JP2021054703A - セルロースナノファイバー添加ZrO2−Al2O3系セラミックス造粒体、当該造粒体の製造方法、当該造粒体を用いた仮焼粉体及びその製造方法、当該仮焼粉体を用いたセラミックス焼結体及びその製造方法 - Google Patents

セルロースナノファイバー添加ZrO2−Al2O3系セラミックス造粒体、当該造粒体の製造方法、当該造粒体を用いた仮焼粉体及びその製造方法、当該仮焼粉体を用いたセラミックス焼結体及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2021054703A
JP2021054703A JP2020083842A JP2020083842A JP2021054703A JP 2021054703 A JP2021054703 A JP 2021054703A JP 2020083842 A JP2020083842 A JP 2020083842A JP 2020083842 A JP2020083842 A JP 2020083842A JP 2021054703 A JP2021054703 A JP 2021054703A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
zro
powder
sintered body
added
ceramic
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2020083842A
Other languages
English (en)
Inventor
健 廣田
Takeshi Hirota
健 廣田
将樹 加藤
Masaki Kato
将樹 加藤
実憲 吉田
Minori Yoshida
実憲 吉田
優太 小菅
Yuta Kosuge
優太 小菅
和人 神野
Kazuto Jinno
和人 神野
林 孝幸
Takayuki Hayashi
孝幸 林
英夫 木村
Hideo Kimura
英夫 木村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Daiichi Kigenso Kagaku Kogyo Co Ltd
Doshisha Co Ltd
DKS Co Ltd
Original Assignee
Daiichi Kigenso Kagaku Kogyo Co Ltd
Dai Ichi Kogyo Seiyaku Co Ltd
Doshisha Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Daiichi Kigenso Kagaku Kogyo Co Ltd, Dai Ichi Kogyo Seiyaku Co Ltd, Doshisha Co Ltd filed Critical Daiichi Kigenso Kagaku Kogyo Co Ltd
Publication of JP2021054703A publication Critical patent/JP2021054703A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Abstract

【課題】高密度で、高い機械的特性を有するZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体及びその製造方法の提供。【解決手段】Zr塩とY塩とAl塩を用いて、ZrO2とY2O3のモル比率が97.0:3.0〜98.0:2.0で、Y2O3添加ZrO2とAl2O3のモル比率が80:20〜70:30となるよう混合を行い、この混合溶液にアルカリを添加して中和を行い、Zr, Y, Alを共沈させてZrO2(Y2O3)-Al2O3中和共沈未仮焼粉体を調製し(工程A)、特定粘度のセルロースナノファイバー(CNF)水分散液を準備し(工程B)、前記粉体100質量部に対し、CNFが0.12〜0.20質量部となるように前記CNF水分散液を添加して混合を行った後、造粒体に加工し(工程C)、得られた造粒体を650〜750℃で7〜12時間熱処理し、更に800〜950℃で0.5〜3時間仮焼成して仮焼粉体を作製する(工程D)。この仮焼粉体を加圧成形して大気中で焼結又は、c-BN粉体やZrC粉体と混合後に成形して焼結すると高強度のセラミックスが製造できる。【選択図】なし

Description

本発明は、セルロースナノファイバーが添加されたジルコニア系セラミック造粒体(CNF添加ZrO2-Al2O3系セラミックス造粒体)、当該造粒体の製造方法に関する。又、本発明は、前記造粒体を用いた仮焼粉体及びその製造方法、当該仮焼粉体を用いた各種セラミックス焼結体(ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体、c-BN/ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体、ZrC/ ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体)及びその製造方法に関するものである。
金属に比較して、化学的安定性、耐腐食性、高温環境下での使用可能といった多くの特徴を有するセラミックス材料は、硬度や強度が高いが、靱性が低いという弱点があり、その応用が限定されている。
少量のY2O3を固溶させたジルコニア(ZrO2)は、その結晶構造を正方晶に部分安定化させ、応力変態強化機構により、高い破壊靭性値(KIC)を示し、さらに23〜25mol%のアルミナ(Al2O3)を添加して高硬度にして、曲げ強度(σb)とKICのバランスをとっている。
下記の非特許文献1には、Y2O3部分安定化ZrO2とAl2O3の混合粉体の高圧焼結(HIP焼結)が開示されており、この場合のσbは2.4 GPaであるが、破壊靱性値KICは6〜7 MPa・m1/2に留まるという問題点があった。
セラミックスの強靭化、すなわちKICを向上させる方法として、例えば、下記の特許文献1には、ゾル‐ゲル法により、高靱性の機能性を有する酸化イットリウム(Y2O3)を添加したZrO2と高強度の機能性を有するAl2O3を含む、ZrO2(0.3-1.7 mol% Y2O3)-25 mol% Al2O3固溶体粉体を調製し、パルス通電加圧焼結(Pulsed Electric-Current Pressure Sintering:PECPS)を行うことにより、緻密で、しかも、約1000 MPa(1 GPa)以上のσbと、15 MPa・m1/2以上のKICを同時に示す高強度・強靱性のセラミックスが得られることが開示されている。
しかしながら、σbとKICの間にはトレードオフの関係があり、同組成で高いσbとKICを示すセラミックスの作製は非常に困難であり、Y2O3を1.5mol%、23〜25mol%のAl2O3を添加固溶した中和共沈粉体を用いてパルス通電加圧焼結すると、高σbとKICを同時に実現できるが、無加圧焼結では実現することができなかった。
又、下記の非特許文献2には、中和共沈法を用いて得られた中和共沈粉体ZrO2(1.5mol% Y2O3)-25mol% Al2O3を高圧焼結することによって、相対密度≧99.5%、σb≧1.2〜1.4GPa、KIC≧14.1〜15.9MPa・m1/2、ビッカース硬度Hv≧15.5GPaとバランスの良い高機械的特性が達成できることが開示されている。しかしながら、この場合、高圧焼結であるために、焼結体の形状が単純な円板状のものに限られるという問題があった。
更に、固相反応法等で調製した粉体や、ゾル‐ゲル法以外の液相法で調製した粉体の場合には、粉体粒子内の組成の均質性や粒径分布が不均一であるために、これらを焼結してもセラミックス構造体中の組成が不均質となり、均質性を高めるために高温で焼結した場合であっても、緻密化と焼結体結晶の微小化は満足できず、高強度・強靱性のセラミックスが得られないという問題点があった。
又、共有結合持つ立方晶チッ化ホウ素c-BNは、ダイヤモンド(ビッカース硬度Hv:75-100GPa)に次ぐ高硬度(Hv:54GPa)を有するが、高温に加熱すると容易に、柔らかい六方晶チッ化ホウ素h-BNに転移する。そこで、現在、c-BNを低温高圧焼結して緻密な多結晶を作製しているが、このような製法は高コストであり、かつ破壊靱性値(KIC:5 MPa・m1/2)が不足して脆いセラミックスしか得られない。
又、市販の一般的な強靭性ジルコニア作製用の3mol%Y2O3を添加したZrO2粉体と市販のAl2O3微粒子を混合し、焼結を行うことにより得られる複合セラミックスは、σb≧1GPaの曲げ強度を示すが、KICは6〜7 MPa・m1/2に留まり、靭性が低いという問題点があった。
さらに、炭化ジルコニウム(ZrC)やホウ化ジルコニウム(ZrB2)は、軽量かつ高融点、高硬度を示すことから、高温構造材料として期待されているが、難焼結性であるという問題点がある。
国際公開2012/153645号公報
K. Tsukuma, et al., J. Am. Ceram. Soc. C-4, C-56(1985) 山本、廣田等、粉体および粉末冶金、60[10] 428-435(2013)
本発明は、従来技術における前述の問題点を解決し、常圧焼結により、高密度で、高強度・強靭性を同時に示す機械的特性を有するZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体を製造することが可能な造粒体及びその製造方法を提供することを課題とする。又、本発明の課題は、前記造粒体を用いた仮焼粉体及びその製造方法及び、高密度で、高い機械的特性を有するZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体及びその製造方法を提供することでもある。
本発明者等は、種々検討を行った結果、ジルコニウム塩とイットリウム塩とアルミニウム塩が所定のモル比率にて混合された溶液を調製した後、この混合溶液にアルカリを添加して中和を行い、ZrとYとAlを共沈させ、中和共沈未仮焼粉体を得、この粉体をボールミルにて解砕し、ついで特定濃度のセルロースナノファイバー(CNF)水分散液を添加して混合し、得られた混合物を造粒体に加工した後で仮焼し、得られた仮焼粉体を造粒し、加圧成形を行った後に大気中で焼結すると、高密度(≧99.5%)、高機械的特性(σb≧850 MPa、Hv≧15GPa、KIC≧18MPa・m1/2)のZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体が製造できることを見出して、本発明を完成した。
本発明者等は、上記の中和共沈未仮焼粉体にCNFを添加して造粒して得た造粒体を仮焼し、得られた顆粒状の仮焼粉体に、難焼結性の立方晶チッ化ホウ素(c-BN)粉体を添加混合し、この混合粉体を成形して得た成形体をパイレックス(登録商標)ガラスシャーレに真空封入し、熱間静水圧プレス(HIP)することにより高密度(≧92〜95%)となり、c-BN 50vol%添加系においてHvとK1Cが最高値、22.2GPaおよび15.7MPa・m1/2を示すことを見出した。
また同様に、炭化ジルコニウム(ZrC)に上記の顆粒状仮焼粉体を添加して成形体を得、この成形体をパルス通電加圧焼結すると、ZrO2(Y2O3)-Al2O3系混合粉体を用いた場合よりも高い特性を示すことを見出して、本発明を完成した。
上記の高密度で、高い機械的特性を有するZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体を常圧焼結で製造することが可能な造粒体を製造するための本発明の方法は、以下の工程A〜C:
工程A:ジルコニウム塩とイットリウム塩とアルミニウム塩を用いて、ジルコニア(ZrO2)及びイットリア(Y2O3)としてのモル比率(mol%)が97.0:3.0〜98.0:2.0で、しかも、Y2O3添加したZrO2及びAl2O3としてのモル比率が80:20〜70:30となるように混合を行って調製した混合溶液にアルカリを添加して中和を行い、ZrとYとAlを共沈させ、その後、解砕を行うことによりZrO2(Y2O3)-Al2O3中和共沈未仮焼粉体を調製する工程、
工程B:水中にセルロースナノファイバーが分散されており、100〜1000mPa・sの粘度を有するセルロースナノファイバー水分散液を準備する工程、
工程C:前記工程AのZrO2(Y2O3)-Al2O3中和共沈未仮焼粉体100質量部に対して、セルロースナノファイバーが0.12〜0.20質量部となるように前記工程Bのセルロースナノファイバー水分散液を添加し、混合を行った後、造粒体を作製する工程
を含むことを特徴とする。
又、本発明は、上記の特徴を有するセルロースナノファイバー(CNF)添加ZrO2-Al2O3系セラミックス造粒体の製造方法において、前記工程Cにて造粒体を作製する際に、当該造粒体の粒径を2μm〜1.5mmとすることを特徴とするものである。
更に本発明は、上記の特徴を有するCNF添加ZrO2-Al2O3系セラミックス造粒体の製造方法において、前記工程BのCNF水分散液中に分散されたCNFの繊維幅が1〜10nmであることを特徴とするものでもある。
又、本発明は、上記のセルロースナノファイバー添加ZrO2-Al2O3系セラミックス造粒体を用いたZrO2-Al2O3系セラミックス仮焼粉体の製造方法であって、当該製法は、前記工程A〜Cを実施した後に、以下の工程D:
工程D:前記工程Cで得られた造粒体を650〜750℃で7〜12時間加熱し、更に800〜950℃で0.5〜3時間仮焼成し、仮焼粉体を作製する工程
を実施することを特徴とする。
更に、本発明は、上記のZrO2-Al2O3系セラミックス仮焼粉体を用いたZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体の製造方法であって、当該製法は、前記工程A〜Dを実施した後に、以下の工程E:
工程E:前記工程Dで得られた仮焼粉体を加圧成形し、大気中1150〜1350℃の温度で焼結する工程
を実施することを特徴とする。
又、本発明は、上記のセルロースナノファイバー添加ZrO2-Al2O3系セラミックス造粒体の製造方法において、前記セルロースナノファイバーがアニオン変性されたセルロースナノファイバーであることを特徴とするものでもある。
又、本発明は、上記のセルロースナノファイバー添加ZrO2-Al2O3系セラミックス造粒体の製造方法において、前記セルロースナノファイバーがカルボキシル基を有するアニオン変性セルロースナノファイバーであることを特徴とするものでもある。
又、前記の製法を用いて得られる本発明のセルロースナノファイバー(CNF)添加ZrO2-Al2O3系セラミックス造粒体は、ZrO2及びY2O3としてのモル比率(mol%)が97.0:3.0〜98.0:2.0で、しかも、Y2O3添加したZrO2及びAl2O3としてのモル比率が80:20〜70:30であるZrO2(Y2O3)-Al2O3中和共沈未仮焼粉体100質量部に対して、セルロースナノファイバーが0.12〜0.20質量部添加混合されており、2μm〜1.5mmの大きさの造粒体であることを特徴とする。
更に、本発明は、上記のセルロースナノファイバー添加ZrO2-Al2O3系セラミックス造粒体において、前記セルロースナノファイバーがアニオン変性されたセルロースナノファイバーであることを特徴とするものでもある。
又、本発明は、上記のセルロースナノファイバー添加ZrO2-Al2O3系セラミックス造粒体において、前記セルロースナノファイバーがカルボキシル基を有するアニオン変性セルロースナノファイバーであることを特徴とするものでもある。
又、上記の製法を用いて得られる本発明のZrO2-Al2O3系セラミックス仮焼粉体は、ジルコニア(ZrO2)及びイットリア(Y2O3)としてのモル比率(mol%)が97.0:3.0〜98.0:2.0で、しかも、イットリア添加したジルコニア及びアルミナ(Al2O3)としてのモル比率が80:20〜70:30であり、245MPaで加圧成形し、大気中1250℃の温度で焼成した場合の相対密度が99.5%以上、3点曲げ強度が850 MPa以上、ビッカース硬度が15.0 GPa以上、破壊靭性値が18.0 MPa・m1/2以上であることを特徴とする。
又、本発明は、上記ZrO2-Al2O3系セラミックス仮焼粉体において、44m2/g以上のBET比表面積を有し、正方晶ZrO2率が96%であることを特徴とするものである。
又、上記の製法を用いて得られる本発明のY2O3部分安定化ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体は、ZrO2及びY2O3としてのモル比率(mol%)が97.0:3.0〜98.0:2.0で、しかも、Y2O3添加した、ZrO2及びAl2O3としてのモル比率が80:20〜70:30であり、相対密度が99.5%以上、3点曲げ強度が850 MPa以上、ビッカース硬度が15.0 GPa以上、破壊靭性値が18.0 MPa・m1/2以上であることを特徴とする。
又、本発明は、立方晶チッ化ホウ素(c-BN)粉体を用いてc-BN/ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体を製造するための方法であって、当該製造方法は、c-BN粉体と、前記工程Dで得られたZrO2-Al2O3系セラミックス仮焼粉体を、30:70〜55:45の体積比率にて混合し、得られた混合粉体を成形して成形体を得、当該成形体を耐熱ガラス容器内に封入した後、不活性ガス雰囲気下で熱間静水圧プレス(HIP)にて焼結を行うことを特徴とする。
又、本発明は、上記のc-BN/ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体の製造方法において、前記の熱間静水圧プレスを、温度1200〜1300℃、圧力100MPa以上、焼結時間1〜4時間の条件にて行うことを特徴とするものである。
更に、前記の製法を用いて得られる本発明のc-BN/ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体は、c-BNとZrO2-Al2O3系セラミックスの体積比率が30:70〜55:45で、前記ZrO2-Al2O3系セラミックスにおけるZrO2とY2O3のモル比率が97.0:3.0〜98.0:2.0で、Y2O3部分安定化ZrO2とAl2O3のモル比率が80:20〜75:25であり、19 GPa以上のビッカース硬度と、12 MPa・m1/2以上の破壊靭性値を有することを特徴とする。
又、本発明は、炭化ジルコニウム(ZrC)粉体を用いてZrC/ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体を製造するための方法であって、当該製造方法は、ZrC粉体と、前記工程Dで得られたZrO2-Al2O3系セラミックス仮焼粉体を、55:45〜75:25の体積比率にて混合し、得られた混合粉体を成形して成形体とした後、当該成形体をパルス通電加圧焼結(PECPS)することを特徴とする。
又、本発明は、上記のZrC/ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体の製造方法において、前記のパルス通電加圧焼結が、10Pa以下の真空中で、1550〜1700℃の焼結温度、10〜100 MPaの加圧力および5〜30分の保持時間の条件にて行なわれることを特徴とするものである。
更に、前記の製法を用いて得られる本発明のZrC/ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体は、ZrC粉体とZrO2-Al2O3系セラミックスの体積比率が55:45〜75:25で、前記ZrO2-Al2O3系セラミックスにおけるZrO2とY2O3のモル比率が97.0:3.0〜98.0:2.0で、Y2O3部分安定化ZrO2とAl2O3のモル比率が80:20〜75:25であり、18 GPa以上のビッカース硬度と、10 MPa・m1/2以上の破壊靭性値を有することを特徴とする。
本発明の製造方法を用いることにより、特定量のセルロースナノファイバー(CNF)を含む粉末又は顆粒状の原料であって、高密度で、高い機械的特性を有するZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体を常圧焼結で製造することが可能な造粒体が製造できる。そして、このような造粒体から、無加圧焼結にて、相対密度が99.5%以上、3点曲げ強度σbが850 MPa以上、ビッカース硬度Hvが15.0 GPa以上、破壊靭性値KICが18.0 MPa・m1/2以上の高密度・高機械的強度ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体を常圧焼結で作製することができる。
又、Y2O3添加ZrO2-Al2O3中和共沈未仮焼粉体とCNFとの混合により得られた造粒体を経由する本発明のZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体の製造方法は、中和共沈仮焼粉体の新しい応用分野を開拓し、例えば、熱溶融法3D積層造形セラミックスや、低コストでの高強度セラミックスの製造法として有用である。
更に、CNF添加した上記未仮焼粉体を造粒後に仮焼して得られたZrO2-Al2O3系セラミックス仮焼粉体を、難焼結性の硬質セラミックス粉体(c-BN粉体又はZrC粉体)に添加することで、従来よりも低圧で成形が可能となると共に、高強度高靭性特性を有するセラミックスを低コストで製造することが可能となった。
ZrO2(Y2O3)-Al2O3系混合粉体(混合粉体23A)を用いた焼結法における工程を示すフローチャートで、比較例として用いた各工程の条件が示されており、この際に使用した図1のCNF水分散液混合前の混合粉体(77mol%(98.0,97.5,97.0mol% ZrO2-2.0,2.5,3.0mol% Y2O3)-23mol% Al2O3)を、以下「混合粉体23A」又は「PSZ23A」と記す。 ZrO2(Y2O3)-Al2O3中和共沈粉を用いた焼結法(仮焼後にボールミルによる解砕を実施)における工程を示すフローチャートで、比較例として用いた各工程の条件が示されており、この際に図2の解砕後でCNF水分散液混合前に使用した中和共沈粉体(75mol%(98.5,98.0,97.5,97.0mol% ZrO2-1.5,2.0,2.5,3.0mol% Y2O3)-25mol% Al2O3)を、以下「中和共沈仮焼粉体25A」又は「PSZ25A」と記す。 CNF添加ZrO2-Al2O3系セラミックス造粒体を用いた本発明のZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体の製造方法における工程を示すフローチャートで、実施例において使用した各工程の条件が示されており、造粒体を経由する中和共沈粉体の無加圧焼結に用いた粉体は、75mol%(98.5,98.0,97.0mol% ZrO2-1.5,2.0,3.0mol% Y2O3)-25mol% Al2O3である。 Y2O3の量を変化させた混合粉体23Aを成型、焼結した際の、成形体を構成する粉体のBET比表面積(単位:m2/g)と、成形体の相対密度、焼結体の相対密度及びt-ZrO2率の変化を示すグラフである。 Y2O3の量を変化させた中和共沈仮焼粉体25Aを成型、焼結した際の、成形体を構成する粉体のBET比表面積と、成形体の相対密度、焼結体の相対密度及びt-ZrO2率の変化を示すグラフであり、グラフ中の1.5Y, 2.0Y, 2.5Y, 3.0Yはそれぞれ、1.5mol% Y2O3, 2.0mol% Y2O3, 2.5mol% Y2O3, 3.0mol% Y2O3を示しており、以下同様である。 CNF添加ZrO2-Al2O3系セラミックス造粒体を用いた本発明の製造方法において75mol%ZrO2(1.5mol% Y2O3)-25mol% Al2O3の組成を有する中和共沈未仮焼粉体に対してCNFが0.17mass%添加された造粒体を用い、焼結時間を変化させてセラミックスを調製した際の、微細構造(相対密度Dr)と機械的特性(曲げ強度σb、ビッカース硬度Hv、破壊靱性値KIC)の変化を示すグラフである。 CNF添加ZrO2-Al2O3系セラミックス造粒体を用いた本発明の製造方法において75mol%ZrO2(1.5,3.0mol% Y2O3)-25mol% Al2O3の組成を有する中和共沈未仮焼粉体(前記組成の粉体に対してCNFが0.16〜0.19mass%添加された造粒体)を用い、仮焼温度を変化させて得た際の、成型、焼結した際の、成形体を構成する粉体のBET比表面積と、成形体の相対密度、セラミックスを調製した際の、焼結体の相対密度を比較したグラフである。 CNF添加ZrO2-Al2O3系セラミックス造粒体を用いた本発明の製造方法において75mol%ZrO2(2.0mol% Y2O3)-25mol% Al2O3の組成を有する中和共沈未仮焼粉体に、CNF水分散液濃度を変化(0.2%, 0.3%, 0.4%, 0.5%)させて添加し(それぞれ粉体/水分散液=25g/15g、25g/13g、24g/12g、23g/11g)、この混合物から得られた造粒体のBET比表面積、相対密度及び、この造粒体を焼結させた焼結体の相対密度を比較したグラフである〔仮焼温度850℃〕。 CNF添加ZrO2-Al2O3系セラミックス造粒体を用いた本発明の製造方法において75mol%ZrO2(2.0mol% Y2O3)-25mol% Al2O3の組成を有する中和共沈未仮焼粉体に、CNF水分散液濃度を変化(0.2%, 0.3%, 0.4%, 0.5%)させて添加し(それぞれ粉体/水分散液=25g/15g、25g/13g、24g/12g、23g/11g)、この混合物から得られた造粒体を焼結させた焼結体の相対密度、機械的特性(曲げ強度σb、ビッカース硬度Hv、破壊靱性値KIC)の変化を示すグラフである。 CNF添加ZrO2-Al2O3系セラミックス造粒体を用いた本発明の製造方法において75mol%ZrO2(1.5,3.0mol% Y2O3)-25mol% Al2O3の組成を有する中和共沈未仮焼粉体に、濃度0.3%のCNF水分散液を添加した場合(以下「顆粒体(CNF)」と記す)と、濃度20%のポリビニルアルコール(PVA)水溶液を添加した場合(以下「顆粒体(PVA)」と記す)の、顆粒体(CNF)及び顆粒体(PVA)のBET比表面積、この造粒体を焼結させた焼結体(以下、顆粒体(CNF)の焼結体を「焼結体(CNF)」と記し、顆粒体(PVA)の焼結体を「焼結体(PVA)」と記す)並びに成形体(以下、顆粒体(CNF)及び顆粒体(PVA)の成形体を「成形体(CNF/PVA)」と記す)の相対密度、焼結体のt-ZrO2率を比較したグラフである。 CNF添加ZrO2-Al2O3系セラミックス造粒体を用いた本発明の製造方法において75mol%ZrO2(1.5,3.0mol% Y2O3)-25mol% Al2O3の組成を有する中和共沈未仮焼粉体に、0.3%CNF水分散液、20%PVA水溶液をそれぞれ添加した上記顆粒体(CNF)、顆粒体(PVA)を焼結させた焼結体(CNF)、焼結体(PVA)の相対密度、機械的特性(曲げ強度σb、ビッカース硬度Hv、破壊靱性値KIC)を比較したグラフである。 前記の混合粉体23A、中和共沈仮焼粉体25A、CNF添加ZrO2-Al2O3系セラミックス造粒体を用いた本発明の顆粒体(CNF)と、さらに顆粒体(CNF)の調製方法と同じ工程でCNFの代わりにPVAを使用した顆粒体(PVA) を用いた場合の、成形体の相対密度、焼結体の相対密度、ビッカース硬度Hv、破壊靱性値KICを比較したグラフである。 ZrO2(Y2O3)-Al2O3中和共沈未仮焼粉体にCNF水分散液を添加・混合し、造粒・仮焼を行って得られた顆粒体(以下「顆粒体PSZ25A」と記す)、PSZ23A、PSZ25Aをそれぞれ原料として用い、これにc-BN粉体を添加混合してc-BN/ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体を作製する際の工程を示すフローチャートであり、実施例で用いた各工程の製造条件が記載されている。尚、左下には、耐熱ガラス容器(パイレックス(登録商標)ガラスカプセル)内に封入された成形体の様子が示されている。 PSZ23Aを用い、BN含有量を変化させた際の、成形体(左側のグラフ)及び焼結体(右側のグラフ)の相対密度Drの組成・成形圧力依存性を示すグラフであり、冷間静水圧プレス(CIP)時の圧力が245MPaの場合と1GPaの場合が比較されている。 PSZ23Aを用い、BN含有量を変化させた際の、焼結体のc-BN比率、t-ZrO2比率の組成依存性を示すグラフであり、c-BN比率(vol%)は、焼結体中のBNの、c-BN相が占める体積比率であり、t-ZrO2比率(vol%)は、焼結体中のZrO2の、t-ZrO2相が占める体積比率である。 PSZ23Aを用い、BN含有量を変化させた際の、焼結体の機械的特性の変化を示すグラフであり、左側のグラフにはビッカース硬度Hvと相対密度Drが示されており、右側のグラフには破壊靱性値KICが示されている。 PSZ23A、PSZ25A、顆粒体PSZ25Aをそれぞれ原料として用い、BN含有量を変化させた際の、成形体(左側のグラフ)及び焼結体(右側のグラフ)の相対密度Drの変化を示すグラフである。 PSZ23Aと顆粒体PSZ25Aについての焼結性(焼結開始温度)の比較結果が示されている。 顆粒体PSZ25A を用い、BN含有量を変化させた際の、焼結体の機械的特性の変化を示すグラフであり、左側のグラフにはビッカース硬度Hvと相対密度Drが示されており、右側のグラフには破壊靱性値KICが示されている。 左側は、ZrO2(Y2O3)-Al2O3中和共沈未仮焼粉体にCNF水分散液を添加・混合した後に造粒・仮焼を行う顆粒体の製造工程を示すフローチャートであり、実施例で用いた各工程の製造条件が記載されている。一方、右側は、PSZ23A、顆粒体PSZ25Aをそれぞれ原料として用い、これにZrB2又はZrC粉体を添加混合してZrB2又はZrC/ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体を作製する際の工程を示すフローチャートであり、実施例で用いた各工程の製造条件が記載されている。 焼結温度を変化させた際の、ZrB2/PSZ23A焼結体とZrC/PSZ23A焼結体についての走査型電子顕微鏡(SEM)画像(左側の画像)と、相対密度Drの変化を示すグラフ(右側のグラフ)である。 焼結温度を変化させた際の、ZrB2/PSZ23A焼結体とZrC/PSZ23A焼結体についての機械的特性を比較したグラフであり、左側のグラフにはビッカース硬度Hvの変化が示されており、右側のグラフには破壊靱性値KICの変化が示されている。 焼結温度を変化させた際の、ZrC/PSZ23A焼結体と、ZrC/顆粒体PSZ25A焼結体についての走査型電子顕微鏡(SEM)画像(左側の画像)と、相対密度Drの変化を示すグラフ(右側のグラフ)である。 焼結温度を変化させた際の、ZrC/PSZ23A焼結体と、ZrC/顆粒体PSZ25A焼結体についての機械的特性を比較したグラフであり、左側のグラフにはビッカース硬度Hvの変化が示されており、右側のグラフには破壊靱性値KICの変化が示されている。 ZrC/PSZ23A焼結体と、ZrC/顆粒体PSZ25A焼結体(Y2O3:1.5, 2.0, 2.5mol%)についてのSEM画像であり、相対密度とt-率が併記されている。 ZrC/PSZ23A焼結体と、ZrC/顆粒体PSZ25A焼結体(Y2O3量:1.5, 2.0, 2.5mol%)についての相対密度、機械的特性(ビッカース硬度Hv、破壊靱性値KIC)を比較したグラフである。
高密度で、高い機械的特性を有するZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体を常圧焼結で製造することが可能な本発明の製造方法における各工程について説明する。
本発明の製造方法における工程Aでは、まず、ジルコニウム塩とイットリウム塩とアルミニウム塩を、ジルコニア(ZrO2)及びイットリア(Y2O3)としてのモル比率(mol%)が97.0:3.0〜98.0:2.0で、しかも、Y2O3添加したZrO2及びAl2O3としてのモル比率が80:20〜70:30となるように混合を行って混合溶液を調製する。
この際、ジルコニウム塩は特に限定されるものではないが、一般には、オキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2)やオキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO3)2)、硫酸ジルコニウム(ZrOSO4)等の塩化物水溶液や硝酸塩水溶液、硫酸塩水溶液等が好ましく、イットリウム塩についても特に限定されないが、塩化イットリウム(YCl3)や硝酸イットリウム(Y(NO3)3)、硫酸イットリウム(Y2(SO4)3)等の塩化物水溶液や硝酸塩水溶液、硫酸塩水溶液等が好ましい。又、アルミニウム塩としては一般に塩化アルミニウム(AlCl3)や硝酸アルミニウム(Al(NO3)3)等の塩化物水溶液や硝酸塩水溶液等が使用される。
そして、上記の塩を上記のモル比率にて含む混合溶液にアルカリを添加して中和を行い、ジルコニウムとイットリウムとアルミニウムを沈殿物として共沈させ、得られた沈殿物を濾過して水洗した後、解砕し、乾燥を行い、ジルコニウムとイットリウムとアルミニウムの中和物粉体であるY2O3添加ZrO2-Al2O3中和共沈未仮焼粉体(ZrO2に対して2.0〜3.0 mol% Y2O3を添加した80〜70 mol% ZrO2(97.0〜98.0 mol% ZrO2-3.0〜2.0 mol% Y2O3)-20〜30 mol% Al2O3固溶体粉体の前駆体)を得る。
この際、中和に使用されるアルカリの種類は特に限定されるものではなく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の一般的な塩基性物質が使用できる。又、上記の解砕は、エタノール等のアルコール中でボールミル(遊星ボールミル)を用いて行うことが好ましい。
本発明において、ZrO2に対するY2O3の含有量が2.0〜3.0 mol%に限定されるのは、2.0 mol%未満であっても、逆に含有量が3.0 mol%を超えても、焼結体を調製した際に正方晶ZrO2粒子を主成分として含むことができなくなるからであり、Y2O3の含有量が2.0 mol%未満の場合は単斜晶ZrO2粒子が増えてクラックの原因となり、室温や水熱条件下における曲げ強度σbが850 MPaより小さくなり、Y2O3の含有量が3.0 mol%を超える場合は立方晶ZrO2粒子が増えて破壊靭性値KICが18 MPa・m1/2より小さくなる。
又、本発明において、Al2O3の含有量が20〜30 mol%に限定されるのは、20 mol%未満の含有量ではZrO2セラミックスの性質が強くなり曲げ強度σbが850 MPa未満に、逆に含有量が30 mol%を超えると、Al2O3セラミックスの性質が強くなり破壊靭性値KICが18 MPa・m1/2より小さくなるからである。
本発明の製造方法における工程Bは、水中にセルロースナノファイバー(CNF)が分散され、粘度(Thermo Fischer Scientifics 社のHAAKE RheoWinを用い、27.5℃で測定)が100〜1000mPa・sであるCNF水分散液を準備する工程であり、このCNF水分散液は、市販品(例えば、第一工業製薬株式会社製のCNF、商品名:レオクリスタ(登録商標)、CNF固形分2%)を水で希釈することにより調製できる。
この際、CNF水分散液の粘度が上記範囲外である場合には、次工程において造粒体(顆粒体)を作製するのに適した物性(固さと粘度)を有する混合物が得られにくくなる。
本発明の上記工程Bにて使用されるCNF水分散液中のCNF濃度としては0.2〜0.3%程度が好ましく、本発明におけるCNF水分散液中に分散されたCNFの繊維幅としては1〜10nm程度のものが好ましい。
本発明では、市販のCNFが種々利用でき、アニオン変性CNFが好ましい。アニオン変性CNFとしては、カルボキシル基を導入したTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシラジカルの略称)触媒酸化法により生成するTEMPO酸化CNF(下記の〔化1〕の反応による生成物)を使用することが好ましいが、これに限定されるものではなく、リン酸基、スルホン酸基や硫酸基を導入したCNFなどが挙げられる。また、カルボキシメチル化CNFや水中対向衝突(ACC)法で製造したCNF等も使用できる。
Figure 2021054703
本発明の製造方法における工程Cでは、前記工程Aにて調製されたZrO2(Y2O3)-Al2O3中和共沈未仮焼粉体と前記工程BのCNF水分散液を、前記ZrO2(Y2O3)-Al2O3中和共沈未仮焼粉体100質量部に対して、CNFの量が0.12〜0.20質量部(0.12〜0.20質量%)、好ましくは0.12〜0.16質量部となるように添加・混合し、得られた混合物からCNF添加ZrO2(Y2O3)-Al2O3系セラミックス造粒体を作製する。
本発明では、造粒体を作製する際に、機械の内側から圧力をかけて、外側にあるメッシュを通して押出し成形を行う市販の押出し式造粒機が使用でき、CNF水分散液を添加・混合して得られた混合物を、開口径が0.5〜1.5mm(好ましくは1.0mm)のメッシュを通過させて押し出すことにより顆粒体の形態に加工することが好ましいが、造粒方法はこれに限定されるものではなく、加圧成形用途の粉末調製で工業的に一般的なスプレードライを用いて、粒径を2μm〜100μm程度としても良い。
上記の工程A〜Cにより得られた造粒体は、高密度(≧99.5%)、高機械的特性(σb≧850 MPa、Hv≧15Gpa、KIC≧18MPa・m1/2)のZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体を常圧焼結で製造するための出発原料として使用できる。
本発明のCNF添加ZrO2-Al2O3系セラミックス造粒体は、上記の工程A〜Cにより製造することができ、この原料は、ZrO2及びY2O3としてのモル比率(mol%)が97.0:3.0〜98.0:2.0で、しかも、Y2O3添加したZrO2及びAl2O3としてのモル比率が80:20〜70:30であるZrO2(Y2O3)-Al2O3中和共沈未仮焼粉体100質量部に対し、CNFが0.12〜0.20質量部添加混合されており、2μm〜1.5mmの粒径の顆粒体の形態を有していることが好ましい。
上記の顆粒状のCNF添加ZrO2-Al2O3系セラミックス造粒体を用いて高密度、高機械的特性のZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体を製造するための本発明の製造方法では、前記工程Cで得られた造粒体を結晶化温度以下の650〜750℃で7〜12時間加熱し、更に結晶化温度以上の800〜950℃で0.5〜3時間仮焼成し、立方晶(cubic)のY2O3部分安定化ZrO2-Al2O3固溶体粉体であるZrO2-Al2O3系セラミックス仮焼粉体を作製し(工程D)、この仮焼粉体を加圧成形し、大気中1150〜1350℃の温度で焼結する(工程E)。
本発明の製造方法における工程Dでは、調製されたナノ粒子を非晶質の状態で熱処理(650〜750℃で7〜12 時間、好ましくは680〜720℃で8〜10時間)することで、粒子内部のZr、Y、Al原子・イオンの拡散が促進され、粒子内及び粒子間の組成の均質化を図ることができ、さらに結晶化温度以上で仮焼成(800〜950℃で0.5〜3 時間、好ましくは830〜870℃で0.7〜1.5時間)することで粒子を結晶化して安定化させ、且つ、粒成長を促し、一次粒子径が約10〜20nmの範囲で一定となる。しかも、本製法にて調製される中和共沈法により得られた70〜80 mol% {Y2O3添加ZrO2(97.5〜98.5 mol% ZrO2-2.5〜1.5 mol% Y2O3)}- 20〜30 mol% Al2O3の非晶質の固溶体粉体は、ゾル‐ゲル法により製造された粉体に比べて、低コスト(約100分の1以下)であるという利点を有している。
本発明の製造方法における工程Eでは、前記工程Dで得られた仮焼粉体を必要に応じて造粒してから、加圧成形(一軸プレス、その後に冷間静水圧プレス)した後、大気中で1150〜1350℃(好ましくは1200〜1300℃)で1〜48時間(好ましくは10〜30時間)の条件にて焼結し、これにより、高密度(≧99.5%)、高機械的特性(σb≧850 MPa、Hv≧15 GPa、KIC≧18 MPa・m1/2)のY2O3部分安定化ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体が製造できる。この焼結時に、焼結温度が1150℃未満になると、高い曲げ強度(≧850 MPa)が得られず、焼結温度が1350℃を超えると、高い破壊靱性値(≧18 MPa・m1/2)が得られなくなるので好ましくない。
尚、本発明における工程Eでは、仮焼粉体を加圧成形する際に、仮焼粉体に成形性を付与する目的でバインダーが添加されるが、添加されるバインダーの種類は特に限定されるものではない。この際、バインダーとして前記のCNF水分散液を使用しても良く、成形に適したCNF濃度は適宜選択することができるが、濃度0.2〜0.3%程度のものが好ましい。
上記の工程A〜Eを含む本発明の製造方法では、ZrO2(Y2O3)-Al2O3中和共沈未仮焼粉体から、焼結時に微細なAl2O3微粒子をZrO2マトリックス中に均一に分散させ、更にZrO2に対して2.0〜3.0 mol%という少量の安定化剤Y2O3を固溶させることで、緻密で正方晶ZrO2の割合が大きいセラミックスが得られ、これによってZrO2の「変態強靭化機構」が発現しやすくなり、強靭化が達成される。このため、本発明の製造方法は、高強度・強靱性のセラミックス(曲げ強度σb≧850 MPa、破壊靱性値KIC≧18 MPa・m1/2、ビッカース硬度Hv≧15 GPaのセラミックス)を低コストで作製するのに適している。
次に、前記工程Dで得られたZrO2-Al2O3系セラミックス仮焼粉体と、立方晶チッ化ホウ素(c-BN)粉体を用いてc-BN/ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体を製造するための本発明の製造方法について説明する。
本発明では、c-BN粉体(好ましくは、走査型電子顕微鏡観察で約50〜100個の粒子の直径を測定する方法で測定した粒子径が1〜5μmのもの、より好ましく2〜4μmのもの、特に好ましくは2.5〜3.5μmのもの)を準備し、当該c-BN粉体と、前記工程Dで得られたZrO2-Al2O3系セラミックス仮焼粉体を、30:70〜55:45(好ましくは45:55〜55:45)の体積比率にて混合し、得られた混合粉体を成形する。c-BN粉体とZrO2-Al2O3系セラミックス仮焼粉体を混合する際、図13に示されるような乾式混合を行うことが好ましく、ポリビニルアルコール(PVA)等のバインダーを添加することが好ましいが、これに限定されるものではない。
又、本発明では、上記混合粉体を成形する際、密度及び焼結性を上げるために、図13のフローチャートに示されるようにして、一軸成形を行った後に冷間静水圧プレス(CIP)を行うことが好ましく、得られた成形体は、耐熱ガラス容器内に封入し、不活性ガス(好ましくはアルゴンガス)雰囲気下で熱間静水圧プレス(HIP)にて焼結される。本発明では、冷間静水圧プレスを2段階で行ってもよい。
本発明の製造方法における熱間静水圧プレス工程では、図13のフローチャートの左下図に示されるように、成形後の成形体を、その外周面がh-BNによって取り囲まれた状態となるようにして耐熱ガラス容器(好ましくはパイレックス(登録商標)ガラスカプセル)内に封入し、不活性ガス雰囲気下でHIPにて焼結を行い、最終的に得られる焼結体の相対密度をさらに高める。成形体の周囲にh-BNを配置させるのは、h-BNは流動性が良く、圧力を伝達することが可能であり、化学的に安定で、ガラスとの反応を防止することができるからである。
本発明における上記のHIPは、温度1200〜1300℃、好ましくは1250℃、圧力100MPa以上、焼結時間1〜4時間、好ましくは2時間の条件にて行うことが好ましい。
上記の製造方法を用いた場合には、六方晶チッ化ホウ素(h-BN)相がほとんど生成せず、正方晶ZrO2(t-ZrO2)とc-BN相が主成分である高硬度・強靱性のc-BN/ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体を作製することができ、このセラミックス焼結体においては、c-BN粉体とZrO2-Al2O3系セラミックス仮焼粉体の体積比率が30:70〜55:45で、ZrO2-Al2O3系セラミックス仮焼粉体におけるZrO2とY2O3のモル比率が97.0:3.0〜98.0:2.0で、Y2O3部分安定化ZrO2とAl2O3のモル比率が80:20〜75:25であり、19 GPa以上のビッカース硬度Hvと、12 MPa・m1/2以上の破壊靭性値KICを有する。
本発明では、50vol%c-BN‐50vol%[ZrO2-2.5mol%Y2O3-25mol%Al2O3]の場合に、特に高硬度・強靱性のc-BN/ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体が作製でき、この際のビッカース硬度Hvは22.2 GPaで、破壊靭性値KICは15.7 MPa・m1/2である。
最後に、前記工程Dで得られたZrO2-Al2O3系セラミックス仮焼粉体と、炭化ジルコニウム(ZrC)粉体を用いてZrC/ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体を製造するための本発明の製造方法について説明する。
本発明では、ZrC 粉体(好ましくは、走査型電子顕微鏡観察で約50〜100個の粒子の直径を測定する方法で測定した粒子径が1〜5μmのもの、より好ましく2〜4μmのもの、特に好ましくは2.5〜3.5μmのもの)を準備し、当該ZrC 粉体と、前記工程Dで得られたZrO2-Al2O3系セラミックス仮焼粉体を、55:45〜75:25(好ましくは60:40〜70:30)の体積比率にて混合し、得られた混合粉体を成形する。
c-BN粉体とZrO2-Al2O3系セラミックス仮焼粉体を混合する際、図20のフローチャートに示されるようにして、ポリビニルアルコール(PVA)等のバインダーを添加することが好ましいが、これに限定されるものではない。
尚、上記の成形を行う際の成形体の形成手段としては一軸金型成形(一軸プレス)が一般的であるが、これに限定されるものではなく、上記成形体は冷間静水圧プレス(CIP)処理等により、その密度をより高めることが好ましく、このようにして得られた成形体は、その後、パルス通電加圧焼結(PECPS)により焼結される。本発明では、パルス通電加圧焼結する前の成形体を真空中で加熱して、成形体を構成する微粒子表面の水分や吸着ガスを除去することが好ましい。
本発明の製造方法におけるパルス通電加圧焼結は、市販のパルス通電加圧焼結装置を用いて実施することができ、10Pa以下の真空中で、1550〜1700℃の焼結温度、10〜100MPaの加圧力、5〜30分の保持時間の条件にて行なわれることが好ましく、より好ましいパルス通電加圧焼結の条件は、10Pa以下の真空下、焼結温度1550〜1650℃、加圧力30〜70MPa、保持時間7〜15分であり、1600℃/50MPa/10分の条件が特に好ましい。この際、加圧力が10MPa未満では焼結密度が低くなり、逆に100MPaを超えるとパルス通電加圧焼結に使用する金型の強度に上限があり使用出来なくなる。又、焼結温度が1500℃未満になると低密度となり、逆に1700℃を超えると粒成長しやすくなるので好ましくない。尚、保持時間については5〜30分で充分な緻密化が達成できる。
パルス通電加圧焼結の場合、一軸加圧下(10〜100MPa)において、低電圧(数V)でパルス状直流大電流(数10〜数100A〜1500A:この電流値は試料の大きさによって変化する)をカーボンプランジャー・モールドに流し、成形体中に火花放電現象を誘起し、瞬時に粒子間に高エネルギーを発生させて試料を焼結することができ、急激なジュール加熱により溶解と高速拡散が生じる。そして、高圧下、高速昇温(50〜100℃/分)、短時間焼結(5〜30分)により、粒成長を抑えた緻密な焼結体(高密度、微細結晶粒径)を得ることができる。
上記の製造方法を用いることにより、緻密かつ高硬度・強靱性な本発明のZrC/ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体を作製することができ、このセラミックス焼結体は、ZrC粉体とZrO2-Al2O3系セラミックスの体積比率が55:45〜75:25で、前記ZrO2-Al2O3系セラミックスにおけるZrO2とY2O3のモル比率が97.0:3.0〜98.0:2.0で、Y2O3部分安定化ZrO2とAl2O3のモル比率が80:20〜75:25であり、18 GPa以上のビッカース硬度と、10 MPa・m1/2以上の破壊靭性値を有する。
本発明では、特に65vol%ZrC‐35vol%[ZrO2-2.5mol%Y2O3-25mol%Al2O3]の場合に、相対密度Drが99.9%、ビッカース硬度Hvが20.7 GPa、破壊靭性値KICが12.2 MPa・m1/2のZrC /ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体が作製できる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何等限定されるものではない。
〔各原料粉体を用いた焼結体の製造例〕
(i)混合粉(混合粉体23A)を用いた焼結体の製造例
図1には、比較例としてのZrO2(Y2O3)-Al2O3系混合粉体(混合粉体23A)を用いた焼結法における各工程及び条件を示すフローチャートが示されている。
この際、原料の混合粉体としては、市販の77mol%(98.0mol% ZrO2-2.0% Y2O3)-23mol% Al2O3、77mol%(97.5mol% ZrO2-2.5mol% Y2O3)-23mol% Al2O3、77mol%(97.0mol% ZrO2-3.0mol% Y2O3)-23mol% Al2O3の3種類(いずれも第一稀元素化学工業株式会社製)を準備し、図1に記載の工程及び条件に従ってそれぞれ焼結体を作製した。
尚、上記の混合粉体に添加されるバインダーとしてのCNF水分散液には、CNF濃度0.2%のものを使用し、混合粉体に対するCNFの量が0.15〜0.25mass%となるように添加した。
(ii)中和共沈粉(中和共沈仮焼粉体25A)を用いた焼結体の製造例
図2には、比較例としての中和共沈ZrO2(Y2O3)-Al2O3系粉体(中和共沈法により製造された中和共沈仮焼粉体25A)を用いた焼結法(仮焼後にボールミルで解砕)における各工程及び条件を示すフローチャートが示されている。
この際、原料の粉体としては、中和共沈75mol% ZrO2(98.5mol% ZrO2-1.5% Y2O3)-25mol% Al2O3、75mol% ZrO2(98.0mol% ZrO2-2.0mol% Y2O3)-25mol% Al2O3、75mol% ZrO2(97.5mol% ZrO2-2.5mol% Y2O3)-25mol% Al2O3、75mol% ZrO2(97.0mol% ZrO2-3.0mol% Y2O3)-25mol% Al2O3の4種類(いずれも第一稀元素化学工業株式会社製)を使用し、図2に記載の工程及び条件に従ってそれぞれ焼結体を作製した。
尚、上記の中和共沈仮焼粉体25Aに添加されるバインダーとしてのCNF水分散液には、CNF濃度0.2%のものを使用し、中和共沈仮焼粉体25Aに対するCNFの量が0.15〜0.25mass%となるように添加した。
(iii)中和共沈粉体から造粒体を経由して得られたCNF添加ZrO2-Al2O3系セラミックス造粒体を用いた焼結体の製造例
図3には、CNF添加ZrO2-Al2O3系セラミックス造粒体を用いた本発明のZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体の製造方法における各工程及び条件を示すフローチャートが示されている。
この際、造粒体としては、Zr塩とY塩とAl塩を含む混合溶液にアルカリを添加して中和を行い、ZrとYとAlを共沈させて得られた未仮焼のZrO2(Y2O3)-Al2O3中和共沈粉体(組成:75mol% ZrO2(98.5,98.0,97.0mol% ZrO2-1.5,2.0,3.0mol% Y2O3)-25mol% Al2O3、第一稀元素化学工業株式会社製)を準備し、この中和共沈粉体を、図3に記載される条件にて、ボールミル(遊星型ボールミルP-5、フリッチュ社製)にて解砕した。この際、250mLのジルコニア容器内に、中和共沈粉体50g、φ2mmのジルコニア製YTZ(登録商標)ボール250g、エタノール100mLを入れ、300rpm/1時間解砕した。
上記の解砕を行った後に乾燥を行い、濃度0.2%, 0.3%, 0.4%, 0.5%のCNF水分散液(第一工業製薬株式会社製、商品名:レオクリスタ(登録商標)I-2SXを前記濃度となるように希釈したCNF水分散液を使用、カルボキシル基を有するアニオン変性CNF)を、それぞれ粉体/CNF水分散液=25g/15g、25g/13g、24g/12g、23g/11gにて添加し、#16(開孔径1mm)メッシュを通して顆粒体とし、700℃/9時間、その後、850℃/1時間仮焼、又は900℃/1時間仮焼した。
そして、上記により得られたZrO2-Al2O3系セラミックス仮焼粉体に成形性を付与する目的で、濃度0.2%のCNF水分散液を添加(仮焼粉体/CNF水分散液=2g/0.2〜0.3g)して混合し、この混合物を金型成形(一軸加圧70 MPa)、ついで冷間静水圧プレス(245 MPa)して成形体を作製し、その成形体を電気炉を用いて、大気中1250℃で24時間焼結してそれぞれ焼結体を作製した。
上記の各原料を用いて作製された成形体及び焼結体の微細構造については、成形体のBET比表面積、相対密度、焼結体の相対密度、正方晶ZrO2率(t- ZrO2率)を測定した。この際、t- ZrO2率は、X線回折装置を用いた単斜晶相の回折ピーク強度、正方晶相の回折ピーク強度、全ZrO2に対する単斜晶相の存在割合から、Garvie とNicholsonによる計算式を用いて求めた。尚、相対密度(Dr)は、理論密度を100%とし、かさ密度を、試験体の大気中での重量と、水中での重量から求める、いわゆるアルキメデス法にて測定し、このかさ密度を理論密度で割って求めた値を%表示した値である。
又、上記で作製した焼結体については、それぞれ、曲げ強度(σb)、ビッカース硬度(Hv)、破壊靱性値(KIC)を測定し、特性評価を行った。
本明細書に記載される曲げ強度σは、JIS R 1601:2008 ファインセラミックスの室温曲げ強さ試験方法に従って測定した値であり、ビッカース硬度Hvは、JIS R 1610:2003 ファインセラミックスの硬さ試験方法に従って測定した値であり、破壊靱性値KICは、JIS R 1607:2015 ファインセラミックスの室温破壊じん(靱)性試験方法のIF法を採用して測定された値である。
図4は、Y2O3の量を変化(2.0Y, 2.5Y, 3.0Y)させた混合粉体23AのBET比表面積、成形体の相対密度、焼結体の相対密度及びt-ZrO2率の変化を示すグラフであり、このグラフから、Y2O3の量が2.0Y→3.0Yに増えると、成形体の相対密度、焼結体の相対密度が増加することが確認された。尚、焼結体のt-ZrO2率はいずれも100%となった。
図5は、Y2O3の量を変化(1.5Y, 2.0Y, 2.5Y, 3.0Y)させた中和共沈仮焼粉体25AのBET比表面積、成形体の相対密度、焼結体の相対密度及びt-ZrO2率の変化を示すグラフであり、このグラフから、混合粉体23Aを用いた場合よりも、成形体の相対密度、焼結体の相対密度、t-ZrO2率が低くなる傾向が観察された。
図6は、75mol% ZrO2(1.5mol% Y2O3)-25mol% Al2O3の組成を有する中和共沈未仮焼粉体(前記組成の粉体に対してCNFが0.17mass%添加された顆粒体)を用い、焼結時間を変化させた際の、相対密度Dr、曲げ強度σb、ビッカース硬度Hv、破壊靱性値KICの変化を示すグラフであり、このグラフは、Y2O3の量が1.5mol%の場合には、焼結時間が24時間を超えるとHvとKICが更に大きくなり、焼成時間48時間においてHv≧15GPa、KIC≧18MPa・m1/2の焼結体が得られるが、曲げ強度σbが260 MPaを超える焼結体は得られないことを示している。
図7は、75mol% ZrO2(1.5,3.0mol% Y2O3)-25mol% Al2O3の組成を有する中和共沈未仮焼粉体(前記組成の粉体に対してCNFが、図7の左側から順に0.17, 0.19, 0.17, 0.16mass%添加された顆粒体)を用い、850℃又は900℃で仮焼を行った際の、BET比表面積、成形体の相対密度、焼結体の相対密度を比較したグラフである。このグラフから、3.0mol% Y2O3の場合の仮焼後のBET比表面積は55.8〜60.1m2/gであり、t-ZrO2率は97%以上であることが確認され、又、仮焼温度が900℃の場合の方が、仮焼温度が850℃の場合よりも焼結体の相対密度が高くなり、Y2O3が3.0mol%、仮焼温度が900℃の場合に相対密度が98%の焼結体が得られることがわかった。
図8は、75mol% ZrO2(2.0mol% Y2O3)-25mol% Al2O3の組成を有する中和共沈未仮焼粉体に、CNF水分散液濃度を変化(0.2%, 0.3%, 0.4%, 0.5%)させて添加し(それぞれ粉体/水分散液=25g/15g、25g/13g、24g/12g、23g/11g)、この混合物から得られた顆粒体を用いて作製された成形体のBET比表面積、相対密度及び、焼結体の相対密度を比較したグラフである。このグラフから、2.0mol% Y2O3、CNF水分散液濃度0.2%〜0.4%の場合に、BET比表面積は44.7〜48.5m2/gであり、このグラフから、高い相対密度(99.5%以上)を有した焼結体が得られるCNF水分散液濃度は0.2%〜0.3%であることが確認された。
図9は、75mol% ZrO2(2.0mol% Y2O3)-25mol% Al2O3の組成を有する中和共沈未仮焼粉体に、CNF水分散液濃度を変化(0.2%, 0.3%, 0.4%, 0.5%)させて添加し(それぞれ粉体/水分散液=25g/15g、25g/13g、24g/12g、23g/11g)、この混合物から得られた顆粒体(2Y(0.2%), 2Y(0.3%), 2Y(0.4%), 2Y(0.5%))を用いて作製された焼結体の相対密度Dr、曲げ強度σb、ビッカース硬度Hv、破壊靱性値KICの変化を示すグラフであり、2Y(0.2%), 2Y(0.3%), 2Y(0.4%), 2Y(0.5%)におけるそれぞれのCNF含有割合(CNF/粉体の質量%)は0.12mass%, 0.156mass%, 0.20mass%, 0.239mass%である。
この図9の結果から、高いDr、σb、Hv、KICを有した焼結体が得られるCNF水分散液の濃度は0.2〜0.3%の範囲であり、最適なCNF含有割合(質量%)は0.156mass%であることがわかった。
以下の表1には、焼結体に関する上記物性値の他に、顆粒体のBET比表面積、顆粒体の理論密度、焼結前の成形体の嵩密度、相対密度等が要約されている。
Figure 2021054703
上記表1の結果から、成形体を構成する顆粒体粒子へのCNFの添加量が0.12〜0.20質量%である場合に、高密度・高機械的強度ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体が常圧焼結で製造でき、この際、焼結前の成形体を構成する顆粒体のBET比表面積は44m2/g以上で、t-ZrO2率は96%以上であり、当該成形体の相対密度は40%以上であることがわかった。
尚、上記表1に記載のBET比表面積とCNF添加量から計算された、顆粒体を構成する粒子当たりのCNF量は、0.12mass%の場合が2.68×10-3 g/m2、0.156mass%の場合が3.27×10-3 g/m2、0.20mass%の場合が4.12×10-3g/m2、0.239mass%の場合が6.85×10-3g/m2であり、これらの実験結果から、顆粒体を構成する粒子当たりのCNF量が2.7〜4.1×10-3g/m2の範囲において、高密度・高機械的強度ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体が常圧焼結で製造できることが確認された。
図10は、75mol% ZrO2(1.5,3.0mol% Y2O3)-25mol% Al2O3の組成を有する中和共沈未仮焼粉体に、濃度0.3%のCNF水分散液を添加した場合(顆粒体(CNF))と、濃度20%のポリビニルアルコール(PVA)水溶液を添加した場合(顆粒体(PVA))の、BET比表面積、焼結体の相対密度、焼結体のt-ZrO2率を比較したグラフであり、このグラフから、顆粒体(CNF)、顆粒体(PVA)共に、成形密度はほぼ同じであるが、BET比表面積は顆粒体(CNF)の方が顆粒体(PVA)よりも大きく、Y2O3添加量が1.5mol%から3.0mol%に増加するとt-ZrO2率が大きく向上し、焼結体の相対密度Drも向上(99.9%)することが確認された。
図11は、75mol%ZrO2(1.5,3.0mol% Y2O3)-25mol% Al2O3の組成を有する中和共沈未仮焼粉体に、0.3%CNF水分散液、20%PVA水溶液をそれぞれ添加した上記顆粒体(CNF)、顆粒体(PVA)を用いた場合の、焼結体の相対密度Dr、曲げ強度σb、ビッカース硬度Hv、破壊靱性値KICを比較したグラフである。このグラフから、Dr、σb、Hv、KICのいずれについても、顆粒体(CNF)を用いて得られた焼結体(CNF)の方が、顆粒体(PVA)を用いて得られた焼結体(PVA)よりも大きいことが確認され、特に曲げ強度σbはCNFの添加によって882MPaにまで向上した。
図12は、前記の混合粉体23A、中和共沈仮焼粉体25A、CNF添加ZrO2-Al2O3系セラミックス造粒体を用いた本発明の顆粒体(CNF)、及び顆粒体(CNF)と同じ工程でCNFの代わりにPVAを使用し比較として調製した顆粒体(PVA)を用いた場合の、成形体の相対密度、焼結体の相対密度、ビッカース硬度Hv、破壊靱性値KICを比較したグラフであり、このグラフから、顆粒体(CNF)を用いて得られた焼結体の相対密度、Hv、KICは、混合粉体23A、中和共沈仮焼粉体25A、顆粒体(PVA)を用いて得られた焼結体よりもいずれも優れていることが確認された。
上記の実験結果から、ZrO2(Y2O3)-Al2O3中和共沈未仮焼粉体とCNF水分散液を混合した混合物を顆粒状に加工して造粒体とし、この造粒体を仮焼して得た仮焼粉体を成形した後に大気中で焼結(無加圧焼結)を行うことにより、高密度・高機械的強度ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体を製造することができることが確認された。
〔前記混合粉(混合粉体23A(PSZ23A))とc-BN粉体を用いて得られた焼結体の組成・成形圧力依存性及び機械的特性の検討実験〕
前記混合粉体23A(PSZ23A)を準備する一方、c-BN粉体として市販のc-BN粉体(粒径:3.0μm、デンカ社製)を準備し、図13のフローチャートに示される処理条件にてc-BN/ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体を作製した。
図14の左側には、BN含有量(体積比率)を変化させた際の、成形体の相対密度Drの組成・成形圧力依存性を示すグラフが示されており、右側には、焼結体の相対密度Drの組成・成形圧力依存性を示すグラフが示されており、CIP時の圧力が245MPaの場合と1GPaの場合が比較されている。
これらのグラフから、成形圧力の増加(245MPa→1GPa)により焼結体が緻密化し、HIP処理により、BN含有量が30〜60vol%の範囲において大きな相対密度Drが得られることがわかったが、混合粉体23Aを用いた場合は、245MPa の圧力では所望の相対密度を得ることはできなかった。
図15のグラフは、BN含有量を変化させた際の、焼結体のc-BN比率、t-ZrO2比率の組成依存性を示すグラフであり、混合粉体23Aを用いてCIP時の圧力が高圧の1GPaの場合では、c-BN比率は、BN含有量30〜70vol%の範囲において大きく変化しないが、t-ZrO2比率は、c-BN含有量70vol%の組成において低くなることが確認された。
図16の左側には、BN含有量を変化させた際の、焼結体のビッカース硬度Hvと相対密度Drの変化を示すグラフが示されており、右側には、焼結体の破壊靱性値KICの変化を示すグラフが示されている。
これらのグラフから、混合粉体23Aを用いてCIP時の圧力が高圧の1GPaの場合では、高硬度のBN含有量と相対密度によりビッカース硬度Hvが変化し、破壊靱性値KICについては、BN含有量が増加するにつれてKICが小さくなることがわかった。これは、BN粒子の周囲をクラックが進展して、ZrO2(Y2O3)-Al2O3が応力誘起変態強化機構を示すことによるものであると考えられる。
〔調製法の異なる3種類のZrO2-Al2O3原料(PSZ23A、PSZ25A及び顆粒体PSZ25A)を用いて得られた成形体と焼結体の相対密度Drの比較実験〕
図17の左側には、BN含有量を変化させた際の、成形体の相対密度Drの変化を示すグラフが示されており、右側には、焼結体の相対密度Drの変化を示すグラフが示されており、成形体を作製する際のCIP時の圧力は245MPaとした。
図17のグラフから、成形体の場合、3種類の原料のうち、混合粉体であるPSZ23Aを用いて得られた成形体が最も大きな相対密度Drを示し、次が、中和共沈仮焼粉体のPSZ25Aで、顆粒体PSZ25Aを用いて得られた成形体のDrが最も小さくなることがわかった。
しかし、焼結体の場合には、中和共沈仮焼粉体のPSZ25Aを用いて得られた焼結体のDrが最も低く、顆粒体PSZ25Aを用いて得られた焼結体のDrが最も大きくなることが確認された。又、図示されていないが、走査型電子顕微鏡(SEM)画像の比較より、混合粉体PSZ23Aを用いた成形体ではZrO2-Al2O3が凝集しているのに対し、顆粒体PSZ25Aを用いた成形体の場合には成形体密度は低いが、ZrO2-Al2O3が均一に分散していることがわかった。
〔PSZ23Aと顆粒体PSZ25Aの焼結性比較実験〕
図18に示される円柱体状の成形体を作製し、この成形体を加熱して焼結開始温度を測定した。
図18の結果から、混合粉体PSZ23Aの場合は、高温(約1100℃)になってから焼結が開始するのに対し、顆粒体PSZ25Aの場合は、混合粉体PSZ23Aよりも低温(約900℃)から焼結が始まり、かつ緩やかに焼結が進行することが確認された。
〔顆粒体PSZ25Aを用いた焼結体の機械的特性の評価〕
図19には、顆粒体PSZ25A を用いて、BN含有量を変化させた際の、焼結体の機械的特性の変化を示すグラフが示されており、左側には、ビッカース硬度Hvと相対密度Drの変化を示すグラフが、右側には、破壊靱性値KICの変化を示すグラフが示されている。
図19のグラフは、30〜55vol%c-BN‐70〜45vol%[ZrO2-2.5mol%Y2O3-25mol%Al2O3]の組成においては、CIP時の圧力が比較的低圧の245MPaであっても、高硬度・強靱性(Hv:19 GPa以上、KIC:12 MPa・m1/2以上)のc-BN/ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体が作製でき、特にc-BN 50vol%組成では、Hvが22.2 GPaで、KICが15.7 MPa・m1/2であるc-BN/ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体が得られることを示している。
〔PSZ23Aと、ホウ化ジルコニウム(ZrB2)又は炭化ジルコニウム(ZrC)を用いて得られた焼結体の相対密度と、焼結温度との関係〕
前記混合粉体PSZ23A(Y2O3量2.5mol%)を準備する一方、市販のZrB2粉体(粒径:3.0μm)及びZrC粉体(粒径:3.0μm)を準備し、図20のフローチャートに示される処理条件にて65vol%-ZrB2/35vol%-PSZ23A焼結体、65vol%-ZrC/35vol%-PSZ23A焼結体をそれぞれ作製した。尚、PECPS条件は、1300〜1700℃/50MPa/10分とした。
図21の左側の画像は、焼結温度を変化させた際の、ZrB2/PSZ23A焼結体とZrC/PSZ23A焼結体についてのSEM画像であり、右側のグラフは、相対密度Drの変化を示すグラフである。相対密度の比較から、ZrB2/PSZ23A焼結体よりもZrC/PSZ23A焼結体の方が相対密度が高く、焼結温度1600℃において焼結体の相対密度が最も高くなることがわかった。
〔PSZ23Aと、ZrB2又はZrCを用いて得られた焼結体の機械的特性の評価〕
上記で得られた65vol%-ZrB2/35vol%-PSZ23A焼結体、65vol%-ZrC/35vol%-PSZ23A焼結体について、焼結温度を変化させた際の、ビッカース硬度Hv及び破壊靱性値KICの変化を比較した。
図22の左側のグラフは、焼結温度を変化させた際の、ZrB2/PSZ23A焼結体とZrC/PSZ23A焼結体についてのHvの変化を比較したものであり、右側のグラフは、KICの変化を比較したものである。図22の結果から、いずれの場合にも、焼結温度が1600℃の時に最も高いビッカース硬度値、破壊靱性値が得られ、ZrB2/PSZ23A焼結体よりもZrC/PSZ23A焼結体の方がHv、KICが大きいことが確認された。
〔ZrCと、PSZ23A又は顆粒体PSZ25Aを用いて得られた焼結体の相対密度と、焼結温度との関係〕
前記顆粒体PSZ25A(Y2O3量2.5mol%)と、市販のZrC粉体(粒径:3.0μm)をそれぞれ準備し、図20のフローチャートに示される処理条件にて65vol%-ZrC/35vol%-顆粒体PSZ25A焼結体を作製し、65vol%-ZrC/35vol%-PSZ23A焼結体の相対密度と比較した。
図23の左側の画像は、焼結温度を変化させた際の、ZrC/顆粒体PSZ25A焼結体とZrC/PSZ23A焼結体についてのSEM画像であり、右側のグラフは、相対密度Drの変化を示すグラフである。相対密度の比較から、ZrC/PSZ23A焼結体よりもZrC/顆粒体PSZ25A焼結体の方が高い相対密度を有することがわかり、焼結温度1600℃において焼結体の相対密度が最も高くなることが確認された。
〔ZrCと、PSZ23A又は顆粒体PSZ25Aを用いて得られた焼結体のSEM画像の比較〕
上記で得られた65vol%-ZrC/35vol%-PSZ23A焼結体、65vol%-ZrC/35vol%-顆粒体PSZ25A 焼結体について、焼結温度を変化させた際の、ビッカース硬度Hv及び破壊靱性値KICの変化を比較した。
図24の左側のグラフは、焼結温度を変化させた際の、ZrC/PSZ23A焼結体とZrC/顆粒体PSZ25A 焼結体についてのHvの変化を比較したものであり、右側のグラフは、KICの変化を比較したものである。図24の結果から、いずれの場合にも、焼結温度が1600℃の時に最も高いビッカース硬度値、破壊靱性値が得られ、焼結温度1600℃ではZrC/PSZ23A焼結体よりもZrC/顆粒体PSZ25A 焼結体の方がHv、KICが大きいことが確認された。
〔ZrCと、PSZ23A又は顆粒体PSZ25Aを用いて得られた焼結体の機械的特性の評価〕
図25には、前記ZrC/PSZ23A焼結体と、ZrC/顆粒体PSZ25A焼結体(Y2O3量:1.5, 2.0, 2.5mol%)についてのSEM画像と共に、相対密度とt-率が併記されており、Y2O3量が多いほど、相対密度もt-率も大きくなることがわかった。
〔ZrCと、PSZ23A又は顆粒体PSZ25Aを用いて得られた焼結体の機械的特性の評価〕
図26には、前記ZrC/PSZ23A焼結体と、ZrC/顆粒体PSZ25A焼結体(Y2O3:1.5, 2.0, 2.5mol%)についての相対密度Dr、ビッカース硬度Hv、破壊靱性値KICを比較したグラフが示されており、この結果は、ZrC/顆粒体PSZ25A焼結体(Y2O3量:2.5mol%)の場合に、Dr、Hv、KICが最も大きくなることを示している。
ZrO2(Y2O3)-Al2O3中和共沈未仮焼粉体にCNFを添加して造粒を行い、その後、仮焼して得られた顆粒体を用いる本発明の製造方法によって、高圧焼結を行わずに、相対密度が99.5%以上、3点曲げ強度σbが850 MPa以上、ビッカース硬度Hvが15.0 GPa以上、破壊靭性値KICが18.0 MPa・m1/2以上の高密度・高機械的強度ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体を製造でき、上記顆粒体を経由する本発明の製造方法は、中和共沈仮焼粉体の新しい応用分野を開拓し、例えば、熱溶融法3D積層造形セラミックスや、低コストでの高強度セラミックスの製造法として有用である。
又、上記の顆粒体を、c-BN粉体やZrC粉体と混合して成形・焼結を行うことにより、高強度・高靭性を有するc-BN/ZrO2-Al2O3系又はZrC/ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体が製造でき、このような高い機械的特性を有するZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体は、これらの特性が要求される各種用途、例えばセラミックス製機械部品、生体用セラミックス(人工歯根、人工関節、人工骨)等に利用可能である。

Claims (19)

  1. 以下の工程A〜C:
    工程A:ジルコニウム塩とイットリウム塩とアルミニウム塩を用いて、ジルコニア(ZrO2)及びイットリア(Y2O3)としてのモル比率(mol%)が97.0:3.0〜98.0:2.0で、しかも、Y2O3添加したZrO2及びAl2O3としてのモル比率が80:20〜70:30となるように混合を行って調製した混合溶液にアルカリを添加して中和を行い、ZrとYとAlを共沈させ、その後、解砕を行うことによりZrO2(Y2O3)-Al2O3中和共沈未仮焼粉体を調製する工程、
    工程B:水中にセルロースナノファイバーが分散されており、100〜1000mPa・sの粘度を有するセルロースナノファイバー水分散液を準備する工程、
    工程C:前記工程AのZrO2(Y2O3)-Al2O3中和共沈未仮焼粉体100質量部に対して、セルロースナノファイバーが0.12〜0.20質量部となるように前記工程Bのセルロースナノファイバー水分散液を添加し、混合を行った後、造粒体を作製する工程
    を含むことを特徴とするセルロースナノファイバー添加ZrO2-Al2O3系セラミックス造粒体の製造方法。
  2. 前記工程Cにて造粒体を作製する際に、当該造粒体の粒径を2μm〜1.5mmとすることを特徴とする請求項1に記載のセルロースナノファイバー添加ZrO2-Al2O3系セラミックス造粒体の製造方法。
  3. 前記工程Bのセルロースナノファイバー水分散液中に分散されたセルロースナノファイバーの繊維幅が1〜10nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のセルロースナノファイバー添加ZrO2-Al2O3系セラミックス造粒体の製造方法。
  4. 前記工程A〜Cを実施した後に、以下の工程D:
    工程D:前記工程Cで得られた造粒体を650〜750℃で7〜12時間加熱し、更に800〜950℃で0.5〜3時間仮焼成し、仮焼粉体を作製する工程
    を実施することを特徴とするZrO2-Al2O3系セラミックス仮焼粉体の製造方法。
  5. 前記工程A〜Dを実施した後に、以下の工程E:
    工程E:前記工程Dで得られた仮焼粉体を加圧成形し、大気中1150〜1350℃の温度で焼結する工程
    を実施することを特徴とするZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体の製造方法。
  6. 前記セルロースナノファイバーがアニオン変性されたセルロースナノファイバーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースナノファイバー添加ZrO2-Al2O3系セラミックス造粒体の製造方法。
  7. 前記セルロースナノファイバーがカルボキシル基を有するアニオン変性セルロースナノファイバーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースナノファイバー添加ZrO2-Al2O3系セラミックス造粒体の製造方法。
  8. ジルコニア(ZrO2)及びイットリア(Y2O3)としてのモル比率(mol%)が97.0:3.0〜98.0:2.0で、しかも、イットリア添加したジルコニア及びアルミナ(Al2O3)としてのモル比率が80:20〜70:30であるZrO2(Y2O3)- Al2O3中和共沈未仮焼粉体100質量部に対して、セルロースナノファイバーが0.12〜0.20質量部添加混合されており、2μm〜1.5mmの大きさの造粒体であることを特徴とするセルロースナノファイバー添加ZrO2-Al2O3系セラミックス造粒体。
  9. 前記セルロースナノファイバーがアニオン変性されたセルロースナノファイバーであることを特徴とする請求項8に記載のセルロースナノファイバー添加ZrO2-Al2O3系セラミックス造粒体。
  10. 前記セルロースナノファイバーがカルボキシル基を有するアニオン変性セルロースナノファイバーであることを特徴とする請求項8に記載のセルロースナノファイバー添加ZrO2-Al2O3系セラミックス造粒体。
  11. ジルコニア(ZrO2)及びイットリア(Y2O3)としてのモル比率(mol%)が97.0:3.0〜98.0:2.0で、しかも、イットリア添加したジルコニア及びアルミナ(Al2O3)としてのモル比率が80:20〜70:30であり、245MPaで加圧成形し、大気中1250℃の温度で焼成した場合の相対密度が99.5%以上、3点曲げ強度が850 MPa以上、ビッカース硬度が15.0 GPa以上、破壊靭性値が18.0 MPa・m1/2以上であることを特徴とするZrO2-Al2O3系セラミックス仮焼粉体。
  12. 44m2/g以上のBET比表面積を有し、正方晶ZrO2率が96%であることを特徴とする請求項11に記載のZrO2-Al2O3系セラミックス仮焼粉体。
  13. ジルコニア(ZrO2)及びイットリア(Y2O3)としてのモル比率(mol%)が97.0:3.0〜98.0:2.0で、しかも、イットリア添加したジルコニア及びアルミナ(Al2O3)としてのモル比率が80:20〜70:30であり、相対密度が99.5%以上、3点曲げ強度が850 MPa以上、ビッカース硬度が15.0 GPa以上、破壊靭性値が18.0 MPa・m1/2以上であることを特徴とする、Y2O3部分安定化ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体。
  14. 立方晶チッ化ホウ素(c-BN)粉体と、請求項4に記載の方法によって得られたZrO2-Al2O3系セラミックス仮焼粉体を、30:70〜55:45の体積比率にて混合し、得られた混合粉体を成形して成形体を得、当該成形体を耐熱ガラス容器内に封入した後、不活性ガス雰囲気下で熱間静水圧プレスにて焼結を行うことを特徴とするc-BN/ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体の製造方法。
  15. 前記の熱間静水圧プレスを、温度1200〜1300℃、圧力100MPa以上、焼結時間1〜4時間の条件にて行うことを特徴とする請求項14に記載のc-BN/ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体の製造方法。
  16. 立方晶チッ化ホウ素(c-BN)とZrO2-Al2O3系セラミックスの体積比率が30:70〜55:45で、前記ZrO2-Al2O3系セラミックスにおけるZrO2とY2O3のモル比率が97.0:3.0〜98.0:2.0で、Y2O3部分安定化ZrO2とAl2O3のモル比率が80:20〜75:25であり、19 GPa以上のビッカース硬度と、12 MPa・m1/2以上の破壊靭性値を有することを特徴とするc-BN/ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体。
  17. 炭化ジルコニウム(ZrC)粉体と、請求項4に記載の方法によって得られたZrO2-Al2O3系セラミックス仮焼粉体を、55:45〜75:25の体積比率にて混合し、得られた混合粉体を成形して成形体とした後、当該成形体をパルス通電加圧焼結することを特徴とするZrC/ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体の製造方法。
  18. 前記のパルス通電加圧焼結が、10Pa以下の真空中で、1550〜1700℃の焼結温度、10〜100 MPaの加圧力および5〜30分の保持時間の条件にて行なわれることを特徴とする請求項17に記載のZrC/ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体の製造方法。
  19. 炭化ジルコニウム(ZrC)とZrO2-Al2O3系セラミックスの体積比率が55:45〜75:25で、前記ZrO2-Al2O3系セラミックスにおけるZrO2とY2O3のモル比率が97.0:3.0〜98.0:2.0で、Y2O3部分安定化ZrO2とAl2O3のモル比率が80:20〜75:25であり、18 GPa以上のビッカース硬度と、10 MPa・m1/2以上の破壊靭性値を有することを特徴とするZrC/ZrO2-Al2O3系セラミックス焼結体。
JP2020083842A 2019-09-26 2020-05-12 セルロースナノファイバー添加ZrO2−Al2O3系セラミックス造粒体、当該造粒体の製造方法、当該造粒体を用いた仮焼粉体及びその製造方法、当該仮焼粉体を用いたセラミックス焼結体及びその製造方法 Pending JP2021054703A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019175623 2019-09-26
JP2019175623 2019-09-26

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2021054703A true JP2021054703A (ja) 2021-04-08

Family

ID=75273079

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020083842A Pending JP2021054703A (ja) 2019-09-26 2020-05-12 セルロースナノファイバー添加ZrO2−Al2O3系セラミックス造粒体、当該造粒体の製造方法、当該造粒体を用いた仮焼粉体及びその製造方法、当該仮焼粉体を用いたセラミックス焼結体及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2021054703A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US9902654B2 (en) ZrO2-Al2O3-based ceramic sintered compact and production method thereof
JP6052735B2 (ja) 高強度強靱性ZrO2−Al2O3系固溶体セラミックスの作製法
RU2442752C2 (ru) Оксид циркония и способ его получения
Sutharsini et al. Two-step sintering of ceramics
JP4470378B2 (ja) ジルコニア焼結体およびその製造方法
JP2023138969A (ja) ジルコニア焼結体及びその製造方法
CN105622071A (zh) 一种含有片状微晶的α-A12O3陶瓷颗粒及其制备方法和应用
JP4357584B1 (ja) 耐食性、耐熱衝撃抵抗性及び耐久性に優れたアルミナ質焼結体
JP5931542B2 (ja) ジルコニア質焼結体からなる焼成用部材
JP6982000B2 (ja) 配向AlN焼結体及びその製法
JP2003020277A (ja) セリアにもとづく固体電解質
JP2021054703A (ja) セルロースナノファイバー添加ZrO2−Al2O3系セラミックス造粒体、当該造粒体の製造方法、当該造粒体を用いた仮焼粉体及びその製造方法、当該仮焼粉体を用いたセラミックス焼結体及びその製造方法
WO2022075345A1 (ja) ジルコニア粉末、ジルコニア焼結体、及び、ジルコニア焼結体の製造方法
JP2000095564A (ja) ジルコニア質焼結体及びその製造方法ならびに粉砕部材用材料
JPH08208317A (ja) アルミナ質焼結体およびその製造方法
JP2014024740A (ja) セラミック焼結体および熱処理用部材
WO2023042893A1 (ja) 粉末組成物、仮焼体、焼結体及びその製造方法
JPH08109065A (ja) 高強度ジルコニア質焼結体及びその製造方法並びに粉砕用部品材料
JPH0380153A (ja) ジルコニア系セラミックスの製造方法
JP6554733B2 (ja) 酸化セリウム安定化酸化ジルコニウム系組成物及びその製造方法
JP3152853B2 (ja) アルミナ質焼結体およびその製法
JP3882070B2 (ja) ジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体及びその製造方法
JP2004359534A (ja) ジルコニア質焼結体
JP4612358B2 (ja) アルミナ・ジルコニアセラミックスおよびその製法
JP2002121070A (ja) 耐低温熱劣化性ジルコニア質焼結体及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20200513