JP2021065244A - 内視鏡用処置具 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡単な操作により短時間で病変部の周囲を切開することができる内視鏡用処置具を提供することを目的とする。【解決手段】本内視鏡用処置具(1)は、内視鏡装置(100)のチャンネル(102)に挿入可能なシース(10)と、前記シース内に、自身の長手軸方向に進退可能に挿通される接続ワイヤ(30)と、前記接続ワイヤの先端に設けられ、前記シースの先端開口(11)から突出可能であり、導電性部材からなる切開部(20)と、を備え、前記切開部は、自身の先端から基端側へ所定の位置までの先端領域の太さが0.2mm未満の線状部材で構成されていることを特徴とする。【選択図】図2

Description

本発明は、内視鏡用処置具に関する。
従来、初期の悪性腫瘍などの治療において、例えばEMR(内視鏡的粘膜切除術)やESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)のように、消化管等の管腔臓器内の粘膜上に発生した病変を経内視鏡的に切除する手技が行われている。病変組織を切除するための内視鏡用処置具として、高周波ナイフや高周波スネアが使用されている。
内視鏡用のスネアは、例えば、特許文献1から特許文献3の内視鏡用処置具のように、シースと、シース内に軸線方向に進退可能に挿通された操作ワイヤと、操作ワイヤに連結された弾性ワイヤからなるスネアループと、を有するように構成される。特許文献1から特許文献3にそれぞれ開示されたスネアループは、超弾性ワイヤをスネアループの先端で曲げ戻して形成されている。このようなスネアでは、操作ワイヤを軸線方向に進退させると、スネアループがシースの先端から突没する。スネアループがシースの先端から突出した状態では、スネアループの開き幅は自身の弾性によって拡大する。拡大した状態のスネアループは、シース内に引き込まれることによって窄まる。
ESDでは、管腔臓器内の粘膜上に発生した病変を経内視鏡的に切除する際、必要に応じて切除対象の組織の下部に膨隆剤を注入して病変部を隆起させた後、高周波ナイフを用いて病変の周囲の組織を切開し、その後切開部を少しずつ剥離していく。このとき、術者は、内視鏡を介して、高周波ナイフが切除対象となる病変組織の近傍に位置するまで、高周波ナイフを体内に挿入する。
EMRでは、管腔臓器内の粘膜上に発生した病変を経内視鏡的に切除する際、膨隆剤を注入して病変部を隆起させた後、術者は、切除対象の組織の根元にスネアループをかけて、操作ワイヤを基端側へ牽引する。これによって、スネアループの一部がシース内に引き込まれ、スネアループの開き幅が小さくなる。その結果、切除対象の組織がスネアループで緊縛されて、この緊縛状態で高周波電流が供給されて、切除対象の組織が消化管から切除される。
特開2008−206996号公報 特開平10−014922号公報 特開2002−224136号公報
Gastrointest Endoscopy Clin N Am 24 (2014) 191−199
大腸でESDが行われる場合、内視鏡挿入部先端は主に進退方向の移動となり、可動範囲に制約がある上に、腸管と内視鏡との相対位置が固定されない為、病変部の全周および粘膜下層を高周波ナイフで切開剥離するには高度な技能が必要である。また、EMRが行われる場合、高周波スネアを腫瘍にひっかけるのも高度な技能を要する。特許文献3の内視鏡用処置具では、病変部に対するスネアワイヤの位置を制止させるため、スネアワイヤのループの内側に突出した爪部を備える滑止部材がスネアワイヤに複数取り付けられている。しかし、滑止部材の爪部を病変部の周囲に係止させるためには時間を要する。
また、大腸等の場合、腸壁が薄いため、EMR時にスネアループで組織を緊縛する量が多過ぎると伸縮性の乏しい筋層を巻き込み切開操作により腸壁に穿孔が生じるおそれがあり、一定の大きさ(2cm以下)の腫瘍しかスネアでの切除ができなかった。そのため、スネアをかける前に、腫瘍の全周を高周波ナイフで切開することで、伸縮性の高い粘膜下層のみをスネアで掴み、より大きな腫瘍をスネアで切除することができる(非特許文献1)。本方法は、ハイブリッドESDや全周切開EMRと呼ばれる。この場合、全周切開が高周波ナイフの作業となるため、慎重な操作が必要となり、従来のEMRと比較して処置の時間が長期化するという課題があった。
本発明者らは、高周波ナイフによる病変部の周囲切開を簡便化すれば、従来のEMRよりもより大きな腫瘍がEMRレベルの簡便で短時間の処置で切除できると考えて、本発明に至った。
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、簡単な操作により短時間で病変部の周囲を切開することができる内視鏡用処置具を提供することを目的とする。
本発明の第一の態様に係る内視鏡用処置具は、内視鏡装置のチャンネルに挿入可能なシースと、前記シース内に、自身の長手軸方向に進退可能に挿通される接続ワイヤと、前記接続ワイヤの先端に設けられ、前記シースの先端開口から突出可能であり、導電性部材からなる切開部と、を備え、前記切開部は、自身の先端から基端側へ所定の位置までの先端領域の太さが0.2mm未満の線状部材で構成されていることを特徴とする。
本発明の第二の態様として、第一の態様に係る内視鏡用処置具では、前記切開部は、前記先端領域の太さが0.1mm未満であってもよい。
本発明の第三の態様として、第一または第二の態様に係る内視鏡用処置具は、前記切開部の前記先端領域に少なくとも一つの錘を有していてもよい。
本発明の第四の態様として、第一の態様に係る内視鏡用処置具では、前記シース内にウォータージェット機能を備えてもよい。
本発明によれば、簡単な操作により短時間で病変部の周囲を切開することができる内視鏡用処置具を提供することができる。
本発明の第1実施形態に係る内視鏡用処置具の全体図である。 本発明の第1実施形態に係る内視鏡用処置具を用いた組織切開方法を示す模式図である。 本発明の第1実施形態に係る内視鏡用処置具を用いた組織切開方法を示す模式図である。 本発明の第1実施形態に係る内視鏡用処置具を用いた組織切開方法を示すフローチャートである。 本発明の第1実施形態に係る切開部の変形例を示す平面図である。 本発明の第2実施形態に係る内視鏡用処置具を示す平面図である。 本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る内視鏡用処置具の変形例を示す全体図である。
(第1実施形態)
図1及び図2を参照して、本実施形態に係る内視鏡用処置具1について説明する。図1は、本実施形態に係る内視鏡用処置具1の全体図である。図1に示すように、本実施形態に係る内視鏡用処置具1は、シース10と、接続ワイヤ30と、全周切開デバイス(切開部)20と、操作部40とを備えている。図1では、全周切開デバイス20を除き長手軸X方向に沿った断面図を示している。内視鏡用処置具1は、内視鏡装置100の内視鏡挿入部110に形成された処置具チャンネル102に挿通されて使用される(図2参照)。
シース10は、長手軸Xに沿って延びて形成されており、体腔内に挿入可能な長尺部材である。シース10は、絶縁性を有する素材、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素樹脂で形成されている。シース10は、可撓性を有し、体腔内で管腔組織等の湾曲形状に沿って、内視鏡の処置具チャンネル(不図示)に挿抜可能に構成されている。シース10には全長にわたってルーメン12が形成されており、先端開口11と基端開口13とを有する。シース10の基端には操作部40が設けられており、基端開口13と操作部40の先端開口44とが連通している。
接続ワイヤ30は、シース10のルーメン12内に挿通され、基端部が操作部40に配置され、先端部がシース10の先端部まで延設されている。接続ワイヤ30は導電性部材からなる撚り線ワイヤ31であり、外周面が非導電部材32で覆われている。接続ワイヤ30の先端部には全周切開デバイス20が設けられている。
全周切開デバイス20は、接続ワイヤ30の先端部に接続されている。本実施形態では、切開部として、接続ワイヤ30の先端に閉ループ形状のワイヤで構成される周切開デバイス20が設けられ、全周切開デバイス20の基端部が電気的かつ物理的に接続ワイヤ30に接続されている。具体的には、接続ワイヤ30の導電性の撚り線ワイヤ31部分と全周切開デバイス20の基端部とが、通電可能に接続されている。
全周切開デバイス20は、直径0.1mmの単線ワイヤからなる。全周切開デバイス20は、例えば、ステンレス、タングステン等の導電性部材で形成されている。すなわち、本実施形態の全周切開デバイス20は、従来の高周波スネアワイヤに比べて、細径であり、それゆえ柔軟性が高い。そのため、内視鏡用処置具1の全周切開デバイス20は、シース10のルーメン12から突出すると、自重により撓んで湾曲する。従来の高周波スネアは超弾性ワイヤにより構成されているため、シースの先端から突出した状態でもシースの軸線に沿った位置に維持可能である。これに対し、本実施形態に係る内視鏡用処置具1の全周切開デバイス20は細径で柔軟性が高いことにより、シース10の先端から突出すると撓んで、切開対象となる組織に沿って全周切開デバイス20の略全域が付着する。
全周切開デバイス20を構成するワイヤの直径(太さ)は0.2mm未満である。直径0.2mm未満の細径の導電性ワイヤに従来の高周波スネアと同等の高周波電流を流すと、従来の高周波スネアに比べて組織の切開性能が高い。その結果、全周切開デバイス20を組織に付着させて高周波電流を流すのみで、組織が容易に切開される。なお、全周切開デバイス20を構成するワイヤの長手軸方向に直交する方向の断面形状は円形に限定されるものではない。全周切開デバイス20を構成するワイヤの太さとは、ワイヤの長手軸方向に直交する方向の最大寸法を意味する。
全周切開デバイス20は、全周切開デバイス20の先端から基端側へ所定の位置までの先端領域20dの太さが0.2mm未満の線状部材で構成されていればよい。先端領域20dが形成される全周切開デバイス20の先端から基端側へ所定の位置は、切除対象となる病変部Pの大きさにより適宜設定される。病変部Pの一括切開を考慮すると、内視鏡挿入部110の挿入方向(長手軸方向)における病変部Pの寸法の1.2〜2.0倍の長さを所定の長さであると、一回の通電で広範囲の切開が可能である。
全周切開デバイス20の先端領域の太さを、更に0.1mm未満とすると、より高密度の高周波電流を全周切開デバイス20に流すことができる。さらに、切除対象の組織に対する全周切開デバイスの付着面積が小さくなり、組織への密着性が向上する。加えて、全周切開デバイス20の長手軸方向に直交する方向における切除対象の組織に付着する部分の寸法が極めて小さくなるため、極狭い領域に高周波電流が集中して流れるため、組織が切開されやすく、かつ、鋭利に切開される。この結果、スネアで病変部を緊縛しながら高周波電流を付加する従来の高周波スネアに比べると簡易な操作で、全周切開デバイス20に沿って組織が綺麗に切開される。したがって、全周切開デバイス20の形状に沿って鮮明な切り口か形成される。
操作部40は、図1に示すように、シース10の基端部に接続された操作部本体41と、操作部本体41に取り付けられたスライダ42と、コネクタ43とを備える。
スライダ42には、接続ワイヤ30が接続されている。そのため、スライダ42を操作部本体41に対して進退させることによって、接続ワイヤ30がシース10に対して進退し、シース10の先端側において、全周切開デバイス20がシース10に対して突没動作される。本実施形態では、スライダ42を操作部本体41に対して前進させるとシース10の先端開口11から全周切開デバイス20が突出される。スライダ42を操作部本体41に対して後退させると全周切開デバイス20が順次シース10の内部に収容される。
コネクタ43は、図示しない高周波電源装置に接続可能であり、接続ワイヤ30の基端と接続されている。コネクタ43は、高周波電源装置から供給された高周波電流を接続ワイヤ30に供給可能である。接続ワイヤ30が全周切開デバイス20と電気的に接続されているため、高周波電源装置から供給された高周波電流は、接続ワイヤ30を介して全周切開デバイス20に伝達される。
次に、内視鏡用処置具1の使用態様について、内視鏡用処置具1を用いて大腸にできた病変部(早期癌等)Pを切除する粘膜下層切開方法を例に説明する。図2及び図3は、内視鏡用処置具1の使用例を示す模式図である。図4は、内視鏡用処置具1を用いた粘膜下層切開方法(組織切開方法)を示すフローチャートである。
準備作業として、術者は、公知の方法により病変部Pを特定し、病変部Pを膨隆させる。具体的には、内視鏡装置100の内視鏡挿入部110を大腸内に挿入し、術者は内視鏡101で得られる画像を観察しながら病変部Pを特定する。次に、公知の粘膜下局注針(不図示)を内視鏡挿入部110の処置具チャンネル102に挿通し、粘膜下局注針により、病変部Pと筋層W3との間に局注用の液体(膨隆剤)を注入し病変部Pを膨隆させる。膨隆剤を注入後、粘膜下局注針は処置具チャンネル102から抜去する。
続いて、内視鏡用処置具1を処置具チャンネル102に挿入し、内視鏡挿入部110の先端から突出させる。内視鏡101の画像を確認しながら、シース10の先端部を病変部Pの上方まで突出させる(ステップS1)。その後、操作部40のスライダ42を操作部本体41に対して前進させ、シース10の先端開口11から全周切開デバイス20の先端を突出させると、全周切開デバイス20が病変部Pよりも先端側に配置される。全周切開デバイス20は細径であり、柔軟性が高く、自重により湾曲可能である。したがって、シース10の先端開口11から押し出されると、全周切開デバイス20が撓んで湾曲し粘膜組織に沿って当接する。この状態で、内視鏡挿入部110または内視鏡用処置具1を適宜進退させて、全周切開デバイス20が粘膜層の表面に当接しながら後退して、図2に示すように、病変部Pを囲むように全周切開デバイス20が配置され、全周切開デバイス20が病変部Pの周囲の粘膜層W1に密着する(ステップS2)。
全周切開デバイス20は細径なワイヤからなるため、全周切開デバイス20を粘膜層W1上に配置して付着させるだけで粘膜層W1の粘性により密着する。したがって、全周切開デバイス20を粘膜層W1に強く押し付ける操作や、全周切開デバイス20を粘膜層W1に強く押し付けるための構造が不要となり、簡便な操作で全周切開デバイス20を粘膜層W1に密着させることができる。
なお、このとき、予め、粘膜層に公知の生体接着剤を塗布した後に全周切開デバイス20を配置すると、全周切開デバイス20が粘膜層にさらに密着しやすくなる。
続いて、術者が高周波電源装置を操作して、コネクタ43及び接続ワイヤ30を介して全周切開デバイス20に高周波電流を供給する。このとき、最初に、全周切開デバイス20が付着する粘膜層W1が先に切開され、続いてその下の層である粘膜下層W2にスネア21が付着して切開される。全周切開デバイス20が細径であるため、従来の高周波切開具と同程度の電流量でも、高周波密度が高くなる。そのため、短時間(数秒)で、全周切開デバイス20が付着した部分の粘膜層W1及び粘膜下層W2が切開される(ステップS3)。つまり、全周切開デバイス20を粘膜層W1上に付着させるステップに続いて高周波電流を供給するステップを行うことにより、粘膜層W1及び粘膜下層W2が、全周切開デバイス20に沿って切開される。その後、全周切開デバイス20または、処置具チャンネル102から内視鏡用処置具1を抜去して従来の高周波スネアを挿入し、全周切開デバイス20または従来の高周波スネアを絞って病変部Pを緊縛することで、腫瘍が一括切除できる(ステップS4)。
この他、病変部Pの周囲を全周切開デバイス20で囲んだ状態で内視鏡全体を手前側に引きながら全周切開デバイス20に高周波電流をかけることで、全周切開デバイス20が先端から基端に向かって移動しながら組織を切開し、最終的に病変部Pを簡単に一括切除できる。この結果、従来のように病変部Pを緊縛する必要がないため、筋層W1を切開することを防げる。そのため、本実施形態に係る内視鏡用処置具1は、従来のESDよりも短時間で簡便に全周切開ができ、また従来のEMRよりも大きな腫瘍が一括切除でき、またハイブリッドESDや全周切開EMRのように高周波ナイフでの粘膜層及び粘膜下層の切開方法のように長時間の繊細な作業を必要とすることなく、容易に処置対象部位の切開が可能となる。
本実施形態における切開部(全周切開デバイス20)による組織の「切開」とは、病変部Pの周囲の組織を切り開くことを指す。したがって、組織の「切開」とは、本実施形態のように粘膜層及び粘膜下層に切り込みを入れて、病変部Pを大腸から切離させる前の段階を含む。
また、「病変組織の切除」とは、粘膜層及び粘膜下層に切り進めて病変部Pを大腸から切離させることを指す。
本実施形態に係る内視鏡用処置具1によれば、組織を切開するための全周切開デバイス20が導電性部材からなり、全周切開デバイス20の先端から基端側へ所定の位置までの先端領域20dの太さが0.2mm未満の極細の線状部材で構成されているため、全周切開デバイス20に高周波電流を供給すると、全周切開デバイス20に高密度の高周波電流が流れる。その結果、高密度の高周波電流が流れる全周切開デバイス20を切除対象の組織(粘膜組織)に付着させるだけで、従来のスネアを縮径させる作業をせずに組織が切開できる。その結果、従来のESDやハイブリッドESDや全周切開EMRのように病変部の周囲を高周波ナイフで長時間繊細な作業で切開する必要がなく短時間で切開できる。
また、高密度の高周波電流が流れる全周切開デバイス20を粘膜組織に付着させるだけで粘膜組織が切開可能であるため、全周切開デバイス20への通電時間により切開量(切開する深さ)が調整できる。その結果、組織の過剰な切開を防ぐことができ、大腸のように腸壁が薄い組織であっても容易に粘膜層W1及び粘膜下層W2のみを切開できる。
本実施形態に係る内視鏡用処置具1によれば、全周切開デバイス20を構成する線状部材は細く柔軟性が高いため、シース10の先端開口11から突出した全周切開デバイス20が切除対象組織に密着し易い。したがって、全周切開デバイス20全体が粘膜層W1に密着した状態で高周波電流が供給されることになり、全周切開デバイス29が付着している部分の粘膜層W1及び粘膜下層W2を短時間の通電で一括切開可能となる。その結果、短時間の一回の通電で広範囲の切開が可能となり、病変部の周囲の切開を短時間で行うことができる。
また、本実施形態に係る内視鏡用処置具1によれば、全周切開デバイス20を構成する線状部材の直径を細くすることで、従来の高周波スネアと同等の高周波電流を全周切開デバイス20に流すのみで全周切開デバイス20に接触している組織が切開可能である。したがって、既存の高周波電流供給装置を使用可能であり、汎用性が高い。
上記実施形態では、全周切開デバイス20の閉ループ形状部分全体の導電性ワイヤが露出しており、全周切開デバイス20の全体が切開部を構成する例を示したが、切開部は少なくとも先端領域20dに形成されていればよい。例えば、図5に示すように、全周切開デバイス20の先端から所定範囲の先端領域20dは導電性ワイヤが露出し、接続ワイヤ30を覆う非導電部材32を先端側に延設させて先端領域20dよりも基端側の導電性ワイヤを覆う構成であってもよい。この場合、導電性ワイヤの露出した部分が切開部とし機能する。
この他、接続ワイヤ30の先端と全周切開デバイス20の基端との接続部分が、接続ワイヤ30を覆う非導電部材32により覆われることにより、Y字状の分岐部を形成してもよい。このように、分岐部を形成することにより、高い柔軟性を有する全周切開デバイス20であっても全周切開デバイス20のループ形状を保持し易くすることができる。
この他、図5に示すように、全周切開デバイス20の先端領域20dに錘241,242,243を設けてもよい。錘241,242,243は、全周切開デバイス20が病変部Pの周囲の組織に付着する箇所を除く部分に設けることにより、全周切開デバイス20を病変部Pの周囲の組織に密着しやすくすることができる。錘を設ける場合、全周切開デバイス20の先端領域に少なくとも一つの錘を設けることにより、全周切開デバイス20の密着性を補助する効果が得られる。図5に示す例では、スネア21の先端部の錘241と、先端部の錘241から等距離で基端側に設けられた錘242,243とが設けられている例を示している。また、複数の錘を等間隔で配置することにより、全周切開デバイス20を病変部Pの周囲の組織に付着させるステップS2において、狙ったところに全周切開デバイス20を配置させやすくすることができる。
図5に示す変形例では、切開部を先端領域20dのみに設ける例と、Y字状の分岐部25を設ける例と、錘241,242,243を設ける例を一図で示しているが、これらを全て備える必要はない。したがって、各変形例のいずれか一つを付加してもよいし、複数の変形例を組み合わせてもよい。
(第2実施形態)
第2実施形態の内視鏡用処置具1Aについて説明する。第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。図6は、第2実施形態に係る内視鏡用処置具1Aを示す平面図である。
本実施形態に係る内視鏡用処置具1Aは、切開部の構成が第1実施形態と異なる。本実施形態の切開部は、先端部に終端を有する線状ワイヤ(切開部)23である。線状ワイヤ23は、直径が35mmであり、先端に錘244が設けられている。切開部のその他の構成は第1実施形態と同様である。
本実施形態に係る内視鏡用処置具1Aでは、第1実施形態と同様に、シース10の先端部を病変部Pの上方に配置した後、線状ワイヤ23を突出させる。この際、内視鏡101の観察下において、病変部Pの上部を避けるようにシース10を移動させると、線状ワイヤ23が病変部Pの周囲であって、内視鏡挿入部110の長手軸の延長線上の一方側(内視鏡101の観察視野の左右の一方側)に配置される。
このとき、線状ワイヤ23を構成するワイヤに予め曲げ癖が付与されていると、線状ワイヤ23を突出させるときに、病変部Pの上部を避けて、線状ワイヤ23を病変部Pの周囲に容易に配置できる。
第1実施形態のステップS3と同様に線状ワイヤ23に高周波電流を供給し、病変部Pの周囲のうちの一方側の粘膜層W1及び粘膜下層W2を切開する。続いて、操作部40を180度回転し、線状ワイヤ23を、内視鏡挿入部110の長手軸の延長線上の他方側(内視鏡101の観察視野の左右の他方側)に配置する。その後、第1実施形態のステップS3と同様に線状ワイヤ23に高周波電流を供給し、病変部Pの周囲のうち他方側の粘膜層W1及び粘膜下層W2を切開する。すなわち、2回の通電で病変部Pの周囲の全周が切開される。
続いて、第1実施形態のステップS4以降と同様の手順を行う。
本発明は、従来の高周波ナイフと異なり、病変部Pの周囲の組織を長時間かつ繊細な操作で切開するステップが不要となり、線状ワイヤ23を組織に付着させて高周波電流を供給することで組織を切開可能である。このため、切開部はループ形状のスネアに限らず、図6に示すような線状の線状ワイヤ23であっても、上記第1実施形態と同様に、高密度の高周波電流が流れる切開部を粘膜組織に付着させるだけで粘膜組織を切開できる。
さらに、本実施形態に係る内視鏡用処置具1Aによれば、線状ワイヤ23の先端領域に錘244を有することにより、切開対象となる組織に対して線状ワイヤ23が密着した状態を安定して保つことができる。また、錘244を移動させることにより線状ワイヤ23が位置決めできるため、柔軟性が高い切開部であっても、病変部Pの周囲に配置する操作が容易となる。
本実施形態の線状ワイヤ23も、第1実施形態で示した変形例と同様に、切開部を先端領域20dのみに設け、基端側を非導電部材32で覆ってもよい。また、線状ワイヤ23に複数の錘を設けてもよい。
第1実施形態及び第2実施形態に示した内視鏡用処置具1,1Aを、大腸のポリープ等の病変部Pの切除手術に用いる場合、病変部Pの大きさが2cm以上の場合に好適に使用できる。
第1実施形態及び第2実施形態の内視鏡用処置具1,1Aにおいて、シース10の内部にウォータージェット機能を設けてもよい。
従来技術であるハイブリッドESDや全周切開EMRでは、病変部Pの周囲を全周切開した後、粘膜層W1と筋層W3との間隔を広げるために、再度、生理食塩水などの液体を局注する。この再局注の際に、内視鏡用処置具1,1Aと局注用の処置具とを内視鏡チャネル102を通じて入れ替えるには手間がかかる。そこで、図7に示す変形例の内視鏡用処置具1Bのように、第1実施形態及び第2実施形態の内視鏡用処置具1,1Aに操作部40に送水ポート45を設け、シース10の内部にウォータージェット機能(不図示)を設ける。病変部Pの周囲を全周切開した後、シース10の先端開口11を被切開部分に近接配置し、送水ポート45を介してシース10の内部に液体を供給し、ウォータージェット機能によりシース10の先端開口11から液体をジェット噴射する。この結果、全周切開した被切開部分から液体を局注できる。本変形例の内視鏡用処置具1Bによれば、全周切開、再局注、スネア切除を一つのデバイスで実施できたため、短時間で病変部Pの全周切開できる。
(実施例1)
切開デバイスの切開部を構成するワイヤとして、直径0.1mmのステンレス製の単線ワイヤを用意した。接続ワイヤは、ステンレス製の直径0.5mmの撚線ワイヤを用意した。接続ワイヤの先端部に切開部用のワイヤを閉ループ形状にして固定した。接続ワイヤの外周を絶縁体で覆った。膨隆剤を局注した牛大腸の粘膜組織に切開部を付着させた。高周波電流供給装置として、オリンパス社製(ESG-100)を用い、「カットモード」で10秒、切開部に高周波電流を供給した。その結果、切開部の付着位置に沿って粘膜組織が深さ5mmまで切開されたことが目視により確認できた。また、切開面において、組織の蛋白凝固は認められなかった。
(実施例2)
切開デバイスの切開部を構成するワイヤとして、直径0.1mmのタングステン製の単線ワイヤを用意した。接続ワイヤは、ステンレス製の直径0.5mmの撚線ワイヤを用意した。接続ワイヤの先端部に切開部用のワイヤを閉ループ形状にして固定した。実施例1と同様に、膨隆剤を局注した牛大腸の粘膜組織上に切開部を当接させた状態で、高周波電流供給装置の「カットモード」で3秒、切開部に高周波電流を供給した。その結果、切開部の付着位置に沿って粘膜組織が切開されたことが目視により確認できた。
(比較例1)
切開デバイスの切開部を構成するワイヤとして、直径0.3mmのステンレス製の撚線ワイヤを用意した。その他の構成は実施例1と同様の構成の内視鏡用処置具を用意した。実施例1と同様に、切開部を牛大腸の粘膜組織上に当接させた状態で、高周波電流供給装置の「カットモード」で20秒、切開部に高周波電流を供給した。
(比較例2)
切開デバイスの切開部を構成するワイヤとして、直径0.3mmのタングステン製の撚線ワイヤを用意した。その他の構成は実施例と同様の構成の内視鏡用処置具を用意した。実施例1と同様に、切開部を牛大腸の粘膜組織上に当接させた状態で、高周波電流供給装置の「カットモード」で20秒、切開部に高周波電流を供給した。
比較例1及び比較例2の内視鏡用処置具を用いて実施例1と同様の試験を行った結果、目視により、粘膜が焦げたような箇所が見受けられたものの、切開された箇所は確認できなかった。また、粘膜が焦げたような箇所は、閉ループ形状の切開部に対応する位置に分散していた。これは、切開部が粘膜に密着していない箇所があったことや、電流密度の不足によるものと思われる。
以上より、実施例1及び実施例2はいずれも切開性能が高いことが示された。
一方、比較例1及び比較例2は、粘膜組織が切開できなかった。
(実施例3)
実施例1の切開デバイスのシース部分にウォータージェット機能を付加したデバイスを用意した。実施例1同様に膨隆剤を局注した牛大腸の粘膜組織上を環状に切開したのち、ウォータージェット機能にてシースの先端開口から切開された組織(被切開部分)に生理食塩水を局注した。その後、同一の切開デバイスのワイヤ部分をシース内に引き込むことで、スネア状に組織を絞り込み、局注部を切除した。その結果、穿孔は起きておらず、また全周切開、再局注、スネア切除を一つのデバイスで実施できたため、短時間で対応することができた。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
また、上述の各実施形態において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
本発明は、以下の技術思想を含む。
(付記項1)
内視鏡装置のチャンネルに挿入可能なシースと、前記シース内に、自身の長手軸方向に進退可能に挿通される接続ワイヤと、前記接続ワイヤの先端に設けられ、前記シースの先端開口から突出可能であり、導電性部材からなる切開部と、を備える内視鏡用処置具を用いて病変部の周囲を切開する方法であって、
前記切開部は、自身の先端から基端側へ所定の位置までの先端領域の太さが0.2mm未満の線状部材で構成されており、
前記シースの前記先端開口から前記切開部を突出させ、前記病変部の周囲に前記切開部を付着させるステップと、
前記切開部に高周波電流を通電して前記病変部の周囲を一括切開するステップと、
を備えることを特徴とする組織切開方法。
(付記項2)
直径が2cm以上である前記病変部の周囲を前記切開部で切開する
付記項1に記載の組織切開方法。
1、1A 内視鏡用処置具
20d 先端領域
20 全周切開デバイス(切開部)
23 線状ワイヤ(切開部)
30 接続ワイヤ
100 内視鏡装置
102 処置具チャンネル(チャンネル)
241,242,243,244 錘

Claims (4)

  1. 内視鏡装置のチャンネルに挿入可能なシースと、
    前記シース内に、自身の長手軸方向に進退可能に挿通される接続ワイヤと、
    前記接続ワイヤの先端に設けられ、前記シースの先端開口から突出可能であり、導電性部材からなる切開部と、を備え、
    前記切開部は、自身の先端から基端側へ所定の位置までの先端領域の太さが0.2mm未満の線状部材で構成されていることを特徴とする内視鏡用処置具。
  2. 前記切開部は、前記先端領域の太さが0.1mm未満である
    請求項1に記載の内視鏡用処置具。
  3. 前記切開部の前記先端領域に少なくとも一つの錘を有する
    請求項1または請求項2に記載の内視鏡用処置具。
  4. 前記シース内にウォータージェット機能を備えた請求項1の内視鏡用処置具。
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