JP2021079351A - 優れた製膜性及び濾過分離特性を有するアルミナ質基体管 - Google Patents

優れた製膜性及び濾過分離特性を有するアルミナ質基体管 Download PDF

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【課題】無機濾過分離膜を用いたフィルター用の、優れた製膜性及び濾過分離特性を有するアルミナ質基体管の提供。【解決手段】次の要件(a)〜(g)を満たすアルミナ質基体管。(a)Al2O3の含有量が83.0〜94.0重量%、(b)SiO2の含有量が5.0〜14.0重量%、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物の含有量が1.0〜3.5重量%、SiO2含有量/アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物の含有量が2.0〜6.0、(c)気孔率が30〜50%、(d)バブルポイント法で測定した貫通気孔のモード径が0.20〜0.60μm、(e)バブルポイント法で測定した最大貫通気孔径/モード径が5.0以下、かつ、最小貫通気孔径/モード径が0.5以上、(f)基体管断面における直径30〜80μmの粗大気孔が5個/mm2以下、(g)液圧0.1MPaで透水させた時の純水透過流束が30〜60m3/m2/day。【選択図】図1

Description

本発明は、無機濾過分離膜を用いたフィルター用の、優れた製膜性及び濾過分離特性を有するアルミナ質基体管に関する。
近年、環境問題が深刻化し、上下水道の水処理や有毒性の有機溶剤の処理に色々な方法が採用されている。しかしどの方法もコストがかかり、特に従来採用されている有機濾過分離膜を用いる方法は、膜が水等で膨潤したり、腐食による濾過分離性能の低下等によって寿命が短くなり交換頻度が高くなるため、結果的にコスト増につながっている。そこで耐食性や耐熱性に優れたセラミックス製の無機濾過分離膜の採用が急増しているが、有機濾過分離膜に比べてコストが高く、コストに見合った濾過分離性能は得られていない。
セラミックス製の無機濾過分離膜は、セラミックス製の多孔質基体管の表面に製膜してフィルターとしての機能を発揮させる。したがって、優れた濾過分離性能を有する必要があることは当然であるが、濾過分離膜で分離した液体や気体を効率よく外部へ排出させることができる濾過分離能力の優れた基体管も重要である。更に基体管の表面に製膜する濾過分離膜の均一性によっても濾過分離能力が大きく変わるので、製膜後の濾過分離膜の状態も重要であり、そのため膜本来の特性を引き出すことができる製膜性に優れる基体管が必要不可欠である。基体管の気孔分布がシャープでない場合には、気孔径が大きい個所と小さい個所で製膜後の濾過分離膜の膜厚に差が生じ、結果的に各部分での濾過分離能力にバラツキが生じて、フィルターとしての濾過分離安定性が得られないことになる。
特許文献1には、気孔率、水銀圧入法で測定した気孔径及びバブルポイント法で測定した気孔径を特定の範囲内とすることにより、機械的特性、気体透過量及び透水量に優れ、良好な製膜性を実現できるアルミナ質からなる基体管の発明が開示されている。しかしながら、この発明は「従来の基体管より広い気孔径分布を示す」とあるように、気孔径分布を広くすることで気体透過量及び透水量を大きくしているに過ぎず、それに伴う気孔径のバラツキによる濾過分離能力への影響については全く考慮していない。
また特許文献2には、バブルポイント法で測定した貫通気孔のモード径と最大貫通気孔径、気孔率及び表面粗さを特定の範囲内にすることにより、良好な製膜性及び濾過分離能力を実現させたアルミナ質からなる基体管の発明が開示されている。しかしながら、この発明も特許文献1の発明と同様に気孔径分布を広くすることにより透水量を大きくすることを意図して、粉砕した粉体の粒度分布を広くさせる方法や粗い粉体と細かい粉体を混合して粒度分布をコントロールする方法を採用しているだけであり、気孔径のバラツキ等による濾過分離能力への影響については全く考慮していない。
更に、従来のアルミナ質からなる基体管の製造では精密に整粒された電融アルミナ粉体を用いることが多いが、コストが高くなるし、粒度を段階的に細かくして多層にした基体管でないと製膜し難い等の問題点があった。
特開2007−112678号公報 特開2008−94664号公報
本発明は前記従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、無機濾過分離膜を用いたフィルター用の、優れた製膜性及び濾過分離特性を有するアルミナ質基体管の提供を目的とする。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、アルミナ質基体管の表面に無機濾過分離膜を製膜する際に、基体管の気孔率や濾過分離能力(例えば純水透過流束)が高ければ良いわけではなく、基体管の各部分で気孔率及び気孔径を均一にして、基体管のどの部分でもバラツキがなく安定した濾過分離能力を有するようにしないと、無機濾過分離膜を製膜してフィルターとして用いても、濾過分離抵抗及び濾過分離能力の安定性に欠けるため、結果的に安定した濾過分離性能(濾過精度や分離能力など)を有するフィルターは得られないこと、また基体管の気孔径分布がシャープであれば、基体管の表面に製膜した無機濾過分離膜の膜厚及び膜孔径が均一となり、膜本来の特性を有する優れた濾過分離性能を有するフィルターが得られることから、貫通気孔のモード径及び該モード径と最大貫通気孔径や最小貫通気孔径とのバランスも非常に重要であって、可能な限り気孔径を均一にする必要があることを見出した。
そして、更に研究を重ねた結果、後述する要件(a)〜(g)を満たせば、無機濾過分離膜を用いたフィルター用の、優れた製膜性及び濾過分離特性を有するアルミナ質基体管が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、上記課題は、次の(1)の発明によって解決される。
(1) 次の要件(a)〜(g)を満たすことを特徴とする無機濾過分離膜を用いたフィルター用のアルミナ質基体管。
(a)Alの含有量が83.0〜94.0重量%
(b)SiOの含有量が5.0〜14.0重量%、アルカリ金属酸化物及びアルカリ
土類金属酸化物の含有量が1.0〜3.5重量%、「SiO含有量/アルカリ
金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物の含有量」が2.0〜6.0
(c)気孔率が30〜50%
(d)バブルポイント法で測定した貫通気孔のモード径が0.20〜0.60μm
(e)バブルポイント法で測定した最大貫通気孔径/モード径が5.0以下、
かつ、最小貫通気孔径/モード径が0.5以上
(f)基体管断面における直径30〜80μmの粗大気孔が5個/mm以下
(g)液圧0.1MPaで透水させた時の純水透過流束が30〜60m/m/da
本発明によれば、無機濾過分離膜を用いたフィルター用の、優れた製膜性及び濾過分離特性を有するアルミナ質基体管を提供できる。また、本発明のアルミナ質基体管は、アルミナ、シリカ、ゼオライト等のセラミックからなる無機濾過分離膜用の基体管として広く利用できる。更に、容易に入手できる安価なアルミナ原料粉体を用いることができる上に、該原料粉体に焼結助剤を加えて作製した粉砕・分散スラリー中の粒子の平均粒子径や粒度分布を制御するという方法で製造できるので、産業上非常に有用である。
実施例5と比較例2のアルミナ質基体管の断面を鏡面仕上げして走査電子顕微鏡で観察した写真。
以下、上記本発明の各構成要件について説明する。
・要件(a)について
本発明では、Alの含有量を83.0〜94.0重量%とする必要がある。好ましくは85.0〜92.0重量%である。含有量が83.0重量%未満では、SiOやアルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物量が増加し、ガラス相を多く形成するため焼結性が焼成温度に敏感となり、気孔率が低くなるし貫通気孔径も小さくなる。また、アルミナ結晶粒子界面にガラス相及び/又は第2相が多く形成されるため、機械的特性や耐食性の低下をきたす上に気孔径分布が広くなる。
一方、含有量が94.0重量%を越えると、アルミナ以外のガラス相を形成する材料であるSiOやアルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属の酸化物の含有量が少なくなるため、アルミナ結晶粒子界面のガラス相の量が少なくなり焼結性が低下する。そのため、所定の気孔率にするには焼成温度を高くする必要があるが、ガラス相が少ないため、気孔率及び気孔径を制御し難くなり、得られた基体管の貫通気孔のモード径が小さくなってしまう。また、アルミナ結晶同士の結合強度が低くなるため機械的特性が低下する。
・要件(b)について
本発明では、SiO含有量を5.0〜14.0重量%、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物の含有量を1.0〜3.5重量%、「SiO含有量/アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物の含有量」(SiO含有量と、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物の含有量の比)を2.0〜6.0とする必要がある。
好ましくはSiO含有量が5.0〜11.0重量%、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物の含有量が1.0〜3.0重量%、「SiO含有量/アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物の含有量」が2.5〜5.5である。
SiO含有量並びにアルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物の含有量だけでなく、「SiO含有量/アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物の含有量」も前記範囲内とすることにより、形成されるガラス相量及びガラス相の粘性が適正化され、本発明の範囲内の気孔率、気孔径及び気孔径分布を有する基体管を得ることができる。
なお、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物は珪石、長石、粘土等の形態で添加することが好ましい。
・要件(c)について
本発明では気孔率を30〜50%とする必要がある。好ましくは35〜45%である。気孔率が30%未満では貫通気孔量が低下し濾過分離能力の低下をきたす。一方、気孔率が50%を越えると粗大気孔が増加し易くなり、機械的特性の低下や基体管への無機濾過分離膜の製膜性の低下をきたし、均一な膜を製膜しにくくなる。
なお、気孔率の測定はアルキメデス法(JIS R 1634に準拠)で行う。
・要件(d)について
本発明ではバブルポイント法で測定した貫通気孔のモード径[要件(d)などにおいて「モード径」と略すこともある]を0.20〜0.60μmとする必要がある。好ましくは0.30〜0.50μmである。モード径が0.20μm未満では、製膜後のフィルターとしての濾過分離サイズは小さくなるが、濾過分離能力の低下をきたす。一方、モード径が0.60μmを越えると、濾過分離能力は向上するが基体管に製膜した無機濾過分離膜の均一性が低下し、その結果、濾過分離性能のバラツキが発生する。
なお、上記モード径は、ASTM F316−70に準拠し、媒体としてフッ素系不活性溶液を用いて測定する。
・要件(e)について
本発明では、バブルポイント法で測定した最大貫通気孔径、最小貫通気孔径、及び貫通気孔のモード径について、最大貫通気孔径/モード径が5.0以下、かつ、最小貫通気孔径/モード径が0.5以上とする必要がある。最大貫通気孔径/モード径は、好ましくは4.0以下であり、最小貫通気孔径/モード径は、好ましくは0.6以上である。最大貫通気孔径/モード径が5.0を越える場合及び/又は最小貫通気孔径/モード径が0.5未満の場合は、貫通気孔径分布が広いことになり、無機濾過分離膜を製膜したフィルター全体の濾過分離能力は高くなるが、貫通気孔径が大きい箇所と小さい箇所で膜厚や膜密度にバラツキが生じ、結果的にフィルターの各部分での濾過分離能力にバラツキが生じて、安定した濾過分離能力を得ることができない。なお、本発明のような安価な原料粉体を用いて粉砕・分散スラリー中の粒子の平均粒子径や粒度分布を制御する方法では、最大貫通気孔径/モード径の下限は2.0、最小貫通気孔径/モード径の上限は0.9程度である。
・要件(f)について
本発明では、基体管断面における直径30〜80μmの粗大気孔を5個/mm以下とする必要がある。更に20〜80μmの粗大気孔が5個/mm以下であることが好ましく、3個/mm以下であることがより好ましい。
基体管断面に粗大気孔があると、無機濾過分離膜を製膜した際に粗大気孔がある部分と無い部分で膜厚が変化し、フィルターの各部で濾過分離能力にバラツキが発生しやすくなり、濾過分離能力の安定性を欠くことになる。
なお、粗大気孔は基体管断面を研磨して鏡面仕上げを行った後、走査電子顕微鏡により500倍の倍率で観察して写真撮影し、画像面積1mm×1mmにおける20〜80μm又は30〜80μmの数を計測する。
・要件(g)について
本発明では、液圧0.1MPaで透水させた時の純水透過流束を30〜60m/m/dayとする必要がある。好ましくは35〜55m/m/dayである。純水透過流束が30m/m/day未満の場合は濾過分離能力が低下し、フィルターとしての能力を発揮できない。一方、純水透過流束が60m/m/dayを越えると、気孔率が高くなったり、気孔径が大きくなったり、気孔径分布が広くなったりして、濾過分離性能が低下する。また、気孔径が大きくなったり、気孔径分布が広くなると、基体管表面に製膜した膜の均一性が低下するため、濾過分離膜の性能の低下につながる。
上記純水透過流束は、外径φ12mm、内径φ9mm、長さ100mmの基体管をサンプルとして用い、25℃のイオン交換水により0.1MPaの液圧をかけた時の時間当たりの透水量と基体管の表面積に基づいて、下式により求めることができる。
Figure 2021079351
本発明のアルミナ質基体管は以下に示す方法で製造できる。
製造に際しては、原料粉体の粉砕・分散スラリー中の粒子の粒度分布を精密に制御することによって、貫通気孔のモード径が特定の範囲になるようにすること、及び最大貫通気孔径と最小貫通気孔径をモード径に対して特定の範囲内に制御することにより、貫通気孔径分布をシャープにすることが重要である。これにより、高い濾過分離能力に加えて、従来は基体管の濾過分離性能として殆ど指摘されていなかった濾過分離能力の圧力依存性及び短時間で濾過量を安定にさせるという特性を付与することができる。その結果、優れた製膜性及び濾過分離特性を有するアルミナ質基体管が得られる。
本発明ではアルミナ純度99重量%以上、好ましくは99.5重量%以上で平均粒子径4〜7μm、好ましくは5〜7μmのアルミナ原料粉体を用いる。原料粉体としては種々の製法で製造されたものを使用できるが、バイヤー法によるものが安価で好ましい。
アルミナ純度が99重量%未満の場合は基体管が含有する不純物量が多くなり、アルミナ結晶粒界に形成されるガラス相及び/又は第2相が多くなって、基体管の機械的特性等の低下を招く。また、平均粒子径が4μm未満の場合は焼結性が高くなるため、焼結体密度が焼成温度に敏感となり、気孔率及び気孔径を制御し難くなる。一方、平均粒子径が7μmを越えると粉砕・分散し難くなり、ひいては焼成した基体管の気孔径が大きくなり易い。
また、焼結助剤として添加するSiO、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物は、珪石、長石、粘土等の原料粉体の形態で添加する方がアルミナ原料粉体中に分散・混合し易いため好ましい。前記原料粉体の平均粒子径は0.5〜5μmとするが、好ましくは0.5〜3μmである。平均粒子径が0.5μm未満では分散し難くなり、アルミナ原料粉体中に均一に混合できなくなるし、5μmを越えると、アルミナ結晶粒界に形成されるガラス相の組成の均一性が低下すると共にアルミナ結晶粒界に存在するガラス相の大きさにもバラツキが生じ、結果として、気孔径分布が広くなったり、濾過分離時にフィルター供給する液体や気体の圧力依存性が大きくなったり、濾過分離が安定しない原因となる。
以上の原料を所定の組成及び重量比になるように配合し、湿式でポットミルやアトリッションミル等により、水を溶媒として粉砕・分散しスラリーとする。スラリー中の粒子の平均粒子径及び粒度分布は、粉砕・分散時の粉体濃度、分散剤の種類及び添加量、使用するボールサイズ及び充填量、処理時間を調整してコントロールする。
スラリー中の粒子の平均粒子径は3.0〜5.0μm、好ましくは3.5〜4.5μmとする。平均粒子径が3.0μm未満では焼結性が高くなり、形成される気孔径が小さくなり過ぎる。一方、平均粒子径が5.0μmを越えると粒子径分布が広くなり、粗大気孔が多くなったり気孔径分布が広くなったりして濾過性能の低下につながる。なお、本発明のような安価な原料粉体を用いて粉砕・分散スラリー中の粒子の平均粒子径や粒度分布を制御する方法では3.0μm程度が下限である。
上記平均粒子径は体積基準で粒度分析を行って累積が50%になった時の粒子径であるが、粒度分析の測定にはマイクロトラックベル社(旧日機装社)製のマイクロトラック MT3000を使用する。
また、スラリー中の粒子の粒度分布も貫通気孔径及びその分布を制御する上で重要であり、粒子径の累積が90%の時の粒子径:D90と、10%の時の粒子径:D10との差を5以下とする必要がある。差が5を越えると粒子径分布が広くなり充填性が向上するので、得られる基体管の貫通気孔のモード径は本発明の範囲内にできるが、十分に焼結しないため閉気孔として粗大気孔が残り易くなり好ましくない。
本発明の基体管は、上記スラリーを用いて種々の方法で成形することにより作製する。
例えば押出成形を採用する場合は、前記スラリーを乾燥・整粒し、これに公知の押出成形用バインダー(カルボキシルメチルセルロース、ワックスエマルジョン等)と水を加えて混合し、土練をして成形坏土とした後、所定の形状になるように成形する。
また、プレス成形を採用する場合は、前記スラリーに公知のバインダー(ワックスエマルジョン、PVA、アクリル樹脂等)を添加し、スプレードライヤーで乾燥させて成形用粉体を作製し、型を用いて成形する。
なお、従来の基体管は気孔を多く形成するためバインダーと一緒に気孔形成剤を添加する場合が多いが、本発明では気孔形成剤を添加すると気孔径サイズが大きくなったり気孔径分布が広くなって、気孔径分布の制御が難しくなるので添加しない。
得られた成形体を1250〜1500℃、好ましくは1300〜1450℃で焼成すれば本発明の基体管を作製することができる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。尚、例中の「%」は気孔率を除き「重量%」である。
実施例1〜8、比較例1〜9
純度99.5%、平均粒子径5.3μmの市販のアルミナ原料粉体に対し、平均粒子径1.3μmに粉砕した長石及び平均粒子径1.8μmの木節粘土を、表1の各実施例及び比較例の欄に示す組成になるように配合し、水を用いて湿式で12時間粉砕・分散してスラリーとした後、乾燥させて粉体を得た。
また、比較例1では純度99.9%、平均粒子径3.2μmの市販のアルミナ原料粉体を使用し、比較例2では、純度99.5%、平均粒子径5.3μmの市販のアルミナ原料粉体と比較例1と同じアルミナ原料粉体を50%ずつ混合したものを使用した。更に比較例8では粉砕・分散時間を6時間とした。
粉砕・分散したスラリー中の粒子の平均粒子径及び粒子径の累積が90%の時の粒子径:D90と10%の時の粒子径:D10との差を表1に示す。
次いで得られた粉体にバインダーのメチルセルロースと水を添加し、混合・混練・土練をして押出成形用坏土を作製した。また、比較例4では更に気孔形成剤を5%添加した。
次いで得られた押出成形用坏土を用いて押出成形し、1210〜1580℃で焼成して外径がφ12mm、内径が9mm、長さが100mmのアルミナ質基体管を作製した。
表2に、各基体管について、前述した方法で求めた各特性、及び以下の方法で測定した純水透過流束に対する液圧依存性と純水透過流束が安定するまでの時間を示す。
純水透過流束に対する液圧依存性は、各基体管に25℃のイオン交換水を使用して液圧0.015〜0.1MPaをかけた時に次式から得られるaの値(液圧依存係数)により評価した。式中のLは純水透過流束、Pは液圧、aは式の傾きである。

L(m/m/day)=a×P(MPa)+b

また、純水透過流束が安定するまでの時間は、上記と同じ方法により液圧0.1MPaで透水させた時に、時間当たりの透水量が一定になるまでの時間(秒)により評価した。
表2から判るように、本発明の要件を全て満たす基体管は、純水透過流束に対する液圧依存係数が400〜500、純水透過流束が安定するまでの時間が10〜30秒であり、優れた濾過分離性能を有している。液圧依存係数が500を越えると、基体管に無機濾過分離膜を製膜したフィルターで濾過分離を行った際のフィルターへの供給圧力が高くなり、安定した濾過分離ができなくなったりフィルターの破損等を生じるので好ましくない。
また、純水透過流束が安定するまでの時間が30秒を越えると、フィルターの断続運転が難しくなったり、短時間運転の安定性が低下するので好ましくない。
表1、表2において比較例1〜9が示す技術的意義は以下のとおりである。

比較例1:所定よりも平均粒子径が小さいアルミナ原料粉体を用いたため、粉砕・分散スラリー中の粒子の平均粒子径が所定の数値範囲よりも小さくなり、焼結性が高くなって気孔率が低く、純水透過流束も低くなり、その結果、液圧依存係数及び純水透過流束が安定するまでの時間について十分な特性が得られなかった例である。

比較例2:平均粒子径が異なる2種類のアルミナ原料粉体を用いたため、粉砕・分散スラリー中の粒子の粒度分布が広くなり、形成される気孔径分布が広くなり、同時に粗大気孔が残り、結果的に液圧依存係数について十分な特性が得られなかった例である。

比較例3:アルミナ含有量が規定範囲より少ないことにより、SiO含有量が多くなり、ガラス相量が増え、焼結が進み、気孔率及び純水透過流束が規定範囲よりも小さくなり、液圧依存係数及び純水透過流束が安定するまでの時間について十分な特性が得られなかった例である。

比較例4:押出成形用坏土に気孔形成剤を添加した結果、形成される気孔径が大きくなり、最大貫通気孔径/モード径が規定範囲を超えて気孔径分布が広くなってしまい、液圧依存係数及び純水透過流束が安定するまでの時間について十分な特性が得られなかった例である。

比較例5:「SiO含有量/アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物の含有量」が規定範囲より大きいため、ガラス相の粘性が適正化されず、気孔径制御がしにくくなり、結果として、純水透過流束が安定するまでの時間について十分な特性が得られなかった例である。

比較例6:アルミナ含有量が規定範囲より多いためアルミナ結晶粒子界面のガラス相量が少なくなって焼結性が低下し、その結果、気孔径の制御ができず、貫通気孔のモード径が既定値より小さくなって、液圧依存係数及び純水透過流束が安定するまでの時間について十分な特性が得られなかった例である。

比較例7:アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物の含有量が規定範囲よりも多いため、焼成時に形成されるガラス相の粘性を適正化できず、その結果、気孔径の制御ができなくて、最小貫通気孔径/モード径が規定範囲よりも小さくなり、液圧依存係数及び純水透過流束が安定するまでの時間について十分な特性が得られなかった例である。

比較例8:粉砕・分散粉体の平均粒子径及びD90−D10の数値が所定範囲より大きいため、焼結性が低くなり、気孔率を始め全ての基体管特性が規定範囲外となり液圧依存係数及び純水透過流束が安定するまでの時間について十分な特性が得られなかった例である。

比較例9:「SiO含有量/アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物の含有量」が小さいため、焼成中に形成されるガラス相の粘性が最適化されず、気孔分布が広くなり、純水透過流束が安定するまでの時間について十分な特性が得られなかった例である。
また、図1として実施例5と比較例2の基体管の断面を鏡面仕上げして走査電子顕微鏡で観察した写真を示す。
両者を対比すると、比較例2では幾つかの大きな気孔が散見されるが(代表的なものを○で囲って示した)、実施例5には、比較例2のような大きな気孔は全く見られない。

上記したように、表1〜表2及び図1に示した結果から、本発明のアルミナ質基体管は優れた製膜性及び濾過分離特性を有することが分かる。
Figure 2021079351
Figure 2021079351

Claims (1)

  1. 次の要件(a)〜(g)を満たすことを特徴とする無機濾過分離膜を用いたフィルター用のアルミナ質基体管。
    (a)Alの含有量が83.0〜94.0重量%
    (b)SiOの含有量が5.0〜14.0重量%、アルカリ金属酸化物及びアルカリ
    土類金属酸化物の含有量が1.0〜3.5重量%、「SiO含有量/アルカリ
    金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物の含有量」が2.0〜6.0
    (c)気孔率が30〜50%
    (d)バブルポイント法で測定した貫通気孔のモード径が0.20〜0.60μm
    (e)バブルポイント法で測定した最大貫通気孔径/モード径が5.0以下、
    かつ、最小貫通気孔径/モード径が0.5以上
    (f)基体管断面における直径30〜80μmの粗大気孔が5個/mm以下
    (g)液圧0.1MPaで透水させた時の純水透過流束が30〜60m/m/da


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