以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
(実施形態1)
本発明は、植物が生育する少なくとも1つの領域を含む施設の維持管理サービスを提供する方法およびシステムに関する。
はじめに、施設の一例としてのゴルフ場を例にとり、ゴルフ場の維持管理サービスを提供する1つの形態を説明する。
(ゴルフ場の維持管理サービスを提供する形態)
図1Aは、ゴルフ場の維持管理サービスを提供する事業所1000と、事業所1000のサービスエリアRs内に位置する複数のゴルフ場G1〜G8との位置関係を示す。
事業所1000のサービスエリアRsは、事業所1000を中心とした半径10キロ圏であることが好ましいが、これには限定されない。事業所1000は、事業所1000のサービスエリアRs内に位置する複数のゴルフ場G1〜G8のそれぞれに対して、ゴルフ場の維持管理サービスを提供する。これにより、各ゴルフ場は、ゴルフ場を維持管理するための機械やノウハウを有していなくても、事業所1000によって提供されるゴルフ場の維持管理サービスに沿ってゴルフ場の維持管理を行うことが可能である。
図1Bは、事業所1000のサービスエリアRs内の複数のゴルフ場G1〜G8を2つのグループに分類した状態を示す。
図1Bに示される例では、ゴルフ場G1〜G4が1つのグループ(ユニットU1)に分類されており、ゴルフ場G5〜G8がもう1つのグループ(ユニットU2)に分類されている。同じグループに属するゴルフ場は、互いに近接しているゴルフ場であることが好ましいがこれには限定されない。なお、図1Bに示される例では、ゴルフ場G1のホールHのレイアウトのみが示されている。ゴルフ場G1以外のゴルフ場G2〜G8のホールのレイアウトは図示が省略されている。
事業所1000は、これらのグループ(すなわち、ユニット)のそれぞれを単位として、ゴルフ場の維持管理サービスを提供する。例えば、事業所1000は、事業所1000(または事業所1000が属する企業)が所有している1以上の車両をゴルフ場G1に提供する。例えば、事業所1000の所員が1以上の車両を運転して移動させることにより、1以上の車両をゴルフ場G1に搬入してもよい。あるいは、事業所1000の所員が1以上の車両をトラックに乗せて運搬することにより、1以上の車両をゴルフ場G1に搬入してもよい。1以上の車両は、ゴルフ場G1の維持管理を行うために利用される車両(例えば、芝刈機)である。
1以上の車両は、いくつかのゴルフ場(例えば、ユニットU1に属するゴルフ場G1〜G4)で共用されることが好ましいが、これには限定されない。例えば、1以上の車両がユニットU1に属するゴルフ場G1〜G4で共用され、他の1以上の車両がユニットU2に属するゴルフ場G5〜G8で共用されてもよい。ただし、ゴルフ場などの施設の維持管理のための1以上の車両を施設で共用する形態はこのような形態に限定されず、例えば、1以上の車両がユニットU1に属するゴルフ場G1〜G4で巡回させて利用された後に、同じ1以上の車両がユニットU2に属するゴルフ場G5〜G8で巡回させて利用されてもよい。
ゴルフ場G1に搬入された1以上の車両がゴルフ場G1の維持管理のために利用されている間、その1つ以上の車両は、ゴルフ場G1の維持管理に利用され得る様々なデータ(例えば、植物の生育に関連するデータ)を収集する。その1つ以上の車両によって収集されたデータは、事業所1000内に設置された維持管理システム100に格納される。この維持管理システム100は、格納されたデータを処理することによって、ゴルフ場G1の維持管理に利用され得る情報を生成する。この情報は、ゴルフ場G1(例えば、ゴルフ場G1の管理者)に提供される。
ゴルフ場G1に搬入された1以上の車両は、例えば、次の日には、ゴルフ場G2に移動され、その次の日には、ゴルフ場G3に移動され、その次の日には、ゴルフ場G4に移動される。このように、事業所1000から提供される1以上の車両は、ユニットU1を1つの単位としてゴルフ場G1〜G4の間を巡回的に共用され得る。1以上の車両をゴルフ場間で移動させる作業は、事業所1000の所員が担当することが好ましいが、これには限定されない。1以上の車両を巡回させるシフトは、1日ごとである必要はなく所定の期間ごとに行ってもよいことはもちろんである。また、一組の1以上の車両をゴルフ場G1に搬入するのと同時に、他の一組の1以上の車両をゴルフ場G3に搬入して、これらの二組の1以上の車両を巡回的に共用することによって、作業間隔を狭めることも可能である。
このように、各ゴルフ場に搬入される1以上の車両は、事業所1000から定期的に提供されるため、各ゴルフ場が自前で1以上の車両を所有する必要がない。従って、各ゴルフ場が、1以上の車両の購入費やメンテナンス費を負担する必要がない。さらに、各ゴルフ場には、事業所1000から各ゴルフ場の維持管理に利用され得る情報が提供されるため、各ゴルフ場が自前でコンピュータ設備を有する必要もない。これにより、各ゴルフ場は、ゴルフ場の維持管理に必要な費用を削減することが可能になる。
なお、図1Aに示される例では、1つの事業所1000が受け持つサービスエリアRs内は8個のゴルフ場が含まれているが、1つの事業所1000のサービスエリアRs内に含まれるゴルフ場の数は8個には限定されない。1つの事業所1000が受け持つサービスエリアRsは、任意の数のゴルフ場を含むことができる。また、図1Bに示される例では、1つのユニット内に4個のゴルフ場が含まれているが、1つのユニット内に含まれるゴルフ場の数は4個には限定されない。1つのユニットは、任意の数のゴルフ場を含むことができる。
さらに、図1A、図1Bに示される例では、1つの事業所が受け持つサービスエリアRs内の複数のゴルフ場をグループ分けして維持管理サービスの提供を行っているが、これには限定されない。例えば、1つの事業所が受け持つサービスエリアRs内の複数のゴルフ場をグループ分けすることなく、それぞれのゴルフ場ごとにゴルフ場に維持管理サービスを提供してもよい。
(維持管理システム100)
図2Aは、図1Bに示される事業所1000内に設置される維持管理システム100の構成の一例を示す。
維持管理システム100は、維持管理サービスを提供するために必要な処理を実行する。維持管理システム100は、コンピュータシステムCsと、ゴルフ場内の芝が生育する少なくとも1つの領域上を移動可能な1以上の車両Vとを含む。1以上の車両Vには、芝の生育に関連するデータを検知する少なくとも1つのセンサが搭載されている。
図2Bは、図2Aに示される維持管理システム100に含まれるコンピュータシステムCsの構成の一例を示す。
コンピュータシステムCsは、知識と経験のある作業者と同様に、施設の維持管理に必要な作業を芝の生育に関連するデータから判断するための判断基準を示す基準データを格納したデータベースDb1と、検知された芝の生育に関連するデータに基づいて基準データを参照して、施設の維持管理に必要な作業を示す作業情報を作成するデータ処理部Dpとを含む。
図2Cは、維持管理サービスの対象となるゴルフ場の一例を示す。図2Cに示される例では、ゴルフ場G1は、クラブハウスCと、複数のホールH1〜H9を含む。基準データは、例えば、ゴルフ場G1の特定領域(ホールH1のグリーン)での温度、湿度、風向き、土壌水分量、土壌pH値、クロロフィル濃度の6つのパラメータの少なくとも1つから、作業者の知識と経験に基づいてこの特定領域での散水量を決定するための情報である。基準データは、例えば、テーブル形式でデータベースDb1に格納されている。ただし、基準データは、特定領域での温度、湿度、風向き、土壌水分量、土壌pH値、クロロフィル濃度の6つのパラメータから特定領域での散水量を決定するための情報に限定されない。基準データは、種々のパラメータから、ゴルフ場の維持管理のために必要な作業を知識と経験のある作業者と同様に決定することができるものであればよい。
なお、図2Bに示されるコンピュータシステムCsは、データベースDb1に加えて、ゴルフ場G1の地図を示す地図データを格納したデータベースDb2を有していてもよい。この場合、データ処理部Dpで生成される作業情報は、ゴルフ場G1の地図上に維持管理に必要な作業を示したマップ形式の情報とすることができる。例えば、このマップ形式の情報では、散水が必要である領域が特定色に色分けして示され、必要な散水量が多い領域は、必要な散水量が少ない領域に比べて濃い色で示される。
また、図2Bに示されるコンピュータシステムCsは、上記データベースDb1およびDb2に加えて、芝の生育に関連するデータを格納するデータベースDb3を有していてもよい。この場合、ゴルフ場の個々のコースの芝の生育に関連するデータを蓄積して、ゴルフ場の管理維持のための作業を基準化することが可能となる。
図3は、図2Bに示されるコンピュータシステムCsによって実行される処理の一例を示す。
ステップPa:コンピュータシステムCsは、芝が生育している少なくとも1つの領域(例えば、ゴルフ場G1の所定のホール)上を1以上の車両Vが移動している間に、少なくとも1つの領域の少なくとも1つの地点において1以上の車両に搭載された少なくとも1つのセンサによって検知された芝の生育に関連するデータを取得する。芝の生育に関連するデータは、芝が生育している環境を示す環境データおよび芝の生育状態を示す生育状態データのうちの少なくとも一方を含む。環境データは、例えば、温度を示すデータ、湿度を示すデータ、風向きを示すデータ、土壌水分量を示すデータ、土壌pH値を示すデータを含む。生育状態データは、例えば、クロロフィル濃度を示すデータを含む。ここで、生育状態データは、さらに芝の草丈を示すデータを含んでいてもよい。1以上の車両に搭載されたセンサによって検知されたデータは、1以上の車両から無線で送信され、無線ネットワークを介して、コンピュータシステムCsによって受信されることによって、コンピュータシステムCsによって取得されるようにしてもよい。あるいは、1以上の車両に搭載されたセンサによって検知された芝の生育に関連するデータが1以上の車両内の媒体メモリに格納されている場合には、その媒体メモリをコンピュータシステムCsのスロットに挿入することによって、コンピュータシステムCsによって取得されるようにしてもよい。コンピュータシステムCsが、1以上の車両に搭載された少なくとも1つのセンサによって検知された芝の生育に関連するデータを取得する態様は、任意の態様であり得る。
ステップPb:コンピュータシステムCsは、ステップPaにおいて取得された芝の生育に関連するデータに基づいて、ゴルフ場G1の維持管理に利用され得る情報を生成する。ここで、ゴルフ場G1の維持管理に利用され得る情報は、芝の生育に関連するデータそのものであってもよい。あるいは、ゴルフ場G1の維持管理に利用され得る情報は、ゴルフ場G1の維持管理に必要な作業を示す作業情報であってもよい。コンピュータシステムCsが、芝の生育に関連するデータに基づいて、ゴルフ場G1の維持管理に必要な作業を示す作業情報をどのように生成するかの具体例については、図6を参照して後述する。
ステップPc:コンピュータシステムCsは、ステップPbにおいて生成された情報(すなわち、ゴルフ場G1の維持管理に利用され得る情報)を出力する。ここで、コンピュータシステムCsから出力される情報の形式は、任意の形式であり得る。例えば、コンピュータシステムCsから出力される情報は、紙媒体に印刷されてもよいし、記録メディアに記録されてもよい。この場合には、ゴルフ場G1の維持管理に利用され得る情報が、紙媒体もしくは記録メディアの形式でゴルフ場G1(例えば、ゴルフ場G1の管理者)に提供され得る。あるいは、コンピュータシステムCsから出力される情報は、コンピュータシステムCsから無線または有線のネットワークを介してゴルフ場G1の管理者の端末装置に送信される形式でゴルフ場G1(例えば、ゴルフ場G1の管理者)に提供されてもよい。
図4は、上述したゴルフ場の維持管理サービスを提供する方法を、施設を維持管理するサービスを提供する方法に一般化して、その方法に必要とされるステップを示したものである。ここで、施設は、植物(例えば、芝)が生育する少なくとも1つの領域を含むものとする。ゴルフ場は、施設の一例である。
ステップS1:植物の生育に関連するデータを検知する少なくとも1つのセンサを搭載した少なくとも1つの車両を施設に提供する。
ステップS2:少なくとも1つの車両が施設の少なくとも1つの領域上を移動している間に、少なくとも1つの領域の少なくとも1つの地点において少なくとも1つのセンサによって検知された植物の生育に関連するデータに基づいて、施設の維持管理に利用され得る情報を生成する。
ステップS3:ステップS2において生成された情報を施設に提供する。
(車両)
図5は、この維持管理システム100における車両Vの構成の一例を示す図である。
車両Vは、車両を移動させるための駆動部20と、駆動部20を制御する駆動制御部30と、芝の生育に関連するデータを検出するセンサ部40と、センサ部40により検出されたデータを処理するデータ処理部10とを有する。芝の生育に関連するデータに含まれる環境データは、温度を示すデータ、湿度を示すデータ、風向きを示すデータ、土壌水分量を示すデータ、土壌pH値を示すデータのうちの少なくとも1つである。芝の生育に関連するデータに含まれる生育状態データは、芝の生育状態を示すデータであり、例えば、芝のクロロフィル濃度を示すデータである。この芝のクロロフィル濃度を示すデータは、例えば、クロロフィルセンサを用いて芝に含まれるクロロフィル(葉緑素)の濃度を測定することにより得ることができる。
図5では、センサ部40は、温度センサ41、湿度センサ42、風向センサ43、土壌水分量センサ44、土壌pHセンサ45、クロロフィルセンサ46を含む。ただし、センサ部40は、これらのセンサ41〜46のうちの少なくとも1つを含むものであればよい。
ここで、データ処理部10は、センサ部40の各センサで検出されたデータを、ゴルフ場のどの地点で測定されたデータであるかを示す位置データと関連付けて内部のメモリ11に保存するように構成されている。なお、測定地点の位置を示す位置データを取得する方法は特に限定されないが、基準位置から移動した距離と方向とに基づいて算出する方法、衛星測位システムを用いて算出する方法などである。このメモリ11に格納された芝の生育に関連するデータは、無線通信あるいは有線通信により、あるいは可搬式の記録媒体を介して事業所1000の維持管理システム100に提供される。
駆動部20は、エンジン、モーターなどの動力源と、ステアリング機構と、接地面Lと接する車輪、キャタピラ、脚などのうちの1つとを含み、車両Vの左右への転舵、前進・停止・後進の切り換えなどが可能なように構成されている。
駆動制御部30は、決められたコースに沿って車両Vが移動するように駆動部20を制御するものである。例えば、駆動制御部30は、ゴルフ場に設置された誘導ラインに沿って車両が進むように駆動部を制御するもの、あるいは衛星測位システムを用いて、ゴルフ場の地図データ上に設定されたコースを移動するように駆動部を制御するものである。ただし、駆動制御部30の構成はこれらの構成に限定されるものではない。
次に、ゴルフ場G1の1番ホールH1において、車両Vにより、このホールの維持管理のために利用される情報を作成する処理を説明する。
まず、1番ホールH1の構成を簡単に説明する。
(ゴルフ場G1の1番ホールH1)
図6は、ゴルフ場G1の1番ホールH1の構成の一例を示す。
1番ホールH1は、ティーグラウンド2、フェアウェイ3、4、ラフ5、バンカー6、グリーン7という複数の区域に区分されている。フェアウェイ3、4に生えている芝は、ラフ5に生えている芝よりも短い状態に管理される必要がある。グリーン7に生えている芝は、フェアウェイ3、4に生えている芝よりも短く、より整った状態に管理される必要がある。さらに、ラフ5は、芝が生い茂った状態となるように管理される必要がある。このように、1番ホールH1に含まれているそれぞれの区域ごとに、芝の管理状態が異なっている。
次に、1番ホールH1の維持管理のために利用される情報を作成する手順を説明する。
図1Bに示すように、このゴルフ場G1は、事業所1000のサービスエリアRs内に位置し、近隣のゴルフ場G2〜G4とともに、ユニットU1として1つの維持管理サービスを提供する単位としてグループ分けされている。
維持管理サービスがユニットU1のゴルフ場G1〜G4に対して提供される際、事業所1000からゴルフ場G1に1以上の車両Vが投入される。ここでは、1番ホールH1には、3台の車両Vが投入され、1つの車両Vはフェアウェイ3の検出開始ポイントSp3に配置され、2つの車両がラフ5の検出開始ポイントSp5に配置されるものとする。
フェアウェイ3に配置された車両Vは、経路P1に沿って移動し、この経路に沿った複数の位置で、それぞれのセンサ41〜46が温度データ、湿度データ、風向きデータ、土壌水分量データ、土壌pHデータ、クロロフィル濃度を検出する。検出されたデータは、データ処理部10で、検出位置を示す位置データに関連付けられて内部のメモリ11に格納される。ラフ5の検出開始ポイントSp5から出発した2つの車両Vはそれぞれ経路P2およびP3に沿って移動し、それぞれのセンサ41〜46が温度データ、湿度データ、風向きデータ、土壌水分量データ、土壌pHデータ、クロロフィル濃度を検出する。検出したデータは、データ処理部10で、検出位置を示す位置データに関連付けられて内部のメモリ11に格納される。ここで、位置データは、ゴルフ場G1の基準位置に対する位置を示すデータであっても、衛星測位システムによる緯度と経度の情報により示される位置データであってもよい。さらに、衛星測位システムによる緯度と経度の情報に基づいて、ゴルフ場G1の地図上に示された位置を示す位置データでもよい。
このようにして1番ホールのラフ5およびフェアウェイ3の芝の生育に関連するデータが3台の車両Vにより検出されると、同様に残りの領域であるティーグラウンド2、フェアウェイ4、バンカー6、グリーン7で芝の生育に関連するデータの検出が行われ、検出されたデータは、車両Vのデータ処理部10で位置データと関連付けられて内部のメモリ11に格納される。他のホールH2〜H9についても同様に芝の生育に関連するデータが検出されてデータ処理部10のメモリ11に格納される。
このようなゴルフ場に対する芝の生育に関連するデータの検出処理は、ユニットU1内の4つのゴルフ場G1〜G4において並行して行われ、処理終了後には、ユニットU1内の4つのゴルフ場G1〜G4からはほぼ同時に車両Vが事業所1000に戻される。
事業所1000に回収された複数の車両Vのデータ処理部10のメモリ11に格納されている芝の生育に関連するデータは、図2Aに示す維持管理システム100のコンピュータシステムCsのデータ処理部Dp(図2B)に渡される。なお、車両のデータ処理部10からコンピュータシステムCsのデータ処理部Dpへのデータの受け渡しは、記録媒体を介して行ってもよいが、有線LANや無線LANなどのネットワークを介して行ってもよい。さらには、事業所1000に設けられている維持管理システム100を無線通信部を含む構成とし、かつ車両Vを無線通信装置を搭載した構成とし、車両Vのデータ処理部10で位置データと関連付けられた芝の生育に関連するデータを無線通信装置により、事業所1000に設けられている維持管理システム100で受信してコンピュータシステムCsに出力するようにしてもよい。
芝の生育に関連するデータがコンピュータシステムCsのデータ処理部Dpに提供されると、データ処理部Dpは、データベースDb1の基準データを参照して芝の生育に関連するデータに基づいてユニットU1の各ゴルフ場G1〜G4の維持管理に必要な作業を示す作業情報を作成する。この作業情報は、事業所1000からユニットU1の各ゴルフ場G1〜G4に提供される。
この作業情報は、例えば、ゴルフ場G1の1番ホールのラフ5のどの部分にどれだけ散水すればよいかなどを示す作業情報であり、ゴルフ場G1にはゴルフ場G1の維持管理に必要な作業情報が提供される。
さらに、作業情報は散水を指示するものに限定されない。作業情報は、車両Vで芝の生育に関連するデータの他に施設の維持状態を表すデータとしてどのようなデータを検出するかによって、芝刈り、エアーレイション、目砂散布、肥料散布、スイーパー(表面の掃除)、枯葉除去、およびバンカー整地などを指示するものとすることができる。さらには、作業情報は、枯葉を集荷する作業を指示したり、ティーグラウンドのディボットやティーショットが集中するフェアウェイのディボットを、季節や芝の色目に合わせた近似色に色付けする作業を指示したりすることもできる。集荷した枯葉はサイロサイレージ化することにより牛などの家畜の肥料とすることもできる。色付けには、芝の生育状態を示すデータにより芝の生育状態を判定し、その判断結果に基づいて、ホタテの貝殻を粉砕したパウダーに色づけしたものを散布する方法を用いることができる。
ここで、芝の生育状態を示すデータは、例えば、クロロフィルセンサを用いて芝に含まれるクロロフィル(葉緑素)の濃度を測定することにより得ることができる。なぜなら、クロロフィルは植物の光合成反応などに重要な役割を果たすものであり、その濃度により生育状況の判断が可能であるからである。
また、ディボットを季節や芝の色目に合わせた近似色に色付けする作業の指示は、基本的には、作業員の目視による判断に基づいたものである。
ただし、ディポットは芝の欠損部分であり、クロロフィルセンサによる検出結果から判定可能であり、季節の情報は、コンピュータシステムCsの時計機能から得ることができ、芝の色目はイメージセンサなどにより判定可能である。従って、ディボットを季節や芝の色目に合わせた近似色に色付けする作業を指示する情報を、センサの出力に基づいて作成することは可能であり、この情報をセンサ出力に基づいて作成してもよい。
その後は、事業所1000でのスケジュール情報に従って、事業者がユニットU1の各ゴルフ場G1〜G4から回収した複数の車両を、ユニットU2の各ゴルフ場G5〜G8に投入すると、ユニットU1の各ゴルフ場G1〜G4で行ったように、ユニットU2の各ゴルフ場G5〜G8において車両Vにより芝の生育に関連するデータの検出が行われる。その後、車両Vが事業所1000に回収される。事業所1000に回収された車両Vのデータ処理部10のメモリ11に格納されている芝の生育に関連するデータが事業所1000に設置されている維持管理システム100のコンピュータシステムCsに提供されると、コンピュータシステムCsのデータ処理部Dpは、ユニットU2の各ゴルフ場G5〜G8の維持管理に必要な作業を示す作業情報を作成する。
この作業情報は、事業所1000から各ゴルフ場G5〜G8に提供される。
このように本実施形態1では、施設内の芝の生育に関連するデータ(例えば、環境データおよび/または生育状態データ)を検知するセンサを搭載した車両Vをゴルフ場G1〜G8に提供し、この車両Vを使って検知したデータに基づいて各ゴルフ場G1〜G8の維持管理に必要な作業を示す作業情報を作成し、作成した作業情報を各ゴルフ場G1〜G8に提供するので、各ゴルフ場G1〜G8では、作業基準の明確化と共通化が図れ、このため、知識と経験の少ない作業者でもあるいは無人の作業車両でも作業情報に基づいて施設の維持管理に必要な作業を行うことが可能となる。その結果、施設の維持管理のための必要経費を削減することができる。
特に、検出した環境データおよび/または生育状態データに基づいて、経験と知識を有する作業者の判断基準を示す基準データを参照してコンピュータシステムCsにより、施設の維持管理に必要な作業を判断するので、経験と知識の有する作業者の人不足を解消することができる。
また、ゴルフ場での保守管理に必要な作業を、顧客がいなくなる15時ごろから夜間の無人作業車両により行うことで、昼中コース管理することが軽減できる。さらには、コース内の環境データを蓄積できることから、ゴルフ場の維持管理に必要な作業の基準化を図ることもできる。
さらに、作業情報を作成するシステムは、施設の維持管理サービスを提供する事業所1000から提供されるので、作業情報の作成に必要な機材をゴルフ場で購入する必要がなくなる。その結果、機器メンテナンスやその燃料費が軽減され、無人化による人員削減を達成できる。
なお、実施形態1では、施設内の芝の生育に関連するデータを検知するセンサを搭載した車両Vをゴルフ場G1〜G8に提供し、この車両Vを使って検知したデータから得られた、各ゴルフ場G1〜G8の維持管理に必要な作業を示す作業情報をゴルフ場G1〜G8に提供するところまでのサービスを事業所1000が提供する場合について説明したが、事業所1000は、作業情報が示す、ゴルフ場の維持管理に必要な作業を行うサービスをもゴルフ場に提供してもよい。
この場合、ゴルフ場には、作業情報に基づいて作業する無人車両なども事業所1000から提供されるので、ゴルフ場では、維持作業用の最新の汎用機械は購入する必要がなくなる。さらには、無人車両による作業では、天候に左右されることが軽減される。
以下、このように事業所から施設の維持管理サービスが、施設の維持管理に必要な作業を示す作業情報を提供するだけでなく、この作業情報に基づいてゴルフ場の維持管理に必要な作業を行うサービスも施設に提供する例を実施形態2として説明する。
(実施形態2)
図7A〜図7Cを参照して、本発明の実施形態2による維持管理サービスを提供する方法を説明する。図7Aは、サービスエリア内での事業所とゴルフ場との位置関係を示し、図7Bは、サービスエリア内の複数のゴルフ場をグループ分けした状態を示し、図7Cは、事業所の維持管理システムを示している。なお、図7では、ゴルフ場G1のホールHのレイアウトのみを示し、ゴルフ場G1以外のゴルフ場G2〜G8のホールのレイアウトは省略している。
この実施形態2においても、ゴルフ場の維持管理サービスは、図7Aおよび図7Bに示すように、実施形態1と同様に、1つの事業所2000が受け持つサービスエリアRs内に位置する複数のゴルフ場G1〜G8を2つのユニットU1およびU2にグループ分けしてグループ毎にまとめて行われる。
この実施形態2は、事業所2000からゴルフ場に提供される維持管理サービスに、ゴルフ場の維持管理に必要な作業を示す作業情報をゴルフ場に提供するサービスだけでなく、この作業情報に基づいてゴルフ場の維持管理に必要な作業を行うサービスも含まれている点で実施形態1と異なる。
従って、実施形態2では、事業所2000に設けられている維持管理システム200は、図7Cに示すように、実施形態1の維持管理システム100に含まれる複数の車両V、具体的には、芝の生育に関連するデータを検知する少なくとも1つのセンサを搭載した車両(以下、検知車両ともいう。)Vに加えて、ゴルフ場内で維持管理に必要な作業を実行する作業装置を搭載した少なくとも1つの車両(以下、作業車両ともいう。)Vaを含んでいる。さらに、維持管理システム200のコンピュータシステムCsaは、実施形態1のコンピュータシステムCsの機能に加えて、検知されたデータから作成した、施設の維持管理に必要な作業を示す作業情報を作業車両Vaに提供可能な構成となっている。実施形態2の維持管理システム200におけるその他の構成は実施形態1のものと同一である。
(作業車両Va)
図8は、本発明の実施形態2による維持管理システム200で用いる作業車両Vaの構成を示す図である。
作業車両Vaは、図5に示す検知車両Vのようにセンサ部40を有するものではなく、駆動部20および駆動制御部30に加えて、散水、芝刈り、肥料散布などの作業を行う作業装置50、および検知車両Vのデータ処理部10に代わる作業制御部10aを有するものである。ここで作業制御部10aは、メモリ11aを有し、このメモリ11aに格納された作業情報に基づいて作業装置50を制御するように構成されている。また、作業制御部10aは、作業手順に合わせて駆動制御部30を制御して作業車両Vaの位置を制御するように構成されている。
次に、この実施形態2の維持管理システム200により提供される維持管理サービスを、ゴルフ場G1を例に挙げて具体的に説明する。
まず、実施形態1と同様に、事業所2000から維持管理システム200の検知車両Vがゴルフ場G1に投入されると、検知車両Vにより実施形態1と同様に芝の生育に関連するデータが検知される。検知されたデータ(以下、検知データともいう。)は、検知車両Vにより事業所2000に持ち帰られて事業所2000の維持管理システム200のコンピュータシステムCsaに提供される。なお、検知データは、無線通信などによりリアルタイムで事業所2000の維持管理システム200に送信されるようにしてもよい。
維持管理システム200のコンピュータシステムCsaが検知データを取得すると、コンピュータシステムCsaは、検知データをデータベース(図示せず)に格納するとともに、検知データからゴルフ場の維持管理に必要な作業を示す作業情報を作成し、ゴルフ場G1に投入する作業車両Vaに作業情報を提供する。その後、作業を実行する維持管理サービスがユニットU1のゴルフ場G1〜G4に対して提供される。例えば、図9に示すように、事業所2000からゴルフ場G1に複数の作業車両Vaが投入される。
ここでは、1番ホールH1には、3台の作業車両Vaが投入され、1つの作業車両Vaは、フェアウェイ3の作業開始ポイント(例えば、検出開始ポイントと同じ)Sp3に配置され、2つの作業車両Vaがラフ5の作業開始ポイント(例えば、検出開始ポイントと同じ)Sp5に配置される。
フェアウェイ3に配置された作業車両Vaは、規定経路P1に沿って移動し、この経路に沿った複数の位置で、作業情報に基づいて必要な作業を実行する。ラフ5に配置された2つの作業車両Vaはそれぞれ、規定経路P2、P3に沿って移動し、各経路に沿った複数の位置で、作業情報に基づいて必要な作業を実行する。
このようにして1番ホールのラフ5およびフェアウェイ3で必要な作業が3台の作業車両Vaにより実行されると、同様に残りの領域であるティーグラウンド2、フェアウェイ4、バンカー6、グリーン7でも必要な作業が実行される。さらに他のホールH2〜H9についても同様に必要な作業が実行される。
このようなゴルフ場に対する芝の生育に関連するデータの検出処理および管理作業の実行は、ユニットU1内の4つのゴルフ場G1〜G4において並行して行われ、終了後には、ユニットU1内の4つのゴルフ場G1〜G4からはほぼ同時に作業車両Vaが事業所2000に戻される。なお、このように各ゴルフ場に提供した作業車両Vaを同時に回収するには、例えば、1つのユニットU1内の各ゴルフ場に提供される作業車両Vaの台数を、ゴルフ場の芝生地帯の広さなどに応じて、各ゴルフ場ですべての作業に要する時間が同じ程度となるように設定しておく必要がある。
その後はスケジュール管理に従って他のユニットU2のゴルフ場G5〜G8に、施設の維持管理サービスが同様に提供されることとなる。
このように本実施形態2では、施設内の芝の生育に関連するデータを検知するセンサを搭載した検知車両Vおよび作業車両Vaをゴルフ場G1〜G8に提供し、検知車両Vを使って検知したデータに基づいて各ゴルフ場G1〜G8の維持管理に必要な作業を示す作業情報を作成し、作成した作業情報に基づいて、作業車両Vaにより各ゴルフ場の維持管理に必要な作業を実行するので、各ゴルフ場G1〜G8では、無人の作業車両で作業情報に基づいて施設の維持管理に必要な作業を行うことが可能となる。その結果、施設の維持管理のための必要経費を削減することができる。
なお、実施形態2で示した作業車両Vaは、図16Aに示すように、作業装置50およびこれを制御する作業制御部10dを搭載した被牽引車両Aに、牽引車両V0を連結器80により連結した構成としてもよい。ここで作業制御部10dは、メモリ11dを有し、このメモリ11dに格納された作業情報に基づいて作業装置50を制御するように構成されている。また、作業制御部10dは、作業手順に合わせて牽引車両V0の駆動制御部30を制御して被牽引車両Aの位置を制御するように構成されている。
また、上記実施形態2では、維持管理システム200として、センサを搭載した少なくとも1つの検知車両Vと、作業装置を搭載した少なくとも1つの作業車両Vaとを含むものを示したが、実施形態2の維持管理システム200は、これらの検知車両Vおよび作業車両Vaに代えて、センサと作業装置の両方を搭載した少なくとも1つの検知作業車両を含むものでもよい。以下このような検知作業車両を用いてゴルフ場の維持管理サービスを提供する方法を実施形態3として説明する。
(実施形態3)
図10A〜図10Cを参照して、本発明の実施形態3による維持管理サービスを提供する方法を説明する。
図10Aは、サービスエリア内での事業所とゴルフ場との位置関係を示し、図10Bは、サービスエリア内の複数のゴルフ場をグループ分けした状態を示し、図10Cは、事業所の維持管理システムを示している。なお、図10Bでは、ゴルフ場G1のホールHのレイアウトのみを示し、ゴルフ場G1以外のゴルフ場G2〜G8のホールのレイアウトは省略している。
この実施形態3においても、ゴルフ場の維持管理サービスは、図10Aおよび図10Bに示すように、実施形態1および2と同様に、1つの事業所3000が受け持つサービスエリアRs内に位置する複数のゴルフ場G1〜G8を2つのユニットU1およびU2にグループ分けしてグループ毎にまとめて行われる。
この実施形態3では、事業所3000に設けられている維持管理システム300は、図10Cに示すように、実施形態1の維持管理システム100に含まれる複数の車両Vに代えて、芝の生育に関連するデータを検知可能であって、検知したデータから得られる作業情報に基づいて施設管理のための作業を実行可能な検知作業車両Vbを含んでいる。ここでは、維持管理システム300のコンピュータシステムCsbは、実施形態2のコンピュータシステムCsaと同様に、各検知作業車両Vbで検知されたデータを取得し、取得したデータからゴルフ場の維持管理に必要な作業を示す作業情報を作成し、作業情報を各検知作業車両Vbに提供するように構成されている。また、コンピュータシステムCsbは、検知作業車両Vbで検知したデータを取得して保存するように構成されている。
(検知作業車両Vb)
検知作業車両Vbは、図11に示すように、実施形態2の作業車両Vaの構成に加えて、複数のセンサ41〜46を有するセンサ部40を備え、さらに、実施形態2の作業制御部10aとは異なる作業制御部10bを備えている。この作業制御部10bは、実施形態2の作業制御部10aと同様に駆動制御部30を制御するとともに、コンピュータシステムCsbから提供された作業情報をメモリ11bに格納し、作業情報に基づいて作業装置50にゴルフ場の維持管理に必要な作業を指示するように構成されている。作業制御部10bのメモリ11bには、複数のセンサ41〜46で検知されたデータも記録される。検知作業車両Vbが事業所3000に戻ったときには、メモリ11bに格納されている環境データおよび生育状態データの少なくとも一方が、維持管理システム300のコンピュータシステムCsbに提供されて蓄積されるようになっている。
次に、この実施形態3の維持管理システム300により提供される維持管理サービスを、ゴルフ場G1を例に挙げて具体的に説明する。
まず、実施形態2と同様に、事業所3000から維持管理システム300の検知作業車両Vbがゴルフ場G1に投入されると、検知作業車両Vbにより実施形態1と同様に芝の生育に関連するデータが検知される。検知されたデータ(以下、検知データともいう。)は、検知作業車両Vbにより事業所3000に持ち帰られて事業所3000の維持管理システム300のコンピュータシステムCsbに提供される。なお、検知データは、無線通信などによりリアルタイムで事業所3000の維持管理システム300に送信されるようにしてもよい。
維持管理システム300のコンピュータシステムCsbが検知データを取得すると、コンピュータシステムCsbは、検知データをデータベース(図示せず)に格納するとともに、実施形態2のコンピュータシステムCsaと同様に、検知データからゴルフ場の維持管理に必要な作業を示す作業情報を作成し、ゴルフ場G1に投入する検知作業車両Vbに作業情報を提供する。その後、作業を実行する維持管理サービスがユニットU1のゴルフ場G1〜G4に対して提供される。例えば、図12に示すように、事業所3000からゴルフ場G1に複数の検知作業車両Vbが投入される。
ここでは、1番ホールH1には、3台の検知作業車両Vbが投入され、1つの検知作業車両Vbは、フェアウェイ3の作業開始ポイント(例えば、検出開始ポイントと同じ)Sp3に配置され、2つの検知作業車両Vbがラフ5の作業開始ポイント(例えば、検出開始ポイントと同じ)Sp5に配置される。
フェアウェイ3に配置された検知作業車両Vbは、規定経路P1に沿って移動し、この経路に沿った複数の位置で、作業情報に基づいて必要な作業を実行する。ラフ5に配置された検知作業車両Vbは、規定経路P2に沿って移動し、この経路に沿った複数の位置で、作業情報に基づいて必要な作業を実行する。
このようにして1番ホールのラフ5およびフェアウェイ3で必要な作業が3台の検知作業車両Vbにより実行されると、同様に残りの領域であるティーグラウンド2、フェアウェイ4、バンカー6、グリーン7でも必要な作業が実行される。さらに他のホールH2〜H9についても同様に必要な作業が実行される。
このようなゴルフ場に対する芝の生育に関連するデータの検出処理および維持管理作業の実行は、ユニットU1内の4つのゴルフ場G1〜G4において並行して行われ、その終了後には、ユニットU1内の4つの空港G1〜G4からはほぼ同時に検知作業車両Vbが事業所3000に戻される。なお、このように各ゴルフ場に提供した検知作業車両Vbを同時に回収するには、例えば、1つのユニットU1内の各ゴルフ場に提供される検知作業車両Vbの台数を、ゴルフ場の芝生地帯の広さなどに応じて、各ゴルフ場での作業に要する時間が同じ程度となるように設定しておく必要がある。
その後はスケジュール管理に従って他のユニットU2のゴルフ場G5〜G8に、施設の維持管理サービスが同様に提供されることとなる。
このように本実施形態3では、実施形態2の検知車両Vおよび作業車両Vaに代えて、芝の生育に関連するデータを検知するセンサ部および施設の維持管理に必要な作業を行う作業装置を搭載した検知作業車両Vbを用いるので、検知作業車両Vbはゴルフ場での芝の生育に関連するデータの検出にも、ゴルフ場の維持管理のための作業にも用いることができ、事業所での車両の利用効率を高めることができる。
なお、実施形態3では、維持管理システム300として、検知作業車両Vbのみを含むものを示したが、維持管理システム300は、検知作業車両Vbに加えて、実施形態2の検知車両Vおよび作業車両Vaを含むものでもよい。この場合、ゴルフ場から要求されるサービスに応じてゴルフ場に提供する車両を選択することができる。例えば、ゴルフ場の維持管理に必要な作業を示す作業情報のみを提供するサービスが要求される場合は、検知車両Vあるいは検知作業車両Vbをゴルフ場に提供する。あるいはこのような作業情報の提供とともに実際のゴルフ場の維持管理のための作業も提供するサービスが要求される場合は、検知車両Vおよび作業車両Vaの両方、あるいは検知作業車両Vbをゴルフ場に提供する。さらに、ゴルフ場の維持管理のための作業が急を要する場合は、検知作業車両Vbをゴルフ場に提供する。
また、上記実施形態3では、ゴルフ場の維持管理のためにゴルフ場を走らせる車両には、センサ部40および作業装置50の両方を搭載した検知作業車両Vbを用い、検知作業車両Vbによる作業の際に必要となる作業情報を、維持管理システムのコンピュータシステムで、検知作業車両Vbから取得したデータに基づいて作成する例について説明したが、作業情報は、検知作業車両Vbのセンサ部で検出したデータに基づいて検知作業車両Vbの内部で作成してもよい。
以下、このような作業情報を検知作業車両の内部で作成し、検知作業車両による作業に利用する例を実施形態4として説明する。
(実施形態4)
図13A〜図13Cを参照して、本発明の実施形態4による維持管理サービスを提供する方法を説明する。
図13Aは、サービスエリア内での事業所とゴルフ場との位置関係を示し、図13Bは、サービスエリア内の複数のゴルフ場をグループ分けした状態を示し、図13Cは、事業所の維持管理システムを示している。なお、図13Bでは、ゴルフ場G1のホールHのレイアウトのみを示し、ゴルフ場G1以外のゴルフ場G2〜G8のホールのレイアウトは省略している。
この実施形態4においても、ゴルフ場の維持管理サービスは、図13Aおよび図13Bに示すように、実施形態1〜3と同様に、1つの事業所4000が受け持つサービスエリアRs内に位置する複数のゴルフ場G1〜G8を2つのユニットU1およびU2にグループ分けしてグループ毎にまとめて行われる。
この実施形態4では、事業所4000に設けられている維持管理システム400は、図13Cに示すように、実施形態1の維持管理システム100に含まれる複数の車両Vに代えて、芝の生育に関連するデータを検知可能であって、検知したデータから作業情報を作成し、作業情報に基づいて施設管理のための作業を実行可能な検知作業車両Vcを含んでいる。ここでは、維持管理システム400のコンピュータシステムCscは、検知作業車両Vcで検知したデータを取得して保存するように構成されている。
(検知作業車両Vc)
検知作業車両Vcは、図14に示すように、実施形態3の検知作業車両Vbの作業制御部10bに代わる作業制御部10cを備え、この作業制御部10cにより、検知作業車両Vcのセンサ部で検出したデータに基づいて、ゴルフ場の維持管理に必要な作業を示す作業情報が作成されるように構成されている。この作業制御部10cのメモリ11cには、基準データが格納されており、この作業制御部10cで、センサからのデータに基づいてゴルフ場の維持管理に必要な作業を示す作業情報を作成する処理は、実施形態1のコンピュータシステムCsのデータ処理部Dpと同様に、センサからのデータに基づいて、メモリ11cに格納されている基準データを参照して行われ、ゴルフ場の維持管理に必要であると判断された作業を示す作業情報は、作業制御部10cのメモリ11cに格納される。
また、作業制御部10cのメモリ11cには、複数のセンサ41〜46で検知されたデータも記録される。検知作業車両Vcが事業所4000に戻ったときには、メモリ11cに格納されているセンサで検知されたデータおよび作業情報が、維持管理システム400のコンピュータシステムCscに提供されて蓄積されるようになっている。従って、この実施形態4のコンピュータシステムCscには、センサからのデータに基づいて基準データを参照して、ゴルフ場の維持管理に必要な作業を示す作業情報を生成する機能は不要である。ただし、コンピュータシステムCscは、検知作業車両Vcから取得して蓄積している、検知作業車両Vcのセンサ部で検出したデータに基づいて、基準データを参照して、ゴルフ場の維持管理に必要な作業を示す作業情報を生成する機能を有していてもよい。
なお、この検知作業車両Vcにおける駆動部20、駆動制御部30、センサ部40、および作業装置50は、実施形態3の検知作業車両Vbのものと同一である。
次に、この実施形態4の維持管理システム400により提供される維持管理サービスを、ゴルフ場G1を例に挙げて具体的に説明する。
図15に示すように、事業所4000から維持管理システム400の検知作業車両Vcがゴルフ場G1に投入される。ゴルフ場G1の1番ホールH1には、3台の検知作業車両Vcが投入され、1つの検知作業車両Vcは、フェアウェイ3の作業開始ポイントSp3に配置され、2つの検知作業車両Vcがラフ5の作業開始ポイントSp5に配置される。
フェアウェイ3およびラフ5に配置された検知作業車両Vcは、規定経路P1、P2、P3に沿って移動し、この経路に沿った複数の位置で、芝の生育に関連するデータの検出と、検出したデータに基づいた作業とを行う。
具体的には、検知作業車両Vcが例えばフェアウェイ3上を移動している間に、センサ部40がフェアウェイ3の少なくとも1つの地点で芝の生育に関連するデータを検出し、作業制御部10cが、検出されたデータに基づいて基準データを参照して、ゴルフ場の維持管理に必要な作業を示す作業情報を生成し、作業情報を作業装置50に提供する。作業装置50は、提供された作業情報に基づいてゴルフ場の維持管理に必要な作業(散水や肥料散布など)を行う。ラフ5でも同様に検知作業車両Vcにより、芝の生育に関連するデータの検知、作業情報の作成、ゴルフ場の維持管理に必要な作業が行われる。
このようにして1番ホールH1のフェアウェイ3およびラフ5で、芝の生育に関連するデータの検知、検知されたデータに基づいた作業情報の作成、および作業情報が示す作業が3台の検知作業車両Vcにより実行されると、同様に残りの領域であるティーグラウンド2、フェアウェイ4、バンカー6、グリーン7でも同様に芝の生育に関連するデータの検出、作業情報の作成、作業情報に基づいた作業が実行される。他のホールH2〜H9についても同様に芝の生育に関連するデータの検出、作業情報の作成、作業情報に基づいた作業が実行される。
このようなゴルフ場の維持管理に必要な作業は、ユニットU1内の4つのゴルフ場G1〜G4において複数の検知作業車両Vcにより並行して行われ、終了後には、ユニットU1内の4つのゴルフ場G1〜G4からはほぼ同時にすべての検知作業車両Vcが事業所3000に戻される。
その後はスケジュール管理に従って他のユニットU2のゴルフ場G5〜G8に、施設の維持管理サービスが同様に提供されることとなる。
このように本実施形態4では、施設内の芝の生育に関連するデータを検知するセンサ部40および作業装置50を搭載した検知作業車両Vcをゴルフ場G1〜G8に提供し、この検知作業車両Vbにより、芝の生育に関連するデータの検知、検知したデータに基づいた作業情報の作成、作業情報に基づいた維持管理作業を行うので、ゴルフ場の維持管理のための作業を作業者によらないで行うことができる。
なお、実施形態4では、維持管理システム400として、検知作業車両Vcのみを含むものを示したが、維持管理システム400は、検知作業車両Vcに加えて、実施形態2の検知車両Vおよび作業車両Va、さらに実施形態3の検知作業車両Vbを含むものでもよい。
また、実施形態3で示した検知作業車両Vbあるいは実施形態4で示した検知作業車両Vcは、図16Bに示すように、実施形態1で示したセンサ部40を搭載した車両Vに、作業装置50およびこれを制御する作業制御部10eを搭載した被牽引車両Aを連結器80により連結した構成としてもよい。ここで作業制御部10eは、メモリ11eを有し、このメモリ11eに格納された作業情報に基づいて作業装置50を制御するように構成されている。また、作業制御部10eは、作業手順に合わせて車両Vの駆動制御部30を制御して被牽引車両Aの位置を制御するように構成されている。
さらに上記実施形態では、ゴルフ場内で生育する芝の維持管理を行うための作業について説明したが、ゴルフ場の維持管理は芝の手入れに限定されるものではなく、例えば、バンカーの整地状態、図17に示すようにゴルフコースに引かれている残りヤードの目安となるヤードラインL1〜L3の鮮明度、グリーンの色、枯葉の堆積状態、害虫の発生なども、ゴルフ場での維持管理の対象となる。従って、車両に搭載するセンサとして、これらの維持管理対象を検出可能なセンサ、例えばイメージセンサなどを用いることで、ゴルフ場での芝以外のものの維持管理が可能となる。特に、害虫による芝の被害は、その大量発生を予測して対処することにより効果的に抑制することができ、将来的には、このような大量発生の兆候を検出可能なセンサの実現により害虫による芝の被害をほとんどなくすことも可能となる。また、図8に示す作業車両Va、図11に示す検知作業車両Vb、あるいは図14に示す検知作業車両Vcに衛星測位システムを搭載することにより、ゴルフコースの所定位置に新たにヤードラインを精度よく引くことも可能となる。
上述した実施形態では、植物が生育する少なくとも1つの領域を含む施設の維持管理サービスを提供する方法およびシステムの一例として、ゴルフ場の維持管理サービスを提供する方法およびシステムを説明した。従って、本発明がゴルフ場の維持管理サービスを提供する方法およびシステムに限定されないことは明らかであり、本発明がゴルフ場以外の芝などの植物が生育する少なくとも1つの領域を含む任意の施設(例えば、野球場、サッカー場、陸上競技場、サーキット場、公園、空港など)の維持管理サービスを提供する方法およびシステムに適用可能であることもまた明らかである。芝は、野芝、高麗芝、姫高麗芝などを含み得るが、これらに限定されない。また、施設に含まれる少なくとも1つの領域に生育する植物は、芝に限定されない。施設に含まれる少なくとも1つの領域に生育する植物は、芝以外の任意の植物であり得る。
特に、空港は、滑走路の周りに航空機の安全かつ円滑な運行上重要な役割を担う着陸帯、誘導路、エプロン等の施設を含み、着陸帯は芝、草などの植物が生育する広大な領域として滑走路の周りに広がっている。本発明が空港施設の着陸帯の維持管理サービスを提供する方法およびシステムに適用可能であることもまた明らかである。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、これらの実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。