JP2021126676A - 溶融型フラックス、及び溶接継手の製造方法 - Google Patents

溶融型フラックス、及び溶接継手の製造方法 Download PDF

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【課題】サブマージアーク溶接において低い入熱量で大きな溶着量を確保可能な溶融型フラックス、及び、低い入熱量で大きな溶着量を確保可能な溶接継手の製造方法を提供する。【解決手段】本発明の一態様に係る溶融型フラックスは、質量%で、Fe:40〜95%を含有する。この溶融型フラックスは、さらに、質量%で、SiO2:3.3〜35%、MnO:0.8〜18%、CaO:3.9〜32%、MgO:0〜10.5%、TiO2:1〜13.2%、Al2O3:1.2〜19.8%、CaF2:0〜28%、及びBaO:0.6〜7.2%を含有し、金属成分としてのFe:40〜89.2%であり、残部が不純物からなるものであってもよい。本発明の別の態様に係る溶接継手の製造方法は、上記の溶融型フラックスを用いて鋼材をサブマージアーク溶接する工程を備える。【選択図】図3

Description

本発明は、溶融型フラックス、及び溶接継手の製造方法に関する。
溶接継手を製造するための溶接手段の一つとして、サブマージアーク溶接がある。サブマージアーク溶接とは、フラックス中において、溶接ワイヤと母材との間のアークから生じるアーク熱で溶接する方法である。
サブマージアーク溶接の概念図を図1に示す。サブマージアーク溶接では、チップ8から供給される溶接ワイヤ2と、母材6との間にアーク3を発生させることにより、溶接ワイヤ2及び母材6を溶融させて、溶融池4を形成する。溶融池4は凝固して溶接金属7を形成する。フラックス1は、アーク3を大気から遮断する働き、ビード形状を整える働き、及びアーク3を安定させる働き等を有する。サブマージアーク溶接用のフラックス1の例として、溶融型フラックス、及びボンドフラックスが挙げられる。
JIS Z 3001−7:2018「溶接用語−第7部:アーク溶接」において、溶融型フラックスは「原料を電気炉などで溶融してから粉砕し、ふるい分けによって粒度を整えたフラックス」と定義される。その製造方法に起因して、溶融型フラックスの成分は均質である。溶融型フラックスの性状はガラス状、又は軽石状であり、その粒子は水ガラスなどの固着剤によって覆われていない。溶融型フラックスの主成分は例えば珪砂(SiO)、一酸化マンガン(MnO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化アルミニウム(Al)、及び酸化マグネシウム(MgO)などである。なお、溶融型フラックスには通常は合金元素、脱酸材、及び炭酸塩などは添加されない。これらの成分は、溶融させると酸化物及び弗化物などに変化してしまい、低水素化、低酸素化などの本来の効果を発揮しなくなるからである(非特許文献1参照)。そもそも溶融型フラックスの役割は、ビード保護にあり、溶接金属の溶着量確保や成分制御などの役割は想定されていない。一般に、溶融型フラックスは、低・中電流域での溶接作業性に優れる。
JIS Z 3001−7:2018「溶接用語−第7部:アーク溶接」において、ボンドフラックス(焼成型フラックスとも称される)は「粉状原料に液状固着剤を混合して練り、キルンなどを使用して造粒及び乾燥(400〜600℃)を行った後、ふるい分けによって粒度を整えたフラックス」と定義される。そのため、ボンドフラックスを構成する成分は固着剤によって覆われている。液状固着剤とは例えば水ガラスである。処理温度が低いので、ボンドフラックスには合金剤、鉄粉、炭酸塩などを自由に添加することができる(非特許文献1参照)。一般に、ボンドフラックスは、大入熱溶接において使用される。
溶融型フラックスは、その性状に起因して、ボンドフラックスよりも耐吸湿性に優れる。また、溶融型フラックスは通常は合金剤、鉄粉、炭酸塩などといった溶接中に消費される成分を含まないので、ボンドフラックスとは異なり、溶接終了後に回収して再利用することができる。一方、溶融型フラックスには通常はこれら成分が添加されないので、該成分が添加されていない溶融型フラックスを用いたサブマージアーク溶接においては、溶接金属に移行する溶接材料は溶接ワイヤのみである。そのため、溶融型フラックスを用いたサブマージアーク溶接において溶着量を高めるためには、溶接入熱を高める必要がある。
このように、ボンドフラックス及び溶融型フラックスは、異なる性状、成分、及び特性を有する。従って、サブマージアーク溶接においては、被溶接材の材質及び板厚、並びに溶接ワイヤの成分を考慮しながらフラックスを適宜選定する必要がある。
さて、鋼材(特に厚板)を溶接する際には、大きな溶着量(溶接中に溶接材料から溶接金属に移行する成分の量)を確保する必要がある。大きな溶着量を得るためには、溶接入熱を高め、溶接材料の溶融を促進したり、複数パスの溶接を行ったりする必要があった。しかしながら、溶接入熱が過剰である場合、溶接熱影響部(HAZ)の靭性が低下する(非特許文献2参照)。また、複数パスでの溶接は、溶接継手の製造コストを増大させる。さらに、複数パスでの溶接では、溶接金属の靭性を確保するためにパス間温度管理をする必要が生じ、溶接作業が複雑化する。以上の事情により、低い入熱量で大きな溶着量を確保可能なサブマージアーク溶接方法が切望されている。
この要求に応じる技術として、例えば特許文献1には、レ型またはY型開先サブマージアーク1パス溶接において、開先内に溶融型フラックスを散布し、該溶融型フラックス上に鉄粉含有ボンドフラックスを散布して溶接を行なう技術が開示されている。
特許文献2には、2以上の溶融池を形成して行うサブマージアーク溶接法であって、各溶融池を形成する電極あるいは電極群の相互の間隔を300mm以上とし、かつ後続する溶融池を60mm以内の距離で配置した少なくとも2本の電極で形成し、さらにフラックス全体に対し、10〜70%の鉄粉及び/又は合金粉を含有するフラックスを用いて溶接することを特徴とするサブマージアーク溶接法が開示されている。
しかしながら、上述の技術は、主にボンドフラックスに関するものである。溶融型フラックスの使用が求められるサブマージアーク溶接に、これら技術を適用することは困難である。
特許文献1に開示された技術におけるフラックスは、ボンドフラックスである。ボンドフラックスと溶融型フラックスとは上述の通りその性質が大きく異なるので、溶融型フラックスとボンドフラックスとを単に置き換えることは容易ではない。例えば、溶接金属の拡散性水素量を低減する必要がある場合、耐吸湿性が悪く、水素源となる水分を含みやすいボンドフラックスを用いることはできない。
特許文献2に開示された技術におけるフラックスは、焼成型フラックス(即ちボンドフラックス)であっても、メルト型フラックス(即ち溶融型フラックス)であってもよいとされている。しかしながら、通常の技術常識に従ってメルト型フラックスに鉄粉を添加する場合、材料を一旦溶融させ、次いで凝固・粉砕させる工程において、前記材料中に添加された鉄粉が酸化される。従って、特許文献2のフラックスにおいて、鉄粉は酸化鉄として存在することとなる。特許文献2においては、鉄粉はアークの安定性および持続性の改善のために用いられているが、酸化鉄となった鉄粉は溶接金属にほとんど移行しないので、溶着量の増大には寄与しない。
上述のように、溶融型フラックスは低・中電流域での溶接作業性に優れるとされている。従って、溶融型フラックスが用いられるサブマージアーク溶接では、入熱量があまり高くないことが通常であり、これをさらに低減する必要性は認識されていなかった。しかし、溶接継手のHAZ靭性の一層の向上のためには、溶融型フラックスが用いられるサブマージアーク溶接においても入熱量を低減する技術が必要であると考えられる。非特許文献1の図2.34には、HAZのじん性とミクロ組織に及ぼす溶接入熱の影響が開示されており、図2.35には、高張力鋼溶接ボンド部のvTrsと溶接入熱の関係が開示されている。これらの図に示されるように、入熱量が高いほどγ粒が粗大化し、HAZ脆化が進む。
特開平9−314336号公報 特開昭58−47573号公報
笹木聖人「シールドガスを使わない溶接」、溶接技術、産報出版、2014年11月、第123頁 溶接学会編「溶接接合技術」、産報出版、1993年、第173〜第174頁
本発明は、サブマージアーク溶接において、低い入熱量で大きな溶着量を確保可能な溶融型フラックスを提供することを課題とする。さらに本発明は、低い入熱量で大きな溶着量を確保可能な溶接継手の製造方法を提供することを課題とする。
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)本発明の一態様に係る溶融型フラックスは、質量%で、Fe:40〜95%を含有する。
(2)上記(1)に記載の溶融型フラックスは、さらに、質量%で、SiO:3.3〜35%、MnO:0.8〜18%、CaO:3.9〜32%、MgO:0〜10.5%、TiO:1〜13.2%、Al:1.2〜19.8%、CaF:0〜28%、及びBaO:0.6〜7.2%を含有し、前記金属成分としてのFe:40〜89.2%であり、残部が不純物からなるものであってもよい。
(3)本発明の別の態様に係る溶接継手の製造方法は、上記(1)又は(2)に記載の溶融型フラックスを用いて鋼材をサブマージアーク溶接する工程を備える。
本発明によれば、サブマージアーク溶接において、低い入熱量で大きな溶着量を確保可能な溶融型フラックスを提供することができる。さらに本発明によれば、低い入熱量で大きな溶着量を確保可能な溶接継手の製造方法を提供することができる。
サブマージアーク溶接の概略図である。 本発明の効果を確認するための実験で用いられた開先の断面図である。 従来の溶融型フラックス、及び本発明に係る溶融型フラックスによって得られた溶接金属の断面図である。
本発明者らは、低い入熱量で大きな溶着量を確保可能な溶融型フラックスを得るための方法について鋭意検討を重ねた。その結果、溶融型フラックスに金属成分としてFe:40〜95%を含有させることが極めて有効であることを知見した。通常の溶融型フラックスを用いたサブマージアーク溶接では、溶着金属源は溶接ワイヤに限られる。一方、金属成分としてFe:40〜95%を含有する溶融型フラックス(本実施形態に係る溶融型フラックス)を用いたサブマージアーク溶接では、溶接ワイヤ及びフラックスの両方が溶着金属源となるので、低い入熱によっても大きい溶着量を確保することができる。
また、本発明者らは、本実施形態に係る溶融型フラックスは容易に再利用可能であることも知見した。具体的には、本実施形態に係る溶融型フラックスをサブマージアーク溶接に供したところ、金属成分として存在するFeは消費されたが、その他のフラックス成分はそのまま保たれていた。従って、溶接完了後に回収された溶融型フラックスに金属Feを追加することにより、溶融型フラックスが容易に再利用可能であることが判明した。加えて、本実施形態に係る溶融型フラックスは、耐吸湿性にも優れていた。即ち、本実施形態に係る溶融型フラックスは、通常の溶融型フラックスが有する再利用可能性、及び耐吸湿性などの利点をも有しているので、溶融型フラックスの使用が必要とされる溶接に容易に適用可能である。
ここで留意されるべきは、溶融型フラックスにおいて酸化鉄は実質的に溶着金属源とはならない点である。従って、溶融型フラックスにおいては、金属成分として存在するFeの含有量を40〜95%とする必要がある。また、通常の溶融型フラックスの製造においては、原料を電気炉などで溶融してから粉砕するが、この製造方法によれば前記原料中にFeを添加しておいても溶融の際にそのFeが酸化してしまう。そのため、金属成分として存在するFeの含有量を40〜95%とするためには、例えばFe以外の原料を溶融・粉砕した後で、粉状のFe(鉄粉など)を添加する方法が挙げられる。
以上の知見に基づいて得られた本実施形態に係る溶融型フラックスについて、以下に詳細に説明する。以下、特に断りがない限り、溶融型フラックスの成分に関する単位「%」は、質量%を意味する。
(金属成分として存在するFe:質量%で40〜95%)
本実施形態に係る溶融型フラックスは、金属成分として存在するFe(金属Fe)を、溶融型フラックス全体に対する質量%で40〜95%含む。「金属成分として存在するFe(金属Fe)」とは、Fe単体として存在するFe、又はFeとその他金属元素との合金として存在するFeを意味する。金属Feは、溶接の際に溶着金属を形成する。一方、溶着金属を形成しないFe(例えば酸化鉄などの化合物)は、金属Feとはみなされない。
溶融型フラックスに含まれる金属Feは、溶接時に溶接金属に移行するので、入熱量を増大させることなく溶着量を増大させる効果を有する。換言すると、溶融型フラックスに含まれる金属Feは、溶着量を確保しながら入熱量を低減させることができる。この効果は、金属Feの含有量に関わらず得られるが、金属Feの含有量を40%とした場合、通常の溶融型フラックスと比較して顕著な入熱量低減効果が見られる。そのため、金属Feの含有量の下限値を40%とした。金属Feの含有量の下限値を45%、48%、50%、又は55%としてもよい。
一方、金属Fe量が過剰になると、被溶接材である母材鋼材の合金成分が溶接金属において希釈され、溶接金属の機械的特性が損なわれるおそれがある。また、金属Fe量が過剰になると、溶接安定性の低下、及びビード形状の悪化などが懸念される。そのため、金属Feの含有量の上限値を95%とした。金属Feの含有量の上限値を90%、89.2%、80%、70%、又は65%としてもよい。
金属Feは、粉体であることが好ましい。例えば、金属Feは鉄粉又は合金粉であってもよい。金属Feの粒度は、溶接対象及び溶接条件等に応じて適宜選択することができる。また、鉄粉などの金属Feを構成する粒子は、水ガラスなどの固着剤によって被覆されていない(即ち、金属Feを構成する粒子の表面が露出している)ことが望ましい。
(Fe以外の成分)
本実施形態に係る溶融型フラックスにおける金属Fe以外の成分は特に限定されず、その目的に応じて適宜選択することができる。以下に、溶融型フラックスの成分の好適な一例について説明する。なお、後述する好適な成分を本実施形態に係る溶融型フラックスに適用する場合、上述した金属成分としてのFeの量は40〜89.2%とする。また、後述する好適な成分は、あくまで一例に過ぎない。従って、以下に列記される各物質の含有量は0%であってもよい。
(SiO:好ましくは3.3〜35%)
SiOを3.3%以上とすることにより、フラックスを十分にガラス化することができるので好ましい。一方、SiOを35%以下とすることにより、溶融池の塩基度を好ましい範囲内とすることができる。そのため、SiO含有量は例えば3.3〜35%とすることが好ましい。
(MnO:好ましくは0.8〜18%)
MnOを0.8%以上とすることにより、スラグの流動性を高め、ビード外観を一層良好にすることができる。一方、MnOが18%を超えると前記効果を向上させる作用が飽和する。そのため、MnO含有量は例えば0.8〜18%とすることが好ましい。
(CaO:好ましくは3.9〜32%)
CaOを3.9%以上とすることにより、溶融池における一層良好な塩基度を確保することができる。一方、CaOを32%以下とすることにより、溶接作業性の劣化を防ぐことができる。そのため、CaO含有量は例えば3.9〜32%とすることが好ましい。
(MgO:好ましくは0〜10.5%)
MgOの量は0%としてもよいが、例えば1.2%以上とすることにより、溶融池における一層良好な塩基度を確保することができる。一方、MgOを10.5%以下とすることにより、溶接作業性の劣化を防ぐことができる。そのため、MgO含有量は例えば0〜10.5%とすることが好ましい。
(TiO:好ましくは1〜13.2%)
TiOを1%以上とすることにより、スラグの流動性を向上させて、ビード形状を一層良好に整えることができる。一方、TiOが13.2%を超えると前記効果を向上させる作用が飽和する。そのため、TiO含有量は例えば1〜13.2%とすることが好ましい。
(Al:好ましくは1.2〜19.8%)
Alを1.2%以上とすることにより、フラックスの粘度及び融点を好ましく制御し、溶接作業性を一層高めることができる。一方、Alが19.8%を超えると前記効果を向上させる作用が飽和する。そのため、Al含有量は例えば1.2〜19.8%とすることが好ましい。
(CaF:好ましくは0〜28%)
CaFの量は0%としてもよいが、例えば2%以上とすることにより、スラグの流動性を確保し、溶接金属の酸素含有量を一層好ましく制御することができる。一方、CaFが28%を超えると前記効果を向上させる作用が飽和する。そのため、CaF含有量は例えば0〜28%とすることが好ましい。
(BaO:好ましくは0.6〜7.2%)
BaOを0.6%以上とすることにより、スラグの融点及び流動性を一層好ましく制御することができる。一方、BaOが7.2%を超えると前記効果を向上させる作用が飽和する。そのため、BaO含有量は例えば0.6〜7.2%とすることが好ましい。
本実施形態に係る溶融型フラックスが、上に例示された成分以外を含有することも妨げられない。例えば本実施形態に係る溶融型フラックスは、金属成分として存在するFeを所定量含有する必要があるが、この要件を満たす限り、さらに酸化鉄などの鉄化合物を含有してもよい。溶接金属の特性を向上させるために、金属成分として存在する各種合金元素をさらに含有させてもよい。また、本実施形態に係る溶融型フラックスは、成分の残部として不純物を含有してもよい。不純物とは、例えば、溶融型フラックスを工業的に製造する際に、鉱石等のような原料、又は製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、溶融型フラックスの特性に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。不純物としては例えばB等が挙げられる。
本実施形態に係る溶融型フラックスの成分以外の形態は特に限定されない。例えば、フラックスの粒度は溶接作業性などに影響を及ぼすが、溶接対象及び溶接条件等に応じて適宜選択することができる。
(製造方法)
本実施形態に係る溶融型フラックスは例えば以下の製造方法によって得られる。該製造方法としては、金属成分以外の原料を溶融させる工程と、溶融した金属成分以外の原料を凝固させる工程と、凝固させた金属成分以外の原料を粉砕する工程と、粉砕された原料に金属成分を添加する工程とを備える。この製造方法においては、金属Feを含む金属成分以外の原料を溶融及び凝固させた後で金属Feを加える。これにより、溶融型フラックスの製造工程が複雑化するが、金属Feの酸化を防ぎ、40〜95%の金属Feを溶融型フラックスに含ませることが可能となる。溶融型フラックスにFe以外の金属成分を含有させる場合は、これも金属成分以外の原料を溶融及び凝固させた後で加えることが好ましい。溶融型フラックスの製造方法が、粒度を調整する工程などをさらに含んでもよい。
次に、本発明の別の態様に係る溶接継手の製造方法について、以下に説明する。本実施形態に係る溶接継手の製造方法は、上述された本実施形態に係る溶融型フラックスを用いて鋼材をサブマージアーク溶接する工程を備える。溶接条件は特に限定されず、公知の条件を適宜採用することができる。例えば、入熱量を通常より低くすることが好ましい。これにより、HAZの靭性を高め、溶接継手の信頼性を一層高めることができる。被溶接材である鋼材の種類も特に限定されず、例えば、UO鋼管用の厚鋼板としてもよい。
(実施例1)
表1に示す金属Fe含有量である種々の溶融型フラックスを用いて、表2に記載の溶接条件でサブマージアーク溶接を行った。溶融型フラックスにおける金属Feは、鉄粉とした。Fe以外の成分は表3に示す通りとした。
溶接試験は、鋼材にV型溝を形成することによってV開先を模擬した開先に対して実施した。開先の形状は図2の通りとした。図2は、溝の延伸方向に垂直な開先の切断面の断面図である。図2に示されるように、溝の深さを12.0mmとし、V型溝の底の角度を60°とし、鋼材の厚さを35mmとした。
なお、表2に記載の「フラックス散布厚」とは、図2に示される鋼材の表面からフラックス頂部までの厚さである。
また、表3に示す値は、Fe成分を補充する前(即ちFe成分が0%)の状態での、溶融型フラックス全質量に対する質量%での成分を示す。Fe含有量に応じて、各成分の溶融型フラックス全質量に対する質量%での含有量は変化する。
Figure 2021126676
Figure 2021126676
Figure 2021126676
各溶融型フラックスを用いて得られた溶接金属を、溶接ビードの長手方向に対して垂直に切断し、断面を観察した。断面写真を図3に示す。
図3に示されるように、金属Feの量が40%に満たない例1及び例2を用いて得られた溶接継手においては、開先が満たされないか、又は十分な盛り上がりを有する溶接ビードが形成されなかった。なお、例1を用いて十分に開先を満たし且つ十分な盛り上がりを有する溶接ビードを形成すためには、少なくとも約7.2kJ/mmの入熱が必要であった。通常、図2に示される開先形状を有する鋼材をサブマージアーク溶接する際には、入熱量は8〜10kJ/mmとされる。
一方、金属Feを40%以上含む例3〜例6を用いて得られた溶接継手においては、6.6kJ/mmの入熱であっても開先を十分に満たし且つ十分な盛り上がりが形成される溶着量を得ることができた。また、金属Feを70%含む例6を用いて得られた溶接継手においては、5.4kJ/mmの入熱であっても開先を十分に満たし且つ十分な盛り上がりが形成される溶着量を得ることができた。この実験結果から、本発明に係る溶融型フラックスは、従来の溶融型フラックスにおいて要求される水準より低い入熱量でも大きな溶着量を確保可能であることがわかる。
(実施例2)
表4に示す成分Aを有する溶融型フラックスを用いて、サブマージアーク溶接を行った。サブマージアーク溶接の方法は、入熱量4.0kJ/mmのビードオン溶接とした。なお、実施例2はフラックスが溶接後においても再利用可能か否かを確認する実験であるため、簡易的な溶接方法として、開先内ではなく鋼材表面で溶接を行うビードオン溶接を採用した。
次いで、溶接終了後に溶融型フラックスを回収し、その成分を調査した。1回目の溶接終了後に回収されたフラックスの成分を表4に記載した(成分B)。
上述のフラックスにおいては、Feが消費されていたので、Fe量が70質量%(つまりFeが成分Aと概ね等量)となるようにFe成分を補充した。Fe補充後のフラックス成分を表4に記載した(成分C)。なお、成分Cは、成分Bに基づく計算値である。
成分Cの溶融型フラックスを用いて、再度、同じ条件で溶接を行って、その後溶融型フラックスを回収し、その成分を調査して表4に記載した(成分D)。
成分Dの溶融型フラックスに対して、Fe成分が70%になるまでFe成分を補充した場合の成分を計算によって推定し、表4に記載した(成分E)。
Figure 2021126676
表4の成分C及び成分Eは、当初フラックスの成分Aとほとんど同一であった。従って、Fe成分を補充することにより、本発明の溶融型フラックスは、ボンドフラックスと同様に再利用可能であることが、表4に示される実験結果からわかる。
本発明によれば、サブマージアーク溶接において、低い入熱量で大きな溶着量を確保可能な溶融型フラックスを提供することができる。さらに本発明によれば、低い入熱量で大きな溶着量を確保可能な溶接継手の製造方法を提供することができる。従って、本発明はHAZ靭性に優れた溶接継手を製造可能であり、高い産業上の利用可能性を有する。
1 フラックス
2 溶接ワイヤ
3 アーク
4 溶融池
5 スラグ
6 母材
7 溶接金属
8 チップ

Claims (3)

  1. 金属成分として、質量%で、Fe:40〜95%を含有することを特徴とする溶融型フラックス。
  2. さらに、質量%で、
    SiO:3.3〜35%、
    MnO:0.8〜18%、
    CaO:3.9〜32%、
    MgO:0〜10.5%、
    TiO:1〜13.2%、
    Al:1.2〜19.8%、
    CaF:0〜28%、及び
    BaO:0.6〜7.2%
    を含有し、
    前記金属成分としてのFe:40〜89.2%であり、
    残部が不純物からなる
    ことを特徴とする請求項1に記載の溶融型フラックス。
  3. 請求項1又は2に記載の溶融型フラックスを用いて鋼材をサブマージアーク溶接する工程を備える溶接継手の製造方法。
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