JP2021024930A - ポリアミド酸溶液の製造方法、ポリイミド樹脂の製造方法、およびポリイミドフィルムの製造方法 - Google Patents

ポリアミド酸溶液の製造方法、ポリイミド樹脂の製造方法、およびポリイミドフィルムの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】溶解性や反応性が低いテトラカルボン酸二無水物を用いる場合でも、重合時間を短縮可能なポリアミド酸溶液の製造方法の提供を目的とする。【解決手段】ポリアミド酸溶液の製造方法は、有機溶媒中でジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて、アミン末端プレポリマーの溶液を調製する工程;有機溶媒中でジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて、酸無水物末端オリゴマーの溶液を調製する工程;およびプレポリマーとオリゴマーとを反応させる工程、を有する。オリゴマーにおける酸二無水物成分の量は、酸二無水物の総量に対して、モル比で0.001〜0.25倍である。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリイミド前駆体としてのポリアミド酸溶液の製造方法に関する。さらに、本発明は、当該ポリアミド酸溶液を用いて、ポリイミド樹脂およびポリイミドフィルムを製造する方法に関する。
近年、エレクトロニクスデバイスの急速な進歩に伴い、デバイスの薄型化や軽量化、さらにはフレキシブル化が要求されている。特に、高い耐熱性や、高温での寸法安定性、高機械強度が求められる用途では、基板やカバーウィンドウ等に用いられているガラスの代替材料としてポリイミドフィルムの適用が検討されている。
ポリイミドは、一般に、テトラカルボン酸二無水物(以下、単に「酸二無水物」と記載する場合がある)とジアミンとを有機溶媒中で反応させて、ポリイミド前駆体としてのポリアミド酸を重合し、ポリアミド酸を脱水環化することにより得られる。ポリアミド酸の重合に用いられるモノマーとしての酸二無水物およびジアミンの種類や比率を変更することにより、種々の特性を有するポリイミドが得られる。例えば、一般的な全芳香族ポリイミドは、黄色または褐色に着色しているのに対して、脂環式構造、屈曲構造、フッ素置換基等を有するモノマーを用いることにより、可視光の透過率が高いポリイミドが得られる。
ポリイミドの作製において、ポリアミド酸の重合に長時間を要することが生産性低下の一因となっている。特に、可視光透過率の高い透明ポリイミドの原料として用いられるモノマー、中でも酸二無水物は、重合溶媒への溶解性および反応性が低いため、透明ポリイミドの前駆体としてのポリアミド酸の重合時間が長くなる傾向がある。
ポリアミド酸の重合において、モノマーの添加順序を調整することにより、ポリアミド酸の重合時間を短縮するとともに、高分子量化を図る方法がいくつか報告されている。例えば、特許文献1では、複数種の酸二無水物を用いてポリアミド酸を重合する際に、所定のフッ素置換酸二無水物を最後に添加することにより、同一の重合時間でより分子量の大きいポリイミドが得られることが記載されている。特許文献2では、モノマー単位として脂環式酸二無水物を含むポリアミド酸と、モノマー単位として脂環式酸二無水物を含まないポリアミド酸とを個別に重合し、両者を混合して反応させることにより、ブロック共重合体を得る方法が記載されている。
WO2011/122842号 特開2013−82774号公報
特許文献1に記載のように、特定の酸二無水物を最後に添加する方法では、最後に添加した酸二無水物が未溶解で残存しやすい。そのため、分子量が十分に上昇しない(溶液の粘度が十分に上昇しない)場合や、未溶解の酸二無水物がその後の工程における分子量(溶液粘度)の変動の原因となる場合がある。特許文献2のように、2種類のポリアミド酸(プレポリマー)を調製する方法では、溶解性の低い酸二無水物を用いたプレポリマーの重合に長時間を要する場合がある。
上記に鑑み、本発明は、溶解性や反応性が低いテトラカルボン酸二無水物を用いる場合でも、重合時間を短縮可能なポリアミド酸溶液の製造方法の提供を目的とする。
ポリアミド酸溶液の調製は、有機溶媒中でジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて、プレポリマーの溶液を調製する工程;有機溶媒中でジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて、オリゴマーの溶液を調製する工程;およびプレポリマーとオリゴマーとを反応させる工程、を有する。
オリゴマー溶液の調製において、酸二無水物の仕込み量は、ジアミンの仕込み量に対して、モル比で1よりも大きく、酸二無水物の仕込み量は、ジアミンの仕込み量に対して、モル比で1.1〜2.1倍が好ましい。酸二無水物の仕込み量を相対的に大きくすることにより、酸無水物末端のオリゴマーが形成される。
プレポリマー溶液の調製において、酸二無水物の仕込み量は、ジアミンの仕込み量に対して、モル比で1よりも小さく、酸二無水物の仕込み量は、ジアミンの仕込み量に対して、モル比で0.90〜0.99倍が好ましい。ジアミンの仕込み量を相対的に大きくすることにより、アミン末端のプレポリマーが形成される。
オリゴマーにおける酸二無水物成分の量は、酸二無水物成の総量に対して、モル比で0.001〜0.25倍が好ましい。酸二無水物成分の総量は、ジアミン成分の総量に対して、モル比で0.95〜1.05倍が好ましい。
オリゴマーの調製に用いられるテトラカルボン酸二無水物として、有機溶媒に対する溶解性が小さいものを用いてもよい。例えば、オリゴマーの調製に用いられるテトラカルボン酸二無水物は、23℃における重合用溶媒に対する飽和溶解度が15重量%以下であってもよい。オリゴマーの調製に用いられるテトラカルボン酸二無水物は、ビフェニル骨格含有テトラカルボン酸二無水物、ビス無水トリメリット酸エステル、フッ素含有芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物等でもよい。
ポリアミド酸をイミド化することによりポリイミドが得られる。イミド化は溶液中で実施してもよい。溶液中でイミド化を行った後に、ポリイミド溶液と、ポリイミドの貧溶媒とを混合して、ポリイミド樹脂を析出させてもよい。得られたポリイミド樹脂を溶媒中に溶解してポリイミド溶液を基材上に塗布し、溶媒を除去することによりポリイミドフィルムを作製できる。ポリイミド樹脂を溶解させる溶媒は、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキルでもよい。
本発明によれば、溶解性や反応性が低いテトラカルボン酸二無水物を用いた場合でも、ポリアミド酸の合成時間を短縮可能であり、ポリイミド樹脂およびポリイミドフィルムの生産効率向上に寄与し得る。
本発明の一態様は、ポリアミド酸溶液の製造方法に関する。ポリアミド酸は、一般的には、溶媒中で、酸二無水物とジアミンとを反応させることにより得られる。以下では、まず、一般的なポリアミド酸溶液の調製方法(重合方法)について説明する。
[一般的なポリアミド酸溶液の調製方法]
有機溶媒中にジアミンおよび酸二無水物を溶解させると、アミノ基と酸無水物基との反応による、ポリアミド酸の重合が進行する。酸二無水物とジアミンを等モル量使用すれば、ポリアミド酸の分子量が大きくなる傾向がある。有機溶媒(重合溶媒)へのジアミンおよび酸二無水物の投入順序は特に限定されず、全てのモノマーを一度に投入してもよく、順次添加してもよい。
(プレポリマー法)
モノマーを順次添加する方法の一例として、プレポリマー法が知られている。プレポリマー法では、ジアミンおよび酸二無水物のいずれか一方が過剰となるようにモノマーを仕込んで、プレポリマー溶液(低分子量のポリアミド酸の溶液)を調製した後、プレポリマーにおける仕込み比が少ない方の成分を添加して後重合を実施する。例えば、ジアミンが過剰となるように(酸二無水物/ジアミンのモル比が1未満となるように)、有機溶媒中にジアミンと酸二無水物とを仕込み、一定時間反応させてプレポリマー溶液を形成する。ジアミンの仕込み量が過剰である場合、プレポリマーは末端にアミンを有する確率が高い(すなわち、アミン末端プレポリマーが形成される)。得られたプレポリマー溶液に酸二無水物(プレポリマーにおける仕込み比が少ない方の成分)を添加すると、プレポリマーの末端のアミノ基と酸二無水物とが反応する(後重合)。後重合において、複数のプレポリマー鎖が、間に酸二無水物を介して結合するため、高分子量のポリアミド酸が形成される。
ジアミン過剰でプレポリマーを調製すると、未反応の酸無水物が残存し難く、かつ、プレポリマーがアミン末端を有するため、系中の酸二無水物基の残存量が少ない。そのため、プレポリマー(ポリアミド酸)と系中の水との反応が抑制される傾向があり、高分子量のポリアミド酸が得られやすい。また、一般に、ジアミンは酸二無水物よりも重合溶媒に対する溶解性が高いため、ジアミン過剰の場合は、プレポリマーの調製時に未溶解のモノマーが残存し難い。
ジアミン過剰(アミン末端)のプレポリマー溶液に、酸二無水物モノマーを添加すると、溶液中に溶解した酸二無水物が、プレポリマーと反応して分子量が増大し、溶液の粘度が上昇する。特に、酸二無水物の総仕込み量とジアミンの総仕込み量が実質的に等モルとなるように酸二無水物を添加して後重合を行うことにより、ポリアミド酸の分子量が大きくなる傾向がある。
重合溶媒に対する溶解性が低い酸二無水物を用いると、後重合のために添加した酸二無水物の一部が未溶解で残存する。溶解した酸二無水物がプレポリマーと反応して消費されると(ポリアミド酸に取り込まれると)、溶液中の酸二無水物濃度が低下するため、未溶解で残存していた酸二無水物が溶液中に溶解する。このように、溶液中に溶解した酸二無水物が反応して消費されることによって未溶解の酸二無水物が減少するという過程を経るため、後重合で添加した酸二無水物が全て溶解して消費される(反応する)までの時間が長くなる傾向がある。
ジアミン末端のプレポリマーを調製し、プレポリマー溶液に酸二無水物を添加する方法は、高分子量のポリアミド酸を形成しやすいとの利点を有する反面、後重合における酸二無水物の溶解性および反応性が低いことに起因して、重合に長時間を要する場合や、分子量が十分に上昇しない場合がある。また、重合溶媒への溶解性の低い酸二無水物を用いる場合は、長時間撹拌を行っても酸二無水物の一部が未溶解で残存し、その後の工程(イミド化やフィルムの作製等)における溶液粘度の変動や、特性低下の要因となり得る。
[本実施形態のポリアミド酸溶液の調製方法]
本実施形態では、酸二無水物を予めジアミンと反応させて酸無水物末端オリゴマーの溶液を調製しておき、このオリゴマー溶液をアミン末端プレポリマーの溶液と混合して、プレポリマーとオリゴマーとを反応させる。
アミン末端プレポリマーの溶液と酸末端オリゴマーの溶液とを混合してポリアミド酸溶液を調製する方法は、具体的には、(1)有機溶媒中でジアミンと酸二無水物を反応させてアミン末端のポリアミド酸(プレポリマー)を合成する工程;(2)有機溶媒中でジアミンと酸二無水物を反応させて酸無水物末端のポリアミド酸(オリゴマー)を合成する工程;および(3)工程(1)で得られたアミン末端プレポリマーの溶液と、工程(2)で得られた酸無水物末端オリゴマーの溶液とを混合して、プレポリマーとオリゴマーとを反応させる工程、を有する。
工程(1):プレポリマーの調製においては、ジアミンの仕込み量を酸二無水物の仕込み量よりも多くすることにより、アミン末端のポリアミド酸(プレポリマー)が得られる。すなわち、プレポリマーの調製において、酸二無水物の仕込み量は、ジアミンの仕込み量に対して、モル比で1よりも小さい。酸二無水物の仕込み量/ジアミンの仕込み量は、モル比で0.90〜0.99倍が好ましく、0.93〜0.98倍がより好ましい。プレポリマー溶液の調製において、酸二無水物およびジアミンは、溶媒中に一度に添加してもよく、複数回に分けて添加してもよい。特定の酸二無水物とジアミンを先に反応させて所定の構造単位が連続しているブロックを形成した後、残部の酸二無水物およびジアミンを添加してもよい。
工程(2):オリゴマーの調製においては、ジアミンに対して過剰量の酸二無水物を反応させることにより、酸無水物末端のポリアミド酸(オリゴマー)が得られる。すなわち、オリゴマー溶液の調製において、酸二無水物の仕込み量は、ジアミンの仕込み量に対して、モル比で1よりも大きい。酸二無水物の仕込み量/ジアミンの仕込み量は、モル比で1.1倍以上が好ましく、1.3倍以上がより好ましく、1.5倍以上がさらに好ましい。酸二無水物の仕込み量は、ジアミンの仕込み量に対して2倍以上であってもよいが、モル比が2倍を超えると未反応の酸二無水物が残存しやすい。そのため、オリゴマーの調製における酸二無水物の仕込み量は、ジアミンの仕込み量に対して、モル比で2.1倍以下が好ましく、2倍以下がより好ましい。
プレポリマー溶液に酸二無水物を添加する方法では、プレポリマー溶液の粘度が反応開始前のモノマーの溶液に比べて粘度が高い。そのため、上記のように、プレポリマー溶液に固体の酸二無水物を添加すると、溶解までに長時間を要する場合や、酸二無水物の一部が未溶解で残存する場合がある。一方、工程(2)では、反応系の粘度がプレポリマー溶液の粘度に比べて低いため、固体の酸二無水物を添加した場合でも、プレポリマー溶液に固体の酸二無水物を添加する場合に比べて、短時間で酸二無水物が溶解する。
工程(3)において、アミン末端プレポリマーの溶液と酸無水物末端オリゴマーの溶液とを混合することにより、プレポリマーとオリゴマーとの反応が進む。プレポリマー溶液に固体の酸二無水物を添加する方法では、酸二無水物の溶解に時間を要するのに対して、プレポリマー溶液とオリゴマー溶液を混合する方法では、混合後短時間で系が均一となるため、反応に伴う分子量の増大(粘度の増大)までの時間を短縮できる。短時間で分子量を増大させるためには、相対的に高分子量のアミン末端プレポリマーと、相対的に低分子量の酸無水物末端オリゴマーとを反応させる方法が好ましい。
プレポリマーの調製およびオリゴマーの調製において、酸二無水物とジアミンの仕込み量のモル比が1に近いほど(仕込み量が等モルに近いほど)、分子量が大きくなる傾向がある。プレポリマーの調製における酸二無水物の仕込み量/ジアミンの仕込み量のモル比Mと、オリゴマーの調製における酸二無水物の仕込み量/ジアミンの仕込み量のモル比Mとの積M×Mが1よりも大きい場合に、プレポリマーの分子量が、相対的に大きくなる傾向がある。M×Mは、1.05〜2.10の範囲内であることが好ましく、1.07〜2.05の範囲内であることがより好ましい。M×Mは、1.1以上、1.3以上、または1.5以上であってもよい。M×Mは、2.00以下または1.98以下であってもよい。
工程(3)では、プレポリマーの溶液に対して、相対的に少量のオリゴマーを混合することが好ましい。工程(3)で混合するオリゴマーに含まれる酸二無水物成分の量は、酸二無水物成分の総量(プレポリマーにおける酸二無水物成分の量とオリゴマーにおける酸二無水物成分の量との合計)に対して、モル比で0.001〜0.25倍が好ましく、0.003〜0.2倍がより好ましく、0.005〜0.18倍がさらに好ましい。オリゴマーに含まれる酸二無水物成分の量は、酸二無水物成分の総量に対して、モル比で、0.008倍以上、0.01倍以上、0.015倍以上または0.02倍以上であってもよく、0.15倍以下、0.12倍以下、0.1倍以下または0.08倍以下であってもよい。
オリゴマーの量が過度に少ない場合は、プレポリマーの末端のアミノ基と反応可能な官能基(酸二無水物基)が少ないため、分子量が十分に上昇しない。一方、オリゴマーの量が過度に多い場合は、末端の酸無水物基の量が相対的に多く、末端の酸無水物基の開環等に起因して、分子量が十分に上昇しない場合がある。
酸二無水物成分の総量に対するオリゴマーに含まれる酸二無水物成分の量を上記範囲に調整するためには、オリゴマーの調製(工程(2))における酸二無水物の仕込み量が、酸二無水物の全量(プレポリマーの調製における酸二無水物の仕込み量とオリゴマーの調製における酸二無水物の仕込み量の合計)に対して、上記範囲となるように、各工程におけるモノマーの仕込み量を調整し、工程(1)で調製したプレポリマーの全量と、工程(2)で調製したオリゴマーの全量とを混合すればよい。または、工程(1)で調製したプレポリマーと工程(2)で調製したオリゴマーの混合比を調整することにより、酸二無水物成分の総量に対するオリゴマーに含まれる酸二無水物成分の量を調整してもよい。
酸二無水物成分の総量(プレポリマーにおける酸二無水物成分の量とオリゴマーにおける酸二無水物成分の量との合計)は、ジアミン成分の総量(プレポリマーにおけるジアミン成分の量とオリゴマーにおけるジアミン成分の量との合計)に対して、モル比で0.95〜1.05倍が好ましく、0.97〜1.03倍がより好ましく、0.98〜1.02倍がさらに好ましい。一方、酸二無水物の総量とジアミンの総量とが等モルであると、分子量が過度に大きくなり、分子量や溶液粘度の制御が困難となる場合がある。そのため、酸二無水物成分の総量は、ジアミンの総量に対して、モル比で0.999以下または1.001以上が好ましい。酸二無水物成分の総量は、ジアミンの総量に対して、モル比で、1未満、0.999以下、0.997以下、0.995以下、0.992以下、または0.990以下であってもよい。酸二無水物の総量がジアミンの総量よりも少ない場合に、ポリアミド酸の分子量の低下(溶液粘度の低下)が抑制される傾向がある。
アミン末端のプレポリマーと酸無水物末端のオリゴマーとを反応させる方法は、あらゆる組成のポリアミド酸の調製に適用可能である。この方法では、酸二無水物をジアミンと反応させたオリゴマーの溶液を調製し、プレポリマーと混合するため、固体の酸二無水物をプレポリマーに添加する場合のように、後重合において酸二無水物を溶解させるために長時間を要することがなく、ポリアミド酸溶液の調製に要する時間を短縮できる。また、オリゴマー溶液を用いることにより、不溶の酸二無水物に起因する分子量の低下や予期せぬ粘度変化を抑制できる。
アミン末端のプレポリマーと酸無水物末端のオリゴマーとを反応させる方法は、重合溶媒に対する溶解性の低い酸二無水物を用いてポリアミド酸を合成する場合に、特に有用である。オリゴマー調製用のモノマーに、溶解性の低い酸二無水物を用いることにより、プレポリマー溶液における酸二無水物の溶け残りも抑制されるため、生産効率ならびに溶液および樹脂の特性の安定性を向上できる。
重合溶媒に対する溶解性の低い酸二無水物としては、具体的には、ジメチルホルムアミド等の重合溶媒に対する23℃における飽和溶解度が15重量%以下である酸二無水物が挙げられる。特に、重合溶媒に対する23℃における飽和溶解度が5重量%以下である酸二無水物を用いる場合に、上記の方法が、未溶解の酸二無水物に起因する特性変動の防止や、反応時間短縮への寄与が大きい。
<酸二無水物の具体例>
23℃においてジメチルホルムアミドに対する飽和溶解度が5重量%以下である酸二無水物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)等のビフェニル骨格含有テトラカルボン酸二無水物;ビス無水トリメリット酸エステル;ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物(hBPDA)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等の脂環式テトラカルボン酸二無水物;5,5’−1,4−フェニレンビス(ヘキサハイドロー4,7−メタノイソベンゾフランー1,3−ジオン)、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
23℃においてジメチルホルムアミドに対する飽和溶解度が5重量%より大きく15重量%以下である酸二無水物としては、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
上記のビス無水トリメリット酸エステルは、無水トリメリット酸とジオールとのエステルであり、ジオールとしては芳香族ジオールが好ましい。芳香族ジオールとしては、ヒドロキノン類、ビフェノール類、ビスフェノール類等が挙げられる。ビス無水トリメリット酸芳香族エステルとしては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2021024930
一般式(1)において、nは1以上の整数であり、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素原子数1〜20のパーフルオロアルキル基である。nは1以上の整数である。nが2以上の場合、それぞれのベンゼン環に結合している置換基R〜Rは、同一でもよく、異なっていてもよい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。パーフルオロアルキル基の具体例としては、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
一般式(1)において、nは1または2が好ましく、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基であることが好ましい。一般式(1)においてn=2である酸二無水物、すなわちビフェニル骨格を有するビス無水トリメリット酸エステルの具体例としては、p−ビフェニレンビス(トリメリット酸二無水物)(略称:BP−TME)、3,3'−ジメチル−ビフェニレンビス(トリメリット酸二無水物)(略称:OCBP−TME)、および下記の式(2)で表されるビス(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボン酸)−2,2',3,3',5,5'−ヘキサメチルビフェニル−4,4’ジイル(別名2,2',3,3',5,5'−ヘキサメチル−ビフェニレンビス(トリメリット酸二無水物)(略称:TAHMBP))が挙げられる。一般式(1)においてn=1である酸二無水物の具体例としては、好ましい例としては、下記の式(3)で表されるp−フェニレンビス(トリメリット酸無水物)(TMHQ)が挙げられる。
Figure 2021024930
Figure 2021024930
酸二無水物として、これらのビス無水トリメリット酸エステルを含むポリイミドは、ジクロロメタン等の低沸点ハロゲン化アルキルに対して高い溶解性を示し、かつ、ポリイミドフィルムが高い透明性および機械強度を示す傾向がある。
上記の酸二無水物は、一部をオリゴマー調製用の酸二無水物として用い、残部をプレポリマー調製用の酸二無水物として用いてもよい。また、2種以上の酸二無水物を、オリゴマーの調製に用いてもよい。
ポリアミド酸の原料モノマーとして、上記以外の酸二無水物を用いてもよい。透明性および有機溶媒に対する溶解性の高いポリイミドを得る観点から、酸二無水物として、フッ素含有芳香族酸二無水物を用いることが好ましい。フッ素含有芳香族酸二無水物は、プレポリマーの調製およびオリゴマーの調製のいずれか一方の原料として用いてもよく、両方の原料として用いてもよい。
ポリイミドの透明性および有機溶媒への溶解性を高める観点から、酸二無水物成分の総量に対するフッ素含有芳香族酸二無水物の割合は、30mol%以上が好ましい。フッ素含有芳香族酸二無水物の比率を高める観点から、少なくとも、プレポリマーの調製用の酸二無水物には、フッ素含有芳香族酸二無水物が含まれていることが好ましい。
フッ素含有芳香族酸二無水物の例としては、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物等が挙げられる。中でも2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン酸二無水物(以下「6FDA」と記載)が好ましい。
<ジアミンの具体例>
一般に、ジアミンは、酸二無水物に比べて重合溶媒に対する溶解性が高いため、添加の順序や比率等は特に限定されない。プレポリマーの調製に用いられるジアミンと、オリゴマーの調製に用いられるジアミンは、同一でもよく異なっていてもよい。プレポリマーの調製およびオリゴマーの調製には、2種以上のジアミンを用いてもよい。
透明性および有機溶媒に対する溶解性の高いポリイミドを得る観点から、ジアミンとして、フッ素含有芳香族ジアミンを用いることが好ましい。フッ素含有ジアミンは、プレポリマーの調製およびオリゴマーの調製のいずれか一方の原料として用いてもよく、両方の原料として用いてもよい。
ポリイミドの透明性および有機溶媒への溶解性を高める観点から、ジアミン成分の総量に対するフッ素含有芳香族ジアミンの割合は、30mol%以上が好ましい。フッ素含有芳香族ジアミンの比率を高める観点から、少なくとも、プレポリマーの調製用のジアミンには、フッ素含有芳香族ジアミンが含まれていることが好ましい。
フッ素含有芳香族ジアミンの好ましい例として、4,4’ジアミノビフェニル(ベンジジン)のビフェニルの水素原子の一部または全部をフルオロアルキル基で置換したフルオロアルキル置換ベンジジン、およびベンジジンのビフェニルの水素原子の一部または全部をフッ素原子で置換したフッ素置換ベンジジンが挙げられる。これらのフッ素含有芳香族ジアミンの具体例としては、2−フルオロベンジジン、3−フルオロベンジジン、2,3−ジフルオロベンジジン、2,5−ジフルオロベンジジン、2、6−ジフルオロベンジジン、2,3,5−トリフルオロベンジジン、2,3,6−トリフルオロベンジジン、2,3,5,6−テトラフルオロベンジジン、2,2’−ジフルオロベンジジン、3,3’−ジフルオロベンジジン、2,3’−ジフルオロベンジジン、2,2’,3−トリフルオロベンジジン、2,3,3’−トリフルオロベンジジン、2,2’,5−トリフルオロベンジジン、2,2’,6−トリフルオロベンジジン、2,3’,5−トリフルオロベンジジン、2,3’,6,−トリフルオロベンジジン、2,2’,3,3’−テトラフルオロベンジジン、2,2’,5,5’−テトラフルオロベンジジン、2,2’,6,6’−テトラフルオロベンジジン、2,2’,3,3’,6,6’−ヘキサフルオロベンジジン、2,2’,3,3’,5,5’、6,6’−オクタフルオロベンジジン、2−(トリフルオロメチル)ベンジジン、3−(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2、6−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,5−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,6−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,5,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,3’−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,5−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,6−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3’,5−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3’,6,−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,3,3’−テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,5,5’−テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン等が挙げられる。
中でも、ビフェニルの2位にフルオロアルキル基を有するフルオロアルキル置換ベンジジンが好ましく、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(以下「TFMB」と記載)が特に好ましい。ビフェニルの2位および2’位にフルオロアルキル基を有することにより、フルオロアルキル基の電子求引性によるπ電子密度の低下に加えて、フルオロアルキル基の立体障害によって、ビフェニルの2つのベンゼン環の間の結合がねじれてπ共役の平面性が低下するため、吸収端波長が短波長シフトして、ポリイミドの着色を低減できる。
ポリアミド酸の原料モノマーとして、上記以外のジアミンを用いてもよい。例えば、ジアミンとして、フルオロアルキル置換ベンジジンに加えて、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(以下「3,3’−DDS」と記載)または4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(以下「4,4’−DDS」と記載)を用いることにより、ポリイミド樹脂の溶媒への溶解性や透明性が向上する場合がある。
<重合溶媒>
ポリアミド酸の重合溶媒としては、原料としてのジアミンおよび酸二無水物、ならびに重合生成物であるプレポリマー、オリゴマーおよびポリアミド酸を溶解可能な有機溶媒を特に限定なく使用できる。ポリアミド酸の重合に用いる有機溶媒の具体例としては、メチル尿素、N,N−ジメチルエチルウレア等のウレア系溶媒;ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、テトラメチルスルホン等のスルホン系溶媒;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系溶媒;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、p−クレゾールメチルエーテル等のエーテル系溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、重合反応性およびポリアミド酸の溶解性に優れることから、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、またはN−メチルピロリドンが好ましく用いられる。
<反応条件>
プレポリマー溶液の調製およびオリゴマー溶液の調製における固形分濃度(反応溶液におけるジアミンおよび酸二無水物の仕込み濃度)は、通常5〜40重量%程度であり、10〜30重量%が好ましい。また、ポリアミド酸溶液における固形分濃度も同様である。プレポリマー溶液の固形分濃度とオリゴマー溶液の固形分濃度は、同一でもよく異なっていてもよい。プレポリマー溶液とオリゴマーの溶液を混合した際の濃度変化を避けるためには、両者の固形分濃度が同一または略同一であることが好ましい。オリゴマー溶液の固形分濃度/プレポリマー溶液の固形分濃度の比は、0.7〜1.3が好ましく、0.8〜1.2がより好ましく、0.9〜1.1がさらに好ましい。オリゴマー溶液の固形分濃度/プレポリマー溶液の固形分濃度の比は、0.93〜1.07、0.95〜1.05、または0.97〜1.03であってもよい。プレポリマーおよびオリゴマーを調製(重合)した後、両者を混合する前に、溶媒を添加して固形分濃度を調整してもよい。
反応温度は特に限定されないが、0℃以上80℃以下が好ましく、20℃以上45℃以下がより好ましい。0℃以上とすることにより反応速度の低下を抑制でき、比較的短時間で重合反応を実施できる。また80℃以下とすることにより、酸二無水物成分の開環による反応性の低下や、分子量の低下を抑制できる。反応系には、触媒等を添加してもよい。例えば、反応溶液に酢酸等の脂肪族カルボン酸を添加することにより、重合速度が大きくなる場合がある。
反応後のプレポリマー溶液の23℃における粘度は、例えば、0.1〜50ポイズ程度であり、5〜30ポイズが好ましく、10〜25ポイズがより好ましい。反応後のオリゴマー溶液の23℃における粘度は、例えば、0.1〜100ポイズ程度であり、0.1〜30ポイズが好ましく、0.1〜10ポイズがより好ましい。
プレポリマーの重量平均分子量は、例えば5,000〜100,000程度であり、10,000〜80,000が好ましく、30,000〜70,000がより好ましい。オリゴマーの重量平均分子量は、例えば、1,000〜50,000程度である。オリゴマーの分子量は、30,000以下、20,000以下、10,000以下、7,000以下、5,000以下または3,000以下であってもよい。プレポリマーの重量平均分子量は、オリゴマーの重量平均分子量の5〜100倍程度が好ましい。
プレポリマー溶液とオリゴマーの溶液混合方法は特に限定されない。プレポリマー溶液の方が容量が大きいことから、プレポリマー溶液にオリゴマー溶液を添加する方法が好ましい。プレポリマーとオリゴマーを混合するタイミングは特に限定されない。分子量の大きいポリアミド酸を得るためには、プレポリマーの重合反応が十分に進行した後に(溶液粘度が十分に上昇した後に)、オリゴマーと混合することが好ましい。プレポリマーとオリゴマーとの混合は、複数回に分けて実施してもよい。例えば、プレポリマーの重合段階(粘度が十分に上昇する前の段階)でオリゴマーを添加して、さらに重合反応を進め、粘度が十分に上昇した後に、さらにオリゴマーを添加してもよい。オリゴマーを複数回に分けて添加する場合、それぞれのオリゴマーの組成は同一でも異なっていてもよい。
プレポリマーとオリゴマーとを混合後の反応時間は特に限定されず、粘度が十分に上昇するまで反応を実施することが好ましい。上記のように、プレポリマー溶液とオリゴマー溶液を混合する方法は、酸二無水物の溶解に長時間を要することがないため、短時間で反応が進行し、粘度が上昇する傾向がある。反応後のポリアミド酸溶液の粘度は、例えば10〜10,000ポイズ程度であり、20〜5,000ポイズが好ましく、30〜3,000ポイズがより好ましい。ポリアミド酸の重量平均分子量は、例えば5,000〜180000程度であり、30,000〜150,000が好ましく、50,000〜130,000がより好ましい。
<ポリアミド酸およびポリイミドの組成の例>
前述のように、ポリアミド酸の組成は特に限定されず、ポリアミド酸のイミド化により得られるポリイミドの組成は特に限定されない。ポリアミド酸およびポリイミドの組成の一例として、上記一般式(1)で表される酸二無水物(ビス無水トリメリット酸エステル)およびフッ素含有芳香族酸二無水物を含み、ジアミン成分として、TFMB等のフルオロアルキル置換ベンジジンを含むものが挙げられる。当該組成を有するポリイミドは、ジクロロメタン等の低沸点ハロゲン化アルキルに対して高い溶解性を示し、かつ、ポリイミドフィルムが高い透明性および機械強度を示す傾向がある。
酸二無水物成分の全量100mol%のうち、一般式(1)で表される酸二無水物の量は、10〜65mol%が好ましく、15〜60mol%が好ましく、20〜50mol%がより好ましい。一般式(1)で表される酸二無水物の中でも、TAHMBPおよびTMHQが好ましく、TAHMBPとTMHQの合計量が上記範囲であることが好ましい。
一般式(1)で表される酸二無水物の含有量が10mol%以上であれば、ポリイミドフィルムの鉛筆硬度や弾性率が高くなる傾向があり、一般式(1)で表される酸二無水物の含有量が65mol%以下であれば、ポリイミドフィルムの透明性が高くなる傾向がある。また、一般式(1)で表される酸二無水物の含有量が65mol%以下であれば、ポリアミド酸の重合反応や溶液でのイミド化反応の際に、著しい増粘やゲル化等を抑制できる。
酸二無水物成分の全量100mol%のうち、フッ素含有芳香族酸二無水物の含有量は、30〜80mol%が好ましく、35〜75mol%がより好ましく、45〜75mol%がさらに好ましい。フッ素含有芳香族酸二無水物の含有量が30mol%以上であれば、ポリイミドフィルムの透明性が高くなる傾向があり、80mol%以下であれば、ポリイミドフィルムの鉛筆硬度や弾性率が高くなる傾向がある。
ポリアミド酸およびポリイミドは、ビフェニル構造を有する酸二無水物成分を含んでいてもよい。酸二無水物成分がビフェニル構造を有することにより、ポリイミドフィルムの耐紫外線特性が高められ、紫外線照射に伴う透明性の低下(黄色度YIの増加)が抑制される傾向がある。
ポリイミドフィルムの耐紫外線性を向上する観点から、ビフェニル構造を有する酸二無水物の含有量は、酸二無水物成分全量100mol%に対して、10mol%以上が好ましく、15mol%以上がより好ましく、20mol%以上がさらに好ましい。透明性と耐紫外線性とを両立し、さらに、優れた機械強度、およびジクロロメタン等の低沸点溶媒に対する溶解性を持たせる観点から、ビフェニル構造を有する酸二無水物、一般式(1)で表される酸二無水物、およびフッ素含有芳香族酸二無水物の含有量の合計は、酸二無水物成分全量100mol%に対して、80mol%以上が好ましく、85mol%以上がより好ましく、90mol%以上がさらに好ましく、95mol%以上がさらに好ましい。
ビフェニル構造を有する酸二無水物としては、例えば、TAHMBP等の一般式(1)においてn=2である化合物が挙げられる。TAHMBPは、一般式(1)で表される酸二無水物であり、かつビフェニル構造を有する酸二無水物に該当する。
さらに、TMHQ等の一般式(1)においてnが2以外である酸二無水物(すなわち、ビフェニル構造を有さない化合物)を併用してもよい。また、ビフェニル構造を有する酸二無水物として、TAHMBP等の一般式(1)で表される酸二無水物に加えて、BPDA等を併用してもよい。
ビフェニル構造を有する酸二無水物として、一般式(1)で表される酸二無水物以外の化合物を用いてもよい。例えば、ポリアミド酸およびポリイミドは、ビフェニル構造を有する酸二無水物成分としてBPDAを含み、一般式(1)で表される酸二無水物成分としてTMHQを含み、フッ素含有芳香族酸二無水物として6FDAを含んでいてもよい。
ジアミン成分の全量100mol%のうち、フルオロアルキル置換ベンジジンの量は、40〜100mol%が好ましく、60〜80mol%がより好ましい。ジアミン成分の全量100mol%に対して60mol%以下の3,3’−DDSおよび/または4,4’−DDSを含んでいてもよい。ジアミン成分として3,3’−DDSを含む場合、3,3’−DDSの含有量は20〜40mol%が好ましい。
上記の酸二無水物およびジアミンの組合せを用い、それぞれの酸二無水物成分およびジアミン成分の量を上記範囲とすることにより、ジクロロメタン等の低沸点溶媒への溶解性が高く、残存溶媒量の低減が容易であり、かつ、透明性および機械強度に優れるポリイミドが得られる。
上記の組成を有するポリアミド酸は、酸二無水物モノマーとして用いられるビス無水トリメリット酸エステルやBPDAは重合溶媒に対する溶解性が低いが、これらの酸二無水物をジアミンと予め反応させたオリゴマー溶液としてプレポリマーに添加することにより、ポリアミド酸溶液の調製に要する時間を短縮できる。
[ポリイミド樹脂]
ポリアミド酸を脱水環化(イミド化)することによりポリイミドが得られる。イミド化の方法は特に限定されず、化学イミド化および熱イミド化のいずれでもよい。ポリアミド酸溶液を基材上に膜状に塗布した後にイミド化を行って、ポリイミドフィルムを作製することもできる。
溶液でイミド化を行う場合は、ポリアミド酸溶液に脱水剤およびイミド化触媒等を添加する化学イミド化法が適している。溶液での化学イミド化を実施することにより、ポリイミド溶液が得られる。イミド化の進行を促進するため、ポリアミド酸溶液を加熱してもよい。ポリイミド溶液とポリイミドの貧溶媒とを混合して、ポリイミド樹脂を析出させ、固液分離することによりポリイミド樹脂が得られる。
イミド化触媒としては、第三級アミンが用いられる。第三級アミンとしては複素環式の第三級アミンが好ましい。複素環式の第三級アミンの具体例としては、ピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリン等が挙げられる。脱水剤としてはカルボン酸無水物が用いられ、具体的には無水酢酸、プロピオン酸無水物、n−酪酸無水物、安息香酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物等が挙げられる。イミド化触媒の添加量は、ポリアミド酸のアミド基に対して、0.5〜5.0倍モル当量が好ましく、0.7〜2.5倍モル当量がより好ましく、0.8〜2.0倍モル当量がさらに好ましい。脱水剤の添加量は、ポリアミド酸のアミド基に対して、0.5〜10.0倍モル当量が好ましく、0.7〜5.0倍モル当量がより好ましく、0.8〜3.0倍モル当量がさらに好ましい。
ポリアミド酸のイミド化により得られたポリイミド溶液は、そのまま、ポリイミドフィルム作製用のポリイミド溶液(製膜用ドープ)として用いることもできるが、一旦、ポリイミド樹脂を固形物として析出させることが好ましい。ポリイミド樹脂を固形物として析出させることにより、ポリアミド酸の重合時に発生した不純物や残存モノマー成分、ならびに脱水剤およびイミド化触媒等を、洗浄・除去できる。そのため、透明性や機械特性に優れたポリイミドフィルムが得られる。
ポリイミド溶液と貧溶媒とを混合することにより、ポリイミド樹脂が析出する。貧溶媒は、ポリイミド樹脂の貧溶媒であって、ポリイミド樹脂を溶解している溶媒と混和するものが好ましく、水、アルコール類等が挙げられる。アルコール類としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、2−ブチルアルコール、2−ヘキシルアルコール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、フェノール、t−ブチルアルコール等が挙げられる。ポリイミドの開環等が生じ難いことから、イソプロピルアルコール、2−ブチルアルコール、2−ペンチルアルコール、フェノール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコールが好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。
[ポリイミドフィルム]
ポリイミド樹脂を有機溶媒に溶解したポリイミド溶液(製膜用ドープ)を、基材上に塗布し、溶媒を乾燥除去させることによりポリイミドフィルムを製造できる。
ポリイミド樹脂を溶解させる有機溶媒としては、上記のポリイミド樹脂を溶解可溶なものであれば特に限定されない。溶媒の乾燥除去が容易であり、ポリイミドフィルムの残存溶媒量を低減可能であることから、ジクロロメタン、酢酸メチル、テトラヒドロフラン、アセトン、および1,3−ジオキソラン等の低沸点溶媒が好ましく、中でもジクロロメタンが特に好ましい。前述のように、酸二無水物成分およびジアミン成分の組成比を所定範囲とすることにより、ジクロロメタン等の低沸点溶媒に対しても高い溶解性を示すポリイミドが得られる。
ポリイミド溶液の固形分濃度は、ポリイミドの分子量、フィルムの厚みや製膜環境等に応じて適宜設定すればよい。固形分濃度は、5〜30重量%が好ましく、8〜20重量%がより好ましい。
ポリイミド溶液は、ポリイミド以外の樹脂成分や添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、紫外線吸収剤、架橋剤、染料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子等が挙げられる。前述のように、ポリイミド樹脂が酸二無水物成分としてビフェニル構造を有する酸二無水物を含む場合は、紫外線吸収剤を用いない場合であっても、優れた耐光性(紫外線耐久性)を有するポリイミドフィルムが得られる。ポリイミド溶液(製膜ドープ)の固形分100重量部に対するポリイミド樹脂の含有量は、60重量部以上が好ましく、70重量部以上がより好ましく、80重量部以上がさらに好ましい。
ポリイミド溶液を基材に塗布する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、バーコーターやコンマコーターにより塗布することができる。ポリイミド溶液を塗布する基材としては、ガラス基板、SUS等の金属基板、金属ドラム、金属ベルト、プラスチックフィルム等を使用できる。生産性向上の観点から、支持体として、金属ドラム、金属ベルト等の無端支持体、または長尺プラスチックフィルム等を用い、ロールトゥーロールによりフィルムを製造することが好ましい。プラスチックフィルムを支持体として使用する場合、製膜ドープの溶媒に溶解しない材料を適宜選択すればよく、プラスチック材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリエチレンナフタレート等が用いられる。
溶媒の乾燥時には加熱を行うことが好ましい。加熱温度は、特に限定されないが、着色を抑制する観点から、200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましい。溶媒の乾燥時には、段階的に加熱温度を上昇させてもよい。減圧下で溶媒の乾燥を行ってもよい。
ポリイミドフィルムの残存溶媒量(フィルムの質量に対するフィルムに含まれる溶媒の質量)は、1.5%以下が好ましく、1.0%以下がより好ましい。残存溶媒量がこの範囲であれば、ポリイミドフィルムの機械強度が向上する傾向がある。ジクロロメタン等の低沸点溶媒を用いることにより、低温(例えば、200℃以下)の乾燥でも、ポリイミドフィルムの残存溶媒量を容易に低減できる。
ポリイミドフィルムの厚みは特に限定されず、用途に応じて適宜設定すればよい。ポリイミドフィルムの厚みは、例えば5〜100μm程度である。ディスプレイのカバーウィンドウ材料等の耐衝撃性が要求される用途においては、ポリイミドフィルムの厚みは、30μm以上が好ましく、35μm以上がより好ましく、40μm以上がさらに好ましい。優れた透明性を維持する観点から、ポリイミドフィルムの厚みは、90μm以下が好ましく、85μm以下がより好ましい。
ポリイミドフィルムの黄色度(YI)は、3.0以下が好ましく2.5以下がより好ましい。黄色度が3.0以下の場合、フィルムが黄色に着色することなく、ディスプレイ用等のフィルムとして好適に使用できる。
ポリイミドフィルムの全光線透過率は、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。またポリイミドフィルムの波長400nmにおける光透過率は、40%以上が好ましい。
ポリイミドフィルムの引張弾性率は、3.0GPa以上が好ましく、3.5GPa以上がより好ましい。ロールトゥーロール搬送時のロールとの接触や、巻取時のフィルム同士の接触によるフィルムの傷付きを防止する観点から、ポリイミドフィルムの鉛筆硬度はHB以上が好ましく、F以上がより好ましい。ポリイミドフィルムがディスプレイのカバーウィンドウ等に用いられる場合は、外部からの接触に対する耐擦傷性が求められるため、ポリイミドフィルムの鉛筆硬度はH以上が好ましい。
可視光の透明性が高いポリイミドフィルムは、ディスプレイ材料として好適に用いられる。特に、機械的強度が高いポリイミドフィルムは、ディスプレイのカバーウィンドウ等の表面部材への適用が可能である。ポリイミドフィルムは、実用に際して、表面に帯電防止層、易接着層、ハードコート層、反射防止層等を設けてもよい。
以下、実施例および比較例に基づき、本発明について具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例、比較例、および参考例における各モノマーの略称は下記のとおりである。
TMHQ:p−フェニレンビス(トリメリット酸無水物)
TAHMBP:ビス(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボン酸)−2,2',3,3',5,5'−ヘキサメチルビフェニル−4,4’ジイル
6FDA:2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン酸二無水物
BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
CBDA:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
TFMB:2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン
3,3’−DDS:3,3’−ジアミノジフェニルスルホン
[実施例1]
(プレポリマー溶液の調製)
セパラブルフラスコに、TFMB:11.057g(34.5mmol)、3,3’−DDS:3.785g(15.2mmol)、およびDMF:132gを投入し、窒素雰囲気下で攪拌してジアミン溶液を得た。そこに、6FDA:11.279g(25.4mmol)、BPDA:3.785g(12.7mmol)、およびTMHQ:4.892g(10.7mmol)を加え、12時間攪拌した。
(オリゴマー溶液の調製)
別のフラスコに、DMF:2.02g、TFMB:0.113g(0.354mmol)、およびTMHQ:0.328g(0.714mmol)を投入し、1時間撹拌して均一溶液とした。
(プレポリマーとオリゴマーとの反応によるポリアミド酸溶液の調製)
プレポリマー溶液にオリゴマー溶液を添加して撹拌すると、プレポリマーとオリゴマーとの反応が進行し、分子量の上昇に伴って溶液の粘度が上昇した、粘度の上昇が飽和するまで2時間を要した。
(イミド化およびポリイミド樹脂の単離)
上記のポリアミド酸溶液に、DMF:29.5g、ピリジン:12.1g(152mmol)、および無水酢酸:15.6g(152mmol)を添加し、80℃で4時間攪拌してイミド化を行った。室温まで冷却した溶液を攪拌しながら、156gの2−プロピルアルコール(以下「IPA」と記載)と28gのDMFとを混合した溶液を、2〜3滴/秒の速度で滴下し、ポリイミドを析出させた。さらに300gのIPAを添加し、30分程度撹拌後、桐山ロートを使用して吸引ろ過を行った。得られた固体を100gのIPAで洗浄した。洗浄作業を6回繰り返した後、120℃に設定した真空オーブンで8時間乾燥させて、ポリイミド樹脂を得た。
[比較例1]
セパラブルフラスコに、DMF:584.1g、TFMB:48.884g(152.7mmol)、および3,3’−DDS:16.250g(65.4mmol)を投入し、窒素雰囲気下で攪拌してジアミン溶液を得た。そこに、6FDA:48.452g(109.1mmol)、BPDA:16.05g(54.5mmol)、およびTMHQ:22.995g(50.2mmol)を加え、12時間攪拌した。その後、TMHQ:0.501g(1.10mmol)を加えて撹拌したところ、TMHQが溶解し、粘度の上昇が飽和するまでに10時間を要した。
上記のポリアミド酸溶液に、DMF:135.8g、ピリジン:51.8(654mmol)、および無水酢酸:66.8g(654mmol)を添加し、80℃で4時間攪拌してイミド化を行った後、室温まで冷却した。その後、実施例1と同様にして、IPAとDMFの混合液によるポリイミド樹脂の析出、IPAによる洗浄および真空乾燥を行い、ポリイミド樹脂を得た。
[実施例2]
(プレポリマー溶液の調製)
セパラブルフラスコに、DMF:75.8g、TFMB:6.191g(19.3mmol)、および3,3’−DDS:2.633g(10.6mmol)、を投入し、窒素雰囲気下で攪拌してジアミン溶液を得た。そこに、6FDA:6.516g(14.67mmol)、BPDA:2.158g(7.34mmol)、およびTMHQ:3.262g(7.33mmol)を加え、12時間攪拌した。
(オリゴマー溶液の調製)
別のフラスコに、DMF:8.19g、TFMB:0.571g(1.78mmol)、およびTAHMBP:1.224g(1.98mmol)を投入し、1時間撹拌して均一溶液とした。
(プレポリマーとオリゴマーとの反応によるポリアミド酸溶液の調製)
プレポリマー溶液にオリゴマー溶液を添加して撹拌すると、プレポリマーとオリゴマーとの反応が進行し、分子量の上昇に伴って溶液の粘度が上昇した、粘度の上昇が飽和するまで2時間を要した。
(イミド化およびポリイミド樹脂の単離)
上記のポリアミド酸溶液に、DMF:21.6g、ピリジン:8.4g(106mmol)、および無水酢酸:10.8g(106mmol)を添加し、90℃で3時間攪拌してイミド化を行った後、室温まで冷却した。その後、実施例1と同様にして、IPAとDMFの混合液によるポリイミド樹脂の析出、IPAによる洗浄および真空乾燥を行い、ポリイミド樹脂を得た。
[比較例2]
セパラブルフラスコに、DMF:102.1g、TFMB:8.496g(26.5mmol)、および3,3’−DDS:2.823g(11.4mmol)を投入し、窒素雰囲気下で攪拌してジアミン溶液を得た。そこに、6FDA8.082(18.2mmol)、BPDA2.788g(9.50mmol)、およびTMHQ4.343g(9.50mmol)を加え、12時間攪拌した。その後、TAHMBP:0.211g(0.34mmol)を加えて撹拌したが、72時間撹拌後も未溶のTAHMBPが粉体として残留していた。
[実施例3]
(プレポリマー溶液の調製)
セパラブルフラスコに、DMF:86.1g、TFMB:6.673g(20.8mmol)、および3,3’−DDS:2.838g(11.4mmol)を投入し、窒素雰囲気下で攪拌してジアミン溶液を得た。そこに、6FDA:8.461g(19.0mmol)、BPDA:0.897g(3.05mmol)、およびTMHQ:4.365g(9.52mmol)を加え、12時間攪拌した。
(オリゴマー溶液の調製)
別のフラスコに、DMF:9.27g、TFMB:1.014g(3.17mmol)、およびBPDA:1.020g(3.47mmol)を投入し、1時間撹拌して均一溶液とした。
(プレポリマーとオリゴマーとの反応によるポリアミド酸溶液の調製)
プレポリマー溶液にオリゴマー溶液を添加して撹拌すると、プレポリマーとオリゴマーとの反応が進行し、分子量の上昇に伴って溶液の粘度が上昇した、粘度の上昇が飽和するまで2時間を要した。
(イミド化およびポリイミド樹脂の単離)
上記のポリアミド溶液に、DMF:22.2g、ピリジン:9.0g(114mmol)、および無水酢酸:11.7g(114mmol)を添加し、90℃で3時間攪拌してイミド化を行った後、室温まで冷却した。その後、実施例1と同様にして、IPAとDMFの混合液によるポリイミド樹脂の析出、IPAによる洗浄および真空乾燥を行い、ポリイミド樹脂を得た。
[比較例3]
セパラブルフラスコに、DMF:102.8g、TFMB:8.574g(26.8mmol)、および3,3’−DDS:2.849g(11.5mmol)を投入し、窒素雰囲気下で攪拌しジアミン溶液を得た。そこに、6FDA:8.156g(18.4mmol)、BPDA:2.813g(9.60mmol)、およびTMHQ:4.383g(9.60mmol)を加え、12時間攪拌した。その後、BPDA:0.101g(0.34mmol)を加えて撹拌したが、72時間撹拌後も未溶のBPDAが粉体として残留していた。
[実施例4]
(プレポリマー溶液の調製)
セパラブルフラスコに、DMF:99.3g、TFMB:8.307g(25.9mmol)、および3,3’−DDS:2.836g(11.4mmol)を投入し、窒素雰囲気下で攪拌してジアミン溶液を得た。そこに、6FDA:7.816g(17.6mmol)、BPDA:2.802g(9.52mmol)、およびTMHQ:4.366g(9.52mmol)を加え、12時間攪拌した。
(オリゴマー溶液の調製)
別のフラスコに、DMF:1.00g、TFMB:0.0074g(0.23mmol)、およびCBDA0.0090g(0.46mmol)を投入し、1時間撹拌して均一溶液とした。
(プレポリマーとオリゴマーとの反応によるポリアミド酸溶液の調製)
プレポリマー溶液にオリゴマー溶液を添加して撹拌すると、プレポリマーとオリゴマーとの反応が進行し、分子量の上昇に伴って溶液の粘度が上昇した、粘度の上昇が飽和するまで2時間を要した。
(イミド化およびポリイミド樹脂の単離)
上記のポリアミド酸溶液に、DMF:22g、ピリジン:9.0g(114mmol)、および無水酢酸:11.7g(114mmol)を添加し、90℃で3時間攪拌してイミド化を行った後、室温まで冷却した。その後、実施例1と同様にして、IPAとDMFの混合液によるポリイミド樹脂の析出、IPAによる洗浄および真空乾燥を行い、ポリイミド樹脂を得た。
[実施例5]
(プレポリマー溶液の調製)
セパラブルフラスコに、DMF:84.3g、TFMB:7.697g(24.0mmol)、および3,3’−DDS:2.518g(10.1mmol)を投入し、窒素雰囲気下で攪拌してジアミン溶液を得た。そこに、6FDA:6.841g(15.4mmol)、BPDA:2.320g(7.89mmol)、およびTMHQ:3.443g(7.51mmol)を加えた。別のフラスコに、DMF:15.0g、TFMB:0.8502g(2.66mmol)、およびTMHQ:2.434g(5.31mmol)を投入し、1時間撹拌して均一溶液とした(オリゴマー溶液1)。このオリゴマー溶液1を、上記のセパラブルフラスコに加えて、12時間攪拌した。
(オリゴマー溶液2の調製)
さらに別のフラスコに、DMF:1.38g、TFMB:0.0783g(0.245mmol)、およびTMHQ:0.2241g(0.489mmol)を投入し、1時間撹拌して均一溶液とした(オリゴマー溶液2)。
(プレポリマーとオリゴマーとの反応によるポリアミド酸溶液の調製)
プレポリマー溶液に、オリゴマー溶液2を添加して撹拌すると、プレポリマーとオリゴマーとの反応が進行し、分子量の上昇に伴って溶液の粘度が上昇した、粘度の上昇が飽和するまで2時間を要した。
(イミド化およびポリイミド樹脂の単離)
上記のポリイミド溶液を用いて、実施例1と同様に、イミド化、ポリイミド樹脂の析出、洗浄および真空乾燥を行い、ポリイミド樹脂を得た。
[ポリイミドフィルムの作製および評価]
実施例1〜5および比較例1で得られたポリイミド樹脂を、ジクロロメタンに溶解させ、固形分濃度12%のポリイミド溶液を得た。バーコーターを用いて、ポリイミド溶液を無アルカリガラス板に塗布し、40℃で60分、80℃で30分、150℃で30分、170℃で30分、200℃で60分、大気雰囲気下で加熱して溶媒を除去して、厚み50μmのポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムについて、以下の評価を実施した。
(引張弾性率)
測定には島津製作所製の「AUTOGRAPH AGS−X」を用いて、次の条件で測定した。サンプル測定範囲;幅10mm、つかみ具間距離100mm、引張速度;20.0mm/min、測定温度;23℃。サンプルは23℃/55%RHで1日静置して調湿したものを用いた。
(黄色度)
3cm角サイズのサンプルを用い、スガ試験機製の分光測色計「SC−P」により黄色度(YI)を測定した。
(鉛筆硬度)
JIS K−5600−5−4「鉛筆引っかき試験」により、フィルムの鉛筆硬度を測定した。
(400nmにおける透過率)
日本分光社製の紫外可視分光光度計「V−560」を用いて、フィルムの300〜800nmにおける光透過率を測定し、400nmの波長における光透過率を読み取った。
(全光線透過率)
スガ試験機製のヘイズメーター「HZ−V3」を用いて、JIS K7361−1に記載の方法により測定した。
上記の実施例および比較例のポリアミド酸の調製におけるモノマーの仕込み量、およびポリイミドフィルムの評価結果を、表1に示す。表1におけるモノマー仕込み比は、ジアミンの総量を100mol%としたモル比で示している。後添加の酸二無水物は、酸二無水物の総量を100mol%としたモル比で示しており、実施例5では、オリゴマー1における酸二無水物も、後添加の酸二無水物に含めている。
Figure 2021024930
プレポリマーにTMHQの粉体を添加して後重合を行った比較例1では、TMHQを添加してから反応の完了(粘度上昇の飽和)までに10時間を要したのに対して、オリゴマー溶液を添加して後重合を行った実施例1では、後重合の反応完了までの時間が2時間に短縮されていた。また、実施例1のポリイミドフィルムは、比較例1のポリイミドフィルムと同様に、高い透明性と優れた機械強度を示しており、実施例1と比較例1で、ポリイミドフィルムの特性に明確な差はみられなかった。
プレポリマーにTAHMBPの粉体を添加した比較例2、およびBPDAの粉体を添加した比較例3では、酸二無水物の添加から72時間後も、酸二無水物が未溶解で残存しており、粘度が十分に上昇することはなかった。一方、酸二無水物をジアミンと反応させてオリゴマーとして添加した実施例2および実施例3では、プレポリマー溶液にオリゴマー溶液を添加後、直ちに両者が混和し、実施例1と同様に、約2時間で反応が終了した。
実施例1〜3と比較例1〜3との対比から、酸二無水物の粉体をプレポリマー溶液に添加すると、酸二無水物の溶解性が低く、後重合の効率が低いのに対して、酸二無水物とジアミンとを予め反応させてオリゴマー溶液を調製し、オリゴマー溶液を重合系に添加すれば、オリゴマー溶液が短時間で混和して反応が進行するため、ポリアミド酸の調製に要する時間を短縮可能であることが分かる。
脂環式酸二無水物であるCBDAとTFMBとを反応させたオリゴマーを添加した実施例4においても、実施例1〜3と同様、約2時間で反応が終了し、後重合を短時間で完了させることができた。
実施例5では、酸二無水物/ジアミンをモル比0.901で仕込み、反応の途中段階で、TFMBとTMHQとを反応させた酸無水物末端オリゴマー(オリゴマー1)の溶液を添加して、実施例1のプレポリマーと略同組成とし、さらにオリゴマー2を添加した。この例においても、実施例1と同様に高い反応性を示し、得られたポリイミドフィルムの特性も実施例1と同等であった。この結果から、オリゴマーを複数回に分けて混合した場合も、オリゴマーを1回のみ投入する場合と同様、後重合の時間を短縮可能であり、かつ優れた特性を有するポリイミドフィルムが得られることが分かる。

Claims (15)

  1. ポリアミド酸溶液の製造方法であって、
    有機溶媒中でジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて、プレポリマーの溶液を調製する工程;
    有機溶媒中でジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて、オリゴマーの溶液を調製する工程;および
    前記プレポリマーと前記オリゴマーとを反応させる工程、を有し、
    前記プレポリマーの溶液の調製において、酸二無水物の仕込み量は、ジアミンの仕込み量に対して、モル比で1よりも小さく、
    前記オリゴマーの溶液の調製において、酸二無水物の仕込み量は、ジアミンの仕込み量に対して、モル比で1よりも大きく、
    前記オリゴマーにおける酸二無水物成分の量は、前記オリゴマーにおける酸二無水物成分の量と前記プレポリマーにおける酸二無水物成分の量との合計に対して、モル比で0.001〜0.25倍である、ポリアミド酸溶液の製造方法。
  2. 前記オリゴマーの溶液の調製において、酸二無水物の仕込み量は、ジアミンの仕込み量に対して、モル比で1.1〜2.1倍である、請求項1に記載のポリアミド酸溶液の製造方法。
  3. 前記プレポリマーの溶液の調製において、酸二無水物の仕込み量は、ジアミンの仕込み量に対して、モル比で0.90〜0.99倍である、請求項1または2に記載のポリアミド酸溶液の製造方法。
  4. 前記プレポリマーにおける酸二無水物成分の量と前記オリゴマーにおける酸二無水物成分の量との合計が、前記プレポリマーにおけるジアミン成分の量と前記オリゴマーにおけるジアミン成分の量との合計に対して、モル比で0.95〜1.05倍である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアミド酸溶液の製造方法。
  5. 前記オリゴマーの調製に用いられるテトラカルボン酸二無水物は、前記有機溶媒に対する23℃における飽和溶解度が15重量%以下であるテトラカルボン酸二無水物を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアミド酸溶液の製造方法。
  6. 前記オリゴマーの調製に用いられるテトラカルボン酸二無水物は、ビフェニル骨格含有テトラカルボン酸二無水物、ビス無水トリメリット酸エステル、フッ素含有芳香族テトラカルボン酸二無水物、および脂環式テトラカルボン酸二無水物からなる群から選択される1種以上を含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリアミド酸溶液の製造方法。
  7. 前記プレポリマーの溶液の調製に用いられるテトラカルボン酸二無水物、および前記オリゴマーの溶液の調製に用いられるテトラカルボン酸二無水物の少なくともいずれか一方が、フッ素含有芳香族テトラカルボン酸二無水物を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリアミド酸の製造方法。
  8. 前記プレポリマーの溶液の調製に用いられるテトラカルボン酸二無水物、および前記オリゴマーの溶液の調製に用いられるテトラカルボン酸二無水物の少なくともいずれか一方が、一般式(1)で表される酸二無水物を含む、請求項7に記載のポリアミド酸溶液の製造方法:
    Figure 2021024930
    一般式(1)において、nは1以上の整数であり、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、または炭素原子数1〜20のパーフルオロアルキル基である。
  9. 前記プレポリマーの溶液の調製に用いられるジアミン、および前記オリゴマーの溶液の調製に用いられるジアミンの少なくともいずれか一方が、フッ素含有芳香族ジアミンを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリアミド酸の製造方法。
  10. 前記フッ素含有芳香族ジアミンが、フルオロアルキル置換ベンジジンである、請求項9に記載のポリアミド酸溶液の製造方法。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法によりポリアミド酸溶液を調製し、
    前記ポリアミド酸をイミド化する、ポリイミドの製造方法。
  12. 溶液中で前記イミド化を行う、請求項11に記載のポリイミドの製造方法。
  13. 溶液中で前記イミド化を行った後に、ポリイミド溶液と、ポリイミドの貧溶媒とを混合して、ポリイミド樹脂を析出させる、請求項12に記載のポリイミドの製造方法。
  14. 請求項13に記載の方法によりポリイミド樹脂を調製し、
    前記ポリイミド樹脂を溶媒中に溶解したポリイミド溶液を基材上に塗布し、前記溶媒を除去する、ポリイミドフィルムの製造方法。
  15. 前記溶媒がハロゲン化アルキルである、請求項14に記載のポリイミドフィルムの製造方法。

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