JP7239437B2 - 鉄粉低水素系被覆アーク溶接棒 - Google Patents
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Description
金属炭酸塩は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等を指し、アークの熱で分解してCO2ガスを発生し、溶接金属を大気から保護する効果がある。金属炭酸塩の1種又は2種以上の合計が25%未満では、シールド効果が不足し、ブローホールが発生しやすくなる。また、溶接金属中に大気中の窒素が混入し、AW及びPWHT後の低温靱性が低下する。一方、金属炭酸塩の1種又は2種以上の合計が45%を超えると、アークが不安定となってビード形状が凸状になり、スラグ剥離性も悪くなる。従って、金属炭酸塩の1種又は2種以上の合計は25~45%とする。
金属弗化物は、蛍石、弗化マグネシウム、弗化アルミニウム、弗化リチウム、弗化ソーダ、珪弗化カリウム等を指し、溶融スラグの流動性を調整してビード外観を良好にする効果がある。金属弗化物の1種又は2種以上の合計が5%未満では、溶融スラグの流動性が悪くなりスラグ被包性が悪くなってビード外観が不良になる。一方、金属弗化物の1種又は2種以上の合計が15%を超えると、被覆筒の形状が不完全となって片溶け状態となり、アークが不安定となる。従って、金属弗化物の1種又は2種以上の合計は5~15%とする。
Ti酸化物は、ルチール、酸化チタン、チタンスラグ等から添加され、アークを安定にし、溶融スラグの粘性を調整してビード形状を良好にする効果がある。Ti酸化物のTiO2換算値の合計が3%未満であると、アークが不安定となり、ビード形状が不良になる。一方、Ti酸化物のTiO2換算値の合計が8%を超えると、溶融スラグの粘性が高くなってスラグの流動性が悪くなるので、ビード形状が凸状となる。従って、Ti酸化物のTiO2換算値の合計は3~8%とする。
Si酸化物は、珪砂、カリ長石、珪酸ソーダや珪酸カリウム等の水ガラスの固質分、珪灰石等から添加され、溶融スラグの粘性を高め、適切な粘性のスラグを確保してビード形状を良好にする効果がある。Si酸化物のSiO2換算値の合計が4%未満では、溶融スラグの粘性が低くなり、ビード形状が不良となる。一方、Si酸化物のSiO2換算値の合計が10%を超えると、スラグがガラス状になり、スラグ剥離性が不良になる。従って、Si酸化物のSiO2換算値の合計は4~10%とする。
Zr酸化物は、ジルコンサンド、ジルコニア等から添加され、融点が2700℃と高く、被覆剤及び鋼心線が過熱した際も安定した耐火性を有し、被覆剤の片溶けを抑制する上で有効である。Zr酸化物のZrO2換算値の合計が0.5%未満では、被覆剤の片溶けが発生しやすくなる。一方、Zr酸化物のZrO2換算値の合計が2.0%を超えると、溶融スラグの粘性が高くなってスラグの流動性が悪くなり、ビード形状が凸状となる。従って、Zr酸化物のZrO2換算値の合計は0.5~2.0%とする。
Al酸化物は、アルミナ、カリ長石等から添加され、アークを安定させるとともにビード形状を良好にする効果がある。Al酸化物のAl2O3の合計が0.5%未満であると、アークが不安定となりビード形状が不良となる。一方、Al酸化物のAl2O3の合計が3.0%を超えると、スラグがガラス状となってスラグ剥離が不良になる。従って、Al酸化物のAl2O3の合計は0.5~3.0%とする。
Siは、金属Si、Fe-Si、Fe-Si-Mn等から添加され、溶接金属の脱酸を目的として使用されるとともに、溶接作業性の面からも必要である。Siが2%未満では、脱酸不足となって溶接金属中にブローホールが発生しやすく、アークも不安定となる。一方、Siが5%を超えると、溶接金属の粒界に低融点酸化物を析出させ、AW及びPWHT後の溶接金属の低温靱性が低下する。従って、Siは2~5%とする。
Mnは、金属Mn、Fe-Mn、Fe-Si-Mn等から添加され、Siと同様に脱酸剤として重要であり、溶接金属組織を微細化して溶接金属の低温靱性及び強度を高める効果がある。また、焼入れ性が強いことから、PWHT後の強度確保にも有効である。Mnが2%未満では、AW及びPWHT後の溶接金属の強度及び低温靭性が低下する。また、脱酸不足となって溶接金属中にブローホールが発生しやすくなる。一方、Mnが6%を超えると、溶接金属の強度が過剰に高くなり、靭性が低下する。また、焼入れ性が強く作用し、PWHT後の溶接金属の強度が高くなって靱性が低下する。従って、Mnは2~6%とする。
Niは、金属Niから添加され、溶接金属の強度及び低温靭性を向上させる元素である。Niが3%未満では、AW及びPWHT後の必要な溶接金属の強度及び低温靭性を確保することができない。一方、Niが8%を超えると、溶接金属の強度が過剰に高くなり、低温靭性が低下する。また、PWHT後の溶接金属の低温靭性も低下する。従って、Niは3~8%とする。
Tiは、金属Ti、Fe-Ti等から添加され、脱酸剤として有効であると同時に、アークの電位傾度を低下させてアークを安定化させる効果がある。また、溶接金属のミクロ組織を微細化して低温靭性を向上させる効果がある。Tiが0.5%未満では、アークが不安定となり、アーク長が伸びて大気中の酸素を取り込みやすくなるので、溶接金属中に酸素量が多くなるとともに、溶接金属のミクロ組織が微細化されず、AW及びPWHT後の溶接金属の低温靭性が低下する。一方、Tiが2.5%を超えると、溶接金属中のTi酸化物の析出が増加し、AW及びPWHT後の溶接金属の低温靱性が低下する。従って、Tiは0.5~2.5%とする。
Bは、金属B、Fe-B、Fe-Mn-B、硼砂、コレマナイト等から添加され、微量で焼入れ性を向上させて粒界フェライトの生成抑制に有効な元素で、溶接金属の低温靭性の向上に効果がある。B合金及びB酸化物のB換算値の1種又は2種以上の合計が0.15%未満では、Bによる粒界フェライトの抑制効果が得られず、フェライト粒が粗大になりやすく、溶接金属の金属組織が粗くなってAW及びPWHT後の溶接金属の低温靱性が低下する。一方、B合金及びB酸化物のB換算値の1種又は2種以上の合計が0.40%を超えると、溶接金属が粗大なラス状組織になり、AW及びPWHT後の溶接金属の低温靭性が低下する。従って、B合金及びB酸化物のB換算値の1種又は2種以上の合計は0.15~0.40%とする。
MgOは、酸化マグネシウム、マグネシアクリンカー等から添加され、耐熱性に優れており、被覆剤の片溶けを抑制する効果がある。MgOが0.2%未満では、被覆剤の片溶けが発生しやすくなる。一方、MgOが0.8%を超えると、溶融スラグの粘性が高くなるので、ビード形状が凸状となる。従って、MgOは0.2~0.8%とする。
CaOは、チタン酸カルシウム、珪灰石等から添加され、アークを安定化させてスパッタ発生の低減に効果がある。CaOが0.1%未満では、その効果が得られず、アークが不安定となり、スパッタ発生量が多くなる。一方、CaOが0.3%を超えると、アークが弱くなって不安定になり、融合不良等の溶接欠陥が発生しやすくなる。従って、CaOは0.1~0.3%とする。
鉄粉は、アークの電位傾度を低下させてアーク長を短くして被覆剤の片溶けを防止させる効果があり、特に直流電源を用いた溶接において最も重要な原材料である。鉄粉が15%未満では、アーク長が長くなって被覆剤の片溶けが発生しやすくなる。一方、鉄粉が25%を超えると、被覆アーク溶接棒による溶接では溶接後半になると被覆アーク溶接棒自体が赤熱(以下、棒焼けという。)してしまい、溶接が困難となる。従って、鉄粉は15~25%とする。
Na酸化物及びNa弗化物は、珪酸ソーダ等の水ガラスの固質分や弗化ソーダ等から添加され、溶接棒製造時の塗装性及び溶接時のアークの安定性を向上する効果がある。また、K酸化物及びK弗化物は、珪酸カリウム等の水ガラスの固質分、珪弗化カリ及びカリ長石等から添加され、溶接作業性確保の上から必要である。Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計が1.5%未満では、アークが不安定になる。また、生産時の塗装性が悪くなるとともに、溶接棒製造時に被覆剤表面に割れが生じやすくなるなど被覆アーク溶接棒の生産性が低下する。一方、Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計が4.5%を超えると、アークの吹き付けが強くなり、スパッタ発生量が多くなる。従って、Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計は1.5~4.5%とする。
被覆剤の鋼心線の外周への被覆率は、溶接時の耐シールド性に大きく影響する。被覆率が鉄粉低水素系被覆アーク溶接棒全質量に対する被覆剤の質量%(以下、単に%という。)が35%未満では、被覆剤自体が少なくなってシールド不足となり、溶接金属中のN含有量が増加してAW及びPWHT後の溶接金属の靱性が低下する。一方、被覆剤の被覆率が45%を超えると、スラグ量が過多となってアークが不安定になる。従って、被覆率は35~45%とする。
Moは、金属Mo、Fe-Mo等から添加され、溶接金属の強度をより向上させる効果がある。また、焼入れ性が強いことから、PWHT後の強度確保にも有効である。Moが0.05%未満では、AW及びPWHT後の溶接金属の強度を向上する効果が得られない。一方、Moが0.30%を超えると、AW及びPWHT後の溶接金属の強度が過剰に高くなり、靭性が低下する。従って、Moは0.05~0.30%とする。
Claims (2)
- 鋼心線に被覆剤が塗装されている鉄粉低水素系被覆アーク溶接棒において、
前記被覆剤は、被覆剤全質量に対する質量%で、
金属炭酸塩の1種又は2種以上の合計:25~45%、
金属弗化物の1種又は2種以上の合計:5~15%、
Ti酸化物のTiO2換算値の合計:3~8%、
Si酸化物のSiO2換算値の合計:4~10%、
Zr酸化物のZrO2換算値の合計:0.5~2.0%、
Al酸化物のAl2O3換算値の合計:0.5~3.0%、
Si:2~5%、
Mn:2~6%、
Ni:3~8%、
Ti:0.5~2.5%、
B合金及びB酸化物のB換算値の1種又は2種以上の合計:0.15~0.40%、
MgO:0.2~0.8%、
CaO:0.1~0.3%、
鉄粉:15~25%、
Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物:Na2O換算値及びK2O換算値の合計で1.5~4.5%を含有し、
残部は塗装剤、鉄合金粉からのFe分及び不可避不純物からなる被覆剤を前記鋼心線に鉄粉低水素系被覆アーク溶接棒全質量に対する質量%で35~45%の被覆率で塗装することを特徴とする鉄粉低水素系被覆アーク溶接棒。 - 被覆剤全質量に対する質量%で、
Mo:0.05~0.30%を更に含有することを特徴とする請求項1に記載の鉄粉低水素系被覆アーク溶接棒。
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