度は、ランダムに選択された3つの層状結晶組織で測定した。
銀めっき材の上記SEM画像を基にして、層状結晶組織を構成する層の積層厚さを測定した。この積層厚さは、SEM画像中に含まれる層状結晶組織のうち、最も積層厚みの厚い層状結晶組織の厚みを測定した。
銀めっき材の上記SEM画像を基にして、層状結晶組織を測定し、全体面積に対する層状結晶組織の面積の割合を算出した。
結晶子径は、X線回折法(XRD法)で得られる回折ピーク強度及びピークの半値幅に基づき、Scherrer法によって算出した。X線回折法では、X線源としてCu・Kα線を備えるX線回折測定装置(株式会社リガク製SmartLab)を用いた。また、検出器としては、ハイブリッド型多次元ピクセル検出器HyPix−3000(株式会社リガク製、1Dモード)を用い、操作モードを連続スキャン、角度範囲を20〜150°、スキャンスピードを20°/分として行った。
なお、結晶子径の測定は、上記の銀めっき材(以下、「熱処理前の銀めっき材」という)及び150℃で20時間熱処理した後の銀めっき材(以下、「熱処理後の銀めっき材」という)の両方に対して行った。熱処理は、ヤマト科学株式会社製の送風低温恒温器DKM300を用いて行った。また、上記の式(1)に基づいて、熱処理前後の結晶子径の変動率も算出した。
(111)配向率は、X線回折法(XRD法)で得られる回折ピーク強度に基づいて算出した。X線回折法は、銀めっき皮膜における結晶子径と同様の装置及び条件で行った。(111)配向率は、(111)、(200)、(220)及び(311)の各面の回折ピーク強度を測定し、(111)面の回折ピーク強度を各面の回折ピーク強度の総和で除することによって算出した。
なお、(111)配向率の測定は、熱処理前の銀めっき材及び熱処理後の銀めっき材の両方に対して行った。また、上記の式(3)に基づいて、熱処理前後の(111)配向率の変動率も算出した。
銀めっき皮膜の硬度は、JIS Z2244:2009に準じて、ビッカース硬さを測定した。ビッカース硬さは、株式会社マツザワ製のビッカース硬さ試験機(MXT50)を用いて測定した。また、ビッカース硬さは、ダイヤモンド圧子(四角錐型)を用い、温度23℃、荷重10gf、負荷時間15秒として行った。
なお、硬度の測定は、熱処理前の銀めっき材及び熱処理後の銀めっき材の両方に対して行った。また、上記の式(2)に基づいて、熱処理前後の硬度の変動率も算出した。
一方、比較例1の銀めっき材は、銀めっき皮膜が層状結晶組織を有していないため、硬度が十分でなかった。
2 銀めっき皮膜
3 層状結晶組織
4 層状以外の構造を有する結晶組織
10 銀めっき材
Claims (15)
- 基材上に銀めっき皮膜が形成された銀めっき材であって、
前記銀めっき皮膜は、シート状の複数の層が積層された層状結晶組織を有する銀めっき材。 - 前記層の厚さが100nm未満である、請求項1に記載の銀めっき材。
- 前記基材の表面に対する前記層の積層角度が±10°以内である、請求項1又は2に記載の銀めっき材。
- 前記層の積層厚さが1μm以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の銀めっき材。
- 前記銀めっき皮膜の断面における前記層状結晶組織の面積率が15%以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の銀めっき材。
- 前記銀めっき皮膜は、前記銀めっき皮膜の形成に用いられる銀めっき浴の成分に含まれる元素のうち、K、Na、C、N、O及びHを除いた全元素中に占める銀の含有量が99.5質量%以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の銀めっき材。
- 前記銀の含有量が99.9質量%以上である、請求項6に記載の銀めっき材。
- 前記銀めっき皮膜は、結晶子径が50nm以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の銀めっき材。
- 前記銀めっき皮膜は、150℃で20時間の熱処理前後の結晶子径の変動率が±30%以内である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の銀めっき材。
- 前記銀めっき皮膜は、ビッカース硬さが120HV以上である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の銀めっき材。
- 前記銀めっき皮膜は、150℃で20時間の熱処理前後のビッカース硬さの変動率が±15%以内である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の銀めっき材。
- 前記銀めっき皮膜は、(111)配向率が40%以上である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の銀めっき材。
- 前記銀めっき皮膜は、150℃で20時間の熱処理前後の(111)配向率の変動率が±32%以内である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の銀めっき材。
- 請求項1〜13のいずれか一項に記載の銀めっき材を備える接点又は端子部品。
- 請求項14に記載の接点又は端子部品を備える自動車。
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- 2020-06-02 JP JP2020096361A patent/JP7264849B2/ja active Active
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