JP2021081772A - プラント制御装置およびプラント制御方法 - Google Patents

プラント制御装置およびプラント制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】フィードフォワード制御の制御効果の低減を抑制しつつ、オフセット誤差を低減すること。【解決手段】FF制御装置611は、制御外乱dACTに補正ゲインを乗算した制御出力を用いて、制御対象プラント600が行う処理のフィードフォワード制御を実施する。オフセット補正装置612は、制御対象プラント600の状態量実績xFBに基づいて、FF制御装置611の補正ゲインを調整する。また、FF制御装置611は、補正ゲインとして、制御外乱dACTが状態量を増加させる正方向に変化している場合には、制御外乱dACTに正方向補正ゲインを乗算し、制御外乱dACTが態量を減少させる負方向に変化している場合には、制御外乱dACTに負方向補正ゲインを乗算する。【選択図】図15

Description

本開示は、プラント制御装置およびプラント制御方法に関する。
被圧延材の圧延によって薄い金属材料を生産するためのプラントである圧延機では、被圧延材に硬度ムラがあると、その硬度ムラによって、被圧延材の板厚が位置に応じて異なる板厚変動(板厚不良)が生じることがある。硬度ムラとは、被圧延材の硬さが一様でないことである。被圧延材の硬さは、圧延される際の変形抵抗となるため、圧延の際に被圧延材を搬送する圧延方向に硬度ムラがあると、被圧延材の潰れ方が位置に応じて異ることとなり、圧延された後の板厚が位置に応じて変化してしまい、板厚変動が発生する。
また、圧延による金属材料の生産では、一般的に、被圧延材の板厚を元の原板厚から所望の製品厚まで加工するために、被圧延材が圧延機に複数回投入される。このため、被圧延材に硬度ムラがあると、圧延機に投入されるごとに板厚変動が発生してしまう。
特許文献1〜3には、複数の圧延機を含むタンデム圧延機にて生じる板厚変動を抑制することが可能な技術が開示されている。特許文献1〜3に記載の技術では、前段の圧延機によって発生した板厚変動を検出し、その板厚変動に基づいて後段の圧延機を制御するフィードフォワード制御を行うことで、板厚変動を抑制している。このようなフィードフォワード制御では、前段の圧延機による板厚変動に応じて、フィードフォワード制御の制御ゲインが調整される。また、特許文献3に記載の技術は、板厚のような状態量と目標値との偏差が大きい場合、制御ゲインに加えて、制御出力タイミングを調整することが行われている。
特許3384330号 特許5581964号 特許6404195号
一般的に制御対象プラントを制御するプラント制御装置では、板厚変動のような変動周期の短い状態量変動を抑制するためのフィードフォワード制御とは別に、長期的に状態量に生じるオフセット誤差(状態量と指令値との差)を抑制するためのフィードバック制御が行われることがある。
フィードバック制御は、状態量を積分した制御出力を用いた積分制御を含むが、積分制御では、状態量変動と制御出力との間に90度の位相ズレが発生する。このため、フィードフォワード制御とフィードバック制御との両方が行われると、フィードバック制御による位相ズレの影響で、フィードフォワード制御の制御出力タイミングが適切な値からずれてしまい、フィードフォワード制御の制御効果が低減してしまうことがある。
特許文献1〜3に記載の技術では、フィードバック制御によりフィードフォワード制御の制御効果の減少することについては何ら開示していない。
本発明における課題は、フィードフォワード制御の制御効果の低減を抑制しつつ、オフセット誤差を低減することが可能なプラント制御装置およびプラント制御方法を提供することにある。
本開示の一態様に従うプラント制御装置は、制御対象に関する状態量を変動させる変動要因に関する要因値に基づいて、前記制御対象が行う処理の制御を実施するプラント制御装置であって、前記要因値に補正ゲインを乗算した制御出力を用いて、前記処理のフィードフォワード制御を実施する第1の制御部と、前記状態量に基づいて、前記補正ゲインを調整する補正部と、を有し、前記第1の制御部は、前記補正ゲインとして、前記要因値が前記状態量を増加させる正方向に変化している場合には、前記要因値に正方向補正ゲインを乗算し、前記要因値が前記状態量を減少させる負方向に変化している場合には、前記要因値に負方向補正ゲインを乗算する。
本発明によれば、フィードフォワード制御の制御効果の低減を抑制しつつ、オフセット誤差を低減することが可能になる。
本開示の実施例に係るプラント制御装置を適用することが可能なプラントシステムの一例を示す図である。 圧延機によって被圧延材に生じる圧延現象を説明するための図である。 図2で説明した圧延現象を表すモデルを示す図である。 板厚制御の一例を説明するための図である。 張力制御の一例を説明するための図である。 積分制御による位相ズレを説明するための図である。 積分制御による位相ズレを説明するための図である。 積分制御による位相ズレを説明するための図である。 制御状態量に対するフィードフォワード制御出力の影響を説明するための図である。 制御結果と制御ゲインおよび位相シフトとの関係を示す図である 従来のプラント制御システムの概要を示す図である。 従来のプラント制御システムの制御結果の一例を示す図である。 制御状態量の偏差の変化を示す図である。 従来のプラント制御システムのオフセット除去結果の一例を示す図である。 本開示の実施例1のプラント制御装置を示す図である。 FF制御装置の一例を示す図である。 オフセット補正の原理を説明するための図である。 オフセット補正装置の一例を示す図である。 プラント制御装置の制御結果の一例を示す図である。 プラント制御装置の制御結果の他の例を示す図である。 本開示の実施例2のプラント制御装置を示す図である。
以下、本開示の実施例について図面を参照して説明する。
図1は、本開示の実施例に係るプラント制御装置(図15参照)を適用することが可能なプラントシステムの一例を示す図である。図1では、制御対象プラントとして、被圧延材200を圧延する複数の圧延機を備えるタンデム圧延機100が示されている。図1に示すタンデム圧延機100は、4台の圧延機11〜14を直列に並べた4スタンドのタンデム圧延機であるが、圧延機は4台に限定されない。
各圧延機11〜14は、被圧延材200を挟む複数のロールを備え、それらのロールを用いて被圧延材200を圧延する圧延処理を行う。図の例では、各圧延機11〜14は、ロールとして被圧延材200を直接挟む1対の作業ロール1と、各作業ロール1の外側に配置される1対の中間ロール2と、各中間ロール2の外側に配置される1対のバックアップロール3を有する。また、被圧延材200は、圧延機11、圧延機12、圧延機13、圧延機14の順に搬送される。以下では、圧延機11を#1スタンド圧延機11、圧延機12を#2スタンド圧延機12、圧延機13を#3スタンド圧延機13、圧延機14を#4スタンド圧延機14と呼ぶこともある。
図2は、各圧延機11〜14によって被圧延材200に生じる圧延現象を説明するための図である。図2に示すように被圧延材200の圧延は、被圧延材200を挟む1対の作業ロール1によって被圧延材200を潰すことで実施される。このとき、被圧延材200には、被圧延材200の搬送方向である圧延方向に対して、作業ロール1よりも前段側に向かう入側張力Tと、作業ロール1よりも後段側に向かう出側張力Tとが加わる。また、被圧延材200には、垂直方向に対して、作業ロール1間の距離であるロールギャップSに応じて決定される圧延荷重Pが印加される。これにより、被圧延材200は圧延され、被圧延材200の板厚が入側板厚Hから出側板厚hまで変化する。この圧延現象による先進率をf、後進率をbとすると、被圧延材200の入側速度Vおよび出側速度Vは、作業ロール1の回転速度である作業ロール速度がVの場合、V=V(1+b)、V=V(1+f)となる。
図3は、図2で説明した圧延現象を表すモデルを示す図である。圧延機において被圧延材200に印加される入側張力Tおよび出側張力Tは、自圧延機及びその前後の圧延機の入側速度Vおよび出側速度Vに応じて変化する。また、張力が変化すると、圧延荷重P、出側板厚h、入側速度Vおよび出側速度Vが変化する。したがって、圧延現象は、入側板厚H、作業ロール速度VおよびロールギャップSを入力、入側張力T、出側張力Tおよび出側板厚hを出力とする複雑な現象であり、さらには、張力を介して前後の圧延機における圧延現象とも関連するため、非常に複雑である。
図1の説明に戻る。各圧延機11〜14には、作業ロールを駆動するための駆動装置21〜24と、作業ロール1のロールギャップを制御するロールギャップ制御装置31〜34とが設けられる。駆動装置21〜24は、例えば、作業ロール1を駆動する電動機(図示せず)と、電動機を操作して作業ロール速度を制御する電動機速度制御装置(図示せず)とを含む。
また、各圧延機11〜14の出側には、被圧延材200の板厚を測定する板厚計41〜44と、被圧延材200に印加されている張力を測定する張力計51〜54とが設置されている。なお、被圧延材200の板厚は、被圧延材200の圧延により生産する製品の品質の観点から重要である。また、被圧延材200に印加される張力は、圧延操業の安定性のために重要であり、板厚の精度にも関わる。
また、圧延機14の出側には、圧延機14の出側張力を発生させる出側ブライドルロール15が設けられている。出側ブライドルロール15には、駆動装置25が設けられている。駆動装置25は、例えば、出側ブライドルロール15を駆動する電動機(図示せず)と、電動機を操作して出側ブライドルロール15の回転速度を制御する電動機速度制御装置(図示せず)とを含む。
また、各圧延機11〜14には、圧延処理を制御するためのプラント制御装置として、板厚制御装置61〜64と、張力制御装置71〜74とが設けられている。
圧延機11に対応する板厚制御装置61は、ロールギャップ制御装置31を用いて圧延機11のロールギャップを制御することで、圧延機11の出側板厚を制御する。圧延機12〜14に対応する板厚制御装置62〜64は、前段の圧延機11〜13の駆動装置21〜23を用いて、前段の圧延機11〜13の作業ロール速度である前段スタンド速度を制御して、各圧延機12〜14の出側板厚を制御する。
板厚制御装置62〜64は、対応する圧延機12〜14の入側の板厚計(前段の圧延機11〜13の出側の板厚計)41〜43の検出結果を用いたフィードフォワード制御と、対応する圧延機12〜14の出側の板厚計42〜44の検出結果を用いたフィードバック制御とを実行する。例えば、板厚制御装置62の場合、板厚計41の検出結果を用いたフィードフォワード制御と、出側の板厚計42の検出結果を用いたフィードバック制御とが実施される。
また、張力制御装置71〜73は、対応する圧延機11〜13の出側の張力計51〜53の検出結果に基づいて、後段の圧延機12〜14のロールギャップ制御装置32〜34を用いて後段の圧延機12〜14のロールギャップを制御して、対応する圧延機11〜13の出側張力を制御する。例えば、張力制御装置71の場合、圧延機11の出側の張力計51の検出結果に基づいて、圧延機12のロールギャップを制御する。また、張力制御装置74は、対応する圧延機14の出側の張力計54の検出結果に基づいて、駆動装置25を用いて出側ブライドルロール15の回転速度を制御することにより、圧延機14の出側張力を制御する。
次に板厚制御装置61〜64が行う板厚制御についてより詳細に説明する。なお、板厚制御においては、板厚が変化する圧延機と板厚を検出する板厚計が物理的に離れた位置にある。そのため、被圧延材200の入側板厚の偏差を検出してから、その箇所が実際の制御操作を実施する圧延機に到達するまでには無駄時間が存在する。また、圧延機にて変化した板厚を出側の板厚計で検出するまでにも無駄時間が存在する。
図4は、板厚制御の一例を説明するための図であり、#4スタンド圧延機14に対応する板厚制御装置64の構成例を示している。図4の例では、板厚計43は、#3スタンド圧延機13の出側板厚と目標値との偏差を入側板厚偏差ΔHとして計測して出力し、板厚計44は、圧延機14の出側板厚と目標値との偏差を出側板厚偏差Δhとして計測して出力する。各目標値は予め定められている。
板厚制御装置64は、入側の板厚計から圧延機までの無駄時間を補正する移送時間補償部201と、フィードフォワード制御部202と、比例回路203と、積分回路204とを有する。
移送時間補償部201は、#3スタンド圧延機13の出側の板厚計43から出力された入側板厚偏差ΔHを、位相シフト量TFFだけ位相シフトさせる移送処理を行う。位相シフト量TFFは、移送時間TX3D−4とフィードフォワード制御用制御出力タイミングシフト量(以下、タイミングシフト量と略す)ΔTFFとを用いて、TFF=TX3D−4−ΔTFFで表される。移送時間TX3D−4は、被圧延材200における入側板厚偏差ΔHを有する箇所が板厚計43から圧延機14の作業ロール1の直下まで移動するのにかかる時間である。タイミングシフト量ΔTFFは、入側板厚偏差ΔHに応じた制御出力230が駆動装置23に到達するまでの無駄時間および制御出力230が駆動装置23に入力されてから応答するまでの応答時間などに応じて定められる。
フィードフォワード制御部202は、移送時間補償部201にて移送処理が行われた入側板厚偏差ΔHに制御ゲインGFFを乗算してフィードフォワード制御出力210を生成する。
比例回路203および積分回路204は、フィードバック制御を行うフィードバック制御部を構成する。比例回路203は、圧延機14の出側の板厚計44で計測された出側板厚偏差Δhに制御ゲインGFBを乗算して出力する。積分回路204は、比例回路203の出力に対して積分処理を行ってフィードバック制御出力220を生成する。ここで、制御ゲインGFBは、圧延機から出側の板厚計までの無駄時間を考慮して決定される。
フィードフォワード制御出力210とフィードバック制御出力220とは互いに加算されて、板厚制御装置64の制御出力230として圧延機13の駆動装置23に入力される。
次に張力制御装置71〜74による張力制御についてより詳細に説明する。張力計は、被圧延材にかかる張力を直接検出するため、無駄時間を考慮する必要が無い。そのため、基本的にはフィードバック制御のみ実施する。図5は、張力制御の一例を説明するための図であり、#3スタンド圧延機13に対応する張力制御装置73の構成例を示している。
図5の例では、張力制御装置73は、比例積分部301を有する。比例積分部301は、圧延機13の出側に配置された張力計53にて計測された張力である張力実績値T34FBと、外部から入力される張力指令値T34REFとの偏差ΔT34を用いて、圧延機14の比例積分制御を行う。具体的には、比例積分部301は、偏差ΔT34に対して比例積分処理を行って、張力制御装置73の制御出力310を生成して、圧延機14のロールギャップ制御装置34に入力する。なお、比例積分制御は、比例制御と積分制御とを組み合わせた制御であり、ここでは、比例制御の比例ゲインをC、積分制御の積分ゲインをCとしている。
以上のように、タンデム圧延機100で行われる板厚制御は、比例制御であるフィードフォワード制御と、積分制御であるフィードバック制御とを組み合わせたものである。また、張力制御は比例積分制御を用いたフィードバック制御として構成される。
一般的に制御対象の状態量である制御状態量に対する積分制御では、制御出力の位相が制御状態量の位相に対して90度ずれるため、その結果、積分制御により得られる制御結果の位相が元の制御状態量の位相からずれるという問題がある。例えば、タンデム圧延機100では、制御結果である圧延機14の出側板厚(板厚偏差)の位相が元の変形抵抗(硬度)の位相からずれてしまう。
図6〜図8は、積分制御による制御状態量と制御結果との位相ズレを説明するための図であり、タンデム圧延機100における圧延現象のシミュレーション結果を示す。図6〜図8は、被圧延材200における変形抵抗400の圧延方向の変動を正弦波で表した時の、#4スタンド入側板厚偏差410、#4スタンド出側板厚偏差420、#3スタンド〜#4スタンド間張力430、#4スタンド出側張力440および#4スタンド荷重450のそれぞれの変動をシミュレーション結果として示す。
なお、#4スタンド入側板厚偏差410は、#4スタンド圧延機14の入側の板厚と目標値との偏差であり、#4スタンド出側板厚偏差420は、#4スタンド圧延機14の出側の板厚と目標値との偏差であり、#3スタンド〜#4スタンド間張力430は、#4スタンド圧延機14の入側の張力であり、#4スタンド出側張力440は、#4スタンド圧延機14の出側の張力であり、#4スタンド荷重450は、#4スタンド圧延機14にて被圧延材200に印加される荷重である。
図6は、板厚制御および張力制御の両方を実施しない場合のシミュレーション結果を示す。図6の例では、元の制御状態量である変形抵抗400と、#4スタンド入側板厚偏差410および#4スタンド出側板厚偏差420とでは、それらの変動を示す波形のピーク位置が互いに一致しており、それらの位相にズレがないことが示されている。
図7及び図8は、張力制御装置73および74による張力制御と、板厚制御装置64による板厚制御との両方を実施した場合のシミュレーション結果を示す。ただし、図7は、板厚制御としてフィードバック制御のみが実施された場合(フィードフォワード制御の制御ゲインGFFを0した場合)のシミュレーション結果を示し、図8は、板厚制御としてフィードバック制御およびフィードフォワード制御の両方が実施された場合のシミュレーション結果を示す。
板厚制御としてフィードフォワード制御が実施されていない図7の例では、変形抵抗400と#4スタンド入側板厚偏差410との間には、位相ズレは生じていないが、制御結果である#4スタンド出側板厚偏差420には、位相が変形抵抗400よりも早くなる位相進みが生じている。これは、板厚制御として積分制御を実施することにより、板厚制御の制御出力に90度の位相遅れが生じているためである。なお、後述の図9〜図10および式(1)〜(3)で示すように、制御出力に位相遅れが生じている(つまり、制御出力による位相シフト量(Δ)が負である)と、制御結果である#4スタンド出側板厚偏差420の位相ズレ量(δ)は正となり、位相進みが発生することとなる。
したがって、板厚制御などの制御を行うことにより、制御対象の状態量(タンデム圧延機100の場合、被圧延材200の板厚、被圧延材200にかかる張力および圧延荷重)の間の位相関係が変化する。
さらに板厚制御としてフィードフォワード制御が実施された図8の例では、#4スタンド入側板厚偏差410にも位相が変形抵抗400よりも進む位相進みが生じる。したがって、#4スタンド入側板厚偏差410を用いて#4スタンド出側板厚偏差420のフィードフォワード制御を実施する場合、変形抵抗400と#4スタンド入側板厚偏差410との位相ズレの影響により、変形抵抗400に応じた適切な制御が行うことができず、制御効果が低減してしまう。
そのため、フィードフォワード制御を実施する場合、図4に示したようにフィードフォワード制御における制御ゲインGFFと位相シフト量TFF(具体的には、タイミングシフト量ΔTFF)とを調整して、制御状態量の位相と振幅とに合わせたフィードフォワード制御出力を生成することで、制御効果を高くすることが行われている。
図9は、制御状態量に対するフィードフォワード制御の影響を説明するための図である。図9では、制御状態量と目標値との偏差である制御偏差を入力とし、その制御偏差の変動が正弦波sin(ωt)で表されると仮定している。また、制御偏差と、制御偏差に位相シフトおよび制御ゲインを与えたフィードフォワード制御出力との差分を制御結果yとして出力している。位相シフト量をΔ、制御ゲインをGとすると、制御結果yは、以下の式(1)で表される。
Figure 2021081772
ここで、制御結果yの振幅Xは、以下の式(2)で表され、制御結果yの制御偏差からの位相ズレ量δは、以下の式(3)で表される。
Figure 2021081772
Figure 2021081772
図10は、制御結果yと制御ゲインGおよび位相シフト量Δとの関係を示す図である。具体的には、図10(a)は、位相シフト量Δと制御結果yの位相ズレ量δとの関係を制御ゲインGごとに示す図であり、図10(b)は、位相シフト量Δと制御結果yの振幅Xとの関係を制御ゲインGごとに示す図である。
図10で示されたように、位相シフト量Δが大きくなると振幅Xも大きくなり、制御効果が低減する。さらに制御ゲインGによっては、位相シフト量Δが60度を超えると、振幅Xが1を超える。つまり、制御効果が得られないばかりか逆効果となってしまう。また、位相シフト量Δによって制御結果yの位相が元の正弦波sin(ωt)からずれてしまう。
したがって、フィードフォワード制御においては、制御ゲインG(制御ゲインGFF)と位相シフト量Δ(タイミングシフト量ΔTFF)とを適切な値に調整する必要がある。これらの適切な値は、制御対象に関するパラメータ、および、制御対象に対して実施される他の制御などに応じて変わる。タンデム圧延機100の場合、制御対象に関するパラメータとしては、被圧延材200を圧延する圧延速度が挙げられる。なお、圧延速度が変化すると、板厚偏差の変動周波数が変わり、制御出力による制御操作端である駆動装置23の応答時間などが変化する。また、他の制御としては、他の圧延機に対して実施される板厚制御などが挙げられる。
しかしながら、タンデム圧延機100のように、フィードフォワード制御およびフィードバック制御の両方が実施される場合、積分制御であるフィードバック制御によって制御状態量の位相が変化するため、フィードフォワード制御における制御ゲインと位相シフト量とを適切な値に調整することが難しい。
以下、フィードフォワード制御およびフィードバック制御の両方を実施する従来のプラント制御システムの課題についてより詳細に説明する。
図11は、従来のプラント制御システムの概要を示す図である。図11(a)に示す従来のプラント制御システムは、制御対象プラント500を制御する制御装置501と、制御対象プラント500から出力された制御対象の状態量である状態量実績xFBを検出無駄時間分だけ位相シフトさせる位相シフト要因502とを有する。また、制御装置501は、状態量実績xFBと外部から入力される状態量の指令値である状態量指令値xREFとの偏差に基づいて、制御対象プラント500に対して比例積分制御を実施するPI制御部511を備える。
なお、状態量実績xFBは、制御対象プラント500のモデル化誤差および外乱などの影響により、オフセット誤差を有する。PI制御部511による比例積分制御に含まれる積分制御は、状態量実績xFBのオフセット誤差を補正して、状態量実績xFBを状態量指令値xREFに維持するための制御である。
図11(b)に示す従来のプラント制御システムでは、図11(a)の例と比較して、制御装置501が、PI制御装置511の代わりに、制御対象プラント500に対して積分制御(フィードバック制御)を実施するI制御装置521と、制御対象プラント500に対してフィードフォワード制御を実施するFF制御装置522を備えている点で異なる。
図11(b)に示すプラント制御システムは、圧延機における板厚制御と対応する。図4と比較すると、外乱発生源550は圧延機の入側板厚偏差に対応し、それを入側板厚計43にて検出して制御外乱dACTとする。FF制御装置522は移送時間補償部201とフィードフォワード制御部202とに対応し、I制御装置521は比例回路203と積分回路204とに対応する。
図11(b)の例では、制御外乱源550にて発生する制御対象プラント500に対する外乱である制御外乱dACTが既知である。このように制御外乱dACTが既知の場合、FF制御装置522は、制御外乱dACTと制御外乱dACTに対する外乱指令値dREFとの偏差に基づいて、制御対象プラント500に対してフィードフォワード制御を実施する。また、I制御装置521は、状態量実績xFBと状態量指令値xREFとの偏差に基づいて、制御対象プラント500に対して積分制御を実施する。
なお、検出無駄時間は、制御対象プラント500が材料に対して加工を実施した場所と、その加工の結果を検出する場所が物理的に離れているために発生するものである。タンデム圧延機100の場合、図2に示したように、圧延により被圧延材200が加工される圧延機11〜14と、被圧延材200の板厚を検出する板厚計41〜44とが物理的に離れており、被圧延材200が圧延機11〜14から板厚計41〜44まで移送されて被圧延材200の加工結果(板厚)が検出される。この被圧延材200の移送に要する時間が検出無駄時間となる。
このように従来のプラント制御システムでは、オフセット誤差の除去のために積分制御を含むフィードバック制御が実施される。この積分制御は、制御出力が制御状態量からの90度の位相遅れと、検出無駄時間による位相遅れとの和の位相遅れを生じさせる制御であり、制御出力が大きくなると、フィードフォワード制御の制御出力と干渉し、フィードフォワード制御の位相シフト量が設定値からずれてしまう。その結果、フィードフォワード制御の制御効果が低減する。
図12は、シミュレーションによる従来のプラント制御システムの制御結果の一例を示す図である。図12では、制御外乱dACTと、制御結果である状態量実績xFB(具体的には、状態量実績xFBと状態量指令値xREFとの偏差)との時間変化を示す。
図12(a)は、図11(b)に示したプラント制御システムにおいて、フィードフォワード制御を行わずに、積分制御のみを行った場合の制御結果を示す。検出無駄時間を0.25秒とし、積分制御の時定数を0.5秒としている。また、制御外乱dACTはステップ状に変動するものとした。この場合、状態量実績xFBは、非常に小さいアンダーシュートを示しており、積分制御としては問題がない。
図12(b)は、図11(b)に示したプラント制御システムにおいて、積分制御を行わずに、フィードフォワード制御のみを行った場合の制御結果を示す。制御外乱dACTは、周期1.0Hz、振幅1.0の正弦波状に変動するものとした。また、フィードフォワード制御の制御ゲインは0.5とした。この場合、フィードフォワード制御により、制御外乱dACTが抑制され、状態量実績xFBの振幅が0.5となっている。
図12(c)は、図12(b)の状況において、図12(a)と同様な積分制御をさらに行った制御結果を示す。この場合、状態量実績xFBの振幅が0.7となり、積分制御を行わなかった場合よりも大きくなっている。つまり、積分制御により、フィードフォワード制御の制御効果が低減している。
なお、タンデム圧延機100の場合、0.25秒の検出無駄時間は、圧延機と板厚計との間の距離を2.5mとすると、被圧延材200の圧延速度が10m/s=600mpmとなる。また、制御外乱dACTの周期1.0Hzは、被圧延材200の長さで換算すれば10m周期となる。これは、1.6m程度の直径を有する回転体からの外乱とみなせる。また、1.6m程度の直径は圧延機のバックアップロールの直径程度である。このため、図12(b)および(c)におけるシミュレーション条件は妥当である。
また、積分制御は、オフセットを除去して状態量実績の偏差の平均値を0とするような制御である。このため、元の制御状態量の偏差の変化を示す波形によっては、積分制御にて、オフセットを除去した状態量実績の偏差の変化を示す波形が上側または下側に偏ることがある。図13は、状態量実績の偏差の変化を示す波形が正方向(上側)に偏った状態、つまり、正のピーク値の絶対値が負のピーク値の絶対値よりも小さい状態を示す図である。この場合、後述するように、状態量実績が正のピーク値部分で許容範囲を超えて、製品不良が発生することがある。なお、被圧延材200の変化抵抗の変動は、図13(a)に示すような波形で表されることが多い。
図14は、シミュレーションによる従来のプラント制御システムのオフセット除去結果の一例を示す図である。図14では、制御外乱dACTと、制御結果である状態量実績xFB(具体的には、状態量実績xFBと状態量指令値xREFとの偏差)との時間変化を示す。制御外乱dACTの変動は方形波状の変動するものとした。
図14(a)は、図11(b)に示したプラント制御システムにおいて、制御外乱dACTが正となる時間と負となる時間との時間比率が正:負=50:50であるときの、積分制御のみを行った場合の制御結果を示す。この例では、積分制御の結果、状態量実績xFBの正のピーク値と負のピーク値との大きさが等しい。
図14(b)は、上記の時間比率が正:負=30:70であるときの、積分制御のみを行った場合の制御結果を示す。この例では、状態量実績xFBの正のピーク値が負のピーク値よりも大きく、状態量実績xFBが正方向に偏った状態となる。
制御対象プラントで生産される製品の状態量には、通常、製品の規格などに応じて許容範囲が決まっており、許容範囲では、目標値から正方向への許容量と目標値から負方向への許容量とは均等であると考えられる。この場合、図13に示すように状態量の偏差が正方向に偏った波形となる場合、状態量が許容上限値を超えて製品不良が発生することがある。
これに対して同様な波形であっても、状態量の最大値および最小値が許容範囲に収まるように、状態量を調整すれば、図13(b)に示すように製品不良が発生しない。
以上説明したように従来のプラント制御装置では、フィードフォワード制御とフィードバック制御(積分制御)との両方を行う場合、フィードバック制御(積分制御)により、フィードフォワード制御の制御出力の位相がずれてしまい、フィードフォワード制御の制御効果が低減するという問題がある。また、フィードバック制御(積分制御)では、状態量実績の偏差の変化を示す波形が正方向または負方向に偏ってしまい、状態量実績が許容範囲から外れてしまうことがあるという問題もある。以下で説明する本実施例のプラント制御装置では、これらの問題を解決することが可能となる。
図15は、本開示の実施例1のプラント制御装置を示す図である。図15に示す制御装置601は、制御対象プラント600を制御する。
制御対象プラント600は、例えば、材料のような制御対象を加工するプラントであり、制御対象に関する状態量実績xFBを出力する。状態量実績xFBには、位相シフト要因602によって位相シフトが発生する。位相シフト要因602は、例えば、制御対象プラント600が材料に対して加工を実施した場所と、その加工の結果である状態量実績xFBを検出する場所が物理的に離れていることなどである。図15では、位相シフト要因602は、制御対象プラント600の外部に存在としているが、制御対象プラント600の内部に存在してもよい。
また、制御対象プラント600は、制御外乱源603にて発生する制御対象プラント500に対する外乱である制御外乱dACTの影響を受ける。このため、制御外乱dACTは、状態量実績xFBを変動させる変動要因となる。制御外乱dACTは既知である。このとき、制御外乱dACTの平均値のような統計値が既知であればよい。
制御装置601は、FF制御装置611と、オフセット補正装置612とを有する。
FF制御装置611は、制御外乱dACTと外乱指令値dREFとの偏差である外乱偏差に基づいて、制御対象プラント600が行う加工処理(例えば、圧延機11〜14による圧延処理)のフィードフォワード制御を実施する第1の制御部である。具体的には、FF制御装置611は、外乱偏差に補正ゲインを乗算した制御出力を用いて、制御対象プラント600が行う加工処理のフィードフォワード制御を実施する。なお、外乱偏差は、状態量実績xFBを変動させる変動要因である制御外乱dACTに関する要因値である。
オフセット補正装置612は、FF制御装置611によるフィードフォワード制御にて制御対象プラント600の制御対象の状態量に生じるオフセットを補正する補正部である。
図16は、FF制御装置611の一例を示す図である。図16において、FF制御装置611は、差分回路701と、正フィルタ回路702と、負フィルタ回路703と、乗算器704〜706と、積分回路707とを有する。
差分回路701は、制御外乱dACTと外乱指令値dREFとの偏差である外乱偏差の差分を出力する。差分回路701は、具体的には、外乱偏差を単位時間(例えば、制御外乱dACTが周期的に変化する場合、その周期)だけ遅延させる遅延回路711を有し、遅延回路711で遅延させた信号を元の外乱偏差から引いた値を外乱偏差の差分として出力する。
正フィルタ回路702は、差分回路701から出力した差分が正の値を有する場合に、その差分を出力する。負フィルタ回路703は、差分回路701から出力した差分が負の値を有する場合に、その差分を出力する。
乗算器704は、正フィルタ回路702から出力された差分に補正ゲインとして正側補正ゲインG+を乗算して出力する。乗算器705は、負フィルタ回路703から出力された差分に補正ゲインとして負側補正ゲインG−を乗算して出力する。乗算器706は、乗算器704からの出力信号と乗算器705からの出力信号との和に制御ゲインGFFを乗算して出力する。
積分回路707は、乗算器706からの出力信号を積分してフィードフォワード制御出力SFFNEWとして出力する。
以上の動作において、正側補正ゲインG+および負側補正ゲインG−は、オフセット補正装置612にて算出され、乗算器704および705に設定される。正側補正ゲインG+および負側補正ゲインG−を適切に設定することで、状態量に生じるオフセットを補正することが可能になる。
図17は、オフセット補正の原理を説明するための図である。図17は、図12(b)に示した応答(制御結果)において、状態量実績xFBの時間変化が正の場合のFF制御装置522の制御ゲインを変更したものである。図17に示すように、第1の領域Aでは、制御ゲインを正とし、第2の領域Bでは、制御ゲインを負とした。
第1の領域Aでは、状態量実績xFBが増大し、その後、状態量実績xFBが正側でオフセットした状態となり、第2の領域Bでは、状態量実績xFBが減少し、その後、状態量実績xFBが負側でオフセットした状態となる。
このようにフィードフォワード制御において、状態量実績xFBの時間変化が正の場合と負の場合とで制御ゲインを変更すると、状態量実績xFBの波形がピークとなる位置を変えずに、つまり状態量実績xFBの位相を変化させずに、オフセット位置を調整することができる。
上記の原理を利用して、オフセット補正装置612は、状態量実績xFBに基づいて、オフセット量を算出し、そのオフセット量を抑制するように正側補正ゲインG+および負側補正ゲインG−を算出することで、状態量実績xFBの振幅の最大値と最小値の中間(中央値)が零となるように正側補正ゲインG+および負側補正ゲインG−を算出する。
図18は、オフセット補正装置612の一例を示す図である。図18に示すオフセット補正装置612は、状態量オフセット測定装置801と、補正ゲイン演算装置802とを有する。
状態量オフセット測定装置801は、一定期間(例えば、制御外乱dACTの一周期)における、状態量実績xFBと目標値である状態量指令値xREFとの偏差の正のピーク値である最大値xと、負のピーク値である最小値xとを求める。状態量オフセット測定装置801は、その最大値xおよび最小値xに基づいて、状態量実績xFBの中央値(最大値xおよび最小値xの中点)の偏りΔxDIFF=x―|x|算出する。
補正ゲイン演算装置802は、状態量オフセット測定装置801にて算出された中央値の偏りΔxDIFFと、制御外乱dACTの振幅ΔdACTとに基づいて、正側補正ゲインG+および負側補正ゲインG−を算出する。
具体的には、補正ゲイン演算装置802は、先ず、制御外乱dACTの振幅ΔdACTを中央値の偏りΔxDIFFに変換する変換ゲインをβとした場合、補正ゲインの変化量αを、α=|ΔxDIFF|/|β・ΔdACT|から算出する。なお、フィードフォワード制御は、既知の制御外乱に対する制御であるため、制御外乱の振幅を予め算出しておくことは可能であり、制御外乱dACTと状態量との関係も予測可能である。したがって、変換ゲインβを予め算出しておくことは可能である。
続いて、補正ゲイン演算装置802は、変化量αに基づいて、正側補正ゲインG+および負側補正ゲインG−を算出する。
具体的には、偏りΔxDIFFが正の場合、補正ゲイン演算装置802は、正方向への制御出力を抑制し、負方向への制御出力を増大させるように、正側補正ゲインG+を1よりも大きくし、負側補正ゲインG−を1よりも小さくする。具体的には、補正ゲイン演算装置802は、正側補正ゲインG+=1−αとし、負側補正ゲインG−をG−=1+αとする。
一方、偏りΔxDIFFが負の場合、補正ゲイン演算装置802は、正方向への制御出力を増大し、負方向への制御出力を抑制させるように、正側補正ゲインG+を1よりも小さくし、負側補正ゲインG−を1よりも大きくする。具体的には、補正ゲイン演算装置802は、正側補正ゲインG+=1+αとし、負側補正ゲインG−をG−=1―αとする。
補正ゲイン演算装置802にて算出された正側補正ゲインG+および負側補正ゲインG−は、FF制御装置31に出力され、乗算器704および705に設定される。
図19および図20は、シミュレーションによる制御装置601の制御結果の一例を示す図である。図19および図20では、制御外乱dACTと状態量実績xFB(具体的には、状態量実績xFBと状態量指令値xREFとの偏差)とを示している。
図19(a)は、制御装置601による制御を行わない場合における、制御外乱dACTと状態量実績xFBとを示す。ここでは、状態量実績xFBは、制御外乱dACTに対して、2.5秒までは負側にオフセットしており、2.5秒以降では正側にオフセットしている。
図19(b)は、図11(b)に示した従来の制御装置501によるフィードフォワード制御のみを実施した場合における、制御外乱dACTと状態量実績xFBとを示す。この場合、状態量実績xFBの振幅は減少するが、状態量実績xFBのオフセットは残る。
図20(a)は、図11(b)に示した従来の制御装置501によるフィードフォワード制御および積分制御の両方を実施した場合における、制御外乱dACTと制御対象の状態量実績xFBとを示す。この場合、状態量実績xFBのオフセットは軽減されるが、状態量実績xFBの振幅は増大する。
図20(b)は、図15に示した本実施例の制御装置601による制御を実施した場合における、制御外乱dACTと状態量実績xFBとを示す。この場合、状態量実績xFBの振幅およびオフセットが減少し、さらには、状態量実績xFBの正のピーク値と負のピーク値とが略同じ値となる。
状態量実績の上限許容値を+0.5、下限許容値を−0.5とした場合、従来の制御装置501では、図20(a)の矢印で示したように状態量実績xFBは何度も許容値を超えるが本実施例の制御装置601では、図20(b)の矢印で示したように、状態量実績xFBが許容値を超えるのは、状態量実績xFBの最大値xおよび最小値xが判明する前の1回だけである。したがって、本実施例の制御装置601では、従来と比べて制御効果が高い。
本実施例によれば、FF制御装置611は、外乱偏差に乗算する補正ゲインとして、外乱偏差が状態量実績xFBを増加させる正方向に変化している場合には、外乱偏差に正方向補正ゲインを乗算し、外乱偏差が状態量実績xFBを減少させる負方向に変化している場合には、外乱偏差に負方向補正ゲインを乗算する。これにより、積分制御を含むフィードバック制御を行わずに、オフセット誤差を補正することが可能となるため、フィードフォワード制御の制御効果の低減を抑制しつつ、オフセット誤差を低減することが可能になる。
また、本実施例によれば、オフセット補正装置612は、状態量実績xFBと目標値である状態量指令値xREFとの偏差の中央値に基づいて、補正ゲインを調整する。これにより、状態量実績xFBの偏りを軽減することが可能になる。
また、本実施例によれば、中央値が正の場合、正方向補正ゲインを1よりも小さくし、かつ、負方向補正ゲインを1よりも大きくし、中央値が負の場合、正方向補正ゲインを1よりも大きくし、かつ、負方向補正ゲインを1よりも小さくする。これにより、状態量実績xFBの偏りを適切に軽減することが可能になる。
また、本実施例によれば、オフセット補正装置612は、中央値が零となるように補正ゲインを調整する。これにより、状態量実績xFBの偏りをより適切に軽減することが可能になる。
図21は、本開示の実施例2のプラント制御装置を示す図である。図21に示すプラント制御装置900は、図15に示した制御装置601と、制御装置901と、選択装置902とを有する。
制御装置901は、図11(b)に示した従来の制御装置501と同様な機能を有する第2の制御部である。具体的には、制御装置901は、外乱偏差に制御ゲインを乗算した制御出力を用いて制御対象プラント600が行う加工処理のフィードフォワード制御を実施し、かつ、状態量実績xFBと状態量指令値xREFとの偏差を積分した制御出力を用いて制御対象プラント600が行う加工処理の積分制御を実施する。
選択装置902は、外乱偏差に基づいて、制御対象プラント600が行う加工処理の制御を、制御装置601および901のいずれかに実行させる。
例えば、圧延における硬度ムラのように、制御外乱が他の外乱周波数成分に対して非常に大きく、従来の制御方法では状態量実績が許容範囲内に収まりづらい場合には、制御装置601による制御が望ましく、従来の制御方法でも、状態量実績が許容範囲に十分収まる場合には、制御装置901による制御を行ってもよい。したがって、選択装置902は、制御外乱の周波数および振幅の少なくとも一方に基づいて、制御装置601および901のいずれかに実行させてもよい。
以上説明したように本実施例では、適切な制御装置を用いて制御対象プラント600を制御することが可能となる。
上述した本開示の実施形態は、本開示の説明のための例示であり、本開示の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の範囲を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
なお、本開示は、実施例にしたタンデム圧延機100に適用できる。また、本開示は、タンデム圧延機100以外の、特に制御外乱が大きく、フィードフォワード制御が必要とされるプラントに対して適用することができる。例えば、本開示は、熱間圧延機における板厚制御、鉄鋼ラインにおける張力制御などの他のプラントにも適用することができる。
11〜14:圧延機 21〜24:駆動装置 31〜34:ロールギャップ制御装置 41〜44:板厚計 51〜54:張力計 61〜64:板厚制御装置 71〜74:張力制御装置 100:タンデム圧延機 600:制御対象プラント 601:制御装置 602:位相シフト要因 603:制御外乱源 611:FF制御装置 612:オフセット補正装置 701:差分回路 702:正フィルタ回路 703:負フィルタ回路 704〜706:乗算器 707:積分回路 711:遅延回路 801:状態量オフセット測定装置 802:補正ゲイン演算装置 901:制御装置 902:選択装置

Claims (8)

  1. 制御対象に関する状態量を変動させる変動要因に関する要因値に基づいて、前記制御対象が行う処理の制御を実施するプラント制御装置であって、
    前記要因値に補正ゲインを乗算した制御出力を用いて、前記処理のフィードフォワード制御を実施する第1の制御部と、
    前記状態量に基づいて、前記補正ゲインを調整する補正部と、を有し、
    前記第1の制御部は、前記補正ゲインとして、前記要因値が前記状態量を増加させる正方向に変化している場合には、前記要因値に正方向補正ゲインを乗算し、前記要因値が前記状態量を減少させる負方向に変化している場合には、前記要因値に負方向補正ゲインを乗算する、プラント制御装置。
  2. 前記補正部は、前記状態量の目標値からの偏差の中央値に基づいて、前記補正ゲインを調整する、請求項1に記載のプラント制御装置。
  3. 前記補正部は、前記中央値が正の場合、前記正方向補正ゲインを1よりも小さくし、かつ、前記負方向補正ゲインを1よりも大きくし、前記中央値が負の場合、前記正方向補正ゲインを1よりも大きくし、かつ、前記負方向補正ゲインを1よりも小さくする、請求項2に記載のプラント制御装置。
  4. 前記補正部は、前記中央値が零となるように前記補正ゲインを調整する、請求項2に記載のプラント制御装置。
  5. 前記要因値に制御ゲインを乗算した制御出力を用いて前記処理のフィードフォワード制御を実施し、かつ、前記状態量と目標値との偏差を積分した制御出力を用いて前記処理の積分制御を実施する第2の制御部と、
    前記要因値に基づいて、前記処理の制御を、前記第1の制御部および前記第2の制御部のいずれかに実行させる選択部と、を有する、請求項1に記載のプラント制御装置。
  6. 前記選択部は、前記要因値の周波数および振幅の少なくとも一方に基づいて、前記処理の制御を、前記第1の制御部および前記第2の制御部のいずれかに実行させる、請求項5に記載のプラント制御装置。
  7. 前記制御対象は、被圧延材を圧延により加工する圧延機であり、
    前記状態量は、前記被圧延材の厚板および前記被圧延材に加わる張力の少なくとも一方であり、
    前記処理は、前記被圧延材を圧延する圧延処理である、請求項1に記載のプラント制御装置。
  8. 制御対象に関する状態量を変動させる変動要因に関する要因値に基づいて、前記制御対象が行う処理の制御を行うプラント制御方法であって、
    前記要因値に補正ゲインを乗算した制御出力を用いて、前記処理のフィードフォワード制御を実施し、
    前記状態量に基づいて、前記補正ゲインを調整し、
    前記フィードフォワード制御の実施では、前記補正ゲインとして、前記要因値が前記状態量を増加させる正方向に変化している場合には、前記要因値に正方向補正ゲインを乗算し、前記要因値が前記状態量を減少させる負方向に変化している場合には、前記要因値に負方向補正ゲインを乗算する、プラント制御方法。
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