JP2021037597A - スカイビングカッタ - Google Patents
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スカイビング加工は、被削物とスカイビングカッタの中心軸を所定の角度分交差させた食い違い軸に配置し、一方をワークの軸方向に送ることで、被削物とスカイビングカッタの間に生じるすべり運動を利用して加工するものである。
そして、スカイビング加工には、回転運動で連続加工ができ加工効率が高く生産性が良いこと、内歯・外歯双方の歯車が加工可能であること、ギヤシェーバやブローチなどの従来工法では難しかった歯面修正ができること、必ずしも専用の歯切り盤を必要とせず複合加工機でも加工が行えることなど数多くの特徴がある。
そのため、工具母材を一般的な高速度工具鋼から超硬合金に変更するなどし、長寿命化の取組が行われているものの、超硬ソリッド式カッタは工具コストが格段に高くなる。
また、特許文献1、2に記載されているような、スカイビング加工用の刃部のみを着脱自在としたスローアウェイ式カッタは、カッタ本体に対する組付け精度を上げることが難しく、粗切りにしか用いることができないなど、スカイビング加工における超硬工具の実用化には様々な問題が生じていた。
前記刃部は耐摩耗性に優れた超硬合金製、前記カッタ本体は前記超硬合金よりも熱膨張率の大きい金属製であり、
前記刃部の裏面側には、前記刃部の中心軸に沿って伸びる突起部が設けられ、
前記カッタ本体の先端部には、前記突起部の全体を受け入れ可能な凹部が設けられ、
前記刃部と前記カッタ本体は、焼嵌めにより着脱可能に接合され、かつ、組付け後は前記刃部の裏面に前記カッタ本体の先端が接した状態で固定されることを特徴とする。
前記突起部の根元に、全周に亘って形成される溝からなる止まり部が設けてあることを特徴とする。
前記突起部の側面の少なくとも一部に、前記中心軸からの距離が前記突起部の根元側に向かって縮小する方向に傾斜しているテーパ面が全周に設けてあることを特徴とする。
前記突起部の後端面には、前記中心軸に沿う方向に延びる凸部又は挿入部が設けられ、
前記凹部の奥には、前記凸部に対応する凸部挿入孔又は前記挿入部に対応する突出部が設けられていることを特徴とする。
そのため、従来のボルト等を用いてカッタ本体に刃部を組付けるタイプのスカイビングカッタと異なり組付け毎のばらつきが生じにくいので、仕上げ工程にも利用可能な超硬合金製のスカイビングカッタを提供することができる。
また、高価な超硬合金を必要最低限の使用に留めることができるため、従来の超硬ソリッド式カッタと比較すると工具コストを大きく低減させることが可能であり、工具寿命を超硬ソリッド式カッタと同程度まで伸ばすことが可能となる。
そして、刃部を繰り返し着脱できることから、摩耗した刃部を外し、摩耗した部位を研削した後に再度表面処理を施して、新品同様に再生することができる。
さらに、様々な諸元の刃部を装着することで多様な加工物に対応可能であり、カッタ本体を共用部品化して使用することができるので、鋼材の使用低減にも寄与できる。
そのため、刃部の裏面と突起部の中心軸とのなす角度及びカッタ本体の先端面と凹部の中心軸とのなす角度が厳密に90度になっていなくても、カッタ本体に刃部を組付ける時点で位置調整が可能となるので、高精度の歯車加工に適応できるという大きなメリットがある。
図1及び2に示すように、実施例1に係るスカイビングカッタ1は、刃部2とカッタ本体3から構成されている。
刃部2は、外周に複数の切れ刃4を有するとともに、裏面側には刃部2の中心軸に沿って伸びる円筒状の突起部5を有しており、突起部5の根元には、全周に亘って形成され、その深さ方向が突起部5の中心軸に対して直交する溝からなる止まり部6が設けてある。
また、カッタ本体3はシャンク形状をなしており、先端部には突起部5の全体を受け入れ可能な円筒状の凹部7が設けられ、後端部にはカッタ本体を機械側の加工ヘッド(図示せず)に取り付けるための保持部8が設けられている。
そして、凹部7及び保持部8は、カッタ本体3の中心軸線を基準として精密研削を行うことで形成されており、凹部7の底面は円錐状に削られ、さらに凹部7の底面付近の側面には細孔9が形成されている。
そのため、刃部2は耐摩耗性に優れた超硬合金製、カッタ本体3は超硬合金よりも熱膨張率の大きい時効硬化型の鋼(以下、単に「鋼」という。)製としてある。
また、突起部5は、常温(使用時の温度範囲)において凹部7に挿入できないよう、凹部7に対して数μm大きく仕上げる必要があり、凹部7及び保持部8と同様に、突起部5の中心軸線を基準として精密研削が行われる。
そして、刃部2とカッタ本体3の結合に際しては、カッタ本体3の先端部側を温め(通常は300℃程度)、凹部7の内径を膨張させた後、突起部5を凹部7に挿入し、刃部2の裏面にカッタ本体3の先端が接する状態になるまで押し込む。
ここで、突起部5の根元には止まり部6が設けてあることにより、突起部5を凹部7に押し込んだ後においても、刃部2とカッタ本体3の位置関係をわずかに変化させることができるので、目視又は画像処理によって両者の位置関係を調整する(場合によっては、刃部の裏面とカッタ本体の先端が接する箇所を研磨しても良い)。
その後、カッタ本体3を冷却すると、刃部2がカッタ本体3に対して位置関係が調整された状態で固定されることとなる。
なお、凹部7に形成されている細孔9は、突起部5を凹部7に押し込む際に、凹部7内部の空気が抜けるようにするためのものである。
そして、スカイビングカッタ1を使用した後、刃部2を保守又は交換する場合には、刃部2に用いた超硬合金と、カッタ本体3に用いた鋼の膨張率の違いを利用し、刃部2とカッタ本体3を結合する時と同様にカッタ本体3の先端部側を温めると、凹部7の内径が突起部5の径より大きくなり、カッタ本体3から刃部2を離脱させることができる。
離脱させた刃部2については、摩耗した部位を研削した後に再度表面処理を施して再生することができ、新たな刃部に交換しても良い。
また、刃部2とは異なる諸元の刃部をカッタ本体3に装着することにより、多様な加工物に対応することも可能である。
実施例2は、実施例1の突起部5を除く構成(刃部2の複数の切れ刃4、止まり部6及びカッタ本体3の凹部7、保持部8、細孔9)については、実施例1とほぼ同様である。
そのため、実施例2の構成に関しては、刃部12の突起部15のみについて説明することとし、刃部12の複数の切れ刃14、止まり部16及びカッタ本体の凹部、保持部、細孔についての説明は省略する。
なお、テーパ面20の傾斜角度は非常に小さく、例えば、0.01〜0.03度程度で良い。
実施例3は、実施例1の突起部5と凹部7を除く構成(刃部2の複数の切れ刃4、止まり部6及びカッタ本体3の保持部8、細孔9)については、実施例1と同様である。
そのため、実施例3の構成に関しては、刃部22の突起部25及びカッタ本体23の凹部27について説明することとし、刃部22の複数の切れ刃24、止まり部26及びカッタ本体23の保持部28、細孔29についての説明は省略する。
そして、刃部22の突起部25は、刃部22の裏面側に、その中心軸に沿って伸びている点では実施例1と共通しているが、その形状は完全な円筒状ではなく、突起部25の後端面に中心軸に沿う方向に延びる凸部30が設けられている点で実施例1とは異なっている。
また、カッタ本体23の凹部27は、カッタ本体23の先端部に設けられ、突起部25の全体を受け入れ可能な点では実施例1と共通しているが、凹部27の奥に凸部30に対応する凸部挿入孔31が設けられている点で実施例1とは異なっている。
なお、凸部30は図6に示すように、突起部25より径が小さい円筒体の側面を切り取った形状であるため、刃部22をカッタ本体23に組付ける際には、両者の位相を合わせないと突起部25を凹部27に完全には押し込めないようになっている。
また、図7に示すように、凸部30の側面部と凸部挿入孔31の側面部には微小な隙間が生じるようになっているので、刃部22とカッタ本体23との組付けに際して、両者の位置関係をスムーズに調整できる。
(1)実施例1〜3においては、カッタ本体を時効硬化型の鋼製としていたが、これに限らず、刃部を構成する超硬合金よりも熱膨張率の大きい鋼材や合金等の金属製であれば良い。
(2)実施例1〜3においては、突起部の根元に止まり部を設けていたが、刃部の裏面と突起部の中心軸とのなす角度及びカッタ本体の先端面と凹部の中心軸とのなす角度を精度良く90度にすることができれば、止まり部は設けなくても良い。
また、実施例2においては、カッタ本体の凹部の内径を膨張させた後、突起部15を凹部に押し込んだ後において、突起部15の根元側と凹部17との間に微小な隙間が形成され、刃部12とカッタ本体の位置関係をわずかに変化させることができるので、刃部の裏面と突起部の中心軸とのなす角度等を精度良く90度としなくても良い。
そうした場合、凹部の基本的な形状は少なくとも先端側の断面が突起部の断面と同形状の柱状体とし、焼嵌めするに際して突起部の全体を受け入れ可能なものとすれば良い。
(4)実施例1〜3においては、止まり部は、深さ方向が突起部の中心軸に対して直交する溝からなっていたが、これに限らず、突起部の根元に空間が形成させる溝であれば、断面が三角形状、台形状、五角形状等の溝であっても良い。
(5)実施例1〜3においては、凹部に細孔が形成されていたが、凹部の内径を十分に膨張させ、突起部を凹部に挿入する際に、突起部と凹部との間に凹部内部の空気が抜ける隙間ができるようにすれば、凹部に細孔を形成する必要はない。
(7)実施例3においては、突起部25の後端面に中心軸に沿う方向に延びる凸部30が設けられ、凹部27の奥に凸部30に対応する凸部挿入孔31が設けられていたが、凹部27の奥に凸部30と同様の形状の突出部を設け、突起部25の後端面に中心軸に沿う方向に延び、突出部に対応する挿入部を設けても良い。
(8)実施例3及び上記変形例(7)においては、凸部30及び突出部は、円筒体の側面を切り取った形状となっていたが、このような形状に限らず、断面が回転対称でない柱状体であっても良い。
3、23 カッタ本体 4、14、24 切れ刃
5、15、25 突起部 6、16、26 止まり部
7、27 凹部 8、28 保持部 9、29 細孔
20 テーパ面 30 凸部 31 凸部挿入孔
前記刃部は耐摩耗性に優れた超硬合金製、前記カッタ本体は前記超硬合金よりも熱膨張率の大きい金属製であり、
前記刃部の裏面側には、前記刃部の中心軸に沿って伸びる突起部が設けられ、
前記カッタ本体の先端部には、前記突起部の全体を受け入れ可能な凹部が設けられ、
前記刃部と前記カッタ本体は、焼嵌めにより着脱可能に接合され、かつ、組付け後は前記刃部の裏面に前記カッタ本体の先端が接した状態で固定され、
前記突起部の根元に、全周に亘って形成され、その深さ方向が前記突起部の中心軸に対して直交する溝からなる止まり部が設けてあることを特徴とする。
前記突起部の側面の少なくとも一部に、前記中心軸からの距離が前記突起部の根元側に向かって縮小する方向に傾斜しているテーパ面が全周に設けてあることを特徴とする。
前記突起部の後端面には、前記中心軸に沿う方向に延びる凸部又は挿入部が設けられ、
前記凹部の奥には、前記凸部に対応する凸部挿入孔又は前記挿入部に対応する突出部が設けられていることを特徴とする。
そのため、従来のボルト等を用いてカッタ本体に刃部を組付けるタイプのスカイビングカッタと異なり組付け毎のばらつきが生じにくいので、仕上げ工程にも利用可能な超硬合金製のスカイビングカッタを提供することができる。
また、高価な超硬合金を必要最低限の使用に留めることができるため、従来の超硬ソリッド式カッタと比較すると工具コストを大きく低減させることが可能であり、工具寿命を超硬ソリッド式カッタと同程度まで伸ばすことが可能となる。
そして、刃部を繰り返し着脱できることから、摩耗した刃部を外し、摩耗した部位を研削した後に再度表面処理を施して、新品同様に再生することができる。
さらに、様々な諸元の刃部を装着することで多様な加工物に対応可能であり、カッタ本体を共用部品化して使用することができるので、鋼材の使用低減にも寄与できる。
その上、突起部の根元に、全周に亘って形成され、その深さ方向が前記突起部の中心軸に対して直交する溝からなる止まり部が設けてあるので、カッタ本体に刃部を焼嵌めにより接合固定する際に、刃部とカッタ本体の位置関係をわずかに変化させることができ、目視又は画像処理によって両者の位置関係を調整する、刃部の裏面とカッタ本体の先端が接する箇所を研磨する等の方法によって、使用時における刃部とカッタ本体との位置調整を行うことができる。
そのため、刃部の裏面と突起部の中心軸とのなす角度及びカッタ本体の先端面と凹部の中心軸とのなす角度が厳密に90度になっていなくても、カッタ本体に刃部を組付ける時点で位置調整が可能となるので、高精度の歯車加工に適応できるという大きなメリットがある。
Claims (4)
- 外周に複数の切れ刃を有する刃部と、シャンク形状をなすカッタ本体を備えるスカイビングカッタであって、
前記刃部は耐摩耗性に優れた超硬合金製、前記カッタ本体は前記超硬合金よりも熱膨張率の大きい金属製であり、
前記刃部の裏面側には、前記刃部の中心軸に沿って伸びる突起部が設けられ、
前記カッタ本体の先端部には、前記突起部の全体を受け入れ可能な凹部が設けられ、
前記刃部と前記カッタ本体は、焼嵌めにより着脱可能に接合され、かつ、組付け後は前記刃部の裏面に前記カッタ本体の先端が接した状態で固定される
ことを特徴とするスカイビングカッタ。 - 前記突起部の根元に、全周に亘って形成される溝からなる止まり部が設けてある
ことを特徴とする請求項1記載のスカイビングカッタ。 - 前記突起部の側面の少なくとも一部に、前記中心軸からの距離が前記突起部の根元側に向かって縮小する方向に傾斜しているテーパ面が全周に設けてある
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のスカイビングカッタ。 - 前記突起部の後端面には、前記中心軸に沿う方向に延びる凸部又は挿入部が設けられ、
前記凹部の奥には、前記凸部に対応する凸部挿入孔又は前記挿入部に対応する突出部が設けられている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスカイビングカッタ。
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