以下、実施形態に係る車両用カバー装置について説明する。車両用カバー装置の適用対象である車両の一例は、鞍乗型車両である。鞍乗型車両は、ユーザである運転者がシートに跨った状態で運転する車両である。以下の実施形態では、鞍乗型車両が自動二輪車である例で説明する。本鞍乗型車両は、自動二輪車の他、自動三輪車、ATV(All Terrain Vehicle)等であってもよい。
図1はカバー装置40を備える自動二輪車10の全体構成を示す側面図である。図2は同自動二輪車10の部分平面図である。なお、以下の説明において、上下、前後及び左右について言及する場合、各方向は、次のように定義される。まず、自動二輪車10の前輪20及び後輪22が路面に接地する側が下であり、その反対側が上である。また、自動二輪車10が走行する際の走行方向が前であり、その反対側が後ろである。さらに、ユーザが運転者として自動二輪車10に搭乗した状態で、当該ユーザを基準とする左右が自動二輪車10の左右である。幅方向という場合、左右の車幅方向である。
自動二輪車10では、車体フレーム11の前側に前輪20が回転可能に設けられる。車体フレーム11の後側に後輪22が回転可能に設けられる。
車体フレーム11には、動力ユニットとしてエンジン24が搭載されている。エンジン24は、前輪20と後輪22との間において、車体フレーム11の下部に支持される。エンジン24の回転駆動力が変速機等を介して後輪22に伝達され、これにより、後輪22が回転駆動される。
車体フレーム11における前後方向中間部の上側にシート12が設けられている。シート12は、運転者が着座するシートである。車体フレーム11における前後方向中間部の上側であってシート12の前方に燃料タンク13が設けられる。
車体フレーム11の前側にハンドル30が設けられている。ここでは、車体フレーム11の前部にヘッドパイプ32が設けられている。ヘッドパイプ32には、ステアリングシャフト33が回転可能に挿通されている。ステアリングシャフト33には、上下一対のブラケット34が支持されている。ブラケット34によって、フロントフォーク36が下方に向けて延在するように支持されている。フロントフォーク36の下端部に前輪20が回転可能に支持されている。ハンドル30が、ブラケット34に支持されている。ハンドル30が操作されると、ステアリングシャフト33、ブラケット34及びフロントフォーク36がヘッドパイプ32の軸周りに回転する。この回転と共に、前輪20もヘッドパイプ32の軸周りに回転して、前輪20の向きが変る。
自動二輪車10に、樹脂等で形成されたカバーが取付けられる。ここでは、自動二輪車10に、カバーとして、フロントカウル26、サイドカウル50、インナカバー70、サイドカバー27及びリアサイドカバー28が取付けられる。
フロントカウル26は、自動二輪車10における前部に取付けられる。ここでは、フロントカウル26は、車体フレーム11に対して直接又は間接的に支持されており、ハンドル30と共に向きを変えない。別例として、フロントカウル26がブラケットに直接又は間接的に支持され、ハンドルと共に向きを変えてもよい。フロントカウル26には、ヘッドランプ29が組込まれる。
サイドカウル50及びインナカバー70は、自動二輪車10におけるヘッドパイプ32の両側部の位置に設けられる。インナカバー70は、ヘッドパイプ32の前側及び両側を囲うように設けられる。サイドカウル50及びインナカバー70は、直接又は間接的に車体フレーム11に支持されている。サイドカウル50は、ヘッドパイプ32に対して車幅方向外側を覆い、インナカバー70がサイドカウル50の上側縁から車幅方向内側に向けて延在するように設けられる。ハンドル30を操作すると、フロントフォーク36はインナカバー70で囲まれた空間内でヘッドパイプ32周りに動くことができる。サイドカウル50は、インナカバー70の車幅方向外側を覆っている。ここでは、サイドカウル50は、フロントカウル26の後部から燃料タンク13の下方に至る領域を覆っている。
サイドカバー27は、自動二輪車10における前後方向中間部の両側部に取付けられる。サイドカバー27は、直接又は間接的に車体フレーム11に支持されている。ここでは、サイドカバー27は、燃料タンク13とサイドカウルとの間の領域と、エンジン24の上方領域及び後方領域を覆っている。
リアサイドカバー28は、自動二輪車10における後部寄りの両側部に取付けられる。リアサイドカバー28は、直接又は間接的に車体フレーム11に支持されている。ここでは、リアサイドカバー28は、シート12の下方領域を覆っている。
カバーの例であるフロントカウル26、サイドカウル50、インナカバー70、サイドカバー27及びリアサイドカバー28は、互いに隣接し合う領域で、接続される。本カバー装置40は、当該カバー同士を接続する構成として適用され得る。例えば、カバー装置40は、サイドカウル50とインナカバー70とを接続する装置として適用され得る。ここで説明するカバー装置40は、他のカバー同士を接続する構成、例えば、フロントカウル26とサイドカウル50とを接続する構成、サイドカウル50とサイドカバー27とを接続する構成、サイドカバー27とリアサイドカバー28とを接続する構成等としても適用され得る。
本実施形態では、インナカバー70とサイドカウル50とを接続する車両用カバー装置40の例が説明される。すなわち、インナカバー70は、ヘッドパイプ32の両側外方及び前方を囲むように設けられる。インナカバー70は、ヘッドパイプ32の両側外方及び前方において水平方向に沿って設けられる部分を含む。サイドカウル50は、インナカバー70の両側外縁から下方に向うように設けられる。このため、インナカバー70の両側外縁と、サイドカウル50の上縁とが繋がっている。本車両用カバー装置40は、インナカバー70の外側縁とサイドカウル50の上縁とを接続する構成である。
図3はインナカバー70とサイドカウル50との接続部分を外側からみた斜視図である。図4は図3のIV−IV線における断面図である。図5はインナカバー70とサイドカウル50との接続部分を内側からみた斜視図である。図6はインナカバー70の外側縁部分を示す斜視図である。図7はサイドカウル50の上縁部分を示す斜視図である。
インナカバー70は、第1カバー本体の一例としてインナカバー本体72を含む。ここでは、インナカバー本体72は、前側板状部74と、一対の側方板状部76とを備える。側方板状部76は、細長い板状に形成されている。側方板状部76は、幅方向を車幅方向に沿わせると共に、長手方向を前後方向に沿わせた姿勢で、ヘッドパイプ32の外側方に設けられる。前側板状部74は、細長長い板状に形成されており、ヘッドパイプ32の前方において車幅方向に沿って設けられている。前側板状部74の両端部は、一対の側方板状部76の前端部に繋がっている。前側板状部74は、一対の側方板状部76の前端部から前方に向うにつれて上方に向う姿勢とされている。
側方板状部76の外側の縁77は、側方板状部76のうち当該外側縁よりも車幅方向内側部分に対して下方に凹んでいる。この外側の縁77がサイドカウル50の上側の縁55に対して下側に重ねられる。
なお、縁77には、肉抜き孔78が形成されている。この肉抜き孔78によってインナカバー70の軽量化が図られる。また、縁77のうち縁55に接する側の面には、部分凸部79が形成されている(図6参照)。この部分凸部79によって、縁77と縁55とが面同士で接触することが抑制されている。また、縁77のうち後述する第1支持凸部56、第2支持凸部58が接触する部分には、部分接触凸部77pが形成されている。この部分接触凸部77pが第1支持凸部56及び第2支持凸部58に部分的に接触する。これらの肉抜き孔78、部分凸部79、部分接触凸部77pは省略されてもよい。
サイドカウル50は、第2カバー本体の一例としてサイドカウル本体52を含む。ここでは、サイドカウル本体52の上縁部は、フロントカウル26からハンドル30の下方を経由して燃料タンク13の下方に向って延在している。サイドカウル本体52の前縁部は、フロントカウル26から後方に向うにつれて下方に向いエンジン24の前部下方に達するように延在している。サイドカウル本体52の下縁部は、エンジン24の下方において前後方向に沿って延在している。サイドカウル本体52の後縁部は、頂部を前方に向けるようにして横向きV字状に切込んだ形状とされている。
ここでは、サイドカウル本体52は、外側サイドカウル本体53と、内側サイドカウル本体54との2分割構成とされている。外側サイドカウル本体53は、アッパ部53aと、ロア部53bと、連結部53cとを含む。アッパ部53aは、フロントカウル26からハンドル30の下方に向けて延在する前後方向に細長い板状部分に形成されている。ロア部53bは、フロントカウル26の下部からエンジン24に向けて延在する板状部分に形成されている。アッパ部53aとロア部53bとは上下方向において離れている。アッパ部53aの下縁部の前後方向中間部とロア部53bの上縁部の前後方向中間部とが連結部53cを介して繋がっている。内側サイドカウル本体54は、アッパ部53aとロア部53bとの間に設けられる。内側サイドカウル本体54は、外側サイドカウル本体53に対して車幅方向内側に設けられている。内側サイドカウル本体54は、連結部53cに対して車幅方向内側に重なっている。アッパ部53aとロア部53bとの間であって連結部53cの前方及び後方では、内側サイドカウル本体54が車幅方向外側に露出している。上記例に限られず、サイドカウル本体は、全体的に一体形成された部材であってもよい。また、サイドカウル本体はより多数に分割された部材であってもよい。
サイドカウル本体52の上縁部は、車幅方向内側に向う縁55を含む。この上側の縁55が上記インナカバー本体72の外側の縁77に重ね合される。サイドカウル本体52の上側の縁55とインナカバー本体72の外側の縁77とを接続状態に保つための構成例について説明する。
インナカバー70には、縁77に沿って間隔をあけて第1被係止部80及び第2被係止部86が形成されている。第1被係止部80は後述する第1係止凸部60が係止する部分である。第1被係止部80は、被係止孔81を有しており、当該第1係止凸部60が当該被係止孔81に係止する。より具体的には、インナカバー70の縁77に、縁55側(ここでは上側)からみて凹む溝80gを有する第1被係止部80が形成されている(図5、図6参照)。溝80gは、縁77の端縁部から内側の位置で最も深くなっており、縁77の端縁部に向うにつれて徐々に浅くなる形状に形成されている。これに応じて、第1被係止部80を縁55とは反対側(下側)から見ると、第1被係止部80は、縁77の端縁部から内側に向うにつれて徐々に突出寸法が大きくなり、縁77の端縁部から内側の位置で段差をなすように縁55の主面(下側の面)に向う形状を呈する。第1被係止部80の底部のうち縁77の端縁部から内側に離れた位置に上記被係止孔81が形成されている。ここでは、被係止孔81は、方形状の孔に形成されているが、他の三角形状、円形状等であってもよい。第1被係止部80が被係止孔81を有することは必須ではない。第1被係止部は、第1係止凸部60が係止可能な溝又は突起が形成された形状であってもよい。
第2被係止部86は、第1被係止部80に対して縁77に沿って後方に離れた位置に設けられる。第2被係止部86は、上記第1被係止部80と同様構成であってもよい。
サイドカウル本体52の縁55に沿って間隔をあけて第1支持凸部56、第2支持凸部58及び第3支持凸部59が突設される。第1支持凸部56、第2支持凸部58及び第3支持凸部59は、サイドカウル本体52のうち縁55よりも内側の位置で、当該縁55と同じ方向に突出するように形成される。縁55に対して、第1支持凸部56、第2支持凸部58及び第3支持凸部59は間隔を隔てて突出されおり、縁55と、第1支持凸部56、第2支持凸部58及び第3支持凸部59との間に縁77が配設され得る。第1支持凸部56は、第1被係止部80に対して第2被係止部86から離れる側(ここでは前方)に設けられている。第2支持凸部58は、第1被係止部80と第2被係止部86との間に設けられる。第3支持凸部59は、第2被係止部86に対して第1被係止部80から離れる側(ここでは後方)に設けられる。このため、第1支持凸部56、第1被係止部80、第2支持凸部58、第2被係止部86及び第3支持凸部59がこの順で縁77の両側(上下両面側)に交互に配置される。
第1支持凸部56は、インナカバー70の縁77側に向けて凸となる弧状断面をなす突起形状に形成されている(図5、図7参照)。換言すれば、第1支持凸部56は、円筒又は楕円筒をその軸方向に沿った面で切断したような形状に形成されている。第1支持凸部56の外周面のうち凸となる曲面部分は、縁77に対して線状に接触することができる。この際、第1支持凸部56は、縁77に押付けられてある程度撓むように曲ることができる。
また、第1支持凸部56は、インナカバー70の縁77側に向かうのにつれてその基端側に向うガイド端面56fに形成されている。換言すれば、第1支持凸部56は、半円筒又は半楕円筒形状であり、かつ、そのガイド端面56fは曲率中心側で最も突出するように軸に対して斜めに切断された形状を呈するように構成されている。この場合、縁77が当該ガイド端面56fに接触することで、第1支持凸部56の外周面のうち凸となる曲面部分側に容易に案内される。
上記各形状は、第1支持凸部56、第2支持凸部58及び第3支持凸部59のいずれかに適用されてもよい。ここでは、第1支持凸部56、第2支持凸部58及び第3支持凸部59の全てが弧状断面をなす突起形状に形成され、さらに、ガイド端面56fを有する形状に形成されている。
また、縁55は、第1支持凸部56の近くで当該第1支持凸部56と同方向に突出している。縁77は、縁55と当該第1支持凸部56との間に配設されるため、縁77が縁55と当該第1支持凸部56との間の奥に入り込みすぎてしまうことがあり得る。これを回避するため、ここでは、第1支持凸部56の基端側の周りから縁55に向う部分凸部56aが形成されている。これにより、縁77が部分凸部56aに接触して、縁55と当該第1支持凸部56との間の奥に入り込みすぎてしまうことが抑制される。上記部分凸部56aは、第2支持凸部58、第3支持凸部59に形成されてもよい。
サイドカウル本体52の縁55に沿った方向において、第1支持凸部56と第2支持凸部58との間に第1係止凸部60が形成され、第2支持凸部58と第3支持凸部59との間に、第2係止凸部64が形成される。
第1係止凸部60及び第2係止凸部64は、縁55の厚み方向において、第1支持凸部56、第2支持凸部58及び第3支持凸部59に対して離れて設けられている。縁77が、第1係止凸部60及び第2係止凸部64と、第1支持凸部56、第2支持凸部58及び第3支持凸部59との間に配設される。
第1係止凸部60は、縁55の厚み方向において、第1支持凸部56、第2支持凸部58及び第3支持凸部59側に突出する部分を含む。この突出部分が第1被係止部80に係止することができる。より具体的には、第1係止凸部60は、基部61と係止部62とを含む(図7参照)。基部61は、サイドカウル本体52から突出しており、縁55の主面(上面)に接触する部分である。係止部62は、基部61の先端から縁77に向けて突出している。係止部62は、基部61に対して鈍角をなしている。
より具体的には、基部61は、当接板部61aと、一対の側壁部61bとを含む。当接板部61aは板状に形成されており、縁55の基端部から縁55の先端部に向けて突出している。基部61の先端部は、縁55の先端部より手前に位置している。一対の側壁部61bは、基部61の両側部から縁55側に突出し、基部61の両側部と縁55とを繋いでいる。一対の側壁部61bによって当接板部61aがサイドカウル本体52に対して一定姿勢に保たれる。上記基部61の外向き面は、平面状をなしており、縁77に対して面接触することができる。
係止部62は、係止板部62aと一対の側壁部62bとを含む。係止板部62aは、当接板部61aに対して縁55とは反対側に突出している。係止板部62aと当接板部61aとは鈍角をなしている。係止板部62aは、第1支持凸部56の軸方向に対しても鈍角をなしている。一対の側壁部62bは、係止板部62aの両側部から外方に突出し、上記一対の側壁部61bに連なり、さらに、縁55にも連なっている。この一対の側壁部62bによって、係止板部62aが一定の姿勢に保たれ易くなる。係止部62の先端部は、縁55の先端側に向うにつれて縁55に対する突出寸法が小さくなる形状に形成されているとよい。これにより、縁77が係止部62を容易に乗越えることができる。第2係止凸部64も上記第1係止凸部60と同様構成とされてもよい。
サイドカウル50とインナカバー70との接続は次の構成によってなされる。インナカバー70の縁77がサイドカウル50の縁55の内側において、第1支持凸部56、第2支持凸部58及び第3支持凸部59と、第1係止凸部60及び第2係止凸部64との間に差込まれる。この際、第1支持凸部56、第2支持凸部58及び第3支持凸部59の端面がガイド端面56fに形成されているため、縁77は上記間に容易に案内される。縁77が上記間に差込まれると、縁55が弾性変形して、第1係止凸部60及び第2係止凸部64の係止部62が、溝80gに入り込んで、縁55のうち第1被係止部80及び第2被係止部86の外側部分を乗越えることができる。これにより、インナカバー70の縁77が第1支持凸部56及び第2支持凸部58と、第1係止凸部60との間に挟まれた状態で、第1係止凸部60の係止部62が、第1被係止部80の被係止孔81に係止する。また、インナカバー70の縁77が第2支持凸部58及び第3支持凸部59と、第2係止凸部64との間に挟まれた状態で、第2係止凸部64の係止部62が、第2被係止部86の被係止孔81に係止する。
上記状態では、第1係止凸部60及び第2係止凸部64の係止部62が、第1被係止部80及び第2被係止部86の被係止孔81に係止しているので、縁77が縁55から離脱する方向へ移動することが規制される。
また、縁77は、第1支持凸部56、第2支持凸部58及び第3支持凸部59と、第1係止凸部60及び第2係止凸部64との間に位置しているため、縁55と縁77とは厚み方向において一定の位置関係に保たれる。
この際、第1支持凸部56、第2支持凸部58及び第3支持凸部59は、弧状断面をなす形状に形成されているため、縁77にあたった状態で全体的に撓み変形することができる。これにより、第1支持凸部56、第2支持凸部58及び第3支持凸部59のそれぞれにおいて応力集中を抑制しつつ、インナカバー本体72の縁77を支持することができる。第1支持凸部56、第2支持凸部58及び第3支持凸部59のうちの1つに応力収集が生じることを抑制しつつ、インナカバー本体72の縁77を支持することができる。
また、第1係止凸部60、第2係止凸部64の当接板部61aは、縁77に面接触することができるため、縁77から当接板部61aに伝わる力が分散して当接板部61aの変形が抑制される。結果、サイドカウル本体52に対して当接板部61aがしっかりと位置決めされる。これにより、第1係止凸部60及び第2係止凸部64が、第1被係止部80及び第2被係止部86にしっかりと係止する。
自動二輪車10のうちサイドカウル50の内側の部分をメンテナンスする際等において、サイドカウル50が取外される場合がある。サイドカウル50の取外しは次のようになされる。第1係止凸部60は第1支持凸部56と第2支持凸部58との間に位置し、縁77の第1被係止部80に対して第1支持凸部56と第2支持凸部58とは反対側から係止している。また、第2係止凸部64は第2支持凸部58と第3支持凸部59との間に位置し、縁77の第2被係止部86に対して第2支持凸部58と第3支持凸部59とは反対側から係止している。そこで、縁77のうち第1被係止部80及び第2被係止部86が形成された部分を、第1係止凸部60及び第2係止凸部64から離れる方向に変位させれば、上記係止状態を解除できる。縁55を変形させずに、縁77を変形させるため、インナカバー本体72のうち縁77よりも車幅方向内側の部分であって第1被係止部80及び第2被係止部86の隣の部分を押す。この部分は、縁77に対して車幅方向内側にされているため、作業者等によって押しやすい部位である。すると、縁77のうち第1被係止部80及び第2被係止部86が形成された部分が、第1係止凸部60及び第2係止凸部64から離れる方向に弾性変形し、第1被係止部80及び第2被係止部86と第1係止凸部60及び第2係止凸部64との係止状態が解除される。この際、係止部62は、基部61に対して鈍角をなしているため、第1係止凸部60及び第2係止凸部64は、第1被係止部80及び第2被係止部86から容易に離脱することができる。
上記取外しを容易にするため、一例として、第1カバー本体の一例であるインナカバー本体72は、第2カバーの一例であるサイドカウル本体52よりも曲げ変形容易であってもよい。ここで、曲げ変形の容易性については、例えば、曲げ弾性率(JIS K 7171)をもって評価されてもよい。例えば、曲げ弾性率が高いほど変形し難く、曲げ変形が低いほど変形し易いと評価されてもよい。例えば、インナカバー70は、PP(polypropylene)等の軟質樹脂によって形成されてもよい。また、サイドカウル50は、ABS(acrylonitrile butadiene styrene)樹脂、AES(acrylonitrile ethylene-propylene-diene styrene)樹脂等の硬質樹脂で形成されていてもよい。サイドカウル50は、ABS樹脂又はAES樹脂と他の樹脂とを含む樹脂によって形成されていてもよい。例えば、サイドカウル50は、ABS樹脂とPA(polyamide)とを含む樹脂によって形成されていてもよい。この場合、PAは、PA6(polyamide6又はnylon6)であってもよい。サイドカウル50を構成する樹脂は、繊維を含んでいてもよい。例えば、サイドカウル50は、ABS樹脂又はAES樹脂にCF(Carbon Fibe)又はGF(Glass Fiber)を混ぜた樹脂によって形成されていてもよい。特に、自動二輪車10の両側外部を覆うサイドカウル50が硬質樹脂で形成されていれば、保護に適し、かつ、塗装もし易い。
また、本実施形態では、サイドカウル50とインナカバー70とは貫通固定部90によっても固定されている。ここでは、サイドカウル本体52の縁55に沿った方向において、第3支持凸部59から第2係止凸部64とは反対側に離れた位置に貫通固定部90が設けられる。貫通固定部90は、インナカバー本体72とサイドカウル本体52との少なくとも一方に貫通してインナカバー70とサイドカウル50とを固定する部分である。貫通固定部90は、例えば、ネジであってもよいし、リベットであってもよい。
より具体的には、インナカバー本体72は、縁77に沿った方向において、第3支持凸部59から第2係止凸部64とは反対側に離れた位置に貫通固定片71を有している。貫通固定片71は、サイドカウル本体52の内面に沿う板状に形成されている。貫通固定片71には、貫通固定部90を挿通可能な孔が形成されている。
サイドカウル本体52には、上記貫通固定片71に対応する位置に貫通固定部90を固定可能な貫通固定凹部51が形成されている(図4参照)。貫通固定部90がネジである場合、例えば、貫通固定凹部51は当該ネジを螺合可能なネジ孔を有する部分である。貫通固定部90がリベットである場合、貫通固定凹部は貫通孔であってもよい。
そして、貫通固定片71がサイドカウル本体52のうち貫通固定凹部51が形成された部分に重ね合された状態で、貫通固定部90が上記貫通固定片71の孔に挿通されて貫通固定凹部51に挿入されることで、サイドカウル50とインナカバー70とが貫通固定部90によって固定される。
また、インナカバー本体72に、その縁77に沿った方向において、第2被係止部86から離れた位置に第3被係止部88が形成される。第3被係止部88は、第1被係止部80と同様構成であってもよい。
また、サイドカウル本体52には、その縁55に沿った方向において、第3支持凸部59と貫通固定部90との間に第3係止凸部66が設けられる。第3係止凸部66は、第1係止凸部60と同様構成であってもよい。
そして、第3支持凸部59と貫通固定部90との間で、第3被係止部88がインナカバー本体72の縁77に対して第3支持凸部59の反対側から第3被係止部88に係止している。
このように構成された車両用カバー装置40によると、インナカバー70の縁77が第1支持凸部56及び第2支持凸部58と、第1係止凸部60との間に挟まれた状態で、第1係止凸部60の係止部62が、第1被係止部80の被係止孔81に係止する。また、インナカバー70の縁77が第2支持凸部58及び第3支持凸部59と、第2係止凸部64との間に挟まれた状態で、第2係止凸部64の係止部62が、第2被係止部86の被係止孔81に係止する。このため、第2支持凸部58が第1係止凸部60及び第2係止凸部64が第1被係止部80及び第2被係止部86に対して係止状態を保つための構成として共用化される。このため、インナカバー70とサイドカウル50とを接続するための構成が簡易化される。
また、インナカバー70とサイドカウル50とは貫通固定部90によって固定される。このため、上記係止構造を利用した固定構造と貫通固定部90とを併用して、インナカバー70とサイドカウル50とをしっかりと固定できる。この際、第3支持凸部59と貫通固定部90との間で、第3係止凸部66が第3被係止部88に係止しているため、インナカバー70とサイドカウル50とをよりしっかりと固定できる。
また、インナカバー70がサイドカウル50より変形容易であれば、第1被係止部80、第2被係止部86等が形成された縁77を容易に変形させることができ、第1係止凸部60及び第2係止凸部64と第1被係止部80及び第2被係止部86との係止を容易に解除できる。
また、第1支持凸部56、第2支持凸部58、第3支持凸部59が弧状断面を呈する形状に形成されているため、全体的に容易に弾性変形することができる。これにより、第1支持凸部56、第2支持凸部58、第3支持凸部59のそれぞれの一部又は複数のうちの一部に応力集中が生じることを抑制しつつ、インナカバー70の縁77を支持することができる。
また、第1支持凸部56、第2支持凸部58、第3支持凸部59の端面がある程度幅広であるガイド端面56fに形成されているため、縁77が第1支持凸部56、第2支持凸部58及び第3支持凸部59と第1係止凸部60及び第2係止凸部64との間に容易に誘い込まれる。
また、第1係止凸部60、第2係止凸部64の当接板部61aを、インナカバー70の縁77の主面に面接触させることができる。これにより、第1係止凸部60、第2係止凸部64の当接板部61aに対する面圧(単位面積あたりの力)が下がり、当接板部61aが変形し難くなる。これにより、縁77に対して当接板部61aがしっかりと位置決めされ、第1係止凸部60及び第2係止凸部64が、第1被係止部80及び第2被係止部86にしっかりと係止する。
また、第1係止凸部60及び第2係止凸部64の係止部62は、基部61に対して鈍角をなしているため、縁55を変形させることで、係止部62が被係止孔81から容易に脱することができ、サイドカウル50をインナカバー70から容易に取外すことができる。
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
以上のように、本明細書は、下記の各態様を含んでいる。
第1の態様に係る車両用カバー装置は、縁に沿って間隔をあけて第1被係止部及び第2被係止部が形成された第1カバー本体を含む第1カバーと、第2カバー本体と、前記第2カバー本体の縁に沿って間隔をあけて突設された第1支持凸部、第2支持凸部及び第3支持凸部と、前記第2カバー本体の前記縁に沿った方向において前記第1支持凸部と前記第2支持凸部との間に設けられた第1係止凸部と、前記第2カバー本体の前記縁に沿った方向において前記第2支持凸部と前記第3支持凸部との間に設けられた第2係止凸部とを含む第2カバーと、を備え、前記第1カバー本体の前記縁が前記第1支持凸部及び前記第2支持凸部と前記第1係止凸部との間に挟まれた状態で、前記第1係止凸部が前記第1被係止部に係止し、前記第1カバー本体の前記縁が前記第2支持凸部及び前記第3支持凸部と前記第2係止凸部との間に挟まれた状態で、前記第2係止凸部が前記第2被係止部に係止する。
本車両用カバー装置によると、第2支持凸部が2箇所の係止用の構造に対して共用化されている。このため、第1カバーと第2カバーとを接続するための構成が簡易化される。
第2の態様は、第1の態様に係る車両用カバー装置であって、前記第2カバー本体の前記縁に沿った方向において前記第3支持凸部から離れた位置で、前記第1カバー本体と前記第2カバー本体との少なくとも一方に貫通して前記第1カバーと前記第2カバーとを固定する貫通固定部をさらに備え、前記第1カバー本体に、その縁に沿った方向において前記第2被係止部から離れた位置に第3被係止部が形成され、前記第2カバーは、前記第2カバー本体の前記縁に沿った方向において前記第3支持凸部と前記貫通固定部との間に設けられた第3係止凸部をさらに含み、前記第3支持凸部と前記貫通固定部との間で、前記第3係止凸部が前記第1カバー本体の前記縁に対して前記第3支持凸部の反対側から前記第3被係止部に係止する。
この場合、上記固定構造と貫通固定部とを併用して簡易かつしっかりと第1カバーと第2カバーとを固定できる。
第3の態様は、第1又は第2の態様に係る車両用カバー装置であって、前記第1カバー本体は、前記第2カバー本体よりも曲げ変形容易とされている。
この場合、各支持凸部の間で、第1カバー本体を曲げ変形させることで、係止凸部と被係止部との係止を容易に解除できる。
第4の態様は、第1から第3のいずれか1つの態様に係る車両用カバー装置であって、前記第1支持凸部、前記第2支持凸部及び前記第3支持凸部のうちの少なくとも1つは、前記第1カバー本体の前記縁に向けて凸となる弧状断面をなす突起形状とされているものである。
この場合、弧状断面形状をなす部分が全体的に変形することで、応力集中を抑制しつつ第1カバー本体の縁を支持することができる。
第5の態様は、第4の態様に係る車両用カバー装置であって、前記第1支持凸部、前記第2支持凸部及び前記第3支持凸部のうち前記第1カバー本体の前記縁に向けて凸となる弧状断面をなす突起形状と形成されたものの端面は、前記第1カバー本体の前記縁に向うのにつれて基端側に向うガイド端面とされている。
この場合、ある程度幅広であるガイド端面によって、第1カバー本体の縁を各支持凸部と各係止凸部との間に誘い込むことができる。
第6の態様は、第1から第5のいずれか1つの態様に係る車両用カバー装置であって、前記第1係止凸部及び前記第2係止凸部のうちの少なくとも1つは、前記第1カバー本体の縁に面接触可能な当接板部と、前記当接板部の両側部に連設された一対の側壁部とを含む形状とされている。
この場合、当接板部を第1カバー本体の縁に面接触させることで、面圧が下がり、当接板部の変形が抑制される。結果、カバー本体の縁に対して当接板部がしっかりと位置決めされ、前記第1係止凸部及び前記第2係止凸部のうちの少なくとも1つが、第1被係止部又は第2被係止部にしっかりと係止する。
第7の態様は、第1から第6のいずれか1つの態様に係る車両用カバー装置であって、前記第1係止凸部及び前記第2係止凸部のうちの少なくとも1つは、前記第2カバー本体から突出する基部と、前記基部の先端から前記第1カバー本体の前記縁に向けて突出する係止部とを含み、前記係止部は、前記基部に対して鈍角をなす向きに突出しているものである。
この場合、係止部は基部に対して鈍角をなしているため、第2カバーを第1カバーから取外すことが容易である。
第8の態様は、第1から第7のいずれか1つの態様に係る車両用カバー装置を備える鞍乗型車両であって、前記第2カバーが前記鞍乗型車両のヘッドパイプに対して車幅方向外側を覆い、前記第1カバーが前記第2カバーの上側の縁から車幅方向内側に向けて延在するように設けられ、前記第2カバーの上側の縁に前記第1被係止部及び前記第2被係止部が設けられ、前記第1カバーの車幅方向外側の縁に前記第1支持凸部、前記第2支持凸部及び前記第3支持凸部と、前記第1係止凸部及び前記第2係止凸部とが設けられている、鞍乗型車両である。
この場合、第1カバーに対して車幅方向の第2カバーを接続する構成を簡易化できる。