以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
[空気入りタイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、タイヤ径方向の片側領域を示している。また、同図は、空気入りタイヤの一例として、乗用車用ラジアルタイヤを示している。なお、同図において、符号CLは、タイヤ赤道面である。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸(図示省略)に平行な方向をいい、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向をいう。また、車幅方向内側および車幅方向外側とは、タイヤを車両に装着したときの車幅方向に対する向きを示す。ここでは、タイヤ赤道面CLを境界とする左右の領域のうち、タイヤの車両装着時にて車幅方向外側にある領域を外側領域と呼び、車幅方向内側にある領域を内側領域と呼ぶ。
この空気入りタイヤ1は、タイヤ回転軸を中心とする環状構造を有し、一対のビードコア11、11と、一対のビードフィラー12、12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16、16と、一対のリムクッションゴム17、17とを備える(図1参照)。
一対のビードコア11、11は、複数のビードワイヤを束ねて成る環状部材であり、左右のビード部のコアを構成する。一対のビードフィラー12、12は、一対のビードコア11、11のタイヤ径方向外周にそれぞれ配置されてビード部を補強する。
カーカス層13は、左右のビードコア11、11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードコア11およびビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。また、カーカス層13は、スチールあるいは有機繊維材(例えば、アラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨンなど)から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で80[deg]以上95[deg]以下のカーカス角度(タイヤ周方向に対するカーカスコードの繊維方向の傾斜角)を有する。
ベルト層14は、一対の交差ベルト141、142と、ベルトカバー143とを積層して成り、カーカス層13の外周に掛け廻されて配置される。一対の交差ベルト141、142は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で20[deg]以上40[deg]以下のベルト角度を有する。また、一対の交差ベルト141、142は、相互に異符号のベルト角度(タイヤ周方向に対するベルトコードの繊維方向の傾斜角)を有し、ベルトコードの繊維方向を相互に交差させて積層される(クロスプライ構造)。ベルトカバー143は、コートゴムで被覆されたスチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードを圧延加工して構成され、絶対値で45[deg]以上70[deg]以下のベルト角度を有する。また、ベルトカバー143は、交差ベルト141、142のタイヤ径方向外側に積層されて配置される。
トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤのトレッド部を構成する。一対のサイドウォールゴム16、16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて左右のサイドウォール部を構成する。一対のリムクッションゴム17、17は、左右のビードコア11、11およびカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側にそれぞれ配置されて、リムフランジに対する左右のビード部の接触面を構成する。
図2は、図1に記載した空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。同図は、一般的なブロックパターンを示している。なお、同図において、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸周りの方向をいう。また、符号Tは、タイヤ接地端である。
この空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝21〜24と、これらの周方向主溝21〜24に区画された複数の陸部31〜35と、これらの陸部31〜35に配置された複数のラグ溝41〜45とをトレッド部に備える(図2参照)。
周方向主溝とは、3.0[mm]以上の溝幅を有する周方向溝をいう。また、ラグ溝とは、1.0[mm]以上の溝幅を有する横溝をいう。これらの溝幅は、トレッド踏面の溝開口部に形成された切欠部や面取部を除外して測定される。
例えば、図2の構成では、ストレート形状を有する4つの周方向主溝21〜24がタイヤ赤道面CLを中心として左右対称に配置されている。なお、これに限らず、周方向主溝が、タイヤ周方向に屈曲あるいは湾曲しつつ延在するジグザグ形状あるいは波状形状を有しても良い(図示省略)。また、3つあるいは5つ以上の周方向主溝が配置されても良いし、これらの周方向主溝がタイヤ赤道面CLを中心として左右非対称に配置されても良い(図示省略)。
また、これらの周方向主溝21〜24により、5列の陸部31〜35が区画されている。ここでは、5列の陸部31〜35のうち、中央にある陸部33をセンター陸部と呼ぶ。このセンター陸部33は、タイヤ赤道面CL上にある。また、センター陸部33と隣り合う左右の陸部32、34をセカンド陸部と呼ぶ。また、左右のセカンド陸部32、34のタイヤ幅方向外側にある左右の陸部31、35をショルダー陸部と呼ぶ。
また、すべての陸部31〜35が、タイヤ幅方向に延在する複数のラグ溝41〜45をそれぞれ有している。また、これらのラグ溝41〜45が、陸部31〜35をタイヤ幅方向に貫通するオープン構造を有し、また、タイヤ周方向に所定間隔で配列されている。これにより、すべての陸部31〜35が、複数のブロックに分断されたブロック列となっている。なお、これに限らず、ラグ溝41〜45が一方の端部にて陸部31〜35内で終端するセミクローズド構造を有することにより、陸部31〜35がタイヤ周方向に連続するリブであっても良い(図示省略)。
[周方向主溝の凸部および凹部]
図3は、図2に記載した空気入りタイヤの周方向主溝の凸部および凹部を示す説明図である。同図は、センター陸部33および左右のセカンド陸部32、34のブロックを示している。
図2に示すように、この空気入りタイヤ1は、外側領域にある少なくとも1つの周方向主溝21、22が、少なくとも一方の溝壁に凸部51を有し、また、内側領域にある少なくとも1つの周方向主溝23、24が、少なくとも一方の溝壁に凹部52を有する。このとき、少なくとも外側領域の最外周方向主溝(外側領域にある周方向主溝21、22のうちタイヤ幅方向の最も外側にある周方向主溝)21が、少なくとも一方の溝壁に凸部51を有し、また、少なくとも内側領域の最外周方向主溝(内側領域にある周方向主溝23、24のうちタイヤ幅方向の最も外側にある周方向主溝)24が、少なくとも一方の溝壁に凹部52を有することが好ましい。
凸部とは、溝壁面から突出する部分をいう。この凸部は、溝長さ方向に連続して延在するリブであっても良いし、例えば、溝長さ方向に不連続に点在する複数の突起であっても良い。また、凸部の形状は、特に限定がなく、例えば、半円形状、矩形状、三角形状、波状形状などの任意の形状を採用できる。
凹部とは、溝壁面に対して陥没した部分をいう。この凹部は、溝長さ方向に連続して延在する溝であっても良いし、例えば、溝長さ方向に不連続に点在する複数の穴であっても良い。また、凹部の形状は、特に限定がなく、例えば、半円形状、矩形状、三角形状、波状形状などの任意の形状を採用できる。
例えば、図2の構成では、空気入りタイヤ1が、タイヤ赤道面CLを境界として左右対称に配置された4つの周方向主溝21〜24を備えている。また、外側領域にある2つの周方向主溝21、22のうち、トレッド端側にある最外周方向主溝21が、左右の溝壁に凸部51をそれぞれ有し、タイヤ赤道面CL側にある周方向主溝22が、タイヤ幅方向外側の壁面にのみ凸部51を有している。また、内側領域にある2つの周方向主溝23、24のうち、トレッド端側にある最外周方向主溝24が、左右の溝壁に凹部52をそれぞれ有し、タイヤ赤道面CL側にある周方向主溝23が、タイヤ幅方向外側の壁面にのみ凹部52を有している。このように、凸部51および凹部52は、周方向主溝21〜24の左右の溝壁に形成されても良いし、一方の溝壁にのみ形成されても良い。また、上記のように、すべての周方向主溝21〜24が、少なくとも一方の溝壁に凸部51あるいは凹部52を有することが好ましい。
また、図2の構成では、5列の陸部31〜35が、いずれも複数のブロックから成るブロック列となっている。また、外側領域にあるショルダー陸部31およびセカンド陸部32が、周方向主溝21、22側の溝壁に凸部51を有し、また、内側領域にあるショルダー陸部35およびセカンド陸部34が、周方向主溝23、24側の溝壁に凹部52を有している。また、凸部51あるいは凹部52を有する陸部31、32、34、35では、すべてのブロックが凸部51あるいは凹部52をそれぞれ有している。これにより、凸部51および凹部52が、タイヤ全周に渡って配置されている。なお、これに限らず、凸部51および凹部52を有さないブロックがタイヤ周方向の一部に配置されることにより、1つの周方向主溝21(22、23、24)にて凸部51(凹部52)がタイヤ周方向に点在して配置されても良い(図示省略)。
また、図3に示すように、凸部51が、半円形状の断面を有するリブであり、周方向主溝22に沿って陸部32のブロックの全長に渡って連続的に延在している。同様に、凹部52が、半円形状の断面を有する溝であり、周方向主溝24に沿って陸部34のブロックの全長に渡って連続的に延在している。
この空気入りタイヤ1では、タイヤの車両装着状態にて、車幅方向の外側領域にある周方向主溝21、22が溝壁に凸部51を有するので、凸部51を有する陸部31、32の剛性が補強される。また、図2のようなブロックパターンを有する構成では、陸部31、32の各ブロックの剛性が補強されて、ブロックの倒れ込みが抑制される。これにより、タイヤの操縦安定性能が向上する。特に、旋回走行時には、大きな接地圧が外側領域に作用するが、凸部51が外側領域の陸部31、32の剛性を補強することにより、タイヤの旋回性能が向上する。
また、車幅方向の内側領域にある周方向主溝23、24が溝壁に凹部52を有するので、凹部52を有する陸部34、35の剛性が低減される。これにより、タイヤの乗心地性能が向上する。また、排水性に大きく寄与する内側領域の周方向主溝23、24が凹部52を有することにより、溝容積が増加して、タイヤのウェット性能が向上する。
なお、図2および図3の構成では、センター陸部33を区画する左右の周方向主溝22、23が、センター陸部33側の溝壁に凸部51および凹部52を有していない。しかし、これに限らず、例えば、図3の構成において、車幅方向外側にある周方向主溝22のセンター陸部33側の溝壁に凸部51が配置され、また、車幅方向内側にある周方向主溝23のセンター陸部33側の溝壁に凹部52が配置されても良い(図示省略)。
また、例えば、空気入りタイヤ1がタイヤ赤道面CL上に周方向主溝を有する構成(図示省略)では、この周方向主溝が左右の溝壁に凸部51および凹部52を有しても良い。例えば、このタイヤ赤道面CL上にある周方向主溝が左右の溝壁に凸部51、51を有する構成では、上記の作用により、タイヤの操縦安定性能が強調される。また、タイヤ赤道面CL上にある周方向主溝が、左右の溝壁に凹部52、52を有する構成では、上記の作用により、タイヤの乗心地性能およびウェット性能が強調される。また、タイヤ赤道面CL上にある周方向主溝が、車幅方向外側にある溝壁に凸部51を有し、車幅方向内側にある溝壁に凹部52を有することにより、タイヤの操縦安定性能、乗心地性能およびウェット性能がバランス良く向上する。
図4および図5は、図2に記載した空気入りタイヤの周方向主溝の凸部および凹部を示す説明図である。これらの図において、図4は、左右の溝壁に凸部51、51を有する周方向主溝21の断面図を示し、図5は、左右の溝壁に凹部52、52を有する周方向主溝24の断面図を示している。
図4および図5において、周方向主溝21の溝底から凸部51までの距離Dpと、周方向主溝21の溝深さD_outとが、0.10≦Dp/D_out≦0.60の関係を有することが好ましい。また、周方向主溝24の溝底から凹部52までの距離Ddと、凹部52を有する周方向主溝24の溝深さD_inとが、0.10≦Dd/D_in≦0.60の関係を有することが好ましい。
距離Dpは、周方向主溝の溝底から凸部の頂点までの溝深さ方向の距離として測定される。また、距離Ddは、周方向主溝の溝底から凹部の最深点までの溝深さ方向の距離として測定される。また、溝深さD_out、D_inは、周方向主溝の溝底からトレッドプロファイル(図示省略)までの溝深さ方向の距離として測定される。また、これらの距離Dp、Ddおよび溝深さD_out、D_inは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態として測定される。
ここで、規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が最大負荷能力の88[%]である。
また、凸部51の高さApと、周方向主溝21の溝幅W_outとが、0.10≦Ap/W_out≦0.40の関係を有することが好ましい。また、凹部52の深さAdと、周方向主溝24の溝幅W_inとが、0.10≦Ad/W_in≦0.30の関係を有することが好ましい。これらにより、凸部51および凹部52の機能が適正に確保される。
高さApは、溝長さ方向に垂直な断面視における周方向主溝の溝壁面のプロファイルと、凸部の頂点との距離として測定される。また、深さAdは、溝長さ方向に垂直な断面視における周方向主溝の溝壁面のプロファイルと、凹部の最深点との距離として測定される。また、溝幅W_out、W_inは、周方向主溝の溝開口部にて測定される。また、これらの高さAp、深さAdおよび溝幅W_out、W_inは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態として測定される。
また、凸部51の幅Bpと、周方向主溝21の溝深さD_outとが、0.05≦Bp/D_out≦0.35の関係を有することが好ましい。また、凹部52の幅Bdと、周方向主溝24の溝深さD_inとが、0.05≦Bd/D_in≦0.35の関係を有することが好ましい。これらにより、凸部51および凹部52の機能が適正に確保される。
また、凸部51を有する周方向主溝21の溝幅W_outと、凹部52を有する周方向主溝24の溝幅W_inとが、W_out<W_inの関係を有することが好ましい(図4および図5参照)。
例えば、図2の構成では、4つの周方向主溝21〜24の溝幅W1〜W4が、車幅方向外側から順にW1<W2<W3<W4の関係に設定されている。したがって、4つの周方向主溝21〜24の溝幅W1〜W4が、車幅方向外側から内側に向かって徐々に大きくなっている。これにより、凸部51を有する外側領域の周方向主溝21、22の溝幅W1、W2(W_out)が、凹部52を有する内側領域の周方向主溝23、24の溝幅W3、W4(W_in)よりも小さく設定されている。
また、図2のように、外側領域にある2つの周方向主溝21、22が凸部51をそれぞれ有する構成では、2つの周方向主溝21、22のうちトレッド端側にある周方向主溝21の凸部51の断面積Sp1と、タイヤ赤道面CL側にある周方向主溝22の凸部51の断面積Sp2とが、Sp2<Sp1の関係を有することが好ましい。具体的には、比Sp1/Sp2が、1.1≦Sp1/Sp2≦15の範囲内にあることが好ましい。
また、内側領域にある2つの周方向主溝23、24が凹部52をそれぞれ有する構成では、2つの周方向主溝23、24のうちトレッド端側にある周方向主溝24の凹部52の断面積Sd1と、タイヤ赤道面CL側にある周方向主溝23の凹部52の断面積Sd2とが、Sd2<Sd1の関係を有することが好ましい。具体的には、比Sd1/Sd2が、1.1≦Sd1/Sd2≦15の範囲内にあることが好ましい。
また、図4および図5に示すように、1つの周方向主溝21(24)が左右の溝壁に凸部51、51(凹部52、52)を有する構成では、これらの凸部51、51(凹部52、52)が上記の関係を有することが好ましい。すなわち、1つの周方向主溝21(24)の左右の溝壁に形成された一対の凸部51、51(凹部52、52)のうち、トレッド端側にある周方向主溝21(24)の凸部51の断面積Sp1(凹部52の断面積Sd1)と、タイヤ赤道面CL側にある周方向主溝22(23)の凸部51の断面積Sp2(凹部52の断面積Sd2)とが、Sp2<Sp1(Sd2<Sd1)の関係を有することが好ましい。
なお、凸部の断面積Sp1、Sp2は、溝長さ方向に垂直な断面視(図4参照)にて、溝壁面を延長した仮想線と、凸部の輪郭線とに囲まれた領域の面積として測定される。同様に、凹部の断面積Sd1、Sd2は、溝長さ方向に垂直な断面視(図5参照)にて、溝壁面を延長した仮想線と、凹部の輪郭線とに囲まれた領域の面積として測定される。
[変形例]
図6は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。同図は、周方向主溝21(24)の凸部51(凹部52)を有する側の壁面を示している。なお、同図では、凸部51を有する溝壁と凹部52を有する溝壁とで図柄が同様であるので、これらを並行して説明する。
図1の空気入りタイヤ1では、図2に示すように、すべての陸部31〜35が複数のブロックから成るブロック列であり、また、外側領域にある2つの周方向主溝21、22が溝壁に凸部51を有し、内側領域にある2つの周方向主溝23、24が溝壁に凹部52を有している。また、図3に示すように、凸部51(凹部52)が、周方向主溝21(24)に沿ってブロックのタイヤ周方向の全域に渡って延在している。
しかし、これに限らず、凸部51(凹部52)が、ブロックのタイヤ周方向の一部の領域にのみ配置されても良い。例えば、図6の変形例では、凸部51(凹部52)が、ブロックのタイヤ周方向の中央部に配置されている。このとき、凸部51(凹部52)のタイヤ周方向の長さLp(Ld)と、ブロックのタイヤ周方向の長さL_out(L_in)とが、0.50≦Lp/L_out≦1.00(0.50≦Ld/L_in≦1.00)の関係を有することが好ましい。これにより、凸部51(凹部52)の機能が適正に確保される。
[ラグ溝の凸部および凹部]
図7および図8は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。これらの図において、図1〜図3に記載した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。また、図7は、空気入りタイヤ1のトレッド平面図を示し、図8は、センター陸部33および左右のセカンド陸部32、34のブロックを示している。
図2の構成では、外側領域にある周方向主溝21、22が溝壁に凸部51を有し、内側領域にある周方向主溝23、24が溝壁に凹部52を有している。また、各陸部31〜35にあるラグ溝41〜45が、凸部51および凹部52のいずれも有していない。
これに対して、図7の構成では、外側領域にある少なくとも1つの陸部31、32のラグ溝41、42が、溝壁に凸部51を有し、内側領域にある少なくとも1つの陸部34、35のラグ溝44、45が、溝壁に凹部52を有する。このとき、少なくとも外側領域のショルダー陸部31のラグ溝41が、溝壁に凸部51を有し、また、少なくとも内側領域のショルダー陸部35のラグ溝45が、凹部52を有することが好ましい。
例えば、図7の構成では、空気入りタイヤ1が、タイヤ赤道面CLを境界として左右対称に配置された5列の陸部31〜35を備え、これらの陸部31〜35がそれぞれラグ溝41〜45を備えている。また、外側領域にあるショルダー陸部31およびセカンド陸部32のラグ溝41、42が、左右の溝壁に凸部51をそれぞれ有している。また、内側領域にあるショルダー陸部35およびセカンド陸部34のラグ溝44、45が、左右の溝壁に凹部52をそれぞれ有している。また、4つの周方向主溝21〜24が、凸部51および凹部52のいずれも有していない。
また、図8に示すように、凸部51が、半円形状の断面を有するリブであり、ラグ溝42の全長に渡って連続的に延在している。同様に、凹部52が、半円形状の断面を有する溝であり、ラグ溝44の全長に渡って連続的に延在している。
この空気入りタイヤ1では、タイヤの車両装着状態にて、車幅方向の外側領域にある陸部31、32のラグ溝41、42が溝壁に凸部51を有するので、これらの陸部31、32の剛性が補強される。また、図7のようなブロックパターンを有する構成では、陸部31、32の各ブロックの剛性が補強されて、ブロックの倒れ込みが抑制される。これにより、タイヤの操縦安定性能が向上する。特に、旋回走行時には、大きな接地圧が外側領域に作用するが、凸部51が外側領域の陸部31、32の剛性を補強することにより、タイヤの旋回性能が向上する。
また、車幅方向の内側領域にある陸部34、35のラグ溝44、45が溝壁に凹部52を有するので、これらの陸部34、35の剛性が低減される。これにより、タイヤの乗心地性能が向上する。また、排水性に大きく寄与する内側領域のラグ溝44、45が凹部52を有することにより、溝容積が増加して、タイヤのウェット性能が向上する。
なお、図7および図8の構成では、センター陸部33のラグ溝43が、溝壁に凸部51および凹部52を有していない。しかし、これに限らず、例えば、図8の構成において、センター陸部33のラグ溝43が、溝壁に凸部51あるいは凹部52を有しても良い(図示省略)。例えば、センター陸部33のラグ溝43が、溝壁に凸部51を有する構成では、上記の作用により、タイヤの操縦安定性能が強調される。また、センター陸部33のラグ溝43が、凹部52を有する構成では、上記の作用により、タイヤの乗心地性能およびウェット性能が強調される。
図9および図10は、図7に記載した空気入りタイヤのラグ溝の凸部および凹部を示す説明図である。これらの図において、図9は、左右の溝壁に凸部51、51を有するラグ溝41の断面図を示し、図10は、左右の溝壁に凹部52、52を有するラグ溝45の断面図を示している。
図9および図10において、ラグ溝41の溝底から凸部51までの距離Dp’と、ラグ溝41の溝深さD_out’とが、0.10≦Dp’/D_out’≦0.60の関係を有することが好ましい。また、ラグ溝45の溝底から凹部52までの距離Dd’と、凹部52を有するラグ溝45の溝深さD_in’とが、0.10≦Dd’/D_in’≦0.60の関係を有することが好ましい。
距離Dp’は、ラグ溝の溝底から凸部の頂点までの溝深さ方向の距離として測定される。また、距離Dd’は、ラグ溝の溝底から凹部の最深点までの溝深さ方向の距離として測定される。また、溝深さD_out’、D_in’は、ラグ溝の溝底からトレッドプロファイル(図示省略)までの溝深さ方向の距離として測定される。また、これらの距離Dp’、Dd’および溝深さD_out’、D_in’は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態として測定される。
また、凸部51の高さAp’と、ラグ溝41の溝幅W_out’とが、0.10≦Ap’/W_out’≦0.40の関係を有することが好ましい。また、凹部52の深さAd’と、ラグ溝45の溝幅W_in’とが、0.10≦Ad’/W_in’≦0.30の関係を有することが好ましい。これらにより、凸部51および凹部52の機能が適正に確保される。
高さAp’は、溝長さ方向に垂直な断面視におけるラグ溝の溝壁面のプロファイルと、凸部の頂点との距離として測定される。また、深さAd’は、溝長さ方向に垂直な断面視におけるラグ溝の溝壁面のプロファイルと、凹部の最深点との距離として測定される。また、溝幅W_out’、W_in’は、ラグ溝の溝開口部にて測定される。また、これらの高さAp’、深さAd’および溝幅W_out’、W_in’は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態として測定される。
また、凸部51の幅Bp’と、ラグ溝41の溝深さD_out’とが、0.05≦Bp’/D_out’≦0.35の関係を有することが好ましい。また、凹部52の幅Bd’と、ラグ溝45の溝深さD_in’とが、0.05≦Bd’/D_in’≦0.35の関係を有することが好ましい。これらにより、凸部51および凹部52の機能が適正に確保される。
また、凸部51を有するラグ溝41の溝幅W_out’と、凹部52を有するラグ溝45の溝幅W_in’とが、W_out’<W_in’の関係を有することが好ましい(図9および図10参照)。
例えば、図7の構成において、5列の陸部31〜35のラグ溝41〜45の溝幅W1’〜W5’が、車幅方向外側から順にW1’<W2’<W3’<W4’<W5’の関係に設定されることが好ましい。すなわち、5列の陸部31〜35のラグ溝41〜45の溝幅W1’〜W5’が、車幅方向外側から内側に向かって徐々に大きくなることが好ましい。これにより、凸部51を有する外側領域の陸部31、32のラグ溝41、42の溝幅W1’、W2’(W_out’)が、凹部52を有する内側領域の陸部34、35のラグ溝44、45の溝幅W4’、W5’(W_in’)よりも小さくなる。
また、図7のように、外側領域にある2列の陸部31、32のラグ溝41、42が凸部51をそれぞれ有する構成では、2列の陸部31、32のうちトレッド端側にあるショルダー陸部31のラグ溝41の凸部51の断面積Sp1’と、タイヤ赤道面CL側にあるセカンド陸部32のラグ溝42の凸部51の断面積Sp2’とが、Sp2’<Sp1’の関係を有することが好ましい。具体的には、比Sp1’/Sp2’が、1.1≦Sp1’/Sp2’≦15の範囲内にあることが好ましい。
また、内側領域にある2列の陸部34、35のラグ溝44、45が凹部52をそれぞれ有する構成では、2列の陸部34、35のうちトレッド端側にあるショルダー陸部35のラグ溝45の凹部52の断面積Sd1’と、タイヤ赤道面CL側にあるセカンド陸部34のラグ溝44の凹部52の断面積Sd2’とが、Sd2’<Sd1’の関係を有することが好ましい。具体的には、比Sd1’/Sd2’が、1.1≦Sd1’/Sd2’≦15の範囲内にあることが好ましい。
なお、凸部の断面積Sp1’、Sp2’は、溝長さ方向に垂直な断面視(図9参照)にて、溝壁面を延長した仮想線と、凸部の輪郭線とに囲まれた領域の面積として測定される。同様に、凹部の断面積Sd1’、Sd2’は、溝長さ方向に垂直な断面視(図10参照)にて、溝壁面を延長した仮想線と、凹部の輪郭線とに囲まれた領域の面積として測定される。
[変形例]
図11は、図7に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。同図は、ラグ溝42(44)の壁面を示している。なお、同図では、凸部51を有する溝壁と凹部52を有する溝壁とで図柄が同様であるので、これらを並行して説明する。
図7の空気入りタイヤ1では、すべての陸部31〜35が複数のラグ溝41〜45に区画されて成るブロック列であり、また、外側領域にある2つの陸部31、32のラグ溝41、42が溝壁に凸部51を有し、内側領域にある2つの陸部34、35のラグ溝44、45が溝壁に凹部52を有している。また、図8に示すように、凸部51(凹部52)が、ラグ溝42(44)の溝長さ方向の全域に渡って延在している。
しかし、これに限らず、凸部51(凹部52)が、ラグ溝42(44)の一部の領域にのみ配置されても良い。例えば、図11の変形例では、凸部51(凹部52)が、ラグ溝42(44)の溝長さ方向の中央部に配置されている。このとき、凸部51(凹部52)の長さLp’(Ld’)と、ラグ溝42(44)の溝長さL_out’(L_in’)とが、0.50≦Lp’/L_out’≦1.00(0.50≦Ld’/L_in’≦1.00)の関係を有することが好ましい。これにより、凸部51(凹部52)の機能が適正に確保される。
なお、凸部51(凹部52)の長さLp’(Ld’)およびラグ溝42(44)の溝長さL_out’(L_in’)は、ラグ溝42(44)の溝壁面の展開図にて測定される。
[周方向主溝およびラグ溝に凸部/凹部を有する構成]
図12および図13は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。これらの図において、図1〜図3に記載した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。また、図12は、空気入りタイヤ1のトレッド平面図を示し、図13は、センター陸部33および左右のセカンド陸部32、34のブロックを示している。
図2の構成では、外側領域にある周方向主溝21、22が溝壁に凸部51を有し、内側領域にある周方向主溝23、24が溝壁に凹部52を有している。また、各陸部31〜35にあるラグ溝41〜45が、凸部51および凹部52のいずれも有していない。
また、図7の構成では、外側領域にある陸部31、32のラグ溝41、42が溝壁に凸部51を有し、内側領域にある陸部34、35のラグ溝44、45が溝壁に凹部52を有している。また、各周方向主溝21〜24が、凸部51および凹部52のいずれも有していない。
これに対して、図12の構成は、図2および図7を組み合わせた構成を有する。すなわち、外側領域にある少なくとも1つの周方向主溝21、22が、少なくとも一方の溝壁に凸部51を有し、また、内側領域にある少なくとも1つの周方向主溝23、24が、少なくとも一方の溝壁に凹部52を有する。同時に、外側領域にある少なくとも1つの陸部31、32のラグ溝41、42が、溝壁に凸部51を有し、内側領域にある少なくとも1つの陸部34、35のラグ溝44、45が、溝壁に凹部52を有する。
また、このとき、少なくとも外側領域の最外周方向主溝21が、少なくとも一方の溝壁に凸部51を有し、また、少なくとも内側領域の最外周方向主溝24が、少なくとも一方の溝壁に凹部52を有することが好ましい。また、少なくとも外側領域のショルダー陸部31のラグ溝41が溝壁に凸部51を有し、また、少なくとも内側領域のショルダー陸部35のラグ溝45が溝壁に凹部52を有することが好ましい。
これにより、タイヤの車両装着状態にて、車幅方向外側領域にある陸部31、32の剛性が凸部51により補強されて、タイヤの操縦安定性能が向上する。また、車幅方向内側領域にある陸部34、35の剛性が凹部52により低減されて、タイヤの乗心地性能が向上する。また、排水性に大きく寄与する内側領域の周方向主溝23、24およびラグ溝44、45が凹部52を有することにより、溝容積が増加して、タイヤのウェット性能が向上する。
[効果]
以上説明したように、この空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝21〜24と、これらの周方向主溝21〜24に区画されて成る複数の陸部31〜35とを備える(図2参照)。外側領域にある少なくとも1つの周方向主溝21、22が、少なくとも一方の溝壁に凸部51を有する。また、内側領域にある少なくとも1つの周方向主溝23、24が、少なくとも一方の溝壁に凹部52を有する(図3参照)。
かかる構成では、タイヤが外側領域を車幅方向外側に向けて車両に装着されたときに、(1)車幅方向外側領域にある周方向主溝21、22が溝壁に凸部51を有することにより、凸部51を有する陸部31、32の剛性が補強される。これにより、タイヤの操縦安定性能が向上する利点がある。特に、旋回走行時には、大きな接地圧が外側領域に作用するが、凸部51が外側領域の陸部31、32の剛性を補強することにより、タイヤの旋回性能が向上する利点がある。また、(2)車幅方向の内側領域にある周方向主溝23、24が溝壁に凹部52を有するので、凹部52を有する陸部34、35の剛性が低減される。これにより、タイヤの乗心地性能が向上する利点がある。また、排水性に大きく寄与する内側領域の周方向主溝23、24が凹部52を有することにより、溝容積が増加して、タイヤのウェット性能が向上する利点がある。
特に、空気入りタイヤ1がネガティブ・キャンバ設定にて車両に装着される場合には、旋回走行時にて、車幅方向外側領域が大きな接地荷重を受け、また、直進走行時にて、車幅方向内側領域が主として接地する。このため、かかる場合には、上記のように、外側領域に凸部51が配置され、内側領域に凹部52が配置されることにより、タイヤの操縦安定性能、乗心地性能およびウェット性能の向上効果が顕著に得られる。
また、この空気入りタイヤ1では、外側領域にある周方向主溝21、22のうちタイヤ幅方向の最も外側にある周方向主溝21が、凸部51を有し、且つ、内側領域にある周方向主溝23、24のうちタイヤ幅方向の最も外側にある周方向主溝24が、凹部52を有する(図2参照)。かかる構成では、外側領域の最外周方向主溝21が凸部51を有することにより、外側領域の陸部31、32の剛性が効率的に補強されて、タイヤの操縦安定性能が効率的に向上する利点がある。また、内側領域の最外周方向主溝24が凹部52を有することにより、内側領域の陸部34、35の剛性が効率的に低減されて、タイヤの乗心地性能が効率的に向上し、また、内側領域の溝容積が効率的に増加して、タイヤのウェット性能が向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、凸部51を有する周方向主溝21の溝幅W_outと、凹部52を有する周方向主溝24の溝幅W_inとが、W_out<W_inの関係を有する(図4および図5参照)。かかる構成では、凸部51を有する陸部31、32の剛性が凸部51と狭い溝幅W_outとによってさらに補強される。これにより、車幅方向外側領域の剛性が補強されて、タイヤの操縦安定性能が向上する利点がある。一方で、凹部52を有する陸部34、35の剛性が凹部52と広い溝幅W_inとによってさらに低減される。これにより、車幅方向内側領域の剛性が低減されて、タイヤの乗心地性能が向上する利点がある。また、広い溝幅W_inにより、車幅方向内側領域の排水性が向上して、タイヤのウェット性能が向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、凸部51の断面積Spと、凹部52の断面積Sdとが、Sp<Sdの関係を有する。これにより、凸部51の断面積Spと凹部52の断面積Sdとの関係が適正化される利点がある。特に、上記の構成は、凸部51を有する周方向主溝21の溝幅W_outと、凹部52を有する周方向主溝24の溝幅W_inとが、W_out<W_inの関係を有するときに、周方向主溝21、24の溝幅W_out、W_inの関係にあわせて凸部51の断面積Spと凹部52の断面積Sdとの関係が適正化されるので、好ましい。
また、この空気入りタイヤ1では、周方向主溝21の溝底から凸部51までの距離Dpと、凸部51を有する周方向主溝21の溝深さD_outとが、0.10≦Dp/D_out≦0.60の関係を有する(図4参照)。これにより、凸部51の位置が適正化される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、周方向主溝24の溝底から凹部52までの距離Ddと、凹部52を有する周方向主溝24の溝深さD_inとが、0.10≦Dd/D_in≦0.60の関係を有する(図5参照)。これにより、凹部52の位置が適正化される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、凸部51の高さApと、凸部51を有する周方向主溝21の溝幅W_outとが、0.10≦Ap/W_out≦0.40の関係を有する(図4参照)。これにより、凸部51の機能が適正に確保される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、凹部52の深さAdと、凹部52を有する周方向主溝24の溝幅W_inとが、0.10≦Ad/W_in≦0.30の関係を有する(図5参照)。これにより、凹部52の機能が適正に確保される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、凸部51の幅Bpと、凸部51を有する周方向主溝21の溝深さD_outとが、0.05≦Bp/D_out≦0.35の関係を有する(図4参照)。これにより、凸部51の機能が適正に確保される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、凹部52の幅Bdと、凹部52を有する周方向主溝24の溝深さD_inとが、0.05≦Bd/D_in≦0.35の関係を有する(図5参照)。これにより、凹部52の機能が適正に確保される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、外側領域にある2つの周方向主溝21、22が凸部51をそれぞれ有する(図2参照)。また、2つの周方向主溝21、22のうちトレッド端側にある周方向主溝21の凸部51の断面積Sp1と、タイヤ赤道面CL側にある周方向主溝22の凸部51の断面積Sp2とが、Sp2<Sp1の関係を有する。かかる構成では、外側領域の陸部31、32が異なる断面積Sp1、Sp2の凸部51、51を有することにより、陸部31、32の剛性がトレッド端側からタイヤ赤道面CL側に向かって段階的に変化する。これにより、外側領域の陸部31、32の剛性差を緩和できる利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、内側領域にある2つの周方向主溝23、24が凹部52をそれぞれ有する(図2参照)。また、2つの周方向主溝23、24のうちトレッド端側にある周方向主溝24の凹部52の断面積Sd1と、タイヤ赤道面CL側にある周方向主溝23の凹部52の断面積Sd2とが、Sd2<Sd1の関係を有する。かかる構成では、内側領域の陸部34、35が異なる断面積Sd1、Sd2の凹部52、52を有することにより、陸部34、35の剛性がトレッド端側からタイヤ赤道面CL側に向かって段階的に変化する。これにより、内側領域の陸部34、35の剛性差を緩和できる利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、陸部31が複数のブロックから成るブロック列であり、これらのブロックが周方向主溝21側の壁面に凸部51を有する(図6参照)。また、凸部51のタイヤ周方向の長さLpと、凸部51を有するブロックのタイヤ周方向の長さL_outとが、0.50≦Lp/L_out≦1.00の関係を有する。これにより、凸部51の機能が適正に確保される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、陸部35が複数のブロックから成るブロック列であり、これらのブロックが周方向主溝24側の壁面に凹部52を有する(図6参照)。また、凹部52のタイヤ周方向の長さLdと、凹部52を有するブロックのタイヤ周方向の長さL_inとが、0.50≦Ld/L_in≦1.00の関係を有する。これにより、凹部52の機能が適正に確保される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝21〜24と、これらの周方向主溝21〜24に区画されて成る複数の陸部31〜35と、これらの陸部31〜35に配置されてタイヤ幅方向に延在する複数のラグ溝41〜45とを備える(図7参照)。また、外側領域にある少なくとも1つの陸部31、32のラグ溝41、42が、溝壁に凸部51を有する。また、内側領域にある少なくとも1つの陸部34、35のラグ溝44、45が、溝壁に凹部52を有する。
かかる構成では、タイヤが外側領域を車幅方向外側に向けて車両に装着されたときに、(1)車幅方向外側領域にある陸部31、32のラグ溝41、42が溝壁に凸部51を有することにより、凸部51を有する陸部31、32の剛性が補強される。これにより、タイヤの操縦安定性能が向上する利点がある。特に、旋回走行時には、大きな接地圧が外側領域に作用するが、凸部51が外側領域の陸部31、32の剛性を補強することにより、タイヤの旋回性能が向上する利点がある。また、(2)車幅方向の内側領域にある陸部34、35のラグ溝44、45が溝壁に凹部52を有するので、凹部52を有する陸部34、35の剛性が低減される。これにより、タイヤの乗心地性能が向上する利点がある。また、排水性に大きく寄与する内側領域のラグ溝44、45が凹部52を有することにより、溝容積が増加して、タイヤのウェット性能が向上する利点がある。
特に、空気入りタイヤ1がネガティブ・キャンバ設定にて車両に装着される場合には、旋回走行時にて、車幅方向外側領域が大きな接地荷重を受け、また、直進走行時にて、車幅方向内側領域が主として接地する。このため、かかる場合には、上記のように、外側領域に凸部51が配置され、内側領域に凹部52が配置されることにより、タイヤの操縦安定性能、乗心地性能およびウェット性能の向上効果が顕著に得られる。
また、この空気入りタイヤ1では、外側領域にある陸部31、32のうちタイヤ幅方向の最も外側にある陸部31のラグ溝41が、凸部51を有する(図7参照)。また、内側領域にある陸部34、35のうちタイヤ幅方向の最も外側にある陸部35のラグ溝45が、凹部52を有する。かかる構成では、外側領域のショルダー陸部31が凸部51を有することにより、ショルダー陸部31の剛性が効率的に補強されて、タイヤの操縦安定性能が効率的に向上する利点がある。また、内側領域のショルダー陸部35が凹部52を有することにより、ショルダー陸部35の剛性が効率的に低減されて、タイヤの乗心地性能が効率的に向上し、また、内側領域の溝容積が効率的に増加して、タイヤのウェット性能が向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、外側領域にあるラグ溝41の溝幅W_out’と、内側領域にあるラグ溝44の溝幅W_in’とが、W_out’<W_in’の関係を有する(図7、図4および図5参照)。かかる構成では、外側領域の陸部31、32の剛性が狭い溝幅W_out’によってさらに補強される。これにより、車幅方向外側領域の剛性が補強されて、タイヤの操縦安定性能が向上する利点がある。一方で、内側領域の陸部34、35の剛性が広い溝幅W_in’によってさらに低減される。これにより、車幅方向内側領域の剛性が低減されて、タイヤの乗心地性能が向上する利点がある。また、広い溝幅W_in’により、車幅方向内側領域の排水性が向上して、タイヤのウェット性能が向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、凸部51の断面積Sp’と、凹部52の断面積Sd’とが、Sp’<Sd’の関係を有する。これにより、凸部51の断面積Sp’と凹部52の断面積Sd’との関係が適正化される利点がある。特に、上記の構成は、外側領域の周方向主溝21の溝幅W_outと、内側領域の周方向主溝24の溝幅W_inとが、W_out<W_inの関係を有するときに、周方向主溝21、24の溝幅W_out、W_inの関係にあわせて凸部51の断面積Sp’と凹部52の断面積Sd’との関係が適正化されるので、好ましい。
また、この空気入りタイヤ1では、ラグ溝41の溝底から凸部51までの距離Dp’と、凸部51を有するラグ溝41の溝深さD_out’とが、0.10≦Dp’/D_out’≦0.60の関係を有する(図9参照)。これにより、凸部51の位置が適正化される利点がある。
また、空気入りタイヤ1では、ラグ溝45の溝底から凹部52までの距離Dd’と、凹部52を有するラグ溝45の溝深さD_in’とが、0.10≦Dd’/D_in’≦0.60の関係を有する(図10参照)。これにより、凹部52の位置が適正化される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、凸部51の高さAp’と、凸部51を有するラグ溝41の溝幅W_out’とが、0.10≦Ap’/W_out’≦0.40の関係を有する(図9参照)。これにより、凸部51の機能が適正に確保される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、凹部52の深さAd’と、凹部52を有するラグ溝45の溝幅W_in’とが、0.10≦Ad’/W_in’≦0.30の関係を有する(図10参照)。これにより、凹部52の機能が適正に確保される利点がある。
また、凸部51の幅Bp’と、凸部51を有するラグ溝41の溝深さD_out’とが、0.05≦Bp’/D_out’≦0.35の関係を有する(図9参照)。これにより、凸部51の機能が適正に確保される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、凹部52の幅Bd’と、凹部52を有するラグ溝45の溝深さD_in’とが、0.05≦Bd’/D_in’≦0.35の関係を有する(図10参照)。これにより、凹部52の機能が適正に確保される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、外側領域にある2つの陸部31、32のラグ溝41、42が凸部51をそれぞれ有する(図7参照)。また、2つの陸部31、32のうちトレッド端側にある陸部31のラグ溝41の凸部51の断面積Sp1’と、タイヤ赤道面CL側にある陸部32のラグ溝42の凸部51の断面積Sp2’とが、Sp2’<Sp1’の関係を有する。かかる構成では、外側領域の陸部31、32が異なる断面積Sp1’、Sp2’の凸部51、51を有することにより、陸部31、32の剛性がトレッド端側からタイヤ赤道面CL側に向かって段階的に変化する。これにより、外側領域の陸部31、32の剛性差を緩和できる利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、内側領域にある2つの陸部34、35のラグ溝44、45が凹部52をそれぞれ有する(図7参照)。また、2つの陸部34、35のうちトレッド端側にある陸部35のラグ溝45の凹部52の断面積Sd1’と、タイヤ赤道面CL側にある陸部34のラグ溝44の凹部52の断面積Sd2’とが、Sd2’<Sd1’の関係を有する。かかる構成では、内側領域の陸部34、35が異なる断面積Sd1’、Sd2’の凹部52、52を有することにより、陸部34、35の剛性がトレッド端側からタイヤ赤道面CL側に向かって段階的に変化する。これにより、内側領域の陸部34、35の剛性差を緩和できる利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、陸部31が複数のブロックから成るブロック列であり、これらのブロックがラグ溝41側の壁面に凸部51を有する(図11参照)。また、凸部51の長さLp’と、凸部51を有するラグ溝41の溝長さL_out’とが、0.50≦Lp’/L_out’≦1.00の関係を有する。これにより、凸部51の機能が適正に確保される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、陸部35が複数のブロックから成るブロック列であり、これらのブロックがラグ溝45側の壁面に凹部52を有する(図11参照)。また、凹部52の長さLd’と、凹部52を有するラグ溝45の溝長さL_in’とが、0.50≦Ld’/L_in’≦1.00の関係を有する。これにより、凹部52の機能が適正に確保される利点がある。
[装着方向の指定]
また、この空気入りタイヤ1は、外側領域を車幅方向外側として車両に装着すべき指定を有する(図2および図7参照)。これにより、上記した凸部51および凹部52の機能が適正に得られる利点がある。なお、装着方向の指定は、例えば、タイヤのサイドウォール部に付されたマークや凹凸、あるいはタイヤに添付されたカタログによって表示され得る。
図14および図15は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
この性能試験では、相互に異なる複数の空気入りタイヤについて、(1)ウェット性能、(2)操縦安定性能および(3)乗心地性能に関する評価が行われた(図14および図15参照)。この性能試験では、タイヤサイズ215/60R16の空気入りタイヤがJATMA規定の適用リムに組み付けられ、この空気入りタイヤに220[kPa]の空気圧およびJATMA規定の最大負荷が付与される。また、空気入りタイヤが、試験車両である排気量2500[cc]の国産SUV(Sport Utility Vehicle)に装着される。
(1)ウェット性能に関する評価では、試験車両が水深10±1[mm]かつ旋回半径100[m]のテストコースを走行し、スリップ率10[%]および15[%]に到達したときの試験車両の走行速度を測定する。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。
(2)操縦安定性能および(3)乗心地性能に関する評価では、試験車両がドライ路面の評価コースを走行して、専門のテストドライバーが官能評価を行う。この評価は、従来例を基準(100)とした指数評価により行われ、その数値が大きいほど好ましい。
実施例1の空気入りタイヤ1は、図1〜図5に記載した構成を基調とし、周方向主溝21〜24が凸部51あるいは凹部52を有する。実施例2〜7の空気入りタイヤ1は、実施例1の空気入りタイヤ1の変形例である。実施例8の空気入りタイヤ1は、図7〜図10に記載した構成を基調とし、ショルダー陸部31、35およびセカンド陸部32、34のラグ溝41、42、44、45が凸部51あるいは凹部52を有する。実施例9〜実施例14の空気入りタイヤ1は、実施例8の空気入りタイヤ1の変形例である。実施例1、8の空気入りタイヤ1では、周方向主溝21〜24のすべての溝幅W1〜W4およびすべての溝深さDが、W1=W2=W3=W4=8.0[mm]、D(=D_out=D_in)=8.0[mm]であり、凸部51の高さApおよび幅BpがAp=3.0[mm]、Bp=2.0[mm]である。
従来例の空気入りタイヤは、実施例1の空気入りタイヤ1において、周方向主溝21〜24およびラグ溝41〜45が凸部51および凹部52のいずれも有していない。
試験結果が示すように、実施例1〜14の空気入りタイヤ1では、タイヤのウェット性能、操縦安定性能および乗心地性能が向上することが分かる。