JP2021073884A - 碾茶飲料、作業能力向上用碾茶飲料、碾茶飲料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】原料茶である碾茶から抽出した抽出液の色調や旨味、風味を損なわず、しかも碾茶に含まれるテアニンの機能性が期待できる飲料の製造方法を提供する。【解決手段】原料茶である碾茶を常温の水に60分以外浸漬することでテアニンのカフェインに対するモル濃度比(テアニン/カフェイン)が0.9以上である碾茶抽出液を得る抽出工程S1と、碾茶抽出液を水で希釈することによりテアニンを300ppm以上、カフェインを200ppm以上含有する碾茶飲料を得る希釈工程S2と、を経る碾茶飲料の製造方法とした。【選択図】図1
Description
本発明は、碾茶飲料、及び碾茶飲料の製造方法に関するものである。
抹茶の原料である碾茶は、一定期間太陽の光を遮って栽培(被覆栽培)された茶の新芽を用いて製造される。被覆栽培された茶は、煎茶などの露天栽培された茶と比較して、旨味・甘味のテアニンを主体とする遊離アミノ酸類の含有量が高く、渋味のカテキン類が少ないという特徴がある。
一般的な煎茶や、碾茶と同様に被覆栽培された玉露などの揉み茶は、蒸された茶葉を揉みながら乾燥させて製造されるため、茶葉の内容成分を短時間で湯水によって抽出することが容易であり、一般的に湯水による抽出液が利用されている。
一方、碾茶は、茶葉を揉まずに比較的高温で乾燥させて、葉と茎を分別した後の葉の部分を使用する。碾茶の葉は粉砕用原料として大きさを揃えて仕立てられ、最終的に石臼や粉砕機等で粉砕し、茶をそのまま摂取する抹茶として利用されている。
碾茶は、被覆栽培茶の特徴である強い旨味と製造法特有の風味を有するため、飲料の抽出原料として活用できれば、これまでにない旨味と風味を有する緑茶飲料となることが期待される。
現在、工業的に生産されている緑茶飲料は、瓶入り飲料、紙パック入り飲料、ペット(PET)ボトル飲料等、様々な形態で市販されており、一般的には、煎茶や玉露などの抽出用原料をニーダーと呼ばれる抽出機で攪拌もしくは攪拌せずに茶葉を浸漬して所定時間経過後、遠心分離、濾過等の適当な分離手段を採用して清澄な緑茶抽出液を得て、これを加熱殺菌して製造される。緑茶の抽出方法においては、これまでに茶の風味を活かせる種々の抽出方法が採用されている。例えば、茶葉の旨味、コク、香ばしさ、喉越し感等の諸条件をバランスさせた緑茶飲料の製造法として、下記特許文献1には玉露の茶葉を最適条件で抽出し、深蒸茶の茶葉を最適条件で抽出した抽出液と混合する方法が開示されている。一方、香気香味の変化し易い緑茶飲料の製造方法では、色調や香味、保存性に優れていることが要求され、さらには加熱殺菌処理によって生成するレトルト臭を防止することが重要であり、そのための製造方法が多数提案されている。例えば、特許文献2には、茶類を20℃以下の冷水で抽出して得た冷水抽出液を除去した後、その残渣の茶類を30〜95℃の温水で再抽出し加熱殺菌する方法が開示されている。
ここで、煎茶やかぶせ茶と比較すると、碾茶にはアミノ酸の主体であるテアニンが多く含まれている。テアニンは、リラックス効果や睡眠の質、集中力の向上が期待できる機能性成分として近年注目されているが、拮抗する成分としてカフェインも茶には含まれている。このため、テアニンの効果を最大限期待するのであればカフェインの濃度(モル濃度)はテアニンと同程度以下の方が望ましいとされている(非特許文献1)。
村松敬一郎著、「茶の機能 生体機能の新たな可能性」株式会社学芸出版センター出版、2002年3月1日、p.309―313
しかしながら、碾茶は揉まずに製造されるものであるため、煎茶や玉露と異なって抽出に一定の時間がかかり、また抽出条件によっては旨味のアミノ酸と同時に苦味のカフェインも溶出し、テアニンの機能性効果や味のバランスが崩れ、碾茶特有の風味が失われる。さらに緑茶飲料を生産する場合において、食品衛生上の観点から一般的に加熱殺菌処理が行われるが、アミノ酸濃度が高い碾茶抽出液では、加熱処理による色調の劣化やレトルト臭がより強くなり、抽出液の外観・風味を著しく劣化させる。
これらのことから、碾茶抽出液の色調や旨味、風味を損なわず、しかも碾茶に含まれるテアニンの機能性が期待できるような生産コストを抑えた緑茶飲料の製造方法が要望されていた。
なお、低カフェインの容器詰緑茶飲料に関して、テアニン含有量が比較的高い飲料の発明もなされている(例えば特許文献3)。同文献に記載された容器詰緑茶飲料におけるカフェインの濃度(mg/L)に対するテアニンの濃度(mg/L)の百分率(テアニン/カフェイン×100)は10.0以上(単純な比率としてテアニン/カフェインで表すと0.10以上)であるとは記載されているものの、同文献の表3に示された例では実施例4の58.34%(テアニン/カフェイン比にして0.58)が最大値であり、最も大きい数値として開示されている比較例1においても88.27%(テアニン/カフェイン比にして0.88)であって、テアニンのカテキンに対する割合が同程度以上になるような例は示されていない。また、この容器詰飲料中のカフェインの濃度は90ppm(同文献において、ppm=mg/L)以上とされているのに対して、テアニンの濃度は8ppm以上(最大値でも比較例1の48.9ppm)であって、何れも摂取濃度として高いものとはいえない。そもそも同文献は低カフェイン茶飲料の製法に関するものであり、原料茶種として適用可能なものに碾茶は含まれておらず、実施例なども、製造法から判断すると、煎茶について試験されたものである。
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、主たる目的は、碾茶抽出液の色調や旨味、風味を損なわず、しかも碾茶に含まれるテアニンの機能性が期待できる碾茶飲料、及び碾茶飲料の製造方法を提供することにある。
すなわち本発明に碾茶飲料は、碾茶と水を原料とする飲料であって、テアニンを300ppm(300mg/L)以上、カフェインを200ppm(200mg/L)以上含有し、テアニンのカフェインに対するモル濃度比(テアニン/カフェイン)が0.9以上であることを特徴とするものである。ここで、テアニンの分子量は174.20g/molであり、カフェインの分子量は194.19g/molである。
本発明者は、複数の検証を重ねた結果、このような条件を満たす本発明に係る碾茶飲料はこれまでに存在せず、このような碾茶飲料であれば、一般に市販されている煎茶飲料と比較して、苦味や渋味が少なく、旨味が強い緑茶飲料であることを見出した。
特に、本発明に係る碾茶飲料において、テアニンをカフェインと同程度以上含有するものとするには、テアニンのカフェインに対するモル濃度比(テアニン/カフェイン)が1.0以上であることが好ましい。
このような本発明に係る碾茶飲料であれば、テアニンによるリラックス効果などを保ちつつ、カフェインによる集中力や作業効率の向上効果が見込まれる作業能力向上用碾茶飲料として市場に提供することができる。
本発明者は、上記の条件を満たす碾茶飲料を飲んだ場合に、同濃度のカフェイン水や、水を飲んだ場合と比べて、被験者がリラックスしながらも、暗算計算能力が向上するという試験結果を得た(詳細は後述する)。
また、上記のような碾茶飲料の製法として見出した本発明は、原料茶として碾茶を用いて水で抽出した碾茶飲料の製造方法であって、碾茶を常温の水に60分以外浸漬することでテアニンのカフェインに対するモル濃度比(テアニン/カフェイン)が0.9以上である碾茶抽出液を得る抽出工程と、この碾茶抽出液を水で希釈することによりテアニンを300ppm以上、カフェインを200ppm以上含有する碾茶飲料を得る希釈工程と、を経ることを特徴としている。
特に、本発明では、抽出工程において、原料茶である碾茶の水に対する割合を2〜5質量%としたり、抽出工程における抽出温度を15〜30℃とすることが、製造コストや製造に要する時間において有利であり、テアニンとカフェインの両方を多く含み、且つテアニンのカフェインに対するモル濃度比が0.9以上である碾茶飲料の生産に適している。
本発明に係る碾茶飲料の製造方法は、抽出工程において、水に浸漬した碾茶を少なくとも静置または撹拌の何れか一方の状態とする態様も包含する。
さらに、希釈工程で得られた碾茶飲料または抽出工程で得られた碾茶抽出液をフィルタに通して濾過除菌するフィルタリング工程を含む製造方法によれば、濾過除菌することで、加熱殺菌時のようなレトルト臭の発生を避けつつ、碾茶抽出液の色調・風味を維持しながら食品衛生上の保存要件を満たす碾茶飲料を得ることができる。
以上に述べたように、本発明によれば、碾茶抽出液の色調や旨味、風味を損なわず、テアニン濃度が高く、カフェイン濃度を抑制し、テアニンの機能性を享受可能な碾茶飲料、碾茶飲料の製造方法を提供することができ、作業能力向上用碾茶飲料という機能性飲料としても提供することができる。
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る碾茶飲料は、図1に示すように、原料茶である碾茶を常温の水に60分以内浸漬することでテアニンの濃度のカフェインの濃度に対するモル濃度比(テアニン/カフェイン)が0.9以上である碾茶抽出液を得る抽出工程S1と、碾茶抽出液を水で希釈することによりテアニンを300ppm(mg/L)以上、カフェインを200ppm(mg/L)以上含有する碾茶飲料を得る希釈工程S2と、抽出工程S1で得られた碾茶抽出液をフィルタに通して濾過除菌するフィルタリング工程S31または希釈工程S2で得られた碾茶飲料をフィルタに通して濾過除菌するフィルタリング工程S32とを経ることで製造することが可能な飲料である。なお、同図に示す2回のタイミングでフィルタリング工程S31、S32を実施して製造した碾茶飲料であってもよい。
原料茶である碾茶は、一定期間太陽の光を遮って栽培(被覆栽培)された茶の新芽を用いて製造される。新芽の生育中、茶園を遮光資材で被覆し、一定期間光を遮って育てる被覆栽培を採用すると、光を遮ることで鮮緑色と独特の芳香やまろやかな旨味や甘味のある茶になる。このような被覆栽培によって生育した碾茶は、露天で栽培される煎茶等と比較して、旨味・甘味のテアニンを主体とする遊離アミノ酸類の含有量が高く、渋味のカテキン類が少ないという特徴がある。
被覆方法には、棚掛け被覆と直掛け被覆があり、棚掛け被覆は、茶園に棚を建て、その棚に資材を被覆して遮光する方法で品質の高い被覆茶を作り出すことが可能である。棚掛け被覆としては、茶の新芽生育期の一定期間、茶園上の被覆棚に、葦簀(よしず)を広げ、その上に稲わらを満遍なく振り広げることで遮光をする「本ず被覆」と呼ばれる被覆方法や、被覆資材である寒冷紗を棚に二重に重ねて被覆する「二重被覆」、または寒冷紗を棚に一重ねで被覆する「一重被覆」と呼ばれる被覆方法が知られている。二重被覆の遮光度は一重被覆の遮光度よりも高い。
直掛け被覆は、寒冷紗や表面が銀色の資材を茶株面に直接被覆して遮光する方法であり、棚掛け被覆に比べてコストが低いというメリットがある。
本実施形態において抽出対象となる碾茶は、茶園での摘採方法が手摘みもしくは機械摘みの何れであってもよく、また収穫期も特に限定されない。
旨味に寄与するテアニンを中心とするアミノ酸類は、比較的低い水温でも溶出する。一方、苦味を呈するカフェインや渋味のカテキン類は、抽出温度が高いほど溶出し易く、また抽出時間が長いほど溶出し易くなる。また、テアニンの機能性を期待する上では、できる限りテアニン濃度を高め、カフェイン濃度はテアニン濃度と同程度以下にすることが好ましい。
したがって、本実施形態の抽出工程S1における抽出温度は15〜30℃であることが好ましい。また抽出工程S1における抽出時間(抽出に要する時間)は、飲料工場等での製造を想定して生産コストや製造ラインの稼働時間等を考慮すると、60分以内の抽出時間が好ましい。本実施形態に係る碾茶飲料の製造方法において、通常、茶を淹れる際の水に対する茶葉の割合と抽出後の希釈率、並びにテアニンとカフェインの量を考慮すると、抽出に用いる原料茶葉量は、抽出に用いる水の質量に対して2〜5%量であり、好ましくは4%量である。5%量を超えると水面から浮く茶葉の量が多くなり、抽出効率が向上しない。
抽出工程S1では、例えばニーダーと呼ばれる抽出機で攪拌したり、もしくは攪拌せずに茶葉を浸漬して抽出して得た本実施形態の碾茶抽出液に対して、遠心分離、濾過等のフィルタリング処理(フィルタリング工程S31)を実施することで、清澄な碾茶抽出液を得ることができる。抽出に用いる水としては、地下水や水道水等の原水、あるいはこれらの原水について両イオン交換処理を行った純水などを用いればよい。
このようにして得られた碾茶抽出液に、必要に応じて適量の水を加水する(希釈工程S2)。必要により、抗酸化性のビタミン類やpH調節剤としての重曹などを添加することもできる。
一般的に食品衛生上の観点から緑茶飲料の抽出液は、高温(例えば120〜140℃)で数十秒間保持する瞬間高温殺菌処理後に所定量を瓶、紙パック、ペットボトル容器等にホットパック充填あるいは低温で無菌充填されたり、あるいは所定量を缶に充填後、レトルト殺菌(例えば110℃〜140℃で数十分間)処理などが行われる。
本実施形態における碾茶抽出液は、煎茶を原料とした緑茶飲料に比べてアミノ酸含有量が高く、加熱を伴う殺菌処理を行うと抽出液の色調や風味が劣化し易い。色調変化の抑制にはビタミンCを添加することで一定の効果が得られるが、レトルト臭を抑制することは困難である。このため、本実施形態では、碾茶抽出液の食品衛生上の処理として、フィルタリング工程S31において例えば孔径0.2μm以下のフィルタによる非加熱濾過除菌処理を実施し、碾茶抽出液の風味を維持している。
本発明者は、このような知見を以下に説明する検証実験の結果から得た。先ず、原料茶の選定及び栽培方法の違いに関する検証実験及び結果を説明する(検証1)。
<検証1の内容:抽出方法>
イオン交換水500gに粒度を揃えた碾茶各試料20gを加え、所定温度の水浴中で攪拌機によって攪拌しながら抽出し、茶漉しで濾した碾茶抽出液を0.45μmフィルタで濾過し、適宜希釈してHPLC分析に供した。本実施形態では、碾茶抽出液中に含有するカフェインをカテキン類と同時に測定し、またテアニンは他の遊離アミノ酸類と同時に測定した。
<検証1の内容:抽出方法>
イオン交換水500gに粒度を揃えた碾茶各試料20gを加え、所定温度の水浴中で攪拌機によって攪拌しながら抽出し、茶漉しで濾した碾茶抽出液を0.45μmフィルタで濾過し、適宜希釈してHPLC分析に供した。本実施形態では、碾茶抽出液中に含有するカフェインをカテキン類と同時に測定し、またテアニンは他の遊離アミノ酸類と同時に測定した。
カフェイン及びカテキン類については、碾茶抽出液を適宜希釈後、フィルタ(0.45μm)で濾過し、HPLC分析に供した。HPLCの分析条件は以下の通りである。分析装置:株式会社島津製作所 Prominenceシステム[システムコントローラ:CBM-20A、送液ポンプ:LC-20AB、脱気ユニット:DGU−20AR、オートインジェクタ:SIL−10AF、カラムオーブン:CTO−20AC、吸光度検出器:SPD−20A]、分析条件:[カラム:野村化学株式会社 Develosil ODS−HG、溶離液A:4.5%アセトニトリル/水0.05%85%リン酸、溶離液B:50%アセトニトリル/水0.05%85%リン酸、流速1.0ml、カラム温度40℃、検出:UV231nm]
テアニン及び他のアミノ酸については、碾茶抽出液を適宜希釈後、フィルタ(0.45μm)で濾過し、OPA誘導体化試薬によって誘導体化し、HPLC分析に供した。HPLCの分析条件は以下の通りである。分析装置:株式会社島津製作所 Prominenceシステム[システムコントローラ:CBM-20A、送液ポンプ:LC-20AB、脱気ユニット:DGU−20AR、オートインジェクタ:SIL−10AF、カラムオーブン:CTO−20AC、蛍光検出器:RF−20Axs]、分析条件:[カラム:野村化学株式会社 Develosil ODS−HG、溶離液A:5%アセトニトリル/5mMクエン酸緩衝液(pH6.0)、溶離液B:70%アセトニトリル/5mMクエン酸緩衝液(pH6.0)、流速1.0ml、カラム温度40℃、検出:Ex340nm、Em450nm]
当該検証では、図2に示すように、複数の碾茶抽出液をサンプルとして用意し、サンプル毎にパラメータである被覆方法(被覆条件)、抽出温度、抽出時間の組み合わせを異ならせた。具体的には、被覆方法が上述の本ず被覆、二重被覆、一重被覆、または直掛け被覆の何れかであり、抽出温度が30℃または40℃であり、抽出時間が30分または60分であるサンプルを用いて検証した。なお、カテキン類は5倍希釈し、アミノ酸は50倍希釈してHPLC分析に供している。希釈してもテアニンとカフェインのモル濃度比は変わらないが、図2に示したテアニンとカフェインの含有量は、希釈して分析して得られた値から、実際の抽出液1Lあたりの含有量に換算したものである。
<検証結果>
図2及び図3に示すように、テアニン/カフェイン比(モル濃度比)が最大となるのは、二重被覆の栽培方法で育った碾茶を30℃の抽出温度で30分抽出したサンプル(図中「二30℃−30m」)であった。また、本ず被覆、二重被覆、直掛け被覆の栽培方法で育った碾茶を用いたサンプルは、30℃または40℃の抽出温度で30分または60分抽出した場合、カフェイン及びテアニンの含有量が比較的多く、テアニンとカフェインのモル濃度比は同等程度かそれ以上(この検証での最小値は1.17)であることが判明した。
図2及び図3に示すように、テアニン/カフェイン比(モル濃度比)が最大となるのは、二重被覆の栽培方法で育った碾茶を30℃の抽出温度で30分抽出したサンプル(図中「二30℃−30m」)であった。また、本ず被覆、二重被覆、直掛け被覆の栽培方法で育った碾茶を用いたサンプルは、30℃または40℃の抽出温度で30分または60分抽出した場合、カフェイン及びテアニンの含有量が比較的多く、テアニンとカフェインのモル濃度比は同等程度かそれ以上(この検証での最小値は1.17)であることが判明した。
一方、一重被覆の栽培方法で育った碾茶は、抽出温度及び抽出時間の如何を問わず、カフェイン及びテアニンの含有量が少なく、テアニン/カフェイン比(モル濃度比)が0.7未満となることが判明した。
また、碾茶抽出液サンプル中のテアニン、カフェインの各濃度については、本ず被覆、二重被覆、直掛け被覆の各栽培方法で育った碾茶を用いた場合、いずれもテアニンがカフェインよりも多く、テアニンが825〜1289mg/L(ppm)、カフェインが556〜1004mg/L(ppm)であった。一方、一重被覆で育った碾茶を用いた場合は、テアニンよりもカフェインが多く、テアニンが262〜287mg/L(ppm)、カフェインが419〜578mg/L(ppm)であった。
次に、本発明者は、検証1においてテアニン/カフェイン比(モル濃度比)が最も高く1.88を示したサンプルに基づく碾茶飲料と、市販されているペットボトル入り煎茶飲料とを比較し、本実施形態に係る碾茶飲料の優位性を検証した(検証2)。
〈検証2の内容:抽出方法〉
具体的には、被覆栽培された茶生葉(品種:あさひ、被覆方法:寒冷紗二重被覆、手摘み摘採)を碾茶機で製茶し、得られた荒茶を葉と茎に分別して、葉の部分を篩にかけ、8号篩上に残った碾茶を抽出用の原料とした。この碾茶80gを、検証1の結果を踏まえて30℃のイオン交換水2000gに加え、30分間ゆっくりと攪拌しながら抽出し(抽出工程S1)、金属製のフィルタで抽出液と抽出残渣を分別し(フィルタリング工程S31)、1551gの抽出液(Brix:1.2)を得た。この碾茶抽出液を段階的に希釈し(希釈工程S2)、孔径0.2μmのフィルタを用いてクロスフロー方式にて濾過装置と抽出液容器間をポンプで循環させて濾過除菌した(フィルタリング工程S32)。
具体的には、被覆栽培された茶生葉(品種:あさひ、被覆方法:寒冷紗二重被覆、手摘み摘採)を碾茶機で製茶し、得られた荒茶を葉と茎に分別して、葉の部分を篩にかけ、8号篩上に残った碾茶を抽出用の原料とした。この碾茶80gを、検証1の結果を踏まえて30℃のイオン交換水2000gに加え、30分間ゆっくりと攪拌しながら抽出し(抽出工程S1)、金属製のフィルタで抽出液と抽出残渣を分別し(フィルタリング工程S31)、1551gの抽出液(Brix:1.2)を得た。この碾茶抽出液を段階的に希釈し(希釈工程S2)、孔径0.2μmのフィルタを用いてクロスフロー方式にて濾過装置と抽出液容器間をポンプで循環させて濾過除菌した(フィルタリング工程S32)。
〈検証結果〉
以上の処理を経て製造した碾茶抽出液、及び碾茶抽出液を希釈した碾茶飲料に関して、14名のパネラーによる嗜好調査を行ったところ、碾茶抽出液を2倍希釈した碾茶飲料の評価が高かった(14名中8名が良好と回答)。碾茶抽出液を2倍希釈した碾茶飲料は、図4に示すように、テアニン濃度が3.5mmol/L(含有量354ppm)であり、カフェイン濃度が2.5mmol/L(含有量249ppm)であり、テアニン/カフェイン比(モル濃度比)が1.4であった。
以上の処理を経て製造した碾茶抽出液、及び碾茶抽出液を希釈した碾茶飲料に関して、14名のパネラーによる嗜好調査を行ったところ、碾茶抽出液を2倍希釈した碾茶飲料の評価が高かった(14名中8名が良好と回答)。碾茶抽出液を2倍希釈した碾茶飲料は、図4に示すように、テアニン濃度が3.5mmol/L(含有量354ppm)であり、カフェイン濃度が2.5mmol/L(含有量249ppm)であり、テアニン/カフェイン比(モル濃度比)が1.4であった。
また、碾茶抽出液を2倍希釈した本実施形態に係る碾茶飲料と市販のペットボトル入り煎茶飲料の味を客観的に比較するため、味認識装置(株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー社製TS−5000Z)で比較評価したところ、図5に示す結果となった。すなわち、本実施形態に係る碾茶飲料は、煎茶を主原料とした市販ペットボトル緑茶飲料と比較して、苦味、渋味が低く、舌に残る旨味(コク)は高いという評価であった。また、機器センサによる味評価では、本実施形態に係る碾茶飲料が、市販のペットボトル入り煎茶飲料とは異なる風味を有する飲料であると判断された。したがって、碾茶抽出液を希釈した本実施形態に係る緑茶飲料は新たな風味の緑茶飲料として評価できると考えられる。
次に、抽出条件として、抽出温度、抽出時間、及び抽出時における撹拌の有無に着目した検証内容及び検証結果について説明する(検証3)。
〈検証3の内容:抽出方法〉
具体的には、被覆栽培された茶生葉(品種:あさひ、被覆方法:寒冷紗二重被覆、手摘み摘採)を碾茶機で製茶し、得られた荒茶を葉と茎に分別して、葉の部分を篩にかけ、8号篩上に残った碾茶を抽出用の原料とした。この碾茶40gを所定の抽出温度のイオン交換水1000gに加え、茶葉が水に十分浸漬したのを確認してから、無攪拌または撹拌しながら所定の抽出時間浸漬し続け、浸漬後に抽出された液体及び不溶物を金属製のフィルタで抽出液と抽出残渣に分別することによって所定量の碾茶抽出液を得た。
具体的には、被覆栽培された茶生葉(品種:あさひ、被覆方法:寒冷紗二重被覆、手摘み摘採)を碾茶機で製茶し、得られた荒茶を葉と茎に分別して、葉の部分を篩にかけ、8号篩上に残った碾茶を抽出用の原料とした。この碾茶40gを所定の抽出温度のイオン交換水1000gに加え、茶葉が水に十分浸漬したのを確認してから、無攪拌または撹拌しながら所定の抽出時間浸漬し続け、浸漬後に抽出された液体及び不溶物を金属製のフィルタで抽出液と抽出残渣に分別することによって所定量の碾茶抽出液を得た。
このような工程によって得た碾茶抽出液に関して、図6に示すように、抽出温度を20℃、30℃または40℃に設定し、抽出時間が15分、30分または60分であり、さらに撹拌の有無によって抽出条件を異ならせた複数のサンプルを用いて検証した。
〈検証結果〉
テアニン/カフェイン比(モル濃度比)が最大となるのは、20℃の抽出温度で15分間、撹拌せずに抽出したサンプルであり、その値は、1.6であった。また、20℃または30℃の抽出温度で15分、30分または60分抽出した場合、撹拌の有無が何れであっても、カフェイン及びテアニンの含有量が比較的多く、且つその殆どのサンプルはテアニン/カフェイン比(モル濃度比)が0.9以上(小数第2位を四捨五入)であることが判明した。また、テアニン/カフェイン比(モル濃度比)が0.9以上であるサンプルに関して、抽出温度及び抽出時間が同じ条件であれば、「撹拌あり」よりも「撹拌なし」の方がテアニン/カフェイン比(モル濃度比)は高くなる傾向であることも判明した。さらに、テアニン/カフェイン比(モル濃度比)が0.9以上であるサンプルに関して、抽出温度及び撹拌の有無が同じ条件であれば、抽出時間が短い方(60分よりも30分、また30分よりも15分)がテアニン/カフェイン比(モル濃度比)は高くなる傾向であることも判明した。なお、30℃、60分、撹拌ありの条件で得たサンプルのテアニン/カフェイン比(モル濃度比)が0.8であったのは、実験誤差またはエラー、サンプルの個体差等の原因が種々考えられるが、確実な原因究明には至っていない。但し、検証1における同条件のサンプルでは1.6という高いテアニン/カフェイン比(モル濃度比)が得られている。また、検証1と検証2〜4でテアニン/カフェイン比(モル濃度比)が同条件で異なる原因について確実な原因究明には至ってはいないが、抽出水の量の変動がテアニン/カフェイン比の変動の原因の一つと推察される。
テアニン/カフェイン比(モル濃度比)が最大となるのは、20℃の抽出温度で15分間、撹拌せずに抽出したサンプルであり、その値は、1.6であった。また、20℃または30℃の抽出温度で15分、30分または60分抽出した場合、撹拌の有無が何れであっても、カフェイン及びテアニンの含有量が比較的多く、且つその殆どのサンプルはテアニン/カフェイン比(モル濃度比)が0.9以上(小数第2位を四捨五入)であることが判明した。また、テアニン/カフェイン比(モル濃度比)が0.9以上であるサンプルに関して、抽出温度及び抽出時間が同じ条件であれば、「撹拌あり」よりも「撹拌なし」の方がテアニン/カフェイン比(モル濃度比)は高くなる傾向であることも判明した。さらに、テアニン/カフェイン比(モル濃度比)が0.9以上であるサンプルに関して、抽出温度及び撹拌の有無が同じ条件であれば、抽出時間が短い方(60分よりも30分、また30分よりも15分)がテアニン/カフェイン比(モル濃度比)は高くなる傾向であることも判明した。なお、30℃、60分、撹拌ありの条件で得たサンプルのテアニン/カフェイン比(モル濃度比)が0.8であったのは、実験誤差またはエラー、サンプルの個体差等の原因が種々考えられるが、確実な原因究明には至っていない。但し、検証1における同条件のサンプルでは1.6という高いテアニン/カフェイン比(モル濃度比)が得られている。また、検証1と検証2〜4でテアニン/カフェイン比(モル濃度比)が同条件で異なる原因について確実な原因究明には至ってはいないが、抽出水の量の変動がテアニン/カフェイン比の変動の原因の一つと推察される。
一方、抽出温度が40℃である場合には、抽出時間、撹拌の有無に依らず、カフェイン及びテアニンの含有量が比較的多いものの、テアニン/カフェイン比(モル濃度比)が0.9未満になる割合が大きいことが判明した。40℃、15分、撹拌ありの条件で得たサンプルと、40℃、15分、撹拌なしの条件で得たサンプルがそれぞれ0.9以上の値を示したが、抽出に用いる水を40℃に昇温・保温する必要があることを考慮すると、常温と呼べる30℃で抽出する場合と比べて、生産コストの面で不利であると考えられる。
続いて、本発明者は、検証3の結果を踏まえて、抽出時に撹拌はせず、より低温の抽出温度で抽出した碾茶抽出液を用いて以下の検証(検証4)を行った。
〈検証4の内容:抽出方法〉
当該検証試験では、被覆栽培された茶生葉(品種:さみどり、被覆方法:寒冷紗二重被覆、手摘み摘採)を碾茶機で製茶し、得られた荒茶を葉と茎に分別して、葉の部分を篩にかけ、8号篩上に残った碾茶を抽出用の原料とした。この碾茶40gを所定の抽出温度のイオン交換水1000gに加え、茶葉が水に十分浸漬したのを確認してから、無攪拌で所定の抽出時間浸漬し続け、浸漬後に抽出された液体及び不溶物を金属製のフィルターで抽出液と抽出残渣に分別することによって所定量の碾茶抽出液を得た。
当該検証試験では、被覆栽培された茶生葉(品種:さみどり、被覆方法:寒冷紗二重被覆、手摘み摘採)を碾茶機で製茶し、得られた荒茶を葉と茎に分別して、葉の部分を篩にかけ、8号篩上に残った碾茶を抽出用の原料とした。この碾茶40gを所定の抽出温度のイオン交換水1000gに加え、茶葉が水に十分浸漬したのを確認してから、無攪拌で所定の抽出時間浸漬し続け、浸漬後に抽出された液体及び不溶物を金属製のフィルターで抽出液と抽出残渣に分別することによって所定量の碾茶抽出液を得た。
このような工程によって得た碾茶抽出液に関して、図7に示すように、抽出温度を15℃、20℃または25℃に設定し、抽出時間を30分、45分または60分に設定することで抽出条件を異ならせた複数のサンプルを用いて検証した。なお、上述の通り、検証3による結果を踏まえて当該検証4では撹拌せずに抽出した碾茶抽出液をサンプルにしている。
〈検証結果〉
テアニン/カフェイン比(モル濃度比)が最大となるのは、15℃の抽出温度で30分抽出したサンプルであり、その値は、1.46であった。また、15℃、20℃または25℃の抽出温度で30分、45分または60分抽出した場合、カフェイン及びテアニンの含有量が比較的多く、且つ全てのサンプルはテアニン/カフェイン比(モル濃度比)が0.9以上であることが判明した。さらに、抽出温度が同じであれば、抽出時間が短い方(60分よりも45分、また45分よりも30分)がテアニン/カフェイン濃度比(モル濃度比)は高くなる傾向であることも判明した。
テアニン/カフェイン比(モル濃度比)が最大となるのは、15℃の抽出温度で30分抽出したサンプルであり、その値は、1.46であった。また、15℃、20℃または25℃の抽出温度で30分、45分または60分抽出した場合、カフェイン及びテアニンの含有量が比較的多く、且つ全てのサンプルはテアニン/カフェイン比(モル濃度比)が0.9以上であることが判明した。さらに、抽出温度が同じであれば、抽出時間が短い方(60分よりも45分、また45分よりも30分)がテアニン/カフェイン濃度比(モル濃度比)は高くなる傾向であることも判明した。
以上の検証1〜4から、発明者は、碾茶の風味はそのままに、テアニン濃度が高く、カフェイン濃度も高いながら抑制された新しいタイプの飲料製造方法として、抽出工程S1における抽出温度を15℃〜30℃にすることが適していることを見出した。製造現場で用いられ易い抽出条件も考慮すると、抽出水も加温が必要となると、その分製造コストが掛かるため、常温の水を用いることが可能である点は有利である。また、加熱するとカテキンが変性して、苦味や渋味が増すことから、加熱を要しない抽出条件で抽出した碾茶抽出液は、苦味や渋味を抑えることができる。
さらに、本実施形態に係る碾茶飲料の製造方法によれば、希釈工程S2で得られた碾茶飲料または抽出工程S1で得られた碾茶抽出液をフィルタに通して濾過除菌するフィルタリング工程S31、S32を含むため、風味を損なうことなく殺菌処理を行うことができる。
次に、テアニン濃度のカフェイン濃度に対するモル濃度比(テアニン/カフェイン)が0.9以上である本実施形態に係る碾茶飲料は、テアニンを300ppm以上、カフェインを200ppm以上含有していることの根拠を説明する。
本発明者が行った官能検査(嗜好調査)の結果、飲料用に適した抽出液濃度は、Brixの値(Brix濃度)が0.4〜0.6であることが好ましいと判明した。図6及び図7に示すように、検証3及び検証4において碾茶抽出液(各サンプル)のBrixの値は1前後であることから、2倍程度に希釈することで飲料用に適した碾茶飲料になる。したがって、上記各検証で用いたサンプル(碾茶抽出液)を2倍希釈する希釈工程S2を経ると、希釈工程S2前と比較してテアニン濃度及びカフェイン濃度がそれぞれ5割に低下(半減)した碾茶飲料を得ることになる。なお、希釈工程S2の前後でテアニン/カフェイン比(モル濃度比)は変化しない。
そして、検証1、検証3及び検証4の結果に基づくと、検証データのうちテアニン/カフェイン比(モル濃度比)が0.9以上であるサンプルのうち最も低いテアニン濃度が613mg/Lであることから、希釈工程S2後(2倍希釈)に得る碾茶飲料のテアニン濃度は306.5mg/Lであり、下限値は概ね300ppmであると根拠付けることができる。また、検証3及び検証4の結果に基づくと、検証データのうちテアニン/カフェイン比(モル濃度比)が0.9以上であるサンプルのうち最も低いカフェイン濃度が444mg/Lであることから、希釈工程S2(2倍希釈)後に得る碾茶飲料のカフェイン濃度は222mg/Lであり、下限値は概ね200ppmであると根拠付けることができる。なお、希釈工程S2における希釈倍率は、茶葉の品種、生産地、生産時期により必ずしも2倍希釈が最適になるとは限らないため、希釈倍率の幅を考慮して、テアニンとカフェインの含有量の下限値は試験結果から少し幅を持たせている。
次に、機能性飲料である作業能力向上用碾茶飲料としての作用について、本発明者が依頼した京都府立医科大学大学院医学研究科免疫学の渡邊瑛理氏による試験及び評価結果「テアニン高含有緑茶の作業効率・疲労改善効果についての研究 平成31年3月25日、報告受領」を紹介しながら説明する。
20〜30歳の健康な男性105名を碾茶群、カフェイン水群、水群の3群に振り分け、60分間の暗算作業をさせて、暗算作業得点、及び生理心理学的指標を比較する無作為化二重盲検群間比較試験を行い、暗算作業得点のベースラインが同じ54名で比較した結果、図8に示すように、碾茶飲料を摂取すると、暗算作業の得点が向上し、特に60分の作業のうち40分以降の暗算作業で差が出始めた。なお、碾茶群、カフェイン水群、水群の各対象者に供与した飲料200mlの成分構成は以下の通りである。
碾茶群:碾茶飲料 成分構成:テアニン(115mg/200ml)、カフェイン(109mg/200ml) テアニン/カフェインのモル比=1.18
カフェイン水群:色素で染めた緑色カフェイン水 成分構成:カフェイン(109mg/200ml)
水群:色素で染めた緑色水
カフェイン水群:色素で染めた緑色カフェイン水 成分構成:カフェイン(109mg/200ml)
水群:色素で染めた緑色水
対象者のもともとの暗算能力にばらつきがあるため、開始1〜8分の時点で同じような得点の者54名を抽出して、3飲用群で比較すると非常に分かり易い結果が得られ、碾茶群、カフェイン水群、水群の順に、暗算作業の得点が有意に高いという結果になった(図8)。同図に示すように、40〜48分、50〜58分といった後半の暗算作業得点で、飲料条件による差が見られ、水群よりも碾茶群の方が高得点であり、碾茶群がカフェイン水群よりもやや高得点であった。また、水群では40〜48分、50〜58分の試験後半で、前半よりも得点が下がっていたが、碾茶群、カフェイン水群では逆に得点が上がっていた。特に、水群と碾茶群の暗算得点の時間経過による変化が有意に異なることが示され、前半では同様の点数だった者が、碾茶を飲むと暗算作業40〜48分、50〜58分時点で、水群と比較して有意に高い得点を出したことが明らかになった。
また、図示しない生理心理学的指標に関して、碾茶群は、「はりつめた、緊張した」という項目での得点が試験40〜48分時に他の2群と比較して有意に低く、全体的にもカフェイン水群より有意に低い傾向が見られた。さらに、碾茶群は水群に比べて、「精神的に疲れた」「不安な・うつ」「肩がこる、目が疲れる」「はりつめた・緊張した」「いらいらした」という項目で全体的に得点が低く、有意な傾向が見られた。特に碾茶飲料で優れていたのは、作業時の「肩がこる、目が疲れる」「はりつめた・緊張した」「いらいらした」感情や感覚を緩和する効果であった。
碾茶飲料とカフェイン水には、どちらにも否定的な感情(精神的に疲れた、不安な、うつ、だるい・無気力)を減らす作用があった。碾茶飲料にも同等のカフェインが含まれているが、例えばテアニンのような、副交感神経系を亢進させるような別の成分によって、交感神経系の亢進が和らげられていると考えられる。感情の変化も、カフェイン水群では急速にポジティブに変換するが、碾茶は穏やかに転換し、むしろ緊張緩和や疲労緩和などに関する感情が見られたことからも、カフェイン以外の成分が影響していることが考えられる。
カフェイン水、碾茶飲料により自律神経が活性化することと、暗算得点の高さには関連があると考えられる。同じような暗算得点で抽出した54名では、カフェイン水よりも碾茶飲料の方が、感情が穏やかに変化したにも関わらず、碾茶飲料群で得点が高かった。また、カフェイン水では、摂取して作業負荷試験を行った後、ストレスホルモンである遊離コルチゾールが急速に上昇したが、碾茶ではコルチゾールの急速な上昇が見られなかった。つまり、この事実からも、カフェインによる感情の急激な興奮や、ストレスホルモンの急激な上昇を抑えるカフェイン以外の別の成分が、碾茶に含まれており、作用したと考えられる。
以上の試験結果より、碾茶飲料は、作業効率を上げながらも作業者の不快感、緊張感や疲労を改善し、リラックス効果をもらすことが明らかになった。したがって、本実施形態に係る碾茶飲料を作業能力向上用碾茶飲料として提供することができる。
以上に詳述したように、碾茶と水を原料とし、テアニンを300ppm以上、カフェインを200ppm以上含有し、テアニンの濃度のカフェインの濃度に対するモル濃度比(テアニン/カフェイン)が0.9以上である本実施形態に係る碾茶飲料は、市販のペットボトル茶(煎茶)と比較して、苦味や渋味が少なく(弱く)、旨味が強い飲料であり、且つ作業能力向上にも寄与する画期的な飲料である。
なお、本発明は上述した実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
S1…抽出工程
S2…希釈工程
S31、S32…フィルタリング工程
S2…希釈工程
S31、S32…フィルタリング工程
Claims (8)
- 碾茶と水を原料とする碾茶飲料であって、テアニンを300ppm以上、カフェインを200ppm以上含有し、テアニンのカフェインに対するモル濃度比が0.9以上である碾茶飲料。
- テアニンのカフェインに対するモル濃度比が1.0以上である請求項1に記載の碾茶飲料。
- 碾茶と水を原料とする碾茶飲料であって、テアニンを300ppm以上、カフェインを200ppm以上含有し、テアニンのカフェインに対するモル濃度比が0.9以上である作業能力向上用碾茶飲料。
- 原料茶として碾茶を用い、当該碾茶を水で抽出した碾茶飲料の製造方法であって、
前記碾茶を常温の水に60分以外浸漬することでテアニンのカフェインに対するモル濃度比が0.9以上である碾茶抽出液を得る抽出工程と、
前記碾茶抽出液を水で希釈することによりテアニンを300ppm以上、カフェインを200ppm以上含有する碾茶飲料を得る希釈工程と、
を経ることを特徴とする碾茶飲料の製造方法。 - 前記抽出工程において、原料茶である碾茶の水に対する割合を2〜5質量%としている請求項4に記載の碾茶飲料の製造方法。
- 前記抽出工程における抽出温度を15〜30℃としている請求項4または5に記載の碾茶飲料の製造方法。
- 前記抽出工程において、水に浸漬した碾茶を少なくとも静置または撹拌の何れか一方の状態とする請求項4乃至6の何れかに記載の碾茶飲料の製造方法。
- 前記希釈工程で得られた碾茶飲料または前記抽出工程で得られた碾茶抽出液をフィルタに通して濾過除菌するフィルタリング工程を含む請求項4乃至7の何れかに記載の碾茶飲料の製造方法。
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CN113841760A (zh) * | 2021-09-30 | 2021-12-28 | 北京小罐茶业有限公司 | 一种茶与咖啡混合的饮料及其制备方法 |
-
2019
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