JP2021100840A - タイヤ - Google Patents

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Takuya Toyouchi
拓哉 豊内
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Abstract

【課題】ドライ性能とウエット性能とのバランスを調整できるタイヤを提供する。【解決手段】トレッド部2にタイヤ周方向に延びる複数の主溝30と、主溝30により区画される陸部20とを有し、陸部20にタイヤ幅方向に延びるラグ溝40を有する空気入りタイヤ1において、ラグ溝40の少なくとも一方の端部40Aが主溝30に開口し、かつ、ラグ溝40の溝底幅W2が開口幅W1よりも拡幅しており、ラグ溝40の開口幅W1に対する溝底幅W2の拡幅量が溝長さ方向で変化すること、を特徴とする。【選択図】図2

Description

本発明は、トレッド部の表面にラグ溝を有するタイヤに関する。
一般に、空気入りタイヤを含むタイヤでは、濡れた路面の走行時におけるトレッド部の表面と路面との間の水の排出等を目的として、接地面となるトレッド部の表面にタイヤ周方向に延びる複数の主溝やタイヤ幅方向に延びる複数のラグ溝が形成されている。この種のタイヤでは、トレッド部の表面に対する主溝やラグ溝の面積比を増加させると、溝体積が増加するため、濡れた路面での操縦安定性や制動性等のウエット性能が向上する一方、接地面積が相対的に減少することにより、乾いた路面での操縦安定性や制動性等のドライ性能が低下することが懸念される。特許文献1(図9)には、接地面開口幅よりも溝底幅を拡幅した断面形状を有するラグ溝を設けた空気入りタイヤが開示されている。この空気入りタイヤでは、トレッド部の接地面積と溝体積とを確保することでドライ性能とウエット性能との両立を図っている。
特許第2774775号公報
ところで、この種のタイヤは、市場において、ドライ性能及びウエット性能の更なる向上が要望されており、ドライ性能とウエット性能とのバランスを調整できる構成が模索されている。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ドライ性能とウエット性能とのバランスを調整できるタイヤを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るタイヤは、トレッド部にタイヤ周方向に延びる複数の主溝と、主溝により区画される陸部とを有し、陸部にタイヤ幅方向に延びるラグ溝を有し、ラグ溝の少なくとも一方の端部が主溝に開口し、かつ、該ラグ溝の溝底幅が接地面開口幅よりも拡幅しており、ラグ溝の接地面開口幅に対する溝底幅の拡幅量が溝長さ方向で変化することを特徴とする。
上記タイヤにおいて、ラグ溝は、陸部における接地幅端部よりも接地幅中央で溝底幅が拡幅することが好ましい。
また、上記タイヤにおいて、ラグ溝は、拡幅量が最大となる最大拡幅部が陸部の接地幅の20%以上80%以下の範囲内に位置することが好ましい。
また、上記タイヤにおいて、ラグ溝は、拡幅した拡幅域の溝長さWaと陸部の接地幅Wbとの関係が、0.1≦(Wa/Wb)≦1.0の範囲内であることが好ましい。
また、上記タイヤにおいて、ラグ溝は、拡幅量が最大となる最大拡幅部が該ラグ溝の最大溝深さの50%以上の深さに位置し、最大拡幅部におけるラグ溝の最大拡幅量ΔWmaxとラグ溝の最大溝深さH1との関係が、0.2≦(ΔWmax/H1)≦1.2の範囲内にあることが好ましい。
また、上記タイヤにおいて、ラグ溝は、該ラグ溝の最大溝深さH1と主溝の最大溝深さHgとの関係が、0.5≦(H1/Hg)≦1.0の範囲内であることが好ましい。
本発明に係るタイヤは、陸部にタイヤ幅方向に延びるラグ溝を有し、ラグ溝の少なくとも一方の端部が主溝に開口し、かつ、該ラグ溝の溝底幅が接地面開口幅よりも拡幅しており、ラグ溝の接地面開口幅に対する溝底幅の拡幅量が溝長さ方向で変化する構成を備えるため、拡幅量が大きくなる位置を調整することにより、ドライ性能とウエット性能とのバランスを調整することができる。
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤの要部を示す子午断面図である。 図2は、図1のA−A矢視図である。 図3は、図2のB−B断面視図である。 図4は、主溝及びラグ溝の溝深さの関係を示す部分拡大断面図である。 図5は、変形例に係るラグ溝の断面形状を示す図である。 図6は、変形例に係るラグ溝の溝底部の形状を示す平面図である。 図7は、変形例に係るラグ溝の溝底部の形状を示す平面図である。 図8は、変形例に係るラグ溝の溝底部の形状を示す平面図である。 図9は、ラグ溝の他端が陸部内で終端した形状を示す平面図である。 図10は、ラグ溝の他端が陸部内で終端した形状を示す平面図である。 図11は、空気入りタイヤの性能評価試験の結果を示す図表である。
以下に、本発明に係るタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態に係るタイヤは、例えば、車両用の空気入りタイヤである。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤの要部を示す子午断面図である。以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示省略)と直交する方向をいう。さらに、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、回転軸と平行な方向をいう。さらに、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。
タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ1の回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ幅は、タイヤ幅方向において最も外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。タイヤ子午断面とは、タイヤ回転軸を含む平面でタイヤを切断したときの断面をいう。
本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、図1に示すように、タイヤ径方向の最も外側となる部分にトレッド部2が配設されており、トレッド部2は、ゴム組成物から成るトレッドゴム層4を有している。また、トレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、踏面(接地面)3として形成され、踏面3は、空気入りタイヤ1の輪郭の一部を構成している。
トレッド部2には、踏面3にタイヤ周方向に延びる主溝30が複数形成されており、複数の主溝30は、タイヤ幅方向に並んでいる。また、トレッド部2には、タイヤ幅方向における端部が主溝30により区画される陸部20が複数形成されている。本実施形態では、主溝30は3本がタイヤ幅方向に並んで配置されており、これに伴い、陸部20は、4列の陸部20が主溝30を介してタイヤ幅方向に並んでいる。4列の陸部20は、タイヤ周方向に延びるリブ状の形状で形成されている。
主溝30は、少なくとも一部がタイヤ周方向に延在する縦溝であり、摩耗末期を示すトレッドウェアインジケータ(スリップサイン;不図示)を内部に有する。主溝30は、タイヤ周方向に直線状に延在していてもよく、タイヤ周方向に延びながらタイヤ幅方向に繰り返し振幅することにより、波形状又はジグザグ状に形成してもよい。図1の例では、空気入りタイヤ1は、タイヤ幅方向の中央部(タイヤ赤道面CL上)に設けられた1本のセンター主溝31と、センター主溝31のタイヤ幅方向外側(後述するショルダー部5側)にそれぞれ設けられたショルダー主溝32と、を有している。また、空気入りタイヤ1は、センター主溝31を挟んで配置される2つのセンター陸部21と、これらセンター陸部21に対して、ショルダー主溝32を挟んでタイヤ幅方向外側に配置されるショルダー陸部22と、を有している。以下の説明において、センター主溝31とショルダー主溝32とを区別する必要が無い場合には、単に主溝30と称する。また、センター陸部21とショルダー陸部22とを区別する必要が無い場合には、単に陸部20と称する。
タイヤ幅方向におけるトレッド部2の両外側端にはショルダー部5が位置しており、ショルダー部5のタイヤ径方向内側には、サイドウォール部8が配設されている。即ち、サイドウォール部8は、トレッド部2のタイヤ幅方向両側に配設されている。
サイドウォール部8のタイヤ径方向内側には、それぞれビード部10が位置している。ビード部10は、サイドウォール部8と同様に、タイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向における両側に配設されている。各ビード部10にはビードコア11が設けられており、ビードコア11のタイヤ径方向外側にはビードフィラー12が設けられている。ビードコア11は、スチールワイヤであるビードワイヤを束ねて円環状に形成される環状部材になっており、ビードフィラー12は、ビードコア11のタイヤ径方向外側に配置されるゴム部材になっている。
また、トレッド部2には、ベルト層14が配設されている。ベルト層14は、複数のベルト60、61が積層される多層構造によって構成されており、本実施形態では、2層のベルト60、61が積層されている。ベルト層14を構成するベルト60、61は、スチール、またはポリエステルやレーヨンやナイロン等の有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成されている。2層のベルト60、61は、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向へのベルトコードの傾斜角として定義されるベルト角度が、所定の範囲内(例えば、20°以上55°以下)になっている。トレッド部2が有するトレッドゴム層4は、トレッド部2におけるベルト層14のタイヤ径方向外側に配置されている。
ベルト層14のタイヤ径方向内側、及びサイドウォール部8のタイヤ赤道面CL側には、ラジアルプライのコードを内包するカーカス層13が連続して設けられている。このため、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、いわゆるラジアルタイヤとして構成されている。カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造、或いは複数のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、タイヤ幅方向の両側に配設される一対のビード部10間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。
詳しくは、カーカス層13は、タイヤ幅方向における両側に位置する一対のビード部10のうち、一方のビード部10から他方のビード部10にかけて配設されており、ビードコア11及びビードフィラー12を包み込むようにビード部10でビードコア11に沿ってタイヤ幅方向外側に巻き返されている。ビードフィラー12は、このようにカーカス層13がビード部10で折り返されることにより、ビードコア11のタイヤ径方向外側に形成される空間に配置されるゴム材になっている。また、ベルト層14は、このように一対のビード部10間に架け渡されるカーカス層13における、トレッド部2に位置する部分のタイヤ径方向外側に配置されている。また、カーカス層13のカーカスプライは、スチール、或いはアラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の有機繊維材から成る複数のカーカスコードを、コートゴムで被覆して圧延加工することによって構成されている。カーカスプライを構成するカーカスコードは、タイヤ周方向に対する角度がタイヤ子午線方向に沿いつつ、タイヤ周方向にある角度を持って複数並設されている。
ビード部10における、ビードコア11及びカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側やタイヤ幅方向外側には、リムフランジに対するビード部10の接触面を構成するリムクッションゴム17が配設されている。また、カーカス層13の内側、或いは、当該カーカス層13の、空気入りタイヤ1における内部側には、インナーライナ16がカーカス層13に沿って形成されている。インナーライナ16は、空気入りタイヤ1の内側の表面であるタイヤ内面18を形成している。
図2は、図1のA−A矢視図である。図3は、図2のB−B断面視図である。図4は、主溝及びラグ溝の溝深さの関係を示す部分拡大断面図である。なお、図2は、複数の陸部20のうち、タイヤ幅方向における両側が主溝30により区画される陸部20(センター陸部21)を図示している。陸部20には、図2に示すように、タイヤ幅方向に延びるラグ溝40が複数形成されており、これらのラグ溝40がタイヤ周方向に並んで形成されている。ラグ溝40は、タイヤ幅方向に直線状に延在していてもよく、タイヤ幅方向に延びながらタイヤ周方向に繰り返し振幅することにより、波形状又はジグザグ状に形成してもよい。ラグ溝40は、タイヤ幅方向に対して所定角度傾斜した方向に沿って、上記した直線状、波形状又はジグザグ状に延在してもよい。図2の例では、ラグ溝40は、陸部20のタイヤ幅方向における両側を区画する2本の主溝30にそれぞれ両端部40Aが開口している。これにより、陸部20は、2本のラグ溝40によりブロック状に分断される。なお、ラグ溝40は、少なくとも一方の端部40A(一端)が主溝30に開口していればよく、他方の端部(他端)は陸部20内で終端していてもよい。この場合、陸部20は、タイヤ周方向に分断されることなく、タイヤ周方向に連続したリブ状に形成される。ラグ溝40の他端が陸部20内で終端している構成については後述する。
ラグ溝40は、溝長さが陸部20の接地幅Wbの30%以上100%以下に形成されてタイヤ幅方向に延在する溝部であり、図3に示すように、踏面3に開口する開口部41と溝底部42とを有する。ラグ溝40は、開口部41のタイヤ周方向における開口幅(接地面開口幅)W1よりも溝底部42の溝底幅W2を大きく拡幅した断面形状に形成されている。さらに、ラグ溝40は、図2に示すように、上記した開口幅W1に対する溝底幅W2の拡幅量が該ラグ溝40の溝長さ方向に沿って変化するように形成されている。この場合、拡幅量とは、溝底幅W2と開口幅W1との差分値(W2−W1)である。なお、溝底幅W2は、開口幅W1よりも拡幅したラグ溝40の溝幅を示すものであり、例えば、丸底溝のように溝底よりも長い溝幅を有する場合には、溝底幅W2は、溝深さの50%以上の深さ領域における最も長い溝幅を含むものとする。
開口部41は、図2に示すように、開口幅W1が溝長さ方向にほぼ一定に形成される。具体的には、開口幅W1がほぼ一定とは、開口幅の最小値W1minと最大値W1maxとの関係が、0.8≦(W1min/W1max)≦1.0の範囲内にあることをいう。これにより、空気入りタイヤ1のトレッド部2の接地面積の減少を抑えることができ、ドライ性能の低減を抑えることができる。
これに対して溝底部42は、溝底幅W2が溝長さ方向における端部よりも中央で拡幅するように形成されている。即ち、本実施形態では、溝底部42は、図2に示すように、陸部20の接地幅Wbの中央の最大拡幅部42Aにおいて溝底幅W2が最大値(最大溝幅)W2maxとなり、この最大拡幅部42Aから陸部20の接地幅Wbの端部(陸部20内で終端している場合には終端している部分)に向かって溝底幅W2が連続的に単調に減少するようになっている。
上記したように、開口部41の開口幅W1は溝長さ方向にほぼ一定であり、溝底部42の溝底幅W2は、最大拡幅部42Aで最大となるように形成されている。このため、ラグ溝40の拡幅量は、図3に示すように、陸部20の接地幅Wbの中央の最大拡幅部42Aにおいて最大拡幅量ΔWmaxとなり、陸部20の接地幅Wbの端部(陸部20内で終端している場合には終端している部分)に向かって拡幅量が単調に減少する。この構成によれば、ラグ溝40は、開口部41の開口幅W1よりも溝底部42の溝底幅W2を大きく拡幅した断面形状に形成されることにより、ラグ溝40の溝体積を確保することでウエット操安性やウエット制動性といったウエット性能(以下、単にウエット性能という)を確保することができる。また、ラグ溝40は、陸部20の接地幅Wbの中央よりも端部側の拡幅量が小さく形成されていることにより、陸部20のエッジ剛性を高めることができため、陸部剛性を確保してドライ操安性やドライ制動性といったドライ性能(以下、単にドライ性能という)の向上を図ることができる。さらに、ラグ溝40は、陸部20の接地幅Wbの中央よりも端部側の拡幅量が小さく形成されていることにより、ラグ溝40の音抜けを抑制することができるため、車両走行時の通過騒音を低減してノイズ性能の向上を図ることができる。
上記した最大拡幅部42Aが設けられる陸部20の接地幅Wbの中央とは、該接地幅Wbの50%を含んだ幅方向の周辺領域をいい、陸部20の端部から接地幅Wbの20%以上80%以下の範囲内を含むことが好ましい。また、ラグ溝40は、図2に示すように、開口部41の開口幅W1よりも拡幅した拡幅域43の溝長さWaと陸部20の接地幅Wbとの関係が、0.1≦(Wa/Wb)≦1.0の範囲内となることが好ましく、0.3≦(Wa/Wb)≦1.0の範囲内となることがより好ましい。この場合、拡幅域43は、開口部41の開口幅W1よりも大きい領域をいう。この構成によれば、ラグ溝40の拡幅域43を大きくすることにより、ラグ溝40の溝体積を確保することができ、車両が濡れた路面を走行する際のウエット性能を確保することができる。
また、ラグ溝40の最大拡幅部42Aは、このラグ溝40の最大溝深さH1の50%以上の深さ位置に形成されることが好ましい。図3の例では、最大拡幅部42Aは、ラグ溝40の溝底部42、即ち、最大溝深さH1の100%の深さ位置に形成されている。この場合、最大拡幅部42Aにおけるラグ溝40の最大拡幅量ΔWmaxと、ラグ溝40の最大溝深さH1との関係は、0.2≦(ΔWmax/H1)≦1.2の範囲内にあることが好ましい。この構成によれば、ラグ溝40の排水性を確保しつつ、陸部20の剛性を維持することが可能となる。また、開口部41から溝底部42へ延ばした垂線41Aと、最大拡幅部42Aにおける拡幅域43の壁面43Aとがなす角θは、5°≦θ≦30°に形成されることが好ましい。この場合、最大拡幅部42Aにおける一方の最大拡幅量(0.5×ΔWmax)は、0.5mm以上7.0mm以下に形成される。
また、ラグ溝40は、図4に示すように、ラグ溝40の最大溝深さH1と主溝30の最大溝深さHgとの関係が、0.5≦(H1/Hg)≦1.0の範囲内であることが好ましい。この構成によれば、ラグ溝40の排水性を確保することができ、ウエット性能を確保することができる。
なお、本実施形態における陸部20の接地幅Wbは、陸部20の踏面3のタイヤ幅方向における幅になっている。このため、センター陸部21のように、タイヤ幅方向の両側が主溝30によって区画される陸部20では、接地幅Wbは陸部20のタイヤ幅方向における最大幅とほぼ同じ大きさになる。また、タイヤ幅方向における内側のみが主溝30によって区画されるショルダー陸部22では、図示は省略するが、接地幅Wbは陸部20のタイヤ幅方向の内側の端部から、陸部20上に位置する接地端T(図1参照)までのタイヤ幅方向における距離になっている。
ここでいう接地端Tは、空気入りタイヤ1を規定リムにリム組みして規定内圧を充填し、静止状態にて平板に対して垂直に置かれて規定荷重に相当する荷重を加えられたときの、踏面3における平板に接触する領域のタイヤ幅方向の両最外端をいい、タイヤ周方向に連続する。本実施形態では、ショルダー陸部22のように、タイヤ幅方向の一方側が接地端Tによって区画される場合、該接地端Tを陸部20の端部に含むものとする。
また、上記した規定リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、或いは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、規定内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、或いはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。また、規定荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。
本実施形態に係る空気入りタイヤ1を車両に装着する際には、空気入りタイヤ1をリムホイールにリム組みし、内部に空気を充填してインフレートした状態で車両に装着する。空気入りタイヤ1を装着した車両が走行すると、トレッド部2の踏面3のうち下方に位置する踏面3が路面に接触しながら空気入りタイヤ1は回転する。空気入りタイヤ1を装着した車両で乾燥した路面を走行する場合には、主に踏面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。また、濡れた路面を走行する際には、踏面3と路面との間の水が主溝30やラグ溝40に入り込み、これらの主溝30やラグ溝40で踏面3と路面との間の水を排水しながら走行する。これにより、踏面3は路面に接地し易くなり、踏面3と路面との間の摩擦力により、車両は走行することが可能になる。
ここで、ラグ溝40は、陸部20のタイヤ幅方向における両側を区画する2本の主溝30にそれぞれ両端部40Aが開口しており、かつ、開口部41の開口幅W1よりも溝底部42の溝底幅W2を大きく拡幅して形成されている。これにより、ラグ溝40が形成される陸部20(トレッド部2)の踏面3の接地面積と溝体積とを確保できるため、車両が走行する際のドライ性能とウエット性能との両立を図ることができる。さらに、ラグ溝40は、開口幅W1に対する溝底幅W2の拡幅量が該ラグ溝40の溝長さ方向に沿って変化するため、該溝長さ方向において、拡幅量が大きくなる位置を調整することにより、ドライ性能及びウエット性能の一方を他方よりも高めることができ、ドライ性能とウエット性能とのバランスを調整することができる。
本実施形態では、ラグ溝40は、陸部20における接地幅Wbの端部よりも中央で溝底幅W2が拡幅するように形成されている。即ち、ラグ溝40の拡幅量は、陸部20の接地幅Wbの中央の最大拡幅部42Aにおいて最大となり、陸部20の接地幅Wbの端部に向かって拡幅量が単調に減少する。この構成によれば、ラグ溝40は、陸部20の接地幅Wbの中央で溝底幅W2を拡幅することで、ラグ溝40の溝体積を確保することができるため、車両が濡れた路面を走行する際のウエット性能を維持することができる。また、ラグ溝40は、陸部20の接地幅Wbの中央よりも端部側の拡幅量が小さく形成されていることにより、陸部20のエッジ剛性を高めることができため、陸部剛性を確保して車両が乾いた路面を走行する際のドライ性能の向上を図ることができる。さらに、ラグ溝40は、陸部20の接地幅Wbの中央よりも端部側の拡幅量が小さく形成されていることにより、ラグ溝40の音抜けを抑制することができるため、車両走行時の通過騒音を低減してノイズ性能の向上を図ることができる。
ここで、ラグ溝40は、拡幅量が最大となる最大拡幅部42Aが陸部20の端部から該陸部20の接地幅Wbの20%以上80%以下の範囲内に位置するようになっている。即ち、本実施形態では、陸部20の接地幅Wbの20%以上80%以下の範囲内が接地幅Wbの中央ということになる。ここで、上記した最大拡幅部42Aが陸部20の端部から該陸部20の接地幅Wbの20%未満もしくは80%よりも大きい範囲に設けられている場合には、陸部20の端部におけるラグ溝40の拡幅量が大きくなるため、陸部20のエッジ剛性が低下することにより、陸部剛性が低くなり過ぎる虞がある。この場合、陸部20の剛性が部分的に低下することにより、車両の走行時における、主に乾いた路面でのドライ操安性を確保し難くなる虞がある。
これに対して、ラグ溝40の最大拡幅部42Aが陸部20の端部から該陸部20の接地幅Wbの20%以上80%以下の範囲内に位置する場合には、陸部20の接地幅Wbの中央よりも端部側(端部から陸部20の接地幅Wbの20%未満)の拡幅量が小さく形成されている。これにより、陸部20のエッジ剛性を高めることができため、陸部剛性を確保して車両が乾いた路面を走行する際のドライ性能の向上を図ることができる。さらに、ラグ溝40の音抜けを抑制することができるため、車両走行時の通過騒音を低減してノイズ性能の向上を図ることができる。
また、ラグ溝40は、開口部41の開口幅W1よりも拡幅した拡幅域43の溝長さWaと陸部20の接地幅Wbとの関係が、0.1≦(Wa/Wb)≦1.0の範囲内となることが好ましく、0.3≦(Wa/Wb)≦1.0の範囲内となることがより好ましい。この構成によれば、ラグ溝40の拡幅域43を大きくすることにより、ラグ溝40の溝体積を確保することができ、車両が濡れた路面を走行する際のウエット性能を確保することができる。
即ち、拡幅域43の溝長さWaと陸部20の接地幅Wbとの関係が、0.1>(Wa/Wb)の場合、ラグ溝40の溝体積を十分に確保することができず、ラグ溝40の排水性が低下する虞がある。この場合、ラグ溝40の排水性が低下することにより、車両の走行時における、主に濡れた路面でのウエット操安性を確保し難くなる虞がある。
これに対して、拡幅域43の溝長さWaと陸部20の接地幅Wbとの関係が、0.1≦(Wa/Wb)≦1.0、好ましくは0.3≦(Wa/Wb)≦1.0の範囲内である場合には、ラグ溝40の拡幅域43を大きくすることができるため、ラグ溝40の十分な溝体積を確保することができる。このため、車両が濡れた路面を走行する際のウエット性能を確保することができる。
また、ラグ溝40は、拡幅量が最大となる最大拡幅部42Aが該ラグ溝40の最大溝深さH1の50%以上の深さに位置し、最大拡幅部42Aにおけるラグ溝40の最大拡幅量ΔWmaxとラグ溝40の最大溝深さH1との関係が、0.2≦(ΔWmax/H1)≦1.2の範囲内にあるようになっている。即ち、ラグ溝40の最大溝深さH1に対する最大拡幅量ΔWmaxの比率(ΔWmax/H1)が20%以上120%以下の範囲内に設定されている。この数値範囲は、開口部41から溝底部42へ延ばした垂線41Aと、最大拡幅部42Aにおける拡幅域43の壁面43Aとがなす角θ(図3参照)が、5°≦θ≦30°の範囲内に形成されることとほぼ同義となる。この構成によれば、ラグ溝40の排水性を確保しつつ、陸部20の陸部剛性(ブロック剛性)を維持することが可能となる。
即ち、上記した最大拡幅部42Aがラグ溝40の最大溝深さH1の50%未満の深さに位置する場合には、ラグ溝40の溝体積を十分に確保することができず、ラグ溝40の排水性が低下する虞がある。また、上記した最大拡幅量ΔWmaxと最大溝深さH1との関係が、0.2>(ΔWmax/H1)の範囲内にある場合には、ラグ溝40の溝体積を十分に確保することができず、ラグ溝40の排水性が低下する虞がある。この場合、ラグ溝40の排水性が低下することにより、車両の走行時における、主に濡れた路面でのウエット操安性を確保し難くなる虞がある。
また、上記した最大拡幅量ΔWmaxと最大溝深さH1との関係が、(ΔWmax/H1)>1.2の範囲内である場合には、ラグ溝40の最大拡幅量ΔWmaxが大きくなり過ぎるため、ラグ溝40における陸部剛性が低下する虞がある。この場合、陸部20の剛性が部分的に低下することにより、車両の走行時における、主に乾いた路面でのドライ操安性を確保し難くなる虞がある。
これに対して、上記した最大拡幅部42Aが該ラグ溝40の最大溝深さH1の50%以上の深さに位置し、該最大拡幅量ΔWmaxと最大溝深さH1との関係が、0.2≦(ΔWmax/H1)≦1.2の範囲内にある場合には、ラグ溝40の十分な溝体積を確保することができる。このため、車両が濡れた路面を走行する際のウエット性能を維持することができる。これに加え、ラグ溝40の最大拡幅量ΔWmaxが大きくなり過ぎることを抑制できるため、陸部剛性が低下を防止することができ、車両が乾いた路面を走行する際のドライ性能を確保することができる。
また、ラグ溝40は、該ラグ溝40の最大溝深さH1と主溝30の最大溝深さHgとの関係が、0.5≦(H1/Hg)≦1.0の範囲内となっている。この構成によれば、ラグ溝40の溝体積を確保することができ、ラグ溝40の排水性を確保することができる。
即ち、ラグ溝40の最大溝深さH1と主溝30の最大溝深さHgとの関係が、0.5>(H1/Hg)の場合には、ラグ溝40の溝体積を十分に確保することができず、ラグ溝40の排水性が低下する虞がある。この場合、ラグ溝40の排水性が低下することにより、車両の走行時における、主に濡れた路面でのウエット操安性を確保し難くなる虞がある。
これに対して、ラグ溝40の最大溝深さH1と主溝30の最大溝深さHgとの関係が、0.5≦(H1/Hg)≦1.0の範囲内の場合には、ラグ溝40の十分な溝体積を確保することができる。このため、車両が濡れた路面を走行する際のウエット性能を確保することができる。
[変形例]
なお、上述した実施形態では、ラグ溝40は、開口部41の開口幅W1よりも溝底部42の溝底幅W2を大きく拡幅した断面が略台形形状に形成されているが、ラグ溝40の断面形状はこれに限るものではない。図5は、変形例に係るラグ溝の断面形状を示す図である。図5に示すように、ラグ溝140〜440は、踏面3上に開口した矩形状の上溝部141〜441と、これら上溝部141〜441よりも拡幅した下溝部142〜442とを備えている。上溝部141〜441は、断面矩形状に形成されて開口幅W1を有する。また、下溝部142〜442は、各上溝部141〜441に連なり、それぞれ異なる断面形状をなしている。
具体的には、ラグ溝140の下溝部142は断面略円形状に形成され、ラグ溝140は丸底溝状に形成されている。また、ラグ溝240の下溝部242は断面等脚台形形状に形成され、ラグ溝340の下溝部342は断面矩形形状に形成され、ラグ溝440の下溝部442は一方に拡幅した断面台形形状に形成されている。これらの下溝部142〜442は、最大拡幅部142A〜442Aを有し、最大拡幅部142A〜442Aにおける溝幅(溝底幅)W2に形成されている。このように、ラグ溝140〜440がいかなる形状に形成された場合であっても、最大拡幅部142A〜442Aは、ラグ溝140〜440の最大溝深さH1の50%以上の深さ位置に形成されるとともに、最大拡幅部142A〜442Aにおける各ラグ溝140〜440の最大拡幅量ΔWmaxと、ラグ溝40の最大溝深さH1との関係は、0.2≦(ΔWmax/H1)≦1.2の範囲内にあることが好ましい。
また、上述した実施形態では、ラグ溝40における溝底部42の形状は、溝底幅W2が接地幅Wbの中央の最大拡幅部42Aから端部に向けて、曲線的に連続的(徐々)に減少する形状としているが、溝底部42の形状はこれに限るものではない。図6〜図8は、変形例に係るラグ溝の溝底部の形状を示す平面図である。これらの変形例において、ラグ溝540〜740における開口部41は、上記した構成と同一であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
ラグ溝540の溝底部542は、図6に示すように、溝底幅W2が接地幅Wbの中央の最大拡幅部542Aから端部542Bに向けて、段階的(ステップ状)に減少する形状としてもよい。この場合、溝底部542の端部542Bの溝幅は、開口幅W1と同一としてもよいし、開口幅W1より大きく形成してもよい。また、ラグ溝640の溝底部642は、図7に示すように、溝底幅W2が接地幅Wbの中央の最大拡幅部642Aから端部642Bに向けて、直線状に減少する形状としてもよい。この場合、両端部642Bにおける溝幅W3は同一であってもよいし、一方が他方よりも大きく形成してもよい。また、ラグ溝740の溝底部742は、図8に示すように、接地幅Wbの中央の最大拡幅部742Aから端部742Bに向けて減少する際に、開口部41の溝長さ方向の中心線41Bに対して非対称な形状としてもよい。この場合、両端部742Bにおける溝幅W3は同一であることが好ましく、この溝幅W3は、開口幅W1と同一としてもよいし、開口幅W1より大きく形成してもよい。
また、上述した実施形態では、ラグ溝40は、陸部20のタイヤ幅方向における両側を区画する2本の主溝30にそれぞれ両端部40Aが開口している構成としたが、ラグ溝40の他方の端部40Bが陸部20内で終端していてもよい。図9及び図10は、ラグ溝の他端が陸部内で終端した形状を示す平面図である。ここでは、ラグ溝40の他方の端部40Bが終端している点が上記した実施形態と異なるため、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。図9は、複数の陸部20のうち、タイヤ幅方向における両側が主溝30により区画される陸部20(センター陸部21)を図示しており、図10は、複数の陸部20のうち、タイヤ幅方向における一側が主溝30により区画される陸部20(ショルダー陸部22)を図示している。
ラグ溝40は、図9及び図10に示すように、一方の端部40Aが主溝30に開口しており、他方の端部40Bは陸部20内で終端している。図9の例では、ラグ溝40は、他方の端部40Bの位置に最大拡幅部42Aが設けられ、この最大拡幅部42Aから一方の端部40Aに向けて拡幅量が直線的に単調減少するようになっている。この場合、拡幅量は曲線的に減少してもよい。また、図10の例では、ラグ溝40は、一方の端部40Aと他方の端部40Bとの間の位置に最大拡幅部42Aが設けられ、この最大拡幅部42Aから一方の端部40A及び他方の端部40Bに向けて、拡幅量がそれぞれ曲線的に単調減少するようになっている。この場合、拡幅量はそれぞれ直線的に減少してもよいし、一方が直線的、他方が曲線的に減少してもよい。なお、図10の例では、ラグ溝40の他方の端部40Bが接地端Tで終端していてもよい。この場合、ラグ溝40の溝長さは陸部20の接地幅Wbの30%以上100%以下に形成されている。また、他方の端部40Bが陸部20内で終端している場合であっても、ラグ溝40は、拡幅量が最大となる最大拡幅部42Aが陸部20の端部から該陸部20の接地幅Wbの20%以上80%以下の範囲内に位置していればよい。
また、上述した実施形態では、主溝30は3本が形成されているが、主溝30は3本以外であってもよい。トレッド部2に形成される主溝30は、3本以上5本以下の範囲内であるのが好ましい。
[実施例]
図11は、空気入りタイヤの性能評価試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1とについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、ドライ性能として、乾いた路面での制動性能であるドライ制動性能と、ウエット性能として、濡れた路面での制動性能であるウエット制動性能と、走行時の通過騒音に対するノイズ性能についての試験を行った。
性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが255/35R19サイズの空気入りタイヤ1を、リムサイズ19×9JのJATMA標準のリムホイールにリム組みし、空気圧を260kPaに調整して、評価車両(FFセダン乗用車)に装着して評価車両で走行をすることにより行った。
各試験項目の評価方法は、ドライ制動性能については、テストコースにおいて、乾燥した路面を、試験タイヤを装着した評価車両で初速100km/hで走行し、制動したときの制動距離を測定し、測定した距離の逆数を後述する従来例を100とする指数で表した。この数値が大きいほど、制動に要する距離が短く、ドライ制動性能が優れていることを示している。
また、ウエット制動性能については、テストコースにおいて、撒水して水深約1mmとした路面を、試験タイヤを装着した評価車両で初速100km/hで走行し、制動したときの制動距離を測定し、測定した距離の逆数を後述する従来例を100とする指数で表した。この数値が大きいほど、制動に要する距離が短く、ウエット制動性能が優れていることを示している。
ノイズ性能については、ECE R117−02(ECE Regulation No.117Revision 2)に定めるタイヤ騒音試験法に従って測定した車外通過音の大きさによって評価した。この試験では、試験車両を騒音測定区間の十分前から走行させ、当該区間の手前でエンジンを停止し、惰行走行させた時の騒音測定区間における最大騒音値dB(周波数800Hz〜1200Hzの範囲の騒音値)を、基準速度に対し±10km/hの速度範囲をほぼ等間隔に8以上に区切った複数の速度で測定し、平均を車外通過騒音とした。最大騒音値dBは、騒音測定区間内の中間点において走行中心線から側方に7.5m、且つ路面から1.2mの高さに設置した定置マイクロフォンを用いてA特性周波数補正回路を通して測定した音圧dB(A)である。通過騒音は、この測定結果を、後述する従来例を100とする指数で表し、その数値が大きいほど音圧dBが小さく、通過騒音に対するノイズ性能が優れていることを示している。
性能評価試験は、従来の空気入りタイヤの一例である従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例1〜16との17種類の空気入りタイヤについて行った。このうち、従来例は、開口幅W1に対して溝底幅W2が拡幅しているものの、この拡幅量は、溝の長さ方向に変化しておらず一定である。これに対して、実施例1〜16に係る空気入りタイヤ1は、いずれも拡幅量がラグ溝40の溝長さ方向に変化している。
また、実施例1〜16に係る空気入りタイヤ1は、陸部20の接地幅Wbに対する最大拡幅部42Aの位置の関係や、拡幅した拡幅域43の溝長さWaと陸部の接地幅Wbとの関係、ラグ溝40の溝深さに対する最大拡幅部の位置の関係、ラグ溝40の最大拡幅量とラグ溝40の溝深さとの関係、ラグ溝40の溝深さと主溝30の最大溝深さHgとの関係が、それぞれ異なっている。
これらの空気入りタイヤ1を用いて性能評価試験を行った結果、図11に示すように、上記した各関係が規定の範囲内にある実施例(実施例2、3、6、7、9、11、12、15、16)に係る空気入りタイヤ1は、従来例に対して、少なくともウエット制動性能の低下を極力抑えつつ、ドライ制動性能及びノイズ性能を向上させることができることが分かった。特に、『ラグ溝深さに対する最大拡幅量』の関係について、従来例では13%であるのに対し、本実施形態では最大120%(実施例12)のため、ウエット制動性能も向上することができる。これに対して、上記した各関係のいずれかが規定の範囲を外れた実施例(実施例1、4、5、8、10、13、14)に係る空気入りタイヤ1は、ウエット制動性能、ドライ制動性能又はノイズ性能の少なくとも1つが従来例よりも低下することが分かった。つまり、上記した各関係が規定の範囲内にある実施例に係る空気入りタイヤ1は、ウエット制動性能の低下を抑えつつ、ドライ制動性能及びノイズ性能を確保することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態では、タイヤとして空気入りタイヤを例示して説明したが、これに限るものではなく、エアレスタイヤのような空気が充填されていないタイヤにも適用することもできることは勿論である。また、本実施形態で例示した空気入りタイヤに充填される気体としては、通常の又は酸素分圧を調整した空気の他にも、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
1 タイヤ
2 トレッド部
3 踏面(トレッド部の表面、接地面)
5 ショルダー部
20 陸部
21 センター陸部
22 ショルダー陸部
30 主溝
31 センター主溝
32 ショルダー主溝
40、140、240、340、440、540、640、740 ラグ溝
40A、40B 端部
41 開口部
42、542、642、742 溝底部
42A、142A、542A、642A、742A 最大拡幅部
43 拡幅域
43A 壁面
CL タイヤ赤道面
T 接地端
W1 開口幅(接地面開口幅)
W2 溝底幅
Wb 接地幅

Claims (6)

  1. トレッド部にタイヤ周方向に延びる複数の主溝と、前記主溝により区画される陸部とを有し、前記陸部にタイヤ幅方向に延びるラグ溝を有するタイヤにおいて、
    前記ラグ溝の少なくとも一方の端部が前記主溝に開口し、かつ、該ラグ溝の溝底幅が接地面開口幅よりも拡幅しており、
    前記ラグ溝の前記接地面開口幅に対する前記溝底幅の拡幅量が溝長さ方向で変化すること、
    を特徴とするタイヤ。
  2. 前記ラグ溝は、前記陸部における接地幅端部よりも接地幅中央で前記溝底幅が拡幅する請求項1に記載のタイヤ。
  3. 前記ラグ溝は、前記拡幅量が最大となる最大拡幅部が前記陸部の端部から該陸部の接地幅の20%以上80%以下の範囲内に位置する請求項1または2に記載のタイヤ。
  4. 前記ラグ溝は、拡幅した拡幅域の溝長さWaと前記陸部の接地幅Wbとの関係が、0.1≦(Wa/Wb)≦1.0の範囲内である請求項1から3のいずれか一項に記載のタイヤ。
  5. 前記ラグ溝は、前記拡幅量が最大となる最大拡幅部が該ラグ溝の最大溝深さの50%以上の深さに位置し、
    前記最大拡幅部における前記ラグ溝の最大拡幅量ΔWmaxと前記ラグ溝の最大溝深さH1との関係が、0.2≦(ΔWmax/H1)≦1.2の範囲内にある請求項1から4のいずれか一項に記載のタイヤ。
  6. 前記ラグ溝は、該ラグ溝の最大溝深さH1と前記主溝の最大溝深さHgとの関係が、0.5≦(H1/Hg)≦1.0の範囲内である請求項1から5のいずれか一項に記載のタイヤ。
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