JP2021049708A - 透明導電性フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】加湿信頼性に優れる透明導電性フィルム、および、その透明導電性フィルムの製造方法を提供する。【解決手段】透明導電性フィルム1は、透明基材2と、硬化樹脂層3と、透明導電層4とを順に備える。透明導電層の膜密度は、6.85g/cm3未満である。【選択図】図1

Description

本発明は、透明導電性フィルムおよびその製造方法に関し、詳しくは、詳しくは、光学用途に好適に用いられる透明導電性フィルム、および、その透明導電性フィルムの製造方法に関する。
従来から、インジウムスズ複合酸化物(ITO)からなる透明導電層を所望の電極パターンに形成した透明導電性フィルムが、タッチパネルなどの光学用途に用いられる。
透明導電性フィルムとしては、例えば、可撓性基材フィルムとハードコート層と透明導電層とを順に備えるが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
そして、特許文献1の透明導電性フィルムでは、150℃で加熱処理をすることによって、透明導電層(ITO膜)を結晶化させている。
特開2018−012290公報
しかるに、特許文献1の透明導電性フィルムでは、高温(150℃)で、透明導電層(ITO膜)を結晶化させているため、結晶化中(加熱中)には、熱によって、ハードコート層および透明導電層が膨張する。そして、結晶化後(加熱停止後)には、膨張したハードコート層および透明導電層は、収縮する。
そして、このような透明導電性フィルムは、常温条件下(例えば、20℃程度)では、視認性に問題が生じることはないが、この透明導電性フィルムを加湿条件下(例えば、65℃、相対湿度95%)に置くと、ハードコート層だけが大きく収縮する。そのため、加湿条件下に置いた後のフィルム表面にはマイクロメートルオーダーの微細なうねりのような模様が生じる。これにより、フィルムの表面に不規則な光沢が生じ、視認性が低下するという不具合がある。
本発明の目的は、加湿信頼性に優れる透明導電性フィルム、および、その透明導電性フィルムの製造方法を提供することにある。
本発明[1]は、透明基材と、硬化樹脂層と、透明導電層とを順に備え、前記透明導電層の膜密度が、6.85g/cm未満である、透明導電性フィルムである。
本発明[2]は、前記透明基材の厚みが、50μm未満である、上記[1]に記載の透明導電性フィルムを含んでいる。
本発明[3]は、前記透明導電層が、結晶質であることを特徴とする、請求項[1]または[2]に記載の透明導電性フィルムを含んでいる。
本発明[4]は、透明基材を準備する第1工程と、前記透明基材の上面に、硬化樹脂層を積層する第2工程と、前記硬化樹脂層の上面に、透明導電層を積層する第3工程とを備え、前記第3工程では、前記透明導電層を20℃以上30℃以下で静置、または、前記透明導電層を60℃未満で加熱することにより、前記透明導電層を結晶化させ、前記透明導電層の膜密度が、6.85g/cm未満である、透明導電性フィルムの製造方法である。
本発明の透明導電性フィルムは、透明基材と、硬化樹脂層と、透明導電層とを順に備え、透明導電層の膜密度が、6.85g/cm未満である。
これにより、加湿条件下における硬化樹脂層の収縮を抑制することができ、視認性の低下を抑制できる。その結果、加湿信頼性に優れる。
本発明の透明導電性フィルムの製造方法は、透明導電層を、20℃以上30℃以下で静置、または、透明導電層を60℃未満で加熱することにより、膜密度が小さくなるように、透明導電層を結晶化させる。
これにより、加湿条件下における硬化樹脂層の収縮を抑制することができ、視認性の低下を抑制できる。その結果、加湿信頼性に優れる。
図1は、本発明の透明導電性フィルムの断面図を示す。
図1を参照して、本発明の透明導電性フィルムの一実施形態を説明する。
図1において、紙面上下方向は、上下方向(厚み方向)であって、紙面上側が、上側(厚み方向一方側)、紙面下側が、下側(厚み方向他方側)である。また、紙面左右方向および奥行き方向は、上下方向に直交する面方向である。具体的には、各図の方向矢印に準拠する。
1.透明導電性フィルム
透明導電性フィルム1は、所定の厚みを有するフィルム形状(シート形状を含む)を有し、厚み方向と直交する所定方向(面方向)に延び、平坦な上面および平坦な下面を有する。透明導電性フィルム1は、例えば、画像表示装置に備えられるタッチパネル用基材や電磁波シールドなどの一部品であり、つまり、画像表示装置ではない。すなわち、透明導電性フィルム1は、画像表示装置などを作製するための部品であり、OLEDモジュールなどの画像表示素子を含まず、透明基材2と硬化樹脂層3と透明導電層4とを含み、部品単独で流通し、産業上利用可能なデバイスである。
具体的には、図1に示すように、透明導電性フィルム1は、透明基材2と、透明基材2の上面(厚み方向一方面)に配置される硬化樹脂層3と、硬化樹脂層3の上面に配置される透明導電層4とを備える。より具体的には、透明導電性フィルム1は、透明基材2と、硬化樹脂層3と、透明導電層4とをこの順に備える。透明導電性フィルム1は、好ましくは、透明基材2と硬化樹脂層3と透明導電層4とからなる。
2.透明基材
透明基材2は、透明導電性フィルム1の機械強度を確保するための透明な基材である。すなわち、透明基材2は、透明導電層4を、硬化樹脂層3とともに支持している。
透明基材2は、透明導電性フィルム1の最下層であって、フィルム形状を有する。透明基材2は、硬化樹脂層3の下面に接触するように、硬化樹脂層3の下面全面に、配置されている。
透明基材2は、例えば、透明性を有する高分子フィルムである。透明基材2の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマーなどのオレフィン樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、例えば、ポリメタクリレートなどの(メタ)アクリル樹脂(アクリル樹脂および/またはメタクリル樹脂)、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、ポリスチレン樹脂などが挙げられる。透明基材2は、単独使用または2種以上併用することができる。
好ましくは、非結晶性の熱可塑性樹脂が挙げられる。これにより、所望の偏光軸を有することができる。また、透明性も優れる。
このような非結晶性の熱可塑性樹脂としては、好ましくは、シクロオレフィンポリマーが挙げられる。すなわち、透明基材2は、好ましくは、シクロオレフィンポリマーから形成されるシクロオレフィン系フィルムである。
シクロオレフィン系ポリマーは、シクロオレフィンモノマーを重合して得られ、主鎖の繰り返し単位中に脂環構造を有する高分子である。シクロオレフィン系樹脂は、好ましくは、非晶質シクロオレフィン系樹脂である。
シクロオレフィン系ポリマーとしては、例えば、シクロオレフィンモノマーからなるシクロオレフィンホモポリマー、例えば、シクロオレフィンモノマーと、エチレンなどのオレフィンなどとの共重合体からなるシクロオレフィンコポリマーなどが挙げられる。
シクロオレフィンモノマーとしては、例えば、ノルボルネン、メチルノルボルネン、ジメチルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ブチルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエンなどの多環式オレフィン、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シシクロオクタジエン、シクロオクタトリエンなどの単環式オレフィンなどが挙げられる。好ましくは、多乾式オレフィンが挙げられる。これらシクロオレフィンは、単独使用または2種以上併用することができる。
透明基材2の全光線透過率(JIS K 7375−2008)は、例えば、80%以上、好ましくは、85%以上である。
透明基材2の厚みは、機械的強度などの観点から、例えば、2μm以上、好ましくは、20μm以上であり、また、例えば、300μm以下、好ましくは、150μm以下、より好ましくは、屈曲性の観点から、50μm未満である。透明基材2の厚みは、例えば、マイクロゲージ式厚み計を用いて測定することができる。
3.硬化樹脂層
硬化樹脂層3は、透明導電性フィルム1を製造する際に、透明基材2に傷が発生することを抑制するための保護層である。また、複数の透明導電性フィルム1を積層した場合に、透明導電層4に擦り傷が発生することを抑制するための耐擦傷層である。
硬化樹脂層3は、フィルム形状を有する。硬化樹脂層3は、透明基材2の上面全面に、透明基材2の上面に接触するように、配置されている。より具体的には、硬化樹脂層3は、透明基材2と透明導電層4との間に、透明基材2の上面および透明導電層4の下面に接触するように、配置されている。
硬化樹脂層3は、硬化性樹脂組成物から形成されている。硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂を含有する。
硬化性樹脂としては、例えば、活性エネルギー線(具体的には、紫外線、電子線など)の照射により硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂、例えば、加熱により硬化する熱硬化性樹脂などが挙げられ、好ましくは、活性エネルギー線硬化性樹脂が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性樹脂は、例えば、分子中に重合性炭素−炭素二重結合を有する官能基を有するポリマーが挙げられる。そのような官能基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基(メタクリロイル基および/またはアクリロイル基)などが挙げられる。
活性エネルギー線硬化性樹脂としては、具体的には、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートなどの(メタ)アクリル系紫外線硬化性樹脂が挙げられる。
また、活性エネルギー線硬化性樹脂以外の硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマー、有機シラン縮合物などが挙げられる。
これら樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
硬化性樹脂組成物は、粒子を含有することもできる。これにより、硬化樹脂層3を、耐ブロッキング特性を有するアンチブロッキング層とすることができる。
粒子としては、有機粒子、無機粒子などが挙げられる。有機粒子としては、例えば、架橋アクリル・スチレン樹脂粒子などの架橋アクリル系粒子などが挙げられる。無機粒子としては、例えば、シリカ粒子、例えば、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズなどからなる金属酸化物粒子、例えば、炭酸カルシウムなどの炭酸塩粒子などが挙げられる。粒子は、単独使用または2種以上併用することができる。
好ましくは、硬化性樹脂組成物は、粒子を含まず、硬化性樹脂を含む。
硬化性樹脂組成物には、さらに、レベリング剤、チクソトロピー剤、帯電防止剤など
の公知の添加剤を含有することができる。
硬化樹脂層3の厚みは、耐擦傷性の観点から、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.5μm以上であり、また、例えば、10μm以下、好ましくは、3μm以下である。硬化樹脂層3の厚みは、例えば、瞬間マルチ測光システム(例えば、大塚電子社製、「MCPD2000」)を用いて観測される干渉スペクトルの波長に基づいて算出することができる。
4.透明導電層
透明導電層4は、結晶質であり、優れた導電性を発現する透明な層である。
透明導電層4は、透明導電性フィルム1の最上層であって、フィルム形状を有する。透明導電層4は、硬化樹脂層3の上面全面に、硬化樹脂層3の上面に接触するように、配置されている。
透明導電層4は、Sn領域5、Sn/Hf混合領域6、および、Hf領域7を、下側から順に有する。
透明導電層4は、Hf領域7とSn領域5とを厚み方向に有するため、優れた結晶化速度および導電性の両立を達成することができる。すなわち、詳しくは後述するが、低温で透明導電層4を短時間で結晶化させることができるとともに、透明導電性フィルム1は優れた導電性を発現する。
Sn領域5は、硬化樹脂層3の上面において面方向に延びるように形成されている下層である。Sn領域5は、スズ(Sn)を含有するインジウム系酸化物から形成され、好ましくは、インジウムスズ複合酸化物(ITO)から形成されている。
Sn領域5において、酸化スズ(SnO)含有量は、酸化スズおよび酸化インジウム(In)の合計量に対して、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、3質量%以上であり、また、例えば、15質量%以下、好ましくは、13質量%以下である。酸化スズの含有量が上記下限以上であれば、透明導電層4の結晶速度を良好にすることができる。酸化スズの含有量が上記上限以下であれば、透明導電層4の導電性を良好にすることができる。
Sn領域5は、SnおよびIn以外の金属として、不可避的不純物を含んでもよい。
また、Sn領域5は、Hfを実質的に含有しない。すなわち、Sn領域5では、X線光電子分光法による測定において、Hf元素を検出しない。
Sn領域5の厚みは、例えば、1nm以上、好ましくは、3nm以上、好ましくは、10nm以上であり、また、例えば、50nm以下、好ましくは、40nm以下、より好ましくは、30nm以下である。各領域の厚みは、X線光電子分光法により、透明導電層4を厚み方向に測定することにより求めることができる。
Sn/Hf混合領域6において、Sn領域5の上側において面方向に延びるように形成されている中間層である。Sn/Hf混合領域6は、Sn領域5に含まれる元素とHf領域7に含まれる元素との両方が混在する。具体的には、Sn、HfおよびInを含有する酸化物から形成されている。また、Sn/Hf混合領域6は、Ta(タンタル)を含有していてもよく、その場合は、Sn、Hf、TaおよびInを含有する酸化物から形成されている。
好ましくは、Sn/Hf混合領域6は、Sn領域5から、Hf領域7に徐々に変化する領域である。すなわち、Sn/Hf混合領域6の下端から上端に向かうに従って、Sn元素の含有割合が次第に減少するとともに、Hfの含有割合が次第に増加する。換言すれば、透明導電層4内の断面は、界面を有しない。すなわち、透明導電層4は、Sn領域−Sn/Hf混合領域界面(6/7界面)、および、Sn/Hf混合領域−Hf領域界面(7/8界面)の両方を有しない。
Sn/Hf混合領域6の厚みは、例えば、1nm以上、好ましくは、2nm以上、好ましくは、3nm以上であり、また、例えば、10nm以下、好ましくは、8nm以下、より好ましくは、6nm以下である。
Hf領域7は、Sn/Hf混合領域6の上側において面方向に延びるように形成されている上層である。Hf領域7は、ハフニウム(Hf)を含有するインジウム系酸化物から形成され、好ましくは、Hf、Ta(タンタル)およびInを含有する酸化物から形成されている。
Hfの含有割合(原子比)は、Taを含まない場合、Hf/(Hf+In)として、例えば、0.2at%以上、好ましくは、0.5at%以上であり、また、例えば、3.0at%以下、好ましくは、2.5at%以下である。
一方、Hfの含有割合(原子比)は、Taを含む場合、Hf/(Hf+Ta+In)として、例えば、0.2at%以上、好ましくは、0.5at%以上であり、また、例えば、3.0at%以下、好ましくは、2.5at%以下である。
Taの含有割合(原子比)は、Ta/(Hf+Ta+In)として、例えば、0.02at%以上、好ましくは、0.1at%以上であり、また、例えば、1.3at%以下、好ましくは、1.0at%以下である。
Inの含有割合(原子比)は、In/(Hf+In)またはIn/(Hf+Ta+In)として、例えば、95.0at%以上、好ましくは、97.0at%以上であり、また、例えば、99.7at%以下、好ましくは、99.0at%以下である。
Hf領域7は、Hf、TaおよびIn以外の金属として、不可避的不純物を含んでもよい。
また、Hf領域7は、Snを実質的に含有しない。すなわち、Hf領域7では、X線光電子分光法による測定において、Sn元素を検出しない。
Hf領域7の厚みは、例えば、1nm以上、好ましくは、3nm以上、好ましくは、8nm以上であり、また、例えば、50nm以下、好ましくは、40nm以下、より好ましくは、30nm以下である。
Hf領域7の厚みは、好ましくは、Sn領域5の厚みよりも厚い。これにより、低温度での結晶化速度がより一層優れる。
透明導電層4の上面の表面抵抗率は、例えば、100Ω/□以下、好ましくは、80Ω/□以下であり、また、例えば、10Ω/□以上である。表面抵抗率は、4端子法により測定することができる。
透明導電層4の上面の比抵抗は、例えば、3.0×10−4Ω・cm以下、好ましくは、2.5×10−4Ω・cm以下であり、また、例えば、1.0×10−4Ω・cm以上である。比抵抗は、4端子法により測定することができる。
透明導電層4全体の厚みは、例えば、5nm以上、好ましくは、10nm以上であり、また、例えば、80nm以下、好ましくは、35nm以下である。透明導電層4の厚みを上記範囲とすることにより、低温度での結晶化速度および導電性の両立をより確実に達成することができる。透明導電層4の全体の厚みは、例えば、透過型電子顕微鏡を用いて、透明導電性フィルム1の断面を観察することにより測定することができる。
透明導電層4は、結晶質である。
透明導電層4が、結晶質であれば、上記の表面抵抗率を低くできる。
透明導電層4の結晶質性は、例えば、透明導電性フィルム1を塩酸(20℃、濃度5質量%)に15分間浸漬し、続いて、水洗および乾燥した後、透明導電層4側の表面に対して15mm程度の間の端子間抵抗を測定することにより判断できる。上記浸漬・水洗・乾燥後の透明導電性フィルム1において、15mm間の端子間抵抗が10kΩ以下である場合、透明導電層は結晶質であり、一方、上記抵抗が10kΩを超過する場合、透明導電層4は非晶質である。
5.透明導電性フィルムの製造方法
透明導電性フィルム1を製造する方法を説明する。透明導電性フィルムの製造方法は、透明基材2を準備する第1工程と、透明基材2の上面に、硬化樹脂層3を積層する第2工程と、硬化樹脂層3の上面に、透明導電層4を積層する第3工程とを備える。
まず、第1工程では、公知または市販の透明基材2を用意する。好ましくは、シクロオレフィン系フィルムを用意する。
その後、必要に応じて、透明基材2と、硬化樹脂層3との密着性の観点から、透明基材2の上面に、例えば、スパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理を実施することができる。また、溶剤洗浄、超音波洗浄などにより透明基材2を除塵、清浄化することができる。
次いで、第2工程では、透明基材2の上面に、硬化樹脂層3を積層する。例えば、透明基材2の上面に硬化性樹脂組成物を湿式塗工することにより、透明基材2の上面に硬化樹脂層3を形成する。
具体的には、例えば、硬化性樹脂組成物を溶媒で希釈した溶液(ワニス)を調製し、続いて、硬化性樹脂組成物溶液を透明基材2の上面に塗布して、乾燥する。
溶媒としては、例えば、有機溶媒、水系溶媒(具体的には、水)などが挙げられ、好ましくは、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール化合物、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン化合物、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル化合物、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル化合物、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物などが挙げられる。これら溶媒は、単独使用または2種以上併用することができる。
硬化性樹脂組成物溶液における固形分濃度は、例えば、1質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
塗布方法は、硬化性樹脂組成物溶液および透明基材2に応じて適宜選択することができる。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。
乾燥温度は、例えば、50℃以上、好ましくは、70℃以上であり、例えば、150℃以下、好ましくは、100℃以下である。
乾燥時間は、例えば、0.5分以上、好ましくは、1分以上であり、例えば、60分以下、好ましくは、20分以下である。
その後、硬化性樹脂組成物が活性エネルギー線硬化性樹脂を含有する場合は、硬化性樹脂組成物溶液の乾燥後に、活性エネルギー線を照射することにより、活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化させる。
なお、硬化性樹脂組成物が熱硬化性樹脂を含有する場合は、この乾燥工程により、溶媒の乾燥とともに、熱硬化性樹脂を熱硬化することができる。
次いで、第3工程では、硬化樹脂層3の上面に、透明導電層4を積層する。例えば、乾式方法により、硬化樹脂層3の上面に透明導電層4を形成する。
透明導電層4の形成では、Sn領域5およびHf領域7をこの順で形成する。好ましくは、Sn領域5およびHf領域7を同一の乾式方法にて連続して形成する。これにより、Sn領域5とHf領域7との界面にて、互いに成分が混在して、Sn/Hf混合領域6が形成される。
乾式方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。好ましくは、スパッタリング法が挙げられる。この方法によって所望の透明導電層4を形成することができる。
スパッタリング法としては、例えば、2極スパッタリング法、ECR(電子サイクロトロン共鳴)スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法などが挙げられる。好ましくは、マグネトロンスパッタリング法が挙げられる。
Sn領域5の形成におけるターゲット材としては、Snを含有するインジウム系酸化物が挙げられる。好ましくは、ITO(In−Sn含有酸化物)が挙げられる。
Sn領域5の形成において、スパッタリングガスとしては、例えば、Arなどの不活性ガスが挙げられる。また、必要に応じて、酸素ガスなどの反応性ガスを併用することができる。反応性ガスを併用する場合において、反応性ガスの流量比は、スパッタガスおよび反応性ガスの合計流量比に対して、例えば、0.1流量%以上5流量%以下である。
スパッタリング法は、真空下で実施される。具体的には、スパッタリング時の気圧は、スパッタリングレートの低下抑制、放電安定性などの観点から、例えば、1Pa以下、好ましくは、0.7Pa以下である。
スパッタリング法に用いる電源は、例えば、DC電源、AC電源、MF電源およびRF電源のいずれであってもよく、また、これらの組み合わせであってもよい。
スパッタリング装置の設定厚み(目標値)は、例えば、5nm以上、好ましくは、10nm以上、より好ましくは、12nm以上であり、また、例えば、50nm以下、好ましくは、30nm以下、よりDC好ましくは、20nm以下である。
Hf領域7の形成において、ターゲット材としては、Hfを含有するインジウム系酸化物が挙げられる。好ましくはIn、HfおよびTaを含有する酸化物(In−Hf−Ta含有酸化物)が挙げられる。このようなターゲットの具体例としては、例えば、特開平10−269843号公報、特開2017−149636号公報、特開2018−188677号公報などに記載の酸化物焼結体が挙げられる。
スパッタリング装置の設定厚みは、例えば、5nm以上、好ましくは、10nm以上、より好ましくは、15nm以上であり、また、例えば、50nm以下、好ましくは、30nm以下、より好ましくは、25nm以下である。
Hf領域7の形成において、スパッタリング法の条件は、上記以外は、Sn領域5の形成と同様の条件が挙げられる。
なお、所望厚みの透明導電層4を形成するために、ターゲット材やスパッタリングの条件などを適宜設定して複数回スパッタリングを実施してもよい。
これにより、透明基材2、硬化樹脂層3および非晶質の透明導電層4を順に備える非晶性透明導電性フィルムが得られる。
次いで、第3工程では、透明導電層4を所定の温度で静置または加熱することにより、透明導電層4を結晶化させる。
透明導電層4を静置することにより、結晶化させるには、具体的には、非晶性透明導電性フィルムを、大気中で、20℃以上30℃以下、例えば、24時間以上480時間以下の条件の下で静置する。
静置する際の温度が、上記上限以下であれば、透明導電層4の膜密度(後述)を低くすることができる。
静置する際の温度が、上記下限以上であれば、透明導電層4を確実に結晶化させることができる。
また、静置する際の時間が、上記範囲内であれば、透明導電層4を確実に結晶化させることができる。
また、透明導電層4を加熱することにより、結晶化させるには、非晶性透明導電性フィルムを大気下で加熱する。
加熱は、例えば、赤外線ヒーター、オーブンなどを用いて実施することができる。
加熱温度は、60℃未満、好ましくは、40℃以下であり、また、例えば、25℃以上である。
加熱温度が、上記上限以下であれば、透明導電層4の膜密度(後述)を低くすることができる。
加熱温度が、上記下限以上であれば、透明導電層4を確実に結晶化させることができる。
加熱時間は、例えば、1分以上、好ましくは、10分以上であり、また、例えば、60分以下、好ましくは、30分以下である。
加熱時間が上記下限以上であれば、透明導電層4を確実に結晶化することができる。一方、加熱時間が上記上限以下であれば、生産効率に優れる。
これにより、透明導電層4が結晶化され、図1に示すように、透明基材2、硬化樹脂層3および透明導電層4を順に備える透明導電性フィルム1が得られる。透明導電層4は、結晶質であって、Sn領域5、Sn/Hf混合領域6およびHf領域7を下から順に備える。
なお、上記製造方法では、ロールトゥロール方式にて、透明基材2を搬送させながら、その透明基材2に、硬化樹脂層3および透明導電層4を形成してもよく、また、これらの層の一部または全部をバッチ方式(枚葉方式)にて形成してもよい。生産性の観点から、好ましくは、ロールトゥロール方式にて、透明基材2を搬送させながら、透明基材2に各層を形成する。
得られる透明導電性フィルム1の厚みは、例えば、2μm以上、好ましくは、20μm以上であり、また、例えば、100μm以下、好ましくは、50μm以下である。
また、透明導電性フィルム1において、透明導電層4の膜密度は、6.85g/cm未満、好ましくは、6.80g/cm以下、より好ましくは、6.75g/cm以下、さらに好ましくは、6.71g/cm以下である。
透明導電層4の膜密度が、上記上限以下であれば、加湿信頼性に優れる。
詳しくは、例えば、特許文献1のように、透明導電層4を高温(150℃)で結晶化させると、結晶化中(加熱中)には、熱によって、硬化樹脂層3および透明導電層4が膨張する。そして、結晶化後(加熱停止後)には、膨張した硬化樹脂層3および透明導電層4は、収縮する。
そして、このような透明導電性フィルム1を、常温条件下(例えば、20℃程度)に置いても、視認性に問題が生じることはないが、加湿条件下(例えば、60℃以上70℃以下、相対湿度80%以上90%以下)に置くと、硬化樹脂層3が大きく収縮する。そのため、加湿条件下に置いた後の透明導電性フィルム1の表面にはマイクロメートルオーダーの微細なうねりのような模様が生じる。これにより、透明導電性フィルム1の表面に不規則な光沢が生じ、視認性が低下するという不具合がある。
一方、上記の透明導電性フィルム1の製造方法では、透明導電層4を、低温(20℃以上30℃以下)で静置するか、または、低温(60℃未満)で加熱することで、透明導電層4の膜密度が低くなるように、具体的には、膜密度が6.85g/cm未満になるように結晶化させる。
これにより、上記した加湿条件下における硬化樹脂層3の収縮を抑制することができ、視認性の低下を抑制できる。つまり、加湿信頼性に優れる。
なお、上記の膜密度は、後述する実施例の条件に従って、X線反射率法により測定することができる。
このような透明導電性フィルム1は、例えば、光学装置に備えられる。光学装置としては、例えば、画像表示装置などが挙げられる。透明導電性フィルム1を画像表示装置(具体的には、OLEDモジュール、LCDモジュールなどの画像表示素子を有する画像表示装置)に備える場合には、透明導電性フィルム1は、必要に応じてパターニングされて、例えば、電磁波シールド、タッチパネル用基材などとして用いられる。タッチパネル用基材として用いられる場合、タッチパネルの形式としては、例えば、光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などの各種方式が挙げられ、静電容量方式のタッチパネルに好適に用いられる。
6.変形例
上記した説明では、透明導電層4は、Sn領域5とHf領域7との間に配置されるSn/Hf混合領域6を備えているが、Sn/Hf混合領域6を備えなくてもよい。
また、上記した説明では、透明導電層4は、Sn領域5、Sn/Hf混合領域6およびHf領域7を下から順に備えたが、透明導電層4は、Hf領域7、Sn/Hf混合領域6、および、Sn領域5を、下側から順に備えることもでき、また、透明導電層4は、Hf領域7、Sn/Hf混合領域6、Sn領域5、Sn/Hf混合領域6、および、Hf領域7を下側から順に備えることでもきる。
また、上記した説明では、透明導電層4は、Sn領域5、Sn/Hf混合領域6、および、Hf領域7を備えた多層構造であるが、これに限定されず、単層構造でもよい。
透明導電層4が単層構造である場合には、透明導電層4は、例えば、In、Sn、Zn、Ga、Sb、Ti、Si、Zr、Mg、Al、Au、Ag、Cu、Pd、Wからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む金属酸化物などの材料から形成される。
透明導電層4は、好ましくは、インジウムスズ複合酸化物(ITO)などのインジウム含有酸化物から形成される。
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
1.透明導電性フィルムの製造
実施例1
透明基材として、シクロオレフィン系フィルム(厚み22μm、日本ゼオン社製、「ゼオノアフィルム」)を用意した。
透明基材の上面に、紫外線硬化性アクリル樹脂を含有する硬化性樹脂組成物溶液を塗布および乾燥した。その後、紫外線照射により硬化性樹脂組成物を硬化させた。これにより、厚み1.0μmの硬化樹脂層を形成した。
次いで、硬化樹脂層の上面に、透明導電層を形成した。
具体的には、DCスパッタリング法によって、スパッタ出力の設定厚みを21nmに調整して、ITO焼結体(90wt%酸化インジウムおよび10wt%酸化スズ含有)をスパッタリングした。真空条件は、アルゴンガス98%および酸素ガス2%を導入し、気圧を0.4Paとした。これにより、厚み24μmの非晶質のITO層を形成した。
次いで、このITO層の上面にスパッタ出力の設定厚みを5nmに調整して、ITO焼結体(96.7wt%酸化インジウムおよび3.3wt%酸化スズ含有)をスパッタリングした。真空条件は、アルゴンガス98%および酸素ガス2%を導入し、気圧を0.4Paとした。これにより、厚み5nmの非晶質のITO層を形成した。
その後、ITO層の上面に、DCスパッタリング法によって、スパッタ出力の設定厚みを10nmに調整して、In−Hf−Ta含有酸化物焼結体(東ソー社製、商品名「USR」)をスパッタリングした。真空条件は、アルゴンガス98%および酸素ガス2%を導入し、気圧を0.4Paとした。これにより、厚み5μmの非晶質のIn−Hf−Ta含有酸化物層を形成した。
これにより、硬化樹脂層の上面に、非晶性の透明導電層を形成し、非晶性透明導電性フィルムを得た。
次いで、この非晶性透明導電性フィルムを、大気下で、25℃480時間放置し、透明導電層を結晶化させた。
これにより、透明導電性フィルムを得た。
実施例2
非晶性透明導電性フィルムを、大気下で、40℃24時間で加熱し、透明導電層を結晶化させた以外は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムを得た。
比較例1
非晶性透明導電性フィルムを、大気下で、60℃12時間で加熱し、透明導電層を結晶化させた以外は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムを得た。
比較例2
非晶性透明導電性フィルムを、大気下で、95℃1時間で加熱し、透明導電層を結晶化させた以外は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムを得た。
2.評価
(膜密度)
各実施例および各比較例の透明導電性フィルムについて、X線反射率法によって、膜密度を測定した。
なお、X線反射率の測定条件を以下に示す。
測定条件:
装置:Rigaku社製、「SmartLab」
測定時間:25分
入射スリット:0.050mm
受光スリット1:0.050mm
受光スリット2:0.100mm
測定範囲:0〜2.5°
ステップ:0.008°
スピード:0.100°/min
(ヘイズ(視認性))
各実施例および各比較例の透明導電性フィルムについて、ヘイズ(ヘイズ(初期)と称する。)を測定した。
次いで、各実施例および各比較例の透明導電性フィルムを、加湿条件下(65℃、相対湿度90%)に静置した後、再度、ヘイズ(ヘイズ(加湿)と称する。)を測定した。
その結果を表1に示す。
また、ヘイズの変化率((ヘイズ(加湿)−ヘイズ(初期)/ヘイズ(加湿))×100)によって、視認性を評価した。
〇:視認性あり(ヘイズの変化率が、25%未満)
×:視認性なし(ヘイズの変化率が、25%以上)
なお、ヘイズ測定の測定条件を以下に示す。
装置:直読ヘーズメーターHGM−2DP(C光源用)(スガ試験機社製)
光源:ハロゲンランプ12V、50W
受光特性:395〜745nm
Figure 2021049708

Claims (4)

  1. 透明基材と、硬化樹脂層と、透明導電層とを順に備え、
    前記透明導電層の膜密度が、6.85g/cm未満であることを特徴とする、透明導電性フィルム。
  2. 前記透明基材の厚みが、50μm未満であることを特徴とする、請求項1に記載の透明導電性フィルム。
  3. 前記透明導電層が、結晶質であることを特徴とする、請求項1または2に記載の透明導電性フィルム。
  4. 透明基材を準備する第1工程と、
    前記透明基材の上面に、硬化樹脂層を積層する第2工程と、
    前記硬化樹脂層の上面に、透明導電層を積層する第3工程とを備え、
    前記第3工程では、前記透明導電層を20℃以上30℃以下で静置、または、前記透明導電層を60℃未満で加熱することにより、前記透明導電層を結晶化させ、
    前記透明導電層の膜密度が、6.85g/cm未満であることを特徴とする、透明導電性フィルムの製造方法。
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