JP2021019566A - ゲル状組成物およびそれを含む食品 - Google Patents

ゲル状組成物およびそれを含む食品 Download PDF

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Abstract

【課題】喫食に適した硬さで提供されることにより直ちに喫食可能であり、かつ加熱調理をした場合に溶解によって型崩れすることがないゲル状組成物を提供する。【解決手段】ゲル状組成物は、架橋ゼラチンと酵素とを含むゲル状組成物であって、前記架橋ゼラチンは、前記ゲル状組成物中のゼラチン濃度が5質量%以上30質量%以下であり、前記ゲル状組成物は、0.18MPaおよび120℃の条件下で20分間の加圧加熱処理を実行した場合、前記加圧加熱処理の前後において破断強度の変動比率が30%以内であり、かつ前記加圧加熱処理後の破断強度が9.5g以上630g以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、ゲル状組成物およびそれを含む食品に関する。
ゼラチンの食品としての価値を高めることを目的とし、ゼラチンを素材とした様々な加工食品が開発されてきた。たとえば特開平06−098743号公報(特許文献1)および特開平02−171160号公報(特許文献2)は、ふかひれ様の食感を有するゼラチン加工食品を開示している。
特開平06−098743号公報 特開平02−171160号公報
食品としての価値を高める手段の一つとして、入手後、直ちに喫食可能とすることを挙げることができる。しかしながら、上記特許文献1および特許文献2のゼラチン加工食品を含め、ゼラチンを素材とした加工食品は、一般に腐敗の進行防止を目的として乾燥させた状態で提供されることが多い。このため上記加工食品は、調理の工程に加え、水戻しの工程等を要するので、喫食するまでに煩わしさがある。腐敗の進行防止を目的とし、上記加工食品に対してレトルト殺菌等を実行することが考えられるが、上記加工食品は熱に不安定で加熱により溶解する傾向がある。たとえば上記特許文献1のゼラチン加工食品は、少なくとも100℃を超える高温で加熱した場合、溶解することが分かっている。さらに上記加工食品を入手後、直ちに喫食可能とするためには、喫食に適した硬さで提供されることが要請される。
上記実情に鑑み、本発明は、喫食に適した硬さで提供され、かつレトルト殺菌をした場合に溶解によって型崩れすることがないゲル状組成物およびそれを含む食品を提供することを目的とする。
本発明者らは、ゼラチンを素材とした新たな加工食品を開発する中で、ゼラチンの分子内および分子間の両方、またはゼラチンの分子内および分子間のいずれか一方において架橋構造を有する架橋ゼラチンに注目した。特に、所定の方法を用いてゼラチンを架橋することにより、レトルト殺菌後も形状を維持可能な耐熱性を備える架橋ゼラチンが得られることを知見した。これにより上記架橋ゼラチンを含み、レトルト殺菌をした場合に溶解によって型崩れすることがないゲル状組成物に到達した。さらに上記ゲル状組成物は、乾燥品ではなく、直ちに喫食可能となるように喫食に適した硬さで提供することができる。以上により、本発明に係るゲル状組成物およびそれを含む食品を完成させた。
すなわち本発明は、以下のとおりの特徴を有する。
本発明に係るゲル状組成物は、架橋ゼラチンと酵素とを含むゲル状組成物であって、上記架橋ゼラチンは、上記ゲル状組成物中のゼラチン濃度が5質量%以上30質量%以下であり、上記ゲル状組成物は、0.18MPaおよび120℃の条件下で20分間の加圧加熱処理を実行した場合、上記加圧加熱処理の前後において破断強度の変動比率が30%以内であり、かつ上記加圧加熱処理後の破断強度が9.5g以上630g以下である。
上記酵素は、失活した状態のトランスグルタミナーゼであることが好ましい。
上記ゲル状組成物は、コラーゲンおよびコラーゲンペプチドの両方またはいずれか一方を含むことが好ましい。
上記ゲル状組成物は、糖類をさらに含むことが好ましい。
上記ゲル状組成物は、歯ごたえのある弾力性を有することが好ましい。
上記ゲル状組成物は、無味無臭であることが好ましい。
本発明に係る食品は、上記ゲル状組成物を含む。
上記によれば、喫食に適した硬さで提供され、かつレトルト殺菌をした場合に溶解によって型崩れすることがないゲル状組成物およびそれを含む食品を提供することができる。
以下、本発明に係る実施形態(以下、「本実施形態」とも記す)について、さらに詳細に説明する。ここで本明細書において「A〜B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。さらに本明細書において「ゼラチン」の用語は、物質としてのゼラチンそれ自体をいう場合に用いるほか、ゲル状態にあるゼラチンをいう場合、溶解することにより水溶液の状態にあるゼラチンをいう場合にそれぞれ用いることがある。
〔ゲル状組成物〕
本実施形態に係るゲル状組成物は、架橋ゼラチンと酵素とを含むゲル状組成物である。上記ゲル状組成物は、具体的には水、架橋ゼラチンおよび酵素を含む。さらに上記ゲル状組成物は、後述するコラーゲン、コラーゲンペプチドおよび糖類のいずれかを含む場合がある。
上記ゲル状組成物において上記架橋ゼラチンは、上記ゲル状組成物中のゼラチン濃度が5質量%以上30質量%以下である。上記ゲル状組成物は、0.18MPaおよび120℃の条件下で20分間の加圧加熱処理を実行した場合、上記加圧加熱処理の前後において破断強度の変動比率が30%以内であり、かつ上記加圧加熱処理後の破断強度が9.5g以上630g以下である。このような特徴を備えるゲル状組成物は、レトルト殺菌後も形状を維持可能な耐熱性を備えるため、レトルト殺菌をした場合に溶解によって型崩れすることがない。さらに乾燥品ではなく、直ちに喫食することができるように喫食に適した硬さで提供することができる。
ここで本明細書において「レトルト殺菌」とは、食品衛生法(昭和22年法律第233号)で定められた「容器包装詰加圧加熱殺菌食品」を得るために実行される加圧加熱殺菌処理をいう。具体的には、pHが4.6を超え、水分活性が0.94を超える食品に対して微生物を死滅させるために実行される「中心部の温度を120℃として4分間加熱する方法、またはこれと同等以上の効力を有する方法」を意味する。
<架橋ゼラチン>
本実施形態に係るゲル状組成物は、架橋ゼラチンを含む。本明細書において「架橋ゼラチン」とは、ゼラチンの分子内および分子間の両方、またはゼラチンの分子内および分子間のいずれか一方が後述する酵素によって架橋されたゼラチンを意味する。上記架橋ゼラチンの原料となるゼラチンは、牛、豚などの哺乳動物の骨または皮部分、サメ、ティラピアなどの魚類の骨、皮または鱗部分などのコラーゲンを含有する材料を、塩酸、硫酸などの無機酸もしくは石灰などの無機塩基を用いて処理することにより得ることができる。
一般に、無機酸を用いて処理することにより得たゼラチンを酸処理ゼラチンと称し、無機塩基を用いて処理することにより得たゼラチンをアルカリ処理ゼラチンと称する。酸処理ゼラチンは、pH8〜9が等イオン点であり、上記等イオン点が示すpH領域はブロードとなる。これに対し、アルカリ処理ゼラチンは、ほぼpH5が等イオン点であり、上記等イオン点が示すpH領域は非常にシャープとなる。上記架橋ゼラチンの原料となるゼラチンとしては、酸処理ゼラチンおよびアルカリ処理ゼラチンをいずれも用いることができる。上記架橋ゼラチンの原料となるゼラチンのゼリー強度(JIS K 6503:2001(にかわ及びゼラチン)に規定)は、特に限定されない。ただし、より良い弾力感および歯ごたえを付与する観点から、ゼリー強度が100〜300gであるゼラチンを用いることが好ましい。
上記架橋ゼラチンは、上記ゼラチンに対し、後述する酵素を用いてゼラチンの分子内および分子間の両方、またはそれらの一方を架橋することにより得ることができる。ここで上記架橋ゼラチンを酵素を用いた架橋反応により得る理由は、以下のとおりである。まずゼラチンの分子内および分子間を架橋する方法としては、物理学的方法、化学的方法および酵素学的方法を挙げることができる。物理学的方法としては、ゲル状のゼラチンに対して紫外線照射する方法、遠赤外線照射する方法および伝導熱、輻射熱などを熱照射する方法などを例示することができる。化学的方法としては、グルタールアルデヒド、タンニン、ミョウバン、硫酸アルミニウムなどの化学品を用いる方法を挙げることができる。酵素学的方法としては、グルタミナーゼなどの酵素を用いる方法を挙げることができる。
上記ゲル状組成物は、後述する〔ゲル状組成物の製造方法〕の項目において説明するように、水溶液中に溶解したゼラチンに対して架橋反応を起こすことにより得た架橋ゼラチンを含む。このためゼラチンの分子内および分子間を架橋する方法として、ゲル状のゼラチンに対して架橋を行う物理学的方法を適用することは適切ではなく、化学的方法または酵素学的方法を適用することを要する。次に、上記架橋ゼラチンが喫食されることを考慮した場合、化学品を用いる化学的方法は避けることが好ましい。以上から、上記架橋ゼラチンについては、酵素を用いた架橋反応により得ることが好ましい。上記架橋ゼラチンを得るために必要な具体的な酵素の種別については後述する。
上記架橋ゼラチンにおいて分子内および分子間の両方、またはそれらの一方が架橋されているか否は、ゼリー片を60℃の大気雰囲気下で1時間静置した場合に溶解するか否かを目視観察することにより確認できる。上記観察において、上記架橋ゼラチンのゼリー片には溶解が認められず、架橋されていないゼラチンのゼリー片には溶解が認められる。
上記架橋ゼラチンは、上記ゲル状組成物中のゼラチン濃度が5質量%以上30質量%以下である。これによりゲル状組成物を喫食に適した硬さで提供することができ、もって入手後、直ちに喫食可能とすることができる。さらに上記ゲル状組成物は、上記架橋ゼラチンが上記ゲル状組成物中で上述したゼラチン濃度の範囲であることにより、レトルト殺菌後も形状を維持可能な耐熱性を備えることができる。本明細書において「喫食に適した硬さ」とは、食感として歯ごたえのある弾力性を有することをいい、具体的には後述する加圧加熱処理後の破断強度が9.5g以上630g以下であることを意味する。本明細書において「歯ごたえのある弾力性」は、その有無を後述する官能評価試験により評価することができる。
上記架橋ゼラチンは、上記ゲル状組成物中のゼラチン濃度が5質量%以上25質量%以下であることが好ましく、上記ゲル状組成物中のゼラチン濃度が5質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。上記架橋ゼラチンは、上記ゲル状組成物中のゼラチン濃度が10質量%以上15質量%以下であることが最も好ましい。この場合、喫食に適した硬さに加え、ゼラチンが元来有する臭み、およびこの臭みに伴う風味を抑えることができ、もって無味無臭とすることができる。本明細書においてゲル状組成物が「無味無臭」であるか否かついても、後述する官能評価試験により評価することができる。
上記ゲル状組成物は、上記架橋ゼラチンの上記ゲル状組成物中のゼラチン濃度が5質量%未満となる場合、柔らかすぎることにより食感として歯ごたえおよび弾力性を失うため、喫食に適した硬さを得ることができなくなる。上記ゲル状組成物は、上記架橋ゼラチンの上記ゲル状組成物中のゼラチン濃度が30質量%を超える場合、弾力はあるが硬さが増すことによって噛み切りづらくなるため、喫食に不向きとなる。
<酵素>
本実施形態に係るゲル状組成物は、酵素を含む。上記ゲル状組成物が酵素を含む理由は、上述したように酵素を用いてゼラチンの分子内および分子間の両方、またはゼラチンの分子内および分子間のいずれか一方を架橋することによって架橋ゼラチンを得るからである。具体的には、上記酵素は、トランスグルタミナーゼ、リジルオキシダーゼ(「リシンオキシダーゼ」とも呼ばれる)などを用いることができる。トランスグルタミナーゼをゼラチンに作用させた場合、トランスグルタミナーゼは、ゼラチンの分子内あるいは分子間のグルタミン残基とリジン残基との間にイソペプチド結合を形成し、もってゼラチンを架橋することができる。リジルオキシダーゼをゼラチンに作用させた場合、リジルオキシダーゼは、ゼラチンのリジン残基内にアルデヒド基を形成する。これにより、上記アルデヒド基がゼラチン内のアミノ基と反応し、もってゼラチンを架橋することができる。さらに上記酵素としては、ポリフェノールオキシダーゼ(チロシナーゼ)、ラッカーゼ、ペルオキシダーゼなどを用いることもできる。
本発明の効果を十分に奏する観点から、上記酵素は、トランスグルタミナーゼであることが好ましい。この場合、ゼラチンが溶解した水溶液の温度を40〜55℃とし、pH5〜8とした条件の下、上記水溶液中にトランスグルタミナーゼを添加することにより、ゼラチンの分子内および分子間の両方、またはゼラチンの分子内および分子間のいずれか一方を効率的に架橋することができ、もって上記架橋ゼラチンを得ることができる。上記水溶液中のトランスグルタミナーゼの濃度は、0.1〜2質量%(ゼラチン1gに対して1〜20U)とすることが好ましい。
ここで上記ゲル状組成物において上記酵素は、失活した状態のトランスグルタミナーゼであることが好ましい。トランスグルタミナーゼの失活温度は、65〜80℃である。上記ゲル状組成物において酵素が失活していることは、後述する〔ゲル状組成物の製造方法〕の項目において説明するように、上記酵素および上記架橋ゼラチンを含む水溶液に対し、レトルト殺菌と同等以上の加圧加熱処理を行うことにより上記ゲル状組成物を得ていることから明らかである。さらに、上記ゲル状組成物において酵素が失活していることは、上記ゲル状組成物を常温に放置した場合、上記ゲル状組成物の破断強度が経時的に変化しないことによって確認することができる。
<破断強度>
本実施形態に係るゲル状組成物は、0.18MPaおよび120℃の条件下で20分間の加圧加熱処理を実行した場合、上記加圧加熱処理の前後において破断強度の変動比率が30%以内であり、かつ上記加圧加熱処理後の破断強度が9.5g以上630g以下である。換言すれば、上記ゲル状組成物は、レトルト殺菌と同等以上の加圧加熱処理を実行した場合であっても、上記加圧加熱処理の前後において破断強度の変動比率が30%以内に収まり、かつ上記加圧加熱処理後の破断強度が9.5g以上630g以下となる。これによりゲル状組成物は、ゼラチンを素材とするにもかかわらず、レトルト殺菌後も形状を維持可能な耐熱性を備えることができ、もって加熱調理をした場合に溶解によって型崩れすることがない。さらにレトルト殺菌後において喫食に適した硬さで提供されることにより、直ちに喫食することが可能となる。本明細書において「破断強度」は、ゲル状組成物の硬さを示す指標として用いられる。
上記ゲル状組成物において上述した効果が得られる理由は、詳細なメカニズムは不明ながら、後述する〔ゲル状組成物の製造方法〕の項目において説明するpH条件、温度条件および時間条件の下でゼラチンを酵素で架橋することにより得た架橋ゼラチンを、所定のゼラチン濃度で含むからであると考えられる。この場合、上記架橋ゼラチンは、0.18MPaおよび120℃の条件下の加圧加熱処理によっても、ゲルの形状が壊されずに維持され、脆くなることがない。これによりゲル状組成物は、上記レトルト殺菌の前後において破断強度の変動比率が30%以内に収まり、かつ上記加圧加熱処理後の破断強度が9.5g以上630g以下という硬さを維持することができると考えられる。
上記ゲル状組成物は、上記加圧加熱処理の前後において破断強度の変動比率が25%以内であることが好ましく、上記破断強度の変動比率が20%以内であることがより好ましい。上記破断強度の変動比率は、15%以内であることがさらに好ましい。上記ゲル状組成物の加圧加熱処理の前後における破断強度の変動比率の最小値は0%である。さらに上記ゲル状組成物の破断強度は、上記加圧加熱処理前よりも上記加圧加熱処理後が小さな値となることが好ましい。上記破断強度の変動比率が30%を超える場合、レトルト殺菌後に形状を維持することが困難となる傾向があり、もって加熱調理をした場合に溶解によって型崩れが生ずる場合がある。
上記ゲル状組成物は、加圧加熱処理後の破断強度が50g以上400g以下であることが好ましく、上記加圧加熱処理後の破断強度が100g以上300g以下であることがより好ましい。上記ゲル状組成物は、上記加圧加熱処理後の破断強度が100g以上250g以下であることがより十分に好ましい。上記ゲル状組成物は、加圧加熱処理後の破断強度が9.5g未満である場合、柔らかすぎることにより食感として歯ごたえおよび弾力性を失うため、喫食に適した硬さを得ることができなくなる。上記ゲル状組成物は、加圧加熱処理後の破断強度が630gを超える場合、弾力はあるが硬さが増すことによって噛み切りづらくなるため、喫食に不向きとなる。
破断強度(単位はg)の測定方法は、以下のとおりである。すなわち破断強度は、試料となるゲル状組成物に対し、テクスチャーアナライザ(商品名:「TA−XT2i」、Stable Micro System社製)を用いてJIS K 6503:2001に規定された方法に準じ、以下の条件で測定することにより求めることができる。
(破断強度測定条件)
試験速度:1.0mm/秒
ストローク変位:20mm
治具:直径1mmの円柱プランジャー
試験温度:25℃
表面検出(伸び原点):2.5g
試験サンプル形状:W30mm×D30mm×H5mm。
<コラーゲンおよびコラーゲンペプチド>
本実施形態に係るゲル状組成物は、嗜好性の観点から、コラーゲンおよびコラーゲンペプチドの両方またはいずれか一方を含むことが好ましい。
コラーゲンは、上述したゼラチンを得るための原料であって、たとえば牛、豚、羊、鶏、ダチョウなどに代表される動物の皮、皮膚、骨、軟骨、腱など、あるいは魚類の骨、皮、鱗などに対して従来公知の脱脂または脱灰処理、抽出処理などを実行することにより得ることができる。コラーゲンペプチドは、コラーゲン加水分解物の総称であって、上記コラーゲンまたは上記ゼラチンに対し、たとえばペプシン、キモシン、カテプシンD、レニンなどのタンパク質分解酵素を用いて加水分解することにより得ることができる。コラーゲンペプチドは、上記ゲル状組成物に適用する場合、500〜5000Daの重量平均分子量を有することが好ましい。このようなコラーゲンペプチドとしてたとえば市販のコラーゲンペプチド(商品名:「SCP−50NB」、新田ゼラチン株式会社製)を用いることができる。コラーゲンペプチドの重量平均分子量は、以下の測定条件の下でサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を実行することにより求めることができる。
機器 :高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(東ソー株式会社製)
カラム:TSKgel(登録商標)G2000SWXL
カラム温度:40℃
カラムサイズ:7.8mmI.D.×30cm、5μm
溶離液:45質量%アセトニトリル(0.1質量%トリフルオロ酢酸を含む)
流速 :1.0mL/min
注入量:10μL
検出 :UV214nm
分子量マーカー:以下の5種を使用
Cytochrom C Mw:12000
Aprotinin Mw:6500
Bacitracin Mw:1450
Gly−Gly−Tyr−Arg Mw:451
Gly−Gly−Gly Mw:189。
コラーゲンおよびコラーゲンペプチドは、その一方を含む場合、および両者を含む場合のいずれであっても、総量として上記ゲル状組成物中の濃度が0.1〜20質量%であることが好ましい。コラーゲンおよびコラーゲンペプチドは、上記総量として上記ゲル状組成物中の濃度が0.5〜10質量%であることがより好ましい。コラーゲンおよびコラーゲンペプチドは、上記総量として上記ゲル状組成物中の濃度が20質量%を超える場合、増量に伴って得られる効果よりも、むしろ増量に伴うコストの増加、破断強度の調整が困難となるなどの悪影響が大きくなる傾向がある。コラーゲンおよびコラーゲンペプチドは、上記総量として上記ゲル状組成物中の濃度が0.1質量%未満となる場合、これらを添加することにより得られる効果が不十分となる傾向がある。
<糖類>
本実施形態に係るゲル状組成物は、糖類をさらに含むことが好ましい。これによりゲル状組成物に、所望の食感(歯ごたえ、弾力性、粘度、舌触り、喉ごしなど)、味(甘み、コクなど)を容易に付与することができる。これにより本発明の効果をより十分に奏することができ、かつ喫食の増進を図ることが可能となる。
上記糖類とは、具体的には、果糖、ブドウ糖、ガラクトース、マンノースなどの単糖類、ショ糖、乳糖、マルトース、セロビオース、トレハロースなどの二糖類、3〜10の単糖が結合することにより構成されるオリゴ糖類、ならびに10以上の単糖が結合することにより構成される多糖類を意味する。さらに多糖類には、化学構造においてカルボキシル基などを有するために、水などに溶解させた際に酸性を示す酸性多糖類、電気的に中性を示す中性多糖類、および化学構造においてアミノ基などを有するために、水などに溶解させた際にアルカリ性を示す塩基性多糖類がいずれも含まれる。本実施形態に係るゲル状組成物は、本発明の効果に悪影響を及ぼさない限り、上記単糖類、二糖類、オリゴ糖類、酸性多糖類、中性多糖類ならびに塩基性多糖類をいずれも含むことができる。
酸性多糖類としては、カラギナン、ペクチン、CMC(カルボキシメチルセルロース)、アルギン酸エステル、アラビアガム、キサンタンガム、ジェランガム、寒天、トラガントガムなどを例示することができる。中性多糖類としては、タマリンドシードガム、グァーガム、ローカストビーンガム、澱粉、プルランなどを例示することができる。塩基性多糖類としては、キトサンなどを挙げることができる。
糖類としては、上述した化合物の中でも果糖、トレハロース、グァーガム、ローカストビーンガムであることがより好ましい。さらに上記ゲル状組成物は、糖類として上述した化合物の中から1種を単独で含んでもよいし、2種以上の組み合わせで含んでもよい。
糖類は、上記ゲル状組成物中の濃度が0.05〜20質量%であることが好ましい。糖類は、上記ゲル状組成物中の濃度が20質量%を超える場合、増量に伴って得られる効果よりも、むしろ増量に伴うコストの増加、食感および味の調整が困難となるなどの悪影響が大きくなる傾向がある。糖類は、上記ゲル状組成物中の濃度が0.05質量%未満となる場合、これを添加することにより得られる効果が不十分となる傾向がある。
<その他の添加物>
本実施形態に係るゲル状組成物は、上述した架橋ゼラチン、酵素、コラーゲン、コラーゲンペプチドおよび糖類に加え、本発明の効果に悪影響を与えない範囲で他の添加物を含むことができる。他の添加物としては、クエン酸などのpH調整剤、香料、着色料、甘味料、保存料、増粘剤、酸味料、調味料、乳化剤、栄養強化剤などを挙げることができる。
<用途>
本実施形態に係るゲル状組成物は、食用であることが好ましい。上記ゲル状組成物は、上述のように喫食に適した硬さで提供されることにより、直ちに喫食可能となる。さらにレトルト殺菌後も形状を維持可能な耐熱性を備えるため、加熱調理をした場合に溶解することによって型崩れすることがない。換言すれば本発明は、レトルト殺菌後も形状を維持可能な耐熱性を備え、かつ直ちに喫食可能であるという属性に基づき、食用のゲル状組成物を提供することができる。
<歯ごたえのある弾力性>
本実施形態に係るゲル状組成物は、歯ごたえのある弾力性を有することが好ましい。ゲル状組成物は、上述のように0.18MPaおよび120℃の条件下で20分間の加圧加熱処理を実行した場合、上記加圧加熱処理後の破断強度が9.5g以上630g以下となる。この場合においてゲル状組成物は、直ちに喫食可能となる喫食に適した硬さとして、歯ごたえのある弾力性を有することができる。本明細書において「歯ごたえのある弾力性」とは、後述する官能評価試験を実行した場合、「食感」についての官能評価試験において「良好な歯ごたえを有する」と評価されることを意味する。
<無味無臭>
本実施形態に係るゲル状組成物は、無味無臭であることが好ましい。上記ゲル状組成物は、上記架橋ゼラチンを上記ゲル状組成物中に5質量%以上30質量%以下含む。この場合においてゲル状組成物は、喫食に適した硬さに加え、ゼラチンが元来有する臭み、およびこの臭みに伴う風味を抑えることができ、もって無味無臭とすることができる。本明細書においてゲル状組成物が「無味無臭」であるか否かついても、後述する官能評価試験に準ずることにより評価することができる。本明細書において「無味無臭」であるとは、後述する官能評価試験を実行した場合、「味」についての官能評価試験において「ゼラチンの味を感じない」と評価され、かつ「におい」についての官能評価試験において「ゼラチンのにおいを感じない」と評価されることを意味する。
[食品]
本実施形態に係る食品は、上記ゲル状組成物を含む。上記食品は、上記ゲル状組成物を含むことにより、喫食に適した硬さで提供されることにより直ちに喫食可能となり、かつレトルト殺菌後も形状を維持可能な耐熱性を備えることにより、加熱調理をした場合に溶解によって型崩れすることがない。さらに上記食品は、上記ゲル状組成物を含むことにより、歯ごたえのある弾力性を有することができ、無味無臭であることもできる。
したがって上記食品は、それ自体をそのまま喫食することができ、酢味噌などの調味料を付すなどして喫食することもできる。上記食品は、サラダ、スープ、酢の物、デザートなどの各種料理の具材として用いることができるし、焼き物、炒め物、煮物などの各種の加熱調理に用いることもできる。本実施形態に係る食品に含まれるゲル状組成物の比率としては、特に限定されることないが、たとえば1〜100%とすることが好ましい。
[ゲル状組成物の製造方法]
本実施形態に係るゲル状組成物は、従来公知の原料であるゼラチンおよび酵素を用い、かつ上記ゼラチンの濃度、上記酵素の種別、上記酵素を反応させるpH、温度および時間、ならびに加圧加熱処理における温度、圧力および時間などを適宜調整することにより製造される。たとえば次の製造方法を用いることにより、本実施形態に係るゲル状組成物を得ることが好ましい。
すなわち上記ゲル状組成物の製造方法は、原料となるゼラチンを準備する工程(第1工程)と、上記ゼラチンを水に溶解するとともにpH調整を行うことにより、pH調整済みゼラチン水溶液を得る工程(第2工程)と、上記pH調整済みゼラチン水溶液に酵素を添加することによりゲル状組成物前駆溶液を得る工程(第3工程)と、上記ゲル状組成物前駆溶液において上記酵素と上記ゼラチンとを反応させることにより、上記ゼラチンの分子内および分子間の両方、またはゼラチンの分子内および分子間のいずれか一方を架橋した架橋ゼラチンを含むゲル状組成物を得る工程(第4工程)と、上記ゲル状組成物に対し厚生労働省が定める容器包装詰加圧加熱殺菌食品の製造基準に則り加圧加熱処理を実行する工程(第5工程)とを含むことが好ましい。以下、各工程について説明する。
<第1工程>
第1工程は、原料となるゼラチンを準備する工程である。原料となるゼラチンについては、上述のように牛、豚などの哺乳動物の骨または皮部分、サメ、ティラピアなどの魚類の骨、皮または鱗部分などのコラーゲンを含有する材料を、塩酸、硫酸などの無機酸もしくは石灰などの無機塩基を用いて処理することにより準備することができる。このようなゼラチンとして、たとえば豚の皮部分から塩酸を用いて処理することにより得た市販の酸処理ゼラチン(商品名:「リーフゼラチンシルバー」、新田ゼラチン株式会社製)を用いることができる。
<第2工程>
第2工程は、上記ゼラチンを水に溶解するとともにpH調整を行うことにより、pH調整済みゼラチン水溶液を得る工程である。具体的には第2工程では、まず上記酸処理ゼラチンを水に浸漬し、さらに50〜70℃で加熱することにより上記酸処理ゼラチンを溶解し、もってゼラチン水溶液を得る。さらに上記ゼラチン水溶液に対し、所定濃度(質量%)のクエン酸ナトリウム水溶液を適量添加することにより、上記ゼラチン水溶液をpH5〜8に調整する。これにより、pH調整済みゼラチン水溶液を得ることができる。このpH調整済みゼラチン水溶液においては、酸処理ゼラチンのゼラチン濃度が5〜30質量%程度となるように調製することが好ましい。
<第3工程>
第3工程は、上記pH調整済みゼラチン水溶液に酵素を添加することによりゲル状組成物前駆溶液を得る工程である。第3工程では、具体的には酵素として、たとえばトランスグルタミナーゼ(商品名:「TG−S−NF」、味の素株式会社製)を用いることが好ましい。この場合、まずゲル状組成物に対して0.1〜2質量%(ゼラチン1gに対して1〜20U)濃度となる上記トランスグルタミナーゼを秤量し、これを適量の水に溶解することによりトランスグルタミナーゼ水溶液(以下、「TG溶液」とも記す)を準備する。このTG溶液を、上記pH調整済みゼラチン水溶液に添加し、撹拌することによりゲル状組成物前駆溶液を得る。
ここで本製造方法によってコラーゲン、コラーゲンペプチド、糖類からなる群より選ばれる1種以上を含むゲル状組成物を得る場合、上記ゲル状組成物前駆溶液に対し、これらのコラーゲン、コラーゲンペプチドまたは糖類を所定量添加することが好ましい。この場合、後述する第4工程においては、コラーゲン、コラーゲンペプチドまたは糖類が所定量添加されたゲル状組成物前駆溶液において、上記トランスグルタミナーゼと上記酸処理ゼラチンとの架橋反応が起こることとなる。
<第4工程>
第4工程は、上記ゲル状組成物前駆溶液において上記酵素と上記ゼラチンとを反応させることにより、上記ゼラチンの分子内および分子間の両方、またはゼラチンの分子内および分子間のいずれか一方を架橋した架橋ゼラチンを含むゲル状組成物を得る工程である。第4工程では、上記ゲル状組成物前駆溶液を所定の耐熱耐圧容器に投入し、上記耐熱耐圧容器を密封した後、上記トランスグルタミナーゼと上記酸処理ゼラチンとをpH5〜8および40〜55℃の条件の下で30分〜24時間反応させる。これにより、ゼラチンの分子内および分子間の両方、またはゼラチンの分子内および分子間のいずれか一方を架橋した架橋ゼラチンを生成し、もって上記架橋ゼラチンを含むゲル状組成物を得ることができる。上記ゲル状組成物の破断強度は、上記耐熱耐圧容器の密封を解いた後、上記架橋ゼラチンを含むゲル状組成物に対して上述した測定方法を適用することにより、上記ゲル状組成物における加圧加熱処理前の破断強度として求めることができる。
<第5工程>
第5工程は、上記ゲル状組成物に対し厚生労働省が定める容器包装詰加圧加熱殺菌食品の製造基準に則り加圧加熱処理を実行する工程である。換言すれば、第5工程は、上記ゲル状組成物に対しレトルト殺菌と同等以上の加圧加熱処理を実行する工程である。第5工程では、たとえば上記ゲル状組成物で満たされた耐熱耐圧容器を、レトルト殺菌機(商品名:「第一種圧力容器 RCS−40RTGN」、株式会社日阪製作所製)を用いて0.18MPaおよび120℃の条件下で20分間の加圧加熱処理を実行する。これにより上記ゲル状組成物の腐敗の進行を防止することができる。さらに上記加圧加熱処理により、酵素を失活させることができる。上記ゲル状組成物は、上記加圧加熱処理の実行後、室温で所定時間放置されることにより冷却される。次いで上記耐熱耐圧容器の密封を解いた後、上記ゲル状組成物に対して上述した破断強度の測定方法を適用することにより、上記ゲル状組成物における加圧加熱処理後の破断強度を求めることができる。
以上より、本実施形態に係るゲル状組成物を得ることができる。上記ゲル状組成物に対して上記加圧加熱処理前後において破断強度を測定した場合、上記加圧加熱処理の前後の破断強度の変動比率が30%以内となり、かつ上記加圧加熱処理後の破断強度が9.5g以上630g以下となる。このような上記ゲル状組成物は、レトルト殺菌後も形状を維持可能な耐熱性を備えるため、加熱調理をした場合に溶解することによって型崩れすることがない。さらに9.5g以上630g以下の破断強度を有し、喫食に適した硬さで提供されるため、直ちに喫食することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下の各実施例において用いたゲル状組成物は、加圧加熱処理前後の破断強度をそれぞれ測定するため、試料毎に2つずつ製造された。
[実施例1:従来技術との比較]
<ゲル状組成物の製造>
(試料1)
原料として市販の豚皮由来の酸処理ゼラチン(商品名:「リーフゼラチンシルバー」、新田ゼラチン株式会社製)を200g準備した(第1工程)。この酸処理ゼラチンを水に浸漬することにより1960gの総質量とするとともに、60℃で加熱することにより上記酸処理ゼラチンを溶解し、もってゼラチン水溶液を得た。さらに20質量%クエン酸ナトリウム水溶液を適量添加することにより、上記ゼラチン水溶液をpH6に調整した。これによりpH6に調整したpH調整済みゼラチン水溶液を得た(第2工程)。
次に、トランスグルタミナーゼ(商品名:「TG−S−NF」、味の素株式会社製)を16g秤量し、水に溶解することにより40gのTG溶液を準備した。このTG溶液を、上記pH調整済みゼラチン水溶液に添加し、撹拌することによりゲル状組成物前駆溶液を得た(第3工程)。
さらに上記ゲル状組成物前駆溶液を2000gに重量補正を行った上で、上記ゲル状組成物前駆溶液110ccを後述する加圧加熱処理に耐えうる耐熱耐圧容器としての透明カップ(商品名:「C11PM透明(YR−C11PM NA)」、吉村化成株式会社製)に投入した。次いで、上記ゲル状組成物前駆溶液で満たした透明カップを密封し、上記トランスグルタミナーゼと上記酸処理ゼラチンとを、50℃(1気圧)の温水の下で2時間反応させることにより、ゼラチンの分子内および分子間の両方を架橋した架橋ゼラチンを得、もって上記架橋ゼラチンを含むゲル状組成物を得た(第4工程)。
ここで上記架橋ゼラチンを含むゲル状組成物については、上述したように2つ製造された。このうち一方のゲル状組成物に対し、上記透明カップを密封したまま80℃の湯中に10分間浸漬することにより酵素を失活させ、加圧加熱処理前の破断強度測定用のサンプルを得た。次いで上記透明カップの密封を解くとともに、長さ30mm×幅30mm×高さ5mmの直方体形状にカットした。この直方体形状のゲル状組成物に対し、上述の測定方法を用いることにより加圧加熱処理前の破断強度を求めたところ、116.17gの値を得た。
次に、他方のゲル状組成物に対し、上述したレトルト殺菌機を用いて0.18MPaおよび120℃の条件下で20分間の加圧加熱処理を実行した(第5工程)。その後、他方のゲル状組成物を室温で24時間放置し、上記透明カップの密封を解くとともに、長さ30mm×幅30mm×高さ5mmの直方体形状にカットした。この直方体形状のゲル状組成物に対し、上述の測定方法を用いることにより加圧加熱処理後の破断強度を求めたところ、100.7gの値を得た。
(試料A)
試料Aとして、粉末状の牛骨由来のアルカリ処理ゼラチン(商品名:「SRC」、新田ゼラチン株式会社製)を原料として用いることにより、上記特許文献1に開示された製造方法に沿ってゲル状組成物を製造しようとした。すなわち上記ゼラチンを冷水で膨潤させた後、50℃で溶解してゼラチン水溶液とした。次いで5℃の水槽中に浮かべた底浅の箱形容器(以下、「バット」とも記す)に上記ゼラチン水溶液を注入することにより、厚みが5mmとなるゼラチンゲルを得た。このゼラチンゲルを長さ30mm×幅30mm×厚み5mmの直方体形状にカットし、次いでトランスグルタミナーゼ(商品名:「TG−S−NF」、味の素株式会社製)を5U/mL濃度としたTGを含む水溶液(TG浸漬液)に浸漬し、20℃で18時間保持することにより架橋反応を起こした。さらに上記ゼラチンゲルを30℃の大気雰囲気化で24時間乾燥させた。その後、80℃の温水で1時間浸漬したところ、上記ゼラチンゲルは取出し時に外側のゲル状部分が崩壊し、内部の液状部分が溶出した。このため試料Aとしてのゲル状組成物を製造することができなかった。その理由は、架橋反応がゼラチンゲルの内部まで進まず、80℃の加熱後において形状を維持する硬さを有することができなかったためであると推察された。すなわち上記特許文献1に開示された製造方法のように上記TG浸漬液にゼラチンゲルを浸漬する場合、本発明の効果を奏するゲル状組成物を製造することができないと結論づけることができる。
(試料B)
試料Bとして、粉末状の豚皮由来の酸処理ゼラチン(商品名:「APH−250」、新田ゼラチン株式会社製)を原料として用いることにより、上記特許文献2に開示された製造方法に沿ってゲル状組成物を製造した。すなわちゼラチンを冷水で膨潤させた後、50℃で溶解してゼラチン水溶液とした。次いで上記ゼラチン水溶液のpHを6に調整し、かつ0.25質量%(ゼラチン1gに対し1U)濃度のトランスグルタミナーゼを所定量添加した後、50℃で21分間撹拌することにより、架橋ゼラチン(水溶液)を得た。さらに上記架橋ゼラチン(水溶液)を10℃の水中に浮かべたバットに注入し、厚みが5mmとなるゲル状組成物を得、もって上記ゲル状組成物を長さ30mm×幅30mm×厚み5mmの直方体形状にカットした。次いで上記ゲル状組成物を乾燥させることにより乾燥品を得た。その後、上記乾燥品を水戻しし、試料Bのゲル状組成物を製造した。上記ゲル状組成物に対し、上述の測定方法を用いることにより加圧加熱処理前の破断強度を求めたところ、802.3gの値を得た。
さらに、上記試料Bのゲル状組成物を耐熱ポリ袋(商品名:「ナイロンポリ袋R No.5B」、福助工業株式会社製)投入し、これを密封した上で上述したレトルト殺菌機を用いて0.14MPaおよび120℃の条件下で20分間の含気加圧加熱処理を実行した。その後、上記ゲル状組成物を室温で24時間放置し、上述の測定方法を用いることにより加圧加熱処理後の破断強度を求めたところ、818.8gの値を得た。
試料1、試料Aおよび試料Bに関し、ゲル状組成物を製造するために用いた処方(組成比(単位は質量%))の一覧を表1に示す。試料1および試料Bのゲル状組成物に対して求めた加圧加熱処理前後の破断強度およびその変動比率(%)の一覧を表2に示す。
Figure 2021019566
Figure 2021019566
<官能評価試験>
試料1および試料Bのゲル状組成物をパネリスト4名が喫食することにより、「食感」、「味」および「におい」の3項目について官能評価試験を行った。「食感」については、「A:良好な歯ごたえを有する」、「B:歯ごたえはあるが満足の行くものではない」および「C:不良(かたすぎる、柔らかすぎる)」の選択肢を準備し、該当する評価(A〜C)をパネリストに選択させた。「味」については、「A:ゼラチンの味を感じない」、「B:ゼラチンの味をわずかに感じる」および「C:ゼラチンの味を強く感じる」の選択肢を準備し、該当する評価(A〜C)をパネリストに選択させた。「におい」については、「A:ゼラチンのにおいを感じない」、「B:ゼラチンのにおいをわずかに感じる」および「C:ゼラチンのにおいを強く感じる」の選択肢を準備し、該当する評価(A〜C)をパネリストに選択させた。
上記官能評価試験の結果を表3に示す。表3に示された評価は、パネリスト4名において多数決により選択された評価である。
Figure 2021019566
<考察>
表1〜表3によれば、試料1のゲル状組成物は、試料Aおよび試料Bのゲル状組成物に比してレトルト殺菌をした場合に溶解によって型崩れすることがなく、かつ喫食に適した硬さで提供されることにより直ちに喫食可能であることが理解される。試料1のゲル状組成物は、ゲル状組成物中のゼラチン濃度が5〜30質量%の架橋ゼラチン、および失活した状態のトランスグルタミナーゼを含み、0.18MPaおよび120℃の条件下で20分間の加圧加熱処理を実行した場合、加圧加熱処理の前後において破断強度の変動比率が30%以内であり、かつ加圧加熱処理後の破断強度が9.5g以上630g以下である。
[実施例2:最適なゼラチン濃度の評価]
<ゲル状組成物の製造>
(試料11〜試料17)
ゲル状組成物中のゼラチン濃度が表4に示した質量%となるように上記酸処理ゼラチン(商品名:「リーフゼラチンシルバー」、新田ゼラチン株式会社製)を準備したこと以外、試料1と同じ製造方法を適用することにより、各試料のゲル状組成物を製造した。
各試料のゲル状組成物に対し、試料1に対する測定方法と同じ方法を用いることにより加圧加熱処理前後の破断強度およびその変動比率(%)をそれぞれ求めた。試料11〜試料17に関し、ゲル状組成物を製造するために用いた処方(組成比(単位は質量%))の一覧を表4に示す。試料11〜試料17のゲル状組成物に対して求めた加圧加熱処理前後の破断強度およびその変動比率(%)の一覧を表5に示す。
Figure 2021019566
Figure 2021019566
<官能評価試験>
さらに、試料11〜試料17のゲル状組成物に対し、実施例1と同じパネリスト4名によって実施例1と同じ項目を評価する官能評価試験を行った。結果を表6に示す。試料11〜試料17のゲル状組成物は、それぞれ長さ30mm×幅30mm×高さ5mmの直方体形状を有していた。表6に示された評価は、パネリスト4名において多数決により選択された評価である。
Figure 2021019566
<考察>
表4〜表6によれば、試料12〜試料17のゲル状組成物は、試料11のゲル状組成物に比してレトルト殺菌をした場合に溶解によって型崩れすることがなく、かつ喫食に適した硬さで提供されることにより直ちに喫食可能であることが理解される。試料12〜試料17はゲル状組成物中のゼラチン濃度が5〜30質量%の架橋ゼラチン、および失活したトランスグルタミナーゼを含み、0.18MPaおよび120℃の条件下で20分間の加圧加熱処理を実行した場合、加圧加熱処理の前後において破断強度の変動比率が30%以内であり、かつ加圧加熱処理後の破断強度が9.5g以上630g以下である。試料12〜試料15、なかでも試料13および試料14は、他の試料に比して「味」および「におい」においても良好な評価が得られたため、歯ごたえのある弾力性を有し、かつ無味無臭である好ましいゲル状組成物および食品として提供することができると考えられる。
[実施例3:コラーゲン、コラーゲンペプチドまたは糖類の添加による影響]
<ゲル状組成物の製造>
(試料21〜試料27)
ゲル状組成物中のコラーゲン、コラーゲンペプチドまたは糖類の濃度、およびトランスグルタミナーゼの濃度が表7に示した質量%となるように、第3工程においてこれらを添加したこと以外、試料1と同じ製造方法を適用することにより、各試料のゲル状組成物を製造した。
各試料のゲル状組成物に対し、試料1に対する測定方法と同じ方法を用いることにより加圧加熱処理前後の破断強度およびその変動比率(%)をそれぞれ求めた。試料21〜試料27に関し、ゲル状組成物を製造するために用いた処方(組成比(単位は質量%))の一覧を表7に示す。さらに試料21〜試料27のゲル状組成物に対して求めた加圧加熱処理前後の破断強度およびその変動比率(%)の一覧を表8に示す。表7中、「SCP−50NB(新田ゼラチン株式会社製)」は、魚由来のコラーゲンペプチドである。「クリスター300(テート&ライルジャパン株式会社製)」は、果糖である。「プロコール U(Habgen Guargum社製)」は、グァーガムである。「PK−100(新田ゼラチン株式会社製)」は、豚由来のコラーゲンである。「トレハ(登録商標)(株式会社林原製)」は、トレハロースである。「RL−200−J(CP Kelco社製)」は、ローカストビーンガムである。
Figure 2021019566
Figure 2021019566
<官能評価試験>
さらに、試料21〜試料27のゲル状組成物に対し、実施例1と同じパネリスト4名によって実施例1と同じ項目を評価する官能評価試験を行った。結果を表9に示す。試料21〜試料27のゲル状組成物は、それぞれ長さ30mm×幅30mm×高さ5mmの直方体形状を有していた。表9に示された評価は、パネリスト4名において多数決により選択された評価である。
Figure 2021019566
<考察>
表7〜表9によれば、試料21〜試料27のゲル状組成物は、いずれもレトルト殺菌をした場合に溶解によって型崩れすることがなく、喫食に適した硬さで提供されることにより直ちに喫食可能であることが理解される。したがってゲル状組成物にコラーゲン、コラーゲンペプチドまたは糖類を添加した場合でも、歯ごたえのある弾力性を有し、かつ無味無臭であるゲル状組成物および食品として提供することができると考えられる。
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

Claims (7)

  1. 架橋ゼラチンと酵素とを含むゲル状組成物であって、
    前記架橋ゼラチンは、前記ゲル状組成物中のゼラチン濃度が5質量%以上30質量%以下であり、
    前記ゲル状組成物は、0.18MPaおよび120℃の条件下で20分間の加圧加熱処理を実行した場合、前記加圧加熱処理の前後において破断強度の変動比率が30%以内であり、かつ前記加圧加熱処理後の破断強度が9.5g以上630g以下である、ゲル状組成物。
  2. 前記酵素は、失活した状態のトランスグルタミナーゼである、請求項1に記載のゲル状組成物。
  3. 前記ゲル状組成物は、コラーゲンおよびコラーゲンペプチドの両方またはいずれか一方を含む、請求項1または請求項2に記載のゲル状組成物。
  4. 前記ゲル状組成物は、糖類をさらに含む、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のゲル状組成物。
  5. 前記ゲル状組成物は、歯ごたえのある弾力性を有する、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のゲル状組成物。
  6. 前記ゲル状組成物は、無味無臭である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のゲル状組成物。
  7. 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のゲル状組成物を含む、食品。
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