以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
(実施形態1)
本発明は、芝や草などの植物が生育する少なくとも1つの領域を含む空港施設の維持管理サービスを提供する方法およびシステムに関する。空港は、航空機の安全かつ円滑な運行上重要な役割を担う着陸帯、誘導路、エプロン等の施設を含み、着陸帯は芝や草などの植物が生育する広大な領域として滑走路の周りに広がっている。なお、植物は芝や草などであり得るが、これに限定されない。植物は、任意の植物であり得る。
はじめに、空港施設の維持管理サービスを提供する1つの形態を説明する。
(空港施設の維持管理サービスを提供する形態)
図1Aは、空港施設の維持管理サービスを提供する1つの事業所1000が受け持つ複数の空港A1~A5を示す。
1つの事業所1000が受け持つ複数の空港はすべて近隣の空港であることが好ましいが、これには限定されない。ここでは、事業所1000は、例えば関西地方の3つの空港A1~A3と例えば関東地方の2つの空港A4~A5とを受け持っており、これらの5つの空港A1~A5のそれぞれに対して、空港施設の維持管理サービスSを提供する。これにより、各空港では、空港施設を維持管理するための機械やノウハウを有していなくても、事業所1000によって提供される空港の維持管理サービスによって空港施設の維持管理を行うことが可能である。なお、1つの事業所1000が受け持つ空港は、例えば関西地方や関東地方の空港に限定されず、東北地方、中国地方、九州地方など国内の空港、あるいは事業所1000が置かれた国の近隣に位置する外国の空港であってもよい。
図1Bは、事業所1000が受け持つ5つの空港A1~A5を維持管理作業の効率化を図るために2つのグループに分けた状態を示す。
図1Bに示される例では、空港A1~A3が1つのグループ(ユニットU1)に分類されており、空港A4~A5がもう1つのグループ(ユニットU2)に分類されている。同じグループに属する空港は、互いに近接していることが好ましいがこれには限定されない。なお、図1Bに示される例では、各空港A1~A5の滑走路が太線で示されている。
事業所1000は、これらのグループ(すなわち、ユニット)のそれぞれを単位として、空港A1~A5に対して空港施設の維持管理サービスを提供する。例えば、事業所1000は、事業所1000(または事業所1000が属する企業)が所有している1以上の車両を空港A1に提供する。例えば、事業所1000の作業員が1以上の車両を運転して移動させることにより、1以上の車両を空港A1に搬入してもよい。あるいは、事業所1000の作業員が1以上の車両をトラックに乗せて運搬することにより、1以上の車両を空港A1に搬入してもよい。1以上の車両は、空港施設の維持管理を行うために利用される車両(例えば、草刈機)であり、空港施設(例えば着陸帯などの芝や草などの植物が生育する領域)の維持管理に利用され得る芝や草などの植物の生育に関連する様々なデータを収集するセンサが搭載されている。ここで、芝や草などの植物の生育に関連するデータは、芝や草などの植物が生育する環境を示す環境データおよび芝や草などの植物の生育状態を示す生育状態データのうちの少なくとも一方を含む。1以上の車両は、各ユニットのいくつかの空港で共用されることが好ましい。例えば、1以上の車両がユニットU1に属する空港A1~A3で共用され、他の1以上の車両がユニットU2に属する空港A4~A5で共用されてもよい。ただし、空港の維持管理のための1以上の車両を空港施設で共用する形態はこのような形態に限定されず、例えば、1以上の車両がユニットU1に属する空港A1~A3で巡回させて利用された後に、同じ1以上の車両がユニットU2に属する空港A4~A5で巡回させて利用されてもよい。
空港A1に搬入された1以上の車両が空港A1の維持管理のために利用されている間、その1つ以上の車両は、空港A1の維持管理に利用され得る様々なデータ(例えば、芝や草などの植物の生育に関連するデータ)を収集する。その1つ以上の車両によって収集されたデータは、事業所1000内に設置された維持管理システム100に格納される。この維持管理システム100は、格納されたデータを処理することによって、空港A1の維持管理に利用され得る情報を生成する。この情報は、空港A1(例えば、空港A1の管理者)に提供される。
空港A1に搬入された1以上の車両は、例えば、1週間後には、空港A2に移動され、その1週間後には、空港A3に移動される。このように、事業所1000から提供される1以上の車両は、ユニットU1を1つの単位としてユニットU1に含まれる空港A1~A3の間を巡回的に共用され得る。1以上の車両を空港間で移動させる作業は、事業所1000の作業員が担当することが好ましいが、これには限定されない。1以上の車両を巡回させるシフトは、1週間ごとである必要はなく所定の期間ごとに行ってもよいことはもちろんである。また、一組の1以上の車両を空港A1に搬入するのと同時に、他の一組の1以上の車両を空港A2に搬入して、これらの二組の1以上の車両を巡回的に共用することによって、作業間隔を狭めることも可能である。
このように、各空港に搬入される1以上の車両は、事業所1000から定期的に提供されるため、各空港が自前で1以上の車両を所有する必要がない。従って、各空港が、1以上の車両の購入費やメンテナンス費を負担する必要がない。さらに、各空港には、事業所1000から各空港の維持管理に利用され得る情報が提供されるため、各空港が自前でコンピュータ設備を有する必要もない。これにより、各空港は、空港の維持管理に必要な費用を削減することが可能になる。
なお、図1Aに示される例では、1つの事業所1000は5個の空港を受け持っているが、1つの事業所1000が受け持つ空港の数は5個には限定されない。1つの事業所1000は任意の数の空港を受け持つことができる。また、図1Bに示される例では、1つのユニットU1内に3個の空港が含まれ、もう1つのユニットU2内に2個の空港が含まれているが、1つのユニット内に含まれる空港の数は3個あるいは2個には限定されない。1つのユニットは、任意の数の空港を含むことができる。
さらに、図1A、図1Bに示される例では、1つの事業所が受け持つ複数の空港をグループ分けして維持管理サービスの提供を行っているが、これには限定されない。例えば、1つの事業所が受け持つ複数の空港をグループ分けすることなく、それぞれの空港ごとに空港に維持管理サービスを提供してもよい。
(維持管理システム100)
図2Aは、図1Bに示される事業所1000内に設置される維持管理システム100の構成の一例を示す。
維持管理システム100は、維持管理サービスを提供するために必要な処理を実行する。維持管理システム100は、コンピュータシステムCsと、少なくとも1つの領域(着陸帯)上を移動可能な1以上の車両Vとを含む。ここで、1以上の車両は、上述したように草刈機であってもよいが、草刈機としての機能を持たない車両であってもよい。また、1以上の車両Vには、芝や草などの植物の生育に関連するデータを検知する少なくとも1つのセンサが搭載されている。芝や草などの植物の生育に関連するデータは、芝や草などの植物が生育する環境を示す環境データおよび芝や草などの植物の生育状態を示す生育状態データの少なくとも一方を含む。環境データは、温度を示すデータ、湿度を示すデータ、風向きを示すデータ、土壌水分量を示すデータ、土壌pH値を示すデータのうちの少なくとも1つを含む。生育状態データは、葉緑素の濃度を示すデータを含む。ここでは、車両Vには、少なくとも、芝や草などの植物の生育する領域の環境データである土壌の水分量を検出する水分センサと、芝や草などの植物の生育状態として葉緑素の濃度を示すデータを検出するクロロフィルセンサとが搭載されていることが好ましい。
図2Bは、図2Aに示される維持管理システム100に含まれるコンピュータシステムCsの構成の一例を示す。
コンピュータシステムCsは、知識と経験のある作業者と同様に、空港施設の維持管理に必要な作業を芝や草などの植物の生育に関連するデータから判断するための判断基準を示す基準データを格納したデータベースDb1と、検知された芝や草などの植物の生育に関連するデータに基づいて基準データを参照して、空港施設の維持管理に必要な作業を示す作業情報を作成するデータ処理部Dpとを含む。コンピュータシステムCsでは、データ処理部Dpで作成された作業情報は記憶装置(図示せず)に記憶されるようになっている。
図2Cは、維持管理サービスの対象となる空港の一例を示す。図2Cに示される例では、空港A1は、空港施設として、第1滑走路1、第1滑走路1を囲むように設けられた第1着陸帯1a、第1エプロン1b、第1滑走路1と第1エプロン1bとをつなぐ第1誘導路1c、第2滑走路2、第2滑走路2を囲むように設けられた第2着陸帯2a、第2エプロン2b、第2滑走路1と第2エプロン2bとをつなぐ第2誘導路2cを有する。基準データは、例えば、空港A1の第1着陸帯1aおよび第2着陸帯2aとしての芝や草などの植物の生育する領域での土壌水分量およびクロロフィル濃度の2つのパラメータから、作業者の知識と経験に基づいてこの領域での散水量や肥料、殺菌剤、除草剤などの噴霧量を決定するためのデータである。基準データは、例えば、テーブル形式でデータベースDb1に格納されている。ただし、基準データは、空港A1の芝や草などの植物の生育する領域での土壌水分量およびクロロフィル濃度の2つのパラメータから、作業者の知識と経験に基づいてこの領域での散水量や肥料、殺菌剤、除草剤などの噴霧量を決定するためのデータに限定されない。基準データは、種々のパラメータから、空港の芝や草などの植物の生育する領域の維持管理のために必要な作業を知識と経験のある作業者と同様に決定することができるものであればよい。
なお、図2Bに示されるコンピュータシステムCsは、データベースDb1に加えて、空港A1の地図を示す地図データを格納したデータベースDb2を有していてもよい。この場合、データ処理部Dpで生成される作業情報は、空港A1の地図上に維持管理に必要な作業を示したマップ形式の情報とすることができる。例えば、このマップ形式の情報では、散水が必要である領域が特定色に色分けして示され、必要な散水量が多い領域は、必要な散水量が少ない領域に比べて濃い色で示される。さらに、このマップ形式の情報では、肥料、殺菌剤、除草剤などの噴霧が必要である領域が特定色に色分けして示され、必要な噴霧量が多い領域は、必要な噴霧量が少ない領域に比べて濃い色で示される。
また、図2Bに示されるコンピュータシステムCsは、上記データベースDb1およびDb2に加えて、芝や草などの植物の生育に関連するデータを格納するデータベースDb3を有していてもよい。この場合、空港の個々の着陸帯での芝や草などの植物の生育に関連するデータを蓄積して、空港の着陸帯の管理維持のための作業を基準化することが可能となる。
図3は、図2Bに示されるコンピュータシステムCsによって実行される処理の一例を示す。
ステップPa:コンピュータシステムCsは、芝や草などの植物が生育している少なくとも1つの領域(例えば、空港A1の着陸帯)上を1以上の車両Vが移動している間に、少なくとも1つの領域の少なくとも1つの地点において1以上の車両に搭載された少なくとも1つのセンサによって検知された芝や草などの植物の生育に関連するデータ(例えば、芝や草などの植物が生育している環境を示す環境データおよび/または芝や草などの植物の生育状態を示す生育状態データ)を取得する。環境データは、例えば、着陸帯を含む芝や草などの植物の生育する領域での土壌水分量を示すデータ、この領域での温度を示すデータ、湿度を示すデータ、風向きを示すデータ、土壌pH値を示すデータの少なくとも1つのデータを含む。芝や草などの植物の生育状態を示すデータは、例えば、芝や草などの植物のクロロフィル濃度を示すデータを含む。ただし、芝や草などの植物の生育状態を示すデータは、さらに芝や草などの植物の丈を示すデータを含んでいてもよい。1以上の車両に搭載されたセンサによって検知された芝や草などの植物の生育に関連するデータは、1以上の車両から無線で送信され、無線ネットワークを介して、コンピュータシステムCsによって受信されることによって、コンピュータシステムCsによって取得されるようにしてもよい。あるいは、1以上の車両に搭載されたセンサによって検知された芝や草などの植物の生育に関連するデータが1以上の車両内の媒体メモリに格納されている場合には、その媒体メモリをコンピュータシステムCsのスロットに挿入することによって、コンピュータシステムCsによって取得されるようにしてもよい。コンピュータシステムCsが、1以上の車両に搭載された少なくとも1つのセンサによって検知された芝や草などの植物の生育に関連するデータを取得する態様は、任意の態様であり得る。
ステップPb:コンピュータシステムCsは、ステップPaにおいて取得された芝や草などの植物の生育に関連するデータに基づいて、空港A1の着陸帯の維持管理に利用され得る情報を生成する。ここで、空港A1の維持管理に利用され得る情報は、芝や草などの植物の生育に関連するデータそのものであってもよい。あるいは、空港A1の着陸帯の維持管理に利用され得る情報は、空港A1の着陸帯の維持管理に必要な作業を示す作業情報であってもよい。コンピュータシステムCsが、芝や草などの植物の生育に関連するデータに基づいて、空港A1の着陸帯の維持管理に必要な作業を示す作業情報をどのように生成するかの具体例については、図6A、図6Bを参照して後述する。
ステップPc:コンピュータシステムCsは、ステップPbにおいて生成された情報(すなわち、空港A1の着陸帯の維持管理に利用され得る情報)を出力する。ここで、コンピュータシステムCsから出力される情報の形式は、任意の形式であり得る。例えば、コンピュータシステムCsから出力される情報は、紙媒体に印刷されてもよいし、記録メディアに記録されてもよい。この場合には、空港A1の着陸帯の維持管理に利用され得る情報が、紙媒体もしくは記録メディアの形式で空港A1(例えば、空港A1の管理者)に提供され得る。あるいは、コンピュータシステムCsから出力される情報は、コンピュータシステムCsから無線または有線のネットワークを介して空港A1の管理者の端末装置に送信される形式で空港A1(例えば、空港A1の管理者)に提供されてもよい。
図4は、上述した空港の維持管理サービスを提供する方法の基本構成を説明する図である。
ステップS1:芝や草などの植物の生育に関連するデータ(例えば、芝や草などの植物が生育する環境を示す環境データおよび/または芝や草などの植物の生育状態を示す生育状態データ)を検知する少なくとも1つのセンサを搭載した少なくとも1つの車両を空港施設に提供する。
ステップS2:少なくとも1つの車両が空港施設の少なくとも1つの領域(着陸帯)上を移動している間に、少なくとも1つの領域の少なくとも1つの地点において少なくとも1つのセンサによって検知された芝や草などの植物の生育に関連するデータに基づいて、空港施設の維持管理に利用され得る情報を生成する。
ステップS3:ステップS2において生成された情報を空港施設(例えば、空港施設の管理者)に提供する。
(車両)
図5は、この維持管理システム100における車両Vの構成の一例を示す図である。
車両Vは、車両を移動させるための駆動部20と、駆動部20を制御する駆動制御部30と、芝や草などの植物の生育に関連するデータを検出するセンサ部40と、センサ部40により検出された芝や草などの植物の生育に関連するデータを処理するデータ処理部10とを有する。芝や草などの植物の生育に関連するデータに含まれる環境データ(芝や草などの植物が生育している環境を示すデータ)は、例えば、温度を示すデータ、湿度を示すデータ、風向きを示すデータ、土壌水分量を示すデータ、土壌pH値を示すデータのうちの少なくとも1つである。芝や草などの植物の生育に関連するデータに含まれる生育状態データ(芝や草などの植物の生育状態を示すデータ)は、例えば、芝や草などの植物のクロロフィル濃度を示すデータである。
ここで、芝や草などの植物の生育状態を示すデータは、例えば、クロロフィルセンサを用いて芝や草などの植物に含まれるクロロフィル(葉緑素)の濃度を測定することにより得ることができる。なぜなら、クロロフィルは芝や草などの植物の光合成反応などに重要な役割を果たすものであり、その濃度により生育状態の判断が可能であるからである。
図5では、センサ部40として、温度センサ41、湿度センサ42、風向センサ43、土壌水分量センサ44、土壌pHセンサ45、クロロフィルセンサ46を含むものを示しているが、センサ部40は、これらのセンサ41~46のうちの少なくとも1つを含むものであればよい。特に、空港の芝や草などの植物の生育する領域(例えば着陸帯)の水分量が多くなると、ミミズなどの鳥のエサとなる害虫が多く発生し、これによって飛来する鳥の数も増え、その結果バードストライクの発生確率が高くなるため、着陸帯では、土壌水分量が多い場所を特定し対処することが重要である。従って、空港で使用される車両Vのセンサ部40は、土壌水分量センサ44を含むことが好ましい。また、着陸帯での芝や草などの植物の生育状態を把握するという観点からは、センサ部40がクロロフィルセンサ46を含むことが好ましい。
ここで、データ処理部10は、センサ部40の各センサで検出されたデータを、空港の着陸帯のどの地点で測定されたデータであるかを示す位置データと関連付けて内部のメモリ11に保存するように構成されている。なお、測定地点の位置を示す位置データを取得する方法は特に限定されないが、基準位置から移動した距離と方向とに基づいて算出する方法、衛星測位システムを用いて算出する方法などである。このメモリ11に格納された芝や草などの植物の生育に関連するデータは、無線通信あるいは有線通信により、あるいは可搬式の記録媒体を介して事業所1000の維持管理システム100に提供される。
駆動部20は、エンジン、モーターなどの動力源と、ステアリング機構と、接地面Lと接する車輪、キャタピラ、脚などのうちの1つとを含み、車両Vの左右への転舵、前進・停止・後進の切り換えなどが可能なように構成されている。
駆動制御部30は、決められたコースに沿って車両Vが移動するように駆動部20を制御するものである。例えば、駆動制御部30は、空港の着陸帯に設置された誘導ラインに沿って車両が進むように駆動部を制御するもの、あるいは衛星測位システムを用いて、空港の着陸帯の地図データ上に設定されたコースの通りに着陸帯上を移動するように駆動部を制御するものである。ただし、駆動制御部30の構成はこれらの構成に限定されるものではない。
次に、空港A1の第1着陸帯1aにおいて、車両Vにより、この着陸帯1aの維持管理のために利用される情報を作成する処理を説明する。
まず、空港A1の第1滑走路1およびその周辺の構成を簡単に説明する。
(空港A1の第1滑走路1)
図6Aおよび図6Bは、空港A1の第1滑走路1およびその周辺の構成の一例を示す平面図および斜視図である。
第1滑走路1の両横および両端には、第1の滑走路1を囲むように第1着陸帯1aが設けられている。また、第1滑走路1に沿って、第1滑走路1と第1エプロン1b(図2C参照)とをつなぐ誘導路1cが設けられている。
次に、第1着陸帯1aの芝や草などの植物の維持管理のために利用される情報を作成する手順を説明する。
図1Bに示すように、この空港A1は、近隣の空港A2~A3とともに、事業所1000により維持管理サービスが提供される単位であるユニットU1を形成している。
維持管理サービスがユニットU1の空港A1~A3に対して提供される際、事業所1000から空港A1に1以上の車両Vが投入される。ここでは、空港A1の第1着陸帯1aには、2台の車両Vが投入され、図6Bに示すように、1つの車両Vは、第1着陸帯1aにおける第1滑走路1の一端(紙面手前左側)に近接する検出開始ポイントSp1に配置され、もう1つの車両Vが第1着陸帯1aにおける第1滑走路1の他端(紙面奥手右側)に近接する検出開始ポイントSp2に配置されるものとする。ここでは、各車両Vのセンサ41~46が温度データ、湿度データ、風向きデータ、土壌水分量データ、土壌pHデータ、クロロフィル濃度を検出する場合について説明する。
検出開始ポイントSp1に配置された車両Vは、経路P1に沿って移動し、この経路P1に沿った複数の位置で、それぞれのセンサ41~46が温度データ、湿度データ、風向きデータ、土壌水分量データ、土壌pHデータ、クロロフィル濃度を検出する。検出されたデータは、データ処理部10で、検出位置を示す位置データに関連付けられて内部のメモリ11に格納される。検出開始ポイントSp2から出発した車両Vは経路P2に沿って移動し、経路P2に沿った複数の位置で、それぞれのセンサ41~46が温度データ、湿度データ、風向きデータ、土壌水分量データ、土壌pHデータ、クロロフィル濃度を検出する。検出したデータは、データ処理部10で、検出位置を示す位置データに関連付けられて内部のメモリ11に格納される。ここで、位置データは、空港A1の基準位置に対する位置を示すデータであっても、衛星測位システムによる緯度と経度の情報により示される位置データであってもよい。さらに、衛星測位システムによる緯度と経度の情報に基づいて、空港A1の地図上に示された位置を示す位置データでもよい。
このようにして第1着陸帯1aの芝や草などの植物の生育に関連するデータが2台の車両Vにより検出されると、第2着陸帯2aについても同様に芝や草などの植物の生育に関連するデータが検出されてデータ処理部10のメモリ11に格納される。
このような空港での芝や草などの植物の生育に関連するデータの検出処理は、ユニットU1内の3つの空港A1~A3において並行して行われ、処理終了後には、ユニットU1内の3つの空港A1~A3からはほぼ同時に車両Vが事業所1000に戻される。
事業所1000に回収された複数の車両Vのデータ処理部10のメモリ11に格納されている芝や草などの植物の生育に関連するデータは、図2Aに示す維持管理システム100のコンピュータシステムCsのデータ処理部Dp(図2B)に渡される。なお、車両のデータ処理部10からコンピュータシステムCsのデータ処理部Dpへのデータの受け渡しは、記録媒体を介して行ってもよいが、有線LANや無線LANなどのネットワークを介して行ってもよい。さらには、事業所1000に設けられている維持管理システム100を無線通信部を含む構成とし、かつ車両Vを無線通信装置を搭載した構成とし、車両Vのデータ処理部10で位置データと関連付けられた芝や草などの植物の生育に関連するデータを無線通信装置により、事業所1000に設けられている維持管理システム100で受信してコンピュータシステムCsに出力するようにしてもよい。
芝や草などの植物の生育に関連するデータがコンピュータシステムCsのデータ処理部Dpに提供されると、データ処理部Dpは、データベースDb1の基準データを参照して芝や草などの植物の生育に関連するデータに基づいてユニットU1の各空港A1~A3の着陸帯の維持管理に必要な作業を示す作業情報を作成する。この作業情報は、事業所1000からユニットU1の各空港A1~A3に提供される。
この作業情報は、例えば、第1着陸帯1aなどの作業エリアで必要となる作業を示す。この作業情報は、例えば、第1着陸帯1aの状態を示すデータから得られた情報であってもよい。この作業情報は、例えば、その後の作業計画や空港施設の対策等に反映される情報である。なお、第1着陸帯1aの状態を示すデータは第1着陸帯1aの任意の測定ポイントで測定されたものである。このような作業情報として、空港A1には空港A1の第1着陸帯1aおよび第2着陸帯2aの芝や草などの植物の維持管理に必要な作業情報が提供される。また、空港A2および空港A3に対しても空港A1と同様にそれぞれの着陸帯の芝や草などの植物の維持管理に必要な作業情報が提供される。
さらに、作業情報は、車両Vで芝や草などの植物の生育に関連するデータの他に空港施設の維持状態を表すデータとしてどのようなデータを検出するかによって、鳥の飛来や枯葉除去などを指示するものとすることができる。さらには、作業情報は、着陸帯の芝や草などの植物の色付け作業を指示したりすることもできる。色付け(着色)には、芝や草などの植物の生育に関連するデータに含まれる芝や草などの植物の生育状態を示すデータにより芝や草などの植物の生育状態を判定し、その判断結果に基づいて、ホタテの貝殻を粉砕したパウダーに色づけしたものを散布する方法を用いることができる。また、芝や草などの植物に着色する着色剤としては、緑色で、航空機の離陸あるいは着陸により空気中に舞い上がった埃あるいは塵(例えば粉塵)を取る粘着性を有するものが望ましい。これにより、アスファルトの滑走路と緑地帯の着陸帯との境界が鮮明となり、粉塵などの舞い上がりが軽減され、その結果、航空機の運行の安全性向上が見込まれる。また、着色剤は、このような粘着性を有しないものでもよい。また、着色剤は、この粘着性に加えてあるいはこの粘着性に代えて、非常時の火災等を考慮した準不燃性、および芝や草などの植物の光合成を促進する特性の少なくとも一方を有していてもよい。例えば、植物の光合成を促進する特性は着色剤の色によって着色剤に持たせることができる。このような光合成の促進により、芝や草などの植物が生育する領域の地中温度を着色前に比べて高めることができる。また、このような着色前に比べて地中温度が温かくなるという着色剤の特性を生かし、ある一定の降雪量であれば融雪効果が得られるようにしてもよい。
また、冬季に芝や草などの植物が枯れる冬枯れに対する色付け作業の指示は季節の情報に基づいて行うこともできる。
季節の情報は、コンピュータシステムCsの時計機能から得ることができる。芝や草などの植物の色目は、イメージセンサなどにより判定可能である。従って、冬枯れした芝や草などの植物を近似色(緑色)に色付けする作業を指示する情報を、センサの出力に基づいて作成することは可能である。
その後は、事業所1000でのスケジュール情報に従って、事業者がユニットU1の各空港A1~A3から回収した複数の車両を、ユニットU2の各空港A4~A5に投入すると、ユニットU1の各空港A1~A3で行ったように、ユニットU2の各空港A4~A5において車両Vにより芝や草などの植物の生育に関連するデータデータの検出が行われる。なお、事業所1000でのスケジュール情報は、地域や季節等を考慮した車両の巡回作業計画であり、年間を通じてどの地域の空港にどの程度の頻度で空港施設の維持管理サービスを提供するかを示す計画である。その後、車両Vが事業所1000に回収される。事業所1000に回収された車両Vのデータ処理部10のメモリ11に格納されている芝や草などの植物の生育に関連するデータが事業所1000に設置されている維持管理システム100のコンピュータシステムCsに提供されると、コンピュータシステムCsのデータ処理部Dpは、ユニットU2の各空港A4~A5の維持管理に必要な作業を示す作業情報を作成する。
この作業情報は、事業所1000から各空港A4~A5に提供される。
このように本実施形態1では、芝や草などの植物の生育に関連するデータ(例えば、環境データおよび/または生育状態データ)を検知するセンサを搭載した車両Vを空港A1~A5に提供し、この車両Vのセンサを使って検知したデータに基づいて各空港A1~A5の着陸帯の維持管理に必要な作業を示す作業情報を作成し、作成した作業情報を各空港A1~A5に提供するので、各空港A1~A5では、作業基準の明確化と共通化が図れ、このため、知識と経験の少ない作業者でもあるいは無人の作業車両でも作業情報に基づいて空港施設の着陸帯の維持管理に必要な作業を効率よく行うことが可能となる。その結果、空港施設の維持管理のための必要経費を削減することができる。
特に、検出した環境データおよび/または生育状態データに基づいて、経験と知識を有する作業者の判断基準を示す基準データを参照してコンピュータシステムCsにより、空港の着陸帯の維持管理に必要な作業を判断するので、経験と知識の有する作業者の人不足を解消することができる。
また、空港施設には、航空機の離発着が多く夜間しか作業を行うことができない施設、航空機の離発着が少なく運航状況を確認しながら昼中に作業を行える施設、近隣への作業の騒音等の問題で夜間に作業が行えない施設など様々な状況の施設があるので、空港施設の維持管理に必要な作業を、各空港の状況を考慮した作業計画に基づき、無人作業車両により行うことで、効率の悪い作業を回避できる。さらには、空港施設で環境データおよび/または生育状態データを蓄積できることから、芝や草などの植物の生育する領域である着陸帯などの空港施設の維持管理に必要な作業の基準化を図ることもできる。
さらに、空港施設の維持管理に必要な作業を示す作業情報を作成するシステムは、空港施設の維持管理サービスを提供する事業所1000によって提供されるので、作業情報の作成に必要な機材を空港で購入する必要がなくなる。その結果、機器メンテナンスやその燃料費が軽減され、無人化による人員削減を達成できる。
なお、実施形態1では、空港施設内の芝や草などの植物の生育に関連するデータを検知するセンサを搭載した車両Vを空港A1~A5に提供し、この車両Vを使って検知したデータから得られた、各空港A1~A5の着陸帯の維持管理に必要な作業を示す作業情報を空港A1~A5に提供するところまでのサービスを事業所1000が提供する場合について説明したが、事業所1000は、作業情報が示す、空港施設の維持管理に必要な作業を行うサービスをも空港に提供してもよい。
この場合、空港には、作業情報に基づいて作業する無人車両なども事業所1000から提供されるので、空港では、着陸帯の維持作業用の最新の汎用機械は購入する必要がなくなる。さらには、無人車両による作業では、天候に左右されることが軽減される。
以下、このように事業所から空港に提供される空港施設の維持管理サービスが、空港施設の維持管理に必要な作業を示す作業情報を空港に提供するサービスだけでなく、この作業情報に基づいて空港施設の維持管理に必要な作業を行うサービスも含む例を実施形態2として説明する。
(実施形態2)
図7A~図7Cを参照して、本発明の実施形態2による維持管理サービスを提供する方法を説明する。図7Aは、維持管理サービスを提供する事業所が受け持つ複数の空港A1~A5を示し、図7Bは、維持管理サービスを提供する事業所が受け持つ複数の空港をグループ分けした状態を示し、図7Cは、事業所の維持管理システムを示している。なお、図7Bに示される例では、各空港A1~A5の滑走路が太線で示されている。
この実施形態2においても、空港の維持管理サービスは、図7Aおよび図7Bに示すように、実施形態1と同様に、1つの事業所2000が受け持つ複数の空港A1~A5を2つのユニットU1およびU2にグループ分けしてグループ毎にまとめて行われる。
この実施形態2は、事業所2000から空港に提供される維持管理サービスに、空港の維持管理に必要な作業を示す作業情報を空港に提供するサービスだけでなく、この作業情報に基づいて空港の維持管理に必要な作業を行うサービスも含まれている点で実施形態1と異なる。
従って、実施形態2では、事業所2000に設けられている維持管理システム200は、図7Cに示すように、実施形態1の維持管理システム100に含まれる複数の車両V、つまり芝や草などの植物の生育に関連するデータを検知する少なくとも1つのセンサを搭載した車両(以下、検知車両ともいう。)Vに加えて、空港内で維持管理に必要な作業を実行する作業装置を搭載した少なくとも1つの車両(以下、作業車両ともいう。)Vaを含んでいる。さらに、維持管理システム200のコンピュータシステムCsaは、実施形態1のコンピュータシステムCsの機能に加えて検知車両のセンサで検知されたデータから作成した、空港施設の維持管理に必要な作業を示す作業情報を作業車両Vaに提供可能な構成となっている。実施形態2の維持管理システム200におけるその他の構成は実施形態1のものと同一である。
(作業車両Va)
図8は、本発明の実施形態2による維持管理システム200で用いる作業車両Vaの構成を示す図である。
作業車両Vaは、図5に示す検知車両Vのようにセンサ部40を有するものではなく、駆動部20および駆動制御部30に加えて、散水、草刈り、肥料散布などの作業を行う作業装置50、および検知車両Vのデータ処理部10に代わる作業制御部10aを有するものである。ここで作業制御部10aは、メモリ11aを有し、このメモリ11aに格納された作業情報に基づいて作業装置50を制御するように構成されている。また、作業制御部10aは、作業手順に合わせて駆動制御部30を制御して作業車両Vaの位置を制御するように構成されている。
次に、この実施形態2の維持管理システム200により提供される維持管理サービスを、空港A1を例に挙げて具体的に説明する。
まず、実施形態1と同様に、事業所2000から維持管理システム200の検知車両Vが空港A1に投入されると、検知車両Vにより実施形態1と同様に芝や草などの植物の生育に関連するデータが検知される。検知されたデータ(以下、検知データともいう。)は、検知車両Vにより事業所2000に持ち帰られて事業所2000の維持管理システム200のコンピュータシステムCsaに提供される。なお、検知データは、無線通信などによりリアルタイムで事業所2000の維持管理システム200に送信されるようにしてもよい。
維持管理システム200のコンピュータシステムCsaが検知データを取得すると、コンピュータシステムCsaは、検知データをデータベース(図示せず)に格納するとともに、検知データから空港施設の維持管理に必要な作業を示す作業情報を作成し、空港A1に投入する作業車両Vaに作業情報を提供する。その後、作業を実行する維持管理サービスがユニットU1の空港A1~A3に対して提供される。例えば、図9A、図9Bに示すように、事業所2000から空港A1に複数の作業車両Vaが投入される。
ここでは、第1着陸帯1aには、2台の作業車両Vaが投入され、1つの作業車両Vaは、図9A、図9Bに示すように、第1着陸帯1aにおける第1滑走路1の一端(紙面手前左側)に近接する作業開始ポイント(例えば、図6Bに示す検出開始ポイントと同じ)Sp1に配置され、もう1つの作業車両Vaが第1着陸帯1aにおける第1滑走路1の他端(紙面奥手右側)に近接する作業開始ポイント(例えば、図6Bに示す検出開始ポイントと同じ)Sp2に配置される。
検出開始ポイントSp1に配置された作業車両Vaは、経路P1に沿って移動し、この経路に沿った複数の位置で、作業情報に基づいて必要な作業を実行する。同様に、検出開始ポイントSp2に配置された作業車両Vaは、経路P2に沿って移動し、この経路に沿った複数の位置で、作業情報に基づいて必要な作業を実行する。
このようにして第1着陸帯1aで必要な作業が2台の作業車両Vaにより実行されると、同様に残りの領域である第2着陸帯2aでも必要な作業が実行される。
このような空港に対する芝や草などの植物の生育に関連するデータの検出処理および管理作業の実行は、ユニットU1内の3つの空港A1~A3において並行して行われ、終了後には、ユニットU1内の3つの空港A1~A3からはほぼ同時に作業車両Vaが事業所2000に戻される。なお、このように各空港に提供した作業車両Vaを同時に回収するには、例えば、1つのユニットU1内の各空港に提供される作業車両Vaの台数を、空港の着陸帯を含む芝や草などの植物の生育する領域の広さなどに応じて、各空港ですべての作業に要する時間が同じ程度となるように設定しておく必要がある。
その後はスケジュール管理に従って他のユニットU2の空港A4~A5に、空港施設の維持管理サービスが同様に提供されることとなる。
このように本実施形態2では、空港施設内の芝や草などの植物の生育に関連するデータを検知する少なくとも1つのセンサを搭載した検知車両Vを空港A1~A5に提供し、この検知車両Vを使って検知したデータに基づいて各空港A1~A5の維持管理に必要な作業を示す作業情報を作成し、作成した作業情報に基づいて、作業車両Vaにより各空港A1~A5の維持管理に必要な作業を実行するので、各空港A11~A5では、空港施設の維持管理に必要な作業を無人の作業車両で知識と経験のある作業者と同様に行うことができる。その結果、空港施設の維持管理のための必要経費を削減することができる。
なお、実施形態2で説明した作業車両Vaは、図16Aに示すように、作業装置50およびこれを制御する作業制御部10dを搭載した被牽引車両Aに、牽引車両V0を連結器80により連結した構成としてもよい。ここで作業制御部10dは、メモリ11dを有し、このメモリ11dに格納された作業情報に基づいて作業装置50を制御するように構成されている。また、作業制御部10dは、作業手順に合わせて牽引車両V0の駆動制御部30を制御して被牽引車両Aの位置を制御するように構成されている。
また、上記実施形態2では、維持管理システム200は、センサを搭載した少なくとも1つの検知車両Vと、作業装置を搭載した少なくとも1つの作業車両Vaとを含むものを示したが、実施形態2の維持管理システム200は、これらの検知車両Vおよび作業車両Vaに代えて、センサと作業装置の両方を搭載した少なくとも1つの検知作業車両を含むものでもよい。以下このような検知作業車両を用いて空港施設の維持管理サービスを提供する方法を実施形態3として説明する。
(実施形態3)
図10A~図10Cを参照して、本発明の実施形態3による維持管理サービスを提供する方法を説明する。
図10Aは、維持管理サービスを提供する事業所が受け持つ複数の空港A1~A5を示し、図10Bは、維持管理サービスを提供する事業所が受け持つ複数の空港施設をグループ分けした状態を示し、図10Cは、事業所の維持管理システムを示している。
この実施形態3においても、空港の維持管理サービスは、図10Aおよび図10Bに示すように、実施形態1および2と同様に、1つの事業所3000が受け持つ複数の空港A1~A5を2つのユニットU1およびU2にグループ分けしてグループ毎にまとめて行われる。
この実施形態3では、事業所3000に設けられている維持管理システム300は、図10Cに示すように、実施形態1の維持管理システム100に含まれる複数の車両Vに代えて、芝や草などの植物の生育に関連するデータが検知可能であり、かつ検知したデータに基づいた空港施設管理のための作業を実行可能な検知作業車両Vbを含んでいる。ここでは、維持管理システム300のコンピュータシステムCsbは、実施形態2のコンピュータシステムCsaと同様に、各検知作業車両Vbで検知されたデータを取得し、取得したデータから空港施設の維持管理に必要な作業を示す作業情報を作成し、作業情報を各検知作業車両Vbに提供するように構成されている。また、コンピュータシステムCsbは、検知作業車両Vbで検知したデータを取得して保存するように構成されている。
(検知作業車両Vb)
検知作業車両Vbは、図11に示すように、実施形態2の作業車両Vaの構成に加えて、複数のセンサ41~46を有するセンサ部40を備え、さらに、実施形態2の作業制御部10aとは異なる作業制御部10bを備えている。この作業制御部10bは、実施形態2の作業制御部10aと同様に駆動制御部30を制御するとともに、コンピュータシステムCsbから提供された作業情報をメモリ11bに格納し、作業情報に基づいて作業装置50に空港施設の維持管理に必要な作業を指示するように構成されている。作業制御部10bのメモリ11bには、複数のセンサ41~46で検知されたデータも記録される。検知作業車両Vbが事業所3000に戻ったときには、メモリ11bに格納されている環境データおよび生育状態データの少なくとも一方が、維持管理システム300のコンピュータシステムCsbに提供されて蓄積されるようになっている。
次に、この実施形態3の維持管理システム300により提供される維持管理サービスを、空港A1を例に挙げて具体的に説明する。
まず、実施形態2と同様に、事業所3000から維持管理システム300の検知作業車両Vbが空港A1に投入されると、検知作業車両Vbにより実施形態1と同様に芝や草などの植物の生育に関連するデータが検知される。検知されたデータ(以下、検知データともいう。)は、検知作業車両Vbにより事業所3000に持ち帰られて事業所3000の維持管理システム300のコンピュータシステムCsbに提供される。なお、検知データは、無線通信などによりリアルタイムで事業所3000の維持管理システム300に送信されるようにしてもよい。
維持管理システム300のコンピュータシステムCsbが検知データを取得すると、コンピュータシステムCsbは、検知データをデータベース(図示せず)に格納するとともに、実施形態2のコンピュータシステムCsaと同様に、検知データから空港施設の維持管理に必要な作業を示す作業情報を作成し、空港A1に投入する検知作業車両Vbに作業情報を提供する。その後、作業を実行する維持管理サービスがユニットU1の空港A1~A3に対して提供される際、図12Aおよび図12Bに示すように、事業所3000から空港A1に複数の検知作業車両Vbが投入される。
ここでは、第1着陸帯1aには、2台の検知作業車両Vbが投入され、1つの検知作業車両Vbは、図12Bに示すように、第1着陸帯1aにおける第1滑走路1の一端(紙面手前左側)に近接する作業開始ポイント(例えば、図6Bに示す検出開始ポイントと同じ)Sp1に配置され、もう1つの検知作業車両Vbが第1着陸帯1aにおける第1滑走路1の他端(紙面奥手右側)に近接する作業開始ポイント(例えば、図6Bに示す検出開始ポイントと同じ)Sp2に配置される。
作業開始ポイントSp1に配置された検知作業車両Vbは、経路P1に沿って移動し、この経路に沿った複数の位置で、作業情報に基づいて必要な作業を実行する。同様に、作業開始ポイントSp2に配置された検知作業車両Vbは、経路P2に沿って移動し、この経路に沿った複数の位置で、作業情報に基づいて必要な作業を実行する。
このようにして第1着陸帯1aで必要な作業が2台の検知作業車両Vbにより実行されると、同様に残りの領域である第2着陸帯2aでも必要な作業が実行される。
なお、空港施設に着陸帯が複数ある場合は、複数の着陸帯でのデータ検知および作業実施を並行して行うようにしてもよい。
このような空港に対する芝や草などの植物の生育に関連するデータの検出処理および維持管理作業の実行は、ユニットU1内の3つの空港A1~A3において並行して行われ、終了後には、ユニットU1内の3つの空港A1~A3からはほぼ同時に検知作業車両Vbが事業所3000に戻される。なお、このように各空港に提供した検知作業車両Vbを同時に回収するには、例えば、1つのユニットU1内の各空港に提供される検知作業車両Vbの台数を、空港の着陸帯を含む芝や草などの植物の生育する領域の広さなどに応じて、各空港での作業に要する時間が同じ程度となるように設定しておく必要がある。
その後はスケジュール管理に従って他のユニットU2の空港A4~A5に、空港施設の維持管理サービスが同様に提供されることとなる。
このように本実施形態3では、実施形態2の検知車両Vおよび作業車両Vaに代えて、芝や草などの植物の生育に関連するデータを検知するセンサ部および空港施設の維持管理に必要な作業を行う作業装置を搭載した検知作業車両Vbを用いるので、検知作業車両Vbは着陸帯での芝や草などの植物の生育に関連するデータの検出にも、着陸帯の維持管理のための作業にも用いることができ、事業所での車両の利用効率を高めることができる。
なお、実施形態3では、維持管理システム300として、検知作業車両Vbのみを含むものを示したが、維持管理システム300は、検知作業車両Vbに加えて、実施形態2の検知車両Vおよび作業車両Vaを含むものでもよい。この場合、空港から要求されるサービスに応じて空港施設に提供する車両を選択することができる。例えば、空港の維持管理に必要な作業を示す作業情報のみを提供するサービスが要求される場合は、検知車両Vあるいは検知作業車両Vbを空港施設に提供する。あるいはこのような作業情報の提供とともに実際の空港施設の維持管理のための作業も提供するサービスが要求される場合は、検知車両Vおよび作業車両Vaの両方、あるいは検知作業車両Vbを空港施設に提供する。さらに、空港施設の維持管理のための作業が急を要する場合は、検知作業車両Vbを空港施設に提供する。
また、上記実施形態3では、着陸帯の維持管理のために着陸帯上を走らせる車両には、センサ部40および作業装置50の両方を搭載した検知作業車両Vbを用い、検知作業車両Vbによる作業の際に必要となる作業情報を、維持管理システムのコンピュータシステムで、検知作業車両Vbから取得したデータに基づいて作成する例について説明したが、作業情報は、検知作業車両Vbのセンサ部で検出したデータに基づいて検知作業車両Vbの内部で作成してもよい。
以下、このような作業情報を検知作業車両の内部で作成し、検知作業車両による作業に利用する例を実施形態4として説明する。
(実施形態4)
図13A~図13Cを参照して、本発明の実施形態4による維持管理サービスを提供する方法を説明する。
図13Aは、維持管理サービスを提供する事業所が受け持つ複数の空港A1~A5を示し、図13Bは、維持管理サービスを提供する事業所が受け持つ複数の空港をグループ分けした状態を示し、図13Cは、事業所の維持管理システムを示している。
この実施形態4においても、空港への維持管理サービスの提供は、図13Aおよび図13Bに示すように、実施形態1~3と同様に、1つの事業所4000が受け持つ複数の空港A1~A5を2つのユニットU1およびU2にグループ分けしてグループ毎にまとめて行われる。
この実施形態4では、事業所4000に設けられている維持管理システム400は、図13Cに示すように、実施形態1の維持管理システム100に含まれる複数の車両Vに代えて、芝や草などの植物の生育に関連するデータが検知可能であり、かつ検知したデータに基づいた空港施設管理のための作業を実行可能な検知作業車両Vcを含んでいる。ここでは、維持管理システム400のコンピュータシステムCscは、検知作業車両Vcで検知したデータを取得して保存するように構成されている。
(検知作業車両Vc)
検知作業車両Vcは、図14に示すように、実施形態3の検知作業車両Vbの作業制御部10bに代わる作業制御部10cを備え、この作業制御部10cにより、検知作業車両Vcのセンサ部で検出したデータに基づいて、着陸帯の維持管理に必要な作業を示す作業情報が作成されるように構成されている。この作業制御部10cのメモリ11cには、基準データが格納されており、この作業制御部10cで、センサからのデータに基づいて空港の維持管理に必要な作業を判断する処理は、実施形態1のコンピュータシステムCsのデータ処理部Dpと同様に、センサからのデータに基づいて、メモリ11cに格納されている基準データを参照して行われ、空港の維持管理に必要であると判断された作業を示す作業情報は、作業制御部10cのメモリ11bに格納される。
また、作業制御部10cのメモリ11cには、複数のセンサ41~46で検知されたデータも記録される。検知作業車両Vcが事業所4000に戻ったときには、メモリ11cに格納されているセンサで検知されたデータおよび作業情報が、維持管理システム400のコンピュータシステムCscに提供されて蓄積されるようになっている。従って、この実施形態4のコンピュータシステムCscには、センサからのデータに基づいて基準データを参照して、空港の維持管理に必要な作業を示す作業情報を生成する機能は不要である。ただし、コンピュータシステムCscは、検知作業車両Vcから取得して蓄積している、検知作業車両Vcのセンサ部で検出したデータに基づいて、基準データを参照して、空港の維持管理に必要な作業を示す作業情報を生成する機能を有していてもよい。
なお、この検知作業車両Vcにおける駆動部20、駆動制御部30、センサ部40、および作業装置50は、実施形態3の検知作業車両Vbのものと同一である。
次に、この実施形態4の維持管理システム400により提供される維持管理サービスを、空港A1を例に挙げて具体的に説明する。
図15A、図15Bに示すように、事業所4000から維持管理システム400の検知作業車両Vcが空港A1に投入される。ここでは、空港A1の第1着陸帯1aに2台の検知作業車両Vcが投入され、1つの検知作業車両Vcは、図15Bに示すように、第1着陸帯1aにおける第1滑走路1の一端(紙面手前左側)に近接する作業開始ポイントSp1に配置され、もう1つの検知作業車両Vcが第1着陸帯1aにおける第1滑走路1の他端(紙面奥手右側)に近接する作業開始ポイントSp2に配置される。
それぞれの作業開始ポイントSp1、Sp2に配置された検知作業車両Vcは、経路P1、P2に沿って移動し、これらの経路に沿った複数の位置で、芝や草などの植物の生育に関連するデータの検出と、検出したデータから得られる作業情報に基づいた作業とを行う。
具体的には、検知作業車両Vcが第1着陸帯1a上を移動している間に、センサ部40が第1着陸帯1aの少なくとも1つの地点で芝や草などの植物の生育に関連するデータを検出し、作業制御部10cが、検出されたデータに基づいて基準データを参照して、空港の維持管理に必要な作業を示す作業情報を生成し、作業情報を作業装置50に提供する。作業装置50は、提供された作業情報に基づいて空港の維持管理に必要な作業(散水や肥料散布など)を行う。
このようにして第1着陸帯1aで、芝や草などの植物の生育に関連するデータの検知、検知されたデータに基づいた作業情報の作成、および作業情報が示す作業が2台の検知作業車両Vcにより実行されると、その後、同様に、残りの領域である第2着陸帯2aでも芝や草などの植物の生育に関連するデータが検出され、検出されたデータから空港の維持管理に必要な作業を示す作業情報が生成され、作業情報が示す作業が実行される。
このような空港に対する維持管理サービスの提供は、ユニットU1内の3つの空港A1~A3において並行して行われ、終了後には、実施形態3と同様に、ユニットU1内の3つの空港A1~A3からはほぼ同時に、各空港への維持管理サービスの提供に用いた検知作業車両Vcが事業所4000に戻される。
その後はスケジュール管理に従って他のユニットU2の空港A4~A5に、空港施設の維持管理サービスが同様に提供されることとなる。
このように本実施形態4では、空港施設内の着陸帯の芝や草などの植物の生育に関連するデータを検知するセンサ部40および空港施設の維持管理作業を行う作業装置50を搭載した検知作業車両Vcを空港A1~A5に提供し、この検知作業車両Vcにより、芝や草などの植物の生育に関連するデータを検知し、検知されたデータから作業情報を作成し、作業情報に基づいて維持管理作業を行うので、空港の維持管理のための作業を作業者によらないで迅速に行うことができる。
なお、実施形態4では、維持管理システム400として、検知作業車両Vcのみを含むものを示したが、維持管理システム400は、検知作業車両Vcに加えて、実施形態2の検知車両Vおよび作業車両Va、さらに実施形態3の検知作業車両Vbを含むものでもよい。
また、上記実施形態4では、検知作業車両Vcの作業制御部10は、作業装置50により実行された作業を示す作業データを作成し、メモリ11cに記録するようにしてもよい。この場合、検知作業車両Vcが事業所4000に戻ったときには、メモリ11cに格納されている作業データが維持管理システム400のコンピュータシステムCscに提供されて蓄積されるようにすることにより、コンピュータシステムCscから、作業データに基づいて作業報告を生成し、作業報告を出力することも可能となる。
また、実施形態3で示した検知作業車両Vbあるいは実施形態4で示した検知作業車両Vcは、図16Bに示すように、実施形態1で示したセンサ部40を搭載した車両Vに、作業装置50およびこれを制御する作業制御部10eを搭載した被牽引車両Aを連結器80により連結した構成としてもよい。ここで作業制御部10eは、メモリ11eを有し、このメモリ11eに格納された作業情報に基づいて作業装置50を制御するように構成されている。また、作業制御部10eは、作業手順に合わせて車両Vの駆動制御部30を制御して被牽引車両Aの位置を制御するように構成されている。
ここで、被牽引車両Aには、肥料、殺菌剤、除草剤などを自動で噴霧する作業装置を搭載することができることは言うまでもない。
また、実施形態1から実施形態4の維持管理システムに設けられている車両は芝や草などの植物を刈り取る刈り取り手段を搭載したものでもよく、この場合は、草刈作業を、草刈作業以外のそれぞれの車両での作業(データ検知、空港施設の維持管理のための作業)と並行して行うことができる。
また、上記実施形態1から実施形態4では、維持管理システムは、芝や草などの植物の生育に関連するデータの検知を着陸帯で行い、検知したデータに基づいて着陸帯の維持管理に必要な作業を示す作業情報を作成する場合について説明したが、維持管理システムは、芝や草などの植物の生育に関連するデータの検知を、空港内の着陸帯以外の芝や草などの植物の生育する領域、例えば空港内の公園内、あるいは誘導路やエプロンの周辺の芝や草などの植物の生育する領域などで行い、これらの領域の維持管理に必要な作業を示す作業情報を作成してもよい。
さらに、実施形態2~4では、維持管理システムが、芝や草などの植物の生育に関連するデータから得られた作業情報に基づいた作業を着陸帯で行う場合について説明したが、維持管理システムは、作業情報に基づいた作業を、空港内の着陸帯以外の芝や草などの植物の生育する領域、例えば空港内の公園内、あるいは誘導路やエプロンの周辺の芝や草などの植物の生育する領域などで行ってもよい。
さらに上記実施形態では、空港内で生育する芝や草などの植物の維持管理を行うための作業は、芝や草などの植物の生育に関連するデータに基づいて行われるが、着陸帯の芝や草などの植物の枯れに対する着陸帯の機能保全作業は、芝や草などの植物の生育に関連するデータによらずに季節に合わせて行ってもよい。
以下、空港施設の維持管理サービスとして着陸帯の芝や草などの植物の枯れに対する芝や草などの植物の着色作業を季節に合わせて行う方法を実施形態5として説明する。
(実施形態5)
図17A~図17Cを参照して、本発明の実施形態5による維持管理サービスを提供する方法を説明する。
図17Aは、維持管理サービスを提供する事業所が受け持つ複数の空港A1~A5を示し、図17Bは、維持管理サービスを提供する事業所が受け持つ複数の空港施設をグループ分けした状態を示し、図17Cは、事業所の維持管理システムを示している。
この実施形態5においても、空港への維持管理サービスの提供は、図17Aおよび図17Bに示すように、実施形態1~4と同様に、1つの事業所5000が受け持つ複数の空港A1~A5を2つのユニットU1およびU2にグループ分けしてグループ毎にまとめて行われる。
この実施形態5では、事業所5000に設けられている維持管理システム500は、図17Cに示すように、実施形態1の維持管理システム100に含まれる複数の車両Vに代えて、芝や草などの植物の生育する領域上を移動しながら芝や草などの植物を着色することが可能な構成の作業車両Vfを含んでいる。ここでは、維持管理システム500のコンピュータシステムCsfは、作業車両Vfにより実行された作業を示す作業データを取得し、取得された作業データに基づいて作業報告を作成して出力するように構成されている。
(作業車両Vf)
作業車両Vfは、図18に示すように、実施形態2の作業車両Vaの作業制御部10aに代わる作業制御部10fを備え、さらに、実施形態2の作業車両Vaの作業装置50として、芝や草などの植物を着色する着色手段50aを備えたものである。着色手段50aは、作業車両Vfが着陸帯上を移動している間に、着陸帯上の芝や草などの植物を着色するように構成されている。作業制御部10fのメモリ11fには、作業車両Vfを所定の経路に沿って移動させるための経路情報が記録されている。作業制御部10fは、駆動制御部30が駆動部20を駆動している状態で着色手段50aによる芝や草などの植物の着色が行われるように駆動制御部30および着色手段50aを制御するように構成されている。
なお、駆動部20および駆動制御部30は、実施形態2の作業車両Vaのものと同一である。
次に、この実施形態5の維持管理システム500により提供される維持管理サービスを、空港A1を例に挙げて具体的に説明する。
図19Aおよび図19Bに示すように、事業所5000から維持管理システム500の作業車両Vfが空港A1に投入される。ここでは、空港A1の第1着陸帯1aに2台の検知作業車両Vfが投入され、1つの作業車両Vfは、図15Bに示すように、第1着陸帯1aにおける第1滑走路1の一端(紙面手前左側)に近接する作業開始ポイントSp1に配置され、もう1つの作業車両Vfが第1着陸帯1aにおける第1滑走路1の他端(紙面奥手右側)に近接する作業開始ポイントSp2に配置される。
それぞれの作業開始ポイントSp1、Sp2に配置された作業車両Vfは、経路P1、P2に沿って着陸帯1aを移動しながら、作業車両Vfの移動経路の芝や草などの植物を着色剤により着色する。芝や草などの植物の着色は、冬枯れによって芝や草などの植物が白くなってから緑色に着色するよりも、まだ芝や草などの植物の緑色が残っている内に(例えば11月頃に)行った方が効率がよい。この着色剤は、緑色で、航空機の離陸または着陸により空気中に舞い上がった埃または塵を取る粘着性を有するものであることが好ましい。このように芝や草などの植物の着色に粘着性を有する着色剤を用いることにより、航空機の離着陸時に舞い上がった埃や塵がエンジンに入ることを妨げることができる。ただし、芝や草などの植物の着色は着色剤を用いた方法に限定されるものではない。
具体的には、作業車両Vfが第1着陸帯1a上を動き始めると、作業制御部10fの制御により、着色手段50aが着陸帯の作業車両Vfが通過している部分の芝や草などの植物を着色剤により緑色に着色する処理を開始する。また、作業車両Vfが第1着陸帯1a上の決められた経路を移動して終点位置で停止すると、作業制御部10fの制御により、着色手段50aが芝や草などの植物を着色剤により緑色に着色する処理を停止する。
このようにして第1着陸帯1aで2台の作業車両Vfにより芝や草などの植物の色付けを実行する作業が完了すると、同様に残りの領域である第2着陸帯2aでも芝や草などの植物の色付け作業が行われる。
このような空港の着陸帯での芝や草などの植物の着色作業の実行は、ユニットU1内の3つの空港A1~A3において並行して行われ、終了後には、実施形態3あるいは実施形態4と同様に、ユニットU1内の3つの空港A1~A3からはほぼ同時に作業車両Vfが事業所5000に戻される。
その後はスケジュール管理に従って他のユニットU2の空港A4~A5に、空港施設の維持管理サービスがユニットU1の空港A1~A3と同様に提供されることとなる。
このように本実施形態5では、芝や草などの植物を緑色に色付けする着色手段50aを搭載した作業車両Vfを空港A1~A5に提供し、空港施設の着陸帯上を移動しながらこの作業車両Vfにより着陸帯の芝や草などの植物を着色するので、着陸帯の芝や草などの植物の冬枯れにより滑走路と着陸帯とのコントラストが低下するのを回避でき、これにより、冬場でも、航空機の安全な運行上重要な役割を担う着陸帯の機能を維持することができ、航空機の安全な運行を確保することができる。
なお、この実施形態5では、着色剤は、航空機の離陸または着陸により空気中に舞い上がった埃または塵を取る粘着性を有するものを示したが、着色剤は、このような粘着性を有しないものでもよい。また、着色剤は、この粘着性に加えてあるいはこの粘着性に代えて、非常時の火災等を考慮した準不燃性、および芝や草などの植物の光合成を促進する特性の少なくとも一方を有していてもよい。例えば、植物の光合成を促進する特性は着色剤の色によって着色剤に持たせることができる。このような光合成の促進により、芝や草などの植物が生育する領域の地中温度を着色前に比べて高めることができる。また、このような着色前に比べて地中温度が温かくなるという着色剤の特性を生かし、ある一定の降雪量であれば融雪効果が得られるようにしてもよい。
また、上記実施形態5では、作業車両Vfは、作業装置として芝や草などの植物を着色する着色手段50aのみを備えたものであるが、この作業車両Vfは、さらに芝や草などの植物を刈り取る刈り取り手段を備えたものでもよい。
図20は、このように着色手段と刈り取り手段とを備えた作業車両Vgを説明するための図である。
この作業車両Vgは、実施形態2の作業車両Vaの作業制御部10aに代わる作業制御部(制御手段)10gを備え、さらに、実施形態2の作業車両Vaの作業装置50として、芝や草などの植物を着色する着色手段50aと、芝や草などの植物を刈り取る刈り取り手段50bとを備えている。
着色手段50aは、実施形態5の作業車両Vfにおけるものと同様、作業車両Vgが着陸帯上を移動している間に、着陸帯上の芝や草などの植物を着色するように構成されている。また、刈り取り手段50bは、作業車両Vgが着陸帯上を移動している間に、着陸帯上の芝や草などの植物を刈り取るように構成されている。
作業制御部10gのメモリ11gには、作業車両Vgを所定の経路に沿って移動させるための経路情報が記録されている。作業制御部10gは、駆動制御部30が駆動部20を駆動している状態で、着色手段50aによる芝や草などの植物の着色および刈り取り手段50bによる草刈りが行われるように駆動制御部30、着色手段50aおよび刈り取り手段50bを制御するように構成されている。
なお、駆動部20および駆動制御部30は、実施形態2の作業車両Vaのものと同一である。
このような構成の作業車両Vgでは、着陸帯で草刈りを行いながら芝や草などの植物に緑色を着色することが可能であり、草刈りにより短くなった芝や草などの植物に効果的に色付けを行うことができる。
なお、図20に示す作業車両Vgでは、作業制御部10gは、着色手段50aによる芝や草などの植物の着色および刈り取り手段50bによる草刈りが行われるように着色手段50aおよび刈り取り手段50bを制御するよう構成されているが、作業制御部10gの構成はこのような構成に限定されない。
例えば、作業制御部10gは、芝や草などの植物が冬枯れとなる前に刈り取り手段50bが芝や草などの植物を刈り取った後に、着色手段50aが芝や草などの植物に対する着色を、1回あるいは数回に分けて行うように、刈り取り手段50bおよび着色手段50aを制御するよう構成してもよい。あるいは、作業制御部10gは、芝や草などの植物が冬枯れとなる前に刈り取り手段50bが芝や草などの植物を刈り取った後に、着色手段50aが芝や草などの植物に対する着色を行い、かつ芝や草などの植物の着色の際に着色剤の濃淡を調整するように、刈り取り手段50bおよび着色手段50aを制御するように構成してもよい。
さらに、上記実施形態5では、維持管理システムは、芝や草などの植物の着色作業を着陸帯で行う場合について説明したが、維持管理システムは、この着色作業を、空港内の着陸帯以外の芝や草などの植物の生育する領域、例えば空港内の公園内、あるいは誘導路やエプロンの周辺の芝や草などの植物の生育する領域などで行ってもよい。
(実施形態1~5の変形例)
さらに、上記各実施形態の車両には、着陸帯に設けられている標識などの施設への衝突回避センサー、夜間作業を想定した照明設備、鳥害対策用のレーザ装置、大音響発生装置などを搭載してもよい。さらに、車両に鳥を感知するセンサーをさらに搭載して、そのセンサーが鳥を検知したことに応答して、鳥害対策用のレーザ装置から出射されたレーザー光を鳥に照射するようにしたり、大音響発生装置によって大音響を発生させて鳥を威嚇するようにしてもよい。例えば、鳥害対策用のレーザ装置は、サーモグラフィー・レーザー光設備であってもよい。さらに、草などの生育が著しい夏季期間には、上述した刈り取り手段を搭載した車両を用いて無人で草刈などの草刈を行う回数を増加させることで、空港施設に飛来する鳥の巣作りを抑制して、バードストライクの低減を図ることができる。なお、無人での草刈の後の刈り取った草の回収は、無人化ロールべーラなどを用いることで効率よく行うことができる。さらに、無人での草刈後に発生するサッチ(草のカス)は、例えば、作業車両に搭載した分解剤を噴霧する作業装置で、分解剤を噴霧することで、草刈作業後の残材量を削減することができる。
さらに、上記各実施形態の事業所が提供する空港施設の維持管理サービスの巡回計画は、地域や季節等を考慮し、年間を通じた計画とすることで、各事業所に設置された維持管理システムに装備されている車両などの稼働効率を高めることができる。
また、草の手入れだけでなく、枯葉の堆積状態、害虫の発生状況なども、空港での維持管理の対象となる。従って、車両に搭載するセンサとして、これらの維持管理対象を検出可能なセンサ、例えばイメージセンサなどを用いることで、空港での草以外のものの維持管理が可能となる。特に、害虫による草の被害は、その大量発生を予測して対処することにより効果的に抑制することができ、将来的には、このような大量発生の兆候を検出可能なセンサの実現により害虫による草の被害をほとんどなくすことも可能となる。
さらに、豪雪地帯の空港施設では、冬季には滑走路や誘導路などの航空機の走行路に積もった雪を除去する除雪作業も必要となり、走行路の積雪状態も空港施設の維持管理の対象となる。
以下、空港施設の維持管理サービスとして、滑走路などの航空機の走行路に降り積もった雪を除去する除雪作業を行うサービスを提供する方法を実施形態6として説明する。
(実施形態6)
図21は、本発明の実施形態6による維持管理サービスを提供する方法を説明する図であり、維持管理サービスを提供する事業所に備えられている維持管理システムの構成を示す。
ここで、事業所9000aは、この事業所9000aが受け持つ1以上の空港(空港施設)に滑走路や誘導路などの除雪作業を行うサービスを提供する拠点である。なお、この事業所9000aは、除雪作業という作業内容から、実施形態5で説明したように複数の空港をグループ分けして、除雪作業を行うサービスを各グループ毎に提供するという形態はとらず、天気予報などで積雪が予想される空港に予め作業車両を搬入しておくというサービスの提供形態をとる。以下では、1つの空港での除雪作業について説明する。
図22は、図21に示す維持管理システムにより維持管理サービスが提供される空港の滑走路および誘導路を示す図である。ここでは、この空港は、北陸や東北などの豪雪地帯の空港を想定している。この空港では、図22に示すように、滑走路61に沿って誘導路6cが設けられており、滑走路61の周辺の所定範囲内の領域が着陸帯6aとなっている。
除雪作業を行うサービスを提供する事業所9000aには、除雪作業により空港施設を維持管理するための維持管理システム900aが設けられており、この維持管理システム900aは、例えば2つのタイプの作業車両を含んでいる。
1つタイプの作業車両は、走行路に積もった雪を走行路の脇へ寄せる脇寄せ除雪車AVh1であり、もう1つのタイプの作業車両は、走行路の脇に寄せられた雪を走行路に隣接する植物の生育する領域(緑地帯)側へ吹き飛ばすロータリ型除雪車AVh2である。また、維持管理システム900aは、複数の脇寄せ除雪車AVh1と複数のロータリ型除雪車AVh2とを備えている。ただし、維持管理システム900aは、少なくとも1つの脇寄せ除雪車AVh1と少なくとも1つのロータリ型除雪車AVh2を備えていればよい。
また、維持管理システム9000aはコンピュータシステムACshを備えており、コンピュータシステムACshは、脇寄せ除雪車AVh1およびロータリ型除雪車AVh2に対して作業内容を指示するように構成されている。具体的には、コンピュータシステムACshは、積雪量、除雪する対象となる走行路の種別(例えば滑走路であるか誘導路であるか)、走行路の広さなどに応じてこれらの作業車両による作業スケジュールを作成し、作成した作業スケジュールに基づいて各作業車両に作業内容を指示するように構成されている。
作業車両は、コンピュータシステムACshから指示された作業内容に基づいて除雪作業を行うように構成されている。
(脇寄せ除雪車AVh1)
図23Aは、維持管理システム900aに備えられている脇寄せ除雪車AVh1の構成を説明するための図である。図24Aは、図23Aに示す脇寄せ除雪車AVh1の外観を模式的に示す図である。
脇寄せ除雪車AVh1は、車両本体901aと、車両本体901aの前面に取り付けられた除雪機構901bとを有する。車両本体901aは、車両を移動させる駆動部220と、駆動部220を制御する駆動制御部330と、コンピュータシステムACshからの作業指示に基づいて駆動制御部330を制御する作業制御部910とを有する。作業制御部910は、メモリ911と、無線LANなどの回線を介して情報の送受信を行うための送受信部(図示せず)とを有し、メモリ911にはコンピュータシステムACshから無線LANなどの回線を介して受け取った作業内容などの情報が格納されるようになっている。
除雪機構901bは、走行路上に積もった雪を走行路の側方へ寄せるための除雪板913と、除雪板913を支持する除雪板支持アーム914とを有する。除雪板支持アーム914の根本部分は車両本体901aに回動可能に取り付けられており、除雪板支持アーム914の先端部に除雪板913が取り付けられている。
(ロータリ型除雪車AVh2)
図23Bは、維持管理システム900aに備えられているロータリ型除雪車AVh2の構成を説明するための図である。図25Aは、図23Bに示すロータリ型除雪車AVh2の外観を模式的に示す図である。
ロータリ型除雪車AVh2は、車両本体902aと、車両本体902aの前面に取り付けられた除雪装置902bとを有する。
ここで、車両本体902aは、脇寄せ除雪車AVh1の車両本体901aと同様に駆動部220、駆動制御部330および作業制御部920を有する。車両本体902aは、積み込んだ草粉CGrを除雪装置902bに供給可能に構成されている。具体的には、車両本体902aは、草粉CGrを収容する草粉収容部902と、草粉収容部902から草粉CGrを搬出するための搬出手段924と、搬出された草粉CGrを空気流で搬送する搬送ブロア925aとを有し、草粉が搬送ブロア925aにより搬送ダクト925bを介して除雪装置902bに搬送されるように構成されている。ここで、草粉は、夏場の草刈り作業ででた草を細かく粉砕して着色したものであり、リサイクルのために空港内の倉庫などに保管されている。草粉は、冬場の除雪作業の際に必要に応じて倉庫から運び出してロータリ型除雪車AVh2に積み込まれる。
除雪装置902bは、回転により積雪を掻き取る円筒状の雪掻きローラ926と、雪掻きローラ926を回転可能に支持する左右一対のローラ支持板926aと、各ローラ支持板926aを支持する上下一対の支持板支持アーム926bとを有する。ここで、ローラ支持板926aには雪掻きローラ926を回転させるモータが内蔵されている。支持板支持アーム926bの一端はローラ支持板926aに固定され、支持板支持アーム926bの他端は車両本体902aに回動可能に取り付けられている。なお、支持板支持アーム926bの回動は車両本体902aに取り付けられたアクチュエータ(図示せず)により行われるようになっている。
除雪装置902bは、車両本体902aから搬送されてくる草粉を、雪掻きローラ926で掻き取った雪と混合する混合機927と、草粉と混合された雪SGmを吹き出す雪吹出部928とをさらに有する。雪吹出部928は、吹出管928aと吹出ブロア928bとを有する。混合機927はローラ支持板926aに固定されており、雪吹出部928は混合機927の上部に取り付けられている。
なお、このロータリ型除雪車AVh2では、駆動部220および駆動制御部330は、脇寄せ除雪車AVh1におけるものと同一のものであり、作業制御部920は、脇寄せ除雪車AVh1の作業制御部910と同様にメモリ921および無線LANなどの回線を介してコンピュータシステムACshとの間で情報の送受信を行うための送受信部(図示せず)を有する。ただし、作業制御部920は、コンピュータシステムACshから指示された作業内容に基づいて、駆動制御部330の制御とともに、搬出手段924、搬送ブロア925a、混合機927、吹出ブロア928b、雪掻きローラ926のモータ、取付板支持アーム926bのアクチュエータの制御を行うように構成されている。
次に、事業所9000aによって図22に示す空港に提供される維持管理サービス(除雪作業)を説明する。
事業所9000aの維持管理システム900aのコンピュータシステムACshが図22に示す空港の積雪情報を取得すると、脇寄せ除雪車AVh1およびロータリ型除雪車AVh2に除雪作業を行うよう指示する。この指示は、無線LANなどの回線を介して脇寄せ除雪車AVh1の作業制御部910およびロータリ型除雪車AVh2の作業制御部920で受信される。ここで、脇寄せ除雪車AVh1およびロータリ型除雪車AVh2は、天気予報などに基づいて予め事業所から空港に搬入され、空港内の格納庫などに格納されているものとする。
まず、複数の脇寄せ除雪車AVh1が滑走路の除雪作業を行う。
図24Bは、図24Aに示す脇寄せ除雪車AVh1による除雪作業の一例を説明するための図である。
複数の脇寄せ除雪車AVh1の作業制御部910は、空港の地図情報に基づいて滑走路61のセンターラインの位置を検出し、コンピュータシステムACshから指示された作業内容(除雪作業の実行)に従ってそれぞれの除雪車の滑走路61のセンターラインに対する走行位置を決定する。各脇寄せ除雪車AVh1の走行位置が決定されると、複数の脇寄せ除雪車AVh1は、図24Bに示すように、滑走路61のセンターライン上を走行する脇寄せ除雪車AVh1を先頭としてその両側にそれぞれ複数の脇寄せ除雪車AVh1が配置されるように編隊を組んで、滑走路61の一端側から他端側に向けて走行する。脇寄せ除雪車AVh1の滑走路61上での走行により、滑走路61上に積もった雪Snが滑走路61の両脇に寄せられる。このように雪を滑走路脇に寄せる作業は、通常は滑走路61上を脇寄せ除雪車AVh1が1回から数回走行することで完了する。図24Cは、図24Aに示す脇寄せ除雪車AVh1による除雪作業が完了した状態を示している。このように脇寄せ除雪車AVh1による除雪作業が完了すると、続いてロータリ型除雪車AVh2による除雪作業が行われる。
図25Bは、図25Aに示すロータリ型除雪車AVh2による除雪作業の一例を説明するための図である。
ここでは、複数のロータリ型除雪車AVh2は、滑走路脇に集められた雪を除去する除雪作業を行うと同時に、滑走路61と滑走路61の両側の着陸帯6aとの境界が明確となるように、特に滑走路61の両側の着陸帯の領域を色付けする作業も行う。着色作業は、空港の倉庫に保管されている草粉を着陸帯6a上に撒き散らすことにより行われる。
以下具体的に説明する。
予め、複数(例えば2台)のロータリ型除雪車AVh2の草粉収容部902には、空港の倉庫から運び出された草粉CGrが積み込まれている。ロータリ型除雪車AVh2の作業制御部920がコンピュータシステムACshから作業内容(除雪作業)の指示を受けると、作業制御部920は、空港の地図情報に基づいて滑走路61のセンターラインの位置を検出し、コンピュータシステムACshから指示された作業内容(除雪作業)に基づいてそれぞれの除雪車の滑走路61のセンターラインに対する走行位置を決定する。ロータリ型除雪装車Vh2の場合、脇寄せ除雪車AVh1により滑走路61脇に寄せられた雪を除去する除雪作業を行うので、車両の走行中にイメージセンサなどにより車両前方の景色を撮影し、撮影した画像の解析により除雪作業に最適な走行位置を決定するようにしてもよい。
2台のロータリ型除雪車AVh2が除雪開始位置(例えば滑走路61の一端側の両脇部分)に位置決めされ、ロータリ型除雪車AVh2による除雪作業が開始されると、ロータリ型除雪車AVh2では、滑走路61の両脇部分に集められた雪が除雪装置902bの雪掻きローラ926により取り込まれ、取り込まれた雪が混合機927を介して雪吹出部928により着陸帯側に向けて吹き出される。このような雪の取り込みおよび吹き出しが行われている間に、ロータリ型除雪車AVh2では、草粉収容部902に収容されている草粉が搬出手段924により搬送ブロア925aまで搬送され、さらに、草粉は搬送ブロア925aにより搬送ダクト925bを介して混合機927に搬送される。混合機927には、雪掻きローラ926により取り込んだ雪が供給されているため、混合機927では、雪に草粉が混入され、草粉を含んだ雪SGmが雪吹出部928から着陸帯側に向けて吹き出される。このため、ロータリ型除雪車AVh2による除雪作業が完了した滑走路61の部分に隣接する着陸帯6aの部分は、図42Bのドット表示で示すように、着色された草粉の色(例えば緑色)に着色されることとなる。
このように滑走路脇に集められた雪を吹き飛ばす作業は、通常は滑走路61上をロータリ型除雪車AVh2が少なくとも1回走行することで完了する。図25Cは、図25Aに示すロータリ型除雪車AVh2による除雪作業が完了した状態を示している。
また、脇寄せ除雪車AVh1およびロータリ型除雪車AVh2による除雪作業は滑走路61だけでなく誘導路6cにおいて同様に行われる。
ただし、空港では滑走路61の除雪作業に追われて誘導路6cの除雪まで十分に手が回らない場合もある。このような場合には、誘導路6cでの除雪は、ロータリ型除雪車AVh2による除雪のみでもよい。なぜなら、誘導路6cでは、航空機は低速の地上走行によって移動するだけであるので、多少の積雪があっても、誘導路とその周囲の緑地帯(誘導路緑地帯)との境界を明確にできれば誘導路上での航空機の移動は可能であるからである。具体的には、ロータリ型除雪車AVh2が誘導路の側縁部の除雪を行うことにより、着色した草粉を含む雪が誘導路周辺の領域(誘導路緑地帯)へ撒き散らされることとなり、誘導路緑地帯が着色される。これにより、パイロットが誘導路の両側縁を認識可能となる。
以上のように滑走路61および誘導路6cでの除雪作業が完了すると、空港での航空機の離発着が可能な状態となる。
なお、雪が降り続いている場合は、このような脇寄せ除雪車AVh1およびロータリ型除雪車AVh2による除雪作業は断続的に行われるが、雪が降り止んでいる場合は、脇寄せ除雪車AVh1およびロータリ型除雪車AVh2による除雪作業は終了し、これらの作業車両は格納庫などに戻される。さらには天気予報でその後しばらくは雪が降らないと予測される場合は、これらの作業車両は一旦事業所9000aに戻される。
このように本実施形態6では、脇寄せ除雪車AVh1およびロータリ型除雪車AVh2を空港に提供し、これらの除雪車により空港施設の滑走路61および誘導路6cなどの航空機の走行路の除雪作業を行うと同時に着陸帯および誘導路緑地帯の色付けを行うので、走行路の除雪作業と同時に、降雪による走行路と走行路周辺の領域(緑地帯)とのコントラストの低下を改善できる。これにより、冬場の豪雪地帯でも、航空機の安全な運行上重要な役割を担う走行路およびその周辺の緑地帯の機能を維持することができ、航空機の安全な運行を確保することができる。
なお、この実施形態6では、着色には、刈り取った草を細かく粉砕し着色して得られる草粉を用いているが、雪を着色するのに、ロータリ型除雪車AVh2に取り込んだ雪に、刈り取った草を焼いて得られた灰や炭を混入するようにしてもよい。炭を混入した場合、着陸帯や誘導路緑地帯の表面が黒くなって太陽光の吸収が促進されるので、温度が上昇し、融雪作用や着陸帯、誘導路緑地帯での草の光合成が促進される。また、ロータリ型除雪車AVh2では、取り込んだ雪に融雪剤を混入して雪を融雪剤とともに吹き飛ばすようにしてもよいことは言うまでもない。
さらに、ロータリ型除雪車AVh2に取り込んだ雪を着色するのに、ホタテの貝殻を粉砕したもの、あるいはホタテの貝殻を粉砕したものに色付けしたものを用いてもよい。ホタテの貝殻は表面に光沢があるため、特に色付けしなくても、ホタテの貝殻の粉砕片を雪に混ぜて着陸帯や誘導路緑地帯に撒くことにより着陸帯や誘導路緑地帯の表面が太陽光を受けて光るので、滑走路61と着陸帯6aとの境界や誘導路6cと誘導路緑地帯との境界が明確となる。
また、天候に応じた空港施設の維持管理サービスには、冬場の除雪作業を提供するものの他に、夏場のゲリラ豪雨による水溜りの除去作業を提供するものもある。
具体的には、滑走路や誘導路などの走行路の周辺の植物の生育する領域(緑地帯)は平坦ではなく凹凸があるので、夏場のゲリラ豪雨などにより滑走路周辺の着陸帯や誘導路周辺の誘導路緑地帯などで水溜りができることがある。このように走行路周辺の植物の生育する領域にできた水溜りを放置しておくと、ミミズなどの鳥のエサとなる害虫が多く発生し、これによって空港に飛来する鳥の数が増えてバードストライクの発生確率が高くなるといった弊害を招く。特に東南アジアなどの亜熱帯地域では、豪雨を伴う突風が吹き荒れる現象(スコール)が頻繁に生じるため、このような地域の空港施設は、予め、このような豪雨(例えば1時間あたり100mmまでの降水)を考慮して設計されているが、ゲリラ豪雨(例えば1時間あたり300mm)が発生すると、走行路周辺の緑地帯(植物の生育する領域)に水溜りができることがある。このため、空港によっては、ゲリラ豪雨などによって緑地帯にできた水溜りを除去する作業も必要となり、緑地帯にできる水溜りも空港施設の維持管理の対象となる。
以下、空港施設の維持管理サービスとして、走行路周辺の緑地帯などにできた水溜りを除去する水溜り除去作業を行うサービスを提供する方法を実施形態7として説明する。
(実施形態7)
図26は、本発明の実施形態7による維持管理サービスを提供する方法を説明する図であり、維持管理サービスを提供する事業所に備えられている維持管理システムの構成を示す。
ここで、事業所9000bは、この事業所9000bが受け持つ1以上の空港(空港施設)の植物の生育する領域での水溜り除去作業を行うサービスを提供する拠点である。なお、この事業所9000bも、実施形態6で説明した除雪作業を行うサービスを提供する事業所9000aと同様、天気予報などでゲリラ豪雨が予想される空港に予め作業車両を搬入しておくというサービスの提供形態をとる。以下では、1つの空港での水溜り除去作業について説明する。
図27は、図26に示す事業所9000bにより維持管理サービス(水溜り除去作業)が提供される空港を示す図である。
この空港A7は、例えば、山間部の丘陵地帯に切り開かれた空港用地Laに建設されたもので、周囲が山Mに囲まれている。空港用地Laには1つの滑走路71とこれに並行する誘導路7cとが設けられており、滑走路71や誘導路7cの周囲は芝や草などの植物が生育する領域(緑地帯)であり、滑走路71の周囲の所定の範囲が着陸帯7aとなっており、誘導路7cの周囲は誘導路緑地帯となっている。なお、図27中、7bはエプロン、7Pは空港駐車場、Lpは空港アクセス道路である。この空港A7は周囲が山に囲まれているので、激しい雨に見まわれると、空港用地内に雨水が流れ込み、着陸帯7aや誘導路緑地帯などに水溜りができることがある。
水溜り除去作業を行うサービスを提供する事業所9000bには、水溜り除去作業により空港施設を維持管理するための維持管理システム900bが設けられており、この維持管理システム900bは水溜り除去車両AVkを含んでいる。
また、維持管理システム9000bはコンピュータシステムACskを備えており、コンピュータシステムACskは、水溜り除去車両AVkに対して作業内容を指示するように構成されている。例えば、コンピュータシステムACskは周回衛星からのデータに基づいて緑地帯での水溜りの場所を特定して水溜り除去車両AVkに通知するように構成されている。水溜り除去車両AVkは、コンピュータシステムACskから通知された水溜りの位置情報に基づいて緑地帯の水溜りまで移動して水溜りを除去するように構成されている。
(水溜り除去車両AVk)
図28は、維持管理システム900bに備えられている水溜り除去車両AVkの構成を説明するための図である。
水溜り除去車両AVkは、実施形態5の作業車両Vfの着色手段50aに代えて水取込み手段960および放水手段970を備え、実施形態5の作業車両Vfの作業制御部10fに代わる作業制御部910kを備え、水溜りの水を水の溜まっていない場所に拡散して水溜りの水の蒸発を促進するように構成されたものである。なお、水溜り除去車両AVkの駆動部220および駆動制御部330は、実施形態5の作業車両Vfの駆動部20および駆動制御部30と同一のものである。
ここで、水取込み手段960は、吸水口961および吸引ポンプ(図示せず)を有し、水溜りの水を吸水口961から吸引ポンプで吸い上げるように構成されている。ただし、水取込み手段960の構成は限定されるものではなく、水取込み手段960はショベルなどにより水溜りの水を掬い取るように構成したもの、あるいは回転ブラシなどで水溜りの水を履き取るように構成したものでもよい。
放水手段970は、水取込み手段960により水溜り除去車両AVkに取り込んだ水溜りの水を作業制御部910kの制御により水の溜まっていない場所に放水するものであり、ここでは、放水ポンプ971と、放水ポンプ971に接続された放水管972と、放水管972の先端に取り付けられた放水ノズル973とを有する。
作業制御部910kは、メモリ911kおよび無線LANなどの回線を介してコンピュータシステムACskとの間で情報の送受信を行うための送受信部(図示せず)を有する。作業制御部910kは、コンピュータシステムACskから指示された作業内容に基づいて、駆動制御部330の制御とともに、水取込み手段960および放水手段970の制御を行うように構成されている。
次に、事業所9000bによって図27に示す空港に提供される維持管理サービス(水溜り除去作業)を説明する。
事業所9000bの維持管理システム900bのコンピュータシステムACskが、図27に示す空港A7の例えば着陸帯7aにできた水溜りWpの情報を周回衛星などから取得すると、水溜り除去車両AVkに水溜り除去作業を行うよう指示する。この指示が、無線LANなどの回線を介して水溜り除去車両AVkの作業制御部910kで受信されると、溜り除去車両AVkは着陸帯7aでの水溜り除去作業を実行する。なお、水溜り除去車両AVkは、天気予報などに基づいて予め事業所9000bから空港A7に搬入され、格納庫などに格納されているものとする。
図29は、図28に示す水溜り除去車両AVkによる水溜り除去作業を説明するための図である。
空港の格納庫から出た水溜り除去車両AVkは、コンピュータシステムACshから指示された作業内容(水溜り除去作業)に含まれる水溜りの位置情報に従って例えば着陸帯7aでの水溜りWpの位置に到着すると、水取込み手段960および放水手段970の駆動により着陸帯7a上の水溜りWpの水を吸い上げて緑地帯(着陸帯7aあるいは誘導路緑地帯7d)の水の溜まっていない領域に向けて放水することにより着陸帯7aの水溜りの水をその蒸発が促進されるように拡散させる。また、コンピュータシステムACshから指示された作業内容(水溜り除去作業)に含まれる水溜りの位置情報に従って例えば誘導路緑地帯7dでの水溜りの位置に到着した水溜り除去車両AVkは、着陸帯7aの水溜りの位置に到着した水溜り除去車両AVkと同様に、水溜りWpの水を吸い上げて緑地帯(着陸帯7aあるいは誘導路緑地帯7d)の水の溜まっていない領域に向けて放水することにより誘導路緑地帯7dの水溜りの水をその蒸発が促進されるように拡散させる。
このように本実施形態7では、水溜り除去車両AVkを空港に提供し、ゲリラ豪雨などで空港施設の航空機の走行路の周辺に位置する緑地帯(着陸帯7aや誘導路緑地帯7d)にできた水溜りの水を除去するので、ゲリラ豪雨などで空港の緑地帯に水溜りができることで鳥のエサとなる害虫が増加するのを回避して、空港に飛来する鳥に起因するバードストライクを抑制することができる。
なお、上記実施形態7では、緑地帯での水溜りの位置を示す情報は、事業所9000bのコンピュータシステムACskが周回衛星から受信した情報としているが、緑地帯での水溜りの位置を示す情報は、緑地帯での水溜りの位置を検出する検知車両により取得するようにしてもよい。
このように緑地帯での水溜りの位置を検出する検知車両により水溜りの位置を示す情報を取得する場合は、事業所9000bの維持管理システム900bは、水溜り除去車両AVkに加えて水溜り検知車両を備える必要がある。水溜り検知車両は、実施形態1で説明した車両Vのセンサ部40のセンサ41~46の少なくとも1つに代えてあるいはこれらのセンサに加えて、地面に溜まった水を検知する水検知センサを備えることにより実現できる。このような水検知センサを有する検知車両を緑地帯で所定の経路に沿って走行させることにより、水溜りができている位置を特定することができる。ここで、水溜りの位置を示す情報は、空港施設の維持管理のために用いられ得る作業情報である。
さらに、上述した各実施形態では、空港施設の維持管理サービスを提供する事業所が所有する維持管理システムを用いて空港施設の維持管理を行う場合を説明したが、空港施設が所有する既存機械類に、上述した各実施形態の維持管理システムを構成するコンピュータシステムおよび車両の機能を搭載してもよい。この場合、空港施設が所有する既存機械類が有効に活用されることとなり、これにより空港での施設の維持管理費の一部削減をすることが可能になる。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、これらの実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。