JP3882070B2 - ジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体及びその製造方法 - Google Patents

ジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体、及びその製造方法に関するものであり、更に詳しくは、等モル量のジルコン酸カルシウム[CaZrO3 ]とスピネル[MgAl2 4 ]が互いに均一に分散し、粒成長を抑制することにより形成される微細な複合組織を有し、熱的、化学的に安定な多孔質組織を有する焼成体からなる、ジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体、及びその製造方法に関するものである。本発明の複合多孔体は、例えば、高耐食性流体透過フィルター機能材料、超高温用軽量化部材、触媒担体、断熱材、あるいは吸音材等として有用である。
【0002】
【従来の技術】
高い気孔率を有する酸化物系セラミックス多孔体は、例えば、流体透過フィルター等として用いられている。従来品は、成形密度や焼結温度を低くすることで焼結体中に気孔を分散させる方法(焼結制御法)、有機バインダーを燃焼させることにより気孔を設ける方法(有機バインダー除去法)、アルコキシドの分解・反応等の化学的手法を用いることにより比較的低温で均一な気孔を設ける方法(ゾルゲル法)などによるものであった。また、いずれの製法による多孔体材料においても、その多くは単一のセラミックスからなる単相多孔体であった。
【0003】
しかしながら、これらの多孔体材料には、次のような欠点があった。即ち、従来の多孔体材料においては、例えば、焼結制御法で作製した多孔体では、多孔体を構成する結晶粒子同士の結合強度が不十分であり、多孔体全体としての材料強度も不十分であり、また、細孔径分布も広いために、流体の選択性が十分ではなかった。有機バインダー除去法により作製した多孔体材料では、ポリマーの燃焼によりその成分に応じてNOx 等の有害ガスが発生するという問題点があり、また、ポリマーの燃焼による発熱のために、多孔体組織の微細構造の制御が困難であるという問題点があった。また、ゾルゲル法をはじめとする化学的手法を用いて作製した多孔体材料では、比較的高度な組織制御が可能になる反面、コストが高く、量産の点で問題があった。更に、いずれの製法による多孔体材料においても、1000℃以上の高温で使用した場合に、多孔体の焼結が進み、組織が時間とともに粗大化し、細孔径が変化するために、性能が劣化するという欠点があった。
【0004】
これらの先行技術を踏まえ、最近、本発明者(鈴木、大司)らは、等モル量のジルコン酸カルシウム[CaZrO3 ]とマグネシア[MgO]が互いに均一に分散し、粒成長を抑制することで微細な複合組織を有し、高温下で安定な組織を保つ焼成体であることを特徴とするジルコン酸カルシウム/マグネシア系複合多孔体を開発したことを報告した[特開2001−122675、ジャーナル・オブ・アメリカン・セラミック・ソサイエティ(Journal of American Ceramic Society)、第83巻、第2091頁、2000年]。この多孔体材料は、従来の多孔体材料の欠点の多くを解決することができたが、その用途によっては、例えば、機械的強度及び耐酸性・耐食性に関して、更なる改善の必要があった。より詳しくは、例えば、曲げ強度に関しては、気孔率が47%の場合に約35MPaであり、フィルター材料としては十分であるものの、構造部材として見た場合には、更に高い強度が望ましく、また、マグネシアを構成相として含んでいる点から、酸蒸気や高温水蒸気に対する安定性について改善する必要があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上記従来技術の問題点を確実に解消し得る新しい多孔体材料を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、より優れた特性を有するジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体を開発することに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以上のような従来技術の欠点をなくすためになされたものであり、高度に組織制御され、更に、耐熱性、機械的特性に優れるジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体、及び当該多孔体材料をコスト的に有利な簡便なプロセスを適用して効率良く製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)カルサイト、マグネシア、ジルコニア、アルミナを主原料とし、あるいはドロマイト、ジルコニア、アルミナを主原料とし、この原料粉末の適宜成形体を、大気中で反応焼成することにより製造してなる、多孔質組織を有するジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体であって、等モル量のジルコン酸カルシウム[CaZrO]とスピネル[MgAl]が互いに均一に分散し、粒成長を抑制することにより形成される微細な複合組織を有し、機械的強度及び耐酸性・耐食性の改善された組織を保つ焼成体からなることを特徴とする、ジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体。
(2)等モル量のカルサイト[CaCO]、マグネシア[MgO]、ジルコニア[ZrO]、アルミナ[Al]を主原料とし、一段階のみの反応焼成によって製造したものであることを特徴とする、前記(1)に記載のジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体。
(3)等モル量のドロマイト[CaMg(CO]、ジルコニア[ZrO]、アルミナ[Al]を主原料とし、一段階のみの反応焼成によって製造したものであることを特徴とする、前記(1)に記載のジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体。
(4)アルカリフッ化物を低融点液相形成材として、主原料に対して微量添加することにより、気孔率をほとんど変化させずに比表面積を制御したことを特徴とする、前記(1)、(2)又は(3)に記載のジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体。
(5)前記(1)から(4)のいずれかに記載のジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体を製造する方法であって、等モル量のカルサイト、マグネシア、ジルコニア、アルミナあるいは等モル量のドロマイト、ジルコニア、アルミナを主原料とし、この原料粉末を均一に粉砕混合し、これを適宜成形したのち、大気中で反応焼成することにより、多孔質組織を有するジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体であって等モル量のジルコン酸カルシウム[CaZrO]とスピネル[MgAl]が互いに均一に分散し、粒成長を抑制することにより形成される微細な複合組織を有し、機械的強度及び耐酸性・耐食性の改善された多孔体とすることを特徴とする、ジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体の製造方法。
(6)主原料の総量に対して、低融点液相形成材を0.2〜0.5重量%を均一に混合し、昇温過程において主原料の粒子表面での拡散を促進させることにより比表面積を制御し、生成したCOを遊離させることによって均質な開気孔を形成させ、1100〜1300℃で大気中で焼成することにより、40〜60%の高い気孔率を有し、焼成前後の寸法変化が小さく、かつ機械的強度及び耐酸性・耐食性の改善された多孔体とすることを特徴とする、前記(5)に記載のジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体の製造方法。
【0007】
本発明のジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体は、等モル量のジルコン酸カルシウム[CaZrO3 ]とマグネシア[MgAl24 ]が互いに均一に分散し、互いに粒成長を抑制することにより形成される微細な複合組織を有し、高温下で安定な組織を保つ焼成体からなることを特徴としている。上記ジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体は、既存のジルコン酸カルシウム/マグネシア系複合多孔体に比べて、マグネシアをスピネルとして複酸化物化したことにより、機械的特性や化学的安定性が改善されている。また、アルミナが主成分として加わることにより、低融点液相形成剤を添加しない場合でも1100〜1300℃の焼成温度で十分に固相反応が進行し、また、低融点液相形成剤を添加した場合では、ジルコン酸カルシウム結晶粒子及びスピネル結晶粒子の表面がより滑らかなものとなり、気孔率を大きく変化させずに比表面積を制御することが可能となる。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明のジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体は、等モル量のジルコン酸カルシウムとスピネルが互いに均一に分散し、粒成長を抑制することで微細な複合組織を有し、長時間高温下で使用した場合でもジルコン酸カルシウムとスピネルが相互に粒成長を抑制するために、安定な組織を保つ。ジルコン酸カルシウムとスピネルの結晶粒径は、焼結温度により若干変化するが、3次元的なネットワーク構造を持つために、バルク体のような物質移動が生じにくく、数ミクロン以下の微細な結晶粒となる。この複合多孔体においては、気孔は、ほとんどすべてが、貫通開気孔であり、気孔率が40〜60%であり、流体を選択的に透過するのに十分な気孔率を有する。この多孔体材料中では、比較的低温で構成セラミックス粒子のネッキングが生じるため、機械的強度に優れ、効率良く流体を選択的に透過させることが可能となる。また、その他の多孔体としての用途としては、例えば、超高温用軽量化部材、触媒担体、断熱材、あるいは吸音材等の分野においても、本発明による多孔体材料は、非常に有用である。
【0009】
また、本発明の多孔体では、低温液相形成材としてアルカリフッ化物を添加する場合は、その大部分が開気孔を通じて系外に出るために、多孔体中に残存する量は減少し、高温特性をほとんど劣化させない。この場合、ジルコン酸カルシウム結晶粒子及びスピネル結晶粒子の表面がより滑らかなものとなり、気孔率を大きく変化させずに比表面積を制御することが可能となるため、上記方法は、特に、流体を透過させる場合の流速の制御や、触媒担体として用いる際の触媒担持量の制御に有用である。
【0010】
本発明において、多孔体の原料としては、カルシウム源、マグネシウム源として、個別にカルサイト[CaCO3 ]とマグネシア[MgO]を使うこと、あるいはそれぞれを等モル量含むドロマイト[CaMg(CO32 ]を使うことが共に可能である。また、マグネシア[MgO]をマグネサイト[MgCO3 ]に代えても同様の材料が得られ、本発明では、これらは均等のものとされるが、一般に、マグネシウム源については、カルシウム源とは異なり、優れた酸化物粉末が市販品として入手可能であるため、必ずしも炭酸塩にこだわる必要はない。カルサイト、ドロマイトについては、天然原料を用いることによる低コスト化が可能である。また、ジルコニウム源については、天然バデライトも利用可能であるが、産出量が豊富とは言えず、また、高性能の酸化物市販粉末が比較的安価に入手可能であるため、合成品が望ましい。
【0011】
アルミニウム源としては、高性能の酸化物市販粉末が安価に入手可能である。比表面積の制御を行うことを目的として、低融点液相形成材を添加する場合、アルカリ金属フッ化物であるLiFあるいはNaFを用いているが、CaF2 、SrF2 、BaF2 等のアルカリ土類金属のフッ化物でも同様の効果が期待できる。本発明において、アルカリフッ化物とは、これらを含むものとして定義される。低融点液相形成材は、多孔体中の残存量が多いと、高温での特性を低下させ、また、焼結炉にも悪影響を及ぼすため、少量であることが望ましい。本発明においては、0.2〜0.5%の少量で十分に比表面積の制御を行うことが可能である。
【0012】
次に、本発明のジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体の製造方法について説明する。
本発明の複合多孔体は、好適には、等モル量のカルサイト、マグネシア、ジルコニア、アルミナあるいは等モル量のドロマイト、ジルコニア、アルミナを主原料とし、低融点液相形成材を多孔体の比表面積の制御のために、必要に応じて0.2〜0.5重量%均一に混合し、適宜の成形方法、例えば、一軸金型成形、冷間静水圧成形、泥漿鋳込み成形、テープ成形等の成形手法により適宜成形し、昇温過程において、主原料粒子表面での拡散を促進させることにより比表面積を制御し、CO2 を遊離させることによって均質な開気孔を形成させ、1100〜1300℃で大気中で焼成することにより製造される。ここで、等モル量のカルサイト、マグネシア、ジルコニア、アルミナとは、化学式で表現した場合に、モル比で、CaCO3 :MgO:ZrO2 :Al23 =1:1:1:1であること、また、等モル量のドロマイト、ジルコニア、アルミナとは、化学式で表現した場合に、モル比でCaMg(CO32 :ZrO2 :Al23
=1:1:1で
あることを意味している。本発明では、実質的に、マグネシアをスピネルとして複酸化物化して、等モル量のジルコン酸カルシウム[CaZrO3 ]とスピネル[MgAl24 ]が互いに均一に分散した複合体が得られるように、上記主原料を適宜使用すれば良い。
【0013】
上記温度条件とした理由は、1100℃未満の温度で焼成した場合、例えば、1000℃で焼成した場合は、固相反応は進行するものの機械的強度が不十分であり、また、他方、1300℃を超える温度で焼成した場合、例えば、1400℃で焼成した場合は、気孔率がフィルター用途に適する値よりも小さくなってしまうためである。
この焼成プロセス中では、炭酸塩、すなわち、カルサイトあるいはドロマイト、の熱分解、生成したCO2 による気孔形成、ジルコン酸カルシウム相及びスピネル相の生成が生じている。また、低融点液相形成材を添加した場合は、更に、主原料粒子表面での拡散促進、及び低融点液相形成材の蒸発が生じている。本発明では、このような複雑なプロセスが、わずか1段階の単純な熱処理で実現できるため、高効率化と低コスト化に非常に有効である。焼成は、一般的な大気炉で行うことが可能である。また、適当なCO2 トラップを設けることにより、発生したガスを回収することが可能であり、環境に対して悪影響を及ぼさない。
【0014】
上記方法により製造してなる、本発明のジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体は、等モル量のジルコン酸カルシウムとスピネルが互いに均一に分散し、粒成長を抑制することにより成形される微細な複合組織を有し、高強度で、かつ高温下で安定な多孔体組織を保ち、後記する実施例に示されるように、従来技術の問題点が確実に解消され、その特性が改良された優れた多孔体としての特性を具現する。
【0015】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は当該実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1
この実施例では、カルサイト、マグネシア、ジルコニア、アルミナを原料として多孔体を製造した。
(1)多孔体原料の調製
本実施例では、出発粉体として、等モル量のカルサイトCaCO3 (高純度化学研究所製、99mass%)、マグネシアMgO(宇部興産製、50nmグレード)、ジルコニアZrO2 (住友大阪セメント社製、99mass%)、アルミナAl2 3 (大明化学工業社製、TM−Dグレード)を用いた。これらの粉末に、分散媒としてアルコールを加え、ジルコニア容器、ジルコニアボールを用いて、6G下で6時間遊星ボールミル粉砕混合を行った。得られた混合粉末を乾燥し、乾式ボールミルで処理したのち、分級して出発原料とした。
【0016】
(2)圧粉体の成形と熱処理
金型による予備成形により、一軸成形体を得た。これをプラスチックフィルム袋に減圧封入した後、冷間静水圧成形(加圧:200MPa)を行うことにより成形体を得た。圧粉体を焼成炉に装入し、大気中で、1100〜1300℃、2時間、常圧加熱処理を施した。上記工程により、供試多孔体を得た。
【0017】
(3)多孔体の特性
1300℃の焼成により得られた多孔体(供試材1)の気孔率は、約49%であり、良好な気孔率を示した。焼成前後での寸法変化は、5%以下に抑えられており、反り、クラック等のない良好なバルク形状を有していた。また、供試材1の比表面積は、4.6m2 /gであった。供試材1のX線回折図形を図1の(a)に示す。供試材1の構成相は、ジルコン酸カルシウムとスピネル相であることが確認された。同様のX線回折図形は、1100℃で焼成を行った場合(気孔率約52%)にも得られた。供試材1は、約65MPaの3点曲げ強度(スパン30mm)を示し、優れた機械的強度をもつことが示された。本多孔体は、1200℃での長時間の熱処理を行ってもほとんど組織が変化せず、非常に耐熱性に優れることが明らかになった。また、酸化物であるために、耐酸化性にすぐれ、また、ジルコン酸カルシウムとスピネルのみから構成されるために、優れた耐酸性、耐アルカリ性を示した。
【0018】
実施例2
この実施例では、ドロマイト、ジルコニア、アルミナを原料として多孔体を製造した。
(1)多孔体原料の調製
本実施例では、出発粉体として、等モル量のドロマイトCaMg(CO32(タイ原産、200メッシュ)、ジルコニアZrO2 (住友大阪セメント社製、99mass%)、アルミナAl23 (大明化学工業社製、TM−Dグレード)を用いた。これらの粉末を、実施例1と同様の手法を用いて粉砕・混合し、出発原料とした。
【0019】
(2)圧粉体の成形と熱処理
実施例1と同様の手法を用いて圧粉体を成形し、熱処理により供試多孔体を得た。
【0020】
(3)多孔体の特性
1300℃焼成により得られた多孔体(供試材2)の気孔率は、約51%であり、供試材1と同様の良好な気孔率を示した。約2ポイントの気孔率の増加は、分解時に生成するCO2 量が供試材2の方が多いことに起因している。また、供試材2の比表面積は、8.1m2 /gであった。この値は、供試材1の1.8倍に相当し、供試材2で分解時に生成するCO2 量が多いこととドロマイトの熱分解により生成する結晶が非常に微細であることに起因している。また、焼成前後での寸法変化は、供試材1と同様に5%以下に抑えられており、反り、クラック等のない良好なバルク形状を有していた。供試材2のX線回折図形を図1の(b)に示す。本多孔体の構成相は、同じくジルコン酸カルシウムとスピネル相であることが確認された。また、同様のX線回折図形が1100℃で焼成を行った場合(気孔率約58%)にも得られた。供試材2は、約50MPaの3点曲げ強度(スパン30mm)を示し、供試材1より若干劣るものの、比較的優れた機械的強度をもつことが示された。供試材2は、供試材1と同等の優れた耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性を示した。
【0021】
実施例3
この実施例では、0.2〜0.5重量%の低融点液相形成材を主原料に添加して多孔体を製造した。
比表面積に与える影響をより明確にするために、高い比表面積が得られた実施例2の組成を元に製造を行った。
(1)多孔体原料の調製
本実施例では、実施例2と同じ出発原料のドロマイト、ジルコニア、アルミナを用い、これの総量に対して、0.2〜0.5重量%のLiFを添加した。尚、NaFを用いた場合でも、ほぼ同様の効果が見られたため、ここではLiFについて説明する。これらの粉末を、実施例1と同様の手法を用いて粉砕・混合し、出発原料とした。
【0022】
(2)圧粉体の成形と熱処理
実施例1と同様の手法を用いて圧粉体を成形し、熱処理により供試多孔体を得た。
【0023】
(3)多孔体の特性
0.5重量%のLiFを添加し、1300℃の焼成により得られた多孔体(供試材3)の気孔率は、約48%であり、供試材1及び2と同様の良好な気孔率を示した。供試材2と比べて気孔率の変化はわずかであり、この約3ポイントの気孔率の減少は、LiFの添加により若干焼成が進行しやすくなることに起因すると考えられる。また、供試材3の比表面積は1.0m2 /gであり、供試材2の8分の1となり、微量の低融点液相形成材の添加により、結晶粒子表面の構造を大幅に変化させることが可能であることが分かった。また、0.2%のLiFを添加した場合の比表面積は1.1m2 /gであり、0.5%添加したときと同様の効果が見られた。供試材3の焼成前後での寸法変化は、供試材1及び2と同様に5%以下に抑えられており、反り、クラック等のない良好なバルク形状を有していた。供試材3のX線回折図形を図1の(c)に示す。本多孔体の構成相は、ジルコン酸カルシウムとスピネル相であることが確認された。また、同様のX線回折図形が1100℃で焼成を行った場合(気孔率約61%)にも得られた。供試材3は、供試材1及び2と同等の優れた耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性を示した。
【0024】
比較例
この比較例では、本発明で示した炭酸塩の熱分解を伴う反応焼結法を用いず、市販のジルコン酸カルシウム粉末[CaZrO3 ]と市販のスピネル粉末[MgAl2 4 ]を用いて多孔体を製造した。
(1)多孔体原料の調製
本比較例では、最終目的とする構成相からなる市販粉末を出発原料として用いた。出発粉体として、等モル量のジルコン酸カルシウムCaZrO3 (高純度化学研究所製、98mass%)、スピネルMgAl24 (高純度化学研究所製、99.9mass%)を用いた。これらの粉末を、実施例1〜3と同様の手法を用いて粉砕・混合し、出発原料とした。
【0025】
(2)圧粉体の成形と熱処理
実施例1〜3と同様の手法を用いて圧粉体を成形し、熱処理により供試多孔体を得た。
【0026】
(3)多孔体の特性
1300℃焼成により得られた多孔体(供試材4)の気孔率は、約26%であり、供試材1〜3とは異なり、フィルター用多孔体としては不十分な気孔率であった。これは、供試材1〜3と異なり、焼成中に気孔形成材として作用するCO2 の放出を伴わないことに起因する。供試材4の比表面積は、1.6m2 /gであり、低融点液相形成材を用いた供試材3よりは大きいものの、供試材1及び2を大きく下回る値であった。また、焼成前後での寸法変化は、供試材1〜3と異なり、約15%程度と大きく、クラックは見られないものの、反りが生じているものがあった。供試材4のX線回折図形を図1の(d)に示す。本多孔体の構成相は、ジルコン酸カルシウムとスピネル相に加えて、分解生成したと考えられる立方晶ジルコニア固溶体が観察され、原料中の不純物や組成ずれの影響が示唆された。1100℃で焼成した場合(供試材5)は、気孔率が43%となり、フィルター用途として実用的な値に近づいたが、曲げ強度は約17MPaとなり、機械的特性に劣ることが示された。供試材5のX線回折図形を図1の(e)に示す。供試材5では、立方晶ジルコニア固溶体がほとんど観察されず、1100〜1300℃の間で立方晶ジルコニア固溶体が相分離することが示唆された。
【0027】
表1に、実施例1〜3の供試材1〜3及び比較例の供試材4〜5の特性をまとめて示す。
【0028】
【表1】
Figure 0003882070
【0029】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、熱的、化学的に安定な多孔質組織を有するジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体であって、等モル量のジルコン酸カルシウム[CaZrO3 ]とスピネル[MgAl2 4 ]が互いに均一に分散し、粒成長を抑制することにより形成される微細な複合組織を有し、高強度で、かつ高温下で安定な組織を保つ焼成体からなることを特徴とするジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体、及びその製造方法に係るものであり、本発明により、1)機械的強度及び耐酸性・耐食性の改善されたジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体を提供することができる、2)本発明の方法は、単純なプロセスを用いたのにかかわらず、非常に高度に組織制御され、熱的、化学的に安定な多孔体組織を実現することを可能とする、3)得られる複合多孔体は、例えば、高耐食性流体透過フィルター機能材料、超高温用軽量化部材、触媒担体、断熱材、あるいは吸音材等として有用である、4)また、本発明は、従来法に比べて、設備的及びコスト的に有利であり、多方面の工学的応用を可能にするものである、という格別の効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】多孔体のX線回折図形を示す。
【符号の説明】
(a):供試材1
(b):供試材2
(c):供試材3
(d):供試材4
(e):供試材5

Claims (6)

  1. カルサイト、マグネシア、ジルコニア、アルミナを主原料とし、あるいはドロマイト、ジルコニア、アルミナを主原料とし、この原料粉末の適宜成形体を、大気中で反応焼成することにより製造してなる、多孔質組織を有するジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体であって、等モル量のジルコン酸カルシウム[CaZrO]とスピネル[MgAl]が互いに均一に分散し、粒成長を抑制することにより形成される微細な複合組織を有し、機械的強度及び耐酸性・耐食性の改善された組織を保つ焼成体からなることを特徴とする、ジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体。
  2. 等モル量のカルサイト[CaCO]、マグネシア[MgO]、ジルコニア[ZrO]、アルミナ[Al]を主原料とし、一段階のみの反応焼成によって製造したものであることを特徴とする、請求項1に記載のジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体。
  3. 等モル量のドロマイト[CaMg(CO]、ジルコニア[ZrO]、アルミナ[Al]を主原料とし、一段階のみの反応焼成によって製造したものであることを特徴とする、請求項1に記載のジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体。
  4. アルカリフッ化物を低融点液相形成材として、主原料に対して微量添加することにより、気孔率をほとんど変化させずに比表面積を制御したことを特徴とする、請求項1、2又は3に記載のジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載のジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体を製造する方法であって、等モル量のカルサイト、マグネシア、ジルコニア、アルミナあるいは等モル量のドロマイト、ジルコニア、アルミナを主原料とし、この原料粉末を均一に粉砕混合し、これを適宜成形したのち、大気中で反応焼成することにより、多孔質組織を有するジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体であって等モル量のジルコン酸カルシウム[CaZrO]とスピネル[MgAl]が互いに均一に分散し、粒成長を抑制することにより形成される微細な複合組織を有し、機械的強度及び耐酸性・耐食性の改善された多孔体とすることを特徴とする、ジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体の製造方法。
  6. 主原料の総量に対して、低融点液相形成材を0.2〜0.5重量%を均一に混合し、昇温過程において主原料の粒子表面での拡散を促進させることにより比表面積を制御し、生成したCOを遊離させることによって均質な開気孔を形成させ、1100〜1300℃で大気中で焼成することにより、40〜60%の高い気孔率を有し、焼成前後の寸法変化が小さく、かつ機械的強度及び耐酸性・耐食性の改善された多孔体とすることを特徴とする、請求項5に記載のジルコン酸カルシウム/スピネル系複合多孔体の製造方法。
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